(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】低級オレフィン製造用の触媒、及び低級オレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 29/48 20060101AFI20240522BHJP
B01J 35/53 20240101ALI20240522BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20240522BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20240522BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20240522BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20240522BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
B01J29/48 Z
B01J35/53
C07C1/04
C07C11/04
C07C11/06
C07C11/08
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020134472
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椿 範立
(72)【発明者】
【氏名】楊 國輝
(72)【発明者】
【氏名】堤内 出
(72)【発明者】
【氏名】坂本 尚之
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-164909(JP,A)
【文献】特開2014-198332(JP,A)
【文献】特表2011-513198(JP,A)
【文献】特表2013-509353(JP,A)
【文献】特開2011-184573(JP,A)
【文献】特開2019-037939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 29/48
B01J 35/53
C07C 1/04
C07C 11/04
C07C 11/06
C07C 11/08
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水素(H
2
)と一酸化炭素(CO)とを含む合成ガスから低級オレフィンを製造する低級オレフィン製造用の触媒であって、少なくとも鉄及びマンガンを含む触媒をコアとし、少なくともケイ素及び第13族元素を含むゼオライトをシェルとした、コアシェル型の構造を有する、低級オレフィン製造用の触媒。
【請求項2】
前記第13族元素が、アルミニウムである、請求項1に記載の低級オレフィン製造用の触媒。
【請求項3】
前記ゼオライトが、MFI型ゼオライトである、請求項1または2に記載の低級オレフィン製造用の触媒。
【請求項4】
前記触媒のコアに対するシェルの重量比が、1/10以上、5以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の低級オレフィン製造用の触媒。
【請求項5】
前記第13族元素に対するケイ素のモル比が、10以上、1000以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の低級オレフィン製造用の触媒。
【請求項6】
少なくとも水素及び一酸化炭素を含む合成ガスと、触媒とを接触させるステップを含む低級オレフィンの製造法であって、前記触媒が、少なくとも鉄及びマンガンを含む触媒をコア、少なくともケイ素及び第13族元素を含むゼオライトをシェルとした、コアシェル型の構造を有する触媒である、低級オレフィンの製造方法。
【請求項7】
前記第13族元素が、アルミニウムである、請求項6に記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項8】
前記合成ガスと触媒とを接触させるステップにおいて、反応圧力が、0.1MPa以上
、10MPa以下である、請求項6または7に記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項9】
前記合成ガスと触媒とを接触させるステップにおいて、反応温度が、200℃以上、350℃以下である、請求
項6から8のいずれか1項に記載の低級オレフィンの製造方法。
【請求項10】
前記合成ガスと触媒とを接触させるステップにおいて、合成ガス中の一酸化炭素に対する水素の比率は、モル比で、
0.25以上、
4以下である、請求
項6から9のいずれか1項に記載の低級オレフィンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低級オレフィン製造用の触媒、及び低級オレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低級オレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン)は従来、石油を原料に生産されてきた。しかし、石油資源枯渇や資源の地域遍在性の問題から、天然ガスや石炭などから誘導される合成ガス(少なくともH2とCOを含む混合ガス)を原料に低級オレフィンを製造する技術が望まれている。
