(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】撥液剤組成物、その製造方法及び物品
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20240521BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240521BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20240521BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C09K3/18 102
C09K3/00 R
C08L27/12
C08K5/06
(21)【出願番号】P 2020192297
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 元宏
(72)【発明者】
【氏名】原 弘之
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/147573(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/147700(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/138680(WO,A1)
【文献】特開2001-49166(JP,A)
【文献】特開2015-105287(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194049(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/047416(WO,A1)
【文献】特開2003-160616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/18
C09K3/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体aに基づく単位と下記単量体bに基づく単位とを含む含フッ素重合体と、水性媒体と、界面活性剤とを含み、
前記含フッ素重合体を構成する全単位に対して、前記単量体aに基づく単位の割合が20~60モル%であり、
前記界面活性剤が、HLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、HLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、及びHLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルカポリエニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のノニオン性界面活性剤を含む、撥液剤組成物。
単量体a:下式1で表される化合物。
CH
2=CH-R
f 式1
ただし、R
fは、炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
単量体b:前記単量体aと共重合可能な他の単量体。
【請求項2】
前記式1におけるR
fが炭素数1~6のペルフルオロアルキル基である、請求項1に記載の撥液剤組成物。
【請求項3】
前記ノニオン性界面活性剤の含有量が、前記含フッ素重合体100質量部に対して0.1~5質量部である、請求項1又は2に記載の撥液剤組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤をさらに含み、
前記カチオン性界面活性剤の含有量が、前記含フッ素重合体100質量部に対して0.1~0.5質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の撥液剤組成物。
【請求項5】
前記単量体bの少なくとも一部が下記単量体b1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の撥液剤組成物。
単量体b1:下式2又は3で表される化合物。
CH
2=CH-Q 式2
CH
2=CHCH
2-Q 式3
ただし、Qは、ハロゲン原子、又は結合末端原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子である有機基である。
【請求項6】
前記単量体b1が、カルボン酸ビニルエステル、カルボン酸アリルエステル、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、ハロゲン化ビニル又はハロゲン化アリルである、請求項5に記載の撥液剤組成物。
【請求項7】
前記含フッ素重合体の乳化粒子が前記水性媒体中に分散しており、
前記含フッ素重合体の乳化粒子の平均粒子径が50~200nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の撥液剤組成物。
【請求項8】
前記含フッ素重合体の数平均分子量が10,000~100,000である、請求項1~7のいずれか一項に記載の撥液剤組成物。
【請求項9】
下記単量体aと下記単量体bとを含む単量体成分と、水性媒体と、界面活性剤と、重合開始剤とを含む乳化液中にて前記単量体成分を重合する、撥液剤組成物の製造方法であって、
前記単量体成分全体に対する前記単量体aの割合が20~60モル%であり、
前記界面活性剤が、HLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、HLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、及びHLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルカポリエニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のノニオン性界面活性剤を含む、撥液剤組成物の製造方法。
単量体a:下式1で表される化合物。
CH
2=CH-R
f 式1
ただし、R
fは、炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
単量体b:前記単量体aと共重合可能な他の単量体。
【請求項10】
前記ノニオン性界面活性剤の含有量が、前記単量体成分100質量部に対して0.1~5質量部である、請求項9に記載の撥液剤組成物の製造方法。
【請求項11】
前記界面活性剤がカチオン性界面活性剤をさらに含み、
前記カチオン性界面活性剤の含有量が、前記単量体成分100質量部に対して0.1~0.5質量部である、請求項9又は10に記載の撥液剤組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の撥液剤組成物によって処理された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液剤組成物、その製造方法及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
物品(繊維製品等)の表面に撥水撥油性を付与する方法としては、ペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく単位を有する含フッ素重合体を含む撥水撥油剤組成物を用いて物品を処理する方法が知られている。しかし、(メタ)アクリレートに基づく単位におけるエステル結合は、アルカリ等による加水分解で切断されやすい。そのため、含フッ素重合体からペルフルオロアルキル基が失われて、物品の撥水撥油性が低下することがある。
【0003】
