(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】撮像装置および像振れ補正方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/68 20230101AFI20240521BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20240521BHJP
【FI】
H04N23/68
G03B5/00 J
(21)【出願番号】P 2020035249
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 晶
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012093(JP,A)
【文献】特開2016-218256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/68
G03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系を通った被写体光束を被写体像として結像するイメージセンサと、
振れを検出する振れ検出手段と、
前記撮像光学系の少なくとも一部をなす光学要素と前記イメージセンサの少なくとも一方から構成される像振れ補正部材と、
前記像振れ補正部材を前記撮像光学系の光軸と異なる方向に駆動することで、前記イメージセンサ上への被写体像の結像位置を変位させて像振れを補正する駆動機構と、
前記像振れ補正部材の制御目標位置と現在位置に基づいて、一定の制御周期で前記駆動機構による前記像振れ補正部材の駆動を制御する駆動制御部と
を備える撮像装置において、
前記駆動制御部は、前記振れ検出手段から出力された振れ検出信号(G)を入力するローパスフィルタおよび前記撮像装置の移動状態を判断する状態判断部とを有し、
前記状態判断部は、前記振れ検出信号(G)がパン状態検出閾値(L
Pan)よりも大きいときに前記撮像装置がパン状態にあると判断し、
パン状態でなければ前記ローパスフィルタの出力信号(G
LPF)により前記撮像装置の流し撮り状態を含む前記パン状態以外のいずれかの状態であると判断し、
前記ローパスフィルタの出力信号(G
LPF)に応じて決定した流し撮り状態検出用時間閾値(T
Follow)よりも長い期間、前記ローパスフィルタの出力信号(G
LPF)が前記パン状態検出閾値(L
Pan)よりも小さい流し撮り状態検出閾値(L
Follow)より大きい状態が継続した場合に前記撮像装置が前記流し撮り状態にあると判断し、
前記駆動制御部は、前記状態判断部により判断された状態に応じて前記駆動機構による前記像振れ補正部材の駆動量の演算を行い、
前記駆動制御部は、前記制御周期ごとにサンプリングされた前記振れ検出信号から、前記制御周期ごとに演算された前記ローパスフィルタの出力信号を減算した信号をもとに前記像振れ補正部材の駆動量を演算する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記状態判断部が前記パン状態と判断した際に、像振れ補正を行わないことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記振れ検出手段から出力された振れ検出信号(G)を入力するハイパスフィルタをさらに有し、前記状態判断部は、前記パン状態または前記流し撮り状態ではないと判断した場合、通常状態と判断し、前記駆動制御部は、前記ハイパスフィルタの出力信号をもとに前記像振れ補正部材の駆動量を演算することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記パン状態以外の状態において、パン状態検出用時間閾値(T
Pan)に亘り前記振れ検出信号(G)のレベルが前記パン状態検出閾値(L
Pan)よりも大きい場合に前記パン状態に遷移し、前記パン状態において、前記振れ信号のレベルが非パン状態検出閾値(L
noPan)よりも小さい場合に前記パン状態以外の状態に遷移し、前記非パン状態検出閾値(L
noPan)は前記前記パン状態検出閾値(L
Pan)以下であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記パン状態または前記流し撮り状態以外の状態において、
パン状態検出用時間閾値(T
Pan
)に亘り前記振れ検出信号(G)のレベルが前記パン状態検出閾値(L
Pan)よりも大きい場合に前記パン状態に遷移し、前記流し撮り状態において、前記ローパスフィルタを通した前記振れ検出信号(G
LPF)のレベルが非流し撮り状態検出閾値(L
noFollow)よりも小さい場合に前記パン状態および前記流し撮り状態以外の状態に遷移し、前記非流し撮り状態検出閾値(L
noFollow)は前記パン状態検出閾値(L
Pan)以下である請求項1から請求項4の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記パン状態において、非パン状態検出用時間閾値(T
noPan)に亘り前記振れ信号のレベルが非パン状態検出閾値(L
noPan)よりも小さい場合に前記パン状態以外の状態に遷移することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記流し撮り状態において、非流し撮り状態検出用時間閾値(T
noFollow)に亘り前記ローパスフィルタを通した前記振れ検出信号(G
LPF)のレベルが非流し撮り状態検出閾値(L
noFollow)よりも小さい場合に前記パン状態および前記流し撮り状態以外の状態に遷移することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像装置がパン状態からはリセット状態にのみ遷移し、前記リセット状態からは通常状態にのみ遷移することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記流し撮り状態検出用時間閾値(T
