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特許7491183検査装置、画像形成システム、検査方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】検査装置、画像形成システム、検査方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020177119
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068447
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】納富 真也
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-178306(JP,A)
【文献】特開2016-177669(JP,A)
【文献】特開2016-142740(JP,A)
【文献】特開昭59-128418(JP,A)
【文献】特開2004-195680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0001666(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/892
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データから生成された第一の画像データと、前記印刷データが印刷されたシート状部材を読取部が読み取って生成した第二の画像データとの第一の差分画像を生成する差分画像生成部、を有し、
前記差分画像生成部は、前記印刷データと同じ印刷データが印刷されたシート状部材を読取部が読み取って生成した第三の画像データと前記第一の画像データとの第二の差分画像を生成し、
前記第一の差分画像と前記第二の差分画像とを比較した結果を出力する検査部、
を有することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記差分画像生成部が生成した前記第一の差分画像の識別情報を採番し、前記第一の差分画像に前記識別情報を対応付ける差分画像管理部を有し、
前記差分画像管理部は前記第一の差分画像の識別情報を前記印刷データの送信元に送信し、
前記検査部は、前記印刷データの送信元から通知された前記第一の差分画像の識別情報に対応付けられている前記第一の差分画像と前記第二の差分画像とを比較することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記送信元が前記第一の差分画像の識別情報を有していない場合、前記差分画像管理部が前記第一の差分画像を登録する旨を前記送信元から受信し、
前記差分画像管理部は、前記第一の差分画像を登録する旨を前記送信元から受信した場合に、前記第一の差分画像の識別情報を採番し、前記第一の差分画像に前記識別情報を対応付けることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記差分画像管理部は、前記第一の差分画像を登録する旨を前記送信元から受信した場合に、前記第一の差分画像の識別情報を採番し、前記第一の差分画像に前記識別情報を対応付け、
前記登録する旨を前記送信元が前記検査装置に送信するタイミングは、ユーザーにより予め設定されていることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記タイミングは、
ユーザーにより前記第一の差分画像を登録する旨が設定された場合、又は、
印刷部が印刷データを印刷した枚数が予め設定された印刷枚数に達した場合、
の少なくとも1つ以上であることを特徴とする請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記検査部は、前記第一の差分画像と前記第二の差分画像との画素値の差を画素ごとに求め、画素値の差と閾値を比較して検査結果を出力し、
前記閾値は、前記読取部が読み取る前記シート状部材に形成された印刷データの種類に応じてユーザーが設定していることを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検査部が、前記第一の差分画像と前記第二の差分画像が一致すると判断した場合であって、前記差分画像管理部が前記第一の差分画像を登録する旨を前記送信元から受信した場合、
前記差分画像管理部は前記第二の差分画像を新規の第一の差分画像として識別情報を採番し、前記新規の第一の差分画像に前記識別情報を対応付けることを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
印刷データを生成する情報処理装置、前記印刷データを印刷するプリンタ、及び、前記プリンタが印刷した印刷物を検査する検査装置を有する画像形成システムであって、
印刷データから生成された第一の画像データと、前記印刷データが印刷されたシート状部材を読取部が読み取って生成した第二の画像データとの第一の差分画像を生成する差分画像生成部、を有し、
前記差分画像生成部は、前記印刷データと同じ印刷データが印刷されたシート状部材を読取部が読み取って生成した第三の画像データと前記第一の画像データとの第二の差分画像を生成し、
前記第一の差分画像と前記第二の差分画像とを比較した結果を出力する検査部、
を有することを特徴とする画像形成システム。
【請求項9】
差分画像生成部が、印刷データから生成された第一の画像データと、前記印刷データが印刷されたシート状部材を読取部が読み取って生成した第二の画像データとの第一の差分画像を生成するステップと、
前記差分画像生成部が、前記印刷データと同じ印刷データが印刷されたシート状部材を読取部が読み取って生成した第三の画像データと前記第一の画像データとの第二の差分画像を生成するステップと、
検査部が、前記第一の差分画像と前記第二の差分画像とを比較した結果を出力するステップと、を有することを特徴とする検査方法。
【請求項10】
検査装置を、
印刷データから生成された第一の画像データと、前記印刷データが印刷されたシート状部材を読取部が読み取って生成した第二の画像データとの第一の差分画像を生成する差分画像生成部として機能させ、
前記差分画像生成部は、前記印刷データと同じ印刷データが印刷されたシート状部材を読取部が読み取って生成した第三の画像データと前記第一の画像データとの第二の差分画像を生成し、
