(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】空気液化分離装置
(51)【国際特許分類】
F25J 3/04 20060101AFI20240521BHJP
C01B 23/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F25J3/04 104
F25J3/04 101
C01B23/00 G
(21)【出願番号】P 2020064974
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 博志
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-299930(JP,A)
【文献】特開2004-251569(JP,A)
【文献】特許第6257656(JP,B2)
【文献】特開2016-008778(JP,A)
【文献】特表平01-503481(JP,A)
【文献】特開平05-280863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00- 5/00
C01B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気の低温蒸留によって、少なくとも酸素とアルゴンに分離する空気液化分離装置であって、
前記空気液化分離装置は少なくとも高圧塔、低圧塔、アルゴン塔及び第2凝縮器から構成され、
前記低圧塔が少なくとも第1低圧塔と第2低圧塔とに分割され、
前記第2凝縮器が、前記アルゴン塔の頂部よりも鉛直方向の上方に位置し、
前記高圧塔の底部が、前記アルゴン塔の底部よりも鉛直方向の上方に位置する、空気液化分離装置。
【請求項2】
前記高圧塔の底部が、前記第1低圧塔の頂部よりも鉛直方向において上方に位置する、請求項1に記載の空気液化分離装置。
【請求項3】
前記アルゴン塔の底部と前記第1低圧塔の下部との間に位置する第2経路と、
前記第1低圧塔の底部と前記第2低圧塔の上部との間に位置する第3経路と、
前記第3経路に位置する液化酸素ポンプと、をさらに備える、請求項1又は2に記載の空気液化分離装置。
【請求項4】
前記第1低圧塔の底部と前記アルゴン塔の下部との間に位置する第4経路と、
前記アルゴン塔の底部と前記第2低圧塔の上部との間に位置する第5経路と、
前記第5経路に位置する液化酸素ポンプと、をさらに備える、請求項1又は2に記載の空気液化分離装置。
【請求項5】
前記第1低圧塔の底部と前記第2低圧塔の上部との間に位置する第3経路と、
前記第3経路に位置する液化酸素ポンプと、前記第3経路の前記液化酸素ポンプと前記第1低圧塔の底部との間に位置する点と前記アルゴン塔の底部との間に位置する第6経路と、をさらに備える、請求項1又は2に記載の空気液化分離装置。
【請求項6】
前記第2低圧塔の頂部と前記第1低圧塔の下部との間に位置する第7経路と、
前記第1低圧塔の下部と前記アルゴン塔の下部との間に位置する第8経路と、をさらに備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の空気液化分離装置。
【請求項7】
前記第2低圧塔の頂部と前記アルゴン塔の下部との間に位置する第9経路と、
前記アルゴン塔の下部と前記第1低圧塔の下部との間に位置する第10経路と、をさらに備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の空気液化分離装置。
【請求項8】
前記第2低圧塔の頂部と前記第1低圧塔の下部との間に位置する第7経路と、
前記第7経路の分岐点と前記アルゴン塔の下部との間に位置する第11経路と、をさらに備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の空気液化分離装置。
【請求項9】
前記アルゴン塔が、塔内に複数の規則充填物が積層された充填塔である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の空気液化分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気液化分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧塔、低圧塔、及びアルゴン塔等の精留塔より構成され、空気を低温蒸留により分離する空気液化分離装置(以後、単に空気液化分離装置という)では、いずれかの精留塔を鉛直方向において上下に分割する技術が知られている。
例えば、特許文献1の
図3には、低圧塔とアルゴン塔とをそれぞれ分割し、各精留塔の塔頂部の位置レベル(鉛直方向の高さ)を揃えることでコールドボックスをコンパクトにする技術が開示されている。また、特許文献2には、低圧塔を第1低圧塔と第2低圧塔とに分割し、輸送制限を受けにくくする技術が開示されている。
【0003】
