(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】蛍光体、それを用いた光源、生化学分析装置、及び蛍光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/62 20060101AFI20240521BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20240521BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240521BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240521BHJP
【FI】
C09K11/62
C09K11/80
C09K11/08 B
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2020180321
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 正明
(72)【発明者】
【氏名】今村 伸
(72)【発明者】
【氏名】關口 好文
(72)【発明者】
【氏名】安藤 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】高田 英一郎
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106281324(CN,A)
【文献】特開2015-196603(JP,A)
【文献】特表2018-518046(JP,A)
【文献】特開2008-004653(JP,A)
【文献】BEZMATERNYKH, L. N. et al.,Crystal nucleation of high-temperature FexGa2- xO3 multiferroics in bismuth trimolybdate-borate fluxes,Crystallography Reports,(2008), vol.53, no.7,pp.1232-1235,DOI:10.1134/S1063774508070237
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母体組成としての酸化ガリウムGa
2O
3、発光中心としてのCr及びFeから選択される1種又は2種の元素、及び融剤としてのフッ化アルミニウムAlF
3を含む蛍光体。
【請求項2】
Y及びGdから選択される1種以上の元素をさらに含む、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
Ba、Sr、及びCaから選択される1種以上の元素をさらに含む、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
平均粒径が1μm~70μmである、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項5】
発光中心としての元素がCrであり、Crの濃度がGaに対して1.0mol%~2.5mol%である、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項6】
フッ化アルミニウムAlF
3のAl濃度がGaに対して5mol%~40mol%である、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項7】
発光素子と、前記発光素子からの光の一部により励起される蛍光体を含む蛍光膜とを備え、
前記発光素子が近紫外光~青色光を放射し、
前記蛍光体が請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光体を含み、
前記発光素子からの近紫外光~青色光と前記蛍光体からの近赤外光とを混合した光を出力する、
光源。
【請求項8】
前記蛍光体が前記発光素子からの光の一部により励起される青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体及び赤色発光蛍光体から選択される1種以上の蛍光体をさらに含む、請求項7に記載の光源。
【請求項9】
請求項8に記載の光源と、試料セルと、受光装置とを備える、生化学分析装置。
【請求項10】
母体組成としての酸化ガリウムGa
2O
3と、発光中心としてのCr及びFeから選択される1種又は2種の元素を含む化合物と、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF
3とを混合して混合物を調製するステップ、及び
前記混合物を1150℃~1250℃で焼成して蛍光体を調製するステップ
