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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】高分子化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20240520BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240520BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240520BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240520BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240520BHJP
【FI】
C08G61/12
C09K11/06 690
H05B33/14 A
H05B33/10
H05B33/22 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020206522
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022093826
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺井 宏樹
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-056005(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065836(WO,A2)
【文献】特開2017-101008(JP,A)
【文献】特表2014-532715(JP,A)
【文献】特開2022-094314(JP,A)
【文献】特開2004-292439(JP,A)
【文献】特表2007-528295(JP,A)
【文献】国際公開第2013/058160(WO,A2)
【文献】ADAMO C.,Mechanism of the Palladium-Catalyzed Homocoupling of Arylboronic Acids:Key involvement of a Palladium Peroxo Complex,JACS,2006年,128,p.6829-6836
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G、C08F、H05B33
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)及び(2)を含む高分子化合物の製造方法:
(1)鈴木カップリング反応を利用して、水酸基含有不純物を含む高分子化合物を製造する工程、並びに
(2)工程(1)で得られた高分子化合物及び溶媒を含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトとを接触させて、水酸基含有不純物の含有量を低減させた高分子化合物を得る工程。
【請求項2】
下記工程(1A)及び(2A)を含む請求項1に記載の高分子化合物の製造方法:
(1A)触媒、塩基及び溶媒の存在下、式(M-1)で表される化合物及び式(M-2)で表される化合物を含むモノマーを鈴木カップリング反応により重合反応させて、水酸基含有不純物を含む式(U-1)で表される構成単位及び式(U-2)で表される構成単位を含む高分子化合物を製造する工程、並びに
(2A)工程(1A)で得られた高分子化合物及び溶媒を含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトとを接触させて、水酸基含有不純物の含有量を低減させた高分子化合物を得る工程。
[式中、
Ara1、Ara2、Ara3、Arb1、Arb2及びArb3は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、直接又は連結基を介して複数連結したものでもよい。Ara2、Ara3、Arb2及びArb3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
a1、Ra2、Rb1及びRb2は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、直接又は連結基を介して複数連結したものでもよい。Ra1、Ra2、Rb1及びRb2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
a1及びb1は、それぞれ独立に、0以上2以下の整数を表す。
a2及びb2は、それぞれ独立に、0以上1以下の整数を表す。a2及びb2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
a1及びZa2は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-O-S(=O)2Z、-S(=O)2Cl、-S(=O)2Z、-N2 +BF4 -、-SRZ、-NRZ 3 +OTf-、-ORZ、-O-C(=O)RZ又は-C(=O)-ORZを表す。RZは、アルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
Zが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
b1及びZb2は、それぞれ独立に、-B(OH)2、ボロン酸エステル残基、又は-BF3Tを表す。Tは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、又はセシウム原子を表す。]
【請求項3】
下記工程(1B)及び(2B)を含む請求項1に記載の高分子化合物の製造方法:
(1B)触媒、塩基及び溶媒の存在下、式(M-1)で表される化合物及び式(M-3)で表される化合物を含むモノマーを重合反応させて、水酸基含有不純物を含む式(U-1)で表される構成単位及び式(U-3)で表される構成単位を含む高分子化合物を製造する工程(ここで、前記式(M-1)で表される化合物及び前記式(M-3)で表される化合物の少なくとも一方がその製造工程で鈴木カップリング反応を利用している)、並びに
(2B)工程(1B)で得られた高分子化合物及び溶媒を含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトとを接触させて、水酸基含有不純物の含有量を低減させた高分子化合物を得る工程。
[式中、
Arc1、Arc2及びArc3は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、直接又は連結基を介して複数連結したものでもよい。
c1、Rc2、Rc3及びRc4は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、直接又は連結基を介して複数連結したものでもよい。
c1、c2及びc3は、それぞれ独立に、0又は1を表す。
他の記号は前記に同じ。]
【請求項4】
前記ゼオライトのシリカ/アルミナ比が1以上3以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項5】
前記ゼオライトが、A型ゼオライト又はX型ゼオライトである、請求項1~4のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項6】
前記ゼオライトが、JIS Z 8801-2:2000で定められた目開き1mm以下のふるいを通る粒子径のゼオライトである、請求項1~5のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項7】
前記接触がカラムクロマトグラフィー法により行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項8】
陽極、有機層及び陰極を有する発光素子の製造方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法により高分子化合物を製造する工程、及び当該高分子化合物を用いて有機層を形成する工程を含む、発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)は、発光効率が高く、駆動電圧が低いことから、ディスプレイの用途に好適に使用することが可能である。この発光素子は、発光層、電荷輸送層等の有機層を備える。有機層の材料として高分子化合物を用いることで、インクジェット印刷法に代表される塗布法により有機層を形成することができる。そのため、発光素子の製造に用いる高分子化合物及びその製造方法が検討されてきている。
【0003】
有機EL素子の課題としては、駆動に伴って経時的に発光輝度が低下する現象が知られている。この発光輝度の低下を抑制するために様々な改良が試みられている。
発光輝度の低下を引き起こす原因の一つとして、有機EL素子の構成材料である有機発光層を含む有機化合物層中に混入する水酸基含有不純物の存在が知られている。水酸基含有不純物は、例えば鈴木カップリング反応の副反応として生成することが知られている(非特許文献1)。
【0004】
このような水酸基含有不純物を低減させる方法として、特許文献1では低分子化合物を昇華精製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of American Chemical Society, 2006年, 128巻, 6829頁
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2008/126802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法では低分子化合物を昇華精製することができるが、高分子化合物は昇華精製することができない。そのため、高分子化合物に利用可能で、かつ、効率的に水酸基含有不純物を低減させる製造方法が求められている。本発明は、水酸基含有不純物の含有量を低減させた高分子化合物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、鈴木カップリング反応を経て合成された高分子化合物及び溶媒を含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトを接触させることにより、当該高分子化合物中の水酸基含有不純物を効率的に低減させることができることを見出した。かかる知見に基づいて、更に検討を加えることにより、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の[1]~[8]を提供する。
【0009】
[1] 下記工程(1)及び(2)を含む高分子化合物の製造方法:
(1)鈴木カップリング反応を利用して高分子化合物を製造する工程、並びに
(2)工程(1)で得られた高分子化合物及び溶媒を含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトとを接触させる工程。
[2] 下記工程(1A)及び(2A)を含む[1]に記載の高分子化合物の製造方法:
(1A)触媒、塩基及び溶媒の存在下、式(M-1)で表される化合物及び式(M-2)で表される化合物を含むモノマーを鈴木カップリング反応により重合反応させて、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-2)で表される構成単位を含む高分子化合物を製造する工程、並びに
(2A)工程(1A)で得られた高分子化合物及び溶媒を含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトとを接触させる工程。

[式中、
Ara1、Ara2、Ara3、Arb1、Arb2及びArb3は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、直接又は連結基を介して複数連結したものでもよい。Ara2、Ara3、Arb2及びArb3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
