(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ガラス構造体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60J 1/00 20060101AFI20240521BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20240521BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20240521BHJP
H05B 3/84 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B60J1/00 H
B60S1/02 300
B60S1/02 400A
H05B3/20 327A
H05B3/84
(21)【出願番号】P 2020199301
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】津川 和俊
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/230733(WO,A1)
【文献】特開2020-015491(JP,A)
【文献】特開2010-103041(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157535(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012018001(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
B60S 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学装置が取り付けられる光学装置取付領域と、当該光学装置取付領域内に位置し、外部から前記光学装置への入射光および/または前記光学装置からの出射光が通る透光部と、当該透光部の少なくとも一部を囲む遮光加工部とを有する遮光加工ガラス板と、
前記遮光加工ガラス板の前記光学装置の取付面上に前記透光部および前記遮光加工部の一部を覆って取り付けられた、前記遮光加工ガラス板よりも薄い透光性板状部材とを有し、
前記透光性板状部材上に、電熱膜と、当該電熱膜に給電するための一対のバスバーと
、当該一対のバスバーの表面の少なくとも一部を覆う絶縁層とが形成され
、
前記絶縁層が遮光層である、ガラス構造体。
【請求項2】
光学装置が取り付けられる光学装置取付領域と、当該光学装置取付領域内に位置し、外部から前記光学装置への入射光および/または前記光学装置からの出射光が通る透光部と、当該透光部の少なくとも一部を囲む遮光加工部とを有する遮光加工ガラス板と、
前記遮光加工ガラス板の前記光学装置の取付面上に前記透光部および前記遮光加工部の一部を覆って取り付けられた、前記遮光加工ガラス板よりも薄い透光性板状部材とを有し、
前記透光性板状部材上に、電熱膜と、当該電熱膜に給電するための一対のバスバーとが形成され
、
前記バスバーと前記透光部との最短平面離間距離が3mm以上である、ガラス構造体。
【請求項3】
光学装置が取り付けられる光学装置取付領域と、当該光学装置取付領域内に位置し、外部から前記光学装置への入射光および/または前記光学装置からの出射光が通る透光部と、当該透光部の少なくとも一部を囲む遮光加工部とを有する遮光加工ガラス板と、
前記遮光加工ガラス板の前記光学装置の取付面上に前記透光部および前記遮光加工部の一部を覆って取り付けられた、前記遮光加工ガラス板よりも薄い透光性板状部材とを有し、
前記透光性板状部材上に、電熱膜と、当該電熱膜に給電するための一対のバスバーとが形成され
、
前記透光性板状部材の厚さに対する前記バスバーの厚さの比が0.05以下である、ガラス構造体。
【請求項4】
前記一対のバスバーは、平面視にて、前記透光部の外側に前記透光部を挟んで対向配置された、請求項1
~3のいずれか1項に記載のガラス構造体。
【請求項5】
前記透光性板状部材上にさらに、前記一対のバスバーの表面の少なくとも一部を覆う絶縁層が形成された、
請求項2または3に記載のガラス構造体。
【請求項6】
前記絶縁層が遮光層である、請求項5に記載のガラス構造体。
【請求項7】
前記一対のバスバーにそれぞれ端子が取り付けられた、
請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス構造体。
【請求項8】
前記バスバーと前記透光部との最短平面離間距離が3mm以上である、
請求項1または3に記載のガラス構造体。
【請求項9】
前記透光性板状部材は、強化ガラスおよび/またはエンジニアリングプラスチックからなる、
請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス構造体。
【請求項10】
前記透光性板状部材は、接着膜を介して、前記遮光加工ガラス板上に接着された、
請求項1~9のいずれか1項に記載のガラス構造体。
【請求項11】
前記透光性板状部材は、厚みが1mm以下である、
請求項1~10のいずれか1項に記載のガラス構造体。
【請求項12】
前記透光性板状部材の厚さに対する前記バスバーの厚さの比が0.05以下である、
請求項1または2に記載のガラス構造体。
【請求項13】
前記遮光加工ガラス板は、内部および/または表面の一部に遮光層が形成された合わせガラス、または、表面の一部に遮光層が形成された強化ガラスである、
請求項1~12のいずれか1項に記載のガラス構造体。
【請求項14】
前記遮光加工ガラス板を用意する工程(S11)と、
前記透光性板状部材上に前記電熱膜と前記一対のバスバーとが形成されたバスバー付き透光性板状部材を用意する工程(S12)と、
