(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】近赤外線カットフィルタ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/28 20060101AFI20240521BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G02B5/28
G02B5/26
(21)【出願番号】P 2020089018
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-02-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長田 崇
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/034386(WO,A1)
【文献】特開2013-178338(JP,A)
【文献】国際公開第2013/015303(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/104370(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111399100(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0160386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線カットフィルタであって、
第1の表面を有する透明基板と、
該透明基板の前記第1の表面の側に設けられた光学多層膜と、
前記透明基板の前記第1の表面の側に設けられた第1の整合膜と、
前記第1の表面の最も外側に設置された第2の整合膜と、
を有し、
前記光学多層膜は、高屈折率層と低屈折率層との交互積層構造を有し、近赤外線を反射させる機能を有し、
前記第1および第2の整合膜は、可視光の反射を抑制する機能を有し、
前記第1の整合膜は、前記光学多層膜の上、または前記透明基板と前記光学多層膜の間に設置され、
前記第1の整合膜は、高屈折率層と低屈折率層との交互積層構造を有し、
光の波長の1/4の光学厚さをQWOTとし、前記高屈折率層の波長550nmにおけるQWOTをQ
Hとし、前記低屈折率層の波長550nmにおけるQWOTをQ
Lとしたとき、
前記第1の整合膜は、前記透明基板の側から、
(H
1Q
H、L
1Q
L、H
2Q
H、L
2Q
L、……H
nQ
H、L
nQ
L)
の構造(ここで、nは1以上の自然数)を有し、
各係数は、
1.7≦(H
1+H
2+…+H
n)/(L
1+L
2+…+L
n)≦
2.20
を満し、
ここで、Q
HおよびQ
Lの前の前の係数H
1…H
nおよびL
1…L
nは、各層の物理膜厚が前記QWOTの何倍であるかを表し、
前記第2の整合膜は、高屈折率層および低屈折率層の2層構造を有し、
前記高屈折率層の波長550nmにおけるQWOTをQ
Aとし、前記低屈折率層の波長550nmにおけるQWOTをQ
Bとしたとき、
前記第2の整合膜は、前記透明基板の側から、
(XQ
A、YQ
B)
の構造を有し、ここで、X>Y
である、近赤外線カットフィルタ。
【請求項2】
前記第1の整合膜は、6層以上で構成される、請求項1に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項3】
前記第1の表面の側に、高屈折率層と低屈折率層との交互積層構造を有する第3の整合膜を有し、
前記光学多層膜は、前記第1の整合膜と前記第3の整合膜の間に配置される、請求項1
または請求項2に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項4】
前記第3の整合膜は、前記第1の整合膜と同じ層数で構成される、請求項
3に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項5】
前記光学多層膜は、可視光領域に透過帯を有する、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項6】
前記光学多層膜は、近紫外線領域に反射帯を有する、請求項
5に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の近赤外線カットフィルタを備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線カットフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやデジタルビデオなどの撮像装置は、人物や景色等のセンシングのため、固体撮像素子(イメージセンサ)を備える。ただし、固体撮像素子は、人間の視感に比べて、赤外光に対してより強い感度を示す。このため、固体撮像素子による画像を人間の視感度に近づけるため、撮像装置には、さらに近赤外線カットフィルタが設置される。
【0003】
一般に、そのような近赤外線カットフィルタは、透明基板上に近赤外線を遮蔽する光学多層膜を設置することにより構成される。光学多層膜は、高屈折率の誘電体(例えば、TiO2)からなる薄膜と、低屈折率の誘電体(例えば、SiO2)からなる薄膜とを、交互に積層することにより構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学多層膜を有する近赤外線カットフィルタにおいては、しばしば、光学特性が入射光の角度に依存して変化することが知られている。このため、例えば、法線方向に近い入射角を有する光に対しては、所望の光学特性が得られても、法線方向から大きくずれた入射角を有する光に対しては、所望の光学特性が得られないなどという問題が生じ得る。
【0006】
また、このような近赤外線カットフィルタにおける光学特性の入射角度依存性は、近赤外線カットフィルタを固体撮像素子に適用した際に、像の鮮明性の点で問題となり得る。例えば、近赤外線カットフィルタに入射した可視光の一部が透過されずに反射されると、そのような反射光は、迷光の原因となり得る。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、広い入射角度範囲において、可視光領域における反射率を有意に抑制することが可能な、近赤外線カットフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、近赤外線カットフィルタであって、
