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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/20 20060101AFI20240521BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240521BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G03G21/20
G03G15/20 555
G03G21/00 530
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020093430
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021189272
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 保
(72)【発明者】
【氏名】南野 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良春
(72)【発明者】
【氏名】尾花 陽光
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-079057(JP,A)
【文献】特開2011-242642(JP,A)
【文献】特開2015-034927(JP,A)
【文献】特開2013-152495(JP,A)
【文献】特開平07-234606(JP,A)
【文献】特開2018-096932(JP,A)
【文献】特開2002-251121(JP,A)
【文献】特開2020-129093(JP,A)
【文献】特開2009-258484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/20
G03G 15/20
G03G 21/00
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境温度検知センサで検知された外気検知温度Tdを使用して環境温度を推定する環境温度推定手段を有する画像形成装置において、前記環境温度推定手段は、
前記画像形成装置が稼働状態を継続する第1の経過時間Tonに基づいて当該第1の経過時間Tonの増大に比例する第1の環境温度補正分を演算すると共に、
前記画像形成装置が非稼働状態を継続する第2の経過時間Toffに基づいて当該第2の経過時間Toffの増大につれて減少する第2の環境温度補正分を演算し、
前記稼働状態とは、前記画像形成装置の定着装置のヒータの制御が行われる立ち上げ、待機、印字動作の状態であり、
前記非稼働状態とは、前記画像形成装置の定着装置のヒータの制御が行われない電源オフ又は省電力状態であり、
前記第1の環境温度補正分は、所定の飽和温度上昇量Z0を上限値とし、前記第1の環境温度補正分および前記第2の環境温度補正分から算出される環境温度補正量Zを使用して、環境温度推定値Tpを次式(1)に基づいて算定し、
【数1】

前記第1の環境温度補正分と前記第2の環境温度補正分を含む環境温度補正量Z、温度飽和時間Tsat、非稼働時の温度低下の熱時定数C、稼働時間Ton,非稼働時間Toff、稼働時の補正比F1、非稼働時の補正比F2としたとき、前記環境温度補正量Zを、
Z=Z0×F1(Ton)×F2(Toff)
で算出し、ここで、
【数2】

もしくは、その2次近似式である
【数3】

で算定し、前記環境温度推定値Tpを、Tp=Td-Zで算定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
環境温度検知センサで検知された外気検知温度Tdを使用して環境温度を推定する環境温度推定手段を有する画像形成装置において、前記環境温度推定手段は、
前記画像形成装置が稼働状態を継続する第1の経過時間Tonに基づいて当該第1の経過時間Tonの増大に比例する第1の環境温度補正分を演算すると共に、
前記画像形成装置が非稼働状態を継続する第2の経過時間Toffに基づいて当該第2の経過時間Toffの増大につれて減少する第2の環境温度補正分を演算し、
前記稼働状態とは、前記画像形成装置の定着装置のヒータの制御が行われる立ち上げ、待機、印字動作の状態であり、
前記非稼働状態とは、前記画像形成装置の定着装置のヒータの制御が行われない電源オフ又は省電力状態であり、
前記第1の環境温度補正分は、所定の飽和温度上昇量Z0を上限値とし、前記第1の環境温度補正分および前記第2の環境温度補正分から算出される環境温度補正量Zを使用して、環境温度推定値Tpを次式(1)に基づいて算定し、
【数4】

前記第1の環境温度補正分と前記第2の環境温度補正分を含む環境温度補正量Z、温度飽和時間Tsat、非稼働時の温度低下の熱時定数C、稼働時間Ton,非稼働時間Toff、稼働時の補正比F1、非稼働時の補正比F2としたとき、前記環境温度補正量Zを、
Z=Z0×F1(Ton)×F2(Toff)として算定し、ここで、
【数5】

もしくは、その2次近似式である
【数6】

で算定し、かつ、前記飽和温度上昇量Z0がZO=a×Tp+bと表されるとき、前記環境温度推定値Tpを次式(2)で算定することを特徴とする画像形成装置。
【数7】
【請求項3】
稼働i回目、非稼働j回目の移行時点で、前記環境温度補正量Z(i,j)を保存し、
次回の稼働時は、Z(i+1,j)=Z(i,j)×F1(Ton_i+1),
次回の非稼働時は、Z(I,j+1)=Z(i,j)×F2(Toff_j+1)
として算定し、前記環境温度推定値Tpを、Tp=T-Zで算定することを特徴とする請求項の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置が前記稼働状態と前記非稼働状態を繰り返す動作において、稼働n回、非稼働m回を行った場合に、前記環境温度推定値Tpを次式(3)で算定することを特徴とする請求項の画像形成装置。
【数8】
【請求項5】
前記画像形成装置が前記稼働状態と前記非稼働状態を繰り返す動作において、稼働i回、非稼働j回を行った時点で、次式(4)で示す補正関数関F(i,j)を保存し、
【数9】

