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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法及び回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240521BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240521BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K3/00 X
H05K1/03 610D
H05K1/02 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019168267
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021048165
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴弘
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-042066(JP,A)
【文献】特開2006-245436(JP,A)
【文献】特開2017-061146(JP,A)
【文献】特開2015-130432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を多数個取りするための回路形成部と縁部とを有する窒化珪素セラミックス集合基板を作製する工程と、前記窒化珪素セラミックス集合基板に、回路側の金属板を設ける工程と、放熱側の金属板を設ける工程とを有し、
前記窒化珪素セラミックス集合基板は、位置合わせ用の貫通孔が形成されており、
前記回路側の金属板は、前記貫通孔に対応する領域を含む角部が面取りされ、前記貫通孔を覆わないように設けられており、
前記放熱側の金属板は、前記貫通孔に対応する領域を含む角部が面取りされ、前記貫通孔を覆わないように設けられていることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記窒化珪素セラミックス集合基板は、角部が面取りされていることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、窒化珪素セラミックス集合基板の辺と、回路側の金属板の辺或いは放熱側の金属板の辺との距離が、0.3~4.5mmであることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項4】
請求項2において、窒化珪素セラミックス集合基板の面取りと、回路側の金属板の面取り或いは放熱側の金属板の面取りとの距離が、0.3~4.5mmであることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項5】
窒化珪素セラミックス基板と、
前記窒化珪素セラミックス基板の一方の面に設けられた回路側の金属板と、
前記窒化珪素セラミックス基板の他方の面に設けられた放熱側の金属板と、を備え、
前記窒化珪素セラミックス基板は、位置合わせ用の貫通孔が形成されており、
前記回路側の金属板は、前記貫通孔に対応する領域を含む角部が面取りされ、前記貫通孔を覆わないように設けられており、
前記放熱側の金属板は、前記貫通孔に対応する領域を含む角部が面取りされ、前記貫通孔を覆わないように設けられていることを特徴とする回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板を多数個取りする為の窒化珪素セラミックス集合基板を用いる、回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体モジュール、パワーモジュール等に利用される回路基板には、熱伝導性および絶縁性、強度などの点で回路用セラミックス基板が用いられ、この回路用セラミックス基板にCuやAlなどの金属回路板や金属放熱板が接合されて回路基板とされている。回路用セラミックス基板としては、アルミナが広く使われてきたが、最近では、より厳しい環境でも使用できるように、高強度で熱伝導性も改善された窒化珪素が使用されるようになってきた。
【0003】
また、回路基板を量産する技術として、前記回路用セラミックス基板が多数切り出せる大きさの1枚のセラミックス集合基板に、活性金属ろう付け法や直接接合法などによりCu板等の金属板を接合し、エッチング加工等で金属回路板と金属放熱板を形成して、セラミックス集合基板を所定の大きさに分割して個々の回路基板を得るという方法がある。
【0004】
個々の回路基板に分割する方法としては、例えば、Cu板等の接合前にレーザ加工により、セラミックス集合基板に凹部又は溝を形成しておき、Cu板等を接合後にセラミックス集合基板を撓ませて、凹部又は溝で分割する方法が採用されている。
【0005】
なお、回路基板をスクライブ孔或いは分割溝でセラミックス集合基板から分割する技術が、特許文献1(特開2008-198905)、及び特許文献2(特開2017-28192)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-198905号公報
