(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】全固体リチウムイオン二次電池用負極形成用材料、および全固体リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20240521BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240521BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240521BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240521BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2024510441
(86)(22)【出願日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2023039658
【審査請求日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2022185101
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石田 晴之
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-225494(JP,A)
【文献】特表2021-529414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0040607(US,A1)
【文献】特開2004-179136(JP,A)
【文献】特表2019-507473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/62
H01M 10/00 -10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項7】
前記固体電解質層が、前記溝部にも存在する請求項6に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体リチウムイオン二次電池用負極形成用材料に関する。また本発明は該形成用材料から得られる負極を用いた全固体リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池(以下、「LiB」と略記することがある)は、二次電池の中
でも高エネルギー密度を有するため、広く普及している。リチウムイオン二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)やリン酸鉄リチウム(LiFePO4)などの活物質を含む正極と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な活物質を含む負極とがセパレーターを介して配置され、電解液として、エチレンカーボネートなどの有機溶媒に、LiBF4等
のリチウム塩からなる電解質を溶解させた非水電解液を満たして構成された、非水電解液系LiBが良く知られている。非水電解液系LiBの充放電は、二次電池中のリチウムイオンが非水電解液を介して正極-負極間を移動し、正極および負極の活物質にリチウムイオンが挿入・脱離することにより行われる。しかし、かかる非水電解液系LiBは、電解液の漏洩の危険があり、安全性の点で改善が要望されている。
【0003】
電池の用途拡大に伴って、自動車用電池や据え置き型電池などの大型電池が注目されている。大型電池では、小型電池に比べて安全性の確保がさらに重要になっており、上記電解液を使用した電池に対して、電解液を無機系の固体電解質に代えることで、電解液を用いるLiBに比べて、大型化しても安全性を確保し易いとして、安全で高い信頼性を有する全固体リチウムイオン二次電池(全固体LiB)が提案されている。
【0004】
また、LiBの負極活物質としては、従来カーボンが使用されていた。容量を増加する
観点から負極活物質としてシリコンの利用が検討されている。シリコンは負極活物質としての理論容量密度が4200mAh/g(体積容量密度で2370mAh/cm3)であ
り、カーボンと比較すると容量/重量の比で約11倍、容量/体積の比で約3倍も高く、二次電池の容量を飛躍的に増大することが期待されている。
【0005】
しかし、シリコンは充放電にともなう体積変化が約400%と非常に大きいために、充
放電を繰り返す過程においてシリコンの微粉化および孤立化といった劣化が生じる。その結果、充放電効率およびサイクル寿命特性が乏しく、特に長期での使用が前提となる電動化車両用の大型電池では、シリコンを負極活物質としたLiBの実用化は困難とされている。
【0006】
特に、電解質溶液やイオン性液体などの液系イオン伝導体を用いた従来型のリチウムイオン電池において、負極活物質としてシリコンを用いた場合には以下の課題が存在する。(1)充放電時のシリコンの膨張・収縮により電極構造が崩壊し、電池性能が劣化する。(2)電池性能の劣化は、膨張・収縮によりシリコン粒子が微粉化するとともに、この微粉粒子表面に液系イオン伝導体の分解生成物が付着することにより、負極活物質-イオン伝導体界面におけるイオン伝導性が低下するとともに、電子伝導性のパスが切断されるために引き起こされている。
(3)微粉化しても電子伝導性を保持するために、カーボンなどの電子伝導性付与剤を多量に添加する必要がある。しかし、カーボンも負極活物質として作用するため、カーボンとシリコンとの競合、カーボンによる不可逆容量の増大、および、リチウムの局在化等の弊害が生じる。
(4)液系イオン伝導体の分解生成物が負極活物質であるシリコンとイオン伝導体との界面に付着するため、この界面における電気抵抗が高くなり、充放電時の電流密度を上げられず、電池性能の向上が困難である。さらに、この分解生成物の形成に電気化学容量が消費されるため、不可逆容量が増大し、負極活物質としての電気化学容量の減少が引き起こされる。
(5)このような現象が起こることで、シリコン微粒子が孤立化あるいは負極集電体からの脱落が生じ、次回の充放電に関与できなくなる。この状態でさらに充放電を行うと、負極集電体との接触を保っているシリコン粒子へのリチウム挿入量が増加することになる。このため、該シリコン粒子の膨張収縮の変化がより大きくなり、さらに微細化が進行する。これを繰り返すことで充放電に関与するシリコン粒子が減少し、充放電容量が急激に低下する。すなわち、電極崩壊によりサイクル特性が劣化する。
【0007】
一方、固体電解質を用いた全固体電池におけるシリコン負極材料の課題は次のように考えられる。
(1)充電の際、すなわち、シリコンへのリチウムの挿入反応が起こる際には、活物質の膨張が生じる。この時、固体電解質と活物質が稠密に充填されている電極層内にはこの体積変化を緩和する機構がないため、電極層の上に形成されている固体電解質層、さらには対極である正極層にも応力が生じ、これにより、固体電解質層の破壊、負極層―正極層の短絡などが生じ、電池としての機能が損なわれる。