a1、Ra2、Rb1及びRb2は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、直接又は連結基を介して複数連結したものでもよい。Ra1、Ra2、Rb1及びRb2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
a1及びb1は、それぞれ独立に、0以上2以下の整数を表す。
a2及びb2は、それぞれ独立に、0以上1以下の整数を表す。a2及びb2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
a1及びZa2は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-O-S(=O)2Z、-S(=O)2Cl、-S(=O)2Z、-N2 +BF4 -、-SRZ、-NRZ 3 +OTf-、-ORZ、-O-C(=O)RZ又は-C(=O)-ORZを表す。RZは、アルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RZが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
b1及びZb2は、それぞれ独立に、-B(OH)2、ボロン酸エステル残基、又は-BF3Tを表す。Tは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、又はセシウム原子を表す。]
[3] 下記工程(1B)及び(2B)を含む[1]に記載の高分子化合物の製造方法:
(1B)触媒、塩基及び溶媒の存在下、式(M-1)で表される化合物及び式(M-3)で表される化合物を含むモノマーを重合反応させて、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-3)で表される構成単位を含む高分子化合物を製造する工程(ここで、前記式(M-1)で表される化合物及び前記式(M-3)で表される化合物の少なくとも一方がその製造工程で鈴木カップリング反応を利用している)、並びに
(2B)工程(1B)で得られた高分子化合物及び溶媒を含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトとを接触させる工程。

[式中、
Arc1、Arc2及びArc3は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、直接又は連結基を介して複数連結したものでもよい。
c1、Rc2、Rc3及びRc4は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、直接又は連結基を介して複数連結したものでもよい。
c1、c2及びc3は、それぞれ独立に、0又は1を表す。
他の記号は前記に同じ。]
[4] 前記ゼオライトのシリカ/アルミナ比が1以上3以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
[5] 前記ゼオライトが、A型ゼオライト又はX型ゼオライトである、[1]~[4]のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
[6] 前記ゼオライトが、JIS Z 8801-2:2000で定められた目開き1mm以下のふるいを通る粒子径のゼオライトである、[1]~[5]のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
[7] 前記接触がカラムクロマトグラフィー法により行われる、[1]~[6]のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
[8] 陽極、有機層及び陰極を有する発光素子の製造方法であって、[1]~[7]のいずれか一項に記載の製造方法により高分子化合物を製造する工程、及び当該高分子化合物を用いて有機層を形成する工程を含む、発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、鈴木カップリング反応を利用して製造された高分子化合物中の水酸基含有不純物を効率的に低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0012】
1.共通する用語の説明
本明細書で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
【0013】
「水素原子」は、軽水素原子であっても重水素原子であってもよい。
【0014】
「アルキル基」とは、直鎖、分岐及び環状のアルキル基を意味する。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、通常1~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。分岐及び環状のアルキル基の炭素原子数は、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。当該「アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-n-プロピルヘプチル基、n-デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-n-ヘキシル-デシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
【0015】
「アルキル基」は1~20個の置換基を有していてもよい。
【0016】
「アリール基」とは、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた1価の基を意味する。芳香族炭化水素の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~10である。当該「アリール基」としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基等が挙げられる。
【0017】
「アリール基」は1~10個の置換基を有していてもよい。
【0018】
「アルコキシ基」とは、直鎖、分岐及び環状のアルコキシ基を意味する。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、通常1~40であり、好ましくは4~10である。分岐及び環状のアルコキシ基の炭素原子数は、通常3~40であり、好ましくは4~10である。当該「アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。
【0019】
「アルコキシ基」は1~10個の置換基を有していてもよい。
【0020】
「アリールオキシ基」とは、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を酸素原子に置き換えた1価の基を意味する。「アリールオキシ基」の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは7~48である。当該「アリールオキシ基」としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基等が挙げられる。
【0021】
「アリールオキシ基」は1~10個の置換基を有していてもよい。
【0022】
「置換アミノ基」は、2つの置換基を有するアミノ基を意味する。当該置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基(該アリール基はアルキル基を有していてもよい)、1価の複素環基等が挙げられる。当該置換基は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。当該「置換アミノ基」としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ジ(モノ又はジアルキルアリール)アミノ基が挙げられ、具体的には、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N-カルバゾリル基、N-ピペリジル基、N-モルホリル基等が挙げられる。
【0023】
「エステル化されたカルボキシル基」とは、式:-COOR'(R'は、アルキル基、アリール基、1価の複素環基等を表す。)で表される基を意味する。当該「エステル化されたカルボキシル基」としては、例えば、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基が挙げられ、具体的には、例えば、-CO2CH3で表される基、-CO225で表される基、-CO265で表される基等が挙げられる。
【0024】
「アルケニル基」は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよい。直鎖のアルケニル基の炭素原子数は、通常2~30であり、好ましくは2~20である。分岐及び環状のアルケニル基の炭素原子数は、通常3~30であり、好ましくは4~20である。当該「アルケニル基」としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテン-1-イル基、3-ブテン-1-イル基、1-シクロヘキセニル基、1-ノルボルニル基、2-ノルボルニル基等が挙げられる。
【0025】
「アルケニル基」は1~20個の置換基を有していてもよい。
【0026】
「アルキニル基」は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよい。直鎖のアルキニル基の炭素原子数は、通常2~30であり、好ましくは2~20である。分岐及び環状のアルキニル基の炭素原子数は、通常4~30であり、好ましくは4~20である。当該「アルキニル基」としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチン-1-イル基、3-ブチン-1-イル基等が挙げられる。
【0027】
「アルキニル基」は1~20個の置換基を有していてもよい。
【0028】
「金属錯体含有基」は、金属原子とそれに配位する配位子とから形成される錯体を含む基を意味する。例えば、式(C-1)~式(C-4)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0029】
[式中、MはIr又はPtである。MがIrのとき、m=2であり、MがPtのとき、m=1である。環Aは置換基を有していてもよい窒素原子を含む環状構造を表す。環Bは置換基を有していてもよい炭素原子を含む環状構造を表す。Rは、水素原子、フッ素原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、カルボキシル基、エステル化されたカルボキシル基、アルケニル基、アルキニル基、架橋基、金属錯体含有基を表す。Rは、置換可能な基である場合、置換基を有していてもよい。Rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。隣接するR同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0030】
環Aとしては、例えば、含窒素芳香環(ピリジン等)が挙げられる。環Bとしては、例えば、芳香環(ベンゼン等)又は複素芳香環(ジベンゾチオフェン等)が挙げられる。環A及び環Bは置換基を有していてもよい。環A及び環Bはそれぞれ、例えば、フッ素原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、カルボキシル基、エステル化されたカルボキシル基、アルケニル基、アルキニル基、架橋基等から選択される1~4個の置換基を有していてもよい。
【0031】
「2価の芳香族炭化水素基」とは、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた2価の基、及び当該2価の基からなる群から選ばれる複数個(例えば、2~5個)が結合した2価の基を意味する。2価の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、通常、6~60であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。当該「2価の芳香族炭化水素基」としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ナフタセンジイル基、フルオレンジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、クリセンジイル基等が挙げられる。
