IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

特許7490962印刷物の製造方法、インクセット及びインクの脱墨方法
<>
  • 特許-印刷物の製造方法、インクセット及びインクの脱墨方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法、インクセット及びインクの脱墨方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20240521BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20240521BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B41M5/00 100
C09D11/322
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41J2/01 123
B41J2/01 501
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020007772
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021112900
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】市川 亮太
(72)【発明者】
【氏名】丸 拓志
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043140(JP,A)
【文献】特開2013-221059(JP,A)
【文献】特開2013-220565(JP,A)
【文献】特開2012-201761(JP,A)
【文献】特開2002-137376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0145110(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0057400(KR,A)
【文献】特開2011-195610(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208567(WO,A1)
【文献】特開2019-157071(JP,A)
【文献】特開2000-309091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00- 5/52
B41J 2/01
B41J 2/165-2/215
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吸収性の基材を用意する工程(A)と、
第一の液体組成物及び第二の液体組成物の一方を前記基材に付与した後、他方の液体組成物を、前記一方の液体組成物と接触するように前記基材に付与する工程(B)と、
前記第一の液体組成物及び前記第二の液体組成物を乾燥させて印刷物を得る工程(C)と、を備え、
前記第一の液体組成物は、架橋剤と、水と、前記架橋剤と反応可能な第一の反応性樹脂と、を含み、且つ、任意で、顔料を更に含み、
前記架橋剤の架橋性基は、カルボジイミド基、グリシジル基、オキサゾリン基、イソシアネート基、アルデヒド基、N-メチロール基、アクリロイル基、ビニルスルホン基、活性ハロゲン基、エチレンイミノ基又はグリオキザール基であり、
前記第一の反応性樹脂の重量平均分子量は、10000以上であり、
前記第一の反応性樹脂の反応性基は、カルボキシル基、アミノ基又は水酸基であり、
前記第二の液体組成物は、顔料と、前記架橋剤と反応可能な第二の反応性樹脂と、水と、を含み、
前記第二の反応性樹脂の重量平均分子量は、10000以上であり、
前記第二の反応性樹脂の反応性基は、カルボキシル基、アミノ基又は水酸基であり、
前記第一の反応性樹脂、及び/又は、前記第二の反応性樹脂の反応性基が、カルボキシル基であり、
前記第一の反応性樹脂及び前記第二の反応性樹脂のうち、カルボキシル基を有する反応性樹脂の酸価が、10~200mgKOH/gであり、
前記工程(B)における前記第二の液体組成物の付与工程は、インクジェット記録方式により前記第二の液体組成物を吐出する工程であり、
前記工程(B)では、単位体積中に存在する前記架橋剤の質量Xと前記第一の反応性樹脂及び前記第二の反応性樹脂の合計質量Yの比(X/Y)が0.05~0.6となる、前記第一の液体組成物と前記第二の液体組成物との混在領域が形成される、印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記第一の液体組成物が、カチオン性化合物を更に含む、請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記架橋剤の架橋性基当量が、100~800g/molである、請求項1又は2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記第一の液体組成物における前記架橋剤の含有量が、前記第一の反応性樹脂100質量部に対して、10~600質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷物の製造方法。
【請求項5】
前記第一の液体組成物における前記顔料と前記第一の反応性樹脂の合計量が、前記第一の液体組成物の全質量を基準として、0質量%超15質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷物の製造方法。
【請求項6】
前記工程(B)では、前記第一の液体組成物を前記基材に付与した後、前記第二の液体組成物を前記第一の液体組成物と接触するように前記基材に付与する、請求項1~のいずれか一項に記載の印刷物の製造方法。
【請求項7】
前記第一の液体組成物の単位体積あたりの前記架橋剤の量をX[g/m]とし、前記第一の液体組成物の単位体積あたりの前記第一の反応性樹脂の量をY[g/m]とし、前記第二の液体組成物の単位体積あたりの前記第二の反応性樹脂の量をY[g/m]とすると、X/(Y+Y)が0.05~0.6である、請求項1~のいずれか一項に記載の印刷物の製造方法。
【請求項8】
架橋剤と、水と、前記架橋剤と反応可能な第一の反応性樹脂と、を含み、且つ、任意で、顔料を更に含む、第一の液体組成物と、
顔料と、前記架橋剤と反応可能な第二の反応性樹脂と、水と、を含み、インクジェット記録方式で用いられる第二の液体組成物と、を備え、
前記架橋剤の架橋性基は、カルボジイミド基、グリシジル基、オキサゾリン基、イソシアネート基、アルデヒド基、N-メチロール基、アクリロイル基、ビニルスルホン基、活性ハロゲン基、エチレンイミノ基又はグリオキザール基であり、
前記第一の反応性樹脂の重量平均分子量は、10000以上であり、
前記第一の反応性樹脂の反応性基は、カルボキシル基、アミノ基又は水酸基であり、
前記第二の反応性樹脂の重量平均分子量は、10000以上であり、
前記第二の反応性樹脂の反応性基は、カルボキシル基、アミノ基又は水酸基であり、
前記第一の反応性樹脂、及び/又は、前記第二の反応性樹脂の反応性基が、カルボキシル基であり、