【文献】特開2017-28192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者は、回路基板を大きくしたり、或いは回路基板の取り数を増やしたりする為に、原版の金属板(例えばCu板)を大きくすることを検討した。すると、回路基板を作製する際に、面取りした箇所或いは位置合わせ用の貫通孔が原版の金属板(例えばCu板)に隠されて、窒化珪素セラミックス集合基板と原版の金属板(例えばCu板)とを位置合わせし難いという問題を生じた。位置合わせし難いと、おもて面側の金属板の中心と裏面側の金属板の中心とが位置ずれを生じ、回路基板における熱抵抗が増加する虞がある。
【0008】
本発明の目的は、窒化珪素セラミックス集合基板と原版の金属板とを位置合わせし易くした回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の回路基板は、回路基板を多数個取りするための回路形成部と縁部とを有する窒化珪素セラミックス集合基板を作製する工程と、前記窒化珪素セラミックス集合基板に、回路側の金属板を設ける工程と、放熱側の金属板を設ける工程とを有し、
前記回路側の金属板は角部が面取りされており、前記放熱側の金属板は角部が面取りされていることを特徴とする。
【0010】
本発明の回路基板の製造方法において、前記窒化珪素セラミックス集合基板は、位置合わせ用の貫通孔が形成されていてもよい。
【0011】
本発明の回路基板の製造方法において、前記窒化珪素セラミックス集合基板は、角部が面取りされていてもよい。
【0012】
本発明の回路基板の製造方法において、窒化珪素セラミックス集合基板の辺と、回路側の金属板の辺或いは放熱側の金属板の辺との距離が、0.3~4.5mmであることが好ましい。また、窒化珪素セラミックス集合基板の面取りと、回路側の金属板の面取り或いは放熱側の金属板の面取りとの距離が、0.3~4.5mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の回路基板の製造方法によれば、原版の金属板の角部に面取りを施すことで、窒化珪素セラミックス集合基板で面取りした箇所又は位置合わせ用の貫通孔が隠されることがなく、窒化珪素セラミックス集合基板と原版の金属板とを位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係る窒化珪素セラミックス焼結基板を説明する概略図である。
図2図1の基板から得た窒化珪素セラミックス集合基板を説明する概略図である。
図3図2の基板に第2のブレークラインを形成した概略図である。
図4図3の基板にろう材を塗布した概略図であり、(4a)はおもて面及び(4b)は裏面を示す。
図5図4の基板に原版のCu板を配置し、ろう付けした概略図であり、(5a)はおもて面及び(5b)は裏面を示す。
図6図5の基板で原版のCu板をパターニングし、はみ出したろう材層を除去した概略図であり、(6a)はおもて面及び(6b)は裏面を示す。
図7図6の基板から得た回路基板の概略図である。
図8】他の実施形態を説明する概略図であり、原版のCu板を配置し、ろう付けした状態であって(8a)はおもて面及び(8b)は裏面を示す。
図9】他の実施形態に関し、窒化珪素セラミックス集合基板に原版のCu板を配置し、ろう付けした概略図である。
図10】他の実施形態に関し、窒化珪素セラミックス集合基板に原版のCu板を配置し、ろう付けした概略図である。
図11】(a)図1等における貫通孔に係る断面図であり、(b)貫通孔に係る他の形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、以下詳細に説明するが、本発明は必ずしもそれらに限定されるものではない。各実施形態に関する説明は、特に断りがなければ他の実施形態にも適用できる。
【0016】
発明者は、回路基板の製造方法において、回路基板を大きくしたり、或いは回路基板の取り数を増やしたりする為に、原版の金属板(例えば原版のCu板)を大きいものとする際に、窒化珪素セラミックス集合基板で面取りした箇所或いは位置合わせ用の貫通孔などが原版の金属板(例えば原版のCu板)に隠されることを抑制するべく、鋭意検討した結果、原版の金属板(原版のCu板)に面取りして回路基板を作製するという本発明に想到した。
【0017】
(実施形態1)
本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板を図1に示し、回路基板の製造方法について図1図7を用いて説明する。まず、図1に示すように、焼結で得た窒化珪素セラミックス焼結基板1に、炭酸ガスレーザ(COレーザ)やYAGレーザ等を用いて、窒化珪素セラミックス焼結基板の外縁10から内側の位置に外縁10に沿ってスクライブ孔13a(非貫通の孔)を複数個形成することで、スクライブ孔の中心間を結ぶ分割線によるブレークライン13(以下、辺ブレークラインという)とする(スクライブ孔形成工程)。以下で「スクライブ孔」は基板を貫通していない孔(非貫通の孔)を指す。
【0018】
そして、辺ブレークライン13が交差する角部に辺ブレークライン13と傾斜する方向に、いわば角部を面取りするように、窒化珪素セラミックス焼結基板1の厚さ方向に貫通するスリット14を形成する(面取り用の貫通孔形成工程(より詳細にはスリット形成工程))。以下で、「スリット」は一方の面から他方の面に基板を貫通した細長い切り込みを指す。「面取り用の貫通孔」は一方の面から他方の面に基板を貫通した孔を指す。前記スリット14は、複数個の貫通孔を連結して形成されており、貫通孔の中心間を結ぶ分割線によるブレークライン15(以下、角ブレークラインという)を構成している。なお、角ブレークライン15は、辺ブレークラインと交差して、辺ブレークラインから長さL2で突出していてもよい。長さL2はスリットの形成に用いたレーザのビームスポット直径より大きく、且つ3.5mm未満であることが好ましい。