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光体を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体、それを用いた光源、生化学分析装置、及び蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は光源として用いられており、主に青色発光のLEDは照明用等で用いられている。最近では、近紫外光~青色光を発光するLED(近紫外発光LED)と、当該LEDにより励起され可視光~赤外光を発光する蛍光体とを備える光源が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、式Ga2O3:n%RE(式中、REはEu及びDyからなる群から選択される希土類ドーパントであり、n%はGa2O3中に存在するREのモルパーセントであって、該希土類がGa2O3に可溶性であるような範囲にある)を有する蛍りん光体であって、該蛍りん光体に実効電圧を印加した場合にエレクトロルミネセンスを示すことを特徴とする前記蛍りん光体が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、1つ又はそれより多くの遷移金属イオン種又は希土類金属イオン種を含有する少なくとも1つの媒質を含む広帯域光源において、光エネルギーを注入されたときに、近赤外領域において、少なくとも約150~250nmの帯域幅をもつ広い出力スペクトルを発生することを特徴とする光源が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表平11-508628号公報
【文献】特表2004-526330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、生化学分析装置を用いる分析では、340nm~800nmまでの広範囲の光を発光する光源として、タングステンランプが用いられてきた。しかしながら、タングステンランプはランプ寿命が3ヶ月程度と短く、メンテナンスを頻繁に行う必要がある。
【0007】
そこで、生化学分析装置の光源として近紫外発光LEDと蛍光体とを組み合わせて用いる試みがなされている。しかしながら、生化学分析装置の光源として近紫外発光LEDと蛍光体とを組み合わせて用いる場合、340nm~800nmまでの発光領域をカバーするためには、蛍光体として近紫外光~青色光で励起され近赤外光を発光する蛍光体を用いる必要があった。さらに、近紫外発光LEDと蛍光体とを組み合わせて光源として用いる場合、通常蛍光体が発光する近赤外光の発光強度(発光量)が低いという問題があった。
【0008】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、近紫外光~青色光で励起される蛍光体の近赤外光の発光量を増大することを目的とする。さらに、近紫外発光LEDと当該蛍光体とを組み合わせて生化学分析装置の光源として用いることにより、メンテナンスを容易にすることができる生化学分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3に発光中心としてのクロムCr及び/又は鉄Feを添加し、融剤(フラックス)としてフッ化アルミニウムAlF3を用いることで調製された粒子状蛍光体により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明に係る蛍光体は、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3、発光中心としてのCr及びFeから選択される1種又は2種の元素、及び融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、近紫外光~青色光の励起による近赤外光の発光量が増大された蛍光体が提供される。これにより、近紫外発光LED及び当該蛍光体を生化学分析装置の光源として用いることができ、メンテナンスが容易な生化学分析装置を提供することができる。前記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の生化学分析装置に用いる光源の模式図である。
【
図2】実施例1~3の蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【
図3】比較例1及び実施例1の蛍光体の励起スペクトルを示す図である。
【
図4】比較例1又は実施例1の蛍光体と青色発光蛍光体とを混合して作製した単層蛍光膜の発光スペクトルを示す図である。
【
図5】実施例4の蛍光膜の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。さらに、以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正ができる。また、本発明を説明するための図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
本明細書に記載される「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として有する意味で使用する。上限値又は下限値が0の場合は、上限値又は下限値を含まない。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的に記載されている上限値又は下限値に置き換えても良い。本明細書に記載される数値範囲の上限値又は下限値は、実施例中に示されている値に置き換えても良い。
【0015】
<蛍光体>
本発明は、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3、発光中心としてのCr及びFeから選択される1種又は2種の元素、及び融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3を含む蛍光体に関する。