前記遮光加工ガラス板と前記バスバー付き透光性板状部材とを、接着用の樹脂フィルムを介して重ね、熱圧着する工程(S13)とを有する、
請求項1~13のいずれか1項に記載のガラス構造体の製造方法。
【請求項15】
前記遮光加工ガラス板は、内部および/または表面の一部に遮光層が形成された合わせガラスであり、
少なくとも1枚の表面の一部に前記遮光層が形成された複数のガラス板を用意する工程(S21)と、
前記透光性板状部材上に前記電熱膜と前記一対のバスバーとが形成されたバスバー付き透光性板状部材を用意する工程(S22)と、
前記複数のガラス板と前記バスバー付き透光性板状部材とを、各部材間に接着用の樹脂フィルムを配置して重ね、熱圧着する工程(S23)とを有する、
請求項1~13のいずれか1項に記載のガラス構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス構造体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、フロントガラスの内面に、自動運転および衝突事故の防止等のために、車両前方の情報を取得する、カメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、レーダー、および光センサ等の光学機器と、これを収容するブラケット等と呼ばれる筐体とを含む光学装置が設置される場合がある。
筐体は、フロントガラス側に光が通る窓部を有する。フロントガラスにおいて、光学装置の筐体の窓部に対向する部分は光が通る透光部とされ、その周囲に不要な光の入射を防止するために遮光加工が施された遮光加工部が設けられる。
【0003】
フロントガラスに使用されるガラス板としては、複数のガラス板が貼り合わされた合わせガラスまたは強化ガラスが好ましい。フロントガラスの材料のガラス板の所定の領域に、黒色顔料とガラスフリットとを含むペーストを塗工し、焼成して、遮光層を形成することで、ガラス板に遮光加工を施すことができる。遮光加工されたガラス板は、熱成形され、曲面を有する形状に加工される。
フロントガラスの材料として合わせガラスを用いる場合、合わせガラスの材料である複数のガラス板のうちの1つ以上に遮光層を形成してから複数のガラス板を貼り合わせて合わせガラスを製造してもよいし、製造された合わせガラスの表面に遮光層を形成してもよい。
【0004】
遮光加工ガラス板においては、遮光層のある遮光加工部は、遮光層のない透光部よりも相対的に厚くなる。また、熱成形工程では、黒色の遮光加工部が透光部より、熱吸収量が大きく、温度が高くなる。これら要因により、遮光加工ガラス板においては、遮光加工部と透光部との境界近傍に凹凸が生じ、これにより、遮光加工部と透光部との境界近傍に透視歪が生じ、光学装置によって得られる画像に歪みが生じる恐れがある。
特許文献1には、上記課題を解消することを目的とし、車両用窓ガラスの内表面上の遮光加工部の内側に、透光性板状部材(5)が接着剤(4)を介して貼り付けられた光学装置付き車両用窓ガラスが開示されている(請求項1および
図3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-131736号公報
【文献】国際公開第2014/157535号
【文献】特表2012-530646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学装置によるセンシング精度を高めるために、光学装置に含まれるカメラおよびレーダー等の光学機器の前方に位置するフロントガラスの透光部には、曇りおよび凍結の防止のために電熱膜を設けることが好ましい。
特許文献2には、フロントガラスが合わせガラスからなり、合わせガラスを構成する一対のガラス板の間に電熱膜(13)とこれに給電するための一対のバスバー(26、27)とを形成した車両用窓ガラスが開示されている(請求項1、[発明を実施するための形態]の項、
図1および
図2等)。
特許文献2に記載の車両用窓ガラスでは、平面視にて、略全面に電熱膜(13)が形成され、上端部と下端部にバスバー(26、27)が帯状に形成されている(
図1)。
【0007】
一般的に、電熱膜および一対のバスバーは、ガラス板上に銅ペーストおよび銀ペースト等の導電性ペーストを印刷し、加熱することで、形成される。特許文献2に記載の技術では、フロントガラスを構成する合わせガラスの材料のガラス板に対して、略全面に電熱膜を形成し、上端部と下端部にバスバーを帯状に形成するため、電熱膜と一対のバスバーの形成に時間とコストがかかる。
特許文献2に記載の技術ではまた、フロントガラスを構成する合わせガラスの内部に形成され、平面視にてフロントガラスの上下両端部に形成された一対のバスバーから配線を引き出す必要がある。この場合、バスバーからフロントガラスの側面を通って内面側または外面側に配線を引き出す必要があり、配線の引出しが遠回りとなり、見栄えもあまり良くない。
【0008】
特許文献3には、光学装置に含まれるカメラ等の光学機器の前方に位置するフロントガラスの部分(2)に、支持膜(3a)と電熱線(3c)とを含む加熱可能膜(3)を設けたガラス構造体が開示されている(請求項1、
図2および
図3等)。
支持膜(3a)の材料として、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルブチラール、およびポリエチル酢酸ビニルが挙げられている(請求項5)。
特許文献3には、電熱線(3c)上に取り付けられた少なくとも1つの電気的接触手段(4)について記載があるが、形状および配置等の詳細は不明である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、遮光加工部と透光部との境界近傍における透視歪を抑制でき、電熱膜およびバスバーを簡易に低コストに形成でき、バスバーからの配線引出の設計自由度が高いガラス構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下のガラス構造体とその製造方法を提供する。