第1の表面を有する透明基板と、
該透明基板の前記第1の表面の側に設けられた光学多層膜と、
前記透明基板の前記第1の表面の側に設けられた第1の整合膜と、
前記第1の表面の最も外側に設置された第2の整合膜と、
を有し、
前記光学多層膜は、高屈折率層と低屈折率層との交互積層構造を有し、近赤外線を反射させる機能を有し、
前記第1および第2の整合膜は、可視光の反射を抑制する機能を有し、
前記第1の整合膜は、前記光学多層膜の上、または前記透明基板と前記光学多層膜の間に設置され、
当該近赤外線カットフィルタにおいて、
前記第2の整合膜の側から、5゜の入射角度で入射する光の正反射率を第1反射率R1とし、前記第2の整合膜の側から、40゜の入射角度で入射する光の正反射率を第2反射率R2とし、
波長480nm~680nmの範囲における前記第1反射率R1の近似直線をy1とし、波長450nm~650nmの範囲における前記第2反射率R2の近似直線をy2としたとき、
波長480nm~680nmの範囲において、同一波長での前記第1反射率R1と前記近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1は、5%未満であり、
波長450nm~650nmの範囲において、同一波長での前記第2反射率R2と前記近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2は、6%未満である、近赤外線カットフィルタが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、広い入射角度範囲において、可視光領域における反射率を有意に抑制することが可能な、近赤外線カットフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による近赤外線カットフィルタの断面を模式的に示した図である。
【
図2】本発明の別の実施形態による近赤外線カットフィルタの断面を模式的に示した図である。
【
図3】本発明のさらに別の実施形態による近赤外線カットフィルタの断面を模式的に示した図である。
【
図4】例1における近赤外線カットフィルタにおいて得られた、5゜入射および40゜入射のそれぞれにおける光学特性を示したグラフである。
【
図5】
図4の5゜入射における光学特性の一部を拡大して示したグラフである。
【
図6】
図4の40゜入射における光学特性の一部を拡大して示したグラフである。
【
図7】例2における近赤外線カットフィルタにおいて得られた、5゜入射および40゜入射のそれぞれにおける光学特性を示したグラフである。
【
図8】
図7の5゜入射における光学特性の一部を拡大して示したグラフである。
【
図9】
図7の40゜入射における光学特性の一部を拡大して示したグラフである。
【
図10】例3における近赤外線カットフィルタにおいて得られた、5゜入射および40゜入射のそれぞれにおける光学特性を示したグラフである。
【
図11】例4における近赤外線カットフィルタにおいて得られた、5゜入射および40゜入射のそれぞれにおける光学特性を示したグラフである。
【
図12】
図11の5゜入射における光学特性の一部を拡大して示したグラフである。
【
図13】
図11の40゜入射における光学特性の一部を拡大して示したグラフである。
【
図14】例11における近赤外線カットフィルタにおいて得られた、5゜入射および40゜入射のそれぞれにおける光学特性を示したグラフである。
【
図15】
図14の5゜入射における光学特性の一部を拡大して示したグラフである。
【
図16】
図14の40゜入射における光学特性の一部を拡大して示したグラフである。
【
図17】例11における近赤外線カットフィルタにおいて得られた、5゜入射および40゜入射のそれぞれにおける光学特性を示したグラフである。
【
図18】
図17の5゜入射における光学特性の一部を拡大して示したグラフである。
【
図19】
図17の40゜入射における光学特性の一部を拡大して示したグラフである。
【
図20】例13における近赤外線カットフィルタにおいて得られた、5゜入射および40゜入射のそれぞれにおける光学特性を示したグラフである。
【
図21】例14における近赤外線カットフィルタにおいて得られた、5゜入射および40゜入射のそれぞれにおける光学特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
本発明の一実施形態では、近赤外線カットフィルタであって、
第1の表面を有する透明基板と、
該透明基板の前記第1の表面の側に設けられた光学多層膜と、
前記透明基板の前記第1の表面の側に設けられた第1の整合膜と、
前記第1の表面の最も外側に設置された第2の整合膜と、
を有し、
前記光学多層膜は、高屈折率層と低屈折率層との交互積層構造を有し、近赤外線を反射させる機能を有し、
前記第1および第2の整合膜は、可視光の反射を抑制する機能を有し、
前記第1の整合膜は、前記光学多層膜の上、または前記透明基板と前記光学多層膜の間に設置され、
当該近赤外線カットフィルタにおいて、
前記第2の整合膜の側から、5゜の入射角度で入射する光の正反射率を第1反射率R1とし、前記第2の整合膜の側から、40゜の入射角度で入射する光の正反射率を第2反射率R2とし、
波長480nm~680nmの範囲における前記第1反射率R1の近似直線をy1とし、波長450nm~650nmの範囲における前記第2反射率R2の近似直線をy2としたとき、
波長480nm~680nmの範囲において、同一波長での前記第1反射率R1と前記近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1は、5%未満であり、
波長450nm~650nmの範囲において、同一波長での前記第2反射率R2と前記近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2は、6%未満である、近赤外線カットフィルタが提供される。