【0016】
ここで、発光中心としての元素がCrである場合、Crの濃度は、Gaのモル量に対して、通常0.5mol%~4.0mol%、好ましくは1.0mol%~2.5mol%、より好ましくは1.2mol%~1.8mol%である。
【0017】
発光中心としての元素がFeである場合、Feの濃度は、Gaのモル量に対して、通常0.5mol%~4.0mol%、好ましくは1.0mol%~2.5mol%、より好ましくは1.2mol%~1.8mol%である。
【0018】
発光中心としての元素がCr及びFeである場合、Cr及びFeの全濃度は、Gaのモル量に対して、通常0.5mol%~8.0mol%、好ましくは1.0mol%~5.0mol%、より好ましくは1.2mol%~3.6mol%である。
【0019】
発光中心としての元素は、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3中に拡散している。発光中心としての元素としてCr及び/又はFeを含むことにより、さらに発光中心としての元素の濃度を前記範囲にすることによって、本発明の蛍光体の近紫外光~青色光の励起による近赤外光、例えば800nmの光の発光量が増大される。
【0020】
融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3のAl濃度は、Gaのモル量に対して、通常1mol%~60mol%、好ましくは5mol%~40mol%、より好ましくは10mol%~20mol%である。
【0021】
融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3は、発光中心としての元素を含む酸化ガリウムGa2O3の粒子に被覆されている。融剤としてフッ化アルミニウムAlF3を使用し、その濃度を前記範囲にすることによって、本発明の蛍光体の近紫外光~青色光の励起による近赤外光の発光量が増大される。
【0022】
本発明の蛍光体は、イットリウムY、ガドリニウムGd、バリウムBa、ストロンチウムSr、及びカルシウムCaから選択される1種以上の元素を、Gaのモル量に対して、通常1mol%~80mol%、好ましくは1mol%~50mol%、より好ましくは1mol%~20mol%で、さらに含んでもよい。本発明の蛍光体は、Y及びGdから選択される1種以上の元素を、Gaのモル量に対して、通常1mol%~80mol%、好ましくは1mol%~50mol%、より好ましくは1mol%~20mol%で、さらに含むことが好ましい。本発明の蛍光体は、Ba、Sr、及びCaから選択される1種以上の元素を、Gaのモル量に対して、通常1mol%~80mol%、好ましくは1mol%~50mol%、より好ましくは1mol%~20mol%で、さらに含むことが好ましい。
【0023】
本発明の蛍光体が、前記元素の1種以上を前記量でさらに含むことで、以下のような効果を得ることができる。Y、Gd、また、Ba、Sr、及びCaを含むことで、結晶の構造が変化するため、励起波長や発光波長を適切に調整することができ、発光の効率も向上させることが可能である。
【0024】
本発明の蛍光体は、通常1μm~100μm、好ましくは1μm~70μm、より好ましくは1μm~20μmの平均粒径を有する。ここで、平均粒径は、コールターメータなどによる、粒度分布測定の中央値により測定することができる。
【0025】
本発明の蛍光体が前記範囲の平均粒径を有することによって、蛍光体の発光面積が大きくなり、近紫外光~青色光の励起による近赤外光の発光量が増大される。
【0026】
本発明の蛍光体は、通常200nm~600nm、好ましくは300nm~500nmの励起光を吸収して、通常650nm~900nm、好ましくは700nm~900nmの光を発光する。
【0027】
したがって、本発明の蛍光体に励起光として近紫外光~青色光を照射すれば、本発明の蛍光体は、近赤外光を効率よく放射することができる。
【0028】
<蛍光体の製造方法>
本発明の蛍光体は、母体組成として酸化ガリウムGa2O3を使用し、発光中心としてCr及びFeから選択される1種又は2種の元素を使用し、融剤としてフッ化アルミニウムAlF3を使用する以外は、当該技術分野において公知の蛍光体を製造する方法を用いて製造することができる。
【0029】
例えば、本発明の蛍光体は、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3と、発光中心としてのCrの原料であるCr2O3及び/又はFeの原料である塩化鉄(II)FeCl2・4H2O3と、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3とを混合して蛍光体前駆体を調製し、蛍光体前駆体を、大気雰囲気下、通常1150℃~1250℃、好ましくは1180℃~1220℃、例えば1200℃で、通常1時間~10時間、好ましくは2時間~5時間焼成することにより、Ga2O3:Cr、Ga2O3:Fe、又はGa2O3:Cr,Feの蛍光体として製造することができる。
【0030】