前記第一の差分画像と前記第二の差分画像とを比較した結果を出力する検査部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、画像形成システム、検査方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス内で使用される印刷物と異なり、プロダクションプリンティング(商用印刷)では印刷物が商品となるため印刷物に一定の品質が要求される。このため、プロダクションプリンティングにおいては、プリンタが出力した印刷物について画質の判断に基づく良品又は不良品判別の検査を行う要求がある。
【0003】
この要求に対し、特許文献1には、印刷物の品質検査の精度を向上させる目的で、印刷物の元画像から生成したマスター画像と、印刷物を光学的に読み取って生成した読取画像を比較して品質を検査する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術は、読取画像の濃度ムラ等を、品質異常として検出する場合があるという問題がある。読取装置は比較的に安定して読取画像を生成できる。しかし、読み取り精度などが要因となって、印刷物としては均一な画像が濃度ムラを有するように読取装置が読み取る場合がある。読取装置による濃度ムラは印刷物の画質によるものではない。したがって、読取装置により生じた濃度ムラを検査装置が品質異常と判断することは妥当でない場合がある。なお、濃度ムラ以外にも読取装置により白点や黒点などの画質異常が生じる場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、読取画像の濃度ムラ等を、品質異常として検出することを抑制する検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、印刷データから生成された第一の画像データと、前記印刷データが印刷されたシート状部材を読取部が読み取って生成した第二の画像データとの第一の差分画像を生成する差分画像生成部、を有し、前記差分画像生成部は、前記印刷データと同じ印刷データが印刷されたシート状部材を読取部が読み取って生成した第三の画像データと前記第一の画像データとの第二の差分画像を生成し、前記第一の差分画像と前記第二の差分画像とを比較した結果を出力する検査部、を有することを特徴とする検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
読取画像の濃度ムラ等を、品質異常として検出することを抑制する検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態における検査装置の検査方法の概略を説明する図である。
図2】画像形成システムの構成例を示す図である。
図3】情報処理システムの構成を概略的に示すブロック図の一例である。
図4】情報処理システムにおける処理動作の流れを示す図の一例である。
図5】検査装置、DFE、クライアントPC、又は、サーバの制御部のハードウェア構成を示すブロック図の一例である。
図6】DFE、プリンタ、及び、検査装置が有する機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。
図7】印刷制御部が管理するマスター差分画像IDテーブルの一例を示す図である。
図8】マスター差分画像管理テーブルの一例を示す図である。
図9】クライアントPCが表示するマスター差分画像の登録タイミングの設定画面の一例を示す図である。
図10】クライアントPCが表示する閾値設定画面の一例を示す図である。
図11】マスター画像、読取画像、マスター差分画像、及び、印刷差分画像の関係を説明する図の一例である。
図12】検査装置がマスター差分画像を登録する手順を説明するフローチャート図の一例である。
図13】マスター差分画像が登録済みの場合、検査装置が印刷差分画像生成して、印刷物を検査するフローチャート図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、検査装置と検査装置が行う検査方法について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本実施形態における検査装置の検査方法の概略を説明する図である。
【0011】
(1) 検査装置は、予め、マスター画像301(第一の画像データの一例)と読取装置が生成した読取画像302(第二の画像データの一例)の差分情報をマスター差分画像303(第一の差分画像の一例)として保持しておく。マスター差分画像303は読取画像の濃度ムラを含んでいるため、マスター差分画像を比較対象とすることで、検査装置が濃度ムラを品質異常と誤判断することを抑制できる。
【0012】
(2) 検査対象となる印刷物の印刷実行時、検査装置はマスター画像301と読取装置が生成した読取画像304(第三の画像データの一例)との印刷差分画像305(第二の差分画像の一例)を生成する。
【0013】
(3) 検査装置は、マスター差分画像303と印刷差分画像305を比較する。
【0014】
マスター差分画像303は読取画像の濃度ムラ等を含んだ値になっているため、同じように濃度ムラを含む印刷差分画像305と比較することで、検査装置が、読取画像の濃度ムラ等が品質異常であると判断することを抑制できる。
【0015】
<用語について>
マスター画像は、印刷対象の印刷データ(画像データ)又は印刷対象の印刷データに何らかの画像処理が行われた画像データである。
【0016】
マスター差分画像は、マスター画像と、印刷データが印刷されたシート状部材を読取装置が読み取って生成した画像データとの差分の画像である。差分とは画素又は画素ブロックごとの差異が画素又は画素ブロックごとに設定された画像データである。
【0017】
読取画像とは印刷データが印刷されたシート状部材を読取装置が読み取って生成した画像データである。
【0018】
印刷差分画像は、印刷物検査時に、マスター画像と、印刷データが印刷されたシート状部材を読取装置が読み取って生成した画像データとの差分の画像である。
【0019】
比較した結果の出力とは、どのくらいの差異があるかを示す情報を出力することをいう。出力には、表示、外部への送信、及び、印刷などがある。
【0020】
検査とは、基準に照らして適不適、異常、又は、不正の有無などを調べることをいう。画像データの検査とは印刷物の画質が基準を満たすか否かを調べることである。
