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  • 特許-研磨液及び研磨方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】研磨液及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240521BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240521BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20240521BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20240521BHJP
   C01B 33/141 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
C01B33/141
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022562767
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2022028085
(87)【国際公開番号】W WO2023008262
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/028425
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕
(72)【発明者】
【氏名】井上 恵介
(72)【発明者】
【氏名】地主 孝広
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-522896(JP,A)
【文献】特開2021-093457(JP,A)
【文献】国際公開第2011/021599(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056122(WO,A1)
【文献】特開2001-210612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
C01B 33/141
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン材料を含む被研磨面を研磨するための研磨液であって、
砥粒と、鉄含有化合物と、酸化剤と、を含有し、
前記砥粒がシリカ粒子を含み、
前記砥粒の平均粒径が40nm以上90nm未満であり、
前記シリカ粒子のシラノール基密度が8.0個/nm以下であり、
アルミニウム原子の含有量が、前記研磨液の全質量を基準として0.000006質量%未満である、研磨液(但し、媒体と、前記媒体に分散している砥粒としてシリカ粒子とを含む、CMP研磨液であって、(A1)前記シリカ粒子のシラノール基密度が5.0個/nm 以下であり、(B1)前記シリカ粒子を走査型電子顕微鏡により観察した画像から任意の20個を選択したときの二軸平均一次粒子径が25~55nmであり、(C1)前記シリカ粒子の会合度が1.1以上であるCMP研磨液、及び、媒体と、前記媒体に分散している砥粒としてシリカ粒子とを含む、CMP研磨液であって、(A2)前記シリカ粒子のシラノール基密度が5.0個/nm 以下であり、かつ、表面処理されたものではなく、(B2)前記シリカ粒子を走査型電子顕微鏡により観察した画像から任意の20個を選択したときの二軸平均一次粒子径が60nm以下であり、(C2)前記シリカ粒子の会合度が1.20以下または、1.40~1.80であるCMP研磨液を除く)
【請求項2】
前記シリカ粒子のシラノール基密度が2.5個/nm以下である、請求項1に記載の研磨液。
【請求項3】
タングステン材料を含む被研磨面を研磨するための研磨液であって、
砥粒と、鉄含有化合物と、酸化剤と、を含有し、
前記砥粒がシリカ粒子を含み、
前記砥粒の平均粒径が40~140nmであり、
前記シリカ粒子のシラノール基密度が2.0個/nm未満であり、
アルミニウム原子の含有量が、前記研磨液の全質量を基準として0.000006質量%未満である、研磨液(但し、媒体と、前記媒体に分散している砥粒としてシリカ粒子とを含む、CMP研磨液であって、(A1)前記シリカ粒子のシラノール基密度が5.0個/nm 以下であり、(B1)前記シリカ粒子を走査型電子顕微鏡により観察した画像から任意の20個を選択したときの二軸平均一次粒子径が25~55nmであり、(C1)前記シリカ粒子の会合度が1.1以上であるCMP研磨液、及び、媒体と、前記媒体に分散している砥粒としてシリカ粒子とを含む、CMP研磨液であって、(A2)前記シリカ粒子のシラノール基密度が5.0個/nm 以下であり、かつ、表面処理されたものではなく、(B2)前記シリカ粒子を走査型電子顕微鏡により観察した画像から任意の20個を選択したときの二軸平均一次粒子径が60nm以下であり、(C2)前記シリカ粒子の会合度が1.20以下または、1.40~1.80であるCMP研磨液を除く)
【請求項4】
前記砥粒の平均粒径が40~85nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項5】
前記研磨液中の前記シリカ粒子のゼータ電位が-10mV超である、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項6】
前記鉄含有化合物が、硝酸鉄及びその水和物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項7】
前記鉄含有化合物の含有量が、前記研磨液の全質量を基準として0.0001~0.1質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項8】
前記酸化剤が過酸化水素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項9】
有機酸成分を更に含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項10】
前記有機酸成分が、炭素-炭素不飽和結合を有さない有機酸成分として、2価の有機酸成分及び3価の有機酸成分からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項9に記載の研磨液。
【請求項11】
前記有機酸成分が、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、リンゴ酸、クエン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項9に記載の研磨液。
【請求項12】
pHが2.0~4.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項13】
pHが2.5~3.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一項に記載の研磨液を用いて、タングステン材料を含む被研磨面を研磨する、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、研磨液、研磨方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(以下、「LSI」と記す。)の高集積化又は高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、「CMP」と記す。)法は、その一つであり、LSI製造工程(特に、多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成等)において頻繁に利用される技術である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
CMPを用いた埋め込み配線形成としては、ダマシン法が知られている。ダマシン法では、例えば、まず、絶縁部材(酸化珪素等の絶縁材料を含有する部材)の表面に凹凸を形成した後、絶縁部材の表面に追従する形状のバリア部材を形成し、さらに、凹部(溝部)を埋め込むようにバリア部材の全体に金属材料(例えば、配線金属)を堆積して金属部材を得ることにより基体(被研磨体)を得る。次に、凹部以外の不要な金属部材を除去した後、絶縁部材の凸部上に位置するバリア部材をCMPにより除去することにより埋め込み配線を形成する。
【0004】
近年、金属材料としては、タングステン、タングステン合金等のタングステン材料が用いられるようになってきている。ダマシン法を用いたタングステン材料の配線の形成方法の一例を図1に示す。図1(a)に示すように、基体(被研磨体)10は、表面に凹凸を有する絶縁部材1と、絶縁部材1の表面に追従する形状のバリア部材(バリア材料を含有する部材)2と、凹部を埋め込むようにバリア部材2の全体を覆うタングステン部材(タングステン材料を含有する部材)3と、を有している。基体10の研磨方法は、バリア部材2が露出するまでタングステン部材3を研磨する第一の研磨工程(粗研磨工程。図1(a)~図1(b))と、絶縁部材1が露出するまでバリア部材2及びタングステン部材3を研磨する第二の研磨工程(図1(b)~図1(c))と、第一及び第二の研磨工程において生じた段差を解消して、適切な厚さに調整するために絶縁部材1、バリア部材2及びタングステン部材3を研磨する第三の研磨工程(仕上げ研磨工程)と、をこの順に有している。
