(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】液晶ポリエステル及び液晶ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 63/06 20060101AFI20240522BHJP
C08G 69/44 20060101ALI20240522BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C08G63/06
C08G69/44
C08J5/18 CFD
(21)【出願番号】P 2020074699
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】莇 昌平
(72)【発明者】
【氏名】増井 希望
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04473682(US,A)
【文献】特開昭62-267323(JP,A)
【文献】特開2020-105398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63
C08G69/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位を含む液晶ポリエステルであって、
前記液晶ポリエステルを下記の測定条件で熱抽出GC-MS分析したとき、MSスペクトルのチャートにm/z=228,186,171,143の主要ピークを有し、トータルイオンクロマトグラムの保持時間が11.5~12.5minの範囲に検出される不純物成分であり、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルを標準試料としてトータルイオンクロマトグラムのGCピークの面積から求められる前記不純物成分の相対含有量が、前記液晶ポリエステルの質量に対して、50ppm以下であ
り、
前記6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位の含有量は、液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して20モル%以上であり、
更に、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位、及び、下記式(3)で示される構造単位(u3)を含む、液晶ポリエステル。
-X-Ar
3
-Y- ・・・(3)
式(3)中、Ar
3
は、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。ただし、Ar
3
で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
(熱抽出GC-MSの測定条件)
熱抽出温度 :300℃,15min
ITF温度 :320℃
カラム :0.25mmφ×30m(固定相:5%ジフェニルジメチルポリシロキサン、膜厚0.25μm)
注入口温度 :320℃
スプリット比:100:1
Oven温度:50℃(1min)→20℃/min→350℃(5min)
キャリアガス:ヘリウム,103.3mL/min
電子イオン化エネルギー:1435eV
測定質量範囲:m/z 35~600
MSインターフェイス温度:350℃
溶媒待ち時間:4min
【請求項2】
前記芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位が、下記式(2)で示される構造単位(u2)を含む、請求項
1に記載の液晶ポリエステル。
-CO-Ar
2-CO- ・・・(2)
式(2)中、Ar
2は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は2,6-ナフタレンジイル基を表す。ただし、Ar
2で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【請求項3】
前記Ar
2が1,3-フェニレンであり、Ar
3が1,4-フェニレンであり、Yが-O-である、請求項
2に記載の液晶ポリエステル。
【請求項4】
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位、及び、下記式(3)で示される構造単位(u3)を含む液晶ポリエステルフィルムであって、
前記液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L
*値が60以上であり、a
*値が9.0以下であ
り、
前記液晶ポリエステルフィルムにおける、前記6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位の含有量は、液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して20モル%以上である、
液晶ポリエステルフィルム。
-X-Ar
3-Y- ・・・(3)
式(3)中、Ar
3は、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。ただし、Ar
3で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【請求項5】
前記芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位が、下記式(2)で示される構造単位(u2)を含む、請求項
4に記載の液晶ポリエステルフィルム。
-CO-Ar
2-CO- ・・・(2)
式(2)中、Ar
2は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は2,6-ナフタレンジイル基を表す。ただし、Ar
2で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【請求項6】
前記Ar
2が1,3-フェニレンであり、Ar
3が1,4-フェニレンであり、Yが-O-である、請求項
5に記載の液晶ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル及び液晶ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装される多層プリント基板やフレキシブルプリント配線板用の絶縁膜として、液晶ポリエステルフィルムが提案されている。
【0003】
例えば、フレキシブルプリント配線板用の液晶ポリエステルフィルムは、液晶ポリエステルと溶媒とを含む液状組成物を支持体上に流延し、該流延物から溶媒を除去することにより製造される(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4470390号公報
【文献】特許第4479355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に開示されている、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位を含む液晶ポリエステルフィルムは、絶縁性能に優れるけれども、着色する傾向にある。着色した液晶ポリエステルフィルムは、外観に難があるだけでなく、回路基板に用いた時の異物混入の目視が難しかった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、着色が抑えられた液晶ポリエステル及び液晶ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
【0008】
[1] 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位を含む液晶ポリエステルであって、
前記液晶ポリエステルを下記の測定条件で熱抽出GC-MS分析したとき、MSスペクトルのチャートにm/z=228,186,171,143の主要ピークを有し、トータルイオンクロマトグラムの保持時間が11.5~12.5minの範囲に検出される不純物成分であり、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルを標準試料としてトータルイオンクロマトグラムのGCピークの面積から求められる前記不純物成分の相対含有量が、前記液晶ポリエステルの質量に対して、50ppm以下である液晶ポリエステル。
【0009】
(熱抽出GC-MSの測定条件)
熱抽出温度 :300℃,15min
ITF温度 :320℃
カラム :0.25mmφ×30m(固定相:5%ジフェニルジメチルポリシロキサン、膜厚0.25μm)
注入口温度 :320℃
スプリット比:100:1
Oven温度:50℃(1min)→20℃/min→350℃(5min)
キャリアガス:ヘリウム,103.3mL/min
電子イオン化エネルギー:1435eV
測定質量範囲:m/z 35~600
MSインターフェイス温度:350℃
溶媒待ち時間:4min
【0010】
[2] 更に、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位、及び、下記式(3)で示される構造単位(u3)を含む、前記[1]に記載の液晶ポリエステル。
-X-Ar3-Y- ・・・(3)
式(3)中、Ar3は、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。ただし、Ar3で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0011】
[3] 前記芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位が、下記式(2)で示される構造単位(u2)を含む、前記[2]に記載の液晶ポリエステル。
-CO-Ar2-CO- ・・・(2)
式(2)中、Ar2は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は2,6-ナフタレンジイル基を表す。ただし、Ar2で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
[4] 前記Ar2が1,3-フェニレンであり、Ar3が1,4-フェニレンであり、Yが-O-である、前記[3]に記載の液晶ポリエステル。
【0012】
[5] 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位、及び、下記式(3)で示される構造単位(u3)を含む液晶ポリエステルフィルムであって、前記液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が60以上であり、a*値が9.0以下である液晶ポリエステルフィルム。
-X-Ar3-Y- ・・・(3)
式(3)中、Ar3は、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。ただし、Ar3で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0013】
[6] 前記芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位が、下記式(2)で示される構造単位(u2)を含む、前記[5]に記載の液晶ポリエステルフィルム。
-CO-Ar2-CO- ・・・(2)
式(2)中、Ar2は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は2,6-ナフタレンジイル基を表す。ただし、Ar2で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
[7] 前記Ar2が1,3-フェニレンであり、Ar3が1,4-フェニレンであり、Yが-O-である、前記[6]に記載の液晶ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、着色が抑えられた液晶ポリエステル及び液晶ポリエステルフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例4の液晶ポリエステルを熱抽出GC-MS分析したときの、トータルイオンクロマトグラムである。
【
図2】
図2(上)は、実施例4の液晶ポリエステルを熱抽出GC-MS分析したときの、トータルイオンクロマトグラムの溶出時間12.02minにおけるMSスペクトルである。
図2(下)は、1-アセチル-2-アセトキシナフタレンの標準試料のMSスペクトルである。
【
図3】対照とする標準試料として、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルを熱抽出GC-MS分析したときの、トータルイオンクロマトグラム(上)、及び、MSスペクトル(下)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<液晶ポリエステル>
実施形態の液晶ポリエステルは、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位を含む。
【0017】
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物に由来する構造単位のみを有する全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
なお、本明細書において「由来」とは、原料モノマーが重合するために、重合に寄与する官能基の化学構造が変化し、その他の構造変化を生じないことを意味する。
【0018】
前記液晶ポリエステルを下記の測定条件で熱抽出GC-MS分析したとき、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルを標準試料としてトータルイオンクロマトグラムのGCピークの面積から求められる不純物成分の相対含有量が、前記液晶ポリエステルの質量に対して、50ppm以下であり、前記不純物成分は、MSスペクトルのチャートにm/z=228,186,171,143の主要ピークを有し、トータルイオンクロマトグラムの保持時間が11.5~12.5minの範囲に検出される。