【0021】
<システム構成例>
図2は、画像形成システム100の構成例を示す図である。画像形成システム100は、DFE104(Digital Front End)104、プリンタ101、検査装置102、及び、スタッカ103を備えている。プリンタ101は、DFE104と検査装置102とに対してそれぞれ専用のインタフェースで接続されている。
【0022】
DFE104は、受信した印刷ジョブに基づいて印刷出力するべき印刷データ、具体的には、出力対象画像であるビットマップデータを生成し、生成したビットマップデータをプリンタ101に送信する画像処理装置である。
【0023】
プリンタ101は、DFE104(送信元の一例)から受信したビットマップデータに基づいてプリントエンジン105を制御して画像形成出力を実行させる。また、プリンタ101は、DFE104から受信したビットマップデータを、プリントエンジン105による画像形成出力の結果を検査装置102が検査する際に参照するためのマスター画像の基となる情報として検査装置102に送信する。DFE104がビットマップデータを検査装置102に送信してもよい。
【0024】
なお、プリンタ101は、ページを識別する情報(ページIDやページ番号)を、印刷物の各ページに印刷してもよい。また、プリンタ101は、ページに余白(裁断する箇所)を設けることが設定されている場合等には、ページを識別する情報を自動的に余白に印刷してもよい。
【0025】
プリンタ101は、ビットマップデータに基づいてシート状部材である印刷用紙に対して画像形成出力を実行する画像形成装置である。印刷装置、MFP(Multifunction Peripheral)、又は、複合機と呼ばれる場合もある。なお、シート状部材は、上記した印刷用紙の他、フィルム、プラスチック等のシート状の材料で、画像形成出力の対象物となるものであれば採用可能である。
【0026】
プリントエンジン105は、無端状移動手段である搬送ベルト111に沿って各色の感光体ドラム112Y、112M、112C、112K(以降、総じて感光体ドラム112とする)が並べられた構成を備えるものであり、所謂タンデムタイプといわれるものである。すなわち、給紙トレイ113から給紙される用紙(シート状部材の一例)に転写するための中間転写画像が形成される中間転写ベルトである搬送ベルト111に沿って、この搬送ベルト111の搬送方向の上流側から順に、感光体ドラム112Y、112M、112C、112Kが配列されている。
【0027】
各色の感光体ドラム112の表面においてトナーにより現像されたK(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のトナー像が、搬送ベルト111に重ね合わせられて転写されることによりフルカラーの画像が形成される。そのようにして搬送ベルト111上に形成されたフルカラー画像は、図中に破線で示す用紙の搬送経路と最も接近する位置において、転写ローラ114の機能により、経路上を搬送されてきた用紙の紙面上に転写される。
【0028】
なお、本実施形態において、プリンタ101のプリントエンジン105は電子写真方式であることを前提として説明したが、これに限るものではなく、インクジェット方式などの他の方式のプリンタ101であってもよいことはいうまでもない。
【0029】
紙面上に画像が形成された用紙は更に搬送され、定着ローラ115にて画像を定着された後、読取装置131に搬送される。
【0030】
読取装置131は、定着ローラ115を経由して搬送されてきた用紙のそれぞれの面を読み取り、読取画像を生成する。
【0031】
検査装置102は、読取装置131により読み取った読取画像を取得する。また、検査装置102は、DFE104から直接入力された、あるいは、DFE104からプリンタ101を経由して入力された、ビットマップデータに基づいて、基準データの一例である、マスター画像を生成する。なお、検査装置102は、DFE104から直接、あるいは、DFE104からプリンタ101を経由して入力されたビットマップデータに基づいてシート状部材上に形成した画像を、読取装置131によって読み取った読取画像からマスター画像を生成してもよい。そして、検査装置102は、プリンタ101が出力した用紙を読取装置131で読み取って生成した読取画像を上記生成したマスター画像と比較することにより、出力結果の検査(シート状部材である用紙に印刷された画像の検査)を行う。出力結果の検査方法は後述する。
【0032】
検査装置102は、検査によって出力結果の用紙の画像内に欠陥(異常)があると判断した場合、欠陥(異常)として判断された欠陥ページを含む、検査結果情報である欠陥検査情報をDFE104(プリンタ101でもよい)に通知する。これにより、DFE104がプリンタ101に欠陥ページの再印刷制御を要求する。なお、プリンタ101によって欠陥ページの再印刷制御を実行せず、検査装置102は印刷を中止する制御を行ってもよい。
【0033】
また、DFE104は、検査結果情報である欠陥検査情報を、サーバ202に送信し、サーバ202が検査結果情報を記憶する。なお、DFE104又は検査装置102が内部にサーバ備え、当該サーバに情報を記憶してデータベースを形成してもよい。
【0034】
検査装置102で検査された用紙は、片面印刷の場合、そのままスタッカ103に排紙される。
【0035】
一方、両面印刷の場合、検査装置102で検査された用紙は、反転パス116に搬送されて反転された上で再度転写ローラ114の転写位置に搬送される。再度転写ローラ114の転写位置に搬送された用紙は、片面印刷がなされた用紙の反対側にトナー像を転写・定着される。その後、検査装置102で検査された両面印刷用紙は、スタッカ103に排紙される。
【0036】
スタッカ103は、プリンタ101から排出された用紙を、トレイ141にスタックする。
【0037】
図3は、情報処理システム200の構成を概略的に示すブロック図である。図3に示すように、画像形成システム100を含む情報処理システム200は、画像形成システム100に加えて、クライアントPC201と、サーバ202とを備えている。
【0038】
画像形成システム100の各部(DFE104、プリンタ101、検査装置102)と、クライアントPC201と、サーバ202とは、それぞれネットワーク203に接続されている。ネットワーク203は、例えばLAN(Local Area Network)、及び、インターネットなどを含む。