次回i+1回目の稼働時、次回j+1回目の非稼働時、として算定し、前記環境温度推定値Tpを次式(5)で算定することを特徴とする請求項1又は4の画像形成装置。
【数10】
【請求項6】
非稼働時間が所定時間以上の場合に、補正比F2(Toff)=0、前記環境温度補正量Z=0とし、前記環境温度推定値Tp=外気検知温度Tdで算定することを特徴とする請求項1からのいずれか1項の画像形成装置。
【請求項7】
非稼働時間が6時間以上の場合に前記環境温度推定値Tp=外気検知温度Tdで算定することを特徴とする請求項1からのいずれか1項の画像形成装置。
【請求項8】
待機時の飽和温度上昇量Z0,温度飽和時間Tsat、非稼働時の温度低下の熱時定数Cについて、その値が略下記の値であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項の画像形成装置。
Z0=3~10(℃)
Tsat=30min~3.0hr
C=8000~12000(1/s)
【請求項9】
前記環境温度推定値Tpに基づいて前記定着装置の定着目標温度を算定するにあたり、(a)Tp低温検知環境温度しきい値の場合は、前記定着目標温度=常温定着目標温度+低温加算温度、
(b)低温検知環境温度しきい値<Tp<高温検知環境温度しきい値の場合は、前記定着目標温度=常温定着目標温度、
(c)Tp>高温検知環境温度しきい値の場合は、前記定着目標温度=常温定着目標温度-高温減算温度、
として、それぞれ算定することを特徴とする請求項1からのいずれか1項の画像形成装置。
【請求項10】
前記低温検知環境温度しきい値を15℃~19℃、前記高温検知環境温度しきい値を27~30℃、前記低温加算温度を5℃~15℃、前記高温減算温度を3℃~7℃に設定したことを特徴とする請求項の画像形成装置。
【請求項11】
環境温度10℃一定の環境において、印刷、待機の混在で3時間連続稼働時における稼働中の印刷時に、前記定着目標温度が、常に前記常温定着目標温度に前記低温加算温度が加算されることを特徴とする請求項又は10の画像形成装置。
【請求項12】
環境温度が6℃~23℃の範囲で少なくとも4時間推移する環境において、前記環境温度が10℃到達時から印刷10枚、省電力状態60秒の繰り返しを3時間行った場合に、前記定着目標温度が常に高温減算されないことを特徴とする請求項の画像形成装置。
【請求項13】
環境温度が25℃~27℃の範囲で印刷、待機の混在で少なくとも3時間連続稼働後に、6時間以上電源遮断又は省電力状態の非稼働状態を維持した後の電源ON直後の印刷時に、前記定着目標温度が高温減算されないことを特徴とする請求項の画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の内部機器を管理・制御するため、外気検知温度を使用して環境温度を推定する環境温度推定手段を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、内部機器を管理・制御するため、環境温度検知センサを備える。この環境温度検知センサで検知された外気検知温度に基づいて、現像、転写、定着などの電子写真プロセスのプロセス条件が補正される。
【0003】
環境温度検知センサは、できるだけ環境温度に近い温度を検知するため、冷却用外気の引込みダクト入口など外気に直接触れる場所に設置される。しかし、小型の画像形成装置などでは、そのような設置場所であっても機内熱の影響を完全に排除するのが難しい。
【0004】
このため、環境温度検知センサが機内熱の影響を受けることがあり、低温環境であるにもかかわらず常温、高温と誤検知することがあった。このような誤検知が発生すると適切な定着温度補正が行えず、定着不良などの画質不良が発生する。そこで、従来の画像形成装置は外気検知温度を補正することで、機内熱の影響を軽減して実際の環境温度を推定する環境温度推定手段を備える(特許文献1、2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示されている環境温度推定手段でも、画像形成装置の稼働状態・非稼働状態が混在する場合は適正な温度補正ができない。詳しくは、1)環境温度が変化する場合、及び、稼働状態(立ち上げ、待機、印字など制御している状態)、非稼働状態(電源OFF,スリープ状態など制御をオフしている状態)の時間ばらつきがある場合、適正な温度補正を行うことができない。2)また長時間待機動作が持続するような場合も、適正な温度補正を行うことができない。従来の環境温度推定手段はこのような課題があった。
【0006】
本発明の目的は、画像形成装置の稼働状態・非稼働状態が混在する場合でも適正な温度補正を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、環境温度検知センサで検知された外気検知温度Tdを使用して環境温度を推定する環境温度推定手段を有する画像形成装置において、前記環境温度推定手段は、前記画像形成装置が稼働状態を継続する第1の経過時間Tonに基づいて当該第1の経過時間Tonの増大に比例する第1の環境温度補正分を演算すると共に、前記画像形成装置が非稼働状態を継続する第2の経過時間Toffに基づいて当該第2の経過時間Toffの増大につれて減少する第2の環境温度補正分を演算し、前記稼働状態とは、前記画像形成装置の定着装置のヒータの制御が行われる立ち上げ、待機、印字動作の状態であり、前記非稼働状態とは、前記画像形成装置の定着装置のヒータの制御が行われない電源オフ又は省電力状態であり、前記第1の環境温度補正分は、所定の飽和温度上昇量Z0を上限値とし、前記第1の環境温度補正分および前記第2の環境温度補正分から算出される環境温度補正量Zを使用して、環境温度推定値Tpを次式(1)に基づいて算定し、
【数1】

前記第1の環境温度補正分と前記第2の環境温度補正分を含む環境温度補正量Z、温度飽和時間Tsat、非稼働時の温度低下の熱時定数C、稼働時間Ton,非稼働時間Toff、稼働時の補正比F1、非稼働時の補正比F2としたとき、前記環境温度補正量Zを、
Z=Z0×F1(Ton)×F2(Toff)
で算出し、ここで、
【数2】

もしくは、その2次近似式である
【数3】

で算定し、前記環境温度推定値Tpを、Tp=Td-Zで算定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の画像形成装置は、環境温度検知センサで検知された外気検知温度Tdを使用して環境温度を推定する環境温度推定手段を有する画像形成装置において、前記環境温度推定手段は、前記画像形成装置が稼働状態を継続する第1の経過時間Tonに基づいて当該第1の経過時間Tonの増大に比例する第1の環境温度補正分を演算すると共に、前記画像形成装置が非稼働状態を継続する第2の経過時間Toffに基づいて当該第2の経過時間Toffの増大につれて減少する第2の環境温度補正分を演算し、前記稼働状態とは、前記画像形成装置の定着装置のヒータの制御が行われる立ち上げ、待機、印字動作の状態であり、前記非稼働状態とは、前記画像形成装置の定着装置のヒータの制御が行われない電源オフ又は省電力状態であり、前記第1の環境温度補正分は、所定の飽和温度上昇量Z0を上限値とし、前記第1の環境温度補正分および前記第2の環境温度補正分から算出される環境温度補正量Zを使用して、環境温度推定値Tpを次式(1)に基づいて算定し、
【数4】

前記第1の環境温度補正分と前記第2の環境温度補正分を含む環境温度補正量Z、温度飽和時間Tsat、非稼働時の温度低下の熱時定数C、稼働時間Ton,非稼働時間Toff、稼働時の補正比F1、非稼働時の補正比F2としたとき、前記環境温度補正量Zを、
Z=Z0×F1(Ton)×F2(Toff)として算定し、ここで、
【数5】