【0005】
タングステン材料の研磨に用いる研磨液として、例えば、下記特許文献2には、コロイダルシリカ、無機酸、硝酸鉄等を含有する研磨液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4944836号明細書
【文献】特開2009-206148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、タングステン材料の研磨に用いる研磨液に対しては、ダマシン法による配線形成のプロセス効率を高める観点等から、タングステン材料を更に優れた研磨速度で研磨することが求められる。
【0008】
本開示の一側面は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨することが可能な研磨液を提供することを目的とする。本開示の他の一側面は、このような研磨液を用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の砥粒と、鉄含有化合物と、酸化剤と、を含有する研磨液を用いることで、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨することができることを見出した。
【0010】
本開示の一側面は、タングステン材料を含む被研磨面を研磨するための研磨液であって、砥粒と、鉄含有化合物と、酸化剤と、を含有し、砥粒がシリカ粒子を含み、砥粒の平均粒径が40~140nmであり、シリカ粒子のシラノール基密度が8.0個/nm以下である、研磨液を提供する。
【0011】
本開示の他の一側面は、上述の研磨液を用いて、タングステン材料を含む被研磨面を研磨する、研磨方法を提供する。
【0012】
本開示は、いくつかの側面において、下記の<1>~<15>等に関する。
<1>タングステン材料を含む被研磨面を研磨するための研磨液であって、砥粒と、鉄含有化合物と、酸化剤と、を含有し、前記砥粒がシリカ粒子を含み、前記砥粒の平均粒径が40~140nmであり、前記シリカ粒子のシラノール基密度が8.0個/nm以下である、研磨液。
<2>前記砥粒の平均粒径が40~85nmである、<1>に記載の研磨液。
<3>前記シリカ粒子のシラノール基密度が2.5個/nm以下である、<1>又は<2>に記載の研磨液。
<4>前記シリカ粒子のシラノール基密度が2.0個/nm未満であり、アルミニウム原子の含有量が、前記研磨液の全質量を基準として0.000006質量%未満である、<1>~<3>のいずれか一つに記載の研磨液。
<5>前記研磨液中の前記シリカ粒子のゼータ電位が-10mV超であり、アルミニウム原子の含有量が、前記研磨液の全質量を基準として0.000006質量%未満である、<1>~<4>のいずれか一つに記載の研磨液。
<6>前記鉄含有化合物が、硝酸鉄及びその水和物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、<1>~<5>のいずれか一つに記載の研磨液。
<7>前記鉄含有化合物の含有量が、前記研磨液の全質量を基準として0.0001~0.1質量%である、<1>~<6>のいずれか一つに記載の研磨液。
<8>前記酸化剤が過酸化水素を含む、<1>~<7>のいずれか一つに記載の研磨液。
<9>有機酸成分を更に含有する、<1>~<8>のいずれか一つに記載の研磨液。
<10>前記有機酸成分が、炭素-炭素不飽和結合を有さない有機酸成分として、2価の有機酸成分及び3価の有機酸成分からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、<9>に記載の研磨液。
<11>前記有機酸成分が、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、リンゴ酸、クエン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、<9>又は<10>に記載の研磨液。
<12>pHが2.0~4.0である、<1>~<11>のいずれか一つに記載の研磨液。
<13>pHが2.5~3.5である、<1>~<12>のいずれか一つに記載の研磨液。
<14><1>~<13>のいずれか一つに記載の研磨液を用いて、タングステン材料を含む被研磨面を研磨する、研磨方法。
【0013】
このような研磨液及び研磨方法によれば、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一側面によれば、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨することが可能な研磨液を提供することができる。本開示の他の一側面によれば、このような研磨液を用いた研磨方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、タングステン材料の配線の形成方法を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について説明する。但し、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
<定義>
本明細書において、「研磨速度」とは、被研磨材料が研磨により除去される速度(例えば、時間あたりの被研磨材料の厚さの低減量。Removal Rate)を意味する。「砥粒」とは、複数の粒子の集合を意味するが、便宜的に、砥粒を構成する一の粒子を砥粒と呼ぶことがある。「工程」との語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できないもののその工程の所期の作用が達成される工程が含まれる。「膜」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。数値範囲の「A以上」とは、A、及び、Aを超える範囲を意味する。数値範囲の「A以下」とは、A、及び、A未満の範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、一種を単独で、又は、二種以上を組み合わせて使用できる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0018】
<研磨液>
本実施形態に係る研磨液は、タングステン材料を含む被研磨面を研磨するための研磨液(タングステン材料用の研磨液)である。「タングステン材料」とは、タングステンを50モル%以上含む材料を意味し、タングステン(単体)、タングステン合金、タングステン化合物(酸化タングステン、タングステンシリサイド、窒化タングステン等)などが挙げられる。本実施形態に係る研磨液は、CMP研磨液として用いることができる。
【0019】
本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、鉄含有化合物と、酸化剤と、を含有する。本実施形態に係る研磨液において、砥粒はシリカ粒子を含み、砥粒の平均粒径は40~140nmであり、シリカ粒子のシラノール基密度は8.0個/nm以下である。
【0020】
本実施形態に係る研磨液によれば、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨することができる。このような効果が得られる理由について、本発明者らは以下のように推察する。但し、理由は以下の内容に限定されない。すなわち、砥粒としてシリカ粒子を含有する研磨液において、シリカ粒子のシラノール基(Si-OH)密度が上述の含有量以下であると、シリカ粒子の内部のシラノール基密度も小さいと考えられる。この場合、シリカ粒子の内部において、シラノール基密度に対してシロキサン結合(Si-O-Si)密度が大きく、シロキサン結合による網目構造が充分に形成されるためシリカ粒子の硬度(剛直さ)が優れることから、砥粒の機械的作用(物理的作用)が向上する。また、砥粒の平均粒径が上述の範囲内であると、粒子1個あたりの物理的な研磨能力、及び、被研磨面の単位面積当たりの粒子数が好適に両立されることから砥粒の機械的作用が向上する。そして、研磨液が砥粒に加えて鉄含有化合物及び酸化剤を含有することで、砥粒の機械的作用、研磨液の化学的作用等が好適に得られるため、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨できると考えられる。
【0021】
本実施形態に係る研磨液によれば、後述の実施例の評価方法において、タングステン材料の研磨速度として例えば350nm/min以上を得ることができる。タングステン材料の研磨速度は、370nm/min以上、380nm/min以上、390nm/min以上、400nm/min以上、又は、410nm/min以上であってよい。
【0022】
本実施形態に係る研磨液は、絶縁材料(例えば酸化珪素)の研磨に用いてもよい。本実施形態に係る研磨液によれば、例えば、後述の実施例の評価方法において、酸化珪素の研磨速度として80nm/min以上を得ることができる。酸化珪素の研磨速度は、90nm/min以上、110nm/min以上、130nm/min以上、150nm/min以上、170nm/min以上、190nm/min以上、210nm/min以上、又は、230nm/min以上であってよい。上述の第一の研磨工程(粗研磨工程)、第二の研磨工程及び第三の研磨工程(仕上げ研磨工程)を備える研磨方法(ダマシン法による配線形成)における第一の研磨工程では、タングステン材料の優れた研磨速度を達成していれば充分であるのに対し、第三の研磨工程では、タングステン材料及び絶縁材料の双方について優れた研磨速度が求められる。これに対し、本実施形態に係る研磨液によれば、タングステン材料及び絶縁材料の双方について優れた研磨速度を得ることが可能であることから、単一の研磨液によって第一、第二及び第三の研磨工程を行うことが可能であるため、ダマシン法による配線形成において、複数の研磨液を用いることによる工程の複雑化、及び、コストの上昇を抑制することができる。