【0019】
(熱抽出GC-MSの測定条件)
熱抽出温度 :300℃,15min
ITF温度 :320℃
カラム :0.25mmφ×30m(固定相:5%ジフェニルジメチルポリシロキサン、膜厚0.25μm)
注入口温度 :320℃
スプリット比:100:1
Oven温度:50℃(1min)→20℃/min→350℃(5min)
キャリアガス:ヘリウム,103.3mL/min
電子イオン化エネルギー:1435eV
測定質量範囲:m/z 35~600
MSインターフェイス温度:350℃
溶媒待ち時間:4min
【0020】
熱抽出GC-MS分析とは、前処理として熱分解器(Pyrolyzer)を用いて加熱抽出した試料をGC-MS(Gas Chromatography-Mass spectrometry)で分析することである。
【0021】
前記の熱抽出GC-MSの測定条件において、「熱抽出温度」は、熱分解器の加熱条件を表している。「ITF温度」は、熱分解器のインターフェイス温度であり、GCへの注入口の手前の温度である。
【0022】
前記の熱抽出GC-MSの測定条件において、「カラム」は、GCの分離カラムを表している。「注入口温度」はGCへの注入口の温度である。「スプリット比」はGCの注入モードを表している。「Oven温度」はGCオーブンの温度である。「キャリアガス」はGCのキャリアガス及びその流量を表している。
【0023】
前記の熱抽出GC-MSの測定条件において、「電子イオン化エネルギー」はMSの電子イオン化エネルギーを表している。「測定質量範囲」はMSの測定範囲をm/z(すなわち、質量電荷比)で表している。「MSインターフェイス温度」はGCからMSへのインターフェイスの温度を表している。「溶媒待ち時間」は、溶媒がGCの分離カラムを通過するまでMS分析をしない間の保持時間を表している。
【0024】
高分子化合物の熱分解器による前処理では、熱分解器の加熱条件によって、高分子化合物を熱分解させることができ、高分子化合物の熱分解を抑制して高分子化合物中の微量成分を加熱抽出することもできる。高分子化合物の熱抽出GC-MS分析では、熱分解器の加熱条件を調整することで、高分子化合物の熱分解を抑制して高分子化合物中の微量成分を加熱抽出してGC-MS分析する。
【0025】
一般に、GC-MS分析では、スキャンモード又はSIMモードの分析が行われる。スキャンモードでは、トータルイオンクロマトグラム及び、該トータルイオンクロマトグラムに現れるそれぞれのピークの質量分析結果(すなわち、MSスペクトル)を取得することができる。SIMモードでは、指定された質量のみのクロマトグラムを高感度で取得することができる。
【0026】
熱抽出GC-MS分析は、例えば、熱抽出GC-MS装置(ガスクロマトグラフ:アジレント・テクノロジー株式会社製 HP6890、質量分析計:アジレント・テクノロジー株式会社製 5973N、熱分解加熱炉:フロンティア・ラボ株式会社製 PY-2020D)を用いて実施することができる。
【0027】
前記液晶ポリエステルを前記の測定条件で熱抽出GC-MS分析したとき、MSスペクトルのチャートにm/z=228,186,171,143の主要ピークを有し、トータルイオンクロマトグラムの保持時間が11.5~12.5minの範囲に検出されるGCピークの不純物成分は、定かではない。前記不純物成分は、1-アセチル-2-アセトキシナフタレン(Mw=228)、2-アセチル-6-アセトキシナフタレン(Mw=228)、または、これらと分子量を同じくする異性体であると推定される。
【0028】
ここで、Mw=228とは、Mw(すなわち、分子量)が、227.5以上228.5未満の範囲内にあることを表す。以下、Mw(すなわち、分子量)を整数で表すときは、同様の範囲内の値であることを表す。
本明細書において、m/z=228とは、MSスペクトルにおいて、m/z(すなわち、質量電荷比)が、227.5以上228.5未満の範囲内にあることを表す。以下、m/z=186,171,143等、m/z(すなわち、質量電荷比)を整数で表すときは、同様の範囲内の値であることを表す。
【0029】
トータルイオンクロマトグラムの保持時間が11.5~12.5minの範囲に検出される前記GCピークのMSスペクトルのチャートにおいて、m/z=228は、前記GCピークの不純物成分の分子量(Mw=228)を示すと考えられる。
【0030】
m/z=186のピークは、ナフタレン環に直接結合するアセトキシ基からO=C=CH2(Mw=42)が脱離してできたフラグメント(m/z=186)を示すと考えられる。
【0031】
m/z=171のピークは、アセチル基からCH3基(Mw=15)が脱離してできたフラグメント(m/z=171)を示すと考えられる。
【0032】
m/z=143のピークは、さらにC=O基(Mw=28)が脱離してできたフラグメント(m/z=143)を示すと考えられる。
【0033】
発明者らの検討によれば、前記液晶ポリエステルを前記の測定条件で熱抽出GC-MS分析したとき、前記GCピークの不純物成分の量は、前記液晶ポリエステルの着色の度合いと強い相関があることが見出された。すなわち、前記GCピークの不純物成分の量が少ないほど、液晶ポリエステルの着色が抑えられ、液晶ポリエステルの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値は大きくなり、a*値は小さくなる傾向にある。
【0034】
前記不純物成分の相対含有量は、前記GCピークの面積から、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルを標準試料として、次の様に算出して評価することができる。
【0035】
すなわち、前記液晶ポリエステル(秤量値:A1[mg])を、熱抽出GC-MS装置用の測定カップに注入し、300℃に設定した熱分解加熱炉に15分間挿入し、熱抽出を行う。熱抽出後、前記測定条件で、得られた成分のGC-MS分析を行い、トータルイオンクロマトグラムにおいて保持時間が11.5~12.5minの範囲に、m/z=228,186,171,143の主要ピークを有する不純物成分(トータルイオンクロマトグラムにおけるピーク面積値:S1)が検出される。
【0036】
また、対照とする標準試料として、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルの所定の濃度のアセトン溶液を調製し、熱抽出GC-MS装置用の測定カップに注入する。このときの、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルの注入量をA2[μg]とする。液晶ポリエステルの熱抽出GC-MS分析と同じ条件で、300℃に設定した熱分解加熱炉に15分間挿入し、熱抽出する。熱抽出後、前記測定条件で、得られた成分のGC-MS分析を行い、トータルイオンクロマトグラムにおいて保持時間約11.92minに、m/z=202,171,143,115,44の主要ピークを有する6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチル(トータルイオンクロマトグラムにおけるピーク面積値:S2)が検出される。
【0037】
前記不純物成分の相対含有量(X2)[ppm]は、次式(2)から算出できる。
X2=S1×A2/S2/A1×1000 ・・・(2)
【0038】
後述する実施例・比較例によれば、前記不純物成分のトータルイオンクロマトグラムにおけるピークトップの保持時間は、12.03~12.04minであった。それにも拘らず、前記不純物成分の保持時間が11.5~12.5minの範囲と広く規定するのは、熱抽出GC-MSの測定条件を前記の通り規定しても、温度制御の不均一性、個々のカラムの性質のばらつきなどにより、保持時間は一定にできないことがあるからである。ただし、前記不純物成分のMSスペクトルのチャートにm/z=228,186,171,143の主要ピークを有すること、及び、対照とする標準試料の、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルの保持時間との関係から、前記不純物成分のトータルイオンクロマトグラムにおけるピークは、保持時間が11.5~12.5minの範囲において容易に特定することができる。
【0039】
実施形態の液晶ポリエステルにおいて、前記不純物成分の相対含有量は、50ppm以下であり、30ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましく、18ppm以下であることがさらに好ましく、15ppm以下がよりさらに好ましい。前記上限値以下であることで、液晶ポリエステルの着色をより抑えることができる。
【0040】
実施形態の液晶ポリエステルにおいて、前記不純物成分の相対含有量は、液晶ポリエステルの重合が容易であることから、5ppm以上であってもよく、10ppm以上であってもよく、12ppm以上であってもよい。
【0041】
実施形態の液晶ポリエステルにおいて、前記不純物成分の相対含有量は、液晶ポリエステルの重合が容易であることから、5ppm以上50ppm以下であることが好ましく、10ppm以上30ppm以下であることがより好ましく、12ppm以上20ppm以下であることがさらに好ましく、12ppm以上18ppm以下であることがよりさらに好ましく、12ppm以上15ppm以下であることが特に好ましい。
【0042】
実施形態の液晶ポリエステルは、着色が抑えられており、前記液晶ポリエステルの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が60以上であることが好ましく、61以上であることがより好ましく、62以上であることがさらに好ましい。a*値が6.0以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましく、5.0以下であることがさらに好ましい。
【0043】
実施形態の液晶ポリエステルの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が100以下であり、L*値が90以下であってもよく、80以下であってもよく、70以下であってもよい。a*値が0.0以上であり、2.0以上であってもよく、4.0以上であってもよい。
【0044】
実施形態の液晶ポリエステルの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が60以上90以下であってもよく、61以上80以下であってもよく、62以上70以下であってもよい。a*値が0.0以上6.0以下であってもよく、2.0以上5.5以下であってもよく、4.0以上5.0以下であってもよい。
【0045】
液晶ポリエステルのL*値及びa*値の色彩値は、粉末状の各液晶ポリエステルを42メッシュ(目開き355μm)の篩で篩い分けし、通過した液晶ポリエステルを石英製のセルに充填した後、測色色差計(例えば、日本電色工業株式会社の「ZE-2000」)を用いて、反射モードで測定する。
【0046】
実施形態の液晶ポリエステルは粉末状の液晶ポリエステルである。液晶ポリエステルがペレット形状等、42メッシュ(目開き355μm)の篩で通過しないときは、凍結粉砕機を用いて、液晶ポリエステルを凍結粉砕し、次に、粉末状の液晶ポリエステルを上述の方法で篩い分けした後に、L*値及びa*値の色彩値を測定する。凍結粉砕機としては、例えば、ボールミル型凍結粉砕機(日本分析工業株式会社製の「JFC-1500」)を用いることができる。凍結粉砕の条件としては、例えば、ペレット投入量:5g、予備凍結時間:10分間、凍結粉砕時間:10分間とすることができる。
【0047】
実施形態の液晶ポリエステルの化学構造は、芳香族ヒドロキシカルボン酸として6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位を含むものであれば、限定されない。
実施形態の液晶ポリエステルの典型的な例としては、以下が挙げられる。
1)芳香族ヒドロキシカルボン酸として6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸のみを重合(重縮合)させてなるもの。
2)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を含む、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合(重縮合)させてなるもの。
3)(i)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を含む芳香族ヒドロキシカルボン酸と、(ii)芳香族ジカルボン酸と、(iii)芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの。
4)(i)ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルに、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を重合(重縮合)させてなるもの。
【0048】
ここで、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0049】
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の重合可能な誘導体の例としては、6-アシルオキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-2-アルコキシカルボニルナフタレン、6-ヒドロキシ-2-アリールオキシカルボニルナフタレン、6-ヒドロキシ-2-ハロホルミルカルボニルナフタレン、6-アシルオキシ-2-アルコキシカルボニルナフタレン、6-アシルオキシ-2-アリールオキシカルボニルナフタレン、6-アシルオキシ-2-ハロホルミルカルボニルナフタレン等が挙げられる。