もしくは、その2次近似式である
【数6】

で算定し、かつ、前記飽和温度上昇量Z0がZO=a×Tp+bと表されるとき、前記環境温度推定値Tpを次式(2)で算定することを特徴とする。
【数7】
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成装置の稼働状態・非稼働状態が混在する場合でも適正な温度補正が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図1B】本発明の実施形態に係る画像形成装置の原理図である。
図1C】画像形成装置内の環境温度検知センサの配置位置を示す概略側面図である。
図2A】画像形成装置の稼働状態(稼働・非稼働)と環境温度推定値の関係を示すグラフである。
図2B】画像形成装置の稼働状態(印字・待機)と環境温度推定値の関係を示すグラフである。
図3A】22℃環境で待機3.5時間での外気検知温度と環境温度の変化グラフである。
図3B】3.5時間待機後、電源OFF2時間での外気検知温度低下を示すグラフである。
図4A】22℃環境で待機3.5時間後の片面印字200枚時の外気検知温度の時間変化を示すグラフである。
図4B】22℃環境で待機3.5時間後の普通紙両面印字200枚時の外気検知温度の時間変化を示すグラフである。
図5A】冷間状態、普通紙、片面印字200枚時の外気検知温度の時間変化を示すグラフである。
図5B】冷間状態、普通紙、両面印字200枚時の外気検知温度の時間変化を示すグラフである。
図6A】稼働時の外気検知温度補正比F1と稼働時間の関係を示すグラフである。
図6B】非稼働時の外気検知温度補正比F2と稼働時間の関係を示すグラフである。
図6C】非稼働持続時の外気検知温度補正量変化を示すグラフである。
図7A】稼働・非稼働を複数回繰り返した後に印刷する状態を示す図である。
図7B】両面1枚印刷、スリープ移行1分設定、15分間隔繰り返し4回印刷時の外気検知温度の時間変化を示すグラフである。
図7C】10℃環境一定、稼働持続(150枚印刷、60秒待機の繰り返しで3時間稼働)したときの外気検知温度と環境温度推定値を示すグラフである。
図8】環境温度変化時における稼働・非稼働混在時の、補正前後の環境温度推定値変化を示すグラフである。
図9】第1実施形態に係る環境温度推定方法を表すフローチャートである。
図10A】待機持続時、外気検知温度上昇量と外気温度の相関関係を示すグラフである。
図10B】第2実施形態に係る環境温度推定方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る冷却装置と、当該冷却装置を使用した定着装置及び画像形成装置(レーザプリンタ)について図面を参照して説明する。レーザプリンタは画像形成装置の一例であり、当該画像形成装置はレーザプリンタに限定されないことは勿論である。すなわち、画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、またはこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
【0012】
なお、各図中の同一または相当する部分には同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0013】
以下の実施形態では「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は紙(用紙)だけでなくOHPシートや布帛、金属シート、プラスチックフィルム、或いは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
【0014】
現像剤やインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0015】
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字や図形等の画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の模様を媒体に付与することも意味する。
【0016】
(レーザプリンタの構成)
図1Aは、本発明の画像形成装置100の一実施形態としてのカラーレーザプリンタの構成を概略的に示す構成図である。また図1Bは当該カラーレーザプリンタの原理を単純化して図示する。
【0017】
画像形成装置100は、画像形成手段としての4つのプロセスユニット1K、1Y、1M、1Cを備える。これらプロセスユニットは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の現像剤によって画像を形成する。
【0018】
各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cは、互いに異なる色の未使用トナーを収容したトナーボトル6K、6Y、6M、6Cを有する以外は、同様の構成となっている。このため、1つのプロセスユニット1Kの構成を以下に説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cの説明を省略する。
【0019】
プロセスユニット1Kは、像担持体2K(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3Kと、除電装置を有している。プロセスユニット1Kはさらに、像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置4Kと、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像手段としての現像装置5K等を有している。そして、プロセスユニット1Kは、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着され、消耗部品を同時に交換可能となっている。
【0020】
露光器7は、この画像形成装置100に設置された各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの上方に配設されている。そして、この露光器7は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光Lをミラー7aで反射して像担持体2Kに照射するように構成されている。
【0021】
転写装置15は、この実施形態では各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの下方に配設されている。この転写装置15は図1Bの転写部TMに対応する。一次転写ローラ19K、19Y、19M、19Cは、各像担持体2K、2Y、2M、2Cに対向して中間転写ベルト16に当接して配置されている。
【0022】
中間転写ベルト16は、各一次転写ローラ19K、19Y、19M、19C、駆動ローラ18、従動ローラ17に掛け渡された状態で循環走行するようになっている。二次転写ローラ20は、駆動ローラ18に対向し中間転写ベルト16に当接して配置されている。なお、像担持体2K、2Y、2M、2Cが各色の第1の像担持体とすれば、中間転写ベルト16はそれらの像を合成した第2の像担持体である。
【0023】
ベルトクリーニング装置21は、中間転写ベルト16の走行方向において、二次転写ローラ20より下流側に設置されている。また、クリーニングバックアップローラが中間転写ベルト16に対してベルトクリーニング装置21と反対側に設置されている。
【0024】
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置200は、画像形成装置100の下方に設置されている。この用紙給送装置200は記録媒体供給部を構成するもので、記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60やローラ対210と共にユニット化されている。
【0025】
用紙給送装置200は用紙の補給等のために、画像形成装置100の本体に対して挿脱可能とされている。給紙ローラ60とローラ対210は用紙給送装置200の上方に配置され、用紙給送装置200の最上位の用紙Pを給紙路32に向けて搬送するようになっている。
【0026】
分離搬送手段としてのレジストローラ対250は、二次転写ローラ20の搬送方向直近上流側に配置され、用紙給送装置200から給紙された用紙Pを一旦停止させることができる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
【0027】
レジストローラ対250の搬送方向直近上流側にはレジストセンサ31が配設され、このレジストセンサ31によって用紙先端部分の通過が検知されるようになっている。レジストセンサ31が用紙先端部分の通過を検知した後、所定時間が経過すると、当該用紙はレジストローラ対250に突き当てられて一旦停止する。
【0028】
用紙給送装置200の下流端には、ローラ対210から右側に搬送された用紙を上方に向けて搬送するための搬送ローラ240が配設されている。図1Aに示すように、搬送ローラ240は用紙を上方のレジストローラ対250へ向けて搬送する。
【0029】
ローラ対210は上下一対のローラで構成されている。当該ローラ対210はFRR分離方式またはFR分離方式とすることができる。
【0030】
FRR分離方式は、駆動軸によりトルクリミッタを介して反給紙方向に一定量のトルクを印加された分離ローラ(戻しローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。FR分離方式は、トルクリミッタを介して固定軸に支持された分離ローラ(摩擦ローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。
【0031】
この実施形態ではローラ対210をFRR分離方式で構成している。すなわち、ローラ対210は、用紙をマシン内部に搬送する上側の給送ローラ220と、この給送ローラ220と逆方向にトルクリミッタを介して駆動軸により駆動力を与えられる下側の分離ローラ230で構成されている。
【0032】
分離ローラ230は給送ローラ220に向けてバネ等の付勢手段で付勢されている。なお、前記給紙ローラ60は、給送ローラ220の駆動力をクラッチ手段を介して伝達することで図1Aで左回転するようになっている。
【0033】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙Pは、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせ、二次転写ローラ20と駆動ローラ18との二次転写ニップ(図1Bでは転写ニップN)に送り出される。そして、送り出された用紙Pは、二次転写ニップにおいて印加されたバイアスによって、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が所望の転写位置に高精度に静電的に転写されるようになっている。
【0034】
転写後搬送路33は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップの上方に配設されている。定着装置300は、転写後搬送路33の上端近傍に設置されている。
【0035】
定着装置300は、発熱部材を内包する加熱部材としての定着ローラ310と、この定着ローラ310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧部材としての加圧ローラ320を備えている。定着装置300は各種の型式が可能である。
【0036】
定着後搬送路35は、定着装置300の上方に配設され、定着後搬送路35の上端で、排紙路36と反転搬送路41に分岐している。この分岐部に切り替え部材42が配置され、切り替え部材42はその揺動軸42aを軸として揺動するようになっている。また排紙路36の開口端近傍には排紙ローラ対37が配設されている。
【0037】
反転搬送路41は、分岐部と反対側の他端で給紙路32に合流している。そして、反転搬送路41の途中には、反転搬送ローラ対43が配設されている。排紙トレイ44は、画像形成装置100の上部に、画像形成装置100の内側方向に凹形状を形成して、設置されている。
【0038】
粉体収容器10(例えばトナー収容器)は、転写装置15と用紙給送装置200の間に配置されている。そして、粉体収容器10は、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着されている。
【0039】
本実施形態の画像形成装置100は、転写紙搬送の関係により、給紙ローラ60から二次転写ローラ20までの所定の距離が必要である。そして、この距離に生じたデッドスペースに粉体収容器10を設置し、レーザプリンタ全体の小型化を図っている。
【0040】
