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特許7491664形状測定装置、構造物製造システム、形状測定方法、及び構造物製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】形状測定装置、構造物製造システム、形状測定方法、及び構造物製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
G01B11/25
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018185909
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020056620
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 智明
(72)【発明者】
【氏名】城田 隆大
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】九鬼 一慶
【審判官】濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-66767(JP,A)
【文献】特開2012-225700(JP,A)
【文献】特開平7-270126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の表面の形状を測定するための形状測定装置であって、
前記被検物の表面に、第1測定光と第2測定光を投影方向に沿った異なる領域に、異なる時間に照射する、照射部と、
前記投影方向とは異なる方向から、前記被検物に投影される前記第1測定光と前記第2測定光の像を撮像し、画像データを出力する撮像部と、
前記画像データの前記第1測定光と前記第2測定光の像の位置に基づいて、前記被検物の表面の形状を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1測定光の像の位置を検出する前記撮像部上の第1領域の範囲と前記第2測定光の像の位置を検出する前記撮像部上の第2領域の範囲とを、前記被検物を測定する前記被検物上の測定位置に応じて変更する、形状測定装置。
【請求項2】
前記第1測定光を前記被検物に照射する第1光学系と、
前記第1光学系の少なくとも一部を有し、前記第2測定光を前記被検物に照射する第2光学系と、を備える、請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記第1光学系の焦点位置と前記第2光学系の焦点位置とは、前記投影方向に沿った異なる位置に配置される、請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被検物の形状情報を取得し、前記形状情報に基づいて前記第1測定光と前記第2測定光の両方を用いて測定するか否かを決定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記第1領域と前記第2領域とは、一部が重複している、請求項1から4のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記被検物の表面を測定している間に、前記第1領域と前記第2領域とで重複している領域を前記測定位置に応じて変更する、請求項5に記載の形状測定装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記被検物の表面を測定している間に、前記第1測定光の照射と前記第2測定光の照射とを切り替え可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項8】
前記第1測定光と第2測定光とは同じ波長の光である、請求項1から7のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項9】
前記被検物を載置するテーブルと、
前記テーブルに前記被検物を固定する固定部とを備え、
前記固定部の少なくとも一部の表面は、前記第1測定光及び前記第2測定光の一部を吸収する吸収材で被覆されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項10】
前記画像データに含まれる前記被検物の像と前記固定部の像とを区別する判別部を備え、
前記制御部は、前記固定部の像を含まない前記画像データから前記被検物の表面の形状を算出する、請求項9に記載の形状測定装置。
【請求項11】
構造物の形状に関する設計情報に基づいて前記構造物を成形する成形装置と、
前記成形装置によって成形された前記構造物の形状を測定する請求項1から10のいずれか一項に記載の形状測定装置と、
前記形状測定装置によって測定された前記構造物の形状を示す形状情報と前記設計情報とを比較する制御装置と、を備える構造物製造システム。
【請求項12】
被検物の表面の形状を測定する、形状測定方法であって、
前記被検物の表面に、第1測定光と第2測定光を投影方向に沿った異なる領域に、異なる時間に照射することと、
前記投影方向とは異なる方向から、前記被検物に投影される前記第1測定光と前記第2測定光の像を撮像部で撮像し、画像データを出力することと、
前記画像データの前記第1測定光と前記第2測定光の像の位置に基づいて、前記被検物の表面の形状を算出することとを含み、
前記撮像部での撮像は、前記第1測定光の像の位置を検出する前記撮像部上の第1領域と前記第2測定光の像の位置を検出する前記撮像部上の第2領域とを、前記被検物を測定する前記被検物上の測定位置に応じて変更することを含む、形状測定方法。
【請求項13】
構造物の形状に関する設計情報に基づいて前記構造物を成形することと、
前記成形された前記構造物の形状を請求項12に記載の形状測定方法によって測定することと、
前記測定された前記構造物の形状を示す形状情報と前記設計情報とを比較することと、を含む構造物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置、構造物製造システム、形状測定方法、及び構造物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検物に向けて測定光を投影し、測定光の投影方向とは異なる方向から、被検物に投影される測定光の像を撮像し、被検物の形状を測定する形状測定装置がある。(例えば、特許文献1)測定光を用いた形状測定において、例えば、精度不足による測定不良を抑制することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許8244023号
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、形状測定装置は、被検物の表面の形状を測定するための形状測定装置であって、被検物の表面に、第1測定光と第2測定光を投影方向に沿った異なる領域に、異なる時間に照射する、照射部と、投影方向とは異なる方向から、被検物に投影される第1測定光と第2測定光の像を撮像し、画像データを出力する撮像部と、画像データの第1測定光と第2測定光の像の位置に基づいて、被検物の表面の形状を算出する制御部と、を備える。
【0005】
本発明の第2の態様によれば、構造物製造システムは、構造物の形状に関する設計情報に基づいて前記構造物を成形する成形装置と、成形装置によって成形された構造物の形状を測定する第1の態様の形状測定装置と、形状測定装置によって測定された構造物の形状を示す形状情報と設計情報とを比較する制御装置と、を備える。
【0006】
本発明の第3の態様によれば、形状測定方法は、被検物の表面の形状を測定する、形状測定方法であって、被検物の表面に、第1測定光と第2測定光を投影方向に沿った異なる領域に、異なる時間に照射することと、投影方向とは異なる方向から、被検物に投影される第1測定光と第2測定光の像を撮像し、画像データを出力することと、画像データの第1測定光と第2測定光の像の位置に基づいて、被検物の表面の形状を算出することとを含む。
【0007】
本発明の第4の態様によれば、固定部は、被検物に投影される測定光の像を撮像し、被検物の形状を測定している間、被検物を固定する固定部であって、固定部の少なくとも一部の表面は、測定光の一部を吸収する吸収材で被覆されている。
【0008】
本発明の第5の態様によれば、形状測定装置は、被検物と、被検物を固定する固定部に向けて測定光を投影する照射部と、被検物および固定部に投影される測定光の像を撮像し、画像データを出力する撮像部と、画像データの情報を用い、被検物と固定部を区別する判別部とを備える。
【0009】
本発明の第6の態様によれば、構造物製造方法は、構造物の形状に関する設計情報に基づいて構造物を成形することと、成形された構造物の形状を第3の態様の形状測定方法によって測定することと、測定された構造物の形状を示す形状情報と設計情報とを比較することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態による形状測定装置を示す斜視図である。