合成ガスを原料に用いた低級オレフィンの製造では、一般的に触媒が用いられ、低級オレフィンの選択率やCOの転化率の向上等を達成するための触媒の研究が幅広く行われている。
【0003】
特許文献1には、2段階の反応工程を経て合成ガスから低級オレフィン(C2-C4)を製造する方法、具体的には、1段階目の反応(フィッシャー・トロプシュ反応)を行う1段目の反応器に鉄(Fe)触媒を導入し、2段階目の反応(接触分解反応)を行う2段目の反応器にゼオライト触媒を導入し、これらの反応器での反応を経て合成ガスから低級オレフィンを製造する方法が開示されている。この製造方法においては、1段目の反応器における合成ガスの供給圧力が1MPaであるのに対して、2段目の反応器における接触分解反応が常圧下で行われるため、2段階目の反応における未反応ガスを1段目の反応器にリサイクルするためには、常圧から1MPaに昇圧することが必要であり、昇圧するために必要なエネルギーが大きく、製造コストの点で問題があった。
【0004】
非特許文献1には、Zr-Zn系の合成用触媒とCHA型ゼオライトとを、物理混合して得られる触媒を用いて、高い選択性でH2/CO混合ガスを低級オレフィン(C2-C4)に変換できる方法が開示されるが、副生されるCO2の選択率が45%以上と高く、また、CO転化率が10%と低いことが示されている。
非特許文献2には、Zn-Cr系の合成用触媒とCHA型ゼオライトとを、物理混合して、又は積層して得られる触媒を用いて、高い選択性でH2/CO混合ガスを低級オレフィン(C2-C4)に変換できる方法が開示されるが、副生されるCO2の選択率が40-45%と高く、CO転化率が17%と低いことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Ye Wang, et al., Angewandte Chemie International Edition, Vol.55, 2016, Page 4725-4728
【文献】Bao Xi, et al., Science, Vol.351, 2016, Page 1065-1068
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した問題を解決するため、本発明は、低コストで合成ガスから低級オレフィンを製造すること、及び低級オレフィンの製造においてCO転化率を高く且つ副生されるCO2の選択率を低くすること、を可能とする、低級オレフィン製造用の触媒、及び該触媒を用いた低級オレフィンの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の元素を含む触媒をコア、特定の元素を含むゼオライトをシェルとしたコアシェル型の構造を有する触媒を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]少なくとも鉄及びマンガンを含む触媒をコアとし、少なくともケイ素及び第13族元素を含むゼオライトをシェルとした、コアシェル型の構造を有する、低級オレフィン製造用の触媒。
[2]前記13族元素が、アルミニウムである、[1]に記載の低級オレフィン製造用の触媒。
[3]前記ゼオライトが、MFI型ゼオライトである、[1]または[2]に記載の低級オレフィン製造用の触媒。
[4]前記触媒のコアに対するシェルの重量比が、1/10以上、5以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の低級オレフィン製造用の触媒。
[5]前記第13族元素に対するケイ素のモル比が、10以上、1000以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の低級オレフィン製造用の触媒。
[6]少なくとも水素及び一酸化炭素を含む合成ガスと、触媒とを接触させるステップを含む低級オレフィンの製造法であって、前記触媒が、少なくとも鉄及びマンガンを含む触媒をコア、少なくともケイ素及び第13族元素を含むゼオライトをシェルとした、コアシェル型の構造を有する触媒である、低級オレフィンの製造方法。
[7]前記第13族元素が、アルミニウムである、[6]に記載の低級オレフィンの製造方法。
[8]前記合成ガスと触媒とを接触させるステップにおいて、反応圧力が、0.1MPa以上、10MPa以下である、[6]または[7]に記載の低級オレフィンの製造方法。[9]前記合成ガスと触媒とを接触させるステップにおいて、反応温度が、200℃以上、350℃以下である、[6]から[8]のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
