IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-17
(45)【発行日】2024-05-27
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びその外装材
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/12 20060101AFI20240520BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240520BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20240520BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240520BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C08L25/12
C08L77/00
C08L51/04
E04F13/08 A
E04F15/02 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022559722
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 KR2022001435
(87)【国際公開番号】W WO2022186484
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0027130
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】デウン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ワンレ・ジェ
(72)【発明者】
【氏名】デウン・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンミン・ジャン
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-194034(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0057601(KR,A)
【文献】米国特許第06696165(US,B1)
【文献】特開平08-311353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/00-25/18
C08L 77/00-77/12
C08L 51/00-51/10
E04F 13/08
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A-1)DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量10~50重量%と、
B-1)重量平均分子量が100,000~160,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~30重量%と、
B-2)重量平均分子量が160,000超~200,000g/mol以下である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体20~70重量%と、
C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂0.5~10重量%とを含み、
前記A-1)グラフト共重合体はA-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれ、
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、コアが、アクリレートゴムであり、シェルが、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物からなり、
前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、コアが、アクリレートゴムであり、シェルが、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物からなることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物は、毛細管粘度測定装置を用いて測定温度190℃、せん断速度10~2000(1/秒)で測定した溶融せん断粘度が、せん断速度2000(1/秒)で310Pa・s以下であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物は、回転型レオメータにより、測定温度190℃で歪み0.1%、周波数0.1~500(rad/秒)で測定した貯蔵モジュラス(G’)が、周波数40(rad/秒)で170,000Pa以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記A-1)及びA-2)グラフト共重合体の総重量に対して、前記A-1)グラフト共重合体は10~50重量%、及び前記A-2)グラフト共重合体は50~90重量%を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%からなり、前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%からなり、
前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなり、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体及びA-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体9~35重量%、及びA-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体16~41重量%を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体及びC)ポリアミド樹脂の合計100重量部に対して、無機顔料を0.1~5重量部含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D648に準拠して18.5kg/cmの荷重で測定した熱変形温度が83℃以上であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は10~30重量%含まれ、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は30~60重量%含まれることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
A-1)DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量34~36重量%と、
B-1)重量平均分子量が100,000~160,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~20重量%と、
