(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】シート積載装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 31/12 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
B65H31/12
(21)【出願番号】P 2020048375
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2019095082
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020017661
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】中村 和音
(72)【発明者】
【氏名】江口 陽介
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104154(JP,A)
【文献】特開2002-308509(JP,A)
【文献】特開2012-254849(JP,A)
【文献】特開2000-191215(JP,A)
【文献】特開2004-262623(JP,A)
【文献】実開平03-113355(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0313309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00-31/40
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシート搬送方向上流側部分が上下方向へ変位可能なシート載置部材と、
前記シート載置部材を上方へ付勢する付勢手段と、
シート導入部に対する前記シート載置部材のシート搬送方向の角度を第一角度と第二角度に設定する角度設定手段と、
前記第一角度及び前記第二角度のうち、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分が前記シート導入部に近づく角度
である前記第二角度の場合に、前記シート載置部材の動きを規制する規制手段
と、を有し、
前記角度設定手段は、前記シート載置部材を上下方向に変位可能に支持する回動支持部材と、前記回動支持部材の回動軸に沿ってスライド移動可能なスライド部材とを含んでおり、
前記スライド部材のトレイ受け部が前記回動支持部材の当接面に当接することで、前記シート載置部材が前記第一角度に設定され、
前記スライド部材の前記トレイ受け部を、前記第一角度に設定する位置から前記回動支持部材に設けられた収納凹部と対向する位置へ移動させることで、前記シート載置部材が前記第二角度に設定される
ことを特徴とするシート積載装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート積載装置において、
前記規制手段は、前記角度設定手段による角度設定動作に連動して前記シート載置部材の動きを規制することを特徴とするシート積載装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシート積載装置において、
前記規制手段は、前記角度が前記第二角度であるときには、前記シート載置部材に設けられる被上限規制部材が上限規制部材に突き当たることで、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置を規制する規制状態となり、前記角度が前記第二角度から前記第一角度へ変更されるときには、前記角度設定手段による角度設定動作に連動して、前記被上限規制部材と前記上限規制部材とが前記突き当たる方向に対して交差する方向へ相対移動することにより、前記規制状態から前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置を規制しない非規制状態へ切り替わることを特徴とするシート積載装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシート積載装置において、
前記被上限規制部材は、前記シート載置部材におけるシート幅方向略中央に1つだけ設けられていることを特徴とするシート積載装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のシート積載装置において、
前記規制手段は、前記被上限規制部材及び前記上限規制部材の少なくとも一方の部材が
前記回動軸回りで回動することで、前記相対移動を行うことを特徴とするシート積載装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシート積載装置において
、
前記上限規制部材は、前記回動支持部材に設けられ、
前記規制手段は、前記回動支持部材の回動に伴って前記上限規制部材が回動することにより、前記相対移動を行うことを特徴とするシート積載装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項に記載のシート積載装置において、
前記規制手段は、前記被上限規制部材及び前記上限規制部材のうちの一方の部材が移動することで、前記相対移動を行うものであり、
前記被上限規制部材及び前記上限規制部材のうちの他方の部材は、前記相対移動の方向とは逆方向へ付勢されていることを特徴とするシート積載装置。
【請求項8】
請求項7に記載のシート積載装置において、
前記他方の部材が前記付勢の方向へ移動するのを規制する移動規制手段を有することを特徴とするシート積載装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のシート積載装置において、
前記非規制状態から前記規制状態へ切り替わるときに前記被上限規制部材と前記上限規制部材とが互いに当接することによって前記他方の部材が前記付勢に抗して移動し、前記被上限規制部材と前記上限規制部材とが前記規制状態になることを特徴とするシート積載装置。
【請求項10】
請求項3乃至9のいずれか1項に記載のシート積載装置において、
前記規制手段は、前記角度が前記第一角度から前記第二角度へ変更されるときには、前記シート載置部材の角度変更に連動して、前記被上限規制部材及び前記上限規制部材のうちの一方の当接部が他方の被当接部に当接し、当該当接箇所に作用する当接力によって前記被上限規制部材と前記上限規制部材とが前記相対移動へ移動した後、該当接部と該被当接部との当接が解除されることで、前記非規制状態から前記規制状態へ切り替わることを特徴とするシート積載装置。
【請求項11】
請求項10に記載のシート積載装置において、
前記規制手段は、前記角度が前記第一角度から前記第二角度へ変更されるとき、前記当接力によって前記当接部が前記被当接部の被当接面に沿って摺動することにより、前記被上限規制部材と前記上限規制部材とが前記相対移動へ移動し、該当接部と該被当接面の端部に到達して当接が解除されることで、前記非規制状態から前記規制状態へ切り替わることを特徴とするシート積載装置。
【請求項12】
請求項3乃至11のいずれか1項に記載のシート積載装置において、
前記角度が前記第一角度であるときには、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置を規制する規制状態となり、前記角度が前記第二角度であるときには、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置を規制しない非規制状態となる別の規制手段を有することを特徴とするシート積載装置。
【請求項13】
請求項12に記載のシート積載装置において、
前記第一角度及び前記第二角度のいずれの角度でも、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置が略同一であることを特徴とするシート積載装置。
【請求項14】
シートに画像を形成する画像形成装置であって、
前記シートを積載するシート積載手段として、請求項1乃至13のいずれか1項に記載のシート積載装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート積載装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シート載置部材のシート載置面上にシートを積載するシート積載装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ステッピングモータによって排紙トレイ(シート載置部材)を上下方向に変位させる構成を備えたシート後処理装置(シート積載装置)が開示されている。このシート後処理装置においては、排紙トレイ上のシート積載量の増加に応じて、ステッピングモータで排紙トレイを下降させるとともに、ステッピングモータに供給する電力量を増大させる。このシート後処理装置では、排紙されるシートに折り処理がなされている場合、排紙されてくるシートの面に対する排紙トレイのシート載置面の角度が、折り処理がなされていない場合よりも小さくなるように変更される。これにより、折り部の膨らみによるシート積載量の誤検知が解消され、ステッピングモータへの過剰な電力供給が抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、排紙トレイ上のシート積載量が増加するにつれてシート載置部材を下降させる構成としては、少なくともシート搬送方向上流側部分が上下方向へ変位可能に構成されたシート載置部材を付勢手段により上方へ付勢する構成が知られている。しかしながら、この構成においては、シート導入部に対するシート載置部材のシート搬送方向の角度を第一角度と第二角度に設定する角度設定手段を設けると、シート積載性(スタック性)が悪化してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明に係るシート積載装置は、少なくともシート搬送方向上流側部分が上下方向へ変位可能なシート載置部材と、前記シート載置部材を上方へ付勢する付勢手段と、シート導入部に対する前記シート載置部材のシート搬送方向の角度を第一角度と第二角度に設定する角度設定手段と、前記第一角度及び前記第二角度のうち、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分が前記シート導入部に近づく角度である前記第二角度の場合に、前記シート載置部材の動きを規制する規制手段と、を有し、前記角度設定手段は、前記シート載置部材を上下方向に変位可能に支持する回動支持部材と、前記回動支持部材の回動軸に沿ってスライド移動可能なスライド部材とを含んでおり、前記スライド部材のトレイ受け部が前記回動支持部材の当接面に当接することで、前記シート載置部材が前記第一角度に設定され、前記スライド部材のトレイ受け部を、前記第一角度に設定する位置から前記回動支持部材に設けられた収納凹部と対向する位置へ移動させることで、前記シート載置部材が前記第二角度に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、角度設定手段によってシート載置部材のシート載置面の角度が第一角度と第二角度に設定される場合でも、シート積載性(スタック性)が悪化してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るプリンタ本体の一例を示す概略構成図。