[10]前記合成ガスと触媒とを接触させるステップにおいて、合成ガス中の一酸化炭素に対する水素の比率は、モル比で、25以上、400以下である、[6]から[9]のいずれかに記載の低級オレフィンの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、低コストで合成ガスから低級オレフィンを製造すること、及び低級オレフィンの製造においてCO転化率を高く且つ副生されるCO2の選択率を低くすること、を可能とする、低級オレフィン製造用の触媒、及び該触媒を用いた低級オレフィンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これら説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
【0012】
<1.低級オレフィン製造用の触媒>
本発明の一実施形態である低級オレフィンの製造用の触媒は、鉄及びマンガンを含む触媒をコアとし、ケイ素及び第13族元素を含むゼオライトをシェルとした、コアシェル型の構造を有する、低級オレフィン製造用の触媒(以下、「コアシェル触媒」とも称する)である。
本明細書において、低級オレフィンとは、炭素数2から4(C2-C4)のオレフィン、つまり、エチレン、プロピレン、及びブテンを意味する。
また、本明細書において、コアシェル型の構造とは、コアと該コアの周囲を取り囲むシェルとを有し、これらを形成する材料が異なる構造を意味する。
【0013】
上述した特許文献1における低級オレフィンの製造方法は、鉄(Fe)触媒を用いて一酸化炭素(CO)及び水素(H2)を原料とする合成ガスを反応させて炭化水素を含む混合物を得た後、ゼオライト触媒を用いて該混合物から目的の低級オレフィンを接触分解して得る、という2段階の工程を要する。
一方で、本実施形態のコアシェル触媒を用いた場合、該触媒で上記の2段階の工程の両方が達成される。具体的には、コア触媒による炭化水素の生成反応及びシェル触媒による低級オレフィンの接触分解が行われる。よって、合成ガスからの低級オレフィンの製造を一段階の反応工程で達成できるため、低コストでの低級オレフィンの製造が可能となる。
【0014】
<1.1.コア>
[コアの特性]
コアとなる触媒の形状は、特段制限されず、球形状、楕円形状、多面体形状等であってよい。
コアの平均粒子径は、低級オレフィンの製造に用いられる装置に導入できれば特段制限されないが、通常50μm以上であり、250μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、また、通常30mm以下であり、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましく、3mm以下であることが特に好ましい。上記の範囲を下回ると、粉体状になりハンドリングが困難になり、また、上記の範囲を上回ると、低級オレフィンの合成反応において有効に使用されない部分が出てきてしまう。
コアの粒子径とは、コアが球形状である場合にはその直径、楕円形状である場合にはその長径、多面体形状である場合には取り得る最長の対角線の長さをいう。
平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定することができる。具体的には、粒子が確認できる倍率、例えば10000~100000倍の倍率の写真で、任意の50個の粒子についての粒子径を求め、平均値をとることにより求められる。
また、コアの平均粒子径を調整するため、コア触媒の粉末を成形後、乳鉢で粉砕、任意の目開きのふるいを用いてふるい分けして整粒する方法を用いることができる。
【0015】
上記の平均粒子径の各上限の数値は、コアの最大粒子径としてもよく、また、各下限の数値は、コアの最小粒子径としてもよい。
コアの最大粒子径及び最小粒子径は、コアの選定の際にふるい分けによる分級を適用し、ふるいの目開きを選定することにより調整することができる。具体的には、特定の目開きを有するふるいを通過したもののみを用いることによりコアの最大粒子径を設定し、また、特定の目開きを有するふるいを通過しないもののみを用いることによりコアの最小粒子径を設定することができる。
最大粒子径及び最小粒子径は、上記の平均粒子径と同様に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定することができる。具体的には、粒子が確認できる倍率、例えば10000~100000倍の倍率の写真で、任意の50個の粒子についての粒子径を求め、それらの粒子径のうちの最大値を最大粒子径とし、最小値を最小粒子径とする。
また、コアの最大粒子径及び最小粒子径は、上記のふるい分けと同様の方法によりコアシェル触媒の最大粒子径及び最小粒子径を求め、これらの径から、SEM観察等により求めたシェルの平均厚さを引いた数値として求めてもよい。
【0016】
コアとなる触媒の成分は、鉄(Fe)及びマンガン(Mn)を含んでいれば、本発明の効果が得られる範囲で他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、例えば、アルカ
リ金属やアルカリ土類金属が挙げられ、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
また、担体やバインダとして、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化ランタン、シリカ-アルミナ複合酸化物、酸化マグネシウム、炭素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、等の低級オレフィン製造反応に影響のない不活性な成分を含んでもよい。