前記第一の反応性樹脂及び前記第二の反応性樹脂のうち、カルボキシル基を有する反応性樹脂の酸価が、10~200mgKOH/gであり、
前記第一の液体組成物の単位体積あたりの前記架橋剤の量をX[g/m]とし、前記第一の液体組成物の単位体積あたりの前記第一の反応性樹脂の量をY[g/m]とし、前記第二の液体組成物の単位体積あたりの前記第二の反応性樹脂の量をY[g/m]とすると、X/(Y+Y)が0.05~0.6である、インクセット。
【請求項9】
前記第一の液体組成物が、カチオン性化合物を更に含む、請求項に記載のインクセット。
【請求項10】
前記架橋剤の架橋性基当量が、100~800g/mol以上である請求項又はに記載のインクセット。
【請求項11】
前記第一の液体組成物における前記架橋剤の含有量は、前記第一の反応性樹脂100質量部に対して、10~600質量部である、請求項10のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項12】
前記第一の液体組成物における前記顔料と前記第一の反応性樹脂の合計量が、前記第一の液体組成物の全質量を基準として、0質量%超15質量%以下である、請求項11のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法で得られた印刷物を用意する工程と、
フローテーション法を用いて前記印刷物の前記基材からインクを取り除く工程と、を備える、インクの脱墨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の製造方法、インクセット及びインクの脱墨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式は、使用する装置の騒音が小さく、操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易である。そのため、オフィスや家庭での出力機としてだけでなく、産業用途においても利用されている。
【0003】
インクジェット記録方式用のインク(インクジェットインク)としては、溶剤インク、UVインク、水性インク等がある。これらの中でも、環境面への対応等の点から水性インクの需要が高まっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、海洋プラスチックごみ問題を受けて、サステナビリティの点から、製品の包装材料をプラスチックから紙へ変更する動きがある。そのため、今後は紙のリサイクル需要の増加が予想される。
【0005】
紙のリサイクルの際にはインクの脱墨が行われる。インクの脱墨方法としては、フローテーション法が知られている。フローテーション法では、紙からインクを剥がす離解工程と、剥離したインクを気泡に吸着させて除去するフローテーション処理工程とが実施される(例えば特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-12226号公報
【文献】特開昭59-150191号公報
【文献】特開平5-186985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インクジェット記録方式用の水性インクでは、吐出性の観点から顔料が微細に分散されている。そのため、このような水性インクを用いて得られる印刷物の基材が紙のようなインク吸収性の基材(被記録媒体)である場合、インク中の顔料が基材内部に固着しやすく、また、フローテーション処理工程において、基材から脱離したインク(特に顔料)が、微細に分散して離解水(洗浄水)を着色させてしまい、着色した当該離解水(洗浄水)を介して基材に再付着しやすいため、フローテーション法での充分な脱墨性が得られ難い。
【0008】
そこで、本発明は、インクジェット記録方式でインク吸収性の基材に印刷する方法において、フローテーション法での脱墨性に優れる印刷物を得ることを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、インク吸収性の基材を用意する工程(A)と、第一の液体組成物及び第二の液体組成物の一方を基材に付与した後、他方の液体組成物を、一方の液体組成物と接触するように基材に付与する工程(B)と、第一の液体組成物及び第二の液体組成物を乾燥させて印刷物を得る工程(C)と、を備え、第一の液体組成物は、架橋剤と、水と、を含み、且つ、任意で、顔料と、架橋剤と反応可能な第一の反応性樹脂と、を更に含み、第二の液体組成物は、顔料と、架橋剤と反応可能な第二の反応性樹脂と、水と、を含み、工程(B)における第二の液体組成物の付与工程は、インクジェット記録方式により第二の液体組成物を吐出する工程であり、工程(B)では、単位体積中に存在する架橋剤の質量Xと第一の反応性樹脂及び第二の反応性樹脂の合計質量Yの比(X/Y)が0.05~0.6となる、第一の液体組成物と第二の液体組成物との混在領域が形成される、印刷物の製造方法に関する。
【0010】
上記側面の製造方法によれば、フローテーション法での脱墨性に優れる印刷物が得られる。
【0011】
上記側面の製造方法では、第一の液体組成物が、カチオン性化合物を更に含むことが好ましい。
【0012】
上記側面の製造方法では、第一の液体組成物が、第一の反応性樹脂を更に含むことが好ましい。この場合、第一の液体組成物における架橋剤の含有量は、第一の反応性樹脂100質量部に対して、10~600質量部であることが好ましく、第一の液体組成物における顔料と第一の反応性樹脂の合計量は、第一の液体組成物の全質量を基準として、0質量%超15質量%以下であることが好ましい。
【0013】
上記側面の製造方法では、第二の液体組成物における顔料と第二の反応性樹脂の合計量が、第二の液体組成物の全質量を基準として、0質量%超15質量%以下であることが好ましい。
【0014】
上記側面の製造方法における工程(B)では、第一の液体組成物を基材に付与した後、第二の液体組成物を第一の液体組成物と接触するように基材に付与することが好ましい。
【0015】
本発明の他の一側面は、架橋剤と、水と、を含み、且つ、任意で、顔料と、架橋剤と反応可能な第一の反応性樹脂と、を更に含む、第一の液体組成物と、顔料と、架橋剤と反応可能な第二の反応性樹脂と、水と、を含み、インクジェット記録方式で用いられる、第二の液体組成物と、を備え、第一の液体組成物の単位体積あたりの架橋剤の量をX[g/m]とし、第一の液体組成物の単位体積あたりの第一の反応性樹脂の量をY[g/m]とし、第二の液体組成物の単位体積あたりの第二の反応性樹脂の量をY[g/m]とすると、X/(Y+Y)が0.05~0.6である、インクセットに関する。
【0016】
上記側面のインクセットによれば、フローテーション法での脱墨性に優れる印刷物を得ることができる。すなわち、上記側面のインクセットは、フローテーション法で脱墨されリサイクルされることが想定される基材(再生基材)に印刷するためのインクセットとして好適に用いられる。
【0017】
上記側面のインクセットでは、第一の液体組成物が、カチオン性化合物を更に含むことが好ましい。
【0018】
上記側面のインクセットでは、第一の液体組成物が、第一の反応性樹脂を更に含むことが好ましい。この場合、第一の液体組成物における架橋剤の含有量は、第一の反応性樹脂100質量部に対して、10~600質量部であることが好ましく、第一の液体組成物における顔料と第一の反応性樹脂の合計量は、第一の液体組成物の全質量を基準として、0質量%超15質量%以下であることが好ましい。