【0019】
そして、窒化珪素セラミックス焼結基板の外縁10を構成する四辺のうち、長い方の辺を長辺とするが、この長辺に沿って形成された辺ブレークライン13について、その内側(外縁10とは反対の側)に所定の距離L1をおいて位置決め用の貫通孔5を形成する(位置決め用の貫通孔形成工程)。長辺に沿った辺ブレークラインは2本あり、角ブレークライン15の近くに1個ずつ貫通孔5を形成するので、合計4個の位置決め用貫通孔5を有する窒化珪素セラミックス焼結基板を得る(辺ブレークライン13と位置決め用貫通孔5の間隔はいずれもL1である)。なお、位置決め用の貫通孔の直径は、20~150μmがより好ましく、30~100μmが更に好ましい。そして、距離L1は、0.1~4.0mmであることが好ましく、0.2~3.5mmであることが更に好ましく、0.5mm~3.0mmがより好ましい。このように数値範囲を規定するのは、L1が小さすぎると、位置決め用の貫通孔が辺ブレークラインの縁に接触しかねない為である。L1が大きすぎると、位置決め用の貫通孔を設ける為の取り代(第2の耳部に相当)の幅が大きくなって、相対的に回路基板におけるセラミックス部の面積が小さくなっていく為である。
【0020】
ついで、窒化珪素セラミックス焼結基板1の四辺について、各々の耳部11を順に撓ませて、辺ブレークライン13と直角な方向に曲げによる引張応力を作用させて、窒化珪素セラミックス焼結基板1から四辺の耳部11を分割する(耳部分割工程)。得られた窒化珪素セラミックス集合基板12aは、図2に示すように、四隅の角部を面取した箇所の近くで、且つ辺ブレークライン13から所定の距離L1離れた箇所に、位置決め用の貫通孔5を有している。
【0021】
ついで、図3に示すように、窒化珪素セラミックス集合基板12aの面に第2のスクライブ孔による第2のブレークライン18,18’を形成する。第2のブレークライン18は辺ブレークライン13に沿って形成されており、辺ブレークライン13と第2のブレークライン18の距離は前記距離L1より大きい。なお、縁部(第2の耳部に相当する箇所)に貫通孔5は位置している。例えば2本の第2のブレークライン18’は、例えば4本の第2のブレークライン18の中点と交差するように形成されている。なお、窒化珪素セラミックス集合基板において、対角線を引き、対角線の交点を窒化珪素セラミックス集合基板の中心点として求めることが出来る。
【0022】
ついで、図4の(a)に示すように、図3の基板のおもて面(表面)において、第2のブレークライン18,18’で区切られた領域に(図4では4つの領域それぞれに)、ろう材ペーストをスクリーン印刷で塗布することによって、ろう材16aを配置する。さらに、基板のおもて裏を反転させて、裏面においてろう材ペーストをスクリーン印刷で塗布することによってろう材16a’を配置する。
【0023】
ついで、図5の(5a)に示すように、図4の基板のおもて面(表面)において、4箇所のろう材16aを覆うように、角部を面取りした原版のCu板16bを設ける(面取りした4箇所を符号6で示す)。さらに、基板を反転させて、裏面において、4箇所のろう材16a’を覆うように、もう1枚の角部を面取りした原版のCu板16b’を設ける(面取りした4箇所を符号6で示す)。ついで、Cu板16b’/ろう材16a’/窒化珪素セラミックス集合基板(12a)/ろう材16a/Cu板16bという順に積層された積層体を熱処理することで、ろう材16a,16a’をろう材層と為して、ろう付けを行う。
【0024】
なお、少なくともCu板16bやCu板16b’を設ける際には、Cu板の辺や面取り6のあたりで貫通孔5を覆わないように、位置を調整して設ける。位置決め用の貫通孔5が覆われてしまって見えないと、後の工程において、レジストパターンの位置決めに使えない為である。Cu板16bやCu板16b’の位置を調整するには、例えば、治具として一対のピン或いはストッパーを用意し、Cu板16bの1つの辺に一方のピン或いはストッパーを当接させて、Cu板16bの隣の辺に他方のピン或いはストッパーを当接させるといった手法を用いる。位置を調整し、窒化珪素セラミックス集合基板の辺と、回路側の金属板の辺或いは放熱側の金属板の辺との距離t1を、0.3~4.5mmとすることが好ましい。また、窒化珪素セラミックス集合基板の面取りと、回路側の金属板の面取り或いは放熱側の金属板の面取りとの距離t2を、0.3~4.5mmとすることが好ましい。このように数値範囲を規定するのは、t1或いはt2の距離が小さすぎると、窒化珪素セラミックス集合基板と原版の金属板が近接して接触しかねない為である。t1或いはt2の距離が大きすぎると、相対的に回路基板におけるセラミックス部の面積が小さくなっていく為である。
【0025】