【0032】
「2価の芳香族炭化水素基」は1~10個の置換基を有していてもよい。当該「置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基」としては、例えば、式(A-1)~式(A-21)で表される基が挙げられる。
【0033】
【0034】
[式中、Rは、前記と同じ意味を表す。]
【0035】
「1価の複素環基」とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた1価の基を意味する。1価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた1価の基である「1価の芳香族複素環基」が好ましい。「1価の複素環基」としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基等が挙げられる。
【0036】
「芳香族複素環式化合物」とは、例えば、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジベンゾシロール、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物;フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環されている化合物;並びにそれらの化合物が複数結合した化合物のいずれをも意味する。
【0037】
「1価の複素環基」は1~5個の置換基を有していてもよい。
【0038】
「2価の複素環基」とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基を意味する。2価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基である「2価の芳香族複素環基」が好ましい。「2価の複素環基」としては、例えば、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール等の芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基、及び当該2価の基からなる群から選ばれる複数(例えば、2~4個)が結合した2価の基が挙げられる。
【0039】
「2価の複素環基」は1~5個の置換基を有していてもよい。当該「置換基を有していてもよい2価の複素環基」として好ましくは、式(B-1)~式(B-27)で表される基である。
【0040】
【0041】
【0042】
[式中、Rは前記と同じ意味を表す。]
【0043】
「2価の芳香族炭化水素基及び2価の複素環基のうち2個以上の基が直接若しくは連結基を介して連結した2価の基」としては、上述した2価の芳香族炭化水素基の1個又は2個以上と、上述した2価の複素環基の1個又は2個以上とが、直接若しくは連結基を介して任意に結合した2価の基を意味する。2価の芳香族炭化水素基及び2価の複素環基としては、上述したものが挙げられる。連結基としては、例えば、アルキレン基(炭素数1~10のアルキレン基等)、-O-、-S-、-(CO)-、又は、これらから選ばれる2個以上の基が結合した2価の基を表す。但し、-O-同士、-S-同士、-O-及び-S-は、互いに直接結合しない。
【0044】
「2価の芳香族炭化水素基及び2価の複素環基のうち2個以上の基が直接若しくは連結基を介して連結した2価の基」は置換基を有していてもよく、その部分構造である2価の芳香族炭化水素基上には、1~10個の置換基を有していてもよく、他の部分構造である2価の複素環基上には、1~5個の置換基を有していてもよい。
【0045】
「架橋基」とは、加熱、紫外線照射、近紫外線照射、可視光照射、赤外線照射、又はラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成することが可能な基であり、好ましくは、式(XL-1)~式(XL-21)で表される架橋基が挙げられる。
【0046】
【0047】
【0048】
「架橋基」は1~5個の置換基を有していてもよい。
【0049】
「置換基」とは、例えば、フッ素原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基、カルボキシル基、エステル化されたカルボキシル基、アルケニル基、アルキニル基、金属錯体含有基、架橋基を表す。本明細書において、ある基が置換基を有していてもよい、と表現されている場合、その基は前記置換基として列挙されている基を少なくとも一つ有していてもよいことを意味する。
【0050】
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。「構成単位」は、通常、高分子化合物中に2個以上存在し、一般に「繰り返し単位」と呼ばれる。
【0051】
2.高分子化合物
本発明の高分子化合物は、その製造工程において鈴木カップリング反応を利用して製造される高分子化合物を包含する。本発明の高分子化合物の一態様として、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-2)で表される構成単位を含む高分子化合物(以下、「高分子化合物A」と表記することがある。)が挙げられる。本発明の高分子化合物のもうひとつの態様として、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-3)で表される構成単位を含む高分子化合物(以下、「高分子化合物B」と表記することがある。)が挙げられる。
【0052】
前記高分子化合物は、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1×103~1×108の範囲が好ましく、1×104~1×106の範囲がより好ましく、3×104~5×105の範囲が更に好ましい。
【0053】
前記高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の様態であってもよいが、複数種の原料モノマーを共重合した共重合体であることが好ましい。
【0054】
前記高分子化合物は、少なくとも一つの架橋基を置換基として有していることが好ましい。
【0055】
<式(U-1)で表される構成単位及び式(U-2)で表される構成単位>
Ara1、Ara2、Ara3、Arb1、Arb2及びArb3としては、2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基が好ましく、2価の芳香族炭化水素基がより好ましい。
a1、Ra2、Rb1及びRb2としては、アルキル基又はアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。
a1及びb1としては、0又は1が好ましい。
a2及びb2としては、0が好ましい。
a1又はb1のいずれかが0のとき、他方は1又は2であることが好ましい。
【0056】
式(U-1)で表される構成単位としては、例えば、式(V-1)~式(V-22)で表される構成単位が挙げられ、式(V-1)~式(V-3)、式(V-5)~式(V-10)、式(V-15)~式(V-22)で表される構成単位が好ましい。
【0057】
式(U-2)で表される構成単位としては、例えば、式(V-1)~式(V-22)で表される構成単位が挙げられ、式(V-1)~式(V-3)、式(V-5)~式(V-10)、式(V-15)~式(V-22)で表される構成単位が好ましい。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
[式中、Rは前記と同じ意味を表す。]
【0062】
前記高分子化合物において、式(U-1)で表される構成単位は、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、通常1モル%以上99モル%以下であり、20モル%以上80モル%以下であることが好ましく、40モル%以上60モル%以下であることがより好ましい。
式(U-1)で表される構成単位は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0063】
前記高分子化合物において、式(U-2)で表される構成単位は、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、通常1モル%以上99モル%以下であり、20モル%以上80モル%以下であることが好ましく、40モル%以上60モル%以下であることがより好ましい。
式(U-2)で表される構成単位は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0064】
<その他の構成単位>
前記高分子化合物は、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-2)で表される構成単位以外の「その他の構成単位」を含んでいてもよい。
「その他の構成単位」としては、例えば、2種以上の2価の芳香族炭化水素基からなる構成単位、2種以上の2価の複素環基からなる構成単位、又は、2価の芳香族炭化水素基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基が、アルキレン基(例えば、-(CR2)-で表される基(式中、Rは前記と同じ意味を表す。))、-O-で表される基、-S-で表される基、-SiR2-で表される基(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)及び-(CO)-で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を介して結合してなる2価の基からなる構成単位が挙げられる。
【0065】
「その他の構成単位」としては、例えば、式(Y-1)~式(Y-8)で表される構成単位が挙げられ、式(Y-1)~式(Y-3)、式(Y-5)~式(Y-7)で表される構成単位が好ましく、式(Y-1)~式(Y-3)で表される構成単位がより好ましい。
【0066】
【0067】
[式中、Rは前記と同じ意味を表す。]
【0068】
前記高分子化合物が「その他の構成単位」を含む場合、「その他の構成単位」は、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは1~80モル%であり、より好ましくは1~60モル%であり、更に好ましくは1~40モル%である。
「その他の構成単位」は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0069】
<式(U-1)で表される構成単位及び式(U-3)で表される構成単位>
Ara1、Ara2、Ara3、Arc1、Arc2及びArc3としては、2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基が好ましく、2価の芳香族炭化水素基がより好ましい。
a1、Ra2、Rc1、Rc2、Rc3及びRc4としては、アルキル基又はアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。
a1及びc2としては、0又は1が好ましい。
a2、c1及びc3としては、0が好ましい。
【0070】
式(U-1)で表される構成単位としては、例えば、式(V-1)~式(V-22)で表される構成単位が挙げられ、式(V-1)~式(V-3)、式(V-5)~式(V-10)、式(V-15)~式(V-22)で表される構成単位が好ましい。
【0071】
式(U-3)で表される構成単位としては、例えば、式(X-1)~式(X-8)で表される構成単位が挙げられ、式(X-1)~式(X-6)で表される構成単位が好ましい。
【0072】
[式中、Rは前記と同じ意味を表す。]
【0073】
前記高分子化合物において、式(U-1)で表される構成単位は、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、通常1モル%以上99モル%以下であり、20モル%以上80モル%以下であることが好ましく、40モル%以上60モル%以下であることがより好ましい。
式(U-1)で表される構成単位は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0074】