Follow)は、前記ローパスフィルタを通した前記振れ検出信号(G
LPF)のレベルが低いときには大きく、高いときには小さいことを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記振れ検出信号(G)が前記パン状態検出閾値(L
Pan)よりも小さい状態検出最低閾値(L
Follow0)以下の場合は前記流し撮り状態に遷移しないことを特徴とする、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
撮像光学系を通した被写体像をイメージセンサで撮像し、
振れ検出信号に基づき、前記撮像光学系の少なくとも一部をなす光学要素と前記イメージセンサの少なくとも一方から構成される像振れ補正部材を駆動して像振れを補正する撮像装置の像振れ補正方法であって、
前記振れ検出信号(G)がパン状態検出閾値(L
Pan)よりも大きいときに前記撮像装置の移動状態がパン状態にあると判断し、
パン状態でなければローパスフィルタを通した前記振れ検出信号(G
LPF)により前記撮像装置の移動状態が流し撮り状態を含む前記パン状態以外のいずれかの状態であると判断し、
前記ローパスフィルタを通した前記振れ検出信号(G
LPF)に応じて決定した流し撮り状態検出用時間閾値(T
Follow)よりも長い期間、前記ローパスフィルタを通した前記振れ検出信号(G
LPF)が前記パン状態検出閾値(L
Pan)よりも小さい流し撮り状態検出閾値(L
Follow)より大きい状態が継続した場合に前記撮像装置が前記流し撮り状態にあると判断する
ことを特徴とする像振れ補正方法。
【請求項12】
前記パン状態と判断した場合、像振れ補正を行わないことを特徴とする請求項11に記載の像振れ補正方法。
【請求項13】
前記パン状態または前記流し撮り状態ではないと判断した場合、通常状態と判断し、ハイパスフィルタを通した振れ検出信号を基に前記像振れ補正部材の駆動量を演算することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の像振れ補正方法。
【請求項14】
前記パン状態以外の状態において、パン状態検出用時間閾値(T
Pan)に亘り前記振れ検出信号(G)のレベルが前記パン状態検出閾値(L
Pan)よりも大きい場合に前記パン状態に遷移し、前記パン状態において、前記振れ信号のレベルが非パン状態検出閾値(L
noPan)よりも小さい場合に前記パン状態以外の状態に遷移し、前記非パン状態検出閾値(L
noPan)は前記前記パン状態検出閾値(L
Pan)以下であることを特徴とすることを特徴とする請求項11から請求項13の何れか一項に記載の像振れ補正方法。
【請求項15】
前記パン状態または前記流し撮り状態以外の状態において、
パン状態検出用時間閾値(T
Pan
)に亘り前記振れ検出信号(G)のレベルが前記パン状態検出閾値(L
Pan)よりも大きい場合に前記パン状態に遷移し、前記流し撮り状態において、前記ローパスフィルタを通した前記振れ検出信号(G
LPF)のレベルが非流し撮り状態検出閾値(L
noFollow)よりも小さい場合に前記パン状態および前記流し撮り状態以外の状態に遷移し、前記非流し撮り状態検出閾値(L
noFollow)は前記パン状態検出閾値(L
Pan)以下であることを特徴とする請求項11から請求項14の何れか一項に記載の像振れ補正方法。
【請求項16】
前記パン状態において、非パン状態検出用時間閾値(T
noPan)に亘り前記振れ信号のレベルが非パン状態検出閾値(L
noPan)よりも小さい場合に前記パン状態以外の状態に遷移することを特徴とする請求項14に記載の像振れ補正方法。
【請求項17】
前記流し撮り状態において、非流し撮り状態検出用時間閾値(T
noFollow)に亘り前記ローパスフィルタを通した前記振れ検出信号(G
LPF)のレベルが非流し撮り状態検出閾値(L
noFollow)よりも小さい場合に前記パン状態および前記流し撮り状態以外の状態に遷移することを特徴とする請求項15に記載の像振れ補正方法。
【請求項18】
前記状態がパン状態からはリセット状態にのみ遷移し、前記リセット状態からは通常状態にのみ遷移することを特徴とする請求項11から請求項17の何れか一項に記載の像振れ補正方法。
【請求項19】
前記流し撮り状態検出用時間閾値(T
Follow)は、前記ローパスフィルタを通した前記振れ検出信号(G
LPF)のレベルが低いときには大きく、高いときには小さいことを特徴とする請求項11から請求項18の何れか一項に記載の像振れ補正方法。
【請求項20】
前記振れ検出信号(G)が前記パン状態検出閾値(L
Pan)よりも小さい状態検出最低閾値(L
Follow0)以下の場合は前記流し撮り状態に遷移しないことを特徴とする請求項11から請求項19の何れか一項に記載の像振れ補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像振れ補正機構を備えた撮像装置、および像振れ補正機構の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置で撮影を行う際、手持ちで撮影した際に手振れが生じ、撮影画像がぶれてしまうことがある。そこで、撮像素子や撮像光学系の一部(像振れ補正機構)を光軸と垂直に、振れを打ち消す方向に駆動させて撮影を行う手振れ補正(SR: Shake Reduction)技術がある。また、手振れ補正機構を備えたカメラにおいて、振れ検出信号から、通常の手持ち状態、カメラを大きく振っているパン状態およびパン状態より低速で一定速度で被写体を追っている流し撮り状態のいずれの状態(SR状態)であるかを検出し、それぞれの状態に応じて手振れ補正機構の制御方法を変更する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、通常の手持ち状態と流し撮り状態との間の判別が十分な精度で行えるとは言えない。