【0039】
クライアントPC201は、通信機能とコンテンツの出力機能とを有する情報処理装置である。クライアントPC201は、各種の端末装置、例えばPC(Personal Computer)、タブレット端末などである。クライアントPC201は、ネットワーク203経由でDFE104への印刷ジョブの送信を行う。また、クライアントPC201は、検査装置102の検査結果を表示する。クライアントPC201は、Webブラウザを備えている。クライアントPC201は、サーバ202にネットワーク203経由でアクセスする。クライアントPC201は、サーバ202に蓄積・記憶された検査結果情報(欠陥検査情報)を、表示画面情報(例えばHTMLファイル)として取得して表示すると共に、Webブラウザ上で表示画面へのユーザーの操作を受け付ける。なお、DFE104は、クライアントPC201から印刷ジョブを受け付ける他、ネットワーク203経由で、プリンタ101、検査装置102から印刷ジョブを受け付けることもできる。
【0040】
サーバ202は、ネットワーク203経由でDFE104から送られてくる欠陥検査情報を受信する。サーバ202は、受信した欠陥検査情報に基づいてDB(データベース)を生成する。サーバ202は、生成したDBを記憶する。また、サーバ202は、ネットワーク203経由でクライアントPC201とデータの送受信を行う。なお、サーバ202は、検査装置102の内部に備えてもよい。
【0041】
なお、DFE104及び検査装置102のいずれか又は両方がインターネット上に存在してもよい。すなわち、DFE104及び検査装置102のいずれか又は両方がクラウドコンピューティングに対応していてもよい。クラウドコンピューティングとは、特定ハードウェア資源が意識されずにネットワーク上のリソースが利用される利用形態をいう。
【0042】
<全体的な流れ>
図4は情報処理システム200における処理動作の流れを示す図である。図4に示すように、画像形成システム100を含む情報処理システム200は、プリンタ101における印刷処理(ステップS1)と、検査装置102における検査処理(ステップS2)と、サーバ202におけるDB生成処理(ステップS3)と、サーバ202におけるDB保存処理(ステップS4)と、サーバ202におけるUI表示処理(ステップS5)と、を実行する。本実施形態では主にステップS2について説明する。
【0043】
<ハードウェア構成例>
次に、本実施形態に係る、検査装置102、DFE104、クライアントPC201、又は、サーバ202の各制御部を構成するハードウェアについて説明する。
【0044】
図5は、検査装置102、DFE104、クライアントPC201、又は、サーバ202の制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。図5は、検査装置102、DFE104、クライアントPC201、又は、サーバ202の制御部のハードウェア構成を示すが、プリンタ101の制御部についてもハードウェア構成は同様である。
【0045】
図5に示すように、本実施形態に係る検査装置102、DFE104、クライアントPC201、又は、サーバ202の制御部は、一般的なPC(Personal Computer)やサーバ等と同様の構成を有する。即ち、制御部は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40及びI/F50がバス90を介して接続されている。また、I/F50にはLCD(Liquid Crystal Display)60、操作部70及び専用デバイス80が接続されている。
【0046】
CPU10は演算手段であり、検査装置102、DFE104、クライアントPC201、又は、サーバ202全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム、Webブラウザ等が格納されている。
【0047】
I/F50は、バス90と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD60は、ユーザーが視覚的に情報を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部70は、キーボードやマウス等、ユーザーが検査装置102、DFE104、クライアントPC201、又は、サーバ202に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0048】
専用デバイス80は、プリンタ101、検査装置102、DFE104、クライアントPC201、サーバ202において、専用の機能を実現するためのハードウェアであり、プリンタ101の場合は、画像形成出力対象の用紙を搬送する搬送機構や、紙面上に画像形成出力を実行するプロッタ装置である。また、検査装置102の場合は、高速に画像処理を行うための専用の演算装置である。このような演算装置は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成される。また、紙面上に出力された画像を読み取る読取装置131も、専用デバイス80によって実現される。
【0049】
このようなハードウェア構成において、ROM30に格納されているプログラムや、HDD40若しくは光学ディスク等の記録媒体からRAM20に読み出されたプログラムにしたがってCPU10が演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係るプリンタ101、検査装置102、DFE104、クライアントPC201、サーバ202の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0050】
<機能について>
次に、図6を参照して、DFE104、プリンタ101、及び、検査装置102が有する機能について説明する。図6は、DFE104、プリンタ101、及び、検査装置102が有する機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。
【0051】
<<DFE>>
DFE104は通信部21、RIP部22及び印刷制御部23を有している。DFE104が有するこれらの機能は、HDD40又はROM30からRAM20に転送されたプログラムをCPU10が実行して、実現される機能又は手段である。
【0052】
