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特許7491342両面粘着シート、画像表示装置構成用部材を有する積層体、積層体形成キット及び両面粘着シートの使用
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  • 特許-両面粘着シート、画像表示装置構成用部材を有する積層体、積層体形成キット及び両面粘着シートの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】両面粘着シート、画像表示装置構成用部材を有する積層体、積層体形成キット及び両面粘着シートの使用
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240521BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240521BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240521BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240521BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240521BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240521BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20240521BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G09F9/30 308Z
G09F9/00 313
G09F9/30 365
C09J7/38
C09J133/04
C09J4/02
C09J11/06
C09J7/10
B32B27/00 M
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022090086
(22)【出願日】2022-06-02
(62)【分割の表示】P 2019507600の分割
【原出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2022130400
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2017058211
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】三荒 直也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 秀次郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋也
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108555(JP,A)
【文献】特開2012-181418(JP,A)
【文献】特開2016-151580(JP,A)
【文献】特開2016-121305(JP,A)
【文献】特開2012-246477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
H10K 59/10
H10K 50/10
G09F 9/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲又は湾曲可能な画像表示装置構成用フレキシブル部材と、基材レスの両面粘着シートとを有する積層体であって、
前記両面粘着シートは、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)、架橋剤(B)及び光開始剤(C)を含有する粘着剤組成物の硬化物からなり前記架橋剤(B)として多官能(メタ)アクリレートを含み、厚みが10μm以上150μm以下であり、かつ、動的粘弾性のTanδピーク温度で定義される、硬化後のガラス転移温度(Tg)が-50℃~-20℃の範囲内にあり、かつ、硬化後の周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)が、2.0×10~3.0×10Paの範囲内にあり、かつ、横軸に温度、縦軸に硬化後のせん断貯蔵弾性率(G’)の対数をプロットした貯蔵弾性率-温度グラフにおいて、前記貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、該指数曲線の底の自然対数が-0.010以上となることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、カルボキシル基含有モノマーを(共)重合成分として含まず、かつ、(共)重合成分として、少なくとも水酸基含有モノマー又はアミド基含有モノマーのいずれか若しくは両方を含む、請求項に記載の積層体。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、(共)重合成分として、(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合した(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記光開始剤(C)が、水素引抜型の光開始剤である、請求項1~の何れか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記両面粘着シートは、硬化後の周波数1Hz、温度50℃における貯蔵弾性率G’が、3.0×10~4.0×10Paの範囲内にある、請求項1~の何れか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記画像表示装置構成用部材は、表面保護パネル、タッチパネル、光学フィルム及び有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネルからなる群のうち2種類以上の組み合わせである、請求項1~の何れか一項に記載の積層体。
【請求項7】
曲面形状を有している、請求項1~の何れか一項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1~の何れか一項に記載の積層体を備えた、フレキシブルディスプレイ。
【請求項9】
基材レスの両面粘着シートであって、
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)、架橋剤(B)及び光開始剤(C)を含有する粘着剤組成物の硬化物からなり前記架橋剤(B)として多官能(メタ)アクリレートを含み、
動的粘弾性のTanδピーク温度で定義される、硬化後のガラス転移温度(Tg)が、-50℃~-20℃の範囲内にあり、かつ、硬化後の周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)が、2.0×10~3.0×10Paの範囲内にあり、かつ、厚みが10μm以上150μm以下であり、かつ、横軸に温度、縦軸に硬化後のせん断貯蔵弾性率(G’)の対数をプロットした貯蔵弾性率-温度グラフにおいて、前記貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、該指数曲線の底の自然対数が-0.010以上となることを特徴とする、両面粘着シート。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、カルボキシル基含有モノマーを(共)重合成分として含まず、かつ、(共)重合成分として、少なくとも水酸基含有モノマー又はアミド基含有モノマーのいずれか若しくは両方を含む、請求項に記載の両面粘着シート。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、(共)重合成分として、(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合した(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、請求項9又は10に記載の両面粘着シート。
【請求項12】
前記光開始剤(C)が、水素引抜型の光開始剤である、請求項11の何れか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項13】
周波数1Hz、温度50℃における硬化後の貯蔵弾性率G’が、3.0×10~4.0×10Paの範囲内にある、請求項12の何れか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項14】
フレキシブルディスプレイを構成する、画像表示装置構成用フレキシブル部材を貼合するために用いる両面粘着シートであって、
請求項13の何れか一項に記載の両面粘着シートを用いてなる、フレキシブルディスプレイ用両面粘着シート。
【請求項15】
請求項1~の何れか一項に記載の積層体を形成するための積層体形成キットであって、屈曲又は湾曲可能な画像表示装置構成用フレキシブル部材と、該フレキシブル部材に貼合するための両面粘着シートとを含み、
前記両面粘着シートは、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)、架橋剤(B)及び光開始剤(C)を含有する粘着剤組成物の硬化物からなり前記架橋剤(B)として多官能(メタ)アクリレートを含み、厚みが10μm以上150μm以下であり、かつ、動的粘弾性のTanδピーク温度で定義される、硬化後のガラス転移温度(Tg)が-50℃~-20℃の範囲内にあり、かつ、硬化後の周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)が、2.0×10~3.0×10Paの範囲内にあり、かつ、横軸に温度、縦軸に硬化後のせん断貯蔵弾性率(G’)の対数をプロットした貯蔵弾性率-温度グラフにおいて、前記貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、該指数曲線の底の自然対数が-0.010以上となることを特徴とする、積層体形成キット。
【請求項16】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、カルボキシル基含有モノマーを(共)重合成分として含まず、かつ、(共)重合成分として、少なくとも水酸基含有モノマー又はアミド基含有モノマーのいずれか若しくは両方を含む、請求項15に記載の積層体形成キット。
【請求項17】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、(共)重合成分として、(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合した(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、請求項15又は16に記載の積層体形成キット。
【請求項18】
前記光開始剤(C)が、水素引抜型の光開始剤である、請求項1517の何れか一項に記載の積層体形成キット。
【請求項19】
前記両面粘着シートは、硬化後の周波数1Hz、温度50℃における貯蔵弾性率G’が、3.0×10~4.0×10Paの範囲内にある、請求項1518の何れか一項に記載の積層体形成キット。
【請求項20】
画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての両面粘着シートの使用であって、
前記両面粘着シートは、基材レスであって、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)、架橋剤(B)及び光開始剤(C)を含有する粘着剤組成物の硬化物からなり前記架橋剤(B)として多官能(メタ)アクリレートを含み、厚みが10μm以上150μm以下であり、かつ、動的粘弾性のTanδピーク温度で定義される、硬化後のガラス転移温度(Tg)が-50℃~-20℃の範囲内にあり、かつ、硬化後の周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)が2.0×10~3.0×10Paの範囲内にあり、かつ、横軸に温度、縦軸に硬化後のせん断貯蔵弾性率(G’)の対数をプロットした貯蔵弾性率-温度グラフにおいて、前記貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、該指数曲線の底の自然対数が-0.010以上となることを特徴とする、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての両面粘着シートの使用。
【請求項21】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、カルボキシル基含有モノマーを(共)重合成分として含まず、かつ、少なくとも水酸基含有モノマー又はアミド基含有モノマーのいずれか若しくは両方を、共重合成分として含む、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての請求項20に記載の両面粘着シートの使用。