アルカリ等によって撥水撥油性が低下しにくい物品を得ることができる撥水撥油剤組成物としては、ペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく単位を有しない含フッ素重合体を含む撥水撥油剤組成物が知られている。ペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく単位を有しない含フッ素重合体としては、(ペルフルオロアルキル)エチレンに基づく単位を有する含フッ素重合体が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の含フッ素重合体を含む撥水撥油剤組成物で処理された物品は、撥アルコール性が不充分である。
【0006】
本発明は、撥アルコール性に優れる物品が得られる撥液剤組成物、その製造方法、並びに撥アルコール性に優れる物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]下記単量体aに基づく単位と下記単量体bに基づく単位とを含む含フッ素重合体と、水性媒体と、界面活性剤とを含み、
前記含フッ素重合体を構成する全単位に対して、前記単量体aに基づく単位の割合が20~60モル%であり、
前記界面活性剤が、HLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、HLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、及びHLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルカポリエニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のノニオン性界面活性剤を含む、撥液剤組成物。
単量体a:下式1で表される化合物。
CH2=CH-Rf 式1
ただし、Rfは、炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
単量体b:前記単量体aと共重合可能な他の単量体。
[2]前記式1におけるRfが炭素数1~6のペルフルオロアルキル基である、前記[1]の撥液剤組成物。
[3]前記ノニオン性界面活性剤の含有量が、前記含フッ素重合体100質量部に対して0.1~5質量部である、前記[1]又は[2]の撥液剤組成物。
[4]前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤をさらに含み、
前記カチオン性界面活性剤の含有量が、前記含フッ素重合体100質量部に対して0.1~0.5質量部である、前記[1]~[3]のいずれかの撥液剤組成物。
[5]前記単量体bの少なくとも一部が下記単量体b1である、前記[1]~[4]のいずれかの撥液剤組成物。
単量体b1:下式2又は3で表される化合物。
CH2=CH-Q 式2
CH2=CHCH2-Q 式3
ただし、Qは、ハロゲン原子、又は結合末端原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子である有機基である。
[6]前記単量体b1が、カルボン酸ビニルエステル、カルボン酸アリルエステル、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、ハロゲン化ビニル又はハロゲン化アリルである、前記[5]の撥液剤組成物。
[7]前記含フッ素重合体の乳化粒子が前記水性媒体中に分散しており、
前記含フッ素重合体の乳化粒子の平均粒子径が50~200nmである、前記[1]~[6]のいずれかの撥液剤組成物。
[8]前記含フッ素重合体の数平均分子量が10,000~100,000である、前記[1]~[7]のいずれかの撥液剤組成物。
[9]下記単量体aと下記単量体bとを含む単量体成分と、水性媒体と、界面活性剤と、重合開始剤とを含む乳化液中にて前記単量体成分を重合する、撥液剤組成物の製造方法であって、
前記単量体成分全体に対する前記単量体aの割合が20~60モル%であり、
前記界面活性剤が、HLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、HLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、及びHLB値が12以下のポリオキシアルキレンモノアルカポリエニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のノニオン性界面活性剤を含む、撥液剤組成物の製造方法。
単量体a:下式1で表される化合物。
CH2=CH-Rf 式1
ただし、Rfは、炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
単量体b:前記単量体aと共重合可能な他の単量体。
[10]前記ノニオン性界面活性剤の含有量が、前記単量体成分100質量部に対して0.1~5質量部である、前記[9]の撥液剤組成物の製造方法。
[11]前記界面活性剤がカチオン性界面活性剤をさらに含み、
前記カチオン性界面活性剤の含有量が、前記単量体成分100質量部に対して0.1~0.5質量部である、前記[9]又は[10]の撥液剤組成物の製造方法。
[12]前記[1]~[8]のいずれかの撥液剤組成物を用いて処理された物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の撥液剤組成物によれば、撥アルコール性に優れる物品が得られる。
本発明の撥液剤組成物の製造方法によれば、撥アルコール性に優れる物品が得られる撥液剤組成物を製造できる。
本発明の物品は、撥アルコール性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における用語の意味や定義は以下の通りである。
「単量体に基づく単位」は、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。同様に、「(メタ)アクリロイルオキシ基」は、アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基の総称である。
重合体の乳化粒子の平均粒子径は、撥液剤組成物を水で固形分濃度1質量%に希釈したサンプルについて動的光散乱法によって得られた自己相関関数からキュムラント法解析によって算出される値である。
重合体の数平均分子量(以下、「Mn」とも記す。)は、標準ポリメチルメタクリレート試料を用いて作成した検量線を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」とも記す。)で測定することによって得られるポリメチルメタクリレート換算分子量である。
HLB(hydrophile-lipophile balance)値は、W.C.Griffinによって考えられ、ノニオン性界面活性剤に対して与えられた数値であり、ノニオン性界面活性剤の親油基(アルキル基等)と親水基(ポリオキシアルキレン鎖等)との強さのバランスを数字で表したものである。本発明において、HLB値は、Griffin法による計算値(参考文献:W.G.Griffin,J.Soc.Cosmetic Chemists,1,311(1949)及びW.G.Griffn,J.Soc.Cosmetic Chemists,5,249(1954))を採用する。カタログ値のあるものは、簡易な判断方法としてカタログ値を採用してもよいが、カタログ値と計算値が異なる場合は計算値を採用するものとする。
固形分濃度は、加熱前の試料の質量を試料質量、120℃の対流式乾燥機にて試料を4時間乾燥した後の質量を固形分質量として、(固形分質量/試料質量)×100によって計算される。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
〔撥液剤組成物〕