通信部21は、クライアントPC201と通信すると共に、Webブラウザが表示する画面の画面情報を生成する。画面情報は、HTML、XML、スクリプト言語、及びCSS(cascading style sheet)等で記述されたプログラムであり、主にHTMLによりWebページの構造が特定され、スクリプト言語によりWebページの動作が規定され、CSSによりWebページのスタイルが特定される。また、クライアント側の画面情報とサーバ側のアプリやデータベースが連携して実現するアプリをWebアプリという。また、通信部は、クライアントPC201から印刷ジョブと実行要求を受信する。
【0053】
RIP部22は、PDL(Printer Description Language)で記述された印刷データ(印刷ジョブに含まれる)を解析して実行し、ビットマップデータ(ラスターデータ)を生成する。なお、RIPはRaster Image Processerの略である。
【0054】
印刷制御部23は、RIP部22が生成したビットマップデータと印刷設定(カラー/モノクロ、片面/両面、用紙サイズ、用紙種類、部数、ステイプル設定等)をプリンタ101に送信する。印刷制御部23は、プリンタ101から印刷ジョブの実行状況(印刷したページ番号、登録されているジョブ数、エラー発生等)などを受信し、通信部21を介してクライアントPC201に提供する。
【0055】
印刷制御部23は、印刷対象のRIP画像データ(ビットマップデータ)、及び、マスター差分画像登録要否(登録要、登録不要)を検査装置102に送信する。印刷制御部23は、検査装置102から送信されたマスター差分画像IDを、マスター差分画像の生成に際し実行された印刷ジョブと対応付けてマスター差分画像IDテーブル24aに保存する。
【0056】
また、印刷制御部23が印刷ジョブに対応するマスター差分画像IDを検査装置102から受信した後、この印刷ジョブを実行する場合には、マスター差分画像IDを検査装置102に送信する。マスター差分画像IDが印刷物検査の要求となる。
【0057】
DFE104はHDD40、ROM30又はRAM20等により実現される記憶部24を有している。この記憶部24はマスター差分画像IDテーブル24aを有している。
【0058】
図7は、印刷制御部23が管理するマスター差分画像IDテーブル24aの一例である。マスター差分画像IDテーブル24aは印刷ジョブとマスター差分画像IDとを対応付ける。
・印刷ジョブ…印刷ジョブはプリンタ101に要求された印刷データ(例えば上記のビットマップデータ)と印刷設定である。印刷ジョブは複数のページの印刷要求を含む場合がある。この場合、ページごとにマスター差分画像IDが対応付けられていてもよい。
・マスター差分画像ID…マスター差分画像IDはマスター差分画像を識別する識別情報である。マスター差分画像IDは検査装置102により付与される。差分画像管理部35が付与してもよい。
【0059】
図7に示すように、マスター差分画像IDは印刷ジョブごとに登録される。印刷物検査時、検査部36は1つの印刷ジョブの中のページごとにマスター差分画像を切り替えて、印刷差分画像との比較を行う。読取画像取得部33は比較画像のページの区切りを検出できるので、検査部36はページ単位で検査できる。なお、ページごとにマスター差分画像IDが採番されてもよい。
【0060】
<<プリンタ>>
プリンタ101は印刷部25と読取部26を有している。印刷部25は、図2に示したプリンタ101の各構成要素が協働して実現される機能又は手段である。
【0061】
印刷部25は、用紙などのシート状部材に、DFE104から送信されたビットマップデータをインクジェット方式や電子写真方式で形成する。これにより、印刷物が得られる。
【0062】
読取部26は、読取装置131を制御し、印刷物を光学的に読み取って読取画像を生成する。読取画像は例えばカラー又はモノクロのビットマップデータである。
【0063】
<<クライアントPC>>
クライアントPC201は、通信部11、表示制御部12、及び、操作受付部13を有している。クライアントPC201が有するこれらの機能は、Webブラウザが画面情報に含まれるJavaScript(登録商標)を実行して、DFE104が有する通信部21と連携することで実現される機能又は手段である。クライアントPC201ではWebブラウザでなくネイティブアプリが動作してもよい。
【0064】
通信部11は、主にDFE104と通信し、設定画面等の画面情報を受信し、また、ユーザーが変更した設定値をDFE104に送信する。
【0065】
表示制御部12は、画面情報を解析してLCD60に後述する設定画面を表示する。操作受付部13は、設定画面に対するユーザーの設定値の変更や設定値の更新要求を受け付ける。
【0066】
なお、ユーザーがDFE104を直接、操作する場合はクライアントPC201の機能をDFE104が有する。
【0067】
<<検査装置>>
検査装置102は、RIP画像取得部31、マスター画像生成部32、読取画像取得部33、差分画像生成部34、差分画像管理部35、及び、検査部36を有している。検査装置102が有するこれらの機能は、図5に示したHDD40又はROM30からRAM20に転送されたプログラムをCPU10が実行して、実現される機能又は手段である。
【0068】
また、検査装置102は、図5に示したHDD40、ROM30、及び、RAM20の1つ以上で実現される、記憶部37を有している。記憶部37はインターネット上に存在してもよい。
【0069】
RIP画像取得部31は、DFE104の印刷制御部23からRIP画像データ(ビットマップデータ)、及び、マスター差分画像登録要否(登録要、登録不要)を受け取る。
・登録要…登録要は、印刷制御部23が印刷ジョブに対し新規にマスター差分画像を登録したい場合に送信される。ある印刷ジョブに対しすでにマスター差分画像が登録されていても、印刷制御部23が該印刷ジョブに対し新規にマスター差分画像を登録する場合がある。
・登録不要…登録不要は、印刷ジョブにすでにマスター差分画像が登録されている場合に送信される。印刷物検査の実行時には主に登録不要が送信されるが、検査装置102が印刷物検査を行い、マスター差分画像を登録する場合もある(印刷物検査の実行時に登録要が送信される場合もある)。
【0070】
印刷物検査の実行時、RIP画像取得部31は、DFE104の印刷制御部23からマスター差分画像IDを受け取る。マスター差分画像管理テーブル37aにおいてマスター差分画像IDに対応付けられているマスター差分画像を、差分画像管理部35が特定するためである。