【0019】
上記側面のインクセットでは、第二の液体組成物における顔料と第二の反応性樹脂の合計量が、第二の液体組成物の全質量を基準として、0質量%超15質量%以下であることが好ましい。
【0020】
上記側面の印刷物は、フローテーション法での脱墨性に優れる。
【0021】
本発明の他の一側面は、上記側面の製造方法で得られた印刷物を用意する工程と、フローテーション法を用いて印刷物の基材からインクを取り除く工程と、を備える、インクの脱墨方法に関する。
【0022】
上記側面の脱墨方法によれば、脱墨生成物中のインクの残留量を低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、インクジェット記録方式でインク吸収性の基材に印刷する方法において、フローテーション法での脱墨性に優れる印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態の印刷物の製造方法における工程(B)の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
【0026】
以下、場合により図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。また、図面中の同一又は相当部分には同一の符号を附すこととする。
【0027】
<印刷物の製造方法>
一実施形態の印刷物の製造方法は、インク吸収性の基材を用意する工程(A)と、第一の液体組成物及び第二の液体組成物の一方を基材に付与した後、他方の液体組成物を、一方の液体組成物と接触するように基材に付与する工程(B)と、第一の液体組成物及び第二の液体組成物を乾燥させて印刷物を得る工程(C)と、を備える。この方法で用いられる第一の液体組成物は、架橋剤と、水と、を含み、任意で、顔料と、前記架橋剤と反応可能な樹脂(以下、「第一の反応性樹脂」ともいう)と、を更に含む。また、第二の液体組成物は、顔料と、上記第一の液体組成物に含まれる架橋剤と反応可能な樹脂(以下、「第二の反応性樹脂」ともいう)と、水と、を含む。
【0028】
工程(B)における第二の液体組成物の付与工程は、インクジェット記録方式により第二の液体組成物を吐出する工程である。工程(B)では、単位体積中に存在する架橋剤の質量Xと第一の反応性樹脂及び第二の反応性樹脂の合計質量Yの比(X/Y)が0.05~0.6となる、第一の液体組成物と第二の液体組成物との混在領域が形成される。
【0029】
本実施形態の製造方法によれば、フローテーション法での脱墨性に優れる印刷物を得ることができる。本発明者は、この原因を以下のように推察している。まず、従来のインクジェット用水性インク組成物では、微細な顔料が基材内部に入り込みやすく、また、フローテーション処理工程において、基材から脱離したインク(特に顔料)が、微細に分散して離解水(洗浄水)を着色させてしまい、着色した当該離解水(洗浄水)を介して基材に再付着しやすいため、フローテーション法での充分な脱墨性が得られ難いと考えられる。これに対し、本実施形態の製造方法では、工程(C)における乾燥の進行に伴って混在領域中の架橋剤と反応性樹脂とが反応し架橋体が形成され、当該架橋体によって顔料が粗大化される。そのため、顔料の基材への入り込みや再付着の問題が起こり難くなると推察される。また、架橋体の架橋が密になり過ぎると架橋体が基材に固着して脱墨性が低下することが考えられるが、本実施形態の製造方法では、混在領域中の架橋剤と反応性樹脂との存在比が上記特定の範囲内であることにより、このような問題が起こり難い。これらのことが原因となり、上記効果が得られると推察される。
【0030】
また、本実施形態の製造方法では、第一の液体組成物と第二の液体組成物とを用いるため、いわゆる一液系のインクで問題となる、インク中の架橋剤と反応性樹脂とが過度に反応し、インクが経時で増粘することや、反応物により、ヘッドの目詰まりが生じることを防止できる。
【0031】
以下では、まず、本実施形態の製造方法に用いられる第一の液体組成物及び第二の液体組成物について説明する。
【0032】
第一の液体組成物は、架橋剤と、水と、を含み、任意で、顔料と、第一の反応性樹脂と、を更に含む。第一の液体組成物中の架橋剤、顔料及び第一の反応性樹脂は、いずれも一種であっても複数種の混合物であってもよい。
【0033】
架橋剤は、架橋性基(又は架橋性構造)を有する化合物である。架橋性基としては、例えば、カルボジイミド基、グリシジル基、オキサゾリン基、イソシアネート基、アルデヒド基、N-メチロール基、アクリロイル基、ビニルスルホン基、活性ハロゲン基、エチレンイミノ基、グリオキザール基等を挙げることができる。これらの中でも、カルボジイミド基及びグリシジル基からなる群から選ばれる基を2つ以上有する化合物は、混合後の保存安定性に優れ、安全性が高いので好ましい。
【0034】
架橋剤としては、親水性セグメントが付与されたポリカルボジイミド化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル化物等が挙げられる。より具体的には、日清紡ケミカル株式会社のカルボジライトSV-02、カルボジライトV-02、カルボジライトV-02-L2、カルボジライトV-10、カルボジライトSW-12G、カルボジライトE-02、カルボジライトE-05(いずれも商品名)等、ナガセケムテックス株式会社のデナコールEX-321(商品名)等が挙げられる。
【0035】
架橋剤の架橋性基当量は、100g/mol以上、200g/mol以上又は300g/mol以上であってよく、800g/mol以下、600g/mol以下又は300g/mol以下であってよい。なお、架橋性基当量は、例えばJIS K 7236に準じて求められる。第一の液体組成物が複数種の架橋剤を含む場合、架橋剤の架橋性基当量は、架橋剤全体としての架橋性基当量である。
【0036】
架橋剤の含有量は、例えば、第一の液体組成物の全質量を基準として、0.15質量%以上、0.25質量%以上又は0.5質量%以上であってよく、10質量%以下、8質量%以下又は2質量%以下であってよい。
【0037】
通常、架橋剤は水中では安定に存在する。しかしながら、第一の液体組成物が第一の反応性樹脂を含む場合、第一の液体組成物の乾燥前に架橋剤と第一の反応性樹脂との反応が部分的に進行する場合がある。そのため、第一の液体組成物の付与工程がインクジェット記録方式により第一の液体組成物を吐出する工程である場合、架橋剤の含有量を、第一の反応性樹脂100質量部に対して、10~600質量部とすることが好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲内である場合、優れた吐出安定性が得られる傾向がある。第一の反応性樹脂100質量部に対する架橋剤の含有量は、吐出安定性に優れる観点から、より好ましくは30質量部以上であり、更に好ましくは50質量部以上である。第一の反応性樹脂100質量部に対する架橋剤の含有量は、吐出安定性に優れる観点から、より好ましくは400質量部以下であり、更に好ましくは200質量部以下である。
【0038】