【請求項22】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、(共)重合成分として、(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合した(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての請求項20又は21に記載の両面粘着シートの使用。
【請求項23】
前記光開始剤(C)が、水素引抜型の光開始剤である、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての請求項2022の何れか一項に記載の両面粘着シートの使用。
【請求項24】
周波数1Hz、温度50℃における硬化後の貯蔵弾性率G’が、3.0×10~4.0×10Paの範囲内にある、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての請求項2023の何れか一項に記載の両面粘着シートの使用。
【請求項25】
前記画像表示構成部材は、表面保護パネル、タッチパネル、光学フィルム及び有機ELディスプレイパネルからなる群のうち2種類以上の組み合わせである、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての請求項2024の何れか一項に記載の両面粘着シートの使用。
【請求項26】
請求項2025の何れか一項に記載の両面粘着シートの使用による、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの画像表示装置構成用部材、中でも屈曲又は湾曲可能なフレキシブル画像表示装置構成用部材(いわゆるフレキシブル部材)の貼合に好適に使用することができる両面粘着シート及びその使用等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の視認性を向上させるために、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示パネルと、その前面側(視認側)に配置する保護パネルやタッチパネル部材との間の空隙を接着剤で充填することにより、入射光や表示画像からの出射光の空気層界面での反射を抑えることが行われている。
【0003】
現在、これらの画像表示パネルには、液晶ディスプレイパネル(LCD)等の平面状ディスプレイパネルが主に使用されている。
【0004】
このような画像表示装置構成用部材間の空隙を粘着剤で充填する方法として、画像表示装置構成用部材間の空隙を、粘着シートを用いて充填する方法が知られている。
【0005】
例えば特許文献1には、被着面に異物が存在したとしても、常圧下での貼合時はもちろん、減圧環境下においても視認可能な気泡の発生を抑えることができる粘着シートとして、20℃基準マスターカーブによる粘着シートの貯蔵せん断弾性率が、周波数10-3Hz及び10-5Hzのいずれにおいても5×10Pa以上1×10Pa以下の範囲内に入る物性を備えた粘着シートが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、粘着シートを介して貼り合せた積層体をカットした際、経時的にカット端面がベタツクことなく、しかも被着面に凹凸があっても気泡が残留することなく貼着でき、さらには、被着体がプラスチック等のアウトガスを発生する材料のものであっても発泡することなく貼着できる、新たな透明粘着シートとして、異なる粘弾性挙動を有する第1粘着層及び第2粘着層をそれぞれ1層以上有し、且つ、これらの層を積層し一体化してなる構成を備えた粘着シートであって、周波数1Hzの温度分散で測定した動的剪断貯蔵弾性率G’の値が、20℃で2×10~5×10Paであり、かつ150℃で1×10~1×10Paである、透明粘着シートについて開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、被着体へ貼合する際に、印刷部位による段差や凹凸への追随性に優れているばかりか、裁断加工性等の作業性にも優れた透明両面粘着シートとして、中間樹脂層(A)と、表裏面層としての感圧接着剤層(B)とを有する透明両面粘着シートであって、各層はいずれも、1種類以上の(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体をベース樹脂とする層であり、温度範囲0℃~100℃において、周波数1Hzにおける中間樹脂層(A)の貯蔵剪断弾性率(G'(A))が、感圧接着剤層(B)より高く、且つ、シート全体の押込硬度(アスカーC2硬度)が10~80であることを特徴とする透明両面粘着シートについて開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、段差部及び平坦面部を貼合面に有する画像表示装置構成部材と、他の画像表示装置構成部材とを貼合するために用いられる画像表示装置用透明両面粘着シートとして、粘着シートの最大厚み部分の厚みが250μm以下であって、貼合後における前記段差部に接する位置のゲル分率(a)が、10%以上であって、かつ、前記平坦面部に接する位置のゲル分率(b)よりも小さいことを特徴とする画像表示装置用透明両面粘着シートについて開示されている。
【0009】
ところで、最近では、次世代のディスプレイとして、自由自在に屈曲可能なフレキシブルディスプレイが注目を浴びている。フレキシブルディスプレイには、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイが主に使用されている。
【0010】
フレキシブルディスプレイには、柔軟な薄いガラス基板やプラスチック基板が用いられることから、これら画像表示装置構成用部材の貼合に用いられる両面粘着シートには、従来の平面状ディスプレイパネルで必要とされた光学特性や耐久性に加えて、屈曲試験をしても折れやはがれや浮きが発生しないことが要求される。
【0011】
このようなフレキシブルディスプレイに使用可能な粘着シートとして、特許文献5には、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を含む、光学フィルム用粘着剤であって、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の、ガラス転移温度が-70℃以上-55℃以下であり、かつ、重量平均分子量が100万を超えて250万以下である、光学フィルム用粘着シートについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開WO2007/029557号パンフレット
【文献】国際公開WO2010/044229号パンフレット
【文献】国際公開WO2011/129200号パンフレット
【文献】国際公開WO2013/108565号パンフレット
【文献】特開2016-108555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ディスプレイ技術の画期的な進歩により、ディスプレイを構成する画像表示装置構成用部材を貼合するための両面粘着シートにも新たな課題が生じてきている。
【0014】
フレキシブルディスプレイを構成する画像表示装置構成用部材は、自由自在に屈曲可能である為に、これらの貼合に使用される両面粘着シートには、屈曲試験後に折れや剥がれや浮きが発生することのない、折り曲げ耐性が要求されることになるが、確立した屈曲試験方法が存在するわけではない。
このように、より実使用環境下に近い条件下において、折れや剥がれが発生することのない、高い折り曲げ耐性を有する両面粘着シートが求められる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、実使用環境下に近い屈曲試験によっても、折れや剥がれが発生することのない、高い折り曲げ耐性を有する両面粘着シートを提供すること、さらには、画像表示装置構成用フレキシブル部材を貼合する際の両面粘着シートの使用方法や、該両面粘着シートを用いて得られる画像表示装置構成用フレキシブル部材を有する積層体や、該積層体を形成するための積層体形成キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ところで、特許文献5には、粘着シートを構成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度が-70℃以上-55℃以下であると、接着力に優れ、折り曲げ耐久性を有する粘着シートになることが開示されている。
【0017】
しかしながら、本発明者は、両面粘着シートの特性と、折り曲げ耐性の関係をより詳細に研究したところ、両面粘着シートの厚みを10μm以上150μm以下の範囲内とする場合には、(1)両面粘着シートを構成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度が-50℃以上-20℃以下であること、及び、(2)周波数1Hz、温度100℃における両面粘着シートの貯蔵弾性率G’が、2.0×10~3.0~10Paの範囲内にあることが重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
さらに、本発明者は、(3)両面粘着シートが、横軸に温度、縦軸にせん断貯蔵弾性率(G’)の対数をプロットした貯蔵弾性率-温度グラフにおいて、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、該指数曲線の底の自然対数が-0.01以上となる両面粘着シートが、より優れた折り曲げ耐久性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明の要旨は、下記に存する。
【0020】
[1]屈曲又は湾曲可能な画像表示装置構成用フレキシブル部材と、基材レスの両面粘着シートとを有する積層体であって、前記両面粘着シートは、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)を含有する粘着剤組成物から形成され、厚みが10μm以上150μm以下であり、かつ、動的粘弾性のTanδピーク温度で定義される、ガラス転移温度(Tg)が-50℃~-20℃の範囲内にあり、かつ、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’が、2.0×10~3.0×10Paの範囲内にあることを特徴とする、積層体。
【0021】
[2]前記両面粘着シートは、横軸に温度、縦軸にせん断貯蔵弾性率(G’)の対数をプロットした貯蔵弾性率-温度グラフにおいて、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、該指数曲線の底の自然対数が-0.01以上となることを特徴とする、前記[1]に記載の積層体。
【0022】
[3]前記粘着剤組成物は、さらに、架橋剤(B)を含有する、前記[1]又は[2]記載の積層体。
【0023】
[4]前記粘着剤組成物は、さらに、光開始剤(C)を含有する、前記[1]~[3]の何れか記載の積層体。
【0024】
[5]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、カルボキシル基含有モノマーを(共)重合成分として含まず、かつ、(共)重合成分として、少なくとも水酸基含有モノマー又はアミド基含有モノマーのいずれか若しくは両方を含む、前記[1]~[4]の何れか記載の積層体。
【0025】
[6]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、(共)重合成分として、(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合した(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、前記[1]~[5]の何れか記載の積層体。
【0026】
[7]前記光開始剤(C)が、水素引抜型の光開始剤である、前記[4]~[6]の何れか記載の積層体。
【0027】
[8]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が、光を受光するとラジカル活性種を発生する単量体を含んでなる、前記[1]~[7]の何れか記載の積層体。
【0028】
[9]周波数1Hz、温度50℃における貯蔵弾性率G’が、3.0×10~4.0×10Paの範囲内にある、前記[1]~[8]の何れか記載の積層体。
【0029】
[10]前記画像表示装置構成用部材は、表面保護パネル、タッチパネル、光学フィルム及び有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネルからなる群のうち2種類以上の組み合わせである、前記[1]~[9]の何れか記載の積層体。
【0030】
[11]曲面形状を有している、前記[1]~[10]の何れか記載の積層体。
【0031】
[12]前記[1]~[11]の何れか記載の積層体を備えた、フレキシブルディスプレイ。
【0032】
[13]基材レスの両面粘着シートであって、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)を含有する粘着剤組成物から形成され、 動的粘弾性のTanδピーク温度で定義される、ガラス転移温度(Tg)が、-50℃~-20℃の範囲内にあり、かつ、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’が、2.0×10~3.0×10Paの範囲内にあり、かつ、厚みが10μm以上150μm以下であることを特徴とする、両面粘着シート。
