(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】アウターローター型モーター用磁石構造体及びアウターローター型モーター用磁石構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/279 20220101AFI20240521BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H02K1/279
H02K15/03 G
(21)【出願番号】P 2020121764
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】碓井 裕之
(72)【発明者】
【氏名】平柳 栄治郎
(72)【発明者】
【氏名】増澤 正宏
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-068548(JP,A)
【文献】特開2004-056974(JP,A)
【文献】国際公開第2015/147304(WO,A1)
【文献】特開2003-018805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0109164(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状の外周面と円弧状の内周面と前記外周面と内周面を繋ぐ円弧状の両側面を有する弓形磁石と、内周面に軸方向に連続する複数の凹部を有する円環状のローターヨークと、から構成され、前記弓形磁石の外周面と両側面の形状と前記凹部の形状とが略同一であり、前記弓形磁石が前記凹部に嵌合されている
アウターローター型モーター用磁石構造体であって、
前記弓形磁石は圧縮成形された等方性ボンド磁石であり、前記円弧状の両側面の円弧の半径は前記弓形磁石の円弧の厚さの半分でかつ中心角が180度であり、前記凹部は前記弓形磁石の外周面に倣う長円弧部と、前記弓形磁石の前記円弧状の両側面に倣う短円弧部と、前記短円弧部に連接される直線部とからなり、前記直線部は前記ローターヨークの径方向に平行である、ことを特徴とするアウターローター型モーター用磁石構造体。
【請求項2】
厚さ方向に積層したローターヨークを準備する工程と、前記ローターヨークに弓形ボンド磁石を嵌合配置しローターヨーク構造体を準備する工程と、前記ローターヨーク構造体の内周面側に着磁ヨークを配置し、前記弓形ボンド磁石を着磁する工程と、前記着磁された弓形ボンド磁石を含むローターヨーク構造体をカップヨークの内周面側に配置する工程を含む、アウターローター型モーター用磁石構造体の製造方法
であって、
前記ローターヨークを準備する工程並びに前記ローターヨーク構造体を準備する工程において、前記ローターヨークが内周面に軸方向に連続する複数の凹部を有する円環状であり、前記弓形ボンド磁石が円弧状の外周面と円弧状の内周面と前記外周面と内周面を繋ぐ円弧状の両側面を有し、前記弓形ボンド磁石の外周面と両側面の形状と前記凹部の形状とが略同一であり、前記弓形ボンド磁石が前記凹部に嵌合されており、
前記円弧状の両側面の円弧の半径は前記弓形ボンド磁石の円弧の厚さの半分でかつ中心角が180度であり、 前記凹部は前記弓形ボンド磁石の外周面に倣う長円弧部と、前記弓形ボンド磁石の前記円弧状の両側面に倣う短円弧部と、前記短円弧部に連接される直線部とからなり、前記直線部は前記ローターヨークの径方向に平行である、ことを特徴とするアウターローター型モーター用磁石構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアウターローター型モーターに用いられる磁石構造体及びアウターローター型モーターに用いられる磁石構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アウターローター型のモーターが特許文献1などによって知られている。例えば、特許文献1の
図5には、カップ型の容器の内周面側に放射状に着磁されたリング磁石(ラジアルリング磁石)を配置したモーターが開示されている。
ラジアルリング磁石は組立が容易で任意の着磁が可能であることからモーター用の磁石として多く用いられている。
しかし、ラジアルリング磁石は磁化の向きが放射状になることから着磁波形は台形状にしかならず、モーター効率や静音を考えると正弦波着磁が望まれる場合がある。
【0003】
極異方性のリング磁石であれば正弦波着磁が可能であるが、例えば粉末冶金法で製造する場合、焼結時の収縮変形により薄肉のリング磁石の製造が困難であるという問題がある。