例えば、本発明の蛍光体は、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3と、発光中心としてのCrの原料であるCr2O3と、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3と、他の元素としてのYの原料であるフッ化イットリウムYF3とを混合して蛍光体前駆体を調製し、蛍光体前駆体を、大気雰囲気下、通常1150℃~1250℃、好ましくは1180℃~1220℃、例えば1200℃で、通常1時間~10時間、好ましくは2時間~5時間焼成することにより、Y3Ga5O12:Cr蛍光体として製造することができる。
【0031】
例えば、本発明の蛍光体は、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3と、発光中心としてのCrの原料であるCr2O3と、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3と、他の元素としてのGdの原料である塩化ガドリニウムGdCl3とを混合して蛍光体前駆体を調製し、蛍光体前駆体を、大気雰囲気下、通常1150℃~1250℃、好ましくは1180℃~1220℃、例えば1200℃で、通常1時間~10時間、好ましくは2時間~5時間焼成することにより、Gd3Ga5O12:Cr蛍光体として製造することができる。
【0032】
例えば、本発明の蛍光体は、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3と、発光中心としてのFeの原料である塩化鉄(II)FeCl2・4H2O3と、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3と、他の元素としてのBaの原料である炭酸バリウムBaCO3とを混合して蛍光体前駆体を調製し、蛍光体前駆体を、大気雰囲気下、通常1150℃~1250℃、好ましくは1180℃~1220℃、例えば1200℃で、通常1時間~10時間、好ましくは2時間~5時間焼成することにより、BaGa2O4:Fe蛍光体として製造することができる。
【0033】
例えば、本発明の蛍光体は、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3と、発光中心としてのFeの原料である塩化鉄(II)FeCl2・4H2O3と、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3と、他の元素としてのSrの原料である炭酸ストロンチウムSrCO3とを混合して蛍光体前駆体を調製し、蛍光体前駆体を、大気雰囲気下、通常1150℃~1250℃、好ましくは1180℃~1220℃、例えば1200℃で、通常1時間~10時間、好ましくは2時間~5時間焼成することにより、SrGa2O4:Fe蛍光体として製造することができる。
【0034】
例えば、本発明の蛍光体は、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3と、発光中心としてのFeの原料である塩化鉄(II)FeCl2・4H2O3と、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3と、他の元素としてのCaの原料である炭酸カルシウムCaCO3とを混合して蛍光体前駆体を調製し、蛍光体前駆体を、大気雰囲気下、通常1150℃~1250℃、好ましくは1180℃~1220℃、例えば1200℃で、通常1時間~10時間、好ましくは2時間~5時間焼成することにより、CaGa2O4:Fe蛍光体として製造することができる。
【0035】
例えば、本発明の蛍光体は、母体組成としての酸化ガリウムGa2O3と、発光中心としてのFeの原料である塩化鉄(II)FeCl2・4H2O3と、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3と、他の元素としてのBa及びSrの原料である炭酸バリウムBaCO3及び炭酸ストロンチウムSrCO3とを混合して蛍光体前駆体を調製し、蛍光体前駆体を、大気雰囲気下、通常1150℃~1250℃、好ましくは1180℃~1220℃、例えば1200℃で、通常1時間~10時間、好ましくは2時間~5時間焼成することにより、(Ba,Sr)Ga2O4:Fe蛍光体として製造することができる。
【0036】
本発明の蛍光体の製造方法において、融剤としてフッ化アルミニウムAlF3を用いることによって、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3が、蛍光体原料を比較的低温である前記範囲の温度において液状化することなく十分に溶融させることができる。すなわち、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3は、蛍光体前駆体の焼成温度を前記範囲の温度に下げることができ、環境負荷を低減することができる。なお、融剤としてのフッ化アルミニウムAlF3は、発光中心としての元素が拡散された酸化ガリウムGa2O3の粒子に被覆される。また、低温で焼成されて得られた蛍光体は、比較的小さな平均粒径を有し、結果として、近紫外光~青色光の励起による近赤外光の発光量を増大することができる。
【0037】
<生化学分析装置用の光源>
図1に本発明の生化学分析装置に用いる光源の構造を示す。光源1は、LEDモジュール2、透明樹脂3、発光素子としてのLED素子4、放熱板5、及び配線6からなる。また、透明樹脂3中には、複数種の蛍光体7が混合されている。
【0038】