【0005】
本発明は、撮像装置の手持ちの状態を、より高い精度で判別することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、撮像光学系を通った被写体光束を被写体像として結像するイメージセンサと、振れを検出する振れ検出手段と、撮像光学系の少なくとも一部をなす光学要素とイメージセンサの少なくとも一方から構成される像振れ補正部材と、像振れ補正部材を撮像光学系の光軸と異なる方向に駆動することで、イメージセンサ上への被写体像の結像位置を変位させて像振れを補正する駆動機構と、像振れ補正部材の制御目標位置と現在位置に基づいて、一定の制御周期で駆動機構による像振れ補正部材の駆動を制御する駆動制御部とを備える撮像装置において、駆動制御部は、振れ検出手段から出力された振れ検出信号(G)を入力するローパスフィルタおよび撮像装置の移動状態を判断する状態判断部とを有し、状態判断部は、振れ検出信号(G)がパン状態検出閾値(LPan)よりも大きいときに撮像装置がパン状態にあると判断し、パン状態でなければ前記ローパスフィルタの出力信号(GLPF)により撮像装置の流し撮り状態を含む前記パン状態以外のいずれかの状態であると判断し、ローパスフィルタの出力信号(GLPF)に応じて決定した流し撮り状態検出用時間閾値(TFollow)よりも長い期間、ローパスフィルタの出力信号(GLPF)がパン状態検出閾値(LPan)よりも小さい流し撮り状態検出閾値(LFollow)より大きい状態が継続した場合に撮像装置が流し撮り状態にあると判断し、駆動制御部は、状態判断部により判断された状態に応じて駆動機構による像振れ補正部材の駆動量の演算を行い、駆動制御部は、制御周期ごとにサンプリングされた振れ検出信号から、制御周期ごとに演算されたローパスフィルタの出力信号を減算した信号をもとに像振れ補正部材の駆動量を演算することを特徴としている。
【0007】
本発明の像振れ補正方法は、撮像光学系を通した被写体像をイメージセンサで撮像し、振れ検出信号に基づき、撮像光学系の少なくとも一部をなす光学要素とイメージセンサの少なくとも一方から構成される像振れ補正部材を駆動して像振れを補正する撮像装置の像振れ補正方法であって、振れ検出信号(G)がパン状態検出閾値(LPan)よりも大きいときに撮像装置の移動状態がパン状態にあると判断し、パン状態でなければローパスフィルタを通した振れ検出信号(GLPF)により撮像装置の移動状態が流し撮り状態を含むパン状態以外のいずれかの状態であると判断し、ローパスフィルタを通した振れ検出信号(GLPF)に応じて決定した流し撮り状態検出用時間閾値(TFollow)よりも長い期間、ローパスフィルタを通した振れ検出信号(GLPF)がパン状態検出閾値(LPan)よりも小さい流し撮り状態検出閾値(LFollow)より大きい状態が継続した場合に撮像装置が流し撮り状態にあると判断することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像装置の手持ちの状態を、より高い精度で判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態である撮像装置の要部の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の撮像装置のジャイロセンサ(姿勢情報取得部)が取得する装置本体の振れ角の信号を示す図である。
【
図3】
図1の撮像装置に搭載される像振れ補正装置の要部の構成を示す平面図である。
【
図4】
図1の撮像装置に搭載される像振れ補正装置の構成を示す側面図である。
【
図5】パン状態検出部のみを搭載した像振れ補正機構によるイメージセンサ駆動回路(比較例)の制御ブロック図である。
【
図6】第1実施形態の像振れ補正機構におけるイメージセンサ駆動回路の制御ブロック図である。
【
図7】SR状態(通常状態、流し撮り状態、パン状態、リセット状態)間の遷移可能な関係を模式的に示す図である。
【
図8】手振れ補正処理動作全体の流を示すフローチャートである。
【
図9】SR状態検出処理(ステップS104)のフローチャートである。
【
図10】通常状態におけるSR状態決定処理のフローチャートである。
【
図11】流し撮り状態におけるSR状態決定処理のフローチャートである。
【
図12】パン状態におけるSR状態決定処理のフローチャートである。
【
図13】手振れ補正(SR)制御(ステップS108)のフローチャートである。
【
図14】振れ信号レベル(GまたはG
LPF)と振れ継続時間TからSR状態における各状態の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である撮像装置の要部の構成を示すブロック図である。また、
図2は、振れ検出信号として検出されるカメラの回転角の配置を示す図であり、
図3、
図4は本実施形態の像振れ補正装置の要部の構成を示す平面図および側面図である。
【0011】
本実施形態の撮像装置は例えばデジタルカメラ10であり、カメラ本体20と、このカメラ本体20に着脱可能(レンズ交換可能)な撮影レンズ30とを備える。撮影レンズ30は、被写体側(
図1中の左側)から像面側(
図1中の右側)に向かって順に、撮影レンズ群(撮像光学系、像振れ補正部材)31と、絞り(撮像光学系)32とを備える。カメラ本体20は、被写体側(
図1中の左側)から像面側(
図1中の右側)に向かって順に、シャッタ(撮像光学系)21と、イメージセンサ(像振れ補正部材)22とを備える。またカメラ本体20は、撮影レンズ30への装着状態で絞り32とシャッタ21を駆動制御する絞り/シャッタ駆動回路23を備える。
