(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】液晶組成物、フッ素含有重合体、光学異方性層、積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240521BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240521BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240521BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 313
B32B7/023
B32B27/30 D
(21)【出願番号】P 2022536242
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2021024924
(87)【国際公開番号】W WO2022014340
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2020120694
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】志賀 渓伍
(72)【発明者】
【氏名】松山 拓史
(72)【発明者】
【氏名】星野 渉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 由実
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-091745(JP,A)
【文献】特開2006-091414(JP,A)
【文献】特開2010-083141(JP,A)
【文献】特開2010-070735(JP,A)
【文献】国際公開第2019/132018(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/124198(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0000572(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性化合物および界面改良剤を含有する液晶組成物であって、
前記界面改良剤が、下記式(B-1
1)で表される繰り返し単位B1
1と、フッ素原子を有する繰り返し単位B2とを有するフッ素含有重合体である、液晶組成物。
【化1】
ここで、前記式(B-1
1)中、
R
1は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
L
1は、単結合、または、-CO-を表す。
Spは、炭素数1~20の直鎖状または分岐状の2価の炭化水素基を表す。ただし、前記炭化水素基の一部を構成する-CH
2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-NH-、または、-N(Q)-で置換されていてもよく、Qは、置換基を表す。
L
2は、単結合、または、2価の連結基を表す。
L
3は、単結合を表す。
Aは、下記式(A-1)~(A-15)のいずれかで表される2価の連結基を表す。ただし、下記式(A-1)~(A-15)中の*は、L
2またはL
3との結合位置を表し、下記式(A-1)~(A-15)中の環構造を構成する炭素原子は、ヘテロ原子で置換されていてもよく、置換基を有していてもよい。
Dは、-NHCOR
4を表す。ここで、R
4は、炭素数1~3の直鎖状もしくは分岐状の、アルキル基またはアルケニル基を表す。ただし、前記アルキル基および前記アルケニル基の一部を構成する-CH
2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH
2-は、-O-で置換されていてもよい。
nは、1~3の整数を表す。nが2または3である場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のL
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【化2】
【請求項2】
更に、二色性物質を含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
液晶性化合物、二色性物質および界面改良剤を含有する液晶組成物であって、
前記二色性物質が可視光吸収物質であり、
前記界面改良剤が、下記式(B-1
2)で表される繰り返し単位B1
2と、フッ素原子を有する繰り返し単位B2とを有するフッ素含有重合体である、液晶組成物。
【化3】
ここで、前記式(B-1
2)中、
R
1は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
L
1は、単結合、または、-CO-を表す。
Spは、炭素数1~20の直鎖状または分岐状の2価の炭化水素基を表す。ただし、前記炭化水素基の一部を構成する-CH
2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-NH-、または、-N(Q)-で置換されていてもよく、Qは、置換基を表す。
L
2およびL
3は、それぞれ独立に、単結合、または、2価の連結基を表す。
Aは、下記式(A-1)~(A-15)のいずれかで表される2価の連結基を表す。ただし、下記式(A-1)~(A-15)中の*は、L
2またはL
3との結合位置を表し、下記式(A-1)~(A-15)中の環構造を構成する炭素原子は、ヘテロ原子で置換されていてもよく、置換基を有していてもよい。
Dは、水素原子と第14~16族の非金属原子とで構成される水素結合性基を表す。ただし、前記非金属原子は、置換基を有していてもよい。
nは、1~3の整数を表す。nが2または3である場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のL
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【化4】
【請求項4】
前記式(B-1
2)中、L
3が単結合を表し、Dが-COOH、-NHCOR
2、または、-CONHR
3を表す、請求項3に記載の液晶組成物。
ここで、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状の、アルキル基またはアルケニル基を表す。ただし、前記アルキル基および前記アルケニル基の一部を構成する-CH
2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH
2-は、-O-で置換されていてもよい。
【請求項5】
前記式(B-1
2)中、L
3が単結合を表し、Dが-NHCOR
4を表す、請求項3または4に記載の液晶組成物。
ここで、R
4は、炭素数1~3の直鎖状もしくは分岐状の、アルキル基またはアルケニル基を表す。ただし、前記アルキル基および前記アルケニル基の一部を構成する-CH
2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH
2-は、-O-で置換されていてもよい。
【請求項6】
前記繰り返し単位B2が、下記式(F-1)で表される繰り返し単位、または、下記式(F-2)で表される繰り返し単位である、請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化5】
ここで、前記式(F-1)中、
LF1は、単結合、または、2価の連結基を表す。
R1は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、または、炭素数1~20のアルキル基を表す。
RF1は、下記(a)~(d)の少なくとも1つの基または(e)の繰り返し単位を含む基を表す。
(a)下記式(1)~(3)のいずれかで表される基
(b)パーフルオロポリエーテル基
(c)プロトンドナー性官能基とプロトンアクセプター性官能基の水素結合を有し、少なくとも1つの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する炭素数1~20のアルキル基
(d)下記式(1-d)で表される基
(e)下記式(1-e)で表される繰り返し単位
【化6】
【化7】
ここで、前記式(1-d)中、
Xは、水素原子、または、置換基を表す。
T10は、末端基を表す。
lは1~20の整数を表し、mは0~2の整数を表し、nは0~2の整数を表し、m+nは2である。
【化8】
ここで、前記式(1-e)中、
R2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、または、炭素数1~20のアルキル基を表す。
LF2は、単結合、または、2価の連結基を表す。
RF11およびRF12は、それぞれ独立に、パーフルオロポリエーテル基を表す。
*は、前記式(F-1)におけるLF1との結合位置を表す。
【化9】
ここで、前記式(F-2)中、
R2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
LF2は、前記式(F-1)中のLF1と同じ基を表す。
SP21およびSP22は、それぞれ独立に、スペーサー基を表す。
DF2は、(m2+1)価の基を表す。
T2は、末端基を表す。
RF2は、フッ素原子を含む基を表す。
n2は2以上の整数を表し、m2は2以上の整数を表し、m2≧n2である。
【請求項7】
前記繰り返し単位B2の含有量が、前記フッ素含有重合体の全繰り返し単位の総質量に対して15~90質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項8】
前記式(B-1
1)中、nが1または2である、請求項1
または2に記載の液晶組成物。
【請求項9】
前記式(B-12)中、nが1または2である、請求項3~5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項10】
前記フッ素含有重合体が、更に、分子量300以下のモノマーから誘導される繰り返し単位B3を含有し、
前記繰り返し単位B3の含有量が、前記フッ素含有重合体の質量に対して5質量%以上である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項11】
前記繰り返し単位B3が、下記式(N-1)で表される繰り返し単位である、請求項
10に記載の液晶組成物。
【化10】
ここで、前記式(N-1)中、
R
B11およびR
B12は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。ただし、R
B11およびR
B12がいずれも置換基である場合、R
B11およびR
B12が連結して環を形成していてもよい。
R
B13は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子、または、シアノ基を表す。
【請求項12】
前記液晶性化合物が、高分子液晶性化合物である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項13】
下記式(B-1
3)で表される繰り返し単位B1
3と、フッ素原子を有する繰り返し単位B2とを有し、
【化11】
ここで、前記式(B-1
3)中、
R
1は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
L
1は、単結合、または、-CO-を表す。
Spは、炭素数1~20の直鎖状または分岐状の2価の炭化水素基を表す。ただし、前記炭化水素基の一部を構成する-CH
2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-NH-、または、-N(Q)-で置換されていてもよく、Qは、置換基を表す。
L
2は、単結合、または、2価の連結基を表す。
L
3は、単結合を表す。
Aは、下記式(A-1)~(A-15)のいずれかで表される2価の連結基を表す。ただし、下記式(A-1)~(A-15)中の*は、L
2またはL
3との結合位置を表し、下記式(A-1)~(A-15)中の環構造を構成する炭素原子は、ヘテロ原子で置換されていてもよく、置換基を有していてもよい。
Dは、-COOH、-NHCOR
2、または、-CONHR
3を表す。ここで、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状の、アルキル基またはアルケニル基を表す。ただし、前記アルキル基および前記アルケニル基の一部を構成する-CH
2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH
2-は、-O-で置換されていてもよい。
nは、2または3を表す。複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のL
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【化12】
前記繰り返し単位B2が、下記式(F-1)で表される繰り返し単位、または、下記式(F-2)で表される繰り返し単位である、フッ素含有重合体。
【化13】
ここで、前記式(F-1)中、
LF1は、単結合、または、2価の連結基を表す。
R1は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、または、炭素数1~20のアルキル基を表す。
RF1は、下記(a)~(d)の少なくとも1つの基または(e)の繰り返し単位を含む基を表す。
(a)下記式(1)~(3)のいずれかで表される基
(b)パーフルオロポリエーテル基
(c)プロトンドナー性官能基とプロトンアクセプター性官能基の水素結合を有し、少なくとも1つの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する炭素数1~20のアルキル基
(d)下記式(1-d)で表される基
(e)下記式(1-e)で表される繰り返し単位
【化14】
【化15】
ここで、前記式(1-d)中、
Xは、水素原子、または、置換基を表す。
T10は、末端基を表す。
lは1~20の整数を表し、mは0~2の整数を表し、nは0~2の整数を表し、m+nは2である。
【化16】
ここで、前記式(1-e)中、
R2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、または、炭素数1~20のアルキル基を表す。
LF2は、単結合、または、2価の連結基を表す。
RF11およびRF12は、それぞれ独立に、パーフルオロポリエーテル基を表す。
*は、前記式(F-1)におけるLF1との結合位置を表す。
【化17】
ここで、前記式(F-2)中、
R2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
LF2は、前記式(F-1)中のLF1と同じ基を表す。
SP21およびSP22は、それぞれ独立に、スペーサー基を表す。
DF2は、(m2+1)価の基を表す。
T2は、末端基を表す。
RF2は、フッ素原子を含む基を表す。
n2は2以上の整数を表し、m2は2以上の整数を表し、m2≧n2である。
【請求項14】
請求項1~1
2のいずれか1項に記載の液晶組成物から形成される、光学異方性層。
【請求項15】
基材と、前記基材上に設けられる請求項1
4に記載の光学異方性層と、を有し、
前記光学異方性層に含まれる液晶性化合物が、水平方向に配向した状態で固定化されている、積層体。
【請求項16】
更に、前記光学異方性層上に設けられるλ/4板を有する、請求項1
5に記載の積層体。
【請求項17】
請求項1
4に記載の光学異方性層、または、請求項1
5もしくは請求項1
6に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、フッ素含有重合体、光学異方性層、積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学補償シートおよび位相差フィルムなどの光学フィルムは、画像着色解消および視野角拡大などの観点から、様々な画像表示装置で用いられている。
光学フィルムとしては延伸複屈折フィルムが使用されていたが、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、液晶性化合物を用いた光学異方性層(液晶層)を使用することが提案されている。
【0003】
また、光学フィルムは、一般に、面内において均一な厚みを有することを求められる。このような均一な厚みを達成するためには、液晶組成物を基材上に塗工する際、塗工を均一に行うことが求められる。
このように塗工を均一に行うために、界面活性剤(界面改良剤)を含む液晶組成物を用いることがあり、この界面活性剤としては、フッ素原子を含むものを用いることが多い。
例えば、特許文献1には、重合性液晶化合物とフッ素原子を含む界面活性剤とを含む液晶性組成物を硬化した硬化物の層(光学異方性層)を備えた光学フィルムが記載されている(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1などに記載された液晶組成物および光学異方性層について検討したところ、液晶組成物に含まれる界面改良剤の構造によっては、光学異方性層の形成時に液晶組成物にハジキが発生し、また、形成される光学異方性層の配向度が劣ることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、光学異方性層の形成時にハジキが抑制され、かつ、配向度に優れた光学異方性層を形成できる液晶組成物、フッ素含有重合体、光学異方性層、積層体および画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、光学異方性層を形成する液晶組成物に所定の界面改良剤を配合することにより、光学異方性層の形成時にハジキが抑制され、かつ、配向度に優れた光学異方性層を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] 液晶性化合物および界面改良剤を含有する液晶組成物であって、
界面改良剤が、後述する式(B-1)で表される繰り返し構造B1と、フッ素原子を有する繰り返し構造B2とを有するフッ素含有重合体である、液晶組成物。
[2] 後述する式(B-1)中、L3が単結合を表し、Dが-COOH、-NHCOR2、または、-CONHR3を表す、[1]に記載の液晶組成物。
ここで、R2およびR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状の、アルキル基またはアルケニル基を表す。ただし、アルキル基およびアルケニル基の一部を構成する-CH2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH2-は、-O-で置換されていてもよい。
[3] 繰り返し単位B2が、後述する式(F-1)で表される繰り返し単位、または、後述する式(F-2)で表される繰り返し単位である、[1]または[2]に記載の液晶組成物。
[4] 繰り返し単位B2の含有量が、フッ素含有重合体の全繰り返し単位の総質量に対して15~90質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の液晶組成物。
[5] 後述する式(B-1)中、nが1または2である、[1]~[4]のいずれかに記載の液晶組成物。
[6] 後述する式(B-1)中、L3が単結合を表し、Dが-NHCOR4を表す、[1]~[5]のいずれかに記載の液晶組成物。
ここで、R4は、炭素数1~3の直鎖状もしくは分岐状の、アルキル基またはアルケニル基を表す。ただし、アルキル基およびアルケニル基の一部を構成する-CH2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH2-は、-O-で置換されていてもよい。
[7] フッ素含有重合体が、更に、分子量300以下のモノマーから誘導される繰り返し構造B3を含有し、
繰り返し単位B3の含有量が、フッ素含有重合体の質量に対して5質量%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の液晶組成物。
[8] 繰り返し単位B3が、後述する式(N-1)で表される繰り返し単位である、[7]に記載の液晶組成物。
[9] 液晶性化合物が、高分子液晶性化合物である、[1]~[8]のいずれかに記載の液晶組成物。
[10] 更に、二色性物質を含有する、[1]~[9]のいずれかに記載の液晶組成物。
[11] 後述する式(B-1)で表される繰り返し構造B1と、フッ素原子を有する繰り返し構造B2とを有し、繰り返し単位B2が、後述する式(F-1)で表される繰り返し単位、または、後述する式(F-2)で表される繰り返し単位である、フッ素含有重合体。
[12] [1]~[10]のいずれかに記載の液晶組成物から形成される、光学異方性層。
[13] 基材と、基材上に設けられる[12]に記載の光学異方性層と、を有し、
光学異方性層に含まれる液晶性化合物が、水平方向に配向した状態で固定化されている、積層体。
[14] 更に、光学異方性層上に設けられるλ/4板を有する、[13]に記載の積層体。
[15] [12]に記載の光学異方性層、または、[13]もしくは[14]に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学異方性層の形成時にハジキが抑制され、かつ、配向度に優れた光学異方性層を形成できる液晶組成物、フッ素含有重合体、光学異方性層、積層体および画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、本発明の液晶組成物が含有する界面改良剤(以下、「特定界面改良剤」とも略す。)が有し得るブロック構造の一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、特定界面改良剤が有し得るブロック構造の一例を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、特定界面改良剤が有し得るブロック構造の一例を示す図である。
【
図1D】
図1Dは、特定界面改良剤が有し得るブロック構造の一例を示す図である。
【
図1E】
図1Eは、特定界面改良剤が有し得るブロック構造の一例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、特定界面改良剤が有し得るグラフト構造の一例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、特定界面改良剤が有し得るグラフト構造の一例を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、特定界面改良剤が有し得るグラフト構造の一例を示す図である。
【
図2D】
図2Dは、特定界面改良剤が有し得るグラフト構造の一例を示す図である。
【
図2E】
図2Eは、特定界面改良剤が有し得るグラフト構造の一例を示す図である。
【
図2F】
図2Fは、特定界面改良剤が有し得るグラフト構造の一例を示す図である。
【
図2G】
図2Gは、特定界面改良剤が有し得るグラフト構造の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、グラフト構造を有する場合の特定界面改良剤を合成する方法を説明する図である。
【
図4A】
図4Aは、特定界面改良剤が有し得るスター構造の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、特定界面改良剤が有し得るスター構造の一例を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、特定界面改良剤が有し得るスター構造の一例を示す図である。
【
図4D】
図4Dは、特定界面改良剤が有し得るスター構造の一例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、特定界面改良剤が有し得るブランチ構造の一例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、特定界面改良剤が有し得るブランチ構造の一例を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、特定界面改良剤が有し得るブランチ構造の一例を示す図である。
【
図5D】
図5Dは、特定界面改良剤が有し得るブランチ構造の一例を示す図である。
【
図5E】
図5Eは、特定界面改良剤が有し得るブランチ構造の一例を示す図である。
【
図5F】
図5Fは、特定界面改良剤が有し得るブランチ構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、平行、直交、水平、および、垂直とは、それぞれ厳密な意味での平行、直交、水平、および、垂直を意味するのではなく、それぞれ、平行±10°の範囲、直交±10°の範囲、水平±10°、および、垂直±10°の範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を表す表記であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」または「メタクリロイル」を表す表記である。
【0012】
[置換基W]
本明細書で用いられる置換基Wは、以下の基を表す。
置換基Wとしては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、炭素数1~10のアルキルカルボニル基、炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、アルキルアミノカルボニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数1~20のアリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、スルファト基(-OSO3H)、その他の公知の置換基などが挙げられる。
なお、置換基の詳細については、特開2007-234651号公報の段落[0023]に記載される。
また、置換基Wは、下記式(W1)で表される基であってもよい。
【0013】
【0014】
式(W1)中、LWは単結合又は2価の連結基を表し、SPWは2価のスペーサー基を表し、Qは後述の式(LC)におけるQ1又はQ2を表し、*は結合位置を表す。
【0015】
LWが表す2価の連結基としては、-O-、-(CH2)g-、-(CF2)g-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)2-C(Z’)2-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”は独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、又は、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、及び、-C(O)S-、などが挙げられる。LWは、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい(以下「L-C」とも省略する)。
【0016】
SPWが表す2価のスペーサー基としては、炭素数1~50の直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基、又は、炭素数1~20複素環基が挙げられる。
上記アルキレン基、複素環基の炭素原子は、-O-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)2-C(Z’)2-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”は独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、又は、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-C(S)-、-S(O)-、-SO2-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、及び、-C(O)S-、これらの基を2つ以上組み合わせた基で置換されていてもよい(以下「SP-C」とも省略する)。
上記アルキレン基の水素原子、及び、複素環基の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基、-ZH、-OH、-OZH、-COOH、-C(O)ZH、-C(O)OZH、-OC(O)ZH、-OC(O)OZH、-NZHZH’、-NZHC(O)ZH’、-NZHC(O)OZH’、-C(O)NZHZH’、-OC(O)NZHZH’、-NZHC(O)NZH’OZH’’、-SH、-SZH、-C(S)ZH、-C(O)SZH、-SC(O)ZH、で置換されていてもよい(以下、「SP-H」とも省略する)。ここで、ZH、ZH’は炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、-L-CL(Lは単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基の具体例は、上述したLW及びSPWと同じである。CLは架橋性基を表し、後述の式(LC)におけるQ1又はQ2で表される基が挙げられ、後述の式(P1)~(P30)で表される架橋性基が好ましい。)を表す。