本発明の撥液剤組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、特定の含フッ素重合体(以下、「重合体A」とも記す。)と水性媒体と界面活性剤とを含む。
本組成物は、重合体Aと水性媒体と界面活性剤とを含む重合体分散液であることが好ましい。
本組成物には、後述する本発明の重合体Aの製造方法によって得られた分散液、及び物品を処理するために、さらに任意の水性媒体に希釈された当該分散液も包含される。
本組成物は、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。
【0011】
(重合体A)
重合体Aは、単量体aに基づく単位(以下、「単位a」とも記す。)と、単量体bに基づく単位(以下、「単位b」とも記す。)とを含む。
単量体a:下式1で表される化合物。
CH2=CH-Rf 式1
ただし、Rfは、炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
単量体b:単量体aと共重合可能な他の単量体。
【0012】
単量体aにおいて、Rfの炭素数は、重合体Aへの転化率が良好になりやすい点、原材料の入手性、及び取扱いの容易性の点から、1~6が好ましく、4~6がより好ましく、6が特に好ましい。
Rfは、直鎖状であることが好ましい。
【0013】
単量体aとしては、例えば、CH2=CH-CF3、CH2=CH-CF2CF3、CH2=CH-CF2CF2CF3、CH2=CH-CF(CF3)2、CH2=CH-(CF2)3CF3、CH2=CH-CF2CF(CF3)2、CH2=CH-C(CF3)3、CH2=CH-(CF2)4CF3、CH2=CH-CF2CF2CF(CF3)2、CH2=CH-(CF2)5CF3、CH2=CH-(CF2)5CF(CF3)2、CH2=CH-(CF2)7CF3が挙げられる。
単量体aとしては、CH2=CH-CF3、CH2=CH-CF2CF3、CH2=CH-CF(CF3)2、CH2=CH-(CF2)3CF3及びCH2=CH-(CF2)5CF3が好ましく、CH2=CH-CF3、CH2=CH-CF2CF3、CH2=CH-(CF2)3CF3及びCH2=CH-(CF2)5CF3がより好ましく、CH2=CH-(CF2)3CF3及びCH2=CH-(CF2)5CF3がさらに好ましい。
単量体aは、2種以上を併用してもよい。
【0014】
単量体bとしては単量体aと共重合可能であればよい。
単量体aと共重合しやすい点から、単量体bの少なくとも一部が単量体b1であることが好ましい。
単量体b1:下式2又は3で表される化合物。
CH2=CH-Q 式2
CH2=CHCH2-Q 式3
ただし、Qは、ハロゲン原子、又は結合末端原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子である有機基である。
【0015】
単量体b1の分子量は、単量体aの質量比率を下げすぎることなく単量体b1のモル比率を高めることができ、撥水撥油性及び撥アルコール性を維持し基材との密着性を発現しやすい点で、45~350が好ましく、50~300がより好ましく、55~150がさらに好ましい。
単量体b1の分子量は、GPC測定により分子量分布が得られる化合物については、GPC測定で得られるMnの値であり、GPC測定により分子量分布が得られない化合物については、構造式から算出される式量である。
【0016】
結合末端原子が酸素原子、窒素原子又は硫黄原子である有機基としては、例えば、-OR4、-OC(=O)R4、-NHR4、-NR4R5、-SR4、環を構成する窒素原子が結合末端原子である含窒素複素環基が挙げられる。ただし、R4及びR5はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は複素環基である。アルキル基の炭素数は、例えば1~22である。シクロアルキル基の環を形成する炭素数は、例えば3~8である。
Qにおける有機基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基等の反応性基やハロゲン原子を有していてもよく、また、結合末端以外の部分にエーテル性酸素原子、カルボニルオキシ基、カルボニル基等の連結基を有していてもよい。さらに、重合性炭素-炭素二重結合を有していてもよい。反応性基としてはヒドロキシ基が好ましい。Qにおける有機基は重合性炭素-炭素二重結合を有しないことが好ましい。
Qとしては、単量体aと共重合しやすい点、基材との密着性が良好である点で、ハロゲン原子、-OR4、又は-OC(=O)R4が好ましく、フッ素原子、塩素原子、又は-OC(=O)R4がより好ましい。R4は上記と同様である。
【0017】
式2で表される化合物としては、カルボン酸ビニルエステル、ビニルエーテル及びハロゲン化ビニルが好ましい。ビニルエーテルとしては、アルキルビニルエーテル及びヒドロキシアルキルビニルエーテルが好ましい。
式3で表される化合物としては、カルボン酸アリルエステル、アリルエーテル及びハロゲン化アリルが好ましい。アリルエーテルとしては、アルキルアリルエーテル及びヒドロキシアルキルアリルエーテルが好ましい。
【0018】
カルボン酸ビニルエステルやカルボン酸アリルエステルにおけるアシル基の炭素数は24以下が好ましく、2~6がより好ましい。炭素数2~6のアシル基を有するカルボン酸ビニルエステルやカルボン酸アリルエステルと、炭素数10~22のアシル基を有するカルボン酸ビニルエステルやカルボン酸アリルエステルとを併用することも好ましい。
アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル及びヒドロキシアルキルアリルエーテルにおけるアルキルやヒドロキシアルキルの炭素数は2~6が好ましい。
【0019】
カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニルが挙げられる。
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、クロロプロピルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニルが挙げられる。
【0020】
カルボン酸アリルエステルとしては、例えば、酢酸アリル、アジピン酸ジアリルが挙げられる。
アリルエーテルとしては、例えば、アリルエチルエーテル、ジアリルエーテル、1,3-ジアリルオキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノアリルエーテルが挙げられる。
ハロゲン化アリルとしては、例えば、塩化アリル、フッ化アリルが挙げられる。
【0021】
式2又は3で表される化合物の他の例としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、エチルビニルスルフィドが挙げられる。
【0022】
単量体b1としては、単量体aとの共重合性がよく、撥油性、撥アルコール性に優れる物品が得られる点から、カルボン酸ビニルエステル、カルボン酸アリルエステル、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化アリルが好ましく、カルボン酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニルがより好ましい。
【0023】
具体的な単量体b1としては、撥油性、撥アルコール性に優れる物品が得られる点から、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、塩化ビニル、フッ化ビニルが好ましく、酢酸ビニルが特に好ましい。
【0024】
単量体bの少なくとも一部は、単量体b1以外の単量体bであってもよい。単量体b1以外の単量体bを、以下、単量体b2という。