【0023】
本実施形態に係る研磨液は、絶縁材料(例えば酸化珪素)に対してタングステン材料(例えばタングステン)を選択的に研磨してもよい。本実施形態に係る研磨液によれば、例えば、後述の実施例の評価方法において、絶縁材料に対するタングステン材料の研磨速度比(タングステン材料の研磨速度/絶縁材料の研磨速度)として例えば0.1以上を得ることができる。絶縁材料に対するタングステン材料の研磨速度比は、0.5以上、1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.3以上、2.7以上、3.0以上、3.4以上、3.8以上、3.9以上、4.0以上、4.1以上、4.2以上、4.3以上、又は、4.4以上であってよい。絶縁材料に対するタングステン材料の研磨速度比は、5.5以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下、又は、3.5以下であってよい。
【0024】
本実施形態に係る研磨液によれば、砥粒の含有量が同等量である場合の対比において従来の砥粒よりも研磨速度を向上させやすい砥粒を用いていることから、充分な研磨速度を得つつ砥粒の含有量を低減可能であり、研磨速度を高めるために砥粒の含有量を高くすることに伴うコストの増加を回避できる。
【0025】
本実施形態によれば、タングステン材料を含む被研磨面の研磨への研磨液の応用を提供することができる。本実施形態に係る研磨液は、タングステン材料及び絶縁材料を含む被研磨面の研磨に用いられてよい。本実施形態によれば、タングステン材料及び絶縁材料を含む被研磨面の研磨への研磨液の応用を提供することができる。本実施形態によれば、半導体デバイスの配線形成工程の研磨への研磨液の応用を提供することができる。
【0026】
(砥粒)
本実施形態に係る研磨液は、シリカ粒子(シリカを含む粒子)を含む砥粒を含有する。
【0027】
シリカ粒子としては、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、合成シリカ、中空シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。砥粒は、タングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点、研磨後の被研磨面においてスクラッチ等の欠陥の発生を抑制しやすい観点、並びに、被研磨面の平坦性を向上させやすい観点から、コロイダルシリカを含んでよい。
【0028】
砥粒の平均粒径は、上述のとおり40~140nmである。砥粒の平均粒径は、粒子1個あたりの物理的な研磨能力が向上することによりタングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、45nm以上、50nm以上、55nm以上、又は、60nm以上であってよい。砥粒の平均粒径は、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度のバランスを調整する観点から、65nm以上、70nm以上、70nm超、75nm以上、80nm以上、80nm超、85nm以上、90nm以上、95nm以上、100nm以上、100nm超、105nm以上、又は、110nm以上であってよい。砥粒の平均粒径は、被研磨面の単位面積当たりの粒子数が増えることによりタングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、135nm以下、130nm以下、125nm以下、120nm以下、115nm以下、又は、110nm以下であってよい。砥粒の平均粒径は、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度のバランスを調整する観点から、105nm以下、100nm以下、95nm以下、90nm以下、90nm未満、85nm以下、80nm以下、75nm以下、70nm以下、又は、65nm以下であってよい。これらの観点から、砥粒の平均粒径は、40~135nm、40~130nm、40~120nm、40~110nm、40~100nm、40~90nm、40nm以上90nm未満、45~115nm、50~120nm、50~110nm、55~110nm、60~110nm、60~100nm、60nm以上90nm未満、又は、40~85nmであってよい。
【0029】
シリカ粒子の平均粒径は、粒子1個あたりの物理的な研磨能力が向上することによりタングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、40nm以上、45nm以上、50nm以上、55nm以上、又は、60nm以上であってよい。シリカ粒子の平均粒径は、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度のバランスを調整する観点から、65nm以上、70nm以上、70nm超、75nm以上、80nm以上、80nm超、85nm以上、90nm以上、95nm以上、100nm以上、100nm超、105nm以上、又は、110nm以上であってよい。シリカ粒子の平均粒径は、被研磨面の単位面積当たりの粒子数が増えることによりタングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、140nm以下、135nm以下、130nm以下、125nm以下、120nm以下、115nm以下、又は、110nm以下であってよい。シリカ粒子の平均粒径は、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度のバランスを調整する観点から、105nm以下、100nm以下、95nm以下、90nm以下、90nm未満、85nm以下、80nm以下、75nm以下、70nm以下、又は、65nm以下であってよい。これらの観点から、シリカ粒子の平均粒径は、40~140nm、40~135nm、40~130nm、40~120nm、40~110nm、40~100nm、40~90nm、40nm以上90nm未満、45~115nm、50~120nm、50~110nm、55~110nm、60~110nm、60~100nm、60nm以上90nm未満、又は、40~85nmであってよい。
【0030】
砥粒(例えばシリカ粒子)の「平均粒径」とは、下記の方法により測定される二次粒径を意味する。平均粒径は、例えば、砥粒を水に分散させた試料を作製し、光回折散乱式粒度分布計により測定することができる。例えば、COULTER Electronics社製のCOULTER N4SDを用いて、測定温度:20℃、溶媒屈折率:1.333(水)、粒子屈折率:Unknown(設定)、溶媒粘度:1.005cp(水)、Run Time:200秒、レーザ入射角:90°、Intensity(散乱強度、濁度に相当):5E+04~4E+05の範囲で平均粒径を測定することが可能であり、Intensityが4E+05よりも高い場合には水で希釈して測定することができる。コロイダル粒子(例えばコロイダルシリカ)は、通常、水に分散された状態で得られるので、上述の散乱強度の範囲に入るように適宜希釈することによりコロイダル粒子の平均粒径を測定することができる。砥粒を水に分散させた試料は、研磨液を調製するために他成分と混合する前の砥粒を水に分散させることで作製してよく、研磨液から回収された砥粒を水に分散させることで作製してよい。平均粒径を測定する際の含有量の目安としては、0.5~2.0質量%であってよい。砥粒の平均粒径は、研磨液の調製前後の変化が小さいことに基づき、研磨液の調製前の砥粒の平均粒径、又は、研磨液から回収された砥粒の平均粒径であってよい。
【0031】
シリカ粒子のシラノール基密度(シリカ粒子の表面積1nm当たりのシラノール基の個数)は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨する観点から、8.0個/nm以下である。シリカ粒子のシラノール基密度は、タングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、7.0個/nm以下、6.5個/nm以下、又は、6.0個/nm以下であってよい。シリカ粒子のシラノール基密度は、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度のバランスを調整する観点から、5.5個/nm以下、5.0個/nm以下、5.0個/nm未満、4.8個/nm以下、4.5個/nm以下、4.0個/nm以下、4.0個/nm未満、3.5個/nm以下、3.2個/nm以下、3.0個/nm以下、3.0個/nm未満、2.5個/nm以下、2.2個/nm以下、2.0個/nm以下、2.0個/nm未満、1.9個/nm以下、1.8個/nm以下、1.7個/nm以下、又は、1.6個/nm以下であってよい。シリカ粒子のシラノール基密度は、0個/nmを超え、タングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、0.1個/nm以上、0.5個/nm以上、1.0個/nm以上、1.2個/nm以上、1.3個/nm以上、1.4個/nm以上、1.5個/nm以上、又は、1.6個/nm以上であってよい。シリカ粒子のシラノール基密度は、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度のバランスを調整する観点から、1.7個/nm以上、1.8個/nm以上、2.0個/nm以上、2.2個/nm以上、2.5個/nm以上、3.0個/nm以上、3.2個/nm以上、3.5個/nm以上、4.0個/nm以上、4.5個/nm以上、4.8個/nm以上、5.0個/nm以上、5.5個/nm以上、又は、6.0個/nm以上であってよい。これらの観点から、シリカ粒子のシラノール基密度は、0個/nmを超え8.0個/nm以下、0個/nmを超え3.0個/nm以下、0個/nmを超え2.0個/nm未満、0.1~7.0個/nm、0.5~6.0個/nm、1.0~5.0個/nm、1.2~4.0個/nm、1.5~3.0個/nm、1.5~2.0個/nm、1.5個/nm以上2.0個/nm未満、又は、1.6~1.8個/nmであってよい。