B-2)重量平均分子量が160,000超~200,000g/mol以下である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体38~58重量%と、
C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂4~8重量%とを含み、
前記A-1)グラフト共重合体はA-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれ、
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、コアがDLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴム40~60重量%であり、シェルが芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%からなり、前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、コアがDLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴム40~60重量%であり、シェルが芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%からなり、
前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなり、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、外装材。
【請求項12】
前記外装材は、サイディング(siding)材料、屋根(roofing)材料またはデッキング(decking)材料であることを特徴とする、請求項11に記載の外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年03月02日付の韓国特許出願第10-2021-0027130号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその外装材に関し、より詳細には、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されると共に、表面の質感の向上により柔らかさ、高級感及び自然さなどの感性品質に優れているだけでなく、粘弾性特性の向上により共押出製品の加工性及び接着力が格段に良いので表面外観不良が大きく改善された低光沢熱可塑性樹脂組成物及びその外装材に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリレート化合物-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、「ASA樹脂」という)は、耐候性、耐老化性、耐化学性、剛性、耐衝撃性及び加工性をすべて備えており、用途が多様であるので、自動車、雑貨及び建材分野などで広範囲に用いられる。
【0004】
外装材分野においてASA樹脂の場合、人為的なプラスチック感から脱した感性樹脂に対するニーズを満たし得る低光沢ASA樹脂に対する開発の必要性が増大している。
【0005】
前記低光沢ASA樹脂として従来にはナイロンのような結晶性樹脂を用いて低い光沢は実現したが、外装材の用途としてPVCと共押出加工する際に、粘弾性に差が存在し、単層押出よりも不良な外観が発生するという限界があった。
【0006】
従来のASA樹脂の場合、基本的に200~240℃の加工温度で押出及び射出加工が行われる反面、PVC樹脂の場合には、200℃以上の高温でPVC樹脂が容易に炭化してしまう問題により、200℃未満の低い温度でPVC樹脂の共押出加工が行われなければならない制限がある。しかし、200℃未満の低い温度ではASA樹脂の粘度が急激に増加するので、PVC樹脂との共押出時に、ASA樹脂層がPVC樹脂層上にきちんと覆われないことによって発生するフローマーク(flow mark)や、部分的にASA樹脂が覆われないピーリング(peeling)などの表面不良が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0065944号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、従来のASA樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上であると共に、表面の質感の向上により柔らかさ、高級感及び自然さなどの感性品質に優れているだけでなく、粘弾性特性の向上により共押出製品の加工性及び接着力が格段に良いので表面外観不良が大きく改善された低光沢熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明の目的は、前記の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品を提供することである。
【0010】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、A-1)DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量10~50重量%と、
B-1)重量平均分子量が100,000~160,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~30重量%と、
B-2)重量平均分子量が160,000超~200,000g/mol以下である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体20~70重量%と、
C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂0.5~10重量%とを含み、
前記A-1)グラフト共重合体はA-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0012】
前記熱可塑性樹脂組成物は、毛細管粘度測定装置を用いて測定温度190℃、せん断速度10~2000(1/秒)で測定した溶融せん断粘度が、せん断速度2000(1/秒)で310Pa・s以下であるものであってもよい。
【0013】
前記熱可塑性樹脂組成物は、回転型レオメータにより、測定温度190℃で歪み0.1%、周波数0.1~500(rad/秒)で測定した貯蔵モジュラス(G’)が、周波数40(rad/秒)で170,000Pa以上であるものであってもよい。
【0014】
前記A-1)及びA-2)グラフト共重合体の総重量に対して、前記A-1)グラフト共重合体は10~50重量%、及び前記A-2)グラフト共重合体は50~90重量%を含むものであってもよい。
【0015】
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、
前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなり、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなるものであってもよい。
【0016】