【0012】
撮影レンズ群31から入射し、絞り32とシャッタ21を通った被写体光束による被写体像が、イメージセンサ22の受光面上に形成される。イメージセンサ22の受光面上に形成された被写体像は、マトリックス状に配置された多数の画素によって、電気的な画素信号に変換され、画像データとしてDSP40に出力される。DSP40は、イメージセンサ22から入力した画像データに所定の画像処理を施して、これをLCD(モニタ)24に表示し、画像メモリ25に記憶する。なお、
図1では、撮影レンズ群31が単レンズからなるように描かれているが、実際の撮影レンズ群31は、例えば、固定レンズ、変倍時に移動する変倍レンズ、フォーカシング時に移動するフォーカシングレンズなどの複数枚のレンズからなる。
【0013】
なお図示は省略しているが、像振れ補正のための機構(像振れ補正機構)は、イメージセンサ22を駆動して像振れ補正を行う構成に限定されず、撮像光学系レンズの一部またはイメージセンサ22までの光学要素の一部を像振れ補正部材として、これを駆動して像振れ補正を行う構成とすることも可能である。また本明細書において、「イメージセンサ(像振れ補正部材)22を撮像光学系の光軸Zと直交する平面内で駆動する」とは、イメージセンサ(像振れ補正部材)22を含む複数の構成要素のうち被写体光束が通過する少なくとも一部の構成要素を撮像光学系の光軸Zと直交する平面内で駆動することを意味する。
【0014】
撮影レンズ30は、撮影レンズ群31の解像力(MTF)情報や絞り32の開口径(絞り値)情報などの各種情報を記憶した通信用メモリ33を搭載している。撮影レンズ30をカメラ本体20に装着した状態では、通信用メモリ33が記憶した各種情報がDSP40に読み込まれる。
【0015】
カメラ本体20は、DSP40に接続される撮影操作スイッチ26と像振れ補正操作スイッチ27を備える。撮影操作スイッチ26は、電源スイッチやレリーズスイッチなどの各種スイッチからなる。像振れ補正操作スイッチ27は、イメージセンサ22を撮像光学系の光軸Zと直交する平面内(以下、光軸直交平面内と呼ぶことがある)で駆動することでイメージセンサ22上への被写体像の結像位置を変位させて像振れを補正する「像振れ補正駆動」を行うかどうかを切り替えるためのスイッチである。イメージセンサ22の像振れ補正駆動については後に詳細に説明する。
【0016】
カメラ本体20は、DSP40に接続されるジャイロセンサ(姿勢情報取得部、振れ検出手段)28を備える。ジャイロセンサ28は、デジタルカメラ10のカメラ本体20に加わる移動角速度(X軸回りとY軸回り)を検出することにより、カメラ本体20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号を検出する。ジャイロセンサ28による振れ検出信号は、DSP40を介して、後述するイメージセンサ駆動回路(駆動制御部)60に出力される。なお、ジャイロセンサ28は、
図2に示すように、カメラ本体20の振れ情報として、カメラ本体20のロール角θとピッチ角φを取得する。
【0017】
図1、
図3、
図4に示すように、イメージセンサ22は、撮影光学系の光軸Zと直交するX軸方向とY軸方向(直交二方向)に移動可能に像振れ補正装置(駆動機構)50に搭載されている。像振れ補正装置50は、カメラ本体20のシャーシなどの構造物に固定される固定支持基板51と、イメージセンサ22を固定した固定支持基板51に対してスライド可能な可動ステージ52と、固定支持基板51の可動ステージ52との対向面に固定した磁石M1、M2、M3と、固定支持基板51に可動ステージ52を挟んで各磁石M1、M2、M3と対向して固定され、各磁石M1、M2、M3との間に磁気回路を構成する磁性体からなるヨークY1、Y2、Y3と、可動ステージ52に固定され、前記磁気回路の磁界内において電流を受けることにより駆動力を発生する駆動用コイルC1、C2、C3を有する。そして像振れ補正装置50は、駆動用コイルC1、C2、C3に交流駆動信号(交流電圧)を流す(印加する)ことにより、固定支持基板51に対して可動ステージ52(イメージセンサ22)を光軸直交平面内で駆動する。駆動用コイルC1、C2、C3に流す交流駆動信号は、DSP40による制御の下、後述するイメージセンサ駆動回路(駆動制御部)60によって生成される。イメージセンサ駆動回路60の構成及び該イメージセンサ駆動回路60が生成する交流駆動信号については後に詳細に説明する。
【0018】
本実施形態では、磁石M1、ヨークY1及び駆動用コイルC1からなる磁気駆動手段と、磁石M2、ヨークY2及び駆動用コイルC2からなる磁気駆動手段(2組の磁気駆動手段)とがイメージセンサ22の長手方向(水平方向、X軸方向)に所定間隔で配置され、磁石M3、ヨークY3及び駆動用コイルC3からなる磁気駆動手段(1組の磁気駆動手段)がイメージセンサ22の長手方向と直交する短手方向(鉛直(垂直)方向、Y軸方向)に配置される。
【0019】
さらに固定支持基板51には、各駆動用コイルC1、C2、C3の近傍(中央空間部)に、磁石M1、M2、M3の磁力を検出して可動ステージ52(イメージセンサ22)の光軸直交平面内の位置(現在位置)を示す位置検出信号(現在位置検出信号)を検出するホールセンサH1、H2、H3が配置される。ホールセンサH1、H2により可動ステージ52(イメージセンサ22)のY軸方向位置及び傾き(回転)が検出され、ホールセンサH3により可動ステージ52(イメージセンサ22)のX軸方向位置が検出される。DSP40は、後述するイメージセンサ駆動回路60を介して、ジャイロセンサ28が検出したカメラ本体20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号と、ホールセンサH1、H2、H3が検出したイメージセンサ22の光軸直交平面内の位置を示す位置検出信号とに基づいて、像振れ補正装置50によってイメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動する。これにより、イメージセンサ22上への被写体像の結像位置を変位させて、手振れに起因する像振れを補正することができる。本明細書ではこの動作を「イメージセンサ22の像振れ補正動作(像振れ補正駆動)」と呼ぶ。