[1] 光学装置が取り付けられる光学装置取付領域と、当該光学装置取付領域内に位置し、外部から前記光学装置への入射光および/または前記光学装置からの出射光が通る透光部と、当該透光部の少なくとも一部を囲む遮光加工部とを有する遮光加工ガラス板と、
前記遮光加工ガラス板の前記光学装置の取付面上に前記透光部および前記遮光加工部の一部を覆って取り付けられた、前記遮光加工ガラス板よりも薄い透光性板状部材とを有し、
前記透光性板状部材上に、電熱膜と、当該電熱膜に給電するための一対のバスバーとが形成された、ガラス構造体。
【0011】
[2] 前記遮光加工ガラス板を用意する工程(S11)と、
前記透光性板状部材上に前記電熱膜と前記一対のバスバーとが形成されたバスバー付き透光性板状部材を用意する工程(S12)と、
前記遮光加工ガラス板と前記バスバー付き透光性板状部材とを、接着用の樹脂フィルムを介して重ね、熱圧着する工程(S13)とを有する、[1]のガラス構造体の製造方法。
【0012】
[3] 前記遮光加工ガラス板は、内部および/または表面の一部に遮光層が形成された合わせガラスであり、
少なくとも1枚の表面の一部に前記遮光層が形成された複数のガラス板を用意する工程(S21)と、
前記透光性板状部材上に前記電熱膜と前記一対のバスバーとが形成されたバスバー付き透光性板状部材を用意する工程(S22)と、
前記複数のガラス板と前記バスバー付き透光性板状部材とを、各部材間に接着用の樹脂フィルムを配置して重ね、熱圧着する工程(S23)とを有する、[1]のガラス構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガラス構造体では、遮光加工ガラス板の光学装置の取付面上に、透光部および遮光加工部の一部を覆うように、遮光加工ガラス板よりも薄い透光性板状部材が取り付けられ、この透光性板状部材上に電熱膜および一対のバスバーが形成されている。
上記構成の本発明のガラス構造体では、遮光加工部と透光部との境界近傍における透視歪を抑制でき、電熱膜およびバスバーを簡易に低コストに形成でき、バスバーからの配線引出を自由に設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る第1実施形態のガラス構造体の全体平面図である。
【
図2】
図1のガラス構造体の第1態様のII-II線断面図である。
【
図3】
図1のガラス構造体の第1態様のIII-III線断面図である。
【
図4】
図1のガラス構造体の第2態様のII-II線断面図である。
【
図5】
図1のガラス構造体の第2態様のIII-III線断面図である。
【
図6A】
図1のガラス構造体の設計変更例を示す部分平面図である。
【
図6B】
図1のガラス構造体の他の設計変更例を示す部分平面図である。
【
図7】本発明に係る第2実施形態のガラス構造体の全体平面図である。
【
図8】
図7のガラス構造体の第1態様のVIII-VIII線断面図である。
【
図9】
図7のガラス構造体の第1態様のIX-IX線断面図である。
【
図10】
図7のガラス構造体の第2態様のVIII -VIII線断面図である。
【
図11】
図7のガラス構造体の第2態様のIX -IX線断面図である。
【
図12A】
図7のガラス構造体の設計変更例を示す部分平面図である。
【
図12B】
図7のガラス構造体の他の設計変更例を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般的に、薄膜構造体は、厚さに応じて、「フィルム」および「シート」等と称される。本明細書では、これらを明確には区別しない。したがって、本明細書で言う「フィルム」に「シート」が含まれる場合がある。
本明細書において、形状に付く「略」は、その形状の角を丸くした面取り形状、その形状の一部が欠けた形状、その形状に任意の小さな形状が追加した形状など、部分的に変化した形状を意味する。
本明細書において、特に明記しない限り、「上下」、「左右」、「縦横」は、ガラス構造体が車両等に嵌め込まれた状態(実際の使用状態)での「上下」、「左右」、「縦横」である。
本明細書において、特に明記しない限り、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
[第1実施形態のガラス構造体]
図面を参照して、本発明に係る第1実施形態のガラス構造体の構造について、説明する。
図1は、本実施形態のガラス構造体の全体平面図である。
図2は、本実施形態のガラス構造体の第1態様のII-II線断面図である。
図3は、本実施形態のガラス構造体の第1態様のIII-III線断面図である。
図4は、本実施形態のガラス構造体の第2態様のII-II線断面図である。
図5は、本実施形態のガラス構造体の第2態様のIII-III線断面図である。
図6Aおよび
図6Bは、設計変更例を示す部分平面図である。これらはいずれも模式図であり、視認しやすくするため、図面ごとに、各構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のガラス構造体1は、光学装置が取り付けられる光学装置取付領域OPと、光学装置取付領域OP内に位置し、外部から光学装置への入射光および/または光学装置からの出射光が通る透光部TPと、透光部TPの少なくとも一部を囲む遮光加工部BPとを有する遮光加工ガラス板10を有する。遮光加工部BPは、遮光加工が施された部分である。
【0018】
本実施形態のガラス構造体1は例えば、自動車等の車両用のガラスに好ましく適用できる。例えば、フロントガラス、サイドガラスおよびリアガラスに適用でき、フロントガラスに好ましく適用できる。ガラス構造体1の形状は適宜設計することができ、例えば、平面視略台形状の板が全体的湾曲した形状等が挙げられる。