顔料は、特に限定はなく、水性グラビアインク又は水性インクジェットインクにおいて通常使用される有機顔料及び無機顔料を使用することができる。顔料は、有機顔料及び無機顔料の一方又は両方を含んでいてよい。また、顔料としては、未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
【0039】
無機顔料としては、例えば、酸化鉄や、コンタクト法、ファーネス法又はサーマル法等の方法で製造されたカーボンブラックなどを使用することができる。
【0040】
有機顔料としては、例えばアゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、レーキ顔料(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0041】
ブラックインクに使用可能な顔料(ブラック顔料)としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6、7、8、10、26、27、28等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントブラック7が好ましく用いられる。ブラック顔料の具体例としては、三菱化学株式会社製のNo.2300、No.2200B、No.900、No.960、 No.980、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MA7、MA8、MA100等;コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等;キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Mogul 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等;デグサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同1400U、Special Black 6、同5、同4、同4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180等が挙げられる。
【0042】
イエローインクに使用可能な顔料(イエロー顔料)の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
【0043】
マゼンタインクに使用可能な顔料(マゼンタ顔料)の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、176、184、185、202、209、269、282等;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0044】
シアンインクに使用可能な顔料(シアン顔料)の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、63、66等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましく用いられる。
【0045】
ホワイトインクに使用可能な顔料(ホワイト顔料)の具体例としては、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、微粉ケイ酸、合成珪酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等があげられる。
【0046】
顔料は、例えば、顔料と、水と、顔料分散剤とを含有する顔料分散体として配合されてもよい。顔料分散剤としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのスチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体の水性樹脂、及び、前記水性樹脂の塩を使用することができる。顔料分散剤としては、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPBシリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDisperbykシリーズ、BASF社製のEFKAシリーズ、日本ルーブリゾール株式会社製のSOLSPERSEシリーズ、エボニック社製のTEGOシリーズ等を使用することができる。また、顔料分散剤として、WO2018/190139号パンフレットにおいてポリマー(G)として例示された化合物を用いることもできる。
【0047】
顔料には、インク中に安定に存在させるために、水性媒体に良好に分散させる手段を講じてあることが好ましい。例えば、顔料の表面には、分散性付与基(親水性官能基及び/又はその塩)又は分散性付与基を有する活性種が、直接又はアルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等を介して間接的に結合(グラフト)されていてよい。このような自己分散型顔料は、例えば、真空プラズマ処理、次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、オゾンによる酸化処理等による方法や、水中で酸化剤により顔料表面を酸化する湿式酸化法、p-アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシ基を結合させる方法等によって製造することができる。
【0048】
自己分散型顔料を用いる場合、顔料分散剤を含む必要がないため、顔料分散剤に起因する発泡等を抑制することができ、優れた吐出安定性が得られやすい。また、自己分散型顔料を用いる場合、顔料分散剤に起因する大幅な粘度上昇が抑えられるため、顔料をより多く含有することが可能となり、印字濃度の高い印刷物を製造しやすくなる。自己分散型顔料としては、市販品を利用することも可能である。市販品としては、マイクロジェットCW-1(商品名;オリヱント化学工業株式会社製)、CAB-O-JET200、CAB-O-JET300(以上商品名;キヤボット社製)等が挙げられる。
【0049】
顔料の平均粒子径は、特に限定されないが、第一の液体組成物の付与工程がインクジェット記録方式により第一の液体組成物を吐出する工程である場合、吐出性の観点から、200nm以下が好ましい。インク中の顔料の平均粒子径が上記値以下である場合に特に顔料が基材内部に固着しやすい傾向があるため、顔料の平均粒子径が上記値以下である場合、本実施形態の製造方法による脱墨性の向上効果が得られやすい。顔料の平均粒子径は、例えば、50nm以上であってよい。なお、顔料の平均粒子径は、レーザー散乱型粒径測定装置(例えば、マイクロトラック)を用いて、レーザー散乱法により測定される、体積基準の粒度分布におけるd50径である。
【0050】
第一の液体組成物中の顔料の含有量は、充分な印字濃度を確保する観点から、第一の液体組成物の全質量を基準として、例えば0質量%以上であり、1質量%以上又は2質量%以上であってもよい。顔料の含有量は、充分な吐出性を確保する観点から、第一の液体組成物の全質量を基準として、例えば15質量%以下であり、10質量%以下であってもよい。
【0051】