転写カバー8は、用紙給送装置200の上部で、用紙給送装置200の引出方向正面に設置されている。そして、この転写カバー8を開くことで、画像形成装置100の内部を点検可能にしている。転写カバー8には、手差し給紙用の手差し給紙ローラ45、及び手差し給紙用の手差しトレイ46が設置されている。
【0041】
次に、前述した画像形成装置100の原理図を図1Bで説明する。画像形成装置100は像担持体2(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3を有している。また像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置4と、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像装置5と、像担持体2の下方に配設された転写手段TMと、除電装置等を有する。
【0042】
露光器7は像担持体2の上方に配設されている。この露光器7は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからのレーザ光Lbをミラー7aで反射して像担持体2に照射する。
【0043】
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置200は、画像形成装置100の下方に設置されている。この用紙給送装置200は記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60と共にユニット化される。
【0044】
給紙ローラ60の下流側に、分離搬送手段としてのレジストローラ対250が配設されている。用紙給送装置200から給紙された用紙Pをレジストローラ対250で一旦停止させる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
【0045】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙Pは、像担持体2上のトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせて転写手段TMの転写ニップNに送り出される。そして、送り出された用紙Pは、転写ニップNにおいて印加されたバイアスによって像担持体2上のトナー像が所望の転写位置に静電的に転写されるようになっている。
【0046】
転写ニップNの下流側に定着装置300が配設されている。定着装置300はヒータで加熱される定着ローラ310と、この定着ローラ310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ320を備えている。
【0047】
(レーザプリンタの作動)
次に、本実施形態に係るレーザプリンタの基本的動作について図1Aを参照して以下に説明する。最初に、片面印刷を行う場合について説明する。
【0048】
給紙ローラ60は、図1Aに示すように、画像形成装置100の制御部からの給紙信号によって回転する。そして、給紙ローラ60は、用紙給送装置200に積載された束状用紙Pの最上位の用紙のみを分離し、給紙路32へ送り出す。
【0049】
給紙ローラ60およびローラ対210によって送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対250のニップに到達すると、弛みを形成し、その状態で待機する。そして、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像をこの用紙Pに転写する最適なタイミング(同期)を図ると共に、用紙Pの先端スキューを補正する。
【0050】
手差しによる給紙の場合は、手差しトレイ46に積載された束状用紙が、最上位の用紙から一枚ずつ手差し給紙ローラ45によって反転搬送路41の一部を通り、レジストローラ対250のニップまで搬送される。以後の動作は用紙給送装置200からの給紙と同一である。
【0051】
ここで、作像動作については、1つのプロセスユニット1Kを説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cについてのその説明を省略する。まず、帯電装置4Kは、像担持体2Kの表面を高電位に均一に帯電する。そして、露光器7は、画像データに基づいたレーザ光Lを像担持体2Kの表面に照射する。
【0052】
レーザ光Lが照射された像担持体2Kの表面は、照射された部分の電位が低下して、静電潜像を形成する。現像装置5Kは、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有し、トナーボトル6Kから供給された未使用のブラックトナーを、現像剤担持体を介して、静電潜像が形成された像担持体2Kの表面部分に転移させる。
【0053】
トナーが転移した像担持体2Kは、その表面にブラックトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2K上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト16に転写する。
【0054】
ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写行程を経た後の像担持体2Kの表面に付着している残留トナーを除去する。除去された残留トナーは、廃トナー搬送手段によって、プロセスユニット1K内にある廃トナー収容部へ送られ回収される。また、除電装置は、クリーニング装置3Kによって残留トナーが除去された像担持体2Kの残留電荷を除電する。
【0055】
各色のプロセスユニット1Y、1M、1Cにおいても、同様にして像担持体2Y、2M、2C上にトナー画像を形成し、各色トナー画像が重なり合うように中間転写ベルト16に転写する。
【0056】
各色トナー画像が重なり合うように転写された中間転写ベルト16は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップまで走行する。一方、レジストローラ対250は、それに突き当てられた用紙を所定のタイミングで挟み込んで回転し、中間転写ベルト16上に重畳転写して形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせて、二次転写ローラ20の二次転写ニップまで搬送する。このようにして、中間転写ベルト16上のトナー画像をレジストローラ対250によって送り出された用紙Pに転写する。
【0057】
トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。そして、定着装置300に搬送された用紙Pは、定着ローラ310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱・加圧することで未定着トナー画像が用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0058】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着後搬送路35を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み込み、回転駆動することで排紙トレイ44に排出することで片面印刷を終了する。
【0059】
次に、両面印刷を行う場合について説明する。片面印刷の場合と同様に、定着装置300は用紙Pを排紙路36へ送り出す。そして、両面印刷を行う場合、排紙ローラ対37は、回転駆動によって用紙Pの一部を画像形成装置100外に搬送する。
【0060】
そして、用紙Pの後端が、排紙路36を通過すると、切り替え部材42は、図1Aの点線で示すように揺動軸42aを軸として揺動し、定着後搬送路35の上端を閉鎖する。この定着後搬送路35の上端の閉鎖とほぼ同時に、排紙ローラ対37は、用紙Pを画像形成装置100外へ搬送する方向と逆の方向に回転し、反転搬送路41へ用紙Pを送り出す。
【0061】
反転搬送路41へ送り出された用紙Pは、反転搬送ローラ対43を経て、レジストローラ対250に至る。そして、レジストローラ対250は、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像を用紙Pのトナー画像未転写面に転写する最適なタイミング(同期)を図り、用紙Pを二次転写ニップへ送り出す。
【0062】
そして、二次転写ローラ20と駆動ローラ18は、用紙Pが二次転写ニップを通過する際に用紙Pのトナー画像未転写面(裏面)にトナー画像を転写する。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。
【0063】
定着装置300は、定着ローラ310と加圧ローラ320によって、搬送された用紙Pを挟み、加熱・加圧することで未定着トナー画像を用紙Pの裏面に定着する。このようにして、表裏両面にトナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0064】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着搬送路を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み、回転駆動し排紙トレイ44に排出することで両面印刷を終了する。
【0065】
中間転写ベルト16上のトナー画像を用紙Pに転写した後、中間転写ベルト16上には残留トナーが付着している。ベルトクリーニング装置21は、この残留トナーを中間転写ベルト16から除去する。また、中間転写ベルト16から除去されたトナーは、廃トナー搬送手段によって、粉体収容器10へと搬送され、粉体収容器10内に回収される。
【0066】
(環境温度推定手段の第1実施形態)
図1Cは、画像形成装置100内の環境温度検知センサTHの配置例を示す。画像形成装置100の機内には気流導入部400が配設され、この気流導入部400で導入した外気で定着装置300などの内部機器が冷却される。定着装置300で定着された用紙は定着後搬送路35を搬送される。
【0067】
気流導入部400の周辺に環境温度検知センサTHが設けられ、この環境温度検知センサTHによって環境温度(外気温度)が検知される。環境温度検知センサTHは定着装置300から離れた位置に設けられるが、定着装置300の発熱による温度上昇の影響を完全に除去するのは困難であり、環境温度検知センサTHの温度が環境温度(外気温度)以上に上昇することがある。
【0068】
以下、図2A図10Bを参照して、環境温度検知センサTHから得られる外気検知温度Tdと、画像形成装置100の状態を考慮した環境温度推定手段(方法)の第1実施形態を説明する。なお、当該環境温度推定手段は、画像形成装置100の機能を統括制御するコントローラで構成される。コントローラは、CPU,ROM,RAM,I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成することができ、このマイクロコンピュータで環境温度推定方法が実行される。
【0069】
画像形成装置100の状態(稼働状態・非稼働状態)と環境温度推定値Tpの関係グラフを図2Aに示す。また、画像形成装置100の稼働状態(印字状態・待機状態)と環境温度推定値Tpの関係グラフを図2Bに示す。図2Bでは、環境温度一定条件で稼働、非稼働を繰り返す画像形成装置の動作例と、その時の外気検知温度Tdを示す。ここで「非稼働」は、電源OFF,スリープ状態(省電力モード)など、画像形成装置(除くコントローラ部)に電力が投入されない状態を示す。また「稼働」は、立ち上げ動作、待機動作、印字動作など、画像形成装置(除くコントローラ部)に電力が投入される状態を示す。
【0070】
画像形成装置100の現像、転写、定着などの電子写真プロセスのプロセス条件は、外気検知温度Tdに即して補正するのではなく、機内熱の影響を軽減するため、外気検知温度Tdと画像形成装置100の状態を考慮して求めた図2A図2Bの環境温度推定値Tpに基づいて補正される。図中の外気検知温度Tdを、後述の補正量Zで補正(減算)することで環境温度推定値Tpが得られる。
【0071】
図3Aは環境温度一定条件(22℃環境)で稼働(待機持続3.5時間)の場合の環境温度検知センサTHの検知温度上昇を示し、図3Bは環境温度一定条件で3.5時間待機後、非稼働(電源OFF2時間)の場合の環境温度検知センサTHの検知温度低下を示す。
【0072】
稼働状態では定着装置300のヒータ制御と電力消費があるので、図3Aのように外気検知温度Tdが上昇するが、所定経過時間後は温度上昇が飽和するので、後述の飽和温度上昇量Z0を超えることはない。
【0073】
また、非稼働状態では定着装置300のヒータ制御と電力消費がないので、図3Bのように外気検知温度Tdが時間ともに環境温度に向かって降下するが、後述するように非稼働から6時間を経過すると温度低下が止まる。
【0074】
本発明実施形態では、上記の特性より、外気検知温度Tdを以下の数1のように補正量Zで補正することで環境温度推定値Tpを得る。
【数8】