【0019】
遮光加工ガラス板10は、遮光加工が施された遮光加工部BPを有するガラス板である。ガラス板としては、強化ガラス、合わせガラス、および有機ガラスが挙げられ、強化ガラスまたは合わせガラスが好ましい。
【0020】
図2および
図3に示す第1態様において、遮光加工ガラス板10は、強化ガラス11の表面の一部に遮光層BL(
図3では省略)が形成された遮光加工強化ガラス10Aである。
遮光加工強化ガラス10Aは、遮光層BLが形成された後、必要に応じて、熱成形され、曲面を有する形状に加工される。
【0021】
図4および
図5に示す第2態様において、遮光加工ガラス板10は、複数のガラス板12を中間膜13を介して貼り合わせた合わせガラスの内部および/または表面の一部に遮光層BL(
図5では省略)が形成された遮光加工合わせガラス10Bである。遮光加工合わせガラス10Bは、少なくとも1枚の表面の一部に遮光層BLが形成された複数のガラス板12を用意し、中間膜13を介して貼り合わせたものでもよいし、あらかじめ用意された合わせガラスの表面の一部に遮光層BLを形成したものでもよい。図示例では、遮光加工合わせガラス10Bは、表面の一部に遮光層BLが形成された2枚のガラス板12を中間膜13を介して貼り合わせたものである。合わせガラスは、3枚以上のガラス板を貼り合わせたものでもよい。
合わせガラスの材料である複数のガラス板は、必要に応じて、熱成形され、曲面を有する形状に加工された後、貼り合せられる。
【0022】
強化ガラスおよび合わせガラスの材料であるガラス板の種類としては特に制限されず、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、リチウムシリケートガラス、石英ガラス、サファイアガラス、および無アルカリガラス等が挙げられる。
強化ガラスは、上記のようなガラス板に対して、イオン交換法および風冷強化法等の公知方法にて強化加工を施したものである。強化ガラスとしては、風冷強化ガラスが好ましい。
強化ガラスの厚さは特に制限されず、用途に応じて設計される。車両のフロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス等の用途では、好ましくは2~6mmである。
合わせガラスの厚みは特に制限されず、用途に応じて設計される。車両のフロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス等の用途では、好ましくは2~6mmである。
【0023】
強化ガラスおよび合わせガラスは、表面の少なくとも一部の領域に、撥水、低反射性、低放射性、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽、および着色等の機能を有する被膜を有していてもよい。
合わせガラスは、内部の少なくとも一部の領域に、低反射性、低放射性、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽、および着色等の機能を有する膜を有していてもよい。合わせガラスの中間膜の少なくとも一部の領域が、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽、および着色等の機能を有していてもよい。合わせガラスの中間膜は、単層膜でも積層膜でもよい。
【0024】
有機ガラスの材料としては、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチック;ポリエチレンテレフタレート(PET):ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン(PS);これらの組合せ等が挙げられ、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチックが好ましい。
【0025】
遮光層BLは公知方法にて形成でき、例えば、強化ガラス11、合わせガラスの材料であるガラス板、合わせガラス、または有機ガラスの表面の所定の領域に、黒色顔料とガラスフリットとを含むペーストを塗工し、加熱することで、形成できる。
遮光層BLの厚さは特に制限されず、例えば、5~20μmである。
【0026】
図1~
図5に示すように、本実施形態のガラス構造体1は、遮光加工ガラス板10の光学装置の取付面10S上に透光部TPおよび遮光加工部BPの一部を覆って取り付けられた、遮光加工ガラス板10よりも薄い透光性板状部材31を有する。
図1に示すように、遮光加工部BPの領域は、透光性板状部材31の取付領域を含み、好ましくは透光性板状部材31の取付領域およびガラス構造体1の周縁部を含む。
【0027】
図示例において、光学装置取付領域OPは、透光性板状部材31の取付領域内に収まっているが、光学装置取付領域OPは、透光性板状部材31の取付領域からはみだしてもよい。
光学装置は例えば、自動運転および衝突事故の防止等のために、車両前方の情報を取得する、カメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、レーダー、および光センサ等の光学機器と、これを収容するブラケット等と呼ばれる筐体とを含むことができる。
光学装置取付領域OPおよび透光部TPの形状は光学装置の形状に合わせて適宜設計でき、略台形状および略矩形状等が挙げられる。光学装置取付領域OPおよび透光部TPの形状は、相似形でも非相似形でもよい。図示例では、光学装置取付領域OPおよび透光部TPの形状は、略台形状である。
図示例では、遮光加工部BPは透光部TPの四辺すべてを囲んでいるが、遮光加工部BPは透光部TPの少なくとも一部を囲んでいればよく、例えば、略台形状または略矩形状の透光部TPの三辺のみを囲むものであってもよい。