【0013】
本発明の一実施形態による近赤外線カットフィルタは、光学多層膜を有する。この光学多層膜は、近赤外線の透過を阻止し、該近赤外線を反射させる機能を有する。
【0014】
また、本発明の一実施形態による近赤外線カットフィルタは、第1および第2の整合膜を有する。第1および第2の整合膜は、可視光の反射を抑制する機能を有する。
【0015】
また、本発明の一実施形態による近赤外線カットフィルタは、波長480nm~680nmの範囲において、同一波長での第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1が5%未満であるという特徴を有する。さらに、本発明の一実施形態による近赤外線カットフィルタは、波長450nm~650nmの範囲において、同一波長での第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2が6%未満であるという特徴を有する。
【0016】
このような構成を有する近赤外線カットフィルタでは、後に詳しく示すように、広い入射角度範囲において、可視光領域における反射率を有意に抑制することができる。従って、本発明の一実施形態による近赤外線カットフィルタを固体撮像素子に適用した場合、鮮明な像を得ることが可能となる。
【0017】
(本発明の一実施形態による近赤外線カットフィルタ)
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態についてより詳しく説明する。
【0018】
図1には、本発明の一実施形態による近赤外線カットフィルタ(以下、「第1の光学フィルタ」と称する)の断面を模式的に示す。
【0019】
図1に示すように、第1の光学フィルタ100は、第1の表面112を有する透明基板110と、光学多層膜120と、第1の整合膜140と、第2の整合膜160と、を有する。
【0020】
光学多層膜120は、透明基板110の第1の表面112上に設置され、第1の整合膜140は、光学多層膜120の上に設置される。また、第2の整合膜160は、第1の表面112の最も外側に設置される。
【0021】
光学多層膜120は、近赤外線の透過を阻止し、該近赤外線を反射させる機能を有する。また、第1の整合膜140および第2の整合膜160は、可視光の反射を抑制する機能を有する。
【0022】
ここで、第2の整合膜160の側から、法線に対して5゜の入射角度で入射する光の正反射率を第1反射率R1と称し、法線に対して40゜の入射角度で入射する光の正反射率を第2反射率R2と称する。また、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R1の近似直線をy1とし、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R2の近似直線をy2とする。
【0023】
この場合、第1の光学フィルタ100は、
波長480nm~680nmの範囲において、同一波長での第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1が5%未満であり、
波長450nm~650nmの範囲において、同一波長での第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2が6%未満である
という特徴を有する。
【0024】
例えば、ΔR1は、4%未満であってもよく、3%未満であることが好ましい。また、例えば、ΔR2は、5.5%未満であってもよく、5%未満であることが好ましい。
【0025】
第1の光学フィルタ100では、広い入射角度範囲において、可視光領域における反射率を有意に抑制することができる。従って、第1の光学フィルタ100を固体撮像素子に適用した場合、鮮明な像を得ることが可能となる。
【0026】
(本発明の別の実施形態による近赤外線カットフィルタ)
次に、
図2を参照して、本発明の別の実施形態について説明する。
【0027】
図2には、本発明の別の実施形態による近赤外線カットフィルタ(以下、「第2の光学フィルタ」と称する)の断面を模式的に示す。
【0028】
図2に示すように、第2の光学フィルタ200は、第1の表面212を有する透明基板210と、第1の整合膜240と、光学多層膜220と、第2の整合膜260と、を有する。
【0029】
第1の整合膜240は、透明基板210の第1の表面212上に設置され、光学多層膜220は、第1の整合膜240の上に設置される。また、第2の整合膜260は、第1の表面212の最も外側に設置される。
【0030】
ここで、第1の光学フィルタ100と同様、第2の光学フィルタ200も、
波長480nm~680nmの範囲において、同一波長での第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1が5%未満であり、
波長450nm~650nmの範囲において、同一波長での第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2が6%未満である
という特徴を有する。
【0031】
第2の光学フィルタ200では、広い入射角度範囲において、可視光領域における反射率を有意に抑制することができる。従って、第2の光学フィルタ200を固体撮像素子に適用した場合、鮮明な像を得ることが可能となる。
【0032】
(本発明のさらに別の実施形態による近赤外線カットフィルタ)
次に、
図3を参照して、本発明のさらに別の実施形態について説明する。
【0033】
図3には、本発明のさらに別の実施形態による近赤外線カットフィルタ(以下、「第3の光学フィルタ」と称する)の断面を模式的に示す。
【0034】
図3に示すように、第3の光学フィルタ300は、第1の表面312を有する透明基板310と、第1の整合膜340と、光学多層膜320と、第3の整合膜350と、第2の整合膜360と、を有する。
【0035】
第1の整合膜340は、透明基板310の第1の表面312上に設置される。また、光学多層膜320は、第1の整合膜340の上に設置され、第3の整合膜350は、光学多層膜320の上に配置される。さらに、第2の整合膜360は、第1の表面312の最も外側に設置される。