前記高分子化合物において、式(U-3)で表される構成単位は、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、通常1モル%以上99モル%以下であり、20モル%以上80モル%以下であることが好ましく、40モル%以上60モル%以下であることがより好ましい。
式(U-3)で表される構成単位は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0075】
<その他の構成単位>
前記高分子化合物は、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-3)で表される構成単位以外の「その他の構成単位」を含んでいてもよい。
「その他の構成単位」としては、例えば、2種以上の2価の芳香族炭化水素基からなる構成単位、2種以上の2価の複素環基からなる構成単位、又は、2価の芳香族炭化水素基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基が、アルキレン基(例えば、-(CR2)-で表される基(式中、Rは前記と同じ意味を表す。))、-O-で表される基、-S-で表される基、-SiR2-で表される基(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)及び-(CO)-で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を介して結合してなる2価の基からなる構成単位が挙げられる。
【0076】
「その他の構成単位」としては、例えば、式(Y-1)~式(Y-8)で表される構成単位が挙げられ、式(Y-1)~式(Y-3)、式(Y-5)~式(Y-7)で表される構成単位が好ましく、式(Y-1)~式(Y-3)で表される構成単位がより好ましい。
【0077】
前記高分子化合物が「その他の構成単位」を含む場合、「その他の構成単位」は、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは1~80モル%であり、より好ましくは1~60モル%であり、更に好ましくは1~40モル%である。
「その他の構成単位」は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0078】
3.高分子化合物の製造方法
本発明の実施形態である高分子化合物の製造方法は、
(1)鈴木カップリング反応を利用して高分子化合物を製造する工程、及び
(2)工程(1)で得られた高分子化合物から水酸基含有不純物を低減する工程
を包含する。
【0079】
鈴木カップリング反応を利用して製造された高分子化合物を、例えばアルミナカラムで処理すると、水酸基含有不純物が吸着され低減できるが、同時に高分子化合物の一部も吸着されてしまい、高分子化合物の収率が低下してしまうという問題があった。しかし、本発明の製造方法を用いることにより、高分子化合物の収率を低下させることなく水酸基含有不純物をより効率的に低減させることができる。
【0080】
工程(1)には、通常、2種以上の原料モノマー(単量体)を重合反応させて高分子合物を製造する工程、及び当該原料モノマーを製造する工程を包含する。ここで、「鈴木カップリング反応を利用して」とは、2種以上の原料モノマーを重合反応させるときに鈴木カップリング反応を利用すること、及び、当該原料モノマーのうち少なくとも1種の原料モノマーを製造する工程で鈴木カップリング反応を利用すること、のいずれか一方又は両方を意味する。
【0081】
工程(2)では、工程(1)で得られた高分子化合物と、シリカ/アルミナ比(SiO2/Al23のモル比)が1以上10以下のゼオライトとを接触させる。これにより、高分子化合物の収率を低下させることなく、高分子化合物に含まれる鈴木カップリング反応で副生した水酸基含有不純物を効率的に低減することができる。
工程(1)には、種々の高分子化合物の製造方法が包含されているが、そのうち典型例である高分子化合物Aの製造方法及び高分子化合物Bの製造方法について以下に説明する。
【0082】
3-1.高分子化合物Aの製造方法
高分子化合物Aは、下記工程(1A)及び(2A)を含む製造方法により製造できる。
(1A)触媒、塩基及び溶媒の存在下、式(M-1)で表される化合物及び式(M-2)で表される化合物を含むモノマーを鈴木カップリング反応により重合反応させて、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-2)で表される構成単位を含む高分子化合物Aを製造する工程、並びに、
(2A)工程(1A)で得られた高分子化合物A及び溶媒を含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトとを接触させる工程。
【0083】
工程(1A)
工程(1A)は、式(M-1)で表される化合物及び式(M-2)で表される化合物を含むモノマーを原料として用い、鈴木カップリング反応により重合反応させて、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-2)で表される構成単位を含む高分子化合物Aを製造する工程(以下、「重合工程」ともいう。)である。
【0084】
前記重合反応において、不活性ガス置換により反応容器内の酸素濃度を低減させることが好ましい。
【0085】
前記重合反応において、反応温度は、通常-100℃以上200℃以下であり、0℃以上150℃以下が好ましく、60℃以上120℃以下が更に好ましい。
【0086】
前記重合反応において、反応時間は、通常0.1時間以上であり、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
【0087】
式(M-1)で表される化合物及び式(M-2)で表される化合物は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0088】
触媒としては、ニッケルホスフィン錯体、ニッケル化合物とホスフィン化合物との組み合わせ、パラジウムホスフィン錯体、及び、パラジウム化合物とホスフィン化合物との組み合わせ等が挙げられる。
ニッケルホスフィン錯体としては、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)等が挙げられる。
ニッケル化合物とホスフィン化合物との組み合わせとしては、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(0)、塩化ニッケル(II)等のニッケル化合物と、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のホスフィン化合物との組み合わせが挙げられる。
パラジウムホスフィン錯体としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ-o-メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)等のトリアリールホスフィンパラジウム錯体、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)等のアルキルジアリールホスフィンパラジウム錯体、ジクロロビス(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル)パラジウム(II)、ジクロロ[ジ-tert-ブチル(p-ジメチルアミノフェニル)]パラジウム(II)、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)パラジウム(II)メタンスルフォネート、ジクロロビス(ジシクロペンチル-o-メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(II)等のジアルキルアリールホスフィンパラジウム錯体、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)等のトリアルキルホスフィンパラジウム錯体等が挙げられる。
パラジウム化合物とホスフィン化合物との組み合わせとしては、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)等のパラジウム化合物と、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-o-メトキシフェニルホスフィン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のトリアリールホスフィン化合物、メチルジフェニルホスフィン等のアルキルジアリールホスフィン化合物、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1-フェニルインドール、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1-フェニル-1H-ピロール等のジアルキルアリールホスフィン化合物、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン化合物との組み合わせ等が挙げられる。
【0089】
触媒は、パラジウム錯体又はパラジウム化合物とホスフィン化合物との組み合わせが好ましく、2価のパラジウム錯体又は2価のパラジウム化合物とホスフィン化合物との組み合わせがより好ましい。
パラジウム錯体の中では、トリアリールホスフィンパラジウム錯体、アルキルジアリールホスフィンパラジウム錯体、ジアルキルアリールホスフィンパラジウム錯体又はトリアルキルホスフィンパラジウム錯体が好ましく、トリアリールホスフィンパラジウム錯体又はジアルキルアリールホスフィンパラジウム錯体がより好ましく、ジアルキルアリールホスフィンパラジウム錯体が更に好ましい。
ホスフィン化合物の中では、トリアリールホスフィン化合物、アルキルジアリールホスフィン化合物、ジアルキルアリールホスフィン化合物又はトリアルキルホスフィン化合物が好ましく、トリアリールホスフィン化合物又はジアルキルアリールホスフィン化合物又はトリアルキルホスフィン化合物がより好ましく、ジアルキルアリールホスフィン化合物が更に好ましい。
触媒は、均一系錯体触媒であっても不均一系錯体触媒であってもよく、好ましくは、均一系錯体触媒である。
【0090】
触媒の使用量は、原料モノマーのモル数の合計に対する金属の量として、通常、0.00001モル当量以上1モル当量以下である。
【0091】
塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基;フッ化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の有機塩基が挙げられる。塩基は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0092】
塩基の使用量は、原料モノマーの合計モル数に対して、通常4モル当量以上100モル当量以下である。
【0093】
溶媒としては、例えば、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の塩素炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、ジメトキシベンゼン、4-メチルアニソール等のエーテル溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n-ヘキシルベンゼン、デシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-へプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ドデカン、ビシクロヘキシル等の脂肪族炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル溶媒;エチレングリコール、グリセリン、1,2-ヘキサンジオール等の多価アルコール溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒、水が挙げられる。溶媒は、1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
溶媒は、有機溶媒1種以上と水を併用することが好ましい。
有機溶媒1種以上の合計体積の水の体積に対する比率は、1/2以上が好ましく、1以上がより好ましく、2以上が更に好ましく、4以上が特に好ましい。