第一の反応性樹脂は、第一の液体組成物に含まれる上記架橋剤と反応可能な樹脂であり、架橋剤が有する架橋性基と反応性を有する反応性基を有している。第一の液体組成物が第一の反応性樹脂を含む場合、顔料が基材内部に入りこみにくくなり、また、フローテーション処理工程における粒子の粗大化が起こりやすくなることで、得られる印刷物の脱墨性がより向上する傾向がある。一方、第一の液体組成物が第一の反応性樹脂を含む場合、第一の液体組成物中で架橋反応が進行して経時で粘度が増加する場合がある。なお、本明細書中、「樹脂」とは、重量平均分子量が10000以上である化合物を意味する。
【0052】
反応性基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。反応性基と架橋性基との組み合わせは、反応性基がカルボキシル基であり、架橋性基がカルボジイミド基、又は、グリシジル基である組み合わせが好ましい。
【0053】
第一の反応性樹脂は、例えば、バインダー成分として含まれる樹脂(バインダー樹脂)であってよく、顔料分散剤として含まれる樹脂であってもよい。
【0054】
反応性基を有するバインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、酸変性ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。なかでもアクリル系樹脂を使用することが好ましい。
【0055】
反応性基を有する顔料分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール類、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等のアクリル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等のスチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体の水性樹脂、及び、前記水性樹脂の塩が挙げられる。
【0056】
第一の反応性樹脂の重量平均分子量は、10,000以上又は20,000以上であってよく、100,000以下であってよい。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定された値である。
【0057】
第一の反応性樹脂の酸価は、例えば、10mgKOH/g以上であってよく、200mgKOH/g以下であってよい。酸価は、JIS試験方法K 0070-1992に基づく酸価測定方法によって測定される値である。
【0058】
第一の反応性樹脂の反応性基当量は、10g/mol以上であってよく、200g/mol以下であってよい。なお、反応性基当量は、上記酸価の測定と同様にして求められる。第一の液体組成物が複数種の反応性樹脂を含む場合、反応性基当量は、反応性樹脂全体としての反応性基当量である。
【0059】
第一の反応性樹脂の含有量は、第一の液体組成物の全質量を基準として、例えば0質量%以上であり、0.25質量%以上又は0.5質量%以上であってもよい。第一の反応性樹脂の含有量は、第一の液体組成物の全質量を基準として、例えば10質量%以下であり、5質量%以下であってもよい。
【0060】
第一の液体組成物が顔料及び/又は第一の反応性樹脂を含む場合、第一の液体組成物中の顔料と第一の反応性樹脂の合計量は、吐出安定性の観点から、第一の液体組成物の全質量を基準として、0質量%超15質量%以下であることが好ましく、0質量%超14.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0061】
第一の液体組成物に含まれる水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の、純水又は超純水を使用することができる。水の含有量は、第一の液体組成物の全質量を基準として、30質量%以上又は40質量%以上であってよく、90質量%以下又は80質量%以下であってよい。
【0062】
第一の液体組成物は、カチオン性化合物を更に含んでいてもよい。カチオン性化合物は水中で正に帯電する化合物であり、第一の液体組成物がカチオン性化合物を含む場合、顔料を凝集させやすくなり、フローテーション法での脱墨性をより向上させやすくなる。ただし、第一の液体組成物の付与工程がインクジェット記録方式により第一の液体組成物を吐出する工程である場合には、吐出性の観点から、顔料とカチオン性化合物を併用しないことが好ましい。
【0063】
カチオン性化合物としては、例えば、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、硝酸カルシウムなどが挙げられる。カチオン性化合物としては、一級アミンを主成分とする機能性カチオンポリマー(例えば、ニットボーメディカル株式会社のPAAシリーズ等)、チタンラクテートアンモニウム塩(例えば、マツモトファインケミカル株式会社のオルガチックスTC-300等)を用いることもできる。カチオン性化合物は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
カチオン性化合物の含有量は、第一の液体組成物の全質量を基準として、例えば0質量%以上であり、0.5質量%以上又は1質量%以上であってよく、20質量%以下又は10質量%以下であってもよい。
【0065】
第一の液体組成物の25℃におけるpHは、例えば、7.0~11.0である。
【0066】
第一の液体組成物の粘度は、例えば、32℃で2mPa・s以上10mPa・s未満である。上記粘度は、例えば、E型粘度計に相当する円錐平板形(コーン・プレート形)回転粘度計を使用し、下記条件にて測定される値である。
測定装置:TVE-25形粘度計(東機産業社製、TVE-25 L)
校正用標準液:JS20
測定温度:32℃
回転速度:10~100rpm
注入量:1200μL
【0067】
第一の液体組成物の表面張力は、例えば、25℃で20~40mN/mである。
【0068】
第二の液体組成物は、インクジェット記録方式により用いられるインクジェットインクである。第二の液体組成物は、少なくとも、顔料と、第二の反応性樹脂と、水と、を含む。第二の液体組成物中の顔料及び第二の反応性樹脂は、いずれも一種であっても複数種の混合物であってもよい。
【0069】
第二の液体組成物に含まれる顔料の詳細(顔料の種類、平均粒子径等)は、第一の液体組成物に含まれ得る顔料の詳細と同じである。第一の液体組成物に含まれる顔料と第二の液体組成物に含まれる顔料とは同一であっても異なっていてもよい。
【0070】
第二の液体組成物中の顔料の含有量は、充分な印字濃度を確保する観点から、第二の液体組成物の全質量を基準として、例えば1質量%以上であり、2質量%以上であってもよい。顔料の含有量は、充分な吐出性を確保する観点から、第二の液体組成物の全質量を基準として、例えば15質量%以下であり、10質量%以下であってもよい。
【0071】
第二の反応性樹脂は、第一の液体組成物に含まれる架橋剤と反応可能な樹脂であり、架橋剤が有する架橋性基と反応性を有する反応性基を有している。第二の反応性樹脂に用いることができる樹脂の詳細(反応性基の数、反応性基当量、酸価、具体的な樹脂の種類等)は、第一の反応性樹脂に用いることができる樹脂の詳細と同じである。第二の反応性樹脂と第一の反応性樹脂とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0072】