図2】形状測定装置の構成を示す模式図である。
図3】形状測定装置の照射部及び撮像部の構成を示す模式図である。
図4】被検物に照射する測定光を説明するための説明図である。
図5】撮像部と撮像部に到達する測定光との関係を説明するための説明図である。
図6A】形状測定装置の測定動作を説明するための説明図である。
図6B】被検物の部分拡大図である。
図7】形状測定装置の測定動作の一例を示すフローチャートである。
図8】形状測定装置の形状測定プログラムの作成処理の一例を示すフローチャートである。
図9】形状測定装置の測定動作の一例を示すフローチャートである。
図10】形状測定装置の測定動作の一例を示すフローチャートである。
図11】形状測定装置の測定動作を説明するための説明図である。
図12】形状測定装置の測定動作を説明するための説明図である。
図13】形状測定装置を有するシステムの構成を示す模式図である。
図14】形状測定装置の他の例を示す斜視図である。
図15】構造物製造システムの構成を示す図である。
図16】構造物製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0012】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。Z軸方向は、例えば鉛直方向に設定され、X軸方向及びY軸方向は、例えば、水平方向に平行で互いに直交する方向に設定される。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ軸方向とする。
【0013】
図1は、本実施形態に係る形状測定装置1の外観を示す図である。図2は、本実施形態の形状測定装置の概略構成を示す模式図である。図3は、本実施形態の形状測定装置の照射部及び撮像部の構成を示す模式図である。図4は、被検物に照射する測定光を説明するための説明図である。図5は、撮像部と撮像部に到達する測定光との関係を説明するための説明図である。
【0014】
形状測定装置1は、例えば光切断法を利用して、測定対象の物体Mの形状を測定する。物体Mは測定対象に被検物である。光切断法とは、被検物に特定のパターンの光を投影して、被検物表面に投影されたパターンを投影方向とは別方向から撮影する撮像装置により撮像し、撮像された像からパターンの位置を求め、求められたパターンの位置に基づき、パターンの投影方向と撮像方向から被検物のパターンが照射された位置を測定する方法である。被検物に照射する光のパターンはライン状か、スリット状か、スポット状であるのが一般的である。形状測定装置1は、被検物の表面の形状を測定することができる。形状測定装置1は、被検物の立体形状を測定することができる。また、被検物の表面に凹凸がある場合には、被検物の表面の凹凸を測定することができる。形状測定装置1は、プローブ移動装置2と、光学プローブ3と、制御装置4と、表示装置5と、入力装置6と、保持回転装置7と、を備える。形状測定装置1は、ベースBに設けられた保持回転装置7に保持されている被検物Mを光学プローブ3が撮像するものである。また、本実施形態では、プローブ移動装置2と保持回転装置7とが、プローブと被検物Mとを相対的に移動させる移動機構となる。
【0015】
プローブ移動装置2は、光学プローブ3による撮像範囲(視野)が被検物Mの測定対象領域に来るように、光学プローブ3の三次元空間上での位置と後述する光学プローブ3から投影される測定光の投影方向及び被検物Mの測定対象領域に投影された測定光の向きとを位置決めし、かつ光学プローブ3の撮像範囲を被検物M上で走査するように、被検物Mに対して光学プローブ3を移動させるためのものである。プローブ移動装置2は、光学プローブを相対的に移動させることが可能である。プローブ移動装置2により光学プローブが移動することで、被検物Mに対する光学プローブから照射される測定光の照射方向を相対的に変更することが可能である。プローブ移動装置2により光学プローブが移動することで、被検物Mの光学プローブから測定光の照射位置を変更することが可能である。このプローブ移動装置2は、図2に示すように、駆動部10、位置検出部11を備えている。駆動部10は、X移動部50X、Y移動部50Y、Z移動部50Z、第1回転部53、及び第2回転部54を備えている。
【0016】
X移動部50Xは、ベースBに対して矢印62の方向、つまりX軸方向に移動自在に設けられている。Y移動部50Yは、X移動部50Xに対して矢印63の方向、つまりY軸方向に移動自在に設けられている。Y移動部50Yには、Z軸方向に延在する保持体52が設けられている。Z移動部50Zは、保持体52に対して、矢印64の方向、つまりZ軸方向に移動自在に設けられている。これらX移動部50X、Y移動部50Y、Z移動部50Zは、第1回転部53、第2回転部54とともに光学プローブ3をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能にする移動機構を構成している。
【0017】
第1回転部53は、後述する保持部材(保持部)55に支持される光学プローブ3をX軸と平行な回転軸線(回転軸)53a回り、つまり矢印65の方向に回転して光学プローブ3の姿勢を変えるものであり、特に光学プローブ3から投影される測定光の被検物Mへの投影方向が変えられる。第2回転部54は、保持部材55に支持される光学プローブ3を後述する第1保持部55Aが延在する方向と平行な軸線回り、つまり矢印66の方向に回転して光学プローブ3の姿勢を変えるものであり、特に光学プローブ3から投影される測定光の向きを変えることができる。形状測定装置1は、光学プローブ3と光学プローブ3を保持している保持部材55との相対位置の補正に用いる基準球73aまたは基準球73bを有する。
【0018】
これら、X移動部50X、Y移動部50Y、Z移動部50Z、第1回転部53、第2回転部54の駆動は、エンコーダ装置等によって構成される位置検出部11の検出結果に基づいて、制御装置4により制御される。
【0019】
光学プローブ3は、光源装置8及び撮像装置9を備えており、保持部材55に支持されている。保持部材55は、回転軸線53aと直交する方向に延び、第1回転部53に支持される第1保持部55Aと、第1保持部55Aの被検物Mに対して遠い側の端部に設けられ回転軸線53aと平行に延びる第2保持部55Bとが直交する略L字状に形成されており、第2保持部55Bの+X側の端部に光学プローブ3が支持されている。第1回転部53の回転軸線53aの位置は、光学プローブ3よりも、被検物Mに近い側に配置されている。また、第1保持部55Aの被検物Mに対して近い側の端部には、カウンターバランス55cが設けられている。したがって、第1回転部53に駆動力が発生しないときには、図1で図示されているように第1保持部55Aの延出方向がZ軸方向に沿うような姿勢となる。
【0020】
保持回転装置7は、図1および図2に示すように、被検物Mを保持するテーブル71と、テーブル71をθZ軸方向、つまり矢印68の方向に回転させる回転駆動部72と、テーブル71の回転方向の位置を検出する位置検出部73と、を有する。位置検出部73は、テーブル71または回転駆動部72の回転軸の回転を検出するエンコーダ装置である。保持回転装置7は、位置検出部73で検出した結果に基づいて、回転駆動部72によってテーブル71を回転させる。保持回転装置7は、テーブル71を回転させることで、回転軸中心AXを中心として被検物Mを矢印68の方向に回転させる。
【0021】
光学プローブ3の光源装置(照射部)8は、被検物Mに向けて測定光を投影する。光学プローブ3の光源装置は、被検物Mに向けて測定光を照射する。光学装置8は、光源から発した光束が平面に向けて投影された時にライン状の照野が形成されるような光束を形成するようにしている。それにより、保持回転装置7の上に載置された被検物M向けて、ライン状の光を照射する。被検物Mの表面において、ライン状の光が照射された部分では散乱光が発生する。光源装置8は、保持回転装置7に保持された被検物Mの測定領域にライン状の測定光を照射する光源12、及び照明光学系13を備える。光源装置8は、制御装置4によって制御される。光源12は、図3に示すように、第1光源(LD1)12aと、第2光源(LD2)12bと、を有する。第1光源12aと第2光源12bとは、照射した光を照明光学系13に入射させ、被検物Mの測定領域にライン状の測定光を照射する。本実施形態の第1光源12a、第2光源12bは、例えば、レーザーダイオードを含む。なお、第1光源12a、第2光源12bは、レーザーダイオード以外の発光ダイオード(LED)等の固体光源を含んでいてもよい。
【0022】
