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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】発光装置、灯具及び照明器具
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20240522BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20240522BHJP
   F21V 9/20 20180101ALI20240522BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20240522BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20240522BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20240522BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240522BHJP
   F21W 111/02 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
H01L33/50
F21V9/30
F21V9/20
C09K11/64
C09K11/61
C09K11/78
F21Y115:10
F21W111:02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021110054
(22)【出願日】2021-07-01
(65)【公開番号】P2023007059
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-02-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 美佳
(72)【発明者】
【氏名】倉田 美幸
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 多茂
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-535651(JP,A)
【文献】特開2008-300694(JP,A)
【文献】特開2015-149454(JP,A)
【文献】特開2020-167399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0341531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、
570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、
前記発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価数Raが67以上であり、前記発光装置の発光スペクトルにおいて最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であり、
下記式(1)から導き出されるメラノピック比MRが0.233以下である光を発する、発光装置。
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、R(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定された哺乳類の内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の感度曲線である。)
【請求項2】
400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、
570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、
前記第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を含み、
前記発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価数Raが5以上30以下であり、前記発光装置の発光スペクトルにおいて最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であり、
下記式(1)から導き出されるメラノピック比MRが0.233以下である光を発する、発光装置。
Si:Eu (1A)
(式(1A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、R(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定された哺乳類の内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の感度曲線である。)
【請求項3】
前記第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体、下記式(1B)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(1C)で表される組成を有する第1フッ化物蛍光体、及び下記式(1C)とは組成が異なる下記式(1C’)で表される組成を有する第2フッ化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の発光装置。
Si:Eu (1A)
(式(1A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
SrCaAlSi:Eu (1B)
(式(1B)中、q、s、t、u及びvは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
[M 1-bMn4+ ] (1C)
(式(1C)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M 1-bMn4+ ]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c’[M1-b’Mn4+ b’d’] (1C’)
(式(1C’)中、A’は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M2’ 1-b’Mn4+ b’d’]イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
【請求項4】
前記第1蛍光体が、さらに下記式(1B)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(1C)で表される組成を有する第1フッ化物蛍光体、及び下記式(1C)とは組成が異なる下記式(1C’)で表される組成を有する第2フッ化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の発光装置。
SrCaAlSi:Eu (1B)
(式(1B)中、q、s、t、u及びvは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
[M 1-bMn4+ ] (1C)
(式(1C)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M 1-bMn4+ ]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c’[M1-b’Mn4+ b’d’] (1C’)
(式(1C’)中、A’は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M2’ 1-b’Mn4+ b’d’]イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
【請求項5】
前記第1蛍光体は、前記第1蛍光体の発光スペクトルにおいて最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が3nm以上120nm以下の範囲内である、請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光装置は、さらに、480nm以上570nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第2蛍光体を、備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2蛍光体が、下記式(2A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を少なくとも1種含む、請求項6に記載の発光装置。
Ln (Al1-aGa12:Ce (2A)
(式(2A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、aは、0≦a≦0.5を満たす。)
【請求項8】
前記第2蛍光体は、前記第2蛍光体の発光スペクトルにおいて最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が20nm以上125nm以下の範囲内である、請求項6又は7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体の総量に対する前記第1蛍光体の含有量が5質量%以上95質量%以下の範囲内である、請求項6から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
黒体放射軌跡からの色偏差Duvがマイナス0.008以上プラス0.008以下の光を発する、請求項1から9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度100%に対して、650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度が50%以下である光を発する、請求項1から10のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記発光素子の光の出射側に、前記第1蛍光体を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の光の出射側に配置されたバンドパスフィルタ層と、を含む波長変換部材を備え、
前記バンドパスフィルタ層は、入射角度が0度以上30度以下の範囲内の光に対して、380nm以上495nm未満の波長範囲内の光の平均反射率が80%以上であり、580nmを超えて780nm以下の波長範囲内の光の平均反射率が20%以下である、請求項1から11のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項13】
相関色温度が1950Kを超える光を発する発光装置の下記式(4)から導き出される基準メラノピック比MR に対する、相関色温度が1950K以下である光を発する前記発光装置の前記式(1)から導き出される前記メラノピック比MRの比率である相対メラノピック比MR/MR が10%以上99%以下の範囲内である、請求項1から12のいずれか1項に記載の発光装置。
(式(4)中、MR は、相関色温度が1950Kを超える発光装置のメラノピック比であり、S (λ)は相関色温度が1950Kを超える発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、R (λ)はCIE(国際照明委員会)で規定された哺乳類の内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の感度曲線である。)
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の発光装置を備えた灯具。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか1項に記載の発光装置を備えた照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、灯具及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)のような発光素子を用いる発光装置として、青色発光の発光素子と黄色発光等の蛍光体とを用いる白色系の発光装置が知られている。このような発光装置は、一般照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等の幅広い分野で使用されている。LED照明の普及とともにLED照明が人体に与える影響に関心が集まっている。例えば特許文献1には、LED照明がヒトのサーカディアンリズム(概日リズム;生体リズム)に影響を及ぼし得ることが記載されている。
【0003】
哺乳類の網膜上には、内因性光感受性網膜神経節細胞intrinsically photosensitive Retinal Ganglion Cell(以下、「ipRGC」という。)という、杆体や錐体とは別の新たな光受容体が存在する。ipRGCは、メラノプシンという視物質を有しており、サーカディアンリズムの光同調や瞳孔反射のような非視覚的な機能に関与することが明らかにされている。ipRGCの内因性光応答のコントロールはサーカディアンリズムを形成する上で非常に重要である。
