(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】積層型撮像素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240522BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01L27/146 C
H01L27/146 E
H01L31/10 Z
H01L31/10 D
H01L31/10 H
(21)【出願番号】P 2020131939
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘人
(72)【発明者】
【氏名】堺 俊克
(72)【発明者】
【氏名】相原 聡
(72)【発明者】
【氏名】大竹 浩
(72)【発明者】
【氏名】高木 友望
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-084647(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010262(WO,A1)
【文献】特開2005-311315(JP,A)
【文献】特開2014-107300(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185914(WO,A1)
【文献】特開2013-211291(JP,A)
【文献】特開2015-207594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0233540(US,A1)
【文献】特開平08-315981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0119067(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0182808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方からの光を受光し得る回路基板の上方位置に、受光した該光を光電変換し得る、規則的に配列された画素に対応して形成された有機光電変換膜を画素電極と共通電極とで挟持してなる光電変換部を少なくとも1つ備えた積層型撮像素子であって、
前記少なくとも1つの光電変換部が、当該光電変換部で生じた電荷を独立に読出す画素信号読出部を備え、
前記少なくとも1つの光電変換部において、前記有機光電変換膜を平面内で分離する壁構造を有
し、
前記壁構造が、前記画素中の撮像領域である画素領域の外周に位置する非画素領域に形成されていることを特徴とする積層型撮像素子。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光電変換部が、前記回路基板に最も近い第1層目の光電変換部であることを特徴とする請求項1に記載の積層型撮像素子。
【請求項3】
前記壁構造が、前記画素領域の外縁部から外方に垂直に延び、前記非画素領域内でストライプ状に延在することを特徴とする請求項
1に記載の積層型撮像素子。
【請求項4】
前記壁構造は、前記画素電極が形成されていない領域にストライプ状に形成されるとともに、前記有機光電変換膜を分離する形状とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型撮像素子。
【請求項5】
前記壁構造が前記画素の所定の境界域に配されるとともに、前記壁構造のストライプの間隔が、画素ピッチと同じであるものを含むことを特徴とする請求項
4に記載の積層型撮像素子。
【請求項6】
前記壁構造が前記画素の所定の境界域に配されるとともに、前記壁構造のストライプの間隔は、撮像素子中心位置からの距離が
小さくなる程、拡がるように設定されていることを特徴とする請求項
4または
5に記載の積層型撮像素子。
【請求項7】
前記壁構造が、前記画素電極が形成されていない領域に格子状に形成されるとともに、前記有機光電変換膜を分離する形状とされており、
前記壁構造の上部に、前記共通電極と接続された、他部への接続配線として機能する接続電極を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の積層型撮像素子。
【請求項8】
前記接続電極の膜厚が、前記共通電極の膜厚より大きいことを特徴とする請求項
7に記載の積層型撮像素子。
【請求項9】
前記有機光電変換膜と前記共通電極との合計膜厚が、前記壁構造と前記接続電極との合計膜厚より小さいことを特徴とする請求項