照明光学系13は、光源12から発せられた光の空間的な光強度分布を調整する。照明光学系13は、例えば、シリンドリカルレンズを含む、複数の光学素子を含んでいる。本実施形態の照明光学系13は、レンズ13aと、レンズ13bと、ハーフミラー13cと、レンズ13dと、を有する。レンズ13aは、ハーフミラー13cと第1光源12aとの間に配置されている。レンズ13bは、ハーフミラー13cと第2光源12bとの間に配置されている。ハーフミラー13cは、第1光源12aの光と、第2光源12bの光とを透過させる。第1光源12aから射出されハーフミラー13cを通過した光と、第2光源12bから射出されハーフミラー13cを通過した光は、レンズ13dに向けて進む。レンズ13dは、ハーフミラー13cと被検物Mとの間に配置されている。照明光学系13は、第1光源12aから発せられた光を、レンズ13aとレンズ13dを通過させることで、第1光源12aから所定距離離れた位置で集光させる。照明光学系13は、第2光源12bから発せられた光を、レンズ13bとレンズ13dを通過させることで、第2光源12bから所定距離離れた位置で集光させる。本実施形態においては、照明光学系13は、第1光源12aから集光する位置までの距離と、第2光源12bから集光する位置までの距離とが異なっている。上記のレンズ13a、ハーフミラー13c、及びレンズ13dは、第1光源12aからの光L1を被検物Mに照射する第1光学系14を構成する。第1光学系14は、第1光源12aからの光L1を第1測定光として被検物Mに照射する。また、上記のレンズ13b、ハーフミラー13c、及びレンズ13dは、第2光源12bからの光L2を被検物Mに照射する第2光学系15を構成する。第2光学系15は、第2光源12aからの光L2を第2測定光として被検物Mに照射する。本実施形態では、第1光学系14と第2光学系15とは一部が共通の部材を用いている。第1光学系14と第2光学系15とで、ハーフミラー13cとレンズ13dとが共通している。なお、第1光学系14と第2光学系15とで共通する部材は、これに限られない。また、第1光学系14と第2光学系15とで共通する部材がなくても構わない。
【0023】
本実施形態においては、光学装置8からライン状の測定光を被検物Mに照射する。平面に照射されるライン状の測定光の照射領域は、一方が長く、他方が短くなっている。本実施形態においては、図2において、ライン状の測定光の照射領域は、XY平面においては短く、Z軸方向に長くなっている。ライン状の測定光の長い照射領域を撮像するように撮像装置の撮像領域が設定されている。
【0024】
図4に示すように、第1光源12aから照射され被検物Mの測定領域に照射されるライン状の光L1と、第2光源12bから照射され被検物Mの測定領域に照射されるライン状の光L2とは、略コリメート光であるが、それぞれレンズ13a、レンズ13bを通過して集光される。本実施形態においては、第1光学系14と第2光学系15の集光位置が測定光の投影方向において、異なる。このため、光L1と光L2は、進行方向において、光の幅が変化する。本実施形態においては、図2のXY平面において光の幅が変化する。ライン状の測定光が投影する投影方向におけるライン状の短手方向において、測定光の照射領域が異なる。図4においては、ライン状の光L1の短手方向における幅はd1が最も狭い。また、ライン状の光L2の短手方向における幅はd2が最も狭い。ライン状の光L1の投影方向に沿って、短手方向における幅は異なる。ライン状の光L1においては、幅がd1となる位置を中心に、投影方向に沿って幅が異なる。投影方向に沿って、幅がd1となる位置よりも光学装置8に近い側の幅は広くなる。また、投影方向に沿って、幅がd1となる位置よりも光学装置8よりも遠い側の幅は広くなる。ライン状の光L2においても同様である。また、測定光を被検物Mに投影する場合に、被検物の高さ方向に沿って、測定光の幅が異なる。なお、図4は、幅の変化を強調して示している。光切断方法においては、被検物Mに投影されたライン状の測定光の像を撮像し、撮像された像の位置から被検物Mの形状を算出する。したがって、ライン状の光の短手方向において、照射領域の幅が短くなることで、撮像される像の幅も短くなる。そのため、撮像される像から算出される被検物Mに照射されるライン状の光の照射位置の算出精度を高くすることができる。そこで、本実施形態では、第1光源12aから被検物Mに照射されるライン状の幅が短いd1を中心として、光の幅が所定の幅よりも短くなる領域をAとして設定される。また、第2光源12bから被検物Mに照射されるライン状の幅が短いd2を中心として、光の幅が所定の幅よりも短くなる領域を領域Aとして設定される。領域Aと領域Aは、測定光のL1およびL2の投影方法において一部が重なる。なお、所定の幅は、例えば、10μmである。また、被検物Mの高さ方向は、図1の例ではZ軸方向であり、光源装置8から出射される光の進行方向である第1方向に直交な方向に対して、交差する方向となっている。また、光の幅は、光L1、光L2の進行方向に直交する面において、短辺となる方向の幅であり、ラインと直交する方向の幅である。このように、光源装置8は、投影方向に沿った異なる領域に光L1と光L2とを照射する。
【0025】
また、光源装置8が、照射するライン状の光は、NA(Numerical Aperature;開口数)を0.05以下とすることが好ましい。また、光源12は、第1光源12aと第2光源12bとが照射する光の波長の差を10nm以下とすることが好ましく、実質的に同じ波長の光とすることがより好ましい。
【0026】
なお、このライン状の測定光の長手方向は、先に説明した第2回転部54により方向を変えられる。被検物Mの面の広がり方向に応じて、ライン状の測定光の長手方向を変えることで、効率的に測定することができる。
【0027】
なお、照明光学系13は、CGH(Computer Generated Hologram)等の回折光学素子を含み、光源12から発せられた照明光束Lの空間的な光強度分布を回折光学素子によって調整してもよい。また、本実施形態において、空間的な光強度分布が調整された投影光をパターン光ということがある。照明光束Lは、パターン光の一例である。ところで、本明細書ではパターンの向きと称しているときは、このライン状の測定光の長手方向の方向を示している。
【0028】
撮像装置(撮像部)9は、測定光の投影方向とは異なる方向から、被検物Mに投影される測定光の像を撮像し、画像データを出力する撮像装置9は、撮像素子20、結像光学系21、ダイヤフラム23、及びダイヤフラム駆動部24を備える。光源装置8から被検物Mに照射された照明光束Lは、被検物Mの表面で反射散乱して、その少なくとも一部が結像光学系21へ入射する。結像光学系21は、光源装置8によって被検物Mの表面に投影されたライン状の測定光の像を被検物Mの像と一緒に結像光学系21により撮像素子20に結ぶ。撮像素子20は、この結像光学系21が形成する像を撮像する。画像処理部は、撮像素子20で受光した受光信号から画像データを生成する。撮像装置9は、画像処理部で画像データを生成する際に、撮像素子20で画像データを生成する領域を切り換えることができる。図3に示すように、撮像素子20には領域ROI1と領域ROI2が設定されている。撮像装置9は、図2及び図4に示すように撮像素子20のうち、領域ROI1のみの画像データを生成するモードと、領域ROI2のみの画像データを生成するモードと、を選択することが可能である。領域ROI1は、領域Aに被検物Mが配置された場合に反射した光が入射する領域(第1領域)である。領域ROI2は、領域Aに被検物Mが配置された場合に反射した光が入射する領域(第2領域)である。したがって、撮像素子20の撮像面において、測定光の投影方向において、測定光が反射される位置に応じて、撮像面に入射する位置が異なる。なお、後述するように、領域ROI1と領域ROI2は適宜変更することが可能である。図5の上下方向は、測定光の投影方向における測定光の反射位置に対応する。すなわち、図5の上下方向が、被検物Mの高さ方向に相当する。撮像素子20は、高さ方向の画素数がαとした場合、0行目から(α/2)+γ行目までが領域ROI1となり、(α/2)―β行目からα行目までが領域ROI2となる。撮像装置9は、γとβの値を調整し、領域ROI1の範囲と、領域ROI2の範囲を変更することができる。また、図5に示すように、被検物Mで反射した光が入射する領域は、0行目の幅が短く、γ行目に向かって幅は広くなる。なお、この点は、光源装置8と撮像装置9と、被検物Mの配置によって異なる関係とすることもできる。ダイヤフラム23は大きさを可変可能にする開口を有し、開口の大きさを変えることで結像光学系21を通過する光量を制御することができる。ダイヤフラム23の開口の大きさは、ダイヤフラム駆動部により調整可能である。このダイヤフラム駆動部24は制御装置4に制御されている。
【0029】
結像光学系21は、光源装置8からのライン光としての照明光束Lの射出方向と照明光束Lのスポットの形状の長手方向とを含む面上の物体面21aと撮像素子20の受光面20a(像面)とが共役な関係になっている。なお、光源装置8からの照明光束Lの射出方向と照明光束Lのスポットの形状の長手方向とを含む面は、照明光束Lの伝播方向にほぼ平行である。照明光束Lの伝播方向に沿って、撮像素子20の受光面20aと共役な面を形成するようにすることで、被検物Mの表面がどの位置にあっても、合焦した像が得られる。
【0030】
なお、図2及び図3に示すように、照明光学系13と結像光学系21とは、シャインプルーフ条件を満たすように配置されている。つまり、被検物M上の物体面21aと、結像光学系21のレンズ主面21bと、撮像素子20の検出面20aとが、1つの直線Pで交差するように配置されている。