【0004】
メラノプシンは、睡眠促進ホルモンであるメラトニンの分泌又は抑制にも関与し、例えばipRGCへの刺激量が増えることによってメラトニンの分泌が抑制されると考えられている。ヒトのサーカディアンリズムの形成をサポートするために、活動時間帯に応じた光を浴びることが適切である。例えばリビングや寝室等に用いられる照明には、暖かみのある、落ち着いた雰囲気を感じさせ、メラトニンの分泌が促進されやすい、光が照射されることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/144087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、メラトニンの分泌が促進されやすい光を発する発光装置、灯具及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、前記発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価数Raが40以上であり、前記発光装置の発光スペクトルにおいて最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であり、下記式(1)から導き出されるメラノピック比MRが0.233以下である光を発する、発光装置である。
【0008】
【数1】
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、R(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定された哺乳類の内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の感度曲線である。)
【0009】
第2態様は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、前記第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を含み、前記発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、前記発光装置の発光スペクトルにおいて最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であり、前記式(1)から導き出されるメラノピック比MRが0.233以下である光を発する、発光装置である。
Si:Eu (1A)
(式(1A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
【0010】
第3態様は、前記発光装置を備えた灯具である。
【0011】
第4態様は、前記発光装置を備えた照明器具である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、メラトニンの分泌が促進されやすい光を発する発光装置、灯具及び照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、ipRGCの感度曲線R(λ)と、ヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)を示す図である。
図2図2は、CIE1931色度図を示し、CIE1931色度図上のスペクトル軌跡及び純紫軌跡内の黒体放射軌跡と、黒体放射軌跡からの色偏差を示す図である。
図3図3は、図2の一部拡大図を示し、CIE1931色度図における色度座標のx値が0.300以上0.600以下であり、y値が0.250以上0.500以下である範囲内での黒体放射軌跡と、各相関色温度における黒体放射軌跡からの色偏差の各軌跡を示す図である。
図4図4は、第1構成例の発光装置の一例を示す概略断面図である。
図5図5は、第1構成例の発光装置の一例を示す概略断面図である。
図6図6は、第2構成例の発光装置の一例を示す概略斜視図である。
図7図7は、第2構成例の発光装置の一例を示す概略断面図である。
図8図8は、第2構成例の発光装置の他の例を示す概略断面図である。
図9図9は、街路灯の一例を示す図である。
図10図10は、街路灯の一例である低位置照明装置の設置例を示す図である。
図11図11は、誘電体多層膜-1(DBR-1)、誘電体多層膜-2(DBR-2)、及び誘電体多層膜-3(DBR-3)の入射角度0度における反射スペクトルを示す図である。
図12図12は、第1構成例の発光装置にバンドパスフィルタ層を配置した一例を示す概略断面図である。
図13図13は、実施例1の発光装置、比較例3の発光装置の分光放射輝度と、ipRGCの感度曲線R(λ)と、ヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)を示す図である。
図14図14は、実施例2の発光装置、比較例3の発光装置の分光放射輝度と、ipRGCの感度曲線R(λ)と、ヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)を示す図である。
図15図15は、実施例3の発光装置、比較例3の発光装置の分光放射輝度と、ipRGCの感度曲線R(λ)と、ヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)を示す図である。
図16図16は、実施例4の発光装置、比較例3の発光装置の分光放射輝度と、ipRGCの感度曲線R(λ)と、ヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)を示す図である。
図17図17は、比較例1の発光装置、比較例3の発光装置の分光放射輝度と、ipRGCの感度曲線R(λ)と、ヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)を示す図である。
図18図18は、比較例2の発光装置、比較例3の発光装置の分光放射輝度と、ipRGCの感度曲線R(λ)と、ヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)を示す図である。
図19図19は、実施例1の発光装置の発光スペクトルと、実施例5の発光装置のバンドパスフィルタ層を透過後の発光スペクトルと、実施例6の発光装置のバンドパスフィルタ層を透過後の発光スペクトルと、を示す図である。
図20図20は、実施例2の発光装置の発光スペクトルと、実施例7の発光装置のバンドパスフィルタ層を透過後の発光スペクトルと、実施例8の発光装置のバンドパスフィルタ層を透過後の発光スペクトルと、を示す図である。
図21図21は、実施例3の発光装置の発光スペクトルと、実施例9の発光装置のバンドパスフィルタ層を透過後の発光スペクトルと、実施例10の発光装置のバンドパスフィルタ層を透過後の発光スペクトルと、を示す図である。
図22図22は、実施例4の発光装置の発光スペクトルと、実施例11の発光装置のバンドパスフィルタ層を透過後の発光スペクトルと、実施例12の発光装置のバンドパスフィルタ層を透過後の発光スペクトルと、を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る発光装置、灯具及び照明器具の一実施形態に基づいて説明する。但し、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具現化するための、発光装置、灯具及び街路灯を例示するものであって、本発明は、以下の発光装置及びそれを備えた灯具及び街路灯に限定されない。
なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。また、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
第1実施形態の発光装置は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価数Raが40以上であり、前記発光装置の発光スペクトルにおいて最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であり、下記式(1)から導き出されるメラノピック比(Melanopic Ratio)MRが0.233以下である光を発する。
【0016】
【数2】
前記式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、R(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定された哺乳類の内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の感度曲線である。
【0017】
第2実施形態の発光装置は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、第1蛍光体が後述する式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を含み、発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、発光装置の発光スペクトルにおいて最大の発光強度である発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であり、前記式(1)から導き出されるメラノピック比MRが0.233以下である光を発する。
【0018】
ヒューマンセントリックライティング(Human Centric Lighting(HCL)、人を中心とした照明)の思想が広く普及し始めている。例えば働く人の健康に焦点を当てた新ビル認証であるWELL認証は、サーカディアンリズムに配慮した照明とすることが認証の必須項目に挙げられている。サーカディアンリズムに影響する明るさの定量的単位として、等価メラノピック(Melanopic)照度が用いられている。等価メラノピック照度の算出には、光源の分光分布から求めるメラノピック比MR(Melanopic Ratio)が必要である。メラノピック比MRは前記式(1)から求められ、等価メラノピック照度は下記式(2)から求められる。
【0019】
【数3】
【0020】
ipRGCは、メラノプシンという視物質を有しており、サーカディアンリズムの光同調や瞳孔反射のような非視覚的な機能に関与することが明らかにされている。ipRGCは、視交叉上核に直接投与することで、光信号を与える細胞である。視交叉上核とは、脳の視床下部にある非常に小さい領域で哺乳類のサーカディアンリズムを統率する体内時計の役割を担っており、約20000個の神経細胞によって、睡眠、覚醒、血圧、体温、ホルモン分泌等の様々な生理機能のサーカディアンリズムを作りだしている。
【0021】
ipRGCが有するメラノプシンは、網膜神経節細胞のうち約1%から2%程度にあたる細胞で光受容タンパク質を発現している。その他の大多数の網膜神経節細胞は光感受性を持たない。その光受容物質は細胞によって吸収特性が異なることが知られており、メラノプシンであれば480nmから490nm付近に最大の感度(感度ピーク波長)がある。図1は、CIEによって規定されているipRGCの感度曲線R(λ)と、CIEによって規定されているヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)を示す図である。ヒトの明所視標準比視感度曲線の最大の感度(感度ピーク波長)は、555nmである。
【0022】
メラノピック比MRの算出には、ipRGCのメラノプシン応答の感度曲線R(λ)が、サーカディアン作用曲線として用いられる。前記式(1)から導き出されるメラノピック比MRが0.233以下の光が発光装置から発せられると、ipRGCへの刺激が少なく、メラトニンの分泌が促進され、自然に睡眠に誘導する光を照射することができる。例えば落ち着いた雰囲気が求められるリビングや寝室等のプライベートな空間に使用する屋内用照明の光源又は車載用照明の光源として発光装置を用いることができる。ipRGCへの刺激を抑制するために、発光装置は、メラノピック比MRが0.233以下の光を発し、メラノピック比MRが0.232以下の光を発してもよく、メラノピック比MRが0.231以下の光を発してもよく、メラノピック比MRが0.002以上の光を発してもよく、メラノピック比MRが0.010以上の光を発してもよく、メラノピック比MRが0.020以上の光を発してもよく、メラノピック比が0.100以上の光を発してもよい。
【0023】
白色光源の発光色を表す客観的な尺度として、色温度がある。黒体を外部から熱して温度を高めていくと、黒色から暗赤色、赤色、黄色、オレンジ色、白色、青白色と変化する。黒体の温度はケルビン(K)で表され、JIS Z8725に準拠して相関色温度(Tcp;K)及び黒体放射軌跡からの色偏差duvを測定することができ、JIS Z8726に準拠して平均演色評価数Raを測定することができる。一般的に、焚火は800K程度、ろうそくの炎は1900K程度、白熱電球の照明は2900K程度、蛍光ランプの照明は4200K程度の色温度で表される。
【0024】
発光装置は、相関色温度が1950K以下の光を発し、暖かみがあり、落ち着いた雰囲気を感じさせる光を発する。発光装置から発せられる光の相関色温度は、1920K以下であってもよく、1900K以下であってもよい。発光装置から発せられる光の相関色温度は、800K以上であることが好ましく、1000K以上であることが好ましく、1200K以上でもよく、1500K以上でもよく、1700K以上でもよい。