【0025】
単量体b2としては、例えば、オレフィン、ハロゲン化ビニル以外のハロゲン化オレフィン、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が挙げられる。具体的には、エチレン、プロピレン、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート、N-メチロールアクリルアミド、2-ペルフルオロへキシルエチル(メタ)アクリレート、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3が挙げられる。
【0026】
単量体b2としては、(メタ)アクリレートが好ましい。ただし、重合体Aは、アルカリ等によって撥水撥油性及び撥アルコール性がさらに低下しにくい物品を得ることができる点から、ペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく単位を有しないことが好ましい。そのため、単量体b2としては、フッ素原子を含有しない(メタ)アクリレートが好ましい。フッ素原子を含有しない(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられる。重合体Aのガラス転移温度が低下し、造膜性が良好となりやすい点から、n-ブチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、物品が繊維製品である場合に風合いが良好となり、撥水性が向上しやすい点から、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及びベヘニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0027】
重合体Aとしては、単位bの少なくとも一部が単量体b1に基づく単位である重合体が好ましい。単位bの少なくとも一部が単量体b1に基づく単位である重合体としては、単位bとして単量体b1に基づく単位のみを有する重合体、及び、単量体b1に基づく単位と単量体b2に基づく単位とを有する重合体が挙げられる。
重合体Aは、2種以上の単量体b1に基づく単位を有していてもよい。重合体Aが単量体b2に基づく単位を有する場合は、2種以上の単量体b2に基づく単位を有していてもよい。
【0028】
重合体Aを構成する全単位に対する単位aの割合は、20~60モル%が好ましく、30~55モル%がより好ましく、35~50モル%がさらに好ましい。単位aの割合が前記下限値以上であれば、本組成物を用いて得られる物品の撥油性、撥アルコール性がより優れる。単位aの割合が前記上限値以下であれば、重合体Aの重合反応における転化率がより高くなりやすい。
【0029】
重合体Aを構成する全単位に対する単位bの割合は、40~80モル%が好ましく、45~70モル%がより好ましく、50~65モル%がさらに好ましい。単位bの割合が前記下限値以上であれば、重合体Aの重合反応における転化率がより高くなりやすい。単位bの割合が前記上限値以下であれば、本組成物を用いて得られる物品の撥油性、撥アルコール性がより優れる。
【0030】
単位bの少なくとも一部が単量体b1に基づく単位である場合、重合体Aを構成する全単位に対する単量体b1に基づく単位の割合は、40~80モル%が好ましく、45~70モル%がより好ましく、50~65モル%がさらに好ましい。単量体b1に基づく単位の割合が前記下限値以上であれば、重合体Aの重合反応における転化率がより高くなりやすい。単量体b1に基づく単位の割合が前記上限値以下であれば、本組成物を用いて得られる物品の撥油性、撥アルコール性がより優れる。
【0031】
重合体Aを構成する全単位に対する単量体b2に基づく単位の割合は、20質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、0質量%であってもよい。単量体b2に基づく単位の割合が前記上限値以下であれば、アルカリ等によって撥水撥油性及び撥アルコール性がさらに低下しにくい物品が得られる。
【0032】
重合体Aを構成する全単位に対する単位aと単位bとの合計の割合は、100質量%が好ましい。すなわち、重合体Aは、単位aと単位bとからなることが好ましい。
【0033】
重合体Aを構成する全単位に対する単位aと単量体b1に基づく単位との合計の割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。前記合計の割合が前記下限値以上であれば、アルカリ等によって撥水撥油性及び撥アルコール性がさらに低下しにくい物品が得られる。
【0034】
各単位の割合は、1H-NMR、及びガスクロマトグラフィーによる各単量体成分の反応率によって算出できる。重合体Aの製造時において、単量体成分の重合体Aへの転化率が高い(例えば90%以上)場合には、単量体成分の仕込み量に基づいて各単位の割合を算出してもよい。
転化率は、重合体Aの製造時の原料の仕込み量から計算された重合体Aの質量の理論値と、生成した重合体Aの質量の実測値とから、実測値/理論値×100によって求められる。
【0035】
重合体AのMnは、10000以上が好ましく、11000以上がより好ましく、12000以上がさらに好ましい。重合体AのMnは、100000以下が好ましく、70000以下がより好ましく、50000以下がさらに好ましい。重合体AのMnが前記下限値以上であれば、本組成物を用いて得られる物品の撥水撥油性及び撥アルコール性がより優れる。重合体AのMnが前記上限値以下であれば、重合体Aの水分散性がより優れる。
【0036】
重合体Aは水性媒体中に乳化粒子として分散されていることが好ましい。
重合体Aの乳化粒子の平均粒子径は、50~200nmが好ましく、60~150nmがより好ましく、70~120nmがさらに好ましい。平均粒子径が前記上限値以下であれば、本組成物で処理された物品に撥水撥油性や撥アルコール性のムラが生じにくい。平均粒子径が前記下限値以上であれば、重合体Aの乳化粒子が機械的なシェアに対してより安定である。
【0037】
(水性媒体)
水性媒体としては、水、及び水溶性有機溶剤を含む水が挙げられる。
水溶性有機溶剤は、水と任意の割合で混和可能な有機溶剤である。水溶性有機溶剤としては、アルコール(ただし、エーテルアルコールを除く。)、エーテルアルコール及び非プロトン性極性溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。アルコールとしては、例えば、t-ブタノール、プロピレングリコールが挙げられる。エーテルアルコールとしては、例えば、3-メトキシメチルブタノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールが挙げられる。非プロトン性極性溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン(以下、「THF」とも記す。)、アセトニトリル、アセトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。液状媒体が水性媒体である場合の水溶性有機溶剤としては、重合体Aと水性媒体との相溶性を向上して物品上で均一な膜をつくりやすい点から、エーテルアルコールが好ましく、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
水性媒体が水溶性有機溶剤を含む水である場合、水溶性有機溶剤の含有量は、水の100質量部に対して、1~80質量部が好ましく、5~60質量部がより好ましい。
【0038】
(界面活性剤)
