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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】アノード搬送設備
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/06 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
C25C7/06 301Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020164511
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056651
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】真壁 祐太
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128303(JP,A)
【文献】特開2017-122254(JP,A)
【文献】実開昭60-134510(JP,U)
【文献】特開平07-190744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードを搬送する設備であって、
アノードプレスによって形状が調整されたアノードを吊り下げた状態で搬送する搬送部と、
該搬送部によって吊り下げられている前記アノードの表面までの距離を測定する距離測定部と、を備えており、
前記搬送部には、
吊り下げたアノードを挟んで保持する姿勢保持部が設けられている
ことを特徴とするアノード搬送設備。
【請求項2】
前記距離測定部が、
前記アノードを鉛直方向に移動させる搬送経路に設けられており、
前記姿勢保持部は、
前記アノードにおける前記距離測定部側の第一面と対向する位置に設けられた第一保持部と、
前記アノードにおける反距離測定部側の第二面と対向する位置に設けられた第二保持部と、を有しており、
前記第一保持部が、
前記アノードの第一面に対して進退可能に設けられた接触部材を備えており、
該接触部材を前記アノードに向けて前進させて、該接触部材と前記第二保持部との間に前記アノードを挟む
ことを特徴とする請求項1記載のアノード搬送設備。
【請求項3】
前記第二保持部が、
前記アノードの第二面と接触する接触部材を備えており、
該接触部材が、
前記アノードの第二面側に凸となった弧状面を有している
ことを特徴とする請求項2記載のアノード搬送設備。
【請求項4】
前記第二保持部の接触部材が、弓型形状のパイプ材である。
ことを特徴とする請求項3記載のアノード搬送設備。
【請求項5】
前記距離測定部が、
前記アノードの第一面までの距離を非接触で測定する距離測定装置を備えており、
前記姿勢保持部は、
該姿勢保持部によって保持された状態において、前記アノードの第一面が距離測定装置の測定範囲内に位置するように保持する
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のアノード搬送設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノード搬送設備に関する。さらに詳しくは、アノード歪を測定する装置を備えたアノード搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度の金属を製造する方法として電解精錬がある。この電解精錬では、電解液を満たした電解槽中にアノード(純度の低い目的金属からなる電極、または、電解液に溶出しない電極)とカソードとを交互に浸漬して通電することにより、カソードにおける電解液に浸漬された表面上に高純度の金属を電着させて製品を製造している。
【0003】
電解精錬の通電工程では大量の電力を消費することから、電解精錬の生産効率を向上するために、消費電力を低減することが求められている。アノードとカソードは間隔を空けた状態で電解槽に装入されるが、消費電力は両者間の距離の影響を受ける。例えば、アノードとカソードの距離が大きくなりすぎた場合には、電解液の電気抵抗が大きくなり、電着に大きな電力が必要になる。一方、アノードとカソードの距離が小さくなりすぎた場合には、消費電力は小さくできるものの、カソードへの電着が進むと、電着した金属の一部がアノードと接触してしまう場合がある。かかる接触が生じれば、アノードからカソードに直接電流が流れてしまうので、電力が空費される。したがって、アノードとカソードの距離を適切に調整する必要がある。
【0004】
アノードとカソードはともに、電解槽の上部に設けられている電極であるブスバーに保持され、電解槽中に吊り下げられている。このため、電解槽中におけるアノードとカソードの距離には、両電極の垂直性が影響を与える。つまり、両電極の垂直方向の歪が影響を与えるので、両電極の歪を小さくすることは重要である。