【0025】
演色性は、同じ相関色温度における照射物の見え方の程度を表す。発光装置の発光について、R1からR8の数値を平均した値である平均演色評価数Raは、JIS Z8726の光源の演色性評価方法に準拠して測定することができる。発光装置の発光の平均演色評価数Raは、5以上であればよく、10以上でもよく、20以上でもよく、30以上でもよく、40以上でもよく、51以上であることが好ましく、52以上であることがより好ましい。発光装置の発光の平均演色評価数Raの値が100に近づくほど、同じ相関色温度における基準光源に近似した演色性となる。街路灯、道路の照明灯等の屋外又は屋内であっても屋外に近い場所に設置される灯具は、平均演色評価数Raが5以上である光を発すればよい。発光装置の発光の平均演色評価数Raが40以上であれば、荷物の仕分け程度の作業を行う場所において必要な程度の演色性を有し、リビングや寝室等のプライベートな空間においても、軽い作業を行う場合に十分な演色性を有する。発光装置の発光の平均演色評価数Raは、53以上であってもよく、99以下であってもよく、95以下であってもよく、89以下であってもよい。
【0026】
発光装置の発光の特殊演色評価数R9は、赤色を評価する指標である。発光装置の発光の特殊演色評価数R9は、マイナスの数値であってもよい。発光装置の発光の特殊演色評価数R9は、マイナス(-)150以上プラス(+)99以下の範囲内でもよく、-140以上+98以下の範囲内でもよく、-135以上95以下の範囲内でもよい。
【0027】
発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であり、100nm以下でもよく、95nm以下でもよく、90nm以下でもよく、3nm以上でもよく、40nm以上でもよく、60nm以上でもよく、70nm以上でもよい。発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が大きいと、ヒトが感知し難い長波長側の光の成分が大きくなる、もしくはipRGCを刺激しやすい短波長側の光の成分が大きくなる。長波長側の光の成分が多くなると、発光装置から発せられる光の輝度が低下する傾向がある。短波長側の光の成分が多くなると、メラトニンの分泌を阻害しやすくなる傾向がある。また、発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が小さいと、特定の波長範囲の光の成分が多くなる傾向がある。発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を有する発光ピーク波長が長波長側にあり、ヒトが感知し難い長波長側の光の成分が大きくなると、輝度の低下を抑制することが難しくなる。また、発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を有する発光ピークが短波長側にあり、ipRGCを刺激しやすい短波長側の光の成分が大きくなると、メラトニンの分泌が阻害され易くなる。輝度を低下させることなくメラトニンの分泌が促進されやすい光を発する発光装置を提供するために、発光装置は、発光スペクトルにおける最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であることが好ましい。本明細書において、半値全幅は、発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光ピーク波長における発光強度に対して発光強度が50%となる波長幅をいう。
【0028】
発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅は、発光装置に含まれる第1蛍光体の発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅又は後述する第2蛍光体の発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅よりも狭くなる場合がある。例えば、それぞれ異なる波長範囲に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と第2蛍光体を含む場合、第1蛍光体の発光スペクトルと第2蛍光体の発光スペクトルが重なる部分の発光強度が変化し、その結果、発光装置から発せられる混色光の発光スペクトルは、第1蛍光体の発光スペクトル又は第2蛍光体の発光スペクトルとは異なり、第1蛍光体の発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅又は第2蛍光体の発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅よりも、狭くなる場合がある。
【0029】
発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を有する発光ピーク波長が570nm以上680nm以下の範囲内にあることが好ましく、575nm以上680nm以下の範囲内でもよく、575nm以上670nm以下の範囲内でもよい。発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピーク波長の範囲は、第1蛍光体の発光ピーク波長の範囲と重複していてもよい。発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を有する発光ピーク波長は、第1蛍光体の発光に起因するものであってもよい。
【0030】
発光素子
発光素子は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。発光素子の発光ピーク波長は、420nm以上480nm以下の範囲内にあることが好ましく、さらに440nm以上460nm以下の範囲内にあってもよい。発光装置は、発光素子の発光と、第1蛍光体及び必要に応じて第2蛍光体の発光との混色光により、相関色温度が1950K以下であり、暖かみがあり、落ち着いた雰囲気を感じさせる光を発する。発光素子の発光の少なくとも一部が第1蛍光体の励起光として利用され、第2蛍光体を含む場合は、第2蛍光体の励起光として利用される。また、発光素子の発光の一部が発光装置から発せられる光として利用される。発光素子の発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅は、好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。発光素子は、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子を用いることが好ましい。これにより、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
【0031】
第1蛍光体
発光装置は、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体を備える。第1蛍光体は、400nm以上490nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する発光素子の発光によって励起され、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する。第1蛍光体は、575nm以上670nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、580nm以上660nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。第1蛍光体は、第1蛍光体の発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅が、3nm以上120nm以下の範囲内であることが好ましい。第1蛍光体の発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅は、3nm以上15nm以下の範囲内であるか、60nm以上120nm以下の範囲内であることが好ましい。暖かみを感じさせる相関色温度を有し、落ち着いた雰囲気の光を発光装置から発するために、第1蛍光体の発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅は前記範囲内であることが好ましい。
【0032】
第1蛍光体は、下記式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体、下記式(1B)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(1C)で表される第1フッ化物蛍光体、及び下記式(1C)とは組成が異なる下記式(1C’)で表される組成を有する第2フッ化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。第1蛍光体は、下記式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を必須として含むことが好ましい。発光装置は、第1蛍光体を含むことにより、1950K以下の相関色温度であり、発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であり、メラノピック比MRが0.233以下である光を発することができる。
Si:Eu (1A)
(式(1A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
SrCaAlSi:Eu (1B)
(式(1B)中、q、s、t、u、vは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
[M 1-bMn4+ ] (1C)
(式(1C)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH から成る群から選択される少なくとも1種を含み、その中でもKが好ましい。Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、その中でもSi、Geが好ましい。bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M 1-bMn4+ ]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c’[M1-b’Mn4+ b’d’] (1C’)
(式(1C’)中、A’は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、その中でもKが好ましい。M’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、その中でもSi、Alが好ましい。b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M1-b’Mn4+ b’d’]イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
本明細書において、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶及び蛍光体の組成1モル中の各元素のモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
【0033】
第1蛍光体は、前記式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体、前記式(1B)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、前記式(1C)で表される第1フッ化物蛍光体、及び前記式(1C)とは組成が異なる前記式(1C’)で表される組成を有する第2フッ化物蛍光体、後述するように、式(D)で表される組成を有するフルオロジャーマネート蛍光体、式(1E)で表される組成を有する第4窒化物蛍光体、及び式(1F)で表される組成を有する第1硫化物蛍光体、からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。第1蛍光体は、1種の蛍光体を単独で含んでいてもよく、2種以上の蛍光体を含んでいてもよい。
【0034】
第2実施形態の発光装置は、第1蛍光体として、前記式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を含む。第1蛍光体が、前記式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を含むことにより、1950K以下の相関色温度であり、発光装置の発光スペクトルにおいて最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であり、前記式(1)から導き出されるメラノピック比MRが0.233以下である光を発することができる。第2実施形態の発光装置は、第1蛍光体として、前記式(1B)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体及び前記式(1C)で表される組成を有するフッ化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0035】