少なくとも一種の溶媒は疎水性の有機溶媒であることが好ましく、塩素化炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒又は脂肪族炭化水素溶媒であることがより好ましく、芳香族炭化水素溶媒であることが更に好ましい。
【0094】
溶媒の使用量は、通常、原料モノマーの合計100質量部に対して、10質量部以上100000質量部以下であり、30質量部以上30000質量部以下が好ましく、100質量部以上10000質量部以下がより好ましい。
【0095】
第1の工程では、更に相間移動触媒を使用してもよい。相関移動触媒としては、例えば、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。相間移動触媒は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0096】
相間移動触媒の使用量は、原料モノマーの合計モル数に対して、通常0.001モル当量以上100モル当量以下である。
【0097】
式(M-1)で表される化合物及び式(M-2)で表される化合物における、Ara1、Ara2、Ara3、Arb1、Arb2、Arb3、Ra1、Ra2、Rb1、Rb2、a1、a2、b1及びb2の説明及び好ましい例は、式(U-1)で表される化合物及び式(U-2)で表される化合物における説明及び好ましい例と同じである。
【0098】
a1及びZa2としては、塩素原子又は臭素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
【0099】
b1及びZb2としては、ボロン酸エステル残基が好ましく、式(G-1)~式(G-10)で表されるボロン酸エステル残基がより好ましく、式(G-4)、式(G-6)~式(G-10)で表されるボロン酸エステル残基が更に好ましい。
【0100】
【0101】
式(M-1)で表される構成単位としては、例えば、式(J-1)~式(J-22)で表される構成単位が挙げられ、式(J-1)~式(J-3)、式(J-5)~式(J-10)、式(J-15)~式(J-22)で表される構成単位が好ましい。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
[式中、Rは前記と同じ意味を表す。]
【0106】
式(M-2)で表される構成単位としては、例えば、式(K-1)~式(K-13)で表される構成単位が挙げられ、式(K-1)~式(K-3)、式(K-5)~式(K-9)、式(K-13)で表される構成単位が好ましい。
【0107】
【0108】
【0109】
[式中、Rは前記と同じ意味を表す。]
【0110】
前記重合反応では、更に式(M-1)で表される化合物及び式(M-2)で表される化合物以外の「その他の化合物」を重合反応させてもよい。
【0111】
「その他の化合物」としては、例えば、式(L-1)~式(L-8)で表される化合物が挙げられ、式(L-1)~式(L-3)、式(L-5)~式(L-7)で表される化合物が好ましく、式(L-1)~式(L-3)で表される化合物がより好ましい。
【0112】
[式中、Rは前記と同じ意味を表す。]
【0113】
工程(1A)において、原料として用いるモノマーの少なくとも一方(即ち、式(M-1)で表される化合物及び/又は式(M-2)で表される化合物)が、鈴木カップリング反応を利用して製造されている場合に、当該モノマー中には副生成物として水酸基含有不純物を含んでいる。その場合でも、当該モノマーを精製することなく工程(1A)の重合反応に供して高分子化合物Aを得た後、工程(2A)のゼオライト接触工程に供することにより、高分子化合物A中の水酸基含有不純物を効率的に低減することができる。
【0114】
工程(2A)
工程(2A)は、工程(1A)で得られた高分子化合物Aと溶媒とを含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトを接触させる工程(以下、「ゼオライト接触工程」ともいう。)である。以下、ゼオライト接触工程について説明する。
【0115】
<高分子化合物Aと溶媒を含む溶液>
高分子化合物Aと溶媒を含む溶液は重合反応溶液をそのまま使用してもよいし、重合反応溶液を後処理精製した溶液を使用してもよいし、固体の高分子化合物Aを有機溶媒で溶解させてから使用してもよい。
【0116】
溶媒としては、高分子化合物Aが溶解し得る溶媒であればよい。かかる溶媒の具体例としては、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の塩素炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、ジメトキシベンゼン 、4-メチルアニソール等のエーテル溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n-ヘキシルベンゼン、デシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-へプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ドデカン、ビシクロヘキシル等の脂肪族炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル溶媒;エチレングリコール、グリセリン、1,2-ヘキサンジオール等の多価アルコール溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒が挙げられる。溶媒は、1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
少なくとも一種の溶媒は、塩素化炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒又は脂肪族炭化水素溶媒であることが好ましく、芳香族炭化水素溶媒であることがより好ましい。
また、少なくとも一種の溶媒は疎水性の溶媒であることが好ましい。
【0117】
溶媒の使用量は、高分子化合物Aに対して、1質量倍~200質量倍が好ましく、5質量倍~100質量倍がより好ましい。
【0118】
<ゼオライト>
ゼオライトは、一般式M2/nO・Al23・xSiO2・yH2O(x≧2)で表されるアルミノケイ酸塩である。ここで、Mは陽イオン、nは陽イオンの価数である。ゼオライトの特性を表す指標としてシリカ/アルミナ比(SiO2/Al23のモル比)がある。本発明の高分子化合物Aの製造方法で使用するゼオライトは、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトである。高分子化合物A中の水酸基含有不純物を効率的に低減できるので、ゼオライトのシリカ/アルミナ比は、1以上7以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1.2以上3以下が更に好ましい。
【0119】
前記ゼオライトは、天然ゼオライトであっても合成ゼオライトであってもよい。組成や細孔の均一性の点から、合成ゼオライトが好ましい。
前記ゼオライトは、市販されているものを用いてもよいし、合成ゼオライトであれば、公知の方法に従い製造したものを用いてもよい。
前記ゼオライトは、例えばA型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト等が挙げられ、A型ゼオライト、X型ゼオライトが好ましく、X型ゼオライトがより好ましい。
前記ゼオライトのカチオンタイプとしては、例えば、プロトン型や、リチウム型、ナトリウム型、カリウム型、カルシウム型、アンモニウム型等が挙げられる。高分子化合物A中の水酸基含有不純物を効率的に低減できるので、プロトン型、ナトリウム型、カリウム型、カルシウム型が好ましく、ナトリウム型、カリウム型、カルシウム型がより好ましく、ナトリウム型、カルシウム型が更に好ましい。
前記ゼオライトの細孔径は、0.1nm~1.5nmが好ましく、0.2nm~1.0nmがより好ましく、0.3nm~0.5nmが更に好ましい。細孔径は、ガス吸着法、特に窒素ガス吸着法により測定することができる。
前記ゼオライトは、単独で用いてもよいし、これらを混合して使用してもよい。
【0120】
前記ゼオライトはモレキュラーシーブスであってもよく、例えば市販されているモレキュラーシーブス3A、モレキュラーシーブス4A、モレキュラーシーブス5A、又はモレキュラーシーブス13Xが挙げられる。
【0121】
前記ゼオライトの形状は、粉末状、ビーズ状、ペレット状等が挙げられる。高分子化合物A中の水酸基含有不純物を効率的に低減できるので、ゼオライトの形状は粉末状のものが好ましい。ゼオライトはそのまま用いてもよいし、乳鉢等ですりつぶしてから用いてもよい。
JIS Z 8801-2:2000で定められた目開き1mm以下のふるいを通る粒子径のゼオライトが好ましく、500μm以下のふるいを通る粒子径のゼオライトがより好ましく、250μm以下のふるいを通る粒子径のゼオライトが更に好ましい。以下、本明細書で粒子径とは、JIS Z 8801-2:2000基準の粒子径を意味する。
【0122】
前記ゼオライトの使用量は、高分子化合物A中の水酸基含有不純物を効率的に低減できるので、本発明に係る溶液中の高分子化合物Aの質量に対して0.1質量倍以上が好ましく、0.5質量倍以上がより好ましく、2質量倍以上が更に好ましい。また、前記ゼオライトの使用量は、多すぎると除去のための操作性が悪くなり、また経済的にも不利になるため、本発明に係る溶液中の高分子化合物Aの質量に対して1000質量倍以下が好ましく、300質量倍以下がより好ましく、100質量倍以下が更に好ましい。
【0123】
<接触条件>
高分子化合物Aと溶媒を含む溶液と、前記ゼオライトを接触させる方法は、特に限定されないが、例えば前記ゼオライトと前記溶液を混合し、所定時間接触させた後、前記ゼオライトを、例えば濾過、遠心分離等の通常の分離手段により分離する方法(ボディーフィード法)や、前記ゼオライトが充填された塔内に、前記溶液を通液する方法(カラムクロマトグラフィー法)等が挙げられる。両方法の併用も可能である。操作が容易であるので、カラムクロマトグラフィー法が好ましい。
ボディーフィード法の場合、ゼオライトを濾別する際に、例えばセライト等の濾過助剤を用いてもよい。
カラムクロマトグラフィー法の場合、カラムに詰められたゼオライトの厚さは3cm以上が好ましい。なお、ゼオライトが詰まったカラム中には、本発明の効果が損なわれない限り、他の担体を含んでいてもよい。
【0124】
接触温度は、前記溶液の凝固点~沸点であればよい。接触温度は低すぎると粘度上昇により操作性が悪くなるため、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。接触温度は高すぎると沸騰して取り扱いが困難になるため、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましく、40℃以下が特に好ましい。
接触時間は、0.05時間~48時間が好ましく、0.1時間~10時間がより好ましく、0.2時間~5時間が更に好ましい。
接触時の雰囲気は、空気雰囲気、又は窒素若しくはアルゴン等の不活性ガス雰囲気のいずれでもよい。
接触時の照明環境は、通常の蛍光灯下で操作を行ってもよいし、蛍光灯無灯下、イエローランプ下、又はレッドランプ下で操作を行ってもよい。
接触時の圧力は、常圧でも、加圧条件下でもよい。
【0125】
高分子化合物Aを上記のゼオライトと接触させることにより、水酸基含有不純物を吸着させてより効率的に低減することができる。また、高分子化合物Aが吸着されないためその収率が高いという利点がある。
【0126】
その他の工程
本発明の高分子化合物Aの製造方法において、必要に応じて分液、脱水、再結晶、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、ソックスレー洗浄等の通常の方法にて精製してもよい。
【0127】
ゼオライト接触工程において、高分子化合物A中の水酸基を効率よく低減できるので、重合工程とゼオライト接触工程の間に分液工程があることが好ましく、分液工程及び脱水工程があることがより好ましい。
【0128】
分液工程とは、高分子化合物Aと溶媒を含む溶液に水を加えて撹拌させたのちに静置して有機溶媒層と水層を分離させ、水層を除去する工程である。水は、塩化水素や酢酸等の酸性の化合物、アンモニアや炭酸ナトリウム等の塩基性の化合物、塩化ナトリウム等の中性の化合物を添加してもよい。添加物の質量は水の質量に対して1%~20%が好ましく、3%~10%がより好ましい。分液工程において、水溶性の不純物を除去することができる。