【
図2】実施形態に係る排紙トレイ装置を斜め上方から見た斜視図。
【
図3】同排紙トレイ装置を斜め下方から見た斜視図。
【
図5】トレイ角度が第一角度αであるときの同排紙トレイ装置をシート搬送方向に沿って切断したときの断面図。
【
図6】同排紙トレイ装置の内部構造を破線で示した側面図。
【
図7】(a)~(c)は、上トレイ部上のシート積載量の増加に伴って上トレイ部が押し下げられる様子を示す説明図。
【
図8】シート載置面に接触したシート先端が滑り上がることができず、シート後端側の送り込みによってシートが蛇腹状に屈曲してしまう様子を示す説明図。
【
図9】上トレイ部を取り外した状態における同排紙トレイ装置の下面図。
【
図10】(a)及び(b)は、それぞれ異なる方向から見たスライド部材の斜視図。(c)は、回動軸の軸方向から見たときのスライド部材の側面図。
【
図12】トレイ角度が第二角度βであるときの同排紙トレイ装置をシート搬送方向に沿って切断したときの断面図。
【
図14】(a)は、上トレイ部及び高さ調整スプリングを取り外した状態における第一角度αのときの排紙トレイ装置の上面図。(b)は、上トレイ部及び高さ調整スプリングを取り外した状態における第二角度βのときの排紙トレイ装置の上面図。
【
図15】(a)及び(b)は、それぞれ異なる方向から見た上トレイ部の斜視図。
【
図16】(a)及び(b)は、第二角度βのときの規制手段を示すために、シート搬送方向に沿って鉛直に切断した排紙トレイ装置の断面図。
【
図17】上限規制フックを回動軸の回りに付勢するトーションばねを示す斜視図。
【
図18】(a)~(c)は、上トレイ部のトレイ側フックが上限規制フックに係合する様子を示す説明図。
【
図19】排紙トレイ装置の内部に配置された付勢力調整スプリングを示す側面図。
【
図20】上トレイ部のシート載置面上にシートが積載されていない状態(初期状態)での上トレイ部の上流側部分の高さが、トレイ角度ごとに異なる例を示す説明図。
【
図21】上トレイ部に作用する上方への付勢力と上トレイ部上のシート積載量(シートの積載高さ)との関係を示すグラフ。
【
図22】(a)は、トレイ角度が第一角度αである場合のシート排出口と上トレイ部の上流側端部との隙間を示す説明図。(b)は、トレイ角度が第二角度βである場合のシート排出口と上トレイ部の上流側端部との隙間を示す説明図。
【
図23】トレイ角度が第二角度βである場合に、シート排出口と上トレイ部の上流側端部との隙間を埋める補助トレイが装着された状態を示す説明図。
【
図24】同補助トレイが下トレイ部の下面に設けた補助トレイ収納部に収納されている状態を示す説明図。
【
図25】下トレイ部を回動軸回りで回動させただけでは、トレイ側フックが上限規制フックに係合する位置まで下がらない様子を示す説明図。
【
図26】変形例における上限規制フック及びトレイ側フックの構成を示す説明図。
【
図27】(a)~(d)は、変形例において、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ切り替えるときに、上トレイ部のトレイ側フックが上限規制フックに係合する様子を示す説明図。
【
図28】トレイ側フックの下端部が上限規制フックの上斜面に当接するときの当接力を示す説明図。
【
図29】トレイ側フックの先端部が上限規制フックの横斜面に当接するときの当接力を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るプリンタ本体1の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、画像形成装置としてのプリンタ本体1には、中間転写ベルト16が設けられている。この中間転写ベルト16は、複数のローラに張架されて走行可能であり、図中の上側には、イエローY、シアンC、マゼンタM、ブラックKの各感光体12が設けられている。各感光体12の周囲にはそれぞれ、レーザ走査ユニット10、帯電器11、現像器13、中間転写ベルト16を挟んで一次転写ローラ14等が配設されている。
【0009】
中間転写ベルト16の下部には二次転写ローラ15が設けられており、中間転写ベルト16上に一次転写されたトナー像をシート20に二次転写する。二次転写ローラ15が設けられた二次転写部のシート搬送方向下流側には定着装置17が設けられている。これら二次転写部及び定着装置17の下側のプリンタ本体1のほぼ中央であって、シート20が搬送される用紙反転搬送路19の途中に、シート位置補正装置30が設けられている。
【0010】
また、プリンタ本体1の上側には操作パネル3が設けられ、左側面にはシート積載装置としての排紙トレイ装置4が設けられている。さらに、シート位置補正装置30の下側であってプリンタ本体1の下部に、シート20を積載する第1~第3の3つの給紙トレイ5が備えられている。第1~第3の給紙トレイ5にはそれぞれ、転写紙や樹脂フィルムなどからなるシート20が格納されており、ユーザは操作パネル3やPC等の入力端末により、給紙に使用する第1~第3の給紙トレイ5を選択することができる。また、プリンタ本体1などを制御するCPU、ROM、RAMなどで構成される制御手段としての制御装置が設けられている。
【0011】
プリンタ本体1でプリントが開始されると、まず各感光体12が
図1における反時計回り方向に回転駆動され、このとき帯電器11によって感光体12の表面が所定の極性に帯電される。次いで、各感光体12の帯電面に、各色のレーザ走査ユニット10から画像情報に基づくレーザ光が照射され、これによって感光体12に静電潜像が形成される。そして、感光体12の表面に形成された静電潜像は、現像器13によってトナー像として可視像化され、そのトナー像は一次転写ローラ14によって中間転写ベルト16に転写される。なお、トナー像転写後の感光体12の表面に付着する転写残トナーは感光体クリーナーによって除去される。
【0012】
カラー画像形成時は、上述した画像形成動作が全ての感光体12で行われ、これによって各感光体12にそれぞれ形成されたイエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像及び黒トナー像が中間転写ベルト16上に順次重ねて転写される。
【0013】
一方、プリンタ本体1の下部に備えられた第1~第3の給紙トレイ5のうち、ユーザが操作パネル3又はPC等の入力端末を操作して選択された給紙トレイ5に格納されたシート20が給紙される。給紙されたシート20は、レジストローラ18に向けて送り出され、停止しているレジストローラ18に突き当てられる。これによってシート20の先端が整合された後、レジストローラ18は二次転写ローラ15が設けられた中間転写ベルト16の二次転写部に向けてシート20をトナー像と合致するタイミングで送り出す。
【0014】
そして、二次転写ローラ15によって中間転写ベルト16上のトナー像がシート20に転写される。トナー像が転写されたシート20は、定着装置17に送られ、未定着のトナー像が定着された後、搬送経路70を通り、排紙ローラ対2a1及び2a2により排紙トレイ装置4に排出される。なお、トナー像の転写後に中間転写ベルト16の表面に付着する転写残トナーは、中間転写ベルト用のクリーナーによって除去される。
【0015】
ユーザが操作パネル3又はPC等の入力端末を操作して、シート20の両面印刷を選択した場合、第一面に画像が形成されたシート20は、分岐爪23により搬送経路を切り替えることで両面経路へと搬送され、反転ローラ21に送り出される。分岐爪23により反転ローラ21へ送り出されたシート20は、反転ローラ21の正逆転により、シート位置補正装置30へ搬送される。この際、シート20の搬送方向に対する表裏は第一面画像形成時と反転する。そして、中継ローラ22からレジストローラ18までシート20が搬送された後は、上述と同様のプロセスで第二面にも画像形成を施した後、排紙トレイ装置4に排出される。
【0016】
次に、本発明の特徴部分であるシート積載装置としての排紙トレイ装置4の構成及び動作について更に説明する。
図2は、本実施形態における排紙トレイ装置4を斜め上方から見た斜視図である。
図3は、本実施形態における排紙トレイ装置4を斜め下方から見た斜視図である。
図4は、本実施形態における排紙トレイ装置4の側面図である。
図5は、本実施形態における排紙トレイ装置4をシート搬送方向に沿って切断したときの断面図である。
図6は、本実施形態における排紙トレイ装置4の内部構造を破線で示した側面図である。
本実施形態の排紙トレイ装置4は、上トレイ部41と、下トレイ部42と、本体固定部43と、スライド部材44とを備えている。
【0017】
上トレイ部41は、その上面がシート載置面であるシート載置部材として機能し、本体側面部2に形成されているシート導入部としてのシート排出口2aから排出されるシート20が上トレイ部41の上面に順次載置されて、シート20が積載される。上トレイ部41は、シート搬送方向上流側部分(
図4中の右側部分。以下、単に「上流側部分」という。)が上下方向へ変位可能なように下トレイ部42に支持されている。
【0018】
下トレイ部42は、本体固定部43に対し、
