(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】硬化膜形成組成物、配向材および位相差材
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240522BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/13363
(21)【出願番号】P 2020510916
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012873
(87)【国際公開番号】W WO2019189189
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2018060706
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-031823(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056741(WO,A1)
【文献】特開2016-014789(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069252(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するポリマー、
(B)
メチロール基またはアルコキシメチル基を2個以上有する架橋剤、及び
(C)架橋触媒を含有する硬化膜形成組成物であって、
前記C=C二重結合を含む重合性基を与える化合物が、下記の(SC-1)及び(SC-2)のいずれかである、硬化膜形成組成物。
【化1】
(式中、X
4はC=C二重結合を含む重合性基を表し、L
1は共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合又はウレタン結合を表し、Q
1およびQ
3はそれぞれ独立に炭素原子数2乃至10のアルキレン基を表し、Q
2はジカルボン酸無水物由来の構造を有する二価の基を表し、nは1~10の自然数を表す。)
【請求項2】
(A)成分の光配向性基が光二量化又は光異性化する構造を有する官能基である、請求項1に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項3】
(A)成分の光配向性基がシンナモイル基である、請求項1又は請求項2に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項4】
(A)成分の光配向性基がアゾベンゼン構造を有する基である、請求項1又は請求項2
に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項5】
(D)ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有するポリマーをさらに含有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項6】
(A)成分のポリマーは、ヒドロキシ基を有する構造単位とC=C二重結合を含む重合性基を有する構造単位とを含み、該ヒドロキシ基を有する構造単位の存在割合が、該ポリマーの全構造単位100モル%に対して20モル%以上であり、かつ、該C=C二重結合を含む重合性基を有する構造単位の存在割合が、該ポリマーの全構造単位100モル%に対して5モル%以上である、請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項7】
(A)成分のポリマー100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部の(B)成分の架橋剤を含有する、請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項8】
(A)成分のポリマー100質量部に基づいて、0.01質量部乃至20質量部の(C)成分の架橋触媒を含有する、請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のうちいずれか一項に記載の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化膜を有する光学フィルム。
【請求項11】
請求項9に記載の硬化膜を使用して形成される配向材。
【請求項12】
請求項9に記載の硬化膜を使用して形成される位相差材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶分子を配向させる硬化膜を形成する硬化膜形成組成物、硬化膜、光学フィルム、配向材および位相差材に関する。特に本発明は、円偏光メガネ方式の3Dディスプレイに用いられるパターニングされた位相差材、及び有機ELディスプレイの反射防止膜として使用される円偏光板に用いられる位相差材、並びに該位相差材を作製するのに有用な硬化膜形成組成物、硬化膜、光学フィルムおよび配向材に関する。
【背景技術】
【0002】
円偏光メガネ方式の3Dディスプレイの場合、液晶パネル等の画像を形成する表示素子の上に位相差材が配置されるのが通常である。この位相差材は、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置されており、パターニングされた位相差材を構成している。尚、以下、本明細書においては、このような位相差特性の異なる複数の位相差領域を配置するようにパターン化された位相差材をパターン化位相差材と称する。
【0003】
パターン化位相差材は、例えば、特許文献1に開示されるように、重合性液晶からなる位相差材料を光学パターニングすることで作製することができる。重合性液晶からなる位相差材料の光学パターニングは、液晶パネルの配向材形成で知られた光配向技術を利用する。すなわち、基板上に光配向性の材料からなる塗膜を設け、これに偏光方向が異なる2種類の偏光を照射する。そして、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材として光配向膜を得る。この光配向膜の上に重合性液晶を含む溶液状の位相差材料を塗布し、重合性液晶の配向を実現する。その後、配向された重合性液晶を硬化してパターン化位相差材を形成する。
【0004】
有機ELディスプレイの反射防止膜は、直線偏光板、1/4波長位相差板により構成され、画像表示パネルのパネル面に向かう外来光を直線偏光板により直線偏光に変換し、続く1/4波長位相差板により円偏光に変換する。ここでこの円偏光による外来光は、画像表示パネルの表面等で反射するものの、この反射の際に偏光面の回転方向が逆転する。その結果、この反射光は、到来時とは逆に、1/4波長位相差板より、直線偏光板により遮光される方向の直線偏光に変換された後、続く直線偏光板により遮光され、その結果、外部への出射が著しく抑制される。
【0005】
この1/4波長位相差板に関して、特許文献2には、1/2波長板、1/4波長板を組み合わせて1/4波長位相差板を構成することにより、この光学フィルムを逆分散特性により構成する方法が提案されている。この方法の場合、カラー画像の表示に供する広い波長帯域において、正の分散特性による液晶材料を使用して逆分散特性により光学フィルムを構成することができる。
【0006】
また近年、この位相差層に適用可能な液晶材料として、逆分散特性を備えるものが提案されている(特許文献3、4)。このような逆分散特性の液晶材料によれば、1/2波長板、1/4波長板を組み合わせて2層の位相差層により1/4波長位相差板を構成する代わりに、位相差層を単層により構成して逆分散特性を確保することができ、これにより広い波長帯域において所望の位相差を確保することが可能な光学フィルムを簡易な構成により実現することができる。
【0007】
液晶を配向させるためには配向層が用いられる。配向層の形成方法としては、例えばラビング法や光配向法が知られており、光配向法はラビング法の問題点である静電気や塵の発生がなく、定量的な配向処理の制御ができる点で有用である。
【0008】
光配向法を用いた配向材形成では、利用可能な光配向性の材料として、側鎖にシンナモイル基およびカルコン基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂やポリイミド樹脂等が知られている。これらの樹脂は、偏光UV照射することにより、液晶の配向を制御する性能(以下、液晶配向性とも言う。)を示すことが報告されている(特許文献5~特許文献7を参照。)。
【0009】
また、配向層には、液晶配向能の他、耐溶剤性が要求される。例えば、配向層が、位相差材の製造過程にて熱や溶剤にさらさる場合がある。配向層が溶剤にさらされると、液晶配向能が著しく低下するおそれがある。
【0010】
そこで、例えば特許文献8には、安定した液晶配向能を得るために、光により架橋反応の可能な構造と熱によって架橋する構造とを有する重合体成分を含有する液晶配向剤、および、光により架橋反応の可能な構造を有する重合体成分と熱によって架橋する構造を有する化合物とを含有する液晶配向剤が提案されている。
【0011】
加えて、配向層には、液晶層との密着性が要求される。配向層とこの上に形成された液晶層との密着力が十分でない場合、例えば、位相差フィルム製造時の巻き取り工程等において、上記液晶層が剥離してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2005-49865号公報
【文献】特開平10-68816号公報
【文献】米国特許第8119026号明細書
【文献】特開2009-179563号公報
【文献】特許第3611342号公報
【文献】特開2009-058584号公報
【文献】特表2001-517719号公報
【文献】特許第4207430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上の知見や検討結果に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、優れた耐溶剤性を有し、高感度で重合性液晶を配向させることができ、液晶層との密着性に優れる配向材の形成に使用される硬化膜を形成するための硬化膜形成組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、上記硬化膜を有する光学フィルム、該硬化膜若しくは光学フィルムを使用して形成される配向材及び位相差材を提供する事である。
【0014】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様は、
(A)光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するポリマー、
(B)架橋剤、及び
(C)架橋触媒を含有する硬化膜形成組成物に関する。
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基は光二量化又は光異性化する構造を有する官能基であることが好ましい。
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基はシンナモイル基又はアゾベンゼン構造を有する基であることが好ましい。
本発明の第1の態様において、さらに、(D)ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有するポリマーを含有することが好ましい。