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体及びA-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、前記熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体9~35重量%、及びA-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体16~41重量%を含むものであってもよい。
【0017】
前記熱可塑性樹脂組成物は、B-1)重量平均分子量が100,000~160,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を0重量%以上、30重量%以下含むものであってもよい。
【0018】
前記熱可塑性樹脂組成物は、その総100重量部に対して、無機顔料を0.1~5重量部含むものであってもよい。
【0019】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D648に準拠して18.5kg/cmの荷重で測定した熱変形温度が89℃以下であるものであってもよい。
【0020】
前記熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は10~30重量%含まれ、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は30~60重量%含まれるものであってもよい。
【0021】
また、本発明は、
A-1)DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量34~36重量%と、
B-1)重量平均分子量が100,000~160,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~20重量%と、
B-2)重量平均分子量が160,000超~200,000g/mol以下である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体38~58重量%と、
C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂4~8重量%とを含み、
前記A-1)グラフト共重合体はA-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれ、
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、
前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなり、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、前述した熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする外装材を提供する。
【0023】
前記外装材は、サイディング(siding)材料、屋根(roofing)材料、またはデッキング(decking)材料であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来のASA樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上であると共に、均一でかつ低い光沢、及び表面の質感の向上により、柔らかさ、高級感及び自然さなどの感性品質に優れているだけでなく、粘弾性特性の向上により、共押出製品の加工性及び接着力が格段に良いので表面外観不良が大きく改善された低光沢熱可塑性樹脂組成物及びその外装材を提供する効果がある。
【0025】
したがって、本発明に係る前記熱可塑性樹脂組成物及び成形品は、これを必要とするサイディング(siding)材料、屋根(roofing)材料、またはデッキング(decking)材料の分野に広く用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物及びその外装材を詳細に説明する。
【0027】
本発明者ら、所定のスチレン系樹脂の組み合わせに、特定の溶融温度(Tm)を有するポリアミドを所定の含量で添加する場合、従来のASA樹脂組成物と比較して、機械的物性、耐候性及び加工性などが低下しないながらも、粘弾性特性を改善して共押出製品の表面外観が改善されることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、A-1)DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量10~50重量%と;B-1)重量平均分子量が100,000~160,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~30重量%と;B-2)重量平均分子量が160,000超~200,000g/mol以下である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体20~70重量%と;C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂0.5~10重量%とを含み、前記A-1)グラフト共重合体はA-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれることを特徴とし、このような場合、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも、耐候性に優れ、光沢が低く、粘弾性特性の向上により共押出製品の加工性及び接着力が格段に良いので表面外観不良が改善された熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0029】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、A-1)DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量34~36重量%と;B-1)重量平均分子量が100,000~160,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体10~30重量%と;B-2)重量平均分子量が160,000超~200,000g/mol以下である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体38~58重量%と;C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂4~8重量%とを含み、前記A-1)グラフト共重合体はA-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれ、前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなり、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含むことを特徴とし、このような場合、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも、耐候性に優れ、光沢が低く、粘弾性特性の向上により共押出製品の加工性及び接着力が格段に良いので表面外観不良が著しく改善された熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0030】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0031】
