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特許7491683III族窒化物積層基板および半導体発光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】III族窒化物積層基板および半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240521BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20240521BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L33/32
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019211371
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021082781
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 序章
(72)【発明者】
【氏名】今野 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 健司
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222539(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136548(WO,A1)
【文献】特開2011-103472(JP,A)
【文献】特開2012-164749(JP,A)
【文献】特開2001-148510(JP,A)
【文献】特開2017-059598(JP,A)
【文献】特開2010-248021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア基板と、
前記サファイア基板上に形成され、窒化アルミニウムで構成され、全域がアルミニウム極性を有する上面を備えた第1層と、
前記第1層の前記上面上に形成され、窒化ガリウムで構成されn型不純物が添加されたn型層である第2層と、
前記第2層上に形成され、III族窒化物で構成された発光層である第3層と、
前記第3層上に形成され、III族窒化物で構成されp型不純物が添加されたp型層である第4層と、
を有し、
前記第2層は、厚さが0.8μm以上7μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が100秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が200秒以下である、
III族窒化物積層基板。
【請求項2】
請求項1に記載のIII族窒化物積層基板が有する前記第2層を、n型層として備える、半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物積層基板および半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイア基板等の異種基板である下地基板上にGaN層を形成したIII族窒化物積層基板(以下、ウエハともいう)は、発光ダイオード(LED)等の半導体素子を製造するための材料として用いられている(例えば特許文献1参照)。ウエハの大径化および半導体素子の微細化の進展により、例えば、ウエハの反りに起因するリソグラフィー精度低下の影響が大きくなっている。
【0003】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイに代わる、より低消費電力、高画質なディスプレイとして、マイクロLEDディスプレイが提案されている。照明等の用途に用いられる従来の半導体発光素子(LEDチップ)が、数100μm角から数mm角のサイズであるのに対し、マイクロLEDディスプレイ用途に用いられる半導体発光素子(LEDチップ)は、100μm角以下の微細なサイズであることが求められる。以下、マイクロLEDディスプレイ用途に用いられる半導体発光素子を、マイクロLEDともいう。マイクロLEDの形成においては、従来のLEDの形成と比べて、より高いリソグラフィー精度が求められる。このため、ウエハの反りに起因するリソグラフィー精度の低下が抑制されることが望ましい。
【0004】
ウエハの反りを低減させるために、下地基板上に形成するGaN層を薄くすることが考えられる。しかし、GaN層を薄くすることに起因して、結晶性等のGaN層の品質が低下することが懸念される。薄くても高品質なGaN層を形成できる技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-225648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、サファイア基板上に形成され、半導体発光素子に用いられるGaN層の品質を高めることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
サファイア基板と、
前記サファイア基板上に形成され、窒化アルミニウムで構成された第1層と、
前記第1層上に形成され、窒化ガリウムで構成されn型不純物が添加されたn型層である第2層と、
前記第2層上に形成され、III族窒化物で構成された発光層である第3層と、
前記第3層上に形成され、III族窒化物で構成されp型不純物が添加されたp型層である第4層と、
を有し、
前記第2層は、厚さが7μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が100秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が200秒以下である、
III族窒化物積層基板
が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
上記の一態様によるIII族窒化物積層基板が有する前記第2層を、n型層として備える、半導体発光素子
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
サファイア基板上に形成され、半導体発光素子に用いられるGaN層の品質を高めることができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態によるウエハの例示的な概略断面図である。
図2図2は、実施形態による半導体発光素子の第1例を示す概略断面図である。
図3図3は、実施形態による半導体発光素子の第2例を示す概略断面図である。
図4図4は、実施形態による半導体発光素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施例によるGaN層の結晶性を示すグラフである。
図6図6は、実施例によるGaN層の表面平坦性を示すグラフである。
図7図7は、実施例によるGaN層の厚さの面内ばらつきを示すグラフである。
図8図8は、実施例によるGaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきを示すグラフである。
図9図9は、実施例による中間ウエハの反りを示すグラフである。
図10図10は、実施例による半導体発光素子の発光出力の面内均一性を示すグラフである。
図11図11は、実施例による半導体発光素子の発光波長の面内均一性を示すグラフである。
図12図12は、実施例による半導体発光素子の駆動電圧の面内均一性を示すグラフである。
図13図13は、実施例による半導体発光素子の逆方向リーク電流抑制効果の面内均一性を示すグラフである。
図14図14は、実施例による半導体発光素子の総合歩留を示すグラフである。
図15図15は、比較例によるGaN層の結晶性を示すグラフである。
図16図16は、比較例によるGaN層の表面平坦性を示すグラフである。
図17図17は、比較例による半導体発光素子の発光出力の面内均一性を示すグラフである。
図18図18は、比較例による半導体発光素子の発光波長の面内均一性を示すグラフである。
図19図19は、比較例による半導体発光素子の駆動電圧の面内均一性を示すグラフである。
図20図20は、比較例による半導体発光素子の逆方向リーク電流抑制効果の面内均一性を示すグラフである。
図21図21は、比較例による半導体発光素子の総合歩留を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<一実施形態>
本発明の一実施形態によるIII族窒化物積層基板150(以下、ウエハ150ともいう)、および、ウエハ150を用いて製造される半導体発光素子200(以下、発光素子200ともいう)について説明する。ウエハ150は、発光ダイオード(LED)を構成する積層基板である。
【0012】
図1は、ウエハ150の例示的な概略断面図である。ウエハ150は、サファイア基板10と、窒化アルミニウム(AlN)で構成されたAlN層20と、窒化ガリウム(GaN)で構成されn型不純物が添加されたn型層であるGaN層30と、III族窒化物で構成された発光層41と、III族窒化物で構成されp型不純物が添加されたp型層42と、を有する。本実施形態によるウエハ150は、以下詳しく説明するように、AlN層20の直上に成長されたGaN層30が、薄くても高い品質を有することを1つの特徴とする。
【0013】
サファイア基板10としては、C面から0.1°以上0.6°以下の範囲でa軸あるいはm軸方向に傾斜した表面である主面11、を有するサファイア基板が、好ましく用いられる。なお、サファイア基板10は、パターン化サファイア基板(PSS)ではない、主面11が平坦な平坦基板であってよい。
【0014】
ウエハ150を用いて発光素子200を製造する際の生産性を向上させるために、サファイア基板10としては、面内に多数の発光素子200を形成可能な大面積のものが用いられることが好ましい。サファイア基板10の直径は、2インチ(50.8mm)以上であることが好ましく、4インチ(100mm)以上であることがより好ましく、6インチ(150mm)以上であることがさらに好ましい。直径2インチのサファイア基板10の厚さは、例えば、300μm以上500μm以下(典型的には430μm)であり、直径4インチのサファイア基板10の厚さは、例えば、600μm以上1000μm(典型的には900μm)であり、直径6インチのサファイア基板10の厚さは、例えば、1000μm以上1500μm以下(典型的には1300μm)である。
【0015】
AlN層20は、サファイア基板10上に形成されており、より具体的には、サファイア基板10の主面11上に(主面11と接して、主面11の直上に、)ヘテロエピタキシャル成長されることで形成されている。AlN層20は、GaN層30を成長させるための核生成層として機能する。
【0016】
AlN層20の厚さは、AlN層20の結晶性を高めるために、0.1μm以上であることが好ましい。また、AlN層20の厚さは、AlN層20に生じるクラックを抑制するとともに、ウエハ150の反りを低減させるために、1μm以下であることが好ましい。
【0017】