ところで、空気液化分離装置では高圧塔から低圧塔への液化ガスの移送に両塔の圧力差を利用しているため、低圧塔と高圧塔との液ヘッド差次第で低圧塔の高さが制限を受ける場合がある。しかしながら、特許文献2に開示された技術によれば、第2低圧塔を主凝縮器の上部に設けて第1低圧塔と並設し、第1低圧塔の位置レベルを下げることにより、この制限を緩和できる。
また、特許文献2によれば、負荷変動や外乱などにより精留塔内の流量バランスが一時的に乱れた場合、アルゴン塔の塔底部に液化ガスが溜められているため、流量バランスの乱れの影響を抑制できる。
さらに、特許文献2によれば、アルゴン塔をグランドレベルに配置できるため、アルゴン凝縮器の位置レベルを下げてコールドボックスの高さを低くできる。
【0004】
また、特許文献3には、低圧塔とアルゴン塔とをそれぞれ2分割し、特許文献2と同様の効果が得られること、及びアルゴン凝縮器の位置レベルを更に低くできることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6272883号明細書
【文献】特開2004-251569号公報
【文献】特許第6257656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の空気液化分離装置では、低圧塔とアルゴン塔とがそれぞれ分割されており、液化ガスポンプがそれぞれに必要となるため、装置全体のコストが増加する。
【0007】
また、特許文献2に記載の空気液化分離装置では、要求される製品仕様の制約によりアルゴン塔の鉛直方向の高さが必要となる場合、アルゴン凝縮器の設置位置が高くなり、高圧塔の塔底部から圧力差により移送する酸素富化液化空気を供給できなくなる。また、酸素富化液化空気を移送する経路に少量の空気または酸素富化空気(アシストガス)を供給して揚液を補助する方法も考えられるが、製品回収率の低下を伴う。
【0008】
特許文献3に記載の空気液化分離装置では、低圧塔を分割することによりアルゴン塔をグランドレベルに配置でき、且つアルゴン塔を分割することによりアルゴン凝縮器の設置位置を低くできるが、低圧塔を分割することにより必要となる液化酸素ポンプに加えて、別途液化アルゴンポンプが必要となるため、装置全体のコストが増加する。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、アルゴン塔が鉛直方向に高くなった場合でも、アルゴン塔を分割することなく、アルゴン凝縮器に液化ガスを供給する経路に液化ガスポンプの追加やアシストガスの供給が不要、又はアシストガス流量を従来よりも低減する空気液化分離装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の構成を有する。
[1] 原料空気の低温蒸留によって、少なくとも酸素とアルゴンに分離する空気液化分離装置であって、
前記空気液化分離装置は少なくとも高圧塔、低圧塔、アルゴン塔及び第2凝縮器から構成され、
前記低圧塔が少なくとも第1低圧塔と第2低圧塔とに分割され、
前記第2凝縮器が、前記アルゴン塔の頂部よりも鉛直方向の上方に位置し、
前記高圧塔の底部が、前記アルゴン塔の底部よりも鉛直方向の上方に位置する、空気液化分離装置。
[2] 前記高圧塔の底部が、前記第1低圧塔の頂部よりも鉛直方向において上方に位置する、前項[1]に記載の空気液化分離装置。
[3] 前記アルゴン塔の底部と前記第1低圧塔の下部との間に位置する第2経路と、
前記第1低圧塔の底部と前記第2低圧塔の上部との間に位置する第3経路と、
前記第3経路に位置する液化酸素ポンプと、をさらに備える、前項[1]又は[2]に記載の空気液化分離装置。
[4] 前記第1低圧塔の底部と前記アルゴン塔の下部との間に位置する第4経路と、
前記アルゴン塔の底部と前記第2低圧塔の上部との間に位置する第5経路と、
前記第5経路に位置する液化酸素ポンプと、をさらに備える、前項[1]又は[2]に記載の空気液化分離装置。
[5] 前記第1低圧塔の底部と前記第2低圧塔の上部との間に位置する第3経路と、
前記第3経路に位置する液化酸素ポンプと、前記第3経路の前記液化酸素ポンプと前記第1低圧塔の底部との間に位置する点と前記アルゴン塔の底部との間に位置する第6経路と、をさらに備える、前項[1]又は[2]に記載の空気液化分離装置。
[6] 前記第2低圧塔の頂部と前記第1低圧塔の下部との間に位置する第7経路と、
前記第1低圧塔の下部と前記アルゴン塔の下部との間に位置する第8経路と、をさらに備える、前項[1]乃至[5]のいずれかに記載の空気液化分離装置。
[7] 前記第2低圧塔の頂部と前記アルゴン塔の下部との間に位置する第9経路と、
前記アルゴン塔の下部と前記第1低圧塔の下部との間に位置する第10経路と、をさらに備える、前項[1]乃至[5]のいずれかに記載の空気液化分離装置。
[8] 前記第2低圧塔の頂部と前記第1低圧塔の下部との間に位置する第7経路と、
前記第7経路の分岐点と前記アルゴン塔の下部との間に位置する第11経路と、をさらに備える、前項[1]乃至[5]のいずれかに記載の空気液化分離装置。