【0004】
特許文献2には断面視で弓形の磁石を突極部を持つバックヨークの突極部間に嵌合させることで位置決め固定が容易なアウターローター型モーターの回転子構造が開示されており、モータートルクに合わせリラクタンストルクも活用することで小型、高出力を実現している。
特許文献2では断面視で弓形磁石の角部は鋭角となっており、位置決めが容易となっている。
【0005】
特許文献3には、高い磁気特性を有し任意の波形に着磁が可能な等方性ボンド磁石の製造方法が開示されており、正弦波着磁も可能であることが記載されている。しかし、特許文献3に開示されるボンド磁石は圧縮成形法を使用しており、焼結磁石等に比較すると鋭角な角部は摩耗しやすいという問題を有しており、特許文献2の嵌合方法を採用できない。
さらに特許文献3の製造方法で弓形磁石を成形し、特許文献2のごとくリラクタンストルク併用の磁気回路とするためには、磁石の厚さを厚くする必要があり、磁気飽和させづらいという問題を内包していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-188855
【文献】特開2003-219619号公報
【文献】国際公開WO2012/118001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、圧縮成形タイプのボンド磁石を用いたアウターローター型のモーター用磁石構造体で小型、高出力を得られ、任意の波形に着磁できるとともに磁石の固定が容易で磁石とヨークの接合強度が高い磁石構造体、及び当該磁石構造体を十分磁気飽和した磁石構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体は円弧状の外周面と円弧状の内周面と前記外周面と内周面を繋ぐ円弧状の両側面を有する弓形磁石と、内周面に軸方向に連続する複数の凹部を有する円環状のローターヨークとから構成され、前記弓形磁石の外周面と両側面の形状と前記凹部の形状とが略同一であり、前記弓形磁石が前記凹部に嵌合されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、弓形磁石をローターヨークにスムーズに配置することができる。また、弓形磁石とローターヨークの接合強度が高いアウターローター型モーター用磁石構造体を得ることができる。
【0010】
本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体は、前記凹部の開口部近傍に、径方向に平行な直線部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、弓形磁石とローターヨークの接合強度が高いアウターローター型モーター用磁石構造体を得ることができる。
【0012】
本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体は、前記弓形磁石は圧縮成形された等方性ボンド磁石であることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前記ボンド磁石は任意の波形に着磁することができる。
【0014】
本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体の製造方法は、厚さ方向に積層したローターヨークを準備する工程と、前記ローターヨークに弓形ボンド磁石を嵌合配置しローターヨーク構造体を準備する工程と、前記ローターヨーク構造体の内周面側に着磁ヨークを配置し、前記弓形ボンド磁石を着磁する工程と、前記着磁された弓形ボンド磁石を含むローターヨーク構造体をカップヨークの内周面側に配置しアウターローター型モーター用磁石構造体を製造する工程を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、カップヨークに配置前にローターヨーク構造体の弓形ボンド磁石を着磁できるので、着磁ヨークのコイルターン数を十分確保でき、弓形磁石を磁気飽和することができる。
【0016】