(2)さらに放電時、すなわち、負極活物質からのリチウムの引抜き反応が起こる際には、活物質の体積収縮が生じる。この時、活物質表面と固体電解質との距離が離れるという現象が生じるため、活物質へのイオン伝導パスが切断される。さらには、負極集電体や電極層に電子伝導性付与剤として加えたカーボン系材料と活物質との接触も、活物質の収縮により解離する。このため、電子伝導性パスも切断される。このようなことが原因となり、シリコン粒子が電気化学反応系から外れるため、孤立化し、電気化学容量の急速な劣化が生じることになる。また、充電時の膨張における問題が生じなかった場合においても、放電時の活物質の収縮により、電池性能劣化が生じる。
【0008】
このため、シリコンを負極活物質としたリチウムイオン二次電池によれば、高い容量密
度が期待されながらも、その実用化は困難であった。充放電時のシリコンの膨張収縮にともなう電極崩壊を抑制する観点から、種々の技術的提案がある。特許文献1(特開2003-109590号公報)では、シリコンにリン、ホウ素またはアルミニウムをドープすることで、体積変化を緩和した負極材が開示されている。特許文献2(特開2005-11699号公報)には、負極の密度と電池内の隙間の大きさを制御することで、負極の体積変化を吸収し、体積変化の影響を低減した電池構造が提案されている。しかし、これらの特許文献に記載されている二次電池は非水電解液を用いたものであり、上記したように安全性の観点からは好ましいものではない。
【0009】
また、特許文献3(特開2021-68706号公報)には、全固体LiBの負極材の
ひとつとしてシリコンを例示されているが、使用例はなく、したがって充放電の繰り返しによるシリコンの微細化、孤立化という課題の記載もなく、その解決方法を示唆するところはない。また、全固体とは記載されているが、イオン性液体を用いるものであり、厳密な意味での全固体電池ではなく、液が漏出する危険は払拭できていない。
【0010】
シリコンの微細化による容量低下は非水電解液系LiBおよび全固体LiBの両者にお
ける課題であるが、その原因は異なっている。これに加え、全固体LiBでの容量低下は、固体電解質あるいは電子伝導性付与剤や負極集電体と、電極活物質であるシリコンとの接触不良が大きな要因である。このため、全固体電池作製プロセスにおいては比較的大きな成型圧を印加する工程がある。さらには、電池稼働時においても、接触通電を維持するために拘束圧と称する圧力がかけられる場合がある。これにより、全固体LiBでは、非水電解液系LiBよりは、シリコンの微細化による容量低下は起こり難いとされている。
【0011】
また、全固体LiBにおいて、一般的に負極活物質層は、電子伝導性を付与するための
電子伝導性付与剤としてアセチレンブラック等の微細カーボン粒子や金属微粒子、及び/または、イオン伝導性付与剤として固体電解質などを混合して形成されている。拘束圧下において充放電を行うと、シリコンの膨張収縮の際に、シリコン粒子間の空隙や、粒子のクラックに固体電解質が嵌入し、シリコンの微細化が徐々に進み容量が低下する。また、電子伝導性付与剤およびイオン伝導性付与剤を多量に添加することで、負極におけるシリコンの相対的体積が減少し、容量向上の観点からは好ましいものではない。
【0012】
非特許文献1では、平均粒子径が0.8~3.9μmのシリコン結晶粒子を負極活物質
として用いた全固体LiBが提案されている。特定の粒径のシリコン結晶を用いることで、負極活物質層に適度な空隙が生成し、この空隙により負極活物質の膨張、収縮による体積変化時の応力が緩和され、負極活物質の微細化が起こらず、孤立化も抑制されると推定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2003-109590号公報
【文献】特開2005-11699号公報
【文献】特開2021-68706号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】町田 信也等(2022)「塗布型シリコン電極の作成と全固体電池用負極への応用」『粉体粉末冶金協会 2022年度秋季大会予稿集』2-60A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のように、安全性および容量向上の観点から、シリコンを負極活物質とした全固体
LiBを実現する要望は高いものの、従来提案された技術においては、多くの技術的課題が残存するものであった。すなわち、本発明は、負極活物質(シリコン)の微細化、孤立化がなく、サイクル特性がより良好な全固体リチウムイオン二次電池を提供することを目的としている。
【0016】
かかる課題を解決するため、本発明者は、前記非特許文献1の記載の技術に着目し、平
均粒子径が0.8~1.6μmのシリコン結晶粒子を負極活物質として用いた全固体LiBを製造し、その特性評価を試みた。その結果、サイクル特性の向上が認められたため、さらに検討を行い、負極活物質層の構造を精査した。上記特定粒径のシリコン結晶粒子を用いた負極活物質層を有する電池を組み立て、充放電を行うと、シリコン結晶粒子の一部または全部がアモルファス化するとともに、
図7にSEM画像を示すように、ブロック状に分割されると共に各ブロックにおいて緻密化することを確認した。上記ブロック化された負極活物質層は、緻密であり、負極集電体に密着するため、優れた電子伝導性を示す。また、各ブロックの間に隙間が生じ、この隙間によって、各ブロックの膨張、収縮による体積変化時の応力が緩和され、負極活物質であるシリコンの微細化、孤立化が抑制されると考えられる。
【0017】
しかし、充放電時に自発的に生成する各ブロックの大きさ、各ブロック間の隙間は均一
ではない。このため、不均一な大きさのブロックの膨張、収縮による体積変化を、不均一な幅の隙間では完全には緩和できない可能性がある。つまり、大きなブロック同士が狭い隙間で隣接していると、充放電時にブロック同士が接触して崩壊し、微細化、孤立化を招くおそれがある。
【0018】
また、前記ブロック間に形成される溝部は、負極集電体にまで達するものが多く存在す
るため、前記ブロックと負極集電体との界面に固体電解質が侵入し、隙間が生じ、シリコンの孤立化を助長する恐れもある。
このように、当該技術においては、得られる全固体LiB間に放電性能、耐久性などに
おいて性能のバラツキが生じ、工業的な実施において問題となることが懸念される。
【0019】
そこで、本発明者は、シリコンを負極活物質として用いた全固体LiBを充放電した際
に、自発的かつ不均一に生成するアモルファスシリコンブロックの大きさをできるだけ均一に制御し、且つ、ブロック間に形成される溝部において前記ブロックと負極集電体との間に隙間が生成し難くすることで、前記問題を解決できることを着想し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0020】
かかる課題を解決するため、本発明は、以下の要旨を包含する。