ついで、画像解析装置等を用いて、おもて面において、それぞれの位置決め用の貫通孔5について中心を算定し、位置決め用貫通孔5に係る4つの中心から、窒化珪素セラミックス集合基板(12a)の第1の中心点を算定する。前記「4つの中心」および前記「第1の中心点」によって得られる窒化珪素セラミックス集合基板の第1の座標に基づき、フォトレジストを形成する手法やレジストフィルムを貼る手法を用いて、Cu板16bにレジストパターンを4つ形成する。レジストパターンのアウトラインや位置は、上記第1の座標によって決定できる。なお、4つの中心のうち、右上および左下の中心同士を結ぶ結線(仮想線)と、右下および左上の中心同士を結ぶ結線(仮想線)とを描き、2つの結線の交点を第1の中心点として算定してもよい。
【0026】
さらに、基板のおもて裏を反転させて、裏面において、それぞれの位置決め用の貫通孔5で中心を算定し、位置決め用貫通孔5に係る4つの中心から、窒化珪素セラミックス集合基板(12a)の第2の中心点を算定する。前記「4つの中心」および前記「第2の中心点」によって得られる窒化珪素セラミックス集合基板の第2の座標に基づき、フォトレジストを形成する手法やレジストフィルムを貼る手法を用いて、Cu板16b’にレジストパターンを4つ形成する。レジストパターンのアウトラインや位置は、上記第2の座標によって決定できる。おもて面と裏面とで、同じ4つの貫通孔5を用いることで(共通の位置決めの基準として用いることで)、第1及び第2の座標を共通化したり、或いは、第1の中心点と第2の中心点を一致させたりすることが出来て、窒化珪素セラミックス集合基板を挟んで対向するレジストパターン同士の位置を、透視したときに重なるように、正確に合わせられる。
【0027】
ついで、Cu板16bとCu板16b’をエッチング処理によってパターニングして、Cu板の縁から外側へはみ出したろう材層を選択的なエッチングで除去することで、図6の(6a)に示すようにCu板16bから4つの銅の回路板16を形成し、図6の(6b)に示すようにCu板16b’から4つの銅の放熱板16’を形成する。レジストパターンで覆われた箇所に応じた形状にパターニングされるので、窒化珪素セラミックス集合基板を挟んで対向するように、銅の回路板16の位置と銅の放熱板16’の位置は、正確に合わせられる。この後に、銅の回路板16や銅の放熱板16’にNiめっき、Agめっき或いはAuめっきのいずれかを施してもよい。
【0028】
その後、第2のブレークライン18,18’に沿って窒化珪素セラミックス集合基板12aを分割することで、回路形成部(回路基板20に相当)及び縁部17(第2の耳部に相当)を分離して、各々の回路基板20を得る。回路基板20は、図7に示すように、銅の回路板16及び銅の放熱板(図示せず)とセラミックス基板部19とを有するものとなる。セラミックス基板部19の面(回路板或いは放熱板を設けた面)に垂直な向きからみたときに、セラミックス基板部19の面内において、おもて面における銅の回路板16の位置と、裏面における銅の放熱板の位置とが合っている。
【0029】
(実施形態2)
図1の構成でスリット14(角ブレークライン15)を形成しないこととして、回路基板を作製する。他の構成や手順は実施形態1と同様であるので、原版のCu板16、16’の角部には面取りを施している。
【0030】
(実施形態3)
本発明に係る他の回路基板の製造方法を説明する。まず、図1と同様の窒化珪素セラミックス焼結基板を作製して、その基板から図2と同様の窒化珪素セラミックス集合基板12aを得る。ついで、図2の基板のおもて面(1箇所)に、ろう材ペーストをスクリーン印刷で広く塗布することによって、ろう材(1層)を配置する。さらに、基板のおもて裏を反転させて、基板の裏面(1箇所)にろう材ペーストをスクリーン印刷で広く塗布することによって、ろう材と同様にろう材(1層)を配置する。
【0031】
ついで、1層のろう材を設けた基板のおもて面(表面)において、ろう材の主要部を覆うように、原版のCu板を設ける。この際にCu板の角部には面取り6を施しているので、Cu板が貫通孔5を覆わないようにすることができる。さらに、基板のおもて裏を反転させて、裏面においてろう材の主要部を覆うように、もう1枚の原版のCu板を設ける。この際に原版のCu板の角部には面取り6を施しているので、Cu板が貫通孔5を覆わないようにすることができる。ついで、Cu板/ろう材/窒化珪素セラミックス集合基板(12a)/ろう材/Cu板という順に積層された積層体を熱処理することで、ろう材をろう材層と為して、ろう付けを行う。
【0032】
ついで、画像解析装置等を用いて、おもて面において、それぞれの位置決め用の貫通孔5について中心を算定し、位置決め用貫通孔5に係る4つの中心から、窒化珪素セラミックス集合基板(12a)の第1の中心点を算定する。前記「4つの中心」および前記「第1の中心点」によって得られる窒化珪素セラミックス集合基板の第1の座標に基づき、フォトレジストを形成する手法やレジストフィルムを貼る手法を用いて、Cu板にレジストパターンを4つ形成する。レジストパターンのアウトラインや位置は、上記第1の座標によって決定できる。
【0033】
さらに、基板のおもて裏を反転させて、裏面において、それぞれの位置決め用の貫通孔5で中心を算定し、位置決め用貫通孔5に係る4つの中心から、窒化珪素セラミックス集合基板(12a)の第2の中心点を算定する。前記「4つの中心」および前記「第2の中心点」によって得られる窒化珪素セラミックス集合基板の第2の座標に基づき、フォトレジストを形成する手法やレジストフィルムを貼る手法を用いて、Cu板とは反対側に有るもう1枚のCu板にレジストパターンを4つ形成する。レジストパターンのアウトラインや位置は、上記第2の座標によって決定できる。おもて面と裏面とで、同じ4つの貫通孔5を用いることで(共通の位置決めの基準として用いることで)、第1及び第2の座標を共通化したり、或いは、第1の中心点と第2の中心点を一致させたりすることが出来て、窒化珪素セラミックス集合基板を挟んで対向するレジストパターン同士の位置を、透視したときに重なるように、正確に合わせられる。