【0033】
[14]横軸に温度、縦軸にせん断貯蔵弾性率(G’)の対数をプロットした貯蔵弾性率-温度グラフにおいて、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、該指数曲線の底の自然対数が-0.010以上となることを特徴とする、前記[13]記載の両面粘着シート。
【0034】
[15]前記粘着剤組成物は、さらに、架橋剤(B)を含有する、前記[13]又は[14]記載の両面粘着シート。
【0035】
[16]前記粘着剤組成物は、さらに、光開始剤(C)を含有する、前記[13]~[15]の何れか記載の両面粘着シート。
【0036】
[17]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、カルボキシル基含有モノマーを(共)重合成分として含まず、かつ、(共)重合成分として、少なくとも水酸基含有モノマー又はアミド基含有モノマーのいずれか若しくは両方を含む、前記[13]~[16]の何れか記載の両面粘着シート。
【0037】
[18]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、(共)重合成分として、(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合した(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、前記[13]~[17]の何れか記載の両面粘着シート。
【0038】
[19]前記光開始剤(C)が、水素引抜型の光開始剤である、前記[16]~[18]の何れか記載の両面粘着シート。
【0039】
[20]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が、光を受光するとラジカル活性種を発生する単量体を含んでなる、前記[13]~[19]の何れか記載の両面粘着シート。
【0040】
[21]周波数1Hz、温度50℃における貯蔵弾性率G’が、3.0×10~4.0×10Paの範囲内にある、前記[13]~[20]の何れか記載の両面粘着シート。
【0041】
[22]フレキシブルディスプレイを構成する、画像表示装置構成用フレキシブル部材を貼合するために用いる両面粘着シートであって、[13]~[21]の何れか記載の両面粘着シートを用いてなる、フレキシブルディスプレイ用両面粘着シート。
【0042】
[23]前記[1]~[11]の何れか記載の積層体を形成するための積層体形成キットであって、屈曲又は湾曲可能画像表示装置構成用フレキシブル部材と、該フレキシブル部材に貼合するための両面粘着シートとを含み、前記両面粘着シートは、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)を含有する粘着剤組成物から形成され、厚みが10μm以上150μm以下であり、動的粘弾性のTanδピーク温度で定義される、ガラス転移温度(Tg)が-50℃~-20℃の範囲内にあり、かつ、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’が、2.0×10~3.0×10Paの範囲内にあることを特徴とする、積層体形成キット。
【0043】
[24]前記両面粘着シートは、横軸に温度、縦軸にせん断貯蔵弾性率(G’)の対数をプロットした貯蔵弾性率-温度グラフにおいて、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、該指数曲線の底の自然対数が-0.010以上となることを特徴とする、前記[23]に記載の積層体形成キット。
【0044】
[25]前記粘着剤組成物は、さらに、架橋剤(B)を含有する、前記[23]又は[24]記載の積層体形成キット。
【0045】
[26]前記粘着剤組成物は、さらに、光開始剤(C)を含有する、前記[23]~[25]の何れか記載の積層体形成キット。
【0046】
[27]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、カルボキシル基含有モノマーを(共)重合成分として含まず、かつ、(共)重合成分として、少なくとも水酸基含有モノマー又はアミド基含有モノマーのいずれか若しくは両方を含む、前記[23]~[26]の何れか記載の積層体形成キット。
【0047】
[28]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、(共)重合成分として、(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合した(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、前記[23]~[27]の何れか記載の積層体形成キット。
【0048】
[29]前記光開始剤(C)が、水素引抜型の光開始剤である、前記[26]~[28]の何れか記載の積層体形成キット。
【0049】
[30]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が、光を受光するとラジカル活性種を発生する単量体を含んでなる、前記[23]~[29]の何れか記載の積層体形成キット。
【0050】
[31]周波数1Hz、温度50℃における貯蔵弾性率G’が、3.0×10~4.0×10Paの範囲内にある、前記[23]~[30]の何れか記載の積層体形成キット。
【0051】
[32]画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての両面粘着シートの使用であって、前記両面粘着シートは、基材レスであって、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)を含有する粘着剤組成物から形成され、厚みが10μm以上150μm以下であり、かつ、動的粘弾性のTanδピーク温度で定義される、ガラス転移温度(Tg)が-50℃~-20℃の範囲内にあり、かつ、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’が2.0×10~3.0×10Paの範囲内にあることを特徴とする、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての両面粘着シートの使用。
【0052】
[33]前記両面粘着シートは、横軸に温度、縦軸にせん断貯蔵弾性率(G’)の対数をプロットした貯蔵弾性率-温度グラフにおいて、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、該指数曲線の底の自然対数が-0.010以上となる、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての前記[32]記載の両面粘着シートの使用。
【0053】
[34]前記粘着剤組成物は、さらに、架橋剤(B)を含有する、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての前記[32]又は[33]記載の両面粘着シートの使用。
【0054】
[35]前記粘着剤組成物は、さらに、光開始剤(C)を含有する、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての前記[32]~[34]の何れか記載の両面粘着シートの使用。
【0055】
[36]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、カルボキシル基含有モノマーを(共)重合成分として含まず、かつ、少なくとも水酸基含有モノマー又はアミド基含有モノマーのいずれか若しくは両方を、共重合成分として含む、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての前記[32]~[35]の何れか記載の両面粘着シートの使用。
【0056】
[37]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、(共)重合成分として、(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合した(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての前記[32]~[36]の何れか記載の両面粘着シートの使用。
【0057】
[38]前記光開始剤(C)が、水素引抜型の光開始剤である、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての前記[35]~[37]の何れか記載の両面粘着シートの使用。
【0058】
[39]前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が、光を受光するとラジカル活性種を発生する単量体を含んでなる、前記[32]~[38]の何れか記載の両面粘着シートの使用。
【0059】
[40]周波数1Hz、温度50℃における貯蔵弾性率G’が、3.0×10~4.0×10Paの範囲内にある、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての前記[32]~[39]の何れか記載の両面粘着シートの使用。
【0060】
[41]前記画像表示構成部材は、表面保護パネル、タッチパネル、光学フィルム及び有機ELディスプレイパネルからなる群のうち2種類以上の組み合わせである、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法としての前記[32]~[40]の何れか記載の両面粘着シートの使用。
【0061】
[42]前記[32]~[41]の何れか記載の両面粘着シートの使用による、画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合方法。
【発明の効果】
【0062】
本発明の両面粘着シートは、優れた折り曲げ耐性を有するため、屈曲又は湾曲可能な画像表示装置構成用フレキシブル部材を貼り合せるのに好適な粘着材として用いることができる。
【0063】
また、本発明の両面粘着シートは、とりわけ、有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネル等の屈曲又は湾曲可能な基材を備えたフレキシブル部材を有する画像表示装置用の両面粘着シートとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、実施例及び比較例の折り曲げ試験を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は、これらの内容に何ら限定されない。
【0066】
なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートをそれぞれ包括する意味であり、「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体を包括する意味である。また、「シート」とは、シート、フィルム、テープを概念的に包含するものである。
【0067】
また、「貯蔵弾性率G’」とは、剪断モードで動的粘弾性測定を行った際の貯蔵弾性率を意味し、後述する実施例に記載の方法で求められる値をいう。
【0068】
≪両面粘着シート≫
本発明の両面粘着シート(以下「本両面粘着シート」とも称する。)は、基材レスであって、少なくとも次の(1)~(4)の特性を有する。
なお、基材レスの両面粘着シートとは、支持体となる基材を有さず、粘着剤層だけを有する両面粘着シートをいう。
【0069】
(1)少なくとも(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)を含有する粘着剤組成物から形成される。
【0070】
(2)厚みが10μm以上150μm以下の範囲内にある。
【0071】
(3)動的粘弾性のTanδピーク温度で定義される、ガラス転移温度(Tg)が-50℃~-20℃の範囲内にある。
【0072】
(4)周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’が、2.0×10~3.0×10Paの範囲内にある。
【0073】
上記特性(1)~(4)について詳述する。
【0074】
まず、上記特許文献5に開示されている粘着剤は、ガラス転移温度(Tg)が-70℃以上-55℃以下になるように設定されており、室温における実用的な粘着力が乏しく、耐久性が十分ではないことが考えられる。
【0075】
そこで、本発明者らは、粘着剤のガラス転移温度(Tg)を、上記特許文献5のように、極端に低くすることなく、高い折り曲げ耐性を有する粘着シートを得ることを検討すべく、粘着シートに折り曲げ痕が形成されるメカニズムを徹底的に検証したところ、粘着シートに形成される折り曲げ痕の原因は、大きく2つの現象に起因することを明らかにした。
【0076】
すなわち、2つの現象のうちの一つは「座屈」であり、もう一つは「流れ」である。
【0077】