第1蛍光体は、フルオロジャーマネート蛍光体、第4窒化物蛍光体、及び第1硫化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。フルオロジャーマネート蛍光体は、例えば、下記式(1D)で表される組成を有する。第4窒化物蛍光体は、例えば、下記式(1E)で表される組成を有する。第1硫化物蛍光体は、例えば、下記式(1F)で表される組成を有する。
(i-j)MgO・(j/2)Sc・kMgF・mCaF・(1-n)GeO・(n/2)M :Mn (1D)
(式(1D)中、MはAl、Ga及Inからなる群から選択される少なくとも1種である。i、j、k、m、n及びzはそれぞれ、2≦i≦4、0≦j<0.5、0<k<1.5、0≦m<1.5、0≦n<0.5を満たす。)
v2 w2Al3-y2Siy2z2:M (1E)
(式(1E)中、Mは、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、v2、w2、y2及びz2は、それぞれ0.80≦v2≦1.05、0.80≦w2≦1.05、0≦y2≦0.5、3.0≦z2≦5.0を満たす。)
(Ca,Sr)S:Eu (1F)
本明細書において、蛍光体の組成を示す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これら複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含むことを意味し、複数の元素から2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0036】
式(1D)で表される組成を有するフルオロジャーマネート蛍光体は、下記式(1d)で表される組成を有していてもよい。
3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn (1d)
【0037】
式(1E)で表される組成を有する第4窒化物蛍光体は、下記式(1e)で表される組成を有していてもよい。
v2 w2 x2Al3-y2Siy2z2 (1e)
(式(1e)中、M、M及びMは、それぞれ式(1E)のM、M及びMと同義であり、v2、w2、y2及びz2は、それぞれ式(1E)のv2、w2、y2及びz2と同義であり、x2は、0.001<x2≦0.1を満たす。)
【0038】
フルオロジャーマネート蛍光体、第4窒化物蛍光体、及び第1硫化物蛍光体は、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、好ましくは600nm以上630nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。フルオロジャーマネート蛍光体、第4窒化物蛍光体、及び第1硫化物蛍光体は、第1蛍光体の発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅が、例えば5nm以上100nm以下であり、好ましくは6nm以上90nm以下である。
【0039】
第1実施形態の発光装置及び第2実施形態の発光装置は、1種の第1蛍光体を単独で含んでいてもよく、2種以上の第1蛍光体を含んでいてもよい。発光装置は、第1蛍光体を含むことにより、暖かみを感じさせる相関色温度を有し、落ち着いた雰囲気の光が発せられる。
【0040】
第1蛍光体として、式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を必須として含む場合、第1蛍光体の全てが第1窒化物蛍光体であってもよい。第1蛍光体として、式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体を必須として含み、式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体以外の第1蛍光体を含む場合には、第1蛍光体中の第1窒化物蛍光体と、第1窒化物蛍光体以外の第1蛍光体の配合の質量比率(第1窒化物蛍光体/第1窒化物蛍光体以外の第1蛍光体)が99/1から1/99の範囲でもよく、98/2から10/90の範囲でもよく、95/5から30/70の範囲でもよい。式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体以外の第1蛍光体は、式(1B)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、式(1C)で表される第1フッ化物蛍光体、式(1C’)で表される第2フッ化物蛍光体、式(1D)で表される組成を有するフルオロジャーマネート蛍光体、式(1E)で表される組成を有する第4窒化物蛍光体、及び式(1F)で表される第1硫化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体をいう。
【0041】
第1実施形態の発光装置又は第2実施形態の発光装置は、第1蛍光体として、式(1D)で表される組成を有するフルオロジャーマネート蛍光体、式(1E)で表される組成を有する第4窒化物蛍光体、式(1F)で表される組成を有する第1硫化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。第1蛍光体は、1種の蛍光体を単独で含んでいてもよく、2種以上の蛍光体を含んでいてもよい。
【0042】
発光装置に含まれる第1蛍光体は、発光装置の形態等によって含有量が変化する。第1蛍光体が、発光装置の波長変換部材に含まれる場合、波長変換部材は、蛍光体と透光性材料を含むことが好ましい。波長変換部材は、蛍光体と透光性材料を含む波長変換体を備えていてもよい。波長変換部材に含まれる蛍光体は、透光性材料100質量部に対して、蛍光体の総量が10質量部以上でもよく、15質量部以上でもよく、20質量部以上でもよく、30質量部以上でもよく、40質量部以上でもよく、50質量部以上でもよい。また、900質量部以下でもよく、800質量部以下でもよく、700質量部以下でもよく、600質量部以下でもよく、500質量部以下でもよく、400質量部以下でもよい。蛍光体の総量は、発光装置に第1蛍光体のみが含まれ、第1蛍光体以外の他の蛍光体を含まない場合には、第1蛍光体の合計量をいう。蛍光体の総量は、発光装置に第1蛍光体及び第2蛍光体が含まれる場合は、第1蛍光体及び第2蛍光体の合計量をいう。
【0043】
発光装置が後述する第2蛍光体を備える場合には、発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量は、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量に対して、5質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量が、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量に対して5質量%以上95質量%以下の範囲内であれば、発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が110nm以下であり、メラノピック比MRが0.233以下である、暖かみを感じさせる相関色温度を有し、落ち着いた雰囲気の光が発せられる。発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量は、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量に対して、8質量%以上80質量%以下の範囲内でもよく、10質量%以上70質量%以下の範囲内でもよく、11質量%以上60質量%以下の範囲内でもよい。
【0044】
第2蛍光体
発光装置は、480nm以上570nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第2蛍光体を備えることが好ましい。第2蛍光体は、480nm以上569nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することが好ましい。第2蛍光体は、400nm以上490nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する発光素子の発光によって励起され、480nm以上570nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する。第2蛍光体は、発光素子によって励起され、490nm以上565nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、495nm以上560nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。第2蛍光体は、第2蛍光体の発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅が、20nm以上125nm以下の範囲内であることが好ましく、25nm以上124nm以下の範囲内でもよく、30nm以上123nm以下の範囲内でもよい。暖かみを感じさせる相関色温度を有し、落ち着いた雰囲気の光を発するために、第2蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅は20nm以上125nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0045】
第2蛍光体は、下記式(2A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体、及び下記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
Ln (Al1-aGa12:Ce (2A)
(式(2A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、aは、0≦a≦0.5を満たす。)
LaLn Si:Ce (2B)
(式(2B)中、Lnは、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を必須として含み、Sc及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、組成1モルに含まれるLn元素を100モル%としたときに、Lnに含まれるY及びGdの合計が90モル%以上であり、w、x、y及びzは、1.2≦w≦2.2、0.5≦x≦1.2、10≦y≦12.0、0.5≦z≦1.2、1.80<w+x<2.40、2.9≦w+x+z≦3.1を満たす。)
式(2A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体及び式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体は、蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅が、例えば90nm以上、好ましくは100nm以上、より好ましくは110nm以上であり、また例えば125nm以下、好ましくは124nm以下、より好ましくは123nm以下である。
【0046】
第2蛍光体は、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及びアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、例えば、ストロンチウムを少なくとも含み、ユウロピウムで賦活される蛍光体であり、例えば、下記式(2C)で表される組成を有する。またアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体は、例えば、カルシウムと塩素を少なくとも含み、ユウロピウムで賦活される蛍光体であり、例えば、下記式(2D)で表される組成を有する。
SrAl1425:Eu (2C)
(Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu (2D)
式(2C)中、Srの一部はMg、Ca、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素で置換されていてもよい。
式(2C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及び式(2D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体は、480nm以上520nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有し、好ましくは485nm以上515nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。
式(2C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及び式(2D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体は、蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅が、例えば30nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上であり、また例えば80nm以下、好ましくは70nm以下である。
【0047】