【0034】
ついで、Cu板ともう1枚のCu板をエッチング処理によってパターニングすることで、おもて面においてCu板から4つの銅の回路板16を形成し、裏面においてもう1枚のCu板から4つの銅の放熱板を形成する。レジストパターンで覆われた箇所に応じた形状にパターニングされるので、窒化珪素セラミックス集合基板を挟んで対向するように、銅の回路板16の位置と銅の放熱板の位置は、正確に合わせられる。この後に、銅の回路板16や銅の放熱板にNiめっき、Auめっき或いはAgめっき等のいずれかを施してもよい。
【0035】
ついで、おもて面においてろう材に由来するろう材層には銅の回路板16に覆われていない部分が有り、裏面においてろう材に由来するろう材層には銅の放熱板に覆われていない部分が有り、これらは露出したろう材層となっている。これらの露出したろう材層を選択的なエッチングによって除去すると、窒化珪素セラミックス集合基板を挟んで対向するように、銅の回路板16と銅の放熱板とを有する構成を得る。この後に、銅の回路板16や銅の放熱板にNiめっき、Auめっき或いはAgめっきのいずれかを施してもよい。
【0036】
ついで、窒化珪素セラミックス集合基板の面に第2のスクライブ孔による第2のブレークライン18、18’を形成する。第2のブレークライン18は辺ブレークライン13に沿って形成されており、辺ブレークライン13と第2のブレークライン18の距離は前記距離L1より大きい。なお、第2の耳部に相当する箇所に貫通孔5は位置している。例えば2本の第2のブレークライン18’は、例えば4本の第2のブレークライン18の中点と交差するように形成されている。
【0037】
その後、第2のブレークライン18,18’に沿って窒化珪素セラミックス集合基板を分割することで、回路形成部(回路基板20に相当)及び縁部17(第2の耳部に相当)を分離して、各々の回路基板20を得る。回路基板20は、図7と同様の構成となり、銅の回路板16及び銅の放熱板(図示せず)とセラミックス基板部19とを有するものとなる。セラミックス基板部19の面(回路板或いは放熱板を設けた面)に垂直な向きからみたときに、セラミックス基板部19の面内において、おもて面における銅の回路板16の位置と、(透視して見た)裏面における銅の放熱板の位置とは合っている。
【0038】
(実施形態4)
本発明に係る他の回路基板の製造方法について図8を用いて説明する。図8は角部を面取りした原版のCu板を配置し、加熱を経て、ろう付けを行った段階を示している。この実施形態4は、窒化珪素セラミックス集合基板に設けられた貫通孔5が短辺近傍の2個である点を除いて、実施形態1と共通している。図8(8a)に示すように、窒化珪素セラミックス集合基板のおもて面において、左上の貫通孔5と右下の貫通孔5を有する。これらの貫通孔5は、基板をおもて裏で反転させると、図8(8b)に示すように、窒化珪素セラミックス集合基板の裏面において、右上の貫通孔5と左下の貫通孔5となる。
【0039】
おもて面において、左上の貫通孔5の中心と右下の貫通孔5の中心とを結ぶ仮想線(一点鎖線)の中点を第3の中心点として算定する。前記「左上の貫通孔5の中心と右下の貫通孔5の中心」および前記「第3の中心点」によって得られる窒化珪素セラミックス集合基板の第3の座標に基づき、フォトレジストを形成する手法或いはレジストフィルムを貼る手法を用いる際に、Cu板16b上でレジストパターンのアウトラインや位置を、上記第3の座標によって決定する。
【0040】
また、基板を反転させ、裏面については、2つの貫通孔5の中心同士を結ぶ仮想線の中点を第4の中心点として算定する。「2つの貫通孔5の中心」および「第4の中心点」によって得られる窒化珪素セラミックス集合基板の第4の座標に基づき、フォトレジストを形成する手法或いはレジストフィルムを貼る手法を用いる際に、Cu板16b’上でレジストパターンのアウトラインや位置を、上記第4の座標によって決定する。そして、貫通孔に係る座標以外の要件や工程は、実施形態1と同様にして良く、図7と同様の回路基板を作製できる。したがって、セラミックス基板部19の面(回路板或いは放熱板を設けた面)に垂直な向きからみたときに、セラミックス基板部19の面内において、おもて面における銅の回路板16の位置と、(透視して見た)裏面における銅の放熱板の位置とは合っている。
【0041】
なお、図8中の窒化珪素セラミックス集合基板について、さらに、右上或いは左下の箇所の一方に、貫通孔を1個追加してもよい。位置決め用の貫通孔を少なくとも2つ有するのが好ましい。
【0042】
(実施形態5)
本発明に係る他の回路基板の製造方法について図9を用いて説明する。図9は角部を面取りした原版のCu板を配置し、加熱を経てろう付けを行った段階を示している。この実施形態5は、窒化珪素セラミックス集合基板の回路形成部の四隅に貫通孔5が1個ずつ形成されていて、この貫通孔5をかわすようにCu板16bの角部に面取りが施されている。窒化珪素セラミックス集合基板の角部は面取りされていない。これらの点を除けば、実施形態1の回路基板の製造方法と同様である。
【0043】