[9] 前記アルゴン塔が、塔内に複数の規則充填物が積層された充填塔である、前項[1]乃至[8]のいずれかに記載の空気液化分離装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空気液化分離装置は、アルゴン塔が鉛直方向に高くなった場合でも、アルゴン塔を分割することなく、アルゴン塔頂に設置するアルゴン凝縮器(第2凝縮器)に液化ガスを供給する経路に液化ガスポンプの追加が不要、又はアシストガス流量を従来よりも低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態の空気液化分離装置の構成を示す系統図である。
【
図2】本発明の第2実施形態の空気液化分離装置の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態である空気液化分離装置の構成について、それを用いた空気分離方法と併せて、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、各構成要素のレイアウトは実際と異なる場合がある。
【0014】
本発明において、「経路」とは、内側の空間に流体を流通可能な流路(ライン)をいう。経路には、供給経路、導入経路、導出経路、排出経路、回収経路等が含まれる。経路には、1以上の分岐や合流が含まれていてもよい。
また、経路を流れる流体は、1成分からなる気体(ガス)、2成分以上からなる混合気体(ガス)、1成分からなる液体、2成分以上からなる混合液体、及びこれらの混合流体を含む。
バルブは、開閉バルブ、減圧バルブ、流量調整バルブ等を含む。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の空気液化分離装置の構成の一例を示す系統図である。
図1に示すように、第1実施形態の空気液化分離装置50は、空気圧縮機1、空気予冷器2、空気精製器3、主熱交換器4、高圧塔5、第1低圧塔6A、第2低圧塔6B、アルゴン塔7、第1凝縮器8、第2凝縮器9、第2凝縮器の凝縮側9A、第2凝縮器の蒸発側9B、過冷器10、液化酸素ポンプ11、膨張タービン12、経路L1~L18,L23~L25、及びバルブV1~V5、を備える。
【0016】
本実施形態の空気液化分離装置50は、低圧塔が鉛直方向上下に二分割されており、第1低圧塔6Aと第2低圧塔6Bとを有する。第1低圧塔6Aと第2低圧塔6Bとは、低圧液化ガスが流れる経路L13と低圧ガスが流れる経路L14とにより接続されている。
【0017】
空気圧縮機1によって所定の圧力まで圧縮された原料空気は、空気予冷器2に供給される。
【0018】
圧縮された原料空気は、空気予冷器2において圧縮熱が取り除かれ、空気精製器3に供給される。
【0019】
空気精製器3に導入された、原料空気は、原料空気中に含まれる不純物(水、二酸化炭素等)が除去される。空気精製器3には、不純物を吸着除去するための吸着剤等が充填されている。
空気精製器3によって不純物が除去された原料空気は、経路L1によって主熱交換器4に供給される。
【0020】
主熱交換器4では、経路L1を流れる原料空気と、後述する様に、経路L8,L15、L25を流れる低圧窒素ガス、酸素ガス、廃窒素ガスと、が間接的に熱交換することで、原料空気が冷却され、低圧窒素ガス、酸素ガス、廃窒素ガスが加温される。
【0021】
経路L1によって主熱交換器4に導入された原料空気の一部は、主熱交換器4の中間で経路L17によって導出され、膨張タービン12に導入される。
【0022】
膨張タービン12に導入された原料空気は、膨張タービン12において断熱膨張し、空気液化分離装置50の運転に必要な寒冷を発生させる。膨張タービン12によって断熱膨張した原料空気は、経路L17を介して、第1低圧塔6Aの中間部に供給される。
【0023】
高圧塔5は、第1低圧塔6Aの上方、第2低圧塔6B及び第1凝縮器8の下方に位置する。
【0024】
高圧塔5は、経路L1から供給される原料空気を低温で蒸留して、窒素ガスと酸素富化液化空気とに分離する。この低温での蒸留により、高圧塔5の上部には窒素ガスが濃縮され、高圧塔5の下部には酸素富化液化空気が濃縮される。
【0025】
高圧塔5の上部の窒素ガスは経路L2から抜き出され、第2低圧塔6Bの塔底部に設置された第1凝縮器8に導入される。第1凝縮器8に導入された窒素ガスは、後述する第2低圧塔6Bの塔底部の液体酸素との熱交換によって液化され、液化窒素となる。液化窒素の一部は経路L3に導入し、残部が経路L2から高圧塔5上部に導入され、高圧塔5内の下降液となる。
【0026】
第2低圧塔6Bの底部に貯留されている液化酸素は、第1凝縮器8において、経路L2から供給される窒素ガスとの熱交換によって、気化して酸素ガスを生成する。
【0027】
経路L3に分岐した液化窒素は、過冷器10で冷却され、バルブV1によって減圧され、第1低圧塔6Aに供給される。
【0028】
経路L3の液化窒素の一部は、経路L4に分岐され、製品液化窒素(LN2)として回収される。
【0029】