7または
8に記載の積層型撮像素子。
【請求項10】
前記壁構造が、前記画素電極が形成されていない領域に格子状に形成されるとともに、前記有機光電変換膜を分離する形状とされており、
前記共通電極の上部に形成された絶縁膜と、
前記壁構造の上部に、前記絶縁膜を貫通して前記共通電極と導通された、他部への接続配線として機能する接続電極を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の積層型撮像素子。
【請求項11】
前記接続電極が前記画素電極の上部を覆わない構造とされていることを特徴とする請求項
10に記載の積層型撮像素子。
【請求項12】
前記壁構造の格子の間隔が、画素ピッチと同じであるものを含むことを特徴とする請求項
7~11のうちいずれか1項に記載の積層型撮像素子。
【請求項13】
前記壁構造が、下部よりも上部の方が、対応する前記有機光電変換膜側に張り出した2段構造となるように形成されるとともに、該2段構造の該下部の最上部の高さ位置が前記共通電極の上面の高さ位置よりも上方となるように形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型撮像素子。
【請求項14】
請求項1~
13のうちいずれか1項に記載の積層型撮像素子の製造方法であって、
所定のベース上の、各画素内に画素電極と画素信号読出部とを形成し、
前記画素の所定の境界域に沿
い、かつ前記画素中の撮像領域である画素領域の外周に位置する非画素領域に壁構造を形成し、
次に、該壁構造により囲まれる各領域に有機光電変換膜を形成し、
この後、該有機光電変換膜上に共通電極を形成することを特徴とする積層型撮像素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換膜を用いた積層型の撮像素子とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
垂直色分離型の撮像素子は、従来のカラーフィルタを用いた単板式のカラー撮像素子とは異なり、固有の波長域の光を吸収して電荷に変換する光電変換膜を3層(RGB)重ねた構造を備えている。一般に垂直色分離型の撮像素子は、入射光を効率よく利用することができるため、高解像度・高感度な小型カラーカメラへの適用が期待されている。有機光電変換膜を用いた垂直色分離型の撮像素子として、これまで種々のデバイス構造が提案されている。
【0003】
この中で、有機光電変換膜を3層重ね、各有機光電変換膜の画素電極を基板上の読出し回路と接続して動作するデバイス構成が知られている(下記特許文献1を参照)。現在のSi製造プロセスでは微小で高性能な読出し回路を容易に形成できるため、このような技術を用い、RGB各光電変換膜の画素電極から、有機光電変換膜を貫通する貫通電極を通して、Si基板に収容した読出し回路に接続することにより、各画素の信号を読出すことが可能となる。
【0004】
一方、透明な酸化物半導体TFTを各光電変換部に形成し、各々の光電変換部で生じた電荷を独立に読出す手法も提案されている(下記特許文献2、3、4等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-311647号公報
【文献】特開2005-51115号公報
【文献】特許第5102692号公報
【文献】特許第5572108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の技術において、フォトリソグラフィー等によるパターニングを行った場合、特に、有機光電変換膜を上下に貫通する貫通電極を形成する際に、有機光電変換膜が薬品等によりダメージを受けやすく、有機光電変換膜の特性が大幅に劣化するため、有機光電変換膜を厚み方向に貫通する電極を形成することは難しく製造プロセスが確立されていない。
また、特許文献2、3および4に記載の技術によっては、ガラス基板を介して積層する場合、各層にガラス基板を挟むために画素サイズに比べて光電変換部の積層体の厚みが大きくなってしまい、十分な解像度が得られない。そのため、有機光電変換膜を層間絶縁膜を介して積層する構造が実用性の面からも有望視されている。
しかし、有機光電変換膜を層間絶縁膜等の膜を介して直接積層する素子では、特性に優れた酸化物半導体TFTの形成に必要な高温プロセスを行う際に、特に下層の有機光電変換膜程、強い歪が生じ、有機光電変換膜が剥離するという課題があった。