【0036】
ここで、第1の光学フィルタ100および第2の光学フィルタ200と同様、第3の光学フィルタ300も、
波長480nm~680nmの範囲において、同一波長での第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1が5%未満であり、
波長450nm~650nmの範囲において、同一波長での第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2が6%未満である
という特徴を有する。
【0037】
第3の光学フィルタ300では、広い入射角度範囲において、可視光領域における反射率を有意に抑制することができる。従って、第3の光学フィルタ300を固体撮像素子に適用した場合、鮮明な像を得ることが可能となる。
【0038】
(構成部材)
次に、本発明の一実施形態による近赤外線カットフィルタを構成する各部材について、より詳しく説明する。
【0039】
なお、ここでは、一例として、前述の第3の光学フィルタ300を例に、その構成部材について説明する。従って、各部材を参照する際には、
図3に示した参照符号を使用する。
【0040】
(透明基板310)
透明基板310は、可視光に対して透明(透過率が高い)である限り、いかなる材料で構成されてもよい。例えば、透明基板310は、ガラス(白板ガラス、近赤外線吸収ガラスなど)、または樹脂で構成されてもよい。
【0041】
(光学多層膜320)
光学多層膜320は、「高屈折率層」と「低屈折率層」との繰り返し構造を有し、近赤外線(波長750nm~900nm)を反射する機能を有する。
【0042】
本願において、「高屈折率層」とは、波長500nmにおける屈折率が2.0以上の層を意味し、「低屈折率層」とは、波長500nmにおける屈折率が1.6以下の層を意味する。
【0043】
高屈折率層としては、例えば、酸化チタン、酸化タンタル、および酸化ニオブなどが挙げられる。低屈折率層としては、例えば、酸化ケイ素およびフッ化マグネシウムなどが挙げられる。例えば、波長500nmにおける酸化チタンの屈折率は、結晶状態にもよるが、一般に、2.3~2.8の範囲であり、酸化ケイ素の屈折率は、一般に1.4~1.5の範囲である。
【0044】
光学多層膜320の層数は、特に限られないが、例えば、4~100の範囲である。層数は、6~24の範囲であることが好ましい。
【0045】
なお、多層膜の層数の半分(端数の場合は、小数点以下切り捨て)を、「繰り返し数(n)」とも称する。
【0046】
光学多層膜320の繰り返し数nは、2~50の範囲であり、3~13の範囲であることが好ましい。
【0047】
また、光学多層膜320の総厚さ(物理膜厚)は、例えば、200nm~10μmの範囲であり、1μm~6μmの範囲であることが好ましい。
【0048】
光学多層膜320は、さらに、近紫外線および赤外線(波長900nm~1200nm)を反射する機能を有してもよい。この場合、第3の光学フィルタ300において、近紫外線および赤外線を遮蔽することが可能となる。
【0049】
(第1の整合膜340)
第1の整合膜340は、前述のように、可視光の反射を抑制する機能を有する。
【0050】
第1の整合膜340は、「高屈折率層」と「低屈折率層」との交互積層構造を有してもよい。「高屈折率層」および「低屈折率層」としては、前述の記載が参照できる。
【0051】
第1の整合膜340が高屈折率層と低屈折率層との交互積層構造を有する場合、高屈折率層の波長550nmにおけるQWOT(Quarter-wave Optical Thickness)をQHとし、低屈折率層の波長550nmにおけるQWOTをQLとしたとき、第1の整合膜340は、透明基板310の側から順に、
(H1QH、L1QL、H2QH、L2QL、……、HnQH、LnQL) (1)式
の構造(ここで、nは1以上の自然数)を有してもよい。また、各係数は、
1.7≦W≦2.5 (2)式
を満たしてもよい。ここで、
W=(H1+H2+…+Hn)/(L1+L2+…+Ln) (3)式
である。
【0052】
(1)式におけるQHおよびQLの前のH1…HnおよびL1…Ln等の係数は、各層の物理膜厚がQWOTの何倍であるかを表している。すなわち、HnQHおよびLnQL等は、各層の光学的膜厚を表す。
【0053】
第1の整合膜340の層数は、特に限られないが、例えば、2~20層の範囲であることが好ましい。層数が20を超えると、成膜に時間を要し、第3の光学フィルタ300の製造コストが上昇する。第1の整合膜340の層数は、6層~16層の範囲であることがより好ましく、12層以下であることがさらに好ましい。
【0054】
(第2の整合膜360)
第2の整合膜360は、第1の整合膜340と同様、可視光の反射を抑制する機能を有する。
【0055】
第2の整合膜360は、高屈折率層および低屈折率層の2層構造を有することが好ましい(すなわち、繰り返し数n=1)。なお、「高屈折率層」および「低屈折率層」としては、前述の記載が参照できる。
【0056】
さらに、この場合、高屈折率層の波長550nmにおけるQWOTをQAとし、低屈折率層の波長550nmにおけるQWOTをQBとしたとき、第2の整合膜360は、透明基板の側から、
(XQA、YQB) (4)式
の構造を有し、ここで、X>Yであることが好ましい。
【0057】
(第3の整合膜350)
第3の整合膜350は、第1の整合膜340および第2の整合膜360と同様、可視光の反射を抑制する機能を有する。
【0058】
第3の整合膜350は、「高屈折率層」と「低屈折率層」との交互積層構造を有してもよい。「高屈折率層」および「低屈折率層」としては、前述の記載が参照できる。
【0059】
特に、第3の整合膜350は、第1の整合膜340と同じ層数で構成されてもよい。また、第3の整合膜350は、前述の(1)式~(3)式を満たすように構成されてもよい。
【0060】
例えば、第3の整合膜350は、6層~16層で構成されてもよい。この場合、繰り返し数nは、3~8となる。
【0061】
第3の整合膜350は、必須の構成ではないが、第3の整合膜350を設けることにより、可視光の反射をよりいっそう抑制することができる。
【0062】