【0050】
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンの骨格として有する2価の芳香族炭化水素基としては、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基等が挙げられる。
【0051】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシ基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシ基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシ基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシ基をアシル化してアシルオキシ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0052】
実施形態の液晶ポリエステルは、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位、及び、下記式(3)で示される構造単位(u3)を含むことが好ましい。
-X-Ar3-Y- ・・・(3)
【0053】
式(3)中、Ar3は、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。ただし、Ar3で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0054】
式(3)で示される構造単位(u3)を含む液晶ポリエステルアミドは、銅箔などの金属材料との密着性に優れている。
【0055】
前記芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位が、下記式(2)で示される構造単位(u2)を含むことが好ましい。
-CO-Ar2-CO- ・・・(2)
式(2)中、Ar2は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は2,6-ナフタレンジイル基を表す。ただし、Ar2で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0056】
前記Ar2が1,3-フェニレンであり、Ar3が1,4-フェニレンであり、Yが-O-であることが好ましい。
【0057】
ここで、Ar2及びAr3における、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基及びn-デシル基が挙げられ、その炭素数は、通常1~10である。前記アリール基の例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基及び2-ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、通常6~20である。前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar2又はAr3で表される前記基毎に、それぞれ独立に、通常2個以下であり、好ましくは1個以下である。
【0058】
実施形態の液晶ポリエステルにおける、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位の含有量は、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して20モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
【0059】
液晶ポリエステルにおける、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位の含有量は、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して100モル%以下であり、90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましく、70モル%以下であることがさらに好ましい。6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位の含有量が上記上限値以下であることにより、液晶ポリエステルを生産する時の反応安定性を確保でき、より、着色を抑えることができる。
【0060】
上記の6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位の含有量の値の数値範囲の一例としては、20モル%以上100モル%以下であってもよく、20モル%以上90モル%以下であってもよく、30モル%以上80モル%以下であってもよく、40モル%以上70モル%以下であってもよい。
【0061】
実施形態の液晶ポリエステルが芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位を含むとき、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位の含有量は、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。
【0062】
液晶ポリエステルにおける、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位の含有量は、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して40モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがさらに好ましい。
【0063】
上記の芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位の含有量の値の数値範囲の一例としては、10モル%以上40モル%以下であってもよく、15モル%以上35モル%以下であってもよく、20モル%以上30モル%以下であってもよい。
【0064】
実施形態の液晶ポリエステルが式(2)で示される構造単位(u2)を含むとき、式(2)で示される構造単位(u2)の含有量は、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。
【0065】
液晶ポリエステルにおける、式(2)で示される構造単位(u2)の含有量は、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して40モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
上記の式(2)で示される構造単位(u2)の含有量の値の数値範囲の一例としては、10モル%以上40モル%以下であってもよく、15モル%以上35モル%以下であってもよく、20モル%以上30モル%以下であってもよい。
【0067】
実施形態の液晶ポリエステルが式(3)で示される構造単位(u3)を含むとき、式(3)で示される構造単位(u3)の含有量は、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。
【0068】
液晶ポリエステルにおける、式(3)で示される構造単位(u3)の含有量は、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して40モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがさらに好ましい。
【0069】
上記の式(3)で示される構造単位(u3)の含有量の値の数値範囲の一例としては、10モル%以上40モル%以下であってもよく、15モル%以上35モル%以下であってもよく、20モル%以上30モル%以下であってもよい。
ただし、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量は100モル%を超えない。
【0070】
前記液晶ポリエステルにおける、構造単位(2)の含有量と構造単位(3)の含有量とは、等しいことが好ましい。構造単位(2)の含有量と構造単位(3)の含有量との差は、0モル%以上5モル%以下が好ましく、0モル%以上4モル%以下がより好ましく、0モル%以上3モル%以下がさらに好ましい。
【0071】
実施形態の液晶ポリエステルの流動開始温度は、250℃以上が好ましく、260℃以上がより好ましく、280℃以上がさらに好ましい。
実施形態の液晶ポリエステルの流動開始温度は、350℃以下が好ましく、340℃以下がより好ましく、330℃以下がさらに好ましい。
実施形態の液晶ポリエステルの流動開始温度は、250℃以上350℃以下がより好ましく、260℃以上340℃以下がより好ましく、280℃以上330℃以下がさらに好ましい。
【0072】
実施形態の液晶ポリエステルの流動開始温度が高いほど、液晶ポリエステルの耐熱性並びに強度及び剛性が向上する傾向がある。一方で、液晶ポリエステルの流動開始温度が350℃を超えると、液晶ポリエステルの溶融温度や溶融粘度が高くなる傾向がある。そのため、液晶ポリエステルの溶融温度が前記上限値以下であることで、液晶ポリエステルの成形に必要な温度を低く設定することができる。
【0073】
本明細書において、液晶ポリエステルの流動開始温度は、フロー温度または流動温度とも呼ばれ、液晶ポリエステルの分子量の目安となる温度である(小出直之編、「液晶ポリマー-合成・成形・応用-」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。流動開始温度は、毛細管レオメーターを用いて、液晶ポリエステルを9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下4℃/minの速度で昇温しながら溶融させ、内径1mmおよび長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度である。
【0074】
実施形態の液晶ポリエステルは、以下の側面を有する。
【0075】
「1」 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位を含む液晶ポリエステルであって、
前記液晶ポリエステルを下記の測定条件で熱抽出GC-MS分析したとき、MSスペクトルのチャートにm/z=228,186,171,143の主要ピークを有し、トータルイオンクロマトグラムの保持時間が11.5~12.5minの範囲に検出される不純物成分であり、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルを標準試料としてトータルイオンクロマトグラムのGCピークの面積から求められる前記不純物成分の相対含有量が、前記液晶ポリエステルの質量に対して、50ppm以下であり、好ましくは30ppm以下であり、より好ましくは20ppm以下であり、さらに好ましくは18ppm以下であり、よりさらに好ましくは15ppm以下である液晶ポリエステル。
【0076】
(熱抽出GC-MSの測定条件)
熱抽出温度 :300℃,15min
ITF温度 :320℃
カラム :0.25mmφ×30m(固定相:5%ジフェニルジメチルポリシロキサン、膜厚0.25μm)
注入口温度 :320℃
スプリット比:100:1
Oven温度:50℃(1min)→20℃/min→350℃(5min)
キャリアガス:ヘリウム,103.3mL/min
電子イオン化エネルギー:1435eV
測定質量範囲:m/z 35~600
MSインターフェイス温度:350℃
溶媒待ち時間:4min
【0077】
「2」 前記不純物成分の相対含有量が、前記液晶ポリエステルの質量に対して、好ましくは5ppm以上であり、より好ましくは10ppm以上であり、さらに好ましくは12ppm以上である、前記「1」に記載の液晶ポリエステル。
【0078】
「3」 更に、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位、及び、下記式(3)で示される構造単位(u3)を含む、前記「1」又は「2」に記載の液晶ポリエステル。
-X-Ar3-Y- ・・・(3)
式(3)中、Ar3は、好ましくは1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、より好ましくは1,4-フェニレン基を表し、Xは-NH-を表し、Yは、好ましくは-O-又は-NH-を表し、より好ましくは-O-を表す。ただし、Ar3で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0079】
「4」 前記芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位が、下記式(2)で示される構造単位(u2)を含む、前記「3」に記載の液晶ポリエステル。
-CO-Ar2-CO- ・・・(2)
式(2)中、Ar2は、好ましくは1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は2,6-ナフタレンジイル基を表し、より好ましくは1,3-フェニレン基を表す。ただし、Ar2で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
「5」 前記Ar2が1,3-フェニレンであり、Ar3が1,4-フェニレンであり、Yが-O-である、前記「4」に記載の液晶ポリエステル。
【0080】
「6」 前記液晶ポリエステルの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が60以上であり、好ましくは61以上であり、より好ましくは62以上である、前記「1」~「5」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
「7」 前記液晶ポリエステルの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が100以下であり、L*値が90以下であってもよく、80以下であってもよく、70以下であってもよい、前記「6」に記載の液晶ポリエステル。