【0005】
電解精錬に使用するアノードは鋳造で製造されるが、鋳造の際にアノードに歪や曲がり等が生じており、その厚みも均一ではなく各アノード毎に若干の差がある。したがって、アノードとカソードの距離を適切に調整するためには、アノードの形状を定量的に把握する必要がある。現状では、アノードの形状を定量的に把握するために、アノードの歪と厚みを測定することが一般的に行われている。
【0006】
例えば、特許文献1には、距離センサーを使用してアノードの歪と厚みを測定する方法が開示されている。特許文献2では、肩部で吊り下げられた状態にある搬送中のアノードの表面と対向する距離センサー群(距離センサ群)を設けており、この距離センサ群によってアノードの胴体部表面までの距離9点と肩部表面までの距離2点を測定している。そして、得られた測定値のうち、胴体部表面までの距離9点のうち1点と肩部表面までの距離2点の3点を基準として仮想平面(基準平面)を算出し、この基準平面と、基準平面の算出に使用しなかった他の測定値からアノードの歪を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-236017号公報
【文献】特開2018‐128303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、搬送中のアノードは搬送方向の揺れを生じており、距離センサ群の位置でもアノードが揺れている場合には、距離センサ群による適切な距離測定が行えず、アノード歪み測定不良が発生する可能性がある。とくに、アノードの揺れが大きい場合には、アノードの胴体部表面が距離センサの測定範囲から外れてしまう可能性が有り、その場合には、距離センサによるアノードの胴体部表面までの距離自体を測定できない可能性が有る。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、搬送中のアノードの歪を精度よく測定できるアノード搬送設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明のアノード搬送設備は、アノードを搬送する設備であって、アノードプレスによって形状が調整されたアノードを吊り下げた状態で搬送する搬送部と、該搬送部によって吊り下げられている前記アノードの表面までの距離を測定する距離測定部と、を備えており、前記搬送部には、吊り下げたアノードを挟んで保持する姿勢保持部が設けられていることを特徴とする。
第2発明のアノード搬送設備は、第1発明において、前記距離測定部が、前記アノードを鉛直方向に移動させる搬送経路に設けられており、前記姿勢保持部は、前記アノードにおける前記距離測定部側の第一面と対向する位置に設けられた第一保持部と、前記アノードにおける反距離測定部側の第二面と対向する位置に設けられた第二保持部と、を有しており、前記第一保持部が、前記アノードの第一面に対して進退可能に設けられた接触部材を備えており、該接触部材を前記アノードに向けて前進させて、該接触部材と前記第二保持部との間に前記アノードを挟むことを特徴とする。
第3発明のアノード搬送設備は、第2発明において、前記第二保持部が、前記アノードの第二面と接触する接触部材を備えており、該接触部材が、前記アノードの第二面側に凸となった弧状面を有していることを特徴とする。
第4発明のアノード搬送設備は、第3発明において、前記第二保持部の接触部材が、弓型形状のパイプ材であることを特徴とする。
第5発明のアノード搬送設備は、第1、第2、第3または第4発明において、前記距離測定部が、前記アノードの第一面までの距離を非接触で測定する距離測定装置を備えており、前記姿勢保持部は、該姿勢保持部によって保持された状態において、前記アノードの第一面が距離測定装置の測定範囲内に位置するように保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、姿勢保持部が吊り下げたアノードを挟んで保持するので、距離測定部による測定結果に基づいて、アノードの歪を精度よく求めることができる。
第2発明によれば、第一保持部の接触部材をアノードに対して前進または後退させれば、第一保持部の接触部材と第二保持部との間にアノードを挟んだり解放したりすることができるので、アノードの保持解放を迅速かつ容易に実施することができる。
第3、第4発明によれば、第二保持部の接触部材がアノード表面に凹凸や鋳バリ等があっても、アノードを搬送する際に、凹凸や鋳バリ等第二保持部の接触部材が引っ掛かることを防止できる。
第5発明によれば、距離測定装置の範囲内にアノードの第一面を確実に配置できるので、距離測定部による測定ミスを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のアノード搬送設備10の概略説明図である。
図2図1のII-II線概略断面図である。