なお、
図3に示した例では、第3の整合膜350は、第1の整合膜340の上に設置された光学多層膜320の上に配置されている。しかしながら、この逆に、第3の整合膜350は、透明基板310と光学多層膜320の間に配置され、光学多層膜320の上には第1の整合膜340が設置されてもよい。
【0063】
以上、第3の光学フィルタ300を例に、本発明の一実施形態による近赤外線カットフィルタに含まれる各部材について説明した。しかしながら、上記の記載が、第1の光学フィルタ100および第2の光学フィルタ200に対しても同様に適用できることは、当業者には明らかである。
【実施例】
【0064】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下の記載において、例1~例4は、実施例であり、例11~例14は、比較例である。
【0065】
以下の各例に示した構成を有する近赤外線カットフィルタのそれぞれについて、光学特性を評価した。光学特性は、市販の光学シミュレーションソフト(Software SPectra,Inc社のTFCalc)を用いて評価した。
【0066】
なお、以下の評価において、近赤外線カットフィルタにおける反射率は、透明基板の第1の表面の側(すなわち、各種膜が設置された側)から、法線に対して所定の角度で光を入射させた際に得られる正反射率を表す。
【0067】
光の入射角度は、法線に対して5゜および40゜とした。以下、これらの入射方向を、それぞれ、「5゜入射」および「40゜入射」と称する。
【0068】
(例1)
例1における近赤外線カットフィルタは、
図1に示した構成を有する。
【0069】
透明基板には、ガラス(D263;Schott社製)を使用した。なお、他の例においても、同一のガラスを使用した。
【0070】
光学多層膜は、低屈折率層(SiO2層)と高屈折率層(TiO2層)の繰り返し構造とした。層数は、17層とした。また、第1の整合膜は、TiO2層とSiO2層の繰り返し構造とし、層数は、6層とした。さらに、第2の整合膜は、TiO2層とSiO2層の2層構造とした。
【0071】
以下の表1には、例1において使用した光学多層膜、第1の整合膜、および第2の整合膜の層構成をまとめて示した。
【0072】
【表1】
第1の整合膜において、前述の(3)式で表されるWの値、すなわち(H
1+H
2+H
3)/(L
1+L
2+L
3)の値は、2.20であった。
【0073】
また、第2の整合膜において、TiO2層の波長550nmにおけるQWOT(QA)=1.898であり、SiO2層の波長550nmにおけるQWOT(QB)は、0.887であった。また、第2の整合膜を前述の(4)式で表した場合、X/Y=2.14であった。
【0074】
なお、表1において、各層は、透明基板から近い順に記載されており、従って、透明基板上には、表1の上側から下側に向かって、それぞれの層が配置される。係る記載は、以降の表2~表8においても同様である。
【0075】
(例2)
例2における近赤外線カットフィルタは、
図1に示した構成を有する。
【0076】
透明基板には、ガラスを使用した。
【0077】
光学多層膜は、TiO2層とSiO2の繰り返し構造とした。層数は、18層とした。また、第1の整合膜は、TiO2層とSiO2の繰り返し構造とし、層数は、6層とした。さらに、第2の整合膜は、TiO2層とSiO2層の2層構造とした。
【0078】
以下の表2には、例2において使用した光学多層膜、第1の整合膜、および第2の整合膜の層構成をまとめて示した。
【0079】
【表2】
第1の整合膜において、前述の(3)式で表されるWの値、すなわち(H
1+H
2+H
3)/(L
1+L
2+L
3)の値は、1.71であった。
【0080】
また、第2の整合膜において、TiO2層の波長550nmにおけるQWOT(QA)=2.000であり、SiO2層の波長550nmにおけるQWOT(QB)は、0.900であった。また、第2の整合膜を前述の(4)式で表した場合、X/Y=2.22であった。
【0081】
(例3)
例3における近赤外線カットフィルタは、
図2に示した構成を有する。
【0082】
透明基板には、ガラスを使用した。
【0083】
第1の整合膜は、TiO2層とSiO2の繰り返し構造とし、層数は、6層とした。また、光学多層膜は、SiO2層とTiO2層の繰り返し構造とした。層数は、17層とした。さらに、第2の整合膜は、TiO2層とSiO2層の2層構造とした。
【0084】
以下の表3には、例3において使用した第1の整合膜、光学多層膜、および第2の整合膜の層構成をまとめて示した。
【0085】
【表3】
第1の整合膜において、前述の(3)式で表されるWの値、すなわち(H
1+H
2+H
3)/(L
1+L
2+L
3)の値は、2.09であった。
【0086】
また、第2の整合膜において、TiO2層の波長550nmにおけるQWOT(QA)=1.587であり、SiO2層の波長550nmにおけるQWOT(QB)は、0.884であった。また、第2の整合膜を前述の(4)式で表した場合、X/Y=1.80であった。
【0087】
(例4)
例4における近赤外線カットフィルタは、
図3に示した構成を有する。
【0088】
透明基板には、ガラスを使用した。
【0089】
第1の整合膜は、SiO2層とTiO2層の繰り返し構造とし、層数は、6層とした。また、光学多層膜は、SiO2層とTiO2層の繰り返し構造とした。層数は、17層とした。また、第3の整合膜は、TiO2層とSiO2層の繰り返し構造とし、層数は、6層とした。さらに、第2の整合膜は、TiO2層とSiO2層の2層構造とした。
【0090】
以下の表4には、例4において使用した第1の整合膜、光学多層膜、第3の整合膜、および第2の整合膜の層構成をまとめて示した。
【0091】
【表4】
第1の整合膜において、前述の(3)式で表されるWの値、すなわち(H
1+H
2+H
3)/(L
1+L
2+L
3)の値は、2.15であった。
【0092】
また、第2の整合膜において、TiO2層の波長550nmにおけるQWOT(QA)=1.983であり、SiO2層の波長550nmにおけるQWOT(QB)は、0.921であった。また、第2の整合膜を前述の(4)式で表した場合、X/Y=2.15であった。