図4の紙面に直交する方向(Y方向)に延びる回動軸43a(シート搬送方向に対して直交する水平な方向に延びる回動軸43a)の回りで回動可能に構成され、かつ、上トレイ部41を上下方向に変位可能に支持する回動支持部材として機能し、角度設定手段を構成する。すなわち、下トレイ部42が回動軸43aの回りを回動することにより、下トレイ部42に支持されている上トレイ部41も回動軸43aの回りを回動し、シート排出口2aから排出(搬送)されてくるシート20の面に対する上トレイ部41の上面(シート載置面)の角度(回動軸43a回りの角度であり、以下「トレイ角度」という。)が変更される。
【0019】
本体固定部43は、本体側面部2に固定される不動部材であり、回動軸43aの両端部を支持しており、この回動軸43aに取り付けられた下トレイ部42を回動軸43aの回りで回動可能なように支持している。
図5に示すように、本体固定部43と上トレイ部41との間には、圧縮スプリングで構成される付勢部材としての高さ調整スプリング45が配置されており、この高さ調整スプリング45の付勢力によって、本体固定部43に対して上トレイ部41が上方へ付勢されている。なお、高さ調整スプリング45は、装置前後方向(Y方向)に2つ設けられているが、その個数は任意に設定可能である。
【0020】
図6に示すように、上トレイ部41は、上トレイ部41の上流側部分の内側面(Y方向の内壁面)に形成された上流側ガイド突起41aが、本体固定部43の側面(Y方向の外壁面)に形成されている上下ガイド溝43bに嵌り込むように取り付けられている。この上下ガイド溝43bは、
図6に示すように、略上下方向(Z方向)に延びている。よって、本体固定部43は、上トレイ部41のX方向(装置左右方向)への移動を規制しつつ、上下方向(Z方向)への移動が可能なように、上トレイ部41を支持している。
【0021】
また、上トレイ部41は、上トレイ部41のシート搬送方向下流側部分(以下、単に「下流側部分」という。)の内側面(Y方向の内壁面)に形成された下流側ガイド突起41bが、下トレイ部42の側面(Y方向の外壁面)に形成されている左右ガイド溝42bに嵌り込むように取り付けられている。この左右ガイド溝42bは、
図6に示すように、略装置左右方向(X方向)に延びている。よって、下トレイ部42は、上トレイ部41のZ方向(上下方向)への移動を規制しつつ、装置左右方向(X方向)への移動が可能なように、上トレイ部41を支持している。
【0022】
上トレイ部41の上流側部分は、上トレイ部41と本体固定部43との間に介在している高さ調整スプリング45によって上方に付勢されている。上トレイ部41上にシート20が積載されていない状態において、上トレイ部41は、高さ調整スプリング45の付勢力により、上流側ガイド突起41aが本体固定部43の上下ガイド溝43bの上端に押し当てられる高さ(初期高さ)に維持される。したがって、上トレイ部41の上流側部分の高さ上限位置は、上流側ガイド突起41aと上下ガイド溝43bとから構成される規制手段(別の規制手段)によって規制される。
【0023】
この初期高さは、上トレイ部41の上流側部分のシート載置面の高さが、シート排出口2aから排出(搬送)されてくるシート20とほぼ同じ高さ(若干低め)になるように、設定されている。シート排出口2aから排出されてくるシート20に対し、上トレイ部41の上流側部分のシート載置面の高さが低すぎると、シート先端が自重で垂れ下がった状態で当該シート載置面に接触してしまい、シート後端側部分がシート先端を追い越すように搬送されて、シートがロール状になってしまうような不具合が生じる。また、逆に、当該シート載置面の高さが高すぎると、シート先端が上トレイ部41の上流側部分よりも手前で上トレイ部41の端面に衝突してしまい、上トレイ部41上にシート20を適切に送り込むことができないというような不具合が生じる。本実施形態の初期高さは、これらの不具合が抑制されるように設定されている。
【0024】
このような初期高さの上トレイ部41に対し、シート排出口2aからシート20が順次排出(搬送)されてくると、上トレイ部41に積載されたシート20の自重によって、高さ調整スプリング45の付勢力に抗して上トレイ部41が
図6中矢印Aで示すように押し下げられる。これにより、
図7(a)~(c)に示すように、上トレイ部41上のシート積載量の増加に伴って上トレイ部41が押し下げられ、上トレイ部41に積載された最上位シートのシート面の高さは、常に、シート排出口2aから排出(搬送)されてくるシート20とほぼ同じ高さ(若干低め)になるように維持される。したがって、シート積載後においても、上述した不具合は抑制される。
【0025】
本実施形態において、本体固定部43に設けられている上下ガイド溝43bの延び方向は、上下方向(Z方向)に対して完全に平行ではなく、若干傾斜するように設定されている。詳しくは、
図6に示すように、上下ガイド溝43bの上端側よりも下端側の水平方向位置(X方向位置)が、シート排出口2aから遠ざかるように設定されている。これにより、上トレイ部41の上流側部分は、シート積載量の増加に伴って、シート排出口2aから遠ざかるようにX方向へ変位しながら、下方へ移動することになる。このような構成とすることで、上トレイ部41のシート搬送方向上流側部分が下方へ移動する際にプリンタ本体1の本体側面部2に干渉する事態を回避でき、上トレイ部41の安定した昇降動作が可能になる。
【0026】
なお、このような移動を実現するためには、上トレイ部41の下流側部分を支持している下トレイ部42に対して上トレイ部41がX方向に変位可能であることが必要となる。本実施形態では、上述したように、上トレイ部41の下流側ガイド突起41bが下トレイ部42のX方向へ延びる左右ガイド溝42bに嵌り込むようにして取り付けられているため、下トレイ部42に対して上トレイ部41が
図6中符号Bで示すようにX方向へ変位可能であり、上述の安定した昇降動作が実現される。
【0027】
近年、シートの多様化により、シートの種類によっては排紙トレイ装置4にシートを適切にスタックできない場合がある。例えば、
図5に示すようにシート搬送方向下流側に向かって上方へ比較的大きく傾斜しているシート載置面に対し、薄紙コート紙のようにコシが弱く接触抵抗の大きいシートが搬送されると、
図8に示すように、シート載置面に接触したシート先端が接触抵抗の高さ故に滑り上がることができず、しかもコシの弱さ故にシート後端側の送り込みによってシートが蛇腹状に屈曲してしまう場合がある。
【0028】
そこで、本実施形態においては、このようなシートを含む多様な種類のシートに対して適切なスタック性を提供できるように、シート排出口2aから排出(搬送)されてくるシート20の面に対する上トレイ部41の上面(シート載置面)の角度を設定する角度設定手段を構成するスライド部材44が設けられている。
【0029】
図9は、上トレイ部41を取り外した状態における排紙トレイ装置4の下面図である。
図10(a)及び(b)は、それぞれ異なる方向から見たスライド部材44の斜視図であり、
図10(c)は、回動軸43aの軸方向から見たスライド部材44の側面図である。
スライド部材44は、本体固定部43の回動軸43aをスライド部材44の軸受孔44bに通すことで、回動軸43aの軸方向(Y方向)に沿ってスライド可能なように、本体固定部43に対して取り付けられている。スライド部材44は、スライド部材44のトレイ受け部44aの摺動面44a1を本体固定部43の被摺動面43cに摺動させながら、Y方向に沿ってスライドする。
【0030】
トレイ角度が
図5及び
図8に示す第一角度αであるとき、スライド部材44は、
図3及び
図9に示す第一位置(Y方向の位置)に位置する。このとき、上トレイ部41は、下トレイ部42とともに、その下流側部分が自重により下降する方向へ回動軸43aの回りを回動しようとするが、下トレイ部42の当接面42cがスライド部材44のトレイ受け部44aの被当接面44a2に当接することで回動が規制され、トレイ角度が第一角度αとなるように位置決めされる。なお、下トレイ部42が第一角度αよりも更にトレイ角度が大きくなる方向へ回動軸43aの回りを回動することは、下トレイ部42の側面に設けられる回動ストッパ42eが本体固定部43に当接することで規制されている。
【0031】
下トレイ部42の当接面42cとスライド部材44の被当接面44a2とが平面で構成されている場合、製造誤差などによって当接面42cと被当接面44a2との平行性が確保しにくく、両者の当接状態が安定化せずに下トレイ部42のガタツキが生じ得る。そこで、本実施形態では、下トレイ部42の当接面42c上には、
図11に示すように、Y方向に対して直交する方向へ延びる複数のリブを設ける一方、スライド部材44の被当接面44a2上には、
図10(b)に示すように、Y方向へ延びる複数のリブを設けている。このように、互いに交差する方向に延びる複数のリブ同士を当接するようにすることで、平面同士を当接させる場合と比べて、下トレイ部42の当接面42cとスライド部材44の被当接面44a2との当接状態を安定化させやすくなり、下トレイ部42のガタツキを抑制することができる。
【0032】
一方、トレイ角度を第一角度αよりも小さい
図12に示す第二角度βに変更する場合、ユーザは、スライド部材44の把持部44dを指でつまんで、スライド部材44をY方向に沿って装置手前側(
図3及び
図9中矢印Cの向き)へスライドさせる。そして、スライド部材44のトレイ受け部44aの被当接面44a2が下トレイ部42の当接面42cとの対向位置から外れる第二位置(Y方向の位置)までスライドすると、トレイ受け部44aは下トレイ部42の収納凹部42aと対向する。これにより、下トレイ部42の下流側部分が自重により下降する方向へ回動軸43aの回りを下トレイ部42が回動することの規制が解除されることになる。その結果、下トレイ部42の当接面42cが本体固定部43の被摺動面43cに当接するまで下トレイ部42が回動し、その当接によって回動が規制されて、トレイ角度が第一角度αよりも小さい第二角度βとなるように位置決めされる。
【0033】
下トレイ部42の当接面42cと本体固定部43の被摺動面43cとが平面で構成されている場合、製造誤差などによって当接面42cと被摺動面43cとの平行性が確保しにくく、両者の当接状態が安定化せずに下トレイ部42のガタツキが生じ得る。本実施形態では、下トレイ部42の当接面42c上には、上述したように、Y方向に対して直交する方向へ延びる複数のリブが設けられているので、本体固定部43の被摺動面43c上には、