【0129】
脱水工程とは、高分子化合物Aと溶媒を含む溶液中の水を除去する工程である。脱水方法としては、硫酸マグネシウムや硫酸ナトリウム等の乾燥剤を添加して撹拌したのちに乾燥剤を濾別してもよいし、高分子化合物Aと溶媒を含む溶液を共沸脱水してもよい。製造スケールが大きい場合は共沸脱水による脱水が好ましい。
【0130】
ゼオライト接触工程後の高分子化合物Aと溶媒を含む溶液から高分子化合物Aを取り出すために、再沈殿工程、濾過工程及び乾燥工程があることが好ましい。
【0131】
再沈殿工程とは、貧溶媒に高分子化合物Aと溶媒を含む溶液を混合し、高分子化合物Aを析出させる工程である。
貧溶媒とは、高分子化合物Aの溶解度が20℃において、1g(高分子化合物)/100g(貧溶媒)未満の溶媒である。
貧溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール等のアルコール溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル溶媒等が挙げられる。中でも、アルコール溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノールがより好ましく、メタノールが更に好ましい。
【0132】
濾過工程とは、固体の高分子化合物Aと溶媒を含む組成物を多孔質の濾材に通して、穴よりも大きな固体の高分子化合物Aを溶媒から分離する工程である。
【0133】
乾燥工程とは、水分や溶媒を含む高分子化合物Aから水分や溶媒を除去する工程である。
【0134】
3-2.高分子化合物Bの製造方法
高分子化合物Bは、下記工程(1B)及び(2B)を含む製造方法により製造できる。
(1B)触媒、塩基及び溶媒の存在下、式(M-1)で表される化合物及び式(M-3)で表される化合物を含むモノマーを重合反応させて、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-3)で表される構成単位を含む高分子化合物Bを製造する工程(ここで、前記式(M-1)で表される化合物及び前記式(M-3)で表される化合物の少なくとも一方がその製造工程で鈴木カップリング反応を利用している)、並びに
(2B)工程(1B)で得られた高分子化合物B及び溶媒を含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトとを接触させる工程
当該製造方法を採用することにより、高分子化合物Bに含まれる水酸基含有不純物を大きく低減することができる。
【0135】
工程(1B)
工程(1B)は、式(M-1)で表される化合物及び式(M-3)で表される化合物を含むモノマーを原料として用い、ブッフワルド(Buchwald)カップリング反応等により重合反応させて、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-3)で表される構成単位を含む高分子化合物Bを製造する工程(以下、「重合工程」ともいう。)である。
【0136】
前記重合反応において、不活性ガス置換により反応容器内の酸素濃度を低減させることが好ましい。
【0137】
前記重合反応において、反応温度は、通常-100℃以上200℃以下であり、0℃以上150℃以下が好ましく、60℃以上120℃以下が更に好ましい。
【0138】
前記重合反応において、反応時間は、通常0.1時間以上であり、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
【0139】
式(M-1)で表される化合物及び式(M-3)で表される化合物は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0140】
前記重合反応は、前記「高分子化合物Aの製造方法」に記載される鈴木カップリング反応の重合方法と同様にして又は準じて実施することができる。
【0141】
式(M-1)で表される化合物及び式(M-3)で表される化合物における、Ara1、Ara2、Ara3、Arc1、Arc2、Arc3、Ra1、Ra2、Rc1、Rc2、Rc3、Rc4、a1、a2、c1、c2及びc3の説明及び好ましい例は、式(U-1)で表される構成単位及び式(U-3)で表される構成単位における説明及び好ましい例と同じである。
【0142】
a1及びZa2としては、塩素原子又は臭素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
【0143】
式(M-3)で表される化合物としては、例えば、式(N-1)~式(N-8)で表される化合物が挙げられ、式(N-1)~式(N-6)で表される化合物が好ましく、式(N-1)~式(N-3)で表される化合物がより好ましい。
【0144】
【0145】
[式中、Rは前記と同じ意味を表す。]
【0146】
「その他の化合物」としては、例えば、式(L-1)~式(L-8)で表される化合物が挙げられ、式(L-1)~式(L-3)、式(L-5)~式(L-7)で表される化合物が好ましく、式(L-1)~式(L-3)で表される化合物がより好ましい。
【0147】
工程(1B)において、原料として用いるモノマーの少なくとも一方(即ち、式(M-1)で表される化合物及び/又は式(M-3)で表される化合物)は、鈴木カップリング反応を利用して製造されている。そのため、当該モノマー中には、副生成物として水酸基含有不純物を含んでいる。その場合でも、当該モノマーを完全に除去しきることなく工程(1B)の重合反応に供して高分子化合物Bを得た後、工程(2B)のゼオライト接触工程に供することにより、高分子化合物B中の水酸基含有不純物を効率的に低減することができる。
【0148】
式(M-1)で表される化合物として、例えば、式(J-22)で表される化合物が挙げられ、以下にその製造方法を説明する。
式(J-22)で表される化合物は、例えば、式(S1)で表される化合物及び式(S2)で表される化合物を鈴木カップリング反応により製造することができる。この際に、副生成物として式(J-22-2)で表される化合物が生成する。
【0149】
[式中、
Rは前記と同じ意味を表す。
は、-B(OH)2、ボロン酸エステル残基、又は-BF3を表す。Tは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、又はセシウム原子を表す。複数存在するMは、同一でも異なっていてもよい。]
【0150】
式(M-3)で表される化合物として、例えば、式(N-5)で表される化合物が挙げられ、以下にその製造方法を説明する。
式(N-5)で表される化合物は、例えば、式(S3)で表される化合物及び式(S4)で表される化合物を鈴木カップリング反応により製造することができる。この際に、副生成物として式(N-5-2)で表される化合物が生成する。
【0151】
[式中、
Rは前記と同じ意味を表す。
は、-B(OH)2、ボロン酸エステル残基、又は-BF3を表す。Tは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、又はセシウム原子を表す。]
及びMで示されるボロン酸エステル残基は、上記のZb1及びZb2で示されるボロン酸エステル残基の中から選択することができる。
【0152】
工程(2B)
工程(2B)は、工程(1B)で得られた高分子化合物Bと溶媒とを含む溶液と、シリカ/アルミナ比が1以上10以下のゼオライトを接触させる工程(ゼオライト接触工程)である。当該ゼオライト接触工程は、前記「高分子化合物Aの製造方法」における「工程(2A)」のゼオライト接触工程と同様にして実施することができる。
【0153】
高分子化合物Bを上記のゼオライトと接触させることにより、水酸基含有不純物を吸着させてより効率的に低減することができる。また、高分子化合物Bが吸着されないためその収率が高いという利点がある。
【0154】
その他の工程
本発明の高分子化合物Bの製造方法において、必要に応じて分液、脱水、再結晶、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、ソックスレー洗浄等の通常の方法にて精製してもよい。具体的には、前記「高分子化合物Aの製造方法」における「その他の工程」と同様にして実施することができる。
【0155】
4.発光素子及びその製造方法
本実施形態の発光素子は、陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた、前記製造方法によって製造された高分子化合物(特に、高分子化合物A及びB、以下同じ。)を用いて形成される有機層と、を有する発光素子である。有機層としては、例えば、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。これらの少なくとも1つの層が前記高分子化合物を用いて形成される。
【0156】
発光素子は、具体的には、前記製造方法によって製造された高分子化合物と、前記高分子化合物とは異なる、発光材料、電荷輸送材料及び電荷注入材料からなる群から選ばれる少なくとも1種と、溶媒とを含む組成物を用いて陽極と陰極の間に有機層を形成することにより製造することができる。
【0157】
前記高分子化合物は、架橋反応により架橋構造を形成するベンゾシクロブテン、アルケン、エポキシ又はオキセタン等の化学構造を有する基(以下、架橋基と称する)を含んでいてもよく、架橋基を有する高分子化合物を用いて有機層を形成した後、架橋基を架橋させることにより、有機層を不溶化させることができる。このように有機層を不溶化させることによって、発光素子において、有機層に隣接する層の形成時に使用される溶媒に有機層の材料が溶解する場合であっても、該材料が溶解することを回避できる。
【0158】
本実施形態の発光素子が備える有機層は、架橋による不溶化等の工程を経ずに形成される高分子化合物を含有する有機層であってもよい。
【0159】
<層構成>
前記高分子化合物を用いて形成される有機層は、通常、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層及び電子注入層からなる群から選ばれる1種以上の層であり、好ましくは、正孔輸送層である。これらの層は、各々、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を含む。これらの層は、各々、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を、溶媒に溶解させた組成物(インク)を調製して用い、湿式法を用いて形成することができる。
【0160】
発光素子は、陽極と陰極の間に発光層を有する。本実施形態の発光素子は、正孔注入性及び正孔輸送性の観点からは、陽極と発光層との間に、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも1層を有することが好ましく、電子注入性及び電子輸送性の観点からは、陰極と発光層の間に、電子注入層及び電子輸送層の少なくとも1層を有することが好ましい。
【0161】
正孔輸送層、電子輸送層、発光層、正孔注入層及び電子注入層の材料としては、前記高分子化合物の他、各々、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、正孔注入材料及び電子注入材料等が挙げられる。
【0162】
正孔輸送層の材料、電子輸送層の材料及び発光層の材料は、発光素子の作製において、各々、正孔輸送層、電子輸送層及び発光層に隣接する層の形成時に使用される溶媒に溶解する場合、該溶媒に該材料が溶解することを回避するために、該材料が架橋基を有することが好ましい。架橋基を有する材料を用いて各層を形成した後、該架橋基を架橋させることにより、該層を不溶化させることができる。
【0163】
本実施形態の発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層等の各層の形成方法として、高分子化合物を用いる場合、例えば、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられ、低分子化合物を用いる場合、例えば、粉末からの真空蒸着法、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。積層する層の順番、数及び厚さは、発光効率及び輝度寿命を勘案して調整する。