【0017】
コア全体に対するFeの含有量は、特段制限されないが、CO転化率の向上の観点から、重量比で、通常50重量%以上であり、70重量%以上であることが好ましく、また、通常98重量%以下であり、95重量%以下であることが好ましい。
上記のFeまたはMnの含有量は、例えば誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定できる。
【0018】
コアに含有されるFeに対するMnの比率(Mn/Fe)は、モル比で、通常1/50以上であり、1/20以上であることが好ましく、また、通常1/1以下であり、1/4以下であることが好ましい。上記の範囲を下回ると、Mnによる低級オレフィン選択性向上の効果が十分に発揮されず、また、上記の範囲を上回ると、触媒の活性が低下する。
【0019】
[コアの製造方法]
コアの製造方法は特段制限されないが、共沈法による製造が例示される。共沈法による製造法の一例としては、Feを含む金属塩溶液、Mnを含む金属塩溶液、および沈殿剤を含む水溶液を混合し、懸濁液を得る方法が挙げられる。
前記金属塩としては、得られる触媒の精製工程における除去が容易であることから、水に対する溶解性に優れるものが好ましい。このような塩の例としては、酢酸塩、フッ化物塩、塩酸塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、及びこれら塩(前記酢酸塩~硝酸塩)の水和物、並びに金属錯体が挙げられる。これらの中でも、Fe金属塩は、加熱による陰イオン分の除去が容易であることから、硝酸塩、塩酸塩であることが好ましく、硝酸塩であることがより好ましい。Mn金属塩は硝酸塩、塩酸塩であることが好ましく、塩酸塩であることがより好ましい。
【0020】
前記沈殿剤は、溶媒に溶解して水酸化物イオンを生じさせるものである。沈殿剤は、このような性質を有していれば特に限定されないが、アルカリ性化合物であることが好ましく、その例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、尿素、炭酸アンモニウム等が挙げられ、なかでも炭酸ナトリウム、炭酸カリウムであることがより好ましく、炭酸カリウムであることがさらに好ましい。
前記溶液の混合法として、例えば、沈殿剤を含む溶液を金属塩溶液に滴下する方法が挙げられる。沈殿剤の滴下は、室温で行ってもよく、金属塩溶液を加温して行ってもよい。金属塩溶液を30℃以上、90℃以下に加温するのが好ましく、40℃以上、80℃以下がより好ましい。滴下速度は金属塩溶液のpHが6以上、10以下の範囲となる滴下速度がよく、金属塩溶液のpHが7以上、9以下の範囲となる滴下速度がより好ましい。また、溶液の混合が終了した後、連続的に滴下物を撹拌してもよい。前記溶媒の混合時に、いずれかの溶液が固体成分を含む懸濁液であってもよい。
【0021】
得られた懸濁液から固形分を回収し、洗浄後に乾燥し、その後に焼成を行う。
前記乾燥温度は、水分を概ね除去できる程度の温度であればよく、40℃以上、180℃以下であることが好ましく、60℃以上、150℃以下であることがより好ましい。また、乾燥時間は、1時間以上、48時間以下であることが好ましく、6時間以上、24時間以下であることがより好ましい。
前記沈殿物を焼成するときの温度は、水酸化物を脱水させて十分に酸化物に変換できることから、300℃以上、800℃以下であることが好ましく、300℃以上、600℃
以下であることがより好ましい。
また、前記沈殿物を焼成する時間は、1時間以上、48時間以下であることが好ましく、1時間以上、24時間以下であることがより好ましく、1時間以上、12時間以下であることがさらに好ましい。
【0022】
<1.2.シェル>
シェルの形状は、コアを取り囲んでいれば特段制限されないが、厚さのバラツキが小さくなるように取り囲んでいることが好ましい。
シェルの厚さは特段制限されないが、以下のシェル/コアの重量比を満たすような範囲で厚さを設定することが好ましい。
コアに対するシェルの重量比(シェル/コア)は、1/50以上が好ましく、1/20以上よりが好ましく、1/10以上がさらに好ましく、1/6以上が特に好ましい。また、5/1以下が好ましく、2/1以下がより好ましく、1/1以下がさらに好ましい。シェル/コアの重量比が小さすぎると、シェルが十分にコアを被覆できず、または、シェルの厚みが薄くなり、副生する水がコアと再度触れる可能性が上がり、CO2の副生量を抑えることが難しくなる。一方で、コア/シェルの重量比が大きすぎると、触媒重量あたりの活性が低下し、反応が十分に進行しない。
【0023】
シェルの材料は、ケイ素(Si)及び第13族元素を含むゼオライトであれば特段制限されず、このようなシェルは、重質化した炭化水素を低級炭化水素に分解する触媒能を有する。
第13族元素は、特段制限されず、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等が挙げられるが、CO転化率の向上およびCO2の副生成の抑制の観点から、好ましくはB、Al、Gaであり、より好ましくはAlである。