【0093】
(例11)
例11における近赤外線カットフィルタは、透明基板の上に光学多層膜のみを有する構成を有する。光学多層膜は、TiO2層とSiO2層の繰り返し構造とし、層数は、20層とした。
【0094】
以下の表5には、例11において使用した光学多層膜の層構成を示した。
【0095】
【表5】
(例12)
例12における近赤外線カットフィルタは、透明基板の上に光学多層膜のみを有する構成を有する。光学多層膜は、SiO
2層とTiO
2層の繰り返し構造とし、層数は、21層とした。
【0096】
以下の表6には、例12において使用した光学多層膜の層構成を示した。
【0097】
【表6】
(例13)
例13における近赤外線カットフィルタは、透明基板の上に、光学多層膜と、第1の整合膜とを、この順に配置した構成を有する。
【0098】
光学多層膜は、SiO2層とTiO2層の繰り返し構造とし、層数は、17層とした。また、第1の整合膜は、TiO2層とSiO2層の繰り返し構造とし、層数は、6層とした。
【0099】
以下の表7には、例13において使用した光学多層膜、および第1の整合膜の層構成をまとめて示した。
【0100】
【表7】
(例14)
例14における近赤外線カットフィルタは、
図1に示した構成を有する。
【0101】
透明基板には、ガラスを使用した。
【0102】
光学多層膜は、SiO2層とTiO2層の繰り返し構造とした。層数は、17層とした。また、第1の整合膜は、TiO2層とSiO2層の繰り返し構造とし、層数は、6層とした。さらに、第2の整合膜は、TiO2層とSiO2層の2層構造とした。
【0103】
以下の表8には、例14において使用した光学多層膜、第1の整合膜、および第2の整合膜の層構成をまとめて示した。
【0104】
【表8】
(光学特性の評価結果)
(例1における近赤外線カットフィルタ)
図4~
図6には、例1における近赤外線カットフィルタにおいて得られた光学特性の評価結果を示す。
【0105】
図4において、横軸は波長であり、縦軸は反射率である。
図4には、5゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第1反射率R
1と、40゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第2反射率R
2の結果が併せて示されている。
【0106】
図4の結果から、例1における近赤外線カットフィルタは、可視光の領域(波長約450nm~約650nm)に透過帯を有し、近赤外線の領域に反射帯を有することがわかる。
【0107】
なお、5゜入射における反射帯の波長範囲は、約750nm~約1000nmの範囲であるのに対して、40゜入射における反射帯の波長範囲は、約700nm~約900nmの範囲であった。すなわち、40゜入射における反射帯の波長範囲は、5゜入射における反射帯の波長範囲よりも低波長側にシフトした。
【0108】
しかしながら、第1反射率R1および第2反射率R2のいずれの場合も、透過帯において、反射が十分に抑制されていることがわかる。
【0109】
図5には、
図4に示した挙動のうち、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R
1の変化を拡大して示す。
【0110】
なお、
図5における直線y
1は、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R
1の近似直線であり、
y
1=0.0353λ-16.087 (5)式
で表される。ここで、λは波長である(以下同じ)。
【0111】
また、
図6には、
図4に示した挙動のうち、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R
2の変化を拡大して示す。
【0112】
図6における直線y
2は、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R
2の近似直線であり、
y
2=0.0532λ-24.315 (6)式
で表される。
【0113】
これらの結果から、同一波長における第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1を求めたところ、ΔR1=2.35%となった。
【0114】
また、同一波長における第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2を求めたところ、ΔR2=5.38%となった。
【0115】
(例2における近赤外線カットフィルタ)
図7~
図9には、例2における近赤外線カットフィルタにおいて得られた光学特性の評価結果を示す。
【0116】
図7において、横軸は波長であり、縦軸は反射率である。
図7には、5゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第1反射率R
1と、40゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第2反射率R
2の結果が併せて示されている。
【0117】
図7の結果から、例2における近赤外線カットフィルタは、可視光の領域(波長約450nm~約650nm)に透過帯を有し、近赤外線の領域に反射帯を有することがわかる。
【0118】
また、透過帯においては、第1反射率R1および第2反射率R2のいずれの場合も、反射が十分に抑制されていることがわかる。
【0119】
図8には、
図7に示した挙動のうち、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R
1の変化を拡大して示す。
【0120】
図8における直線y
1は、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R
1の近似直線であり、
y
1=-0.0046λ+4.6073 (7)式
で表される。
【0121】
また、
図9には、
図7に示した挙動のうち、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R
2の変化を拡大して示す。
【0122】
図9における直線y