本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体の製造方法は、前記ローターヨークを準備する工程並びに前記ローターヨーク構造体を準備する工程において、前記ローターヨークが内周面に軸方向に連続する複数の凹部を有する円環状であり、前記弓形ボンド磁石が円弧状の外周面と円弧状の内周面と前記外周面と内周面を繋ぐ円弧状の両側面を有し、前記弓形ボンド磁石の外周面と両側面の形状と前記凹部の形状とが略同一であり、前記弓形ボンド磁石が前記凹部に嵌合されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、カップヨークに配置前にローターヨーク構造体の弓形ボンド磁石を着磁できるので、着磁ヨークのコイルターン数を十分確保でき、弓形磁石を磁気飽和することができるとともに、弓形磁石とローターヨークの接合強度が高いアウターローター型モーター用磁石構造体を得ることができる
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、圧縮成形タイプのボンド磁石を用いたアウターローター型のモーター用磁石構造体で小型、高出力を得られ、任意の波形に着磁できるとともに磁石の固定が容易で磁石とヨークの接合強度が高い磁石構造体を得ることができ、さらに当該ボンド磁石を十分磁気飽和した磁石構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体の平面図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図2】(a)は本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体を構成するローターヨークの平面図であり、(b)は(a)のローターヨークに弓形磁石を嵌合した本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体を示す平面図である。
【
図3】本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体の要部を示す部分平面図である。
【
図4】本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体を構成するローターヨークの製造過程を示す側面図である。
【
図5】本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体の製造過程を示す軸断面図である。
【
図6】本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体の着磁の様子を示す図であり、(b)は軸断面図、(a)は(b)のB-B断面図である。
【
図7】(a)は本発明に用いる弓形磁石を示す斜視図であり、(b)は従来の弓形磁石を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0021】
図1(a)は本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体を示す平面図であり、
図1(b)は(a)のA-A断面図である。
図2(a)は本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体を構成するローターヨークの平面図であり、
図2(b)は(a)のローターヨークに弓形磁石を嵌合した本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体を示す平面図である。
図3は
図2に示す本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体の要部を示す部分平面図、
図4は本発明のアウターローター型モーター用磁石構造体を構成するローターヨークの製造過程を示す側面図である。
図7(a)は本発明に用いる弓形磁石(弓形ボンド磁石)を示す斜視図、(b)は従来の弓形磁石を示す斜視図である。
【0022】
1は弓形磁石(弓形ボンド磁石)であり、平面視で円弧状の外周面と円弧状の内周面と前記外周面と内周面を繋ぐ円弧状の両側面を有する弓形形状をしている。
本発明に用いる弓形ボンド磁石は希土類系急冷合金粉末を用い圧縮成形法により製造される。
希土類系急冷合金粉末は、所定の組成の合金の溶湯をメルトスピニング法やストリップキャスト法などのロール急冷法により急冷して作製した急冷合金箔帯を粉砕して製造したものなどが挙げられる。
好適な希土類系急冷合金粉末としては、例えば米国特許4802931号に記載されるNd-Fe-B系急冷合金粉末などが挙げられる。
【0023】
次に、熱硬化型エポキシ樹脂(成形用樹脂)と有機溶剤を混合した成形用樹脂溶液を準備し、希土類系急冷合金粉末と混合、混錬してコンパウンドを作製する。
混練に使用する成形用樹脂溶液は、混練される希土類系急冷合金粉末を100質量%と