実際に、本願発明者等の行った実験においても、RGB3層の有機光電変換膜を積層すると、特に、1層目の外周部で膜剥がれが生じていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、有機光電変換膜が、積層プロセスでパターニングを行う場合に用いられる薬品等によりダメージを受けることなく、かつ、特性に優れた酸化物半導体であるTFTの形成に必要な高温プロセスを行う際に有機光電変換膜に強い歪が生じるのを防止して、有機光電変換膜の特性劣化および膜剥がれを防止し得る、積層型撮像素子およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基本構造に係る積層型撮像素子は、
上方からの光を受光し得る回路基板の上方位置に、受光した該光を光電変換し得る、規則的に配列された画素に対応して形成された有機光電変換膜を画素電極と共通電極とで挟持してなる光電変換部を少なくとも1つ備えた積層型撮像素子であって、
前記少なくとも1つの光電変換部が、当該光電変換部で生じた電荷を独立に読出す画素信号読出部を備え、
前記少なくとも1つの光電変換部において、前記有機光電変換膜を平面内で分離する壁構造を有し、
前記壁構造が、前記画素中の撮像領域である画素領域の外周に位置する非画素領域に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、上記基本構造の積層型撮像素子において、
前記少なくとも1つの光電変換部が、前記回路基板に最も近い第1層目の光電変換部であることが好ましい。
また、上記積層型撮像素子において、
前記壁構造が、前記画素領域の外縁部から外方に垂直に延び、前記非画素領域内でストライプ状に延在するものとすることができる。
【0010】
また、本発明に係る第2の積層型撮像素子は、上記基本構造の積層型撮像素子において、
前記壁構造は、前記画素電極が形成されていない領域にストライプ状に形成されるとともに、前記有機光電変換膜を分離する形状とされていることを特徴とするものである。
また、上記第2の積層型撮像素子において、
前記壁構造が前記画素の所定の境界域に配されるとともに、前記壁構造のストライプの間隔が、画素ピッチと同じであるものを含むことが好ましい。
また、上記第2の積層型撮像素子において、
前記壁構造が前記画素の所定の境界域に配されるとともに、前記壁構造のストライプの間隔は、撮像素子中心位置からの距離が小さくなる程、拡がるように設定されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る第3の積層型撮像素子は、上記基本構造の積層型撮像素子において、
前記壁構造が、前記画素電極が形成されていない領域に格子状に形成されるとともに、前記有機光電変換膜を分離する形状とされており、
前記壁構造の上部に、前記共通電極と接続された、他部への接続配線として機能する接続電極を備えたことを特徴とするものである。
また、上記第3の積層型撮像素子において、
前記接続電極の膜厚が、前記共通電極の膜厚より大きいことが好ましい。
また、上記第3の積層型撮像素子において、
前記有機光電変換膜と前記共通電極との合計膜厚が、前記壁構造と前記接続電極との合計膜厚より小さいことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る第4の積層型撮像素子は、上記基本構造の積層型撮像素子において、
前記壁構造が、前記画素電極が形成されていない領域に格子状に形成されるとともに、前記有機光電変換膜を分離する形状とされており、
前記共通電極の上部に形成された絶縁膜と、
前記壁構造の上部に、前記絶縁膜を貫通して前記共通電極と導通された、他部への接続配線として機能する接続電極を備えたことを特徴とするものである。
また、上記第4の積層型撮像素子において、
前記接続電極が前記画素電極の上部を覆わない構造とされていることが好ましい。
また、上記第3または上記第4の積層型撮像素子において、
前記壁構造の格子の間隔が、画素ピッチと同じであるものを含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る第5の積層型撮像素子は、上記基本構造の積層型撮像素子において、
前記壁構造が、下部よりも上部の方が、対応する前記有機光電変換膜側に張り出した2段構造となるように形成されるとともに、該2段構造の該下部の最上部の高さ位置が前記共通電極の上面の高さ位置よりも上方となるように形成されてなることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明に係る積層型撮像素子の製造方法は、上述したいずれかの積層型撮像素子を製造する方法であって、