(実施形態6)
本発明に係る他の回路基板の製造方法について図10を用いて説明する。図10は角部を面取りした原版のCu板を配置し、加熱を経てろう付けを行った段階を示している。この実施形態6は、窒化珪素セラミックス集合基板の四隅に貫通孔5が1個ずつ形成されていて、この貫通孔5をかわすようにCu板16bの角部に面取りが施されている。窒化珪素セラミックス集合基板の角部は面取りされていない。これらの点を除けば、実施形態1の回路基板の製造方法と同様である。
【0044】
(金属板の面取り)
原版の金属板として、銅板18,18’の角部を面取りするには、例えば、矩形の銅板を切り出した後に角部をレーザ等で切断する方法、プレスやシャーリング等の手法によって銅板の形状を打ち抜く際に面取りも行う方法、或いは、レジスト等の保護膜を用いて銅板の角部(保護膜で覆わない箇所)を選択的にエッチングする方法などを用いることが出来る。なお、切断や打ち抜きは、銅板の反りを抑制する範囲で行うのがよい。
【0045】
原版の金属板(例えばCu板)の角部を面取りしておくことで、金属板をハンドリングする際に他の金属板に傷をつけることを防止することにつながる。
【0046】
窒化珪素セラミックス集合基板から回路基板を作製する際に、回路基板を大きくしたり、或いは回路基板の取り数を増やしたりするべく、窒化珪素セラミックス集合基板の縁部の幅を小さくしていき、原版の金属板(例えばCu板)を大きくしていく。原版の金属板の面積を増やす際に、原版の金属板の角部が縁部に懸かる形状とするよりも、原版の金属板の角部を面取りしておく方がよい。
【0047】
(位置決め用の貫通孔)
図11で位置決め用の貫通孔について説明する。図11の(a)は、図1等における貫通孔5の断面図であり、貫通孔の直径を強調して図示している。貫通孔を形成する際に、窒化珪素セラミックス集合基板12のおもて面にレーザを照射した側が図中の「入射側」であり、レーザが貫通した側が図中の「貫通側」である。レーザの照射条件にもよるが、貫通孔の直径は貫通側から入射側に向かって微増しており、入射側の縁のあたりでは直径が広がって、断面視において曲線的な傾斜が付くことがある。図11の(b)は、他の貫通孔5’の例を示す断面図であり、窒化珪素セラミックス集合基板(12a)の断面視において貫通孔の内壁は積極的に傾斜がつけられて、貫通孔の直径が貫通側から入射側に向かって増加しており、このような貫通孔5’を用いることも出来る。
【0048】
これら位置決め用の貫通孔について、基板に垂直な向きからみて、画像解析装置等を用いて、入射側の開口の中心(仮想的な中心)を算定したり、貫通側の開口の中心(仮想的な中心)を算定したりする。中心を通り、窒化珪素セラミックス集合基板の面と交差する関係にある垂直な仮想線を、図11(a),(b)にそれぞれ一点鎖線で図示している。
【0049】
基板に垂直な向きからみて、貫通孔の開口の形状は円形であるのが好ましい。円の大きさがおもて側と裏面側とで異なったとしても、円の中心の位置は同じになる為である。なお、この円形の開口の中心を求める方法として、例えば、円形の形状に対して少なくとも3本の仮想線を引いて、円形の縁の画像の濃淡から、円形の縁と仮想線との交点を特定して、少なくとも3つの交点から円形の中心(すなわち、貫通孔の開口の中心)を求める方法を用いることもできる。貫通孔の開口の形状は他に、楕円であったり、矩形であったり、或いは十字形状であったりしてもよいが、開口の形状が円形から変形されるほどに、開口の中心を高い精度で算定しようとすると、誤差を生じ易くなる可能性がある。すなわち、開口の形状の中心(画像から発明者がマニュアルで算定)と、画像解析装置に算定させた開口の中心とにずれを生じ易くなる場合がある。これに対して、円形の開口の縁は、仮に壁面における曲線的な傾斜の影響を受けて、アウトラインに濃淡(グラデーション)がついて見えたとしても、円形の中心は1点に決まるので、高い精度で開口の中心が算定される。
【0050】
本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板において、例えば図1に示すように、辺ブレークライン13同士が交差する角部に辺ブレークライン13と傾斜する方向に、いわば角部を面取りするように、角ブレークライン15を形成している。この角ブレークライン15は、基板を貫通するスリットであってもよいし、面取り用の貫通孔が連結してなるスリット14であってもよいし、複数の貫通孔(面取り用の貫通孔)を直列に並べたもの(但し、貫通孔のピッチを、辺ブレークラインのスクライブ孔のピッチよりも小さくする)であってもよい。角ブレークラインが有ることによって、窒化珪素セラミックス焼結基板1を撓ませて、窒化珪素セラミックス集合基板12と耳部11に分割する際に、窒化珪素セラミックス集合基板の四隅に亀裂や欠けを生じることを抑制することができる。
【0051】
本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板において、前記スクライブ孔13aは、基板表面における直径は例えば300μm以下、深さは例えば窒化珪素セラミックス集合基板の厚さの1/3以上とするのが好ましい。スクライブ孔の直径は使用するレーザのビームスポット径によるところが大きいが、30~200μmがより好ましく、50~150μmが更に好ましい。また、スクライブ孔の深さは、例えば基板厚さが0.32mmの場合、80~300μmがより好ましく、100~250μmが更に好ましい。またスクライブ孔のピッチはスクライブ孔直径の2倍以下が好ましく、より好ましくはスクライブ孔直径と等しくするのが良く、特に好ましくは基板を分割したときの割断性で決定するのがよい。このピッチ制御は加工速度制御により調整可能であり、レーザ出力パルス数などと連動させてもよい。