AlN層20は、具体的には、以下のような高い結晶性を有することが好ましい。AlN層20の(0002)面のX線ロッキングカーブの半値幅は、100秒以下であることが好ましく、AlN層20の(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅は、300秒以下であることが好ましい。AlN層20の表面21は、Al極性であることが好ましい。なお、本明細書において、「半値幅」とは、半値全幅(FWHM)を意味する。
【0018】
GaN層30は、AlN層20上に形成されており、より具体的には、AlN層20の表面21上に(表面21と接して、表面21の直上に、)ヘテロエピタキシャル成長されることで形成されている。つまり、GaN層30は、AlN層20を介して、サファイア基板10上に形成されている。GaN層30の特徴の詳細については、後述する。
【0019】
発光層41は、GaN層30上に形成されており、より具体的には、GaN層30の表面31上に(表面31と接して、表面31の直上に、)ヘテロエピタキシャル成長されることで形成されている。発光層41は、III族窒化物で構成され、発光層41の、積層構造、組成等の構成は、発光素子200から放出させたい光の波長に応じて適宜選択されてよい。発光層41は、例えば、波長445nmの光を放出させるように、窒化インジウムガリウム(InGaN)井戸層とGaNバリア層とが交互に積層された多重量子井戸構造により、構成され、具体的には例えば、2~4nm厚のInGaN井戸層と、8~30nm厚のGaNバリア層と、を交互に5~50周期成長した構造を有する。
【0020】
p型層42は、発光層41上に形成されている。p型層42は、III族窒化物で構成され、p型層42の、積層構造、組成等の構成は、発光層41の構成等に応じて適宜選択されてよい。p型層42は、例えば、10~50nm厚のp型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)クラッド層と、200~500nm厚のp型GaNコンタクト層と、の積層により構成される。
【0021】
発光層41およびp型層42を合わせた層を、III族窒化物層40とも称する。III族窒化物層40は、GaN層30の表面31上にヘテロエピタキシャル成長されたIII族窒化物により形成されている。III族窒化物層40の厚さは、ウエハ150の反りを低減させるために、1μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。
【0022】
GaN層30の特徴の詳細について説明する。本実施形態によるGaN層30は、以下に説明するような高い品質を有する。
【0023】
(GaN層の結晶性)
GaN層30は、高い結晶性を有する。具体的には、GaN層30は、厚さが7μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)面の半値幅が100秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)面の半値幅が200秒以下である。GaN層30の厚さを7μm以下とすることは、後述の実施例で説明するように、発光素子200の総合歩留を向上させるために好ましい。
【0024】
従来、サファイア基板上に、AlN層を介して、結晶性を向上させたGaN層を形成する場合、例えば10μm程度以上の厚いGaN層を成長させることが行われている。これは、GaN層を厚く成長させるほど、当該GaN層の結晶性を高めることができるためである。しかし、一般的な方法でGaN層を形成した場合、厚さ10μmの厚いGaN層を形成しても、当該GaN層の(0002)面のX線ロッキングカーブの半値幅は200秒程度までしか下がらず、また、当該GaN層の(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅は300秒程度までしか下がらない(図15参照)。
【0025】
これに対し、本実施形態によるGaN層30は、厚さが7μm以下であっても、(0002)面のX線ロッキングカーブの半値幅が100秒以下であり、(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が200秒以下であるという、高い結晶性を有する(図5参照)。
【0026】
なお、GaN層30の結晶性は、GaN層30が薄くなるほど低下する傾向、つまり、GaN層30が厚くなるほど向上する傾向を有する。GaN層30の厚さを0.8μm以上とすることで、(0002)面の半値幅を100秒以下とし、(10-12)面の半値幅を200秒以下とすることができる(図5参照)。また、GaN層30の厚さを1μm以上とすることで、(0002)面の半値幅を80秒以下とし、(10-12)面の半値幅を180秒以下とすることができる。また、GaN層30の厚さを1.5μm以上とすることで、(0002)面の半値幅を70秒以下とし、(10-12)面の半値幅を170秒以下とすることができる。
【0027】
(GaN層の表面平坦性)
GaN層30は、高い表面平坦性を有する。具体的には、GaN層30の表面31は、5μm角領域の原子間力顕微鏡(AFM)測定により求めた二乗平均平方根(rms)値として、好ましくは0.5nm以下の表面粗さを有し、より好ましくは0.4nm以下の表面粗さを有する(図6参照)。
【0028】
なお、GaN層30の表面平坦性は、GaN層30が過度に薄いと急激に悪化する傾向を有する。GaN層30の厚さを0.8μm以上とすることで、上述のような高い表面平坦性を得ることができる(図6参照)。
【0029】
(GaN層の膜厚の面内均一性)
GaN層30は、高い、膜厚の面内均一性を有する。具体的には、GaN層30の厚さが7μm以下において、GaN層30の厚さの面内ばらつきは、3.5%以下(より好ましくは3%以下)である(図7参照)。GaN層30の厚さの面内ばらつきは、以下のように規定される。測定対象となるウエハの表面上に一定間隔(好ましくは、1mm以上2mm以下の間隔)の正方格子を設定し、その格子点毎にGaN層30の膜厚を測定する。各点におけるGaN層30の膜厚の測定方法としては、電子顕微鏡等での断面観察による方法、分光エリプソメトリー法、等を用いることが好ましい。なお、ウエハの端面付近では、ウエハ端のベベリング形状の影響、光の乱反射の影響、等に起因して、測定結果が正しく得られない場合が多い。そのような場合には、ウエハ端から1~3mm程度以内に配置された測定点で得られる測定データは、以下の計算から除外することが好ましい。本明細書では、格子点間隔を1mmとし、ウエハ外周2mm以内の領域における測定データは除外した膜厚測定データについて、平均値と標準偏差とを求め、標準偏差を平均値で除した値(%)を、厚さの面内ばらつきとする。
【0030】
(GaN層の不純物濃度の面内均一性)
GaN層30は、高い、n型不純物濃度の面内均一性を有する。具体的には、GaN層30の厚さが7μm以下において、GaN層30におけるn型不純物濃度の面内ばらつきは、3.5%以下(より好ましくは3%以下)である(図8参照)。これに対応し、GaN層30におけるn型キャリア濃度の面内ばらつきを、3.5%以下(より好ましくは3%以下)とすることができる(図8参照)。以下、GaN層30におけるn型不純物濃度を、単に、不純物濃度ともいい、GaN層30におけるn型キャリア濃度を、単に、キャリア濃度ともいう。
【0031】
GaN層30における不純物濃度の面内ばらつき、および、キャリア濃度の面内ばらつきは、それぞれ、以下のように規定される。不純物濃度の測定には、一般的に、2次イオン質量分析法(SIMS)が用いられる。また、キャリア濃度の測定には、一般的に、容量―電圧測定(CV測定)、ホール測定、等が用いられる。不純物濃度の測定、および、キャリア濃度の測定のそれぞれは、測定対象となるウエハの表面にウエハ中心を通る直交座標を設定し、この座標軸上で実施する。直交座標の一方の軸は、ウエハのオフ方向と一致させることが好ましい。本明細書では、この直交座標軸上において、1cm間隔で測定したSIMS測定データについて、平均値と標準偏差とを求め、標準偏差を平均値で除した値(%)を、不純物濃度の面内ばらつきとする。また、この直交座標軸上において、1cm間隔で測定したCV測定データあるいはホール測定データについて、平均値と標準偏差とを求め、標準偏差を平均値で除した値(%)を、キャリア濃度の面内ばらつきとする。不純物濃度およびキャリア濃度のそれぞれの測定においても、先の膜厚測定と同様に、測定点がウエハ外周2mm以内に配置される場合には、当該測定点で得られた測定データは、上記の計算から除外する。なお、不純物濃度およびキャリア濃度を、それぞれ直接的に測定することで、不純物濃度のばらつき、および、キャリア濃度のばらつきを、それぞれ求める方法を説明したが、キャリア濃度を制御する不純物(導電性の不純物)が添加されている場合について、不純物濃度のばらつきからキャリア濃度のばらつきを見積もってもよく、その逆に、キャリア濃度のばらつきから不純物濃度のばらつきを見積もってもよい。
【0032】
以上のように、本実施形態によるGaN層30は、高い結晶性、高い表面平坦性、高い膜厚の面内均一性、および、高い不純物濃度(キャリア濃度)の面内均一性(のうちの少なくとも1つ、好ましくはこれらのうちの2つ以上、より好ましくはこれらのうちの3つ以上、さらに好ましくはこれらのうちの4つすべて)を備えた、高い品質を有する。
【0033】
(ウエハの反り)
サファイア基板10と、サファイア基板10上に積層されたGaN層30等との熱膨張係数の差に起因して、ウエハ150には反りが生じる。GaN層30が厚いほど、ウエハ150の反りは大きくなる。ウエハ150に多数の発光素子を製造する際、当該反りに起因するリソグラフィー精度低下等の不良を抑制するために、当該反りは、過大とならないことが好ましい。
【0034】
本実施形態によるウエハ150は、GaN層30の厚さが7μm以下であることにより、(そして、AlN層20およびIII族窒化物層40を過度に厚くしないことにより、)ウエハ150の反りを、例えば110μm以下とすることができる(図9参照)。このように反りが抑制されるように、サファイア基板10の直径および厚さは適宜選択されることが好ましい。サファイア基板10の直径および厚さとして、上述のような値が例示される。
【0035】
ウエハ150の反りは、以下のように規定される。測定対象となるウエハを平坦な定盤またはステージ上に設置し、ウエハの表面の、定盤またはステージの表面からの距離(高さ)を測定する。ウエハの表面にウエハ中心を通る直交座標を設定し、この座標軸上で測定を実施する。直交座標の一方の軸は、ウエハのオフ方向と一致させることが好ましい。本明細書では、この直交座標軸上において、1mm間隔で上記の高さ測定を行う。先の膜厚測定と同様に、測定点がウエハ外周2mm以内に配置される場合には、当該測定点で得られた測定データは、下記の計算から除外する。それぞれの軸上の最外周の2点を通る直線を新たな基準線として、当該軸上の測定点であってこの基準線から最も遠い測定点と、基準線と、の距離を、この軸に対する反りと規定する。この測定を直交する2軸のそれぞれに対して行い、得られた2つの反りを平均したものを、ウエハの反りとする。