光源1では、LEDモジュール2中にLED素子4が組み込まれ、LED素子4がワイヤにより配線6に接続されている。LED素子4は、放熱板5に接着されている。また、LED素子4が組み込まれたLEDモジュール2は、LED素子4からの青色の発光を励起光とする黄色、緑色、赤色等の発光波長を有する複数種の蛍光体7を封入させた透明樹脂3により、ケース内に封止されている。
【0039】
ここで、LED素子4としては、1個のLED素子を用いることが好ましい。LED素子4としては、340nm付近の光を発光するLEDの発光量(パワー)は青色光を発光するLEDの発光量よりも小さいため、340nm付近の光の発光量を向上させるために340nm付近の光を発光するLEDを複数個、例えば2個、3個、4個又は5個組み合わせたものを用いてもよい。また、LED素子4として、340nm付近の光を発光するLED素子と、385nm付近の光を発光するLED素子とを組み合わせたもの等、異なる発光波長を有するLED素子同士を組み合わせたものを、LEDモジュール2に組み込んでもよい。
【0040】
蛍光体7としては、光源から放射される光の波長としての340nm~800nmの光を発光させるため、本発明の近赤外光を発光する近赤外発光蛍光体のほかに、青色を発光する青色発光蛍光体、緑色を発光する緑色発光蛍光体、及び赤色を発光する赤色発光蛍光体等から選択される1種以上を用いることが有効である。さらに、蛍光体7としては、近紫外光を発光する近紫外発光蛍光体、黄色や橙色を発光する蛍光体、本発明の蛍光体以外の近赤外発光蛍光体等から選択される1種以上を用いてもよい。
【0041】
近紫外発光蛍光体としては、Y2SiO5:Ce(P47)蛍光体、青色発光蛍光体としては、BaMgAl10O17:Eu(BAM)蛍光体(340nm励起)又は(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu(SCA)蛍光体(385nm励起)、緑色発光蛍光体としては、(Sr,Ba,Mg)2SiO4:Eu(BOS)蛍光体、赤色発光蛍光体としては、CaAlSiN3:Eu(CASN)蛍光体を用いることができる。
【0042】
また、近紫外光励起で青色発光する蛍光体としては、Sr5(PO4)3Cl:Eu、Ba5SiO4Cl6:Eu、(Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu、BaMg2Al16O27:Eu、Sr4Al14O25:Eu、Sr2P2O7:Eu、Sr3(PO4)2:Eu、LiSrPO4:Eu、Ba3MgSi2O8:Eu、BaAl2S4:Eu、CaF2:Eu、AlN:Eu、BaSi2O2N2:Eu、YBO3:Ce、Sr3(BO3)2:Ce、LaAl(Si,Al)6(N,O)10:Ce、Y2O3:Bi、GaN:Zn、ZnS:Ag,Cl、ZnS:Ag,Br等を挙げることができる。
【0043】
近紫外光励起で緑色発光する蛍光体としては、Sr2SiO4:Eu、Ba2SiO4:Eu、SrAl2O4:Eu、CaAl2S4:Eu、SrAl2S4:Eu、CaGa2S4:Eu、SrGa2S4:Eu、β-SiAlON:Eu、CaSi2O2N2:Eu、SrSi2O2N2:Eu、Ba3Si6O12N2:Eu、α-SiAlON:Yb、BaMgAl10O17:Eu,Mn、Zn2GeO4:Mn、ZnS:Cu,Al、ZnO:Zn、LiTbW2O8、NaTbW2O8、KTbW2O8等を挙げることができる。
【0044】
近紫外光励起で黄色発光及び橙色発光する蛍光体としては、Ca3SiO5:Eu、Sr3SiO5:Eu、Ba3SiO5:Eu、Li2SrSiO4:Eu、Sr2Ga2SiO7:Eu、Sr3(BO3)2:Eu、α-SiAlON:Eu、Sr3SiO5:Ce、ZnS:Mn等を挙げることができる。
【0045】
近紫外光励起で赤色発光する蛍光体としては、LiEuW2O8、NaEuW2O8、KEuW2O8、Li5EuW4O16、Na5EuW4O16、K5EuW4O16、Ca2ZnSi2O7:Eu、SrS:Eu、Sr2Si5N8:Eu、Ba2Si5N8:Eu、Sr2P2O7:Eu,Mn、Ba3MgSi2O8:Eu,Mn、CuAlS2:Mn、Ba2ZnS3:Mn等を挙げることができる。
【0046】
近紫外~青色光励起で近赤外発光する蛍光体としては、本発明の蛍光体のほかに、Y3Al5O12:Cr、BaMgAl10O17:Cr、Lu3Ga5O12:Cr、Lu3Al5O12:Cr、Y3(Al,Ga)5O12:Cr、Gd3(Al,Ga)5O12:Cr、Gd3Sc2Al3O12:Cr等を挙げることができる。
【0047】
本発明の蛍光体に加えて、前記で挙げた蛍光体から選択される1種以上の蛍光体を蛍光体7として用いることによって、LED素子4から発光される近紫外~青色光と、当該近紫外~青色光の励起による当該蛍光体7の発光とにより、光源から放射される光の波長として必要な340nm~800nmの光がカバーされる。
【0048】
また、透明樹脂3としては、LED素子4からの発光(LED光)及び蛍光体7からの発光を吸収しない樹脂であれば限定されず、当該技術分野において従来から知られている、室温硬化型、熱硬化型、又は紫外線硬化型の、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を使用することができる。
【0049】