【0032】
シリカ粒子のシラノール基密度(ρ[個/nm])は、以下のようにして測定及び算出することができる。
[1]シリカ粒子15gを含有する粒子分散液(コロイダルシリカ等)をポリボトルAに量り取る。
[2][1]の粒子分散液に0.1mol/Lの塩酸水溶液を添加することにより、シリカ粒子及び塩酸の混合物AのpHを3.0~3.5に調整する。このとき、0.1mol/Lの塩酸水溶液の添加量[g]を測定しておく。
[3]混合物Aの質量を算出する。
[4][3]で得られた質量(混合物Aの質量)の1/10にあたる質量の混合物AをポリボトルBに量り取る。
[5]ポリボトルBの混合物Aに塩化ナトリウムを30g添加した後、超純水を添加することにより全量150gの混合物Bを得る。
[6]混合物Bに0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを調整することにより、pH4.0の混合物Cを得る。
[7]pHが9.0になるまで混合物Cに0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHが4.0から9.0になるまでに要した水酸化ナトリウム量(B[mol])を算出する。
[8]下記式(1)よりシリカ粒子のシラノール基密度を算出する。
ρ=B・NA/(A・SBET) …(1)
[式(1)中、NA[個/mol]はアボガドロ数を示し、A[g]はシリカ粒子の量を示し、SBET[m/g]はシリカ粒子のBET比表面積を示す。]
【0033】
シリカ粒子のBET比表面積SBETは、BET比表面積法に従って測定することができる。例えば、シリカ粒子のBET比表面積は、シリカ粒子(コロイダルシリカ等)を乾燥機に入れて150℃で乾燥させた後、測定セルに入れて120℃で60分間真空脱気した試料について、BET比表面積測定装置を用い、窒素ガスを吸着させる1点法又は多点法により求めることができる。具体的には、150℃で乾燥後のシリカ粒子を乳鉢(磁製、100mL)で細かく砕いて得られた測定用試料を測定セルに入れ、BET比表面積測定装置(例えば、ユアサアイオニクス株式会社製、商品名:NOVE-1200)を用いてシリカ粒子のBET比表面積SBETを測定することができる。
【0034】
シリカ粒子のシラノール基密度は、研磨液を調製するために他成分と混合する前のシリカ粒子、又は、研磨液から回収されたシリカ粒子を用いて得ることができる。シリカ粒子のシラノール基密度は、研磨液の調製前後の変化が小さいことに基づき、研磨液の調製前のシリカ粒子のシラノール基密度、又は、研磨液から回収されたシリカ粒子のシラノール基密度であってよい。
【0035】
シリカ粒子のシラノール基密度の算出方法の詳細については、例えば、Analytical Chemistry、1956年、第28巻、12号、p.1981-1983、及び、Japanese Journal of Applied Physics、2003年、第42巻、p.4992-4997に開示されている。
【0036】
本実施形態に係る研磨液における砥粒は、シリカ粒子以外の粒子を含んでよい。シリカ粒子以外の粒子の構成材料としては、アルミナ、セリア、ジルコニア、セリウムの水酸化物、樹脂粒子等が挙げられる。
【0037】
研磨液中の砥粒(例えばシリカ粒子)のゼータ電位(25℃)は、正であってよく、負であってよい。研磨液中の砥粒のゼータ電位は、例えば、日本ルフト株式会社製のDT1202(商品名)を用いて測定できる。
【0038】
研磨液中の砥粒のゼータ電位は、-50mV以上、-35mV以上、-25mV以上、-20mV以上、-20mV超、-15mV以上、-10mV以上、-10mV超、-5.0mV以上、-3.0mV以上、-2.0mV以上、-1.5mV以上、-1.0mV以上、-0.5mV以上、-0.1mV以上、0mV以上、0mV超、0.1mV以上、0.5mV以上、1.0mV以上、2.0mV以上、3.0mV以上、4.0mV以上、5.0mV以上、6.0mV以上、7.0mV以上、8.0mV以上、9.0mV以上、10mV以上、11mV以上、12mV以上、又は、13mV以上であってよい。研磨液中の砥粒のゼータ電位は、50mV以下、30mV以下、20mV以下、15mV以下、13mV以下、12mV以下、11mV以下、10mV以下、9.0mV以下、8.0mV以下、7.0mV以下、6.0mV以下、5.0mV以下、5.0mV未満、4.0mV以下、3.0mV以下、2.0mV以下、1.0mV以下、0.5mV以下、0.1mV以下、0mV以下、0mV未満、-0.1mV以下、-0.5mV以下、又は、-1.0mV以下であってよい。これらの観点から、研磨液中の砥粒のゼータ電位は、-50~50mV、-35~30mV、-20~20mV、-10mVを超え50mV以下、-10mVを超え30mV以下、-10mVを超え20mV以下、-10mVを超え15mV以下、-5.0~15mV、又は、-1.0~13mV以下であってよい。
【0039】
砥粒におけるシリカ粒子の含有量は、タングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、砥粒の全質量(研磨液に含まれる砥粒全体)を基準として、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、又は、99質量%以上であってよい。砥粒は、シリカ粒子からなる(研磨液に含まれる砥粒の実質的に100質量%がシリカ粒子である)態様であってよい。
【0040】
砥粒の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であってよい。砥粒の含有量は、タングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.05質量%以上、0.08質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.0質量%超、1.2質量%以上、1.4質量%以上、1.5質量%以上、1.6質量%以上、1.8質量%以上、又は、2.0質量%以上であってよい。砥粒の含有量は、研磨後の被研磨面においてスクラッチ等の欠陥の発生を抑制しやすい観点、及び、コストの観点から、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5.0質量%以下、5.0質量%未満、3.0質量%以下、3.0質量%未満、2.5質量%以下、2.2質量%以下、2.0質量%以下、2.0質量%未満、1.8質量%以下、1.6質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、又は、1.2質量%以下であってよい。これらの観点から、砥粒の含有量は、0.01~20質量%、0.02~15質量%、0.05~10質量%、0.1~5.0質量%、0.2~3.0質量%、又は、0.3~2.0質量%であってよい。
【0041】
(鉄含有化合物)
本実施形態に係る研磨液は、鉄含有化合物(鉄成分を含む化合物。但し、砥粒に該当する化合物を除く)を含有する。鉄含有化合物は、鉄イオンを含む鉄イオン含有化合物を含んでよく、研磨液中に鉄イオンを供給する鉄イオン供給剤を含んでよい。鉄イオンは、第二鉄イオン(Fe2+)であってよい。研磨液が鉄含有化合物を含有する、すなわち、研磨液が鉄成分(例えば鉄イオン)を含有することにより、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨することができる。
【0042】
鉄含有化合物は、鉄イオン供給剤として鉄の塩を含んでよい。鉄イオン供給剤は、研磨液中において、鉄イオンと、鉄イオン供給剤由来の対アニオン成分とに解離していてよい。鉄含有化合物(例えば鉄イオン供給剤)は、酸化剤として機能する場合があるが、鉄含有化合物及び酸化剤の両方に該当する化合物は、本明細書では、鉄含有化合物に該当するものとする。
【0043】