【0071】
RIP画像取得部31はRIP画像データをマスター画像生成部32へ渡し、マスター差分画像ID(印刷制御部23から受け取った場合に限る)、及び、マスター差分画像登録要否を差分画像管理部35へ渡す。
【0072】
マスター画像生成部32は、RIP画像取得部31から受け取ったRIP画像データからマスター画像を生成し、記憶部37に保存する。RIP画像データは、RGBのビットマップデータであり、読取画像もRGBのビットマップデータである。このため、マスター画像生成部32は、RIP画像データをそのままマスター画像として扱うことができる。あるいは、マスター画像生成部32はRIP画像データの解像度を読取画像に一致させる画像処理、及び、RIP画像データと読取画像の明るさを一致させる輝度補正等を行ってもよい。
【0073】
読取画像取得部33はプリンタ101の読取部26が印刷物を読み取って生成した読取画像をプリンタ101から取得し、差分画像生成部34へ渡す。
【0074】
差分画像生成部34は、マスター差分画像の新規登録時、記憶部37に記憶されたマスター画像と読取画像からマスター差分画像を生成して記憶部37に格納する。マスター差分画像の新規登録時には差分画像をマスター差分画像という。差分画像生成部34は、印刷物検査の実行時、マスター画像と読取画像から印刷差分画像を生成して記憶部37に保存する。印刷物検査の実行時には差分画像を印刷差分画像という。マスター差分画像と印刷差分画像の生成方法は同じでよい。差分画像生成部34は、例えば、マスター画像と読取画像を画素ごとに比較し、画素値の差をマスター差分画像又は印刷差分画像とする。
【0075】
差分画像生成部34はマスター差分画像又は印刷差分画像の格納先アドレスを差分画像管理部35へ通知する。
【0076】
差分画像管理部35は、マスター差分画像登録要否として「登録要」を受信している場合、重複しないマスター差分画像IDを採番する。差分画像管理部35は格納先アドレスとマスター差分画像IDを対応付けてマスター差分画像管理テーブル37aに登録する(図8参照)。差分画像管理部35は、マスター差分画像管理テーブル37aに登録したマスター差分画像IDをDFE104の印刷制御部23に通知する。
【0077】
また、印刷物検査の実行時には、差分画像管理部35は、印刷開始時に指定されたマスター差分画像IDでマスター差分画像管理テーブル37aを検索する。差分画像管理部35は、検索に適合する(検査に使用する)マスター差分画像の格納先アドレスをマスター差分画像管理テーブル37aから取得し、該アドレスからマスター差分画像を読み出して検査部36に渡す。また、印刷開始時にマスター差分画像登録要否として「登録要」を受信している場合、差分画像管理部35は、印刷終了後に、マスター差分画像IDを採番する。差分画像管理部35は印刷差分画像を新たなマスター差分画像として、印刷差分画像の格納先アドレスとマスター差分画像IDと対応付けてマスター差分画像管理テーブル37aに登録する。差分画像管理部35は、マスター差分画像管理テーブル37aに登録したマスター差分画像IDをDFE104の印刷制御部23に通知する。
【0078】
検査部36は、差分画像管理部35から受け取ったマスター差分画像と、記憶部37から取得した印刷差分画像とを比較して、差異が品質基準を満たすか否かを判断する。検査部36は、例えば、画素ごとに画素値の差異を算出し、差異の絶対値が閾値以上か否かを画素ごとに判断する。検査部36は、検査結果(OK,NG)をDFE104の印刷制御部23に返す。検査結果がNGの場合、検査部36は印刷ジョブIDとページ番号をDFE104に通知する。検査部36はサーバ202に印刷ジョブIDとページ番号をDFE104に通知してもよい。
【0079】
図8は、マスター差分画像管理テーブル37aの一例を示す。マスター差分画像管理テーブル37aはマスター差分画像IDと格納先アドレスを対応付けるテーブルである。
・マスター差分画像ID…マスター差分画像IDはマスター差分画像を識別する識別情報である。マスター差分画像IDは検査装置102により付与される。差分画像管理部35が付与してもよい。
・格納先アドレス…格納先アドレスはマスター差分画像IDで識別されるマスター画像の保存先のアドレスである。格納先アドレスはフォルダ名又はファイルパスでもよいし、URLでもよい。
【0080】
<マスター差分画像登録のタイミング>
マスター差分画像登録のタイミングについて補足する。
【0081】
(i) 印刷部25が初めて印刷する印刷ジョブの場合、マスター差分画像がまだ生成されていない。このため、印刷制御部23がマスター差分画像登録要否として"登録要"をRIP画像取得部31に渡す。RIP画像取得部31はマスター差分画像登録要否として"登録要"を差分画像管理部35に送信するので、差分画像管理部35がマスター差分画像を登録できる。こうすることで、テスト印刷など、印刷部25が初めて印刷ジョブを実行する場合にマスター差分画像を検査装置102が登録できる。なお、印刷部25が初めて印刷ジョブを印刷するかどうかは、図7のマスター差分画像IDテーブル24aに印刷ジョブIDが登録されているか否かにより判断される。
【0082】
(ii) マスター差分画像生成の要又は不要をユーザーがクライアントPC201からDFE104に設定できる。これにより、テスト印刷時や印刷物検査時に、強制的に(マスター差分画像IDテーブル24aに印刷ジョブIDが登録されていても)、ユーザーがマスター差分画像を新規に登録できる。なお、マスター差分画像生成の要又は不要の設定の画面例を図9に示す。
【0083】
(iii) 印刷部25が印刷する枚数が予め設定された印刷枚数に達した場合、印刷制御部23がマスター差分画像登録要否として"登録要"をRIP画像取得部31に送信することができる。したがって、印刷物に経時変化が生じる可能性がある場合、検査装置102が新規にマスター差分画像を登録できる。なお、マスター差分画像生成の判断に使用される印刷枚数の設定画面例を図9に示す。
【0084】
<<マスター差分画像の登録タイミングの設定画面>>
図9は、マスター差分画像の登録タイミングをユーザーが設定する設定画面401の一例である。マスター差分画像の登録タイミングの設定画面401はクライアントPC201が表示する。マスター差分画像の登録タイミングの設定画面401は、登録要のラジオボタン402、登録不要のラジオボタン402、及び、枚数設定欄404を有している。