【0020】
また、像振れ補正装置50は、イメージセンサ22の像振れ補正動作(像振れ補正駆動)を行っていないときには、イメージセンサ22をその像振れ補正動作範囲(像振れ補正駆動範囲)の中央位置で保持する「イメージセンサ22の中央保持動作(中央保持駆動)」を実行する(像振れ補正を行わなくても中央保持は行う)。
【0021】
以上のように、デジタルカメラ10は、駆動用コイルC1、C2、C3に交流駆動信号を流すことで、像振れ補正装置50を介してイメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動するイメージセンサ駆動回路(駆動制御部)60を備え、このイメージセンサ駆動回路60の動作全般はDSP40によって制御される。
【0022】
次に、流し撮り検出機能(後述)を備える本実施形態の手振れ補正処理の理解を助けるため、比較例としてパン状態検出機能のみを搭載する手振れ補正処理について
図5のブロック図を参照して説明する。
【0023】
パン状態検出機能のみを備えた手振れ補正処理において用いられる従来のイメージセンサ駆動回路60Aは、加算部61と、ゲイン部62と、コントローラ(駆動制御部)63と、HPF部64と、パン状態検出部65とを備える。HPF部64は、ジャイロセンサ28が検出したカメラ本体20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号にHPF(ハイパスフィルタ)を施し、温度変動や電気的ノイズによる定常的なDC成分を除去した信号を生成する。HPFの遮断周波数については、定常的なDC成分が除去できる程度に低周波に設定することが望ましい。
【0024】
加算部61は、HPF部64が生成したDC成分除去後の振れ検出信号に加算処理を施す。ゲイン部62は、加算部61が加算処理を施した振れ検出信号を増幅することにより、イメージセンサ22の制御目標位置を示す制御目標位置信号を生成する。パン状態検出部65は、ジャイロセンサ28が検出した振れ検出信号から、カメラ本体20がパン状態か否かを判断し、パン状態であると判断した場合はコントローラ63に入力する制御目標位置信号をゲイン部62で生成された信号から0に置き換える。すなわち、パン状態検出部65により置き換えられた0信号と、ホールセンサH1、H2、H3が検出したイメージセンサ22の現在位置を示す現在位置検出信号との間の偏差信号(差分信号)に基づいて、駆動用コイルC1~C3へPWM信号を出力し、像振れ補正装置50のフィードバック制御を行う。
【0025】
パン状態検出部65によりパン状態にあるとは判断されない場合、すなわち通常状態にある場合、コントローラ63は、ゲイン部62が生成したイメージセンサ22の制御目標位置を示す制御目標位置信号と、ホールセンサH1、H2、H3が検出したイメージセンサ22の現在位置を示す現在位置検出信号との間の偏差信号(差分信号)に基づいて、駆動用コイルC1~C3へPWM信号を出力し、像振れ補正装置50(
図3、4参照)によるイメージセンサ22の駆動をフィードバック制御する。
【0026】
次に
図6のブロック図を参照して、流し撮り検出機能を備えた本実施形態の手振れ補正処理について説明する。なお、本実施形態では、流し撮り状態およびパン状態に対応して、それぞれ一定以上の角速度でカメラ本体20が動いている状態を、角速度の大きさに応じて流し撮り状態およびパン状態とし、パン状態と判断する際の角速度は、流し撮り状態と判断する際の角速度よりも大きいものとする。角速度の計算はジャイロセンサ28から検出された振れ検出信号より演算する。流し撮り状態およびパン状態に対応して像振れ補正装置50を駆動する駆動モードを流し撮りモードおよびパンモードに区分する。
【0027】
図6に示すように、本実施形態の手振れ補正処理に用いられるイメージセンサ駆動回路60は、
図5を参照して説明したパン状態検出部65のみを搭載した従来のイメージセンサ駆動回路60Aと比較して、LPF部66をさらに有し、パン状態検出部65に代えて流し撮り・パン状態検出部(状態判断部)67を有する。LPF部66はジャイロセンサ28が検出した振れ検出信号にLPF(ローパスフィルタ)を施し、手振れ成分を含めた高周波を除去した低周波信号を生成する。LPFの遮断周波数は手振れ成分の一部を減衰させる程度のものでもよく、HPF部64のHPFの遮断周波数より高周波とすることが望ましい。
【0028】
流し撮り・パン状態検出部67は、ジャイロセンサ28で検出された振れ検出信号に基づき、
図5のパン状態検出部65で行われるカメラ本体20がパン状態にあるか否かの判断に加え、LPF部66が生成した低周波信号からカメラ本体20が流し撮り状態にあるか否かの判断を行う。なお、流し撮り状態、パン状態の何れでもない状態は、通常状態であると判断される。
【0029】
通常状態であると判断された場合は、ジャイロセンサ28で検出された振れ検出信号は、HPF部64においてDC成分が除去され、加算部61、ゲイン部62を通してコントローラ63へと送られ、像振れ補正装置50は、通常モードで駆動されて手振れ補正処理が行われる。
【0030】
一方、流し撮り状態であると判断された場合は、HPF部64が生成したDC成分除去後の振れ検出信号を、ジャイロセンサ28が検出した振れ検出信号からLPF部66が生成した低周波信号を減算した信号に置き換えて加算部61へ入力し、像振れ補正装置50は、流し撮りモードで駆動される。また、パン状態であると判断された場合には、コントローラ63に入力する制御目標位置信号を0に置き換え、像振れ補正装置50は、パンモードで駆動される。なお、本実施形態のイメージセンサ駆動回路60において、LPF部66と流し撮り・パン状態検出部67の構成に関わる機能以外は、