【0036】
図2および図3は、それぞれ、発光素子200の第1例および第2例を示す概略断面図であり、ウエハ150に多数形成された発光素子200のうちの、分割された1つ分の発光素子200を例示する。
【0037】
n型層であるGaN層30、発光層41およびp型層42は、LEDの、動作電流が流れる動作層60を構成する。発光素子200は、少なくとも、動作層60と、電極50と、を有する。電極50は、n型層であるGaN層30に電気的に接続されたn側電極51と、p型層42に電気的に接続されたp側電極52と、を有する。本例において、n側電極51は、p型層42および発光層41の一部領域の全厚さを除去することで形成された凹部の底に露出したGaN層30の表面上に、形成されている。また、p側電極52は、p型層42の表面上に、形成されている。n側電極51およびp側電極52の材料、配置構造等は、必要に応じて、適宜選択されてよい。
【0038】
図2に示す第1例の発光素子200は、支持基板としてサファイア基板10を有し、サファイア基板10とGaN層30との間に、AlN層20を有する。図3に示す第2例の発光素子200は、n側電極51およびp側電極52が、それぞれ、バンプ220を介して回路基板210に接続されており、回路基板210が、支持基板として機能する。第2例の発光素子200では、サファイア基板10が除去されている。なお、サファイア基板10の除去に伴って、AlN層20が除去されていてもよい。
【0039】
発光素子200の平面視上の1つ分のサイズは、例えば、10μm角以上3000μm角(3mm角)以下であり、面積として考えると、例えば、100μm以上9000000μm(9mm)以下である。マイクロLED用途等において微細化が望まれる場合、発光素子200の平面視上の1つ分のサイズは、好ましくは例えば、100μm角以下であり、面積として考えると、例えば10000μm以下である。なお、発光素子200の平面形状は、正方形に限定されず、必要に応じて適宜選択されてよい。
【0040】
本実施形態による発光素子200が有するGaN層30は、GaN層30が薄い(厚くても7μm以下)にも関わらず、高い品質を有する。これにより、例えば以下のような効果が得られる。
【0041】
GaN層30は、GaN層30が薄いにも関わらず、高い結晶性および高い表面平坦性を有する。これにより、GaN層30が薄いにも関わらず、GaN層30上に成長させたIII族窒化物層40の結晶性を高めることができるため、発光素子200の性能を高めることができる。
【0042】
GaN層30は、高い、膜厚の面内均一性を有する。これにより、ウエハ150に形成される多数の発光素子200の間での性能のばらつきを抑制することができる。
【0043】
GaN層30は、高い、不純物濃度の(キャリア濃度の)面内均一性を有する。これにより、ウエハ150に形成される多数の発光素子200の間での性能のばらつきを抑制することができる。
【0044】
GaN層30は、n型不純物が(全厚さにわたって)添加されていても、高い品質を有するため、発光素子200の動作層60の少なくとも一部として、用いることができる。なお、第2例のようにサファイア基板10(およびAlN層20)が除去された態様であっても、発光素子200は、動作層60の少なくとも一部として、GaN層30を備える。なお、必要に応じて、GaN層30のうちの下層側(サファイア基板側)部分をアンドープとし、GaN層30のうちの上層側(発光層側)部分にn型不純物を添加した積層構造を採用してもよい。
【0045】
ウエハ150に多数の発光素子200が形成される際、ウエハ150の反りに起因するリソグラフィー精度低下等の不良を抑制するために、当該反りは、過大とならないことが好ましい。本実施形態の発光素子200が有するGaN層30は、薄くても高い結晶性を有する。これにより、GaN層30を薄くすることでウエハ150の反りを抑制できるため、当該反りに起因するリソグラフィー精度低下等の不良を抑制することができる。つまり、ウエハ150に形成される多数の発光素子200の間での性能のばらつきを抑制することができる。
【0046】
具体的には、GaN層30の厚さを7μm以下とすることで、ウエハ150の反りを110μm以下とすることができる。また、詳細は後述の実施例で説明するように、GaN層30の厚さを5μm以下とすることで、ウエハ150の反りを80μm以下とすることができ、GaN層30の厚さを3μm以下とすることで、ウエハ150の反りを50μm以下とすることができる。
【0047】
マイクロLEDを製造する場合、上述の反りに起因するリソグラフィー精度低下を抑制することがより重要となり、ウエハ150の反りは、100μm以下とすること(GaN層30の厚さとしては、5μm以下とすること)が好ましく、50μm以下とすること(GaN層30の厚さとしては、3μm以下とすること)がより好ましい。
【0048】
本実施形態によれば、より具体的には、後述の実施例で評価される発光出力等の特性が、ウエハ150に形成される多数の発光素子200の間で、ばらつくことを抑制できる。これらの特性の評価について、詳細は後述の実施例で説明する。
【0049】
次に、発光素子200の製造方法について説明する。図4は、本実施形態による発光素子200の製造方法の一例を示すフローチャートである。本例の製造方法は、基板準備工程S10と、AlN層形成工程S20と、熱処理工程S30と、GaN層形成工程S40と、III族窒化物層形成工程S50と、電極形成工程S60と、を有する。
【0050】
本例では、基板準備工程S10、AlN層形成工程S20、および、熱処理工程S30までを行うことで、最表面がAlN層20であるAlNテンプレートであるIII族窒化物積層基板90(以下、ウエハ90ともいう)を製造する。そして、ウエハ(AlNテンプレート)90を製造した後、GaN層形成工程S40におけるGaN層30の形成、および、III族窒化物層形成工程S50におけるIII族窒化物層40の形成までを、一連の結晶成長(例えば、有機金属気相成長(MOVPE)法による結晶成長)として行うことで、ウエハ150を製造する。
【0051】
まず、基板準備工程S10において、サファイア基板10を準備する。次に、AlN層形成工程S20において、サファイア基板10の主面11上に、AlNを成長させることで、AlN層20を形成する。AlN層20の成長方法としては、例えばハイドライド気相成長(HVPE)が用いられる。アルミニウム(Al)原料ガスとしては、例えば一塩化アルミニウム(AlCl)ガスが用いられ、また例えば三塩化アルミニウム(AlCl)ガスが用いられる。窒素(N)原料ガスとしては、例えばアンモニア(NH)ガスが用いられる。これらの原料ガスを、水素ガス(Hガス)、窒素ガス(Nガス)、またはこれらの混合ガスを用いたキャリアガスと混合して供給してもよい。
【0052】
AlN層20の成長条件としては、以下が例示される。なお、V/III比とは、III族(Al)原料ガスの供給量に対するV族(N)原料ガスの供給量の比である。
成長温度:900~1300℃
V/III比:0.2~200
成長速度:0.5~3000nm/分
【0053】
HVPE装置の成長室内に各種ガスを導入するガス供給管のノズルへのAlNの付着を防止するために、塩化水素(HCl)ガスを流してもよい。HClガスの供給量としては、AlClガスまたはAlClガスに対して0.1~100の比率となるような量が例示される。
【0054】
AlN層形成工程S20では、結晶成長条件の制御、アニール処理等により、上述のような高い結晶性を有するAlN層20を得ることができる。具体的には、例えば、AlN層20の成長時の成長条件(温度、成長速度、原料供給量等)を適切に調整することにより、AlN層20の結晶性を高めることができる。また例えば、AlN層20を成長させた後、Nガスを含む雰囲気において、1400℃以上1700℃以下の温度でアニール処理を行うことにより、AlN層20の結晶性を高めることができる。
【0055】
なお、このようにして、AlN層20の結晶性を高めることができるが、形成されたAlN層20には、表面21に平行な方向(例えばa軸方向)に、サファイア基板10との格子定数差および熱膨張係数差に起因する圧縮歪みが導入される傾向がある。
【0056】
次に、熱処理工程S30において、AlN層20に対する熱処理を行う。熱処理工程S30は、Hガスを含む雰囲気(これを以下、水素を含む雰囲気という)で行う。Hガスは、Nガス、アルゴンガス(Arガス)等の不活性ガスと混合して供給してもよい。当該熱処理は、HVPE装置の成長室内で行ってもよいし、別の熱処理装置内で行ってもよい。
【0057】
水素を含む雰囲気での当該熱処理を行うことで、AlN層20の表面21に導入された圧縮歪みが緩和されるように、表面21を改質することができる。圧縮歪み緩和のメカニズムは現状明らかではないが、熱処理工程S30において、雰囲気内に水素ガスがあることで、AlN結晶中の点欠陥の発生が促進されるメカニズムが考えられる。AlN中の窒素原子が表面で水素と結合して、アンモニアとなって脱離することで、AlN中に多量の窒素空孔が形成され、これが原子サイズのボイドとして働くため、AlN層20上に成長させるGaN層30の歪みを緩和できるものと考えられる。
【0058】
また、熱処理工程S30は、アンモニアを実質的に含まない雰囲気で開始する。具体的には、例えば、NHガスを供給せずに行う。アンモニアを含む雰囲気で熱処理を行った場合には、上述した点欠陥(窒素空孔)の形成が抑制されるため、GaN層30の歪みを緩和し難い。また、HVPE装置の成長室内で熱処理を行う場合には、AlN層形成工程S20にて導入したNHガスが成長室内に残留している可能性があるため、熱処理を行う前に成長室内の気体をすべて排出(または置換)することが好ましい。なお、本明細書において、アンモニアを実質的に含まないとは、例えば、成長室内のNHガス分圧が、全圧に対して1%未満であることを意味する。なお、上述したように熱処理工程S30では、AlN中の窒素原子が表面で水素と結合して、アンモニアとなって脱離するものと考えられるが、脱離によって生成するアンモニアはごく微量である。そのため、該アンモニアによって、成長室内のNHガス分圧が全圧の1%以上になることはない。このように、熱処理工程S30は、アンモニアを実質的に含まない雰囲気で行われる。
【0059】
熱処理工程S30は、例えば、900℃以上1300℃以下の温度(以下、熱処理温度ともいう)で行うことが好ましい。熱処理温度が900℃未満では、表面21が改質され難い。これに対し、熱処理温度を900℃以上とすることで、表面21を改質しやすくすることができる。一方、熱処理温度が1300℃を超えると、表面21が分解されてしまう可能性がある。これに対し、熱処理温度を1300℃以下にすることで、表面21の分解を抑制することができる。
【0060】
熱処理工程S30は、例えば、10分以上120分以下の時間(以下、熱処理時間ともいう)で行うことが好ましい。熱処理時間が10分未満では、表面21が改質され難い。これに対し、熱処理時間を10分以上とすることで、表面21を改質しやすくすることができる。一方、熱処理時間が120分を超えると、表面21の平坦性が低下してしまう可能性がある。これに対し、熱処理時間を120分以下にすることで、表面21の平坦性の低下を抑制することができる。より好ましい熱処理時間は、例えば、30分以上90分以下である。