図2Aで環境温度補正の前後の環境温度波形を見ると、外気検知温度Tdを補正量Zで補正することで、実環境温度Trealに近い環境温度推定値Tpが得られることが分かる。
【0075】
次に、稼働時の補正量Zonと非稼働時の補正量Zoffの決定方法について説明する。(A)稼働時の補正量Zonの決定方法
稼働時としては、図3Aに示した待機持続時と、印字時がある。待機持続時は、図3Aに示したように外気検知温度が上昇し、時間Tsat経過(例えば150min)で飽和する(飽和温度上昇量Z0=例えば6℃程度)。
【0076】
一方、印字時の外気検知温度Tdの時間変化を図4A図5Bに示す。図4Aは熱間状態での片面印字、図4Bは熱間状態での両面印字、図5Aは冷間状態での片面印字、図5Bは冷間状態での両面印字の結果を示している。図5Bの冷間状態では外気検知温度Tdの上昇はみられるが、図4A図5Aのいずれも外気検知温度Tdの上昇はみられない。特に、図4Bのように、待機で温度上昇した後の熱間時は、両面印刷を行っても温度上昇がみられない。
【0077】
以上より、数1(Tp=Td-Z)の補正量Zon、Zoffは以下のように求める。稼働時は、待機持続で外気検知温度Tdが上昇し、時間Tsat経過(例えば1hr)で飽和する(飽和温度上昇量Z0=例えば6℃程度)。
【0078】
(稼働時の補正比F1)
これに対して印字時は、機内換気装置がフルに稼働するため温度上昇は少ない(両面300枚印刷で3℃程度)。そのため、待機持続時に時間に比例して温度上昇する分(Tsat経過で飽和)を以下の数2で補正する。以下の補正量Zonが第1の環境温度補正分である。
【数9】