第2蛍光体は、βサイアロン蛍光体、第2硫化物蛍光体、スカンジウム系蛍光体、及びアルカリ土類金属シリケート系蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。βサイアロン蛍光体は、例えば、下記式(2E)で表される組成を有する。第2硫化物蛍光体は、例えば、下記式(2F)で表される組成を有する。スカンジウム系蛍光体は、例えば、下記式(2G)で表される組成を有する。アルカリ土類金属シリケート系蛍光体は、例えば、下記式(2H)で表される組成又は下記式(2I)で表される組成を有する。
Si6-gAl8-g:Eu(0<g≦4.2) (2E)
(Sr,M)Ga:Eu (2F)
(式(2F)中、Mは、Be、Mg、Ca、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。)
(Ca,Sr)Sc:Ce (2G)
(Ca,Sr)(Sc,Mg)Si12:Ce (2H)
(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu (2I)
【0048】
βサイアロン蛍光体、第2硫化物蛍光体、スカンジウム系蛍光体、及びアルカリ土類金属シリケート系蛍光体は、520nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有し、好ましくは525nm以上565nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。βサイアロン蛍光体、第2硫化物蛍光体、スカンジウム系蛍光体、及びアルカリ土類金属シリケート系蛍光体は、第2蛍光体の発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅が、例えば20nm以上、好ましくは30nm以上であり、また例えば120nm以下、好ましくは115nm以下である。
【0049】
第2蛍光体は、式(2A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体、式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体、式(2C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、式(2D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体、式(2E)で表される組成を有するβサイアロン蛍光体、式(2F)で表される組成を有する第2硫化物蛍光体、式(2G)で表される組成を有するスカンジウム系蛍光体、式(2H)で表される組成を有するアルカリ土類金属シリケート系蛍光体、及び式(2I)で表される組成を有するアルカリ土類金属シリケート系蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。第2蛍光体は、1種の蛍光体を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0050】
発光装置は、黒体放射軌跡からの偏差である色偏差Duvがマイナス(-)0.008以上プラス(+)0.008以下の光を発することが好ましい。色偏差Duvは、発光装置から発せられる光の黒体放射軌跡からの偏差であり、JIS Z8725に準拠して測定される。相関色温度が1950K以下の相関色温度が比較的低い場合であっても、CIE1931色度図上において黒体放射軌跡(Duvが0.000)からの色偏差Duvが-0.008以上+0.008以下の範囲内であると、照射物の色味が自然であり、ヒトに違和感を抱かせることが少ない光が、発光装置から発せられる。発光装置は、1950K以下の黒体放射軌跡からの偏差である色偏差Duvが-0.008以上+0.008以下の範囲内の光を発することが好ましく、Duvが-0.006以上+0.006以下の範囲内の光を発することがより好ましく、Duvが-0.003以上+0.003以下の範囲内である光を発することが更に好ましい。1950K以下の黒体放射軌跡からの偏差である色偏差Duvが0.008を上回る光が発せられると、照射物が自然の色味から外れ、ヒトが違和感を覚える場合がある。
【0051】
図2は、CIE1931色度図上のスペクトル軌跡及び純紫軌跡内の黒体(Black Body)放射軌跡(Duvが0.000)と、黒体放射軌跡からの色偏差を示す図である。図3は、図2の一部拡大図を示し、CIE1931色度図における色度座標のx値が0.300以上0.600以下であり、y値が0.250以上0.500以下である範囲内での黒体放射軌跡と、各相関色温度における黒体放射軌跡からの色偏差である、Duvが-0.020、Duvが-0.010、Duvが-0.008、Duvが+0.008、Duvが+0.010、Duvが+0.020の軌跡を示す図である。図2及び図3において、黒体放射軌跡(Duvが0.000)に交差する直線は、各相関色温度(CCTが1700K、1950K、2000K、2700K、3000K、4000K、5000K、6500K)における等色温度線である。発光装置から発せられる混色光の色偏差であるDuvが0の場合は、黒体放射軌跡からの偏差がなく、黒体放射軌跡に近似する。
【0052】
発光装置は、400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度100%に対して、650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度が50%以下である光を発することが好ましい。発光装置の発光において、400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度100%に対する650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度の割合をLpともいう。発光装置の発光の第1放射輝度に対する第2放射輝度の割合Lpが50%以下であると、発光装置から発せられる混色光の中でも、ヒトが感知し難い長波長側の赤色成分の光が比較的少ないため、輝度を低下させることなく、暖かみがあり、落ち着いた雰囲気を感じさせる光が、発光装置から発せられる。発光装置の発光の第1放射輝度に対する第2放射輝度の割合Lpは、45%以下でもよく、40%以下でもよく、35%以下でもよく、30%以下でもよい。発光装置の発光の第1放射輝度に対する第2放射輝度の割合Lpは、良好な演色性を有する光を発するために、5%以上でもよく、8%以上でもよい。
【0053】
発光装置の発光の第1放射輝度に対する第2放射輝度の割合Lpは、下記式(3)によって導き出される。発光装置の発光の400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度100%に対する、650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度の割合Lpは、発光装置から発せられる混色光のうち、長波長の赤色成分の光の割合を示す。
【0054】
【数4】
【0055】
発光装置は、相対メラノピック比MR/MRが99%以下である光を発することが好ましい。相対メラノピック比MR/MRは、相関色温度が1950Kを超える光を発する発光装置の基準メラノピック比MRを100%としたときの、相関色温度が1950K以下である光を発する発光装置の前記式(1)から導き出されるメラノピック比MRの比率をいう。基準メラノピック比MRは、相関色温度が1950Kを超える光を発する測定対象となる発光装置の中で最も低い数値のメラノピック比を、基準メラノピック比MRとすることができる。相対メラノピック比MR/MRが99%以下と小さいと、メラトニンの分泌を促進し、自然に睡眠に誘導する光を発光装置から出射することができる。相対メラノピック比MR/MRが10%未満の光が発光装置から発せられると、例えば相対メラノピック比MR/MRが9%以下の光が発光装置から発せられると、相関色温度が1950Kを超える光を発する発光装置よりも、メラトニンを分泌する効果は大きくなるが、光の色バランスが崩れ、演色性が低下する。例えばリビングや寝室等のプライベートな空間に使用する照明であっても、発光装置に要求される演色性を満たすとともに、暖かみのある、落ち着いた雰囲気を感じさせる光を照射するために、発光装置は、相対メラノピック比MR/MRが10%以上99%以下の範囲内である光を発することが好ましい。相関色温度が1950K以下である光を発する発光装置は、相対メラノピック比MR/MRが10%以上99%以下の範囲内でもよく、30%以上98%以下の範囲内でもよく、40%以上96%以下の範囲内でもよい。
【0056】
相関色温度が1950Kを超える光を発する発光装置の基準メラノピック比MRは、下記式(4)によって導き出すことができる。
【0057】
【数5】
(式(4)中、MRは、相関色温度が1950Kを超える発光装置のメラノピック比であり、S(λ)は相関色温度が1950Kを超える発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)及びR(λ)は式(1)と同義である。)
【0058】
相対メラノピック比MR/MR(%)は、下記式(5)によって導き出すことができる。
【0059】
【数6】
【0060】
発光装置の一例を図面に基づいて説明する。図4及び図5は、第1構成例の発光装置を示す概略断面図である。
【0061】
発光装置100は、図4に示されるように、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子10と、発光素子からの光により励起されて発光する第1蛍光体71と、を備える。
【0062】
発光装置100は、成形体41と、発光素子10と、波長変換部材21とを備える。成形体40は、第1リード2及び第2リード3と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂部42とが一体的に成形されてなるものである。成形体41は底面と側面を持つ凹部を形成しており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極はそれぞれ第1リード2及び第2リード3とそれぞれワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は波長変換部材21により被覆されている。波長変換部材21は、例えば、発光素子10からの光を波長変換する蛍光体70と透光性材料を含む。波長変換部材21は、成形体40の凹部において、発光素子10と蛍光体70を覆う封止部材としての機能も有する。蛍光体70は、発光素子からの光により励起されて570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体71を含む。発光素子10の正負一対の電極に接続された第1リード2及び第2リード3は、発光装置100を構成するパッケージの外方に向けて、第1リード2及び第2リード3の一部が露出されている。これらの第1リード2及び第2リード3を介して、外部から電力の供給を受けて発光装置100を発光させることができる。
【0063】
発光装置200は、図5に示されるように、蛍光体70が、480nm以上570nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第2蛍光体72を含むこと以外は、図4に示される発光装置100と同じであり、同一の部材には同一の符号を付した。
【0064】
第1構成例の発光装置における波長変換部材は、蛍光体と透光性材料とを含み、透光性材料が樹脂であることが好ましい。波長変換部材に用いる透光性材料は、樹脂、ガラス及び無機物からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。無機物は、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。波長変換部材には、蛍光体と透光性材料の他に、必要に応じてフィラー、着色剤、光拡散材を含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。波長変換部材に含まれる蛍光体及び透光性材料以外のその他の成分の含有量は、その他の成分の合計の含有量で、透光性材料100質量部に対して、0.01質量部以上50質量部以下の範囲内とすることができ、0.1質量部以上45質量部以下の範囲内でもよく、0.5質量部以上40質量部以下の範囲内でもよい。
【0065】
第1構成例の発光装置の製造方法
第1構成例の発光装置の製造方法を説明する。なお、詳細は、例えば特開2010-62272号公報の開示を参照することもできる。発光装置の製造方法は、成形体の準備工程と、発光素子の配置工程と、波長変換部材用組成物の配置工程と、樹脂パッケージ形成工程とを含むことが好ましい。成形体として、複数の凹部を有する集合成形体を用いる場合には、樹脂パッケージ形成工程後に、各単位領域の樹脂パッケージごとに分離する個片化工程を含んでいてもよい。
【0066】
成形体の準備工程において、複数のリードを熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いて一体成形し、側面と底面とを有する凹部を有する成形体を準備する。成形体は、複数の凹部を含む集合基体からなる成形体であってもよい。