所定のベース上の、各画素内に画素電極と画素信号読出部とを形成し、
前記画素の所定の境界域に沿い、かつ前記画素中の撮像領域である画素領域の外周に位置する非画素領域に壁構造を形成し、
次に、該壁構造により囲まれる各領域に有機光電変換膜を形成し、
この後、該有機光電変換膜上に共通電極を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る積層型撮像素子は、光電変換部が、その光電変換部で生じた電荷を独立に読出す画素信号読出部を備えるタイプであり、この光電変換部において、有機光電変換膜を平面内で分離する壁構造を有する構成とされている。
有機光電変換膜(光電変換部)を層間絶縁膜等の膜を介して直接積層する素子では、特性に優れた酸化物半導体TFTの形成に必要な高温プロセスを行う際に、有機光電変換膜(光電変換部)、特に下層の有機光電変換膜(光電変換部)に強い歪が生じ、有機光電変換膜(光電変換部)が剥離することが問題となっているが、本発明の積層型撮像素子の如く、有機光電変換膜を、壁構造によって、平面内で分離するようにすることで、高温プロセスを実施する際にも、有機光電変換膜(光電変換部)にかかる圧力を分散し、強い歪の発生を阻止することができる。
したがって、本発明の積層型撮像素子およびその製造方法によれば、従来の貫通電極を形成する場合に生じていた有機光電変換膜の特性劣化を抑制しつつ、有機光電変換膜(光電変換部)の剥離を防止することが可能となり、良好な積層型撮像素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係る積層型撮像素子の概念的な構造を示す概略縦断面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る積層型撮像素子の画素領域における画素の構成を示す概略縦断面図である。
【
図3】実施例1に係る積層型撮像素子の有機層分離壁を示す平面図である((a)はストライプ状の有機層分離壁、(b)は格子状の有機層分離壁)。
【
図4】
図3に示す非画素領域における有機層分離壁のパターン例を示す概略平面図である((a)は放射状パターンの例、(b)は同心円状パターンの例、(c)は(a)と(b)を組合わせたパターンの例、(d)は格子状パターンの例)。
【
図5】
図4に示す有機層分離壁のパターン例の変型例を示す概略平面図である((a)は有機層分離壁が断続的とされたパターンの例、(b)は有機層分離壁がドット状に配列されたパターンの例)。
【
図6】実施例1の変型例((a)~(c))に係る積層型撮像素子の、画素領域および非画素領域における素子構造を示す縦断面図である。
【
図7】実施例1に係る積層型撮像素子の、層構造の種々の例((a)~(d))を示す概略縦断面図である。
【
図8A】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その1)を示す概略図である((a)~(d))。
【
図8B】実施例1に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その2)を示す概略図である((e)~(g))。
【
図9A】本発明の実施例2に係る積層型撮像素子の概念的な構造を示す概略縦断面図である。
【
図9B】本発明の実施例2に係る積層型撮像素子の概念的な構造を示す概略横断面図である。
【
図10】実施例2に係る積層型撮像素子の有機層分離壁の配置態様((a)~(c))を示す概念的な平面図(一部断面図)である。
【
図11】実施例2の変型例((a)~(d))に係る積層型撮像素子の層構造を示す概念的な断面図である。
【
図12A】実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その1)を示す概略図である((a)~(f))。
【
図12B】実施例2に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その2)を示す概略図である((g)~(k))。
【
図13】実施例2の変型例に係る積層型撮像素子の製造方法の一部工程を示す概略図である((a)~(e))。
【
図14A】本発明の実施例3に係る積層型撮像素子の概念的な構造を示す概略縦断面図である。
【
図14B】本発明の実施例3に係る積層型撮像素子の概念的な構造を示す概略横断面図である。
【
図15】実施例3に係る積層型撮像素子の有機層分離壁の配置態様((a)、(b))を示す概念的な平面図(一部断面図)である。
【