界面活性剤は、HLB値が12以下のポリオキシアルキレン(以下、「POA」とも記す。)モノアルキルエーテル、HLB値が12以下のPOAモノアルケニルエーテル、及びHLB値が12以下のPOAモノアルカポリエニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のノニオン性界面活性剤(以下、「界面活性剤B」とも記す。)を含む。
【0039】
界面活性剤BのHLB値は、12以下であり、11.8以下が好ましく、11.6以下がより好ましい。HLB値が前記上限値以下であれば、本組成物で処理された物品の撥アルコール性に優れる。
界面活性剤BのHLB値の下限は特に限定されないが、乳化安定性の点では、HLB値は8以上が好ましく、9.5以上がより好ましい。
【0040】
POAモノアルキルエーテルのアルキル基、POAモノアルケニルエーテルのアルケニル基、又はPOAモノアルカポリエニルエーテルのアルカポリエニル基(以下、アルキル基、アルケニル基及びアルカポリエニル基をまとめて「RS基」とも記す。)の炭素数は、例えば8以上であり、8~18が好ましく、10~16がより好ましい。
RS基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。分岐状のRS基としては、2級アルキル基、2級アルケニル基又は2級アルカポリエニル基が好ましい。RS基は、乳化安定性がより良好となる点で、直鎖状であることが好ましい。
【0041】
RS基の具体例としては、オクチル基、ドデシル基(ラウリル基)、テトラデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、ドコシル基(ベヘニル基)、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、9-オクタデセニル基(オレイル基)、オクタジエニル基、ドデカジエニル基、テトラデカジエニル基、ヘキサデカジエニル基、9,12-オクタデカジエニル基(リノレイル基)、9,12-オクタデカジエニル基(リノリル基)、アルカトリエニル基、アルカテトラエニル基が挙げられる。
RS基としては、乳化安定性がより良好となる点で、オクチル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクテニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、9-オクタデセニル基、オクタジエニル基、ドデカジエニル基、テトラデカジエニル基、ヘキサデカジエニル基、9,12-オクタデカジエニル基、9,12-オクタデカジエニル基が好ましく、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクテニル基、ドデセニル基、ヘキサデセニル基、9-オクタデセニル基、ドデカジエニル基、ヘキサデカジエニル基、9,12-オクタデカジエニル基、9,12-オクタデカジエニル基がより好ましく、オクチル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基がさらに好ましい。
【0042】
POAモノアルキルエーテル、POAモノアルケニルエーテル、POAモノアルカポリエニルエーテルそれぞれにおけるPOA鎖は、オキシアルキレン基が2個以上連なった鎖である。オキシアルキレン基の炭素数は、例えば2~3であり、乳化安定性の点で、2が好ましい。
POA鎖は、1種のPOA鎖からなる鎖であってもよく、2種以上のPOA鎖からなる鎖であってもよい。2種以上のPOA鎖からなる場合、各POA鎖はブロック状に連結されることが好ましい。
POA鎖としては、ポリオキシエチレン(以下、「POE」とも記す。)鎖、ポリオキシプロピレン(以下、「POP」とも記す。)鎖、POE・POP鎖等が挙げられ、乳化安定性の点で、POE鎖が好ましい。したがって、界面活性剤Bとしては、POEモノアルキルエーテル、POEモノアルケニルエーテル、及びPOEモノアルカポリエニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0043】
界面活性剤Bとしては、下式4で表される化合物がより好ましい。
R10O[CH2CH(CH3)O]s-(CH2CH2O)rH 式4
ただし、R10は、炭素数8以上のアルキル基又は炭素数8以上のアルケニル基であり、rは、2~12の整数であり、sは、0~20の整数である。
【0044】
rが2以上であれば、水に可溶となり、水系媒体中に均一に溶解するため、本組成物の物品への浸透性が良好となる。rが12以下であれば、親水性が抑えられ、HLB値が12以下となりやすく、撥水性及び撥アルコール性がより優れる。
sが20以下であれば、水に可溶となり、水系媒体中に均一に溶解するため、本組成物の物品への浸透性が良好となる。
【0045】
rは、4~10の整数が好ましい。
sは、0~10の整数が好ましい。
r及びsが2以上である場合、POE鎖とPOP鎖とはブロック状に連結される。
R10としては、直鎖状又は分岐状のものが好ましい。R10の好ましい炭素数は、RS基の好ましい炭素数と同様であり、好ましい基も同様である。
【0046】
式4で表される化合物としては、例えば、C12H25O(CH2CH2O)cH、C16H33O(CH2CH2O)dHが挙げられる。ただし、cは1~8の整数であり、dは1~10の整数である。
界面活性剤Bは、2種以上を併用してもよい。
【0047】
界面活性剤は、界面活性剤B以外の他の界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
他の界面活性剤としては、フッ素原子を有さない界面活性剤が好ましい。
他の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、界面活性剤B以外のノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0048】
界面活性剤B以外のノニオン性界面活性剤の例としては、特開2009-215370号公報の段落[0075]~[0095]に記載の界面活性剤s2~s6が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の例としては、特開2009-215370号公報の段落[0096]~[0100]に記載の界面活性剤s7が挙げられる。
両性界面活性剤の例としては、特開2009-215370号公報の段落[0101]~[0102]に記載の界面活性剤s8が挙げられる。
他の界面活性剤は、2種以上を併用してもよい。
【0049】
他の界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤がカチオン性界面活性剤をさらに含むことで、重合体Aの乳化粒子の平均粒子径を小さくできる。
【0050】
カチオン性界面活性剤としては、窒素原子に結合する水素原子の1個以上が、アルキル基、アルケニル基又は末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖で置換されたアンモニウム塩が好ましく、下式5で表される化合物がより好ましい。
[(R21)4N+]・X- 式5
【0051】
R21は、水素原子、炭素数が1~22のアルキル基、炭素数が2~22のアルケニル基、炭素数が1~9のフルオロアルキル基、又は末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖である。4つのR21は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、4つのR21は同時に水素原子ではない。X-は、対イオンである。
X-としては、塩素イオン、エチル硫酸イオン、又は酢酸イオンが好ましい。
【0052】