第二の反応性樹脂の含有量は、第二の液体組成物の全質量を基準として、例えば0質量%以上であり、0.25質量%以上又は0.5質量%以上であってもよい。第二の反応性樹脂の含有量は、第二の液体組成物の全質量を基準として、例えば10質量%以下であり、5質量%以下であってもよい。
【0073】
第二の液体組成物中の顔料と第二の反応性樹脂の合計量は、吐出安定性の観点から、第二の液体組成物の全質量を基準として、0質量%超15質量%以下であることが好ましく、0質量%超14.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0074】
第二の液体組成物に含まれる水の詳細は、第一の液体組成物に含まれる水の詳細と同じである。水の含有量は、第二の液体組成物の全質量を基準として、30質量%以上又は40質量%以上であってよく、90質量%以下又は80質量%以下であってよい。
【0075】
第二の液体組成物は、架橋剤を含まないことが好ましい。第二の液体組成物における架橋剤の含有量は、例えば、第二の反応性樹脂100質量部に対して、1質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以下であり、より好ましくは0質量部である。
【0076】
第二の液体組成物の25℃におけるpHは、例えば、7.0~11.0である。
【0077】
第二の液体組成物の粘度は、例えば、32℃で2mPa・s以上10mPa・s未満である。上記粘度は、第一の液体組成物の粘度と同様にして測定される値である。
【0078】
第二の液体組成物の表面張力は、例えば、25℃で20~40mN/mである。
【0079】
第一の液体組成物及び第二の液体組成物は、上記成分以外の他の成分を更に含んでいてよい。第一の液体組成物及び第二の液体組成物は、例えば、反応性基を有しないバインダー樹脂や顔料分散樹脂を更に含んでいてもよく、界面活性剤、湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を更に含んでいてもよい。第一の液体組成物及び第二の液体組成物は、粘度の調整等を目的として、水以外の溶媒成分(例えば有機溶剤)を含有してもよい。ただし、水と水以外の溶媒成分(例えば有機溶剤)との混合溶媒を用いる場合、溶媒全体に占める水の含有量は、例えば40質量%以上であり、50質量%以上であってもよい。有機溶剤としては、インクジェットインクに用いられる公知の有機溶剤を使用することができる。
【0080】
本実施形態では、第一の液体組成物の単位体積あたりの架橋剤の量をX[g/m]とし、第一の液体組成物の単位体積あたりの第一の反応性樹脂の量をY[g/m]とし、第二の液体組成物の単位体積あたりの第二の反応性樹脂の量をY[g/m]とすると、X/(Y+Y)が0.05~0.6であることが好ましい。第一の液体組成物及び第二の液体組成物の組み合わせとして、X/(Y+Y)がこのような範囲を満たす組み合わせを選択して用いることにより、工程(B)において上記比(X/Y)を満たす混在領域を容易に形成することができる。X/(Y+Y)は、0.1以上又は0.2以上であってよく、0.5以下、0.4以下又は0.3以下であってよい。
【0081】
以上説明した第一の液体組成物及び第二の液体組成物は、上述した含有成分を混合することによって製造することができる。上述した成分は、一括して混合してよく、順次混合してもよい。混合の際には、例えば、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等の分散機を使用することができる。混合後は、必要に応じて遠心分離処理、濾過処理等を行ってよい。
【0082】
次に、本実施形態の工程(A)~(C)について説明する。
【0083】
工程(A)では、インク吸収性の基材(被記録媒体)を用意する。インク吸収性とは、基材(被記録媒体)の記録面と水との接触時間100m秒における前記基材(被記録媒体)の吸水量が10g/m超であることをいう。吸水量は、自動走査吸液計(熊谷理機工業株式会社製、KM500win)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下にて測定される、純水の接触時間100m秒における転移量である。測定条件を以下に示す。
[Spiral Method]
Contact Time:0.010~1.0(sec)
Pitch:7(mm)
Lencth per sampling:86.29(degree)
Start Radius:20(mm)
End Radius:60(mm)
Min Contact Time:10(ms)
Max Contact Time:1000(ms)
Sampling Pattern:50
Number of sampling points:19
[Square Head]
Slit Span:1(mm)
Width:5(mm)
【0084】
インク吸収性の基材としては、印刷後にフローテーション法での脱墨が可能なものであれば特に限定されず、例えば、複写機で一般的に使用されているコピー用紙(PPC紙)等の紙基材、インクの吸収層を有する基材等が挙げられる。
【0085】
工程(B)では、第一の液体組成物の付与工程と第二の組成物の付与工程とが実施され、単位体積中に存在する架橋剤の質量Xと第一の反応性樹脂及び第二の反応性樹脂の合計質量Yの比(X/Y)が0.05~0.6となる、第一の液体組成物と第二の液体組成物との混在領域が形成される。
【0086】
第一の液体組成物の付与工程と第二の組成物の付与工程の実施順序は特に限定されないが、インク(特に顔料)が基材に浸透するのを防止し、脱墨性が良好となる観点では、図1に示すように、第一の液体組成物の付与工程を第二の液体組成物の付与工程より先に実施することが好ましい。すなわち、一方の液体組成物(先に付与される液体組成物)として第一の液体組成物を用い、他方の液体組成物(後に付与される液体組成物)として第二の液体組成物を用いることが好ましい。
【0087】
具体的には、まず、第一の液体組成物1を基材2に付与する(図1(a)参照)。これにより、基材2に第一の液体組成物1からなる領域10が形成される。次いで、第二の液体組成物3を、第一の液体組成物1と接触するように基材2に付与する(図1(b)参照)。これにより、第一の液体組成物1と第二の液体組成物3との混在領域40が形成される。なお、図1では、基材2に付与された第一の液体組成物1及び第二の液体組成物3の全てが上記混在領域40に含まれているが、基材2に付与された第一の液体組成物1の一部及び/又は第二の液体組成物3の一部が混在領域40に含まれるように当該混在領域40が形成されてもよい。
【0088】
第一の液体組成物の付与工程は、ロールコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ゲートロールコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、スプレーコート法、又はグラビアコーター法、カーテンコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ディスペンサー印刷法等により第一の液体組成物を塗布する工程であっても、インクジェット記録方式により第一の液体組成物を吐出する工程であってもよい。インクジェット記録方式により第一の液体組成物を吐出する工程は、例えば、インクジェットヘッドのインク吐出口を有する面(x)から、前記面(x)の垂線と基材(被記録媒体)とが交わる位置(y)までの距離を1mm以上として、第一の液体組成物を吐出し基材に印刷する工程であってよい。