(1)平均粒子径が0.5~5.0μmのシリコン結晶を含む全固体リチウムイオン二次電池負極形成用組成物からなる島状凸部が間隔をあけてパターン状に形成され、且つ、上記島状凸部間に形成される溝部の底面には、前記全固体リチウムイオン二次電池負極形成用組成物からなる接続層が、前記島状凸部と連続して形成された負極活物質層を、負極集電体上に有する、全固体リチウムイオン二次電池負極形成用材料。
【0021】
(2)前記島状凸部の幅が10μm~100μm、高さが5~100μmの範囲にあり、前記島状凸部の間隔が前記島状凸部の幅に対して10~50%、接続層の厚みが島状凸部の高さに対して1~50%の範囲で、且つ、15μmを超えないようパターン形成されてなる負極活物質層を集電体上に有する(1)に記載の全固体リチウムイオン二次電池負極形成用材料。
【0022】
(3)島状凸部の形状が、円柱状、楕円柱状、多角柱状、円錐台状、楕円錐台状、多角錐台状、円錐状、楕円錐状、或いは多角錐状に、パターン形成されてなる負極活物質層を負極集電体上に有する(1)に記載の全固体リチウムイオン二次電池負極形成用材料。
【0023】
(4)シリコン結晶充填率が35~55容量%である(1)に記載の全固体リチウムイオン二次電池負極形成用材料。
【0024】
(5)負極活物質層が、前記シリコン結晶100質量部に対し、5質量部以下の電子伝導性付与剤を含む、(1)に記載の全固体リチウムイオン二次電池負極形成用材料。
【0025】
(6)正極と、負極と、固体電解質層とを有する全固体リチウムイオン二次電池であって、
前記負極が、(1)~(5)のいずれか一項に記載の全固体リチウムイオン二次電池負
極形成用材料により構成されたことを特徴とする全固体リチウムイオン二次電池。
【0026】
(7)前記固体電解質層が、前記溝部にも存在する(6)に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、全固体LiBの作成時に、負極活物質として平均粒子径が0.5~5.0μmのシリコン結晶を用い、該負極活物質を含む負極形成用組成物からなる、島状凸部がパターン状に形成され、且つ、上記島状凸部間に形成される溝部の底面には、前記全固体リチウムイオン二次電池負極形成用組成物からなる層(以下、「接続層」と記載する)が、前記島状凸部と連続して形成されてなる負極活物質層を、負極集電体上に形成し、全固体LiB負極の前駆体である全固体LiB負極形成用材料を得ている。この全固体LiB負極形成用材料を用いて全固体リチウムイオン二次電池を組み立て、充放電を行うと、負極活物質であるシリコン結晶粒子の一部または全部がアモルファス化するとともに、緻密化する。同時に島状凸部の形状、大きさをほぼ維持しつつ、負極活物質が融合しブロック状の塊となる。このブロック状の塊は、全固体LiBの充放電時の体積変化率が少なく、サイクル特性が良好となる。また、上記各ブロックは負極集電体および固体電解質に密着しているため、電子伝導性付与剤やイオン伝導性付与剤を用いなくても、高い電子及びイオン伝導性が達成でき、充放電時の電流密度を高くできる。また上記緻密なブロック内では、大きなクラックの形成が抑制されるため、充放電時に固体電解質がシリコンブロック内に侵入する現象が起こり難く、シリコンの微細化、孤立化による容量低下を避けることができる。さらに、負極活物質層を予めパターン状に形成しておくことで、充放電後に形成されるアモルファスシリコンブロックの大きさが均一化し、また各ブロックの間隔も均一化できる。各ブロックの間の溝(隙間)には、固体電解質を存在させることができ、充放電時の体積膨張を吸収する機能を有し、繰り返し使用により問題となる、体積変化による負極の崩壊が起こり難くなる。また、前記島状凸部間に形成される溝部の底面に接続層を形成することにより、固体電解質がシリコンと負極集電体との界面に浸入する現象を効果的に防止し、シリコンの孤立化を防止でき、これにより、全固体LiBのサイクル特性をさらに向上することができる。
この結果、サイクル特性が良好となり、更に充放電時の電流密度が高い全固体リチウムイオン二次電池を、製品間の性能のバラツキが極めて少ない状態で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る全固体LiB負極形成用材料の一態様を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る全固体LiB負極形成用材料の一態様を示す概略平面図である。
【
図3】本発明に係る全固体LiB負極形成用材料の他の一態様を示す平面図である。
【
図4】本発明に係る全固体LiB負極形成用材料の他の一態様を示す平面図である。
【
図5】本発明に係る全固体LiB負極形成用材料の他の一態様を示す平面図である。
【
図6】本発明に係る全固体LiBの充放電前の状態の一態様を示す概略断面図である。
【
図7】全固体LiB負極活物質層を負極集電体全面に形成した全固体LiBにおいて、充放電後に活物質層がブロック化した状態を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を説明する。まず、全固体リチウムイオン二次電池用負極活物質粒子について説明し、ついで該粒子を含む、全固体リチウムイオン二次電池用負極形成用組成物、さらにこれを用いて得られる全固体リチウムイオン二次電池用負極形成用材料、全固体リチウムイオン二次電池用負極を含む、全固体リチウムイオン二次電池について説明する。
【0030】
本明細書において全固体電池とは、電解質として非水電解液やイオン液体などの液状物
を含まない電池をいう。
【0031】
全固体リチウムイオン二次電池用負極形成用材料とは、負極集電体上に全固体リチウム
イオン二次電池用負極形成用組成物を塗布、乾燥した直後の積層体であり、充放電前の負極活物質を有する。充放電を行うと、負極活物質であるシリコン結晶粒子がアモルファス化するとともに、ブロック状に融合し緻密化する。
【0032】
(全固体リチウムイオン二次電池用負極活物質粒子)
本発明で用いる全固体LiB用負極活物質粒子は、平均粒子径が0.5~5.0μmのシリコン結晶からなる。この負極活物質を用いて電池を組み立て、充放電を行うと、シリコン結晶粒子の一部または全部がアモルファス化するとともに、融合、緻密化するため、シリコンの微細化、孤立化による容量低下が少ない負極が得られ、サイクル特性が向上する。
【0033】
シリコン結晶とは、多結晶、単結晶の両者を意味する。したがって、本発明の負極活物質粒子は、多結晶シリコン粒子であってもよく、単結晶シリコン粒子であってもよく、またこれらの混合物であってもよい。多結晶シリコン粒子は、いわゆるジーメンス法により得られる多結晶シリコンロッドを破砕、分級して得てもよい。単結晶シリコン粒子は、いわゆるチョクラルスキー法により得られる単結晶シリコンを粉砕、分級して得てもよい。また、珪石の還元法により得られる金属シリコンを粉砕、分級して得てもよい。シリコン結晶は、X線回折により明確なピークを示す。
【0034】
シリコン結晶粒子の平均粒子径は、負極活物質層のブロック化および緻密化を促進する観点から、好ましくは0.8~2.5μm、さらに好ましくは1.0~1.6μmである。なお、平均粒子径は、レーザー散乱法による粒度分布測定結果における50%累積径(D50)を意味する。