例えば、透明樹脂3としては、可視光透過型の樹脂の場合には、主にシリコーン樹脂等が用いられている。また、近紫外光透過型の樹脂の場合には、近紫外光を透過するフッ素樹脂等が用いられている。蛍光体7を分散させた透明樹脂3は、LED素子4上に直接配置するほか、近紫外光を透過する石英ガラス等の基材上に配置したものをLED光の放射される経路中に設置してもよい。また、この透明樹脂3は、単層の他、混合する蛍光体7の種類を変えた2層構造等、複数の層によって形成することができる。
【0050】
蛍光体7を分散させた透明樹脂3は、例えば以下のようにして調製することができる。まず、透明樹脂3と本発明の蛍光体7とその他材料とを脱泡撹拌機を用いて均一に混合して、透明樹脂3の膜調製用の混合物を調製する。続いて、調製した混合物を、スクリーン印刷、ディスペンサ、又はドクターブレード等を用いてLED素子4上又は基材上に薄く延ばし、透明樹脂3の膜前駆体を形成させる。透明樹脂3の膜前駆体は、その後硬化され、蛍光体7を分散させた透明樹脂3を形成する。例えば、透明樹脂3の膜前駆体は、透明樹脂3として室温硬化型の樹脂を使用した場合、室温で約6時間以上硬化されて蛍光体7を分散させた透明樹脂3を形成する。例えば、透明樹脂3の膜前駆体は、透明樹脂3として熱硬化型の樹脂を使用した場合、通常200℃以下、例えば約100~150℃で約1~6時間加熱硬化されて蛍光体7を分散させた透明樹脂3を形成する。例えば、透明樹脂3の膜前駆体は、透明樹脂3として紫外線硬化型の樹脂を使用した場合、高圧水銀ランプ等で硬化されて蛍光体7を分散させた透明樹脂3を形成する。
【0051】
蛍光体7を分散させた透明樹脂3の平均厚さは、通常50μm~400μm、好ましくは100μm~300μm、より好ましくは100μm~200μmである。
【0052】
このような蛍光体7を分散させた透明樹脂では、LED素子4からの近紫外~青色のLED光の一部が蛍光体7により可視~近赤外光に変換され、LED素子4からの近紫外~青色光とともに蛍光体7からの可視~近赤外光が光源1より放射される。
【0053】
また、LEDモジュール2及びLED素子4の周囲は熱くなるため、放熱板5を設けることができる。また、放熱板5側に水冷又は空冷の冷却機構を設けてもよい。蛍光体7が近紫外~青色光で発光する効率は、温度が上がると低下する傾向を示すものがあるため、冷却機構を設けることが好ましい。
【0054】
したがって、光源1は、以下のように340nm~800nmまでの発光波長を有する白色光を放射する。外部駆動回路より配線6に電力が供給されると、LED素子4が点灯し、青色を発光する。放熱板5は、発光時のLED素子4からの発熱を外部に逃がす役割を有し、LED素子4の温度の上昇を抑え、発光を安定化させる。LED素子4からの青色の発光の一部はそのまま青色に発光し、青色の発光の残りは透明樹脂3中の蛍光体7を励起する。励起された蛍光体7は黄色、緑色、赤色等を発光する。LED素子4からの青色の発光と蛍光体7からの各色の発光とが混合されて、白色光が得られる。
【0055】
本発明の生化学分析装置は、このような構造を有する光源1と、光源1からの光が照射される試料セルと、試料セルからの光を受光する受光装置とを備える。生化学分析装置に光源1を用いることで、近紫外~青色光のLED光で蛍光体7が励起され、LED光と蛍光体7からの波長変換された光が340nm~800nmの光となって放射され、当該光が試料セルを通ることで、試料セル中の試料の光の吸収を受光装置でモニタすることができる。さらに、光源1は、ランプ寿命がタングステンランプと比較して長く、メンテナンスが容易である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
以下の実施例では、まず、近赤外発光蛍光体の合成を行い、合成した蛍光体と透明樹脂とを混合し、蛍光体を透明樹脂中に分散させ、生化学分析装置に用いる光源を作製した。
【0058】
<近赤外発光蛍光体の合成>
(比較例1)
・BaAl12O19:Feの合成
BaCO3を0.38g、β-アルミナ(混相品)を1.48g、FeCl2・4H2Oを30mg、融剤としてのBaCl2を110mgそれぞれ秤量し、それらを混合して、大気雰囲気下、焼成温度1450℃で2時間焼成した。
【0059】
(実施例1)
・Ga2O3:Crの合成
Ga2O3を2.24g、Cr2O3を32mg、融剤としてのAlF3を200mgそれぞれ秤量し、それらを混合して、大気雰囲気下、焼成温度1200℃で3時間焼成した。実施例1の蛍光体では、Cr濃度はGaに対して1.5mol%であり、Al濃度はGaに対して16mol%であった。
【0060】
(実施例2)
・Ga2O3:Crの合成
実施例1において、焼成温度を1150℃にする以外は、実施例1と同様にしてGa2O3:Crを合成した。
【0061】
(実施例3)
・Ga2O3:Crの合成
実施例1において、焼成温度を1250℃にする以外は、実施例1と同様にしてGa2O3:Crを合成した。
【0062】
<近赤外発光蛍光体の発光スペクトル>
図2に実施例1(Ga
2O
3:Cr、焼成温度:1200℃)、実施例2(Ga
2O
3:Cr、焼成温度:1150℃)、及び実施例3(Ga
2O
3:Cr、焼成温度:1250℃)の蛍光体の385nm励起での発光スペクトルを示す。