ゼオライトにケイ素及び第13族元素を含有させる方法は、特段制限されず、例えば、ゼオライトの合成原料となるゲルに第13族元素を添加して水熱合成する方法で含有させることができる。
【0024】
シェル全体に対するSiの含有量は、特段制限されないが、CO転化率の向上およびCO2の副生成の抑制の観点から、重量比で、通常30重量%以上であり、35重量%以上であることが好ましく、また、通常47重量%以下である。
上記のSiまたは第13族元素の含有量は、例えば誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定できる。
【0025】
シェルに含有される第13族元素に対するSiの比率(Si/第13族元素)は、モル比で、通常10以上であり、15以上であることが好ましく、また、通常1000以下であり、500以下であることが好ましい。上記の範囲を下回ると、単相のゼオライトとして合成することが難しくなり、また、上記の範囲を上回ると、重質化した炭化水素の分解能が低下し、低級オレフィンの選択性が低下してしまう。
【0026】
ゼオライトの構造は特段制限されず、例えば、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで、AEI、AEL、AFI
、AFG、ANA、ATO、BEA、BRE、CAS、CDO、CHA、CON、DDR、DOH、EAB、EPI、ERI、ESV、EUO、FAR、FAU、FER、FRA
、HEU、GIS、GIU、GME、GOO、ITE、KFI、LEV、LIO、LOS、LTA、LTL、LTN、MAR、MEP、MER、MEL、MFI、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTW、MWW、NON、NES、OFF、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、RUT、SGT、SOD、STI、STT、TOL、TON、TSC、UFI、VNI、WEI、YUGなどがあげられる。これらのうち、CO転化率の向上およびCO2の副生成の抑制の観点から、MFI(型)ゼオライトが好ましく用
いられる。
【0027】
<1.3.コアシェルの形成方法>
コア触媒をシェル触媒で被覆する方法として、コア触媒にシリカを含む溶液を含浸し、さらに、ケイ素及び第13族元素を含むゼオライトの粉末を加えて攪拌し、得られた固体を焼成する方法が例示される。
シリカを含む溶液は特段制限されず、例えば、市販のシリカゾルが例示される。ゼオライトは、市販のゼオライトの使用も可能であり、水熱合成法により調製した粉末を使用することも可能である。 また、シェル触媒で被覆する前にコア触媒を成型、粉砕、整粒し
てもよい。
前記固体を焼成するときの温度は、300℃以上、800℃以下であることが好ましく、300℃以上、600℃以下であることがより好ましい。前記固体を焼成する時間は、1時間以上、48時間以下であることが好ましく、1時間以上、24時間以下であることがより好ましく、1時間以上、12時間以下であることがさらに好ましい。
【0028】
<1.4.コアシェル触媒の特性>
コアシェル触媒の形状は、特段制限されず、球形状、楕円形状、多面体形状等であってよい。
コアシェル触媒の平均粒子径は、低級オレフィンの製造に用いられる装置に導入できれば特段制限されないが、通常50μm以上であり、250μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、また、通常40mm以下であり、30mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましい。上記の範囲を下回ると、粉体状になりハンドリングが困難になり、また、上記の範囲を上回ると低級オレフィンの合成反応において有効に使用されない部分が出てきてしまう。
コアシェル触媒の粒子径とは、コアシェル触媒が球形状である場合にはその直径、楕円形状である場合にはその長径、多面体形状である場合には取り得る最長の対角線の長さをいう。
平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定することができる。具体的には、粒子が確認できる倍率、例えば10000~100000倍の倍率の写真で、任意の50個の粒子についての粒子径求め、平均値をとることにより求められる。
また、コアシェル触媒の粒子径は、コア触媒の最大粒子径及び最小粒子径に、シェル触媒の厚みを足すことで、コアシェル触媒の粒子径を推定することができる。通常、シェル触媒の厚みは、コア触媒の平均粒子径と比べて1桁~2桁小さい。そのため、コアシェル
触媒の粒子径を推定する上では、シェル触媒の厚みは誤差の大きい、簡便な方法で推定した値を用いることができる。
シェルの厚みは、例えば任意の個数のコアシェル触媒の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、観察した中でのシェルの最大厚みと最小厚みを代表値として用いることができる。また、ある重量比で混合したコアシェル触媒のシェル触媒の厚みを元に、重量比に比例するとして厚みを推定することができる。