高圧塔5の底部(塔底部)に分離された酸素富化液化空気は、L5(第1経路)に導出され、過冷器10に導入され、経路L8に導出される低圧窒素ガス、経路L25に導出される廃窒素ガスによって冷却され、バルブV2で減圧され、第2凝縮器の蒸発側9Bに供給され、貯留される。
【0030】
ところで、本実施形態の空気液化分離装置50では、高圧塔5の底部が、鉛直方向においてアルゴン塔7の底部よりも上方に位置しており、且つ第1低圧塔6Aの頂部よりも上方に位置している。具体的には、
図1に示すように、高圧塔5の底部が、鉛直方向においてアルゴン塔7の頂部寄りに位置するように(換言すると、高さ方向の距離が近接するように)、高圧塔5とアルゴン塔7とが配置されている。これにより、アルゴン塔が鉛直方向に高くなった場合でも、アルゴン塔7を分割することなく、且つ高圧塔5と第2凝縮器の蒸発側9Bとの間に位置する経路L5に、液化ガスポンプの追加や、アシストガスの供給をすることなく、または、アシストガスの供給量を削減して高圧塔5の底部から第2凝縮器の蒸発側9Bに酸素富化液化空気を供給できる。
【0031】
経路L5によって導出され、過冷器10で冷却された酸素富化液化空気の一部は、経路L18で分岐され、バルブV5で減圧された後に第1低圧塔6Aに供給される。なお、第1経路は高圧塔の底部から数段上(例えば理論段で10段以内、好ましくは5段以内)に接続される場合もあり、併せて高圧塔塔底部からも酸素富化液化空気を抜き出し、L18からバルブV5で第1低圧塔6Aに供給される場合もある。
【0032】
第2凝縮器9は、アルゴン塔7の塔頂部に位置する。すなわち、第2凝縮器9は、アルゴン塔7よりも上方に設置されている。第2凝縮器9は凝縮側9Aと蒸発側9Bにより構成され、凝縮側9Aは、蒸発側9Bの内側に収容されている。
【0033】
アルゴン塔7の塔頂部から経路L10で抜き出されたアルゴンガスは、第2凝縮器の凝縮側9Aに導入される。アルゴンガスは、L5(第1経路)によって第2凝縮器の蒸発側9Bに導入された酸素富化液化空気との間接熱交換によって液化され液化アルゴンとして経路L10によってアルゴン塔7の塔頂部に導入される。一方、第2凝縮器の蒸発側9Bに貯留された酸素富化液化空気は、アルゴンガスとの間接熱交換によって気化し、酸素富化空気となる。
【0034】
酸素富化空気は経路L6から抜き出されて、バルブV3を経由し、第1低圧塔6Aの中間部に供給される。
【0035】
第2凝縮器の蒸発側9Bに貯液された酸素富化液化空気の一部は経路L7に抜き出され、バルブV4を通して第1低圧塔6Aに供給される。
【0036】
第1低圧塔6Aは、高圧塔5の下方に位置する。すなわち、第1低圧塔6Aの頂部は、高圧塔5の底部よりも鉛直方向において下方に位置する。
【0037】
第1低圧塔6Aは、経路L3から供給される流体と、経路L6から供給される流体と、経路L7から供給される流体と、経路L14から供給される流体と、経路L17から供給される流体と、経路L18から供給される流体を低温で蒸留して、低圧窒素ガスとアルゴン富化酸素ガスとアルゴン富化液化酸素と廃窒素ガスとに分離する。この低温での蒸留により、第1低圧塔6Aの上部には低圧窒素ガスが濃縮され、第1低圧塔6Aの下部にはアルゴン富化酸素ガスが濃縮され、第1低圧塔6Aの底部(塔底部)にはアルゴン富化液化酸素が濃縮される。
【0038】
低圧窒素ガスは、第1低圧塔6Aの頂部(塔頂部)から経路L8によって抜き出され、過冷器10及び主熱交換器4によって熱回収された後、製品窒素ガス(GN2)として回収される。廃窒素ガスは、第1低圧塔6Aの中間部から経路L25によって抜き出され、過冷器10及び主熱交換器4によって熱回収された後、廃窒素ガス(GWN2)として回収される。
【0039】
第1低圧塔6Aの下部に濃縮するアルゴン富化酸素ガスは、経路L9(第8経路)から抜き出されて、アルゴン塔7の下部に供給される。
【0040】
第1低圧塔6Aの底部のアルゴン富化液化酸素は、経路L13から抜き出され、液化酸素ポンプ11によって加圧され、第2低圧塔6Bの上部に供給される。
【0041】
アルゴン塔7は、経路L9を介して供給されるアルゴン富化酸素ガスを低温で蒸留して、アルゴンガスとアルゴン富化液化酸素とに分離する。この低温での蒸留により、アルゴン塔7の上部には、アルゴンガスが濃縮され、アルゴン塔7の下部にはアルゴン富化液化酸素が濃縮される。
【0042】
本実施形態の空気液化分離装置50では、アルゴン塔7は、塔内に複数の規則充填物が積層された充填塔(精留塔)であることが好ましい。
本実施形態の空気液化分離装置50では、アルゴン塔7が分割されていないことが好ましい。これにより、追加の液化ガスポンプの設置が不要となり、設置コスト低減に有利である。
本実施形態の空気液化分離装置50では、アルゴン塔7の底部がグランドレベルに配置されることが好ましい。これにより、アルゴン塔7の頂部に位置する第2凝縮器9の鉛直方向の高さを下げてコールドボックスの高さを低くできる。
【0043】