図2より、実施例1~3の蛍光体の発光スペクトルは、730nm付近に発光ピークを有し、800nm付近の発光強度も高かった。さらに、実施例1~3の蛍光体の発光スペクトルの半値幅(FWHM)は、120nmと広かった。また、融剤としてAlF
3を用いた場合、焼成温度は1150℃~1250℃、特に1200℃が良好であった。
【0063】
<近赤外発光蛍光体の励起スペクトル>
図3に比較例1(BaAl
12O
19:Fe)及び実施例1(Ga
2O
3:Cr)の励起スペクトルを示す。
図3より、実施例1は385nm励起で高効率であり、450nm付近にも励起帯があるため、実施例1は、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、及び赤色発光蛍光体との混合蛍光膜、特に青色発光蛍光体との混合蛍光膜で、近赤外の発光量が大きくなり、単層蛍光膜の形成に適していることがわかった。
【0064】
一方、比較例1は450nm付近に励起帯がないため、他の蛍光体との混合蛍光膜において、近赤外光を発光することができず、比較例1を配合した単層蛍光膜では近赤外の発光量が低下する。
【0065】
<蛍光膜の発光スペクトル>
図4に、比較例1又は実施例1の蛍光体と青色発光蛍光体とを混合して作製した単層蛍光膜の、385nm励起での発光スペクトルを示す。比較例1の発光量は低下したが、実施例1の発光量はほとんど低下しなかった。
【0066】
<生化学分析装置用の光源の作製>
(実施例4)
近紫外光を放射するLED素子4上に蛍光体7を分散させた透明樹脂3を配置して、
図1に示す光源1を作製した。LED素子4としては、385nm光を発光するLED素子を用い、透明樹脂3としてはフッ素樹脂を用いた。
【0067】
蛍光体7としては、近赤外発光蛍光体としての実施例1の蛍光体と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、及び赤色発光蛍光体としての、(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu(SCA)、(Sr,Ba,Mg)2SiO4:Eu(BOS)、及びCaAlSiN3:Eu(CASN)とを用いた。
【0068】
実施例1の蛍光体、SCA、BOS、及びCASNをそれぞれ8mg秤量し、フッ素樹脂320μl中に添加し、混合した。その後、1日程度放置した混合物を、LEDモジュール2の石英ガラスの上にポッティングし、単層構造を作製した。ポッティング後、自然乾燥し、フッ素樹脂表面を固化し蛍光膜を形成させた。ハイパワーミニ照射器を、石英ガラスを通して蛍光膜に当て、近赤外発光が800nm付近にあることを確認した。
図5に、測定した発光量を示す。
図5より、800nm発光強度/650nm発光強度は11.5%となり、10%を上回った。
図6に、実施例1のSEM画像を示す。実施例1の蛍光体の結晶性は良好であり、輝度寿命は良好であった。したがって、作製した光源1は、生化学分析用の光源として良好であった。
【0069】
(実施例5)
近紫外光を放射するLED素子4上に蛍光体7を分散させた透明樹脂3を配置して、
図1に示す光源1を作製した。LED素子4としては、385nm光を発光するLED素子を用い、透明樹脂3としてはフッ素樹脂を用いた。
【0070】
蛍光体7としては、近赤外発光蛍光体としての実施例1の蛍光体と、近紫外発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、及び赤色発光蛍光体としての、Y2SiO5:Ce(P47)、BaMgAl10O17:Eu(BAM)、(Sr,Ba,Mg)2SiO4:Eu(BOS)、及びCaAlSiN3:Eu(CASN)とを用いた。
【0071】
実施例1の蛍光体及びP47をそれぞれ8mg秤量し、フッ素樹脂160μl中に添加し、混合した。その後、1日程度放置した混合物を、LEDモジュール2の石英ガラスの上にポッティングした。30分程度自然乾燥し、その後、30分程度50℃でベークし、フッ素樹脂表面を固化した。
【0072】
次に、BAM、BOS、及びCASNをそれぞれ8mg秤量し、フッ素樹脂240μl中に添加し、混合した。その後、1日程度放置した混合物を、前記実施例1の蛍光体及びP47が分散されたフッ素樹脂上にさらにポッティングした。30分程度自然乾燥し、その後、30分程度50℃でベークし、さらに、数日間自然乾燥して、フッ素樹脂表面を固化することで、近赤外発光蛍光体及び近紫外発光蛍光体が分散された層と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、及び赤色発光蛍光体が分散された層との2層構造を形成させた。作製した光源1の発光スペクトルより、800nm付近に近赤外発光があることが確認できた。したがって、作製した光源1は、生化学分析用光源として良好であった。
【0073】
(実施例6)
近紫外光を放射するLED素子4上に蛍光体7を分散させた透明樹脂3を配置して、
図1に示す光源1を作製した。LEDモジュール2の内部には、LED素子4として、340nm光を発光するLED素子及び385nm光を発光するLED素子が1個ずつ組み込まれていた。透明樹脂3としてはフッ素樹脂を用いた。
【0074】
蛍光体7としては、近赤外発光蛍光体としての実施例1の蛍光体と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、及び赤色発光蛍光体としての、(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu(SCA)、(Sr,Ba,Mg)2SiO4:Eu(BOS)、及びCaAlSiN3:Eu(CASN)とを用いた。