【0052】
本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板において、スクライブ孔による辺ブレークラインが交差する角部に形成し、面取り用の貫通孔を連結してなるスリット14は、たとえばスリット幅を30~200μm、スリットの長さを2.8~8.4mmとするのが好ましい。面取り用の貫通孔の直径或いはスリット幅は、20~150μmがより好ましく、30~100μmが更に好ましい。スリットの長さは、3.0~8.0mmがより好ましく、3.5~7.5mmが更に好ましい。また、面取り用の貫通孔によるブレークラインは、幅や長さをスリット寸法と同様にすることができる。
【0053】
本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板において、前記貫通孔による角ブレークライン或いはスリットは、スクライブ孔による辺ブレークラインに対して例えば30°~60°傾ける。より具体的にはスクライブ孔による辺ブレークラインに対して例えば45°傾けると、基板の面積を無駄なく有効に使えるので好ましい。
【0054】
本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板の製造方法において、位置決め用の貫通孔、前記スクライブ孔、前記面取り用の貫通孔、或いは前記スリットは、レーザで形成されることが好ましい。例えば、YAGレーザや炭酸ガスレーザ(COレーザ)を用いる。YAGレーザや炭酸ガスレーザの照射による加工は、基板を貫通する貫通孔を形成したり、深い孔を断続的に形成したりすることに適している。
【0055】
本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板の製造方法において、位置決め用の貫通孔を形成する際には、レーザのビームスポットの照射を複数回繰り返すことが好ましい。照射を複数回繰り返して孔を掘り下げていくと、照射毎のエネルギー密度を低くできるので、貫通孔の表面(内壁)に熱衝撃による亀裂が形成され難くなる。
【0056】
本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板及び窒化珪素セラミックス集合基板は、厚さを例えば0.2mmから1.0mmとする。より具体的には厚さを例えば0.25mmから0.65mmとするのが好ましい。本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板及び窒化珪素セラミックス集合基板では、破壊靱性値を例えば5.0MPa・m1/2以上とする。より具体的には破壊靱性値を例えば5.0~7.5MPa・m1/2とするのが好ましい。本発明の回路基板の製造方法について、金属板はCu板或いはAl板の少なくとも1種を用いることができる。また、窒化珪素セラミックス集合基板と金属板とを接合する手法は、ろう付けに限らず、直接接合法などを用いてもよい。
【0057】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に必ずしも限定されない。
【0058】
(実施例)
窒化珪素セラミックスを形成する為の原料において、主原料に窒化珪素粉末を用い、焼結助剤に2質量%のMgO及び3質量%のYを用いて、作製したシート成形体を窒素雰囲気中にて最高温度1850℃保持時間5時間で焼結して、厚さ0.32mm、縦150mm及び横200mmで矩形の窒化珪素セラミックス焼結基板1を作製した。炭酸ガスレーザを用いて、窒化珪素セラミックス焼結基板1の外縁10から内側の位置に外縁10に沿ってスクライブ孔13aによる辺ブレークライン13を形成した(スクライブ孔形成工程)。スクライブ孔13aは、基板表面において最大径が50μm、深さが150μm、ピッチが100μmであり、図1に示すようにスクライブ孔13aによる辺ブレークライン13を四辺の各々に沿って形成した。耳部11の幅は5mmとした。
【0059】
続けて、炭酸ガスレーザ(出力100W)を用いて、レーザのビームスポットの走査を1回として、スクライブ孔13aによる辺ブレークライン13の交差する角部(4箇所)の各々に辺ブレークライン13と45°傾斜する方向に、L2だけ突出した位置から面取り用の貫通孔を連続的に形成していくことで、面取り用の貫通孔が連結してなるスリット14を形成した(スリット形成工程)。
レーザのビームスポットの直径=0.07mm
加工速度=15mm/s
スリットの突出長L2=0.7mm
スリットの全長=4.2mm
基板表面におけるスリット幅=0.10mm
【0060】
続けて、炭酸ガスレーザを用いて、ビームスポットの直径を0.2mmとして、辺ブレークライン13の内側にL1=0.5mm離れた箇所に位置決め用の貫通孔5を形成した。ここで、辺ブレークライン13に沿った向きにおいて、近傍のスリット14から前記位置決め用の貫通孔5は5mm離れた位置に形成するものとした。辺ブレークライン13は4本あるので、図1に示すように、位置決め用の貫通孔5は合計4個となった。
【0061】