図13に示すように、Y方向へ延びる複数のリブを設けている。このように、互いに交差する方向に延びる複数のリブ同士を当接するようにすることで、平面同士を当接させる場合と比べて、下トレイ部42の当接面42cと本体固定部43の被摺動面43cとの当接状態を安定化させやすくなり、下トレイ部42のガタツキを抑制することができる。
【0034】
トレイ角度が第二角度βである場合に下トレイ部42の当接面42cが当接する本体固定部43の被摺動面43cに対しては、スライド部材44を摺動させる際に、スライド部材44の摺動面44a1が摺動することになる。そのため、本実施形態では、摺動抵抗を少なくして高い摺動性を得るために、被摺動面43c上の複数のリブが、その摺動方向と略一致する方向(平行な方向)に延びるように設定してある。
【0035】
本実施形態において、第一角度αは、一般的、汎用的なシートを積載する場合に適用される角度範囲(例えば30°前後)に設定されている。トレイ角度がこのような第一角度αであるとき、薄紙コート紙のようにコシが弱く接触抵抗の大きいシートが搬送されると、上述したように、上トレイ部41のシート載置面に接触したシート先端が接触抵抗の高さ故に滑り上がることができず、かつ、コシの弱さ故にシート後端側の送り込みによってシートが蛇腹状に屈曲してしまう場合がある。
【0036】
本実施形態によれば、薄紙コート紙のようにコシが弱く接触抵抗の大きいシートを搬送する場合には、スライド部材44を第一位置から第二位置へとスライドさせて、トレイ角度を第一角度αよりも小さい第二角度βに変更する。これにより、シート排出口2aから排出(搬送)されてくるシート20の面に対する上トレイ部41の上面の角度が小さくなり(平行に近づくようになり)、接触抵抗が高くコシが弱いシートであっても、上トレイ部41のシート載置面又はすでに載置されているシートの面に接触したシート先端が、シート後端側の送り込みによって滑り上がることができ、シートが蛇腹状に屈曲してしまう事態を抑制できる。
【0037】
ここで、トレイ角度が第一角度αから第二角度βへ変更されると、上トレイ部41が下トレイ部42を介して回動軸43aの回りを回動する結果、高さ調整スプリング45の一端部を受けている上トレイ部41の後述する受け凹部41cの姿勢(角度)が変化し、また当該受け凹部41cの位置も変化する。この変化が大きいと、上トレイ部41の受け凹部41cに作用する高さ調整スプリング45の付勢力が変化してしまう。その結果、トレイ角度が第二角度βのときに、上トレイ部41の上流側部分の高さが目標高さからズレてしまって、シート積載性(スタック性)が悪化してしまう。
【0038】
具体的には、トレイ角度が第二角度βのときに、高さ調整スプリング45の付勢力の変化によって、例えば、シート排出口2aから搬送されてくるシート20に対し、上トレイ部41の上流側部分のシート載置面又はそこに積載したシートの最上位シート面の高さが低くなりすぎてしまう場合がある。この場合、シート先端が自重で垂れ下がった状態でシート載置面又は最上位シート面に接触してしまい、シート後端側部分がシート先端を追い越すように搬送されて、シートがロール状になるなどして、適切にシートを積載することができなくなる。
【0039】
また、逆に、当該シート載置面又は当該最上位シート面の高さが高くなりすぎてしまうと、シート先端が上トレイ部41の上流側部分よりも手前で上トレイ部41の端面あるいは積載されているシート束の端面に衝突し、シート載置面上にシートを適切に送り込むことができなくなる。
【0040】
そこで、本実施形態においては、トレイ角度の変更前後における上トレイ部41に作用する付勢力の変化の抑制を行う付勢力変化抑制手段を設け、トレイ角度が第二角度βへ変更されても、上トレイ部41に作用する付勢力が第一角度αのときから大きく変化しないようにしている。具体的には、本実施形態の付勢力変化抑制手段は、トレイ角度の変更前後で、本体固定部43における高さ調整スプリング45との接続部であるスプリング受け部46の位置を変化させる構成を採用している。
【0041】
図14(a)及び(b)は、上トレイ部41及び高さ調整スプリング45を取り外した状態における排紙トレイ装置4の上面図であり、
図14(a)は第一角度αのときのスプリング受け部46の位置を示し、
図14(b)は第二角度βのときのスプリング受け部46の位置を示している。
本実施形態において、本体固定部43と上トレイ部41との間の高さ調整スプリング45の下端部(本体固定部43に接続される端部)は、本体固定部43上に保持されているスプリング受け部46の凹部46a内に配置され、保持される。なお、高さ調整スプリング45の上端部(上トレイ部41に接続される端部)は、
図15(a)及び(b)に示すように、上トレイ部41に形成されている受け凹部41c内に配置され、保持される。
【0042】
トレイ角度が第一角度αであるとき、高さ調整スプリング45の上端部を保持する上トレイ部41の受け凹部41cの受け面の向きは、
図5中符号L1で示す二点鎖線の方向を向く。一方、上トレイ部41が下トレイ部42を介して回動軸43aの回りを回動して、トレイ角度が第一角度αから第二角度βへ変更されると、高さ調整スプリング45の上端部を保持する上トレイ部41の受け凹部41cの受け面の向きは、
図12中符号L2で示す二点鎖線の方向を向くようになる。
【0043】
これにより、本実施形態において、第二角度βのときの二点鎖線L2が本体固定部43を通る位置は、第一角度αのときの二点鎖線L1が本体固定部43を通る位置よりも、シート搬送方向上流側にズレる。このズレによって、上トレイ部41の受け凹部41cに対する高さ調整スプリング45の姿勢(角度)が変化し、上トレイ部41の受け凹部41cに作用する高さ調整スプリング45の付勢力が変化する。
【0044】
そこで、本実施形態では、高さ調整スプリング45の下端部を保持するスプリング受け部46が、本体固定部43に対して略X方向(シート搬送方向)に沿ってスライド可能に構成されている。具体的には、トレイ角度が第一角度αであるときには、
図14(a)に示す位置に移動し、トレイ角度が第二角度βであるときには、
図14(b)に示す位置に移動するように、構成されている。これにより、トレイ角度の変更によって高さ調整スプリング45の下端部がシート搬送方向に変位するのに伴って、その下端部を受けるスプリング受け部46も同方向へ変位する。その結果、上トレイ部41の受け凹部41cに対する高さ調整スプリング45の姿勢(角度)の変化が抑制され、上トレイ部41の受け凹部41cに作用する高さ調整スプリング45の付勢力変化を軽減することができる。
【0045】
また、本実施形態におけるスプリング受け部46は、トレイ角度を変更する際に動かすスライド部材44の移動に連動してスライドするように構成されている。具体的には、
図14に示すように、スライド部材44に設けられている突起部44cがスプリング受け部46に設けられているガイド溝46bに係合している。スライド部材44が
図14(a)に示す第一位置(第一角度α)から
図14(b)に示す第二位置(第二角度β)へスライドすると(
図14中矢印Cの方向)、これに伴って移動する突起部44cがガイド溝46bに沿って移動することで、スプリング受け部46が
図14(b)中の矢印Dの方向へ移動する。ガイド溝46bがスライド方向(Y方向)とシート搬送方向(X方向)との両方に傾斜する方向へ延びる形状としたことで、このような連動が可能となっている。
【0046】
なお、本実施形態では、高さ調整スプリング45の下端部を受けるスプリング受け部46を移動させる構成であるが、この構成に代えて又はこの構成とともに、高さ調整スプリング45の上端部を受ける受け凹部41cを移動させる構成を採用してもよい。
【0047】
ここで、本実施形態において、高さ調整スプリング45の特性は、トレイ角度が第一角度αであるときに、シート積載量に応じて上トレイ部41が適切に下降できるように設定されている。そして、本実施形態では、トレイ角度が第一角度αから第二角度βへ変更されるとき、上トレイ部41が下トレイ部42を介して回動軸43aの回りを回動して、高さ調整スプリング45の上端部を受けている上トレイ部41の受け凹部41cが本体固定部43のスプリング受け部46に近づく構成となっている。そのため、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ変更することで、上トレイ部41に対して高さ調整スプリング45が付与する付勢力が増大し、上トレイ部41の受け凹部41cに作用する高さ調整スプリング45の付勢力が変化してしまう。その結果、トレイ角度が第二角度βのときには、上トレイ部41の上流側部分の高さが目標高さよりも高い位置になってしまい、シート積載性(スタック性)を悪化させる。
【0048】
本実施形態においては、上トレイ部41のシート載置面上にシートが積載されていない状態(初期状態)での上トレイ部41の上流側部分の高さが、いずれのトレイ角度α,βであっても略同一になるように、上トレイ部41の上流側部分の高さ上限位置を規制する規制手段を設けている。
【0049】
この点について説明すると、トレイ角度が第一角度αであるときには、上述したとおり、高さ調整スプリング45の付勢力により、上トレイ部41の上流側ガイド突起41aが本体固定部43の上下ガイド溝43bの上端に押し当てられ、上トレイ部41の上流側部分の高さ上限位置が規制される。一方、トレイ角度が第一角度αから第二角度βに変更されると、上トレイ部41が下トレイ部42を介して回動軸43aの回りを回動することで、回動軸43aよりもシート搬送方向上流側に位置する上トレイ部41の上流側端部は上方へ移動することになる。そのため、上流側ガイド突起41aが上下ガイド溝43bの上端に押し当てられた状態のままでは、初期状態(シート未積載状態)における上トレイ部41の上流側部分の高さが、第一角度αのときよりも高くなってしまう。
【0050】
そこで、本実施形態においては、トレイ角度が第二角度βであるときでも、初期状態(シート未積載状態)における上トレイ部41の上流側部分の高さを第一角度αと略同じにするために、本体固定部43の上下ガイド溝43bとは別個に、規制手段を設けている。
【0051】
図16(a)及び(b)は、トレイ角度が第二角度βであるときの規制手段を示すために、シート搬送方向に沿って鉛直に切断した排紙トレイ装置4の断面図である。
本実施形態では、回動軸43a上に上限規制フック43dを取り付け、上トレイ部41には、トレイ角度が第二角度βであるときに上限規制フック43dと係合可能なトレイ側フック41dを設けている。上トレイ部41のトレイ側フック41dは、トレイ角度が第一角度αであるときには、