【0061】
基板準備工程S10、AlN層形成工程S20、および、熱処理工程S30を実施することで、ウエハ(AlNテンプレート)90が製造される。
【0062】
次に、GaN層形成工程S40において、ウエハ90のAlN層20上にGaNを成長させることで、GaN層30を形成する。GaN層30の成長方法としては、例えば、MOVPE法が用いられる。ガリウム(Ga)原料ガスとしては、例えばトリメチルガリウム(Ga(CH、TMG)ガスが用いられる。窒素(N)原料ガスとしては、例えばNHガスが用いられる。n型不純物としては、例えばシリコン(Si)が用いられ、Si原料ガスとしては、例えばシラン(SiH)ガスが用いられる。これらの原料ガスを、Hガス、Nガス、またはこれらの混合ガスを用いたキャリアガスと混合して供給してもよい。
【0063】
GaN層30の成長条件としては、以下が例示される。
成長温度:900~1000℃
V/III比:500~8000
成長速度:10~100nm/分
【0064】
ウエハ90は、AlN層20が上述の高い結晶性を有するとともに、上述の熱処理が施されることでAlN層20の表面21が改質された積層基板である。これにより、ウエハ90は、AlN層20上に上述のような高い品質のGaN層30を形成することができる、AlNテンプレートとして構成されている。GaN層形成工程S40において、ウエハ90が有するAlN層20上にGaN層30を形成することにより、上述の高い品質を有するGaN層30を得ることができる。
【0065】
GaN層形成工程S40において、1000℃以下(好ましくは950℃以下)の低温でGaN層30を形成する。これにより、1000℃超の高温でGaN層30を形成する場合と比べて、GaN層30の成長時における面内方向の温度ばらつきを抑制することが容易になるため、GaN層30の膜厚の面内均一性を高めることができる。なお、本実施形態において、GaN層30の成長下地となるAlN層20の結晶性が高いため、GaN層30を1000℃以下の低温で成長させても、上述の高い結晶性を有するGaN層30を得ることができる。
【0066】
また、GaN層30の成長時における面内方向の温度ばらつきが抑制されることで、GaN層30における不純物濃度の面内均一性を高めることができる。これにより、GaN層30におけるキャリア濃度の面内均一性を高めることができる。
【0067】
GaN層30の結晶性を高めるとともに、GaN層30の表面平坦性を高めるために、GaN層30の厚さは、0.8μm以上であることが好ましい。GaN層30の厚さの上限は、発光素子200を製造する際の総合歩留を向上させる観点から、7μm以下であることが好ましい。
【0068】
次に、III族窒化物層形成工程S50において、GaN層30上にIII族窒化物を成長させることで、III族窒化物層40を形成する。このようにして、ウエハ150が形成される。高い品質のGaN層30上にIII族窒化物層40を形成することで、III族窒化物層40の品質を高めることができ、発光素子200の性能を高めることができる。
【0069】
III族窒化物層40として、発光層41およびp型層42を形成する。発光層41としては、例えば、InGaN井戸層とGaNバリア層とが交互に積層された多重量子井戸構造を形成する。p型層42としては、例えば、p型AlGaNクラッド層およびp型GaNコンタクト層の積層を形成する。なお、発光層41およびp型層42の構成は、発光素子200から放出させたい光の波長等に応じて、適宜選択されてよい。
【0070】
III族窒化物層40は、組成の異なるIII族窒化物層の積層で構成される。III族窒化物層40を構成する各層は、必要とされる各層の組成に応じ、III族元素として、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)およびインジウム(In)の少なくとも1つを含んでよい。
【0071】
III族窒化物層40の成長方法としては、例えば、MOVPE法が用いられる。Al原料ガスとしては、例えばトリメチルアルミニウム(Al(CH、TMA)ガスが用いられる。Ga原料ガスとしては、例えばトリメチルガリウム(Ga(CH、TMG)ガスが用いられる。In原料ガスとしては、例えばトリメチルインジウム(In(CH、TMI)ガスが用いられる。窒素(N)原料ガスとしては、例えばNHガスが用いられる。p型不純物としては、例えばマグネシウム(Mg)が用いられ、Mg原料ガスとしては、例えばシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)が用いられ、また例えばエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCpMg)ガスが用いられる。これらの原料ガスを、Hガス、Nガス、またはこれらの混合ガスを用いたキャリアガスと混合して供給してもよい。III族窒化物層40を構成する各層の組成、および、添加される不純物に応じて、原料ガスの供給量が適宜調整される。
【0072】
次に、電極形成工程S60において、電極50(n側電極51およびp側電極52)を形成する。なお、電極形成工程S60の一部として、n側電極51を配置するための凹部の形成が行われてよい。以上のようにして、発光素子200が製造される。その後、ウエハ150に形成された多数の発光素子200を、各発光素子200に分割する。また、必要に応じて、サファイア基板10(およびAlN層20)の除去を行う。
【0073】
<実施例>
次に、本発明の実施例に係る実験の結果について説明する。上述の実施形態で説明した方法により、サファイア基板10(以下単に、下地基板ともいう)、AlN層20(以下単に、AlN層ともいう)およびGaN層30(以下単に、GaN層ともいう)を有する積層基板(これを以下、中間ウエハともいう)を作製した。また、上述の実施形態で説明した方法により、中間ウエハのGaN層上に、さらに発光層41(以下単に、発光層ともいう)およびp型層42(以下単に、p型層ともいう)を積層した積層基板150(これを以下、素子用ウエハともいう)を作製し、また電極を形成することで、発光素子を作製した。
【0074】
中間ウエハに対し、GaN層の厚さを変化させることで、GaN層の結晶性、GaN層の表面平坦性、GaN層の膜厚の面内均一性、GaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内均一性、および、中間ウエハの反りが、それぞれ、どのように変化するか調べた。
【0075】
また、素子用ウエハに形成した発光素子に対し、GaN層の厚さを変化させることで、発光出力の面内均一性、発光波長の面内均一性、駆動電圧の面内均一性、逆方向リーク電流抑制効果の面内均一性、および、総合歩留が、それぞれ、どのように変化するか調べた。
【0076】
サファイア基板としては、直径4インチで厚さ900μmのC面サファイア基板を用いた。AlN層の厚さは、0.35μmとした。GaN層には、(全厚さにわたり、)n型不純物として、Siを3×1018cm-3の濃度で添加した。GaN層の厚さは、0.4μm、0.6μm、0.8μm、1μm、1.2μm、1.5μm、2μm、3μm、5μm、7μm、9μm、および、10μmと変化させた。
【0077】
発光層としては、設計値の発光波長(以下、基準となる発光波長ともいう)が445nmとなるように、厚さ3nmのInGaN井戸層と、厚さ12nmのGaNバリア層と、が6周期交互に積層された多重量子井戸構造を形成した。p型層としては、厚さ30nmのp型AlGaNクラッド層および厚さ300nmのp型GaNコンタクト層の積層を形成した。
【0078】
素子用ウエハの全面に多数の発光素子を形成し、各発光素子に分割することで、素子用ウエハから発光素子を取得した。1つ当たりの発光素子のサイズは、100μm角とした。以下、発光素子を、単に、素子ともいう。各素子における、設計値の駆動電流(以下、基準となる駆動電流ともいう)は、20mAとし、設計値の駆動電圧(以下、基準となる駆動電圧ともいう)は、3.3Vとし、設計値の発光出力(以下、基準となる発光出力ともいう)は、10mWとした。
【0079】
各素子間は20μmの間隔をあけており、この部分で各素子を分離する。また、素子用ウエハの外周から2mm以内の領域は、成長の不均一性、リソグラフィープロセスの不均一性等の影響で、LED特性が仕様を満たさないため、評価から除外した。4インチウエハからは、約50万個の素子を取得できる。1枚の素子用ウエハから取得した全てのLEDに対して、以下のような測定を行った。
【0080】
各素子の特性として、発光出力、発光波長、駆動電圧、および、逆方向リーク電流を測定した。これらの特性のそれぞれについて、各素子が、所定の条件を満たすかどうか調べた。また、総合歩留として、各素子が、これらの特性のすべてについて所定の条件を満たすかどうか調べた。各素子用ウエハに対し、発光出力、発光波長、駆動電圧、逆方向リーク電流、および、総合歩留のそれぞれについて、所定の条件を満たす素子の個数の、当該素子用ウエハから取得される素子の全体の個数に対する比率を、面内均一性として評価した。
【0081】
また、比較例に係る実験も行った。比較例では、サファイア基板上に一般的な低温成長GaNバッファ層を形成する方法を採用した。具体的には、サファイア基板をMOVPE装置に導入し、装置内を窒素ガスに置換後、基板温度を1100℃として水素雰囲気中で10分間の表面クリーニングを実施する。次に、基板温度を550℃の低温とし、装置内にTMGとアンモニアを導入して、GaNバッファ層を30nm成長する。その後、アンモニアを流しつつ基板温度を1050℃とし、実施例と同様なGaN層30を成長した。比較例でのGaN層30の成長温度が実施例よりも高いのは、比較例の方法では、十分な品質のGaN層30を得難いためである。なお、比較例では、GaN層の厚さが1.5μm未満において、LEDとして十分に機能する素子を取得できなかった。
【0082】
以下、実験結果について、より詳しく説明する。後述のように、素子の総合歩留を高める観点から、GaN層の厚さは7μm以下が好ましい。このため、実施例について、GaN層の厚さが7μm以下の範囲に着目して説明する。
【0083】
(GaN層の結晶性)
図5は、実施例によるGaN層の結晶性を示すグラフであり、図15は、比較例によるGaN層の結晶性を示すグラフである。結晶性として、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅、および、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅を測定した。図5および図15において、横軸がGaN層の厚さを示し、縦軸がX線回折の半値幅を示す。
【0084】
実施例および比較例のどちらとも、GaN層が厚くなるほどX線回折の半値幅が小さくなる傾向を有すること、つまり、GaN層が厚くなるほど結晶性が良くなる傾向を有することは、同様である、しかし、比較例(図15)では、GaN層が10μmまで厚くなっても、(0002)面の半値幅が190秒と200秒程度までしか下がっておらず(10-12)面の半値幅が290秒と300秒程度までしか下がっていない。