【0035】
シリコン結晶粒子は、前記平均粒子径と共に、以下の特性を有するものが、負極活物質層のブロック化および緻密化を促進する観点からより好ましい。
粒子径の算術標準偏差と算術平均値の比(標準偏差/平均値)は、0.53を超えるこ
とが好ましく、更に好ましくは0.55を超え、特に好ましくは0.57を超えていてもよい。
【0036】
粒子の比表面積は、3~50m2/gの範囲であり、10~25m2/gのものがより好
ましい。比表面積は、定容法によるガス吸着測定により求められる。
【0037】
粒子形状は、粉砕によって得られる場合は不定形を成すが、球状などの他の形状も特に
制限なく採用される。
シリコン粒子と後述するバインダ成分との密着性を向上させるために、シリコン粒子に
表面処理を施してもよい。
【0038】
シリコン結晶の純度は特に限定はされないが、本発明においてはシリコン結晶の純度は、90質量%以上であることが好ましい。具体的には、酸素濃度は5.0質量%未満、窒素濃度は1.0質量%未満、ハロゲン元素濃度は0.1質量%未満のシリコンを用いることが好ましい。酸素、窒素、ハロゲン元素はLiと化合するため、不可逆容量となり、電池としての特性を低下させるため上記の範囲に制御することが好ましい。
【0039】
また、シリコン結晶として、表面の炭素濃度が0.5~5.0質量%、酸素濃度が0.5~5.0質量%のシリコンを用いてもよい。高純度のシリコンは導電性が低く、多くの場合、カーボンなどの電子伝導性付与剤を併用している。しかし、既に述べたように、電子伝導性付与剤の配合により負極活物質量は相対的に低下するため、好ましいことではない。そこで、高純度シリコンの表面に不純物としての炭素及び酸素を付着させることで、粒子表面の極性が向上し、粒子近傍で電子が容易に移動しうるため、電子伝導性付与剤の代替が可能となることを見出した。
【0040】
このような表面炭素や、表面酸素は、バインダや分散媒に由来することが多いが、これ
らに限定されない。
【0041】
また、カーボンと同様に電子伝導性付与剤として作用する金属不純物をシリコンの表面
に付着させてもよい。かかる金属としては、アルミニウムやジルコニウムが挙げられ、好ましくは表面アルミニウム濃度を0.1~1.0質量%、表面ジルコニウム濃度を0.1~1.0質量%とする。アルミニウムやジルコニウムは、シリコンの粉砕時に使用するアルミナやジルコニアに由来することが多いがこれらに限定されない。
【0042】
さらに、硫化物系固体電解質に対する化学的安定性が向上する可能性、あるいはリチウ
ムの拡散性を向上させる可能性が考えられるため、本発明においては、ドープされたシリコンを用いることができる。ドープ剤としては、単結晶の原子半径がシリコンよりも大きな元素が好ましく用いられる。このような元素としてはP、Ge、Sn、Sbなどがあげられる。かかる元素をドープしシリコンと合金化すると、純シリコンよりも原子間の距離が広がり、Liの挿入、脱離が円滑に行われると期待できる。
【0043】
(全固体リチウムイオン二次電池負極形成用組成物)
上記負極活物質を、負極を構成する成分と混合し、負極形成用組成物とし、負極集電体上に負極活物質層を形成することで、負極が得られる。上記負極活物質を用いて電池を組み立て、充放電を行うと、シリコン結晶粒子の一部または全部がアモルファス化するとともに、ブロック状に融合すると共に各ブロックにおいて緻密化する。ブロック化された負極活物質層は、緻密であり、負極集電体に密着するため、優れた電子伝導性を示す。このため、本発明の負極活物質粒子を用いる場合には、電子伝導性付与剤の使用量を低減でき、また場合によっては省略することもできる。
【0044】
すなわち、全固体LiB負極形成用組成物は、上記した負極用活物質粒子を含み、電子伝導性付与剤の含有量が、負極活物質粒子100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましい。本発明によれば、電子伝導性付与剤の割合が低減されるため、活物質粒子の相対量を増加でき、容量向上に寄与できる。全固体LiB負極形成用組成物における電子伝導性付与剤の含有量は好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは実質的に含まない。
【0045】
全固体LiB負極形成用組成物は、イオン伝導性を向上するため、イオン伝導性付与剤を含有することができる。かかるイオン伝導性付与剤としては、後述する固体電解質を用いることができる。イオン伝導性付与剤の配合量が多すぎると、活物質粒子の相対量が低下し、サイクル特性も低下するため、全固体LiB負極形成用組成物におけるイオン伝導性付与剤の含有量は好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは実質的に含まない。
【0046】
全固体LiB負極形成用組成物は、バインダ、可塑剤等を含むことができる。これらの成分は合計で、負極活物質粒子100質量部に対し、好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以下である。バインダや可塑剤の配合量が多すぎると、負極活物質層における活物質量が相対的に低下するため、電池容量を増加する上では好ましくない。
【0047】
バインダとしては、たとえば熱硬化性ポリイミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体またはポリビニルアルコール等の水溶性高分子;ポリプロピレンカーボネート等のポリカーボネート系樹脂;ポリフッ化ビニリデン等;スチレン-ブタジエン共重合体(いわゆるSBRゴム系)やスチレン-プロピレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体(いわゆるSES系やSEPS系)が挙げられる。
【0048】
また、全固体LiB負極形成用組成物は、後述する全固体LiB負極形成用組成物より
なる島状凸部を負極集電体上に形成する際、塗料化するための分散媒を含むことができる。分散媒としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、エステル類、アミド類、イミド類、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、複素環類などから適宜選択され、たとえば、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルアセテート、ノルマルプロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ノルマルブチルアセテート、イソブチルアセテート、ヘキシルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ヘキサン、ノナン、デカン、イソデカン、ドデカン、イソドデカン、ターペン、ナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、アルキルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、芳香族系高沸点溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、及びジヒドロターピネオールアセテート、NMP(N-メチルピロリドン)、メトキシベンゼン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等を挙げる事ができる。これらは単独で用いて良いし、組み合わせて用いても良い。分散媒の使用量は、全固体LiB負極形成用組成物を含むペーストの粘度が、負極活物質層の形成方法において最適な粘度となるように適宜決定すればよい。かかる分散媒は、全固体LiB負極形成用組成物を含むペーストを塗工後、乾燥することで除去される。