図16(a)に示すような初期状態でも、
図16(b)に示すように複数枚のシート20からなるシート束20aが積載されたシート積載状態でも(上流側ガイド突起41aが上下ガイド溝43bの下端に押し当てられた状態であっても)、本体固定部43の回動軸43a上の上限規制フック43dから離間している。したがって、トレイ角度が第一角度αであるとき、上トレイ部41のトレイ側フック41dが本体固定部43の上限規制フック43dに係合することはなく、上トレイ部41の上流側部分の高さ上限位置を規制しない非規制状態となる。
【0052】
一方、トレイ角度が第一角度αから第二角度βに変更されると、上トレイ部41が下トレイ部42を介して回動軸43aの回りを回動することで、回動軸43aよりもシート搬送方向下流側であって回動軸43aよりも上方に位置するトレイ側フック41dは、下方へ移動しながら、シート搬送方向下流側へと移動することになる。そして、この第二角度βの状態で、上トレイ部41が高さ調整スプリング45の付勢力に抗して上流側ガイド突起41aを上下ガイド溝43bに規制されながら押し下げられると、
図12に示すように、上トレイ部41のトレイ側フック41dが本体固定部43の回動軸43a上の上限規制フック43dに係合する。係合後の上トレイ部41は、トレイ側フック41dが上限規制フック43dに規制されて、それ以上は上方へ変位することが規制される規制状態になる。
【0053】
なお、本実施形態では、トレイ側フック41d及び上限規制フック43dの組が、シート幅方向略中央に一組だけ設けられているが、シート幅方向に複数組設けてもよい。ただし、シート幅方向に複数組設けた場合、例えば、規制状態にしたいときに一部の組だけ規制状態にならないような事態が生じると、適切な規制状態となることができず、逆に、非規制状態にしたいときに一部の組だけ非規制状態にならないような事態が生じると、適切な非規制状態となることができないという不具合が生じるおそれがある。本実施形態のようにシート幅方向略中央に1つだけ設ける構成とすれば、このような不具合が抑制される。
【0054】
本実施形態の上限規制フック43dは、
図17に示すように、トーションばね43eにより、回動軸43aの回りで
図17中矢印Eの向きに付勢されている。上限規制フック43dには、突当部43fが一体で設けられており、トレイ側フック41dが係合していないとき、
図18(a)に示すように、この突当部43fが本体固定部43の被突当部43gに突き当たり、上限規制フック43dの回転位置が位置決めされる。
【0055】
トレイ角度が第二角度βに変更され、上トレイ部41が高さ調整スプリング45の付勢力に抗して押し下げられると、上トレイ部41のトレイ側フック41dの下面(当接部)が上限規制フック43dの上面(被当接部)に当接する。そして、上トレイ部41が更に押し込まれることで、トレイ側フック41dの下面と上限規制フック43dの上面とが摺動し、
図18(b)に示すように、上限規制フック43dがトーションばね43eの付勢力に抗して回動軸43aの回りを
図18中反時計回り方向に回動する。そして、トレイ側フック41dの下面が上限規制フック43dの上面(被当接面)の外方へ摺動するまで上限規制フック43dが回動すると、上限規制フック43dがトーションばね43eの付勢力により回動軸43aの回りを
図18中時計回り方向へ回動する。これにより、
図18(c)に示すように、トレイ側フック41dが上限規制フック43dに係合し、上トレイ部41の上限位置が規制される。
【0056】
この結果、トレイ角度が第二角度βに変更された場合、上トレイ部41を高さ調整スプリング45の付勢力に抗して押し下げると、トレイ側フック41dが上限規制フック43dに係合し、
図12に示すように、初期状態における上トレイ部41の上流側部分の高さが、第一角度αの場合(
図5参照)と略同一になる。
【0057】
以上のような規制手段を設けることで、初期状態(シート未積載状態)における上トレイ部41の上流側部分の高さを、いずれのトレイ角度α,βでも略同一にすることができる。しかしながら、第二角度βの場合、初期状態(シート未積載状態)時における高さ調整スプリング45の圧縮量は、第一角度αの場合よりも大きいため、高さ調整スプリング45が上トレイ部41に付与する付勢力の大きさは、第一角度αの場合よりも大きいものとなっている。そのため、シート積載後においては、第一角度αのときにはシート積載量に応じて上トレイ部41が適切に下降して最上位シート面の高さが適切な範囲内となるが、第二角度βのときにはシート積載量に応じて上トレイ部41が適切に下降できず、最上位シート面の高さを適切な範囲内とすることができない。
【0058】
そこで、本実施形態においては、付勢力変化抑制手段として、更に、トレイ角度が第二角度βであるときに上トレイ部41を下方へ付勢する、前記高さ調整スプリング45とは別の付勢手段である付勢力調整スプリング47を設けている。
【0059】
図19は、排紙トレイ装置4の内部に配置された付勢力調整スプリング47を示す側面図である。
付勢力調整スプリング47は、
図19に示すように、上端が上トレイ部41のスプリング取付部41eに取り付けられ、下端がワイヤー47aに取り付けられた引っ張りばねである。このワイヤー47aは、本体固定部43に設けられる滑車43h等によって取り回されて、付勢力調整スプリング47の下端に取り付けられた端部とは反対側の他端が、
図14(a)及び(b)に示すように、スライド部材44上のスプリング取付部44eに取り付けられている。
【0060】
本実施形態において、スライド部材44が第一位置に位置するとき(第一角度αのとき)、スライド部材44上のスプリング取付部44eに取り付けられたワイヤー47aは緩んだ状態になる。そのため、トレイ角度が第一角度αであるときには、付勢力調整スプリング47による付勢力は上トレイ部41には作用しない。その結果、上トレイ部41には高さ調整スプリング45の付勢力だけが作用する。
【0061】
一方、スライド部材44が第一位置から第二位置へスライドすると、これに連動して、スライド部材44上のスプリング取付部44eに取り付けられたワイヤー47aが引っ張られる。これにより、上トレイ部41のスプリング取付部41eに一端が取り付けられた付勢力調整スプリング47が伸長する。よって、トレイ角度が第二角度βになると、付勢力調整スプリング47による付勢力が上トレイ部41に作用し、上トレイ部41を下方へ付勢する付勢力が付与される。その結果、トレイ角度が第二角度βのとき、上トレイ部41には、高さ調整スプリング45により上方へ付勢する付勢力の一部が、付勢力調整スプリング47により下方へ付勢する付勢力によって相殺され、上トレイ部41には、高さ調整スプリング45のみの付勢力が付与される場合よりも、上方への付勢力が弱まる。
【0062】
本実施形態では、付勢力調整スプリング47の特性やワイヤー47aによる引っ張り量などを適切に設定し、第二角度βのときに上トレイ部41に対して適切な付勢力が付与されるように調整される。その結果、第二角度βのときでも、シート積載量に応じて上トレイ部41が適切に下降し、最上位シート面の高さを適切な範囲内とすることができる。
【0063】
なお、本実施形態においては、上トレイ部41に対する付勢力調整スプリング47の付勢力を、スライド部材44の移動に連動して切り替わるように構成しているが、これに限らず、例えば、他の部材(スプリング受け部46や上トレイ部41)の移動に連動して切り替わるようにしてもよいし、あるいは、ユーザーの手動で切り替わる構成としてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、スライド部材44が第一位置にあるとき(第一角度αのとき)には、付勢力調整スプリング47の付勢力が上トレイ部41に作用しないように構成されているが、作用するように構成してもよい。
【0065】
本実施形態において、トレイ角度を第二角度βから第一角度αへ変更する場合には、以下のように動作する。
第二角度βのとき、第二位置に位置するスライド部材44は、そのトレイ受け部44aが下トレイ部42の収納凹部42aに入り込んでいるため、このままでは第一位置へスライドすることができない。そのため、トレイ角度を第二角度βから第一角度αへ変更する場合、ユーザは、下トレイ部42を持ち上げる操作をする。これにより、スライド部材44のトレイ受け部44aが下トレイ部42の収納凹部42aから出るため、スライド部材44は、第一位置へスライドすることが可能となる。
【0066】
ここで、ユーザがスライド部材44の把持部44dを指でつまんで、スライド部材44をY方向に沿って装置奥側へ(第一位置へ)スライドさせるようにしてもよいが、本実施形態では、ユーザの利便性向上のため、スライド部材付勢手段としての圧縮バネ44fの付勢力によりスライド部材44が第一位置へスライドするように構成している。すなわち、回動軸43aに対し、回動軸43aの軸方向(Y方向)に沿ってスライド部材44を装置奥側へ(第一位置へ)付勢する圧縮バネ44fを設けている。
【0067】
ユーザは、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ変更する場合、スライド部材44の把持部44dを指でつまんで、圧縮バネ44fの付勢力に抗してスライド部材44を装置手前側へスライドさせる。これにより、スライド部材44は第二位置へスライドされ、スライド部材44のトレイ受け部44aが下トレイ部42の収納凹部42aに入り込み、上トレイ部41が下トレイ部42を介して回動軸43aの回りで回動し、トレイ角度が第二角度βとなる。このとき、圧縮バネ44fの付勢力によりスライド部材44には装置奥側への付勢力(第一位置への付勢力)が作用しているが、スライド部材44のトレイ受け部44aが下トレイ部42の収納凹部42aの内壁に当接してスライド部材44の装置奥側への移動が規制されるため、スライド部材44は第二位置に位置決めされる。
【0068】
一方で、ユーザは、トレイ角度を第二角度βから第一角度αへ変更する場合、下トレイ部42を持ち上げる操作をする。これにより、スライド部材44のトレイ受け部44aが下トレイ部42の収納凹部42aから出ることで、スライド部材44の装置奥側への移動が可能となり、スライド部材44は、圧縮バネ44fの付勢力により装置奥側へスライドし、第一位置へ移動する。
【0069】