【0031】
制御装置4は、形状測定装置1の各部を制御するとともに、光学プローブ3による撮像結果とプローブ移動装置2及び保持回転装置7の位置情報に基づく演算処理を行って被検物Mの形状情報を取得する。本実施形態における形状情報は、測定対象の被検物Mの少なくとも一部に関する形状、寸法、凹凸分布、表面粗さ、及び測定対象面上の点の位置(座標)、の少なくとも1つを示す情報を含む。制御装置4には、表示装置5、及び入力装置6が接続される。
【0032】
制御装置4は、被検物Mを測定するためのプログラムを生成し、生成したプログラムに基づいて、各部による被検物Mの形状測定動作を制御する。制御装置4は、記憶されているデータや、入力装置6で受け付けた入力に基づいて、測定範囲、調光領域等を決定する。測定範囲とは、撮像された被検物Mの像の中から測定光の像の位置を検出する範囲である。調光領域は、撮像素子20による撮像範囲内で、撮影された像の明るさを検出する領域である。画像データから測定光の位置を検出する場合、撮像素子20により撮像された画像データのうち、ライン状の測定光の像の幅方向(スポット光の走査であれば、走査方向とは直交方向)に配列する画素列の中から、最も明るい画素値を画素列毎に検出する。その際、画像データの画素列の一端から他端までをくまなく探索するのではなく、調光領域として設定された範囲内だけで、画素列毎に最も明るい画素値を探索する。
【0033】
制御装置4は、調光領域内で検出された画素列毎に最も明るい画素の画素値を取得し、取得された画素値の大きさに応じて、光源12に対して投光量を制御するための信号、ダイヤフラム駆動部24を制御するための信号、または撮像素子20による撮像時の露出時間を制御するための信号等を出力する。露出時間の制御については、1枚の画像データを取得するときの露出時間で制御したり、撮像素子20に組み込まれている不図示のメカニカルシャッターにより撮像面が露出する時間を制御するようにしても良い。したがって、調光制御部36は取得された画素値の大きさに応じて、照射部の投光量、撮像部で受光する受光量、撮像部で画像データを取得するときの露光量または撮像部の入出力特性(感度又は撮像素子の各ピクセルで検出した信号に対する増幅率など)、つまり光学プローブ3によって画像データを取得する際の各種条件(調光条件)を制御する。
【0034】
制御装置4は、画像データの測定範囲内に位置する光源装置8により投影された測定光の像の位置に基づいて、被検物の形状を測定する。測定部37は、調光制御部36で制御された条件に基づいて、プローブ移動装置2及び保持回転装置7によって、光学プローブ3と被検物を相対的に移動させ、測定光の像が投影される位置を移動させつつ、パターン像が投影された撮影領域の画像を撮像装置9で撮像する。また、撮像装置9で撮像したタイミングで位置検出部11からのプローブ移動装置2及び保持回転装置7の位置情報を取得する。制御装置4は、撮像装置9で撮像したタイミングで取得した位置検出部11からのプローブ移動装置2及び保持回転装置7の位置情報と、撮像装置9で取得した測定範囲のパターンの像の画像に関連した撮影信号とに基づいて、被検物Mのパターンが投影された位置を算出し、被検物Mの形状データを出力する。本形状測定装置1は、例えば、撮像装置9の撮影タイミングを一定間隔にし、入力装置6から入力する測定点間隔情報を基に、プローブ移動装置2及び保持回転装置7の移動速度を制御している。
【0035】
また、制御装置4は、プローブ移動装置2、光学プローブ3及び保持回転装置7を含む、形状測定装置1の各部の動作を制御する。制御装置4は、作成された動作制御情報を基に、プローブ移動装置2、光学プローブ3及び保持回転装置7の動作制御を実施する。また、制御装置4は、光学プローブ3による画像取得動作制御する。
【0036】
制御装置4は、ハードディスク、メモリ等、各種プログラム、データを記憶する記憶装置を有する。記憶装置は、条件テーブルと、形状測定プログラムと、を有する。なお、記憶装置は、これらのプログラム、データ以外にも形状測定装置1の動作の制御に用いる各種プログラム、データを記憶している。条件テーブルは、制御装置4で設定された条件や、予め入力された各種条件を記憶する。形状測定プログラムは、制御装置4の各部の処理を実行させるプログラムを記憶している。つまり、制御装置4は、形状測定プログラムに記憶されているプログラムを実行することで、上述した各部の動作を実現する。形状測定プログラムは、上述した制御装置4で生成する被検物Mを測定するためのプログラムと、制御装置4が当該プログラムを生成するためのプログラムの両方を含む。なお、形状測定プログラム、予め記憶装置に記憶させてもよいがこれに限定されない。形状測定プログラムが記憶された記憶媒体から読み取って記憶装置に記憶してもよいし、通信により外部から取得してもよい。
【0037】
制御装置4は、プローブ移動装置2の駆動部10及び保持回転装置7の回転駆動部72を制御して、光学プローブ3と被検物Mの相対位置が所定の位置関係となるようにしている。また、制御装置4は、光学プローブ3の調光等を制御して、被検物M上の投影されたライン状のパターンを最適な光量で撮像させる。制御装置4は、光学プローブ3の位置情報をプローブ移動装置2の位置検出部11から取得し、測定領域を撮像した画像を示すデータ(撮像画像データ)を光学プローブ3から取得する。そして、制御装置4は、光学プローブ3の位置に応じた撮像画像データから得られる被検物Mの表面の位置と光学プローブ3の位置及びライン光の投影方向と撮像装置の撮影方向とを対応付けることによって、測定対象の三次元的な形状に関する形状情報を演算して取得する。
【0038】
表示装置5は、例えば液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等によって構成される。表示装置5は、形状測定装置1の測定に関する測定情報を表示する。測定情報は、例えば、撮像素子20で撮影された画像データや、撮像素子20の撮影領域内に設定された測定領域の位置を示す情報、調光領域の位置を示す情報、調光領域設定可能範囲の位置を示す情報を表示することができる。これら測定領域、調光領域及び調光領域設定可能範囲の位置情報は撮像素子20で撮影された画像データ上に重畳して表示する。また、他にも測定に関する設定を示す設定情報、測定の経過を示す経過情報、測定の結果を示す形状情報等を含む。本実施形態の表示装置5は、測定情報を示す画像データを制御装置4から供給され、この画像データに従って測定情報を示す画像を表示する。
【0039】
入力装置6は、例えばキーボード、マウス、ジョイスティック、トラックボール、タッチバッド等の各種入力デバイスによって構成される。入力装置6は、制御装置4への各種情報の入力を受けつける。各種情報は、例えば、形状測定装置1に測定を開始させる指令(コマンド)を示す指令情報、形状測定装置1による測定に関する設定情報、形状測定装置1の少なくとも一部をマニュアルで操作するための操作情報等を含む。
【0040】
本実施形態の形状測定装置1は、制御装置4に表示装置5、及び入力装置6が接続されている。形状測定装置1は、制御装置4、表示装置5、及び入力装置6が、例えば、形状測定装置1に接続されるコンピュータでも構わないし、形状測定装置1が設置される建物が備えるホストコンピュータなどでも構わないし、形状測定装置1が設置される建物に限られず、形状測定装置1とは離れた位置にあり、コンピュータでインターネットなどの通信手段を用いて、形状測定装置1と接続されても構わない。また、形状測定装置1は、制御装置4と、表示装置5及び入力装置6とが、別々の場所に保持されても構わない。例えば、入力装置6と表示装置5とを備えるコンピュータとは別に、例えば光学プローブ3の内部に形状測定装置1が支持されていても構わない。この場合には、形状測定装置1で取得した情報を、通信手段を用いて、コンピュータに接続される。
【0041】
次に、図6Aから図12を用いて、上記構成の形状測定装置1により、被検物の形状を測定する動作の例について説明する。図6Aは、本実施形態の形状測定装置の測定動作を説明するための説明図である。図6Bは、被検物の部分拡大図である。図7は、本実施形態の形状測定装置の測定動作の一例を示すフローチャートである。図8は、本実施形態の形状測定装置の形状測定プログラムの作成処理の一例を示すフローチャートである。図9は、本実施形態の形状測定装置の測定動作の一例を示すフローチャートである。図10は、本実施形態の形状測定装置の測定動作の一例を示すフローチャートである。図11は、本実施形態の形状測定装置の測定動作を説明するための説明図である。図12は、本実施形態の形状測定装置の測定動作を説明するための説明図である。
【0042】