A-1)DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記A-1)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、好ましくはDLS平均粒径が0.04~0.18μmであってもよく、より好ましくは0.05~0.2μm、さらに好ましくは0.08~0.14μm、より一層好ましくは0.08~0.12μmであり、この範囲内で、最終製品に、優れた耐候性、着色性、衝撃強度、耐化学性及び表面光沢特性を付与することができる。
【0032】
本発明において、DLS平均粒径は、動的光散乱法(dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳細には、Nicomp380装備(製品名、製造社:PSS)を用いてガウス(Gaussian)モードでインテンシティ(intensity)値で測定することができる。このとき、具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを蒸留水で1,000~5,000倍希釈して準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/インテンシティ(Intensity) 300KHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、チャンネル幅(channel width) 10μ秒として測定することができる。
【0033】
また、本発明において、DLS平均粒径は、動的光散乱法により測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には散乱強度平均粒径を意味することができる。
【0034】
本発明において、TEM平均粒径は、TEM(透過型電子顕微鏡:transmission electron microscope)分析を用いて測定することができ、具体的には、TEMの高倍率イメージ上の粒子サイズを数値的に測定し、平均値として求めることができる。このとき、具体的な測定例は、次の通りである。
-試料(sample)の準備:押出混練機で製造された熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物
-試料の前処理:トリミング(Trimming)(23℃)→ヒドラジン処理(72℃、5日)→セクショニング(Sectioning)(-120℃)→OsO 揮発染色(vapor staining) 2時間
-分析機器:TEM(Jeol、JEM-1400)
-分析条件:Acc.Volt 120KV、SPOT Size 1(×10K、×25K、×50K)
-サイズ(平均粒径)の測定:直径の大きさが上位10%である直径の平均
【0035】
前記A-1)グラフト共重合体は、前記A-1)及びA-2)グラフト共重合体の総重量に対して、一例として10~50重量%、好ましくは20~50重量%、より好ましくは30~50重量%であり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0036】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として、前記アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなることができ、好ましくは、前記アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、より好ましくは、前記アクリレートゴム47~57重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0037】
本発明において、ある化合物を含んでなる重合体とは、その化合物を含んで重合された重合体を意味するもので、重合された重合体内の単位体がその化合物に由来する。
【0038】
本発明において、アクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が2~8個であるアルキルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、アルキル基の炭素数が4~8個であるアルキルアクリレートであり、さらに好ましくは、ブチルアクリレートまたはエチルヘキシルアクリレートであってもよい。
【0039】
本発明において、芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-tert-ブチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはスチレンである。
【0040】
本発明において、ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0041】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として乳化重合により製造されてもよく、この場合、耐化学性、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0042】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0043】
A-2)DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記A-2)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、好ましくはDLS平均粒径が0.33~0.5μmであってもよく、より好ましくは0.38~0.5μmであってもよく、さらに好ましくは0.4~0.5μmであるが、この範囲内で、耐候性が良好でありながらも、流動性、引張強度及び衝撃強度などのような機械的物性に優れるという効果がある。
【0044】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として、前記A-1)及びA-2)グラフト共重合体の総重量に対して50~90重量%、好ましくは50~80重量%、より好ましくは50~70重量%であり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0045】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として、前記アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、より好ましくは、前記アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0046】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として乳化重合により製造されてもよく、この場合、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0047】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0048】