発光素子の配置工程において、成形体の凹部の底面に発光素子が配置され、発光素子の正負の電極が第1リード及び第2リードにワイヤにより接続される。
波長変換部材用組成物の配置工程において、成形体の凹部に波長変換部材用組成物が配置される。
樹脂パッケージ成形工程において、成形体の凹部に配置された波長変換部材用組成物を硬化させて、樹脂パッケージが形成され、発光装置が製造される。複数の凹部を含む集合体基体からなる成形体を用いた場合は、樹脂パッケージの形成工程後に、個片化工程において、複数の凹部を有する集合基体の各単位領域の樹脂パッケージごとに分離され、個々の発光装置が製造される。以上のようにして、図4又は図5に示す第1構成例の発光装置を製造することができる。
【0067】
図6は、第2構成例の発光装置を示す概略斜視図である。図7は、第2構成例の発光装置を示す概略断面図である。
【0068】
発光装置300は、図6及び図7に示されるように、支持体1と、この支持体1上に配置される発光素子10と、この発光素子10の上面に配置される蛍光体70を含む波長変換部材22と、波長変換部材22及び発光素子10の側方であって支持体1に配置された光反射部材43を備える。波長変換部材22の上面には、封止部材50を備える。封止部材50は、平面視が円形状で断面視が半円球状であるレンズ部51と、このレンズ部51の外周側に延出する鍔部52とを有する。レンズ部51は、平面視を円形状とし、断面視を半円球状としている。またレンズ部51の外周側には鍔部52を延出させている。
【0069】
波長変換部材22は、平面視において発光素子10よりも大きく形成されている。また、発光素子10の側面と光反射部材43の間に、発光素子10の側面及び波長変換部材22の一部に接する第1透光性部材30を設けている。第1透光性部材30は、発光素子10と波長変換部材22との間に設けられた、透光性接合部材32を含む。透光性接合部材32は、発光素子10と波長変換部材22を接合する接着材とすることができる。この透光性接合部材32は、その一部を、発光素子10の側面と波長変換部材22の発光素子10側の主面とで形成される隅部に、延在させてもよい。また、図7に示すように、延在された透光性接合部材32の断面形状は、光反射部材43の方向に広がる逆三角形とすることもできる。第1透光性部材30及び接合部材32は、透光性を有する樹脂が利用できる。支持体1は、上面に発光素子10や封止部材50等を実装するための部材である。支持体1は絶縁性の母材と、母材の表面に発光素子を実装する配線パターン等の導電部材4を備えている。光反射部材43は、第1透光性部材30、接合部材32及び波長変換部材22を被覆するための部材である。なお、第2構成例の発光装置及び後述する第2構成例の発光装置の製造方法の詳細は、例えば特開2020―57756号公報の開示を参照することもできる。
いる。
【0070】
第2構成例の発光装置の波長変換部材は、第1構成例の発光装置の波長変換部材と同様に、蛍光体と透光性材料とを含む単一の蛍光体層であってもよい。蛍光体は、発光素子からの光により励起されて570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体を含む。蛍光体は、発光素子からの光により励起されて480nm以上570nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第2蛍光体を含んでいてもよい。透光性材料は、第1構成例の発光装置の波長変換部材に用いた透光性材料と同様の透光性材料を用いることができる。また、第2構成例の発光装置の波長変換部材は、蛍光体と透光性材料の他に、第1構成例の発光装置の波長変換部材と同様に、必要に応じてフィラー、着色剤、光拡散材を含んでいてもよい。波長変換部材が、蛍光体と透光性材料を含む単一の蛍光体層からなる場合は、蛍光体と透光性材料を含む蛍光体層用組成物を硬化させて予め板状、シート状又は層状に形成し、発光素子上に配置可能な大きさに個片化して、板状、シート状又は層状の波長変換部材を形成することができる。
【0071】
図8は、第2構成例の他の例の発光装置を示す概略断面図、及び、蛍光体層とバンドパスフィルタ層と第2透光性部材の概略断面図の一部拡大図である。図8の発光装置は、波長変換部材が、蛍光体を含む蛍光体層と、バンドパスフィルタ層と、第2透光性部材と、を含む波長変換部材を用いている点で、図7に示す発光装置と異なり、発光装置の他の部材は、図7に示す発光装置と同様である。
【0072】
発光装置は、発光素子の光の出射側に、第1蛍光体を含む蛍光体層と、蛍光体層の光の出射側に配置されたバンドパスフィルタ層と、を含む波長変換部材を備え、バンドパスフィルタ層は、入射角度が0度以上30度以下の範囲内の光に対して、380nm以上495nm未満の波長範囲内の光、例えば380nm以上494nm以下の波長範囲の光の平均反射率が80%以上であり、580nmを超えて780nm以下の波長範囲内の光、例えば581nm以上780nm以下の波長範囲内の光の平均反射率が20%以下であることが好ましい。発光装置は、前述のバンドパスフィルタ層を含む波長変換部材を備えることによって、メラトニンの分泌を阻害しやすい短波長側の光の成分を抑制し、メラノピック比MRを低くすることができる。バンドパスフィルタ層は、入射角度が0度以上30度以下の範囲内の光に対して、380nm以上495nm未満の波長範囲内の光の平均反射率が80%以上であり、525nmを超えて780nm以下の波長範囲内の光の平均反射率が20%以下であることがより好ましい。バンドパスフィルタ層は、入射角度が0度以上30度以下の範囲内の光に対して、380nm以上495nm未満の波長範囲内の光の平均反射率が80%以上であり、500nmを超えて780nm以下の波長範囲内の光の平均反射率が20%以下であることがさらに好ましい。
【0073】
バンドパスフィルタ層である誘電体多層膜を配置する前の発光装置の特定の波長範囲の分光放射輝度S(λ)を100%とし、バンドパスフィルタ層である誘電体多層膜を配置した後の発光装置の特定の波長範囲の発光の分光放射輝度S(λ)の割合を、バンドパスフィルタ層を備えた発光装置のスペクトル成分の維持率として測定することができる。特定の波長範囲としては、例えば300nm以上800nm以下の範囲が挙げられる。バンドパスフィルタ層を備えた発光装置の300nm以上800nm以下の範囲内のスペクトル成分の維持率は、下記式(6)によって算出することができる。バンドパスフィルタ層を備えた発光装置の300nm以上800nm以下の範囲内のスペクトル成分の維持率は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、70%以上がよりさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。バンドパスフィルタ層を備えた発光装置のスペクトル成分の維持率が40%未満であると、例えばバンドパスフィルタ層を備えた発光装置のスペクトル成分の維持率が39%以下であると、発光装置から出射される発光色の発光スペクトルの一部の光が弱くなり、ヒトが違和感を覚える発光色となる可能性がある。また、バンドパスフィルタ層を備えた発光装置のスペクトル成分の維持率が40%未満であると、バンドパスフィルタ層で反射される光が多くなり、蛍光体で波長変換される光の成分が低減し、輝度が低下する可能性がある。バンドパスフィルタ層を備えた発光装置のスペクトル成分の維持率は、100%以下でもよく、95%以下でもよく、92%以下でもよく、91%以下でもよい。
【0074】
【数7】
【0075】
発光装置400は、蛍光体70を含む蛍光体層23と、バンドパスフィルタ層24と、を含む波長変換部材26を備える。波長変換部材26は、第2透光性部材25を備えてもよく、発光素子の光の出射側から蛍光体層23、バンドパスフィルタ層24、第2透光性部材25が順に積層された積層体であってもよい。蛍光体層23に含まれる蛍光体70は、第1蛍光体を含み、第2蛍光体を含んでいてもよい。蛍光体層23、バンドパスフィルタ層24及び第2透光性部材25は、平面視で発光素子10よりも大きく形成された板状、シート状又は層状であってもよく、発光素子10の側から蛍光体層23、バンドパスフィルタ層24、第2透光性部材25の順に積層され、波長変換部材26が形成される。
【0076】
バンドパスフィルタ層24は、誘電体多層膜からなることが好ましい。誘電体多層膜は、例えば、互いに屈折率が異なる第1誘電体層24aと第2誘電体層24bとが交互に積層された多層膜により構成することができる。バンドパスフィルタ層24は、発光素子10が発する光の発光スペクトル(中心波長及び波長に対する強度分布)、第1誘電体層24aの第1屈折率及び第2誘電体層24bの第2屈折率に基づいて第1誘電体層24aの膜厚及び第2誘電体層24bの膜厚を設定することにより、入射角度0度以上30度以下の範囲内の光に対して、380nm以上495nm未満の波長範囲の光を反射し、蛍光体層23に含まれる蛍光体が発する570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を透過するように構成することができる。誘電体多層膜からなるバンドパスフィルタ層24は、屈折率の異なる2つの第1誘電体層24aと第2誘電体層24bとを、それぞれλ/4の膜厚で交互に周期的に形成してなる。λは、反射させたい波長領域のピーク波長であり、各誘電体材料における媒質内波長である。バンドパスフィルタ層24は、屈折率の低い誘電体材料からなる第1誘電体層24aと屈折率の高い誘電体材料からなる第2誘電体層24bの各屈折率及び屈折率差、交互に形成する周期数は、所望の波長範囲で所望の平均反射率が安定して得られるように、適宜設定される。
【0077】
屈折率の低い第1誘電体層の屈折率(第1屈折率)は、例えば1.0以上1.8以下の範囲内に設定することができ、好ましくは1.2以上1.6以下の範囲内に設定することができる。第1誘電体層は、例えばSiO(屈折率が例えば1.5)で形成することができる。屈折率の高い第2誘電体層の屈折率(第2屈折率)は、例えば1.5以上3.0以下の範囲内に設定することができ、好ましくは2.0以上2.6以下の範囲内に設定することができる。第2誘電体層は、例えばNb(屈折率が例えば2.4)で形成することができる。第1誘電体層と第2誘電体層とを交互に形成する周期数は、例えば1以上30以下の範囲内に設定することができ、好ましくは、1以上25以下の範囲内に設定することができる。
【0078】
第1誘電体層を構成する誘電体材料は、例えば、SiO、Al及びSiONから選択することができる。第2誘電体層を構成する誘電体材料は、例えば、TiO、Nb、Ta及びZrから選択された材料により構成することができる。
【0079】
蛍光体層は、単一の蛍光体層からなる波長変換部材と、同様の蛍光体層を用いることができる。透光性部材は、ガラスや樹脂からなるものを用いることができる。ガラスとして、例えば、ホウ珪酸ガラスや石英ガラスから選択することができる。また、樹脂として、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂から選択することができる。
【0080】
蛍光体層と、バンドパスフィルタ層と、第2透光性部材とを含む波長変換部材は、例えば、次のように形成することができる。
まず、板状の第2透光性部材を準備する。次に、互いに屈折率が異なる第1誘電体層と、第2誘電体層とを、交互に積層して誘電体多層膜からなるバンドパスフィルタ層を形成する。誘電体多層膜は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)、スパッタ、蒸着法等により第1誘電体層と第2誘電体層とを交互に成膜することにより形成することができる。次に、バンドパスフィルタ層上に蛍光体層を形成する。蛍光体層は、例えば、バンドパスフィルタ層上に印刷法を用いて形成することができる。印刷法では、蛍光体、バインダー、及び必要に応じて溶剤を含む蛍光体層用組成物を調製し、その蛍光体層用組成物を誘電体多層膜からなるバンドパスフィルタ層の表面に塗布し、乾燥することにより蛍光体層を形成することができる。バインダーとしては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂等の有機バインダーや、ガラス等の無機バインダーを用いることができる。蛍光体層は、印刷法に代えて、圧縮成形法、蛍光体電着法、蛍光体シート法等により形成することができる。
【0081】
第2構成例の発光装置の製造方法
第2構成例の発光装置の製造方法の一例を説明する。第2構成例の発光装置の製造方法は、発光素子の配置工程と、波長変換部材の準備工程と、透光性部材及び接合部材の形成工程と、光反射部材の配置工程と、封止部材の配置工程と、を含み、各単位領域に分離する個片化工程を含んでいてもよい。
【0082】
発光素子の配置工程は、予め用意された支持体に発光素子をフリップチップ実装する。波長変換部材の準備工程は、上述した方法によって、予め板状、シート状又は層状に形成した波長変換部材を、発光素子上に配置可能な大きさに個片化して、板状、シート状又は層状の波長変換部材を準備する。第1透光性部材及び接合部材の形成工程は、発光素子の上面に透光性の接着材を塗布し、発光素子の上面に波長変換部材を接合させる。発光素子と波長変換部材の界面からはみ出た接着材が発光素子の側面から波長変換部材の周辺にかけて延在されて付着し、フィレット状をなして硬化され、第1透光性部材及び接合部材が形成される。光反射部材の配置工程は、支持体の上面において、波長変換部材及び透光性部材の側面を覆うように、白色の樹脂を配置して硬化させ、光反射部材を配置する。最後に、波長変換部材及び光反射部材の上面に封止部材を配置する。これによって第2構成例の発光装置を製造することができる。