前記「座屈」とは、屈曲試験後に屈曲線を中心に粘着シートが白くなったり、折り曲げ痕が形成されたりする現象である。
また、「流れ」とは、屈曲試験後に屈曲線の周辺の粘着シートが盛り上がって見える現象である。
【0078】
そして、これらの現象の発生原因を突き止めるべく検討を続けたところ、前記「座屈」は主に粘着剤のガラス転移温度やせん断貯蔵弾性率(G’)が高く、ミクロレベルで分子鎖が自由に運動する余裕が粘着剤に無いことから生じる一種の高分子組織の破壊、降伏現象であることを明らかにした。
また、前記「流れ」は、せん断貯蔵弾性率(G’)が低く、上下のフィルムによって挟まれた粘着シートが屈曲により押し出され、これが蓄積することによって生じる現象であることを明らかにした。
【0079】
以上の結果を通じて、本発明者らは、粘着剤のせん断貯蔵弾性率(G’)を調整することにより、上記2つの現象(座屈・流れ)を抑制することができるのではないかという仮定の下で、さらに検討を重ねたところ、ある特定温度域のせん断貯蔵弾性率を制御することで、粘着剤のガラス転移温度を、上記特許文献5のように、極端に低くすることなく、折り曲げ耐性を有する粘着シートを得られることを見出したのである。
【0080】
このような結果から、本両面粘着シートは、例えばプラスチックパネルや有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネル等の画像表示装置構成用部材、とりわけ、屈曲又は湾曲可能画像表示装置構成用フレキシブル部材を有するフレキシブルディスプレイにおいて、当該画像表示装置構成用部材を貼合する為に、好適に使用されるものである。
【0081】
なお、フレキシブルとは、屈曲又は湾曲可能であることを意味し、屈曲又は湾曲可能であるとは、屈曲又は湾曲している状態も含むものとする。具体的には、屈曲又は湾曲可能な曲率半径が10mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。特に曲率半径が3mm以下のフレキシブル部材に適用すれば、ディスプレイを折り畳んで使用することも可能となる。
【0082】
画像表示装置構成用部材としては、屈曲又は湾曲可能なフレキシブル部材であればよく、例えば、屈曲又は湾曲可能な樹脂フィルムやガラス等からなる基材を有する、表面保護パネル、タッチパネル、光学フィルム、有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネルからなる群のうち2種以上の組み合わせを挙げることができる。
これらの中でも、少なくとも1つの画像表示装置構成用部材が、フレキシブル部材であることが好ましく、とりわけ、フレキシブル有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネルであることが好ましい。
【0083】
前記表面保護パネルとしては、例えば薄板ガラス、プラスチック等の材料で作製され、カバーフィルムと称されるような、最表層側に位置することで外部衝撃から保護する、フレキシブル部材を挙げることができる。その他、タッチパネル機能が一体化したものであってもよく、例えばタッチオンレンズ(TOL)型やワンガラスソリューション(OGS)型であってもよい。
【0084】
また、前記表面保護パネルは、その周縁部に枠状に印刷された印刷段差部を有していてもよい。
【0085】
前記タッチパネルとしては、例えば薄板ガラスやプラスチック等の基材にタッチセンサーが搭載され、センサー機能を有する、フレキシブル部材を挙げることができる。
【0086】
また、画像表示パネル内にタッチ機能を内蔵したインセル型や偏光板と有機ELの間にタッチパネル機能を内蔵したオンセル型の画像表示パネルも、タッチパネルに包含されるものとする。
【0087】
前記光学フィルムとしては、例えば偏光フィルム、位相差フィルム、光学フィルタ、反射防止フィルム、近赤外線カットフィルム、電磁波シールドフィルム等のフレキシブルディスプレイ内部に搭載され、光学機能を発現するフレキシブル部材を挙げることができる。
【0088】
前記フレキシブル有機ELディスプレイパネルとしては、例えば屈曲又は湾曲可能なプラスチック基板上に各種電極層や有機EL素子が形成され、また、封止膜及びパッシベーション膜が積層された構成の部材を挙げることができる。
【0089】
本両面粘着シートの使用態様としては、有機ELディスプレイパネル/本両面粘着シート/離型フィルム、タッチパネル/本両面粘着シート/離型フィルム、表面保護パネル/本両面粘着シート/離型フィルム、光学フィルム/本両面粘着シート/離型フィルムの何れかを好適な例として挙げることができ、さらに、有機ELディスプレイパネル/本両面粘着シート/タッチパネル、有機ELディスプレイパネル/本両面粘着シート/表面保護パネル、有機ELディスプレイパネル/本両面粘着シート/タッチパネル/本両面粘着シート/表面保護パネル、光学フィルム/本両面粘着シート/タッチパネル、光学フィルム/本両面粘着シート/タッチパネル/本両面粘着シート/表面保護パネルなどの構成を好適な例として挙げることができる。
【0090】
<粘着剤組成物>
本両面粘着シートは、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)を含有する粘着剤組成物(以下「本粘着剤組成物」という。)から形成される。
【0091】
なお、本粘着剤組成物は、さらに、架橋剤(B)、光開始剤(C)、その他の成分を含有してもよく、また、光硬化性の組成物であることが好ましい。
【0092】
また、本両面粘着シートは、単層構成であっても多層構成のいずれであってもよい。
【0093】
<(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)>
上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)としては、例えばアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体の他、これと共重合可能なモノマー成分を重合することにより得られる共重合体を挙げることができる。
中でも、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、2成分以上の共重合成分を含み、少なくとも1つの共重合成分が、アルキル(メタ)アクリレート及び/又は下記共重合性モノマーA~Hの何れかであることが好ましい。
【0094】
(1)上記共重合性モノマーA~Hの中でも下記共重合性モノマーA、B又はEが特に好ましい。
(2)また、上記共重合性モノマーAを含まず、共重合性モノマーB又はEの何れかもしくは両方を含むことが特に好ましい。共重合性モノマーB又はEの何れか若しくは両方を含むことで、耐腐食特性、接着性及び耐湿熱白化特性の兼備が可能となる。
なお、「共重合性モノマーAを含まない」とは、“実質的に含まない”の意であり、完全に含まない場合のみならず、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体中に、共重合性モノマーAが0.5質量%未満、好ましくは、0.1質量%未満で含むことを包含する。
(3)さらに、上記アルキル(メタ)アクリレートの中でも、(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合したアルキル(メタ)アクリートが好ましい。このようなアルキル(メタ)アクリレートを用いることで、本両面粘着シートの高温側(100℃~150℃)のせん断貯蔵弾性率(G’)をフラット化し易くなる。
【0095】
より具体的には、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)として、アルキル(メタ)アクリレートと、これと共重合可能な前記アルキル(メタ)アクリレート以外の(a)カルボキシル基含有モノマー(以下「共重合性モノマーA」とも称する。)、(b)水酸基含有モノマー(以下「共重合性モノマーB」とも称する。)、(c)アミノ基含有モノマー(以下「共重合性モノマーC」とも称する。)、(d)エポキシ基含有モノマー(以下「共重合性モノマーD」とも称する。)、(e)アミド基含有モノマー(以下「共重合性モノマーE」とも称する。)、(f)ビニルモノマー(以下「共重合性モノマーF」とも称する。)、(g)側鎖の炭素数が1~3の(メタ)アクリレートモノマー(以下「共重合性モノマーG」とも称する。)及び(h)マクロモノマー(以下「共重合性モノマーH」とも称する。)から選択される何れか一つ以上のモノマーを含むモノマー成分の共重合体を挙げることができる。
【0096】
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばn-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0097】
上記共重合性モノマーAとしては、例えば(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0098】
上記共重合性モノマーBとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0099】
上記共重合性モノマーCとしては、例えばアミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノイソプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート、N-アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0100】
上記共重合性モノマーDとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0101】
上記共重合性モノマーEとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミドを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0102】
上記共重合性モノマーFとしては、ビニル基を分子内に有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、アルキル基の炭素数が1~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル類並びに分子内にヒドロキシル基、アミド基及びアルコキシルアルキル基等の官能基を有する官能性モノマー類並びにポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類並びに酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びラウリン酸ビニル等のビニルエステルモノマー並びにスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン及びその他の置換スチレン等の芳香族ビニルモノマーを例示することができる。
これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0103】
上記共重合性モノマーGとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0104】
上記共重合性モノマーHは、重合により(メタ)アクリル系(共)重合体となった際に側鎖の炭素数が20以上となるモノマーである。共重合性モノマーHを用いることにより、(メタ)アクリル系(共)重合体をグラフト共重合体とすることができる。
【0105】
したがって、共重合性モノマーHと、それ以外のモノマーの選択や配合比率によって、グラフト共重合体の主鎖と側鎖の特性を変化させることができる。
【0106】
上記共重合性モノマーHとしては、骨格成分がアクリル系重合体又はビニル系重合体から構成されるのが好ましい。マクロモノマーの骨格成分としては、例えば上記側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート、上記共重合性モノマーA、後述の共重合性モノマーG、上記共重合性モノマーB等に例示されるものが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0107】
マクロモノマーは、ラジカル重合性基、又はヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、チオール基等の官能基を有するものである。マクロモノマーとしては、他のモノマーと共重合可能なラジカル重合性基を有するものが好ましい。ラジカル重合性基は一つあるいは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。マクロモノマーが官能基を有する場合も官能基は一つあるいは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。
【0108】
また、ラジカル重合性基と官能基はどちらか一方でも、両方含有していてもよい。
【0109】
上記共重合性モノマーHの数平均分子量は、500~2万であるのが好ましく、中でも800以上あるいは8000以下、その中でも1000以上あるいは7000以下であるのが好ましい。
【0110】