【0049】
(全固体リチウムイオン二次電池用負極形成用材料)
上記全固体LiB負極形成用組成物からなる負極活物質層を負極集電体上に形成することで、全固体LiB負極形成用材料が得られる。負極形成用材料は、電池を構成する部品のひとつであり、それ自体が負極として機能するが、LiBを組み立て、充放電を行うと、シリコン結晶がアモルファス化するため、充放電後の電池内の負極とは結晶構造が異なる。
【0050】
上記負極活物質層中の活物質であるシリコンの充填率は、好ましくは35~55容量%の範囲、さらに好ましくは40~50容量%の範囲である。活物質の充填率が低く、負極活物質層中に空隙が存在するため、充放電に伴ってシリコン活物質へリチウムイオンが吸蔵され、アモルファス化(リチウム-シリコン合金化)する際の体積膨張を緩和することが可能となる。上記活物質充填率は、前記シリコン粒子の粒子径あるいは粒度分布、バインダ等の添加量などにより調整することができる。なお、負極活物質層中の活物質充填率とは、負極の体積に対するシリコンの体積の割合を意味する。
【0051】
負極集電体としては、一般に銅箔、ニッケル箔あるいはSUS箔が用いられるが、他の導電性金属箔を用いてもよい。負極集電体は、表面が防錆処理をされた電解銅であってもよい。負極集電体の厚さは、特に制限されないが、電池の小型化やハンドリング性などの観点から、通常3μm~100μm厚、ロール・トゥー・ロール製法を行う場合、好ましくは5μm厚~50μm厚のものが用いられる。負極集電体の形状は、孔の開いていないシート状でもよいし、二次元状のメッシュ、三次元状の網状やパンチングメタルなど、孔の開いているシート状でもよい。負極集電体の表面は公知の表面処理が施されていてもよく、例えば、機械的表面加工、エッチング、化成処理、陽極酸化、ウォッシュプライマー、コロナ放電、グロー放電などの処理が挙げられる。
【0052】
シリコン結晶を含む負極活物質層は、充放電を行うと、負極活物質であるシリコン結晶
粒子がアモルファス化するとともに、ブロック状に融合し緻密化する。しかし、負極活物質層のブロック化は、充放電時に自発的に発生するため、各ブロックの大きさ、形状や、各ブロック間の隙間が不均一になりやすい。各ブロックの大きさ、形状や、各ブロック間の隙間が不均一であると、充放電時の膨張、収縮により隣接するブロック同士が接触し、相互に圧縮する力が発生し、ブロックが割れることがある。この結果、負極活物質の微粒化、孤立化が起き、容量低下を招くことがある。また、ブロック間に形成される溝部は負極集電体に達するものが多く存在し、ブロックと負極集電体との界面への固体電解質の侵入により、隙間が発生し、ブロックの剥離が進行し、シリコンの孤立化が助長される。
【0053】
本発明者らは、自発的に生成するブロックの大きさ、形状、間隔を制御する手段を鋭意
検討したところ、充放電を行う前の全固体LiB負極形成用材料の負極活物質層を予め島状凸部の形状とし、間隔をあけてパターン状に形成すること、また、かかる島状凸部間に形成される溝の底部を覆う接続層を形成することを着想した。
【0054】
すなわち、
図1に断面図、
図2に平面図を示すように、本実施形態の全固体LiB負極
形成用材料10は、負極集電体1上に、全固体LiB負極形成用組成物からなる負極活物質層2を有し、負極活物質層2は、島状凸部11が間隔をあけてパターン状に形成され、且つ、上記島状凸部間に形成される溝部12の底面には、前記全固体リチウムイオン二次電池負極形成用組成物からなる接続層13が、前記島状凸部と連続して形成された構造を有することを特徴としている。
【0055】
前記島状凸部11の形状は特に限定はされない。
図1、2では島状凸部11が四角錘台
の場合を示しているが、円柱状(
図3)、楕円柱状でもよく、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱等の多角柱状でもよく、また、円錐台状、楕円錐台状でもよく、三角錐台、四角錐台、五角錐台、六角錐台(
図4)等の多角錐台であってもよく、円錐状、楕円錐状、多角錐状であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
島状凸部11は、全固体LiBを構成した際、前記固体電解質により覆われていてもよ
く、また溝12にも固体電解質が侵入していてもよい。
【0056】
前記負極集電体上に形成される負極活物質層2の各部位の寸法を、
図1を参照して説明
すれば、島状凸部11の幅(W)は、10μm~100μm、特に、15~50μm、更には、15~30μmの範囲にあることが好ましい。島状凸部11の幅を上記範囲とすることにより、全固体LiBを構成後の充放電によっても、前記島状凸部の外形をほぼ維持した状態のブロックとなり、安定した性能を発揮することが可能となる。また、島状凸部11の幅を上記範囲内で、前記全固体LiBの充放電によって自然に形成されるブロックの平均的な大きさ、具体的には、幅が15~25μm程度より大きく形成した場合は、島状凸部に由来するブロック内に亀裂が生じることがあるが、かかる亀裂は負極集電体にまで達するものではなく、また、負極活物質層を負極集電体の全面に形成した場合に比べて、ブロックをより均一に形成する効果は変わるものではない。
【0057】
尚、上記島状凸部のサイズは、その技術的思想より、島状凸部の面積でも表すことができ、100~10000μm2、特に225~2500μm2、更には225~900μm2の範囲とすることが好ましい。面積による島状凸部の大きさの特定は、パターン化され
る形状が複雑な場合に特に有効である。
【0058】
また、島状凸部11の高さ(H)は、5~100μm、特に、10~80μm、更には、15~50μmの範囲にあることが負極活物質としての性能を十分発揮するために好ましい。島状凸部11の高さ(H)は、集電体表面から島状凸部11の最高点までの距離をいう。更に、前記島状凸部11の間隔(P)は、前記島状凸部11の幅(W)に対して10~50%、特に、15~30%の範囲にあることが、全固体LiBを構成後の充放電において島状凸部間の膨張・収縮の影響を抑制することができ好ましい。更に、接続層13の厚み(t)は、島状凸部の高さより小さければよく、好ましくは、島状凸部の高さに対して1~50%、特に、10~30%の範囲で且つ、15μmを超えないようにパターン形成されてなることが、全固体LiBを構成後の充放電によっても、かかる部分におけるブロック化が起こり難く、溝部12の底面への負極集電体の露出を確実に防止するために好ましい。