【0164】
<基板/電極>
発光素子における基板は、電極を形成することができ、かつ、有機層を形成する際に化学的に変化しない基板であればよく、例えば、ガラス、プラスチック、シリコン等の材料からなる基板である。不透明な基板の場合には、基板から最も遠くにある電極が透明又は半透明であることが好ましい。
陽極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物、半透明の金属が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ;インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等の導電性化合物;銀とパラジウムと銅との複合体(APC);NESA、金、白金、銀、銅である。
陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム等の金属;それらのうち2種以上の合金;それらのうち1種以上と、銀、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金;並びに、グラファイト及びグラファイト層間化合物が挙げられる。合金としては、例えば、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、カルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
陽極及び陰極は、各々、2層以上の積層構造としてもよい。
【0165】
<用途>
本実施形態の発光素子は、例えば、コンピュータ、テレビ、携帯端末等のディスプレイ、照明に用いることができる。
【実施例
【0166】
以下、本発明を更に詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定され
るものではない。
【0167】
<分子量分析>
高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により求めた。分析条件は以下の通りである。
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
カラム:PLgel 10μm MIXED-B(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
流量:0.5mL/分
検出波長:228nm
【0168】
<合成例1>
【0169】
(式中、nは構成単位数を表す。)
【0170】
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物M-1(13.3mmol)、化合物M-2(11.0mmol)、化合物M-3(2.7mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(0.07mmol)及びトルエン(168g)を加えた。その後、80℃に加熱した。その後、そこへ、20質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(42g)を加え、6時間撹拌した。その後、そこへ、フェニルボロン酸(0.67g)を加え、更に6時間撹拌した。
その後、室温(25℃であり、以下同様。)まで冷却し、得られた反応液をトルエン(807g)で希釈し、イオン交換水(300g)で2回洗浄した。
得られたトルエン溶液を1時間還流させて共沸脱水した。こうして、1質量%トルエン溶液として、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1を得た。
【0171】
<実施例1>
合成例1で得た高分子化合物P-1のトルエン溶液(20.0g)にゼオライトA-4(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2、A型、粒子径150μm)を加え、22℃で1時間撹拌した。こうして得られた懸濁液を濾過し、濾液をメタノールに注いだ。析出物を濾過して乾燥させ、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Aを得た。
【0172】
<実施例2>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトF-9(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2.5、X型、粒子径150μm)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Bを得た。
【0173】
<実施例3>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-320NAA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比5.5、Y型、粒子径6~8μm)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Cを得た。
【0174】
<実施例4>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-341NHA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比7、Y型、粒子径3~5μm)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Dを得た。
【0175】
<実施例5>
合成例1で得た高分子化合物P-1のトルエン溶液(300.0g)を、ゼオライトA-4(30.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2、A型、粒子径150μm)を充填したカラムに通液して精製した。カラム精製は22℃で実施した。こうして得られた高分子化合物のトルエン溶液をメタノールに注いだ。析出物を濾過して乾燥させ、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Eを得た。
【0176】
<実施例6>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトF-9(30.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2.5、X型、粒子径150μm)とした以外は、実施例5と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Fを得た。
【0177】
<比較例1>
合成例1で得た高分子化合物P-1のトルエン溶液(20.0g)をメタノールに注いだ。析出物を濾過して乾燥させ、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Gを得た。
【0178】
<比較例2>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-720KOA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比18、フェリエライト型、粒子径20μm)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Hを得た。
【0179】
<比較例3>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-690HOA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比240、モルデナイト型、粒子径12μm)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Iを得た。
【0180】
<比較例4>
ゼオライトA-4に代えて、アルミナ(2.0g、メルク製、酸化アルミニウム90)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Jを得た。
【0181】
<比較例5>
ゼオライトA-4に代えて、シリカゲル(2.0g、ナカライテスク製、シリカゲル60)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Kを得た。
【0182】
<比較例6>
ゼオライトA-4に代えて、活性白土(2.0g、水澤化学工業製、ガレオンアースV2)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Lを得た。
【0183】
<比較例7>
ゼオライトA-4に代えて、ベントナイト(2.0g、富士フイルム和光純薬製)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Mを得た。
【0184】
<比較例8>
ゼオライトA-4に代えて、タルク(2.0g、富士フイルム和光純薬製)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Nを得た。
【0185】
<比較例9>
ゼオライトA-4に代えて、カオリン(2.0g、富士フイルム和光純薬製)とした以外は、実施例1と同様にして、Mw=8.5×104の高分子化合物P-1Oを得た。
【0186】
<合成例2>
【0187】
(式中、nは構成単位数を表す。)
【0188】
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物M-4(10.1mmol)、化合物M-5(8.3mmol)、化合物M-6(1.0mmol)、化合物M-7(1.0mmol)、ジクロロビス(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル)パラジウム(0.05mmol)及びトルエン(168g)を加えた。その後、80℃に加熱した。その後、そこへ、20質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(42g)を加え、6時間撹拌した。その後、そこへ、フェニルボロン酸(0.55g)を加え、更に6時間撹拌した。
その後、室温まで冷却し、得られた反応液をトルエン(807g)で希釈し、イオン交換水(300g)で2回洗浄した。
得られたトルエン溶液を1時間還流させて共沸脱水した。こうして、1質量%トルエン溶液として、Mw=1.4×105の高分子化合物P-2を得た。
【0189】
<実施例7>
合成例2で得た高分子化合物P-2のトルエン溶液(20.0g)にゼオライトA-4(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2、A型、粒子径150μm)を加え、22℃で1時間撹拌した。こうして得られた懸濁液を濾過し、濾液をメタノールに注いだ。析出物を濾過して乾燥させ、Mw=1.4×105の高分子化合物P-2Aを得た。
【0190】
<実施例8>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトF-9(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2.5、X型、粒子径150μm)とした以外は、実施例7と同様にして、Mw=1.4×105の高分子化合物P-2Bを得た。
【0191】
<実施例9>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-320NAA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比5.5、Y型、粒子径6~8μm)とした以外は、実施例7と同様にして、Mw=1.4×105の高分子化合物P-2Cを得た。
【0192】
<実施例10>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-341NHA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比7、Y型、粒子径3~5μm)とした以外は、実施例7と同様にして、Mw=1.4×105の高分子化合物P-2Dを得た。
【0193】
<実施例11>