【0017】
[液晶組成物]
本発明の液晶組成物は、液晶性化合物および特定界面改良剤を含有する液晶組成物である。
また、本発明の液晶組成物が含有する特定界面改良剤は、後述する式(B-1)で表される繰り返し構造B1と、フッ素原子を有する繰り返し構造B2とを有するフッ素含有重合体である。
【0018】
本発明においては、上述した通り、光学異方性層を形成する液晶組成物に特定界面改良剤を配合することにより、光学異方性層の形成時にハジキが抑制され、かつ、配向度に優れた光学異方性層を形成できる。
この理由の詳細は未だ明らかになっていないが、本発明者らは以下の理由によるものと推測している。
すなわち、特定界面改良剤が、所定のスペーサー(後述する式(B-1)中のSp)と、所定の環構造からなる連結基(後述する式(B-1)中のA)とを有していることにより、液晶組成物の粘度が向上し、ハジキが抑制されたと考えられる。
また、特定界面改良剤が、所定の水素結合性基(後述する式(B-1)中のD)を有していることにより、水素結合による多量体を形成し、液晶を配向させるために適した高い平面性を有する空気界面層となるため、形成される光学異方性層の配向度が向上したと考えられる。
以下、本発明の液晶組成物の各成分について詳細に説明する。
【0019】
〔液晶性化合物〕
液晶性化合物は、一般的に、その形状から棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。
また、液晶性化合物は、可視領域で二色性を示さない液晶性化合物が好ましい。
なお、以下の説明において、「形成される光学異方性層の配向度がより高くなる」ことを「本発明の効果がより優れる」とも言う。
【0020】
液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物及び高分子液晶性化合物のいずれも用いることができる。
ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。
また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013-228706号公報に記載されている液晶性化合物が挙げられる。
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶性化合物は、末端に架橋性基(例えば、アクリロイル基及びメタクリロイル基)を有していてもよい。
【0021】
液晶性化合物は、本発明の効果が顕在化しやすい理由から、棒状液晶性化合物であることが好ましく、高分子液晶性化合物であることがより好ましい。
【0022】
液晶性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶性化合物は、本発明の効果がより優れる点から、高分子液晶性化合物を含むことが好ましく、高分子液晶性化合物及び低分子液晶性化合物の両方を含むことが特に好ましい。
【0023】
液晶性化合物は、式(LC)で表される液晶性化合物又はその重合体を含むことが好ましい。式(LC)で表される液晶性化合物又はその重合体は、液晶性を示す化合物である。液晶性は、ネマチック相であってもスメクチック相であってもよく、ネマチック相とスメクチック相の両方を示してもよく、少なくともネマチック相を示すことが好ましい。
スメクチック相としては、高次スメクチック相であってもよい。ここでいう高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相、スメクチックL相、であり、中でもスメクチックB相、スメクチックF相、スメクチックI相、であることが好ましい。
液晶性化合物が示すスメクチック液晶相がこれらの高次スメクチック液晶相であると、配向秩序度のより高い光学異方性層を作製できる。また、このように配向秩序度の高い高次スメクチック液晶相から作製した光学異方性層はX線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られるものである。上記ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークであり、本発明の液晶組成物によれば、周期間隔が3.0~5.0Åである光学異方性層を得ることができる。
【0024】
【0025】
式(LC)中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数1~20のアリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、スルファト基(-OSO3H)、又は、下記式(P1)~(P-30)で表される架橋性基を表し、Q1及びQ2の少なくとも一方は、下記式で表される架橋性基であることが好ましい。
【0026】
【0027】
式(P-1)~(P-30)中、RPは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数1~20のアリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル若しくはアリールスルフィニル基、アルキル若しくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール若しくはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、又は、スルファト基(-OSO3H)、を表し、複数のRPはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
架橋性基の好ましい態様としては、ラジカル重合性基、又はカチオン重合性基が挙げられる。ラジカル重合性基としては、上記式(P-1)で表されるビニル基、上記式(P-2)で表されるブタジエン基、上記式(P-4)で表される(メタ)アクリル基、上記式(P-5)で表される(メタ)アクリルアミド基、上記式(P-6)で表される酢酸ビニル基、上記式(P-7)で表されるフマル酸エステル基、上記式(P-8)で表されるスチリル基、上記式(P-9)で表されるビニルピロリドン基、上記式(P-11)で表される無水マレイン酸、又は、上記式(P-12)で表されるマレイミド基、が好ましい。カチオン重合性基としては、上記式(P-18)で表されるビニルエーテル基、上記式(P-19)で表されるエポキシ基、又は、上記式(P-20)で表されるオキセタニル基、が好ましい。
【0028】
式(LC)において、S1及びS2はそれぞれ独立に、2価のスペーサー基を表し、S1及びS2の好適態様は、上記式(W1)中のSPWと同じ構造が挙げられるため、その説明を省略する。
【0029】
式(LC)中、MGは後述するメソゲン基を表わす。MGが表すメソゲン基とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基である。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。メソゲン基については特に制限はなく、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁~第16頁の記載、及び、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。
MGが表すメソゲン基は、環状構造を2~10個含むのが好ましく、3~7個含むのがより好ましい。
環状構造の具体例としては、芳香族炭化水素基、複素環基、及び脂環式基などが挙げられる。
【0030】
MGが表すメソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性及び合成適性という観点、並びに、本発明の効果がより優れるから、下記式(MG-A)又は下記式(MG-B)で表される基が好ましく、式(MG-B)で表される基がより好ましい。
【0031】
【0032】
式(MG-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基及び脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、置換基Wなどの置換基で置換されていてもよい。
A1で表される2価の基は、4~15員環であることが好ましい。また、A1で表される2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、S1又はS2との結合位置を表す。
【0033】
A1が表す2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基及びテトラセン-ジイル基などが挙げられ、メソゲン骨格の設計の多様性や原材料の入手性などの観点から、フェニレン基、ナフチレン基が好ましい。
【0034】
A1が表す2価の複素環基としては、芳香族又は非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、及び、チエノオキサゾール-ジイル基、下記の構造(II-1)~(II-4)などが挙げられる。
【0035】
【0036】
式(II-1)~(II-4)中、D1は、-S-、-O-、又はNR11-を表し、R11は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、Y1は炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又は、炭素数3~12の芳香族複素環基を表し、Z1、Z2、及びZ3はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6~20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR12R13又は-SR12を表し、Z1及びZ2は、互いに結合して芳香環又は芳香族複素環を形成してもよく、R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、J1及びJ2はそれぞれ独立に、-O-、-NR21-(R21は水素原子又は置換基を表す。)、-S-及びC(O)-からなる群から選択される基を表し、Eは水素原子又は置換基が結合していてもよい第14~16族の非金属原子を表し、Jxは芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、Jyは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、Jx及びJyが有する芳香環は置換基を有していてもよく、JxとJyは結合して、環を形成していてもよく、D2は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0037】
式(II-2)中、Y1が炭素数6~12の芳香族炭化水素基である場合、単環でも多環でもよい。Y1が炭素数3~12の芳香族複素環基である場合、単環でも多環でもよい。
式(II-2)中、J1及びJ2が、-NR21-を表す場合、R21の置換基としては、例えば特開2008-107767号公報の段落0035~0045の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
式(II-2)中、Eが、置換基が結合していてもよい第14~16族の非金属原子である場合、=O、=S、=NR’、=C(R’)R’が好ましい。R’は置換基を表し、置換基としては例えば特開2008-107767号公報の段落[0035]~[0045]の記載を参酌でき、-NZA1ZA2(ZA1及びZA2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)が好ましい。
【0038】
A1が表す2価の脂環式基の具体例としては、シクロペンチレン基及びシクロへキシレン基などが挙げられ、炭素原子は、-O-、-Si(CH3)2-、-N(Z)-(Zは、水素、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、又は、ハロゲン原子を表す。)、-C(O)-、-S-、-C(S)-、-S(O)-、及び-SO2-、これらの基を2つ以上組み合わせた基によって置換されていてもよい。
【0039】
式(MG-A)中、a1は2~10の整数を表す。複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
【0040】
式(MG-B)中、A2及びA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基及び脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A2及びA3の具体例及び好適態様は、式(MG-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
式(MG-B)中、a2は1~10の整数を表し、複数のA2は同一でも異なっていてもよく、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。a2は、本発明の効果がより優れる理由から、2以上であることがより好ましい。
式(MG-B)中、LA1は、単結合又は2価の連結基である。ただし、a2が1である場合、LA1は2価の連結基であり、a2が2以上である場合、複数のLA1のうち少なくとも1つが2価の連結基である。
式(MG-B)中、LA1が表す2価の連結基としては、LWと同様のため、その説明を省略する。
【0041】
MGの具体例としては、例えば以下の構造が挙げられ、以下の構造中、芳香族炭化水素基、複素環基及び脂環式基上の水素原子は、上述の置換基Wで置換されていてもよい。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
<低分子液晶性化合物>
式(LC)で表される液晶性化合物が低分子液晶性化合物の場合、メソゲン基MGの環状構造の好ましい態様としては、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、ピリジン-ジイル基、ピリダジン-ジイル基、チオフェン-ジイル基、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、等が挙げられ、環状構造の個数は、2~10個が好ましく、3~7個が更に好ましい。
メソゲン構造の置換基Wの好ましい態様としては、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルカルボニル基、炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、アミノ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、アルキルアミノカルボニル基、上述の式(W1)においてLWが単結合であり、SPWが2価のスペーサー基であり、Qが上述の(P1)~(P30)で表される架橋性基である基、などが挙げられ、架橋性基としては、ビニル基、ブタジエン基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、酢酸ビニル基、フマル酸エステル基、スチリル基、ビニルピロリドン基、無水マレイン酸、マレイミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、が好ましい。
【0046】
2価のスペーサー基S1及びS2の好ましい態様としては、上記SPWと同様のため、その説明を省略する。
スメクチック性を示す低分子液晶性化合物を用いる場合、スペーサー基の炭素数(この炭素を「SP-C」で置き変えた場合はその原子数)は、炭素数6以上が好ましく、8以上が更に好ましい。
【0047】
式(LC)で表される液晶性化合物が低分子液晶性化合物の場合、複数の低分子液晶性化合物を併用してもよく、2~6種を併用するのが好ましく、2~4種を併用することが更に好ましい。低分子液晶性化合物を併用することで、溶解性の向上や液晶組成物の相転移温度を調整することができる。
【0048】
低分子液晶性化合物の具体例としては、以下の式(LC-1)~(LC-77)で表される化合物が挙げられるが、低分子液晶性化合物はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【0050】
【0051】
<高分子液晶性化合物>
高分子液晶性化合物は、後述する繰り返し単位を含むホモポリマー又はコポリマーであることが好ましく、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー、スターポリマーなど、いずれのポリマーであってもよい。
【0052】
(繰り返し単位(1))
高分子液晶性化合物は、式(1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」ともいう。)を含むことが好ましい。
【0053】
【0054】
式(1)中、PC1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合又は2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、MG1は上述の式(LC)におけるメソゲン基MGを表し、T1は末端基を表す。
【0055】
PC1が表す繰り返し単位の主鎖としては、例えば、式(P1-A)~(P1-D)で表される基が挙げられ、なかでも、原料となる単量体の多様性及び取り扱いが容易である観点から、下記式(P1-A)で表される基が好ましい。
【0056】
【0057】
式(P1-A)~(P1-D)において、「*」は、式(1)におけるL1との結合位置を表す。式(P1-A)~(P1-D)において、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基を表す。上記アルキル基は、直鎖又は分岐のアルキル基であってもよいし、環状構造を有するアルキル基(シクロアルキル基)であってもよい。また、上記アルキル基の炭素数は、1~5が好ましい。
式(P1-A)で表される基は、(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルの部分構造の一単位であることが好ましい。
式(P1-B)で表される基は、エポキシ基を有する化合物のエポキシ基を開環重合して形成されるエチレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-C)で表される基は、オキセタン基を有する化合物のオキセタン基を開環重合して形成されるプロピレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-D)で表される基は、アルコキシシリル基及びシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物の縮重合によって得られるポリシロキサンのシロキサン単位であることが好ましい。ここで、アルコキシシリル基及びシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物としては、式SiR14(OR15)2-で表される基を有する化合物が挙げられる。式中、R14は、(P1-D)におけるR14と同義であり、複数のR15はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0058】
L1が表す2価の連結基は、上述の式(W1)におけるLWと同様の2価の連結基であり、好ましい態様としては、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NR16-、-NR16C(O)-、-S(O)2-、及び、-NR16R17-などが挙げられる。式中、R16及びR17はそれぞれ独立に、水素原子、置換基(例えば、上述の置換基W)を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表わす。2価の連結基の具体例において、左側の結合手がPC1と結合し、右側の結合手がSP1と結合する。
PC1が式(P1-A)で表される基である場合には、L1は-C(O)O-又は-C(O)NR16-で表される基が好ましい。
PC1が式(P1-B)~(P1-D)で表される基である場合には、L1は単結合が好ましい。
【0059】
SP1が表すスペーサー基は、上述の式(LC)におけるS1及びS2と同じ基を表わし、配向度の観点から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造及びフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む基、又は、炭素数2~20の直鎖又は分岐のアルキレン基が好ましい。ただし、上記アルキレン基は、-O-、-S-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CNR-(Rは、炭素数1~10のアルキル基を表す。)、又は、-S(O)2-、を含んでいてもよい。
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいことや、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造及びフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む基であることがより好ましい。
ここで、SP1が表すオキシエチレン構造は、*-(CH2-CH2O)n1-*で表される基が好ましい。式中、n1は1~20の整数を表し、*はL1又はMG1との結合位置を表す。n1は、本発明の効果がより優れる理由から、2~10の整数であることが好ましく、2~6の整数がより好ましく、2~4であることが最も好ましい。
また、SP1が表すオキシプロピレン構造は、*-(CH(CH3)-CH2O)n2-*で表される基が好ましい。式中、n2は1~3の整数を表し、*はL1又はMG1との結合位置を表す。
また、SP1が表すポリシロキサン構造は、*-(Si(CH3)2-O)n3-*で表される基が好ましい。式中、n3は6~10の整数を表し、*はL1又はMG1との結合位置を表す。
また、SP1が表すフッ化アルキレン構造は、*-(CF2-CF2)n4-*で表される基が好ましい。式中、n4は6~10の整数を表し、*はL1又はMG1との結合位置を表す。
【0060】
T1が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、-SH、カルボキシル基、ボロン酸基、-SO3H、-PO3H2、-NR11R12(R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又は置換又は非置換の炭素数1~10のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表わす)、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、及び、炭素数1~10のウレイド基、架橋性基含有基などが挙げられる。
上記架橋性基含有基としては、例えば、上述の-L-CLが挙げられる。Lは単結合又は連結基を表す。連結基の具体例は上述したLW及びSPWと同じである。CLは架橋性基を表し、上述のQ1又はQ2で表される基が挙げられ、上述の式(P1)~(P30)で表される基が好ましい。また、T1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
T1は、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が更に好ましい。これらの末端基は、これらの基、又は、特開2010-244038号公報に記載の重合性基によって、更に置換されていてもよい。
T1の主鎖の原子数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~7が特に好ましい。T1の主鎖の原子数が20以下であることで、光学異方性層の配向度がより向上する。ここで、T1おける「主鎖」とは、M1と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT1の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T1がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T1がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0061】
繰り返し単位(1)の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、40~100質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましい。繰り返し単位(1)の含有量が40質量%以上であれば、良好な配向性により優れた光学異方性層が得られる。また、繰り返し単位(1)の含有量が100質量%以下であれば、良好な配向性により優れた光学異方性層が得られる。
繰り返し単位(1)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(1)が2種以上含まれる場合、上記繰り返し単位(1)の含有量は、繰り返し単位(1)の含有量の合計を意味する。
【0062】
(logP値)
式(1)において、PC1、L1及びSP1のlogP値(以下、「logP1」ともいう。)と、MG1のlogP値(以下、「logP2」ともいう。)との差(|logP1-logP2|)が4以上であり、光学異方性層の配向度がより向上する観点から、4.25以上が好ましく、4.5以上がより好ましい。
また、上記差の上限値は、液晶相転移温度の調整及び合成適性という観点から、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。
ここで、logP値は、化学構造の親水性及び疎水性の性質を表現する指標であり、親疎水パラメータと呼ばれることがある。logP値は、ChemBioDraw Ultra又はHSPiP(Ver.4.1.07)などのソフトウェアを用いて計算できる。また、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Sections 1,Test No.117の方法などにより、実験的に求めることもできる。本発明では特に断りのない限り、HSPiP(Ver.4.1.07)に化合物の構造式を入力して算出される値をlogP値として採用する。
【0063】
上記logP1は、上述したように、PC1、L1及びSP1のlogP値を意味する。「PC1、L1及びSP1のlogP値」とは、PC1、L1及びSP1を一体とした構造のlogP値を意味しており、PC1、L1及びSP1のそれぞれのlogP値を合計したものではない、具体的には、logP1は、式(1)におけるPC1~SP1までの一連の構造式を上記ソフトウェアに入力することで算出される。
ただし、logP1の算出にあたって、PC1~SP1までの一連の構造式のうち、PC1で表される基の部分に関しては、PC1で表される基そのものの構造(例えば、上述した式(P1-A)~式(P1-D)など)を用いてもよいし、式(1)で表される繰り返し単位を得るために使用する単量体を重合した後にPC1になりうる基の構造を用いてもよい。
ここで、後者(PC1になりうる基)の具体例は、次の通りである。PC1が(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られる場合には、CH2=C(R1)-で表される基(R1は、水素原子又はメチル基を表す。)である。また、PC1がエチレングリコールの重合によって得られる場合にはエチレングリコールであり、PC1がプロピレングリコールの重合により得られる場合にはプロピレングリコールである。また、PC1がシラノールの重縮合により得られる場合にはシラノール(式Si(R2)3(OH)で表される化合物。複数のR2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。ただし、複数のR2の少なくとも1つはアルキル基を表す。)である。
【0064】
logP1は、上述したlogP2との差が4以上であれば、logP2よりも低くてもよいし、logP2よりも高くてもよい。
ここで、一般的なメソゲン基のlogP値(上述したlogP2)は、4~6の範囲内になる傾向がある。このとき、logP1がlogP2よりも低い場合には、logP1の値は、1以下が好ましく、0以下がより好ましい。一方で、logP1がlogP2よりも高い場合には、logP1の値は、8以上が好ましく、9以上がより好ましい。