【0085】
これに対し、実施例(図5)では、GaN層の厚さが0.8μmと薄くても、(0002)面の半値幅が95秒と100秒以下となっており、(10-12)面の半値幅が190秒と200秒以下となっている。実施例では、GaN層の厚さを0.8μm以上とすることで、GaN層の厚さが7μm以下であっても、(0002)面の半値幅を100秒以下とし、(10-12)面の半値幅を200秒以下とすることができる。実施例では、さらに、GaN層が7μmまで厚くなると、(0002)面の半値幅が63秒と60秒程度まで下がっており、(10-12)面の半値幅が112秒と110秒程度まで下がっている。
【0086】
なお、実施例によるGaN層の厚さが7μm以下の範囲内の測定値として、(0002)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ3μmにおける55秒であり、(10-12)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ7μmにおける112秒である。当該厚さ範囲内において、(0002)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば50秒が挙げられる。また、(10-12)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば105秒が挙げられる。
【0087】
実施例によるGaN層の結晶性は、GaN層が1.5μm程度に厚くなるまでに大きく向上する傾向が見られる。GaN層の厚さが1μmにおいて、(0002)面の半値幅が76秒と80秒以下となっており、(10-12)面の半値幅が175秒と180秒以下となっている。GaN層の厚さを1μm以上とすることで、(0002)面の半値幅を80秒以下とし、(10-12)面の半値幅を180秒以下とすることができる。また、GaN層の厚さが1.5μmにおいて、(0002)面の半値幅が68秒と70秒以下となっており、(10-12)面の半値幅が160秒と170秒以下となっている。GaN層の厚さを1.5μm以上とすることで、(0002)面の半値幅を70秒以下とし、(10-12)面の半値幅を170秒以下とすることができる。
【0088】
実施例によるGaN層は、不純物が添加されていても(不純物が、例えば全厚さにわたって、例えば1×1016cm-3以上、また例えば1×1017cm-3以上、また例えば1×1018cm-3以上の濃度で添加されていても)、上述のような高い結晶性を示す。このため、不純物が添加されていない場合は、これと同等かそれ以上の高い結晶性を示すものといえる。なお、結晶性の低下を抑制するために、GaN層に添加される不純物の濃度は、例えば1×1019cm-3以下とすることが好ましい。
【0089】
(GaN層の表面平坦性)
図6は、実施例によるGaN層の表面平坦性を示すグラフであり、図16は、比較例によるGaN層の表面平坦性を示すグラフである。表面平坦性として、GaN層の表面の5μm角領域に対し、AFM測定により表面粗さのrms値(以下単に、rmsともいう)を求めた。図6および図16において、横軸がGaN層の厚さを示し、縦軸がrmsを示す。
【0090】
実施例および比較例のどちらとも、GaN層がある程度の厚さになるまでに急激にrmsが減少し、それ以上の厚さではrmsがほぼ一定となる傾向が見られる。比較例(図16)では、GaN層の厚さが2μm以上ではrmsを0.5nm以下にできるものの、GaN層の厚さが1.5μmではrmsが3.1nmであり、GaN層の厚さが0.8μmではrmsが92nmである。
【0091】
これに対し、実施例(図6)では、GaN層の厚さが0.8μmではrmsが0.33nmであり、GaN層の厚さを0.8μm以上とすることで、rmsを好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.4nm以下とすることができる。GaN層の厚さが0.6μmではrmsが3nmであり、GaN層の厚さが0.4μmではrmsが10nmである。
【0092】
なお、実施例によるGaN層の厚さが7μm以下の範囲内の測定値として、rmsの最小値は、GaN層の厚さ1.2μmにおける0.21nmである。rmsの最小値の水準の目安として、例えば0.2nmが挙げられる。
【0093】
以上のように、実施例によるGaN層は、比較例によるGaN層と比べて、高い結晶性および高い表面平坦性を有するため、III族窒化物層を成長させるための下地層として好ましく用いることができる。
【0094】
(GaN層の膜厚の面内均一性)
図7は、実施例によるGaN層の厚さの面内ばらつきを示すグラフである。図7において、横軸がGaN層の厚さを示し、縦軸が厚さの面内ばらつきを示す。厚さの面内ばらつきは、GaN層が薄くなるほど小さくなる傾向を有する。GaN層の厚さを7μm以下とすることで、厚さの面内ばらつきを好ましくは3.5%以下、より好ましくは3%以下とすることができる。
【0095】
なお、実施例によるGaN層の厚さが7μm以下の範囲内の測定値として、GaN層の厚さの面内ばらつきの最小値は、GaN層の厚さ1μmにおける0.5%である。GaN層の厚さの面内ばらつきの最小値の水準の目安として、例えば0.5%が挙げられ、また例えば0.4%が挙げられる。
【0096】
(GaN層の不純物濃度の面内均一性)
図8は、実施例によるGaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきを示すグラフである。本実施例では、GaN層に不純物としてn型不純物を添加しており、GaN層におけるn型キャリア濃度の面内ばらつきを測定している。GaN層におけるn型キャリア濃度の面内ばらつきは、GaN層におけるn型不純物濃度の面内ばらつきと解釈することもできる。図8において、横軸がGaN層の厚さを示し、縦軸がn型キャリア濃度のばらつき、つまり、n型不純物濃度の面内ばらつきを示す。不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきは、GaN層が薄くなるほど小さくなる傾向を有する。GaN層の厚さを7μm以下とすることで、不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきを好ましくは3.5%以下、より好ましくは3%以下とすることができる。
【0097】
なお、実施例によるGaN層の厚さが7μm以下の範囲内の測定値として、不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきの最小値は、GaN層の厚さ1.2μmにおける0.54%である。GaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきの最小値の水準の目安として、例えば0.5%が挙げられ、また例えば0.4%が挙げられる。
【0098】
(中間ウエハの反り)
図9は、実施例による中間ウエハの反りを示すグラフである。図9において、横軸がGaN層の厚さを示し、縦軸が中間ウエハの反りを示す。中間ウエハの反りは、GaN層が薄くなるほど小さくなる傾向を有する。GaN層の厚さが7μmにおいて、中間ウエハの反りは98μmであり、GaN層の厚さを7μm以下とすることで、中間ウエハの反りを、好ましくは110μm以下、より好ましくは105μm以下とすることができる。
【0099】
素子用ウエハは、中間ウエハに発光層およびp型層が積層されているため、中間ウエハよりも厚くなる。ただし、発光層およびp型層を合わせたIII族窒化物層の厚さを十分に薄くすることで、発光層およびp型層に起因する反りの増大は、抑制することができる。GaN層の厚さを7μm以下とすることで、素子用ウエハの反りについても、好ましくは110μm以下、より好ましくは105μm以下とすることができる。
【0100】
なお、実施例によるGaN層の厚さが7μm以下(および0.8μm以上)の範囲内の測定値として、中間ウエハの反りの最小値は、GaN層の厚さ0.8μmにおける12μmである。中間ウエハ(または素子用ウエハ)の反りの最小値の水準の目安として、例えば10μmが挙げられる。
【0101】
実施例によるGaN層、および、当該GaN層を有する中間ウエハ(または素子用ウエハ)は、さらに、以下のような特徴を有する。GaN層の結晶性は、GaN層が薄くなるほど低下する傾向があるが、一方で、GaN層の厚さの面内ばらつき、GaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつき、および、中間ウエハ(または素子用ウエハ)の反りは、それぞれ、GaN層を薄くするほど低下させることができる(図7図9参照)。
【0102】
例えば、GaN層の厚さを5μm以下とすることで、GaN層の厚さの面内ばらつきを、好ましくは3%以下、より好ましくは2.5%以下とすることができ、GaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきを、好ましくは3%以下、より好ましくは2.5%以下とすることができ、中間ウエハ(または素子用ウエハ)の反りを、好ましくは80μm以下、より好ましくは75μm以下とすることができる。なお、実施例によるGaN層の厚さが5μm以下の範囲内の測定値として、(0002)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ3μmにおける55秒であり、(10-12)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ5μmにおける123秒である。当該厚さ範囲内において、(0002)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば50秒が挙げられる。また、(10-12)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば115秒が挙げられる。
【0103】
また例えば、GaN層の厚さを3μm以下とすることで、GaN層の厚さの面内ばらつきを、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下とすることができ、GaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきを、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下とすることができ、中間ウエハ(または素子用ウエハ)の反りを、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下とすることができる。なお、実施例によるGaN層の厚さが3μm以下の範囲内の測定値として、(0002)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ3μmにおける55秒であり、(10-12)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ2μmにおける143秒である。当該厚さ範囲内において、(0002)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば50秒が挙げられる。また、(10-12)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば135秒が挙げられる。