図16】実施例3の変型例((a)~(d))に係る積層型撮像素子の層構造を示す概念的な断面図である。
【
図17A】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その1)を示す概略図である((a)~(e))。
【
図17B】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その2)を示す概略図である((f)~(j))。
【
図17C】実施例3に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その3)を示す概略図である((k)~(n))。
【
図18】実施例3の変型例に係る積層型撮像素子の製造方法の一部工程を示す概略図である(a)~(e))。
【
図19A】本発明の実施例4に係る積層型撮像素子の概念的な構造を示す概略縦断面図である。
【
図19B】本発明の実施例4に係る積層型撮像素子の概念的な構造を示す概略横断面図である。
【
図20】実施例4に係る積層型撮像素子の、下部電極と接続電極の配設位置関係を示す概念的な平面図である。
【
図21】実施例4に係る積層型撮像素子の有機層分離壁の配置態様((a)、(b))を示す概念的な平面図(一部断面図)である。
【
図22】実施例4の変型例((a)~(d))に係る積層型撮像素子の層構造を示す概念的な断面図である。
【
図23A】実施例4に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その1)を示す概略図である((a)~(e))。
【
図23B】実施例4に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その2)を示す概略図である((f)~(j))。
【
図23C】実施例4に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その3)を示す概略図である((k)~(n))。
【
図24A】本発明の実施例5に係る積層型撮像素子の概念的な構造を示す概略縦断面図である。
【
図24B】本発明の実施例5に係る積層型撮像素子の概念的な構造を示す概略横断面図である。
【
図25A】実施例5に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その1)を示す概略図である((a)~(d))。
【
図25B】実施例5に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その2)を示す概略図である((e)~(h))。
【
図25C】実施例5に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その3)を示す概略図である((i)~(l))。
【
図25D】実施例5に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その4)を示す概略図である((m)~(p))。
【
図25E】実施例5に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(その5)を示す概略図である((q)、(r))。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る積層型撮像素子およびその製造方法について図面を用いて説明する。すなわち、本実施形態に係る積層型撮像素子およびその製造方法を、実施例1~5により具体的に説明するが、いずれも、光電変換部が、その光電変換部で生じた電荷を独立に読み出す薄膜トランジスタ(TFT)を備える構成を前提としており、この光電変換部において、有機光電変換膜を平面内で分離する有機層分離壁を有する構成とされている。
【0018】
<実施例1>
図1は実施例1に係る積層型撮像素子1の断面図を示すものである。ただし、
図1は、実施例1に係る積層型撮像素子1の積層構造について、説明の便宜のため概念的に示すものであるから、実際の積層型撮像素子1とは、整合していない部分がある(
図9A、
図14A、
図19Aおよび
図24Aの積層型撮像素子101、201、301および401において同じ)。
【0019】
(積層型撮像素子の構成)
図1(