図5におけるパン状態検出部のみを搭載した従来のイメージセンサ駆動回路60Aの機能と同様である。また、振れ検出信号は制御周期ごとにサンプリングされ、LPF部66の出力信号は、例えば同制御周期ごとに演算され、振れ検出信号から減算される。
【0031】
本実施形態の撮像装置10では、手振れ補正機能を起動した状態(SR状態)が複数の状態の中の何れかの状態として認識され、各状態に適合した処理が行われる。
図7は、撮像装置10で認識される状態と、各状態から他の状態へどのように遷移し得るかを示す模式図である。
【0032】
本実施形態では、SR状態は、上記通常状態、流し撮り状態、パン状態の3状態に、リセット状態を加えた4状態の何れかの状態として認識される。ここでリセット状態は、HPF部64のリセット処理を行う期間に対応する。一般に、一定以上の角速度で動作しているパン状態から静止している通常状態に状態が遷移する場合、ハイパスフィルタの特性により出力信号が安定するまでに一定時間がかかる。そのため、この期間に手振れ補正を行っても無駄な処理となり得る。本実施形態では、パン状態から静止状態に遷移する場合、HPF部64にリセット処理を行いハイパスフィルタの信号出力が安定するまでの時間を短くする。
【0033】
図7に示されるように、SR状態は、通常状態から流し撮り状態またはパン状態に遷移可能であり、流し撮り状態からは通常状態またはパン状態に遷移可能である。また、パン状態からはリセット状態にのみ遷移可能で、リセット状態からは通常状態にのみ遷移可能である。
【0034】
次に、
図8~
図14を参照して、本実施形態の手振れ補正処理について説明する。
図8は、露光時の手振れ補正処理動作全体の流れを示すフローチャートである。DSP40はカメラ本体20の電源がONかOFFかを判断し(ステップS100)、OFF状態であれば処理を終了する。電源がOFF状態でなければジャイロセンサ28からジャイロデータGを取得する(ステップS102)。
【0035】
ジャイロデータGをイメージセンサ駆動回路60に入力し、後述する
図8の手順に従って、SR状態(通常状態、流し撮り状態およびパン状態)の決定を行う(ステップS104)。その後、カメラ本体のレリーズスイッチが押されたかどうかを判断し(ステップS106)、レリーズスイッチが押されていなければ前述の電源がONかOFFかの判断(ステップS100)に戻って同様の動作を繰り返す。すなわち、ジャイロデータは所定のタイミング(例えば、極短い周期、数ms、又は数十μs)で繰り返し更新される。また、不図示の他の操作制御などは、これと並行して処理される。なお、本実施形態では、ジャイロデータの取得がレリーズ操作の前のステップになっているが、SR制御の直前に行っても良く、レリーズON状態が継続される連写間などにおいて実行しても良い。
【0036】
レリーズスイッチが押されていたら先に決定したSR状態に基づき後述する
図13の手順に従って手振れ補正(SR)制御を開始する(ステップS108)。その後、イメージセンサ22が露光完了したかどうかを判断し(ステップS110)、露光完了していなければSR制御(ステップS108)を繰り返す。露光完了していれば前述の電源がONかOFFかの判断(ステップS100)に戻って同様の処理を繰り返す。
【0037】
次に
図6および
図9~
図12のフローチャートを参照して、
図8のSR状態(通常、流し撮り、パン)検出処理(ステップS104)について説明する。
【0038】
本実施形態の撮像装置10において、
図8のステップS104のSR状態検出処理が開始されると、イメージセンサ駆動回路60は入力されたジャイロデータGをLPF部66に入力し、低周波信号G
LPFを生成するとともに、低周波信号G
LPFの情報を流し撮り状態判定用の有限バッファへ格納する(ステップS200)。なお、有限バッファが一杯になった場合、一番古い情報を削除して最新の情報を格納する。次に、現在のSR状態を判断し(ステップS202)、現在のSR状態が通常状態であると判断されれば、後述する
図10のフローチャートに従って次に遷移するSR状態を決定する(ステップS204)。一方、現在のSR状態が流し撮り状態であると判断されれば、後述する
図11のフローチャートに従って次に遷移するSR状態を決定する(ステップS206)。また現在のSR状態がパン状態であると判断されれば、後述する
図12のフローチャートに従って次に遷移するSR状態を決定する(ステップS208)。
【0039】
一方、現在のSR状態がリセット状態であると判断されるときには、リセット状態カウンタCResetの値をインクリメントし(ステップS210)、リセット状態カウンタCResetの値がリセット状態カウンタ閾値TResetの値よりも小さいか否かを判断する(ステップS212)。リセット状態カウンタCResetの値がリセット状態カウンタ閾値TResetの値よりも大きければ、リセット状態カウンタCResetの値を0にリセットし(ステップS214)、SR状態は通常状態であると判断して通常モードを設定し(ステップS216)、本処理を終了する。一方、リセット状態カウンタCResetの値がリセット状態カウンタ閾値TResetの値よりも小さければ、HPF部64のリセット処理を行い(ステップS218)、本処理を終了する。
【0040】
次に、
図6および
図10のフローチャートを参照して、
図9のステップS204において実行される、通常状態における遷移先のSR状態(駆動モード)の決定処理について説明する。
【0041】
まず、流し撮り・パン状態検出部67が、ジャイロデータGがパン状態検出閾値L
Panより小さいかどうかを判断し(ステップS300)、G<L