【数10】

数3は、外気検知温度Tdの上昇量が飽和温度上昇量に到達するまでは、稼働経過時間Ton_iに比例して補正量Zonが増大し、飽和温度上昇量に到達すると補正量Zonが
最大化(=Z0)して一定になることを表している。
【0079】
(非稼働時の補正比F2)
これに対して非稼働時は、第2の環境温度補正分Zoffは経過時間に反比例して減少する。熱入力がない場合の機内機器の温度変化について考えると、T:機器の温度、Ti:機器の初期温度、Ta:環境温度,t:時間、C:熱時定数として、機器の温度Tは以下の理論式である数4で示される。
【数11】
【0080】
j回目の非稼働前の補正量をZ(j-1)としたとき、j回目非稼働時補正量Z(j)は以下の数5で示される。また補正比F2は以下の数6で示される。
【数12】

【数13】

ただし、Toff>非稼働時間しきい値(=例えば6hr)では、F2はほぼ0になるのでF2=0と置き換えてよい。
【0081】
印字時は、気流導入部400から外気が機内に取り込まれるため、機内気流により環境温度検知センサTHの検知温度上昇が抑制される。以上の結果を基に、印字による外気検知温度Tdの上昇は少ないため、図3Aに示した待機持続時の外気検知温度Tdの上昇特性を基に、図6Aのような稼働時の外気検知温度Tdの補正を行うこととした。
【0082】
待機持続時に時間に比例して温度上昇する分(時間Tsat経過で飽和)を補正する。温度補正量の飽和量をZ0とすると、補正量Z=補正量飽和値Z0×補正比F1と表わすことができ、1回目、i回目稼働時補正比F1(Ton_1),F1(Ton_i)は、前述した(数2)、(数3)で示される。
【0083】
稼働時、非稼働時の補正比の時間関係を図6A図6Bに示す。また非稼働持続時の外気検知温度の補正量の変化を図6Cに示す。図6Bのように、非稼働時の外気検知温度の補正量が6時間でほぼ0になるので、図6Cのように、実条件(熱時定数C=10800(1/s))で6(hr)の非稼働持続時の外気検知温度Tdの補正量が1℃未満となる。
【0084】
このため、6(hr)以上では、補正量を0としてF2=0とし、環境温度補正をリセットするような動作とした。このように、長い時間で非稼働が持続する場合に、環境温度補正をリセットすることで、環境温度推定のための演算量を低減することができる。
【0085】
(稼働・非稼働を繰り返す場合の温度補正)
図7A図7Cは、画像形成装置の稼働・非稼働を複数回繰り返す場合を説明する図であり、図7Aは、稼働・非稼働を複数回(3回、i=3)繰り返した後に印刷する状態を示す。図7Bは、両面1枚印刷、スリープ移行1分設定、15分間隔繰り返し4回印刷時の外気検知温度Td、外気温度、定着ローラ310の長手方向中央温度の時間変化を示すグラフである。
【0086】
定着装置300が稼働すると定着ローラ310の熱が用紙Pに奪われるため、稼働・非稼働(スリープ)の繰り返しにより定着ローラ310の温度が周期的に変動する。図7Cは、10℃の低温環境一定、稼働持続(150枚印刷、60秒待機の繰り返しで3時間稼働)したときの外気検知温度Tdと環境温度推定値Tpを示すグラフである。
【0087】
環境温度推定値Tpを必要とするのは、印刷時の現像、転写、定着のプロセス条件を補正するためであり、稼働中における印刷開始時までの稼働経過時間から補正値Zを算定する。稼働、非稼働繰り返し時は、図7Aのような動作になるが、稼働n回、非稼働m回の場合の補正量Zは以下の数7で示される。
【0088】
【数14】