以下では、図6A及び図6Bに示すように、形状測定装置1が円周方向に繰り返し形状が形成された被検物Maの形状を測定する場合として説明する。なお、図6Bは、説明のために、ライン状の光が照射される位置とは異なる位置を拡大している。形状測定装置1は、照明光束Lを被検物Maの繰り返し形状の1つの単位である歯に照射し、被検物Ma上に投影されたパターンの画像を取得することで、被検物Maの形状を測定する。本実施形態の形状測定装置1は、歯筋の方向に沿って、照明光束Lを移動させつつ、被検物Ma上に投影されたパターンの画像を取得することで、1つの歯の形状を測定することができる。形状測定装置1は、被検物Maの歯の形状を順番に測定することで、被検物Maの形状を測定することができる。被検物Maは、設計上は略同一形状となる歯が円周方向に所定の間隔で形成された、かさ歯車である。本実施形態の形状測定装置1は、被検物Maをかさ歯車としたが、種々の形状の物体を被検物として形状を測定することができる。もちろん、被検物Maを歯車とした場合、歯車の種類は特に限定されない。形状測定装置1は、かさ歯車以外に、平歯車、はすば歯車、やまば歯車、ウォームギア、ピニオン、ハイポイドギアなども測定対象となり、被検物Maとなる。なお、形状測定装置1は、1つの歯の形状の測定や、被検物Maの全体の形状を測定することに限定されず、被検物Maの任意の1点の形状を測定することもできる。図6Aに示すように、本実施形態の形状測定装置1は、光源12が第1光源12aと第2光源12bを備えており、2つの光源からの光がそれぞれ照射される。図6Aは、第1光源12aからの光L1で生成されるライン状の光と、第2光源12bからの光L2で生成されるライン状の光とが、光の進行方向に直交する面において、重なる状態を示しているが、ずれていてもよい。また、2つのライン状の光は、上述したように、被検物Maの高さ方向において、焦点の位置がずれていればよく、被検物Maの平面方向(高さ方向に直交する面)におけるラインの角度が異なっていてもよい。
【0043】
形状測定装置1は、図6Bに示すように、第1光源12aからの光L1で生成されるライン状の光で、被検物140の所定高さよりの上の領域150を計測し、第2光源12bからの光L2で生成されるライン状の光で、被検物140の所定高さよりの下の領域152を計測する。光学装置8を所定位置に配置した場合に、第1光源12aを用いて計測する範囲と、第2光源12bを用いて計測する範囲とは異なる。第1光源12aを用いて計測する範囲は領域A1であり、第2光源12bを用いて計測する範囲はA2である。測定光の投影方向において、領域A1と領域A2とが異なる位置に設定されているために、被検物140を計測する場合においては、領域A1と領域A2とが被検物140の高さの異なる位置を計測する。
【0044】
形状測定装置1は、稼動時に被検物Maの形状を測定するための条件を設定するモード、例えばティーチングモードで測定に関する条件を設定し、測定用のプログラムを作成する。
【0045】
以下、図7を用いて、形状測定装置1の処理動作の一例を説明する。形状測定装置1の制御装置4は、例えば、ティーチングモードが選択された場合に、図5に示す画面100を表示し図7に示す処理を実行する。また、後述する他の処理も記憶部に記憶されているプログラムに基づいて制御装置4の各部で処理を実行することで、実現される。
【0046】
制御装置4は、ティーチングモードが選択されると、測定範囲、調光領域、調光領域設定可能範囲を撮像装置8により撮影できる全範囲に予め設定する。次に、撮像装置8から画像データが制御装置4に転送され、その画像データがウインドウ102に表示する。このような状態になった時点で、測定範囲の設定がなされたかを判定する(ステップS12)。ここで、制御装置4は、撮像装置9で撮影可能な範囲の全範囲よりも小さい範囲、つまり取得した画像データの全範囲よりも小さい範囲が測定範囲として設定されている場合、測定範囲が設定されていると判定する。測定範囲の設定方法は、表示装置のウインドウ上に円形や矩形、楕円形などの任意の形状で画像データの一部を囲むようにして指定することができる。なお、制御装置4は、例えば、測定範囲選択点が選択されボタンが操作された後、ユーザによって指定された範囲を測定範囲に設定する。また、制御装置4は、条件テーブルに設定されている情報に基づいて測定範囲を設定してもよい。また、制御装置4は、撮像装置9が取得した画像から照明光束が投影されたパターンの像を抽出し、当該パターンの像が抽出された範囲を測定範囲としてもよい。
【0047】
制御装置4は、測定範囲の設定がある(ステップS12でYes)と判定した場合、画像データの位置座標を基に測定範囲の設定処理を行い、条件テーブルに書き込む(ステップS14)。制御装置4は、撮像装置9で撮影可能な範囲よりも小さい範囲を測定範囲に設定する。制御装置4は、測定範囲の設定がない(ステップS12でNo)と判定した場合、または測定範囲の設定処理を行った場合、入力装置6による調光領域の設定があるかを判定する(ステップS16)。制御装置4は、調光領域の設定がある(ステップS16でYes)と判定した場合、調光領域の設定処理を行う(ステップS18)。
【0048】
制御装置4は、調光領域の設定がない(ステップS16でNo)と判定した場合、または調光領域の設定処理を行った場合、プレスキャンを実行するかを判定する(ステップS20)。ここで、プレスキャンとは、設定された条件に基づいて、光学プローブ3と被検物を相対的に移動させ、パターン像が投影される位置を移動させ、ライン光が照射される位置を表示装置5に表示させる処理である。被検物を相対的に移動させながら、所定のフレームレートで撮像装置9により取得されたライン状のパターンの像を含む画像データを次々と表示させる。それと同時に、測定範囲、調光領域を画像データに重畳させながら表示し続けるようにすると良い。制御装置4は、プレスキャンを実行する(ステップS20でYes)と判定した場合、プレスキャン処理を実行する(ステップS22)。
【0049】
制御装置4は、プレスキャンを実行しない(ステップS20でNo)と判定した場合、またはプレスキャン処理を行った場合、設定が終了したかを判定する(ステップS24)。制御装置4は、設定が終了していない(ステップS24でNo)と判定した場合、ステップS12に戻り、上述した処理を再び実行する。
【0050】
制御装置4は、プレスキャン等の結果によりライン状の光の照射条件、記憶された測定範囲の位置情報及び調光範囲の位置情報と、光学プローブ3の走査パスなどの測定条件が設定されたら、形状測定プログラムを生成する(ステップS28)。制御装置4は、ライン状の光の照射条件、測定範囲、調光領域、調光方式や測定座標算出領域も含めた被検物Maを測定するための形状測定プログラムを生成し、記憶部46に記憶する。具体的には、制御装置4は、各種条件に基づいてライン状の光の照射条件、測定パス、測定速度を決定し、プローブ移動装置2によるXYZ軸方向の移動経路、保持回転装置7によるZθ方向の回転速度、光学プローブ3による画像の取得タイミング等を決定し、決定した動作の情報と、設定した調光条件の情報と、取得した画像からパターンの像の位置を抽出する測定範囲の情報と、を含む形状測定プログラムを生成する。
【0051】
制御装置4は、形状測定プログラムを生成したら、測定を実行するかを判定する(ステップS30)。ここで、測定とは、設定された条件に基づいて、光学プローブ3と被検物Maを相対的に移動させ、パターン像が投影される位置を移動させ、測定領域内でパターン像が投影される位置を検出し、被検物の各部位の座標値(点群データ)を取得することで、形状を測定する処理である。制御装置4は、測定を実行する(ステップS30でYes)と判定した場合、撮像装置8を所定のフレームレートで撮影を繰り返される。制御装置4は、撮影された画像データから調光範囲に含まれる各画素列の最大画素値を取得し、光源装置8や撮像装置9に調光制御の情報を出力する(ステップS31)。次に、その調光条件に基づき、撮像装置9は被検物Maに投影されたパターンの像を撮像し、そのときの画像データを制御装置4に送出する(ステップS32)。次に、制御装置4では、測定範囲情報に基づき、画像データの中からパターンの像の位置を求め、かつプローブ移動装置2の位置情報とパターンの像の位置情報から被検物Maのパターンが投影された部分の三次元座標値を算出する(ステップS33)。
【0052】
制御装置4は、図7のステップS12からステップS28までの処理、つまり形状測定プログラムを作成するまでの測定処理以外の処理をティーチング処理とし、測定処理とは別のモードでの処理として実行してもよい。また、制御装置4は、ステップS20とステップS22を行わなくてもよい。つまり、測定範囲、調光領域は、表示装置5に表示させなくてもよい。
【0053】
次に、図8から図10を用いて、形状測定プログラムを生成する処理、具体的には、ライン状の光の照射条件の決定方法について説明する。制御装置4は、図8に示すように、被検物(被検物)の測定領域の内、2つの光源を用い測定する領域を検出する(ステップS30)。
【0054】
この場合、図9に示すように、制御装置4は、測定対象、つまり被検物のプレスキャンデータを読み込む(ステップS40)。形状測定装置1は、プレスキャンで取得したデータから被検物の外形形状を検出する。なお形状測定装置1は、設計データ、例えばCADデータのように、測定対象の形状の情報を予め備えている場合、形状の情報に基づいて、2つの光源を用いて計測を行う領域を設定することもできる。