【0085】
登録要のラジオボタン402、及び、登録不要のラジオボタン403は、上記(ii)のマスター差分画像生成の要又は不要をユーザーが設定するためのボタンである。
【0086】
枚数設定欄404は、上記(iii)で説明した、印刷部25が印刷する枚数と比較される印刷枚数をユーザーが設定するための欄である。
【0087】
クライアントPC201はこれら設定値をDFE104に送信する。DFE104の印刷制御部23は設定値に基づいて、マスター差分画像登録要否(登録要、登録不要)を検査装置102に送信する。
【0088】
このように、ユーザーはマスター差分画像の登録タイミングを設定できる。クライアントPC201はユーザーが設定したタイミングをDFE104に送信する。DFE104の印刷制御部23はユーザーによる設定に応じてマスター差分画像登録要否を検査装置102に送信する。
【0089】
<<閾値設定画面>>
同様に、ユーザーはクライアントPC201を操作して、検査部36が品質異常と判断するかどうかの閾値を設定できる。
【0090】
図10は、クライアントPC201が表示する閾値設定画面411の一例である。閾値設定画面411は、文字、写真、及び、図形のそれぞれに対し、大、中、小のラジオボタン412を有している。ユーザーは原稿の種類に応じて、閾値を三段階で調整できる。クライアントPC201は原稿の種類と共に閾値をDFE104に送信する。DFE104は原稿の種類と閾値を検査装置102に送信するので、検査装置102は原稿の種類に応じて閾値を変更できる。なお、この場合、検査装置102が原稿の画像データから原稿の種類を判断するか、又は、原稿の種類をDFE104から受信する。
【0091】
読取装置131によるムラの生じやすさは原稿の種類に応じて異なる。本実施形態では、ユーザーが持っている知見によって原稿の種類ごとに品質異常と判断するかどうかの閾値を設定できる。
【0092】
<マスター画像、読取画像、マスター差分画像、及び、印刷差分画像の関係>
次に、図11を参照して、マスター画像、読取画像、マスター差分画像、及び、印刷差分画像の関係について説明する。図11は、マスター画像、読取画像、マスター差分画像、及び、印刷差分画像の関係を説明する図の一例である。図11(a)はマスター差分画像の登録時の構成を示し、図11(b)は印刷物の検査時の構成を示す。
【0093】
図11(a)に示すように、マスター差分画像の新規登録時、マスター画像301と読取画像302の差分画像であるマスター差分画像303を差分画像生成部34が生成する。
【0094】
図11(b)に示すように、印刷物検査時、マスター差分画像303の作成に使用されたマスター画像301と、印刷ジョブの実行により印刷された印刷物を読取部26が読み取って生成した読取画像304から、差分画像生成部34が印刷差分画像305を生成する。検査部36はマスター差分画像303と印刷差分画像305を比較することで検査する。
【0095】
<全体的な動作>
<<マスター差分画像の登録>>
印刷制御部23は、マスター差分画像登録のタイミングの(i)~(iii)の設定に基づいてマスター差分画像登録要否を検査装置102に送信する。なお、(iii)については、プリンタ101から送信される、プリンタ101が印刷実行した印刷枚数を印刷制御部23がカウントしてマスター差分画像の登録タイミングかどうかを判断する。
【0096】
図12は、検査装置102がマスター差分画像を登録する手順を説明するフローチャート図の一例である。
【0097】
検査装置102のRIP画像取得部31は、印刷開始時に、印刷制御部23よりマスター差分画像登録要否を受け取る。RIP画像取得部31はマスター差分画像登録要否が"登録要"であるか否かを判断する(S11)。
【0098】
ステップS11の判断がNoの場合、差分画像生成部34がマスター差分画像を登録しないので、図12の処理は終了する。マスター差分画像の生成及び登録が不要の場合に検査装置102の処理負荷を軽減できる。
【0099】
ステップS11の判断がYesの場合、RIP画像取得部31がDFE104の印刷制御部23からが画像データ(ビットマップデータ)を取得してマスター画像生成部32に渡す。マスター画像生成部32は画像データからマスター画像を生成し、記憶部37に記憶する(S12)。マスター画像が保存されるアドレスは予め決まったアドレスでよい。
【0100】
次に、プリンタ101内の印刷部25より出力された印刷物を読取部26にて光学的に読み取り、読取画像を生成する。読取画像を検査装置102の読取画像取得部33が取得して、差分画像生成部34に渡す(S13)。
【0101】
差分画像生成部34は、記憶部37に記憶されたマスター画像と読取画像取得部33が取得した読取画像によりマスター差分画像を生成して記憶部37に格納する(S14)。差分画像生成部34はマスター差分画像の格納先アドレスを差分画像管理部35へ通知する。差分画像管理部35はマスター差分画像登録要否として"登録要"をRIP画像取得部31から受け取っているので、マスター差分画像IDを採番する。差分画像管理部35は格納先アドレスと採番したマスター差分画像IDを対応付けてマスター差分画像管理テーブル37aに登録する。
【0102】
差分画像管理部35は登録したマスター差分画像IDを印刷制御部23に通知する。このマスター差分画像IDは、この後、マスター差分画像の登録時と同じ印刷ジョブの印刷をプリンタ101が行う際に、検査に使用するマスター差分画像を印刷制御部23が指定するために使用する。
【0103】
こうすることで、テスト印刷等の実施など、マスター差分画像を登録するタイミングに、差分画像管理部35がマスター差分画像を生成及び登録できる。
【0104】
<<印刷物の検査>>
図13は、マスター差分画像が登録済みの場合、検査装置102が印刷差分画像生成して、印刷物を検査するフローチャート図の一例である。
【0105】
印刷開始後、RIP画像取得部31はDFE104の印刷制御部23から、印刷ジョブID、画像データ(ビットマップデータ)及びマスター差分画像IDを受信する。マスター差分画像IDを受信することは、印刷物検査の要求の受信に相当する。
【0106】
RIP画像取得部31は画像データをマスター画像生成部32に渡し、マスター画像生成部32がマスター画像を生成し、記憶部37に記憶する(S21)。また、RIP画像取得部31はマスター差分画像IDを差分画像管理部35に渡す。