経路L10の液化アルゴンの一部は経路L11に分岐して、製品液化アルゴン(LAR)として回収される。
【0044】
アルゴン塔7の下部に貯留されるアルゴン富化液化酸素は、経路L12(第2経路)から抜き出され、第1低圧塔6Aの下部に供給される。
【0045】
本実施形態の空気液化分離装置50では、第1低圧塔6Aの底部は、鉛直方向においてアルゴン塔7の底部寄りに位置する。すなわち、第1低圧塔6Aの底部とアルゴン塔7の底部とは、鉛直方向においてほぼ同じ高さである(厳密にはアルゴン塔7の底部から第1低圧塔6Aの底部に液化ガス流体が流れるようにアルゴン塔7の底部のほうがやや上方に位置する)。これにより、アルゴン塔7の底部から第1低圧塔6Aの下部にアルゴン富化液化酸素を供給する際、経路L12に液化酸素ポンプの設置が不要となる。
【0046】
また、
図1中に破線で示すように、経路L12の代わりに、経路L23(第6経路)がアルゴン塔7と経路L13との間に位置する場合もある。経路L23の一端は、アルゴン塔7の底部(塔底部)と接続されている。アルゴン塔7の下部に貯留されるアルゴン富化液化酸素が経路L23によって抜き出され、経路L13を流れる流体と合流して液化酸素ポンプ11に供給される。この場合においても、第1低圧塔6Aの底部とアルゴン塔7の底部とを、鉛直方向においてほぼ同じ高さとすることができ、アルゴン塔7の下部に貯留されるアルゴン富化液化酸素と第1低圧塔6Aの下部に貯留されるアルゴン富化液化酸素の両方を、液化酸素ポンプ11で揚液して第2低圧塔6Bの上部に供給することができる。
【0047】
第2低圧塔6Bは、高圧塔5の上方に位置する。
第2低圧塔6Bは、経路L13から供給される流体を低温で蒸留して、アルゴン富化酸素ガスと酸素ガスと液化酸素とに分離する。この低温での蒸留により、第2低圧塔6Bの上部にはアルゴン富化酸素ガスが濃縮され、第2低圧塔6Bの下部には酸素ガスが濃縮され、第2低圧塔6Bの底部(塔底部)には液化酸素が濃縮される。
【0048】
第2低圧塔6Bの頂部のアルゴン富化酸素ガスは、経路L14(第7経路)から抜き出され、第1低圧塔6Aの下部に供給される。
【0049】
また、図中に破線で示すように、経路L14を流れるアルゴン富化酸素ガスの一部を経路L24(第11経路)に分岐して、アルゴン塔7の下部に供給する事ができる。
【0050】
第2低圧塔6Bの下部に濃縮された酸素ガスは経路L15から抜き出され、主熱交換器4によって熱回収された後、製品酸素ガス(GO2)として回収される。
【0051】
第2低圧塔6Bの底部(塔底部)に濃縮された液化酸素は、経路L16から抜き出され製品液化酸素(LO2)として回収される。
【0052】
過冷器10は、経路L3,L5,L8,L25に亘るように配置されている。過冷器10には、経路L3,L5,L8,L25がそれぞれ通過する。過冷器10では、経路L8、L25を流れる低温流体と、経路L3,L5を流れる高温流体と、が間接的に熱交換することで、低温流体が加温され、各高温流体が冷却される。なお、過冷器10における低温流体と高温流体との組み合わせは、これらに限定されない。
【0053】
第2低圧塔6B及び高圧塔5は、
図1に示すように、第1低圧塔6Aの上方に配置されている。これにより、本実施形態の空気液化分離装置50は、設置面積(フットプリント)を小さくできる。
また、本実施形態の空気液化分離装置50は、低圧塔が鉛直方向において第1低圧塔6Aと第2低圧塔6Bとに二分割されており、第1低圧塔6Aが高圧塔5の下方に位置するため、高圧塔5から第1低圧塔6Aへの液化ガス流体の供給に際して、低圧塔と高圧塔との液ヘッド差による低圧塔の高さ制限を受けない。
【0054】
以下、本実施形態の空気液化分離装置50の運転方法、すなわち、空気分離方法の一例について、
図1を参照しながら詳細に説明する。
【0055】
圧縮、予冷、精製、及び冷却された原料空気は、高圧塔5に供給される。
高圧塔5では、前記原料空気が低温蒸留により窒素ガスと酸素富化液化空気とに分離される。
前記原料空気の一部は、膨張タービン12で断熱膨張し、装置の運転に必要な寒冷を発生させた後に第1低圧塔6Aに供給される。
高圧塔5から導出された酸素富化液化空気は、減圧後に第2凝縮器の蒸発側9Bに供給される。
前記酸素富化液化空気の一部は、減圧後に第1低圧塔6Aに供給される。
【0056】
第2凝縮器9では、蒸発側9Bに供給された前記酸素富化液化空気と凝縮側9Aに供給された後述するアルゴンガスとの間接熱交換により、酸素富化液化空気が気化し、アルゴンガスが液化して液化アルゴンが生成される。
第2凝縮器9で気化した酸素富化液化空気と気化しなかった酸素富化液化空気の一部は、それぞれ第1低圧塔6Aに供給される。
第2凝縮器9で生成された液化アルゴンの一部は、製品液化アルゴンとして回収される。
【0057】
高圧塔5の上部から導出された窒素ガスは第1凝縮器8に供給される。第1凝縮器8では、前記窒素ガスと後述する液化酸素との間接熱交換により、窒素ガスが液化し、液化酸素が気化する。