本発明の第1の態様において、(A)成分のポリマーは、ヒドロキシ基を有する構造単位とC=C二重結合を含む重合性基を有する構造単位とを含み、該ヒドロキシ基を有する構造単位の存在割合が、該ポリマーの全構造単位100モル%に対して20モル%以上であり、かつ、該C=C二重結合を含む重合性基を有する構造単位の存在割合が、該ポリマーの全構造単位100モル%に対して5モル%以上であることが好ましい。
本発明の第1の態様において、前記硬化膜形成組成物は、(A)成分の100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部の(B)成分を含有することが好ましい。
本発明の第1の態様において、前記硬化膜形成組成物は、(A)成分の100質量部に基づいて、0.01質量部乃至20質量部の(C)成分を含有することが好ましい。
【0016】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜に関する。
【0017】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜を有する光学フィルムに関する。
【0018】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様の硬化膜を使用して形成されることを特徴とする配向材に関する。
【0019】
本発明の第5の態様は、本発明の第2の態様の硬化膜を使用して形成されることを特徴とする位相差材に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた耐溶剤性を有し、高感度で重合性液晶を配向させることができ、液晶層との密着性に優れる硬化膜と、その形成に好適な硬化膜形成組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、上記硬化膜を有する光学フィルム、及び硬化膜又は光学フィルムを使用して形成される配向材及び位相差材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述したように、優れた耐溶剤性を有し、高感度で重合性液晶を配向させることができ、液晶層との密着性に優れた硬化膜(配向材)が求められている。そして、そのような性能の硬化膜(配向材)の形成に好適な硬化膜形成組成物が求められている。
【0022】
本発明者は、上述の要求に応えるべく、鋭意検討を行った結果、特定の組成を有する硬化膜形成組成物から得られる硬化膜が、優れた耐溶剤性を有し、高感度で重合性液晶を配向させることができ、液晶層との密着性に優れた配向材としての利用が可能であることを見出した。
【0023】
以下において、本発明の硬化膜形成組成物について、成分等の具体例を挙げながら詳細に説明する。そして、本発明の硬化膜形成組成物を用いた本発明の硬化膜および配向材、並びに、その配向材を用いて形成される位相差材および液晶表示素子等について説明する。
【0024】
<硬化膜形成組成物>
本発明の硬化膜形成組成物は、(A)成分である、光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するポリマー、(B)成分である架橋剤、および(C)成分である架橋触媒を含有する。また、(D)成分であるヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有するポリマーを含有することができる。さらに、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。さらに、溶剤を含有することができる。
以下、各成分の詳細を説明する。
【0025】
[(A)成分]
本発明の硬化膜形成組成物における(A)成分は、光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するポリマーである。すなわち(A)成分は、本発明の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜に光配向性を付与する成分であり、本明細書において、(A)成分を光配向成分とも称する。
【0026】
本発明の硬化膜形成組成物に含有される(A)成分は光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するアクリル共重合体であることが好ましい。
【0027】
本発明において、アクリル共重合体とは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等の不飽和二重結合を有するモノマーを重合して得られる共重合体のことをいう。
【0028】
(A)成分の光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するアクリル共重合体(以下、特定共重合体とも言う。)は、斯かる構造を有するアクリル共重合体であればよく、アクリル共重合体を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類等について特に限定されない。
【0029】
光配向性基としては、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基等が挙げられる。これらのうち可視光領域での透明性の高さ、及び光二量化反応性の高さからシンナモイル基が好ましい。より好ましいシンナモイル基及びシンナモイル構造を含む置換基としては下記式[1]又は式[2]で表される構造が挙げられる。なお本明細書において、シンナモイル基におけるベンゼン環がナフタレン環である基についても「シンナモイル基」及び「シンナモイル構造を含む置換基」に含めている。
【0030】
【0031】
上記式[1]中、X1は水素原子、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基又はビフェニル基を表す。その際、フェニル基及びビフェニル基はハロゲン原子及びシアノ基のいずれかによって置換されていてもよい。
【0032】
上記式[2]中、X2は水素原子、シアノ基、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシル基を表す。その際、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシル基は、共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合、ウレタン結合、アミノ結合、カルボニル又はそれらの組み合わせから選ばれる1種又は2種以上の結合を介して複数種が結合してもよい。
【0033】
上記式[1]及び式[2]中、Aは式[A1]、式[A2]、式[A3]、式[A4]、式[A5]及び式[A6]のいずれかを表す。
【0034】
上記式[A1]、式[A2]、式[A3]、式[A4]、式[A5]及び式[A6]中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基を表す。
【0035】
ヒドロキシ基は、加熱により(B)成分である架橋剤と結合する部位である。また、本発明のポリマーは、ヒドロキシ基以外の熱架橋性部位、具体例としてはカルボキシル基、アミド基、アミノ基、アルコキシシリル基等を有していても良い。
(A)成分のポリマー中、ヒドロキシ基を有する構造単位の存在割合が、該ポリマーの全構造単位100モル%に対して20モル%以上であることが好ましい。20モル%以上とすることで、本発明の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜は光配向のための光反応の効率を向上させることができ、優れた配向感度を有することができる。
ここで、(A)成分のポリマー中に2個以上のヒドロキシ基を有する構造単位が含まれる場合、ヒドロキシ基を有する構造単位の存在割合とは、ポリマーの全構造単位100モルあたりの(ヒドロキシ基を有する構造単位のモル数)×(該構造単位に含まれるヒドロキシ基の数)を表す。
【0036】
(A)成分のアクリル共重合体は、重量平均分子量が3,000乃至200,000であることが好ましい。重量平均分子量が200,000を超えて過大なものであると、溶剤に対する溶解性が低下しハンドリング性が低下する場合があり、一方、重量平均分子量が3,000未満で過小なものであると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性が低下したり耐熱性が低下したりする場合がある。
【0037】
(A)成分の光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するアクリル共重合体の製造方法としては、下記の方法が挙げられる。
【0038】
(A)成分の製造方法1は、光二量化部位を有するモノマーと、エポキシ基を有するモノマーとを共重合したあと、得られた共重合体のエポキシ基に、カルボキシル基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物を反応させる方法である。
【0039】
(A)成分の製造方法2は、光二量化部位を有するモノマーと、カルボキシル基を有するモノマーとを共重合したあと、得られた共重合体のカルボキシル基に、エポキシ基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物を反応させる方法である。
【0040】
光二量化部位を有するモノマーとしては、例えば、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基等を有するモノマーが挙げられる。これらのうち可視光領域での透明性の高さ及び光二量化反応性の高さからシンナモイル基を有するモノマーが特に好ましい。
【0041】
なかでも上記式[1]又は式[2]で表される構造のシンナモイル基及びシンナモイル構造を含む置換基を有するモノマーがより好ましい。そのようなモノマーの具体例を挙げると、下記式[3]又は式[4]で表されるモノマーである。
【0042】
【0043】
上記式[3]中、X1は水素原子、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基又はビフェニル基を表す。その際、フェニル基及びビフェニル基はハロゲン原子及びシアノ基のいずれかによって置換されていてもよい。
L1及びL2は、それぞれ独立に共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合又はウレタン結合を表す。
【0044】
上記式[4]中、X2は水素原子、シアノ基、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシル基を表す。その際、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシル基は、共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合してもよい。
【0045】
上記式[3]及び式[4]中、X3及びX5はそれぞれ独立に単結合、炭素原子数1乃至20のアルキレン基、2価の芳香族環、2価の脂肪族環を示す。ここで炭素原子数1乃至20のアルキレン基は分岐状でも直鎖状でもよい。
【0046】
上記式[3]及び式[4]中、X4は重合性基を表す。この重合性基の具体例としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチレン基、マレイミド基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基等が挙げられる。
【0047】
上記式[3]及び式[4]中、Aは前記と同様に式[A1]、式[A2]、式[A3]、式[A4]、式[A5]及び式[A6]のいずれかを表す。
【0048】