【0089】
このような結果に基づき、環境温度変化時には、数1(Tp=Td-Z)でTdが変化するため、適正な補正量Zを減じて、正確な環境温度推定値Tpを算定できる。また、稼働、非稼働を繰り返した場合でも正確な環境温度推定値Tpを算定できる。
【0090】
環境温度推定値Tpの結果を図7C(低温環境時)と図8(環境温度変化時)に示す。この場合、熱時定数C=10800(1/s),Tsat=1,Z0=6.2℃である。定着温度補正では、図7Cにおいて、15℃以下を低温と判断して温度加算する制御を行う。また図8において、27℃以上を高温と判断して温度減算する制御を行う。
【0091】
前述した定着の環境温度補正をまとめると、以下の(a)~(c)ようになる。
(a)低温環境:外気検知温度<15℃ 定着目標温度=常温定着目標温度+低温加算(例えば5~10℃加算)
(b)常温環境:外気検知温度16~26℃ 定着目標温度=常温定着目標温度
(c)高温環境:外気検知温度>27℃ 定着目標温度=常温定着目標温度-高温減算(例えば5℃減算)
前記常温定着目標温度は、例えば150~180℃の範囲内で設定することができる(以下同様)。
【0092】
(1)10℃環境、稼働連続(150s間連続印刷・60s待機3hr,9:00~12:00)、非稼働(1
2:00~13:30)
図7Cで補正なしの場合、外気検知温度が15℃を越える9:40くらいから定着目標温度の低温加算が入らなくなるが、本実施形態の補正を行うと環境温度推定値Tpが15℃未満となるため、常に低温加算する制御が入る。10℃環境で、150秒連続印字・60秒待機動作を3時間繰り返しても、環境温度推定値Tpが15℃を越えないため、定着目標温度の低温加算がはずれる動作となることを回避できる。
【0093】
(2)環境温度急激変化(6℃~23℃まで4hr変化、10℃時点で稼働開始、稼働(6p印刷)・非稼働(スリープ60s)繰り返し)
図8は、外気温度急激変化時(6℃~23℃まで4hr変化)の外気温度推定結果の例示であって、外気温度変化時において、稼働・非稼働が混在する時の補正前後の外気検知温度Tdの変化グラフである。前提条件として:
(a)6℃~10℃まで2hr変化(非稼働状態,図8の7:00~9:00)、
(b)10℃時点で稼働開始、稼働(6p印刷)・非稼働(スリープ60s)繰り返し(図8の9:00~14:00)を行った。
【0094】
図8のように外気温度急激変化時にも、外気検知温度Td変化に対応する温度推定ができ、定着目標温度補正などの外気検知温度補正制御が実現できる。例えば、本発明実施形態の温度推定を行わない場合は、12:00前の時点で外気検知温度Tdが27℃を越えるため、定着目標温度を下げる高温減算制御が入る。
【0095】
しかし、本発明実施形態の温度推定を行うことで、12:00以降で外気温度が27℃以上と
誤って検知して定着目標温度を下げることを防止できる。なお、印刷10P/J、省電力60sの繰り返しを12:00以降3時間行った場合も、図8と大きな差異はなく高温減算制御は入らなかった。
【0096】
(フローチャート)
以上述べた環境温度推定方法(外気検知温度補正方法)を、図9のフローチャートで以下説明する。第1回目の電源ON時(S1)、保存されている非稼働時間は0である。電源ON時から稼働時間カウントを開始し(S2)、印刷受信があった場合は(S3)、外気検知温度Tdを検知し(S4)、稼働時間Ton_1を保存する(S4)。この稼働時間Ton_1を基に、環境温度補正量Zを算定する(S5)。外気検知温度Tdと算定補正量Zから、環境温度推定値Tpを算定する(S6)。
【0097】
工程Aの定着温度(定着目標温度)は、S6で算定した環境温度推定値Tpの大きさに応じて、以下の(a)~(c)のように3つに分けて補正する。
(a)低温環境(S7,S8):環境温度推定値Tp<低温しきい値(例えば15℃)
定着目標温度=常温定着目標温度+低温加算(例えば5~10℃加算)
(b)常温環境(S10,S11):環境温度推定値Tp:16~26℃
定着目標温度=常温定着目標温度
(c)高温環境(S12):環境温度推定値Tp>高温しきい値(例えば27℃)
定着目標温度=常温定着目標温度-高温減算(例えば5℃減算)
【0098】
非稼働移行時(S9)、稼働時間カウントを終了し、稼働時間Ton_i(i回目の稼働の場合、1回目ならi=1)を保存する(S13)。同時に、環境温度補正量Zを算定し、非稼働時刻を保存する(S13)。
【0099】
稼働移行時(S14)、稼働開始時刻を記憶し、稼働時間カウントを開始する(S15)。同時に、非稼働時間Toff_j(1回目なら、j=1)を保存し、環境温度補正量Zを算定する(S15)。
【0100】
稼働中、印刷ありの場合(S16)、外気検知温度Tdを検知し、稼働時間Ton_i+1(i+1回目の場合)を保存する(S17)。それを基に環境温度補正量Zを算定し(S17)、同時に、外気検知温度Tdと算定した環境温度補正量Zから環境温度推定値Tpを算定する(S17)。そして環境温度推定値Tpに対応した定着目標温度補正を前記工程Aのフローに基づき実施する。
【0101】
以上述べたように、本環境温度推定を行うことで、低温環境で、稼働・非稼働混在動作時も、安定して低温環境の検知がなされ、また、環境温度変化時も、環境室温度変化に追従した温度推定ができ、環境温度に合う環境補正制御を常時行うことが可能になる。
【0102】
本発明は、環境温度が変化する場合にも正しい温度検知が行えるように、外気検知温度Tdと補正温度を分けて検知・算定し、その差分から推定温度を算定することにより、環境温度が変化する場合でも、環境温度を正しく推定できる。また、稼働時間(立ち上げ、待機、印字など制御している時間)と、非稼働時間(電源OFF,スリープ状態など、制御をオフしている時間)を1区間ずつ、開始・終了の時刻の差から検出し、それに基づき補正温度を算定することで、稼働、非稼働を頻繁に切り替えた時も、当該切り替えを考慮して機内発熱の影響を打ち消すことで環境温度を正確に推定することができる。また、稼働状態として、印字のみでなく、待機、立ち上げの定着ヒータ点灯など全状態を含めることで、長時間待機状態が持続する場合にも、正確に環境温度を推定することができ、定着不良などの画質不良発生を防止することができる。
【0103】
(第2実施形態)
次に、環境温度推定方法の第2実施形態を図10A図10Bを参照して説明する。図10Aは待機持続時、外気検知温度Tdの上昇量と環境温度との相関関係を示すグラフである。本実施形態は、待機持続時の外気検知温度Tdの上昇飽和量Z0(図2A図2B参照)が、外気温度により異なる値を示すため、外気温度により異なる飽和値として算定する。
【0104】
定着装置300の図2A図2Bに示した待機温度を4通りに変えて、待機持続時の外気検知温度Tdの上昇(飽和)量と、外気温度との関係を図10Aに示した。4種類の待機温度(150℃、155℃、163℃、170℃)に関わらず、外気温度の増大(10℃→32℃)とともに、外気検知温度Tdの上昇飽和量は低下する。これは、外気温度と待機温度の温度差が小さくなることによる。
【0105】
以上のように、複数の待機温度で外気検知温度Tdの上昇飽和量を確認した理由は、印刷速度が速い紙種における印刷生産性を高めるためである。すなわち、印刷速度は紙種により異なるが、印刷速度が速い紙種では定着目標温度が高くなる。そのため、定着目標温度との温度差が小さい高めの待機温度も選択肢として用意することで、印刷要求時から定着温度が所定範囲内に入って印刷可能となるまでの時間を短縮化する。
【0106】
図10Bは、第2実施形態に係る外気検知温度Tdの補正方法(環境温度推定方法)を表すフローチャートである。複数の印刷速度を有する画像形成装置では、印刷速度が低いほど印字時の定着目標温度が下がる。このため、待機温度もそれに対応して低下する。
【0107】
図10Aでは、4種類の待機温度(150℃、155℃、163℃、170℃)における待機持続時の環境温度検知センサTHの検知温度上昇飽和量を示した。待機温度に関わらず、外気温度が上昇すると、検知温度上昇飽和量が低下する傾向がみられる。そこで、環境温度推定値Tpと、待機持続時温度上昇量Z0との関係を以下の数8で示す。
【数15】
【0108】
図10Aでは、環境温度推定値Tp(単位:℃)で、数8の直線の勾配はa=-0.0382、切片はb=6.596である。本発明の外気検知温度補正は、数1と数7に基づいて行っているため、数8を考慮すると環境温度推定値Tpは以下の数9のように表せる。
【数16】
【0109】
数9で、環境温度推定値Tpが左右両辺にでてくるので、数9からTpを算定すると、以下の数10のように表せる。
【数17】
【0110】
ちなみに、ON回数とOFF回数が1回の場合(n=1,m=1)は、環境温度推定値Tpと待機持続時温度上昇量Z0との関係をZ0=aTp+bで表す場合(a、bは係数)、環境温度推定値Tpは次式で算定することができる。
【数18】
【0111】
前記数10に基づき外気検知温度Td補正を行うことで、外気温度変化時の図10Aに示した10℃~32℃環境での、外気温度による待機持続時の外気検知温度Td補正量飽和値Z0の差異を正確に補正できる。
【0112】
それにより、定着目標温度の低温、高温環境での補正を、外気温度が、低温閾温度(15℃)、高温閾温度(27℃)付近での外気検知温度補正の精度を高めることができ、定着不良などの画質不良の発生を低減することができる。なお、高温減算制御が入る前記高温閾温度は、例えば25℃~27℃の範囲で自由に設定することができる。
【0113】
以上述べた本発明の第2実施形態の外気検知温度補正方法のフローチャートを図10Bに示す。図10BのステップS1~17は図10のステップS1~17に対応しているので、ステップS1~17の説明を省略する。
【0114】
前記数10の演算を行うにあたっては、以下の数12で示すF関数を保存することで、数10の算定を数13に示すように簡易な演算で行えるため、それに基づくフローを図10Bに示している。
【数19】