【0104】
また例えば、GaN層の厚さを2μm以下とすることで、GaN層の厚さの面内ばらつきを、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下とすることができ、GaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきを、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下とすることができ、中間ウエハ(または素子用ウエハ)の反りを、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下とすることができる。なお、実施例によるGaN層の厚さが2μm以下の範囲内の測定値として、(0002)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ2μmにおける62秒であり、(10-12)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ2μmにおける143秒である。当該厚さ範囲内において、(0002)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば55秒が挙げられる。また、(10-12)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば135秒が挙げられる。
【0105】
また例えば、GaN層の厚さを1.5μm以下とすることで、GaN層の厚さの面内ばらつきを、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下とすることができ、GaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきを、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下とすることができ、中間ウエハ(または素子用ウエハ)の反りを、好ましくは35μm以下、より好ましくは30μm以下とすることができる。なお、実施例によるGaN層の厚さが1.5μm以下の範囲内の測定値として、(0002)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ1.5μmにおける68秒であり、(10-12)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ1.5μmにおける160秒である。当該厚さ範囲内において、(0002)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば60秒が挙げられる。また、(10-12)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば155秒が挙げられる。
【0106】
また例えば、GaN層の厚さを1.2μm以下とすることで、GaN層の厚さの面内ばらつきを、好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下とすることができ、GaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきを、好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下とすることができ、中間ウエハ(または素子用ウエハ)の反りを、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下とすることができる。なお、実施例によるGaN層の厚さが1.2μm以下の範囲内の測定値として、(0002)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ1.2μmにおける70秒であり、(10-12)面の半値幅の最小値は、GaN層の厚さ1.2μmにおける166秒である。当該厚さ範囲内において、(0002)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば65秒が挙げられる。また、(10-12)面の半値幅の最小値の水準の目安として、例えば160秒が挙げられる。
【0107】
なお、上述の説明で例示した、(0002)面の半値幅の最小値の水準の目安、(10-12)面の半値幅の最小値の水準の目安、rmsの最小値の水準の目安、GaN層の厚さの面内ばらつきの最小値の水準の目安、GaN層における不純物濃度の(キャリア濃度の)面内ばらつきの最小値の水準の目安、および、中間ウエハ(または素子用ウエハ)の反りの最小値の水準の目安は、それぞれ、より小さくできる可能性はある。
【0108】
(発光出力の面内均一性)
図10は、実施例による素子の発光出力の面内均一性を示すグラフであり、図17は、比較例による素子の発光出力の面内均一性を示すグラフである。各素子に対し、基準となる駆動電流(本例では20mA)を印加することで、基準となる発光出力(本例では10mW)が得られるかどうか(つまり、10mW以上の発光出力が得られるかどうか)調べた。そして、このような条件(発光出力の条件)を満たす素子の個数の、素子用ウエハから取得される素子の全体の個数に対する比率を、発光出力の面内均一性として評価した。
【0109】
実施例および比較例のどちらの素子も、GaN層の厚さをある程度以上とすることで、発光出力について、90%以上の高い面内均一性が得られている。しかし、このような高い面内均一性を得るために、比較例ではGaN層の厚さが5μm以上必要であるのに対し、実施例ではGaN層の厚さが0.8μm以上であればよい。実施例では、GaN層の厚さが0.8μmにおいて、発光出力の面内均一性が95%であり、GaN層の厚さを0.8μm以上とすることで、発光出力の面内均一性を好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上とすることができる。なお、実施例における発光出力の面内均一性は、GaN層の厚さ1.2μm、3μmおよび5μmにおいて、100%に達している。
【0110】
(発光波長の面内均一性)
図11は、実施例による素子の発光波長の面内均一性を示すグラフである。各素子に対し、発光ピーク波長が、基準となる発光波長(本例では445nm)に対し±5nmの波長範囲内(本例では440nm以上450nm以下)に含まれるかどうか調べた。そして、このような条件(発光波長の条件)を満たす素子の個数の、素子用ウエハから取得される素子の全体の個数に対する比率を、発光波長の面内均一性として評価した。
【0111】
実施例において、概ね、GaN層の厚さが薄いほど、発光波長の面内均一性が高くなる傾向が見られる。発光波長の面内均一性は、GaN層の厚さが0.8μmにおいて、100%に達しているが、GaN層の厚さが0.8μm未満において、低下する傾向が見られる。GaN層の厚さが7μmにおいて、発光波長の面内均一性が65%であり、GaN層の厚さを7μm以下(および0.8μm以上)とすることで、発光波長の面内均一性を60%以上とすることができる。また、GaN層の厚さが5μmにおいて、発光波長の面内均一性が72%であり、GaN層の厚さを5μm以下(および0.8μm以上)とすることで、発光波長の面内均一性を70%以上とすることができる。また、GaN層の厚さが3μmにおいて、発光波長の面内均一性が80%であり、GaN層の厚さを3μm以下(および0.8μm以上)とすることで、発光波長の面内均一性を80%以上とすることができる。
【0112】
図18は、比較例による素子の発光波長の面内均一性を示すグラフである。比較例においても、概ね、GaN層の厚さが薄いほど、発光波長の面内均一性が高くなる傾向が見られるが、発光波長の面内均一性の最大値は、90%に達していない。なお、比較例では、GaN層の厚さが1.5μm未満の素子は作製できていない。
【0113】
(駆動電圧の面内均一性)
図12は、実施例による素子の駆動電圧の面内均一性を示すグラフである。各素子に対し、基準となる駆動電流(本例では20mA)を生じさせるための駆動電圧が、基準となる駆動電圧(本例では3.3V)に対し±0.1Vの電圧範囲内(本例では3.2V以上3.4V以下)に含まれるかどうか調べた。そして、このような条件(駆動電圧の条件)を満たす素子の個数の、素子用ウエハから取得される素子の全体の個数に対する比率を、駆動電圧の面内均一性として評価した。
【0114】
実施例において、概ね、GaN層の厚さが薄いほど、駆動電圧の面内均一性が高くなる傾向が見られる。駆動電圧の面内均一性は、GaN層の厚さが0.8μmにおいて、99.4%とほぼ100%に達しているが、GaN層の厚さが0.8μm未満において、低下する傾向が見られる。GaN層の厚さが3μmにおいて、駆動電圧の面内均一性が67%であり、GaN層の厚さを3μm以下(および0.8μm以上)とすることで、駆動電圧の面内均一性を60%以上とすることができる。また、GaN層の厚さが2μmにおいて、駆動電圧の面内均一性が71%であり、GaN層の厚さを2μm以下(および0.8μm以上)とすることで、駆動電圧の面内均一性を70%以上とすることができる。また、GaN層の厚さが1.5μmにおいて、駆動電圧の面内均一性が83%であり、GaN層の厚さを1.5μm以下(および0.8μm以上)とすることで、駆動電圧の面内均一性を80%以上とすることができる。
【0115】
図19は、比較例による素子の駆動電圧の面内均一性を示すグラフである。比較例においても、概ね、GaN層の厚さが薄いほど、駆動電圧の面内均一性が高くなる傾向が見られるが、発光波長の面内均一性の最大値は、70%に達していない。なお、比較例では、GaN層の厚さが1.5μm未満の素子は作製できていない。
【0116】
(逆方向リーク電流抑制効果の面内均一性)
図13は、実施例による素子の逆方向リーク電流抑制効果の面内均一性を示すグラフである。各素子に対し、n型層であるGaN層とp型層との間に20Vの逆方向電圧を印加した場合のリーク電流が、1μA以下となるかどうか調べた。そして、このような条件(逆方向リーク電流の条件)を満たす素子の個数の、素子用ウエハから取得される素子の全体の個数に対する比率を、逆方向リーク電流抑制効果(以下、リーク抑制効果ともいう)の面内均一性として評価した。
【0117】