下式5で表される化合物としては、例えば、モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、モノステアリルジメチルモノエチルアンモニウムエチル硫酸塩、モノ(ステアリル)モノメチルジ(ポリエチレングリコール)アンモニウムクロリド、モノフルオロヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジ(牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルモノココナッツアミン酢酸塩が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、2種以上を併用してもよい。
【0053】
(他の成分)
他の成分としては、例えば、重合体A以外の含フッ素重合体、非フッ素系重合体、非フッ素系撥水撥油剤、水溶性高分子樹脂(例えば、親水性ポリエステル及びその誘導体、親水性ポリエチレングリコール及びその誘導体、親水性ポリアミン及びその誘導体)、架橋剤、浸透剤(例えば、アセチレン基を中央に持ち左右対称の構造をした非イオン性界面活性剤、日油社製のディスパノール(登録商標)シリーズ)、コロイダルシリカ(例えば、日産化学社製のスノーテックス(登録商標)シリーズ、ADEKA社製のアデライトシリーズ)、消泡剤(例えば、日信化学社製のオルフィン(登録商標)シリーズ、東レダウコーニング社製のFSアンチフォームシリーズ)、造膜助剤、防虫剤、防かび剤、防腐剤、難燃剤、帯電防止剤(例えば、明成化学社製のディレクトールシリーズ)、防しわ剤、柔軟剤(例えば、シリコーンエマルジョン、ポリエチレンワックスエマルジョン)、pH調整剤(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、酢酸、クエン酸)が挙げられる。
【0054】
(各成分の割合)
水性媒体の含有量は、本組成物の所望の固形分濃度に応じて適宜選定できる。
本組成物の固形分濃度は、本組成物の製造直後は、20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。
本組成物の固形分濃度は、本組成物を物品の処理に用いる際には、0.1~7質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。
【0055】
界面活性剤Bの含有量は、重合体A100質量部に対して0.1~5質量部が好ましく、1~3質量部がより好ましい。界面活性剤Bの含有量が前記下限値以上であれば、重合体Aの分散液の安定性がより優れ、前記上限値以下であれば、本組成物で処理された物品の撥アルコール性がより優れる。
【0056】
界面活性剤がカチオン性界面活性剤をさらに含む場合、カチオン性界面活性剤の含有量は、重合体A100質量部に対して0.1~0.5質量部が好ましく、0.12~0.3質量部がより好ましく、カチオン性界面活性剤の含有量が前記下限値以上であれば、重合体Aの乳化粒子の平均粒子径を前記した好ましい上限値以下としやすく、前記上限値以下であれば、本組成物で処理された物品の撥アルコール性がより優れる。
【0057】
界面活性剤全体の含有量は、重合体A100質量部に対して7質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。界面活性剤全体の含有量が前記上限値以下であれば、界面活性剤に起因する、本組成物で処理された物品の撥水撥油性及び撥アルコール性への悪影響を低減できる。
界面活性剤全体に対する界面活性剤Bの割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0058】
(作用機序)
以上説明した本組成物にあっては、重合体Aが単位aを有するため、本組成物で処理された物品の撥水撥油性及び撥アルコール性がアルカリ等によって低下しにくい。
そして、本組成物にあっては、界面活性剤Bを含むため、本組成物で処理された物品の撥アルコール性に優れる。
【0059】
〔撥液剤組成物の製造方法〕
本組成物は、例えば、単量体aと単量体bとを含む単量体成分と、水性媒体と、界面活性剤Bを含む界面活性剤と、重合開始剤とを含む乳化液中にて前記単量体成分を重合する方法により製造できる。この方法によれば、単量体成分の重合体Aへの転化率を向上させるとともに、得られる重合体Aの数平均分子量も高くできる。
【0060】
単量体成分全体に対する単量体aの割合は、20~60モル%が好ましく、30~55モル%がより好ましく、35~50モル%がさらに好ましい。単量体aの割合が前記下限値以上であれば、本組成物を用いて得られる物品の撥油性、撥アルコール性がより優れる。単量体aの割合が前記上限値以下であれば、重合体Aの重合反応における転化率がより高くなりやすい。
【0061】
単量体成分全体に対する単量体bの割合は、40~80モル%が好ましく、45~70モル%がより好ましく、50~65モル%がさらに好ましい。単量体bの割合が前記下限値以上であれば、重合体Aの重合反応における転化率がより高くなりやすい。単量体bの割合が前記上限値以下であれば、本組成物を用いて得られる物品の撥油性、撥アルコール性がより優れる。
【0062】
単量体bの少なくとも一部が単量体b1である場合、単量体成分全体に対する単量体b1の割合は、40~80モル%が好ましく、45~70モル%がより好ましく50~65モル%がさらに好ましい。単量体b1の割合が前記下限値以上であれば、重合体Aの重合反応における転化率がより高くなりやすい。単量体b1の割合が前記上限値以下であれば、本組成物を用いて得られる物品の撥油性、撥アルコール性がより優れる。
【0063】
単量体成分全体に対する単量体b2の割合は、20質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、0質量%であってもよい。単量体b2の割合が前記上限値以下であれば、アルカリ等によって撥水撥油性及び撥アルコール性がさらに低下しにくい物品が得られる。
【0064】
単量体成分全体に対する単量体aと単量体bとの合計の割合は、100質量%が好ましい。すなわち、単量体成分は、単量体aと単量体bとからなることが好ましい。
【0065】
単量体成分全体に対する単量体aと単量体b1との合計の割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。前記合計の割合が前記下限値以上であれば、アルカリ等によって撥水撥油性及び撥アルコール性がさらに低下しにくい物品が得られる。
【0066】
乳化液中、界面活性剤Bの含有量は、単量体成分100質量部に対して0.1~5質量部が好ましく、1~3質量部がより好ましい。界面活性剤Bの含有量が前記下限値以上であれば、重合体Aの分散液の安定性がより優れ、前記上限値以下であれば、本組成物で処理された物品の撥アルコール性がより優れる。
【0067】
界面活性剤は、界面活性剤B以外の他の界面活性剤をさらに含んでいてもよい。他の界面活性剤としては、前記と同様のものが挙げられ、カチオン性界面活性剤が好ましい。
【0068】
界面活性剤がカチオン性界面活性剤をさらに含む場合、カチオン性界面活性剤の含有量は、単量体成分100質量部に対して0.1~0.5質量部が好ましく、0.12~0.3質量部がより好ましい。カチオン性界面活性剤の含有量が前記下限値以上であれば、重合体Aの乳化粒子の平均粒子径を前記した好ましい上限値以下としやすく、前記上限値以下であれば、本組成物で処理された物品の撥アルコール性がより優れる。
【0069】
界面活性剤全体の含有量は、単量体成分100質量部に対して7質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。界面活性剤全体の含有量が前記上限値以下であれば、界面活性剤に起因する、本組成物で処理された物品の撥水撥油性及び撥アルコール性への悪影響を低減できる。