上記式(1)におけるPC1が(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られ、かつ、logP1がlogP2よりも低い場合には、上記式(1)におけるSP1のlogP値は、0.7以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。一方、上記式(1)におけるPC1が(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られ、かつ、logP1がlogP2よりも高い場合には、上記式(1)におけるSP1のlogP値は、3.7以上が好ましく、4.2以上がより好ましい。
なお、logP値が1以下の構造としては、例えば、オキシエチレン構造及びオキシプロピレン構造などが挙げられる。logP値が6以上の構造としては、ポリシロキサン構造及びフッ化アルキレン構造などが挙げられる。
【0065】
(繰り返し単位(21)及び(22))
配向度を向上させる観点から、高分子液晶性化合物は、末端に電子供与性及び/又は電子吸引性を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。より具体的には、メソゲン基とこれの末端に存在するσp値が0より大きい電子吸引性基とを有する繰り返し単位(21)と、メソゲン基とこれの末端に存在するσp値が0以下の基とを有する繰り返し単位(22)と、を含むことがより好ましい。このように、高分子液晶性化合物が繰り返し単位(21)と繰り返し単位(22)を含む場合、上記繰り返し単位(21)又は上記繰り返し単位(22)のいずれかのみを含む場合と比べて、これを用いて形成される光学異方性層の配向度が向上する。この理由の詳細は明らかではないが、概ね以下のように推定している。
すなわち、繰り返し単位(21)と繰り返し単位(22)に発生する逆向きの双極子モーメントが、分子間相互作用をすることによって、メソゲン基の短軸方向への相互作用が強くなって、液晶の配向する向きがより均一となると推察され、その結果、液晶の秩序度が高くなると考えられる。これにより、二色性物質の配向性も良好になるので、形成される光学異方性層の配向度が高くなると推測される。
なお上記繰り返し単位(21)及び(22)は、上記式(1)で表される繰り返し単位であってもよい。
【0066】
繰り返し単位(21)は、メソゲン基と、上記メソゲン基の末端に存在するσp値が0より大きい電子吸引性基と、を有する。
上記電子吸引性基は、メソゲン基の末端に位置しており、σp値が0より大きい基である。電子吸引性基(σp値が0よりも大きい基)としては、後述の式(LCP-21)におけるEWGで表される基が挙げられ、その具体例も同様である。
上記電子吸引性基のσp値は、0よりも大きく、光学異方性層の配向度がより高くなる点から、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。上記電子吸引性基のσp値の上限値は、配向の均一性が優れる点から、1.2以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。
【0067】
σp値とは、ハメットの置換基定数σp値(単に「σp値」とも略記する)であり、置換安息香酸の酸解離平衡定数における置換基の効果を数値で表したものであり、置換基の電子吸引性及び電子供与性の強度を示すパラメータである。本明細書におけるハメットの置換基定数σp値は、置換基が安息香酸のパラ位に位置する場合の置換基定数σを意味する。
本明細書における各基のハメットの置換基定数σp値は、文献「Hansch et al., Chemical Reviews, 1991, Vol, 91, No. 2, 165-195」に記載された値を採用する。なお、上記文献にハメットの置換基定数σp値が示されていない基については、ソフトウェア「ACD/ChemSketch(ACD/Labs 8.00 Release Product Version:8.08)」を用いて、安息香酸のpKaと、パラ位に置換基を有する安息香酸誘導体のpKaとの差に基づいて、ハメットの置換基定数σp値を算出できる。
【0068】
繰り返し単位(21)は、側鎖にメソゲン基と上記メソゲン基の末端に存在するσp値が0より大きい電子吸引性基とを有していれば、特に限定されないが、光学異方性層の配向度がより高くなる点から、下記式(LCP-21)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0069】
【0070】
式(LCP-21)中、PC21は繰り返し単位の主鎖を表し、より具体的には上記式(1)中のPC1と同様の構造を表し、L21は単結合又は2価の連結基を表し、より具体的には上記式(1)中のL1と同様の構造を表し、SP21A及びSP21Bはそれぞれ独立に単結合又はスペーサー基を表し、スペーサー基の具体例は上記式(1)中のSP1と同様の構造を表し、MG21はメソゲン構造、より具体的には上記式(LC)中のメソゲン基MGを表し、EWGはσp値が0より大きい電子吸引性基を表す。
【0071】
SP21A及びSP21Bが表わすスペーサー基は、上記式S1及びS2と同様の基を表わし、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造及びフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む基、又は、炭素数2~20の直鎖又は分岐のアルキレン基が好ましい。ただし、上記アルキレン基は、-O-、-O-CO-、-CO-O-、又は-O-CO-O-を含んでいてもよい。
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいことや、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造及びフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましい。
【0072】
SP21Bは、単結合、又は、炭素数2~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基が好ましい。ただし、上記アルキレン基は、-O-、-O-CO-、-CO-O-、又は-O-CO-O-を含んでいてもよい。
これらの中でも、SP21Bが表すスペーサー基は、光学異方性層の配向度がより高くなる点から、単結合が好ましい。換言すれば、繰り返し単位21は、式(LCP-21)における電子吸引性基であるEWGが、式(LCP-21)におけるメソゲン基であるMG21に直結する構造を有するのが好ましい。このように、電子吸引性基がメソゲン基に直結していると、高分子液晶性化合物中に適度な双極子モーメントによる分子間相互作用がより効果的に働くことで、液晶の配向する向きがより均一となると推察され、その結果、液晶の秩序度が高くなり、配向度がより高くなると考えられる。
【0073】
EWGは、σp値が0より大きい電子吸引性基を表す。σp値が0より大きい電子吸引性基としては、エステル基(具体的には、*-C(O)O-REで表される基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、-S(O)(O)-ORE、-S(O)(O)-RE、-O-S(O)(O)-RE、アシル基(具体的には、*-C(O)REで表される基)、アシルオキシ基(具体的には、*-OC(O)REで表される基)、イソシアネート基(-N=C(O))、*-C(O)N(RF)2、ハロゲン原子、並びに、これらの基で置換されたアルキル基(炭素数1~20が好ましい。)が挙げられる。上記各基において、*はSP21Bとの結合位置を表す。REは、炭素数1~20(好ましくは炭素数1~4、より好ましくは炭素数1~2)のアルキル基を表す。RFはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20(好ましくは炭素数1~4、より好ましくは炭素数1~2)のアルキル基を表す。
上記基の中でも、EWGは、本発明の効果がより発揮される点から、*-C(O)O-REで表される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は、シアノ基、ニトロ基、が好ましい。
【0074】
繰り返し単位(21)の含有量は、光学異方性層の高い配向度を維持しつつ、高分子液晶性化合物及び二色性物質を均一に配向できる点から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
繰り返し単位(21)の含有量の下限値は、本発明の効果がより発揮される点から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。
本発明において、高分子液晶性化合物に含まれる各繰り返し単位の含有量は、各繰り返し単位を得るために使用される各単量体の仕込み量(質量)に基づいて算出される。
繰り返し単位(21)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。高分子液晶性化合物が繰り返し単位(21)を2種以上含むと、高分子液晶性化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、及び、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。繰り返し単位(21)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0075】
繰り返し単位(21)を2種以上含む場合には、EWGに架橋性基を含まない繰り返し単位(21)と、EWGに重合性基を含む繰り返し単位(21)と、を併用してもよい。これにより、光学異方性層の硬化性がより向上する。なお、架橋性基としては、ビニル基、ブタジエン基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、酢酸ビニル基、フマル酸エステル基、スチリル基、ビニルピロリドン基、無水マレイン酸、マレイミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、が好ましい。
この場合、光学異方性層の硬化性と配向度のバランスの点から、EWGに重合性基を含む繰り返し単位(21)の含有量が、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、1~30質量%であることが好ましい。
【0076】
以下において、繰り返し単位(21)の一例を示すが、繰り返し単位(21)は、以下の繰り返し単位に限定されるものではない。
【0077】
【0078】
本発明者らは、繰り返し単位(21)及び繰り返し単位(22)について、組成(含有割合)並びに末端基の電子供与性及び電子吸引性について鋭意検討した結果、繰り返し単位(21)の電子吸引性基の電子吸引性が強い場合(すなわち、σp値が大きい場合)には、繰り返し単位(21)の含有割合を低くすれば光学異方性層の配向度がより高くなり、繰り返し単位(21)の電子吸引性基の電子吸引性が弱い場合(すなわち、σp値が0に近い場合)には、繰り返し単位(21)の含有割合を高くすれば光学異方性層の配向度がより高くなることを見出した。
この理由の詳細は明らかではないが、概ね以下のように推定している。すなわち、高分子液晶性化合物中に適度な双極子モーメントによる分子間相互作用が働くことで、液晶の配向する向きがより均一となると推察され、その結果、液晶の秩序度が高くなり、光学異方性層の配向度がより高くなると考えられる。
具体的には、繰り返し単位(21)における上記電子吸引性基(式(LCP-21)においてはEWG)のσp値と、高分子液晶性化合物中の繰り返し単位(21)の含有割合(質量基準)と、の積は、0.020~0.150が好ましく、0.050~0.130がより好ましく、0.055~0.125が特に好ましい。上記積が上記範囲内であれば、光学異方性層の配向度がより高くなる。
【0079】
繰り返し単位(22)は、メソゲン基と上記メソゲン基の末端に存在するσp値が0以下の基とを有する。高分子液晶性化合物が繰り返し単位(22)を有することで、高分子液晶性化合物及び二色性物質を均一に配向できる。
メソゲン基は、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基であり、詳細は後述の式(LCP-22)におけるMGで説明する通りであり、その具体例も同様である。
上記基は、メソゲン基の末端に位置しており、σp値が0以下の基である。上記基(σp値が0以下である基)としては、σp値が0である水素原子、及び、σp値が0よりも小さい後述の式(LCP-22)におけるT22で表される基(電子供与性基)が挙げられる。上記基のうち、σp値が0よりも小さい基(電子供与性基)の具体例は、後述の式(LCP-22)におけるT22と同様である。
上記基のσp値は、0以下であり、配向の均一性がより優れる点から、0よりも小さいことが好ましく、-0.1以下がより好ましく、-0.2以下が特に好ましい。上記基のσp値の下限値は、-0.9以上が好ましく、-0.7以上がより好ましい。
【0080】
繰り返し単位(22)は、側鎖にメソゲン基と上記メソゲン基の末端に存在するσp値が0以下である基とを有していれば、特に限定されないが、液晶の配向の均一性がより高くなる点から、上記式(LCP-21)で表される繰り返し単位に該当せず、下記式(PCP-22)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0081】
【0082】
式(LCP-22)中、PC22は繰り返し単位の主鎖を表し、より具体的には上記式(1)中のPC1と同様の構造を表し、L22は単結合又は2価の連結基を表し、より具体的には上記式(1)中のL1と同様の構造を表し、SP22はスペーサー基を表し、より具体的には上記式(1)中のSP1と同様の構造を表し、MG22はメソゲン構造、より具体的には上記式(LC)中のメソゲン基MGと同様の構造を表し、T22はハメットの置換基定数σp値が0より小さい電子供与性基を表す。
【0083】
T22は、σp値が0より小さい電子供与性基を表す。σp値が0より小さい電子供与性基としては、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、及び、炭素数1~10のアルキルアミノ基などが挙げられる。
T22の主鎖の原子数が20以下であることで、光学異方性層の配向度がより向上する。ここで、T22おける「主鎖」とは、MG22と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT22の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T22がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T22がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0084】
以下において、繰り返し単位(22)の一例を示すが、繰り返し単位(22)は、以下の繰り返し単に限定されるものではない。
【0085】
【0086】
繰り返し単位(21)と繰り返し単位(22)は、構造の一部が共通しているのが好ましい。繰り返し単位同士の構造が類似しているほど、液晶が均一に整列すると推察される。これにより、光学異方性層の配向度がより高くなる。
具体的には、光学異方性層の配向度がより高くなる点から、式(LCP-21)のSP21Aと式(LCP-22)のSP22とが同一構造であること、式(LCP-21)のMG21と式(LCP-22)のMG22とが同一構造であること、及び、式(LCP-21)のL21と式(LCP-22)のL22とが同一構造であること、のうち、少なくとも1つを満たすことが好ましく、2つ以上を満たすことがより好ましく、全てを満たすことが特に好ましい。
【0087】
繰り返し単位(22)の含有量は、配向の均一性が優れる点から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
繰り返し単位(22)の含有量の上限値は、配向度が向上する点から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。
繰り返し単位(22)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。高分子液晶性化合物が繰り返し単位(22)を2種以上含むと、高分子液晶性化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、及び、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。繰り返し単位(22)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0088】
(繰り返し単位(3))
高分子液晶性化合物は、汎用溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、メソゲンを含有しない繰り返し単位(3)を含むことができる。特に配向度の低下を抑えながら溶解性を向上させるためには、このメソゲンを含有しない繰り返し単位(3)として、分子量280以下の繰り返し単位であることが好ましい。このように、メソゲンを含有しない分子量280以下の繰り返し単位を含むことで配向度の低下を抑えながら溶解性を向上させられる理由としては以下のように推定している。
すなわち、高分子液晶性化合物がその分子鎖中にメソゲンを持たない繰り返し単位(3)を含むことで、高分子液晶性化合物中に溶媒が入り込みやすくなるために溶解性は向上するが、非メソゲン性の繰り返し単位(3)は配向度を低下させると考えられる。しかしながら、上記繰り返し単位の分子量が小さいことで、上記メソゲン基を含む繰り返し単位(1)、繰り返し単位(21)又は繰り返し単位(22)の配向が乱されにくく、配向度の低下を抑えられる、と推定される。
【0089】
上記繰り返し単位(3)は、分子量280以下の繰り返し単位であることが好ましい。
繰り返し単位(3)の分子量とは、繰り返し単位(3)を得るために使用するモノマーの分子量を意味するのではなく、モノマーの重合によって高分子液晶性化合物に組み込まれた状態における繰り返し単位(3)の分子量を意味する。
繰り返し単位(3)の分子量は、280以下であり、180以下が好ましく、100以下がより好ましい。繰り返し単位(3)の分子量の下限値は、通常、40以上であり、50以上がより好ましい。繰り返し単位(3)の分子量が280以下であれば、高分子液晶性化合物の溶解性に優れ、かつ、高い配向度の光学異方性層が得られる。
一方で、繰り返し単位(3)の分子量が280を超えると、上記繰り返し単位(1)、繰り返し単位(21)又は繰り返し単位(22)の部分の液晶配向を乱してしまい、配向度が低くなる場合がある。また、高分子液晶性化合物中に溶媒が入り込みにくくなるので、高分子液晶性化合物の溶解性が低下する場合がある。
【0090】
繰り返し単位(3)の具体例としては、架橋性基(例えば、エチレン性不飽和基)を含まない繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3-1)」ともいう。)、及び、架橋性基を含む繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3-2)」ともいう。)が挙げられる。
【0091】
・繰り返し単位(3-1)
繰り返し単位(3-1)の重合に使用されるモノマーの具体例としては、アクリル酸[72.1]、α-アルキルアクリル酸類(例えば、メタクリル酸[86.1]、イタコン酸[130.1])、それらから誘導されるエステル類及びアミド類(例えば、N-i-プロピルアクリルアミド[113.2]、N-n-ブチルアクリルアミド[127.2]、N-t-ブチルアクリルアミド[127.2]、N,N-ジメチルアクリルアミド[99.1]、N-メチルメタクリルアミド[99.1]、アクリルアミド[71.1]、メタクリルアミド[85.1]、ジアセトンアクリルアミド[169.2]、アクリロイルモルホリン[141.2]、N-メチロールアクリルアミド[101.1]、N-メチロールメタクリルアミド[115.1]、メチルアクリレート[86.0]、エチルアクリレート[100.1]、ヒドロキシエチルアクリレート[116.1]、n-プロピルアクリレート[114.1]、i-プロピルアクリレート[114.2]、2-ヒドロキシプロピルアクリレート[130.1]、2-メチル-2-ニトロプロピルアクリレート[173.2]、n-ブチルアクリレート[128.2]、i-ブチルアクリレート[128.2]、t-ブチルアクリレート[128.2]、t-ペンチルアクリレート[142.2]、2-メトキシエチルアクリレート[130.1]、2-エトキシエチルアクリレート[144.2]、2-エトキシエトキシエチルアクリレート[188.2]、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート[154.1]、2,2-ジメチルブチルアクリレート[156.2]、3-メトキシブチルアクリレート[158.2]、エチルカルビトールアクリレート[188.2]、フェノキシエチルアクリレート[192.2]、n-ペンチルアクリレート[142.2]、n-ヘキシルアクリレート[156.2]、シクロヘキシルアクリレート[154.2]、シクロペンチルアクリレート[140.2]、ベンジルアクリレート[162.2]、n-オクチルアクリレート[184.3]、2-エチルヘキシルアクリレート[184.3]、4-メチル-2-プロピルペンチルアクリレート[198.3]、メチルメタクリレート[100.1]、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート[168.1]、ヒドロキシエチルメタクリレート[130.1]、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート[144.2]、n-ブチルメタクリレート[142.2]、i-ブチルメタクリレート[142.2]、sec-ブチルメタクリレート[142.2]、n-オクチルメタクリレート[198.3]、2-エチルヘキシルメタクリレート[198.3]、2-メトキシエチルメタクリレート[144.2]、2-エトキシエチルメタクリレート[158.2]、ベンジルメタクリレート[176.2]、2-ノルボルニルメチルメタクリレート[194.3]、5-ノルボルネン-2-イルメチルメタクリレート[194.3]、ジメチルアミノエチルメタクリレート[157.2])、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル[86.1])、マレイン酸又はフマル酸から誘導されるエステル類(例えば、マレイン酸ジメチル[144.1]、フマル酸ジエチル[172.2])、マレイミド類(例えば、N-フェニルマレイミド[173.2])、マレイン酸[116.1]、フマル酸[116.1]、p-スチレンスルホン酸[184.1]、アクリロニトリル[53.1]、メタクリロニトリル[67.1]、ジエン類(例えば、ブタジエン[54.1]、シクロペンタジエン[66.1]、イソプレン[68.1])、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン[104.2]、p-クロルスチレン[138.6]、t-ブチルスチレン[160.3]、α-メチルスチレン[118.2])、N-ビニルピロリドン[111.1]、N-ビニルオキサゾリドン[113.1]、N-ビニルサクシンイミド[125.1]、N-ビニルホルムアミド[71.1]、N-ビニル-N-メチルホルムアミド[85.1]、N-ビニルアセトアミド[85.1]、N-ビニル-N-メチルアセトアミド[99.1]、1-ビニルイミダゾール[94.1]、4-ビニルピリジン[105.2]、ビニルスルホン酸[108.1]、ビニルスルホン酸ナトリウム[130.2]、アリルスルホン酸ナトリウム[144.1]、メタリルスルホン酸ナトリウム[158.2]、ビニリデンクロライド[96.9]、ビニルアルキルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル[58.1])、エチレン[28.0]、プロピレン[42.1]、1-ブテン[56.1]、並びに、イソブテン[56.1]が挙げられる。なお、[ ]内の数値は、モノマーの分子量を意味する。
上記モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記モノマーの中でも、アクリル酸、α-アルキルアクリル酸類、それらから誘導されるエステル類及びアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、並びに、芳香族ビニル化合物が好ましい。
上記以外のモノマーとしては、例えば、リサーチディスクロージャーNo.1955(1980年、7月)に記載の化合物を使用できる。
【0092】
以下において、繰り返し単位(3-1)の具体例及びその分子量を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0093】
【0094】
・繰り返し単位(3-2)
繰り返し単位(3-2)において、架橋性基の具体例としては、上記P1~P30で表される基が挙げられ、ビニル基、ブタジエン基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、酢酸ビニル基、フマル酸エステル基、スチリル基、ビニルピロリドン基、無水マレイン酸、マレイミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、がより好ましい。
繰り返し単位(3-2)は、重合が容易である点から、下記式(3)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0095】
【0096】
上記式(3)中、PC32は繰り返し単位の主鎖を表し、より具体的には上記式(1)中のPC1と同様の構造を表し、L32は単結合又は2価の連結基を表し、より具体的には上記式(1)中のL1と同様の構造を表し、P32は上記式(P1)~(P30)で表される架橋性基、を表わす。
【0097】
以下において、繰り返し単位(3-2)の具体例及びその重量平均分子量(Mw)を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0098】
【0099】
繰り返し単位(3)の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、14質量%未満であり、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。繰り返し単位(3)の含有量の下限値は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。繰り返し単位(3)の含有量が14質量%未満であれば、光学異方性層の配向度がより向上する。繰り返し単位(3)の含有量が2質量%以上であれば、高分子液晶性化合物の溶解性がより向上する。
繰り返し単位(3)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(3)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0100】
(繰り返し単位(4))
高分子液晶性化合物は、密着性や面状均一性を向上させる点から、分子鎖の長い柔軟な構造(後述の式(4)のSP4)をもつ繰り返し単位(4)を含むことができる。この理由については以下のように推定している。
すなわち、このような分子鎖の長い柔軟な構造を含むことで、高分子液晶性化合物を構成する分子鎖同士の絡まりが生じやすくなり、光学異方性層の凝集破壊(具体的には、光学異方性層自体が破壊すること)が抑制される。その結果、光学異方性層と、下地層(例えば、基材又は配向膜)との密着性が向上すると推測される。また、面状均一性の低下は、二色性物質と高分子液晶性化合物との相溶性が低いために生じると考えられる。すなわち、二色性物質と高分子液晶性化合物は相溶性が不十分であると、析出する二色性物質を核とする面状不良(配向欠陥)が発生すると考えられる。これに対して、高分子液晶性化合物が分子鎖の長い柔軟な構造を含むことで、二色性物質の析出が抑制されて、面状均一性に優れた光学異方性層が得られたと推測される。ここで、面状均一性に優れるとは、高分子液晶性化合物を含む液晶組成物が下地層(例えば、基材又は配向膜)上ではじかれて生じる配向欠陥が少ないことを意味する。
【0101】
上記繰り返し単位(4)は、下記式(4)で表される繰り返し単位である。
【0102】
【0103】
上記式(4)中、PC4は繰り返し単位の主鎖を表し、より具体的には上記式(1)中のPC1と同様の構造を表し、L4は単結合又は2価の連結基を表し、より具体的には上記式(1)中のL1と同様の構造を表し(単結合が好ましい)、SP4は主鎖の原子数が10以上のアルキレン基を表し、T4は末端基を表わし、より具体的には上記式(1)中のT1と同様の構造を表す。
【0104】
PC4の具体例及び好適態様は、式(1)のPC1と同様であるので、その説明を省略する。
【0105】
L4としては、本発明の効果がより発揮される点から、単結合が好ましい。
【0106】