図3図1のIII-III線概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態のアノード搬送設備は、アノード歪みを測定する装置を備えたアノード搬送設備であって、搬送中のアノードの姿勢を適切な姿勢に保持できるようにしたことに特徴を有している。
【0014】
本実施形態のアノード搬送設備は、電解精錬による電気銅の製造に使用される設備においてアノードを成形するアノードプレスから供給されるアノードを次工程に搬送する設備として適している。他にも、電解槽等へアノードを搬送する設備等にも適用することができる。
【0015】
以下では、本実施形態のアノード搬送設備を、電解精錬による電気銅の製造に使用される設備において、アノードを成形するアノードプレスから供給されるアノードを次工程に搬送する設備として使用した場合を代表として説明する。
【0016】
<アノードA>
まず、本実施形態のアノード搬送設備1によって搬送されるアノードAの概略を説明する。
【0017】
図1に示すように、アノードAは、正面視で略四角形に形成された胴体部ABと、この胴体部ABの上端に設けられた一対の肩部AS,ASと、を備えている。一対の肩部AS,ASは、胴体部ABの幅方向の両端部にそれぞれ設けられており、その先端が胴体部ABの側端から突出している。
【0018】
このため、アノードAは、一対の肩部AS,ASを電解槽の電極(ブスバー)に引っ掛けて懸垂された状態とすることができ、その状態で胴体部ABを電解槽中の電解液に浸漬することができる。
【0019】
アノードAの大きさはとくに限定されない。例えば、銅電解精錬に使用するアノードAであれば、電解槽やカソードの大きさに合わせて、胴体部ABは、高さが1000~1100mm、横幅が約1000~1100mm、厚さが約20~60mmに形成される。また、各肩部ASは、アノードAを吊り下げたときに重量を支えることができる大きさであれば特に制限はない。例えば、各肩部ASの長さ、つまり、胴体部ABの幅方向と平行な方向の長さが約150~250mm、幅、つまり、胴体部ABの高さ方向と平行な方向の長さが約50~150mm、厚さが約20~60mmに形成される。
【0020】
<アノード搬送設備1>
つぎに、本実施形態のアノード搬送設備1について簡単に説明する。
【0021】
<下側搬送コンベア2>
図1図3において、符号2は、搬送設備1において、アノードAを搬送する下側搬送コンベアを示している。この下側搬送コンベア2は、アノードAの一対の肩部AS,ASを保持した状態(つまりアノードAを懸垂した状態)でアノードAを水平方向に搬送するコンベアであり、鋳造されたアノードAの垂直性を矯正するプレス加工機からプレス加工されたアノードAが供給され、アノードAを垂直搬送コンベア4に供給するものである。例えば、下側搬送コンベア2は、互いに平行かつ間隔を空けて水平に設けられた一対のチェーン2c,2cを有しており、一対のチェーン2c,2cの上面にそれぞれアノードAの一対の肩部AS,ASを引っ掛けた状態でアノードAを懸垂したまま水平に搬送できるようになっている。
【0022】
なお、下側搬送コンベア2は、アノードAを懸垂した状態で水平方向に搬送できるものであればよく、その構造はとくに限定されない。ここでいう水平方向には、水平の方向と、水平に対して若干傾斜している方向の両方を含んでいる。
【0023】
<上側搬送コンベア3>
図1図3に示すように、下側搬送コンベア2の上方かつ下流側(図2および図3では左側)には上側搬送コンベア3が設けられている。この上側搬送コンベア3は、アノードAの一対の肩部AS,ASを保持した状態(つまりアノードAを懸垂した状態)でアノードAを水平方向に搬送するコンベアであり、垂直搬送コンベア4からアノードAが供給され、アノードAを次工程に供給するものである。例えば、上側搬送コンベア3は、互いに平行かつ間隔を空けて水平に設けられた一対のチェーン3c,3cを有しており、一対のチェーン3c,3cの上面にそれぞれアノードAの一対の肩部AS,ASを引っ掛けた状態でアノードAを懸垂したまま水平に搬送できるようになっている。
【0024】
なお、上側搬送コンベア3は、アノードAを懸垂した状態で水平方向に搬送できるものであればよく、その構造はとくに限定されない。ここでいう水平方向には、水平の方向と、水平に対して若干傾斜している方向の両方を含んでいる。
【0025】
<垂直搬送コンベア4>
図1図3に示すように、下側搬送コンベア2の下流側と上側搬送コンベア3の上流側との間には、垂直搬送コンベア4が設けられている。この垂直搬送コンベア4は、アノードAの一対の肩部AS,ASを保持した状態(つまりアノードAを懸垂した状態)でアノードAを垂直方向に搬送するコンベアであり、下側搬送コンベア2から上側搬送コンベア3へアノードAを搬送するものである。例えば、垂直搬送コンベア4は、互いに平行かつ間隔を空けて水平に設けられた一対のチェーン4c,4cを有しており、一対のチェーン4c,4cの互いに対向する位置にアノードAの一対の肩部AS,ASを引っ掛けた状態で保持する保持部4fを備えている。したがって、一対のチェーン4c,4cの保持部4fにアノードAの一対の肩部AS,ASを引っ掛ければ、アノードAを懸垂したまま垂直に搬送できるようになっている。