Panでなければパン状態検出カウンタC
Panの値をインクリメントする(ステップS314)。一方、G<L
Panであればパン状態検出カウンタC
Panの値を0にリセットする(ステップS302)。次に、パン状態検出カウンタC
Panの値がパン検出カウンタ閾値(パン状態検出用時間閾値)T
Pan以下かどうかを判断する(ステップS304)。パン状態検出カウンタC
Panの値がパン検出カウンタ閾値T
Panよりも大きいと判断するとパン状態検出カウンタC
Panの値を0にリセットし(ステップS322)、SR状態がパン状態に遷移したと判断してパンモードを設定して(ステップS324)、
図9のSR状態検出処理を終了する。なお、パン状態検出カウンタC
Panの値は0であってもよく、その場合、G≧L
Panとなる場合が発生すると直ちにパンモードを設定することになる。
【0042】
ステップS304において、パン状態検出カウンタCPanの値がパン検出カウンタ閾値TPanの値以下であると判断すると、低周波信号GLPFが流し撮り状態検出最低閾値LFollow0より大きいかどうかを判断する(ステップS306)。GLPF>LFollow0でなければ、SR状態は通常状態に維持されていると判断し、通常モードを設定して(ステップS312)、SR状態検出処理を終了する。一方、GLPF>LFollow0であれば、流し撮り状態検出閾値LFollowの値を低周波信号GLPFに設定し、低周波信号GLPFの値を元に、流し撮り検出カウンタ閾値TFollowを決定する(ステップS308)。
【0043】
有限バッファに格納した直近T
Follow回分の低周波信号G
LPFの値が全てG
LPF<L
Follow(流し撮り受胎検出閾値)でなければ、流し撮り状態検出カウンタC
Followの値を0にリセットし(ステップS318)、SR状態が流し撮り状態に遷移したと判断して流し撮りモードを設定して(ステップS320)、
図9のSR状態検出処理を終了する。一方、ステップS310において、有限バッファに格納した直近T
Follow回分の低周波信号G
LPFの値の全てがG
LPF<L
Followであれば、SR状態は通常状態に維持されていると判断し、通常モードを設定して(ステップS312)、SR状態検出処理を終了する。
【0044】
次に、
図6および
図11のフローチャートを参照して、
図9のステップS206において実行される、流し撮り状態における遷移先のSR状態(駆動モード)の決定処理について説明する。
【0045】
まず、流し撮り・パン状態検出部67が、ジャイロデータGがパン状態検出閾値L
Panより小さいかどうかを判断し(ステップS400)、G<L
Panでなければパン状態検出カウンタC
Panの値をインクリメントする(ステップS414)。一方、G<L
Panであればパン状態検出カウンタC
Panの値を0にリセットする(ステップS402)。次に、パン状態検出カウンタC
Panの値がパン検出カウンタ閾値T
Panよりも小さいか否かを判断する(ステップS403)。パン状態検出カウンタC
Panの値がパン検出カウンタ閾値T
Panよりも大きいと判断するとパン状態検出カウンタC
Panの値を0にリセットし(ステップS422)、SR状態がパン状態に遷移したと判断してパンモードを設定して(ステップS424)、
図9のSR状態検出処理を終了する。
【0046】
一方、ステップS403において、パン状態検出カウンタCPanの値がパン検出カウンタ閾値TPanの値以下であると判断すると、低周波信号GLPFが非流し撮り状態検出閾値LnoFollowより大きいかどうかを判断する(ステップS404)。GLPF>LnoFollowでなければ非流し撮り状態検出カウンタCFollowの値をインクリメントし(ステップS416)、GLPF>LnoFollowであれば非流し撮り状態検出カウンタCnoFollowの値を0にリセットする(ステップS406)。なお、非流し撮り状態検出閾値LnoFollowは、パン状態検出閾値LPan以下の値に設定される。
【0047】
次に、非流し撮り状態検出カウンタC
noFollowが非流し撮り検出カウンタ閾値(非流し撮り状態検出用時間閾値)T
noFollowよりも大きいか否かを判断する(ステップS410)。非流し撮り状態検出カウンタC
noFollowの値が非流し撮り検出カウンタ閾値T
noFollow以下のとき、SR状態は流し撮り状態に維持されていると判断し、流し撮りモードを設定して(ステップS420)、
図9のSR状態検出処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS410において、非流し撮り状態検出カウンタC
noFollowが非流し撮り検出カウンタ閾値T
noFollowの値よりも大きいと判断されると、非流し撮り状態検出カウンタC
noFollowの値を0にリセットする(ステップS412)。そしてSR状態が通常状態に遷移したと判断して通常モードを設定し(ステップS418)、
図9のSR状態検出処理を終了する。
【0049】
次に、
図6および
図12のフローチャートを参照して、
図9のステップS208において実行される、パン状態における遷移先のSR状態(駆動モード)の決定処理について説明する。
【0050】
まず、流し撮り・パン状態検出部67が、ジャイロデータGが非パン状態検出閾値L
noPanより大きいかどうかを判断する(ステップS500)。G>L
noPanであれば、非パン状態検出カウンタC
noPanの値を0にリセットし(ステップS502)、SR状態はパン状態に維持されていると判断し、パンモードを設定して(ステップS504)、
図9のSR状態検出処理を終了する。なお、非パン状態検出閾値L
noPanは、パン状態検出閾値L
Pan以下の値に設定される。
【0051】
一方、G>L
noPanでなければ、非パン状態検出カウンタC