A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の配合
前記A-1)DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と、A-2)DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体との混合である場合、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上であると共に、粘弾性特性を改善して共押出製品の表面外観が改善された感じを与えるので、品質信頼性に優れるという利点がある。
【0049】
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と、前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体との重量比(A-1:A-2)は、好ましくは1:0.5~3、より好ましくは1:1~3であり、具体例として1:1.1~2.9、より好ましい例として1:1.11~2.8であり、他の具体例として1:1.11~2.7、さらに好ましい例として1:1.1~2.6であってもよく、この範囲内で、溶融せん断粘度及び貯蔵弾性率が適切であるので、加工に有利であるという効果がある。
【0050】
B)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体
本発明において、B)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、B-1)重量平均分子量が100,000~160,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体;及びB-2)重量平均分子量が160,000g/mol超~200,000g/mol以下である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体;からなる群から選択された1種以上を含む前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の単独使用であり、より好ましくは、前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体とB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体との混合使用であり、この場合に、重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を使用することによって、耐熱度、耐化学性、衝撃強度、引張強度、及び加工性に優れるという効果がある。
【0051】
前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して30~70重量%、より好ましくは30~60重量%、さらに好ましくは35~60重量%含まれ、この場合に、耐熱度、耐化学性、衝撃強度、引張強度、及び加工性に優れるという効果がある。
【0052】
前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して0~30重量%、より好ましくは0~25重量%、さらに好ましくは0~20重量%、具体的な例としては1~30重量%、より具体的な例としては10~25重量%、さらに具体的な例としては15~20重量%含まれ、この場合に、耐熱度、耐化学性、衝撃強度、引張強度、及び加工性に優れるという効果がある。
【0053】
本発明において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を通じて、標準PS(標準ポリスチレン:standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流速:0.3ml/min、試料の濃度:20mg/ml、注入量:5μl、カラムモデル:1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、装備名:Agilent 1200シリーズシステム、屈折率検出器(Refractive index detector):Agilent G1362 RID、RI温度:35℃、データの処理:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw及びPDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0054】
前記B-1)及びB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなり、好ましくは、芳香族ビニル化合物67~80重量%及びビニルシアン化合物20~33重量%を含んでなり、より好ましくは、芳香族ビニル化合物70~75重量%及びビニルシアン化合物25~30重量%を含んでなり、この範囲内で、耐化学性、衝撃強度、引張強度、及び加工性に優れるという効果がある。
【0055】
前記B-1)及びB-2)芳香族ビニル重合体は、一例として、懸濁重合、乳化重合、溶液重合または塊状重合で製造されてもよく、この場合、耐熱性及び流動性などに優れるという効果がある。
【0056】
前記懸濁重合、乳化重合、溶液重合及び塊状重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる溶液重合及び塊状重合方法による場合、特に制限されない。
【0057】
本発明において、前述したB-1)及びB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体以外に、耐熱スチレン系樹脂、またはメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の使用は排除することが、粘弾性特性を十分に実現できるので好ましい。
【0058】
A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の配合
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の総含量10~50重量%、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~90重量%を含むことができ、より好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の総含量20~50重量%、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~80重量%を含み、さらに好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の総含量30~50重量%、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~70重量%を含み、より一層好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の総含量30~45重量%、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体55~70重量%を含み、最も好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の総含量30~50重量%、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~70重量%を含むが、この範囲内で、機械的物性及び加工性などが低下しないながらも耐候性に優れ、光沢が低く、粘弾性特性を改善して共押出製品の表面外観が改善された感じを与えるという効果がある。