第1凝縮器8で生成された液化窒素の一部は過冷器10で冷却され、減圧され、第1低圧塔6Aの上部に供給される。
過冷器10で冷却された液化窒素の一部は製品液化窒素として回収される。
【0058】
第1低圧塔6Aでは、膨張タービン12から供給された前記原料空気と、高圧塔5から供給された前記酸素富化空気と、第2凝縮器の蒸発側9Bから供給された前記酸素富化空気と、第2凝縮器の蒸発側9Bから供給された前記低圧酸素富化液化空気と、高圧塔5から供給された前記液化窒素と、第2低圧塔6Bから供給されたアルゴン富化酸素ガスと、が低温蒸留により低圧窒素ガスとアルゴン富化液化酸素とアルゴン富化酸素ガスと廃窒素ガスとに分離される。
【0059】
第1低圧塔6Aの塔頂から導出された低圧窒素ガスは熱回収された後に製品窒素ガスとして回収される。第1低圧塔6Aの中間部から導出された廃窒素ガスは熱回収された後に廃窒素ガスとして回収される。
第1低圧塔6Aの下部から導出されたアルゴン富化酸素ガスは、アルゴン塔7に供給され、第1低圧塔6Aの底部から導出されたアルゴン富化液化酸素は、液化酸素ポンプを経由して第2低圧塔6Bに供給される。
【0060】
アルゴン塔7では、第1低圧塔6Aから供給された前記アルゴン富化酸素ガスの低温蒸留によりアルゴンガスとアルゴン富化液化酸素とに分離される。
アルゴン塔7の底部から導出されたアルゴン富化液化酸素は第1低圧塔6Aに供給され、アルゴン塔7の上部から導出されたアルゴンガスは第2凝縮器の凝縮側9Aに供給される。
【0061】
第2低圧塔6Bでは、第1低圧塔6Aから供給された前記アルゴン富化液化酸素が低温蒸留によりアルゴン富化酸素ガスと液化酸素と酸素ガスとに分離される。
第2低圧塔6Bの頂部から導出されたアルゴン富化酸素ガスは第1低圧塔6Aに供給され、第2低圧塔6Bの底部から導出された液化酸素は、製品液化酸素として回収され、第2低圧塔6Bの下部から導出された酸素ガスは、熱回収された後に製品酸素ガスとして回収される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の空気液化分離装置50によれば、高圧塔5の底部が鉛直方向においてアルゴン塔7の底部よりも上方に位置し、第2凝縮器9がアルゴン塔7の頂部に位置するように(換言すると、高さ方向の距離が近接するように)、高圧塔5と第2凝縮器9とが配置されている。これにより、高圧塔5と第2凝縮器の蒸発側9Bとの間に位置する経路L5に、液化ガスポンプの追加や、アシストガスの供給をすることなく又は、従来よりも少ないアシストガス流量によって、高圧塔5の底部から第2凝縮器の蒸発側9Bに酸素富化液化空気を供給できる。
【0063】
すなわち、本実施形態の空気液化分離装置50によれば、アルゴン塔が鉛直方向に高くなった場合でも、アルゴン塔7を分割することなく、第2凝縮器の蒸発側9Bに液化ガスを供給する経路L5に液化ガスポンプの追加やアシストガスの供給が不要になり、又は従来よりも少ないアシストガス流量で 経路L5内の液化ガスを第2凝縮器9に供給が可能となる。
【0064】
また、本実施形態の空気液化分離装置50によれば、低圧塔が鉛直方向において第1低圧塔6Aと第2低圧塔6Bとに二分割されており、第2低圧塔6Bのみが高圧塔5の上方に位置しているため、低圧塔と高圧塔との液ヘッド差による低圧塔の高さ制限を受けない。
【0065】
すなわち、本実施形態の空気液化分離装置50によれば、低圧塔が鉛直方向に高くなった場合でも、第1低圧塔6Aの上部に液化ガスを供給する経路L3や第1低圧塔6Aの中間部に液化ガスを供給する経路L18に液化ガスポンプの追加やアシストガスの供給が不要になり、又は従来よりも少ないアシストガス流量で高圧塔5から導出された液化ガスを第1低圧塔6Aに供給が可能となる。
【0066】
また、本実施形態の空気液化分離装置50によれば、低圧塔が鉛直方向において第1低圧塔6Aと第2低圧塔6Bとに二分割されており、第2低圧塔6Bのみが高圧塔5の上方に位置しているため、高圧塔5を上方に配置した場合においても、コールドボックスが鉛直方向に高くなるのを抑制できる。
【0067】
また、本実施形態の空気液化分離装置50によれば、高圧塔5の底部が第1低圧塔6Aの頂部よりも鉛直方向において上方に位置しており、高圧塔5と第2低圧塔6Bが第1低圧塔6Aの上方に配置されているため、設置面積(フットプリント)を小さくできる。
【0068】
また、本実施形態の空気液化分離装置50によれば、第1低圧塔6Aの底部は、鉛直方向においてアルゴン塔7の底部寄りに位置する。すなわち、第1低圧塔6Aの底部とアルゴン塔7の底部とが、鉛直方向においてほぼ同じ高さとなっている。これにより、アルゴン塔7の底部から第1低圧塔6Aの下部にアルゴン富化液化酸素を供給する際、経路L12に液化酸素ポンプの設置が不要となる。
【0069】
<第2の実施形態>
図2は、本発明の第2実施形態の空気液化分離装置の構成の一例を示す系統図である。
図2において、
図1に示す第1実施形態の空気液化分離装置50を同一構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