したとき、0.5質量%以上5.0質量%以下のエポキシ樹脂と、3質量%以上7質量%以下の有機溶剤とを含有するのが好ましい。有機溶剤の含有量が3質量%未満であると、混練の際、樹脂が磁石粉末表面に行き渡るまでに有機溶剤が揮発してしまい、均一被覆ができない恐れがある。また、有機溶剤の割合が7質量%を超えると有機溶剤が揮発するまでに時間がかかり、生産性の面から好ましくない。
【0024】
希土類系ボンド磁石用コンパウンドを圧縮して圧縮成形体を作製する。 圧縮成形は平面視で弓形形状の金型キャビティにコンパウンドを投入しコンパウンドを上下方向から上下パンチにて圧縮し成形する。この圧縮成形工程では、圧縮成形体の密度が希土類系急冷合金粉末の真密度の70%以上90%以下の範囲になるように希土類系ボンド磁石用コンパウンドを圧縮するのが好ましい。このような圧縮成形体を得るためには、成形圧力は80 MPa以上2000 MPa以下の範囲であるのが好ましく、200 MPa以上1000 MPa以下の範囲であるのがより好ましい。成形圧力が80 MPa未満であると、高い磁石密度が得られにくい。また、2000 MPaを超えると、金型への負荷が大きくなりすぎるため好ましくない。
【0025】
こうして圧縮成形された圧縮成形体を熱処理することにより、成形用樹脂が硬化してなるボンド磁石成形体が得られる。熱処理条件は使用する樹脂の硬化条件に準ずればよいが、熱処理温度は、好ましくは150℃以上300℃以下であり、より好ましくは175℃以上250℃以下である。
【0026】
ボンド磁石成形体に対し、含浸用樹脂溶液を含浸させて含浸成形体を作製する。含浸の方法は、真空加圧法、真空法、加圧法、浸漬法、遠心法等を採用することができる。特に真空加圧含浸法が好ましい。これらの方法で含浸処理する際には、含浸用樹脂溶液及びボンド磁石成形体を加熱して含浸処理するのが好ましい。加熱することで含浸用樹脂溶液がボンド磁石成形体に含浸されやすくなる。
含浸に用いる樹脂はエポキシ樹脂を含むものが望ましい。含浸用樹脂は加熱硬化するものや主剤に対して硬化剤を添加して硬化する2液性のものなどを仕様に応じて適宜選択すればよい。 ボンド磁石成形体に対して、含浸用樹脂を含浸させたのち必要に応じて熱処理を行い、含浸樹脂を硬化させる。2液性のエポキシ樹脂を加熱することで硬化を促進しても良い。
【0027】
本発明に用いる弓形ボンド磁石円弧状の外周面と円弧状の内周面と前記外周面と内周面を繋ぐ円弧状の両側面を有することが望ましい。
円弧状両側面の円弧の半径は、弓形ボンド磁石の円弧の厚さの半分とするのが望ましく。またその角度は180度とするのが望ましい。
言い換えると、弓形ボンド磁石の円弧状両側面の円弧は弓形ボンド磁石の厚さと同じ直径の半円弧とするのが望ましい。
弓形ボンド磁石の円弧状両側面の形状は面取り部を有するのが望ましく、円弧とするのがさらに望ましい。
成形時点で円弧となっていれば、その後機械加工などにより加工する必要が無く、バレル研磨によるバリ取り等のみで弓形ボンド磁石1を使用可能である。
【0028】
弓形磁石の円弧状両側面を
図7(a)に示すように円弧にするのは圧縮成形されたボンド磁石によるのが望ましい。
圧縮成形によるボンド磁石は、成形時にほぼ寸法が確定しており、必要な形状を得ることができる。
圧縮成形した磁粉を焼結により固め磁石を得る粉末冶金法では、焼結による収縮で磁石の寸法及び形状が大きく変わり、焼結後に研削加工が必要となり、工数の増加を招く。
【0029】
2はローターヨークであり、円環状をなしており、内周面側に軸方向に連続する複数の凹部19を有する。凹部19は弓形ボンド磁石1の外周面に倣う円弧形状をしている長円弧部15と、その長円弧部15の両端部には弓形ボンド磁石1の円弧状両側面に倣う短円弧部5と短円弧部5を有し、両短円弧部5からローターヨークの径方向に平行な直線部6とからなる。
隣り合う凹部19で突極部18を形成している。
ローターヨーク2は、例えば、凹部19を有する鋼板を打ち抜き加工したもの(ローターヨーク積層鋼板8)を
図4のごとく厚さ方向に積層して製造される。渦電流対策の為である。
【0030】
ローターヨーク2への弓形ボンド磁石1の接合について説明する。
ローターヨーク2の長円弧部15は、弓形ボンド磁石1の円弧状の外周面に倣うような角度と半径を有する円弧形状をなしており、弓形ボンド磁石1を挿入配置可能となっている。
長円弧部15の両端部には弓形ボンド磁石1の円弧状両側面に倣う短円弧部5が形成されている。凹部の半径は弓形ボンド磁石の円弧状両側面16の円弧と同じとなっている。
両短円弧部5の角度は、弓形ボンド磁石の円弧状両側面16の円弧の角度より若干小さく形成してある。