【0029】
コアシェル触媒の比表面積は、特段制限されないが、CO転化率の向上の観点から、通常50m2/g以上であり、70m2/g以上であることが好ましく、また、通常600m2/g以下であり、500m2/g以下であることが好ましい。
比表面積は、例えばMicromeritics Instrument Corporation社製のASAP2020を用いて、窒素の吸脱着等温線を測定し、BET法により求められる。
【0030】
<2.低級オレフィンの製造方法>
本発明の別の実施形態である低級オレフィンの製造方法は、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスと、触媒とを接触させるステップを含む低級オレフィンの製造法であって、前記
触媒が、鉄及びマンガンを含む触媒をコア、ケイ素及び第13族元素を含むゼオライトをシェルとした、コアシェル型の構造を有する触媒である、低級オレフィンの製造方法である。
該コアシェル型の構造を有する触媒は、上述したコアシェル触媒を適用することができる。また、上記ステップにおいて、上述のコアシェル触媒以外の他の触媒を同時に用いることもできる。
【0031】
上記製造されたコアシェル触媒は、その存在下で、少なくとも水素(H2)と一酸化炭素(CO)とを含む合成ガスを転化反応させて低級オレフィンを合成する。
合成ガス中の水素の含有量は、通常40モル%以上であり、好ましくは50モル%以上であり、また通常80モル%以下であり、好ましくは75モル%以下である。
合成ガス中のCOに対するH2の比率(H2/CO)は、モル比で、通常0.25以上であり、0.5以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、また、通常5以下であり、4以下であることが好ましい。
なお、合成ガスには、一酸化炭素およびH2及びCO以外のガスも含んでいてもよい。例えば、二酸化炭素や窒素、アルゴンなどを使用することができる。
【0032】
本実施形態のハイブリッド触媒を用いた転化反応は、特段制限されず、1段の反応プロセスとして流通式固定床プロセスを採用してもよい。反応器は特段制限されず、例えば、上記の流通式固定床プロセスを採用する場合、固定床流通式反応器を用いることができる。
反応時のH2及びCOの扱いは、特段制限されず、反応時においてH2及び/又はCOを反応器外部から反応器内に常時流入させる態様(連続式)でもよく、また、反応前に反応器内にH2及びCOを封入したものを反応させる態様(バッチ式)でもよいが、製品コストの抑制の観点から、連続式である方が好ましい。
また、反応条件について、CO転化率の向上およびCO2の副生成の抑制の観点から、以下の条件とすることが好ましい。
連続式で実施する転化反応では、原料ガス流量を触媒体積で除して求めるガス空間速度(GHSV)(h-1)が、標準状態で、通常10h-1以上、100,000h-1以
下であり、100h-1以上、50,000h-1以下であることが好ましい。また、転
化反応の反応温度は通常200℃以上であり、220℃以上であることが好ましく、通常400℃以下であり、350℃以下であることが好ましい。反応圧力は、通常0.1MPa以上、10MPa以下であり、0.3MPa以上、5MPa以下であることが好ましい。
【0033】
合成ガスの転化反応を行う前に、必要に応じ、コアシェル触媒の活性化を行ってよい。活性化は水素を含むガスを用いて、圧力が常圧以上、10MPa以下の範囲で、温度が200℃以上、500℃以下の範囲で、活性化時間が1時間以上、50時間以下の範囲で行うことができる。
一定時間反応させた触媒は、再生処理に供した後、再生して使用してもよい。具体的には、CO転化率が低下した触媒は、各種公知の触媒の再生方法を使用して再生することができる。具体的には、例えば、空気、窒素、水蒸気、水素等を用いて再生することができ、空気又は水素を含むガスを用いて再生することが好ましい。
【0034】
本明細書において、CO転化率とは、連続式であれば「(1-(反応器出口ガス中の未反応CO(モル流量)/反応器入り口ガス中のCO(モル流量))×100(モル%)」で定義された値であり、バッチ式であれば、「1-(反応終了時の未反応CO(モル)/(反応開始時のCO(モル))×100(モル%))」で定義された値である。
C2-C4=選択率とは、反応生成物に含まれる炭素のうち、生成した炭素数2から4であるオレフィン(C2-C4=)に含まれる炭素の割合(モル%)のことをいう。また
、CO2選択率とは、反応生成物中に含まれる炭素のうち、反応で生成したCO2に含まれる炭素の割合(モル%)のことをいう。
【0035】
反応に供した触媒は再生して使用することができる。具体的には、CO転化率が低下した触媒は、各種公知の触媒の再生方法を使用して再生することができる。
再生方法は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、空気、窒素、水蒸気、水素等を用いて再生することができ、空気又は水素を含むガスを用いて再生することが好ましい(例えば、特開2011-78962号公報に記載の方法に準じて再生することができる)。