C=C二重結合を含む重合性基とカルボキシル基とを有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)ヘキサヒドロフタレート、モノ-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ヘキサヒドロフタレート、モノ-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)サクシネート、モノ-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)サクシネート、N-(カルボキシフェニル)マレイミド、N-(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、N-(カルボキシフェニル)アクリルアミド及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの単量体としては、例えば、「ライトエステルHO-MS」、「ライトアクリレートHOA-MS(N)」、「ライトアクリレートHOA-HH(N)」及び「ライトアクリレートHOA-MPL(N)」(以上、共栄社化学株式会社製、商品名)、アロニックスM-5300、アロニックスM-5400(以上、東亜合成(株)製、商品名)、A-SA、SA(以上、新中村化学工業(株)製、商品名)として市販されているものを用いることができる。
【0049】
C=C二重結合を含む重合性基とエポキシ基とを有するモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2-エポキシ-5-ヘキセンおよび1,7-オクタジエンモノエポキサイドなどが挙げられる。
【0050】
ここで、(A)成分であるポリマーの製造においては、原料となるエポキシ基を有するモノマー及びカルボキシル基を有するモノマーの少なくとも一方は、重合性基と、エポキシ基及びカルボキシル基から選ばれる基との間にスペーサーを有するものを選択することが好ましい。このような原料を選択することにより、得られる本発明の硬化膜は液晶層との密着性がより良好になる。
【0051】
スペーサー及びカルボキシル基を有するモノマーの好ましい構造は下記の(SC-1)及び(SC-2)のいずれかである。
【化3】
式中、X
4は重合性基を表し、この重合性基の具体例としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチレン基、マレイミド基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基等が挙げられる。L
1は共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合又はウレタン結合を表す。Q
1およびQ
3はそれぞれ独立に炭素原子数2乃至10のアルキレン基を表し、Q
2はジカルボン酸無水物由来の構造を有する二価の基を表す。nは1~10の自然数を表す。
【0052】
このようなスペーサー及びカルボキシル基を有するモノマーとしては、モノ-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)ヘキサヒドロフタレート、モノ-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ヘキサヒドロフタレート、モノ-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)サクシネート、モノ-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)サクシネート及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートが好ましい。また、カルボキシル機を有する多官能アクリレートも好ましい。市販されているものとしては、例えば、「ライトエステルHO-MS」、「ライトアクリレートHOA-MS(N)」、「ライトアクリレートHOA-HH(N)」及び「ライトアクリレートHOA-MPL(N)」(以上、共栄社化学株式会社製、商品名)、アロニックスM-5300、アロニックスM-5400(以上、東亜合成(株)製、商品名)として市販されているものを用いることができる。
【0053】
スペーサー及びエポキシ基を有するモノマーの好ましい構造は下記(SE-1)で表される。
【化4】
式中、X
4は重合性基を表し、この重合性基の具体例としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチレン基、マレイミド基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基等が挙げられる。L
1は共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合又はウレタン結合を表す。Q
1は炭素原子数2乃至10のアルキレン基を表す。
【0054】
このようなスペーサー及びエポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、4-ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0055】
ポリマーが有するエポキシ基にグラフトさせるためのC=C二重結合を含む重合性基とカルボキシル基とを有するモノマーとしては、下記の(SC-3)で表される、カルボキシル基を有する多官能アクリレートも好ましい。
【化5】
式中、X
4は重合性基を表し、この重合性基の具体例としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチレン基、マレイミド基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基等が挙げられる。L
1は共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合又はウレタン結合を表す。Q
4は(m+1)価の有機基を表し、mは2~10の自然数を表す。
【0056】
このような化合物としては、アロニックスM-510、M-520(以上、東亜合成(株)製、商品名)として市販されているものを用いることができる。
【0057】
製造方法1に従って特定共重合体を得るために用いる光二量化部位を有するモノマー及びエポキシ基を有するモノマーの使用量は、特定共重合体を得るために使用する全モノマーの合計量に基いて、光二量化部位を有するモノマーが40質量%~95質量%、エポキシ基を有するモノマーが5質量%~60質量%であることが好ましい。光二量化部位を有するモノマー含有量を40質量%以上とすることで高感度かつ良好な液晶配向性を付与することができる。他方、95質量%以下とすることで充分な熱硬化性を付与することができ、高感度かつ良好な液晶配向性を維持することができる。
【0058】
製造方法2に従って特定共重合体を得るために用いる光二量化部位を有するモノマー及びカルボキシル基を有するモノマーの使用量は、上記の光二量化部位を有するモノマー及びエポキシ基を有するモノマーの使用量におけるエポキシ基を有するモノマーの使用量に準じる。
【0059】
また、本発明の硬化膜形成組成物においては、特定共重合体の前駆体となるポリマーを得る際に、光二量化部位、エポキシ基及びカルボキシル基(以下、これらを特定官能基ともいう)のいずれかを有するモノマーと共重合可能なモノマー(以下非反応性官能基を有するモノマーともいう)を併用することができる。
【0060】
そのようなモノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
以下、上記モノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0061】
上述したアクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0062】
上述したメタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、γ-ブチロラクトンメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0063】
上述したビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、及び、1,7-オクタジエンモノエポキサイド等が挙げられる。
【0064】
上述したスチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、及び、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0065】
上述したマレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、及び、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0066】
本発明の硬化膜形成組成物に用いる特定共重合体の前駆体となるポリマーを得る方法は特に限定されないが、例えば、光二量化部位、エポキシ基及びカルボキシル基から選ばれる特定官能基を有するモノマー、所望により非反応性官能基を有するモノマー及び重合開始剤等を共存させた溶剤中において、50℃~110℃の温度下で重合反応させて得られる。その際、用いられる溶剤は、特定官能基を有するモノマー、所望により用いられる非反応性官能基を有するモノマー及び重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する溶剤に記載する溶剤が挙げられる。
【0067】
側鎖にエポキシ基を有するポリマーと、特定のカルボキシル基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物との反応生成物は、上記の如きエポキシ基を有するポリマーと、特定のカルボキシル基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物とを、好ましくは触媒の存在下、好ましくは適当な有機溶媒中で反応させることにより合成することができる。
反応に際して使用されるカルボキシル基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物の使用割合は、エポキシ基を有する重合体に含まれるエポキシ基1モルに対して、好ましくは0.01~0.9モルであり、より好ましくは0.05~0.8モルであり、さらに好ましくは0.1~0.7モルである。
【0068】
側鎖にカルボキシル基を有するポリマーと、特定のエポキシ基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物との反応生成物は、上記の如きカルボキシル基を有するポリマーと、特定のエポキシ基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物とを、好ましくは触媒の存在下、好ましくは適当な有機溶媒中で反応させることにより合成することができる。
反応に際して使用されるエポキシ基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物の使用割合は、カルボキシル基を有する重合体に含まれるカルボキシル基1モルに対して、好ましくは0.01~0.9モルであり、より好ましくは0.05~0.8モルであり、さらに好ましくは0.1~0.7モルである。
【0069】