両短円弧部5は円環状のローターヨーク2の中心軸方面に向かって、直線部6と連接される。
直線部6は弓形ボンド磁石1が凹部19に挿入配置された際に、弓形ボンド磁石1の円弧状両側面16に覆いかぶさるように配置されている。
このように、弓形ボンド磁石1の外周面と両側面の形状と、ローターヨーク2の凹部19(長円弧部15と両短円弧部5)の形状とは略同一であり、弓形ボンド磁石1が凹部19に嵌合される。
【0031】
図7(b)に示す従来の弓形磁石7では、円弧状の外周面と円弧状の内周面と前記外周面と内周面を繋ぐ両側面17の面取りが無いかあるいは極めて小さいため、ローターヨークへの嵌合は困難である。
なお、弓形ボンド磁石1はローターヨーク2に接着等の公知の接合方法にて接合しても良い。
【0032】
凹部19は必要とされる弓形ボンド磁石1の個数が挿入配置可能に等配されている。
隣り合う凹部19の円弧の両端部には短円弧部5があり、更に直線部6がローターヨーク2の径方向に平行な方向に(中心軸方向に向かって)突出し、突極部18を形成している。
突極部18はリラクタンストルクを発生しアウターローター型モーターの特性向上に貢献している。
【0033】
アウターローター型モーター用磁石構造体11はシャフト4を有するカップヨーク3の内周面側にローターヨーク構造体9が配置された構造をしている。
【0034】
アウターローター型モーター用磁石構造体11の製造方法について
図5を用いて詳述する。
弓形ボンド磁石1をローターヨーク2の凹部19に挿入配置する(
図5(a))。その際凹部19及び弓形ボンド磁石1の外周面側に接着剤を塗布しておいても良い。あるいは、ローターヨーク2の凹部19に弓形ボンド磁石1を挿入配置した後、得られたアウターローター型モーター用磁石構造体9に樹脂含浸を施しても良い(
図5(b))。
アウターローター型モーター用磁石構造体9の内周面側に着磁ヨーク10を挿入し着磁を行う(
図5(c))。
着磁ヨーク10をアウターローター型モーター用磁石構造体9に挿入した際の断面図を
図6(b)に、
図6(b)のB-B断面図を
図6(a)に示す。なお
図6(a)においては弓形ボンド磁石1とローターヨーク2及びコイル14の位置関係を明確にするため着磁用鋼板積層体13は記載していない。
着磁ヨーク10は公知の方法で製作される。着磁ヨーク10は積層鋼板で作られた着磁用鋼板積層体13にコイル14が巻きまわされた構造をしている。コイル14には導線12によって着磁用の電流が供給される。
【0035】
図6(b)は弓形ボンド磁石1の着磁の様子を示す模式図である。4はコイルであり、周方向に等配された弓形ボンド磁石1の間に配置される。コイルに示す黒丸印は電流が紙面下側から上に向かって、バツ印は紙面上側から下側に向かって流れる電流を示している。
このような着磁方法をとることによって、弓形ボンド磁石1の着磁は、弓形ボンド磁石1の内周面側方向の一点に向かって、あるいは内周面側の一点から外周面側に向かって磁化が集中するように着磁される。
このように着磁されたアウターローター型モーター用磁石構造体9の着磁波形は正弦波となり、アウターローター型モーターとした際もモーター効率が良好で音の静かなモーターとすることができる。
【0036】
着磁されたアウターローター型モーター用磁石構造体9をカップヨーク3に挿入配置し(
図5(d))、アウターローター型モーター用磁石構造体を作製する(
図5(e))。
本発明に用いるアウターローター型モーター用磁石構造体9を磁気飽和するまで着磁するためには、着磁に用いるコイルの巻き数を確保する必要があるが、アウターローター型モーター用磁石構造体9をカップヨーク3に配置した後では、着磁ヨークをアウターローター型モーター用磁石構造体に挿入することが困難となる。
アウターローター型モーター用磁石構造体9の状態で着磁することにより、着磁コイル10のコイル14の巻き数を必要十分に確保することができる。弓形ボンド磁石1を磁気飽和するまで着磁することが可能となる。
【0037】
開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0038】
1 本発明の弓形ボンド磁石
2 ローターヨーク
3 カップヨーク
4 シャフト
5 短円弧部
6 直線部
7 鋭角な角部を有する従来の弓形磁石
8 ローターヨーク用積層鋼板
9 ローターヨーク構造体
10 着磁ヨーク
11 アウターローター型モーター用磁石構造体12 導線
13 着磁用鋼板積層体
14 コイル
15 凹部の長円弧部16 円弧状の両側面
17 従来の弓型磁石の側面
18 ローターヨークの突極部
19 凹部