【0059】
島状凸部の幅(W)は、
図1に示すように、島状凸部の立ち上がり部を起点として測定される長さをいう。また、上記長さは、四角形のように対抗する辺が存在する場合は対向する辺間を、円形の場合は直径を、また、奇数の辺数を有する多角形は相当径をいう。島状凸部11の間隔(P)は、対向する島状凸部の立ち上がり部の間の距離をいう。接続層13の厚み(t)は、立ち上がり部の間に存在する負極活物質層の平均厚さをいう。
【0060】
なお、辺間の長さ、直径が測定場所によって異なる場合は、それぞれの測定値が前記範囲に入っていることが好ましい。島状凸部と接続層とがなだらかな曲線で接続している場合は、島状凸部の高さの50%を超える部分を立ち上がり部として島状凸部11の幅を測定すればよい。島状凸部の立ち上がり部の角度は、60~90°程度が、島状凸部当たりのシリコンの量を多く確保することができ、好適である。
【0061】
全固体LiB負極形成用組成物からなる負極活物質層を負極集電体上に形成するには、全固体LiB負極形成用組成物を溶媒によりペースト状とし、負極集電体上にパターンを形成後、溶媒を乾燥する方法が推奨される。塗布法は、後述の島状凸部をパターン化して形成できる方法であれば、特に限定はされない。たとえば、スクリーン印刷、3Dプリンター等が挙げられる。また、乾燥は使用した溶媒が十分に揮発する程度の温度で行えばよい。
【0062】
また、負極集電体の全面に全固体LiB負極形成用組成物を塗工後、乾燥、又は半乾燥の状態で、負極活物質層にメッシュ等の型材を押し付けることで、例えば、
図5に示すようなメッシュパターン状の島状凸部11と溝部12とを形成する方法も挙げられる。この場合、メッシュの目の間隔で島状凸部の幅を、メッシュの太さで島状凸部の間隔を、また、押し付ける深さで島状凸部の深さと接続層の厚みを調整することができる。
【0063】
上記のように、負極集電体上に全固体LiB負極形成用組成物を所定パターンで形成し
た島状凸部11を有する全固体LiB負極形成用材料を用いてLiBを組み立て、充放電を行うと、完全な制御は困難ではあるが、概ね島状凸部11の形状を保って、負極活物質層がアモルファス化するとともに緻密化する。そのため、島状凸部11に由来する各ブロックの大きさ、形状や、各ブロック間の溝部が均一化され、充放電による膨張、収縮が繰り返されても、隣接するブロック同士の接触を抑制できる。この結果、負極活物質の微粒化、孤立化が起き難くなり、容量低下を防止できる。しかも、接続層13の存在により、充放電後においても、負極集電体1が溝部12の底部に露出しない。負極集電体1が溝部12の底部に露出すると、露出部を介して固体電解質が負極集電体1とブロック間の界面に侵入し、隙間を生じることにより負極活物質が孤立化するが、本発明では接続部13を設けることでかかる孤立化を効果的に防止することができる。
【0064】
全固体LiB負極形成用材料は、負極集電体上1に上記負極活物質層2を有するが、負極活物質層上に、さらに固体電解質層が形成されていてもよい。固体電解質は特に限定はされないが、汎用されている硫化物系固体電解質および酸化物系固体電解質を例示できる。硫化物系固体電解質は、リチウムイオン伝導度が高い点から有利である。酸化物系固体電解質は、化学的に比較的安定であり、高電圧耐性の観点から有利である。固体電解質層に酸化物系固体電解質を用いる場合には、必要に応じて汎用のイオン伝導材を併用し、リチウムイオン伝導度を向上させてもよい。
【0065】
硫化物系固体電解質は、例えば、リチウム、リン、および硫黄を含有し、さらに、O、Al、B、Si、Ge、Iなどの元素を含有しても良い。具体的には、非晶質Li3PS4、非晶質40LiI・60Li3PS4(mol%)、β-Li3PS4、α-Li3PS4、Li7P3S11結晶などが用いられる。アルジロダイト系固体電解質を用いても良い。
【0066】
このような硫化物系固体電解質は、公知の方法により得ることができる。例えば、出発
原料として硫化リチウム(Li2S)及び五硫化二リン(P2S5)を用意し、Li2SとP2S5とをモル比で50:50~80:20程度の割合で混合し、これを熔融して急冷する方法や、これをメカニカルミリングする方法または、いわゆる湿式法であるサスペンジョン法、溶液法、ゾルゲル法などの公知の方法で作製することもできる。
【0067】
上記方法により得られる硫化物系固体電解質は、非晶質である。この非晶質の状態のま
ま利用することもできるが、これを加熱処理して結晶性の硫化物系固体電解質としてもよい。結晶化することで、リチウムイオン伝導度の向上が期待できる。
【0068】
酸化物系固体電解質は、例えば、Li5+XLa3(ZrX,A2-X)O12(式中、AはSc
,Ti,C,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,Ga,Ge,Snからなる群より選ばれた1種類以上の元素、Xは1.4≦X≦2)、Li1+XAlXTi2-X(PO4)3(Xは
0≦X≦1)、Li3XLa2/3-XTiO3(Xは0≦X≦2/3)などが挙げられる。これらは、室温におけるイオン伝導度が高く、電気化学的安定性が高い。
【0069】
酸化物系固体電解質は、電気化学的安定性の観点から、シリカ(SiO2)粒子、γ-アルミナ(Al2O3)粒子、セリア(CeO2)粒子、ジルコニア(ZrO2)粒子等の絶縁性粒子を追加してもよい。また、他の公知の金属酸化物粒子を用いてもよい。
【0070】
上記固体電解質は、ヤング率(25℃)が好ましくは10~70GPa、さらに好ましくは15~30GPaであるものが、負極活物質がブロック状に緻密化した際に、各ブロック間に生じる隙間に固体電解質が嵌入し易く、イオン伝導性をより高く維持することができるために好ましい。ヤング率(25℃)が10~70GPaの固体電解質としては、非晶質Li3PS4、LiX-Li3PS4(X=I,Br,Cl)系ガラス、β-Li3PS4、α-Li3PS4、Li
7P3S11結晶、Li10GeP2S12に代表されるLGPS結晶系固体電解質、Li6PS5X(X=I,Br,Cl)に代表されるアルジロダイト系結晶などが挙げられる。
【0071】
固体電解質層の膜厚は、500nm~1000μmであることが好ましく、1μm~5
00μmであることがより好ましい。膜厚が500nm以上であれば、欠けや割れが発生することなく、性能が安定した固体電池を作製できる。膜厚が1000μm以下であれば、十分に低抵抗な固体電池を作製できる。
【0072】
上記の全固体LiB負極形成用材料を用いて電池を組み立て、充放電を行うと、前記し
たように、負極活物質であるシリコン結晶粒子の一部または全部がアモルファス化するとともに、島状凸部によるパターンをほぼ維持した状態でブロック状に緻密化し、上記した本発明の独特の効果を発現する。