界面活性剤全体に対する界面活性剤Bの割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0070】
重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤、放射線重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン性重合開始剤が挙げられ、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤が重合温度に応じて用いられる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物の塩がより好ましい。重合温度は、20~150℃が好ましい。
重合開始剤の添加量は、単量体成分100質量部に対して0.1~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。
【0071】
単量体成分を重合する際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤としては、例えば、芳香族化合物、メルカプトアルコール、メルカプトカルボン酸、アルキルメルカプタンが好ましく、メルカプトカルボン酸又はアルキルメルカプタンがより好ましい。分子量調整剤としては、例えば、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマ(CH2=C(Ph)CH2C(CH3)2Ph、ただしPhはフェニル基である。)が挙げられる。
分子量調整剤の添加量は、単量体成分100質量部に対して5質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、0質量部であってもよい。
【0072】
乳化液は、単量体成分と水性媒体と界面活性剤とを混合し、ホモジナイザー、高圧乳化機等で分散した後、重合開始剤を添加することによって調製できる。
乳化液中の単量体成分の濃度は、20~60質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましい。乳化液中の単量体成分の濃度が前記範囲内であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の重合体Aへの転化率を向上させることができるとともに、重合体Aの分子量を充分に高くできる。
【0073】
乳化液中にて単量体成分を重合して得られた重合体Aの分散液は、そのまま本組成物としてもよく、水性媒体で希釈して固形分濃度を調整してから本組成物としてもよい。本組成物には、さらに他の成分を添加してもよい。
【0074】
重合終了時の単量体成分の重合体Aへの転化率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。転化率を高くすることにより、重合体Aの分子量も高くなり、撥水撥油性及び撥アルコール性も良好となる。また、高い転化率にすることで残存単量体による性能低下が抑えられるとともに重合体A中に含まれるフッ素原子の量が多くなるため撥水撥油性及び撥アルコール性が良好となる。
転化率を80%以上とするには、乳化組成の最適化、重合時間の最適化を行ことが好ましい。
【0075】
(作用機序)
以上説明した本組成物の製造方法にあっては、単量体aを含む単量体成分を重合しているため、アルカリ等によって撥水撥油性及び撥アルコール性が低下しにくい物品を製造できる本組成物を製造できる。
また、本組成物の製造方法にあっては、乳化液中で単量体成分を重合しているため、重合体Aの分子量を高くできる。そのため、撥水撥油性及び撥アルコール性に優れる物品を製造できる本組成物を製造できる。
そして、本組成物の製造方法にあっては、界面活性剤Bを用いているため、撥アルコール性に優れる物品を製造できる本組成物を製造できる。
【0076】
〔物品〕
本発明の物品は、本組成物を用いて処理された物品である。
本組成物で処理される物品としては、例えば、繊維、繊維布帛(繊維織物、繊維編物、不織布、起毛布等)、繊維布帛を備えた繊維製品(キーウェア、レインウェア、コート、ブルゾン、ウィンドブレーカー、ダウンジャケット、スポーツウェア、作業衣、ユニフォーム、防護服等の衣料、リュック、バックパック、カバン、テント、ツェルト等)、ガラス、紙、木、皮革、人工皮革、石、コンクリート、セラミックス、金属、金属酸化物、窯業製品、樹脂成形品、多孔質樹脂、多孔質繊維が挙げられる。多孔質樹脂は、例えば、フィルターとして用いられる。多孔質樹脂の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。多孔質繊維の材料としては、例えば、ガラス繊維、セルロースナノファイバー、炭素繊維、セルロースアセテートが挙げられる。
【0077】
処理される物品としては、繊維、繊維布帛、繊維布帛を備えた繊維製品が好ましい。
繊維の種類としては、特に限定されないが、綿、羊毛、絹又はセルロース等の天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリル又はアラミド等の合成繊維、レーヨン、ビスコースレーヨン又はリヨセル等の化学繊維、天然繊維と合成繊維との混紡繊維、天然繊維と化学繊維との混紡繊維を例示できる。繊維基材が不織布である場合の繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス及びレーヨンを例示できる。
【0078】
処理方法としては、撥液剤組成物を被処理物品に付着できる方法であればよく、例えば、本組成物が液状媒体を含む場合には、塗布、含浸、浸漬、スプレー、ブラッシング、パディング、サイズプレス、ローラー等の公知の塗工方法によって物品に本分散液を処理した後、乾燥する方法が挙げられる。本組成物を紙基材等に処理する場合には、本組成物を紙基材に塗布又は含浸する方法(外添加工)、本組成物を含むパルプスラリーを抄紙する方法(内添加工)が挙げられる。
被処理物品に付着させる撥液剤組成物の量は、特に限定されないが、例えば繊維布帛の場合、繊維布帛の単位質量当たりの撥液剤組成物の量が、固形分で、0.001~0.05g/gとなる量が好ましい。
乾燥は、常温で行っても加熱してもよく、加熱することが好ましい。加熱する場合、加熱温度は40~200℃が好ましい。また、撥液剤組成物が架橋剤を含有する場合、必要であれば、前記架橋剤の架橋温度以上に加熱してキュアリングすることが好ましい。
【0079】
(作用機序)
以上説明した本発明の物品にあっては、単位aを有する重合体Aを含む本組成物を用いて処理されているため、アルカリ等によって撥水撥油性及び撥アルコール性が低下しにくい。
そして、本発明の物品にあっては、界面活性剤Bを含む本組成物を用いて処理されているため、撥アルコール性に優れる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
「部」は「質量部」である。
例1~8は実施例であり、例9~12は比較例である。
【0081】
(固形分濃度)
後述の例で得られた試料(含フッ素重合体分散液)を、120℃に加熱した吸気式オーブン(対流式乾燥機)で4時間加熱した。加熱後に得られた固体の質量(固形分質量)を加熱前の試料の質量で割ることによって固形分濃度(実測)(質量%)を求めた。
固形分濃度(理論)は、各例で用いた原料の固形分濃度及び使用量から算出した。
【0082】
(分子量)
<含フッ素重合体の回収>