透光部TPが透過する光の波長域は特に制限されず、例えば、可視光域、赤外光域、および可視光域~赤外光域等である。
【0028】
図2~
図5に示すように、透光性板状部材31は、接着膜20を介して、遮光加工ガラス板10上に接着できる。
接着膜20は、樹脂膜からなる。その構成樹脂としては、遮光加工ガラス板10と透光性板状部材31とを良好に接着できる樹脂であれば特に制限されない。接着膜20は例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリウレタン(PU)、およびアイオノマー樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含むことが好ましい。
接着膜20は必要に応じて、樹脂以外の1種以上の添加剤を含んでいてもよい。
接着膜20の材料としては、上記例示の樹脂を含む樹脂フィルムが好ましく、合わせガラスの中間膜用の市販の樹脂フィルムおよび市販の光学フィルム等を用いることができる。
一般的な合わせガラスの中間膜用の市販の樹脂フィルムの厚みは200~760μmであり、これを用いて形成される接着膜20の厚みは190~760μmである。合わせガラスの中間膜用の市販の樹脂フィルムより薄い市販の光学フィルムを用いてもよい。
【0029】
本実施形態のガラス構造体1において、透光性板状部材31上に、電熱膜32と、電熱膜32に給電するための一対のバスバー41、42とが形成されている。図中、符号3は、透光性板状部材31と電熱膜32と一対のバスバー41、42とを含むバスバー付き透光性板状部材3である。
【0030】
透光性板状部材31の平面形状は適宜設計することができ、略矩形状、略台形状およびこれらの組合せ等が挙げられる。
図1では、透光性板状部材31の平面形状は略矩形状であり、
図6Aおよび
図6Bの設計変更例では、透光性板状部材31の平面形状は略台形状である。
透光性板状部材31の厚さは遮光加工ガラス板10より薄い条件を満たす範囲で適宜設計でき、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.8mm以下、特に好ましくは0.5mm以下、最も好ましくは0.3mm以下である。透光性板状部材31の厚さの下限値は特に制限されず、好ましくは0.1mmである。透光性板状部材31の厚さが1mm以下と薄いことで、遮光加工ガラス板10の湾曲面に対して透光性板状部材31を良好に馴染ませることができ、好ましい。
【0031】
透光性板状部材31の材料は特に制限されず、強化ガラスおよび/または樹脂が好ましい。樹脂としては、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチック;ポリエチレンテレフタレート(PET):ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン(PS);これらの組合せ等が挙げられ、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチックが好ましい。
透光性板状部材31が強化ガラスまたはポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックからなる場合、曲げ剛性が高く、電熱膜32の発熱に対して良好な耐熱性を有し、好ましい。
【0032】
光学装置に含まれるカメラおよびレーダー等の光学機器の前方に位置する透光部TPを含む領域に、曇りおよび凍結防止のための電熱膜32を設けることで、光学装置のセンシング精度を向上できる。
電熱膜32は、複数の電熱線が任意のパターンで配列したパターン膜でもよいし、金属メッシュからなるパターン膜でもよいし、透光性板状部材31の略全面または広範囲に形成された非パターン膜(いわゆるベタ膜)でもよい。図示例では、電熱膜32はベタ膜である。
【0033】
電熱膜32が複数の電熱線からなるパターン膜である場合、個々の電熱線のラインパターンおよび配列パターンは特に制限されない。例えば、平面視にて波線状および折線状等の複数の電熱線が所定の間隔で並置され、これらが一対のバスバー41、42に並列に接続されたパターン等が好ましい。なお、一方のバスバー(一方の極)から他方のバスバー(他方の極)に至るまでの途中で、電熱線の波長および/または周期が変化してもよい。一方のバスバー(一方の極)から他方のバスバー(他方の極)に至るまでの間、互いに隣接する電熱線の位相は揃っていてもずれていてもよい。互いに隣接する電熱線の位相がずれていると、光の規則的な散乱による光芒を抑制でき、好ましい。
【0034】
電熱膜32は、1種以上の導電性材料を含む。電熱膜32は、ベタ膜である場合、透光性導電膜であることが好ましい。電熱膜32の材料としては、Ag、Au、Cu、Pd、Pt、Ti、Cr、Ni、Al、Zr、W、V、Rh、Ir、およびこれらの合金等の金属;ZnO、SnO2、In2O3(ITO)、WO3、Al2O3、Ga2O5、TiO2、およびTa2O5等の金属酸化物;これらの組合せが挙げられる。電熱膜32は、積層膜であってもよい。
【0035】
材料自体が不透明材料であっても、膜全体として透光性を有するように、電熱膜32の厚さおよびパターンを設計すればよい。
電熱膜32の厚さは特に制限されず、曇りおよび凍結の防止機能と透明性のバランスの観点から、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.05~10μmである。
電熱膜32の成膜方法は特に制限されず、スパッタ法、真空蒸着法およびイオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition);化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition);ウェットコーティング法等が挙げられる。