式(4)中、SP4は、主鎖の原子数が10以上のアルキレン基を表す。ただし、SP4が表すアルキレン基を構成する1個以上の-CH2-は、上述の「SP-C」より置き換えられていてもよく、特に、-O-、-S-、-N(R21)-、-C(=O)-、-C(=S)-、-C(R22)=C(R23)-、アルキニレン基、-Si(R24)(R25)-、-N=N-、-C(R26)=N-N=C(R27)-、-C(R28)=N-及びS(=O)2-からなる群より選択される少なくとも1種の基で置き換えられていることが好ましい。ただし、R21~R28はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は炭素数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表す。また、SP4が表すアルキレン基を構成する1個以上の-CH2-に含まれる水素原子は、上述の「SP-H」により置き換えられていてもよい。
【0107】
SP4の主鎖の原子数は、10以上であり、密着性及び面状均一性の少なくとも一方がより優れた光学異方性層が得られる点から、15以上が好ましく、19以上がより好ましい。また、SP2の主鎖の原子数の上限は、配向度により優れた光学異方性層が得られる点から、70以下が好ましく、60以下がより好ましく、50以下が特に好ましい。
ここで、SP4における「主鎖」とは、L4とT4とを直接連結するために必要な部分構造を意味し、「主鎖の原子数」とは、上記部分構造を構成する原子の個数を意味する。換言すれば、SP4における「主鎖」は、L4とT4を連結する原子の数が最短になる部分構造である。例えば、SP4が3,7-ジメチルデカニル基である場合の主鎖の原子数は10であり、SP4が4,6-ジメチルドデカニル基の場合の主鎖の原子数は12である。また、下記式(4-1)においては、点線の四角形で表す枠内がSP4に相当し、SP4の主鎖の原子数(点線の丸で囲った原子の合計数に相当)は11である。
【0108】
【0109】
SP4が表すアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
SP4が表すアルキレン基の炭素数は、配向度により優れた光学異方性層が得られる点から、8~80が好ましく、15~80が好ましく、25~70がより好ましく、25~60が特に好ましい。
【0110】
SP4が表すアルキレン基を構成する1個以上の-CH2-は、密着性及び面状均一性により優れた光学異方性層が得られる点から、上述の「SP-C」によって置き換えられているのが好ましい。
また、SP4が表すアルキレン基を構成する-CH2-が複数ある場合、密着性及び面状均一性により優れた光学異方性層が得られる点から、複数の-CH2-の一部のみが上述の「SP-C」によって置き換えられていることがより好ましい。
【0111】
「SP-C」のうち、-O-、-S-、-N(R21)-、-C(=O)-、-C(=S)-、-C(R22)=C(R23)-、アルキニレン基、-Si(R24)(R25)-、-N=N-、-C(R26)=N-N=C(R27)-、-C(R28)=N-及びS(=O)2-からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましく、密着性及び面状均一性により優れた光学異方性層が得られる点から、-O-、-N(R21)-、-C(=O)-及びS(=O)2-からなる群より選択される少なくとも1種の基が更に好ましく、-O-、-N(R21)-及びC(=O)-からなる群より選択される少なくとも1種の基が特に好ましい。
特に、SP4は、アルキレン基を構成する1個以上の-CH2-が-O-によって置き換えられたオキシアルキレン構造、アルキレン基を構成する1個以上の-CH2-CH2-が-O-及びC(=O)-によって置き換えられたエステル構造、並びに、アルキレン基を構成する1個以上の-CH2-CH2-CH2-が-O-、-C(=O)-及びNH-によって置き換えられたウレタン結合からなる群より選択される少なくとも1つを含む基であるのが好ましい。
【0112】
SP4が表すアルキレン基を構成する1個以上の-CH2-に含まれる水素原子は、前述の「SP-H」によって置き換えられていてもよい。この場合、-CH2-に含まれる水素原子の1個以上が「SP-H」に置き換えられていればよい。すなわち、-CH2-に含まれる水素原子の1個のみが「SP-H」によって置き換えられていてもよいし、-CH2-に含まれる水素原子の全て(2個)が「SP-H」によって置き換えられていてもよい。
「SP-H」のうち、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10の直鎖状のアルキル基及び炭素数1~10の分岐状のアルキル基、炭素数1~10ハロゲン化アルキル基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましく、ヒドロキシ基、炭素数1~10の直鎖状のアルキル基及び炭素数1~10の分岐状のアルキル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が更に好ましい。
【0113】
T4は、上述したように、T1と同様の末端基を表し、水素原子、メチル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいフェニル基、-L-CL(Lは単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基の具体例は上述したLW及びSPWと同じである。CLは架橋性基を表し、上記Q1又はQ2で表される基が挙げられ、式(P1)~(P30)で表される架橋性基が好ましい。)であることが好ましく、上記CLとしては、ビニル基、ブタジエン基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、酢酸ビニル基、フマル酸エステル基、スチリル基、ビニルピロリドン基、無水マレイン酸、マレイミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、又は、オキセタニル基、が好ましい。
エポキシ基は、エポキシシクロアルキル基であってもよく、エポキシシクロアルキル基におけるシクロアルキル基部分の炭素数は、本発明の効果がより優れる点から、3~15が好ましく、5~12がより好ましく、6(すなわち、エポキシシクロアルキル基がエポキシシクロヘキシル基である場合)が特に好ましい。
オキセタニル基の置換基としては、炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、本発明の効果がより優れる点から、炭素1~5のアルキル基が好ましい。オキセタニル基の置換基としてのアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、本発明の効果がより優れる点から直鎖状であることが好ましい。
フェニル基の置換基としては、ボロン酸基、スルホン酸基、ビニル基、及び、アミノ基が挙げられ、本発明の効果がより優れる点から、ボロン酸基が好ましい。
【0114】
繰り返し単位(4)の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例において、n1は2以上の整数を表し、n2は1以上の整数を表す。
【0115】
【0116】
繰り返し単位(4)の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、2~20質量%が好ましく、3~18質量%がより好ましい。繰り返し単位(4)の含有量が2質量%以上であれば、密着性により優れた光学異方性層が得られる。また、繰り返し単位(4)の含有量が20質量%以下であれば、面状均一性により優れた光学異方性層が得られる。
繰り返し単位(4)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(4)が2種以上含まれる場合、上記繰り返し単位(4)の含有量は、繰り返し単位(4)の含有量の合計を意味する。
【0117】
(繰り返し単位(5))
高分子液晶性化合物は、面状均一性の観点から、多官能モノマーを重合して導入される繰り返し単位(5)を含むことができる。特に配向度の低下を抑えながら面状均一性を向上させるためには、この多官能モノマーを重合して導入される繰り返し単位(5)を10質量%以下含むことが好ましい。このように、繰り返し単位(5)を10質量%以下含むことで配向度の低下を抑えながら面状均一性を向上させられる理由としては以下のように推定している。
繰り返し単位(5)は、多官能モノマーを重合して、高分子液晶性化合物に導入される単位である。そのため、高分子液晶性化合物には、繰り返し単位(5)によって3次元架橋構造を形成した高分子量体が含まれていると考えられる。ここで、繰り返し単位(5)の含有量は少ないため、繰り返し単位(5)を含む高分子量体の含有率はわずかであると考えられる。
このように3次元架橋構造を形成した高分子量体が僅かに存在することで、液晶組成物のはじきが抑制されて、面状均一性に優れた光学異方性層が得られたと推測される。
また、高分子量体の含有量が僅かであるため、配向度の低下を抑えられるという効果が維持できたと推測される。
【0118】
上記多官能モノマーを重合して導入される繰り返し単位(5)は、下記式(5)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0119】
【0120】
式(5)中、PC5A及びPC5Bは繰り返し単位の主鎖を表し、より具体的には上記式(1)中のPC1と同様の構造を表し、L5A及びL5Bは単結合又は2価の連結基を表し、より具体的には上記式(1)中のL1と同様の構造を表し、SP5A及びSP5Bはスペーサー基を表し、より具体的には上記式(1)中のSP1と同様の構造を表し、MG5A及びMG5Bはメソゲン構造、より具体的には上記式(LC)中のメソゲン基MGと同様の構造を表し、a及びbは0又は1の整数を表す。
【0121】
PC5A及びPC5Bは、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光学異方性層の配向度がより向上する点から、同一の基であるのが好ましい。
L5A及びL5Bは、いずれも単結合であってもよいし、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光学異方性層の配向度がより向上する点から、いずれも単結合又は同一の基であるのが好ましく、同一の基であるのがより好ましい。
SP5A及びSP5Bは、いずれも単結合であってもよいし、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光学異方性層の配向度がより向上する点から、いずれも単結合又は同一の基であるのが好ましく、同一の基であるのがより好ましい。
ここで、式(5)における同一の基とは、各基が結合する向きを問わずに化学構造が同一であるという意味であり、例えば、SP5Aが*-CH2-CH2-O-**(*はL5Aとの結合位置を表し、**はMG5Aとの結合位置を表す。)であり、SP5Bが*-O-CH2-CH2-**(*はMG5Bとの結合位置を表し、**はL5Bとの結合位置を表す。)である場合も、同一の基である。
【0122】
a及びbはそれぞれ独立に、0又は1の整数であり、光学異方性層の配向度がより向上する点から、1であるのが好ましい。
a及びbは、同一であっても、異なっていてもよいが、光学異方性層の配向度がより向上する点から、いずれも1であるのが好ましい。
a及びbの合計は、光学異方性層の配向度がより向上する点から、1又は2であるのが好ましく(すなわち、式(5)で表される繰り返し単位がメソゲン基を有すること)、2であるのがより好ましい。
【0123】
-(MG5A)a-(MG5B)b-で表される部分構造は、光学異方性層の配向度がより向上する点から、環状構造を有するのが好ましい。この場合、光学異方性層の配向度がより向上する点から、-(MG5A2)a-(MG5B)b-で表される部分構造における環状構造の個数は、2個以上が好ましく、2~8個がより好ましく、2~6個が更に好ましく、2~4個が特に好ましい。
MG5A及びMG5Bが表すメソゲン基はそれぞれ独立に、光学異方性層の配向度がより向上する点から、環状構造を1個以上含むのが好ましく、2~4個含むのが好ましく、2~3個含むのがより好ましく、2個含むのが特に好ましい。
環状構造の具体例としては、芳香族炭化水素基、複素環基、及び脂環式基が挙げられ、これらの中でも芳香族炭化水素基及び脂環式基が好ましい。
MG5A及びMG5Bは、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、光学異方性層の配向度がより向上する点から、同一の基であるのが好ましい。
【0124】
MG5A及びMG5Bが表すメソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性及び合成適性という観点、並びに、本発明の効果がより優れるから、上記式(LC)中のメソゲン基MGであることが好ましい。
【0125】
特に、繰り返し単位(5)は、PC5AとPC5Bが同一の基であり、L5AとL5Bがいずれも単結合又は同一の基であり、SP5AとSP5Bがいずれも単結合又は同一の基であり、MG5AとMG5Bが同一の基であるのが好ましい。これにより、光学異方性層の配向度がより向上する。
【0126】
繰り返し単位(5)の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位の含有量(100質量%)に対して、10質量%以下が好ましく、0.001~5質量%がより好ましく、0.05~3質量%が更に好ましい。
繰り返し単位(5)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(5)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0127】
(星型ポリマー)
高分子液晶性化合物は、星型ポリマーであってもよい。本発明における星型ポリマーとは、核を起点として延びるポリマー鎖を3つ以上有するポリマーを意味し、具体的には、下記式(6)で表される。
高分子液晶性化合物として式(6)で表される星型ポリマーは、高溶解性(溶媒に対する溶解性が優れること)でありながら、配向度の高い光学異方性層を形成できる。
【0128】
【0129】
式(6)中、nAは、3以上の整数を表し、4以上の整数が好ましい。nAの上限値は、これに限定されないが、通常12以下であり、6以下が好ましい。
複数のPIはそれぞれ独立に、上記式(1)、(21)、(22)、(3)、(4)、(5)で表される繰り返し単位のいずれかを含むポリマー鎖を表す。ただし、複数のPIのうちの少なくとも1つは、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー鎖を表す。
Aは、星型ポリマーの核となる原子団を表す。Aの具体例としては、特開2011-074280号公報の[0052]~[0058]段落、特開2012-189847号公報の[0017]~[0021]段落、特開2013-031986号公報の[0012]~[0024]段落、特開2014-104631号公報の[0118]~[0142]段落等に記載の多官能チオール化合物のチオール基から水素原子を取り除いた構造が挙げられる。この場合、AとPIは、スルフィド結合によって結合される。
【0130】
Aの由来となる上記多官能チオール化合物のチオール基の数は、3つ以上が好ましく、4以上がより好ましい。多官能チオール化合物のチオール基の数の上限値は、通常12以下であり、6以下が好ましい。
多官能チオール化合物の具体例を以下に示す。
【0131】
【0132】
高分子液晶性化合物は、配向度を向上させる観点から、サーモトロピック性液晶、かつ、結晶性高分子であってもよい。
【0133】
(サーモトロピック性液晶)
サーモトロピック性液晶とは、温度変化によって液晶相への転移を示す液晶である。
特定化合物は、サーモトロピック性液晶であり、ネマチック相及びスメクチック相のいずれを示してもよいが、光学異方性層の配向度がより高くなり、且つ、ヘイズがより観察され難くなる(ヘイズがより良好になる)理由から、少なくともネマチック相を示すことが好ましい。
ネマチック相を示す温度範囲は、光学異方性層の配向度がより高くなり、かつ、ヘイズがより観察され難くなることから、室温(23℃)~450℃であることが好ましく、取り扱いや製造適性の観点から、40℃~400℃であることがより好ましい。
【0134】
(結晶性高分子)
結晶性高分子とは、温度変化によって結晶層への転移を示す高分子である。結晶性高分子は結晶層への転移の他にガラス転移を示すものであってもよい。
結晶性高分子は、光学異方性層の配向度がより高くなり、かつ、ヘイズがより観察され難くなることから、加熱した時に結晶相から液晶相への転移を持つ(途中にガラス転移があってもよい)高分子液晶性化合物、又は、加熱により液晶状態した後で温度を下降させた時に結晶相への転移(途中にガラス転移があってもよい)を持つ高分子液晶性化合物であることが好ましい。
【0135】
なお、高分子液晶性化合物の結晶性の有無は以下のように評価する。
光学顕微鏡(Nikon社製ECLIPSE E600 POL)の二枚の光学異方性層を互いに直交するように配置し、二枚の光学異方性層の間にサンプル台をセットする。そして、高分子液晶性化合物をスライドガラスに少量乗せ、サンプル台上に置いたホットステージ上にスライドガラスをセットする。サンプルの状態を観察しながら、高分子液晶性化合物が液晶性を示す温度までホットステージの温度を上げ、高分子液晶性化合物を液晶状態にする。高分子液晶性化合物が液晶状態になった後、ホットステージの温度を徐々に降下させながら液晶相転移の挙動を観察し、液晶相転移の温度を記録する。なお、高分子液晶性化合物が複数の液晶相(例えばネマチック相とスメクチック相)を示す場合、その転移温度も全て記録する。
次に、高分子液晶性化合物のサンプル約5mgをアルミパンに入れて蓋をし、示差走査熱量計(DSC)にセットする(リファレンスとして空のアルミパンを使用)。上記で測定した高分子液晶性化合物が液晶相を示す温度まで加熱し、その後、温度を1分保持する。その後、10℃/分の速度で降温させながら、熱量測定を行う。得られた熱量のスペクトルから発熱ピークを確認する。
その結果、液晶相転移の温度以外の温度で発熱ピークが観測された場合は、その発熱ピークが結晶化によるピークであり、高分子液晶性化合物は結晶性を有すると言える。
一方、液晶相転移の温度以外の温度で発熱ピークが観測されなかった場合は、高分子液晶性化合物は結晶性を有さないと言える。
【0136】
結晶性高分子を得る方法は特に制限されないが、具体例としては、上記繰り返し単位(1)を含む高分子液晶性化合物を用いる方法が好ましく、なかでも、上記繰り返し単位(1)を含む高分子液晶性化合物における好適な態様を用いる方法がより好ましい。
【0137】
・結晶化温度
高分子液晶性化合物の結晶化温度は、光学異方性層の配向度がより高くなり、かつ、ヘイズがより観察され難くなることから、-50℃以上150℃未満であることが好ましく、なかでも120℃以下であることがより好ましく、-20℃以上120℃未満であることが更に好ましく、なかでも95℃以下であることが特に好ましい。上記高分子液晶性化合物の結晶化温度は、ヘイズを減らす観点から、150℃未満であることが好ましい。
なお、結晶化温度は、上述したDSCにおける結晶化による発熱ピークの温度である。
【0138】
(分子量)
高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れる点から、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましい。高分子液晶性化合物のMwが上記範囲内にあれば、高分子液晶性化合物の取り扱いが容易になる。
特に、塗布時のクラック抑制の観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、10000~300000がより好ましい。
また、配向度の温度ラチチュードの観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000未満が好ましく、2000以上10000未満が好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0139】
高分子液晶性化合物の液晶性は、ネマチック性及びスメクチック性のいずれを示してもよいが、少なくともネマチック性を示すことが好ましい。
ネマチック相を示す温度範囲は、0℃~450℃であることが好ましく、取り扱いや製造適性の観点から、30℃~400℃であることが好ましい。
【0140】
<含有量>
液晶性化合物の含有量は、液晶組成物の全固形分(100質量%)に対して、本発明の効果がより優れる点から、10~97質量%が好ましく、40~95質量%がより好ましく、60~95質量%が更に好ましい。
液晶性化合物が高分子液晶性化合物を含む場合、高分子液晶性化合物の含有量は、液晶性化合物の全質量(100質量部)に対して、10~99質量%が好ましく、30~95質量%がより好ましく、40~90質量%が更に好ましい。
液晶性化合物が低分子液晶性化合物を含む場合、低分子液晶性化合物の含有量は、液晶性化合物の全質量(100質量部)に対して、1~90質量%が好ましく、5~70質量%がより好ましく、10~60質量%が更に好ましい。
液晶性化合物が高分子液晶性化合物及び低分子液晶性化合物の両方を含む場合、高分子液晶性化合物の含有量に対する低分子液晶性化合物の含有量の質量比(低分子液晶性化合物/高分子液晶性化合物)は、本発明の効果がより優れる点から、5/95~70/30が好ましく、10/90~50/50がより好ましい。
ここで、「液晶組成物における固形分」とは、溶媒を除いた成分をいい、固形分の具体例としては、上記液晶性化合物及び後述する二色性物質、重合開始剤、界面改良剤などが挙げられる。
【0141】
〔特定界面改良剤〕
本発明の液晶組成物が含有する特定界面改良剤は、後述する式(B-1)で表される繰り返し構造B1と、フッ素原子を有する繰り返し構造B2とを有するフッ素含有重合体である。
【0142】
<繰り返し単位B1>
特定界面改良剤が有する繰り返し単位B1は、下記式(B-1)で表される繰り返し単位である。
【化26】
【0143】
上記式(B-1)中、R1は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
また、L1は、単結合、または、-CO-を表す。
また、Spは、炭素数1~20の直鎖状または分岐状の2価の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基の一部を構成する-CH2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH2-は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-NH-、または、-N(Q)-で置換されていてもよく、Qは、置換基を表す。
L2およびL3は、それぞれ独立に、単結合、または、2価の連結基を表す。
【0144】
上記式(B-1)中のR1としては、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましい。
【0145】
上記式(B-1)中のL1としては、-CO-であることが好ましい。
【0146】
上記式(B-1)中のSpが示す炭素数1~20の直鎖状または分岐状の2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20の直鎖状または分岐状の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基、炭素数6~20の2価の芳香族複素環基などが挙げられ、中でも、炭素数1~20の直鎖状または分岐状の2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。
ここで、炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキレン基が好ましく、炭素数1~8のアルキレン基がより好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、メチルヘキシレン基、へプチレン基などが好適に挙げられる。
なお、Spは、上述した通り、炭素数1~20の直鎖状または分岐状の2価の炭化水素基の一部を構成する-CH2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH2-が、それぞれ独立に、-O-、-S-、-NH-、または、-N(Q)-で置換されていてもよい。なお、Qで表される置換基としては、上述した置換基Wが挙げられ、中でも、アルキル基、アルコキシ基、または、ハロゲン原子が好ましい。
【0147】
上記式(B-1)中のL2およびL3の一態様が示す2価の連結基としては、例えば、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NRL1-、-NRL1C(O)-、-SO2-、および、-NRL1RL2-などが挙げられる。式中、RL1およびRL2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。なお、炭素数1~6のアルキル基が有していてもよい置換基としては、上述した置換基Wが挙げられ、中でも、アルキル基、アルコキシ基、または、ハロゲン原子が好ましい。
【0148】
また、上記式(B-1)中、Aは、下記式(A-1)~(A-15)のいずれかで表される2価の連結基を表す。ただし、下記式(A-1)~(A-15)中の*は、L
2またはL
3との結合位置を表し、下記式(A-1)~(A-15)中の環構造を構成する炭素原子は、ヘテロ原子で置換されていてもよく、置換基を有していてもよい。なお、環構造を構成する炭素原子が有していてもよい置換基としては、上述した置換基Wが挙げられ、中でも、アルキル基、アルコキシ基、または、ハロゲン原子が好ましい。
【化27】
【0149】
上記式(A-1)~(A-15)のいずれかで表される2価の連結基としては、具体的には、例えば、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,4-ピペラジン基、1,4-ピペリジン基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基、9-フルオレノン-2,7-ジイル、フルオレン2,7-ジイル基、チエノチオフェン-3,6-ジイル基、カルバゾール-3,6-ジイル基、および、カルバゾール-2,7-ジイル基などが挙げられる。
【0150】
上記式(B-1)中のAは、形成される光学異方性層の配向度がより高くなる理由から、上記式(A-1)、(A-4)、(A-7)、(A-10)および(A-13)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましく、上記(A-7)および(A-13)のいずれかで表される2価の連結基であることがより好ましい。
【0151】
また、上記式(B-1)中、Dは、水素原子と第14~16族の非金属原子とで構成される水素結合性基を表す。ただし、非金属原子は、置換基を有していてもよい。
ここで、第14~16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、および、炭素原子などが挙げられる。
また、非金属原子(特に、窒素原子および炭素原子)が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキル置換アルコキシ基、環状アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、スルホ基、および、水酸基等が挙げられる。
【0152】
このような水素結合性基としては、例えば、水素結合供与性基および水素結合受容性基などが挙げられる。
水素結合供与性基としては、具体的には、例えば、アミノ基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、スルホニルアミノ基、スルホ基、ホスホ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、電子求引性基が置換したメチレン基、電子求引性基が置換したメチン基などが挙げられ、中でも、カルボキシル基、アミド基が好ましい。
水素結合受容性基としては、具体的には、例えば、含ヘテロ環上の非共有電子対を有するヘテロ原子、ヒドロキシ基、アルデヒド、ケトン、カルボキシル基、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ラクトン、ラクタム、スルホン酸アミド、スルホ基、ホスホ基、リン酸アミド、ウレタン、ウレア、エーテル構造(特にポリエーテル構造に含まれる酸素原子を有する高分子構造)、脂肪族アミン、芳香族アミンなどが挙げられ、中でも、カルボキシル基、アミド基が好ましい。
【0153】