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば、東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
【0111】
上記両面粘着シートのガラス転移温度(Tg)が-50℃~-20℃の範囲内となるように、上述した各種モノマー成分を組み合わせて得られる(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)を用いればよい。
【0112】
また、Tgと貯蔵弾性率調整の観点から、(1)上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)としては、側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートと、共重合性モノマーA及び/又は共重合性モノマーBとを含むモノマー成分の共重合体が好ましい。中でも、(2)上記側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートと、共重合性モノマーAとを含むモノマー成分の共重合体が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)が、重合性モノマーAを含むことにより、Tgを低く維持することができるため、共重合性モノマーBの選択の幅が広がり、折り曲げ耐性と、耐湿熱白化性や接着力、耐久性などの基本的な粘着性能とのバランス化が容易になる。
【0113】
一方、本両面粘着シートの耐腐食性、耐湿熱白化性及び高温側のせん断貯蔵弾性率(G’)のフラット性の観点からは、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)としては、共重合性モノマーAを含まずに、側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートと、共重合性モノマーB及び/又は共重合性モノマーEとを含むモノマー成分の共重合体が好ましい。
【0114】
また、上記の中でも、上記側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートとして、(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合したアルキル(メタ)アクリートを用いることがもっとも好ましい。
【0115】
上記(メタ)アクリロイル基と3級炭素原子が結合したアルキル(メタ)アクリートとしては、例えば2-エチルヘシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上使用することができる。
【0116】
上記側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートは、共重合体の全モノマー成分中に、30質量%以上90質量%以下含有するのが好ましく、中でも35質量%以上あるいは88質量%以下、その中でも特に40質量%以上あるいは85質量%以下の範囲で含有するのがさらに好ましい。
【0117】
上記共重合性モノマーAは、共重合体の全モノマー成分中に1.2質量%~15質量%以下、中でも優れた粘着物性を得る観点から1.5質量%以上あるいは10質量%以下、その中でも特に2質量%以上あるいは8質量%以下の範囲で含有するのが好ましい。
【0118】
上記共重合性モノマーBは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上あるいは25質量%以下、その中でも特に1質量%以上あるいは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0119】
上記共重合性モノマーCは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上あるいは25質量%以下、その中でも特に0質量%以上あるいは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0120】
上記共重合性モノマーDは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上あるいは25質量%以下、その中でも特に0質量%以上あるいは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0121】
上記共重合性モノマーEは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上あるいは25質量%以下、その中でも特に1質量%以上あるいは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0122】
上記共重合性モノマーFは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上あるいは25質量%以下、その中でも特に0質量%以上あるいは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0123】
上記共重合性モノマーGは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上70質量%以下含有されることが好ましく、中でも3質量%以上あるいは65質量%以下、その中でも特に5質量%以上あるいは60質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0124】
上記共重合性モノマーHは、共重合体の全モノマー成分中に5質量%以上30質量%以下、中でも6質量%以上あるいは25質量%以下、その中でも特に8質量%以上あるいは20質量%以下の範囲で含有されることが好ましい。
【0125】
上述した他にも、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー等も必要に応じて適宜用いることができる。
【0126】
上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)の質量平均分子量は、10万~150万、中でも15万以上あるいは130万以下、その中でも特に20万以上あるいは120万以下であるのが好ましい。
【0127】
また、本粘着剤組成物は、溶剤を含まない無溶剤系であることが好ましい。本粘着剤組成物が無溶剤系であることにより、溶剤が残存せず、高温耐久性に優れる等の利点がある。
なお、本粘着剤組成物が無溶剤系であって、ホットメルトによって製膜する場合、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)の質量平均分子量は、10万~90万であることが好ましく、中でも15万以上或いは75万以下であることがより好ましく、20万以上或いは60万以下であることがもっとも好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)の質量平均分子量が、上記範囲にあることで、ホットメルト製膜が可能となる。
以上の点から、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)の質量平均分子量は、中でも15万~75万であることがより好ましく、その中でも20万以上或いは6万以下であることが最も好ましい。
【0128】
(メタ)アクリル系(共)重合体(A)の最も好適的な例としては、例えば2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のモノマー成分(a)や、カルボキシル基をもつ(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等のモノマー成分(b)や、有機官能基等をもつ、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のモノマー成分(c)から選択される2種以上のモノマー成分を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。
【0129】
中でも、上記モノマー成分(a)及び(b)から各々1種以上選択されるモノマー成分を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、上記モノマー成分(a)、(b)及び(c)から各々1種以上選択されるモノマー成分を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。
【0130】
さらに、本両面粘着シートの耐腐食性、耐湿熱白化性及び高温側のせん断貯蔵弾性率(G’)のフラット性の観点から、中でも、上記モノマー成分(a)及び(c)から各々1種以上選択されるモノマー成分を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体がさらに好ましい。
【0131】
(架橋剤(B))
本粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)の他、架橋剤(B)を含有するものであることが好ましい。
【0132】
架橋剤(B)を含有することにより、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)の貯蔵弾性率G’の調整が容易になる。
【0133】
上記架橋剤(B)としては、少なくとも二重結合架橋を有する架橋剤が好ましい。例えば(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤(B)が(メタ)アクリル系共重合体(A)と化学結合した態様も包含される。
【0134】
中でも、多官能(メタ)アクリレートを用いるのが好ましい。ここで、多官能は2つ以上の架橋性官能基を有するものを指す。なお、必要に応じて3つ以上、4つ以上の架橋性官能基を有してもよい。
【0135】
なお、上記架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
【0136】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリングリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能(メタ)アクリル系モノマーの他、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル系オリゴマーを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0137】
架橋剤(B)の含有量は、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)100質量部に対して0.5~50質量部、中でも1質量部以上あるいは40質量部以下、その中でも5質量部以上あるいは30質量部以下の割合であるのが好ましい。
【0138】
架橋剤(B)を上記範囲で含有することで、本両面粘着シートの形状安定性等をバランス化しやすくなる。
【0139】
(光開始剤(C))
本粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)及び架橋剤(B)の他、光開始剤(C)を含有するものであることが好ましい。
【0140】
光開始剤(C)は、前述の架橋剤(B)の架橋反応における反応開始助剤としての機能を果たすものである。光開始剤(C)の中でも、波長380nm以下の紫外線に感応する光開始剤が、架橋反応の制御のしやすさの観点から好ましい。
【0141】
一方、波長380nmより長波長の光に感応する光開始剤は、高い光反応性を得られる点及び、感応する光が、本粘着剤組成物をシート状に賦形した場合に、シートの深部まで到達しやすい点で好ましい。
【0142】
光開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光開始剤と、に大別される。
【0143】
これらのうちの開裂型光開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると開始剤としての機能をもたなくなる。このため、架橋反応が終了した後の粘着材中に活性種として残存することがなく、粘着材に予期せぬ光劣化等をもたらす可能性がないため、好ましい。
【0144】
他方、水素引抜型光開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる点で有用である。
【0145】
また、本発明においては、光開始剤(C)として、水素引抜型開始剤を用いることが特に好ましい。水素引抜型光開始剤を用いることで、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)同士の架橋反応が生じ、本両面粘着シートの高温側のせん断貯蔵弾性率(G’)をフラットにし易くなる。中でも特に、質量平均分子量が10万~90万と比較的低い範囲の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)を使用する場合には、水素引抜型光開始剤を用いることで、本両面粘着シートの高温側のせん断貯蔵弾性率(G’)をフラットにし易くなる。
【0146】