鉄含有化合物は、鉄イオン供給剤として、鉄の無機塩を含んでよく、鉄の有機塩を含んでよい。鉄の無機塩としては、硝酸鉄、硫酸鉄、ほう化鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、リン酸鉄、フッ化鉄等が挙げられる。鉄の有機塩としては、三ギ酸鉄、二ギ酸鉄、酢酸鉄、プロピオン酸鉄、シュウ酸鉄、マロン酸鉄、コハク酸鉄、リンゴ酸鉄、グルタル酸鉄、酒石酸鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄等が挙げられる。鉄含有化合物は、アンモニア、水等の配位子を含んでもよく、水和物等であってもよい。鉄含有化合物は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点、研磨装置及び基体への汚染を抑制しやすい観点、並びに、安価で入手しやすい観点から、鉄の無機塩を含んでよく、硝酸鉄及びその水和物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、硝酸鉄九水和物を含んでよい。
【0044】
鉄含有化合物の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であってよい。鉄含有化合物の含有量は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、0.0001質量%以上、0.0003質量%以上、0.0005質量%以上、0.0008質量%以上、0.001質量%以上、0.003質量%以上、0.005質量%以上、0.007質量%以上、又は、0.008質量%以上であってよい。鉄含有化合物の含有量は、酸化剤の分解及び変質を抑制しやすいことからタングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.08質量%以下、0.05質量%以下、0.03質量%以下、0.01質量%以下、0.009質量%以下、又は、0.008質量%以下であってよい。これらの観点から、鉄含有化合物の含有量は、0.0001~1質量%、0.0001~0.1質量%、0.0003~0.1質量%、0.0005~0.05質量%、又は、0.001~0.01質量%であってよい。
【0045】
鉄イオンの含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であってよい。鉄イオンの含有量は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、0.0001質量%以上、0.0003質量%以上、0.0005質量%以上、0.0008質量%以上、0.001質量%以上、又は、0.0011質量%以上であってよい。鉄イオンの含有量は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.01質量%以下、0.008質量%以下、0.005質量%以下、0.003質量%以下、0.0025質量%以下、0.002質量%以下、0.0015質量%以下、又は、0.0012質量%以下であってよい。これらの観点から、鉄イオンの含有量は、0.0001~0.1質量%、0.0003~0.05質量%、0.0005~0.01質量%、又は、0.001~0.005質量%であってよい。
【0046】
砥粒の含有量に対する鉄含有化合物の含有量の質量比率R1(鉄含有化合物の含有量/砥粒の含有量)は、下記の範囲であってよい。質量比率R1は、タングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、0.0001以上、0.0005以上、0.001以上、0.002以上、0.003以上、又は、0.004以上であってよい。質量比率R1は、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度のバランスを調整する観点から、0.005以上、又は、0.006以上であってよい。質量比率R1は、タングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、0.1以下、0.05以下、0.01以下、0.008以下、又は、0.007以下であってよい。質量比率R1は、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度のバランスを調整する観点から、0.006以下、0.005以下、又は、0.004以下であってよい。これらの観点から、質量比率R1は、0.0001~0.1、0.0005~0.05、又は、0.001~0.01であってよい。
【0047】
(酸化剤)
本実施形態に係る研磨液は、酸化剤(但し、鉄含有化合物に該当する化合物を除く)を含有する。研磨液が酸化剤を含有することで、酸化剤によってタングステン材料の表面が酸化されるため、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨することができる。
【0048】
酸化剤としては、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、ペルオキソ二硫酸塩、オゾン水等が挙げられる。酸化剤は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点、基体が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合においてアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染を抑制できる観点、及び、経時的な組成の変化が少ない観点から、過酸化水素を含んでよい。ペルオキソ二硫酸塩の含有量は、研磨液1L当たり、0.01mol以下、0.003mol以下、0.003mol未満、0.001mol以下、又は、実質的に0molであってよい。
【0049】
酸化剤における過酸化水素の含有量は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、酸化剤の全質量を基準として、50質量%超、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は、95質量%以上であってよい。酸化剤は、過酸化水素からなる(研磨液に含まれる酸化剤の実質的に100質量%が過酸化水素である)態様であってよい。
【0050】
酸化剤の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であってよい。酸化剤の含有量は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、又は、3.0質量%以上であってよい。酸化剤の含有量は、被研磨面の荒れを低減しやすい観点から、50質量%以下、30質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.5質量%以下、又は、3.0質量%以下であってよい。これらの観点から、酸化剤の含有量は、0.01~50質量%、0.02~30質量%、又は、0.05~15質量%であってよい。
【0051】
砥粒の含有量に対する酸化剤の含有量の質量比率R2(酸化剤の含有量/砥粒の含有量)は、下記の範囲であってよい。質量比率R2は、タングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、0.01以上、0.05以上、0.1以上、0.5以上、1.0以上、又は、1.5以上であってよい。質量比率R2は、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度のバランスを調整する観点から、2.0以上、又は、2.5以上であってよい。質量比率R2は、タングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、10以下、8.0以下、6.0以下、4.0以下、3.0以下、又は、2.5以下であってよい。質量比率R2は、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度のバランスを調整する観点から、2.0以下、又は、1.5以下であってよい。これらの観点から、質量比率R2は、0.01~10、0.1~8.0、又は、0.5~6.0であってよい。
【0052】
鉄含有化合物の含有量に対する酸化剤の含有量の質量比率R3(酸化剤の含有量/鉄含有化合物の含有量)は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、下記の範囲であってよい。質量比率R3は、10以上、50以上、100以上、150以上、200以上、250以上、300以上、又は、350以上であってよい。質量比率R3は、2000以下、1500以下、1000以下、800以下、600以下、500以下、又は、400以下であってよい。これらの観点から、質量比率R3は、10~2000、50~1000、又は、100~500であってよい。
【0053】
(有機酸成分)
本実施形態に係る研磨液は、有機酸成分(但し、鉄含有化合物又は酸化剤に該当する化合物を除く)を含有してよい。有機酸成分は、有機酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。有機酸は、酸基(カルボキシ基、スルホ基等)を有する有機化合物を意味する。有機酸の塩としては、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩)等が挙げられる。
【0054】