ここで使用することのできる有機触媒としては、有機塩基またはエポキシ化合物とカルボキシル基との反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物を用いることができる。
【0070】
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1~2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミン等を挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
【0071】
上記硬化促進剤としては、例えばベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミンの如き3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-n-ヘプチルイミダゾール、2-n-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-n-ウンデシルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-フェニル-4,5-ジ〔(2’-シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-n-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-(2-シアノエチル)-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-〔2’-メチルイミダゾリル-(1’)〕エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-n-ウンデシルイミダゾリル)エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-〔2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)〕エチル-s-トリアジン、2-メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-〔2’-メチルイミダゾリル-(1’)〕エチル-s-トリアジンのイソシアヌル酸付加物の如きイミダゾール化合物;ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニルの如き有機リン化合物;
【0072】
ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ-n-ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n-ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ-n-ブチルフォスフォニウムo,o-ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ-n-ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ-n-ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ-n-ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレートの如き4級フォスフォニウム塩;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7やその有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロライドの如き4級アンモニウム塩;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物;ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;前記イミダゾール化合物、有機リン化合物や4級フォスフォニウム塩等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;アミン塩型潜在性硬化剤促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等を挙げることができる。
これらのうち、好ましくはテトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロライドの如き4級アンモニウム塩である。
【0073】
触媒の使用割合としては、エポキシ基を有する重合体またはカルボキシル基を有する重合体の100質量部に対して、好ましくは100質量部以下であり、より好ましくは0.01~100質量部、さらに好ましくは0.1~20質量部である。
【0074】
上記有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミド化合物、アルコール化合物等を挙げることができる。これらのうち、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アルコール化合物が原料および生成物の溶解性ならびに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の質量が溶液の全質量に占める割合)が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは5~50質量%となる量で使用される。
【0075】
反応温度は、好ましくは0~200℃であり、より好ましくは50~150℃である。反応時間は、好ましくは0.1~50時間であり、より好ましくは0.5~20時間である。
【0076】
<(A)成分の製造方法3>
(A)成分の製造方法3は、側鎖にエポキシ基を有する重合体に、けい皮酸誘導体と、前述のカルボキシル基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物を反応させる方法である。
【0077】
側鎖にエポキシ基を有する重合体は、例えば前述のエポキシ基を有するモノマーの重合体であってもよいし、前述のエポキシ基を有するモノマーと、前述の非反応性官能基を有するモノマーとの共重合体であってもよい。
【0078】
エポキシ基を有する重合体におけるエポキシ基を有する重合性不飽和化合物の共重合割合は、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0079】
エポキシ基を有する重合体の合成は、好ましくは溶媒中、適当な重合開始剤の存在下における公知のラジカル重合法により行うことができる。
【0080】
側鎖にエポキシ基を有する重合体としては、市販品を使用してもよい。かかる市販品としては、例えばEHPE3150、EHPE3150CE(以上、(株)ダイセル製)、UG-4010、UG-4035、UG-4040、UG-4070(以上、東亜合成(株)製ARUFONシリーズ)、ECN-1299(旭化成(株)製)、DEN431、DEN438(以上、ダウケミカル社製)、jER-152(三菱ケミカル(株)製)、エピクロンN-660、N-665、N-670、N-673、N-695、N-740、N-770、N-775(以上、DIC(株)製)、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-104S(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0081】
カルボキシル基を有する桂皮酸誘導体としては、例えば下記式(1-1)~(1-5)
【化6】
(式中、R
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数1乃至6のアルコキシ等を表す。)のいずれかで表される化合物等を挙げることができる。
また、カルボキシル基を有する桂皮酸誘導体として、上述の式[3]で表されるモノマーにおいて、X
1が水素原子である化合物も好適に用いられる。
【0082】
上記けい皮酸誘導体は、有機化学の定法を適宜に組み合わせて合成することができる。
【0083】
ここで、カルボキシル基とC=C二重結合を含む重合性基を有する化合物(モノマー)は、前記のとおり、C=C二重結合を有する基とカルボキシル基との間にスペーサーを有するものを選択することが好ましい。
【0084】
側鎖にエポキシ基を有する重合体に、けい皮酸誘導体と、前述のカルボキシル基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物を反応させる方法は前記のとおりである。その際、側鎖にエポキシ基を有する重合体に、けい皮酸誘導体と、前述のカルボキシル基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する化合物とを一緒に反応させてもよいし、別々に反応させてもよい。
【0085】
(A)成分のポリマー中、C=C二重結合を含む重合性基を有する構造単位の存在割合が、該ポリマーの全構造単位100モルあたり、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがさらに好ましい。合計が5モル%未満である場合は、液晶層との密着性が不十分となる場合がある。
ここで、(A)成分のポリマー中に2個以上のC=C二重結合を含む重合性基を有する構造単位が含まれる場合、C=C二重結合を含む重合性基を有する構造単位の存在割合とは、ポリマーの全構造単位100モルあたりの(C=C二重結合を含む重合性基を有する構造単位のモル数)×(該構造単位に含まれるC=C二重結合を有ずる重合性基の数)を表す。
【0086】
このようにして、(A)成分である、光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するポリマーを含有する溶液が得られる。この溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、溶液中に含まれる重合体を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離した重合体を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0087】
また、上記のようにして得られた特定共重合体の溶液を、ジエチルエーテルや水等の撹拌下に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後、常圧又は減圧下で、常温あるいは加熱乾燥することで、特定共重合体の粉体とすることができる。このような操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去することができ、その結果、精製した特定共重合体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解して、上記の操作を繰り返し行えばよい。
【0088】
本発明の硬化膜形成組成物においては、(A)成分として上記特定共重合体の粉体をそのまま用いてもよく、あるいはその粉体を、たとえば後述する溶剤に再溶解して溶液の状態として用いてもよい。
【0089】
また、本実施形態においては、(A)成分のアクリル共重合体は、複数種の特定共重合体の混合物であってもよい。
【0090】
以上のように本発明においては、(A)成分として高分子量の特定共重合体を用いることができる。また、(A)成分は1種以上の特定共重合体の混合物であってもよい。
【0091】
[(B)成分]