「8」 前記液晶ポリエステルの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、a*値が6.0以下であり、好ましくは5.5以下であり、より好ましくは5.0以下である、前記「1」~「7」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
「9」 前記液晶ポリエステルの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、a*値が0.0以上であり、2.0以上であってもよく、4.0以上であってもよい、前記「8」に記載の液晶ポリエステル。
【0081】
「10」 前記液晶ポリエステルにおける、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位の含有量が、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して20モル%以上であり、好ましくは30モル%以上であり、より好ましくは40モル%以上である、前記「1」~「9」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
「11」 前記液晶ポリエステルにおける、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位の含有量が、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して100モル%以下であり、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは80モル%以下であり、さらに好ましくは70モル%以下である、前記「1」~「10」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
【0082】
「12」 前記液晶ポリエステルにおける、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位の含有量が、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して10モル%以上であり、好ましくは15モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上である、前記「1」~「11」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
「13」 前記液晶ポリエステルにおける、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位の含有量が、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して40モル%以下であり、好ましくは35モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である、前記「1」~「12」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
「14」 前記液晶ポリエステルにおける、式(2)で示される構造単位(u2)の含有量が、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して10モル%以上であり、好ましくは15モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上である、前記「1」~「13」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
「15」 前記液晶ポリエステルにおける、式(2)で示される構造単位(u2)の含有量が、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して40モル%以下であり、好ましくは35モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である、前記「1」~「14」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
【0083】
「16」 前記液晶ポリエステルにおける、式(3)で示される構造単位(u3)の含有量が、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して10モル%以上であり、好ましくは15モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上である、前記「1」~「15」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
「17」 前記液晶ポリエステルにおける、式(3)で示される構造単位(u3)の含有量が、前記液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して40モル%以下であり、好ましくは35モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である、前記「1」~「16」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
「18」 前記液晶ポリエステルにおける、構造単位(2)の含有量と構造単位(3)の含有量との差は、0モル%以上5モル%以下であり、好ましくは0モル%以上4モル%以下であり、より好ましくは0モル%以上3モル%以下である、前記「1」~「17」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
【0084】
「19」 前記液晶ポリエステルの流動開始温度は、250℃以上であり、好ましくは260℃以上であり、より好ましくは280℃以上である、前記「1」~「18」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
「20」 前記液晶ポリエステルの流動開始温度は、350℃以下であり、好ましくは340℃以下であり、より好ましくは330℃以下である、前記「1」~「19」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル。
【0085】
<液晶ポリエステルの製造方法>
実施形態の液晶ポリエステルの製造方法は特に限定されるものではない。
実施形態の液晶ポリエステルは、構造単位を与える各モノマーを溶融重縮合させることを含む液晶ポリエステルの製造方法により、製造することができる。
実施形態の液晶ポリエステルの製造方法によれば、着色が抑えられた液晶ポリエステルを製造することができる。
【0086】
前記各モノマーとしては、溶融重縮合を速やかに進行させるため、及び液晶ポリエステルの着色を抑えるため、エステル形成性誘導体を用いることが好ましい。
【0087】
また、実施形態の液晶ポリエステルは、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とカルボン酸無水物とのアシル化物をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する液晶ポリエステルの製造方法により、製造することができる。
【0088】
また、実施形態の液晶ポリエステルは、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸若しくはそのエステル形成性誘導体を含むモノマーと、カルボン酸無水物と、をアシル化反応させて、アシル化物を得る工程(i)、及び、前記アシル化物をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する液晶ポリエステルの製造方法により、製造することができる。
【0089】
また、実施形態の液晶ポリエステルは、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を含むモノマーと、カルボン酸無水物と、をアシル化反応させて、アシル化物を得る工程(i)、及び、前記アシル化物をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する液晶ポリエステルの製造方法により、製造することができる。
【0090】
また、実施形態の液晶ポリエステルは、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸若しくはそのエステル形成性誘導体と、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及び芳香族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物若しくはそのエステル形成性誘導体と、カルボン酸無水物と、をアシル化反応させて、アシル化物を得る工程(i)、並びに、前記アシル化物と、芳香族ジカルボン酸と、をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する液晶ポリエステルの製造方法により、製造することができる。
【0091】
また、実施形態の液晶ポリエステルは、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸と、下記式(4)で表される芳香族ヒドロキシアシルアミド化合物と、カルボン酸無水物と、をさらにアシル化反応させて、アシル化物を得る工程(i)、並びに、前記アシル化物と、芳香族ジカルボン酸と、をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する液晶ポリエステルの製造方法により、製造することができる。
【0092】
R-NH-Ar3-OH ・・・(4)
式(4)中、Rは炭素数1~10のアルキル基であり、Ar3は、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表す。ただし、Ar3で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0093】
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物のエステル形成性誘導体の例としては、カルボキシル基がハロホルミル基に変換されたもの、カルボキシル基がアシルオキシカルボニル基に変換されたもの、カルボキシル基がアルコキシカルボニル基やアリールオキシカルボニル基に変換されたものが挙げられる。
【0094】
また、芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオールのようなヒドロキシル基を有する化合物のエステル形成性誘導体の例としては、ヒドロキシル基がアシルオキシ基に変換されたものが挙げられる。中でも、ヒドロキシル基がアシルオキシ基に変換されたものは好ましく用いられ、すなわち、芳香族ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、そのヒドロキシル基がアシル化されてなる芳香族アシルオキシカルボン酸が好ましく用いられ、また、芳香族ジオールのエステル形成性誘導体としては、そのヒドロキシル基がアシル化されてなる芳香族ヒドロキシアシルオキシ化合物又は芳香族ジアシルオキシ化合物が好ましく用いられる。
【0095】
さらに、芳香族ヒドロキシアミンや芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物のエステル形成性誘導体の例としては、アミノ基がアシルアミノ基に変換されたものが挙げられる。中でも、ヒドロキシル基がアシルオキシ基に変換されたものは好ましく用いられ、すなわち、芳香族ヒドロキシアミンのエステル形成性誘導体としては、そのヒドロキシル基がアシル化されてなる芳香族ヒドロキシアシルアミド化合物が好ましく用いられ、また、芳香族ジアミンのエステル形成性誘導体としては、そのアミノ基がアシル化されてなる芳香族ジアシルアミノ化合物が好ましく用いられる。
【0096】
アシル化は、無水酢酸によるアセチル化であることが好ましく、このアセチル化によるエステル形成性誘導体は、脱酢酸重縮合させることができる。
【0097】
通常、無水酢酸によるアセチル化の際には、アセチル化反応を速やかに進行させるため、及び反応系のスラリー濃度を低くするために、無水酢酸を、原料モノマーの水酸基及びアミノ基の合計の当量よりも過剰に加えられる。しかし、適度なスラリー濃度になるまで無水酢酸を過剰に加えると、アセチル化反応は速やかに進行するものの、副反応により、得られる液晶ポリエステルが黄変してしまう。
【0098】
前記工程(i)において、前記6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸若しくはそのエステル形成性誘導体、又は、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及び芳香族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物若しくはそのエステル形成性誘導体は、少なくともその一部の水酸基又はアミノ基がアシル化されたエステル形成性誘導体であることが好ましい。これにより、カルボン酸無水物の配合量を低く抑えることができ、得られる液晶ポリエステルの黄変を抑えることができる。
【0099】
その一部の水酸基又はアミノ基がアシル化されたエステル形成性誘導体としては、芳香族ヒドロキシアシルオキシ化合物、芳香族アシルオキシアミン化合物、芳香族ヒドロキシアシルアミド化合物、芳香族アミノアシルアミド化合物等が挙げられる。
【0100】