また、上記と同様の理由から、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)を構成する(共)重合体成分として、光を受光するとラジカル活性種を発生する単量体を用いることも好ましい。このような単量体としては、ベンゾフェノン構造、ベンジル構造、o-ベンゾイル安息香酸エステル構造、チオキサントン構造、3-ケトクマリン構造、2-エチルアントラキノン構造、及びカンファーキノン構造を有し、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)分子から水素ラジカルを引き抜くことができるものを挙げることができる。
【0147】
より具体的には、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノン及びこれらの混合物等のベンゾフェノン構造を有するアクリルモノマーを例示することができる。
【0148】
上記開裂型光開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、1,2-オクタンジオン,1-(4-(フェニルチオ),2-(o-ベンゾイルオキシム))、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタノン1-(O-アセチルオキシム)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドや、それらの誘導体などを挙げることができる。
【0149】
前記水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチル、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、カンファーキノンやその誘導体などを挙げることができる。ただし、光開始剤(C)として上記に挙げた物質に限定するものではない。上記に挙げた光開始剤(C)のうちのいずれか一種またはその誘導体を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0150】
この中でも、光に対する感応性が高く、かつ反応後に分解物となり消色する点では、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光開始剤が好ましい。
【0151】
また、反応制御のし易さからは、光開始剤(C)として、ベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチルなどを用いるのが好ましい。
【0152】
光開始剤(C)の含有量は特に制限されるものではない。目安としては、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)100質量部に対して0.1~10質量部、中でも0.5質量部以上あるいは5質量部以下、その中でも1質量部以上あるいは3質量部以下の割合で含有するのが好ましい。光開始剤(C)の含有量を上記範囲とすることで、活性エネルギー線に対する適度な反応感度を得ることができる。
【0153】
さらに、光開始剤(C)成分に加えて増感剤を使用することも可能である。増感剤としては、特に限定はなく、光開始剤に用いられる増感剤であれば問題なく使用できる。例えば芳香族アミン、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、クマリン誘導体、チオキサントン誘導体、フタロシアニン誘導体等や、ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、ミヒラーケトン、9,10-フェナントラキノンなどの芳香族ケトン及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0154】
(その他の成分)
本粘着剤組成物は、上述した(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)、架橋剤(B)及び光開始剤(C)の他にも、通常の粘着組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば粘着付与樹脂、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、防錆剤、老化防止剤、吸湿剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、消泡剤、無機粒子などの各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。本粘着剤組成物は、中でも、防錆剤を含有することが好ましく、具体的には、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール及びこれらの誘導体からなる群より選択される防錆剤を使用することが好ましい。
【0155】
また、必要に応じて反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を、適宜含有してもよい。
【0156】
<ガラス転移温度(Tg)>
本両面粘着シートは、ガラス転移温度(Tg)が、-50℃~-20℃の範囲内にある。
なお、本両面粘着シートが多層の場合、各層全ての粘着剤層のガラス転移温度(Tg)が上記範囲にある必要はなく、複数の粘着剤層から構成された粘着剤層全体、すなわち、本両面粘着シートのガラス転移温度が上記範囲にあれば良い。
【0157】
これまでは、特許文献5に開示されているように、ガラス転移温度が-55℃を超えると、折り曲げ時の耐久性を維持できないと考えられていた。
【0158】
しかしながら、本発明者は、単にガラス転移温度の数値のみで折り曲げ耐久性が決定されるものではなく、下述する貯蔵弾性率G’との関係が重要であること、さらには、下述する貯蔵弾性率G’の範囲内の両面粘着シートでは、むしろガラス転移温度を比較的高めに設定することで、折り曲げ耐久性だけでなく、より優れた加工性を発現できることを見出した。
【0159】
以上のような観点から、上記粘着剤層のガラス転移温度(Tg)は、-50℃~-20℃であることが好ましく、-30℃~-25℃であることが最も好ましい。
【0160】
なお、ガラス転移温度(Tg)を上記の範囲内とするためには、上述したモノマーから適宜選択したモノマーを含むモノマー成分から構成される(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)を用いればよい。
【0161】
<貯蔵弾性率G’>
本両面粘着シートは、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’が、2.0×10~3.0~10Paの範囲内にあるものである。
【0162】
これまでは、特許文献5に開示されているように、低温(-20℃)での貯蔵弾性率G’を比較的低く、高温(85℃)での貯蔵弾性率G’を比較的高く設定することで、折り曲げ耐久性を高めることができるとされていたが、本発明者は、下述するような投影試験を利用して、折り曲げ試験後の両面粘着シートの状態を深く観察すると、このような粘弾性特性を有するような両面粘着シート設計では折れ痕が観察され得ることを発見した。
【0163】
そして、従来のように、単に低温(-20℃)での貯蔵弾性率G’を比較的低く、高温(85℃)での貯蔵弾性率G’を比較的高く設定するのではなく、ある特定領域の粘弾性特性を有する、両面粘着シートの設計とすることで、折り曲げ耐久性を高められることだけでなく、より優れた加工性を発現できることを見出した。
【0164】
このことは、高分子材料における温度-時間換算則によって説明することができる。
すなわち、本両面粘着シートが、折り曲げ耐久性を有するには、何万回レベルの繰り返し折り曲げ試験、言い換えると、繰り返し動作に対する耐性を備えなければならない。
このように、高分子材料が繰り返し動作に対する耐性を具備する為には、高分子材料の長時間側の粘弾性挙動、すなわち温度-時間換算則では、高分子材料の高温側の粘弾性挙動が関係してくることになる。
そして、本発明者らは、本粘着シートの高温側の粘弾性挙動に着目して、検討を重ねることにより、温度100℃の領域における粘弾性挙動が折り曲げ耐久性に大きく寄与することを見出したのである。
【0165】
以上のような観点から、本両面粘着シートは、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’が、3.0×10~2.0×10であることがより好ましく、4×10Pa~1.0×10Paであることが最も好ましい。
【0166】
また、本両面粘着シートは、周波数1Hz、温度50℃における貯蔵弾性率G’が、3×10Pa~4×10Paであることが好ましい。
【0167】
温度100℃における貯蔵弾性率G’が上述の範囲内であることに加えて、温度50℃での貯蔵弾性率G’が、このような範囲にあることにより、広い温度範囲で折り曲げ耐久性を高めることができる。
【0168】
上記の観点から、周波数1Hz、温度50℃における貯蔵弾性率G’は、5.0×10Pa~3.0×10Paであることがより好ましく、1.0×10Pa~1.0×10Paであることが最も好ましい。
【0169】
さらに、本両面粘着シートは、周波数1Hz、温度-20℃における貯蔵弾性率G’が1.5×10を超えることが好ましく、1.6×10~1.0×10Paであることがより好ましく、3.0×10~5.0×10Paであることがさらに好ましく、4.3×10~1.0×10Paであることがもっとも好ましい。
温度-20℃(低温)でのせん断貯蔵弾性率(G’)が上記の範囲内にあれば、室温での粘着性やタック性を損なうことなく折り曲げ耐性を付与しやすいため、接着力や耐久性、加工時や貼合時のハンドリング性が向上する等の利点を有することができる。
【0170】
なお、上記貯蔵弾性率G’の範囲内とするためには、両面粘着シートの構成成分として、上述したモノマーを含むモノマー成分の(共)重合体(A)を用いればよく、架橋剤(B)及び/又は光開始剤(C)を含むことが最も好ましい。
【0171】
また、両面粘着シートへの紫外線の照射量を調整することでも上記貯蔵弾性率G’の範囲内とすることができる。この際、紫外線の照射量は、5000mJ/cm以下とするのが好ましく、より好ましくは4000mJ/cm以下であり、さらに好ましくは3000mJ/cm以下であり、最も好ましくは2000mJ/cm以下である。
また、上記と同様の理由から、紫外線の照射量は、250mJ/cm以上とすることが好ましく、500mJ/cm以上とすることがさらに好ましく、1000mJ/cm以上とすることが最も好ましい。
【0172】
上記に加えて、本両面粘着シートは、横軸に温度、縦軸にせん断貯蔵弾性率(G’)の対数をプロットした貯蔵弾性率-温度グラフにおいて、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、該指数曲線の底の自然対数が-0.010以上となることが好ましい。
【0173】
上記について詳述する。
フレキシブルディスプレイは、実使用環境下においては、様々な折り曲げ速度に対する耐性を具備しなければならない。
また、屈曲試験においても、屈曲開始から屈曲終了時までは屈曲試験機の構造、フィルム積層体のたわみ等によって、両面粘着シートが屈曲する角速度は常に変化していることが予測される。
このように、屈曲試験においては、両面粘着シートは、さまざまな速度で変形する。このため特に、フレキシブルディスプレイに用いられる両面粘着シートには、想定される様々な速度領域において、上述した「座屈」や「流れ」が生じないことが求められる。
【0174】
このことを先の温度-時間換算則を用いて言い換えると、フレキシブルディスプレイに用いられる粘着材においては、様々な温度領域で粘弾性挙動が安定していることが求められるということがいえる。
【0175】
そして、上記の通り、本発明者は、高温側(温度100℃)のせん断の貯蔵弾性率(G’)を特定範囲にすることで、両面粘着シートに高い折り曲げ耐性を具備させられることを見出したが、この点をさらに発展させ、特に100℃~150℃における粘弾性カーブをフラットにすることで、さらに実使用環境下に近い条件下においても、高い折り曲げ耐久性を具備させられることを見出したのである。
【0176】
以上の通りであり、周波数1Hz、温度100℃における貯蔵弾性率G’(100)と、周波数1Hz、温度150℃における貯蔵弾性率G’(150)との2点間を通る指数曲線を作成したとき、その指数曲線の底の自然対数が-0.010以上とは、温度100℃~150℃の粘弾性挙動がフラットに近いことを意味する。
【0177】
したがって、かかる観点から、上記自然対数は、0.00に近いほど好ましく、-0.010以上0.010以下であることが好ましく、-0.007以上0.007以下であることがより好ましく、-0.003以上0.003以下であることがもっとも好ましい。
【0178】
<両面粘着シートの厚み>
本両面粘着シートの厚みは、10μm以上150μm以下である。
【0179】
通常、両面粘着シートの厚みの二乗に比例して折り曲げ時の圧縮応力が高くなる為、本両面粘着シートの貯蔵弾性率G’を上記範囲内にすると共に本両面粘着シートの厚みを上記の範囲内とすることにより、折り曲げ試験において折れ痕の発生を抑えることができる。本両面粘着シートの厚みが150μm以上になると、圧縮応力に耐えられなくなり、折り曲げ試験後のサンプルに折れが発生しやすくなり、折り曲げ耐久性が低下する虞がある。