【0073】
一般に、負極活物質としてシリコンを使用する場合、全固体LiBの充電量の理論最大値はおおよそ3600mAhg-1程度であるが、実用的な充放電の使用範囲は、約1000~3000mAhg-1の範囲である。即ち、本発明にかかる全固体LiBが長期間安定してサイクル特性が良好な電池性能を発揮するのは、充放電により生成するブロックが、島状凸部11により均一に制御され、また、接続層13との作用により、負極集電体1に達する溝部が形成され難いこと、更には、前記生成したブロックの体積変化が小さいことも起因するものと推定している。
尚、後述の実施例で構成するハーフセルにおいて、上記範囲は、金属リチウム極などの対極に対して、+0.02V~+1.0Vの電位の状態に対応する。
【0074】
また、負極活物質層として、本発明の特徴であるパターン形成せずにシリコンを使用す
る場合、電流密度の増加に伴って充放電容量の低下が生じるため、実用的には全固体LiBの充放電時の電流密度は、0.1~0.4mA/cm-2の範囲で使用される。これに対して、本発明においては、電流密度を0.6mA/cm-2以上に増加させても顕著な容量低下を示さず良好なサイクル特性を維持した。即ち、本発明にかかる全固体LiBが極めて長期間安定してサイクル特性が良好な電池性能を発揮するのは、使用時において前記島状凸部に基づくブロックの体積変化が小さく、固体電解質との界面が安定し、また、接続層13が充放電後においても存在することにより、負極集電体1とブロックとの間への固体電解質の侵入を防止することもその一因として考えられる。
【0075】
しかも、島状凸部がパターン化して形成されていることにより、充放電後の前記ブロックもかかるパターンに従って形成されるため、全固体LiB製品間の性能のバラツキが極めて小さいというメリットも有する。
【0076】
(全固体リチウムイオン二次電池)
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、
図6に示すように、正極集電体5、正極活物質層4と、負極活物質層2、負極集電体1と、固体電解質層3とを有し、負極が全固体LiB負極形成用材料を用いて形成されている。全固体LiB負極形成用材料を用いてLiBを組み立て、充放電を行うと、全固体LiB負極形成用材料に含まれるシリコン結晶の一部または全部がアモルファス化する。また、充放電の結果として、シリコンの一部または全部がリチウムとの合金を構成する。すなわち、LiBを組み立て充放電した後には、負極活物質層の結晶構造は、組み立てる前のシリコン結晶とは異なり、一部または全部がアモルファスシリコンにより構成される。本明細書では、充放電後の負極活物質を単に「アモルファスシリコン」と記載することがあるが、該アモルファスシリコンにはシリコン結晶が含まれていてもよく、またリチウムと合金化していてもよい。
【0077】
電池を充電する事により、負極層中のシリコン粒子がリチウムを吸蔵する事で体積膨張するためであるが、この際にシリコン粒子同士は融合し、アモルファス化する。シリコン粒子間に存在する微小な空隙は押し出され、溝部によって隔離された島状凸部単位で緻密なブロック(島状凸部の大きさによっては内部に負極集電体まで達しない溝が生成)が形成され、これにより、充電によるシリコン粒子自体の膨張率が300%程度であっても負極層自体の厚み増加は1.5倍程度に抑制される。
【0078】
放電時にはリチウム放出によってシリコンは元の体積に戻ろうとするが、上記ブロック
の周りの空隙にシリコンブロックよりも相対的に柔らかい固体電解質が引き込まれ、負極層自体の厚みの減少は殆ど生じない。
【0079】
固体電解質層3は、前記固体電解質からなる。
本発明の全固体LiBにおいて、負極以外の構成は、公知の全固体LiBと同様の構成
を採用することができ、特に限定はされない。正極は、正極活物質層4及び正極集電体5からなり、公知の正極活物質、集電体を用いればよい。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0081】
(シリコンの平均粒子径)
シリコンの平均粒子径・標準偏差等は、LA-950S2(堀場製作所製)を使用し、レーザー回折/散乱光強度から求めた。
【0082】
(シリコンの比表面積)
シリコン粒子の比表面積は、BELSORP-miniX(MicrotracBEL社製)を使用し、定容法によるガス吸着測定により求めた。
【0083】
(充放電試験前の負極層の活物質充填率)
(1)SEM画像からシリコン塗布膜の膜厚を求め、単位面積当たりの塗布膜体積V0を算出した。
(2)負極層全体の重量から求められる塗布膜中の単位面積当たりのシリコン重量をシリコン結晶の密度で除する事によりシリコン結晶自体の体積V1を算出した。
(3)塗布膜の活物質充填率はV1/V0×100(%)として算出した。
【0084】
(充放電サイクル試験)
充放電試験は、BTS-2004H(Nagano社製)を使用し、電流密度:0.1 mAcm-2とした定電流密度試験を行った。測定温度:25℃として、初回の充電量のみ3000mAhg-1とするが、初回の放電量は2000mAhg-1とした。また、2回目以降は初回放電後の状態を0mAhg-1として、そこからの充電量を2000mAhg-1、放電量は2000mAhg-1とすることにより実施した。前記2000mAhg-1の充放電を繰り返して行った。
【0085】
充放電サイクル試験の評価結果を、前記サイクル試験において、設定容量である2000mAhg-1に対して放電容量が90%以上の維持率で達成できたサイクル回数として示した。
但し、初回充電容量が3,000mAhg-1未到達で試験を終了したものは、「NG」と示した。
【0086】
(電池材料)
下記材料を用いて半電池(ハーフセル)を組み立て、負極の構造、特性を評価した。
対極
リチウム(Li)箔:膜厚0.1mm(本城金属株式会社製)
インジウム(In)箔:膜厚0.127mm(アルドリッチ社製)
負極
負極集電体:CF-T7F-35(福田金属箔粉工業株式会社製)
負極活物質層:シリコン結晶粒子90部と熱硬化性ポリイミド樹脂10部との混合物を用いた。熱硬化性ポリイミド樹脂は株式会社アイ・エス・テイ社製DreamBond(商品名)を用いた。
固体電解質:a-40LiI・60Li3PS3(メカニカルミリング法により作製)
シリコン結晶粒子として、株式会社トクヤマ製多結晶シリコンを原料に用い、遊星ミルにより粉砕し、下記の粒子をそれぞれ調製して使用した。
【0087】
【0088】
(放電後のシリコンブロックの外形評価)
放電後の負極活物質層に存在するシリコンブロックの評価は、前記サイクル特性の評価
において、同様の半電池(ハーフセル)を複数個準備し、充放電サイクル試験1回目及び200回目が終了した、放電後のセルについて、負極集電体を含む負極面に対し垂直方向に切断した。この際、切断箇所は、負極面の任意の点を直交するように2回実施した。各切断後の断面についてクロスセクションポリッシャー装置を使用してイオンミリング処理(CP処理)した後、SEM(走査型顕微鏡)により撮影するとともに、EDS(エネルギー分散型X線分光法)により元素分析を行った。