【0026】
なお、垂直搬送コンベア4は、アノードAを懸垂した状態で垂直方向に搬送できるものであればよく、その構造はとくに限定されない。ここでいう垂直方向には、垂直の方向と、垂直に対して若干傾斜している方向の両方を含んでいる。
【0027】
<上下移載機構5、6>
また、アノード搬送設備1は、下側搬送コンベア2から垂直搬送コンベア4にアノードAを移載する下部移載機構5と、垂直搬送コンベア4から上側搬送コンベア3にアノードAを移載する上部移載機構6と、を備えている。
【0028】
<下部移載機構5>
下部移載機構5は、下側搬送コンベア2に懸垂された状態のアノードAを上方に持ち上げる持ち上げ部5aと、持ち上げ部5aで持ち上げたアノードAを垂直搬送コンベア4側に移動させる移動部5cと、を備えている。
【0029】
持ち上げ部5aの構造はとくに限定されないが、例えば、一対のリフトアームb,bを昇降させてアノードAを持ち上げる構造を採用することができる。つまり、一対のリフトアームb,bの先端をそれぞれアノードAの一対の肩部AS,ASの下面に当てて、一対のリフトアームb,bを下側搬送コンベア2の一対のチェーン2c,2cの上面よりも上方まで移動させる構造を採用することができる。
【0030】
移動部5cの構造はとくに限定されないが、例えば、先端に鍵状部を有し、基端を支点として揺動する一対のアームd,dを有する構造を採用することができる。つまり、一対のアームd,dを揺動させると、持ち上げ部5aの一対の棒状の部材b,bによって持ち上げられたアノードAの一対の肩部AS,ASに鍵状部が係合し、その状態で一対のアームd,dがアノードAを垂直搬送コンベア4の位置まで移動させる構造を採用することができる。
【0031】
<上部移載機構6>
上部移載機構6は、垂直搬送コンベア4によって上方まで持ち上げられたアノードAを、上側搬送コンベア3に移動させるアーム6aを備えている。上部移載機構6の構造はとくに限定されないが、例えば、先端に鍵状部を有し、基端を支点として揺動する一対のアーム6a,6aを有する構造を採用することができる。つまり、一対のアーム6a,6aを揺動させると、垂直搬送コンベア4によって持ち上げられたアノードAの一対の肩部AS,ASに一対のアーム6a,6aが係合し、その状態で一対のアーム6a,6aがアノードAを上側搬送コンベア3の位置まで移動させる構造を採用することができる。
【0032】
<距離測定部10>
図2および図3に示すように、垂直搬送コンベア4の側方、具体的には、垂直搬送コンベア4によって搬送されるアノードAの一方の表面と対向する位置に、距離測定部10が設けられている。この距離測定部10は、垂直搬送コンベア4によって懸垂されている状態のアノードAの一方の表面(以下、第一面A1という)までの距離を測定するものである。この距離測定部10は、上下方向、つまり、垂直搬送コンベア4によるアノードAの移動方向に沿って並ぶように複数個(図2および図3では4個)の距離センサ11を備えており、各距離センサ11によってアノードAの第一面A1における対応する位置までの距離を測定している。そして、距離測定部10は、各距離センサ11が測定した測定値に基づいて、アノードの歪と厚みを測定する算出部12を備えている。
【0033】
<制御部30>
また、図2および図3に示すように、アノード搬送設備1は、各装置の作動を制御する制御部30を備えている。具体的には、下側搬送コンベア2の作動タイミングや垂直搬送コンベア4の作動タイミング、上下移載機構5、6の作動タイミングを制御して、下側搬送コンベア2から垂直搬送コンベア4へのアノードAの移載、および、垂直搬送コンベア4から上側搬送コンベア3へのアノードAの移載を制御している。
【0034】
<アノード搬送設備1の作動>
以上のような構造を有しているので、アノード搬送設備1は、歪などを測定したアノードAを次工程に搬送することができる。
【0035】
まず、下側搬送コンベア2にアノードAが載せられると、下側搬送コンベア2によってアノードAが下流側(図2および図3では左方向)へ向かって搬送される。そして、下部移載機構5の持ち上げ部5aの一対のリフトアームb,bの位置までアノードAが搬送されると、制御部30によって下側搬送コンベア2によるアノードAの搬送が停止される。続いて、制御部30によって持ち上げ部5aの一対のリフトアームb,bが作動され、一対のリフトアームb,bによってアノードAは一対のチェーン2c,2cの上面よりも上方まで持ち上げられる。
【0036】