電熱膜32のシート抵抗は特に制限されず、好ましくは100Ω/□以下である。
【0036】
バスバー41、42の平面形状および形成位置は、光学装置の取付けに支障のない範囲で適宜設計できる。
バスバー41、42の平面形状としては、ライン状、帯状、略矩形状、略台形状、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
図1、
図6Aおよび
図6Bの設計変更例に示すように、一対のバスバー41、42は、平面視にて、透光部TPの外側に透光部TPを挟んで対向配置できる。この場合、電熱膜32を均一加熱しやすく、好ましい。一対のバスバー41、42は、平面視にて、透光部TPの外側に透光部TPを挟んで上下または左右に配置できる。
図1、
図6Aおよび
図6Bの設計変更例に示すように、透光性板状部材31の歪み抑制および美観の観点から、一対のバスバー41、42は、平面視にて、透光部TPの外側に透光部TPを挟んで左右に配置することが好ましく、横長の透光性板状部材31上に、帯状の一対のバスバー41、42を透光部TPの外側に透光部TPを挟んで左右に配置することがより好ましい。
個々の帯状のバスバー41、42は、
図1に示すように上下に延びるように配置してもよいし、
図6Aおよび
図6Bの設計変更例に示すように斜めに延びるように配置してもよい。
図1、
図6Aおよび
図6Bの設計変更例に示すように、一対のバスバー41、42は、平面視にて、透光部TPの外側に透光部TPを挟んで線対称に配置することが好ましい。
【0037】
バスバー41、42は、
図1および
図6Aの設計変更例に示すように、光学装置取付領域OPの外側に配置してもよいし、
図6Bの設計変更例に示すように、光学装置取付領域OPの内側に配置してもよい。バスバー41、42は、光学装置取付領域OPの内側に配置することが好ましい。
【0038】
バスバー41、42は、1種以上の導電性材料を含む導電膜である。バスバー41、42の材料としては、Ag、Au、Cu、Pd、Pt、Ti、Cr、Ni、Al、Zr、W、V、Rh、Ir、およびこれらの合金等の金属;ZnO、SnO2、In2O3(ITO)、WO3、Al2O3、Ga2O5、TiO2、およびTa2O5等の金属酸化物;これらの組合せが挙げられる。バスバー41、42は、積層膜であってもよい。
【0039】
透光性板状部材31上に一対のバスバー41、42を形成しても、透光性板状部材31に対して一対のバスバー41、42の厚さが充分に小さければ、透光性板状部材31の歪みが抑制され、好ましい。
透光性板状部材31の歪み抑制の観点から、透光性板状部材31の厚さに対するバスバー41、42の厚さの比(バスバーの厚さ/透光性板状部材の厚さ)は、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.02以下である。
【0040】
バスバー41、42の厚さは特に制限されず、透光性板状部材31の厚さに応じて設計できる。バスバー41、42の厚さは、透光性板状部材31の歪み抑制の観点から、薄い方が好ましい。透光性板状部材31の歪み抑制と形成容易性の観点から、バスバー41、42の厚さは、好ましくは5~20μm、より好ましくは6~10μmである。
バスバー41、42の形成方法は特に制限されない。バスバー41、42は例えば、電熱膜32を形成した透光性板状部材31上に、1種以上の導電性粒子を含む導電性ペーストを印刷し、加熱することで、形成できる。導電性ペーストとしては、銅粒子と有機バインダーとを含む銅ペースト、および、銀粒子と有機バインダーとを含む銀ペースト等が好ましい。
【0041】
図1~
図5に示すように、一対のバスバー41、42にはそれぞれ、必要に応じて端子61、62が取り付けられる。
端子61、62の平面形状およびバスバー41、42に対する端子61、62の取付位置は、光学装置の取付けに支障のない範囲で適宜設計できる。
図1および
図3に示す例では、バスバー41、42の中央部上に端子61、62が取り付けられている。後記第2実施例形態において
図7に示す例では、バスバー41、42の一端部上に端子61、62が取り付けられている。平面視にて、端子61、62は、少なくとも一部がバスバー41、42上に位置していればよく、
図6Aおよび
図6Bの設計変更例に示すように、端子61、62の一部は、バスバー41、42からはみ出していてもよい。
端子61、62は公知方法にてバスバー41、42に取り付けることができ、例えば、半田を用いた固定方法が好ましい。
図3に示すように、バスバー41には必要に応じて、コネクタ71およびリード線72等を接続できる。
一対のバスバー41、42間に電圧を印加して、電熱膜32に電流を流すことで、ガラス構造体1の曇りおよび凍結を防止できる。
【0042】
一般的に、遮光加工ガラス板においては、遮光層のある遮光加工部は、遮光層のない透光部よりも相対的に厚くなる。また、ガラス板の熱成形工程では、黒色の遮光加工部が透光部より、熱吸収量が大きく、温度が高くなる。これら要因により、遮光加工ガラス板においては、遮光加工部と透光部との境界近傍に凹凸が生じ、これにより、遮光加工部と透光部との境界近傍に透視歪が生じ、光学装置によって得られる画像に歪みが生じる恐れがある。
【0043】
本実施形態のガラス構造体1は、遮光加工ガラス板10の光学装置の取付面10S上に好ましくは接着膜20を介して、透光部TPおよび遮光加工部BPの一部を覆うように、遮光加工ガラス板10よりも薄い透光性板状部材31を取り付けているため、
図2および
図4に示すように、遮光加工ガラス板10の遮光加工部BPと透光部TPとの境界近傍の凹凸を小さくして、遮光加工ガラス板10の遮光加工部BPと透光部TPとの境界近傍の透視歪を抑制し、光学装置によって得られる画像に歪みが生じるのを抑制できる。