【0089】
SEM画像中に存在するシリコン層について、ブロックの幅、高さ(H)を10点以上
測定し、それぞれの平均長さを求めた。
【0090】
シリコンブロック中に存在するシリコンの元素の緻密度は、画像解析により求めた。画
像解析ソフト「A像くん」(商品名、旭化成エンジニアリング株式会社製)を使用し、SEM-EDS画像におけるシリコンブロック内を解析した。画像を濃淡256階調に分割し、濃度160階調を二値化の閾値に決定し、閾値より暗い部分をシリコンと判定した。シリコンブロック内のシリコン元素の面積割合が90%未満、またはシリコンの粒度分布において5μm未満の粒子の面積比率が20%以上の場合を「孤立化」と判別した。
【0091】
(例1~7) 比較例
(負極の製造)
上記の多結晶シリコン粒子360mgと、ポリイミド溶液(27.2wt%のNMP溶液)を固形分40mgとなる量で混合し、さらにNMP(N-メチルピロリドン)を加え、全固体LiB負極形成用組成物を得た。該組成物を2時間撹拌(自転1056rpm、公転1600rpm)し、6分脱泡(自転290rpm、公転1360rpm)した。
【0092】
得られた塗布液を、負極集電体上にドクターブレードを用いて集電体全面にフラット塗工した(送り速度1.9mm/秒、ブレードのギャップ12.5μm)。室温で半日以上乾燥後、真空下でヒーター加熱(250℃、30分)し、ポリイミドを硬化して負極形成用材料を得た。活物質層の厚みは14~21μmの範囲であった。
【0093】
(半電池製造)
負極形成用材料のシートを9mmΦに打ち抜いたものを絶縁性のダイに入れ、負極シー
トの上から固体電解質粒子65mgを装填し、成型圧:560MPaで一軸プレスを行った。プレス後の固体電解質層の厚みは、300~400μmであった。上部のパンチを一旦外したのち、6mmΦに打ち抜いたInとLiの金属箔をIn/Li/Inの順に重ねた対極を、固体電解質層の上側に載せ、50MPa程度の圧力で再度一軸プレスすることにより、全固体型ハーフセル(半電池)を作製した。上記ハーフセルの組立は、全て酸素、窒素、水分等による影響を排除するため、外気を遮断したグローブボックス内アルゴン雰囲気下で実施した。得られたハーフセルについて上記の電池評価を行った。充放電サイクル試験1回目の結果を表2に、充放電サイクル試験後の結果を表3に示す。
【0094】
上記フラット塗工された負極層を形成した場合の充放電後の負極活物質層の断面について、SEM画像を
図7に示す。
図7に示すように、充放電後の負極活物質層において、不規則な溝がブロック間に形成され、また、表にそれぞれの寸法を示すが、平均値と最大値の値より、不規則な形状のブロックに分割されていることがわかる。また、上記溝は、集電体にまで達していることが確認された。
【0095】
【0096】
【0097】
(例8~14) 実施例
例1~7において、負極活物質層を室温で乾燥後、活物質層を80℃に加熱し、正方形のパターンを有するNiメッシュを30分押し付けて四角柱状の島状凸部を有する負極形成用材料を得た。メッシュパターンは、一辺が55μmの正方形とした。活物質層には島状凸部の幅約55μm、高さ約25μm、島状凸部相互の間隔約25μm、接続層の厚み約5μmのパターンが転写された。
【0098】
上記負極形成用材料を用い、例1~7と同様にして評価用ハーフセルを得た。得られた
電池について各種評価を行った。結果を表4に示す。
尚、例9~13において、充放電サイクル試験後(200サイクル)のシリコン負極層において、島状凸部に相当する各ブロックおよび接続層は、集電体に達しない程度の浅いクラックにより、更に小さいブロックに細分化されていた。
【0099】
【0100】
(例15~21) 実施例
例1~7において、負極活物質層を室温で乾燥後、正方形のパターンを有するNiメッ
シュを30分押し付けた後、80℃で乾燥し、四角柱状の島状凸部を有する負極形成用材料を得た。メッシュパターンは、一辺が30μmの正方形とした。活物質層には島状凸部の幅約30μm、高さ約30μm、島状凸部相互の間隔約20μm、接続層の厚み約8μmのパターンが転写された。
【0101】
上記負極形成用材料を用い、例1~7と同様にして評価用ハーフセルを得た。得られた
電池について各種評価を行った。結果を表5に示す。
【0102】
尚、例16~20において、充放電サイクル試験後(200サイクル)のシリコン負極層の各ブロックにおいて、島状凸部に相当する各ブロックおよび接続層は、集電体に達しない程度の浅いクラックにより、更に小さいブロックに細分化されていた。
【0103】
【0104】
(例22~28) 実施例
例1~7において、負極活物質層を室温で乾燥後、活物質層を80℃に加熱し、正六角
形のパターンを有するNiメッシュを30分押し付けて六角柱状の島状凸部を有する負極形成用材料を得た。メッシュパターンは、一辺が約20μmの正六角形とした。活物質層には島状凸部が対辺の距離約35μmの六角柱状、高さ約30μm、島状凸部相互の間隔約20μm、接続層の厚み約8μmのパターンが転写された。
上記負極形成用材料を用い、例1~7と同様にして評価用ハーフセルを得た。得られた
電池について上記の各種評価を行った。結果を表6に示す。
尚、例23~27において、充放電サイクル試験後(200サイクル)のシリコン負極層の各ブロックにおいて、島状凸部に相当する各ブロックおよび接続層は、集電体に達しない程度の浅いクラックにより、更に小さいブロックに細分化されていた。
【0105】
【0106】
(例29~33) 実施例
予めパターン形成させた負極層を使用した例16~20の同様のセルに対し、充放電テ
スト時の電流密度を1.0mAcm-2として充放電試験を実施した結果を表8に示す。
尚、例29~33において、充放電サイクル試験後(200サイクル)のシリコン負極層の各ブロックにおいて、島状凸部に相当する各ブロックおよび接続層は、集電体に達しない程度の浅いクラックにより、更に小さいブロックに細分化されていた。
【0107】
【符号の説明】
【0108】
1…負極集電体
2…負極活物質層
3…固体電解質層
4…正極活物質層
5…正極集電体
10…全固体リチウムイオン二次電池負極形成用材料
11…負極活物質層(島状凸部)
12…溝部
13…接続層
20…全固体リチウムイオン二次電池
【要約】
本願発明は、シリコンを負極活物質として用いLiBを充放電した際に、自発的かつ不均一に生成するアモルファスシリコンブロックの大きさをできるだけ均一に制御することを課題とする。
本願発明は、平均粒子径が0.5-5.0μmのシリコン結晶を含む全固体リチウムイオン二次電池負極形成用組成物からなる島状凸部が間隔をあけてパターン状に形成され、且つ、上記島状凸部間に形成される溝部の底面には、前記全固体リチウムイオン二次電池負極形成用組成物からなる接続層が、前記島状凸部と連続して形成された負極活物質層を、負極集電体上に有する、全固体リチウムイオン二次電池負極形成用材料であり、該負極形成用材料を用いた負極は、充放電後に活物質が融合し、緻密で形状の揃ったブロックを形成する。