なお、下側搬送コンベア2が複数枚のアノードAを搬送方向に複数枚並べた状態で搬送する場合には、最前方に位置するアノードA(言い換えれば最も下流側に位置するアノードA)がアノード搬送設備10の位置まで到達すると、下側搬送コンベア2によるアノードAの搬送が停止される。
【0037】
持ち上げられたアノードAは、移動部5cの一対のアームd,dの揺動によって垂直搬送コンベア4の位置まで移動される(図2の矢印参照)。すると、制御部30によって垂直搬送コンベア4が作動され、垂直搬送コンベア4によってアノードAは上方に移動される。
【0038】
アノードAが距離測定部10の距離センサ11の高さまで移動すると、制御部30によって垂直搬送コンベア4によるアノードAの搬送が停止され、距離センサ11によってアノードAの第一面A1までの距離が測定される。すると、測定された距離に基づいて算出部12はアノードAの歪等を算出する。
【0039】
距離センサ11による距離測定が終了すると、制御部30によって垂直搬送コンベア4によるアノードAの搬送が再開され、所定の位置までアノードAが上昇する。すると、制御部30によって上部移載機構6の一対のアーム6a,6aが作動され、アノードAは一対のアーム6a,6aによって上側搬送コンベア3の一対のチェーン3c,3c上に移載され、上側搬送コンベア3によって次工程に搬送される。
【0040】
以上の動作を順次繰り返すことによって、アノード搬送設備1によってアノードAを前工程から次工程まで搬送でき、不良なアノードAは、搬送途中で除去することができる。
【0041】
なお、算出部12によって、歪等が規定の範囲に入っていないと判断されたアノードAは、垂直搬送コンベア4から、上側搬送コンベア3へでなく図示しないリジェクトコンベアへ除去される。
【0042】
<姿勢保持部20>
ところで、垂直搬送コンベア4によってアノードAが搬送される際に、アノードAは垂直搬送コンベア4の一対のチェーン4c,4cに懸垂した状態で搬送される。このため、アノードAは一対の肩部AS,ASを支点として揺動する。アノードAの歪を正確に把握するにはアノードAの揺動が停止した状態で測定する必要がある。しかし、垂直搬送コンベア4によるアノードAの搬送を停止しても、その揺動が収まるまでにはある程度時間を要し、その間は距離測定部10の各距離センサ11による距離測定ができない。したがって、アノード搬送設備1によるアノードAの搬送効率を高く維持する上では、アノードAの揺動を早急に抑えて、距離測定部10の各距離センサ11による距離測定ができる状況にすることが求められる。
【0043】
そこで、本実施形態のアノード搬送設備1では、距離測定部10によるアノードAの歪等を算出する機能を維持しつつ、アノードAの搬送効率を高くするために、姿勢保持部20を設けている。
【0044】
姿勢保持部20は、垂直搬送コンベア4によって搬送されるアノードAの揺れ等を防止する機能を有するものである。この姿勢保持部20は、垂直搬送コンベア4によって搬送されるアノードAの第一面A1側に設けられた第一保持部21と、垂直搬送コンベア4によって搬送されるアノードAの第一面A1と反対側の面(以下、第二面A2という)側に設けられた第二保持部22と、を備えている。
【0045】
<第一保持部21>
第一保持部21は、アノードAの第二面A2側に設けられた第二保持部22に向かって(図2および図3では右方向に)アノードAを付勢することができるものである。具体的には、第一保持部21はシリンダであり、その伸縮方向が垂直搬送コンベア4によるアノードAの搬送方向と交差するように設けられている。したがって、第一保持部21をそのロッドの先端をアノードAの第一面A1に接触させた状態で伸長すれば、アノードAを第二保持部22に向かって付勢することができる。なお、この第一保持部21の作動は、制御部30によってその作動タイミングが制御されている。また、第一保持部21のロッドが、特許請求の範囲にいう接触部材に相当する。
【0046】
<第二保持部22>
第二保持部22は、第一保持部21によって第二保持部22に向かって付勢されたアノードAを、第一保持部21との間に挟んだ状態で保持し、アノードAの揺れなどを防止するために設けられている。この第二保持部22は、アノードAの第二面A2側に凸となった弧状面22fを有している。この第二保持部22の弧状面22fは、第一保持部21によってアノードAを第二保持部22に向かって付勢すると、アノードAの第二面A2と接触する面である。つまり、第一保持部21によってアノードAを第二保持部22に向かって付勢すると、第一保持部21のロッドの先端と第二保持部22の弧状面22fとの間にアノードAを挟んで保持できるように第二保持部22は設けられている(図2参照)。
【0047】
しかも、第二保持部22は、第一保持部21のロッドの先端と第二保持部22の弧状面22fとの間にアノードAが挟まれると、アノードAの第一面A1が距離測定部10の距離センサ11の測定範囲内に位置するように配設されている。