【数20】
【0115】
第2実施形態の環境温度推定方法を用いることにより、外気温度が低温閾温度(15℃)や高温閾温度(27℃)付近にある場合でも外気検知温度補正の精度を高めて環境温度の推定精度を高めることができ、定着不良などの画質不良の発生を低減することができる。また、前記数13を使用することで、環境温度推定方法の演算量を低減して演算時間を低減することができる。
【0116】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0117】
1K、1Y、1M、1C:プロセスユニット 2K、2Y、2M、2C:像担持体
3K、3Y、3M、3C:ドラムクリーニング装置 4K、4Y、4M、4C:帯電装置
5K、5Y、5M、5C:現像装置 6K、6Y、6M、6C:トナーボトル
7:露光器 7a:ミラー
8:転写カバー 10:粉体収容器
15:転写装置 16:中間転写ベルト
17:従動ローラ 18:駆動ローラ
19K、19Y、19M、19C:一次転写ローラ 20:二次転写ローラ
21:ベルトクリーニング装置 31:レジストセンサ
32:給紙路 33:転写後搬送路
35:定着後搬送路 36:排紙路
37:排紙ローラ対 41:反転搬送路
42:切り替え部材 42a:揺動軸
43:反転搬送ローラ対 44:排紙トレイ
45:給紙ローラ 46:トレイ
60:給紙ローラ 100:画像形成装置
200:用紙給送装置 210:ローラ対
220:給送ローラ 230:分離ローラ
240:搬送ローラ 250:レジストローラ対
300:定着装置 310:定着ローラ
320:加圧ローラ 400:気流導入部
L:レーザ光 N:転写ニップ
P:用紙(シート部材) TM:転写部
TH:環境温度検知センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【文献】特許第5568160号公報
【文献】特許第5159155号公報
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B