実施例において、概ね、GaN層の厚さが薄いほど、リーク抑制効果の面内均一性が高くなる傾向が見られる。リーク抑制効果の面内均一性は、GaN層の厚さが1.2μmおよび1μmにおいて、100%に達しており、GaN層の厚さが0.8μmにおいても、98%と高いが、GaN層の厚さが0.8μm未満において、顕著に低下する傾向が見られる。GaN層の厚さが5μmにおいて、リーク抑制効果の面内均一性が68%であり、GaN層の厚さを5μm以下(および0.8μm以上)とすることで、リーク抑制効果の面内均一性を60%以上とすることができる。また、GaN層の厚さが3μmにおいて、発光波長の面内均一性が87%であり、GaN層の厚さを3μm以下(および0.8μm以上)とすることで、発光波長の面内均一性を好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上とすることができる。
【0118】
図20は、比較例による素子のリーク抑制効果の面内均一性を示すグラフである。比較例でのリーク抑制効果は、GaN層の厚さが9μmまたは10μmにおいてよりも、GaN層の厚さが7μm、5μmまたは3μmにおいて高い傾向を示すが、GaN層の厚さが3μm未満では低下する傾向が見られ、また、最大でも70%程度である。なお、比較例では、GaN層の厚さが1.5μm未満の素子は作製できていない。
【0119】
(総合歩留)
図14は、実施例による素子の総合歩留を示すグラフである。各素子に対し、上述のような、発光出力の条件、発光波長の条件、駆動電圧の条件、および、逆方向リーク電流の条件のすべてを満たしているかどうか調べた。そして、これらすべての条件(総合歩留の条件)を満たす素子の個数の、素子用ウエハから取得される素子の全体の個数に対する比率を、総合歩留として評価した。
【0120】
実施例において、概ね、GaN層の厚さが薄いほど、総合歩留が高くなる傾向が見られる。総合歩留は、GaN層の厚さが1μmにおいて、98%と100%近くに達しており、GaN層の厚さが0.8μmにおいても、94%と高いが、GaN層の厚さが0.8μm未満において、顕著に低下する傾向が見られる。
【0121】
図21は、比較例による素子の総合歩留を示すグラフである。比較例での総合歩留は、GaN層がどの厚さでも数%に留まっており、最大でも、GaN層の厚さが7μmにおいて、8.2%と10%未満である。なお、比較例では、GaN層の厚さが1.5μm未満の素子は作製できていない。
【0122】
これに対し、実施例では、GaN層の厚さが7μmにおいて、総合歩留が15%であり、GaN層の厚さを7μm以下(および0.8μm以上)とすることで、総合歩留を、比較例よりも高い10%以上とすることができる。また、GaN層の厚さが5μmにおいて、総合歩留が32%であり、GaN層の厚さを5μm以下(および0.8μm以上)とすることで、総合歩留を30%以上とすることができる。また、GaN層の厚さが3μmにおいて、総合歩留が48%と50%近くまで高くでき、GaN層の厚さを3μm以下(および0.8μm以上)とすることで、総合歩留を40%以上とすることができる。
【0123】
さらに、GaN層の厚さが2μmにおいて、総合歩留が56%と50%を超え、GaN層の厚さを2μm以下(および0.8μm以上)とすることで、総合歩留を50%以上とすることができる。また、GaN層の厚さが1.5μmにおいて、総合歩留が72%であり、GaN層の厚さを1.5μm以下(および0.8μm以上)とすることで、総合歩留を70%以上とすることができる。また、GaN層の厚さが1.2μmにおいて、総合歩留が95%であり、GaN層の厚さを1.2μm以下(および0.8μm以上)とすることで、総合歩留を90%以上とすることができる。なお、GaN層の厚さが2μm以下において、総合歩留が顕著に向上する傾向が見られることから、GaN層の厚さを2μm以下(および0.8μm以上)とすることが、総合歩留向上の観点からは、特に好ましいといえる。
【0124】
<他の実施形態>
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行ってもよい。また、種々の実施形態は、適宜組み合わせてよい。
【0125】
上述の実施形態では、AlNテンプレートであるウエハ90を製造した後、ウエハ90上にGaN層30およびIII族窒化物層40を形成することで、ウエハ150を形成する態様を例示した。ウエハ150を製造する態様は、これに限定されない。例えば、サファイア基板10上にAlN層20およびGaN層30までを形成したGaNテンプレートを製造し、当該GaNテンプレート上にIII族窒化物層40を形成することで、ウエハ150を製造してもよい。また例えば、サファイア基板10上に、AlN層20、GaN層30およびIII族窒化物層40を、一連の結晶成長により形成することで、ウエハ150を製造してもよい。
【0126】
上述の実施形態によるウエハ150は、GaN層30が高い品質を有する。GaN層30の品質が高いことにより、III族窒化物層40を構成する発光層41およびp型層42が、様々な態様であっても、ウエハ150を用いて製造される発光素子200の品質向上を図ることができる。より具体的には、例えば、直径2インチ以上のサファイア基板10を用いて製造したウエハ150に、10μm角以上3000μm角(3mm角)以下のサイズの(または、100μm以上9000000μm(9mm)以下の面積の)発光素子200を多数形成する際の、各発光素子200の性能向上を図ることができるとともに、発光素子200の間の性能のばらつきを抑制することができる。
【0127】
1つ分の発光素子200の好ましい特性の目安は、以下のようなものである。発光出力は、例えば10mW以上であることが好ましい。このような条件(発光出力の条件)を満たす発光素子200の個数の、ウエハ150から取得される素子の全体の個数に対する比率(発光出力の面内均一性)を、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上とするために、上述の実施形態によるウエハ150において、GaN層30の厚さを、0.8μm以上とすることが好ましい。
【0128】
発光ピーク波長は、基準となる発光波長(設計値の発光波長)に対し±5nmの波長範囲内に含まれることが好ましい。このような条件(発光波長の条件)を満たす発光素子200の個数の、ウエハ150から取得される素子の全体の個数に対する比率(発光波長の面内均一性)を、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上とするために、上述の実施形態によるウエハ150において、GaN層30の厚さを、(0.8μm以上であって、)7μm以下とすることが好ましく、5μm以下とすることがより好ましく、3μm以下とすることがさらに好ましい。
【0129】
基準となる発光波長は、発光層41の構成により、適宜選択されてよい。基準となる発光波長は、例えば、380nm以上400nm以下の近紫外の範囲内から選択され、また例えば、440nm以上460nm以下の青色の範囲内から選択され、また例えば、520nm以上530nm以下の緑色の範囲内から選択されてよく、これらをまとめると、380nm以上530nm以下の範囲内から選択されてよい。
【0130】
基準となる駆動電流(設計値の駆動電流)を生じさせるための駆動電圧は、素子サイズや波長および各層の構成により変化するが、設計により規定される基準となる駆動電圧(設計値の駆動電圧)に対し±0.1Vの電圧範囲内に含まれることが好ましい。このような条件(駆動電圧の条件)を満たす発光素子200の個数の、ウエハ150から取得される素子の全体の個数に対する比率(駆動電圧の面内均一性)を、例えば60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上とするために、上述の実施形態によるウエハ150において、GaN層30の厚さを、(0.8μm以上であって、)3μm以下とすることが好ましく、2μm以下とすることがより好ましく、1.5μm以下とすることがさらに好ましい。
【0131】
基準となる駆動電流、および、基準となる駆動電圧は、それぞれ、発光素子200の構成により、適宜選択されてよい。基準となる駆動電流は、好ましくは15mA以上25mA以下の範囲内から選択され、典型的には20mAであり、基準となる駆動電圧は、好ましくは3V以上3.5V以下の範囲内から選択され、典型的には3.3Vである。
【0132】
逆方向耐圧に係る特性として、例えば、n型層であるGaN層とp型層との間に20Vの逆方向電圧を印加した場合のリーク電流は、1μA以下となることが好ましい。このような条件(逆方向リーク電流の条件)を満たす発光素子200の個数の、ウエハ150から取得される素子の全体の個数に対する比率(逆方向リーク電流抑制効果の面内均一性)を、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上とするために、上述の実施形態によるウエハ150において、GaN層30の厚さを、(0.8μm以上であって、)5μm以下とすることが好ましく、3μm以下とすることがより好ましい。
【0133】
発光出力の条件、発光波長の条件、駆動電圧の条件、および、逆方向リーク電流の条件のすべてを満たす発光素子200の個数の、ウエハ150から取得される素子の全体の個数に対する比率を、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上とするために、上述の実施形態によるウエハ150において、GaN層30の厚さを、(0.8μm以上であって、)7μm以下とすることが好ましく、5μm以下とすることがより好ましく、3μm以下とすることがさら好ましく、2μm以下とすることがさらに好ましく、1.5μm以下とすることがさらに好ましく、1.2μm以下とすることがさらに好ましい。
【0134】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0135】
(付記1)
(直径2インチ以上の)サファイア基板と、
前記サファイア基板上に形成され、窒化アルミニウムで構成された第1層と、
前記第1層上に形成され、窒化ガリウムで構成されn型不純物が添加されたn型層である第2層と、
前記第2層上に形成され、III族窒化物で構成された発光層である第3層と、
前記第3層上に形成され、III族窒化物で構成されp型不純物が添加されたp型層である第4層と、
を有し、
前記第2層は、厚さが7μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が100秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が200秒以下である、
III族窒化物積層基板。
サファイア基板は、好ましくは、例えば、直径が2インチで厚さが300μm以上500μm以下であり、また例えば、直径が4インチで厚さが600μm以上1000μm以下であり、また例えば、直径が6インチで厚さが1000μm以上1500μm以下である。
【0136】
(付記2)
前記第2層は、厚さが0.8μm以上である、付記1に記載のIII族窒化物積層基板。
【0137】
(付記3)
前記第1層は、厚さが1μm以下である、付記1または2に記載のIII族窒化物積層基板。
【0138】
(付記4)
前記第3層および前記第4層を合わせた層は、厚さが1μm以下である、付記1~3のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0139】
(付記5)