noPanの値をインクリメントし(ステップS506)、非パン状態検出カウンタC
noPanの値が非パン検出カウンタ閾値(非パン状態検出用時間閾値)T
noPanよりも小さいかどうかを判断する(ステップS508)。非パン状態検出カウンタC
noPanの値が非パン検出カウンタ閾値T
noPanよりも大きければ、SR状態はパン状態に維持されていると判断し、パンモードを設定して(ステップS504)、
図9のSR状態検出処理を終了する。なお、非パン検出カウンタ閾値T
noPanの値は0であってもよく、その場合、G≦L
Panとなる場合が発生すると直ちにパンモードを設定することになる。
【0052】
一方、ステップS508において、非パン状態検出カウンタC
noPanの値が非パン検出カウンタ閾値T
noPanよりも小さいと判断されると、非パン状態検出カウンタC
noPanの値を0にリセットし(ステップS510)、SR状態をリセット状態にした後(ステップS512)、HPF部64のリセット処理を行い、
図9のSR状態検出処理を終了する。
【0053】
次に、
図6および
図13のフローチャートを参照して、本実施形態のSR制御処理について説明する。
【0054】
イメージセンサ駆動回路60はまず、手振れ補正(SR)機能がONであるかどうかの判断を行い(ステップS600)、SR機能がONでなければコントローラ63に入力する制御目標位置信号を0に置き換えて手振れ補正を行わないようにし、本処理を終了する(ステップS608)。SR機能がONであればSR状態を判断し(ステップS602)、通常状態であればジャイロデータGをHPF部64に入力して生成されたDC成分除去信号GHPFに基づいて、演算制御目標位置信号の演算を行う通常モードを設定する(ステップS604)。一方、流し撮り状態であれば、ジャイロデータGから低周波信号GLPFを減算した信号をもとに演算制御目標位置信号の演算を行う流し撮りモードを設定する(ステップS606)。また、パン状態またはリセット状態であればコントローラ63に入力する制御目標位置信号を0に置き換えて手振れ補正を行わないようにするパンモードを設定する(ステップS608)。
【0055】
図14は、振れ信号レベル(GまたはG
LPF)と振れ継続時間TからSR状態における各状態の関係を示すグラフである。
【0056】
ジャイロデータGの信号レベルがL
Pan以上の状態が、パン検出カウンタ閾値T
Pan以上継続している場合、SR状態はパン状態となる。ジャイロデータGの低周波信号G
LPFの信号レベルがL
Follow0以上のとき、G
LPFの信号レベルに応じて流し撮り検出カウンタ閾値T
Followの値を決定し、その時の信号レベルG
LPFが流し撮り検出カウンタ閾値(流し撮り検出用時間閾値)T
Follow回以上連続して小さくない場合、SR状態は流し撮り状態となり、それ以外の場合は通常状態(またはパン状態から通常状態に復帰する途中のリセット状態)となる。なお、流し撮り検出カウンタ閾値T
Followの値は、低周波信号G
LPFの信号レベルがL
Pan以上のときはパン検出カウンタ閾値T
Panに設定され、低周波信号G
LPFの信号レベルが流し撮り状態検出最小閾値L
Follow0のときには、流し撮り検出カウンタ閾値最大値T
Follow0(>T
Pan)に設定される。低周波信号G
LPFの信号レベルがL
Follow0とL
Panの間であれば、例えば、
図14のように、線形補完によりT
Followの値が算出される。なお、G
LPFとT
Followの関係は、G
LPFに対してT
Followを一意的に決定できればよく、
図14における点(T
Pan,L
Pan)と点(T
Follow0,L
Follow0)を結ぶ曲線や折れ線であってもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、通常の手持ち状態と流し撮り状態との間の判別をより高い精度で行え、撮像装置の手持ちの状態を、より高い精度で判別することができる。
【0058】
手持ち状態における振れ検出信号は1~20Hz程度の周波数信号成分の複合であり、低周波成分の振幅は小さく、高周波成分の振幅はやや大きくなる。低周波成分は同一方向の継続振れ期間が長く、そのため流し撮り撮影と通常撮影を判別するための振れ信号の閾値を小さくすると、流し撮り撮影と通常撮影との判別が困難になる。本実施形態では、制御周期ごとにサンプリングされた振れ検出信号から、制御周期ごとに演算されたローパスフィルタの出力信号を減算した信号の大きさに応じて、流し撮り状態か通常状態かを判別するための継続時間閾値を、信号が小さい場合は継続時間閾値を長く、信号が大きい場合は継続時間閾値を短く変更することによって、低速での流し撮り状態を通常の手持ちの状態から判別することができる。
【0059】
なお、ジャイロデータGに温度変動や電気的ノイズによる定常的なDC成分が含まれていなければ、通常モードにおいてDC成分除去信号GHPFではなく、ジャイロデータGをそのまま加算器に入力して演算制御目標位置信号の演算を行っても良い。また、流し撮りモードにおいて、ジャイロデータGから低周波信号GLPFを減算した信号の代わりに、通常モードのときとは異なる遮断周波数のHPFをかけた信号を用いても良い。
【符号の説明】
【0060】
10 デジタルカメラ(撮像装置)
20 カメラ本体
22 イメージセンサ(像振れ補正部材)
25 画像メモリ
26 撮影操作スイッチ
28 ジャイロセンサ
30 撮影レンズ
40 DSP
50 像振れ補正装置(駆動機構)
51 固定支持基板
52 可動ステージ
60 イメージセンサ駆動回路(駆動制御部)
61 加算部
62 ゲイン部
63 コントローラ(駆動制御部)
64 HPF部
66 LPF部
67 流し撮り・パン状態検出部(状態判断部)
C1、C2、C3 駆動用コイル
H1、H2、H3 ホールセンサ