研磨液が有機酸成分を含有することにより、研磨液中で酸化剤が安定した状態で保たれやすいことから、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすいと共に研磨液のポットライフを向上させることができる。このような効果が得られる理由について、本発明者らは以下のように推察する。但し、理由は以下の内容に限定されない。すなわち、研磨液中で有機酸成分が解離し、少なくとも1つの酸基から陽イオン(プロトン、アルカリ金属イオン等)が離れてアニオン性基が生成する(例えば、カルボキシ基(-COOH)からプロトン(H)が離れてアニオン性基(-COO)が生成する)。そして、解離した有機酸成分が鉄含有化合物の鉄成分(鉄イオン等)とキレートすることにより、鉄含有化合物による酸化剤の分解を抑制することができることにより酸化剤が安定すると推察される。
【0055】
有機酸成分としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコ-ル酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、リンゴ酸、クエン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、グリシン、アスパラギン、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、バリン、グルタミン、ロイシン、イソロイシン、リシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、トリプトファン、β-アラニン、これらの塩等が挙げられる。有機酸成分は、研磨液のpHを調整するpH調整剤として用いられてよい。pH調整剤は、例えば、研磨液のpHを2.0~4.0に安定化させる化合物であってよい。pH調整剤は、アミノ酸成分(アミノ酸、その塩等)を含んでよく、第一解離定数が2.0~4.0の範囲であるアミノ酸成分を含んでよい。有機酸成分としては、アミノ酸成分とは異なる有機酸成分を用いてよい。
【0056】
有機酸成分は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、カルボン酸及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、リンゴ酸、クエン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、マロン酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0057】
有機酸成分の炭素数(有機酸成分として用いる化合物の炭素数)は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、下記の範囲であってよい。有機酸成分の炭素数は、1以上、2以上、又は、3以上であってよい。有機酸成分の炭素数は、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、又は、3以下であってよい。これらの観点から、有機酸成分の炭素数は、1~8であってよい。
【0058】
有機酸成分は、酸化剤が更に安定した状態で保たれやすいことから、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、2価の有機酸成分、3価の有機酸成分、及び、4価の有機酸成分からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。例えば「2価の有機酸成分」は、酸基の数が2である有機酸成分を意味する。有機酸成分が複数の酸基を有することにより、解離した有機酸成分が鉄含有化合物の鉄成分とキレートしやすいことにより、鉄含有化合物による酸化剤の分解を抑制しやすい。
【0059】
有機酸成分は、酸化剤が更に安定した状態で保たれやすいことから、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、炭素-炭素不飽和結合を有さない有機酸成分を含んでよい。反応性が比較的高い炭素-炭素不飽和結合を有機酸成分が有さないことにより、有機酸成分と酸化剤とが反応することを更に抑制しやすいことから、酸化剤が更に安定した状態で保たれやすいと推察される。
【0060】
有機酸成分は、pH2.7における解離率が1%以上である有機酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機酸成分Aを含んでよい。この場合、有機酸成分Aが解離して鉄含有化合物の鉄成分とキレートしやすいことから、酸化剤が安定しやすい。これにより、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすいと共に、必要な有機酸成分の使用量を低減できる。同様の観点から、有機酸成分Aの解離率は、3%以上、5%以上、10%以上、又は、15%以上であってよい。有機酸成分Aは、研磨液のpHが2.0~4.0である場合に特に好適である。有機酸成分Aの解離率は、研磨液のpH、有機酸成分の酸解離定数等に基づき算出することができる。有機酸成分Aとしては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
【0061】
有機酸成分は、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、炭素-炭素不飽和結合を有さない有機酸成分として、2価の有機酸成分及び3価の有機酸成分からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、炭素-炭素不飽和結合を有さないと共にpH2.7における解離率が1%以上である有機酸成分として、2価の有機酸成分及び3価の有機酸成分からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0062】
有機酸成分の含有量、有機酸成分Aの含有量、又は、アミノ酸成分を除いた有機酸成分の含有量である含有量Xは、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であってよい。含有量Xは、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.035質量%以上、又は、0.04質量%以上であってよい。含有量Xは、被研磨面の荒れを低減しやすい観点から、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、0.1質量%以下、0.08質量%以下、0.05質量%以下、又は、0.04質量%以下であってよい。これらの観点から、含有量Xは、0.001~10質量%、0.005~5質量%、又は、0.01~1質量%であってよい。
【0063】
解離した有機酸成分の分子数は、有機酸成分が鉄イオンとキレートしやすいことで、酸化剤を安定した状態で保ちやすく、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点から、鉄イオン1原子に対して、1.5以上、2以上、4以上、又は、6以上であってよい。解離した有機酸成分の分子数は、有機酸成分の解離率から算出できる。例えば、研磨液のpHが2.7であり、鉄イオン(原子量55.85)の含有量が0.001質量%であり、有機酸成分としてマロン酸(分子量104.06)を用いる場合、マロン酸のpH2.7における解離率は52.8%であることから、マロン酸の含有量(解離したマロン酸、及び、解離していないマロン酸の総量。マロン酸の配合量)は0.007質量%(解離したマロン酸が鉄イオン1原子に対して2分子)以上であってよい。解離したマロン酸の鉄イオン1原子に対する分子数は、鉄イオンの物質量を鉄イオンの原子量と含有量から計算し、鉄イオンの物質量、マロン酸の解離率及び分子量、並びに、鉄イオン1原子に対するマロン酸の含有量から算出できる。解離した有機酸成分の分子数は、アミノ酸成分とは異なる有機酸成分の分子数であってよい。
【0064】
(その他の成分)
本実施形態に係る研磨液は、砥粒、鉄含有化合物、酸化剤、有機酸成分又は水に該当しない成分を含有してよい。このような成分として、本実施形態に係る研磨液は、無機酸成分(無機酸及びその塩)、有機溶媒、水溶性高分子(アニオン性水溶性高分子等)、カチオン性界面活性剤、アミノ酸由来の構造単位を有するカチオン性ポリマー、(メタ)アクリル酸系重合体、多糖類、第四級ホスホニウム塩、アルカノールアミン塩(アルキル硫酸エステル、アルキルエーテル硫酸エステル等)、1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン骨格を有する化合物、シクロデキストリン、トリルトリアゾール、ジフェニルグアニジン、ケイモリブデン酸化合物、アルミニウム成分(アルミニウムイオン、アルミニウム塩等)などを含有してよく、これらの成分の少なくとも一つを含有しなくてもよい(含有量が、研磨液の全質量を基準として実質的に0質量%であってよい)。
【0065】
無機酸成分としては、リン酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。無機酸成分の含有量、又は、リン酸、硫酸、塩酸及び硝酸(酸化剤)の合計量は、研磨液の全質量を基準として、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.05質量%未満、0.01質量%以下、又は、実質的に0質量%であってよい。
【0066】