前記第2層の厚さの面内ばらつきが、3.5%以下(より好ましくは3%以下)である、付記1~4のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0140】
(付記6)
前記第2層におけるn型キャリア濃度の(n型不純物濃度の)面内ばらつきが、3.5%以下(より好ましくは3%以下)である、付記1~5のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0141】
(付記7)
前記III族窒化物積層基板の反りが110μm以下(より好ましくは105μm以下)である、付記1~6のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0142】
(付記8)
前記第2層は、厚さが5μm以下である、付記1~7のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0143】
(付記9)
前記第2層の厚さの面内ばらつきが、3%以下(より好ましくは2.5%以下)である、付記8に記載のIII族窒化物積層基板。
【0144】
(付記10)
前記第2層におけるn型キャリア濃度の(n型不純物濃度の)面内ばらつきが、3%以下(より好ましくは2.5%以下)である、付記8または9に記載のIII族窒化物積層基板。
【0145】
(付記11)
前記III族窒化物積層基板の反りが80μm以下(より好ましくは75μm以下)である、付記8~10のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0146】
(付記12)
前記第2層は、厚さが3μm以下である、付記1~11のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0147】
(付記13)
前記第2層の厚さの面内ばらつきが、2.5%以下(より好ましくは2%以下)である、付記12に記載のIII族窒化物積層基板。
【0148】
(付記14)
前記第2層におけるn型キャリア濃度の(n型不純物濃度の)面内ばらつきが、2.5%以下(より好ましくは2%以下)である、付記12または13に記載のIII族窒化物積層基板。
【0149】
(付記15)
前記III族窒化物積層基板の反りが50μm以下(より好ましくは45μm以下)である、付記12~14のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0150】
(付記16)
前記第2層は、厚さが2μm以下である、付記1~15のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0151】
(付記17)
前記第2層の厚さの面内ばらつきが、2%以下(より好ましくは1.5%以下)である、付記16に記載のIII族窒化物積層基板。
【0152】
(付記18)
前記第2層におけるn型キャリア濃度の(n型不純物濃度の)面内ばらつきが、2%以下(より好ましくは1.5%以下)である、付記16または17に記載のIII族窒化物積層基板。
【0153】
(付記19)
前記III族窒化物積層基板の反りが40μm以下(より好ましくは35μm以下)である、付記16~18のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0154】
(付記20)
前記第2層は、厚さが1.5μm以下である、付記1~19のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0155】
(付記21)
前記第2層の厚さの面内ばらつきが、1.5%以下(より好ましくは1%以下)である、付記20に記載のIII族窒化物積層基板。
【0156】
(付記22)
前記第2層におけるn型キャリア濃度の(n型不純物濃度の)面内ばらつきが、1.5%以下(より好ましくは1%以下)である、付記20または21に記載のIII族窒化物積層基板。
【0157】
(付記23)
前記III族窒化物積層基板の反りが35μm以下(より好ましくは30μm以下)である、付記20~22のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0158】
(付記24)
前記第2層は、厚さが1.2μm以下である、付記1~23のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0159】
(付記25)
前記第2層の厚さの面内ばらつきが、1%以下(より好ましくは0.8%以下)である、付記24に記載のIII族窒化物積層基板。
【0160】
(付記26)
前記第2層におけるn型キャリア濃度の(n型不純物濃度の)面内ばらつきが、1%以下(より好ましくは0.8%以下)である、付記24または25に記載のIII族窒化物積層基板。
【0161】
(付記27)
前記III族窒化物積層基板の反りが30μm以下(より好ましくは25μm以下)である、付記24~36のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0162】
(付記28)
前記第2層の厚さが0.8μm以上であり、
前記III族窒化物積層基板から取得される半導体発光素子の全体の個数のうち、10mW以上の発光出力を得ることが可能な前記半導体発光素子の個数の比率が、90%以上(より好ましくは95%以上)となる、付記1~27のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0163】
(付記29)
前記第2層の厚さが7μm以下(より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下)(および0.8μm以上)であり、
前記III族窒化物積層基板から取得される半導体発光素子の全体の個数のうち、発光ピーク波長が、基準となる発光波長に対し±5nmの波長範囲内に含まれる前記半導体発光素子の個数の比率が、60%以上(より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上)となる、付記1~28のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
前記基準となる発光波長は、好ましくは380nm以上530nm以下の範囲内から選択され、典型的には、例えば、380nm以上400nm以下の近紫外の範囲内から選択され、また例えば、440nm以上460nm以下の青色の範囲内から選択され、また例えば、520nm以上530nm以下の緑色の範囲内から選択される。
【0164】
(付記30)
前記第2層の厚さが3μm以下(より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下)(および0.8μm以上)であり、
前記III族窒化物積層基板から取得される半導体発光素子の全体の個数のうち、基準となる駆動電流を生じさせるための駆動電圧が、基準となる駆動電圧に対し±0.1Vの電圧範囲内に含まれる前記半導体発光素子の個数の比率が、60%以上(より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上)となる、付記1~29のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
前記基準となる駆動電流は、好ましくは15mA以上25mA以下の範囲内から選択され、典型的には20mAであり、前記基準となる駆動電圧は、好ましくは3V以上3.5V以下の範囲内から選択され、典型的には3.3Vである。
【0165】
(付記31)
前記第2層の厚さが5μm以下(より好ましくは3μm以下)(および0.8μm以上)であり、
前記III族窒化物積層基板から取得される半導体発光素子の全体の個数のうち、前記第2層と前記第4層との間に20Vの逆方向電圧を印加した場合のリーク電流が、1μA以下となる前記半導体発光素子の個数の比率が、60%以上(より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上)となる、付記1~30のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0166】
(付記32)
前記第2層の厚さが7μm以下(より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.2μm以下)(および0.8μm以上)であり、
前記III族窒化物積層基板から取得される半導体発光素子の全体の個数のうち、
10mW以上の発光出力が得られ、かつ、
発光ピーク波長が、基準となる発光波長に対し±5nmの波長範囲内に含まれ、かつ、
基準となる駆動電流を生じさせるための駆動電圧が、基準となる駆動電圧に対し±0.1Vの電圧範囲内に含まれ、かつ、
前記第2層と前記第4層との間に20Vの逆方向電圧を印加した場合のリーク電流が、1μA以下となる、
前記半導体発光素子の個数の比率が、10%以上(より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上)となる、付記1~31のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0167】
(付記33)
前記半導体発光素子の各々の平面視上のサイズは、10μm角以上3000μm角(3mm角)以下(好ましくは100μm角以下)である、または、前記半導体発光素子の各々の平面視上の面積は、100μm以上9000000μm(9mm)以下(好ましくは10000μm以下)である、付記1~32のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板。
【0168】
(付記34)
付記1~33のいずれか1つに記載のIII族窒化物積層基板が有する前記第2層を、n型層として備える、半導体発光素子。
【0169】
(付記35)
(直径2インチ以上の)サファイア基板と、
前記サファイア基板上に形成され、窒化アルミニウムで構成された第1層と、
を有し、
前記第1層は、窒化ガリウムで構成され、厚さが7μm以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(0002)回折の半値幅が100秒以下であり、X線ロッキングカーブ測定による(10-12)回折の半値幅が200秒以下である、第2層を成長させる下地として用いられる表面を有する、III族窒化物積層基板。好ましくは、付記2~26のいずれか1つに記載の第2層を成長させる下地として用いられる表面を有する。
【符号の説明】
【0170】
10…下地基板、11…(下地基板の)主面、20…AlN層、21…(AlN層の)表面、30…GaN層、31…(GaN層の)表面、40…III族窒化物層、41…発光層、42…p型層、50…電極、51…n側電極、52…p側電極、60…動作層、90…III族窒化物積層基板、100…III族窒化物積層基板、150…III族窒化物積層基板、200…半導体発光素子、210…回路基板、220…バンプ
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