【0083】
灯具又は照明器具
灯具又は照明器具は、上述した発光装置の少なくとも1種を備えていればよい。灯具又は照明器具は、上述した発光装置を備えて構成され、反射部材、保護部材、発光装置に電力を供給するための付属装置等をさらに備えていてもよい。灯具又は照明器具は、複数の発光装置を備えていてもよい。灯具又は照明器具が複数の発光装置を備える場合、同一の発光装置を複数備えていてもよく、形態の異なる発光装置を複数備えていてもよい。また、複数の発光装置を個別に駆動して、個々の発光装置の明るさ等の調節が可能な駆動装置を備えていてもよい。灯具又は照明器具の使用形態としては、直付型、埋め込み型、吊り下げ型等のいずれであってもよい。灯具は、街路灯、港湾やトンネル等の屋外の設置を想定した灯具であってもよく、ヘッドライト、懐中電灯、又はLEDを使用した携帯用ランタンのような屋外での使用が想定される灯具であってもよく、屋内であっても窓際等の屋外に近い場所に設置される灯具であってもよい。照明器具は、上述の発光装置から暖かみを感じさせる発光色を有し、落ち着いた雰囲気を感じさせ、メラトニンの分泌を促進し、自然に睡眠に誘導する光を照射することが可能であり、例えば屋内のリビングや寝室等のプライベートな空間に使用する屋内用の一般照明、間接照明、車載用照明として用いてもよい。
【0084】
街路灯は、上述した発光装置の少なくとも1種を備えていればよい。図9は、街路灯1000の一例を示す図である。街路灯1000は、歩道W又は車道C1に設置されるポールPと、発光装置Leの支持部Sとを備え、支持部Sには、発光装置Leの周囲を覆い、アクリル、ポリカーボネート、又はガラス等の発光装置Leが発した光の少なくとも一部を透過する光透過部Tを備えている。街路灯1000は、ポールPと一体となった支持部Sに設置された発光装置Leによって高所から低所を照らすことができる。街路灯は、支持部の高さを任意に設定できるポールを備えたポール型の街路灯のみならず、ポールの代わりにブラケットで支持部を支持するブラケット型の街路灯であってもよく、下方から上方を照らす投光型の街路灯であってもよく、支柱やブロック等の景観材に組み込まれる景観材組み込み型の街路灯であってもよい。
【0085】
街路灯は、低位置から路面を照らす低位置照明用装置であってもよい。低位置照明装置は、上述した発光装置の少なくとも1種を備えていればよい。低位置照明装置に上述した発光装置を用いると、落ち着いた暖かみのある光を照射することができる。図10は、低位置照明装置1001の一例を示す図である。低位置照明装置1001は、例えば道路C2の側部に設けられた設置台B上に設置されてもよい。低位置照明装置は、例えば車道を走行する車両の運転手の目線の高さよりも低い位置に設置することができる。低位置照明装置は、例えば、車道の路面から1mから1.2m程度の高さに設定してもよい。低位置照明装置は、道路の側部に設置するだけではなく、花壇や公園の歩道の側部等に設置してもよい。
【実施例
【0086】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0087】
各実施例及び比較例の発光装置には、以下の第1蛍光体及び/又は第2蛍光体を用いた。
【0088】
第1蛍光体
第1蛍光体として、式(1A)で表される組成に含まれる第1窒化物蛍光体である、BSESN-2、BSESN-3と、式(1B)で表される組成に含まれる第2窒化物蛍光体である、SCASN-1、SCASN-2、SCASN-3、SCASN-4、SCASN-6、式(1C)で表される組成に含まれるフッ化物蛍光体KSFを準備した。これらの蛍光体は、式(1A)あるいは式(1B)で表される組成に含まれる第1窒化物蛍光体あるいは第2窒化物蛍光体であるが、それぞれ組成に含まれる各元素のモル比が異なり、表1に示すように、それぞれ異なる発光ピーク波長及び半値全幅を有する。
【0089】
第2蛍光体
第2蛍光体として、式(2A)で表される組成に含まれ、組成がY(Al,Ga)12:Ce(aは、0<a≦0.5を満たす)である希土類アルミン酸塩蛍光体である、G-YAG1及びG-YAG4と、式(2A)で表される組成に含まれ、組成がYAl12:Ceである希土類アルミン酸塩蛍光体である、YAG1及びYAG3を準備した。これらの蛍光体は、式(2A)で表される組成に含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体であるが、それぞれ組成に含まれる各元素のモル比が異なり、表2に示すように、それぞれ異なる発光ピーク波長及び半値全幅を有する。
【0090】
蛍光体の発光スペクトルの測定
各蛍光体は、量子効率測定装置(QE-2000、大塚電子株式会社製)を用いて、励起波長450nmの光を各蛍光体に照射し、室温(約25℃)における発光スペクトルを測定し、各発光スペクトルから発光ピーク波長及び半値全幅を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
バンドパスフィルタ層
実施例に用いた誘電体多層膜-1(DBR-1)、誘電体多層膜-2(DBR-2)及び誘電体多層膜-3(DBR-3)からなるバンドパスフィルタ層を用いることができる。
【0094】
誘電体多層膜の反射スペクトルの測定
各誘電体多層膜について、誘電体多層膜の法線方向(入射角度0度)から励起光源の光を照射し、分光光度計(V-670、日本分光株式会社製)を用いて、室温(25℃±5℃)で300nm以上800nm以下の波長範囲内の反射スペクトルを測定した。誘電体多層膜-1(DBR-1)、誘電体多層膜-2(DBR-2)及び誘電体多層膜-3(DBR-3)の反射スペクトルを測定した。誘電体多層膜-1(DBR-1)、誘電体多層膜-2(DBR-2)及び誘電体多層膜-3(DBR-3)の反射スペクトルを図11に示す。入射角度0度の各誘電体層の反射スペクトルにおいて波長が380nm以上780nm以下の範囲内における最大の反射強度を100%とした。入射角度が0度の光に対して、380nm以上495nm未満の波長範囲内の光の平均反射率と、580nmを超えて780nm以下の波長範囲内の光の平均反射率と、525nm以上780nm以下の波長範囲内の平均反射率と、500nm以上780nm以下の波長範囲内の光の平均反射率を表3に記載した。
【0095】
【表3】
【0096】
誘電体多層膜-1(DBR-1)は、380nm以上495nm未満の波長範囲の光の平均反射率が80%以上であり、580nmを超えて780nm以下の波長範囲内の光の平均反射率が20%以下であった。誘電体多層膜-1(DBR-1)、誘電体多層膜-2(DBR-2)及び誘電体多層膜-3(DBR-3)において、380nm以上495未満の波長範囲の光は、例えば、380nm以上494nm以下の波長範囲の光である。また、580nmを超えて780nm以下の波長範囲内の光は、例えば、581nm以上780nm以下の波長範囲内の光である。
誘電体多層膜-2(DBR-2)は、380nm以上495nm未満の波長範囲の光の平均反射率が80%以上であり、525nm以上780nm以下の波長範囲内の光の平均反射率が20%以下であった。
誘電体多層膜-3(DBR-3)は、380nm以上495nm未満の波長範囲の光の平均反射率が80%以上であり、500nm以上780nm以下の波長範囲内の光の平均反射率が20%以下であった。
【0097】
実施例1、2
第1構成例の発光装置を製造した。第1構成例の発光装置は、図5を参照することができる。
発光素子10は、発光ピーク波長が450nmである窒化物系半導体層が積層された発光素子10を用いた。発光素子10の大きさは、平面形状が約700mm四方の略正方形であり、厚さが約200mmである。
第1リード2及び第2リード3として、リードフレームを用い、第1リード2及び第2リード3を、エポキシ樹脂を用いて一体成形し、側面と底面とを有する凹部を有する成形体41を準備した。
成形体41の凹部の底面に発光素子10を配置し、発光素子10の正負の電極と、第1リード2及び第2リード3と、をAu製のワイヤ60により接続した。
波長変換部材21を構成する透光性材料としてシリコーン樹脂を用いた。波長変換部材用組成物は、発光素子10からの光と、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む蛍光体70の光との混色光の相関色温度が1950K以下の1800Kから1850K付近になるように第1蛍光体71及び第2蛍光体を配合した。ここで、透光性材料100質量部に対する蛍光体70の総量と、第1蛍光体71と第2蛍光体72の配合比率は、表4に示す通りである。波長変換部材用組成物は、シリコーン樹脂100質量部に対してフィラーとして酸化アルミニウムを2質量部も配合した。次いで、準備した波長変換部材用組成物を成形体41の凹部に充填した。
成形体41の凹部内に充填した波長変換部材用組成物を、150℃で3時間加熱して硬化させ、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む波長変換部材21を備えた樹脂パッケージを形成し、相関色温度が1950K以下になる光を発する、第1構成例の発光装置200を製造した。
【0098】
実施例3
第1構成例の発光装置を製造した。第1構成例の発光装置は、第1蛍光体のみを含み、第2蛍光体を含まない、図4を参照することができる。
波長変換部材用組成物として、表4の各実施例に示す第1蛍光体71を用い、蛍光体70の総量(第1蛍光体71の合計量)と、第1蛍光体71と第2蛍光体の合計量に対して、第1蛍光体71が100質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂パッケージを形成し、相関色温度が1950K以下になる光を発する、第1構成例の発光装置100を製造した。表4に示すように、第1蛍光体として、式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体であって、組成の異なる2種の第1窒化物蛍光体BSESN2と、BSESN3を用い、BSESN2とBSESN3の質量比率(BSESN2/BSESN3)を30/70とした。
【0099】
実施例4
第1構成例の発光装置200を製造した。第1構成例の発光装置200は、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む図5を参照することができる。
波長変換部材21を構成する透光性材料としてフェニルシリコーン樹脂を用いた。第1蛍光体71及び第2蛍光体72として表4に示す蛍光体を用いた。
波長変換部材用組成物は、透光性材料100質量部に対して、発光素子10からの光と、第1蛍光体71を含む蛍光体70の光との混色光の相関色温度が1950K以下の1800Kから1850K付近になるように、表4に示すように第1蛍光体71及び第2蛍光体72を配合した。波長変換部材用組成物は、フェニルシリコーン樹脂100質量部に対してフィラーとして二酸化ケイ素15質量部を配合した。次いで、準備した波長変換部材用組成物を成形体41の凹部に充填した。
成形体41の凹部内に充填した波長変換部材用組成物を150℃で4時間加熱して硬化させ、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む波長変換部材21を備えた樹脂パッケージを形成し、相関色温度が1950K以下になる光を発する、第1構成例の発光装置200を製造した。
【0100】
実施例5及び6
実施例1と同様に第1構成例の発光装置を製造し、図12に示すように、発光装置100の波長変換部材21の光の出射側にバンドパスフィルタ層24として誘電体多層膜を配置した。実施例5は、実施例1と同様の発光装置の波長変換部材の光の出射側に誘電体多層膜2(DBR-2)を配置した。実施例6は、実施例1と同様の発光装置の波長変換部材の光の出射側に誘電体多層膜3(DBR-3)を配置した。
【0101】
実施例7及び8
実施例7は、実施例2と同様の発光装置の波長変換部材の光の出射側に誘電体多層膜2(DBR-2)を配置した。実施例8は、実施例2と同様の発光装置の波長変換部材の光の出射側に誘電体多層膜3(DBR-3)を配置した。
【0102】
実施例9及び10
実施例9は、実施例3と同様の発光装置の波長変換部材の光の出射側に誘電体多層膜2(DBR-2)を配置した。実施例10は、実施例3と同様の発光装置の波長変換部材の光の出射側に誘電体多層膜3(DBR-3)を配置した。
【0103】
実施例11及び12
実施例11は、実施例4と同様の発光装置の波長変換部材の光の出射側に誘電体多層膜2(DBR-2)を配置した。実施例12は、実施例4と同様の発光装置の波長変換部材の光の出射側に誘電体多層膜3(DBR-3)を配置した。
【0104】
比較例1
第2構成例の発光装置を製造した。第2構成例の発光装置は、図6及び図7を参照することができる。
【0105】
発光素子の配置工程
支持体1は、窒化アルミニウムを材料とするセラミックス基板を用いた。発光素子10は、発光ピーク波長が450nmである窒化物系半導体層が積層された発光素子10を用いた。発光素子10の大きさは、平面形状が約1.0mm四方の略正方形であり、厚さが約0.11mmである。発光素子は、光出射面が封止部材側になるように配置し、Auからなる導電部材4を用いたバンプによってフリップチップ実装した。