その全部の水酸基及びアミノ基がアシル化されたエステル形成性誘導体としては、6-アシルオキシ-2-ナフトエ酸、6-アシルオキシ-2-アルコキシカルボニルナフタレン、6-アシルオキシ-2-アリールオキシカルボニルナフタレン、6-アシルオキシ-2-ハロホルミルカルボニルナフタレン、芳香族アシルオキシカルボン酸、芳香族ジアシルオキシ化合物、芳香族アシルオキシアシルアミド化合物、芳香族ジアシルアミド化合物等が挙げられる。ただし、前記工程(i)における、全ての原料モノマーが、その全部の水酸基及びアミノ基がアシル化されたエステル形成性誘導体である場合は除かれる。
【0101】
前記工程(i)において、カルボン酸無水物によるアシル化の際に、モノカルボン酸を配合することが好ましい。モノカルボン酸を配合することで、スラリー濃度を低くすることができスラリー濃度を適度に調整できることに加えて、過剰量のカルボン酸無水物の配合量を低く抑えることができ、得られる液晶ポリエステルの黄変を抑えることができる。
【0102】
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の飽和脂肪酸であってもよく、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸であってもよく、安息香酸等の芳香族カルボン酸であってもよい。
【0103】
前記工程(i)において、無水酢酸によるアセチル化の際に、酢酸を加えることが好ましい。酢酸を加えることで、スラリー濃度を低くすることができスラリー濃度を適度に調整できることに加えて、過剰量の無水酢酸の配合量を低く抑えることができ、得られる液晶ポリエステルの黄変を抑えることができる。
【0104】
前記工程(i)において、前記カルボン酸無水物の配合量は、アシル化の反応系の全てのモノマーの水酸基及びアミノ基の合計の100当量部に対して、102当量部以上であることが好ましく、105当量部以上であることがより好ましく、110当量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上であることにより、アシル化反応を速やかに進めることができる。
【0105】
前記工程(i)において、前記カルボン酸無水物の配合量は、アシル化の反応系の全てのモノマーの水酸基及びアミノ基の合計の100当量部に対して、117当量部以下であることが好ましく、115当量部以下であることがより好ましく、113当量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下であることにより、得られる液晶ポリエステルの着色を抑えることができる。
【0106】
前記工程(i)において、前記カルボン酸無水物の配合量は、アシル化の反応系の全てのモノマーの水酸基及びアミノ基の合計の100当量部に対して、102当量部以上117当量部以下であることが好ましく、105当量部以上115当量部以下であることがより好ましく、110当量部以上113当量部以下であることがさらに好ましい。
【0107】
前記工程(i)において、前記モノカルボン酸を配合するとき、前記モノカルボン酸の配合量は、前記カルボン酸無水物の100モル部に対して、5モル部以上であることが好ましく、10モル部以上であることがより好ましく、15モル部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上であることにより、得られる液晶ポリエステルの着色を抑えることができる。
【0108】
前記工程(i)において、前記モノカルボン酸を配合するとき、前記モノカルボン酸の配合量は、前記カルボン酸無水物の100モル部に対して、80モル部以下であることが好ましく、70モル部以下であることがより好ましく、60モル部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下であることにより、アシル化反応を速やかに進めることができる。
【0109】
前記工程(i)において、前記モノカルボン酸を配合するとき、前記モノカルボン酸の配合量は、前記カルボン酸無水物の100モル部に対して、5モル部以上80モル部以下であることが好ましく、10モル部以上70モル部以下であることがより好ましく、15モル部以上60モル部以下であることがさらに好ましい。
【0110】
溶融重縮合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、及び三酸化アンチモン等の金属化合物や、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、及び1-メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。なお、溶融重縮合は、必要に応じて、更に固相重合させてもよい。
【0111】
実施形態の液晶ポリエステルの製造方法は、以下の側面を有する。
【0112】
「51」 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とカルボン酸無水物とのアシル化物をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する、前記「1」~「20」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0113】
「52」 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸若しくはそのエステル形成性誘導体を含むモノマーと、カルボン酸無水物と、をアシル化反応させて、アシル化物を得る工程(i)、及び、前記アシル化物をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する、前記「51」に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0114】
「53」 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を含むモノマーと、カルボン酸無水物と、をアシル化反応させて、アシル化物を得る工程(i)、及び、前記アシル化物をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する、前記「52」に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0115】
「54」 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸若しくはそのエステル形成性誘導体と、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及び芳香族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物若しくはそのエステル形成性誘導体と、カルボン酸無水物と、をアシル化反応させて、アシル化物を得る工程(i)、並びに、前記アシル化物と、芳香族ジカルボン酸と、をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する、前記「51」~「53」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0116】
「55」 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸若しくはそのエステル形成性誘導体と、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及び芳香族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物のエステル形成性誘導体と、カルボン酸無水物と、をアシル化反応させて、アシル化物を得る工程(i)、並びに、前記アシル化物と、芳香族ジカルボン酸と、をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する、前記「54」に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0117】
「56」 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸と、下記式(4)で表される芳香族ヒドロキシアシルアミド化合物と、カルボン酸無水物と、をさらにアシル化反応させて、アシル化物を得る工程(i)、並びに、前記アシル化物と、芳香族ジカルボン酸と、をエステル交換反応させて溶融重縮合することにより、液晶ポリエステルを得る工程(ii)を有する、前記「55」に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0118】
R-NH-Ar3-OH ・・・(4)
式(4)中、Rは、炭素数1~10のアルキル基であり、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~2のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基であり、Ar3は、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表す。ただし、Ar3で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0119】
「57」 前記工程(i)において、モノカルボン酸を配合する、前記「52」~「56」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0120】
「58」 前記モノカルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、又は、安息香酸等の芳香族カルボン酸であり、好ましくは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の飽和脂肪酸であり、より好ましくは酢酸である、前記「57」に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0121】
「59」 前記カルボン酸無水物が、好ましくは飽和脂肪酸無水物であり、より好ましくは無水酢酸である、前記「57」又は「58」に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0122】
「60」 前記工程(i)において、カルボン酸の配合量が、アシル化の反応系の全てのモノマーの水酸基及びアミノ基の合計の100当量部に対して、102当量部以上であり、好ましくは、105当量部以上であり、より好ましくは、110当量部以上である、前記「57」~「59」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0123】
「61」 前記工程(i)において、カルボン酸の配合量が、アシル化の反応系の全てのモノマーの水酸基及びアミノ基の合計の100当量部に対して、117当量部以下であり、好ましくは115当量部以下であり、より好ましくは113当量部以下である、前記「57」~「60」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0124】
「62」 前記工程(i)において、カルボン酸の配合量が、前記カルボン酸無水物の100モル部に対して、5モル部以上であり、好ましくは10モル部以上であり、より好ましくは15モル部以上である、前記「57」~「61」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0125】
「63」 前記工程(i)において、カルボン酸の配合量が、前記カルボン酸無水物の100モル部に対して、80モル部以下であり、好ましくは70モル部以下であり、より好ましくは60モル部以下である、前記「57」~「62」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【0126】
<液晶ポリエステルフィルム>
実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位、及び、下記式(3)で示される構造単位(u3)を含む液晶ポリエステルフィルムであって、前記液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が60以上であり、a*値が9.0以下である。
-X-Ar3-Y- ・・・(3)
式(3)中、Ar3は、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。ただし、Ar3で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0127】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、前記実施形態の液晶ポリエステルをそのままフィルムに成形したものとすることができる。したがって、実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、前記実施形態の液晶ポリエステルの組成を同じものとすることができ、流動開始温度等の特性を同様のものとすることができる。
【0128】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、着色が抑えられており、前記液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が60以上であることが好ましく、61以上であることがより好ましく、62以上であることがさらに好ましい。a*値が6.5以下であることが好ましく、6.0以下であることがより好ましく、5.5以下であることがさらに好ましい。
【0129】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が100以下であり、L*値が90以下であってもよく、80以下であってもよく、70以下であってもよい。a*値が0.0以上であり、2.0以上であってもよく、4.0以上であってもよい。