各例で得られた含フッ素重合体分散液の6gを、ヘキサン6gと2-ブタノール54gとの混合液の60gに滴下し、撹拌して固体を析出させた。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体を分離した。分離した固体にイソプロピルアルコール(以下、「IPA」とも記す。)変性アルコール(イマヅ社製、製品名:95%IPA変性アルコール)の30gと、イオン交換水の30gとを加えてよく撹拌した。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体を上澄み液から分離し、35℃で一晩真空乾燥して含フッ素重合体を得た。
【0083】
<Mnの測定>
回収した含フッ素重合体を含フッ素溶媒(AGC社製、AK-225)/THF=6/4(体積比)の混合媒体に溶解させて、固形分濃度0.5質量%の溶液とし、0.2μmのフィルターに通し、分析サンプルとした。分析サンプルについて、GPC測定によりMnを測定した。測定条件は下記のとおりである。
装置:東ソー社製、HLC-8320GPC、
カラム:Polymer laboratories社製、MIXED-C 300×7.5mm 5μm、
移動相:AK-225/THF=6/4(体積比)の混合媒体、
流速:1.0mL/分、
オーブン温度:37℃、
試料濃度:1.0質量%、
注入量:50μL、
検出器:RI(屈折率検出器)、
分子量標準:ポリメチルメタクリレート(Mp=2136000、955000、569000、332800、121600、67400、31110、13300、7360、1950、1010、及び550)。
【0084】
(平均粒子径)
重合体の乳化粒子の平均粒子径は、撥液剤組成物を水で固形分濃度1質量%に希釈したサンプルについて動的光散乱法によって得られた自己相関関数からキュムラント法解析によって算出した。
【0085】
(水の接触角(撥水性))
JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、物品の表面の5箇所に純水の液滴を静置し、各液滴について静滴法によって純水の接触角を測定した。液滴は約2μL/滴であり、測定は20℃で行った。純水の接触角は、5箇所の測定値の平均値で示す。
【0086】
(n-ヘキサデカンの接触角(撥油性))
JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、物品の表面の5箇所にn-ヘキサデカンの液滴を静置し、各液滴について静滴法によってn-ヘキサデカンの接触角を測定した。液滴は約2μL/滴であり、測定は20℃で行った。n-ヘキサデカンの接触角は、5箇所の測定値の平均値で示す。
【0087】
(IPA接触角)
JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、物品の表面の5箇所にIPA80質量%水溶液の液滴を静置し、各液滴について静滴法によってIPAの接触角を測定した。液滴は約2μL/滴であり、測定は20℃で行った。IPAの接触角は、5箇所の測定値の平均値で示す。IPA80質量%水溶液の接触角は、物品の撥アルコール性の目安となる。
【0088】
(撥アルコール性)
測定されたIPA接触角から下記基準で撥アルコール性を評価した。
○:IPA接触角が50°以上。
△:IPA接触角が45°以上50°未満。
×:IPA接触角が45°未満。
【0089】
(単量体a)
C6OLF:CH2=CH-CF2CF2CF2CF2CF2CF3(東京化成工業社製)。
(単量体b)
VAc:酢酸ビニル(東京化成工業社製)。
VSt:ステアリン酸ビニル(東京化成工業社製)。
【0090】
(界面活性剤)
<界面活性剤B>
BL4.2:POEモノラウリルエーテル(HLB値11.5、エチレンオキシド約4.2モル付加物、日光ケミカルズ社製品名、NIKKOL BL4.2)。
BC5.5:POEモノセチルエーテル(HLB値10.5、エチレンオキシド約5.5モル付加物、日光ケミカルズ社製品名、NIKKOL BC5.5)。
<カチオン性界面活性剤>
LQ18-63:塩化アルキル(C16~C18)トリメチルアンモニウム(ライオンスペシャリティケミカルズ社製品名、リポカード18-63)の63質量%水及びIPA溶液。
【0091】
<他のノニオン性界面活性剤>
E120:POEモノラウリルエーテル(HLB値15.3、エチレンオキシド約12モル付加物、花王社製品名、エマルゲン120)の10質量%水溶液。
E430:POEモノオレイルエーテル(HLB値16.2、エチレンオキシド約30モル付加物、花王社製品名、エマルゲン430)の10質量%水溶液。
P204:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(日油社製品名、プロノン#204、平均分子量3330、ポリオキシエチレン40質量%含有)。
P104:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(日油社製品名、プロノン#104、平均分子量1670、ポリオキシエチレン40質量%含有)。
【0092】
(媒体)
水:イオン交換水。
DPG:ジプロピレングリコール。
(重合開始剤)
VA-061A:2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](VA-061、富士フイルム和光純薬社製)酢酸塩(VA-061A、VA-061と酢酸の質量比1:0.8)の20質量%水溶液。
【0093】
(例1~12)
撹拌装置付きの1リットルのオートクレーブに、表1~2に示す仕込量(部)で、VAc以外の単量体、媒体及び界面活性剤を入れて撹拌し、混合液を得た。混合液を高圧ホモジナイザーに投入して10MPaの圧力で前乳化を行い、次いで40MPaの圧力で高圧乳化分散し、乳化液を得た。ステンレス製オートクレーブに乳化液を入れ、そこに表1~2に示す仕込み量(部)でVAc及び重合開始剤を添加した。オートクレーブ内を0.5MPaの圧力で5回窒素置換し、45℃に昇温し、単量体成分を72時間重合させて含フッ素共重合体を含む分散液を得た。分散液の固形分濃度、分散液中の含フッ素共重合体のMn及び乳化粒子の平均粒子径を表1~2に示す。表1~2中、界面活性剤及び重合開始剤の仕込量は、媒体の質量を含めた全量である。
【0094】
各例の含フッ素重合体の組成(含フッ素重合体を構成する全単位に対する各単量体単位の割合)を以下に示す。含フッ素重合体の組成は、単量体成分の仕込み量に基づいて算出した。
例1~4、7~12:C6OLF44モル%、VAc56モル%。
例5:C6OLF41.8モル%、VAc56.1モル%、VSt2.2モル%。
例6:C6OLF47.5モル%、VAc47.8モル%、VSt4.8モル%。
【0095】
含フッ素共重合体分散液を蒸留水で希釈し、固形分濃度を1.0質量%に調整して撥液剤組成物を得た。
撥液剤組成物を、ガラス基板(ASLAB、SUPER GRADE MICROSCOPE SLIDES;THICK社製品名、縦:25mm、横:75mm、厚さ:1.0-1.2mm)の表面に、ディップコーター(装置名:F255)を用いて、速度0.5mm/秒で、3回往復させることにより塗布し、200℃で10分間乾燥したものを評価用の物品とした。物品について、水接触角(撥水性)及びn-ヘキサデカン接触角(撥油性)を測定し評価した。また併せてIPA接触角を測定し、撥アルコール性を評価した。結果を表1~2に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
重合体Aと界面活性剤Bとを含む組成物を用いて処理された例1~8の物品は、撥アルコール性に優れていた。また、撥水性、撥油性も良好であった。
界面活性剤Bの代わりに他のノニオン性界面活性剤を用いた例9~10の物品は、撥アルコール性に劣っていた。他のノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を併用した例11~12の物品は、例9~10よりもさらに撥アルコール性に劣っていた。