【0180】
以上の観点から、本両面粘着シートの厚みは20μm以上120μm以下とすることがより好ましく、25μm以上100μm以下とすることが最も好ましい。
【0181】
(両面粘着シートの製造方法)
本両面粘着シートの製造方法としては、公知の製造方法を採用することができる。以下に、その一例を示す。
【0182】
上述した(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)並びに必要に応じて架橋剤(B)、光開始剤(C)及びその他任意成分を所定量混合して、本粘着剤組成物を作製する。
【0183】
これらの混合方法としては、特に制限されず、各成分の混合順序も特に限定されない。
【0184】
また、本粘着剤組成物製造時に熱処理工程を入れてもよく、この場合は、予め、本粘着剤組成物の各成分を混合してから熱処理を行うことが望ましい。各種の混合成分を濃縮してマスターバッチ化したものを使用してもよい。
【0185】
また、混合する際の装置も特に制限されず、例えば万能混練機、プラネタリミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ゲートミキサー、加圧ニーダー、三本ロール、二本ロールを用いることができる。必要に応じて溶剤を用いて混合してもよい。
また、本粘着剤組成物は、上述のとおり、溶剤を含まない無溶剤系として使用することできる。無溶剤系として使用することで溶剤が残存せず、耐熱性及び耐光性が高まるという利点も備えることができる。
【0186】
上述のようにして調整した本粘着剤組成物を、例えば紫外線を照射して硬化させ、単層又は多層のシート状の粘着剤層(硬化後の粘着剤層)を形成することで、本両面粘着シートを製造することができる。紫外線の照射量は、上述したように、5000mJ/cm以下とするのが好ましく、より好ましくは4000mJ/cm以下であり、さらに好ましくは3000mJ/cm以下である。
【0187】
さらに、本粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系(共)重合体(A)を構成するモノマー成分並びに必要に応じて架橋剤(B)、光開始剤(C)及びその他の任意成分を含む組成物としておき、これを両面粘着シート、とりわけ、フレキシブルディスプレイ用両面粘着シートとして使用する際に、光照射し重合反応を進行させて(メタ)アクリル系(共)重合体(A)が生成されるようにして使用することもできる。
【0188】
本両面粘着シートは、被着体に本粘着剤組成物を直接塗布し、単層又は多層のシート状の粘着剤層(硬化後の粘着剤層)を形成して使用する以外にも、離型フィルム上に単層又は多層のシート状の粘着剤層(硬化後の粘着剤層)を成型した離型フィルム付き両面粘着シートとすることもできる。
【0189】
かかる離型フィルムの材質としては、例えばポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、フッ素樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの中でも、ポリエステルフィルム及びポリオレフィンフィルムが特に好ましい。
【0190】
離型フィルムの厚みは特に制限されない。中でも、例えば加工性及びハンドリング性の観点からは、25μm~500μmであるのが好ましく、その中でも38μm以上あるいは250μm以下、その中でも50μm以上あるいは200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0191】
なお、本両面粘着シートは、上記の様に被着体や離型フィルムを使用せずに、本粘着剤組成物を直接に押出成形する方法や、型に注入することによって成形する方法を採用することもできる。
【0192】
さらには、被着体である画像表示装置構成用部材間に本粘着剤組成物を直接充填することによって、両面粘着シートの態様とすることもできる。
【0193】
≪画像表示装置構成用フレキシブル部材を有する積層体≫
画像表示装置構成用フレキシブル部材を有する本発明の積層体(以下「本積層体」とも称する。)は、上述した特性を有する本両面粘着シートと、画像表示装置構成用フレキシブル部材とが積層された構成を有するものである。
【0194】
画像表示装置構成用フレキシブル部材としては、とりわけ、上述したフレキシブル部材を挙げることができ、中でも、屈曲又は湾曲可能な樹脂フィルムやガラス等からなる基材を有する、表面保護パネル、タッチパネル、光学フィルム及び有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネルからなる群のうち2種類以上の組み合わせであることが好ましい。
これらの中でも、少なくとも1つの画像表示装置構成用フレキシブル部材が、フレキシブル部材であることが好ましく、とりわけ、フレキシブル有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネルであることが好ましい。
【0195】
また、本積層体の構成としては、有機ELディスプレイパネル/本両面粘着シート/離型フィルム、タッチパネル/本両面粘着シート/離型フィルム、表面保護パネル/本両面粘着シート/離型フィルム、光学フィルム/本両面粘着シート/離型フィルムの何れかを好適な例として挙げることができ、また、有機ELディスプレイパネル/本両面粘着シート/タッチパネル、有機ELディスプレイパネル/本両面粘着シート/表面保護パネル、有機ELディスプレイパネル/本両面粘着シート/タッチパネル/本両面粘着シート/表面保護パネル、光学フィルム/本両面粘着シート/タッチパネル、光学フィルム/本両面粘着シート/タッチパネル/本両面粘着シート/表面保護パネルの何れかを好適な例として挙げることができる。
さらに、本積層体は、曲面形状を有していることが好ましい。具体的には、本積層体の外形が円弧状やその他の曲面である場合を挙げることができる。さらに具体的には、円弧状、懸垂線状、放物線状、ベジェ曲線状、スプライン曲線状、たわみ曲線、その他の曲面形状を有する、表面保護パネルを備えた積層体を挙げることができる。
【0196】
≪両面粘着シートの使用≫
画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合において、上述した本両面粘着シートを用いると、該部材を折り曲げて使用した場合であっても、粘着材がはみ出したり、凝集破壊したりすることなく、また、両面粘着シートに折れ痕が付くこともない。
【0197】
このように、本両面粘着シートは、高い折り曲げ耐久性を有する為、2つの屈曲又は湾曲可能な画像表示装置構成用フレキシブル部材の貼合に好適に使用することができる。
【0198】
画像表示装置構成用フレキシブル部材としては、とりわけ、上述したフレキシブル部材を挙げることができ、中でも、屈曲又は湾曲可能な樹脂フィルムやガラス等からなる基材を有する、表面保護パネル、タッチパネル、光学フィルム及び有機ELディスプレイパネルからなる群のうち2種類以上の組み合わせであることが好ましい。
これらの中でも、少なくとも1つの画像表示装置構成用フレキシブル部材が、フレキシブル部材であることが好ましく、とりわけ、フレキシブル有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネルであることが好ましい。
【0199】
≪積層体形成キット≫
本積層体を形成するための本発明の積層体形成キット(以下、「本キット」とも称する)は、画像表示装置構成用フレキシブル部材と、該フレキシブル部材に貼合するための両面粘着シートとを有し、該両面粘着シートが上述した本両面粘着シートであることを特徴とするものである。
本積層体を形成するための積層体形成キットとは、本積層体を形成するための材料一式の意味であり、材料同士は接合されていない状態での組み合わせである。
【0200】
画像表示装置構成用フレキシブル部材としては、とりわけ、上述したフレキシブル部材を挙げることができ、中でも、屈曲又は湾曲可能な樹脂フィルムやガラス等からなる基材を有する、表面保護パネル、タッチパネル、光学フィルム及び有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネルからなる群のうち2種類以上の組み合わせであることが好ましい。
これらの中でも、少なくとも1つの画像表示装置構成用フレキシブル部材が、フレキシブル部材であることが好ましく、とりわけ、フレキシブル有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネルであることが好ましい。
【0201】
《語句の説明》
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例
【0202】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において、下記の物性測定、処理については、下記条件で行った。
【0203】
<折り曲げ試験>
(1)実施例及び比較例で作製した両面粘着シート1~16を、50mm×100mmに裁断し、PETフィルム厚み0.38mm×50mm×100mmに貼合する。
(2)貼合したサンプルをPET(0.1mm×50mm×100mm)と貼合した積層体を作製する。
(3)PET38μmを内側として、作製された積層体を、折り曲げ試験機DLDMLH-FS(ユアサシステム製)を用いて、次の試験条件で試験を行う。
・曲率半径r=3mm
・試験速度=60rpm
・試験回数=10万回
(4)試験後の積層体を目視観察し、両面粘着シートに折れ痕のついているものと、被着体に両面粘着シートの剥がれがあるものを「×」、目視観察で変化のないものを「○」として評価した。
【0204】
なお、前記目視観察において、図1に示すような投影試験による観察を行った。
投影機とスクリーンの間に折り曲げ試験後のサンプルを設置し、スクリーンに映った折り曲げ試験後のサンプルに歪みの有無で、両面粘着シートに折れ痕のついているものと、被着体からの両面粘着シートの剥がれを判別した。
【0205】
<貯蔵弾性率G’及びガラス転移温度の測定>
実施例及び比較例で作製した両面粘着シート1~16の貯蔵弾性率G’は、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置「ダイナミックアナライザー RDAII」を用いて剪断法により、次の条件で測定した。
・治具:Φ25mmパラレルプレート
・歪み:0.5%
・周波数:1Hz
・温度:-70~200℃(-70℃から昇温速度3℃/minで測定)
・試料厚さ:500μm
【0206】
なお、実施例及び比較例で作製した両面粘着シート1~16の厚みは、500μmに満たないので、それぞれ500μmの厚さになるまで粘着剤層を積層することで調整した。
【0207】
実施例及び比較例で作製した両面粘着シート1~16を、それぞれ粘着剤層が1mmの厚さになるまで積層し、これをガラス転移温度の測定サンプルとした。
【0208】
上記測定サンプルについて、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置「ダイナミックアナライザー RDAII」を用いて剪断法により、次の条件で測定した時のTanδの極大値を示す温度を読み取った。当該温度をガラス転移温度とした。
・治具:Φ25mmパラレルプレート
・歪み:0.5%
・周波数:1Hz
【0209】
<銅薄膜変色試験>
ガラス基板(45mm×45mm)上に、厚さ50Åの銅薄膜を形成し、銅薄膜変色試験用ガラス基板を作製した。
【0210】
上記実施例及び比較例で作製した粘着シートの片面の剥離フィルムを剥がし、その露出面にPETフィルム(東洋紡績社製、商品名「コスモシャインA4100」、125μm)をハンドローラーにて貼着した。次に、45mm×45mmのサイズにカットしたのち、残る剥離フィルムを剥がして、銅薄膜変色試験用銅ガラス基板に該粘着シートをハンドローラーにて貼着した。
【0211】
当該銅薄膜変色試験用サンプル(粘着シート付銅薄膜変色試験用ガラス基板)を、85℃・85%RH環境下で約1時間保管し、保管後、当該銅薄膜変色試験用サンプルの色味の変化を目視で確認し、銅薄膜に由来する灰色が残っているものを○(良好、good)、ほぼ透明になってしまっているものを×(不良、poor)と判定した。
【0212】
[実施例1]
アクリル酸エステル共重合体ポリマーA:100重量部に対し、光開始剤として日本シイベルヘグナー社製の商品名「エザキュア TZT」(4-メチルベンゾフェノン):0.6重量部と、架橋モノマーとして大阪有機化学社製の商品名「ビスコートV260(1,9-ノナンジオールジアクリレート)」:1.0重量部とを添加して紫外線硬化型の粘着剤組成物1を得た。
【0213】
なお、前記アクリル酸エステル共重合体ポリマーAの組成は、n-ブチルアクリレート:78.4質量%、2-エチルヘキシルアクリレート:19.6質量%、アクリル酸:2.0質量%を共重合させたもので、GPC測定による前記アクリル酸エステル共重合体ポリマーAのMwは413,000であり、Mnは145,000であり、Mw/Mnは2.9であって、理論Tgは-57℃である。
【0214】