本実施形態の空気液化分離装置60は、低圧塔が鉛直方向上下に二分割されており、第1低圧塔6Aと第2低圧塔6Bとを有する。第1低圧塔6Aと第2低圧塔6Bとは、液化ガスが流れる経路L19、アルゴン塔7の下部、経路L21と、ガスが流れる経路L22、経路L20とにより接続されている。
上述した第1実施形態の空気液化分離装置50では、第2低圧塔6Bから第1低圧塔6Aへ上昇ガスを供給し、その一部をアルゴン塔7へ供給するのに対して、第2実施形態の空気液化分離装置60では第2低圧塔6Bからアルゴン塔7へ上昇ガスを供給し、その一部を第1低圧塔6Aへ供給する点が異なる。
【0071】
また、上述した第1実施形態の空気液化分離装置50では、アルゴン塔7を下降して下部に貯留された液化ガスを第1低圧塔6Aの下部へ供給し、第1低圧塔6Aを下降してきた液化ガスと併せて第2低圧塔6Bへ供給するのに対して、第2実施形態の空気液化分離装置60では第1低圧塔6Aを下降して下部に貯留された液化ガスをアルゴン塔7の下部へ供給し、アルゴン塔7を下降してきた液化ガスと併せて第2低圧塔6Bへ供給する点が異なる。
【0072】
すなわち、本実施形態の空気液化分離装置60は、経路L9,L12~L14に換えて、新たに経路L19~L22を備える変更点以外は、上述した第1実施形態の空気液化分離装置50と同様に構成される。
以下、変更点に係る構成について、詳細に説明する。
【0073】
第1低圧塔6Aは、経路L3から供給される流体と、経路L6から供給される流体と、経路L7から供給される流体と、経路L17から供給される流体と、経路L18から供給される流体と、経路L20から供給される流体と、を含む混合流体を低温で蒸留して、低圧窒素ガスとアルゴン富化液化酸素と廃窒素ガスとに分離する。この低温での蒸留により、第1低圧塔6Aの上部には低圧窒素ガスが濃縮され、第1低圧塔6Aの底部(塔底部)にはアルゴン富化液化酸素が濃縮される。
【0074】
第1低圧塔6Aの底部に貯留されるアルゴン富化液化酸素は、経路L19により、アルゴン塔7の下部に供給される。
【0075】
本実施形態の空気液化分離装置60では、第1低圧塔6Aの底部は、鉛直方向においてアルゴン塔7の底部寄りに位置する。すなわち、第1低圧塔6Aの底部とアルゴン塔7の底部とは、鉛直方向においてほぼ同じ高さである(厳密には第1低圧塔6Aの底部からアルゴン塔7の底部に液ヘッド差を利用して液化ガス流体が流れるように第1低圧塔6Aの底部のほうがやや上方に位置する)。これにより、第1低圧塔6Aの底部からアルゴン塔7の下部にアルゴン富化液化酸素を供給する際、経路L19に液化酸素ポンプの設置が不要となる。
【0076】
アルゴン塔7の下部に濃縮するアルゴン富化酸素ガスは、第1低圧塔6Aの下部に供給される。
【0077】
アルゴン塔7は、経路L22を介して供給される低圧アルゴン富化酸素ガスを低温で蒸留して、アルゴンガスとアルゴン富化酸素ガスとアルゴン富化液化酸素とに分離する。この低温での蒸留により、アルゴン塔7の上部には、アルゴンガスが濃縮され、アルゴン塔7の下部にはアルゴン富化酸素ガスが、アルゴン塔7の底部にはアルゴン富化液化酸素が、それぞれ濃縮される。
【0078】
アルゴン塔7の底部に貯留されるアルゴン富化液化酸素は、液化酸素ポンプ11によって第2低圧塔6Bの上部に供給される。
【0079】
第2低圧塔6Bは、経路L21から供給される流体を含む混合流体を低温で蒸留して、アルゴン富化酸素ガスと酸素ガスと液化酸素とに分離する。この低温での蒸留により、第2低圧塔6Bの頂部(塔頂部)にはアルゴン富化酸素ガスが濃縮され、第2低圧塔6Bの下部には酸素ガスが濃縮され、第2低圧塔6Bの底部(塔底部)には液化酸素が濃縮される。
【0080】
第2低圧塔6Bの頂部に濃縮するアルゴン富化酸素ガスは、経路L22によってアルゴン塔7に供給される。
【0081】
以下、空気液化分離装置60の運転方法、すなわち、空気分離方法の一例について、
図2を参照しながら示す。
【0082】
圧縮、予冷、精製、及び冷却された原料空気は、高圧塔5に供給される。
高圧塔5では、前記原料空気は、低温蒸留により窒素ガスと酸素富化液化空気とに分離される。
前記原料空気の一部は、膨張タービン12で断熱膨張し、装置の運転に必要な寒冷を発生させた後に第1低圧塔6Aに供給される。
高圧塔5から導出された酸素富化液化空気は、減圧後に第2凝縮器の蒸発側9Bに供給される。
前記酸素富化液化空気の一部は、減圧後に第1低圧塔6Aに供給される。
【0083】
第2凝縮器9では、蒸発側9Bに供給された前記酸素富化液化空気と凝縮側9Aに供給された後述するアルゴンガスとの間接熱交換により、酸素富化液化空気が気化し、アルゴンガスが液化して液化アルゴンが生成される。
第2凝縮器9で気化した酸素富化空気と気化しなかった酸素富化液化空気の一部はそれぞれ第1低圧塔6Aに供給される。
第2凝縮器9で生成された液化アルゴンの一部は製品液化アルゴンとして回収される。
【0084】