【0059】
ポリアミド
本発明のポリアミド樹脂は、熱可塑性樹脂組成物(A-1)~C))を基準として、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~10重量%、さらに好ましくは3~8重量%、最も好ましくは5~7重量%であり、この範囲内で、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも耐候性に優れ、光沢が低く、粘弾性特性の改善により表面外観が改善された感じを与える熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0060】
前記ポリアミド樹脂は、好ましくは、溶融温度(Tm)が250℃以上であり、具体例として250~280℃、好ましい例として250~270℃であり、この範囲内で、特に光沢が低く、表面光沢が均一であり、表面粗さの値が低いので感性的に柔らかい感じを与えるという利点がある。
【0061】
本発明において、溶融温度(Tm、Melting Temperature)は、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法により測定することができ、具体的に動的走査熱量計(Dynamic Scanning Calorimeter;DSC)方式で測定することができる。
【0062】
前記ポリアミド樹脂は、好ましくは、相対粘度(硫酸96%溶液)が2.8以下であり、具体例として2.0~2.8、好ましい例として2.2~2.5であり、この範囲内で、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも耐候性に優れ、光沢が低く、表面光沢が均一であり、表面粗さの値が低いので感性的に柔らかい感じを与える熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0063】
本発明において、%は、別途に定義しない限り、重量%を意味する。
【0064】
本発明において、ポリアミド樹脂は、本発明に係る溶融温度を満たす場合、その種類には特に制限がなく、具体例として、ポリアミド6、ポリアミド66(PA6.6)、ポリアミド46、ポリアミドll、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD6、ポリアミド6/MXD6、ポリアミド66/MXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド9T、ポリアミド9I、ポリアミド6/9T、ポリアミド6/9I、ポリアミド66/9T、ポリアミド6/12/9T、ポリアミド66/12/9T、ポリアミド6/12/9I及びポリアミド66/12/6Iからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド12及びポリアミド66からなる群から選択された1種以上である。
【0065】
前記ポリアミド樹脂の製造方法は、本発明の属する技術分野で通常行われる重合方法であれば、特に制限されず、本発明に係るポリアミドの定義に符合する場合、商業的に購入して用いても構わない。
【0066】
熱可塑性樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、前記熱可塑性樹脂組成物の総100重量部に対して無機顔料を0.1~5重量部、好ましくは0.1~2重量部、より好ましくは0.1~1重量部、さらに好ましくは0.3~0.6重量部含むことができ、この範囲内で、耐候性及び隠蔽力に優れるという効果がある。
【0067】
前記無機顔料は、一例として、Ti、Pb、Fe、Crなどの金属化合物及びカーボンブラックからなる群から選択された1種以上であってもよく、前記金属化合物は、好ましくは、金属酸化物または金属水酸化物であり、前記無機顔料の具体例としては、白色無機顔料としてTiO、酸化亜鉛(Zinc Oxide);黒色無機顔料としてカーボンブラック、グラファイト;赤色無機顔料としてIOR、カドミウムレッド(Cadmium Red)、レッドリード(Red Lead)(Pb);黄色無機顔料としてクロムイエロー(Chrome Yellow)、ジンククロメート(Zinc Chromate)、カドミウムイエロー(Cadmium Y.);及び緑色無機顔料としてクロムグリーン(Chrome Green)、ジンクグリーン(Zinc Green)からなる群から選択された1種以上であってもよく、最も好ましい無機顔料は、白色無機顔料であるTiOであってもよい。
【0068】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D648に準拠して18.5kg/cmの荷重で測定した熱変形温度(HDT)が83℃以上、より好ましくは83.6℃以上であってもよく、具体例としては83~86℃であってもよく、この範囲内で、耐熱特性、共押出性などに優れるという効果がある。
【0069】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D1238に準拠した流動指数(MI)(220℃、荷重10kg)が4g/10min以上であり、好ましくは5~10g/10minであり、好ましい例として5~8g/10minであり、より好ましい例として5~7.5g/10minであり、この範囲内で、加工性に優れ、共押出表面の外観品質に優れるという効果がある。
【0070】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D638に準拠した引張強度(1/8inch)が460kg/cm以上であり、好ましくは460~510kg/cmであり、具体例として480~510kg/cmであってもよく、この範囲内で、サイディング、屋根及びデッキング材料に適するという利点がある。
【0071】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D256に準拠したアイゾット衝撃強度(1/4inch)が6kg・cm/cm以上であり、好ましくは6~10kg・cm/cmであり、具体例として6~8kg・cm/cmであってもよく、この範囲内で、サイディング、屋根及びデッキング材料に適するという利点がある。
【0072】
前記熱可塑性樹脂組成物は、毛細管粘度測定装置を用いて測定温度190℃、せん断速度10~2000(1/秒)で測定した溶融せん断粘度が、せん断速度2000(1/秒)で310Pa・s以下、好ましくは297Pa・s以下であってもよく、具体例としては268~297Pa・sであってもよく、この範囲内で、サイディング、屋根及びデッキング材料に適するという利点がある。