図2を参照)に示すように、本実施例では、回路基板2上において、下部電極21、31、41と上部電極24、34、44の間に有機光電変換膜20、30、40が挟持されてなる、第1光電変換部(第1層)20A、第2光電変換部(第2層)30A、および第3光電変換部(第3層)40Aがこの順に積層された3層構造の撮像素子(RGBカラー撮像素子を想定)1が示されている。また、本実施例の変更態様としては、有機光電変換膜を1層、2層、さらには4層以上用いた撮像素子が挙げられる。このような変更態様に係る撮像素子は、実施例1と同様に、後述する実施例2~5についても同様に適用することができる。
【0020】
また、上記有機光電変換膜20、30、40は、暗電流(光が入射されていない時に出力される電流)の低減や有機光電変換膜の量子効率向上のために、電子輸送材料、正孔輸送材料、電子注入阻止(電子ブロッキング)材料、および正孔注入阻止(正孔ブロッキング)材料等を、有機光電変換材料に混合または積層することにより備えてもよい。ここではそれら全てを含めて有機光電変換膜20、30、40として表現するものとする。
【0021】
上記回路基板2には、AD変換回路、DA変換回路、およびメモリ等の画素電極から電荷を読み出し、信号処理するための回路やその周辺回路、CMOSイメージセンサ等(ここではそれらの総称として読出し回路と称するものとする)が形成されており、Si基板を用いることで微細化が可能である。回路基板2はSiに限られるものではなく、種々の材料を適用することができ、例えばガラス基板上に酸化物半導体からなるTFT等を設けるように構成すれば、透明な撮像素子とすることも可能である。なお、本発明では、読出し回路が形成されているか否かに関わらず、その上に光電変換部を形成するための土台となる部分を、回路基板2と称するものとする。
【0022】
前述したように、回路基板2上に、第1光電変換部(第1層)20A、第2光電変換部(第2層)30A、および第3光電変換部(第3層)40Aが、順次積層された構造とされており、第3光電変換部40Aの上部には保護層75が設けられており、各有機光電変換膜20、30、40の劣化等を防ぐ構造とされている。各光電変換部20A、30A、40Aの間には互いに絶縁した状態とするための層間絶縁膜27、37が配されている。
【0023】
本実施例に係る積層型撮像素子1は、撮像面において実際に映像を検出するセンサとして機能する画素領域11と、この画素領域11を取り囲む非画素領域12に分けられており、非画素領域12には第1有機光電変換膜20を横方向の小領域に分離する、有機層分離壁25が形成されている。有機層分離壁25の機能や形状については後述する。
【0024】
図2は、上記画素領域11における画素の構成を示すものである。第1~第3の光電変換部20A、30A、40Aは、各々に対応する、第1~第3有機光電変換膜20、30、40、第1~第3下部電極(画素電極)21、31、41、第1~第3上部電極(共通電極)24、34、44、および第1~第3薄膜トランジスタ(以下、薄膜トランジスタをTFTとも称する)28、38、48を備えており、第1~第3下部電極21、31、41と第1~第3上部電極24、34、44との間に電圧を印加し、第1~第3有機光電変換膜20、30、40で発生した電荷が第1~第3下部電極21、31、41を介して、第1~第3TFT28、38、48で読み出され、適宜増幅され信号として取り出される。
【0025】
第1~第3TFT28、38、48は、画素選択TFTや増幅用TFT等、検出方式により複数のTFTを適用することができ、検出方式や画素回路に応じて自由な構成とすることが可能である。
なお、
図2には記載されていないが、配線電極、絶縁膜、キャパシタ等の、一般的な撮像素子に用いられる画素構造は全て本実施例の撮像素子に適用することが可能である。
【0026】
配線電極、下部電極21、31、41、上部電極24、34、44、およびTFT28、38、48のソース・ドレイン電極に用いられる材料としては、金属や導電性ペースト等の、導電性を有する種々の材料を適用することが可能であるが、ITO等の透明な材料を適用すれば、透明な撮像素子を構築することも可能である。
【0027】
TFT28、38、48を構成する半導体材料としては、IGZO、ITZO、ZnO等の酸化物半導体を用いると透明な撮像素子を構成することが可能であるが、有機半導体等既存の材料を適宜用いることが可能である。ただし、2層目以上の半導体材料は、第1層目の第1有機光電変換膜20が劣化しない温度で形成できる材料を選択する必要がある。
【0028】
また全ての光電変換部20A、30A、40Aに有機光電変換膜20、30、40を配設せずともよく、一部は無機材料、有機と無機のハイブリッド材料等で、任意に構成することが可能である。
なお、非画素領域12においては映像を検出する必要がないため下部電極21、31、41等は不要であるが、