透視歪の有無またはレベルは例えば、ガラス構造体を通してゼブラパターンを視認したときに見られるパターンの歪みで評価できる。
【0044】
[背景技術]の項で挙げた特許文献2に記載の車両用窓ガラスでは、フロントガラスを構成する合わせガラスの内部に、略全面に電熱膜が形成され、上下両端部にバスバーが帯状に形成されている。
本実施形態では、電熱膜32および一対のバスバー41、42は、面積の大きい遮光加工ガラス板10上ではなく、面積の小さい透光性板状部材31上に形成すればよいため、電熱膜32および一対のバスバー41、42の形成領域が狭く、遮光加工ガラス板10の製造とは別工程で、電熱膜32および一対のバスバー41、42を簡易に低コストに形成できる。
【0045】
特許文献2に記載の車両用窓ガラスでは、フロントガラスを構成する合わせガラスの内部に形成され、平面視にてフロントガラスの上下両端部に形成された一対のバスバーから配線を引き出す必要がある。この場合、バスバーからフロントガラスの側面を通って内面側または外面側に配線を引き出す必要があり、配線の引出しが遠回りとなり、見栄えもあまり良くない。
本実施形態では、透光性板状部材31上に、電熱膜32と一対のバスバー41、42とが形成されるため、バスバー41、42からの配線引出の設計自由度が高く、バスバー41、42からの配線引出を美観良く設計できる。
【0046】
合わせガラスの内部に電熱膜と一対のバスバーを封入する特許文献2に記載の車両用窓ガラスと異なり、本実施形態のガラス構造体1では、透光性板状部材31上に形成された電熱膜32により結露面を直接加熱できるため、防曇性能も高く、好ましい。
【0047】
バスバー41、42と透光部TPとの平面離間距離は、特に制限されない。バスバー近傍の透視歪防止の観点から、バスバー41、42と透光部TPとの最短平面離間距離は、好ましくは3mm以上である。視野確保の観点から、バスバー41、42と透光部TPとの最短平面離間距離の上限は、好ましくは20mmである。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、遮光加工部と透光部との境界近傍における透視歪を抑制でき、電熱膜およびバスバーを簡易に低コストに形成でき、バスバーからの配線引出の設計自由度が高いガラス構造体1を提供できる。
【0049】
[第2実施形態のガラス構造体]
図面を参照して、本発明に係る第2実施形態のガラス構造体の構造について、説明する。
図7は、本実施形態のガラス構造体の全体平面図であり、透視図である。
図8は、本実施形態のガラス構造体の第1態様のVIII-VIII線断面図である。
図9は、本実施形態のガラス構造体の第1態様のIX-IX線断面図である。
図10は、本実施形態のガラス構造体の第2態様のVIII-VIII線断面図である。
図11は、本実施形態のガラス構造体の第2態様のIX -IX線断面図である。
図12Aおよび
図12Bは、設計変更例を示す部分平面図であり、透視図である。これらはいずれも模式図であり、視認しやすくするため、図面ごとに、各構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は適宜省略する。
【0050】
本実施形態のガラス構造体2は、第1実施形態のガラス構造体1と同様、光学装置が取り付けられる光学装置取付領域OPと、光学装置取付領域OP内に位置し、外部から光学装置への入射光および/または光学装置からの出射光が通る透光部TPと、透光部TPの少なくとも一部を囲む遮光加工部BPとを有する遮光加工ガラス板10を有する。
本実施形態のガラス構造体2は、第1実施形態のガラス構造体1と同様、遮光加工ガラス板10の光学装置の取付面10S上に透光部TPおよび遮光加工部BPの一部を覆って取り付けられた、遮光加工ガラス板10よりも薄い透光性板状部材31を有する。
本実施形態のガラス構造体2においても、第1実施形態のガラス構造体1と同様、透光性板状部材31上に、電熱膜32と、電熱膜32に給電するための一対のバスバー41、42とが形成されている。
【0051】
第1実施形態の第1態様と同様、
図8および
図9に示す第1態様において、遮光加工ガラス板10は、強化ガラス11の表面の一部に遮光層BL(
図9では省略)が形成された遮光加工強化ガラス10Aである。
第1実施形態の第2態様と同様、
図10および
図11に示す第2態様において、遮光加工ガラス板10は、複数のガラス板12を中間膜13を介して貼り合わせた合わせガラスの内部および/または表面の一部に遮光層BL(
図11では省略)が形成された遮光加工合わせガラス10Bである。
【0052】
第1実施形態と同様、バスバー41、42は、
図7および
図12Aの設計変更例に示すように、光学装置取付領域OPの外側に配置してもよいし、
図12Bの設計変更例に示すように、光学装置取付領域OPの内側に配置してもよい。バスバー41、42は、光学装置取付領域OPの内側に配置することが好ましい。
【0053】
図7~
図11、
図12Aおよび
図12Bの設計変更例に示すように、本実施形態のガラス構造体2では、第1実施形態のガラス構造体1とは異なり、透光性板状部材31上に、一対のバスバー41、42の表面の少なくとも一部を覆う絶縁層51、52が形成されている。
絶縁層51、52は遮光層であることが好ましい。絶縁層51、52は、公知方法にて形成できる。遮光層である絶縁層51、52は例えば、電熱膜32およびバスバー41、42を形成した透光性板状部材31上の所定の領域に、黒色顔料とガラスフリットとを含むペーストを塗工し、焼成することで、形成できる。
図中、符号4は、透光性板状部材31上に電熱膜32、一対のバスバー41、42および絶縁層51、52が形成されたバスバー付き透光性板状部材である。
【0054】