また、反応後の未反応のH2及びCOは、回収して、同じ反応系又は別の反応系で再利用することができる。
【0036】
本実施形態に係るハイブリッド触媒を用いることで、低コスト、かつ、高い選択性での合成ガス(H2/CO)から低級オレフィン(C2-C4)への変換、CO2の副生成の低減、を達成し得ることから、効率のよい反応を達成することができる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
コアであるFeMn触媒は共沈法により調製した。硝酸鉄(III)と塩化マンガン(II)をFeに対するMnのモル比(Mn/Fe)が10/1となるように脱塩水に溶解させた。Fe-Mn溶液を60℃に加熱し、激しく攪拌しながら炭酸カリウム溶液を滴下した。このときFe-Mn溶液のpHが8程度を維持するように滴下速度を調整した。滴下終了後、60℃に加熱したまま2時間攪拌を続けた。その後、沈殿物をろ過により回収し、脱塩水で洗浄し、110℃で12時間乾燥した。さらに、400℃で4時間焼成した。焼成して得られたFeMn触媒を成形、メノウ乳鉢による粉砕、ふるい分けし、0.85mm~1.70mmに整粒した。
上記の方法でコア触媒を製造した場合、共沈条件におけるFe及びMnの溶解度は極めて低く、原料中のFe及びMnのほぼ全量が沈殿物として回収されるため、コア中の含有元素の比率は原料の仕込み比率(原料中の含有元素の比率)と同程度となる。
30wt%のシリカゾルに重量比2倍の脱塩水を添加したゾルを作製し、丸底フラスコ内でFeMn触媒に含浸した。そこに、Si/Al比(モル比)が17のH-ZSM-5粉末(Nankai University Catalyst Co., Ltd.製のゼオライト粉末)を、H-ZSM-5/FeMn触媒の重量比が1/3となるように加え、フラスコごと激しく攪拌し、FeMn触媒をH-ZSM-5触媒でコーティングした。得られた固体を400℃で4時間焼成してコアシェル触媒を得た。得られたコアシェル触媒のシェルの厚みは5μm~100μmであった(走査型電子顕微鏡による断面観察より推定)。得られたコアシェル触媒の粒子径は、0.86mm~1.7mmと推定された。また、比表面積は、115.4m2/gであった。
上記の方法でコアシェル触媒を製造した場合、仕込んだコア触媒及びゼオライトは付着等による微量のロス分以外は全量が回収可能であるため、最終的なコアシェル触媒中のコアに対するシェルの重量比は、原料の仕込み比率と同程度となるため、上記のコアシェル触媒におけるコアに対するシェルの重量比は1/3と同程度である。
【0039】
触媒活性評価は固定床流通式反応器を用いて行った。2mLの触媒をステンレス製の反応間に充填した。常圧で10%水素-90%窒素混合ガスを流通し、2K/minの昇温速度で300℃まで昇温し、300℃で4時間、触媒を還元した。
その後、流通ガスを合成ガス(H2/CO=2/1)に切り替え、反応器温度を280
℃、圧力を1MPaとし、ガス流速はGHSVが2000h-1となるように設定し、触媒活性評価を実施した。
反応器から出てきたガスはオンラインのガスクロマトグラフィー(島津GC-2010(TCD)と島津GC2014(FID))で分析した。また、反応を12時間継続し、反応中に生成した液成分はコールドトラップで回収し、オフラインのガスクロマトグラフィー(島津GC2014(FID))で分析した。
【0040】
ガス及び液の分析結果から、以下の式に基づき、CO転化率、CO2選択率、低級オレフィン選択率を計算した。
CO転化率(%)=(1-(反応器出口ガス中の未反応COのモル流量/反応器入り口ガス中のCOのモル流量)×100
CO2選択率(mol%)=反応器出口ガス中のCO2に含まれるCのモル流量/反応器出口ガス中の全反応生成物に含まれるCのモル流量×100
低級オレフィン選択率(wt%)=反応器出口ガス中の炭素数2から4のオレフィンの質量流量/反応器出口ガス中の全炭化水素の質量流量×100
【0041】
<比較例1>
触媒としてシェルを有していないコア触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した例を比較例1とした。得られた触媒は、FeMnのコア触媒のみからなる触媒である。
【0042】
<比較例2>
シェルを付与する工程の途中のシリカゾルを含浸したコア触媒を、ゼオライトでのコーティングをすることなく、400℃、4時間焼成した触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した例を比較例2とした。得られた触媒は、FeMnSiO2のコア触媒のみからなる触媒である。
【0043】
<比較例3>
実施例1で得られるコアシェル触媒をメノウ乳鉢で粉砕したこと以外は、実施例1と同様に実施した例を比較例3とした。
【0044】
<比較例4>
コア触媒とHZSM-5の粉末を混合し、成形・整粒した触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した例を比較例4とした。成形・整粒の条件は、実施例1におけるコアの形成条件と同様とした。
【0045】
<比較例5>