有機溶媒としては、メタノール等が挙げられる。有機溶媒の含有量、又は、メタノールの含有量は、研磨液の全質量を基準として、10質量%以下、7質量%以下、7質量%未満、1質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、0.001質量%以下、0.0001質量%以下、0.0001質量%未満、又は、実質的に0質量%であってよい。
【0067】
水溶性高分子の含有量、アニオン性水溶性高分子の含有量、カチオン性界面活性剤の含有量、アミノ酸由来の構造単位を有するカチオン性ポリマーの含有量、(メタ)アクリル酸系重合体の含有量、多糖類の含有量、第四級ホスホニウム塩の含有量、アルカノールアミン塩の含有量、1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン骨格を有する化合物の含有量、シクロデキストリンの含有量、トリルトリアゾールの含有量、ジフェニルグアニジンの含有量、又は、ケイモリブデン酸化合物の含有量は、研磨液の全質量を基準として、0.1質量%以下、0.1質量%未満、0.01質量%以下、0.01質量%未満、0.005質量%以下、0.005質量%未満、0.001質量%以下、0.001質量%未満、0.0001質量%以下、0.0001質量%未満、0.00001質量%以下、0.00001質量%未満、又は、実質的に0質量%であってよい。
【0068】
本実施形態に係る研磨液は、アルミニウム成分を含有しなくてよい。アルミニウム原子の含有量は、研磨液の全質量を基準として、0.00001質量%(100ppb)以下、0.000006質量%(60ppb)以下、0.000006質量%(60ppb)未満、0.000005質量%(50ppb)以下、0.0000035質量%(35ppb)以下、0.000002質量%(20ppb)以下、0.000001質量%(10ppb)以下、0.0000005質量%(5ppb)以下、又は、実質的に0質量%であってよい。アルミニウム原子の含有量は、例えば、下記の方法により測定できる。
測定法:ICP-MS法
測定装置:誘導結合プラズマ質量分析装置、アジレント・テクノロジー製、商品名「Agilent 8800」
前処理:研磨液を酸(塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸等。研磨液の全量を基準として0.1~10体積%)と混合した後に超純水で希釈(例えば2~100倍に希釈)する。
【0069】
(水)
本実施形態に係る研磨液は、水を含有することができる。水としては、純水、超純水、蒸留水等が挙げられる。研磨液における水の含有量は、他の含有成分の含有量を除いた研磨液の残部でよい。
【0070】
(研磨液のpH)
本実施形態に係る研磨液のpHは、タングステン材料及び絶縁材料を優れた研磨速度で研磨しやすい観点、及び、研磨装置の腐食を抑制しやすい観点から、2.0以上、2.0超、2.1以上、2.2以上、2.4以上、2.5以上、2.5超、2.6以上、又は、2.7以上であってよい。本実施形態に係る研磨液のpHは、タングステン材料のエッチングを抑制しやすい観点から、4.0以下、4.0未満、3.7以下、3.5以下、3.3以下、3.0以下、3.0未満、2.9以下、2.8以下、又は、2.7以下であってよい。これらの観点から、研磨液のpHは、2.0~4.0、2.1~3.7、2.2~3.5、2.5~3.5、又は、2.5~3.0であってよい。研磨液のpHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0071】
本実施形態に係る研磨液のpHは、pHメータ(例えば、株式会社堀場製作所製の商品名:Model(F-51))で測定できる。例えば、フタル酸塩pH標準液(pH:4.01)、中性リン酸塩pH標準液(pH:6.86)及びホウ酸塩pH標準液(pH:9.18)を校正液として用いてpHメータを3点校正した後、pHメータの電極を研磨液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定する。このとき、校正液及び研磨液の液温は25℃とする。
【0072】
(保存方法)
本実施形態に係る研磨液は、貯蔵、運搬、保存等に係るコストを抑制する観点から、研磨液用貯蔵液として調製されてよい。研磨液用貯蔵液は、水の量を使用時に予定される量よりも減じて保存されており、使用前又は使用時に水で希釈することにより研磨液として用いることができる。研磨液用貯蔵液は、研磨の直前に水で希釈されてよく、研磨定盤上に研磨液用貯蔵液と水とを供給して研磨定盤上で希釈されてもよい。
【0073】
本実施形態に係る研磨液は、少なくとも砥粒、鉄含有化合物及び酸化剤を含む1液式研磨液として保存してよく、砥粒を含むスラリ(第一の液)と、鉄含有化合物及び酸化剤を含む添加液(第二の液)と、を有する複数液式研磨液として保存してもよい。複数液式研磨液では、スラリと添加液とを混合して上述の研磨液となるように上述の研磨液の構成成分がスラリと添加液とに分けられている。砥粒以外の添加剤(鉄含有化合物、酸化剤、有機酸成分等)は、スラリ及び添加液のうち添加液に含まれていてよい。研磨液の構成成分は、3液以上に分けて保存してもよい。複数液式研磨液におけるスラリ及び添加液が研磨直前又は研磨時に混合されて研磨液が調製されてよく、複数液式研磨液におけるスラリ及び添加液をそれぞれ研磨定盤上へ供給して研磨定盤上においてスラリ及び添加液が混合されて研磨液が調製されてよい。
【0074】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、本実施形態に係る研磨液を用いて、タングステン材料を含む被研磨面を研磨する研磨工程を備える。研磨工程で用いる研磨液は、1液式研磨液であってよく、研磨液用貯蔵液を水で希釈することにより得られる研磨液であってよく、複数液式研磨液におけるスラリ及び添加液を混合することにより得られる研磨液であってよい。
【0075】
被研磨面は、絶縁材料、バリア材料(例えばバリア金属)等を含んでよい。絶縁材料としては、酸化珪素、窒化珪素等が挙げられる。バリア材料としては、タンタル、タンタル合金、タンタル化合物(酸化タンタル、窒化タンタル等)、チタン、チタン合金、チタン化合物(酸化チタン、窒化チタン等)などが挙げられる。
【0076】
研磨工程は、本実施形態に係る研磨液を用いて、タングステン材料と、絶縁材料及びバリア材料からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を含む被研磨面を研磨する工程であってもよい。研磨工程は、例えば、タングステン部材(タングステン材料を含有する部材)と、絶縁部材(絶縁材料を含有する部材)及びバリア部材(バリア材料を含有する部材)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を有する基体を研磨する工程であってもよい。
【0077】
研磨工程は、図1の基体10を研磨する工程のように、バリア部材2が露出するまでタングステン部材3を研磨する第一の研磨工程(粗研磨工程)と、絶縁部材1が露出するまでバリア部材2及びタングステン部材3を研磨する第二の研磨工程と、絶縁部材1、バリア部材2及びタングステン部材3を研磨する第三の研磨工程(仕上げ研磨工程)と、をこの順に有してよい。本実施形態に係る研磨液は、第一の研磨工程、第二の研磨工程及び第三の研磨工程の少なくとも一つにおいて用いることができる。本実施形態に係る研磨液を用いて第一の研磨工程、第二の研磨工程及び第三の研磨工程を連続的に行ってよく、本実施形態に係る研磨液を用いて第一の研磨工程、第二の研磨工程及び第三の研磨工程のうちの一部の工程を行うと共に、他の研磨液を用いて残りの工程を行ってよい。
【0078】
被研磨面を有する研磨対象は、膜状(被研磨膜)であってよく、タングステン膜(タングステン材料を含有する膜)を含んでよい。タングステン膜の成膜方法としては、公知のスパッタ法、メッキ法等が挙げられる。研磨工程では、本実施形態に係る研磨液を用いて、被研磨膜(例えばタングステン膜)を有する基体(例えば半導体素子製造に係る基板)の被研磨膜の少なくとも一部を研磨して除去することができる。
【0079】
研磨工程は、例えば、基体の被研磨面を研磨定盤の研磨布(研磨パッド)に押し付け、基体における被研磨面とは反対側の面(基体の裏面)から基体に所定の圧力を加えた状態で、本実施形態に係る研磨液を基体の被研磨面と研磨布との間に供給して、基体を研磨定盤に対して相対的に動かすことにより被研磨面を研磨する工程であってよい。研磨布としては、特に制限はないが、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等を使用することができる。
【0080】
本実施形態に係る研磨方法において、研磨装置としては、例えば、回転数を変更可能なモータ等が取り付けられ、且つ、研磨布を貼り付け可能な研磨定盤と、基体を保持可能なホルダーと、を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨条件に特に制限はないが、基体が研磨定盤から飛び出さないように、研磨定盤の回転速度は、200min-1(200rpm)以下の低回転に調整されていてよい。被研磨面を有する基体の研磨布への押し付け圧力は、研磨速度の被研磨面内の均一性及びパターンの平坦性を好適な範囲に調整しやすい観点から、1~100kPa、又は、5~50kPaであってよい。研磨している間、研磨布にはポンプ等で研磨液を連続的に供給してよい。研磨液の供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨液で覆われていてよい。