【0106】
波長変換部材の準備工程
波長変換部材22を構成する透光性材料としてシリコーン樹脂を用いた。波長変換部材用組成物は、透光性材料100質量部に対して、発光素子10からの光と、第1蛍光体及び第2蛍光体を含む蛍光体70の光との混色光の相関色温度がナトリウムランプの色温度に近い2230K付近となるように第1蛍光体及び第2蛍光体を配合した。ここで、透光性材料100質量部に対する蛍光体70の総量と、第1蛍光体と第2蛍光体の配合比率は、表4に示す通りである。波長変換部材用組成物は、シリコーン樹脂100質量部に対してフィラーとして酸化アルミニウム2質量部を配合した。次いで、準備した波長変換部材用組成物を180℃で2時間加熱してシート状に硬化させて、発光素子10の平面形状よりも縦横に約0.1mm大きい、平面形状が約1.6mm四方の略正方形であり、厚さが約150μmの個片化したシート状の波長変換部材22を準備した。
【0107】
透光性部材及び接合部材の形成工程
透光性の接着材である、フェニルシリコーン樹脂を発光素子10の上面に塗布し、波長変換部材22を接合させて、さらに発光素子10と波長変換部材22の界面に透光性の接着材を塗布し、150℃、4時間硬化させて、発光素子10の側面から波長変換部材22の周辺かけて延在するように、フィレット状をなして硬化された第1透光性部材30及び接合部材32を形成した。
【0108】
光反射部材の配置工程
光反射部材用組成物として、ジメチルシリコーン樹脂と平均粒径(カタログ値)が0.28μmの酸化チタン粒子とを含み、ジメチルシリコーン樹脂100質量部に対して酸化チタン粒子を60質量部含む光反射部材用組成物を準備した。支持体1の上面において、波長変換部材22及び透光性部材30の側面を覆うように、白色の樹脂である光反射部材用組成物に配置して、硬化させ、光反射部材43を形成した。
【0109】
封止部材の配置工程
最後に、フェニルシリコーン樹脂を硬化して形成された平面視で円形状であり、断面視で半円球状であるレンズ部51と、レンズ部51の外周側に延出する鍔部52と、を備えた封止部材50を配置し、相関色温度が1950Kを超える光を発する、第2構成例の発光装置300を製造した。
【0110】
比較例2及び3
第1構成例の発光装置を製造した。第1構成例の発光装置は、第1蛍光体及び第2蛍光体を含む。
波長変換部材用組成物として、透光性材料として、フェニルシリコーン樹脂100質量部に対して、発光素子10からの光と、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む蛍光体70の光との混色光の相関色温度がナトリウムランプの色温度に近い2000K付近となるように第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含有する波長変換部材用組成物を準備した。この波長変換部材用組成物において、透光性材料100質量部に対する蛍光体70の総量と、第1蛍光体71と第2蛍光体72の配合比率は、表4に示す通りである。
波長変換部材用組成物を成形体41の凹部の発光素子10上に注入して、前記凹部に充填し、さらに150℃で4時間加熱し、蛍光部材用組成物を硬化させ、蛍光部材21を形成し、のようにして、相関色温度が1950Kを超えて2000K以下になる光を発する、第1構成例の発光装置200を製造した。
【0111】
各発光装置について、以下の測定を行った。結果を表4から7に示す。
【0112】
発光装置の発光スペクトル
各発光装置について、分光測光装置(PMA-12、浜松ホトニクス株式会社製)と積分球を組み合わせた光計測システムを用いて、発光スペクトルを測定した。各発光装置の発光スペクトルの測定は、室温(20℃から30℃)で行った。図13から図18は、各発光装置の前記式(1)における分母から導き出される輝度を同等の数値とした場合の各発光装置の発光スペクトル(分光放射輝度)S(λ)、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)、及びCIEで規定されたipRGCの感度曲線R(λ)を記載した。図19から図22は、バンドパスフィルタ層を配置していない発光装置と、各バンドパスフィルタ層を配置した発光装置の発光スペクトルを記載した。
【0113】
色度座標(x、y)、相関色温度(K)、色偏差Duv、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R9、半値全幅
各発光装置の発光スペクトルから、CIE1931のCIE色度図上の色度座標(x値、y値)と、JIS Z8725に準拠して相関色温度(CCT:K)及び色偏差Duvと、JIS Z8726に準拠して平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R9、及び半値全幅を測定した。
【0114】
第1放射輝度に対する第2放射輝度の割合Lp
各発光装置の発光スペクトル(分光放射輝度)S(λ)から、前記式(3)に基づき、400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度を100%としたときの、650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度の割合Lp(%)を算出した。
【0115】
メラノピック比MR
各発光装置について測定した各発光スペクトル(分光放射輝度)S(λ)、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)、CIEで規定されたipRGCの感度曲線R(λ)を、前記式(1)に算入し、前記式(1)に基づき、各発光装置のメラノピック比MRを測定した。ヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)は、最大の感度(感度ピーク波長)を1とした作用曲線を用いた。CIEで規定されたipRGCの感度曲線R(λ)は、最大の感度(感度ピーク波長)を1とした作用曲線を用いた。
【0116】
相対メラノピック比MR/MR
相関色温度が1950Kを超える光を発する比較例1から3の発光装置のうち、メラノピック比MRが最も低い数値である、比較例3の発光装置のメラノピック比を、前記式(4)に基づき、基準メラノピック比MRとした。基準メラノピック比MRに対する各発光装置のメラノピック比MRの比である相対メラノピック比MR/MRを、前記式(5)に基づき算出した。
【0117】
バンドパスフィルタ層を備えた場合のスペクトル成分の維持率
バンドパスフィルタ層である誘電体多層膜を配置する前の発光装置の300nm以上800nm以下の範囲の発光の分光放射輝度S(λ)を100%としたときの、バンドパスフィルタ層である誘電体多層膜を配置した後の発光装置の300nm以上800nm以下の範囲の発光の分光放射輝度S(λ)の割合を、前記式(6)に基づき、バンドパスフィルタ層を備えた場合のスペクトル成分の維持率(%)として算出した。
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
【表7】
【0122】
表4又は表6に示すように、実施例1から12に係る発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、ろうそくや焚火の炎に近い暖かみを感じさせる発光色を示した。また、高圧ナトリウムランプの代替として発光装置を用いた場合も、照射物の色味が自然であり、ヒトに違和感を抱かせることが少ない光が発せられる。また、実施例1から12に係る発光装置は、最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅が3nm以上110nm以下の範囲内であった。また、発光装置の発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、570nm以上680nm以下の範囲内であった。発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が3nm以上110nm以下であるため、ヒトが感知し難い長波長側の光の成分を抑制することができた。また、実施例1から12に係る発光装置は、前記式(1)から導き出されるメラノピック比MRが0.233以下である光を発し、ヒトのipRGCを強く刺激せずにメラトニンの分泌が促進され、自然に睡眠に誘導する光を照射することができ、落ち着いた雰囲気を感じさせることができると考えられる。
【0123】
実施例1から4に係る発光装置は、黒体放射軌跡からの偏差である色偏差Duvが0.000である光を発し、相関色温度が1950K以下の光を発する場合においても、照射物の色味が自然であり、ヒトに違和感を抱かせることが少ない光が、発光装置から発せられた。
実施例5から12に係る発光装置は、バンドパスフィルタ層として、誘電体多層膜を備える場合であっても、黒体放射軌跡からの偏差である色偏差Duvがマイナス(-)0.008以上プラス(+)0.008以下の光を発し、照射物の色味が自然であり、ヒトに違和感を抱かせることが少ない光が、発光装置から発せられた。
【0124】
表5又は表7に示すように、実施例1から12に係る発光装置は、400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度100%に対する、650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度が割合Lpが30%以下である光を発した。実施例1から12に係る発光装置は、発光装置から発せられる混色光の中でも、ヒトが感知し難い長波長側の赤色成分の光が比較的少ないため、輝度を低下させることなく、暖かみがあり落ち着いた雰囲気を感じさせる光が、発光装置から発せられる。
【0125】
実施例1から12に係る発光装置は、相対メラノピック比MR/MRが40%以上99%以下であり、発光色の色バランスを崩すことなく、メラトニンの分泌を促進し、自然に睡眠に誘導する光を発光装置から出射することができると考えられた。
【0126】
実施例1、2、4、5、6、7、8、11及び12に係る発光装置は、平均演色評価数Raが40以上であり、例えばリビングや寝室等のプライベートな空間に用いた場合においても、違和感なく軽度の作業を行うことができる演色性を有する光を発した。
【0127】
実施例3、9及び10に係る発光装置は、平均演色評価数Raが28以上40以下であり、道路等の屋外において、十分な演色性を有し、メラノピック比MRが0.233以下と低く、ipRGCを強く刺激することなく、落ち着いた雰囲気の光を発した。
【0128】
実施例5から12に係る発光装置は、バンドパスフィルタ層として、誘電体多層膜を備えた場合であっても、バンドパスフィルタ層を備えていない発光装置の発光スペクトルの88%以上を維持し、ipRGCを刺激しやすい短波長側の光を低減しつつ、ヒトが照射物を見やすい光を発した。
【0129】
比較例1から3に係る発光装置は、ろうそくや高圧ナトリウムランプが発する光よりもやや高い相関色温度の光を発し、メラノピック比MRも0.233を超えており、ipRGCを刺激しやすく、メラトニンの分泌を抑制しやすい光を発すると考えられた。
【0130】
図13から図16に示すように、実施例1から4に係る発光装置は、メラノピック比MRが0.233以下であり、ipRGCを刺激しやすい短波長側の光の成分が小さく、一方、ヒトが感知しやすい550nm以上650nm以下の波長範囲では、比較例3よりも発光強度が高くなり、ヒトが照射物を見やすい光を発した。
【0131】
図17及び18に示すように、比較例1から3に係る発光装置は、メラノピック比MRが0.233を超えており、比較例1及び2は、メラノピック比MRが比較例の中で最も低い比較例3よりも、ipRGCを刺激しやすい短波長側の発光強度が高くなっており、メラトニンの分泌を阻害し易くなる傾向があった。
【0132】
図19から図22に示すように、実施例5から12に係る発光装置は、バンドパスフィルタ層を備え、短波長側の光の出射を抑制した場合であっても、バンドパスフィルタ層を備えていない発光装置とほぼ同等に近い高い発光強度を有しており、ヒトが照射物を見やすい光を発した。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の一態様の発光装置は、リビングや寝室等のプライベートな空間に使用する屋内用の一般照明、間接照明、車載用照明として用いることができる。街路灯、港湾やトンネル等の屋外に設置する灯具、ヘッドライト、懐中電灯、又はLEDを使用した携帯用ランタンのような屋外での使用が想定される灯具の光源としても利用することができる。
【符号の説明】
【0134】
1:支持体、2:第1リード、3:第2リード、4:導電部材、10:発光素子、21、22、26:波長変換部材、23:蛍光体層、24:バンドパスフィルタ層、24a:第1誘電体層、24b:第2誘電体層、25:第2透光性部材、30:第1透光性部材、32:透光性接合部材、41:成形体、42:樹脂部、43:光反射部材、50:封止部材、51:レンズ部、52:鍔部、60:ワイヤ、70:蛍光体、71:第1蛍光体、72:第2蛍光体、100、200、300、400:発光装置、1000:街路灯、1001:低位置照明装置、B:設置台、C1、C2:車道、Le:光源、P:ポール、S:支持部、T:光透過部、W:歩道。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22