本発明の硬化膜形成組成物は、(B)成分として架橋剤を含有する。より詳しくは、(B)成分は、上述の(A)成分および(C)成分と反応する架橋剤である。(B)成分は、(A)成分であるポリマーの熱架橋性基(特にヒドロキシ基)、及び(C)成分に含まれるヒドロキシ基と結合する。そして、本実施の形態の硬化膜形成組成物は、硬化膜として、光反応効率の高い配向材を形成することができる。
【0092】
(B)成分である架橋剤としては、エポキシ化合物、メチロール化合物およびイソシアナート化合物等の化合物が挙げられるが、好ましくはメチロール化合物である。中でも、(B)成分である架橋剤としては、前記(A)成分の熱架橋可能な官能基と架橋を形成する基を2個以上有する化合物が好ましく、例えばメチロール基またはアルコキシメチル基を2個以上有する架橋剤であることが好ましい。これらの基を有する化合物としては、例えば、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミンおよびアルコキシメチル化メラミン等のメチロール化合物が挙げられる。
【0093】
上述したメチロール化合物の具体例としては、例えば、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化メラミン、テトラ(アルコキシメチル)ビスフェノール及びテトラ(ヒドロキシメチル)ビスフェノール等の化合物が挙げられる。
【0094】
アルコキシメチル化グリコールウリルの具体例としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリノン、および1,3-ビス(メトキシメチル)-4,5-ジメトキシ-2-イミダゾリノン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製グリコールウリル化合物(商品名:サイメル(登録商標)1170、パウダーリンク(登録商標)1174)等の化合物、メチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)65)、ブチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)300、U-VAN10S60、U-VAN10R、U-VAN11HV)、DIC(株)製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名:ベッカミン(登録商標)J-300S、同P-955、同N)等が挙げられる。
【0095】
アルコキシメチル化ベンゾグアナミンの具体例としては、例えば、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製(商品名:サイメル(登録商標)1123)、(株)三和ケミカル製(商品名:ニカラック(登録商標)BX-4000、同BX-37、同BL-60、同BX-55H)等が挙げられる。
【0096】
アルコキシメチル化メラミンの具体例としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:サイメル(登録商標)300、同301、同303、同350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:マイコート(登録商標)506、同508)、(株)三和ケミカル製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MW-30、同MW-22、同MW-11、同MW-100LM、同MS-001、同MX-002、同MX-730、同MX-750、同MX-035)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MX-45、同MX-410、同MX-302)等が挙げられる。
【0097】
テトラ(アルコキシメチル)ビスフェノール及びテトラ(ヒドロキシメチル)ビスフェノールの例としては、テトラ(アルコキシメチル)ビスフェノールA、テトラ(ヒドロキシメチル)ビスフェノールA等が挙げられる。
【0098】
また、(B)成分である架橋剤は、このようなアミノ基の水素原子がメチロール基またはアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物およびベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。例えば、米国特許第6323310号明細書に記載されているメラミン化合物およびベンゾグアナミン化合物から製造される高分子量の化合物が挙げられる。前記メラミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)303(三井サイテック(株)製)等が挙げられ、前記ベンゾグアナミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)1123(三井サイテック(株)製)等が挙げられる。
【0099】
さらに、(B)成分の架橋剤として、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基(すなわちメチロール基)またはアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物またはメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
【0100】
そのようなポリマーとしては、例えば、ポリ(N-ブトキシメチルアクリルアミド)、N-ブトキシメチルアクリルアミドとスチレンとの共重合体、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミドとメチルメタクリレートとの共重合体、N-エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートとの共重合体、及びN-ブトキシメチルアクリルアミドとベンジルメタクリレートと2-ヒドロキシプロピルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0101】
また、そのようなポリマーとして、N-アルコキシメチル基とC=C二重結合を含む重合性基とを有する重合体を用いることも出来る。
【0102】
C=C二重結合を含む重合性基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基、マレイミド基等が挙げられる。
【0103】
C=C二重結合を含む重合性基を有するポリマーを得る方法は、特に限定されない。一例を挙げれば、予めラジカル重合などの重合方法によって、特定官能基を有するアクリル重合体を生成する。次いで、この特定官能基と、末端に不飽和結合を有する化合物(以下、特定化合物と称す。)とを反応させることにより、(B)成分であるポリマーにC=C二重結合を含む重合性基を導入することができる。
【0104】
ここで、特定官能基とは、カルボキシル基、グリシジル基、ヒドロキシ基、活性水素を有するアミノ基、フェノール性ヒドロキシ基若しくはイソシアネート基などの官能基、または、これらから選ばれる複数種の官能基を言う。これらの基を有するモノマーを重合することで、特定官能基を有するアクリル重合体を得ることができる。
【0105】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N-(カルボキシフェニル)マレイミド、N-(カルボキシフェニル)メタクリルアミドおよびN-(カルボキシフェニル)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0106】
グリシジル基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2-エポキシ-5-ヘキセンおよび1,7-オクタジエンモノエポキサイドなどが挙げられる。
【0107】
ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、カプロラクトン2-(アクリロイルオキシ)エチルエステル、カプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、5-アクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトンおよび5-メタクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトンなどが挙げられる。
【0108】
アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、2-アミノエチルアクリレートおよび2-アミノメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0109】
フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシスチレン、N-(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N-(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドおよびN-(ヒドロキシフェニル)マレイミドなどが挙げられる。
【0110】
イソシアネート基を有するモノマーとしては、例えば、アクリロイルエチルイソシアネート、メタクリロイルエチルイソシアネートおよびm-テトラメチルキシレンイソシアネートなどが挙げられる。
【0111】
上述した反応において、特定官能基と、特定化合物が有する官能基であって反応に関与する基との好ましい組み合わせは、カルボキシル基とエポキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、フェノール性ヒドロキシ基とエポキシ基、カルボキシル基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、または、ヒドロキシ基と酸クロリドなどである。さらに、より好ましい組み合わせは、カルボキシル基とグリシジルメタクリレート、または、ヒドロキシ基とイソシアネートエチルメタクリレートである。
【0112】
このようなポリマーの重量平均分子量(ポリスチレン換算値)は、1,000~500,000であり、好ましくは、2,000~200,000であり、より好ましくは3,000~150,000であり、更に好ましくは3,000~50,000である。
【0113】
これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0114】
本発明の硬化膜形成組成物における(B)成分の架橋剤の含有量は、(A)成分のポリマー及び(C)成分の架橋触媒の合計量100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部であることが好ましく、より好ましくは10質量部~400質量部である。架橋剤の含有量が過小である場合には、硬化膜形成組成物から得られる硬化膜の溶剤耐性が低下し、液晶配向性が低下するおそれがある。他方、含有量が過大である場合には液晶配向性および保存安定性が低下するおそれがある。
【0115】
[(C)成分]
本発明の光学フィルムにおける表面の硬化膜を形成する硬化膜形成組成物は、上述した(A)成分及び(B)成分に加え、さらに(C)成分である架橋触媒を含有することができる。
(C)成分である架橋触媒としては、例えば、酸又は熱酸発生剤が挙げられる。この(C)成分は、本発明の光学フィルムにおける表面の硬化膜を形成する硬化膜形成組成物を用いた硬化膜の形成において、熱硬化反応の促進に有効となる。
【0116】