前記粘着剤組成物1を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み0.1mmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて、該離型フィルム越しに積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射させて両面粘着シート1を得た。
【0215】
両面粘着シート1の評価結果は表1に示す通りである。
【0216】
[実施例2]
実施例1で使用した粘着剤組成物1を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み0.1mmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて、該離型フィルム越しに積算光量500mJ/cmの紫外線を照射させて両面粘着シート2を得た。
【0217】
両面粘着シート2の評価結果は表1に示す通りである。
【0218】
[実施例3]
実施例1で使用した粘着剤組成物1を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み0.1mmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて、該離型フィルム越しに積算光量1500mJ/cmの紫外線を照射させて両面粘着シート3を得た。
【0219】
両面粘着シート3の評価結果は表1に示す通りである。
【0220】
[実施例4]
実施例1で使用した粘着剤組成物1を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み0.075mmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて、該離型フィルム越しに積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射させて両面粘着シート4を得た。
【0221】
両面粘着シート4の評価結果は表1に示す通りである。
【0222】
[実施例5]
実施例1で使用した粘着剤組成物1を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み0.025mmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて、該離型フィルム越しに積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射させて両面粘着シート5を得た。
【0223】
両面粘着シート5の評価結果は表1に示す通りである。
【0224】
[実施例6]
アクリル酸エステル共重合体ポリマーB:100重量部に対し、光開始剤として日本シイベルヘグナー社製の商品名「エザキュア TZT」(4-メチルベンゾフェノン):0.6重量部と、架橋モノマーとして大阪有機化学社製の商品名「ビスコートV260(1,9-ノナンジオールジアクリレート)」:1.0重量部と、防錆剤として城北化学社製の商品名「BT-120」(1,2,3-ベンゾトリアゾール):0.5部とを添加して紫外線硬化型の粘着剤組成物2を得た。
【0225】
なお、前記アクリル酸エステル共重合体ポリマーBの組成は、n-ブチルアクリレート:78.4質量%、2-エチルヘキシルアクリレート:19.6質量%、アクリル酸:2.0質量%を共重合させたもので、GPC測定による前記アクリル酸エステル共重合体ポリマーBのMwは520,000であり、Mnは110,000であり、Mw/Mn=4.7であって、理論Tgは-57℃である。
【0226】
前記粘着剤組成物2を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み0.1mmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて、該離型フィルム越しに積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射させて両面粘着シート6を得た。
【0227】
両面粘着シート6の評価結果は表1に示す通りである。
【0228】
[実施例7]
前記粘着剤組成物2を用いた以外は、実施例2と同様にして両面粘着シート7を得た。
【0229】
両面粘着シート7の評価結果は表1に示すとおりである。
【0230】
[実施例8]
実施例6で使用した粘着剤組成物2を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み0.1mmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて、該離型フィルム越しに積算光量2000mJ/cmの紫外線を照射させて両面粘着シート8を得た。
【0231】
両面粘着シート8の評価結果は表1に示すとおりである。
【0232】
[実施例9]
前記粘着剤組成物2を用いた以外は、実施例4と同様にして両面粘着シート9を得た。
【0233】
両面粘着シート9の評価結果は表1に示すとおりである。
【0234】
[実施例10]
前記粘着剤組成物2を用いた以外は、実施例5と同様にして両面粘着シート10を得た。
【0235】
両面粘着シート10の評価結果は表1に示すとおりである。
【0236】
[実施例11]
アクリル酸エステル共重合体ポリマーC:100重量部に対し、光開始剤として日本シイベルヘグナー社製の商品名「エザキュア TZT」(4-メチルベンゾフェノン):1.5重量部と、架橋モノマーとして大阪有機化学社製の商品名「ビスコートV260(1,9-ノナンジオールジアクリレート)」:1.5重量部とを添加して紫外線硬化型の粘着剤組成物3を得た。
【0237】
なお、前記アクリル酸エステル共重合体ポリマーCの組成は、n-ブチルアクリレート:71質量%、2-エチルヘキシルアクリレート:26.2質量%、アクリルアミド:2.8質量%を共重合させたもので、GPC測定による前記アクリル酸エステル共重合体ポリマーBのMwは470,000であり、Mnは71,000であり、Mw/Mn=6.6であって、理論Tgは-56℃である。
【0238】
前記粘着剤組成物3を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み100μmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて、該離型フィルム越しに積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射させて両面粘着シート11を得た。
【0239】
両面粘着シート11の評価結果は表1に示す通りである。
【0240】
[比較例1]
実施例1で使用した粘着剤組成物1を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み0.1mmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて、該離型フィルム越しに積算光量250mJ/cmの紫外線を照射させて両面粘着シート12を得た。
【0241】
両面粘着シート12の評価結果は表2に示す通りである。
【0242】
[比較例2]
実施例1で使用した粘着剤組成物1を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み0.1mmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて該離型フィルム越しに積算光量2500mJ/cmの紫外線を照射させて両面粘着シート13を得た。
【0243】
両面粘着シート13の評価結果は表2に示す通りである。
【0244】
[比較例3]
アクリル酸エステル共重合体ポリマーD:100重量部に対し、光開始剤として日本シイベルヘグナー社製の商品名「エザキュア TZT」(4-メチルベンゾフェノン):0.15重量部とを添加して紫外線硬化型の粘着剤組成物4を得た。
【0245】
なお、前記アクリル酸エステル共重合体ポリマーDの組成は、2-エチルヘキシルアクリレート(ホモポリマーTg-70℃)75質量部と、酢酸ビニル(ホモポリマーTg+32℃)20質量部と、アクリル酸(ホモポリマーTg+106℃)5質量部とをランダム共重合させたもので、GPC測定による前記アクリル酸エステル共重合体ポリマーのMwは446000であり、Mnは97800であり、Mw/Mnは4.6であって、理論Tgは-50℃である。
【0246】
前記粘着剤組成物4を、厚さ75μmと厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製の離型フィルムとの間に挟んで、厚み0.1mmのシート状にホットメルト成形し、高圧水銀ランプを用いて該離型フィルム越しに積算光量2000mJ/cmの紫外線を照射させて、両面粘着シート14を得た。
【0247】
両面粘着シート14の評価結果は表2に示す通りである。
【0248】
[比較例4]
アクリル系接着剤(商品名SKダイン1882:綜研化学社製)1000重量部に対して、イソシアネート系硬化剤(商品名L-45:綜研化学社製)1.85重量部及びエポキシ系硬化剤(商品名E-5XM:綜研化学社製)0.5重量部を均一混合して粘着剤溶液を調製した。
【0249】
この粘着剤溶液を、厚さ38μmのシリコーン離型PETフィルムの離型面に、厚さ100μmとなるようにホットメルトコーターを用いて塗布し、厚さ50μmのシリコーン離型PETフィルムに密着積層させ、室温(23℃)で7日間放置熟成し、十分に架橋させ、両面粘着シート15を得た。
【0250】
両面粘着シート15の評価結果は表2に示す通りである。
【0251】
[比較例5]
アクリル酸エステル共重合体ポリマーD:100質量部に対して、架橋モノマーとして紫外線硬化樹脂ペンタエリスリトールアクリレート(ダイセルサイテック社製の商品名「PETIA」)20質量部と、光開始剤として4-メチルベンゾフェノン1.5質量部を混合して中間樹脂層用樹脂組成物を調製した。
【0252】
剥離処理した、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、前記中間樹脂層用樹脂組成物を加熱溶融して、厚み50μmとなるようにアプリケータにて塗工した後、剥離処理した、厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを被覆した。
前記ポリエチレンテレフタレートフィルム越しに、高圧水銀ランプにて積算光量2000mJ/cmの紫外線を照射して前記中間層用樹脂組成物を架橋させ、中間樹脂層(A-1)を作製した。
【0253】
前記アクリル酸エステル共重合体ポリマーD:100質量部に対して、光開始剤として光開始剤として4-メチルベンゾフェノン2.0質量部を混合して感圧粘着剤用組成物を調製した。この感圧粘着剤用組成物を加熱溶融して、剥離処理した、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、厚みが25μmとなるようにシート状に塗工して成形し、剥離処理を施した、厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを被覆した。前記ポリエチレンテレフタレートフィルム越しに、高圧水銀ランプにて積算光量2000mJ/cmの紫外線を照射して前記感圧接着材用組成物を架橋させ、感圧粘着剤層(B-1)を作製した。
また、塗工基材を、剥離処理した、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに変えた以外は、上記感圧粘着剤層(B-1)と同様に感圧粘着剤層(B-1’)を作製した。
【0254】
中間樹脂層(A-1)の両側のPETフィルムを順次剥離除去すると共に、感圧粘着剤層(B-1)及び(B-1’)の一側のPETフィルムを剥がして、露出した粘着面を(A-1)の両表面にラミネータにて順次貼合し、多層の両面粘着シート16(厚み100μm)を作製した。
【0255】
両面粘着シート16の評価結果は表2に示す通りである。
【0256】
【表1】
【0257】
【表2】
【0258】
比較例1の両面粘着シート12は、貯蔵弾性率G’が所定の範囲内になく、低すぎるため、折り曲げ試験結果では剥がれが発生した。
【0259】
比較例2の両面粘着シート13は、貯蔵弾性率G’が所定の範囲内になく、高すぎるため、折り曲げ試験結果では折れが発生した。
【0260】
比較例3の両面粘着シート14及び比較例4の両面粘着シート15は、ガラス転移温度が所定の範囲内になく、高すぎるため、折り曲げ試験結果では折れが発生した。
【0261】
比較例5の両面粘着シート16は、ガラス転移温度が所定の範囲内になく、高すぎるため、折り曲げ試験結果では折れが発生した。また、指数曲線の底の自然対数が所定の範囲内になく、低すぎるため、折り曲げ試験結果では同時に折り曲げ部分付近に膨らみのような現象も見られた。
【0262】
以上から、両面粘着シートのガラス転移温度及び貯蔵弾性率G’が所定の範囲内にあることにより、高い折り曲げ耐性を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明により、屈曲又は湾曲可能な画像表示装置構成用フレキシブル部材を貼り合せるのに好適な両面粘着シートが提供され、当該両面粘着シートは、折れや剥がれが発生することなく、フレキシブルディスプレイの貼合にも適用できる。
【符号の説明】
【0264】
1 投影機
2 折り曲げ試験後のサンプル
3 スクリーン
4 折れ痕
図1