また、上記式(B-1)中、nは、1~3の整数を表す。nが2または3である場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のL2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0154】
本発明においては、上記式(B-1)中のnは、光学異方性層のヘイズが観察され難くなる(ヘイズが良好になる)理由から、1または2であることが好ましく、光学異方性層の形成時にハジキがより抑制される理由から、2であることがより好ましい。
【0155】
本発明においては、形成される光学異方性層の配向度がより高くなる理由から、繰り返し単位B1が、上記式(B-1)中のL3が単結合を表し、Dが-COOH、-NHCOR2、または、-CONHR3を表す、繰り返し単位であることが好ましい。
ここで、R2およびR3は、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状の、アルキル基またはアルケニル基を表す。ただし、アルキル基およびアルケニル基の一部を構成する-CH2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH2-は、-O-で置換されていてもよい。
【0156】
また、本発明においては、光学異方性層のヘイズが観察され難くなる理由から、繰り返し単位B1が、上記式(B-1)中のL3が単結合を表し、Dが-NHCOR4を表す、繰り返し単位であることが好ましい。
ここで、R4は、炭素数1~3の直鎖状もしくは分岐状の、アルキル基またはアルケニル基を表す。ただし、アルキル基およびアルケニル基の一部を構成する-CH2-のうち、1個または隣接しない2個以上の-CH2-は、-O-で置換されていてもよい。
【0157】
繰り返し単位B1を形成する単量体としては、例えば、下記式で表されるモノマーが挙げられる。
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0158】
本発明においては、上記繰り返し単位B1の含有量は、フッ素含有重合体の全繰り返し単位の総質量に対して10~85質量%であることが好ましく、15~75質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが更に好ましい。
【0159】
<繰り返し構造B2>
特定界面改良剤が有する繰り返し単位B2は、フッ素原子を有する繰り返し構造である。
【0160】
本発明においては、繰り返し単位B2の含有量は、形成される光学異方性層の配向度がより高くなる理由から、フッ素含有重合体の全繰り返し単位の総質量に対して15~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることが更に好ましい。
なお、繰り返し単位B2は、特定界面改良剤(フッ素含有重合体)中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位B2が2種以上含まれる場合、上記繰り返し単位B2の含有量は、繰り返し単位B2の含有量の合計を意味する。
【0161】
本発明においては、繰り返し単位B2は、液晶性化合物の配向性が良好となる理由から、下記式(F-1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位F-1」とも略す。)、または、下記式(F-2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位F-2」とも略す。)であることが好ましい。
なお、繰り返し単位B2としては、繰り返し単位F-1および繰り返し単位F-2をいずれも含んでいてもよい。
【0162】
(繰り返し単位F-1)
繰り返し単位F-1は、下記式(F-1)で表される繰り返し単位である。
【化32】
【0163】
上記式(F-1)中、LF1は、単結合、または、2価の連結基を表す。
また、R1は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、または、炭素数1~20のアルキル基を表す。
また、RF1は、下記(a)~(e)の少なくとも1つの基を含む基を表す。
(a)下記式(1)~(3)のいずれかで表される基
(b)パーフルオロポリエーテル基
(c)プロトンドナー性官能基とプロトンアクセプター性官能基の水素結合を有し、少なくとも1つの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する炭素数1~20のアルキル基
(d)下記式(1-d)で表される基
(e)下記式(1-e)で表される基
【化33】
【0164】
式(F-1)中、R1は水素原子、フッ素原子、又は、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0165】
式(F-1)中、LF1は単結合又は2価の連結基であり、より具体的には、上記式(W1)中の-LW-SPW-で表される基、炭素数4~20の芳香族炭化水素基、炭素数4~20の環状のアルキレン基、及び、炭素数1~20複素環基が挙げられ、炭素数1~20の直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基、炭素数4~20の芳香族炭化水素基、が好ましく、-O-、-C(O)-O-、-C(O)-NH-、-O-C(O)-を有していることが好ましい。
【0166】
・(a)式(1)、(2)又は(3)で示される基を有する繰り返し単位
式(F-1)のRF1が上記式(1)、(2)又は(3)で示される基を含む場合、式(F-1)は、下記式(4)で表される繰り返し単位であることも好ましい。
【0167】
【0168】
式(4)中、Rfaは上記式(1)、(2)又は(3)で示される基である。
【0169】
式(4)中、R1Bは炭素数2~50の2価の基である。R1Bで表される炭素原子数が2~50の2価の基としては、ヘテロ原子を含んでいてもよく、芳香族基、ヘテロ芳香族基、ヘテロ環基、脂肪族基、脂環式基であってもよい。
R1Bとしては、具体的には、以下の基が挙げられる。
【0170】
-(CH2)n1- (n1=2~50)
-X-Y-(CH2)n2- (n2=2~43)
-X-(CH2)n3- (n3=1~44)
-CH2CH2(OCH2CH2)n4- (n4=1~24)
-XCO(OCH2CH2)n5- (n5=1~21)
【0171】
上記式中、Xは炭素数1~3のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基)、炭素数1~4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)からなる群から選ばれる置換基を1~3個有していてもよいフェニレン、ビフェニレン若しくはナフチレンを示す。Yは、-O-CO-、-CO-O-、-CONH-又は-NHCO-を示す。
Xは、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレンが好ましく、1,4-フェニレンがより好ましい。
【0172】
特に好ましいR1Bで表される炭素原子数が2~50の二価の基としては、具体的に以下の構造の二価の基が挙げられる。
【0173】
-(CH2)n1- (n1=2~10)
-C6H4OCO(CH2)n2- (n2=2~10)
-C6H4(CH2)n3- (n3=1~10)
-CH2CH2(OCH2CH2)n4- (n4=1~10)
-C6H4CO(OCH2CH2)n5- (n5=1~10)
【0174】
式(4)中、R2は水素原子又はメチル基である。
【0175】
・(b)パーフルオロポリエーテル基を有する繰り返し単位
上記式(F-1)中、RF1はパーフルオロポリエーテル基を有することも好ましい。
パーフルオロポリエーテル基とは、複数のフッ化炭素基がエーテル結合で結合された2価の基である。パーフルオロポリエーテル基は、複数のパーフルオロアルキレン基がエーテル結合で結合された2価の基であることが好ましい。
パーフルオロポリエーテル基は、直鎖構造であっても分岐構造であっても環状構造であってもよく、直鎖構造又は分岐構造であることが好ましく、直鎖構造であることがより好ましい。
【0176】
式(F-1)のRF1がパーフルオロポリエーテル基を含有する繰り返し単位を含む場合、式(F-1)は、下記式(I-b)で表される構成単位であることが好ましい。
【0177】
【0178】
式(I-b)中、LF1は式(F-1)におけるものと同じ基を表す。R11は水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は炭素数1~20のアルキル基を表す。Rf1及びRf2はそれぞれ独立に、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。Rf1が複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。Rf2が複数存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。uは1以上の整数を表す。pは1以上の整数を表す。
【0179】
R12は水素原子又は置換基を表し、上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、パーフルオロアルキル基(好ましくは炭素数1~10)、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、ヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)等が挙げられる。
式(I-b)中、uは1以上の整数を表し、1~10を表すことが好ましく、1~6を表すことがより好ましく、1~3を表すことが更に好ましい。
式(I-b)中、pは1以上の整数を表し、1~100を表すことが好ましく、1~80を表すことがより好ましく、1~60を表すことが更に好ましい。
なお、p個の[CRf1Rf2]uOはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0180】
・(c)プロトンドナー性官能基とプロトンアクセプター性官能基の水素結合を有し、少なくとも1つの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する炭素数1~20のアルキル基
上記式(F-1)中、RF1がプロトンドナー性官能基とプロトンアクセプター性官能基の水素結合を有し、少なくともひとつの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する炭素数1~20のアルキル基(以下、「特定アルキル基c」ともいう。)を有することも好ましい。
上記一般式(F-1)中のRF1が特定アルキル基cである場合、式(I)で表される繰り返し単位は、下記一般式(I-c1)で表される繰り返し単位、または、下記一般式(I-c2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0181】
【0182】
上記一般式(I-c1)中、R1は、上述の式(1)のR1と同義であり、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
上記一般式(I-c1)中、XC1
+は、プロトンアクセプター性官能基を有する基を表す。プロトンアクセプター性官能基としては、第4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン等が挙げられる。XC1
+の具体例としては、-C(O)-NH-LC1-XC11
+、-C(O)-O-LC1-XC11
+、および、-XC12
+が挙げられる。LC1は、炭素数1~5のアルキレン基を表す。XC11
+は、第4級アンモニウムカチオンを表す。XC12
+は、ピリジニウムカチオンを表す。
上記一般式(I-c1)中、YC1
-は、プロトンドナー性官能基、および、フルオロアルキル基を有する基を表す。プロトンドナー性官能基としては、-C(O)O-、-S(O)2O-等が挙げられる。YC1
-の具体例としては、RC1-C(O)O-、および、RC1-S(O)2O-が挙げられる。RC1は、炭素数2~15のフルオロアルキル基、炭素数2~15のフルオロアルキル基の1個以上の炭素原子が-O-および-C(O)-の少なくとも一方で置換された基、または、これらの基を置換基として有するフェニル基、を表す。
【0183】
【0184】
上記一般式(I-c2)中、R1は、上述の式(1)のR1と同義であり、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
上記一般式(I-c2)中、YC2
-は、プロトンドナー性官能基を有する基を表す。プロトンドナー性官能基としては、-C(O)O-、-S(O)2O-等が挙げられる。YC2
-の具体例としては、-C(O)-NH-LC2-YC21
-、-C(O)-O-LC2-YC21
-が挙げられる。LC2は、炭素数1~5のアルキレン基を表す。YC21
-は、-C(O)O-または-S(O)2O-を表す。
上記一般式(I-c2)中、XC2
+は、プロトンアクセプター性官能基(例えば、第4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン等)、および、フルオロアルキル基を有する基を表す。XC2
+の具体例としては、RC2-XC21
+が挙げられる。RC2は、炭素数2~15のフルオロアルキル基、または、炭素数2~15のフルオロアルキル基の1個以上の炭素原子が-O-および-C(O)-の少なくとも一方で置換された基、または、これらの基を置換基として有するフェニル基、を表す。XC21
+は、第4級アンモニウムカチオンを表す。
【0185】
一般式(F-1)中のRF1が特定アルキル基cである繰り返し単位の製造方法としては、プロトンアクセプター性官能基を有する繰り返し単位に、後述のプロトンドナー性官能基を有する化合物を反応させる方法、および、プロトンドナー性官能基を有する繰り返し単位に、後述のプロトンアクセプター性官能基を有する化合物を反応させる方法、が挙げられる。
プロトンドナー性官能基を有する化合物及びプロトンアクセプター性官能基を有する化合物は、下記式(1-1)~(1~3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0186】
(HB-X1)m-X3-(X2-RL)n ・・・(1-1)
(HB)-(X2-RL)n ・・・(1-2)
(HB-X1)m-(RL) ・・・(1-3)
【0187】
上記式(1-1)及び上記式(1-3)中、mは、1~5の整数を表し、上記式(1-1)及び上記式(1-2)中、nは、1~5の整数を表す。ただし、m及びnの合計は、2~6の整数を表す。
また、上記式(1-1)~(1-3)中、HBは、上述した水素結合可能な官能基(すなわち、プロトンドナー性官能基及びプロトンアクセプター性官能基)を表し、mが2~5の整数である場合、複数のHBは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
プロトンドナー性官能基としては、カルボキシ基、スルホン酸基等が挙げられる。
プロトンアクセプター官能基としては、窒素原子を含む基が挙げられる。
【0188】
また、上記式(1-1)~(1-3)中、X1及びX2は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、mが2~5の整数である場合、複数のX1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、nが2~5の整数である場合、複数のX2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、上記式(1-2)中、HB及びX2は、HBとX2の一部とで環を形成していてもよく、上記式(1-3)中、RL及びX1は、RLとX1の一部とで環を形成していてもよい。
上記式(1-1)~(1-3)中のX1及びX2の一態様が示す2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、及び、置換基を有していてもよいイミノ基(-NH-)からなる群から選択される少なくとも1以上の基が挙げられる。
【0189】
ここで、アルキレン基、アリーレン基及びイミノ基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基又はエチル基であるのが特に好ましい。アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのが特に好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、なかでも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0190】
炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基について、直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デシレン基などが挙げられる。また、分岐状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチル-2-メチルプロピレン基などが挙げられる。また、環状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンタン-ジイル基、ノルボルナン-ジイル基、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン-ジイル基などが挙げられる。
【0191】
炭素数6~12のアリーレン基としては、具体的には、例えば、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、2,2’-メチレンビスフェニル基などが挙げられ、なかでも、フェニレン基が好ましい。
【0192】
また、上記式(1-1)中、X3は、単結合又は2~6価の連結基を表す。ここで、X3の一態様が示す2価の連結基としては、上記式(1-1)~(1-3)中のX1及びX2の一態様が示す2価の連結基として説明したものが挙げられる。また、X3の一態様が示す3~6価の連結基としては、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環などのシクロアルキレン環;ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環等などの芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環等の芳香族複素環;などの環構造において、環を形成している炭素原子に結合している水素原子を3~6個除いた構造が挙げられる。これらの環構造のなかでも、ベンゼン環(例えば、ベンゼン-1,2,4-イル基など)が好ましい。
【0193】
また、上記式(1-1)~(1-3)中、RLは、フッ素原子を含む置換基又は炭素数6以上のアルキル基を表し、nが2~5の整数である場合、複数のRLは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。ここで、フッ素原子を含む1価の置換基としては、例えば、少なくとも1つの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基が挙げられる。
【0194】
上記式(1-1)~(1-3)のいずれかで表される化合物のうち、プロトンドナー性官能基を有する化合物としては、具体的には、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0195】
【0196】
また、上記式(1-1)~(1-3)のいずれかで表される化合物のうち、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物としては、具体的には、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0197】
【0198】
・(d)式(1-d)で表される基
【0199】
【0200】
式(1-d)中、
Xは、水素原子、又は、置換基(好ましくは、上記「SP-H」で表される基)を表し、
T10は、末端基(好ましくは上記T1と同じ基)を表し、
lは1~20の整数を表し、mは0~2の整数を表し、nは1~2の整数を表し、m+nは2である。
lが2以上の時、複数の-(CXmFn)-は同一であっても異なっていてもよい。
【0201】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、-OZH、-C(O)ZH、-C(O)OZH、-OC(O)ZH、-NZHZH’、-NZHC(O)ZH’、-NZHC(O)OZH’、-C(O)NZHZH’、-OC(O)NZHZH’が好ましく、水素原子、フッ素原子、-ZH、又は、-OZH、が更に好ましい。ZH及びZH’はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、を表し、炭素数が1~4であることが好ましい。
T10は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OZH、-C(O)ZH、-C(O)OZH、-OC(O)ZH、又は、上述の式(P1)~(P30)で表わされる架橋性基、が好ましく、水素原子、フッ素原子、炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OZH、ビニル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、がより好ましい。ZHは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、を表し、炭素数が1~4であることが好ましい。
【0202】
・(e)式(1-e)で表される基
【0203】
【0204】
式(1-e)中、
R2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は炭素数1~20のアルキル基を表し、
LF2は、単結合又は2価の連結基を表し、
RF11およびRF12はそれぞれ独立に、パーフルオロポリエーテル基を表し、
*は、上記式(F-1)におけるLF1との結合位置を表す。
【0205】
R2及びLF2の好適態様はそれぞれ、式(F-1)のR1およびLF1と同様である。
RF11およびRF12の好適態様は、式(F-1)のRF1と同様である。
【0206】
上記式(F-1)で表される繰返し単位を形成する単量体としては、具体的には、例えば、下記式(F1-1)~(F1-41)で表される構造が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0207】
【0208】
繰り返し単位F-1の含有量は、フッ素含有重合体の全繰り返し単位の総質量に対して、10~98質量%が好ましく、15~90質量%がより好ましく、20~85質量%が更に好ましい。繰り返し単位F-1の含有量が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより優れる。
繰り返し単位F-1は、特定界面改良剤中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位F-1が2種以上含まれる場合、上記繰り返し単位F-1の含有量は、繰り返し単位F-1の含有量の合計を意味する。
【0209】
(繰り返し単位F-2)
繰り返し単位F-2は、下記式(F-2)で表される繰り返し単位である。
【0210】
【0211】
式(F-2)中、
R2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は、炭素数1~4のアルキル基を表し、 LF2は、上記式(F-1)中のLF1と同じ基を表し、
SP21及びSP22はそれぞれ独立に、スペーサー基を表し、
DF2は、(m2+1)価の基を表し、
T2は、末端基を表し、
RF2は、フッ素原子を含む基を表し、
n2は2以上の整数を表し、m2は2以上の整数を表し、m2≧n2である。
複数の-SP22-RF2は、同一であっても異なっていてもよい。T2が複数存在する場合は、複数のT2は、同一であっても異なっていてもよい。
【0212】
式(F-2)中、R2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0213】
式(F-2)中、DF2は(m2+1)価の基を表し、具体的には、3級炭素原子(-C(H)<)、4級炭素原子(>C<)、窒素原子、リン酸エステル基(P(=O)(-O-)3)、炭素数2~20の分岐アルキレン基、炭素数4~15の芳香環、炭素数4~15の脂肪族環、及び、複素環、等が挙げられる。
分岐アルキレン基、芳香環、及び、脂肪族環中の炭素原子は、上記「SP-C」で置き換えられていてもよい。
分岐アルキレン基、芳香環、脂肪族環中の水素原子は、上記「SP-H」で置き換えられていてもよい。
DF2は、炭素原子(3級炭素原子又は4級炭素原子)、窒素原子、ベンゼン環、シクロヘキサン環、又は、シクロペンタン環であることが好ましい。
【0214】
SP21及びSP22はそれぞれ独立に、スペーサー基を表し、上記式(W1)中のSPWが挙げられる。
SP21及びSP22としては、単結合、炭素数1~10の直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基が好ましい。ここで、アルキレン基の炭素原子は、-O-、-S-、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(O)-、-C(S)-、-OC(O)-、-OC(S)-、-SC(O)-、-C(O)O-、-C(S)O-、-C(O)S-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、(ZおよびZ’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)で置換されていてもよい。また、アルキレン基の水素原子は、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されていてもよい。
【0215】
T2は、水素原子、ハロゲン原子、-OH、-COOH、炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OZH、-C(O)ZH、-C(O)OZH、-OC(O)ZH、式(P1)~(P30)で表わされる架橋性基、が好ましく、水素原子、フッ素原子、-OH、-COOH、-ZH、-OZH、ビニル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、がより好ましい。ZHは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、を表し、炭素数が1~4であることが好ましい。
【0216】
RF2は、フッ素原子を含む基を表し、中でも、フッ素原子、上記式(F-1)中のRF1、又は、上記T2のうちフッ素原子を含む基が好ましい。
【0217】
式(F-2)中、m2は2~8であることが好ましく、2~6であることがより好ましい。n2は2~4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
【0218】
式(F-2)で表される繰り返し単位は、酸又は塩基などによって開裂し、RF2がポリマー側鎖から脱離する開裂型であってもよい。これにより、上層塗布性が良好となる。
【0219】
式(F-2)で表される繰返し単位としては、例えば、下記式(F2-1)~(F2-39)で表される繰り返し単位が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0220】
【0221】
【0222】
繰り返し単位F-2の含有量は、フッ素含有重合体の全繰り返し単位の総質量に対して、5~95質量%が好ましく、7~90質量%がより好ましく、10~85質量%が更に好ましい。繰り返し単位F-2の含有量が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより優れる。
繰り返し単位F-2は、特定界面改良剤中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位F-2が2種以上含まれる場合、上記繰り返し単位F-2の含有量は、繰り返し単位F-2の含有量の合計を意味する。
【0223】
<繰り返し構造B3>
本発明においては、形成される光学異方性層に対する上層塗布性が良好となる理由から、特定界面改良剤(フッ素含有重合体)が、上述した繰り返し単位B1およびB2以外に、更に、分子量300以下のモノマーから誘導される繰り返し構造B3を含有していることが好ましい。
また、繰り返し単位B3の含有量は、フッ素含有重合体の質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
【0224】