ついで、図1に係る窒化珪素セラミックス焼結基板1を撓ませて、辺ブレークライン13で割って、図2に示す窒化珪素セラミックス集合基板12aと、耳部11とに分割した。ついで、図3に示すように、窒化珪素セラミックス集合基板12aに第2のブレークライン18,18’を形成して窒化珪素セラミックス12aとした。
【0062】
ついで、図4に示すように、この窒化珪素セラミックス集合基板12aの表側および裏側にそれぞれろう材(16a,16a’)をスクリーン印刷法で塗布した。ろう材は、70質量%のAg、3質量%のIn、及び27質量%のCu(合計100質量部)からなる合金粉末に対して0.3質量部のTiHを添加し、さらに有機溶剤、有機バインダーを添加して混練してペーストとしたものを使用した。ろう材を塗布した窒化珪素セラミックス集合基板を乾燥した後、ろう材を覆うように、表側及び裏側にそれぞれ0.3mm厚さで四隅の角部に面取りを施した銅板、すなわちCu板(16b,16b’)を接触配置して積層体を得た(図5を参照)。ついで、加圧しながら800℃、20分、真空中で熱処理し、窒化珪素セラミックス集合基板とCu板との接合体を作製した。窒化珪素セラミックス集合基板及びCu板の間には、厚さがおよそ30μmのろう材の層が形成されている。なお、Cu板16b,16b’の角部の面取り6は、具体的にはC2mmのC面取りとした。ここで、C面取りとは角度が45°である面取りを指す。C2mmとは、2辺夫々が2mmである直角三角形の角部を、面取りで除去することである。
【0063】
ついで、画像解析装置を用いて、おもて面において、それぞれの位置決め用の貫通孔5について中心(入射側における円形の中心)を算定し、得られた位置決め用貫通孔5に係る4つの中心から、窒化珪素セラミックス集合基板(12a)の第1の中心点を算定した。前記「4つの中心」および前記「第1の中心点」によって得られる窒化珪素セラミックス集合基板の第1の座標を決定した。ついで、得られた接合体について、表側でCu板上に、紫外線で硬化可能なエッチングレジストインクを塗布した後、紫外線を照射してエッチングレジストインクを硬化させてレジスト膜のパターンを形成した。レジスト膜のパターンを露光する際のマスクの位置決めには、上記の第1の座標を用いて行った。エッチングレジストインクには、アルカリ剥離型のものを用いた。
【0064】
ついで、基板を反転させて、裏面において、それぞれの位置決め用の貫通孔5で中心(貫通側における円形の中心)を算定し、得られた位置決め用貫通孔5に係る4つの中心から、窒化珪素セラミックス集合基板(12a)の第2の中心点を算定した。前記「4つの中心」および前記「第2の中心点」によって得られる窒化珪素セラミックス集合基板の第2の座標を決定した。ついで、接合体について裏側でもCu板上にエッチングレジストインクを塗布した後、紫外線を照射してエッチングレジストインクを硬化させてレジスト膜のパターンを形成した。レジスト膜のパターンを露光する際のマスクの位置決めには、上記の第2の座標を用いて行った。原版のCu板の四隅に面取りを施すことで、回路板16及び放熱板16’の面積を大きくとることができ、窒化珪素セラミックス集合基板で縁部17を細幅化して、窒化珪素セラミックス集合基板を回路形成部として有効に使うことが出来た。
【0065】
30℃に保持した塩化銅ベースのエッチング液(塩化銅、塩酸及び過酸化水素を含む混合液)でエッチング処理を行い、回路板或いは放熱板のパターン外となる不要なCu板(すなわち、レジスト膜で被覆されていない部分のCu板)の除去を行った。
【0066】
ついで、ろう材がCu板よりはみ出している部分(ろう材のはみ出し部)を除去するため、第1のろう材エッチング処理(カルボン酸及び/又はカルボン酸塩、並びに過酸化水素を含む酸性の溶液によるエッチング処理)、及び第2のろう材エッチング処理(フッ化水素アンモニウム及び過酸化水素を含む溶液によるエッチング処理)を順に行って、ろう材のはみ出し部を除去して、図6に示す接合体を得た。
【0067】
ついで、接合体を、3質量%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して、レジスト膜を除去した。次いで、化学研磨、及びイオン交換水による洗浄を経た後に、表側の銅板(回路板)及び裏側の銅板(放熱板)にNiメッキを施した。この化学研磨は、光沢処理を狙って、硫酸ベースの一般市販液を用いて行った。
【0068】
このようにして、Niメッキした銅の回路板16及び銅の放熱板を、窒化珪素セラミックス集合基板及びろう材層を介して複数組接合した回路基板の集合体を得た。ついで、第2のブレークライン18,18’で分割することで、図7に示すように銅の回路板16及び銅の放熱板(図示せず)とセラミックス基板部19とを有する回路基板20を複数個得た。
【符号の説明】
【0069】
1:窒化珪素セラミックス焼結基板、
5,5’:貫通孔、
6:Cu板の面取り、
10:外縁、
11:耳部、
12,12a:窒化珪素セラミックス集合基板、
13:辺ブレークライン、
13a:スクライブ孔、
14:スリット、
15:角ブレークライン、
16:銅の回路板、
16’:銅の放熱板
16a,16a’:ろう材、
16b,16b’:原版のCu板、
17:縁部、
18,18’:第2のブレークライン、
19:セラミックス基板部、
20:回路基板

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11