このような構成により、ユーザは、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ変更する場合、スライド部材44の把持部44dを指でつまんで、圧縮バネ44fの付勢力に抗してスライド部材44を装置手前側へスライドさせるという簡単な操作で済む。すなわち、スライド部材44を装置手前側へスライドさせる操作により、下トレイ部42が自重により回動軸43aの回りを回動してトレイ角度が第二角度βへと変更される。また、スライド部材44を装置手前側へスライドさせる操作により、ワイヤー47aが引っ張られて付勢力調整スプリング47の付勢力が上トレイ部41に作用し、上トレイ部41には、高さ調整スプリング45による上方への付勢力の一部が付勢力調整スプリング47による下方への付勢力によって相殺される。そして、ユーザは、上トレイ部41を押し下げて上トレイ部41のトレイ側フック41dを本体固定部43の上限規制フック43dに係合させるという簡単な操作を行うことで、上トレイ部41の上流側部分の高さが目標高さとなる。
【0070】
また、ユーザは、トレイ角度を第二角度βから第一角度αへ変更する場合、下トレイ部42を持ち上げるという簡単な操作を行うだけ済む。すなわち、下トレイ部42を持ち上げるだけで、スライド部材44は圧縮バネ44fの付勢力によって自動的に第一位置に戻り、かつ、スライド部材44のスライドに連動してワイヤー47aが緩み、付勢力調整スプリング47の付勢力が上トレイ部41に作用しないようになる。また、下トレイ部42を持ち上げると、上トレイ部41も回動軸43aの回りを回動する結果、上トレイ部41のトレイ側フック41dが本体固定部43の上限規制フック43dから外れて係合が解除され、上トレイ部41の上流側部分の高さが目標高さとなる。
【0071】
ここで、ユーザが下トレイ部42を持ち上げるとき、圧縮バネ44fの付勢力によりスライド部材44のトレイ受け部44aが下トレイ部42の収納凹部42aの内壁に当接しているため、下トレイ部42に追従してスライド部材44も回動軸43aの回りをわずかながら連れまわり回動する。これは、回動軸43aに取り付けられたスライド部材44の摺動面44a1を本体固定部43の被摺動面43cに摺動させながらスライドさせるためには、摺動面44a1と被摺動面43cとの間に一定の隙間(ガタ)を設ける必要があるためである。
【0072】
このようなスライド部材44の連れまわり回動を抑制したい場合には、例えば、スライド部材44が第二位置に位置するときに摺動面44a1と被摺動面43cとの間の隙間(ガタ)を埋める構成を採用してもよい。具体例としては、スライド部材44の摺動面44a1のうち、回動軸43aに対してスライド部材44が連れまわり回動するときに被摺動面43cに近づく側の摺動面部分に突起部を設け、及び/又は、被摺動面43cのうち、スライド部材44が第二位置に位置するときに当該摺動面部分に対向する被摺動面部分に突起部を設け、このような突起部が相手側に当接することで、スライド部材44の連れまわり回動を抑制する。
【0073】
また、スライド部材44のトレイ受け部44aには、
図10(b)に示すように、ストッパ突起44a3が設けられている。このストッパ突起44a3は、下トレイ部42の当接面42cがスライド部材44の被当接面44a2に当接するときに、下トレイ部42の対応箇所に形成されているストッパ凹部42d(
図11参照)に嵌り込む。これにより、下トレイ部42の当接面42cとスライド部材44の被当接面44a2とが当接した状態であるとき(第一角度αのとき)、スライド部材44が装置手前側へ(第二位置へ)スライドすることが規制される。よって、スライド部材44が意図せずに装置手前側へ(第二位置へ)スライドしてしまって、上トレイ部41及び下トレイ部42が不意に下降してしまうような事態を回避することができる。
【0074】
なお、ストッパ突起44a3は、
図10(b)に示すように、装置奥側の端面44a4が傾斜面となっているため、スライド部材44が圧縮バネ44fの付勢力で装置奥側へ(第一位置へ)スライドする際に、ストッパ突起44a3の装置奥側端部が下トレイ部42の壁面に引っ掛かるような事態が避けられるようになっている。
【0075】
また、上トレイ部41や下トレイ部42が重い場合、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ変更するために、スライド部材44のトレイ受け部44aが下トレイ部42の収納凹部42aと入り込んだ時に、下トレイ部42が急激に回動するおそれがある。このような場合には、例えば、下トレイ部42の下流側部分が上方へ移動する方向に回動軸43aの回りで下トレイ部42を付勢するトーションスプリングなどの付勢手段を配置してもよい。これにより、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ変更する際に下トレイ部42が急激に回動する事態を抑制できる。
【0076】
なお、本実施形態においては、上トレイ部41のシート載置面上にシートが積載されていない状態(初期状態)での上トレイ部41の上流側部分の高さが、いずれのトレイ角度α,βであっても略同一になるように設定しているが、トレイ角度α,βごとに異なるようにしてもよい。
【0077】
例えば、
図20に示すように、シート排出口2aから排出(搬送)されてくるシート20の位置に対するトレイ角度が第一角度αである場合(
図20中実線)の上トレイ部41の上流側部分の距離Hαよりも、トレイ角度が第二角度βである場合(
図20中破線)の上トレイ部41の上流側部分の距離Hβの方が短くしてもよい。第二角度βは、薄紙コート紙のようにコシが弱いシートに対して使用されるので、シート排出口2aから排出(搬送)されてくるシート先端が自重で垂れ下がりやすい。そのため、第二角度βの場合に、シート排出口2aから排出(搬送)されてくるシート20の位置に対する上トレイ部41の上流側部分の距離Hβを短くすることで、コシが弱いシートを搬送するときに生じやすいシート先端の垂れ下がりが軽減され、シートがロール状になってしまうような不具合を抑制できる。
【0078】
また、本実施形態においては、
図19に示したように、トレイ角度が第一角度αであるときには、ワイヤー47aは緩んだ状態になり、トレイ角度が第二角度βであるときには、ワイヤー47aは引っ張られる状態になる。しかしながら、これとは逆に、トレイ角度が第一角度αであるときにワイヤー47aが引っ張られる状態となり、トレイ角度が第二角度βであるときには、ワイヤー47aが緩んだ状態になるように、構成してもよい。この場合、第一角度αのときには、付勢力調整スプリング47による付勢力を上トレイ部41に作用させて、高さ調整スプリング45により上トレイ部41を上方へ付勢する付勢力の一部が付勢力調整スプリング47の付勢力によって相殺されて、上トレイ部41に対する上方への付勢力が弱まる。一方、第二角度βのときには、付勢力調整スプリング47による付勢力が上トレイ部41に作用しないので、上トレイ部41には高さ調整スプリング45の付勢力だけが作用し、第一角度αのときよりも、上トレイ部41に対する上方への付勢力が強まる。
【0079】
図21は、この構成における上トレイ部41に作用する上方への付勢力と上トレイ部41上のシート積載量(シートの積載高さ)との関係を示すグラフである。
以下の表1に示すように、トレイ角度を第一角度αに設定して使用する場合のシート種類が普通紙であり、トレイ角度を第二角度βに設定して使用する場合のシート種類が薄紙コート紙である場合を考える。
【0080】
【0081】
前記表1に示すように、薄紙コート紙は、普通紙と比べて、シート1枚当たりの重量が重く、かつ、シート厚が薄い。そのため、薄紙コート紙の場合、普通紙の場合よりも、シート1枚当たりのシート重量によって上トレイ部41を押し下げる力が大きいにも関わらず、シート1枚当たりに上トレイ部41が下降する距離は、普通紙の場合よりも短くしなければ、上トレイ部41に積載された最上位シートのシート面の高さを、シート積載量によらず、ほぼ同じ高さに維持することができない。そのため、第二角度βのときには、第一角度αのときよりも、上トレイ部41を上方へ付勢する付勢力のばね定数を高くする必要がある。
【0082】
このような場合には、上述した構成のように、トレイ角度が第一角度αであるときにワイヤー47aが引っ張られる状態となり、トレイ角度が第二角度βであるときには、ワイヤー47aが緩んだ状態になるようにするのがよい。これにより、
図21のグラフに示すように、第二角度βの場合には、第一角度αの場合よりも、ばね定数が高い付勢力を上トレイ部41に作用させることができ、薄紙コート紙の場合(第二角度βの場合)も、上トレイ部41に積載された最上位シートのシート面の高さを、シート積載量によらず、ほぼ同じ高さに維持することができる。
【0083】
また、本実施形態においては、上述したとおり、下トレイ部42が回動軸43aの回りを回動することで、下トレイ部42に支持されている上トレイ部41も回動軸43aの回りを回動し、トレイ角度が変更される。このとき、トレイ角度が第一角度αである場合には、
図22(a)に示すように、シート排出口2aと上トレイ部41の上流側端部との隙間Gαは比較的狭い。そのため、シート排出口2aから排出されてくるシート20の先端が自重で垂れ下がっても、そのシート先端が当該隙間Gαに入り込むようなことはない。
【0084】
しかしながら、トレイ角度を第二角度βに切り替えると、上トレイ部41が回動軸43aの回りを回動する結果、
図22(b)に示すように、シート排出口2aと上トレイ部41の上流側端部との隙間Gβが広がることになる。そのため、シート排出口2aから排出されてくるシート20の先端が自重で垂れ下がることで、そのシート先端が当該隙間Gβに入り込み、上トレイ部41上にシートを適切にスタックできないおそれがある。特に、トレイ角度を第二角度βに設定する場合は、薄紙コート紙のようにコシの弱いシートを使用することが多いので、シート先端が垂れ下がりやすく隙間Gβに入り込みやすいので、深刻な問題となり得る。
【0085】
このような場合には、例えば、
図23に示すように、トレイ角度を第二角度βに設定する際に補助トレイ41’を装着して隙間Gβを塞ぐようにしてもよい。このように補助トレイ41’で隙間Gβを塞ぐことで、トレイ角度を第二角度βに設定してコシの弱いシートを使用する場合でも、シート先端が隙間Gβに入り込むことを防ぎ、上トレイ部41上にシートを適切にスタックすることができる。