2は、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R
2の近似直線であり、
y
2=0.008λ-2.0209 (8)式
で表される。
【0123】
これらの結果から、同一波長における第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1を求めたところ、ΔR1=3.25%となった。
【0124】
また、同一波長における第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2を求めたところ、ΔR2=3.98%となった。
【0125】
(例3における近赤外線カットフィルタ)
図10には、例3における近赤外線カットフィルタにおいて得られた光学特性の評価結果を示す。
【0126】
図10において、横軸は波長であり、縦軸は反射率である。
図10には、5゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第1反射率R
1と、40゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第2反射率R
2の結果が併せて示されている。
【0127】
図10の結果から、例3における近赤外線カットフィルタは、可視光の領域(波長約450nm~約650nm)に透過帯を有し、近赤外線の領域に反射帯を有することがわかる。
【0128】
また、透過帯においては、第1反射率R1および第2反射率R2のいずれの場合も、反射が十分に抑制されていることがわかる。
【0129】
得られた結果から、同一波長における第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1を求めたところ、ΔR1=1.27%となった。
【0130】
また、同一波長における第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2を求めたところ、ΔR2=4.41%となった。
【0131】
(例4における近赤外線カットフィルタ)
図11~
図13には、例4における近赤外線カットフィルタにおいて得られた光学特性の評価結果を示す。
【0132】
図11において、横軸は波長であり、縦軸は反射率である。
図11には、5゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第1反射率R
1と、40゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第2反射率R
2の結果が併せて示されている。
【0133】
図11の結果から、例4における近赤外線カットフィルタは、可視光の領域(波長約450nm~約650nm)に透過帯を有し、近赤外線の領域に反射帯を有することがわかる。
【0134】
また、透過帯においては、第1反射率R
1および第2反射率R
2のいずれの場合も、反射が十分に抑制されていることがわかる。
図12には、
図11に示した挙動のうち、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R
1の変化を拡大して示す。
【0135】
図12における直線y
1は、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R
1の近似直線であり、
y
1=0.0026λ-0.8325 (9)式
で表される。
【0136】
また、
図13には、
図11に示した挙動のうち、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R
2の変化を拡大して示す。
【0137】
図13における直線y
2は、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R
2の近似直線であり、
y
2=0.015λ-6.6515 (10)式
で表される。
【0138】
これらの結果から、同一波長における第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1を求めたところ、ΔR1=1.03%となった。
【0139】
また、同一波長における第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2を求めたところ、ΔR2=4.98%となった。
【0140】
(例11における近赤外線カットフィルタ)
図14~
図16には、例11における近赤外線カットフィルタにおいて得られた光学特性の評価結果を示す。
【0141】
図14において、横軸は波長であり、縦軸は反射率である。
図14には、5゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第1反射率R
1と、40゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第2反射率R
2の結果が併せて示されている。
【0142】
図14の結果から、例11における近赤外線カットフィルタの場合、5゜入射および40゜入射のいずれにおいても、可視光の領域に反射率の低下が認められる。しかしながら、この領域において、第1反射率R
1および第2反射率R
2の値は、あまり抑制されていないことがわかる。
【0143】
図15には、
図14に示した挙動のうち、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R
1の変化を拡大して示す。
【0144】
図15における直線y
1は、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R
1の近似直線であり、
y
1=0.0735λ-27.775 (11)式
で表される。
【0145】
また、
図16には、
図14に示した挙動のうち、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R
2の変化を拡大して示す。
【0146】
図16における直線y
2は、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R