【0130】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が60以上90以下であってもよく、61以上80以下であってもよく、62以上70以下であってもよい。a*値が0.0以上6.0以下であってもよく、2.0以上5.5以下であってもよく、4.0以上5.0以下であってもよい。
【0131】
液晶ポリエステルフィルムのL*値及びa*値の色彩値は、各液晶ポリエステルフィルムを標準白板上に設置し、測色色差計(例えば、日本電色工業株式会社の「ZE-2000」)を用いて、反射モードで測定する。
【0132】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、前記芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位が、下記式(2)で示される構造単位(u2)を含むことが好ましい。
-CO-Ar2-CO- ・・・(2)
【0133】
式(2)中、Ar2は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は2,6-ナフタレンジイル基を表す。ただし、Ar2で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0134】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、前記Ar2が1,3-フェニレンであり、Ar3が1,4-フェニレンであり、Yが-O-であることが好ましい。
【0135】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、フィルムの強度を確保するため、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましく、25μm以上であることが特に好ましい。
【0136】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの厚さは、50μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましく、35μm以下であることが特に好ましい。
【0137】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの厚さは、10μm以上50μm以下であることが好ましく、15μm以上45μm以下であることがより好ましく、20μm以上40μm以下であることがさらに好ましく、25μm以上35μm以下であることが特に好ましい。
【0138】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの引張強さは、90MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましく、110MPa以上であることがさらに好ましい。
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの引張強さは、155MPa以下であってもよく、150MPa以下であってもよく、145MPa以下であってもよい。
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの引張強さは、90MPa以上155MPa以下であることが好ましく、100MPa以上150MPa以下であることがより好ましく、110MPa以上145MPa以下であることがさらに好ましい。
【0139】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの引張弾性率は、4.2GPa以上であることが好ましく、4.5GPa以上であることがより好ましく、4.8GPa以上であることがさらに好ましい。
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの引張弾性率は、6.1GPa以下であってもよく、5.8GPa以下であってもよく、5.5GPa以下であってもよい。
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの引張弾性率は、4.2GPa以上6.1GPa以下であることが好ましく、4.5GPa以上5.8GPa以下であることがより好ましく、4.8GPa以上5.5GPa以下であることがさらに好ましい。
【0140】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの引張強さひずみは、10.0%以上であることが好ましく、12.0%以上であることがより好ましく、14.0%以上であることがさらに好ましい。
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの引張強さひずみは、40.0%以下であってもよく、20.0%以下であってもよく、16.0%以下であってもよい。
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの引張弾性率は、10.0%以上40.0%以下であることが好ましく、12.0%以上20.0%以下であることがより好ましく、14.0%以上16.0%以下であることがさらに好ましい。
【0141】
液晶ポリエステルフィルムの引張強さ、引張弾性率及び引張強さひずみは、液晶ポリエステルフィルムを、JIS K6251に基づき、平行部幅5mm、標線間距離20mmのダンベル状3号形試験片に切り出し、JIS K7161に準拠して、引張試験機を用いて、5mm/minの引張速度にて測定する。
【0142】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、プリント配線板などの電子部品用フィルム、スピーカー振動板等の用途に好適に使用することができる。実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、それを絶縁材として備える基板(例えば、フレキシブル基板)や、積層板(例えば、フレキシブル銅張積層板)、プリント基板、プリント配線板、プリント回路板等として提供可能である。
【0143】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、目的に応じて、前記支持体上に積層された状態で多層プリント基板やフレキシブルプリント配線板等の用途に用いることができる。また、実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、目的に応じて、前記支持体を分離又は除去して、絶縁膜等の用途に用いることができる。
【0144】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、以下の側面を有する。
【0145】
「101」 6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位、及び、下記式(3)で示される構造単位(u3)を含む液晶ポリエステルフィルムであって、前記液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が60以上であり、好ましくは61以上であり、より好ましくは62以上であり、a*値が9.0以下である液晶ポリエステルフィルム。
-X-Ar3-Y- ・・・(3)
式(3)中、Ar3は、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。ただし、Ar3で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0146】
「102」 前記液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値が100以下であり、L*値が90以下であってもよく、80以下であってもよく、70以下であってもよい、前記「101」に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「103」 前記液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、a*値が6.0以下であり、好ましくは5.5以下であり、より好ましくは5.0以下である、前記「101」又は「102」に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「104」 前記液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、a*値が0.0以上であり、2.0以上であってもよく、4.0以上であってもよい、前記「101」~「103」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
【0147】
「105」 前記芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位が、下記式(2)で示される構造単位(u2)を含む、前記「101」~「104」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
-CO-Ar2-CO- ・・・(2)
式(2)中、Ar2は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は2,6-ナフタレンジイル基を表す。ただし、Ar2で表される前記基が有する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。
「106」 前記Ar2が1,3-フェニレンであり、Ar3が1,4-フェニレンであり、Yが-O-である、前記「105」に記載の液晶ポリエステルフィルム。
【0148】
「107」 前記液晶ポリエステルフィルムにおける、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位の含有量が、前記液晶ポリエステルフィルム中の全構造単位の合計量100モル%に対して20モル%以上であり、好ましくは30モル%以上であり、より好ましくは40モル%以上である、前記「101」~「106」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「108」 前記液晶ポリエステルフィルムにおける、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位の含有量が、前記液晶ポリエステルフィルム中の全構造単位の合計量100モル%に対して100モル%以下であり、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは80モル%以下であり、さらに好ましくは70モル%以下である、前記「101」~「107」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「109」 前記液晶ポリエステルフィルムにおける、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位の含有量が、前記液晶ポリエステルフィルム中の全構造単位の合計量100モル%に対して10モル%以上であり、好ましくは15モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上である、前記「101」~「108」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「110」 前記液晶ポリエステルフィルムにおける、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位の含有量が、前記液晶ポリエステルフィルム中の全構造単位の合計量100モル%に対して40モル%以下であり、好ましくは35モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である、前記「101」~「109」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「111」 前記液晶ポリエステルフィルムにおける、式(2)で示される構造単位(u2)の含有量が、前記液晶ポリエステルフィルム中の全構造単位の合計量100モル%に対して10モル%以上であり、好ましくは15モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上である、前記「101」~「110」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「112」 前記液晶ポリエステルフィルムにおける、式(2)で示される構造単位(u2)の含有量が、前記液晶ポリエステルフィルム中の全構造単位の合計量100モル%に対して40モル%以下であり、好ましくは35モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である、前記「101」~「111」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「113」 前記液晶ポリエステルフィルムにおける、式(3)で示される構造単位(u3)の含有量が、前記液晶ポリエステルフィルム中の全構造単位の合計量100モル%に対して10モル%以上であり、好ましくは15モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上である、前記「101」~「112」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「114」 前記液晶ポリエステルフィルムにおける、式(3)で示される構造単位(u3)の含有量が、前記液晶ポリエステルフィルム中の全構造単位の合計量100モル%に対して40モル%以下であり、好ましくは35モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である、前記「101」~「113」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「115」 前記液晶ポリエステルフィルムにおける、構造単位(2)の含有量と構造単位(3)の含有量との差は、0モル%以上5モル%以下であり、好ましくは0モル%以上4モル%以下であり、より好ましくは0モル%以上3モル%以下である、前記「101」~「114」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「116」 前記液晶ポリエステルフィルムの流動開始温度は、250℃以上であり、好ましくは260℃以上であり、より好ましくは280℃以上である、前記「101」~「115」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「117」 前記液晶ポリエステルフィルムの流動開始温度は、350℃以下であり、好ましくは340℃以下であり、より好ましくは330℃以下である、前記「101」~「116」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「118」 前記液晶ポリエステルフィルムの厚さは、10μm以上であり、好ましくは15μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは25μm以上である、前記「101」~「117」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