【0089】
第二の液体組成物の付与工程は、インクジェット記録方式により第二の液体組成物を吐出する工程である。この工程は、例えば、インクジェットヘッドのインク吐出口を有する面(x)から、前記面(x)の垂線と基材(被記録媒体)とが交わる位置(y)までの距離を1mm以上として、第二の液体組成物を吐出し基材に印刷する工程であってよい。
【0090】
工程(B)における第一の液体組成物の付与量及び第二の液体組成物の付与量(吐出量)は、特に限定されない。例えば、第一の液体組成物を、基材上の広範な領域(例えば基材上の全面)に付与して第一の液体組成物からなる領域を形成した後、当該第一の液体組成物からなる領域内の一部の領域が混在領域となるように、第二の液体組成物を基材に付与してもよい。また、上記混在領域が形成される限り、第一の液体組成物が付与される位置及び第二の液体組成物が付与される位置は、特に限定されない。例えば、図1では、第一の液体組成物と第二の液体組成物とが、基材の表面に垂直な方向に並んで接触するように基材に付与されているが、第一の液体組成物と第二の液体組成物とは、両者が基材の表面に平行な方向に並んで接触するように基材に付与されてもよい。
【0091】
第一の液体組成物の付与工程と第二の液体組成物の付与工程は連続して行うことが好ましい。第一の液体組成物の付与工程を第二の液体組成物の付与工程よりも先に行う場合、第二の液体組成物と接触する前に第一の液体組成物を乾燥させないことが好ましい。同様に、第二の液体組成物の付与工程を第一の液体組成物の付与工程よりも先に行う場合、第一の液体組成物と接触する前に第二の液体組成物を乾燥させないことが好ましい。
【0092】
工程(B)では、吐出された第二の液体組成物の一部が上記混在領域に含まれればよいが、吐出された第二の液体組成物のうち、50質量%以上が混在領域に含まれることが好ましく、70質量%以上が混在領域に含まれることがより好ましく、90質量%以上が混在領域に含まれることが更に好ましい。
【0093】
混在領域における比(X/Y)は、脱墨性がより向上する観点から、好ましくは0.1以上であり、0.2以上であってもよい。比(X/Y)は、脱墨性がより向上する観点から、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.4以下であり、0.3以下であってもよい。架橋剤の質量Xは、0.15以上であってよく、10以下であってよい。また、第一の反応性樹脂及び第二の反応性樹脂の合計質量Yは、0.25以上であってよく、20以下であってよい。
【0094】
混在領域に含まれる架橋剤の含有量は、混在領域の全質量を基準として、0.075質量%以上、0.125質量%以上又は0.25質量%以上であってよく、5質量%以下、4質量%以下又は1質量%以下であってよい。
【0095】
混在領域に含まれる第一の反応性樹脂及び第二の反応性樹脂の合計含有量は、混在領域の全質量を基準として、0質量%以上、0.25質量%以上又は0.5質量%以上であってよく、20質量%以下、10質量%以下又は5質量%以下であってよい。
【0096】
混在領域に含まれる顔料の含有量は、混在領域の全質量を基準として、0質量%以上、1質量%以上又は2質量%以上であってよく、30質量%以下、20質量%以下又は15質量%以下であってよい。なお、第一の反応性樹脂が顔料を含む場合、上記含有量は、第一の反応性樹脂に含まれていた顔料と第二の反応性樹脂に含まれていた顔料の合計含有量である。
【0097】
混在領域に含まれるカチオン性化合物の含有量は、混在領域の全質量を基準として、0質量%以上、0.25質量%以上又は0.5質量%以上であってよく、20質量%以下、10質量%以下又は5質量%以下であってよい。
【0098】
工程(C)では、第一の液体組成物及び第二の液体組成物を乾燥させる。これにより、インク吸収性の基材と、当該基材に設けられたインクと、を備える印刷物が得られる。本実施形態では、乾燥の進行に伴って混在領域中の架橋剤と反応性樹脂とが反応し架橋体が形成される。そのため、上記インクは、架橋剤と反応性樹脂との反応物である架橋体を含有する。
【0099】
第一の液体組成物及び第二の液体組成物の乾燥は、加熱することなく常温(例えば25℃)で行ってよく、加熱しながら行ってもよい。乾燥温度は、例えば、40~200℃である。乾燥は、減圧下で行ってもよい。
【0100】
乾燥時間は、特に限定されないが、インク中の水分量が、1質量%以下となるまで、第一の液体組成物及び第二の液体組成物を乾燥させることが好ましい。乾燥後の水分量は、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0101】
以上の工程(A)~(C)により得られる印刷物は、インク吸収性の基材と、当該基材上に設けられたインクとを備えており、フローテーション法での脱墨性に優れる。
【0102】
<インクセット>
一実施形態のインクセットは、第一の液体組成物と、第二の液体組成物と、を備える。第一の液体組成物及び第二の液体組成物の詳細は、X/(Y+Y)が0.05~0.6である点を除き、上記実施形態の印刷物の製造方法において用いられる第一の液体組成物及び第二の液体組成物の詳細と同じである。このインクセットによれば、フローテーション法での脱墨性に優れる印刷物を得ることができる。X/(Y+Y)は、0.1以上又は0.2以上であってよく、0.5以下、0.4以下又は0.3以下であってよい。
【0103】
<脱墨方法>
一実施形態のインクの脱墨方法は、上記実施形態の印刷物の製造方法で得られた印刷物を用意する工程と、フローテーション法を用いて当該印刷物の基材からインクを取り除く工程と、を備える。この方法によれば、脱墨生成物中のインクの残留量を低減することができる。
【0104】
フローテーション法を用いて当該印刷物の基材からインクを取り除く工程は、例えば、基材からインクを剥がす離解工程と、剥離したインクを気泡に吸着させ、インクを基材から分離させ除去するフローテーション処理工程と、を備える。離解工程及びフローテーション処理工程は、従来の公知の方法で実施することができる。
【実施例
【0105】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
<顔料分散体の調製>
(調製例1-1)
ブラック顔料として、三菱ケミカル株式会社製のカーボンブラック「#960」(商品名)を用意し、以下の方法で、顔料分散体K(顔料濃度:20質量%、反応性樹脂濃度:8質量%)を調製した。まず、ブラック顔料150g、顔料分散剤60g、プロピレングリコール75g、及び、34質量%水酸化カリウム水溶液19.4gを1.0Lのインテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社製)に仕込み、ローター周速2.94m/s、パン周速1m/sで25分間混練した。続いて、前記インテンシブミキサーの容器内の混練物に、撹拌を継続しながらイオン交換水306gを徐々に加えた後、プロピレングリコール12g、及び顔料濃度が20質量%になるようにイオン交換水127.5gを更に加え混合することによって、顔料濃度が20質量%、反応性樹脂濃度が8質量%の水性顔料分散体(顔料分散体K)を得た。なお、顔料分散剤としては、反応性基としてカルボキシル基を有する反応性樹脂を用いた。具体的には、星光PMC株式会社製のDX-100(酸価:110、分子量:18000)を用いた。