図2に示す下部電極21、31、41等の構成を非画素領域に形成しても構わない。
【0029】
図3は本実施例に係る積層型撮像素子1の平面構成を示すものであり、第1光電変換部20Aに形成される第1有機層分離壁25の基本パターン例を示している。ここでは画素形状が矩形状とされ、中央部の矩形の領域が画素領域11とされ、その周辺部は全て非画素領域12とされている。
【0030】
図3において、非画素領域12の右上の矩形の領域を後述の説明用に非画素領域(角)と称する。同図の非画素領域12には、第1有機層分離壁25が線で描かれており、
図3(a)における第1有機層分離壁25はストライプ状であることが、また、
図3(b)における第1有機層分離壁25は格子状であることが各々示されている。
【0031】
図4(a)、(b)、(c)、(d)は、
図3に示す非画素領域(角)に形成される有機層分離壁の形状の例を各々示すものである。
すなわち、放射線状の有機層分離壁25a(
図4(a))、同心円状の有機層分離壁25b(
図4(b))、放射線と同心円を組み合わせた形状の有機層分離壁25c(
図4(c))、さらには格子状の有機層分離壁25d(
図4(d))が一例として挙げられるが、その他の種々の形状のものを選択することも勿論可能である。
【0032】
上記第1有機層分離壁25は第1光電変換部20Aの第1有機光電変換膜20を細かい領域に区切る機能を有している。上層(第2層以上)の光電変換部30A、40A内にTFT等を形成する際に加熱プロセスが施されるが、第1有機光電変換膜20の面積が大きいと周辺部に熱による歪みが集中するため、積層の段数が増える程、下層の有機光電変換部20A等に周辺部からの剥離が発生する状態となる。
【0033】
第1有機光電変換膜20が第1有機層分離壁25により空間的に区切られた構成とされることで、加熱プロセスに伴う第1光電変換部20Aの歪が緩和されるため、第1光電変換部20Aが剥離することなく積層構造の撮像素子を製造することが可能となる。
【0034】
図3および
図4では連続した線状の壁構造としているが、
図5(a)に示すように、壁は途中で区切れた、断続形状とされていてもよい。
また、例えば、
図5(b)に示すように、柱状(円柱や四角柱)の壁構造を、ドット形状を列状に配置することによって形成してもよく、これにより、第1光電変換部20Aの歪を緩和することが可能である。
【0035】
上述したように、第1有機層分離壁25の形状や配置は、第1光電変換部20Aの熱プロセスで生じる剥離を生じさせない範囲で任意に決めることが可能であるが、基本的には第1有機光電変換膜20に比べて密度や線幅(円柱の場合は直径)が小さいことが望ましい。
【0036】
第1有機層分離壁25をフォトリソグラフィー法等で容易に形成するためには、線幅は1μm以上とすることが好ましく、10μm~100μm程度の範囲とすれば製造が容易となるので、さらに好ましい。
【0037】
また、第1有機層分離壁25は非画素領域12に高密度で分散させることで効果的に剥離を抑制することが可能となるため、線幅は1mm以下とすることが好ましい。
【0038】
なお、第1光電変換部20Aの剥離を防止するためには、第1有機光電変換膜20を区切る領域はなるべく狭い方が好ましく、1mm以下であることが望ましいが、剥離が生じにくい材料を用いた場合には、1mm以上の広い間隔とすることも可能である。
【0039】
なお、一般には、第1有機層分離壁25は絶縁性を有する無機材料や有機材料、それらのハイブリッド材料により形成することが好ましいが、特に絶縁性が必要でない場合には、導電性材料を用いても構わない。特に後述の格子状の有機層分離壁を適用した場合には、導電性材料を適用すれば外部に配線を取り出すことが容易となる。
【0040】
第1有機層分離壁25の高さは、第1有機光電変換膜20を適切に分割するためには、第1有機光電変換膜20の膜厚より大きく設定する。その際、第1上部電極24を外部に取り出せるような構成にする必要がある。例えば第1有機層分離壁25がストライプ状に形成されている場合には、第1上部電極24からの配線をストライプ方向に延びる配線とすることができるため、回路基板2の端部から容易に外部電源や回路基板2上の電極に接続することが可能である。
また
図5(a)、(b)に示すような第1有機層分離壁25e、fを形成した場合にも、第1上部電極24は第1有機層分離壁25e、fによって完全に分離される状態とはならないため、上記の場合と同様に外部に配線を取り出すことが可能である。
【0041】
一方、