「119」 前記液晶ポリエステルフィルムの厚さは、50μm以下であり、好ましくは45μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは35μm以下である、前記「101」~「118」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルム。
【0149】
<液晶ポリエステルフィルムの製造方法>
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されるものではない。
実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、前記液晶ポリエステルと、前記液晶ポリエステルを溶解させる溶媒と、を含む液状組成物を膜状に流延した後に、前記液状組成物から溶媒を除去すること、を含む液晶ポリエステルフィルムの製造方法により、製造することができる。
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの製造方法によれば、着色が抑えられた液晶ポリエステルフィルムを製造することができる。
【0150】
また、実施形態の液晶ポリエステルフィルムは、前記液晶ポリエステルと、前記液晶ポリエステルを溶解させる溶媒と、を含む液状組成物を支持体上に流延し、前記液状組成物から溶媒を除去すること、を含む液晶ポリエステルフィルムの製造方法により、製造することができる。
【0151】
溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1-クロロブタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;p-クロロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール等のハロゲン化フェノール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート;トリエチルアミン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環芳香族化合物;アセトニトリル、スクシノニトリル等のニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド、テトラメチル尿素等の尿素化合物;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄化合物;及びヘキサメチルリン酸アミド、トリn-ブチルリン酸等のリン化合物が挙げられ、それらの2種以上を用いてもよい。
【0152】
溶媒としては、腐食性が低く、取り扱い易いことから、非プロトン性溶媒を主成分とする溶媒、特にハロゲン原子を有しない非プロトン性極性溶媒を主成分とする溶媒が好ましい。本明細書において、「主成分」とは、全体の100質量%に占める割合が、50質量%以上である成分を云う。溶媒全体の100質量%に占めるハロゲン原子を有しない非プロトン性極性溶媒の割合は、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。また、前記ハロゲン原子を有しない非プロトン性極性溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N-メチルピロリドン等のアミド又はγ-ブチロラクトン等のエステルを用いることが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンがさらに好ましい。
【0153】
また、溶媒としては、除去し易いことから、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体の100質量%に占める1気圧における沸点が220℃以下である化合物の割合は、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。前記ハロゲン原子を有しない非プロトン性極性溶媒として、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を用いることが好ましい。
【0154】
液状組成物に含まれる液晶ポリエステルの割合は、液晶ポリエステル及び溶媒の合計量に対して、0.1~60質量%であることが好ましく、1~50質量%であることがより好ましく、3~40質量%であることがさらに好ましく、5~30質量%であることが特に好ましい。
【0155】
液状組成物は、充填材、添加剤、及び液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を1種以上含んでもよい。
【0156】
充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材;及び硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂等の有機充填材が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、0質量部であってもよく、好ましくは100質量部以下である。
【0157】
添加剤の例としては、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤及び着色剤が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、0質量部であってもよく、好ましくは5質量部以下である。
【0158】
液状組成物は、前記の液晶ポリエステル、溶媒、及び必要に応じて用いられる他の成分を、一括で又は適当な順序で混合して混合液を調製し、必要に応じて、フィルターなどによってろ過し、混合液中に含まれる微細な異物を除去して得ることができる。
【0159】
液状組成物の粘度は、特に限定されないが、流延作業が容易になることから、2000mPa・s以下であることが好ましく、1500mPa・s以下であることがより好ましく、1000mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0160】
本明細書において、液状組成物の粘度は、B型粘度計を用いて、23℃において測定されたものである。
【0161】
液状組成物の粘度は、乾燥作業が短時間にできることから、200mPa・s以上であることが好ましく、250mPa・s以上であることがより好ましく、300mPa・s以上であることがさらに好ましい。
【0162】
液状組成物の粘度は、200mPa・s以上2000mPa・s以下であることが好ましく、250mPa・s以上1500mPa・s以下であることがより好ましく、300mPa・s以上1000mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0163】
前記液状組成物を膜状に流延する方法としては、支持体上にローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段により流延する方法が挙げられる。
【0164】
また、溶媒を除去する方法は特に限定されないが、溶媒の蒸発により行うことが好ましい。溶媒を蒸発させる方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられるが、中でも生産効率、取り扱い性の点から加熱して蒸発せしめることが好ましく、通風しつつ加熱して蒸発せしめることがより好ましい。この時の加熱条件としては、30~200℃で10分ないし6時間予備乾燥を行う工程と、200~400℃で30分ないし5時間熱処理を行う工程とを含むことが好ましい。
【0165】
実施形態の液晶ポリエステルフィルムの製造方法は、以下の側面を有する。
【0166】
「151」 前記「1」~「20」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルと、前記液晶ポリエステルを溶解させる溶媒と、を含む液状組成物を膜状に流延した後に、前記液状組成物から溶媒を除去すること、を含む液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
【0167】
「152」 前記「1」~「20」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルと、前記液晶ポリエステルを溶解させる溶媒と、を含む液状組成物を支持体上に流延し、前記液状組成物から溶媒を除去すること、を含む液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
「153」 前記溶媒が、好ましくは非プロトン性溶媒を主成分とする溶媒であり、より好ましくはハロゲン原子を有しない非プロトン性極性溶媒を主成分とする溶媒である、前記「151」又は「152」に記載の液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
「154」 前記液状組成物の粘度は、2000mPa・s以下であり、好ましくは1500mPa・s以下であり、より好ましくは1000mPa・s以下である前記「151」~「153」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
「155」 前記液状組成物の粘度は、200mPa・s以上であり、好ましくは250mPa・s以上であり、より好ましくは300mPa・s以上である前記「151」~「154」のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
【実施例】
【0168】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0169】
<液晶ポリエステルの製造>
[実施例1]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸940.9g(5.0モル)、4-ヒドロキシアセトアニリド377.9g(2.5モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)、無水酢酸867.8g(8.4モル)及び酢酸90g(1.5モル)を投入し、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、撹拌しながら、室温から140℃まで60分かけて昇温し、140℃で3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から300℃まで5時間かけて昇温し、300℃で30分保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、オリエント粉砕機株式会社製の粉砕機(型式:VM-16、回転数:1500rpm)で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステル(A1)を得た。
【0170】
液晶ポリエステル(A1)を、窒素雰囲気下、室温から160℃まで2時間20分かけて昇温し、次いで160℃から180℃まで3時間20分かけて昇温し、180℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却し、次いで、目開き4mmのパンチングメタルスクリーンを用いてオリエント粉砕機株式会社製の粉砕機(型式:VM-16、回転数:1500rpm)で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステル(B1)を得た。
【0171】
液晶ポリエステル(B1)を窒素雰囲気下、室温から180℃まで1時間25分かけて昇温し、次いで180℃から255℃まで0.2℃/minの昇温速度で昇温し、255℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(C1)を得た。この実施例1の液晶ポリエステル(C1)の流動開始温度は、300.3℃であった。
【0172】
[実施例2]
実施例1において反応器に投入した酢酸90g(1.5モル)を、酢酸180g(3.0モル)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の液晶ポリエステル(A2)、粉末状の液晶ポリエステル(B2)及び粉末状の液晶ポリエステル(C2)を得た。この実施例2の液晶ポリエステル(C2)の流動開始温度は、299.9℃であった。
【0173】
[実施例3]