繰り返し単位B3としては、形成される光学異方性層に対する上層塗布性がより良好となる理由から、下記式(N-1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。繰り返し単位B3は、上述した繰り返し単位B2とは異なる構造を有しており、フッ素原子を含まないことが好ましい。
【化46】
【0225】
式(N-1)中、RB11及びRB12はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、RB11及びRB12が置換基である場合、RB11及びRB12が連結して環を形成していてもよい。
【0226】
RB11の分子量及びRB12の分子量の合計は、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、70以下であることが更に好ましい。上記分子量の合計が100以下であれば、繰り返し単位B3間での相互作用がより向上して、特定界面改良剤と液晶分子との相溶性をより低下させることができる。これにより、配向欠陥が少なく、優れた配向度の光学異方性層が得られる。
RB11の分子量及びRB12の分子量の合計の下限は、2以上が好ましい。
【0227】
RB11及びRB12が表す置換基としては、本発明の効果がより優れる点から、有機基であることが好ましく、炭素数1~15の有機基であることがより好ましく、炭素数1~12の有機基であることが更に好ましく、炭素数1~8の有機基であることが特に好ましい。
上記有機基としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、芳香族炭化水素基、複素環基が挙げられる。
【0228】
アルキル基の炭素数は、1~15が好ましく、1~12がより好ましく、1~8が更に好ましい。
アルキル基の炭素原子は、-O-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’及びZ”はそれぞれ独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、又は、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-C(S)-、-S(O)-、-SO2-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、及び、-C(O)S-、並びに、これらの基を2つ以上組み合わせた基で置換されていてもよい。アルキル基の炭素原子が置換されてもよい基の中でも、本発明の効果がより優れる点から、-O-、-C(O)-、-N(Z)-、-OC(O)-、又は、-C(O)O-が好ましい。
アルキル基の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基、アリール基、ニトロ基、-OZH、-C(O)ZH、-C(O)OZH、-OC(O)ZH、-OC(O)OZH、-NZHZH’、-NZHC(O)ZH’、-NZHC(O)OZH’、-C(O)NZHZH’、-OC(O)NZHZH’、-NZHC(O)NZH’OZH’’、-SZH、-C(S)ZH、-C(O)SZH、又は、-SC(O)ZH、で置換されていてもよい。ZH、ZH’及びZH’’はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、を表す。アルキル基の水素原子が置換されてもよい基の中でも、本発明の効果がより優れる点から、-OH、-COOH、又は、アリール基(フェニル基が好ましい。)が好ましい。
【0229】
芳香族炭化水素基の水素原子及び複素環基の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OZH、-C(O)ZH、-C(O)OZH、-OC(O)ZH、-OC(O)OZH、-NZHZH’、-NZHC(O)ZH’、-NZHC(O)OZH’、-C(O)NZHZH’、-OC(O)NZHZH’、 -NZHC(O)NZH’OZH’’、-SZH、-C(S)ZH、-C(O)SZH、-SC(O)ZH、-B(OH)2で置換されていてもよい。ZH、ZH’及びZH’’はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、を表す。芳香族炭化水素基の水素原子及び複素環基の水素原子が置換されてもよい基の中でも、本発明の効果がより優れる点から、-OH、-B(OH)2が好ましい。
【0230】
RB11及びRB12はそれぞれ独立に、本発明の効果がより優れる点から、水素原子又は炭素数1~15の有機基であることが好ましい。有機基の好適態様については、上述の通りである。
本発明の効果がより優れる点から、RB11及びRB12のうち、少なくとも一方が置換基であることが好ましく、少なくとも一方が炭素数1~15の有機基であることがより好ましい。
【0231】
RB11及びRB12が連結して形成された環は、式(N-1)における窒素原子を含む複素環であり、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子等のヘテロ原子を環内に更に含んでいてよい。
RB11及びRB12が連結して形成された環は、本発明の効果がより優れる点から、4~8員環であることが好ましく、5~7員環であることがより好ましく、5~6員環であることが更に好ましい。
RB11及びRB12が連結して形成された環を構成する炭素原子の数は、本発明の効果がより優れる点から、3~7が好ましく、3~6がより好ましい。
RB11及びRB12が連結して形成された環は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよいが、本発明の効果がより優れる点から、芳香族性を有していないことが好ましい。
RB11及びRB12が連結して形成された環の具体例としては、以下の基が挙げられる。
【0232】
【0233】
RB13は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、中でも、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
上記アルキル基の炭素数は、1~5であり、1~3が好ましく、1がより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれの構造であってもよい。
【0234】
繰り返し単位B3の具体例を以下に示すが、繰り返し単位B3は以下の構造に限定されるものではない。
【0235】
【0236】
繰り返し単位B3の含有量は、フッ素含有重合体の全繰り返し単位の総質量に対して、3~75質量%が好ましく、15~70質量%がより好ましく、20~65質量%が更に好ましい。繰り返し単位B3の含有量が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより優れる。
繰り返し単位B3は、特定界面改良剤中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位B3が2種以上含まれる場合、上記繰り返し単位B3の含有量は、繰り返し単位B3の含有量の合計を意味する。
【0237】
<他の繰り返し単位(その1)>
特定界面改良剤(フッ素含有重合体)は、更に下記一般式(M-3)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【化49】
【0238】
上記式(M-3)中、R3は水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は炭素数1~20のアルキル基を表し、L3は、単結合または2価の連結基を表し、T3は芳香環を表す。
L3の連結基としては、上記式(F-2)中のSP21と同様の基が挙げられる。
T3の芳香環基としては、例えば、ベンゼン環基、ナフタレン環基、アントラセン環基、および、フェナンスロリン環基等の芳香族炭化水素環基;フラン環基、ピロール環基、チオフェン環基、ピリジン環基、チアゾール環基、および、ベンゾチアゾール環基等の芳香族複素環基;が挙げられる。なかでも、ベンゼン環基(例えば、1,4-フェニル基等)が好ましい。これらの基を重合体中に含むことで、相溶性を向上させることができる。
【0239】
上記式(M-3)で表される繰返し単位を形成する単量体としては、具体的には、例えば、下記式(M3-1)~(M3-5)で表される構造が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化50】
【0240】
<他の繰り返し単位(その2)>
特定界面改良剤(フッ素含有重合体)は、更に下記一般式(M-4)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【化51】
【0241】
上記式(M-4)中、R4は水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は炭素数1~20のアルキル基を表し、L4は、単結合または2価の連結基を表し、Q4は上述の式(P1)~(P30)で表される架橋性基を表す。
L4の連結基としては、上記式(W1)中のSPWと同様の基が挙げられ、炭素数4~20の芳香族炭化水素基、炭素数4~20の環状のアルキレン基、炭素数1~20複素環基が挙げられ、炭素数1~20の直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基、炭素数4~20の芳香族炭化水素基、が好ましく、-O-、-CO-O-、-CO-NH-、-O-CO-を有していることが好ましい。
【0242】
Q4がカチオン重合性基を含む基を表す場合、カチオン重合性基としては、特に限定されず、例えば、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。
カチオン重合性基としては、脂環式エーテル基又はビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、オキセタニル基又はビニルオキシ基がより好ましく、エポキシ基又はオキセタニル基がさらに好ましく、エポキシ基が特に好ましい。エポキシ基としては脂環式エポキシ基であることが特に好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していても良い。
Q4がラジカル重合性基を含む基を表す場合、ラジカル重合性基としては、特に限定されず、例えば、重合性炭素-炭素二重結合を含む基が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、スチリル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。これらの基を含むことで、例えば後述する液晶フィルムにおいて複数の液晶組成物層を積層する形態とした際の層間の密着性を向上させることができる。
【0243】
上記式(M-4)で表される繰返し単位を形成する単量体としては、具体的には、例えば、下記式(M4―1)~(M4-17)で表される単量体が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化52】
【0244】
特定界面改良剤(フッ素含有重合体)は、ブロック構造、グラフト構造、ブランチ構造またはスター構造を有する重合体であってもよい。このようなブロック構造、グラフト構造、ブランチ構造またはスター構造を有することで、フッ素原子団が塊として存在し、重合体の塗膜表面への移行性が向上する等の点で好ましい。
また、フッ素置換アルキル鎖長が1~4のランダム構造を有する共重合体においては、フッ素原子団の塊が小さく、汎用溶剤への溶解性は優れるものの、塗膜表面への移行性は低い。一方、上記の重合体は、フッ素原子団が塊として存在することに起因し、フッ素置換アルキル鎖長が1~4でも塗膜表面への移行性が高く、このような共重合体を組成物中に添加することで、塗膜の表面張力を低下させ、塗工時における組成物の基材に対するぬれ性(均質塗工性)、塗膜表面の面状を良好なものとできることから好ましい。
【0245】
特定界面改良剤(フッ素含有重合体)は、後述する一次構造を有することが好ましい。
この一次構造は、特定界面改良剤を形成する繰り返し単位が1種である場合、グラフト構造、分岐構造又はスター構造であり、上記繰り返し単位が2種以上である場合、ブロック構造、グラフト構造、分岐構造又スター構造である。
特定界面改良剤は、上記一次構造を1種有していても、2種以上を有していてもよい。
【0246】
まず、特定界面改良剤が有し得る一次構造について、模式図を参照して説明するが、本発明はこれらの一次構造に限定されない。以下の説明においては、理解のため、1~4種の繰り返し単位A~Dからなるポリマー(共重合体)を例に挙げるが、本発明においては、後述するように、繰り返し単位は1~4種に限定されない。また、図中における繰り返し単位A、B、C及びDはそれぞれ別の構造(繰り返し単位)で置き換えることができる。
【0247】
本発明において、「主鎖方向」とは、特定界面改良剤(フッ素含有重合体)を形成する各部分構造において、この部分構造を形成する繰り返し単位の結合方向を意味する。
また、本発明において、「繰り返し単位からなる」とは、特定の繰り返し単位のみからなる態様に加えて、特定の繰り返し単位と、これとは別の1種以上の繰り返し単位からなる態様を包含する。別の繰り返し単位としては、特に限定されないが、例えば、グラフト鎖を導入するための、重合性基を有する化合物由来の繰り返し単位、又は、後述する、2種以上の構成成分からなる繰り返し単位が挙げられる。
【0248】
・ブロック構造
ブロック構造とは、単一種の繰り返し単位からなる部分構造同士の主鎖方向が、ポリマー鎖内において単一の直線方向である構造をいう。ブロック構造は、2種以上の繰り返し単位からなる。
本発明において、1つの繰り返し単位が2種以上の構成成分からなる場合、単一種の繰り返し単位からなる部分構造は、各構成成分が同一である繰り返し単位が結合してなる部分構造と、構成成分の少なくとも一つが異なる繰り返し単位を含んでなる部分構造を含む。
【0249】
特定界面改良剤が有し得るブロック構造は、上記したものであれば特に限定されず、例えば、
図1A~
図1E(合わせて
図1ということがある。)に示す構造が挙げられる。
図1において、A~Dは互いに異なる繰り返し単位を表す(
図2~5においても同じ)。
図1Aに示すブロック構造は、繰り返し単位Aからなる部分構造と、繰り返し単位Bからなる部分構造とが、ポリマー鎖内において単一の直線方向に、結合したブロック構造(A-B型)である。
図1Bに示すブロック構造は、繰り返し単位Aからなる部分構造の両端部に対し、繰り返し単位Bからなる部分構造がポリマー鎖内において単一の直線方向に結合したブロック構造(B-A-B型)である。
図1Cに示すブロック構造は、繰り返し単位Bからなる部分構造と、繰り返し単位Aからなる部分構造と、更に第3成分として繰り返し単位Cからなる部分構造とが、この順で、ポリマー鎖内において単一の直線方向に結合したブロック構造である。
図1Dに示すブロック構造は、
図1Cに示すブロック構造において、繰り返し単位Cからなる部分構造に、更に第4成分として繰り返し単位Dからなる部分構造がポリマー鎖内において単一の直線方向に結合したブロック構造である。
図1Eに示すブロック構造は、繰り返し単位Aからなる部分構造と、繰り返し単位Bからなる部分構造とが、ポリマー鎖内において単一の直線方向に交互に2回繰り返された(結合した)ブロック構造である。
【0250】
ブロック構造を有するポリマーは、ブロック共重合体の通常の重合方法により、得ることができる。例えば、リビングラジカル重合法、リビングカチオン重合、又は、リビングアニオン重合法が挙げられる。リビングラジカル重合法、リビングカチオン重合、又は、リビングアニオン重合法の例として、「精密ラジカル重合ガイドブック(Aldrich)」、
(URL:http://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/polymer-science/crp-guide.html)、
又は、遠藤剛編、澤本光男他著、「高分子の合成(上)-ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合」、講談社、2010年、p60、p105-108、p249-259及びp381-386
を参照できる。
【0251】
図1Bに示すブロック構造を持つポリマーは、例えば、以下に示すように、リビングラジカル重合法における原子移動ラジカル重合(ATRP)法を用いて、末端構造(繰り返し単位B)を開始点として、各繰り返し単位となるモノマーを順に反応させることにより繰り返し単位を伸長させて、合成することもできる。
【0252】
【0253】
Rは、末端基を示し、後述する末端構造の末端基と同義である。
【0254】
また、
図1Bに示すブロック構造を持つポリマーは、例えば、以下に示すように、ブロモ化合物等を連鎖移動剤として用いて、連鎖移動剤を中心点として、その両側に繰り返し単位を伸長して合成することできる。なお、この場合、下記のように、繰り返し単位Aからなる2つの部分構造間に連鎖移動剤の残基が介在する。
【0255】
【0256】
・グラフト構造
グラフト構造とは、下記の条件(G-1)~(G-3)をともに満たすものを意味する。
(G-1)1種類又は2種類以上の繰り返し単位からなるポリマーPAG1(幹ポリマーともいう)に対し、1種類又は2種類以上の繰り返し単位からなる別のポリマーPBG1(枝ポリマーともいう)が1つ以上結合した構造である。
(G-2)ポリマー鎖内において、上記ポリマーPBG1の主鎖方向と、上記ポリマーPAG1の主鎖方向とは異なる。
(G-3)上記ポリマーPBG1に対し、上記ポリマーPBG1の主鎖方向と異なる主鎖方向を有するポリマーPBG2が結合していない。
【0257】
上記グラフト構造において、上記ポリマーPAG1及び上記ポリマーPBG1は、同一であっても異なっていてもよく、上記ポリマーPBG1が複数存在する場合も、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、上記ポリマーPAG1及び上記ポリマーPBG1を形成する繰り返し単位の結合様式(構造)は、各ポリマーにおいて単一の直線方向に結合したものであれば特に限定されず、ブロック構造でもランダム構造でもよい。
更に、ポリマーPAG1に結合するポリマーPBG1の数は、1つ以上であればよく、フッ素重合体の特性等に応じて適宜に決定される。例えば、1個以上とすることができ、200個以下とすることができる。好ましくは100個以下であり、より好ましくは50個以下である。
【0258】
本発明のフッ素重合体が有するグラフト構造は、上記したものであれば特に限定されず、例えば、
図2A~
図2G(合わせて
図2ということがある。)に示す構造が挙げられる。
図2Aに示すグラフト構造は、繰り返し単位AからなるポリマーPA
G1(幹ポリマー)に対し、繰り返し単位AからなるポリマーPB
G1(枝ポリマー)が3本結合したグラフト構造である。
図2Bに示すグラフト構造は、繰り返し単位AからなるポリマーPA
G1(幹ポリマー)に対し、繰り返し単位AからなるポリマーPB
G1(枝ポリマー)が6本結合したグラフト構造である。
図2Cに示すグラフト構造は、繰り返し単位AからなるポリマーPA
G1(幹ポリマー)に対し、繰り返し単位BからなるポリマーPB
G1(枝ポリマー)が3本結合したグラフト構造である。
【0259】
図2D~
図2Gに示すグラフト構造は、更に、第3成分として繰り返し単位C、上記繰り返し単位Cと第4成分として繰り返し単位Dを有するグラフト構造である。
すなわち、
図2Dに示すグラフト構造は、繰り返し単位A及び繰り返し単位Cからなるランダム構造のポリマーPA
G1(幹ポリマー)に対し、繰り返し単位BからなるポリマーPB
G1(枝ポリマー)が3本結合したグラフト構造である。
図2Eに示すグラフト構造は、繰り返し単位AからなるポリマーPA
G1(幹ポリマー)に対し、繰り返し単位BからなるポリマーPB
G1-Bが2本と、繰り返し単位CからなるポリマーPB
G1―Cが1本結合したグラフト構造である。
図2Fに示すグラフト構造は、繰り返し単位AからなるポリマーPA
G1(幹ポリマー)に対し、繰り返し単位B及びCからなるブロック構造(交互共重合構造を含む)のポリマーPB
G1-BCが3本結合したグラフト構造である。
図2Gに示すグラフト構造は、繰り返し単位A及びBからなるランダム構造のポリマーPA
G1―AB(幹ポリマー)に対し、繰り返し単位C及びDからなるブロック構造(交互共重合構造を含む)のポリマーPB
G1-CDが3本結合したグラフト構造である。
【0260】
グラフト構造を有するポリマーは、グラフト共重合体の通常の重合方法により、得ることができる。例えば、末端に重合性官能基(Y)を有するマクロモノマー(Y-B-B-B-B-B)を単独重合、若しくは、このマクロモノマーと同一のモノマー(B)若しくは異種のモノマー(A)と共重合するgrafting through法(
図3に示す合成法1))、末端官能性ポリマー(Z-B-B-B-B-B)の反応性基を利用して、他のポリマー鎖に結合させるgrafting to法(
図3に示す合成法2))、又は、重合開始点(X)を側鎖に持つポリマーとモノマー(B)を反応させて、繰り返し単位Bを有するポリマー鎖を生やすgrafting from法(
図3に示す合成法3))が挙げられる。これらの詳細は、例として、遠藤剛編、澤本光男他著、「高分子の合成(上)-ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合」、講談社、2010年、p60、p108-110
及びp387-393を参照できる。
図3において、X及びYは重合反応性基を表し、W及びZは反応性基を表す。ここで、Zが表す反応性基とは、反応性基Wに対して重合とは異なる反応によってポリマーの部分構造を形成する基となるものを意味する。
【0261】
grafting through法に用いられるマクロモノマーとしては、グラフトポリマーの合成に通常用いられるものであれば特に限定されない。マクロモノマーは、市販品を用いてもよいし、適宜に合成したものを用いてもよい。マクロモノマーの合成方法としては、例えば、特開平5-295015号公報に記載の方法、又は、3-メルカプト-1-プロパノール等の連鎖移動剤とモノマーとの重合物と、イソシアネート基と重合性基を持つ化合物とを、例えばスズ触媒存在下で、反応させる方法等が挙げられる。また、マクロモノマーの合成法として、山下雄也著、「マクロモノマーの化学と工業」、アイピーシー出版部、1989年を、参照することができる。
【0262】
・スター構造
スター構造(星型構造)とは、下記の条件(S-1)~(S-3)をともに満たすものを意味する。
(S-1)ポリマー中に核を1つ有する。
(S-2)上記核に対し、1種類又は2種類以上の繰り返し単位からなるポリマーPAS1が3つ以上結合している。
(S-3)上記ポリマーPAS1に対し、上記ポリマーPAS1の主鎖方向と異なる主鎖方向を有し、かつ、1種類又は2種類以上の繰り返し単位からなるポリマーPBS1が結合していない。
【0263】
上記スター構造において、核に結合するポリマーPAS1の数は、3つ以上であればよく、フッ素重合体(特定含界面改良剤)の特性等に応じて適宜に決定される。ポリマーPAS1の数は、通常、後述する端部の数と同じである。複数存在するポリマーPAS1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、「核」とは、上記ポリマーPAS1が結合可能な多分岐構造(基)を意味し、多数(例えば2~12本)のポリマーが生える中心点となる。
上記スター構造において、ポリマーPAS1を形成する繰り返し単位の結合様式(構造)は、特に限定されず、ブロック構造でもランダム構造でもよい。
【0264】
特定含界面改良剤が有し得るスター構造は、上記したものであれば特に限定されず、例えば、
図4A~
図4D(合わせて
図4ということがある。)に示す構造が挙げられる。
図4Aに示すスター構造は、繰り返し単位AからなるポリマーPA
S1が核に対して4本結合した構造である。
図4Bに示すスター構造は、繰り返し単位A及びBをランダム構造で有するポリマーPA
S1が核に対して4本結合した構造である。
図4Cに示すスター構造は、繰り返し単位Aからなる部分構造及び繰り返し単位Bからなる部分構造をブロック構造で有するポリマーPA
S1が、その繰り返し単位Aを介して、核に対して4本結合した構造である。
図4Dに示すスター構造は、繰り返し単位AからなるポリマーPA
S1が核に対して8本結合した構造である。
【0265】
スター構造を有するポリマーは、スター共重合体の通常の重合方法により、得ることができる。例えば、多官能性開始剤を用いる方法、多官能性停止剤を用いる方法、ジビニル化合物によるリンキング反応を用いる方法が挙げられ、多官能性開始剤を用いる方法が好ましい。
上述した重合方法については、遠藤剛編、澤本光男他著、「高分子の合成(上)-ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合」、講談社、2010年、p110-113を参照することができる。
更に、スター構造を有するポリマーの合成には、アニオン重合も用いることができ、遠藤剛編、澤本光男他著、「高分子の合成(上)-ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合」、講談社、2010年、p395-402を参照することができる。
【0266】
スター構造を形成する核としては、通常用いられる化合物を特に限定されることなく、使用できる。例えば、核となる化合物として、有機化合物(例えば、多置換芳香族環、糖、カリックスアレン若しくはデンドリマー)、無機化合物(例えば、環状シロキサン若しくはリンアミド)、又は、中心に金属を有する多座金属錯体などが挙げられる。
上述した核としては、以下に記載の化合物が例として挙げられる。また、遠藤剛編、澤本光男他著、「高分子の合成(上)-ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合」、講談社、2010年、p110-113を参照することができる。
【0267】
【0268】
・分岐構造
分岐構造とは、下記の条件(B-1)~(B-3)をともに満たすものを意味する。
(B-1)ポリマー中に核を1つ以上有する。
(B-2)上記核に対し、1種類又は2種類以上の繰り返し単位からなるポリマーPAB1が2つ以上結合している。
(B-3)上記ポリマーPAB1に対し、上記ポリマーPAB1の主鎖方向と異なる主鎖方向を有し、かつ、1種類又は2種類以上の繰り返し単位(世代)からなるポリマーPBB1が(核を介して)結合している。
上記条件(B-3)は、複数回満たすことができる。すなわち、上記のように結合したポリマーPBB1に対して、更に別のポリマーPBB1が(B-3)に規定の方向に結合する(各世代が繰り返してポリマー化する)ことができる(樹木状多分岐構造)。この場合、条件(B-3)を満たす複数回は、2回以上であればよく、フッ素重合体の特性等に応じて適宜に決定される。例えば、2~7回とすることができる。
【0269】
上記分岐構造において、上記ポリマーPAB1及び上記ポリマーPBB1は、同一であっても異なっていてもよい。また、上記ポリマーPAB1及び上記ポリマーPBB1を形成する繰り返し単位の結合様式(構造)は、特に限定されず、ランダム構造、ブロック構造、グラフト構造又はスター構造でもよい。すなわち、ブランチ構造には、例えば、核から生えるポリマーが、末端方向に従って、次々と分岐していく樹木状多分岐構造、更には、ブロック構造、グラフト構造及び/又はスター構造を組み合わせた構造等も、含まれる。ブランチ構造においては、分岐ごとに繰り返し単位を変更することもできる。
更に、ポリマー中に有する核の数は、1つ以上であればよく、フッ素重合体の特性等に応じて適宜に決定される。例えば、1個以上とすることができ、150個以下とすることができる。また、核に結合するポリマーPAB1の数は、2つ以上であればよく、フッ素重合体の特性等に応じて適宜に決定される。例えば、2個以上とすることができ、20個以下とすることができる。更に、ポリマーPAB1に対して結合するポリマーPBB1の数は、フッ素重合体の特性等に応じて適宜に決定され、例えば、1個以上とすることができ、150個以下とすることができる。特に、1個のポリマーPAB1(核)に結合するポリマーPBB1の数は2個以上が好ましい。
【0270】
特定含界面改良剤が有し得る分岐構造は、上記したものであれば特に限定されず、例えば、
図5A~
図5E(合わせて
図5ということがある。)に示す構造が挙げられる。
図5A及び
図5Bに示す分岐構造は、核に対して結合したポリマーPA
B1に対し、更に結合したポリマーPB
B1を有する。すなわち、核から末端方向に従って繰り返し単位Aが次々と分岐した、樹木状多分岐構造である。
図5Cに示す分岐構造は、分岐鎖の端部から繰り返し単位Bを分岐状に有すること以外は
図5Bに示す樹木状多分岐構造と同じ構造である。
図5Dに示す分岐構造は、繰り返し単位A及び繰り返し単位Bを分岐状にランダムな配列で有すること以外は
図5Bに示す樹木状多分岐構造と同じ構造である。
図5Eに示す分岐構造は、分岐鎖の端部から繰り返し単位B(第2世代)を分岐状に有し、更にその途中から第3成分として繰り返し単位C(第3世代)を分岐状に有すること以外は