高圧塔5の上部から導出された窒素ガスは第1凝縮器8に供給される。第1凝縮器8では、前記窒素ガスと後述する液化酸素との間接熱交換により、窒素ガスが液化して液化窒素が生成され、液化酸素が気化して酸素ガスが生成される。
第1凝縮器8で生成された液化窒素の一部は過冷器10で冷却され、減圧された後に第1低圧塔6Aの上部に供給される。
過冷器10で冷却された前記液化窒素の一部は製品液化窒素として回収される。
【0085】
第1低圧塔6Aでは、膨張タービン12から供給された前記原料空気と、高圧塔5から供給された前記酸素富化空気と、第2凝縮器の蒸発側9Bから供給された前記酸素富化空気と、高圧塔5から供給された前記液化窒素と、アルゴン塔7から供給されたアルゴン富化酸素ガスと、が低温蒸留により低圧窒素ガスとアルゴン富化液化酸素と廃窒素ガスとに分離される。
第1低圧塔6Aの塔頂から導出された低圧窒素ガスは熱回収された後に製品窒素ガスとして回収される。第1低圧塔6Aの中間部から導出された廃窒素ガスは熱回収された後に廃窒素ガスとして回収される。
第1低圧塔6Aの底部から導出されたアルゴン富化液化酸素は、アルゴン塔7に供給される。
【0086】
アルゴン塔7では、第2低圧塔6Bから供給されたアルゴン富化酸素ガスが低温蒸留によりアルゴンガスとアルゴン富化液化酸素とアルゴン富化酸素ガスとに分離される。
アルゴン塔7の下部から導出されたアルゴン富化酸素ガスは第1低圧塔6Aに供給され、アルゴン塔7の底部から導出されたアルゴン富化液化酸素は液化酸素ポンプ11を経由して第2低圧塔6Bに供給され、アルゴン塔7の上部から導出されたアルゴンガスは第2凝縮器の凝縮側9Aに供給される。
【0087】
第2低圧塔6Bでは、アルゴン塔7から供給されたアルゴン富化液化酸素が低温蒸留によりアルゴン富化酸素ガスと液化酸素と酸素ガスとに分離される。
第2低圧塔6Bの頂部から導出されたアルゴン富化酸素ガスはアルゴン塔7に供給され、第2低圧塔6Bの底部から導出された液化酸素は製品液化酸素として回収され、第2低圧塔6Bの下部から導出された酸素ガスは熱回収された後に製品酸素ガスとして回収される。
【0088】
以上説明したように、本実施形態の空気液化分離装置60によれば、上述した第1実施形態の空気液化分離装置50と同様の効果が得られる。
【0089】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。上述した第1及び第2実施形態の空気液化分離装置50,60では、第2低圧塔6B、第1凝縮器8及び高圧塔5が一体化している形態を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、高圧塔5の底部が鉛直方向においてアルゴン塔7の底部よりも上方に配置されていれば、第2低圧塔6B、第1凝縮器8及び高圧塔5が別々に(独立して)配置されていてもよい。
【0090】
また、上述した第1及び第2実施形態の空気液化分離装置50,60では、低圧塔を鉛直方向に上下2分割としたが、3分割以上とすることもできる。この場合も、アルゴン塔に供給されるアルゴン富化酸素ガスが低圧塔から抜き出される位置よりも上部が第1低圧塔、下部が第2低圧塔となる。(ここで言う上部、下部は分割前の低圧塔での位置関係であり、分割後のレイアウトによるものではない。)
【0091】
また、上述した第1及び第2実施形態の空気液化分離装置50,60では、第2凝縮器9とアルゴン塔7とが一体化し、第2凝縮器9がアルゴン塔7よりも上方に設置されている構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、第2凝縮器9とアルゴン塔7とが別々に(独立して)配置されていてもよい。
【0092】
上述した実施形態において、アルゴン塔7の頂部の低圧アルゴンガスの一部、第2凝縮器の凝縮側9Aで液化した低圧液化アルゴンの一部、及び第2凝縮器の凝縮側9Aで液化しなかった低圧アルゴンガスのうち、少なくとも1つを製品アルゴンとして回収する構成としてもよい。
また、回収された製品アルゴンを更に蒸留し、アルゴン濃度を高めてもよい。
さらに、アルゴン塔7の頂部よりもやや低い位置(例えば、塔頂から10理論段以内)から液化アルゴンの一部を抜き出して製品アルゴンとして回収する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の空気液化分離装置および空気分離方法は、空気から窒素、酸素及びアルゴンを分離、回収する方法であり、蒸留技術、気液分離技術などの分野において、産業上利用が可能である。
【符号の説明】
【0094】
50,60・・・空気液化分離装置
1・・・空気圧縮機
2・・・空気予冷器
3・・・空気精製器
4・・・主熱交換器
5・・・高圧塔
6A・・・第1低圧塔
6B・・・第2低圧塔
7・・・アルゴン塔
8・・・第1凝縮器
9・・・第2凝縮器
9A・・・第2凝縮器の凝縮側
9B・・・第2凝縮器の蒸発側
10・・・過冷器
11・・・液化酸素ポンプ
12・・・膨張タービン
L1~L25・・・経路
V1~V5・・・バルブ