【0086】
なお、トレイ角度を第一角度αに設定する場合、補助トレイ41’を取り外すことになる。取り外した補助トレイ41’は、例えば、
図24に示すように、下トレイ部42の下面に設けた補助トレイ収納部に収納するようにしてもよい。
【0087】
〔変形例〕
次に、規制手段を構成する上限規制フック及びトレイ側フックの一変形例について説明する。
上述した実施形態においては、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ変更する場合、ユーザがスライド部材44をスライドさせることで、下トレイ部42の当接面42cが本体固定部43の被摺動面43cに当接するまで下トレイ部42が回動する。このとき、上トレイ部41も一緒に回動し、上トレイ部41のトレイ側フック41dが本体固定部43の回動軸43a上の上限規制フック43dに係合することで、トレイ角度が第二角度βに切り替わる。
【0088】
ところが、上述した実施形態においては、スライド部材44をスライドさせて下トレイ部42が回動軸43aの回りを回動するだけでは、
図25に示すように、トレイ側フック41dが上限規制フック43dに係合する位置まで下がらない場合がある。特に、上述した
図21に示す付勢力を得る構成とした場合、すなわち、第二角度βのときに、第一角度αのときよりも、上トレイ部41を上方へ付勢する付勢力のばね定数が大きくなるように構成した場合、付勢力調整スプリング47により上トレイ部41を下方へ付勢する付勢力が解除されるため、トレイ側フック41dが上限規制フック43dに係合する位置まで下がりにくい。
【0089】
このようにトレイ側フック41dが上限規制フック43dに係合する位置まで下がらないと、第二角度βへの切り替えを完了するためには、ユーザが上トレイ部41を高さ調整スプリング45の付勢力に抗して押し下げ、トレイ側フック41dを上限規制フック43dに係合させる必要がある。そのため、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ切り替える際のユーザ作業が増え、利便性が低下する。
【0090】
そこで、本変形例においては、スライド部材44をスライドさせて下トレイ部42が回動軸43aの回りを回動するだけで、トレイ側フック41dが上限規制フック43dに係合する構成を採用する。具体的には、本変形例では、上限規制フック43i及びトレイ側フック41fにおける当接部及び被当接部の形状が、上述した実施形態とは異なっている。
【0091】
図26は、本変形例における上限規制フック43i及びトレイ側フック41fの構成を示す説明図である。
図27(a)~(d)は、本変形例において、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ切り替えるときに、上トレイ部41のトレイ側フック41fが上限規制フック43iに係合する様子を示す説明図である。
【0092】
本変形例において、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ切り替える場合、スライド部材44をスライドさせることで、下トレイ部42が回動軸43aの回りを回動する。これにより、上トレイ部41は、下トレイ部42と一体的に回動し、この回動に連動して上トレイ部41のトレイ側フック41fが下がってくる。その後、本変形例においては、下トレイ部42の回動途中で、
図27(a)に示すように、上トレイ部41のトレイ側フック41fの当接部としての下端部41f1が、上限規制フック43iの被当接部としての上斜面43i1に当接する。
【0093】
このとき、上限規制フック43
iの上斜面43i1は、
図28に示すように、トレイ側フック41fの下端部41f1から当接力Faを受ける。この当接力Faは、主として、上トレイ部の自重(上述した
図21に示す付勢力を得る構成とした場合には、更に付勢力調整スプリング47の付勢力が追加される。)から、高さ調整スプリング45の付勢力の分を差し引いた力である。
【0094】
本変形例においては、上限規制フック43iの上斜面43i1が、トレイ側フック41fの下端部41f1から受ける当接力Faの向きに対して傾斜している。そのため、
図28に示すように、上限規制フック43iの上斜面43i1には、当接力Faにより、トーションばね43eの付勢力Fbに抗して回動軸43aの回りを
図27中反時計回り方向に回動する向きの回転力Faθが作用する。本変形例では、この回転力Faθがトーションばね43eの付勢力Fbよりも十分に大きくなるように、上限規制フック43iの上斜面43i1の傾斜が設定されている。これにより、
図27(b)に示すように、トレイ側フック41fの下端部41f1が上限規制フック43iの上斜面43i1を摺動しながら、上限規制フック43iがトーションばね43eの付勢力Fbに抗して回動軸43aの回りを
図27中反時計回り方向に回動する。
【0095】
そして、トレイ側フック41fの下端部41f1が上限規制フック43iの上斜面43i1の端部まで摺動すると、今度は、
図27(c)に示すように、上トレイ部41のトレイ側フック41fの当接部としての先端部41f2が、上限規制フック43iの被当接部としての横斜面43i2に当接する。本変形例では、
図27(c)に示すように、トレイ側フック41fの先端部41f2が上限規制フック43iの横斜面43i2に当接するところで、下トレイ部42が回動軸43aの回りを回動し終える。
【0096】
このとき、上限規制フック43iには、
図29に示すように、トーションばね43eの付勢力Fbが作用しているので、トレイ側フック41fの先端部41f2は、上限規制フック43iの横斜面43i2から当接力Fbを受ける。そして、本変形例では、トレイ側フック41fの先端部41f2に対し、上限規制フック43iの横斜面43i2に沿って下方へ移動する向きの外力が作用するように、上限規制フック43iの横斜面43i2の傾斜角度を調整してある。
【0097】
具体的には、
図29に示すように、トーションばね43eの付勢力(当接力)Fbにおける横斜面43i2の面方向成分Fb・cosθb
(上限フック43iがトレイ側フック41fを押し下げようとする力)が、トレイ側フック41fの先端部41f2を押し上げる力Fa’(主に、高さ調整スプリング45の付勢力から、上トレイ部の自重(上述した
図21に示す付勢力を得る構成とした場合には、更に付勢力調整スプリング47の付勢力が追加される。)の分を差し引いた力)における横斜面43i2の面方向成分Fa’・cosθaよりも大きくなるように、上限規制フック43iの横斜面43i2の傾斜角度を調整してある。
【0098】
これにより、トーションばね43eの付勢力Fbによって上限規制フック43iが回動軸43aの回りを
図27中時計回り方向に回動し、トレイ側フック41fの先端部41f2が上限規制フック43iの横斜面43i2を摺動しながら、トレイ側フック41fが下がっていく。そして、トレイ側フック41fの先端部41f2が上限規制フック43iの横斜面43i2の端部まで摺動すると、
図27(d)に示すように、トレイ側フック41fの先端部41f2が、上限規制フック43iの顎部43i3に引っ掛かり、トレイ側フック41fと上限規制フック43iとが係合した状態になる。
【0099】
以上のように、本変形例によれば、トレイ角度を第一角度αから第二角度βへ変更する際、下トレイ部42の回動軸43a回りの回動に伴って上トレイ部41が回動するのに連動して、トレイ側フック41fの下端部41f1や先端部41f2が、上限規制フック43iの上斜面43i1や横斜面43i2に当接し、その当接箇所に作用する当接力によってトレイ側フック41fと上限規制フック43iとが相対移動し、トレイ側フック41fと上限規制フック43iとが係合状態になって、上トレイ部41は規制状態になる。よって、ユーザは、スライド部材44をスライドさせて下トレイ部42を回動軸43a回りで回動させるだけで、トレイ角度を第二角度βへの切り替えを完了することができ、利便性が向上する。
【0100】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、少なくともシート搬送方向上流側部分が上下方向へ変位可能なシート載置部材(例えば上トレイ部41)と、前記シート載置部材を上方へ付勢する付勢手段(例えば高さ調整スプリング45)と、シート導入部(例えばシート排出口2a)に対する前記シート載置部材のシート搬送方向の角度を第一角度αと第二角度βに設定する角度設定手段(例えばスライド部材44)と、前記第一角度及び前記第二角度のうち、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分が前記シート導入部に近づく角度の場合に、前記シート載置部材の動きを規制する規制手段(例えばトレイ側フック41d及び上限規制フック43d)とを有することを特徴とするものである。
角度設定手段によりシート載置部材のシート載置面の角度が設定変更されると、付勢手段に対するシート載置部材の姿勢が変化して、付勢手段からシート載置部材に付与される付勢力が変化する場合がある。この場合、シート載置部材のシート搬送方向上流側部分(シート導入部から搬送されてくるシート先端が接触する部分)の高さが目標高さからズレてしまい、変更前又は変更後の角度で、シート積載性(スタック性)が悪化してしまう。
具体的には、例えば、シート導入部から搬送されてくるシートに対し、シート載置部材のシート搬送方向上流側部分のシート載置面又は積載したシートの最上位シート面の高さが低すぎると、シート先端が自重で垂れ下がった状態でシート載置面又は最上位シート面に接触してしまい、シート後端側部分がシート先端を追い越すように搬送されて、シートがロール状になってしまう。逆に、当該シート載置面又は当該最上位シート面の高さが高すぎると、シート先端がシート載置部材のシート搬送方向上流側部分よりも手前でシート載置部材の端面あるいは積載されたているシート束の端面に衝突し、シート載置面上にシートを適切に送り込むことができない。
本態様においては、第一角度及び第二角度のうち、シート載置部材のシート搬送方向上流側部分が前記シート導入部に近づく角度の場合に、規制手段がシート載置部材の動きを規制する。これにより、付勢手段からシート載置部材に付与される付勢力の変化によって、シートが載置されていない初期状態におけるシート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さが目標高さよりも上方へズレてしまうような場合でも、規制手段による規制によって、そのズレを抑制することができる。