【0055】
次に、制御装置4は、被検物の高さが閾値以上であるかを判定する(ステップS42)。制御装置4は、被検物の高さが閾値以上である(ステップS42でYes)と判定した場合、2つの光源を用いた測定で測定条件を設定する(ステップS44)。制御装置4は、被検物の高さが閾値未満である(ステップS42でNo)と判定した場合、1つの光源を用いた測定で測定条件を設定する(ステップS46)。
【0056】
制御装置4は、被検物の形状に基づいて、2つの光源を用いて計測を行うか、1つの光源を用いて計測を行うかを決定する。制御装置4は、被検物の計測する位置、被検物を回転させる場合は、回転方向の位置に応じて、2つの光源を用いて計測を行うか、1つの光源を用いて計測を行うか切り換えてもよい。上記実施形態では、2つの光源を用いて、計測する領域を設定したが、全ての領域を2つの光源を用いて計測してもよい。
【0057】
図8に戻る。次に、制御装置4は、制御装置4は、2つの光源を用い測定する場合の撮像装置9の撮像素子(検出器)上のROIの領域を設定する(ステップS32)。制御装置4は、設定した条件に基づいて、形状測定プログラムを作成する(ステップS34)。
【0058】
図10を用いて、ステップS32とステップS34の処理を説明する。具体的には、2つの光源を用いる場合の領域ROI1と領域ROI2の設定処理について説明する。制御装置4は、被検物の測定領域のうち、2つの光源で測定する領域を抽出する(ステップS50)。制御装置4は、2つの光源を用いて測定する場合の検出器上のROI1とROI2を設定する(ステップS52)。制御装置4は、測定位置毎に設定されたROI1、ROI2が測定位置毎で異なるように設定する(ステップS54)。すなわち、制御装置4は、ROI1とROI2との大きさを、測定位置毎に異なるように設定する。制御装置4は、設定した条件に基づいて、形状測定プログラムを作成する(ステップS56)。
【0059】
本実施形態の形状測定装置1は、2つの光源を用いて計測を行う場合、第1光源12aによる光L1の形成及び撮像素子20の領域ROI1での光L1の検出と、第2光源12bによる光L2の形成及び撮像素子20の領域ROI2での光L2の検出と、を交互に行う。本実施形態の形状測定装置1は、2つの光源を用いて計測を行う場合、第1光源12aによる光L1の照射と、第2光源12bにより光L2の照射とを異なる時間に照射する。この場合、光源装置8は、光L1及び光L2の2つの測定光の一方を被検物Mに投影する。つまり、光源装置8は、第1光源12aによる光L1の照射と、第2光源12bによる光L2の照射とを切り替えて行う。具体的には、図11に示すように、第1光源12aによるライン光の形成及び撮像素子20の領域ROI1でのライン光の検出を行っている間は、第2光源12bによるライン光の形成及び撮像素子20の領域ROI2でのライン光の検出を行わず、第2光源12bによるライン光の形成及び撮像素子20の領域ROI2でのライン光の検出を行っている間は、第1光源12aによるライン光の形成及び撮像素子20の領域ROI1でのライン光の検出を行わない。また、撮像素子の領域ROI1で検出した信号の取り出しは、第1光源12aによるライン光の形成が行われていない間に行う。撮像素子の領域ROI2で検出した信号の取り出しは、第2光源12bによるライン光の形成が行われていない間に行う。なお、2つの光源を用いて計測を行う場合に、第1光源12aによる光L1の照射と、第2光源12bにより光L2の照射とを異なる時間に照射するものとしたが、同時に照射しても構わない。例えば、撮像素子20の領域ROI1と撮像素子20の領域ROI2とで重なる領域を測定する場合のみ、第1光源12aによる光L1の照射と、第2光源12bにより光L2の照射とを異なる時間で照射するものとし、それ以外の領域で計測する場合には、第1光源12aによる光L1の照射と、第2光源12bにより光L2の照射とを同時に照射するものとしても構わない。
【0060】
また、本実施形態の形状測定装置1は、隣接する画像データ毎に領域ROI1と領域ROI2とを一部重複させ、かつ、重複する領域を測定位置毎に変化させる。本実施形態においては、形状測定装置1は、重複する領域を測定している間に変化させる。つまり、本実施形態の形状測定装置1は、領域ROI1の撮像素子の行数と領域ROI2の撮像素子の行数を画像データ毎に変化させる。図12は、各画像データでの領域ROI1と領域ROI2の範囲を模式的に示している。図12の線分172a,172b,172c,172d,172e,172f,172g,172hは、領域ROI1の範囲を示している。線分174a,174b,174c,174d,174e,174f,174g,174hは、領域ROI2の範囲を示している。線分172aと線分174aとが隣接する画像データとなり、線分172aと線分174aとに対応する画像データで、一部重複し、かつ、撮像素子20の全行の画像データを取得する。また、範囲176aは、線分172aと、線分174aとが重なる範囲である。範囲176b,176c,176d,176e,176f,176g,176hは、線分172b,172c,172d,172e,172f,172g,172hと、隣接する線分174b,174c,174d,174e,174f,174g,174hとが重なる範囲である。重複する領域は測定位置毎に、重なる領域が設定する位置が変わる。また、重複する領域は測定位置毎に、重なる領域の面積が変わる。なお、本実施形態においては、領域ROI1と領域ROI2とで重複する領域を測定位置毎に変化させているが、測定毎に重なる領域を変化させても構わない。
【0061】
制御装置4は、図12に示すように、隣接する画像データで、領域ROI1と領域ROI2とが一部重なる状態で、領域ROI1の撮像素子の行数と領域ROI2の撮像素子の行数を画像データ毎に変化させる。制御装置4は、図11に示すタイミングで、図12の示す各領域の画像データを取得し、取得した画像データに基づいて、被検物Maの外形形状を計測する。
【0062】
以上、説明したとおり、形状測定装置は、測定光を用い被検物の三次元形状を測定する。光源からの光を光学系により、測定光を形成するために、測定光の照射方向の位置によって、測定光の幅が変化する。測定光の照射方向の位置によっては、測定光の照射領域が広くなってしまい、形状測定の計測結果の精度が低下するおそれがあった。また、所定範囲の測定光の幅を用い、計測しようとすると、被検物と光学プローブとの、測定光の投影方向における相対位置を調整する必要があり、計測に時間が必要となる場合があった。そこで、本実施形態の形状測定装置1は、測定光の投影方向に沿った異なる領域に第1測定光と第2測定光とを照射することとした。
【0063】
これにより、被検物の形状をより高い精度で検出することができる。また、2つの光源で領域分割を行うため、効率よく計測を行うことができる。なお、本実施形態では、2つの光源を用いたが、これに限られない。一つの光源からの光を分岐し、光L1と光L2としても構わない。3つ以上の光源を用いてもよい。この場合には、3つの測定光の照射領域を設け、それに対応する3つの撮像領域とすることが可能である。
【0064】
また、形状測定装置1は、画像データを取得する領域ROI1と領域ROI2とを変化させることで、重複する領域が一定になることを抑制でき、一部の領域の形状データのみが他の領域に比べて多くなることを抑制できる。これにより、計測結果から重複データを除去する等の処理が不要となり処理を簡単にすることができる。また、上記実施形態では、領域ROI1と領域ROI2とを重複させたが、領域ROI1と領域ROI2とが接するように領域を設定してもよい。また、領域ROI1と領域ROI2とが離れて設定されも構わない。また、領域ROI1と領域ROI2とがそれぞれ異なる撮像素子に設定されていても構わない。この場合、領域ROI1と領域ROI2とは、異なる領域となる。
【0065】
また、形状測定装置1は、領域ROI1の画像データの取得時は、第1光源12aから被検物に光を照射し、第2光源12bから被検物に光を照射せず、領域ROI2の画像データの取得時は、第1光源12aから被検物に光を照射せず、第2光源12bから被検物に光を照射することで、検出する対象のパターン以外を検出することを抑制でき、より簡単な処理で形状の計測を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態の制御装置4は、プレスキャン処理を実行可能とすることで、被検物Mの形状、各光源から光を照射することで形成されるパターン、被検物Mと照明光束Lとが相対移動する際の、測定範囲及び調光領域の画像の変動をユーザが目視で確認することができる。これにより、測定範囲及び調光領域をより適切な範囲、領域に設定することができる。
【0067】
なお、形状測定装置1は、測定範囲を任意の領域に設定することができる。上記実施形態では、パターンの像が形成される領域を選択して複数の測定範囲にしたが、パターンの像が形成される範囲を全部含む広い範囲を1つの測定範囲としてもよい。この場合は、測定範囲に輝線を含む場合があるが、測定範囲に基づいて設定した調光領域設定可能範囲に基づいて調光領域を設定することで、一部の領域のみを調光領域とすることができる。これにより、調光条件を適切な条件とすることができる。