合成例2で得た高分子化合物P-2のトルエン溶液(300.0g)を、ゼオライトA-4(30.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2、A型、粒子径150μm)を充填したカラムに通液して精製した。カラム精製は22℃で実施した。こうして得られた高分子化合物のトルエン溶液をメタノールに注いだ。析出物を濾過して乾燥させ、Mw=1.4×105の高分子化合物P-2Eを得た。
【0194】
<実施例12>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトF-9(30.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2.5、X型、粒子径150μm)とした以外は、実施例11と同様にして、Mw=1.4×105の高分子化合物P-2Fを得た。
【0195】
<比較例10>
合成例2で得た高分子化合物P-2のトルエン溶液(20.0g)をメタノールに注いだ。析出物を濾過して乾燥させ、Mw=1.4×105の高分子化合物P-2Gを得た。
【0196】
<比較例11>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-720KOA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比18、フェリエライト型、粒子径20μm)とした以外は、実施例7と同様にして、Mw=1.4×105の高分子化合物P-2Hを得た。
【0197】
<比較例12>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-690HOA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比240、モルデナイト型、粒子径12μm)とした以外は、実施例7と同様にして、Mw=1.4×105の高分子化合物P-2Iを得た。
【0198】
<合成例3>
【0199】
(式中、nは構成単位数を表す。)
【0200】
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物M-8(11.0mmol)、化合物M-9(10.1mmol)、化合物M-10(1.1mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(0.05mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(0.36g)及びトルエン(168g)を加えた。その後、80℃に加熱した。その後、そこへ、20質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(42g)を加え、6時間撹拌した。その後、そこへ、フェニルボロン酸(0.55g)を加え、更に6時間撹拌した。
その後、室温まで冷却し、得られた反応液をトルエン(807g)で希釈し、イオン交換水(300g)で2回洗浄した。
得られたトルエン溶液を1時間還流させて共沸脱水した。こうして、1質量%トルエン溶液として、Mw=3.3×105の高分子化合物P-3を得た。
【0201】
<実施例13>
合成例3で得た高分子化合物P-3のトルエン溶液(20.0g)にゼオライトA-4(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2、A型、粒子径150μm)を加え、22℃で1時間撹拌した。こうして得られた懸濁液を濾過し、濾液をメタノールに注いだ。析出物を濾過して乾燥させ、Mw=3.3×105の高分子化合物P-3Aを得た。
【0202】
<実施例14>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトF-9(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2.5、X型、粒子径150μm)とした以外は、実施例13と同様にして、Mw=3.3×105の高分子化合物P-3Bを得た。
【0203】
<実施例15>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-320NAA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比5.5、Y型、粒子径6~8μm)とした以外は、実施例13と同様にして、Mw=3.3×105の高分子化合物P-3Cを得た。
【0204】
<実施例16>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-341NHA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比7、Y型、粒子径3~5μm)とした以外は、実施例13と同様にして、Mw=3.3×105の高分子化合物P-3Dを得た。
【0205】
<実施例17>
合成例3で得た高分子化合物P-3のトルエン溶液(300.0g)を、ゼオライトA-4(30.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2、A型、粒子径150μm)を充填したカラムに通液して精製した。カラム精製は22℃で実施した。こうして得られた高分子化合物のトルエン溶液をメタノールに注いだ。析出物を濾過して乾燥させ、Mw=3.3×105の高分子化合物P-3Eを得た。
【0206】
<実施例18>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトF-9(30.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2.5、X型、粒子径150μm)とした以外は、実施例11と同様にして、Mw=3.3×105の高分子化合物P-3Fを得た。
【0207】
<比較例13>
合成例3で得た高分子化合物P-3のトルエン溶液(20.0g)をメタノールに注いだ。析出物を濾過して乾燥させ、Mw=3.3×105の高分子化合物P-3Gを得た。
【0208】
<比較例14>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-720KOA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比18、フェリエライト型、粒子径20μm)とした以外は、実施例13と同様にして、Mw=3.3×105の高分子化合物P-3Hを得た。
【0209】
<比較例15>
ゼオライトA-4に代えて、ゼオライトHS-690HOA(2.0g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比240、モルデナイト型、粒子径12μm)とした以外は、実施例13と同様にして、Mw=3.3×105の高分子化合物P-3Iを得た。
【0210】
<合成例4>
【0211】
【0212】
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物M-8(60mmol)、化合物M-11(120mmol)、エタノール(2L)、トルエン(2L)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(6mmol)を加える。その後、24時間還流させる。
その後、室温まで冷却し、得られた反応液を、1N塩酸水溶液(500mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1L)で洗浄する。
得られたトルエン溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物M-12及び化合物M-13の混合物を得る。
上記のようにジボロン酸化合物と芳香族ハロゲン化物を反応させると、鈴木カップリング反応が2回進行したジカップリング化合物、及び、副生成物として、鈴木カップリング反応が1回とボロン酸部分のプロトデボロネーションが進行したモノカップリング化合物が生成することが知られている(European Journal of Organic Chemistry, 1998年, 4巻, 701ページ)。
【0213】
<合成例5>
【0214】
(式中、nは構成単位数を表す。)
【0215】
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物M-12(10mmol、但し、化合物M-13を0.1モル%含む)、化合物M-14(10mmol)、tert-ブトキシナトリウム(50mmol)、トルエン(40g)を加える。その後、60℃まで加熱する(溶液A)。
別のフラスコに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.1mmol)、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(1mmol)、トルエン(10g)を加える。このフラスコ内の雰囲気を窒素置換し、この溶液を、60℃に加熱する(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶解Bを添加し、3時間加熱還流させる。その後、ブロモベンゼン(20mmol)を加え、更に2時間加熱還流させる。その後、反応液を冷却し、トルエン(30g)を添加してエタノール(200g)に滴下し、粗ポリマーを得る。
この粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンを滴下して析出させる。析出したポリマーを分取し、トルエンに再溶解させ、希塩酸水にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿する。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、高分子化合物P-4及び高分子化合物P-5の混合物を得る。
【0216】
<実施例19>
高分子化合物P-4及び高分子化合物P-5は、高分子化合物P-3と同様のフルオレンとアミンとの共重合体である。そのため、ゼオライトと接触させることにより、水酸基含有不純物を除去できる。
合成例5で得られる高分子化合物P-4及び高分子化合物P-5の混合物のトルエン溶液(20g)にゼオライトA-4(2g、富士フイルム和光純薬製、シリカ/アルミナ比2、A型、粒子径150μm)を加え、22℃で1時間撹拌する。こうして得られる懸濁液を濾過し、濾液をメタノールに注ぐ。析出物を濾過して乾燥させると、水酸基の含有量の低い高分子化合物P-4Aが得られる。
【0217】
<高分子化合物中に含まれる水酸基の含有量の測定>
高分子化合物(20mg)を、THF-d8(0.75mL)に溶解させ、プロトンNMRを測定することで、高分子化合物中の水酸基の量を測定した。なお、NMRの測定には、核磁気共鳴装置(BRUKER製、AV-600)を用いた。
高分子化合物P-1では、水酸基のプロトンを直接測定することができなかったため、水酸基を有する構成単位を下記の構成単位と推定するとともに、水酸基が結合している炭素原子に対するオルト位の炭素原子に結合しているプロトンのピークから、水酸基の含有量を定量した。表1に、そのケミカルシフト値を示す。
【0218】
【0219】
高分子化合物P-2、P-3では、水酸基のプロトンを直接測定することで水酸基の含有量を測定した。具体的には、プロトンNMRのスペクトルと、高分子化合物の合成に用いた原料モノマーの構造から、高分子化合物中の水酸基を有する構成単位を下記の構成単位(M-4’及びM-8’)と同定するとともに、その含有量を定量した。表1に、そのケミカルシフト値を示す。
【0220】
【0221】
【表1】
【0222】
上記実施例及び比較例で得られた高分子化合物の水酸基の含有量の結果を以下に示す。
【0223】
【表2】
【0224】
上記表2に示すように、本発明の高分子化合物の製造方法を採用する実施例1~18では、高分子化合物の水酸基の含有量が極めて少ないことが明らかとなった(検出限界未満)。一方、比較例1~15では、高分子化合物の水酸基の含有量は少なくなかった。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本発明の高分子化合物の製造方法を採用することにより、鈴木カップリング反応を利用して製造された高分子化合物中に含まれる水酸基含有不純物を効率的に低減させることができる。そのため、当該製造方法で製造された高分子化合物は、有機EL素子の構成材料として好適に用いられる。