【0048】
<姿勢保持部20の作動>
上記のような姿勢保持部20は、以下のように作動して、垂直搬送コンベア4に懸垂されたアノードAの姿勢を保持する。
【0049】
まず、垂直搬送コンベア4によって距離測定部10の距離センサ11が設けられている高さにアノードAが到達すると、制御部30は垂直搬送コンベア4によるアノードAの搬送を停止する。
【0050】
ついで、垂直搬送コンベア4の作動が停止すると、制御部30は、姿勢保持部20の第一保持部21を作動し、第一保持部21を伸長させて、第一保持部21と第二保持部22によってアノードAを挟んだ状態とする。その状態になると、制御部30は、距離測定部10の距離センサ11によってアノードAの第一面A1までの距離を測定する。
【0051】
距離測定が終了すると、制御部30は、姿勢保持部20の第一保持部21を作動し、第一保持部21を収縮させて、アノードAを開放する。
【0052】
アノードAが開放されると、制御部30は垂直搬送コンベア4によるアノードAの搬送を再開する。すると、距離測定部10によって歪等が測定されたアノードAを、垂直搬送コンベア4から上側搬送コンベア3に供給することができる。
【0053】
以上のような構造とすれば、垂直搬送コンベア4に吊り下げられたアノードAを第一保持部21と第二保持部22との間に挟んで保持するので、アノードAの姿勢を安定した状態で固定できる。すると、距離測定部10の距離センサ11によるアノードAの第一面A1までの距離を精度よく測定できるので、測定結果に基づいて、アノードAの歪等を精度よく求めることができる。
【0054】
しかも、第一保持部21を伸縮して第一保持部21のロッドをアノードAに対して進退させれば、第一保持部21のロッドと第二保持部22との間にアノードAを挟んだり解放したりすることができる。つまり、第一保持部21と第二保持部22によるアノードAの保持解放を迅速かつ容易に実施することができるので、距離測定部10の距離センサ11による距離測定を実施する時間を短くでき、アノード搬送設備1によるアノードAの搬送効率を高く維持することができる。
【0055】
また、第二保持部22がアノードAの第二面A2側に凸となった弧状面22fを有しているので、第一保持部21によってアノードAが付勢されて第二保持部22に接触した際に、安定してアノードAを第一保持部21との間に挟むことができる。
【0056】
<第一保持部21について>
上記例では、第一保持部21がシリンダ構造を有する場合を説明したが、第一保持部21は、アノードAをその第二面A2側に設けられた第二保持部22に向かって付勢することができるものであればよく、その構造やアノードAを第二保持部22に向かって付勢する機構はとくに限定されない。例えば、電磁石や風船などを第一保持部21として採用することができる。
また、第一保持部21がアノードAに対して進退可能に設けられたアノードAと接触する接触部材を有する場合には、接触部材の形状や素材などはとくに限定されない。例えば、アノードAの第一面A1と接触する面が球面などの曲面となっていれば、アノードAの第一面A1と接触した際に、アノードAを安定して第二保持部22との間に挟むことができる。
【0057】
<第二保持部22について>
第二保持部22は、アノードAの第二面A2側に凸となった弧状面22fを有していればよく、その構造や形状はとくに限定されない。例えば、第一保持部21側に向かって凸となった弓型形状のパイプ材や、第一保持部21側に向かって湾曲した板材等を第二保持部22として採用することができる。かかる構造とすれば、アノードAの第二面A2に凹凸や鋳バリ等があったとしても、凹凸や鋳バリ等に第二保持部22が引っ掛かることを防止しやすくなる。
【0058】
なお、第二保持部22は、第一保持部21との間にアノードAを挟んだ状態で保持できる形状や構造に形成されていればよく、その形状や構造はとくに限定されない。
【0059】
<姿勢保持部20の設置位置について>
上記例では、姿勢保持部20が垂直搬送コンベア4に吊り下げられたアノードAを挟んで保持する構成を説明したが、姿勢保持部20は、下側搬送コンベア2に吊り下げられたアノードAを挟んで保持するような構成としてもよい。この場合には、一対のリフトアームb,bによって上昇される直前または直後のアノードAを姿勢保持部20で保持し、距離測定部10で距離を測定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のアノード搬送設備は、高さの異なる搬送装置間でアノードを移載する設備に適している。
【符号の説明】
【0061】
1 アノード搬送設備
2 下側搬送コンベア
3 上側搬送コンベア
4 垂直搬送コンベア
10 距離測定部
20 姿勢保持部
21 第一保持部
22 第二保持部
22f 弧状面
A アノード
A1 第一面
A2 第二面
図1
図2
図3