(C)成分として酸又は熱酸発生剤を用いる場合、(C)成分は、スルホン酸基含有化合物、塩酸又はその塩、プリベーク又はポストベーク時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度80℃~250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。
【0117】
そのような化合物としては、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p-キシレン-2-スルホン酸、m-キシレン-2-スルホン酸、4-エチルベンゼンスルホン酸、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ(2-エトキシエタン)スルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタン-1-スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸又はその水和物や塩等が挙げられる。
【0118】
また、熱により酸を発生する化合物としては、例えば、ビス(トシルオキシ)エタン、ビス(トシルオキシ)プロパン、ビス(トシルオキシ)ブタン、p-ニトロベンジルトシレート、o-ニトロベンジルトシレート、1,2,3-フェニレントリス(メチルスルホネート)、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p-トルエンスルホン酸モルフォニウム塩、p-トルエンスルホン酸エチルエステル、p-トルエンスルホン酸プロピルエステル、p-トルエンスルホン酸ブチルエステル、p-トルエンスルホン酸イソブチルエステル、p-トルエンスルホン酸メチルエステル、p-トルエンスルホン酸フェネチルエステル、シアノメチルp-トルエンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエチルp-トルエンスルホネート、2-ヒドロキシブチルp-トシレート、N-エチル-4-トルエンスルホンアミド、および下記式[TAG-1]乃至式[TAG-41]で表される化合物等を挙げることができる。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
本発明の実施形態の硬化膜形成組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分であるポリマーの100質量部に対して、0.01質量部~20質量部、好ましくは0.01質量部~10質量部、より好ましくは0.05質量部~8質量部、さらに好ましくは0.1質量部~6質量部である。(C)成分の含有量を0.01質量部以上とすることで、充分な熱硬化性と溶剤耐性を付与することができ、露光に対する高い感度をも付与することができる。また、20質量部以下とすることで、硬化膜形成組成物の保存安定性を良好にすることができる。
【0127】
[(D)成分]
本発明の組成物は、(D)成分として、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有するポリマーをさらに含有することができる。
【0128】
(D)成分であるポリマーとしては、例えば、アクリル重合体、ウレタン変性アクリルポリマー、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエステルポリカルボン酸、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、セルロース類(セルロースまたはその誘導体)、フェノールノボラック樹脂等の直鎖構造または分岐構造を有するポリマー、シクロデキストリン類等の環状ポリマー等が挙げられる。
【0129】
このうち、アクリル重合体としてはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等の不飽和二重結合を有するモノマーを重合して得られる重合体が適用されうる。その合成方法としては、上記(A)成分及び(B)成分の章で例示したヒドロキシ基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマーおよびアルコキシシリル基を有するモノマーからなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有するモノマーと、所望によりそれ以外のモノマーとを、上記(A)成分及び(B)成分の章で記載した方法で(共)重合する方法が簡便である。
【0130】
(D)成分の例であるアクリル重合体は、重量平均分子量が3000乃至200000であることが好ましく、4000乃至150000であることがより好ましく、5000乃至100000であることがさらに好ましい。
【0131】
(D)成分の好ましい一例であるポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールやビスフェノールA、トリエチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールにプロピレンオキサイドやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を付加したものが挙げられる。ポリエーテルポリオールの具体例としては(株)ADEKA製アデカポリエーテルPシリーズ、Gシリーズ、EDPシリーズ、BPXシリーズ、FCシリーズ、CMシリーズ、日油(株)製ユニオックス(登録商標)HC-40、HC-60、ST-30E、ST-40E、G-450、G-750、ユニオール(登録商標)TG-330、TG-1000、TG-3000、TG-4000、HS-1600D、DA-400、DA-700、DB-400、ノニオン(登録商標)LT-221、ST-221、OT-221等が挙げられる。
【0132】
(D)成分の好ましい一例であるポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸等の多価カルボン酸にエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオールを反応させたものが挙げられる。ポリエステルポリオールの具体例としてはDIC(株)製ポリライト(登録商標)OD-X-286、OD-X-102、OD-X-355、OD-X-2330、OD-X-240、OD-X-668、OD-X-2108、OD-X-2376、OD-X-2044、OD-X-688、OD-X-2068、OD-X-2547、OD-X-2420、OD-X-2523、OD-X-2555、OD-X-2560、(株)クラレ製ポリオールP-510、P-1010、P-2010、P-3010、P-4010、P-5010、P-6010、F-510、F-1010、F-2010、F-3010、P-1011、P-2011、P-2013、P-2030、N-2010、PNNA-2016等が挙げられる。
【0133】
(D)成分の好ましい一例であるポリカプロラクトンポリオールとしては、トリメチロールプロパンやエチレングリコール等の多価アルコールを開始剤としてε-カプロラクトンを開環重合させたものが挙げられる。ポリカプロラクトンポリオールの具体例としてはDIC(株)製ポリライト(登録商標)OD-X-2155、OD-X-640、OD-X-2568、ダイセル化学製プラクセル(登録商標)205、L205AL、205U、208、210、212、L212AL、220、230、240、303、305、308、312、320等が挙げられる。
【0134】
(D)成分の好ましい一例であるポリカーボネートポリオールとしては、トリメチロールプロパンやエチレングリコール等の多価アルコールと炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート等を反応させたものが挙げられる。ポリカーボネートポリオールの具体例としては(株)ダイセル製プラクセル(登録商標)CD205、CD205PL、CD210、CD220、(株)クラレ製のC-590、C-1050、C-2050、C-2090、C-3090等が挙げられる。
【0135】
(D)成分の好ましい一例であるセルロースとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース類およびセルロース等が挙げられ、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類が好ましい。
【0136】
(D)成分の好ましい一例であるシクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγシクロデキストリン等のシクロデキストリン、メチル-α-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリンならびにメチル-γ-シクロデキストリン等のメチル化シクロデキストリン、ヒドロキシメチル-α-シクロデキストリン、ヒドロキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシメチル-γ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-α-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-γ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、2,3-ジヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン等のヒドロキシアルキルシクロデキストリン等が挙げられる。
【0137】
(D)成分の好ましい一例であるウレタン変性アクリルポリマーとしては、市販品として、大成ファインケミカル(株)製アクリット(登録商標)8UA-017、8UA-239、8UA-239H、8UA-140、8UA―146、8UA-585H、8UA-301、8UA-318、8UA-347A、8UA-347H、8UA-366等が挙げられる。
【0138】
(D)成分の好ましい一例であるフェノールノボラック樹脂としては、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド重縮合物などが挙げられる。
【0139】
本発明の組成物において、(D)成分のポリマーは、粉体形態で、または精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0140】
また、本発明の組成物において、(D)成分は、(D)成分として例示されたポリマーの複数種の混合物であってもよい。
【0141】
本発明の硬化膜形成組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部である。
【0142】
[(E)成分]
本発明の組成物は、(E)成分として、低分子光配向成分をさらに含有することができる。低分子光配向成分を含有することにより、配向膜表層の光配向性基の存在量が増加し、配向感度が向上する効果を奏する。そのような低分子光配向成分としては、本明細書の(A)成分の項で例示した式[3]で表されるモノマー、式[4]で表されるモノマー、式[3]で表されるモノマーの基X4が水素原子に置き換わった化合物、式[4]で表されるモノマーの基X4が水素原子に置き換わった化合物、上記式(1-1)~(1-5)のいずれかで表されるカルボキシル基を有する桂皮酸誘導体が挙げられる。
【0143】
また、本発明の組成物において、(E)成分は、(E)成分として例示された化合物の複数種の混合物であってもよい。
【0144】