図5Bに示す樹木状多分岐構造と同じ構造である。
図5Fに示す分岐構造は、繰り返し単位AからなるポリマーPA
S1が核に対して5本結合したスター構造2つが、各スター構造の1つのポリマーPA
S1同士で結合された構造である。
【0271】
分岐構造を有するポリマーは、通常の重合方法により、得ることができる。例えば、divergent法又はconvergent法が挙げられ、convergent法が好ましい。上述した重合方法としては、Macromolecules,2005,38(21),p8701-8711、Macromolecules,2006,39(22),p4361-4365、又は、遠藤剛編、澤本光男他著、「高分子の合成(上)-ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合」、講談社、2010年、p402-414を参照することができる。
【0272】
分岐構造を形成しうる核としては、上述のスター構造にて記載した核の他、ブロック構造、グラフト構造及びスター構造からなる群から選択される少なくとも1つ以上の構造を有するポリマー又はマクロモノマーであってもよい。
上述した核としては、Macromolecules,2005,38(21),p8701-8711、Macromolecules,2006,39(22),p4361-4365、又は、遠藤剛編、澤本光男他著、「高分子の合成(上)-ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合」、講談社、2010年、p402-414を参照することができる。
【0273】
上記一次構造及び重合方法については、更に、遠藤剛編、澤本光男他著、「高分子の合成(上)-ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合」、講談社、2010年を参照できる。
【0274】
上述した各一次構造は、それぞれ、次のようにして同定することができる。すなわち、グラフト構造、スター構造及び分岐構造は、静的光散乱測定から、平均2乗回転半径<S2>を測定し、粒子の形状として、確認することができる。また、ブロック構造の有無は、核磁気共鳴(NMR)測定により確認できる。
上記一次構造の同定については、「若手研究者のための有機・高分子測定ラボガイド」、講談社、2006年が参照できる。
【0275】
特定界面改良剤は、溶解性、配向性および配向欠陥の点で、2種以上の繰り返し単位からなる、ブロック構造、グラフト構造、分岐構造若しくはスター構造を有することが好ましく、2種以上の繰り返し単位からなる、グラフト構造又は分岐構造を有することが好ましい。
特定界面改良剤を形成する繰り返し単位は、1種又は2種以上であれば特に限定されない。2種以上の繰り返し単位からなる、ブロック構造、グラフト構造、分岐構造若しくはスター構造の場合、繰り返し単位は、2~10種が好ましく、2~5種がより好ましく、2種又は3種が更に好ましい。繰り返し単位については上述した単位を用いることができる。
【0276】
特定界面改良剤は、1分子当たり2~250個の端部を有することが好ましく、2~100個の端部を有することがより好ましく、2~80個の端部を有することが更に好ましく、2~50個の端部を有することが特に好ましい。特定界面改良剤の端部とは、ある分子量の特定界面改良剤においてとり得る末端の最大数を意味する。
【0277】
特定界面改良剤の端部の数は、下記算出方法により、求めることができる。
特定界面改良剤がグラフト構造を有する場合、数平均分子量(Mn)を用いて、端部の数を求めることができる。
例えば、モノマーAと、マクロモノマーAA-1(Mn=5,000)の共重合によってグラフト構造を有するコポリマー(Mn=100,000)を合成した場合は、
(端部の個数)=(コポリマーの数平均分子量)/(マクロモノマーの数平均分子量)+(幹の末端の個数)
より、
(端部の個数)=100,000/5,000+2
=22(個)
として、算出することができる。
ここで、コポリマー及びマクロモノマーの数平均分子量は、後述の方法等で測定することができる。
【0278】
特定界面改良剤がスター構造又は分岐構造を有する場合は、核によって端部の個数が決まる。
スター構造の場合は、
(端部の個数)=(核に用いた化合物の最大分岐数)
となる。
また、分岐構造の場合は、核の分岐数に各分岐点において用いた核の最大分岐数を掛け合わせることにより算出される。すなわち、
(端部の個数)=核の最大分岐数×(分岐点1に用いた核の最大分岐数)×(分岐点2に用いた核の最大分岐数)×…×(分岐点nに用いた核の最大分岐数)
として算出することができる。ここで、nは分岐点の数(世代数-1と同義)を表す。
ブロック構造の場合、端部の個数は2である。
【0279】
また、特定界面改良剤の、1分子当たりの端部の数は、元素分析又はX線光電子分光法(ESCA;Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)の解析結果及び核磁気共鳴(NMR;Nuclear Magnetic Resonance)測定より、繰り返し単位及び/又は重合開始点となる元素を同定して、算出することもできる。重合開始点となる元素としては、例えば、S原子、ハロゲン原子(Cl、Br)、Si原子、N原子、O原子等が挙げられる。また、繰り返し単位中に含まれる官能基としては、例えば、-SO2-、-SO-等が挙げられる。
【0280】
<含有量>
特定界面改良剤の含有量は、液晶組成物の全固形分(100質量%)に対して、本発明の効果がより優れる点から、0.01~10.0質量%が好ましく、0.05~6.0質量%がより好ましく、0.1~4.0質量%が更に好ましい。
【0281】
<分子量>
特定界面改良剤の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れる点から、2000~500000が好ましく、3000~300000がより好ましく、4000~100000がさらに好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):テトラヒドロフラン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgel Super HZM-H(4.6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35ml/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0282】
〔二色性物質〕
本発明の液晶組成物は、更に二色性物質を含有してもよい。
本発明において、二色性物質とは、方向によって吸光度が異なる色素を意味する。二色性物質は、液晶性を示してもよいし、液晶性を示さなくてもよい。
【0283】
二色性物質は、特に限定されず、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、及び、無機物質(例えば量子ロッド)などが挙げられ、従来公知の二色性物質(二色性色素)を使用することができる。
具体的には、例えば、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-14883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-37353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-63387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特開2016-006502号公報の[0005]~[0051]段落、国際公開第2016/060173号公報の[0005]~[0041]段落、国際公開2016/136561号公報の[0008]~[0062]段落、国際公開第2017/154835号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/154695号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/195833号の[0013]~[0037]段落、国際公開第2018/164252号の[0014]~[0034]段落などに記載されたものが挙げられる。
【0284】
本発明においては、2種以上の二色性物質を併用してもよく、例えば、形成される光学異方性層を黒色に近づける観点から、波長370~550nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質と、波長500~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質とを併用することが好ましい。
【0285】
本発明の液晶組成物が二色性物質を含有する場合、二色性物質の含有量は、液晶組成物の全固形分(100質量%)に対して、本発明の効果がより優れる点から、2~60質量%が好ましく、3~50質量%がより好ましく、5~40質量%が更に好ましい。
【0286】
〔溶媒〕
本発明の液晶組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、及び、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキソラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、及び、シクロペンチルメチルエーテルなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及び、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、及び、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、及び、酢酸ブチル、炭酸ジエチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、及び、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、及び、1,2-ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、及び、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなど)、及び、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、並びに、水が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0287】
これらの溶媒のうち、形成される光学異方性層の配向度がより高くなり、耐熱性がより向上する理由から、有機溶媒を用いることが好ましく、ハロゲン化炭素類、エーテル類又はケトン類を用いることがより好ましい。
【0288】
液晶組成物が溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、形成される光学異方性層の配向度がより高くなり、耐熱性がより向上する理由から、液晶組成物の全質量(100質量%)に対して、70~99.5質量%であることが好ましく、75~99質量%であることがより好ましく、80~98質量%であることが特に好ましい。
【0289】
〔他の界面改良剤〕
本発明の液晶組成物は、上述の特定界面改良剤以外の界面改良剤(以下、「他の界面改良剤」ともいう。)を含有してもよい。
他の界面改良剤としては、液晶性化合物を水平配向させるものが好ましく、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。また、特開2007-272185号公報の[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーも用いることができる。また、特開2007-069471号公報の段落[0079]~[0102]の記載に記載された化合物、特開2013-047204号公報に記載された式(4)で表される重合性液晶化合物(特に段落[0020]~[0032]に記載された化合物)、特開2012-211306号公報に記載された式(4)で表される重合性液晶化合物(特に段落[0022]~[0029]に記載された化合物)、特開2002-129162号公報に記載された式(4)で表される液晶配向促進剤(特に段落[0076]~[0078]及び段落[0082]~[0084]に記載された化合物)、並びに、特開2005-099248号公報に記載された式(4)、(II)及び(III)で表される化合物(特に段落[0092]~[0096]に記載された化合物)などが挙げられる。
【0290】
〔重合開始剤〕
本発明の液晶組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号及び同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報及び米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、o-アシルオキシム化合物(特開2016-27384明細書[0065])、及び、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報及び特開平10-29997号公報)などが挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア-184、イルガキュア-907、イルガキュア-369、イルガキュア-651、イルガキュア-819、イルガキュア-OXE-01及びイルガキュア-OXE-02等が挙げられる。
【0291】
液晶組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、形成される光学異方性層の配向度がより高くなり、耐熱性がより向上する理由から、液晶組成物の全固形分(100質量%)に対して、0.01~30質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましい。
【0292】
〔重合性ボロン酸化合物〕
本発明の液晶組成物は、密着性の向上等の観点から、重合性基を有するボロン酸化合物(以下、「重合性ボロン酸化合物」ともいう。)を含んでいてもよい。
重合性ボロン酸化合物は、後述する通り、重合性基と、ボロン酸基およびボロン酸エステル基の少なくとも一方の基と、を有する化合物である。重合性ボロン酸化合物が有するこれらの基(重合性基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基)が他の部材と相互作用して、光学異方性層と他の部材との密着性が向上したと推測される。
また、重合性ボロン酸化合物は、液晶性化合物を垂直配向させる垂直配向剤として広く使用される。しかしながら、その理由は定かではないが、本発明においては重合性ボロン酸化合物が垂直配向剤として十分に機能せずに、液晶性化合物が水平配向することを阻害しなかったと考えられる。これにより、高い配向度を維持しながら密着性向上効果が見込まれる。
【0293】
重合性ボロン酸化合物は、重合性基と、ボロン酸基およびボロン酸エステル基の少なくとも一方の基と、を有する化合物である。光学異方性層中において、重合性ボロン酸化合物は重合していてもよい。
【0294】
重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、および、スチリル基が好ましく、密着性がより優れる点から、アクリロイル基およびメタクリロイル基がより好ましい。
重合性ボロン酸化合物は、重合性基を1個以上有していればよく、2個以上有していてもよいが、密着性および配向度の少なくとも一方がより優れる点から、1個有しているのが好ましい。
【0295】
ボロン酸基は、-B(OH)2で表される基である。
ボロン酸エステル基としては、後述の式(B-1)における-B(-ORB12)(-ORB13)で表される基が挙げられる。
重合性ボロン酸化合物は、ボロン酸基およびボロン酸エステル基の少なくとも一方の基を1個以上有していればよく、2個以上有していてもよいが、密着性および配向度の少なくとも一方がより優れる点から、1個有しているのが好ましい。
【0296】
重合性ボロン酸化合物は、配向度がより優れる点から、芳香族環を有していることが好ましい。
芳香族環としては、芳香族炭化水素基、および、芳香族複素環基が挙げられる。中でも、密着性および配向度の少なくとも一方がより優れる点から、芳香族炭化水素基が好ましい。
芳香族炭化水素基の炭素数は特に制限されず、4~20が好ましく、6~12がより好ましい。芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環基が挙げられる。
芳香族複素基の炭素数は特に制限されず、3~10が好ましく、3~5がより好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素原子以外の原子としては、酸素原子、窒素原子、および、硫黄原子が挙げられる。
芳香族炭化水素基および芳香族複素環基には、置換基が置換していてもよい。
重合性ボロン酸化合物が芳香族環を有する場合、芳香族環の個数は、1個であっても、2個以上であってもよいが、配向度がより優れる点から、1個であることが好ましい。
【0297】
重合性ボロン酸化合物は、密着性および配向度の少なくとも一方がより優れる点から、式(B-1)で表される化合物が好ましい。
【0298】
【0299】
式(B-1)中、RB11は、水素原子またはメチル基を表す。
【0300】
LB1は、単結合、2価の脂肪族炭化水素基、または、2価の脂肪族炭化水素基を構成する1個以上の-CH2-が-O-、-C(=O)-および-N(RB14)-からなる群から選択される少なくとも1種の基(以下、「特定基B1」ともいう。)で置換された2価の基(以下、「2価の連結基B1」ともいう。)を表す。中でも、配向度および密着性がより優れる点から、2価の連結基B1が好ましい。
RB14は、水素原子またはアルキル基を表し、水素原子が好ましい。アルキル基の炭素数は特に制限されず、1~3が好ましく、1が特に好ましい。
2価の脂肪族炭化水素基は、飽和であっても、不飽和であってもよいが、飽和であることが好ましい。2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状または分岐状であるのが好ましい。2価の脂肪族炭化水素基は、配向度および密着性がより優れる点から、アルキレン基であることが好ましい。2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5が特に好ましい。
2価の連結基B1は、2価の脂肪族炭化水素基を構成する1個の-CH2-のみが特定基B1で置換されていてもよく、2個以上の-CH2-が特定基B1で置換されていてもよい。
2価の連結基B1の好適態様としては、-C(=O)-O-アルキレン基-、-C(=O)-O-アルキレン基-N(RB14)-C(=O)-O-、-C(=O)-O-アルキレン基-O-、-C(=O)-N(RB14)-、-アルキレン基-N(RB14)-C(=O)-O-、および、-アルキレン基-O-が挙げられる。
【0301】
AB1は、置換基を有していてもよいアリーレン基、または、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。中でも、密着性および配向度の少なくとも一方がより優れる点から、置換基を有していてもよいアリーレン基が好ましく、アリーレン基(すなわち置換基を有しないアリーレン基)が特に好ましい。
アリーレン基の炭素数は特に制限されず、4~20が好ましく、6~12がより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基が挙げられる。
ヘテロアリーレン基の炭素数は特に制限されず、3~10が好ましく、3~5がより好ましい。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、および、硫黄原子が挙げられる。
【0302】
RB12およびRB13はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換を有していてよいヘテロアリール基を表す。中でも、密着性および配向度の少なくとも一方がより優れる点から、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
アルキル基の炭素数は特に制限されず、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、および、プロピル基が挙げられる。
アリール基の炭素数は特に制限されず、4~20が好ましく、6~12がより好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
ヘテロアリール基の炭素数は特に制限されず、3~10が好ましく、3~5がより好ましい。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、および、硫黄原子が挙げられる。
【0303】
RB12およびRB13は、互いに結合して環を形成していてもよい。形成される環としては、例えば、ホウ素原子を含む脂肪族炭化水素環が挙げられる。
【0304】
式(B-1)で表される化合物は、密着性および配向度の少なくとも一方がより優れる点から、式(B-2)で表される化合物が好ましい。
【0305】
【0306】
式(B-2)中、RB21は、水素原子またはメチル基を表す。
【0307】
LB2は、単結合、2価の脂肪族炭化水素基、または、2価の脂肪族炭化水素基を構成する1個以上の-CH2-が-O-、-C(=O)-および-N(RB25)-からなる群から選択される少なくとも1種の基(以下、「特定基B2」ともいう。)で置換された2価の基(以下、「2価の連結基B2」ともいう。)を表す。中でも、配向度および密着性がより優れる点から、2価の連結基B2が好ましい。
RB25は、水素原子またはアルキル基を表し、水素原子が好ましい。アルキル基の炭素数は特に制限されず、1~3が好ましく、1が特に好ましい。
LB2における2価の脂肪族炭化水素基、2価の連結基B2、および、特定基B2はそれぞれ、式(B-1)のLB1における2価の脂肪族炭化水素基、2価の連結基B1、および、特定基B1と同様であるのでその説明を省略する。
【0308】
RB22およびRB23はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換を有していてよいヘテロアリール基を表す。中でも、密着性および配向度の少なくとも一方がより優れる点から、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
RB22における各基は、式(B-1)のRB12における各基と同様であるのでその説明を省略する。
RB23における各基は、式(B-1)のRB13における各基と同様であるのでその説明を省略する。
RB22およびRB23は、互いに結合して環を形成していてもよい。形成される環としては、例えば、ホウ素原子を含む脂肪族炭化水素環が挙げられる。
【0309】
RB24は、1価の置換基を表す。1価の置換基の具体例としては、後述の通りである。1価の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、または、アリール基が好ましい。
nbは、0~4の整数を表す。中でも、密着性および配向度の少なくとも一方がより優れる点から、0または1が好ましく、0がより好ましい。
nbが2以上の場合、複数のRB24はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0310】
式(B-2)で表される化合物において、-B(ORB22)(ORB23)で表される基の位置は特に制限されないが、密着性および配向度の少なくとも一方がより優れる点から、LB2の結合位置に対して、メタ位またはパラ位に配置されることが好ましい。
【0311】
重合性ボロン酸化合物の具体例を以下に示すが、これに限定されるわけではない。
【0312】
【0313】
重合性ボロン酸化合物の含有量は、液晶組成物の全固形分質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.2~8質量%がより好ましく、0.3~6質量%が特に好ましい。重合性ボロン酸化合物の含有量が下限値以上であれば、光学異方性層の密着性がより優れる。重合性ボロン酸化合物の含有量が上限値以下であれば、光学異方性層の配向度がより優れる。
重合性ボロン酸化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合性ボロン酸化合物を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
光学異方性層の全質量に対する光学異方性層中の重合性ボロン酸化合物の含有量は、上述した液晶組成物の全固形分質量に対する重合性ボロン酸化合物の含有量と同じであるのが好ましい。
【0314】
[フッ素含有重合体]
本発明のフッ素含有重合体は、上述した特定界面改良剤のうち、上記繰り返し単位B1が、上記式(B-1)中のL3が単結合を表し、Dが-COOH、-NHCOR2、または、-CONHR3を表す、繰り返し単位であり、かつ、上記繰り返し単位B2が、上記式(F-1)で表される繰り返し単位(繰り返し単位F-1)、または、上記式(F-2)で表される繰り返し単位(繰り返し単位F-2)である態様である。
【0315】
[光学異方性層]
本発明の光学異方性層は、上述した本発明の液晶組成物を用いて形成される光学異方性層(光学異方性膜)である。
本発明の光学異方性層の製造方法の一例としては、上記液晶組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる液晶性化合物を水平配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
以下、本発明の光学異方性層を作製する製造方法の各工程について説明する。
【0316】
〔塗布膜形成工程〕
塗布膜形成工程は、上記液晶組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程である。
上述した溶媒を含有する液晶組成物を用いたり、液晶組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、基材上に液晶組成物を塗布することが容易になる。
液晶組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、及び、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
本態様では、液晶組成物が基材上に塗布されている例を示したが、これに限定されず、例えば、基材上に設けられた配向膜上に液晶組成物を塗布してもよい。基材及び配向膜の詳細については後述する。
【0317】
〔配向工程〕
配向工程は、塗布膜に含まれる液晶性化合物を水平配向させる工程である。これにより、光学異方性層が得られる。また、塗布膜に二色性物質が含まれる場合には、二色性物質も液晶性化合物と同様に配向する。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱及び/又は送風する方法によって行われてもよい。
ここで、液晶組成物に含まれ得る二色性物質は、上述した塗布膜形成工程又は乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、液晶組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、光学異方性を持つ塗布膜(すなわち、光学異方性層)が得られる。
【0318】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる液晶性化合物を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を光学異方性層として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性などの面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0319】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる液晶性化合物の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、光学異方性層を得ることができる。
なお、本態様では、塗布膜に含まれる液晶性化合物を配向する方法として、乾燥処理及び加熱処理などを挙げているが、これに限定されず、公知の配向処理によって実施できる。
【0320】
〔他の工程〕