バスバー付き透光性板状部材4においては、電熱膜32/透光性板状部材31の積層体のバスバーの非形成領域上に、絶縁層を設けてもよい(図示略)。さらに、この絶縁層上に光学装置取付用の接着膜を形成してもよい。接着膜は例えば、両面テープの貼付または接着剤の塗布により、形成することができる。
【0055】
本実施形態のガラス構造体2は、基本構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。本実施形態によっても、遮光加工部と透光部との境界近傍における透視歪を抑制でき、電熱膜およびバスバーを簡易に低コストに形成でき、バスバーからの配線引出の設計自由度が高いガラス構造体2を提供できる。
本実施形態では、一対のバスバー41、42の表面の少なくとも一部を覆うように絶縁層51、52を設けているので、利用者が一対のバスバー41、42の表面に触れて感電することを抑制でき、好ましい。
【0056】
[第1実施形態のガラス構造体の製造方法]
本発明に係る第1実施形態のガラス構造体の製造方法は、
遮光加工ガラス板10を用意する工程(S11)と、
透光性板状部材31上に電熱膜32と一対のバスバー41、42とが形成されたバスバー付き透光性板状部材3または4を用意する工程(S12)と、
遮光加工ガラス板10とバスバー付き透光性板状部材3または4とを、接着用の樹脂フィルムを介して重ね、熱圧着する工程(S13)とを有する。
【0057】
(工程(S11))
図2、
図3、
図8および
図9に示したような強化ガラス11の表面の一部に遮光層BL(
図3および
図9では省略)が形成された遮光加工強化ガラス10A、または、
図4、
図5、
図10および
図11に示したような複数のガラス板12を中間膜13を介して貼り合わせた合わせガラスの内部および/または表面の一部に遮光層BL(
図5および
図11では省略)が形成された遮光加工合わせガラス10Bを用意する。遮光層BLの形成方法は上記したので、ここでは省略する。
【0058】
(工程(S12))
別途、透光性板状部材31上に電熱膜32を形成し、一対のバスバー41、42を形成し、さらに必要に応じて絶縁層51、52を形成して、バスバー付き透光性板状部材3または4を用意する。電熱膜32および一対のバスバー41、42の形成方法は上記したので、ここでは省略する。
工程(S11)と工程(S12)の順序は特に制限されず、いずれの工程が先でもよく、これらの工程を同時に実施してもよい。
【0059】
(工程(S13))
遮光加工ガラス板10とバスバー付き透光性板状部材3または4とを、接着用の樹脂フィルムを介して重ねて仮積層体を得、熱圧着する。熱圧着は公知方法にて実施することができ、自動加圧加熱処理装置およびオートクレーブ等を用いて実施できる。温度、圧力、および時間の熱圧着条件は特に制限されず、接着用の樹脂フィルムの種類と温度に応じて設計される。熱圧着条件は、接着用の材料である樹脂フィルムが軟化し、充分に加圧され、遮光加工ガラス板10とバスバー付き透光性板状部材3または4とが接着膜20を介して充分に接着される条件であればよい。例えば、温度は80~140℃程度、圧力は0.8~1.5MPa程度、時間は60~120分程度が好ましい。
接着用の樹脂フィルムが軟化した状態で圧着されることで、遮光加工ガラス板10の表面にある遮光層BLの間が接着膜20で埋まり、遮光加工ガラス板10の遮光加工部BPと透光部TPとの境界近傍の表面凹凸が低減される。この結果、遮光加工ガラス板10の遮光加工部BPと透光部TPとの境界近傍の透視歪が抑制され、光学装置によって得られる画像に歪みが生じるのが抑制される。
【0060】
[第2実施形態のガラス構造体の製造方法]
本発明に係る第2実施形態のガラス構造体の製造方法は、
遮光加工ガラス板10が、内部および/または表面の一部に遮光層BLが形成された合わせガラスであり、
少なくとも1枚の表面の一部に遮光層BLが形成された複数のガラス板12を用意する工程(S21)と、
透光性板状部材31上に電熱膜32と一対のバスバー41、42とが形成されたバスバー付き透光性板状部材3または4を用意する工程(S22)と、
複数のガラス板12とバスバー付き透光性板状部材3または4とを、各部材間に接着用の樹脂フィルムを配置して重ね、熱圧着する工程(S23)とを有する。
【0061】
(工程(S21))
図4、
図5、
図10および
図11に示したような、少なくとも1枚の表面の一部に遮光層BLが形成された、合わせガラスの材料である複数のガラス板12を用意する。
【0062】
(工程(S22))
別途、透光性板状部材31上に電熱膜32を形成し、一対のバスバー41、42を形成し、さらに必要に応じて絶縁層51、52を形成して、バスバー付き透光性板状部材3または4を用意する。
工程(S21)と工程(S22)の順序は特に制限されず、いずれの工程が先でもよく、これらの工程を同時に実施してもよい。
【0063】
(工程(S23))
合わせガラスの材料である複数のガラス板12とバスバー付き透光性板状部材3または4とを、各部材間に接着用の樹脂フィルムを配置して重ねて仮積層体を得、熱圧着する。熱圧着条件は、工程(S13)と同様である。
【0064】
第2実施形態のガラス構造体の製造方法では、合わせガラスの製造と、合わせガラスに対するバスバー付き透光性板状部材3または4の接着とを同時に行うことができ、好ましい。
【符号の説明】
【0065】
1、2:ガラス構造体、3、4:バスバー付き透光性板状部材、10:遮光加工ガラス板、10A:遮光加工強化ガラス、10B:遮光加工合わせガラス、10S:取付面、11:強化ガラス、12:ガラス板、13:中間膜、20:接着膜、31:透光性板状部材、32:電熱膜、41、42:バスバー、51、52:絶縁層、61、62:端子、BL:遮光層、BP:遮光加工部、OP:光学装置取付領域、TP:透光部。