本発明の硬化膜形成組成物に(E)成分を含有させる場合の含有量は、(A)成分のポリマー100質量部に基づいて、5質量部乃至500質量部である。
【0145】
[その他の添加剤]
本発明の実施形態の硬化膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
その他の添加剤としては、例えば、増感剤を含有することができる。増感剤は、本発明の光学フィルムにおける表面の硬化膜を形成するに際し、その光反応を促進することにおいて有効となる。
【0146】
増感剤としては、ベンゾフェノン、アントラセン、アントラキノン及びチオキサントン等の誘導体並びにニトロフェニル化合物等が挙げられる。これらのうちベンゾフェノンの誘導体であるN,N-ジエチルアミノベンゾフェノン、及びニトロフェニル化合物である2-ニトロフルオレン、2-ニトロフルオレノン、5-ニトロアセナフテン、4-ニトロビフェニル、4-ニトロけい皮酸、4-ニトロスチルベン、4-ニトロベンゾフェノン、5-ニトロインドールが特に好ましい。
【0147】
これらの増感剤は特に上述のものに限定されるものではない。これらは、単独又は2種以上の化合物を併用することが可能である。
【0148】
本発明の実施形態において、増感剤の使用割合は、(A)成分の100質量部に対して0.1質量部~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部~10質量部である。この割合が過小である場合には、増感剤としての効果を充分に得られない場合があり、過大である場合には、形成される硬化膜の透過率が低下したり塗膜が荒れたりすることがある。
【0149】
また、本発明の実施形態の硬化膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤として、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0150】
[溶剤]
本発明の実施形態の硬化膜形成組成物は、溶剤に溶解した溶液状態で用いられることが多い。その際に用いられる溶剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分、所望により(D)成分、(E)成分及び/又は、その他の添加剤を溶解するものであり、そのような溶解能を有する溶剤であれば、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0151】
溶剤の具体例を挙げると、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ブタノン、3-メチル-2-ペンタノン、2-ペンタノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、イソプロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0152】
これらの溶剤は、一種単独で、又は二種以上の組合せで使用することができる。これら溶剤のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-エトキシプロピオン酸メチルは成膜性が良好で安全性が高いためより好ましい。
【0153】
<硬化膜形成組成物の調製>
本発明の硬化膜形成組成物は、光配向性を有する熱硬化性の硬化膜形成組成物である。本発明の硬化膜形成組成物は、上述したように、(A)成分である光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するポリマー、(B)成分である架橋剤及び(C)成分である架橋触媒を含有する。必要に応じて、(D)成分であるヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有するポリマーを含有する。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができ、さらに、溶剤を含有することができる。
【0154】
本実施の形態の硬化膜形成組成物の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分である光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するポリマー、(A)成分であるポリマー100質量部に基づいて1質量部~500質量部、好ましくは5質量部~500質量部の(B)成分である架橋剤、及び、(A)成分であるポリマーの100質量部に対して、0.01質量部~20質量部の(C)成分である架橋触媒を含有する硬化膜形成組成物。
【0155】
[2]:(A)成分である光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するポリマー、(A)成分であるポリマー100質量部に基づいて1質量部~500質量部、好ましくは5質量部~500質量部の(B)成分である架橋剤、及び、(A)成分であるポリマーの100質量部に対して、0.01質量部~20質量部の(C)成分である架橋触媒、溶剤を含有し、さらに、(A)成分であるポリマーの100質量部に基づいて5質量部~500質量部の(D)成分であるヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有するポリマー、溶剤を含有する硬化膜形成組成物。
【0156】
本実施の形態の硬化膜形成組成物を溶液として用いる場合の配合割合、調製方法等を以下に詳述する。
【0157】
本発明の硬化膜形成組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、1質量%~80質量%であり、好ましくは2質量%~60質量%であり、より好ましくは3質量%~40質量%である。ここで、固形分とは、硬化膜形成組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
【0158】
本発明の硬化膜形成組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、溶剤に溶解した(A)成分の溶液に(B)成分、(C)成分、さらには(D)成分、(E)成分及び/又は、その他の添加剤を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、または、この調製法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤をさらに添加して混合する方法が挙げられる。
【0159】
本発明の硬化膜形成組成物の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる特定共重合体の溶液をそのまま使用することができる。この場合、例えば、(A)成分のポリマー(アクリル重合体)を調製した溶液に、(B)成分、(C)成分、さらには(D)成分、(E)成分及び/又は、その他の添加剤を加えて均一な溶液とする。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を追加投入してもよい。このとき、(A)成分の調製過程で用いられる溶剤と、硬化膜形成組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく、また異なってもよい。
【0160】
また、調製された硬化膜形成組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0161】
以上のように、本発明の硬化膜形成組成物は、(A)成分である光配向性基と、ヒドロキシ基と、C=C二重結合を含む重合性基とを有するポリマーからなる群から選ばれる少なくとも一種、(B)成分である架橋剤、および(C)成分である架橋触媒を含有して構成される。
【0162】
したがって、本発明の硬化膜形成組成物から形成される硬化膜は、膜構造が安定化するように、(A)成分の性質に起因して、その内部が親水性となって形成される。そして、硬化膜中の(A)成分の光配向性基およびC=C二重結合を含む重合性基は、硬化膜の表面近傍に偏在するようになる。より具体的には、(A)成分のポリマーは、親水性のヒドロキシ基が硬化膜の内部側を向き、疎水性の光反応部およびC=C二重結合を含む重合性基が表面側を向く構造をとりながら、硬化膜の表面近傍に偏在する。その結果、本発明の硬化膜は、表面近傍に存在する(A)成分の光反応性基およびC=C二重結合を含む重合性基の割合を増加させた構造を実現することになる。そして、本発明の硬化膜は、配向材として用いられた場合、光配向のための光反応の効率を向上させることができ、優れた配向感度を有することができる。さらに、パターン化位相差材の形成に好適な配向材となり、これを用いて製造されるパターン化位相差材は、優れたパターン形成性を有することができる。
【0163】
また、本発明の硬化膜形成組成物は、上述したように、(B)成分である架橋剤を含有する。そのため、本発明の硬化膜形成組成物から得られた硬化膜の内部では、(A)成分のポリマーの光配向性基による光反応の前に、(B)成分との熱反応による架橋反応を行うことができる。その結果、配向材として用いられた場合に、その上に塗布される重合性液晶やその溶剤に対する耐性を向上させることができる。
【0164】
また、(A)成分であるポリマーのC=C二重結合を含む重合性基は、本発明の硬化膜形成組成物から得られた硬化膜を配向材として用いた場合に、その上に形成される硬化された重合性液晶の層との間の密着性を強化するように機能する。
【0165】
<硬化膜、配向材および位相差材>
本実施の形態の硬化膜形成組成物の溶液を基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属、例えば、アルミニウム、モリブデン、クロム等が被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)やフィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルム)等の上に、バーコート、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布、印刷などによって塗布して塗膜を形成し、その後、ホットプレートまたはオーブン等で加熱乾燥することにより、硬化膜を形成することができる。
【0166】
加熱乾燥の条件としては、硬化膜から形成される配向材の成分が、その上に塗布される重合性液晶溶液に溶出しない程度に硬化反応が進行すればよく、例えば、温度60℃~200℃、時間0.4分間~60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度および加熱時間が採用される。加熱温度および加熱時間は、好ましくは70℃~160℃、0.5分間~10分間である。
【0167】
本実施の形態の硬化性組成物を用いて形成される硬化膜の膜厚は、例えば、0.05μm~5μmであり、使用する基板の段差や光学的、電気的性質を考慮し適宜選択することができる。
【0168】
このようにして形成された硬化膜は、偏光UV照射を行うことで配向材、すなわち、重合性液晶等を含む液晶性を有する化合物を配向させる部材として機能させることができる。
【0169】
偏光UVの照射方法としては、通常150nm~450nmの波長の紫外光~可視光が用いられ、室温または加熱した状態で、垂直または斜め方向から直線偏光を照射することによって行われる。
【0170】