【0068】
また、制御装置4は、調光条件を、形状測定プログラムの作成時に設定したが、これに限定されない。制御装置4は、測定時の画像の調光領域の光量に基づいて、調光条件を設定してもよい。これにより、測定時に取得した画像に適した調光条件とすることができる。
【0069】
形状測定装置1の移動機構は、本実施形態のように、第1の方向、第1の方向に直交する第2の方向、及び、第1方向と第2の方向がなす平面と直交する第3の方向に光学プローブ3と被検物M(Ma)とを相対移動可能であり、第1方向と第2の方向がなす平面に径方向が含まれることが好ましい。これにより、相対位置を任意の方向に移動させることができる。また、形状測定装置1は、形状測定装置1に限定されず、被検物Mと被検物Mに投影するパターンとの相対位置を移動さえる機構としては、種々の組み合わせを用いることができる。形状測定装置1は、光学プローブ3と被検物MのどちらをX軸、Y軸、Z軸方向に移動可能としてもよいし、X軸、Y軸、Z軸方向の回りを回転させてもよい。また、形状測定装置1は、相対移動しない機構としてもよい。
【0070】
光学プローブ3の照明光学系13によりライン状の測定光が投影される例で説明したが、本発明はこれだけに限られない。例えば、被検物Mに対してドット状のスポットパターンが投影される光学系と、このスポットパターンが被検物Mの表面上で1方向に走査できるように、偏向走査ミラーを具備した照明光学系を用いても良い。この場合は、ライン状の測定光の長手方向が偏向走査ミラーの走査方向に対応する。これにより、ドット状のスポットパターン少なくとも線状の走査範囲内で走査しながら投影し、線状の走査範囲内がライン状の測定光となる。
【0071】
上記実施形態の形状測定装置1は、1台の装置で処理を行ったが複数組み合わせてもよい。図13は、形状測定装置を有するシステムの構成を示す模式図である。次に、図13を用いて、形状測定装置を有する形状測定システム300について説明する。形状測定システム300は、形状測定装置1と、複数台(図では2台)の形状測定装置1aと、プログラム作成装置302とを、有する。形状測定装置1、1a、プログラム作成装置302は、有線または無線の通信回線で接続されている。形状測定装置1aは、測定範囲設定部33、調光領域設定部34及び調光領域設定可能範囲設定部35を備えていない以外は、形状測定装置1と同様の構成である。プログラム作成装置302は、上述した形状測定装置1の制御装置4で作成する種々の設定やプログラムを作成する。具体的には、プログラム作成装置302は、測定範囲、調光領域設定可能範囲及び調光領域の情報や、測定範囲、調光領域設定可能範囲及び調光領域の情報を含む形状測定プログラム等を作成する。プログラム作成装置302は、作成したプログラムや、データを形状測定装置1、1aに出力する。形状測定装置1aは、領域及び範囲の情報や形状測定プログラムを形状測定装置1や、プログラム作成装置302から取得し、取得したデータ、プログラムを用いて、処理を行う。形状測定システム300は、測定プログラムを形状測定装置1や、プログラム作成装置302で作成したデータ、プログラムを用いて、形状測定装置1aで測定を実行することで、作成したデータ、プログラムを有効活用することができる。また、形状測定装置1aは、測定範囲設定部33、調光領域設定部34及び調光領域設定可能範囲設定部35、さらにその他の設定を行う各部を設けなくても測定を行うことができる。
【0072】
また、上記実施形態では、形状測定装置1が、円周方向に繰り返し形状が形成された被検物Maの形状を測定し、その際に被検物Maの底部をテーブル71に固定する場合(図6A等参照)を例に挙げて説明したが、これに限定されない。図14は、形状測定装置の他の例を示す斜視図である。図14に示す形状測定装置1Aは、本体部111と、センサ部120と、移動部130とを有している。図14におけるXYZ直交座標系では、以下の定盤113の上面と平行な面をXY平面とする。また、定盤113上における一方向をX方向とし、定盤113の上面においてX方向に直交する方向をY方向とし、定盤113の上面に直交する方向をZ方向とする。
【0073】
本体部111は、架台112と、該架台112上に載置される定盤113とを含む。架台112は、形状測定装置1A全体の水平度を調整するためのものである。定盤113は、石製または鋳鉄製からなるものであり、上面が架台112により水平に保たれている。定盤113の上面には、テーブル114が載置されている。テーブル114は、XY平面に平行な平面状であり、Z方向に平行な軸線周りに回転可能であり、XY平面に対して傾斜可能である。このため、テーブル114では、被検物Mを任意の姿勢で保持可能である。なお、テーブル114は、回転及び傾斜可能な構成に限定されず、例えば定盤113に固定された構成であってもよい。
【0074】
センサ部120は、テーブル114に載置される被検物Mに向けて測定光を投影し、被検物Mに投影される像を撮像して画像データを出力する。センサ部120は、上記実施形態における光学プローブ3と同様の構成である。
【0075】
移動部130は、被検物Mに投影された測定光の長手方向と略直角な方向にセンサ部120を移動させることで、測定光を被検物Mの表面に走査させる。形状測定装置1Aでは、センサ部120が移動部130によって所定方向に沿って移動される。移動部130は、X軸ガイド115aと、駆動側柱115bと、従動側柱115cとを含む門型フレームを備えている。
【0076】
X軸ガイド115aには、ヘッド部116が配置される。ヘッド部116は、X軸ガイド115aに沿ってX軸方向に移動可能である。ヘッド部116には、Z軸ガイド117が装着される。Z軸ガイド117は、ヘッド部116に対してZ軸方向に移動可能である。Z軸ガイド117の下端部には、上記のセンサ部120が装着される。
【0077】
定盤113上には、被検物Mを支持する治具74が配置される。形状測定装置1Aは、治具74を用いて被検物Mを支持することで、任意の形状の被検物Mをテーブル114に安定して載置可能である。なお、テーブル114の他の構成については、上記実施形態のテーブル71と同様である。また、形状測定装置1Aは、テーブル114以外の構成については、上記実施形態の形状測定装置1と同様である。
【0078】
治具74は、被検物Mの形状に応じて、上部(+Z方向)又は側方(Z軸に対する放射方向)から当該被検物Mを支持可能である。治具74は、例えばテーブル114に着脱可能に保持される。治具74は、テーブル114から+Z側に延びる柱状部74aと、当該柱状部74aの先端(+Z側の端部)から被検物Mに向けて延びる支持部74bとを有する。治具74は、被検物Mの周囲に1つ又は複数配置される。治具74は、支持部74bとテーブル114との間で被検物Mを支持する。治具74は、複数設けられる場合、複数の支持部74bの間で被検物Mを支持してもよい。なお、治具74の構成は、図14に示すような柱状部74a及び支持部74bを有する構成に限定されず、被検物Mを上方又は側方から支持可能な構成であれば、他の構成であってもよい。
【0079】
治具74の表面は、少なくとも測定光の波長と同一波長の光を吸収する塗料によって被覆されている。治具74は、被検物Mと共に当該治具74に測定光が照射される場合に、得られる画像データのうち治具74に対応するデータが被検物Mに対応するデータに対して制御装置4により区別可能となる程度に測定光を吸収するように、表面が上記塗料で被覆されている。したがって、治具74による測定光の反射による画像の明度の値と、被検物Mによる測定光の反射による画像の明度の値とが異なっている。そのため、被検物Mと治具とを測定した場合の画像データにおいて、明度の値を用いて、被検物Mと治具とを区別することができる。本実施形態においては、治具74においては測定光を吸収することにより治具74による測定光の反射による明度の値は、被検物Mによる測定光の反射による明度の値よりも低い。したがって、明度の値よりも低いものを治具74による測定光の反射として、治具74による測定結果とすることができる。なお、治具74は、測定光が照射された場合に撮像装置9の撮像素子20において測定光として検出されない程度に当該測定光を吸収するように、表面が上記塗料で被覆された状態であってもよい。
【0080】
治具74により被検物Mを上方又は側方から支持した状態で被検物Mに測定光を照射して形状測定を行う場合、測定光が治具74に照射されることがある。治具74に測定光が照射される場合、撮像装置9から出力される画像データには、被検物Mに対応するデータと、治具74に対応するデータとが含まれる。本態様では、治具74の表面を被覆する塗料により測定光の少なくとも一部が吸収される。この場合、画像データのうち治具74に対応するデータは、被検物Mに対応するデータに比べて明度が低くなる。したがって、制御装置4は、明度に基づいて、被検物Mに対応するデータに対して、治具74に対応するデータを区別可能となる。制御装置4は、被検物Mの形状を算出する際、画像データのうち治具74に対応するデータを含まないデータに基づいて処理を行うことで、治具74を含まない状態の被検物Mの形状を算出することができる。なお、画像から抽出する情報は明度に限られず、輝度など他の情報を用いても構わない。例えば、被検物Mから反射する測定光の輝度と、冶具74から反射する測定光の輝度とを、輝度の値に基づいて判断しても構わない。例えば、所定の値よりも高い輝度を被検物Mとして、被検物Mに対応する位置を特定することが可能となる。