【0107】
次に、プリンタ101内の印刷部25より出力された印刷物を読取部26が光学的に読み取って、読取画像を生成する。検査装置102の読取画像取得部33が読取画像を取得して差分画像生成部34に渡す(S22)。
【0108】
差分画像生成部34は、記憶部37に記憶されたマスター画像と、読取画像取得部33が取得した読取画像より印刷差分画像を生成して記憶部37に格納する(S23)。印刷差分画像が記憶されるアドレスは予め決まっている。
【0109】
次に、差分画像管理部35は、印刷制御部23からマスター差分画像IDで指定されたマスター差分画像の格納先アドレスを、マスター差分画像管理テーブル37aから取得する。差分画像管理部35は、この格納先アドレスに格納されているマスター差分画像を記憶部37から取得して検査部36に渡す(S24)。
【0110】
検査部36は、マスター差分画像と記憶部37から取得した印刷差分画像を比較して検査を行う(S25)。検査部36はマスター差分画像と印刷差分画像が一致するか否かを判断する(S26)。一致とは、マスター差分画像と印刷差分画像を画素ごとに比較した場合に、閾値以上の差異がある画素が1つもないことを言う。
【0111】
マスター差分画像と印刷差分画像が一致した場合(S26のYes)、検査部36は、OKの検査結果をDFE104の印刷制御部23に通知して検査を終了する(S27)。OKの場合、検査部36は印刷ジョブIDとページ番号を検査結果と共に印刷制御部23に通知する。
【0112】
マスター差分画像と印刷差分画像が一致しない場合(S26のNo)、検査部36は、NGの検査結果をDFE104の印刷制御部23に通知して検査を終了する(S28)。検査結果がNGの場合、検査部36は印刷ジョブIDとページ番号を検査結果と共に印刷制御部23に通知する。
【0113】
検査結果がNGの場合、RIP画像取得部31が印刷制御部23より"登録要"のマスター差分画像登録要否を受信しても、差分画像管理部35は新規にマスター差分画像を登録しない。検査結果がNGの場合、マスター画像又は読取画像のどちらかに品質異常が含まれている可能性があり、マスター差分画像を登録することが適切でないためである。こうすることで、品質異常のおそれがある場合に、差分画像管理部35がマスター差分画像を登録することを抑制できる。
【0114】
印刷制御部23は、印刷ジョブIDとページ番号に対応づけて検査結果がNGであったことを記録する。印刷制御部23は検査結果をサーバ202に送信する。ユーザーはクライアントPC201を操作してサーバ202と接続させ、検査結果を確認できる。DFE104が検査結果を蓄積してもよい。ユーザーはクライアントPC201をDFE104に接続して検査結果を確認できる。
【0115】
また、印刷開始時に、RIP画像取得部31が印刷制御部23より"登録要"のマスター差分画像登録要否を取得した場合(S29のYes)、差分画像管理部35は印刷差分画像を新たなマスター差分画像として登録する(S30)。登録方法は、図12と同様でよい。なお、登録されたマスター差分画像は、現在の印刷ジョブの終了後に、印刷物検査に使用される。したがって、印刷ジョブの途中で、差分画像管理部35がマスター差分画像を変更する必要がない。
【0116】
このように、マスター差分画像が登録済みの場合、印刷物が印刷されると検査装置102が印刷差分画像を生成してマスター差分画像との比較により検査を実行することができる。
【0117】
また、印刷開始時にマスター差分画像の登録を指示された場合、検査装置102は印刷終了時に印刷差分画像を新たなマスター差分画像として登録することができる。これにより、印刷画像の経時変化に対応できる。
【0118】
<主な効果>
以上説明したように、マスター差分画像は読取画像の濃度ムラ等を含んだ値になっているため、同じように濃度ムラを含む印刷差分画像と検査装置102が比較することで、検査装置102が、読取画像の濃度ムラ等が品質異常であると判断することを抑制できる。
【0119】
<その他の適用例>
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0120】
例えば、本実施形態ではクライアントPC201が汎用的なWebブラウザを使用しているが、DFE104に専用のアプリを使用してもよい。
【0121】
また、図6などの構成例は、クライアントPC201、検査装置102、プリンタ101、及び、DFE104による処理の理解を容易にするために、主な機能に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって本願発明が制限されることはない。クライアントPC201、検査装置102、プリンタ101、及び、DFE104の処理は、処理内容に応じて更に多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位が更に多くの処理を含むように分割することもできる。
【0122】
また、実施例に記載された装置群は、本明細書に開示された実施形態を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。ある実施形態では、検査装置102は、サーバクラスタといった複数のコンピューティングデバイスを含む。複数のコンピューティングデバイスは、ネットワークや共有メモリなどを含む任意のタイプの通信リンクを介して互いに通信するように構成されており、本明細書に開示された処理を実施する。
【0123】
更に、検査装置102は、開示された処理ステップ、例えば図12図13等のフローチャート図を様々な組み合わせで共有するように構成できる。例えば、所定のユニットによって実行されるプロセスは、検査装置102が有する複数の情報処理装置によって実行され得る。また、検査装置102は、1つのサーバ装置にまとめられていても良いし、複数の装置に分けられていても良い。
【0124】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0125】
100 画像形成システム
101 プリンタ
102 検査装置
104 DFE
200 情報処理システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0126】
【文献】特開2015-53561号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13