光学異方性層の製造方法は、上記配向工程後に、光学異方性層を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、加熱及び/又は光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光又は紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルターを介して紫外線を照射してもよい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって光学異方性層の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0321】
光学異方性層の膜厚は、0.1~5.0μmが好ましく、0.3~1.5μmであることがより好ましい。液晶組成物中の液晶性化合物の濃度によるが、膜厚が0.1μm以上であると、優れた吸光度の光学異方性層が得られ、膜厚が5.0μm以下であると、優れた透過率の光学異方性層が得られる。
【0322】
[積層体]
本発明の積層体は、基材と、基材上に設けられる本発明の光学異方性層とを有する。上記光学異方性層に含まれる液晶性化合物は、水平方向に配向した状態で固定化されている。ここで、水平方向とは、積層体の厚み方向と直交する方向を意味する。
また、本発明の積層体は、上記光学異方性層上にλ/4板を有していてもよく、上記光学異方性層上にバリア層を有していてもよい。また、本発明の積層体は、λ/4板及びバリア層の両方を有していてもよく、この場合、上記光学異方性層とλ/4板との間に、バリア層を有することが好ましい。
更に、本発明の積層体は、上記基材と上記光学異方性層との間に、配向膜を有していてもよい。
以下、本発明の積層体を構成する各層について説明する。
【0323】
〔基材〕
基材としては、光学異方性層の用途に応じて選択することができ、例えば、ガラス及びポリマーフィルムが挙げられる。基材の光透過率は、80%以上であるのが好ましい。
基材としてポリマーフィルムを用いる場合には、光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。ポリマーの具体例及び好ましい態様は、特開2002-22942号公報の[0013]段落の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開第2000/26705号公報に記載の分子を修飾することで発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0324】
〔光学異方性層〕
光学異方性層については、上述した通りであるので、その説明を省略する。
【0325】
〔λ/4板〕
「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
例えば、λ/4板が単層構造である態様としては、具体的には、延伸ポリマーフィルムや、支持体上にλ/4機能を有する光学異方性層を設けた位相差フィルムなどが挙げられ、また、λ/4板が複層構造である態様としては、具体的には、λ/4板とλ/2板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
λ/4板と光学異方性層とは、接して設けられていてもよいし、λ/4板と光学異方性層との間に、他の層が設けられていてもよい。このような層としては、密着性担保のための粘着層又は接着層、及びバリア層が挙げられる。
【0326】
〔バリア層〕
本発明の積層体がバリア層を有する場合、バリア層は、光学異方性層とλ/4板との間に設けられることが好ましい。なお、光学異方性層とλ/4板との間に、バリア層以外の他の層(例えば、粘着層又は接着層)を有する場合には、バリア層は、例えば、光学異方性層と他の層との間に設けることができる。
バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素等のガス、水分、又は、隣接する層に含まれる化合物等から光学異方性層を保護する機能を有する。
バリア層については、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。
【0327】
〔配向膜〕
本発明の積層体は、基材と光学異方性層との間に、配向膜を有していてもよい。
配向膜は、配向膜上において本発明の液晶組成物に含まれる液晶性化合物を所望の配向状態とすることができるのであれば、どのような層でもよい。
有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。更に、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。なかでも、本発明では、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理により形成する配向膜が好ましく、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向膜も好ましい。
なお、配向膜は、上述のバリア層として機能する場合がある。
【0328】
<ラビング処理配向膜>
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明においては、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましく用いられる。配向膜については国際公開第2001/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行の記載を参照することができる。配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることが更に好ましい。
【0329】
<光配向膜>
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献などに記載がある。本発明においては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、又は、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド若しくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又は、エステルである。
【0330】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光又は非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0331】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ及びカーボンアークランプなどのランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー及びYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、並びに、陰極線管などを挙げることができる。
【0332】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色性色素偏光板、及び、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)若しくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、又は、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルター又は波長変換素子などを用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0333】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向膜に対して上面、又は裏面から配向膜表面に対して垂直、又は斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°が好ましい。
非偏光の場合には、配向膜に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°が更に好ましい。
照射時間は、1分~60分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
【0334】
パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、又は、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0335】
〔用途〕
本発明の積層体は、偏光素子(偏光板)として使用でき、例えば、直線偏光板又は円偏光板として使用できる。
本発明の積層体が上記λ/4板などを有さない場合には、積層体は直線偏光板として使用できる。
一方、本発明の積層体が上記λ/4板を有する場合には、積層体は円偏光板として使用できる。
【0336】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述した光学異方性層又は上述した積層体を有する。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、及び、プラズマディスプレイパネルなどが挙げられる。
これらのうち、液晶セル又は有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0337】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置としては、上述した光学異方性層と、液晶セルと、を有する態様が好ましく挙げられる。より好適には、上述した積層体(ただし、λ/4板を含まない)と、液晶セルと、を有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる光学異方性層(積層体)のうち、フロント側の偏光素子として本発明の光学異方性層(積層体)を用いるのが好ましく、フロント側及びリア側の偏光素子として本発明の光学異方性層(積層体)を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0338】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、又はTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、及び特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶性分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0339】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、光学異方性層と、λ/4板と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。
より好適には、視認側から、λ/4板を有する上述した積層体と、有機EL表示パネルと、をこの順に有する態様である。この場合には、積層体は、視認側から、基材、必要に応じて設けられる配向膜、光学異方性層、必要に応じて設けられるバリア層、及び、λ/4板の順に配置されている。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極及び陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例】
【0340】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0341】
[フッ素含有重合体(界面改良剤)の合成]
〔フッ素含有重合体F1の合成〕
下記スキームに従って、下記式(a)で表される化合物(a)と下記式(f)で表される化合物(f)とを用いて、下記式F1で表されるフッ素含有重合体F1を合成した。
【化59】
【0342】
具体的には、化合物(a)5.4g、化合物(f)2.6g、および、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピレン酸)ジメチル(商品名「V-601」、富士フイルム和光純薬社製)91mgを含有するアニソール溶液(24ml)を、窒素気流下80℃に加熱したジメチルアセトアミド(3.8ml)に3時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で4時間加熱した。
次いで、1H-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)スペクトル測定にて重合性基の消失を確認した後、反応液を蒸留水250mLに加えて濾過を行い、残渣を蒸留水およびヘキサンで洗浄することで、フッ素含有重合体F1を白色固体として6.5g得た。
得られたフッ素含有重合体F1の重量平均分子量(Mw)は13000であった。
【0343】
〔フッ素含有重合体F2の合成〕
下記スキームに従って、下記式(b)で表される化合物(b)と下記式(f)で表される化合物(f)とを用いて、下記式F2で表されるフッ素含有重合体F2を合成した。
【化60】
【0344】
具体的には、化合物(b)4.7g、化合物(f)2.3g、および、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピレン酸)ジメチル(商品名「V-601」、富士フイルム和光純薬社製)74mgを含有するシクロペンタノン溶液(21ml)を、窒素気流下80℃に加熱したシクロペンタノン(4.2ml)に3時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で4時間加熱した。
次いで、1H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認した後、反応液を蒸留水260mLに加えて濾過を行い、残渣を蒸留水およびヘキサンで洗浄することで、フッ素含有重合体F2を白色固体として5.6g得た。
得られたフッ素含有重合体F2の重量平均分子量(Mw)は13000であった。
【0345】
〔フッ素含有重合体F3の合成〕
下記スキームに従って、下記式(a)で表される化合物(a)と下記式(g)で表される化合物(g)とを用いて、下記式F3で表されるフッ素含有重合体F3を合成した。
【化61】
【0346】
具体的には、化合物(a)13.5gと、下記式(R-1)で表されるRAFT剤(R-1)198mgと、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピレン酸)ジメチル(商品名「V-601」、富士フイルム和光純薬社製)8.8mgを含有する、シクロヘキサノン溶液(33ml)を80℃に昇温した。その後、80℃で6時間撹拌して重合反応を行った(第一段階反応)。
次いで、
1H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認した後、2段目の重合として、化合物(g)6.5g、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピレン酸)ジメチル(商品名「V-601」、富士フイルム和光純薬社製)8.8mgを反応フラスコに投入し、80℃で20時間撹拌して重合反応を行った(第二段階反応)。
1H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認した後、フラスコ内の内容物をヘキサン200ml中に投入し、撹拌して反応物を再沈殿させ、濾過を行い、残渣を蒸留水およびヘキサンで洗浄することで、フッ素含有重合体F3を白色固体として5.6g得た。
得られたフッ素含有重合体F3の重量平均分子量(Mw)は13000であった。
【化62】
【0347】
<化合物(a)の合成>
合成に用いた化合物(a)は、下記スキームに従って合成した。
【化63】
【0348】
具体的には、メタンスルホニルクロリド22gをテトラヒドロフラン(THF)48.5mLに加え、内温が0℃になるまで冷却した。
そこに、THFとジメチルアセトアミドとの質量比が33:67となる混合溶媒26mlに対して、化合物(a1)48.5gと、TEMPO0.36gと、ジイソプロピルエチルアミン28gとを予め溶解させた溶液を、内温が10℃以上に上昇しないように滴下した。0℃で30分撹拌した後、アセトアミノフェン25gのジメチルアセトアミド溶液38mlを加えた。そこに、N-メチルイミダゾール6.85g、トリエチルアミン20gを加えて0℃で60分撹拌した後、室温まで昇温した。その後、蒸留水30ml、ジメチルアセトアミド30mlを加え40℃に加熱し、固体が完溶するまで撹拌した。フラスコ内の内容物にメタノール300mlを徐々に投入し、内温5℃まで冷却しながら撹拌して反応物を再沈殿させた。沈殿物の濾過を行い、残渣を蒸留水およびヘキサンで洗浄することで、化合物(a)を白色固体として58g得た。
得られた化合物(a)の1H-NMRを以下に示す。
1H-NMR(溶媒:CDCl3)δ(ppm):1.92(br、4H)、2.16(t、3H)、4.09(t、2H)、4.26(t、2H)、5.84(dd、1H)、6.13(q、1H)、6.62(dd、1H)、6.96(2H)、7.12(m、2H)、7.51(m、2H)、7.84(br、1H)、8.13(m、2H)
【0349】
<化合物(b)の合成>
合成に用いた化合物(b)は、特開2008-214269号公報の段落[0095]に記載の合成方法に従って合成した。
【0350】
〔フッ素含有重合体F4~F16〕
フッ素含有重合体F1~F3の合成方法を参考にして、実施例で用いるフッ素重合体F4~F16(後述の式参照)を合成した。なお、下記式中、各繰り返し単位の括弧に付した数値は、各重合体が有する全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。
【化64】
【0351】
〔フッ素含有重合体FC1~FC5〕
フッ素含有重合体F1~F3の合成方法を参考にして、比較例で用いるフッ素重合体FC1~FC5(後述の式参照)を合成した。なお、下記式中、各繰り返し単位の括弧に付した数値は、各重合体が有する全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。
【化65】
【0352】
[実施例1]
〔セルロースアシレートフィルム1の作製〕
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
【0353】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・特開2015-227955号公報の実施例に
記載されたポリエステル化合物B 12質量部
・下記化合物F 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
・メタノール(第2溶媒) 64質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0354】
【0355】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
【0356】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
・メタノール(第2溶媒) 11質量部
・上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0357】
(セルロースアシレートフィルム1の作製)
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した(バンド流延機)。
次いで、溶媒含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。
その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、厚み40μmの光学フィルムを作製し、これをセルロースアシレートフィルム1(支持体1)とした。得られたセルロースアシレートフィルム1の面内レターデーションは0nmであった。
【0358】
〔光配向層PA1の作製〕
後述する光配向層形成用塗布液PA1を、ワイヤーバーで連続的に上記セルロースアシレートフィルム1上に塗布した。塗膜が形成された支持体を140℃の温風で120秒間乾燥し、続いて、塗膜に対して偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向層PA1を形成し、光配向層付きTACフィルムを得た。
なお、光配向層PA1の膜厚は0.5μmであった。
【0359】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(光配向層形成用塗布液PA1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記重合体PA1 100.00質量部
・下記酸発生剤PAG-1 8.00質量部
・下記酸発生剤CPI-110TF 0.005質量部
・キシレン 1220.00質量部
・メチルイソブチルケトン 122.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0360】
【0361】
【0362】
【0363】
〔光学異方性層1の作製〕
(液晶組成物LC1の調製)
下記の組成の液晶組成物を調製した。
【0364】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶組成物LC1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
・メタノール(第2溶媒) 11質量部
・上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0365】
(光学異方性層1の作製)
得られた光配向層PA1上に、下記の液晶組成物1を#5のワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層を形成した。
次いで、上記塗布層を140℃で30秒間加熱し、を室温(23℃)になるまで冷却した。次いで、90℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、LED(Light Emitting Diode)灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cm2の照射条件で2秒間照射することにより、光配向層PA1上に光学異方性層1を作製した。なお、光学異方性層1の膜厚は0.5μmであった。
このようにして、光配向層付きTACフィルムの光配向層PA1上に、光学異方性層1-1が形成された積層体1を得た。
【0366】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶組成物1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記フッ素含有重合体F1 0.043質量部
・下記高分子液晶性化合物P1 2.76質量部
・下記低分子液晶性化合物L1 1.69質量部
・下記二色性物質Y1 0.19質量部
・下記二色性物質M1 0.31質量部
・下記二色性物質C1 0.50質量部
・重合開始剤I1
(IRGACUREOXE-02、BASF社製) 0.17質量部
・シクロペンタノン 52.70質量部
・テトラヒドロフラン 22.6質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0367】
【0368】
[評価]
〔ヘイズ〕
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態サンプル台に実施例および比較例の各偏光子をセットし、ヘイズの評価を目視にて行った。さらに各偏光子を、80℃で5分間加熱し、同様の方法でヘイズ評価を行った。結果を下記表1に示す。
A:全面でヘイズが視認されない。
B:一部にわずかにヘイズが視認される。
C:全面白濁が視認される。
【0369】
〔ハジキ〕
クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に、配向膜上に配置された光学異方性層を挟持して観察し、この光学異方性層を水平面内で回転させ、明暗の状態を確認した。明暗の状態より、塗布時のハジキ、の有無を確認した。結果を下記表1に示す。
A:目視で全体に、ハジキが観察されない
B:目視で一部分に、ハジキが観察される
C:目視で広い部分に、ハジキが観察される
D:目視で全体に、ハジキが観察される
【0370】
〔配向度〕
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に実施例1の積層体1をセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて、380nm~780nmの波長域における光学異方性層1の吸光度を1nmピッチで測定し、以下の式により400nm~700nmにおける配向度を算出した。得られた配向度に基づいて、以下の評価基準にしたがって配向度を評価した。結果を下記表1に示す。
配向度:S=((Az0/Ay0)-1)/((Az0/Ay0)+2)
上記式において、「Az0」は光学異方性層の吸収軸方向の偏光に対する吸光度を表し、「Ay0」は光学異方性層の透過軸方向の偏光に対する吸光度を表す。
A:配向度が0.96以上
B:配向度が0.90以上、0.96未満
C:配向度が0.90未満
【0371】
〔上層塗布性〕
<硬化層N1の作製>
得られた光学異方性層1上に、下記の硬化層形成用組成物N1をワイヤーバーで連続的に塗布し、硬化層N1を形成した。
次いで、硬化層N1を室温乾燥させ、次いで、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で15秒間照射することにより、偏光子P1上に硬化層N1を作製した。
硬化層N1の膜厚は、0.05μm(50nm)であった。
【0372】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
硬化層形成用組成物N1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記棒状液晶性化合物の混合物L1 2.61質量部
・下記変性トリメチロールプロパントリアクリレート 0.11質量部
・下記光重合開始剤I-1 0.05質量部
・下記界面改良剤F-3 0.21質量部
・メチルイソブチルケトン 297質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0373】
棒状液晶性正化合物の混合物L1(下記式中の数値は質量%を表し、Rは酸素原子で結合する基を表す。)
【0374】
【0375】
変性トリメチロールプロパントリアクリレート
【化72】
【0376】
【0377】
【0378】
光学異方性層1上への硬化層塗布後に、クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に、配向膜上に配置された光学異方性層を挟持して観察し、この光学異方性層を水平面内で回転させ、明暗の状態を確認した。明暗の状態より、上層塗布時のムラやハジキ、配向欠陥の有無を確認した。結果を下記表1に示す。
A:目視で全体にムラ、ハジキが観察されない
B:目視で部分的にムラ、ハジキが観察される
C:目視で全体にムラ、ハジキが観察される
【0379】
[実施例2~16、比較例1~5]
液晶組成物1の組成を下記表1に示す組成に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~16および比較例1~5の各積層体を得た。
得られた各積層体を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を下記表1に示す。
なお、下記表1中において記号で示した成分のうち、既に示した成分以外の概要を以下に示す。なお、各繰り返し単位の括弧に付した数値は、各重合体が有する全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。
【0380】
【0381】
【0382】
上記表1に示す結果から、界面改良剤であるフッ素含有重合体が、上記式(B-1)で表される繰り返し構造B1を有していない場合には、光学異方性層の形成時にハジキが発生し、また、形成される光学異方性層についてヘイズが確認され、配向度も低く、更に、上層塗布性も劣ることが分かった(比較例1~4)。
これに対し、界面改良剤であるフッ素含有重合体が、フッ素原子を有する繰り返し構造B2とともに、上記式(B-1)で表される繰り返し構造B1を有していると、光学異方性層の形成時にハジキが抑制され、また、形成される光学異方性層についてヘイズが観測され難く、配向度も高くなり、更に、上層塗布性も良好となることが分かった(実施例1~16)。
特に、実施例1と実施例2との対比から、上記記式(B-1)中のL3が単結合を表し、Dが-NHCOR4を表すフッ素含有重合体を用いると、形成される光学異方性層についてヘイズがより観測され難くなることが分かった。
また、実施例1、9および14の対比から、界面改良剤であるフッ素含有重合体が、分子量300以下のモノマーから誘導される繰り返し構造B3を有していると、上層塗布性が良好となることが分かった。