【0081】
また、本態様において治具74に測定光が照射される場合、被検物Mの表面では治具74の陰になる部分が生じることがある。つまり、治具74によって測定光が遮られる部分が生じることがある。この部分の形状については、例えば測定光の方向を変化させたり、治具74の位置を変化させたりして異なる角度から複数回の測定を行い、複数の測定結果を用いて補完することにより、求めることができる。
【0082】
なお、治具74は、表面全体が上記塗料で覆われた構成に限定されず、表面の一部が上記塗料で覆われた構成であってもよい。例えば、治具74のうち柱状部74aは塗料で覆われず、支持部74bが塗料で覆われた構成であってもよい。また、支持部74bの一部(例えば先端部)が塗料で覆われた構成であってもよい。
【0083】
次に、上述した形状測定装置を備えた構造物製造システムについて、図15を参照して説明する。図15は、構造物製造システムのブロック構成図である。本実施形態の構造物製造システム200は、上記の実施形態において説明したような形状測定装置201と、設計装置202と、成形装置203と、制御装置(検査装置)204と、リペア装置205とを備える。制御装置204は、座標記憶部210及び検査部211を備える。
【0084】
設計装置202は、構造物の形状に関する設計情報を作成し、作成した設計情報を成形装置203に送信する。また、設計装置202は、作成した設計情報を制御装置204の座標記憶部210に記憶させる。設計情報は、構造物の各位置の座標を示す情報を含む。
【0085】
成形装置203は、設計装置202から入力された設計情報に基づいて、上記の構造物を作成する。成形装置203の成形は、例えば鋳造、鍛造、切削等が含まれる。形状測定装置201は、作成された構造物(測定対象物)の座標を測定し、測定した座標を示す情報(形状情報)を制御装置204へ送信する。
【0086】
制御装置204の座標記憶部210は、設計情報を記憶する。制御装置204の検査部211は、座標記憶部210から設計情報を読み出す。検査部211は、形状測定装置201から受信した座標を示す情報(形状情報)と、座標記憶部210から読み出した設計情報とを比較する。検査部211は、比較結果に基づき、構造物が設計情報通りに成形されたか否かを判定する。換言すれば、検査部211は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する。検査部211は、構造物が設計情報通りに成形されていない場合に、構造物が修復可能であるか否か判定する。検査部211は、構造物が修復できる場合、比較結果に基づいて不良部位と修復量を算出し、リペア装置205に不良部位を示す情報と修復量を示す情報とを送信する。
【0087】
リペア装置205は、制御装置204から受信した不良部位を示す情報と修復量を示す情報とに基づき、構造物の不良部位を加工する。
【0088】
図16は、構造物製造システムによる処理の流れを示したフローチャートである。構造物製造システム200は、まず、設計装置202が構造物の形状に関する設計情報を作成する(ステップS101)。次に、成形装置203は、設計情報に基づいて上記構造物を作成する(ステップS102)。次に、形状測定装置201は、作成された上記構造物の形状を測定する(ステップS103)。次に、制御装置204の検査部211は、形状測定装置201で得られた形状情報と上記の設計情報とを比較することにより、構造物が設計情報通りに作成されたか否か検査する(ステップS104)。
【0089】
次に、制御装置204の検査部211は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する(ステップS105)。構造物製造システム200は、作成された構造物が良品であると検査部211が判定した場合(ステップS105でYes)、その処理を終了する。また、検査部211は、作成された構造物が良品でないと判定した場合(ステップS105でNo)、作成された構造物が修復できるか否か判定する(ステップS106)。
【0090】
構造物製造システム200は、作成された構造物が修復できると検査部211が判定した場合(ステップS106でYes)、リペア装置205が構造物の再加工を実施し(ステップS107)、ステップS103の処理に戻る。構造物製造システム200は、作成された構造物が修復できないと検査部211が判定した場合(ステップS106でNo)、その処理を終了する。以上で、構造物製造システム200は、図16に示すフローチャートの処理を終了する。
【0091】
本実施形態の構造物製造システム200は、上記の実施形態における形状測定装置201が構造物の座標を高精度に測定することができるので、作成された構造物が良品であるか否か判定することができる。また、構造物製造システム200は、構造物が良品でない場合、構造物の再加工を実施し、修復することができる。
【0092】
なお、本実施形態におけるリペア装置205が実行するリペア工程は、成形装置203が成形工程を再実行する工程に置き換えられてもよい。その際には、制御装置204の検査部211が修復できると判定した場合、成形装置203は、成形工程(鍛造、切削等)を再実行する。具体的には、例えば、成形装置203は、構造物において本来切削されるべき箇所であって切削されていない箇所を切削する。これにより、構造物製造システム200は、構造物を正確に作成することができる。
【0093】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態における形状測定装置1は、保持部材55が片持ちで光学プローブ3を保持する構成を例示したが、これに限定されるものではなく、両持ちで保持する構成としてもよい。両持ちで保持することにより、回転時に保持部材55に生じ変形を低減することができ、測定精度の向上を図ることが可能になる。
【0095】
また、上述実施形態では光学プローブ3から照明光束Lとしてライン光を照射し、被検物から反射するライン状の測定光を撮像しているが、光学プローブ3の形式はこれに限られない。光学プローブ3から発せられる照明光は、所定の面内に一括で照射する形式でも構わない。例えば、米国特許6075605号に記載さる方式でも構わない。光学プローブから発せられる照明光は、点状のスポット光を照射する形式でも構わない。
【0096】
また、形状測定装置は、上記実施形態のように、円周方向に繰り返し形状を有しかつ円周方向とは異なる方向に延在した凹凸形状を有する形状の被検物の測定に好適に用いることができる。形状測定装置は、繰り返し形状の1つについて、測定範囲、調光領域設定可能範囲及び調光領域を設定することで、設定した条件を他の繰り返し形状の測定に用いることができる。なお、被検物は、円周方向に繰り返し形状を有しかつ円周方向とは異なる方向に延在した凹凸形状を有する形状に限定されず、種々の形状、例えば、繰り返し形状を備えない形状であってもよい。
【0097】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態や変形例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。前述の実施形態の各構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令が許容される限りにおいて、前述の各実施形態及び変形例で引用した検査装置などに関するすべての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。前述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態及び運用技術等は、すべて本実施形態の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1、1A 形状測定装置
2 プローブ移動装置
3 光学プローブ
4 制御装置
5 表示装置
6 入力装置
12 光源
13 照明光学系
20 撮像素子
20a 受光面
21 結像光学系
21a 物体面
71、71A テーブル
72 回転駆動部
73a、73b 基準球
74 治具
74a 柱状部
74b 支持部
102 画像
140、180 外形
144 輝線
150a、150b 測定範囲
302 プログラム作成装置
AX 回転軸中心
B ベース
M 被検物
L 照明光束
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16