【0101】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記規制手段は、前記角度設定手段による角度設定動作に連動して前記シート載置部材の動きを規制することを特徴とするものである。
本態様によれば、角度設定手段による角度設定動作に連動して、規制手段がシート載置部材の動きを規制するため、規制手段の状態を切り替えるためだけのユーザ操作が不要となり、ユーザの利便性を得ることができる。
【0102】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記規制手段は、前記角度が前記第二角度であるときには、前記シート載置部材に設けられる被上限規制部材(例えばトレイ側フック41d)が上限規制部材(例えば上限規制フック43d)に突き当たることで、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置を規制する規制状態となり、前記角度が前記第二角度から前記第一角度へ変更されるときには、前記角度設定手段による角度設定動作に連動して、前記被上限規制部材と前記上限規制部材とが前記突き当たる方向に対して交差する方向へ相対移動することにより、前記規制状態から前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置を規制しない非規制状態へ切り替わることを特徴とするものである。
これによれば、前記規制手段を簡易な構成で実現することができる。
【0103】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記被上限規制部材は、前記シート載置部材におけるシート幅方向略中央に1つだけ設けられていることを特徴とするものである。
被上限規制部材がシート載置部材におけるシート幅方向に複数設けられていると、例えば、規制状態にしたいときに一部の被上限規制部材が規制状態にならず、適切な規制状態を得ることができないという不具合が生じるおそれがある。同様に、非規制状態にしたいときに一部の被上限規制部材が非規制状態にならず、適切な非規制状態を得ることができないという不具合が生じるおそれがある。本態様のように被上限規制部材をシート幅方向略中央に1つだけ設ける構成とすれば、このような不具合を抑制することができる。
【0104】
[第5態様]
第5態様は、第3又は第4態様において、前記規制手段は、前記被上限規制部材及び前記上限規制部材の少なくとも一方の部材が所定の回動軸回りで回動することで、前記相対移動を行うことを特徴とするものである。
これによれば、より簡易な構成で前記相対移動を実現することができる。
【0105】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記角度設定手段は、不動部材(例えば本体固定部43)に対して回動可能に構成され、かつ、前記シート載置部材を上下方向に変位可能に支持する回動支持部材(例えば下トレイ部42)を含み、該回動支持部材の回動角度を変更することで、前記角度を前記第一角度と前記第二角度に設定変更するものであり、前記上限規制部材は、前記回動支持部材に設けられ、前記規制手段は、前記回動支持部材の回動に伴って前記上限規制部材が回動することにより、前記相対移動を行うことを特徴とするものである。
これによれば、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0106】
[第7態様]
第7態様は、第3乃至第6態様のいずれかにおいて、前記規制手段は、前記被上限規制部材及び前記上限規制部材のうちの一方の部材が移動することで、前記相対移動を行うものであり、前記被上限規制部材及び前記上限規制部材のうちの他方の部材は、前記相対移動の方向とは逆方向へ付勢されていることを特徴とするものである。
これによれば、前記他方の部材に前記相対移動の方向とは逆方向への付勢力が作用していることで、規制状態が安定して維持される。
【0107】
[第8態様]
第8態様は、第7態様において、前記他方の部材が前記付勢の方向へ移動するのを規制する移動規制手段(例えば突当部43f)を有することを特徴とするものである。
これによれば、前記他方の部材に前記相対移動の方向とは逆方向への付勢力を与えていても、非規制状態において前記他方の部材を所定位置に位置決めすることができ、非規制状態から規制状態への切り替えを適切に行うことができる。
【0108】
[第9態様]
第9態様は、第7又は第8態様において、前記非規制状態から前記規制状態へ切り替わるときに前記被上限規制部材と前記上限規制部材とが互いに当接することによって前記他方の部材が前記付勢に抗して移動し、前記被上限規制部材と前記上限規制部材とが前記規制状態になることを特徴とするものである。
これによれば、非規制状態から規制状態への切り替えを簡易な構成で実現することができる。
【0109】
[第10態様]
第10態様は、第3乃至第9態様のいずれかにおいて、前記規制手段は、前記角度が前記第一角度αから前記第二角度βへ変更されるときには、前記シート載置部材の角度変更に連動して、前記被上限規制部材及び前記上限規制部材のうちの一方の当接部(例えば下端部41f1及び先端部41f2)が他方の被当接部(例えば上斜面43i1及び横斜面43i2)に当接し、当該当接箇所に作用する当接力Fa,Fbによって前記被上限規制部材と前記上限規制部材とが前記相対移動へ移動した後、該当接部と該被当接部との当接が解除されることで、前記非規制状態から前記規制状態へ切り替わることを特徴とするものである。
本態様によれば、前記角度設定手段による角度設定動作に連動して発生する被上限規制部材と上限規制部材当接部との当接箇所に作用する当接力によって、非規制状態から前記規制状態へ切り替えることができる。
【0110】
[第11態様]
第11態様は、第10態様において、前記規制手段は、前記角度が前記第一角度から前記第二角度へ変更されるとき、前記当接力によって前記当接部が前記被当接部の被当接面に沿って摺動することにより、前記被上限規制部材と前記上限規制部材とが前記相対移動へ移動し、該当接部と該被当接面の端部に到達して当接が解除されることで、前記非規制状態から前記規制状態へ切り替わることを特徴とする。
本態様においては、前記角度設定手段による角度設定動作に連動して発生する被上限規制部材と上限規制部材当接部との当接箇所に作用する当接力によって、当接部が被当接部の被当接面に沿って摺動して、非規制状態から規制状態へ切り替わる。これにより、被当接部の被当接面の角度を調整することにより、当該当接力のみで、被上限規制部材と上限規制部材とを前記相対移動へ移動させて、非規制状態から規制状態へ切り替えることが可能となる。したがって、角度設定手段による角度設定動作だけで、非規制状態から規制状態へ切り替えることが可能となり、ユーザーの利便性が向上すr。
【0111】
[第12態様]
第12態様は、第3乃至第11態様のいずれかにおいて、前記角度が前記第一角度αであるときには、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置を規制する規制状態となり、前記角度が前記第二角度βであるときには、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置を規制しない非規制状態となる別の規制手段(例えば上流側ガイド突起41a及び上下ガイド溝43b)を有することを特徴とするものである。
これによれば、前記別の規制手段により、前記角度が前記第一角度αであるときのシート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置を規制することができる。しかも、前記角度が前記第二角度βであるときには、前記別の規制手段は非規制状態になるため、規制手段による規制状態を前記別の規制手段が妨げることがない。
【0112】
[第13態様]
第13態様は、第12態様において、前記第一角度及び前記第二角度のいずれの角度でも、前記シート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さ上限位置が略同一であることを特徴とするものである。
これによれば、初期状態(シート未積載状態)におけるシート載置部材のシート搬送方向上流側部分の高さを、角度設定手段による角度変更前後で略同一にすることができる。
【0113】
[第14態様]
第14態様は、シート20に画像を形成する画像形成装置(例えばプリンタ本体1)であって、前記シートを積載するシート積載手段として、第1乃至第13態様のいずれかの態様に係るシート積載装置を用いることを特徴とするものである。
これによれば、角度設定手段によってシート載置部材のシート載置面の角度が設定変更される場合でも、ユーザの利便性を得ることができる。
【符号の説明】
【0114】
1 :プリンタ本体
2 :本体側面部
2a :シート排出口
3 :操作パネル
4 :排紙トレイ装置
5 :給紙トレイ
10 :レーザ走査ユニット
11 :帯電器
12 :感光体
13 :現像器
14 :一次転写ローラ
15 :二次転写ローラ
16 :中間転写ベルト
17 :定着装置
20 :シート
41 :上トレイ部
41a :上流側ガイド突起
41b :下流側ガイド突起
41c :受け凹部
41d,41f:トレイ側フック
41e :スプリング取付部
41’ :補助トレイ
42 :下トレイ部
42a :収納凹部
42b :左右ガイド溝
42c :当接面
42d :ストッパ凹部
42e :回動ストッパ
43 :本体固定部
43a :回動軸
43b :上下ガイド溝
43c :被摺動面
43d,41i:上限規制フック
43e :トーションばね
43f :突当部
43g :被突当部
43h :滑車
44 :スライド部材
44a :トレイ受け部
44a1 :摺動面
44a2 :被当接面
44a3 :ストッパ突起
44b :軸受孔
44c :突起部
44d :把持部
44e :スプリング取付部
44f :圧縮バネ
45 :高さ調整スプリング
46 :スプリング受け部
46a :凹部
46b :ガイド溝
47 :付勢力調整スプリング
47a :ワイヤー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】