本発明の硬化膜形成組成物から形成された硬化膜を使用して形成される配向材は耐溶剤性および耐熱性を有しているため、この配向材上に、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、その液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、配向材上で配向させる。そして、所望とする配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させ、光学異方性を有する層を持つ位相差材を形成することができる。
【0171】
位相差材料としては、例えば、重合性基を有する液晶モノマーおよびそれを含有する組成物等が用いられる。そして、配向材が形成される基板がフィルムである場合には、本実施の形態の位相差材を有するフィルムは、位相差フィルムとして有用となる。このような位相差材を形成する位相差材料は、液晶状態となって、配向材上で、水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向状態をとるものがあり、それぞれ必要とされる位相差特性に応じて使い分けることができる。
【0172】
また、3Dディスプレイに用いられるパターン化位相差材を製造する場合には、本発明の硬化膜形成組成物から上記した方法で形成された硬化膜に、ラインアンドスペースパターンのマスクを介して所定の基準から、例えば、+45度の向きで偏光UV露光し、次いで、マスクを外してから-45度の向きで偏光UVを露光し、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材を形成する。その後、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とする。液晶状態となった重合性液晶は、2種類の液晶配向領域が形成された配向材上で配向し、各液晶配向領域にそれぞれ対応する配向状態を形成する。そして、そのような配向状態が実現された位相差材料をそのまま硬化させ、上述の配向状態を固定化し、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置された、パターン化位相差材を得ることができる。
【0173】
また、本発明の硬化膜形成組成物から形成された硬化膜を使用して形成される配向材は、液晶表示素子の液晶配向膜としての利用も可能である。例えば、上記のようにして形成された、本発明の配向材を有する2枚の基板を用い、スペーサを介して両基板上の配向材が互いに向かい合うように張り合わせた後、それらの基板の間に液晶を注入して、液晶が配向した液晶表示素子を製造することができる。
そのため、本実施の形態の硬化膜形成組成物は、各種位相差材(位相差フィルム)や液晶表示素子等の製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0174】
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0175】
[実施例で用いる略記号]
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
<原料>
GMA:グリシジルメタクリレート
AIBN:α,α’-アゾビスイソブチロニトリル
BMAA:N-ブトキシメチルアクリルアミド
CIN1:
【化14】
CIN2:
【化15】
【0176】
P-2:EHPE3150((株)ダイセル製、エポキシ当量180g/eq)
【化16】
【0177】
A-1:アロニックスM-5300(東亜合成(株)製)
【化17】
【0178】
A-2:アロニックスM-5400(東亜合成(株)製)
【化18】
【0179】
A-3:2-アクリロイルオキシエチルサクシネート
【化19】
【0180】
<B成分>
HMM:下記の構造式で表されるメラミン架橋剤[サイメル(CYMEL)(登録商標)303(三井サイテック(株)製)]
【化20】
【0181】
<C成分>
PTSA:p-トルエンスルホン酸・一水和物
【0182】
<D成分>
PEPO:ポリエステルポリオール重合体(下記構造単位を有するアジピン酸/ジエチレングリコール共重合体。分子量4,800。)
【化21】
(上記式中、Rは、アルキレン基を表す。)
【0183】
<溶剤>
PM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
EA:酢酸エチル
【0184】
<重合体の分子量の測定>
重合例におけるアクリル(共)重合体の分子量は、(株)Shodex社製常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)、(株)Shodex社製カラム(KD―803、KD-805)を用い以下のようにして測定した。
なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表した。
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:昭和電工(株)製 標準ポリスチレン(分子量 約197,000、55,100、12,800、3,950、1,260、580)。
【0185】
<A成分の合成>
<合成例1>
GMA 15.0g、重合触媒としてAIBN 0.8gをテトラヒドロフラン 63.0gに溶解し、加熱還流下にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液を得た。アクリル重合体溶液をジエチルエーテル 500.0gに徐々に滴下して固体を析出させ、ろ過および減圧乾燥することでアクリル重合体(P-1)を得た。得られたアクリル重合体のMnは6,500、Mwは11,000であった。
【0186】
<合成例2>
合成例1で得たエポキシ基を有するアクリル重合体(P-1)10.0g、CIN1 8.4g、アクリル酸 0.8g、反応触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロミド 0.1g、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン 0.4gをPM 46.1gに溶解させ、80℃で20時間反応させ、アクリル重合体(PA-1)を30質量%含有する溶液を得た。得られた重合体のエポキシ価を測定し、エポキシ基が消失したことを確認した。
【0187】
<合成例3~10>
エポキシ基を有するポリマー(アクリル重合体)、光配向性基を与える化合物及び重合性二重結合を含む基を与える化合物の種類、配合量を下記表1の通りとした以外は、合成例2と同様に操作し、重合体(PA-2)~(PA-9)を30質量%含有する溶液を得た。なお、表1中の空欄は、該当する成分を配合しなかったことを示す。
【0188】
【0189】
<B成分の合成>
<合成例11>
BMAA 100.0g、重合触媒としてAIBN 4.2gをPM 193.5gに溶解し、90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液を得た。得られたアクリル重合体のMnは2,700、Mwは3,900であった。アクリル重合体溶液をヘキサン2000.0gに徐々に滴下して固体を析出させ、ろ過および減圧乾燥することで、重合体(PB-1)を得た。
【0190】
<重合性液晶溶液の調製>
重合性液晶LC242(BASF社製)29.0g、重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)0.9g、レベリング剤としてBYK-361N(BYK社製)0.2g、溶剤としてメチルイソブチルケトンを加えて固形分濃度が30質量%の重合性液晶溶液(RM-1)を得た。
【0191】
<例1>
(A)成分として上記合成例2で得たアクリル重合体(PA-1)を30質量%含有する溶液のアクリル重合体(PA-1)に換算して100質量部に相当する量、(B)成分としてHMMを30質量部、(C)成分としてPTSA 3質量部を混合し、これにPMおよびEAを加え、溶剤組成がPM:EA=100:30(質量比)、固形分濃度が5.0質量%の硬化膜(配向材)形成組成物(A-1)を調製した。
【0192】
<例2、実施例3~12および比較例1~2>
各成分の種類と量を、それぞれ表2に記載の通りとしたほかは、例1と同様に実施し、硬化膜(配向材)形成組成物A-2~A-15を、それぞれ調製した。なお、表2中の空
欄は、該当する成分を配合しなかったことを示す。
【0193】
【0194】
<例13~14、実施例15~24および比較例3~4>
[配向性の評価]
例1~2、実施例3~12および比較例1~2の各硬化膜(配向材)形成組成物を、TACフィルム上にバーコーターを用いてWet膜厚4μmにて塗布した。それぞれ温度110℃で60秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、フィルム上にそれぞれ硬化膜を形成した。この各硬化膜に313nmの直線偏光を10mJ/cm2の露光量で垂直に照射し、配向材を形成した。フィルム上の配向材の上に、重合性液晶溶液(RM-1)を、バーコーターを用いてWet膜厚6μmにて塗布した。この塗膜を温度90℃のホットプレート上で60秒間乾燥後、300mJ/cm2で露光し、位相差材を作製した。作製したフィルム上の位相差材を一対の偏光板で挟み込み、位相差材における位相差特性の発現状況を観察し、位相差が欠陥なく発現しているものを○、位相差が発現していないものを×として「配向性」の欄に記載した。評価結果は、後に表3にまとめて示す。
【0195】
[密着性の評価]
例1~2、実施例3~12および比較例1~2の各硬化膜(配向材)形成組成物を、TACフィルム上にバーコーターを用いてWet膜厚4μmにて塗布した。それぞれ温度110℃で60秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、フィルム上にそれぞれ硬化膜を形成した。この各硬化膜に313nmの直線偏光を10mJ/cm2の露光量で垂直に照射し、配向材を形成した。フィルム上の配向材の上に、重合性液晶溶液(RM-1)を、バーコーターを用いてWet膜厚6μmにて塗布した。この塗膜を温度90℃のホットプレート上で60秒間乾燥後、300mJ/cm2で露光し、位相差材を作製した。この位相差材に縦横1mm間隔で5×5マスとなるようカッターナイフで切込みをつけた。この切り込みの上にスコッチテープを用いてセロハンテープ剥離試験を行った。評価結果は「密着性」とし、25マスのなかで剥がれずに残っているもマスの数を記載した。例えば、25/25であれば全てのマスが剥がれずに残っており、密着性が高いことを示す。評価結果は、後に表3にまとめて示す。
【0196】
【0197】
表3に示すように、実施例15~24で得られた位相差材は良好な配向性と高い密着性を示した。
【0198】
それに対して、比較例3で得られた位相差材は良好な配向性を示したが、十分な密着性が得られなかった。また比較例4で得られた位相差材は配向性と密着性ともに不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明の硬化膜形成組成物から形成される硬化膜は、液晶表示素子の液晶配向膜や、液晶表示素子の内部や外部に設けられる光学異方性フィルムを形成するための配向材として非常に有用である。特に、本発明の硬化膜形成組成物は、3Dディスプレイのパターン化位相差材に用いる硬化膜の形成材料として好適である。さらに、本発明の硬化膜形成組成物は、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子や有機EL素子などの各種ディスプレイにおける保護膜、平坦膜及び絶縁膜などの硬化膜を形成する材料、特にTFT型液晶表示素子の層間絶縁膜、カラーフィルタの保護膜又は有機EL素子の絶縁膜などを形成する材料としても好適である。