【0073】
前記熱可塑性樹脂組成物は、回転型レオメータにより、測定温度190℃で歪み0.1%、周波数0.1~500(rad/秒)で測定した貯蔵モジュラス(G’)が、周波数40(rad/秒)で170,000Pa以上、好ましくは170,500Pa以上であってもよく、具体例としては175,000~195,300Paであってもよく、この範囲内で、サイディング、屋根及びデッキング材料に適するという利点がある。
【0074】
前記熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて選択的に、滑剤、顔料、熱安定剤、光安定剤、染料、着色剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上を、前記熱可塑性樹脂組成物(A-1)~(C)の総100重量部を基準として、0.01~5重量部、0.05~3重量部、0.1~2重量部、または0.5~1重量部さらに含むことができ、この範囲内で、本発明の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという利点がある。
【0075】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、A-1)DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量10~50重量%と;B-1)重量平均分子量が100,000~160,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~30重量%と;B-2)重量平均分子量が160,000超~200,000g/mol以下である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体20~70重量%と;C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂0.5~10重量%とを含み、前記A-1)グラフト共重合体がA-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれるように混合した後、220~280℃の条件下で押出混練機を用いてペレットを製造するステップを含むことを特徴とし、このような場合、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも耐候性に優れ、光沢が低く、表面光沢が均一であり、共押出表面の外観が改善された感じを与える熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0076】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、さらに好ましくは、A-1)DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量34~36重量%と;B-1)重量平均分子量が100,000~160,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0重量%超、30重量%以下と;B-2)重量平均分子量が160,000超~200,000g/mol以下である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体58~60重量%と;C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂4~8重量%とを含み、前記A-1)グラフト共重合体はA-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれ、前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、DLS平均粒径0.05~0.2μm又はTEM平均粒径0.04~0.14μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、DLS平均粒径0.33~0.5μm又はTEM平均粒径0.28~0.45μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなり、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含むように混合した後、220~280℃の条件下で押出混練機を用いてペレットを製造するステップを含むことを特徴とし、このような場合、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも耐候性に優れ、光沢が低く、表面光沢が均一であり、共押出表面の外観が改善された感じを与える熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0077】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前述した熱可塑性樹脂組成物の全ての技術的特徴を共有する。したがって、重複部分についての説明は省略する。
【0078】
前記押出混練機を用いてペレットを製造するステップは、好ましくは220~290℃下で、より好ましくは250~290℃下で、さらに好ましくは270~290℃下で行うものであってもよく、このとき、温度は、シリンダーに設定された温度を意味する。
【0079】
前記押出混練機は、本発明の属する技術分野で通常用いられる押出混練機であれば、特に制限されず、好ましくは二軸押出混練機であってもよい。
【0080】
<外装材>
本発明の外装材は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とし、この場合、従来のASA樹脂と比較して機械的物性及び加工性などが同等以上であると共に、均一でかつ低い光沢、及び粘弾性の改善により共押出表面の外観品質に優れるという利点がある。
【0081】
前記外装材は、一例として、共押出成形品または射出成形品であってもよく、好ましくは、サイディング(siding)材料、デッキング(decking)材料、または屋根(roofing)材料であってもよい。
【0082】
前記外装材は、好ましくは本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形温度190~250℃下、より好ましくは190~230℃下、さらに好ましくは190~220℃下で押出、共押出または射出するステップを含んで製造されてもよく、この範囲内で、製品に艶消し効果が良好に発現されるという利点がある。
【0083】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び外装材を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0084】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0085】
[実施例]
下記の実施例1~8、及び比較例1~3で用いられた物質は、次の通りである。
A-1)乳化重合方式の第1グラフト共重合体(コア:平均粒径100nmのブチルアクリレート重合体50重量%、シェル:スチレン36重量%、アクリロニトリル14重量%)