コア触媒とHZSM-5を別々に成形・整粒した触媒を、物理混合した触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した例を比較例5とした。成形・整粒の条件は実施例1におけるコアの形成条件と同様とした。
【0046】
<比較例6>
Mnを入れずに合成したコア触媒のみを用い、かつ、ゼオライトでのコーティングを行わなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した例を比較例6とした。得られた触媒は、Feのコア触媒のみからなる触媒である。
【0047】
<比較例7>
Mnを入れずにコア触媒を合成したこと以外は、実施例1と同様に実施した例を比較例7とした。比較例7の触媒は、Fe触媒をコア、H-ZSM-5をシェルとするコアシェル構造を有す触媒である。
【0048】
上記の実施例1及び比較例1~7の触媒活性評価を表1に示す。
【0049】
【0050】
表1において、FeMn触媒をコアとするコアシェル触媒を用いた実施例1のみが高い低級オレフィン選択率と低い二酸化炭素の選択率を実現している。これは、下記の3つの効果が複合的に作用した結果と考えられる。1つ目の効果は、コア触媒にMnを加えることでコア触媒上での二酸化炭素の選択率を抑え、低級オレフィンの選択性が高くなったことである。2つ目の効果は、コア触媒にH-ZSM-5触媒を共存させることで、C5以上の成分を分解し低級炭化水素が増えたことである。3つ目の効果は、コア触媒をシェルで覆うことにより、副生する水がFeMn触媒上で水性逆シフト反応(CO+H2O→CO2+H2)により、CO2が生成するのを抑制したことである。
以上のように、FeMn触媒をコアとするコアシェル触媒を用いることで低級オレフィンを選択的に製造できる。
【0051】
<実施例2>
H-ZSM-5/FeMn触媒の重量比が1/6となるようにしたこと以外は、実施例1と同様に実施した例を実施例2とした。得られた触媒の粒子径は0.85mm~1.8mmと推定された。
【0052】
<実施例3>
H-ZSM-5/FeMn触媒の重量比が1/4となるようにしたこと以外は、実施例1と同様に実施した例を実施例3とした。得られた触媒の粒子径は0.86mm~1.9mmと推定された。
【0053】
<実施例4>
H-ZSM-5/FeMn触媒の重量比が1/2となるようにしたこと以外は、実施例
1と同様に実施した例を実施例4とした。得られた触媒の粒子径は0.87mm~2.0mmと推定された。
【0054】
上記の実施例1~4及び比較例1の触媒活性評価を表2に示す。
【0055】
【0056】
表2より、コアのみの触媒と比べて、シェルを有する触媒では二酸化炭素の副生を抑えることが可能であり、シェル触媒の重量が大きくなるとCO2選択率が低下し、低級オレフィン選択率が向上することがわかる。
【0057】
<実施例5>
シェル触媒としてSi/Al比(モル比)が13のH-ZSM-5(Nankai University Catalyst Co., Ltd.製のゼオライト粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した例を実施例5とした。
【0058】
<実施例6>
シェル触媒としてSi/Al比(モル比)が25のH-ZSM-5(Nankai University Catalyst Co., Ltd.製のゼオライト粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した例を実施例6とした。
【0059】
<実施例7>
シェル触媒としてSi/Al比(モル比)が70のH-ZSM-5(Nankai University Catalyst Co., Ltd.製のゼオライト粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した例を実施例7とした。
【0060】
<実施例8>
シェル触媒としてSi/Al比(モル比)が100のH-ZSM-5(Nankai University Catalyst Co., Ltd.製のゼオライト粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した例を実施例8とした。
【0061】
<比較例8>
シェル触媒としてAlを含まないSilicalite-1(Nankai University Catalyst Co., Ltd.製のシリカライト)を用いたこと
以外は、実施例1と同様に実施した例を比較例8とした。
【0062】
上記の実施例1、5~8及び比較例1、8の触媒活性評価を表3に示す。
【0063】
【0064】
表3より、幅広い範囲のシェルのSi/Al比(モル比)を有する触媒において、コア触媒のみと比べてCO2選択率が低下し、低級オレフィン選択率が向上している。しかし、Alを含まず、重質化した炭化水素を低級炭化水素に分解する触媒活性を持たないと考えられるSilicalite-1では、低級オレフィン選択性が低下し、CO2選択率の低下幅が小さい。すなわち、重質化した炭化水素を低級炭化水素に分解する触媒活性を持つシェルを用いることで、効率のよい低級オレフィンの製造が可能になった。