【0081】
本実施形態に係る研磨方法は、研磨布の表面状態を常に同一にして研磨(CMP等)を行うために、各研磨工程の前に研磨布のコンディショニングするコンディショニング工程を備えてよい。コンディショニング工程では、例えば、ダイヤモンド粒子のついたドレッサを用いて、少なくとも水を含む液で研磨布のコンディショニングを行う。
【0082】
本実施形態に係る研磨方法は、研磨工程の後に、基体を洗浄する洗浄工程を備えてよい。洗浄工程では、例えば、研磨終了後の基体を流水中でよく洗浄した後、スピンドライ等を用いて、基体に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることができる。また、公知の洗浄方法(例えば、市販の洗浄液を基体の表面に流しつつ、ポリウレタンでできたブラシを回転させながら当該ブラシを基体に一定の圧力で押し付けて基体上の付着物を除去する方法)を実施した後、基体を乾燥させてもよい。
【0083】
本実施形態に係る部品の製造方法は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体(被研磨体)を用いて部品を得る部品作製工程を備える。本実施形態に係る部品は、本実施形態に係る部品の製造方法により得られる部品である。本実施形態に係る部品は、特に限定されないが、電子部品(例えば、半導体パッケージ等の半導体部品)であってよく、ウエハ(例えば半導体ウエハ)であってよく、チップ(例えば半導体チップ)であってよい。本実施形態に係る部品の製造方法の一態様として、本実施形態に係る電子部品の製造方法では、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体を用いて電子部品を得る。本実施形態に係る部品の製造方法の一態様として、本実施形態に係る半導体部品の製造方法では、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体を用いて半導体部品(例えば半導体パッケージ)を得る。本実施形態に係る部品の製造方法は、部品作製工程の前に、本実施形態に係る研磨方法により基体を研磨する研磨工程を備えてよい。
【0084】
本実施形態に係る部品の製造方法は、部品作製工程の一態様として、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体(被研磨体)を個片化する個片化工程を備えてよい。個片化工程は、例えば、本実施形態に係る研磨方法により研磨されたウエハ(例えば半導体ウエハ)をダイシングしてチップ(例えば半導体チップ)を得る工程であってよい。本実施形態に係る部品の製造方法の一態様として、本実施形態に係る電子部品の製造方法は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体を個片化することにより電子部品(例えば半導体部品)を得る工程を備えてよい。本実施形態に係る部品の製造方法の一態様として、本実施形態に係る半導体部品の製造方法は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体を個片化することにより半導体部品(例えば半導体パッケージ)を得る工程を備えてよい。
【0085】
本実施形態に係る部品の製造方法は、部品作製工程の一態様として、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体(被研磨体)と他の被接続体とを接続(例えば電気的に接続)する接続工程を備えてよい。本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体に接続される被接続体は、特に限定されず、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体であってよく、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体とは異なる被接続体であってよい。接続工程では、基体と被接続体とを直接接続(基体と被接続体とが接触した状態で接続)してよく、他の部材(導電部材等)を介して基体と被接続体とを接続してよい。接続工程は、個片化工程の前、個片化工程の後、又は、個片化工程の前後に行うことができる。
【0086】
接続工程は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体の被研磨面と、被接続体と、を接続する工程であってよく、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体の接続面と、被接続体の接続面と、を接続する工程であってよい。基体の接続面は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨面であってよい。接続工程により、基体及び被接続体を備える接続体を得ることができる。接続工程では、基体の接続面が金属部を有する場合、金属部に被接続体を接触させてよい。接続工程では、基体の接続面が金属部を有すると共に被接続体の接続面が金属部を有する場合、金属部同士を接触させてよい。金属部は、タングステン材料を含んでよい。
【0087】
本実施形態に係るデバイス(例えば、半導体デバイス等の電子デバイス)は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された基体、及び、本実施形態に係る部品からなる群より選ばれる少なくとも一種を備える。
【実施例
【0088】
以下、実施例により本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0089】
<平均粒径及びシラノール基密度の測定>
シリカ粒子(砥粒)の平均粒径及びシラノール基密度を測定した。COULTER Electronics社製のCOULTER N4SDを用いて、測定温度:20℃、溶媒屈折率:1.333(水)、粒子屈折率:Unknown(設定)、溶媒粘度:1.005cp(水)、Run Time:200秒、レーザ入射角:90°、Intensity:5E+04~4E+05の範囲で平均粒径を測定した。シラノール基密度は、上述の[1]~[8]の手順で測定及び算出した。結果を表1及び表2に示す。
【0090】
<研磨液の調製>
脱イオン水、シリカ粒子(砥粒、コロイダルシリカ)、硝酸鉄九水和物(鉄含有化合物、鉄イオン供給剤)及びマロン酸(有機酸成分)を混合した後に過酸化水素(酸化剤)を混合することにより、シリカ粒子、硝酸鉄九水和物0.008質量%、マロン酸0.04質量%、及び、過酸化水素3質量%を含有する研磨液を調製した。シリカ粒子の含有量は、表1及び表2に示す含有量(単位:質量%)に調整した。
【0091】
<ゼータ電位の測定>
各実施例の研磨液中のシリカ粒子(砥粒)のゼータ電位(25℃)を測定した。日本ルフト株式会社製のDT1202(商品名)を用いて、研磨液中のシリカ粒子の25℃におけるゼータ電位を測定した。結果を表1に示す。
【0092】
<アルミニウム原子の含有量>
各実施例の研磨液におけるアルミニウム原子の含有量を測定した。全ての実施例においてアルミニウム原子の含有量は、研磨液の全質量を基準として0.0000005質量%(5ppb)以下であった。
【0093】
<pH測定>
各研磨液のpHを下記に従って測定したところ、全ての実施例及び比較例における研磨液のpHは2.7であった。
測定器:pHメータ(株式会社堀場製作所、商品名:Model(F-51))
校正液:フタル酸塩pH標準液(pH:4.01(25℃))、中性リン酸塩pH標準液(pH6.86(25℃))、及び、ホウ酸塩pH標準液(pH9.18(25℃))
測定温度:25℃
測定方法:校正液を用いて3点校正した後、電極を研磨液に入れ、25℃で2分以上放置し、安定した後のpHを測定した。
【0094】
<評価>
下記の研磨条件で下記の基体のタングステン膜及び酸化珪素膜を研磨することにより、タングステン及び酸化珪素の研磨速度を得た。タングステンの研磨速度は、抵抗測定器VR-120/08S(株式会社日立国際電気製)を用いてタングステン膜における研磨前後の電気抵抗値を測定した後、この電気抵抗値から算出される研磨前後の膜厚差を研磨時間で除算することにより得た。酸化珪素の研磨速度は、光学式膜厚計F50(フィルメトリクス社製)を用いて酸化珪素膜における研磨前後の膜厚差を測定した後、この膜厚差を研磨時間で除算することにより得た。結果を表1及び表2に示す。表1に示されるとおり、実施例1~6では、タングステン材料を優れた研磨速度で研磨することができることがわかる。
【0095】
[基体]
タングステン膜を有する基体:シリコン基板上に形成されたタングステン膜(厚さ:700nm)を有する基体(直径:12インチ)
酸化珪素膜を有する基体:シリコン基板上に形成されたTEOS(テトラエトキシシラン)膜(厚さ:1000nm)を有する基体(直径:12インチ)
【0096】
[研磨条件]
CMP用研磨機:アプライドマテリアルズ社製、商品名「ReflexionL」
研磨パッド:IC1010(ニッタ・ハース株式会社)
研磨圧力:20.7kPa
定盤回転数:90rpm
ヘッド回転数:87rpm
CMP用研磨液供給量:300mL/min
タングステン膜及び酸化珪素膜の研磨時間:0.5分
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【符号の説明】
【0099】
1…絶縁部材、2…バリア部材、3…タングステン部材、10…基体。

図1