A-2)乳化重合方式の第2グラフト共重合体(コア:平均粒径400nmのブチルアクリレート重合体50重量%、シェル:スチレン37重量%、アクリロニトリル13重量%)
B-1)バルク重合方式の重量平均分子量100,000~160,000g/molのSAN樹脂(90HR、スチレン73重量%、アクリロニトリル27重量%)
B-2)バルク重合方式の重量平均分子量160,000超~200,000g/molのSAN樹脂(97HC、スチレン70重量%、アクリロニトリル30重量%)
B-3)バルク重合方式の重量平均分子量80,000~100,000g/molのSAN樹脂(200UH、α-メチルスチレン71重量%、アクリロニトリル29重量%)
C)アクリル系共重合体:バルク重合方式のSAMMA樹脂(XT510)
D)溶融温度(Tm)261℃のPA6.6
【0086】
実施例1~8、及び比較例1~3
それぞれ、下記表1に記載された成分及び含量を、280℃下で28ファイ、L/D36規格の押出混練機(二軸押出機)を用いてペレットに製造した。
【0087】
製造されたペレットで溶融指数を測定した。
【0088】
また、製造されたペレットを、フィルム押出機を通じて厚さ0.15Tで均一にフィルムとして作製し、これを試料(sample)として、フィルムの光沢(film gloss)などを下記の方法により測定した。このとき、フィルム押出機は、シート成形用一軸押出機(Collin社製、E20T製品、20ファイ、L/D:25)を用い、温度条件は、押出機の投入口から順にバレル部の温度50℃、200℃、210℃、210℃及びダイ部の温度220℃、220℃、230℃にセットした。ペレットは、フィルム押出機に投入する前に80℃のオーブンで3時間以上十分に乾燥させて水分の影響を除去した後、フィルム押出機の投入口に投入し、厚さ0.15Tで均一にフィルムとして作製した。使用された後段ローラ(Roller)の温度は、水を媒質として用いて85℃にセットし、ローラの構成は、Tダイ(T-Die)を通じて押し出される樹脂の片面のみがロール(Roll)と接触するタイプを使用した。ここで、フィルム押出機のスクリュー(Screw)のRPMは100に固定し、ロールの線速度を調節してシートの厚さが0.15Tになるようにした。ここで、押出されたシートの面のうち一番目のロールと接触した面に対してフィルムの光沢(Film Gloss)などを測定した。参考に、一番目のロールと接触していない面を測定する場合、表面粗さに差が発生することがある。
【0089】
さらに、前記製造されたペレットを成形温度220℃で射出して物性測定用試験片を作製し、これを用いて引張強度及び衝撃強度を測定した。
【0090】
[試験例]
前記実施例1~8、及び比較例1~3で製造されたペレット、シート及び試験片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0091】
*溶融指数(melt index;MI):製造されたペレットを220℃/10kgの条件下でASTM D1238方法により測定した。
【0092】
*引張強度(kg/cm):ASTM D638方法により測定した。
【0093】
*アイゾット衝撃強度(kg・cm/cm):ASTM D256方法により測定した。
【0094】
*フィルムの光沢(Film Gloss):グロスメーター(gloss meter)VG7000により60°で測定し、下記表1内の220 Gloss項目に示した。
【0095】
一方、フィルム押出機としては、シート成形用一軸押出機(Collin社製、E20T製品、20ファイ、L/D:25)を用い、温度条件は、190℃加工の場合、押出機の投入口から順にバレル部の温度50℃、190℃、190℃、190℃及びダイ部の温度200℃、200℃、200℃にセットし、220℃加工の場合、押出機の投入口から順にバレル部の温度50℃、200℃、210℃、210℃及びダイ部の温度220℃、220℃、230℃にセットし、ペレットをフィルム押出機に投入する前に80℃のオーブンで3時間以上十分に乾燥させて水分の影響を除去した後、フィルム押出機の投入口に投入し、厚さ0.15Tで均一にフィルムとして作製した。使用された後段ローラ(Roller)の温度は、水を媒質として用いて85℃にセットし、ローラの構成は、Tダイ(T-Die)を通じて押し出される樹脂の片面のみがロール(Roll)と接触するタイプを使用した。ここで、フィルム押出機のスクリュー(Screw)のRPMは100に固定し、ロールの線速度を調節してシートの厚さが0.15Tになるようにした。グロスメーター(gloss meter)VG7000により60°で測定し、下記表1内の190 Gloss項目に示した。
【0096】
*熱変形温度(℃):ASTM D648に準拠して、HDTテスター6M-2(Toyoseiki社製)機器により18.5kg/cmの荷重で測定した。
【0097】
*溶融せん断粘度(単位Pa・s):ペレットを80℃のオーブンに2時間以上置いて乾燥させて使用し、毛細管粘度測定装置(capillary Rheometer)(製品名RHEOGRAPH75:RG75)を使用してシングルタイプのバレル(直径20mm、深さ20cm)で測定バレル温度190℃下で溶かした後、直径1mmの毛細管でせん断速度10~2000(1/秒)に合わせて押し出して測定した。このとき、基準値は、せん断速度2000(1/秒)で310Pa・s以下である。
【0098】
*貯蔵弾性率(G’、単位Pa):ペレットを、粘弾性測定装置(ARES、G2)を用い、1回の測定量10g、測定ジオメトリ(geometry)(直径25mmのパラレルプレート(Parallel Plate)、ギャップ1mmで押されるように220℃でサンプルをローディングし、ギャップを下げた後、190℃で測定)、周波数0.1~500(rad/s)、歪み0.1%、測定温度190℃、昇温速度5℃/minの条件で粘弾性試験を行った。このとき、基準値は、周波数40(rad/s)で170000Pa以上である。
【0099】
【表1】
【0100】
前記表1に示したように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1~8参照)は、一部の構成が異なる比較例1~3と比較して、流動指数、引張強度及び衝撃強度などのような機械的物性及び表面光沢が同等又はそれ以上を維持しながらも、粘弾性が改善されて共押出表面の外観が改善された感じ及び高級感を与えることが確認できた。
【0101】
また、前記の実験例で提示されていないが、小粒径のグラフト共重合体が大粒径のグラフト共重合体よりも少ない量で含まれない場合、貯蔵弾性率の特性を改善できないだけでなく、適切な衝撃強度と低光沢を同時に示さなかった。
【0102】
このような結果をまとめると、スチレン系樹脂とポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物で粘性及び弾性特性を満たすことによって、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されると共に、表面の質感の向上により柔らかさ、高級感及び自然さなどの感性品質に優れているだけでなく、粘弾性特性の向上により共押出製品の加工性及び接着力が格段に良いので表面外観不良を大きく低減することができるので、優れた外装材としての製品の信頼性を有する樹脂組成物に適することが確認できた。