実施例1において反応器に投入した酢酸90g(1.5モル)を、酢酸270g(4.5モル)に変更すること以外は実施例1と同様にして、粉末状の液晶ポリエステル(A3)、粉末状の液晶ポリエステル(B3)及び粉末状の液晶ポリエステル(C3)を得た。この実施例3の液晶ポリエステル(C3)の流動開始温度は、298.4℃であった。
【0174】
[実施例4]
実施例1において反応器に投入した酢酸90g(1.5モル)を、投入しないことに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の液晶ポリエステル(A4)、粉末状の液晶ポリエステル(B4)及び粉末状の液晶ポリエステル(C4)を得た。この実施例4の液晶ポリエステル(C4)の流動開始温度は、302.7℃であった。
【0175】
[比較例1]
実施例1において反応器に投入した無水酢酸867.8g(8.4モル)を、無水酢酸957.8g(9.3モル)に変更し、反応器に投入した酢酸90g(1.5モル)を、投入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の液晶ポリエステル(A5)、粉末状の液晶ポリエステル(B5)及び粉末状の液晶ポリエステル(C5)を得た。この比較例1の液晶ポリエステル(C5)の流動開始温度は、315.5℃であった。
【0176】
[比較例2]
実施例1において反応器に投入した無水酢酸867.8g(8.4モル)を、無水酢酸1047.8g(10.2モル)に変更し、反応器に投入した酢酸90g(1.5モル)を、投入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の液晶ポリエステル(A6)、粉末状の液晶ポリエステル(B6)及び粉末状の液晶ポリエステル(C6)を得た。この比較例1の液晶ポリエステル(C6)の流動開始温度は、316.5℃であった。
【0177】
(液晶ポリエステルの流動開始温度の測定)
フローテスター((株)島津製作所の「CFT-500型」)を用いて、実施例1~4及び比較例1~2の粉末状の各液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/minの速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000P)の溶融粘度を示す温度(流動開始温度)を測定した。
【0178】
(液晶ポリエステルの色彩値の測定)
実施例1~4及び比較例1~2の粉末状の各液晶ポリエステルを42メッシュ(目開き355μm)の篩で篩い分けし、通過した液晶ポリエステルを石英製のセルに充填した後、測色色差計(日本電色工業株式会社の「ZE-2000」)を用いて、反射モードでL*値、a*値を測定した。実施例1~4及び比較例1~2の各液晶ポリエステルのL*値、a*値の測定結果を表1に示した。
【0179】
(液晶ポリエステルの熱抽出GC-MS分析)
熱抽出GC-MS装置(ガスクロマトグラフ:アジレント・テクノロジー株式会社製 HP6890、質量分析計:アジレント・テクノロジー株式会社製 5973N、熱分解加熱炉:フロンティア・ラボ株式会社製 PY-2020D)を用い、実施例1~4及び比較例1~2の粉末状の各液晶ポリエステルについて、下記条件により熱抽出GC-MS分析をした。
【0180】
(熱抽出GC-MSの測定条件)
熱抽出温度 :300℃,15min
ITF温度 :320℃
カラム :フロンティア・ラボ株式会社製、UA5、0.25mmφ×30m(固定相:5%ジフェニルジメチルポリシロキサン、膜厚0.25μm)
注入口温度 :320℃
スプリット比:100:1
Oven温度:50℃(1min)→20℃/min→350℃(5min)
キャリアガス:ヘリウム,103.3mL/min
電子イオン化エネルギー:1435eV
測定質量範囲:m/z 35~600
MSインターフェイス温度:350℃
【0181】
例えば、実施例1の液晶ポリエステル(C1)を20.2mg(秤量値:A1)秤量して、熱抽出GC-MS装置用の測定カップに注入し、300℃に設定した熱分解加熱炉に15分間挿入し、熱抽出を行った。熱抽出後、得られた成分のGC-MS分析を行い、トータルイオンクロマトグラムにおいて保持時間12.03minに、m/z=228,186,171,143の主要ピークを有する不純物成分が検出された。
【0182】
実施例1~4及び比較例1~2の粉末状の各液晶ポリエステル(C1)~(C6)について、それぞれ、3回の熱抽出GC-MS分析を行った。
【0183】
これらのうち、実施例4の液晶ポリエステルを熱抽出GC-MS分析したときの、トータルイオンクロマトグラムを
図1に示した。また、実施例4の液晶ポリエステルを熱抽出GC-MS分析したときの、トータルイオンクロマトグラムの溶出時間12.02minにおけるMSスペクトルを
図2(上)に示した。1-アセチル-2-アセトキシナフタレンの標準試料のMSスペクトルを
図2(下)に示した。
【0184】
溶出時間12.02minにおけるMSスペクトル(
図2(上))において、最も高質量側に検出されたm/z=228.1のピークは、1-アセチル-2-アセトキシナフタレン(Mw=228)及び2-アセチル-6-アセトキシナフタレン(Mw=228)の分子量と一致する。
図2(上)のMSスペクトルで、m/z=228.1,186.1,171.1,143.1にピークが検出されたのは、
図2(下)の1-アセチル-2-アセトキシナフタレン(Mw=228)のMSパターンと一致する。したがって、前記不純物成分は、1-アセチル-2-アセトキシナフタレン(Mw=228)、2-アセチル-6-アセトキシナフタレン(Mw=228)、または、これらと分子量を同じくする異性体であると推定される。
【0185】
ナフタレン環にアセトキシ基が直接結合しているので、O=C=CH2(Mw=42)が脱離して、2-ヒドロキシ-1-アセチルナフタレン(Mw=186)及び6-ヒドロキシ-1-アセチルナフタレン(Mw=186)と同じく、m/z=186のピークが検出されたと考えられる。
【0186】
アセチル基を有しているために、さらに、CH3基(Mw=15)が脱離して、m/z=171が顕著に検出されていると考えられる。さらに、C=O基(Mw=28)が脱離して、m/z=143が検出されていると考えられる。
【0187】
実施例1~4及び比較例1~2の粉末状の各液晶ポリエステル(C1)~(C6)の熱抽出GC-MS分析で得られたトータルイオンクロマトグラムにおいて、保持時間が11.5~12.5minの範囲に検出されたGCピークのうち、最も大きなGCピーク(ピークトップの保持時間:12.03~12.04min)には、いずれも、MSスペクトルにm/z=228,186,171,143の主要ピークが検出された。保持時間が11.5~12.5minの範囲の他のGCピークは、いずれも、MSスペクトルにm/z=228,186,171,143の主要ピークを有していなかった。
【0188】
実施例1~4及び比較例1~2の各液晶ポリエステルの熱抽出GC-MS分析の結果から、原料モノマーである6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(Mw=188)である可能性のある成分として、m/z=188を含む、保持時間11.8minの成分が検出された。しかし、その含有量にはポリマー着色との相関がなかった。
実施例1~4及び比較例1~2の各液晶ポリエステルのいずれからも、SIMモードの分析で、原料モノマーである6-アセトキシ-2-ナフトエ酸(Mw=230)に該当する成分は検出されなかった。
【0189】
(液晶ポリエステルの熱抽出物中の前記不純物成分の相対含有量の算出方法)
対照とする標準試料として、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルを用いて、次の算出方法により、MSスペクトルのチャートにm/z=228,186,171,143の主要ピークを有し、トータルイオンクロマトグラムの保持時間が11.5~12.5minの範囲に検出されるGCピークの不純物成分の、各液晶ポリエステルの質量に対する相対含有量を定量した。
【0190】
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルをアセトンに溶解させ各水準の濃度の標準試料アセトン溶液を調製した。標準試料アセトン溶液を熱抽出GC-MS装置用の測定カップに注入し、300℃に設定した熱分解加熱炉に15分間挿入し、熱抽出を行った。熱抽出後、得られた成分のGC-MS分析を行った。
【0191】
図3は、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルを熱抽出GC-MS分析したときの、トータルイオンクロマトグラム(上)、及び、MSスペクトル(下)である。
トータルイオンクロマトグラムにおいて保持時間11.92minに、m/z=202,171,143,115の主要ピークを有するMSスペクトルが検出された。
また、このとき、対照とする標準試料の6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルの測定カップへの注入量(A
2)[μg]に対する、トータルイオンクロマトグラムにおける保持時間11.92minのピーク面積値S
2の比(S
2/A
2)を、最小二乗法により求めると、2.0×10
7であった。
【0192】
例えば、実施例1の液晶ポリエステル(C1)を20.2mg(秤量値:A1)秤量して、熱抽出GC-MS分析をしたとき、前記不純物成分のピーク面積値S1は6833345であった。したがって、前記不純物成分の相対含有量X1[μg]は、次式(1)から0.342μgと算出され、前記不純物成分の相対含有量(X2)[ppm]は、次式(2)から、前記液晶ポリエステルの質量に対して、17ppmと算出された。
X1=S1×A2/S2 ・・・(1)
X2=S1×A2/S2/A1×1000 ・・・(2)
【0193】
それぞれ、3回の熱抽出GC-MS分析から、同様にして、実施例1~4及び比較例1~2の粉末状の各液晶ポリエステル(C1)~(C6)を熱抽出GC-MS分析したときの、前記不純物成分の相対含有量(X2)[ppm]を求め、平均値を算出した。結果を、表1に示した。
【0194】
実施例1~4では、前記不純物成分の相対含有量が、液晶ポリエステルの質量に対して、50ppm以下であったのに対して、比較例1~2では、前記不純物成分の相対含有量が、液晶ポリエステルの質量に対して、50ppmを超えていた。
【0195】
実施例1~4、比較例1~2の結果から、前記不純物成分の相対含有量は、液晶ポリエステルの着色の度合いと強い相関があることが見出された。すなわち、前記不純物成分の相対含有量が少ないほど、液晶ポリエステルの着色が抑えられ、液晶ポリエステルの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値は大きくなり、a*値は小さくなる傾向にあった。
【0196】
<液晶ポリエステルフィルムの製造>
(液晶ポリエステル液状組成物の調製)
実施例1~4及び比較例1~2の粉末状の各液晶ポリエステル(C1)~(C6)8質量部を、N-メチルピロリドン(沸点(1気圧)204℃)92質量部に加え、窒素雰囲気下、140℃で4時間攪拌して、それぞれ、液晶ポリエステル液状組成物を調製した。
【0197】
(液晶ポリエステル液状組成物の粘度測定)
B型粘度計(東機産業株式会社の「TV-22」)を用いて、23℃における液晶ポリエステル液状組成物の粘度を測定した。この液晶ポリエステル液状組成物の粘度を表1に示した。
【0198】
(液晶ポリエステルフィルムの製造)
各液晶ポリエステル液状組成物を、銅箔(三井金属鉱業株式会社製 3EC-VLP 18μm)の粗化面に流延膜の厚さが300μmになるように、マイクロメーター付フィルムアプリケーター(SHEEN社の「SA204」)と自動塗工装置(テスター産業株式会社の「I型」)とを用いて流延して、流延膜を得た。その後、40℃、常圧(1気圧)にて、4時間乾燥することにより、溶媒を部分的に除去して、厚さが300μmの流延膜を得た。さらに、溶媒を除去した流延膜の上から流延膜の厚さが300μmとなるように2回目の流延を行い、40℃、常圧(1気圧)にて、4時間乾燥することにより、溶媒を部分的に除去して、厚さが300μm×2=600μmの流延膜を得た。乾燥後の銅箔付きフィルムをさらに窒素雰囲気下熱風オーブン中で室温から310℃まで4時間で昇温し、その温度で2時間保持する熱処理を行った。その結果、熱処理された銅箔付きフィルムが得られた。この銅箔付きフィルムについて、第二塩化鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去し、単層の液晶ポリエステルフィルムを作製した。それぞれの単層の液晶ポリエステルフィルムの厚さを表1に示した。
【0199】
(液晶ポリエステルフィルムの引張試験)
それぞれの単層の液晶ポリエステルフィルムをJIS K6251に基づき、平行部幅5mm、標線間距離20mmのダンベル状3号形試験片に切り出した。
JIS K7161に準拠して、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフAG-IS)を用いて、5mm/minの引張速度にて引張試験を行った。
【0200】
何れも、明確な降伏点は観測されず、液晶ポリエステルフィルムのフィルムの引張強さ、引張弾性率及び引張強さひずみを求めることができた。結果を表1に示した。
【0201】
(液晶ポリエステルフィルムの色彩値の測定)
得られた単層の液晶ポリエステルフィルムを標準白板上に設置し、測色色差計(日本電色工業株式会社、「ZE-2000」)を用いて、反射モードでL*値、a*値を測定した。測定結果を表1に示した。
【0202】
実施例1~4、比較例1~2の結果から、前記不純物成分の相対含有量は、液晶ポリエステルフィルムの着色の度合いと強い相関があることが見出された。すなわち、前記不純物成分の相対含有量が少ないほど、液晶ポリエステルフィルムの着色が抑えられ、液晶ポリエステルフィルムの色彩値をCIE LAB色空間で評価したとき、L*値は大きくなり、a*値は小さくなる傾向にあった。
【0203】