2の近似直線であり、
y
2=0.0747λ-27.467 (12)式
で表される。
【0147】
これらの結果から、同一波長における第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1を求めたところ、ΔR1=17.56%となった。
【0148】
また、同一波長における第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2を求めたところ、ΔR2=12.93%となった。
【0149】
(例12における近赤外線カットフィルタ)
図17~
図19には、例12における近赤外線カットフィルタにおいて得られた光学特性の評価結果を示す。
【0150】
図17において、横軸は波長であり、縦軸は反射率である。
図17には、5゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第1反射率R
1と、40゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第2反射率R
2の結果が併せて示されている。
【0151】
図17の結果から、例12における近赤外線カットフィルタの場合、第1反射率R
1および第2反射率R
2のいずれにおいても、可視光の領域に反射率の低下が認められる。しかしながら、この領域において、第1反射率R
1および第2反射率R
2の値は、あまり抑制されていないことがわかる。
【0152】
図18には、
図17に示した挙動のうち、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R
1の変化を拡大して示す。
【0153】
図18における直線y
1は、波長480nm~680nmの範囲における第1反射率R
1の近似直線であり、
y
1=0.0435λ-20.496 (13)式
で表される。
【0154】
また、
図19には、
図17に示した挙動のうち、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R
2の変化を拡大して示す。
【0155】
図19における直線y
2は、波長450nm~650nmの範囲における第2反射率R
2の近似直線であり、
y
2=0.044λ-19.138 (14)式
で表される。
【0156】
これらの結果から、同一波長における第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1を求めたところ、ΔR1=6.75%となった。
【0157】
また、同一波長における第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2を求めたところ、ΔR2=5.35%となった。
【0158】
(例13における近赤外線カットフィルタ)
図20には、例13における近赤外線カットフィルタにおいて得られた光学特性の評価結果を示す。
【0159】
図20において、横軸は波長であり、縦軸は反射率である。
図20には、5゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第1反射率R
1と、40゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第2反射率R
2の結果が併せて示されている。
【0160】
図20の結果から、例13における近赤外線カットフィルタの場合、第1反射率R
1および第2反射率R
2のいずれにおいても、可視光の領域に反射率の低下が認められる。しかしながら、この領域において、第1反射率R
1および第2反射率R
2の値は、あまり抑制されていないことがわかる。
【0161】
得られた結果から、同一波長における第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1を求めたところ、ΔR1=10.10%となった。
【0162】
また、同一波長における第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2を求めたところ、ΔR2=10.30%となった。
【0163】
(例14における近赤外線カットフィルタ)
図21には、例14における近赤外線カットフィルタにおいて得られた光学特性の評価結果を示す。
【0164】
図21において、横軸は波長であり、縦軸は反射率である。
図21には、5゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第1反射率R
1と、40゜入射の際に得られる正反射率、すなわち第2反射率R
2の結果が併せて示されている。
【0165】
図21の結果から、例14における近赤外線カットフィルタの場合、第1反射率R
1および第2反射率R
2のいずれにおいても、可視光の領域に反射率の低下が認められる。しかしながら、この領域において、第1反射率R
1および第2反射率R
2の値は、あまり抑制されていないことがわかる。
【0166】
得られた結果から、同一波長における第1反射率R1と近似直線y1の値の間の差の絶対値の最大値ΔR1を求めたところ、ΔR1=10.30%となった。
【0167】
また、同一波長における第2反射率R2と近似直線y2の値の間の差の絶対値の最大値ΔR2を求めたところ、ΔR2=14.77%となった。
【0168】
以下の表9には、各例における近赤外線カットフィルタにおいて得られたΔR1およびΔR2の値をまとめて示した。
【0169】
【表9】
このように、ΔR
1<5%およびΔR
2<6%を満たす、例1~例4における近赤外線カットフィルタでは、光の入射角度によらず、透過帯における光の反射を有意に抑制できることが確認された。
【符号の説明】
【0170】
100 第1の光学フィルタ
110 透明基板
112 第1の表面
120 光学多層膜
140 第1の整合膜
160 第2の整合膜
200 第2の光学フィルタ
210 透明基板
212 第1の表面
220 光学多層膜
240 第1の整合膜
260 第2の整合膜
300 第3の光学フィルタ
310 透明基板
312 第1の表面
320 光学多層膜
340 第1の整合膜
350 第3の整合膜
360 第2の整合膜