【0107】
(調製例1-2)
イエロー顔料として、山陽色素株式会社製の「FAST YELLOW 7413」(商品名)を用意し、ブラック顔料に代えて当該イエロー顔料を用いたこと以外は、調製例1-1と同様にして、顔料分散体Y(顔料濃度:20質量%、反応性樹脂濃度が8質量%)を調製した。
【0108】
<液体組成物の調製>
表1~2に示す各成分を、表1~2に示す配合量(質量部)で混合して撹拌し、液体組成物1~18を得た。各成分の詳細を以下に示す。なお、表1~2に示すバインダー樹脂及び架橋剤の配合量は固形分量である。
・顔料分散体K(上記で調製したもの)
・顔料分散体Y(上記で調製したもの)
・ボンコートIJ-8000(反応性基としてカルボキシル基を有する反応性樹脂、DIC株式会社製、固形分量:39質量%、酸価:20、分子量:数十万、)
・プロピレングリコール
・精製グリセリン
・トリエタノールアミン
・ACTICIDE B20(ソー・ジャパン株式会社製、防腐剤)
・SURFYNOL 465(エボニック社製、エトキシル化アセチレンジオール界面活性剤)
・カルボジライトE-05(日清紡ケミカル株式会社製、固形分量:40質量%)
・カルボジライトSV-02(日清紡ケミカル株式会社製、固形分量:40質量%)
・デナコールEX-321(ナガセケムテックス株式会社製、固形分量:100質量%)
・乳酸カルシウム
・イオン交換水
【0109】
<吐出安定性(オープンタイム)評価>
まず、京セラ株式会社製のインクジェットヘッドKJ4B-YHに液体組成物1~18をそれぞれ充填し、ヘッドノズルプレート面からのインクサブタンクの水頭差を+35cm、負圧を-5.0kPaに設定することで供給圧を調整した。また、インクジェットヘッドのインク吐出口と被記録媒体との最短距離(インクジェットヘッドのインク吐出口を有する面(x)から、前記面(x)に対して仮定した垂線と、被記録媒体とが交わる位置(y)までの距離(ギャップ))は1mmに設定した。被記録媒体としては、上質紙(日本製紙社(Nippon Paper Company, Limited)製のnpi上質紙、米坪64g/m、A4版)を使用した。前記ヘッドの駆動条件は、インクジェットヘッドの標準電圧及び標準温度とし、液滴サイズを12pLに設定して、100%ベタ画像を印刷し、全ノズルで正常に印刷されていることを確認した。次に、前記印刷を停止し、30分間放置した。前記放置後、直ちに前記と同様の方法で100%ベタ画像を印刷し、印刷物のスジの数を目視で確認した。下記の基準に基づき吐出安定性を評価した。結果を表1~2に示す。
A:スジなし
B:スジあり(数が10箇所未満)
C:スジあり(数が10箇所以上)
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
<印刷物の製造>
(実施例1~12及び比較例1~5)
液体組成物1~18のうちの2種の液体組成物を表3~4に示すように組み合わせて、第一の液体組成物及び第二の液体組成物を備えるインクセット1~17を得た。なお、第一の液体組成物の単位体積あたりの架橋剤の量をX[g/m]とし、第一の液体組成物の単位体積あたりの反応性樹脂の量をY[g/m]とし、第二の液体組成物の単位体積あたりの反応性樹脂の量をY[g/m]としたときの、X/(Y+Y)を表3~4に示した。
【0113】
上記で得られたインクセットを用いて、インク吸収性の基材(被記録媒体)である上質紙(日本製紙社(Nippon Paper Company, Limited)製のnpi上質紙、米坪64g/m、A4版)への100%ベタ印刷を行った。具体的には、まず、第一の液体組成物をインクジェット印刷装置(トライテック社製 OnePassJET)を用いて吐出し上記基材に付着させた。その際、第一の液体組成物の単位面積あたりの質量は6.6g/mとなるようにした。これにより、第一の液体組成物の塗膜を得た。
【0114】
次いで、完全に乾燥していないタック感が残る状態の第一の液体組成物の塗膜に第二の液体組成物が接触するように、インクジェット印刷装置(トライテック社製 OnePassJET)を用いた第二の液体組成物の100%ベタ印刷を実施した。この際、第二の液体組成物の吐出量は第一の液体組成物と吐出量と同量とし、第二の液体組成物の単位面積あたりの質量は6.6g/mとなるようにした。これにより第一の液体組成物と第二の液体組成物とが均一に混在した混在領域を有する塗膜(混合塗膜)を得た。混在領域の単位体積中に存在する架橋剤の質量Xと反応性樹脂の質量Yの比(X/Y)を表3~4に示した。
【0115】
次いで、近赤外線ヒーター(1kW×9本)を用いて、前記混合塗膜の塗布面までの照射距離が10.5cmの位置から、1秒間近赤外線を照射し、加熱した。これにより、第一の液体組成物と第二の液体組成物とからなる混合塗膜を乾燥させて、基材(上質紙)と、当該基材上に設けられたインクと、を備える印刷物(印刷パルプ)を得た。
【0116】
<脱墨性評価>
まず、標準パルプ離解機(熊谷理機工業社(Kumagai Riki Kogyo Co.,Ltd.)製、製品名)に実施例及び比較例の印刷物をそれぞれ投入し、パルプ濃度4%となるよう印刷物をイオン交換水で希釈した。次いで、60℃下、3,000rpmで12分間上記離解機内を回転させた後、パルプ濃度1%となるようイオン交換水で希釈し、60℃下、500rpmで10分間上記離解機内を回転させた(離解工程)。このようにして得られたパルプ液をイオン交換水で洗浄することにより、顔料、高分子物質(架橋剤と反応性樹脂の架橋体等)及びこれらの凝集体を印刷パルプから剥離した。
【0117】
次に、フローテーション処理工程を実施した。フローテーション処理工程には、熊谷理機工業社製の実験用フローテーターを用いた。パルプ濃度1%試料4.3kgに脱墨剤(DI7027(商品名、花王株式会社製)を1.5%に希釈したもの)を7mL加えて、4L/分の供給空気量で、1,500rpmで10分間フローテーションを行うことで、顔料、高分子物質及びこれらの凝集体を印刷パルプから分離し除去した(脱墨工程)。このようにして得られた、顔料、高分子物質及びこれらの凝集体が分離されたパルプを、パルプ濃度が20%になるまで脱水することで、評価サンプル(パルプ試料)を作製した。
【0118】
上記で得られた各評価サンプル(脱墨後のパルプ試料)を、25℃、45%雰囲気下で48時間放置した後、X-Rite 528を用いて評価サンプルのL値(明度)を測定した。下記の基準に基づき脱墨性を評価した。L値が高いほど、脱墨性に優れるといえる。結果を表3~4に示す。
A:L値が80以上
B:L値が70以上、80未満
C:L値が60以上、70未満
D:L値が60未満
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【符号の説明】
【0121】
1…基材、2…第一の液体組成物、3…第二の液体組成物、10…第一の液体組成物からなる領域、40…混在領域。
図1