【0075】
実施例1の蛍光体を8mg秤量し、フッ素樹脂80μl中に添加し、混合した。その後、1日程度放置した分散物を、LEDモジュール2の石英ガラスの上にポッティングした。30分程度自然乾燥し、その後、30分程度50℃でベークし、フッ素樹脂表面を固化した。
【0076】
次に、SCA、BOS、及びCASNをそれぞれ8mg秤量し、フッ素樹脂240μl中に添加し、混合した。その後、1日程度放置した混合物を、前記実施例1の蛍光体が分散されたフッ素樹脂上にさらにポッティングした。30分程度自然乾燥し、その後、30分程度50℃でベークし、さらに、数日間自然乾燥して、フッ素樹脂表面を固化することで、近赤外発光蛍光体が分散された層と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、及び赤色発光蛍光体が分散された層との2層構造を形成させた。作製した光源1の発光は、340nm光を発光するLED素子に385nm光を発光するLED素子が加わることで光パワーが向上されており、生化学分析用光源として良好であった。
【0077】
(実施例7)
近紫外光を放射するLED素子4上に蛍光体7を分散させた透明樹脂3を配置して、
図1に示す光源1を作製した。LEDモジュール2の内部には、LED素子4として、340nm光を発光するLED素子が3個組み込まれていた。透明樹脂3としてはフッ素樹脂を用いた。
【0078】
蛍光体7としては、近赤外発光蛍光体としてのGa2O3:Cr,Fe蛍光体と、近紫外発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、及び赤色発光蛍光体としての、Y2SiO5:Ce(P47)、BaMgAl10O17:Eu(BAM)、(Sr,Ba,Mg)2SiO4:Eu(BOS)、及びCaAlSiN3:Eu(CASN)とを用いた。
【0079】
Ga2O3:Cr,Fe蛍光体及びP47をそれぞれ8mg秤量し、フッ素樹脂160μl中に添加し、混合した。その後、1日程度放置した混合物を、LEDモジュール2の石英ガラスの上にポッティングした。30分程度自然乾燥し、その後、30分程度50℃でベークし、フッ素樹脂表面を固化した。
【0080】
次に、BAM、BOS、及びCASNをそれぞれ8mg秤量し、フッ素樹脂240μl中に添加し、混合した。その後、1日程度放置した混合物を、前記Ga2O3:Cr,Fe蛍光体及びP47が分散されたフッ素樹脂上にさらにポッティングした。30分程度自然乾燥し、その後、30分程度50℃でベークし、さらに、数日間自然乾燥して、フッ素樹脂表面を固化することで、近赤外発光蛍光体及び近紫外発光蛍光体が分散された層と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、及び赤色発光蛍光体が分散された層との2層構造を形成させた。作製した光源1は、生化学分析用光源として良好であった。
【0081】
(実施例8)
近紫外光を放射するLED素子4上に蛍光体7を分散させた透明樹脂3を配置して、
図1に示す光源1を作製した。LEDモジュール2の内部には、LED素子4として、340nm光を発光するLED素子及び405nm光を発光するLED素子が1個ずつ組み込まれていた。透明樹脂3としてはフッ素樹脂を用いた。
【0082】
蛍光体7としては、近赤外発光蛍光体としてのY3Ga5O12:Cr蛍光体と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、及び赤色発光蛍光体としての、(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu(SCA)、(Sr,Ba,Mg)2SiO4:Eu(BOS)、及びCaAlSiN3:Eu(CASN)とを用いた。
【0083】
Y3Ga5O12:Cr蛍光体を8mg秤量し、フッ素樹脂80μl中に添加し、混合した。その後、1日程度放置した分散物を、LEDモジュール2の石英ガラスの上にポッティングした。30分程度自然乾燥し、その後、30分程度50℃でベークし、フッ素樹脂表面を固化した。
【0084】
次に、SCA、BOS、及びCASNをそれぞれ8mg秤量し、フッ素樹脂240μl中に添加し、混合した。その後、1日程度放置した混合物を、前記Y3Ga5O12:Cr蛍光体が分散されたフッ素樹脂上にさらにポッティングした。30分程度自然乾燥し、その後、30分程度50℃でベークし、さらに、数日間自然乾燥して、フッ素樹脂表面を固化することで、近赤外発光蛍光体が分散された層と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、及び赤色発光蛍光体が分散された層との2層構造を形成させた。作製した光源1の発光は、340nm光を発光するLED素子に405nm光を発光するLED素子が加わることで光パワーが向上されており、生化学分析用光源として良好であった。
【0085】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 光源
2 LEDモジュール
3 透明樹脂
4 LED素子
5 放熱板
6 配線
7 蛍光体