図4(d)に示すような格子状の有機層分離壁25を形成した場合には、第1上部電極24を外部に取り出すような特別の構成が必要となる。
【0042】
図6(a)は、画素領域11と非画素領域12の両領域に亘る素子構造を示すものである。第1有機光電変換膜20と第1上部電極24が第1有機層分離壁25により格子状に囲まれる構成とされた場合、第1上部電極24は各第1有機層分離壁25で分断されており、そのままでは外部に配線を取り出すことができない。その場合、格子の一部を切断し、その各隙間を通じて配線の連続性を持たせる構成、すなわち一部の壁が除去されており完全な格子になっていない構成や、第1有機層分離壁25の上部を導電性部材25´により形成する構成(
図6(b)を参照)、さらには第1層間絶縁膜27にビア95を形成するとともに、信号を外部に取り出すための接続電極(接続配線)26を形成する構成(
図6(c)を参照)等を適用することにより、第1上部電極24を外部電源や回路基板2上の電極に接続させることが可能となる。
【0043】
また有機層分離壁25の高さが、第1有機光電変換膜20と第1上部電極24との合計膜厚とほぼ等しいか、より小さい場合には、後述の
図8(d)の製造プロセスの終了後に、第1有機層分離壁25の上部の第1有機光電変換膜20と第1上部電極24を除去し、第1有機層分離壁25の上部に電極を形成して、第1有機層分離壁25の両側の第1上部電極24を接続する手法を適用することもできる。これにより、第1上部電極24を外部電源や回路基板2上の電極と接続させることが可能となる。
【0044】
また、第1層間絶縁膜27は、一般に絶縁膜として用いられる無機材料、有機材料、あるいは有機・無機ハイブリッド材料等、絶縁性を有するあらゆる材料を適用することが可能である。
【0045】
本実施例においては、3層構造の撮像素子において、第1光電変換部20Aの非画素領域12にのみ有機層分離壁25を適用した例を示しているが、これは上部の各層の形成に加熱プロセスを施す際に、第1層目の第1有機光電変換膜20が剥離し易いことによるものであり、配設位置の態様は、これに限られるものではない。
【0046】
3層構造において、第1層目のみ有機層分離壁25を適用しない場合をはじめ、第1層目と第2層目に有機層分離壁25、35を適用する構成(
図7(a))、3層とも有機層分離壁25、35、45を適用する構成(
図7(b))、第1層目と第3層目に有機層分離壁25、45を適用する構成(
図7(c))、さらには5層構造で全ての非画素領域12の有機光電変換膜20、30、40、50、60に有機層分離壁25、35、45、55、65を適用する構成(
図7(d))等、あらゆる組み合わせに適用することが可能である。
すなわち、全ての第1有機光電変換膜20等に第1有機層分離壁25等を適用する必要はなく、光電変換部20A等の剥離が生じやすい層のみに適用すればよい。
【0047】
また、回路基板2の材料としては、ガラスやシリコン、プラスティック材料等、種々の材質を適用することが可能である。シリコン基板を適用した場合、第1光電変換部20Aの下部にCMOSセンサを形成することが可能であり、その場合、CMOSセンサと、第1光電変換部20Aおよび第2光電変換部30Aとの3層構造とすることで、RGBの各色に対応する積層型の撮像素子を形成することが可能である。またシリコン基板を適用した場合、読出し回路や周辺回路をCMOS製造プロセスにより回路基板2上に直接形成することができる。
【0048】
また、保護層75(
図2を参照)の材料としては、無機材料、有機材料、あるいは有機・無機ハイブリッド材料等、一般に撮像素子に用いられる材料を適用することができる。一般には絶縁材料が用いられるが、耐薬品性や耐熱性に優れたものが用いられる。また、紫外線除去フィルタの機能を有しているものを適用することも有用である。また成膜可能な材料のみならず、接着性の材料を用いて保護フィルムや透明基板等を貼り付ける構成としてもよい。
【0049】
なお、本実施例に係る積層型撮像素子1は、基本的な構成を示すものであり、マイクロレンズ、遮光膜、紫外線除去フィルタ等の、一般的な撮像素子に適用される部材は全て組み込むことが可能である。また、本実施例の積層型撮像素子1は、センサやカメラ等の、種々の撮像装置への適用が可能である(以下の実施例に係る積層型撮像素子についても同様である)。
【0050】
(製造方法)
次に、実施例1に係る積層型撮像素子1の製造方法について説明する。各工程で行われる加工技術自体は、一般に半導体製造プロセスで行われている汎用的な加工技術を用いて形成することが可能である。
【0051】
図8Aおよび
図8Bに示すように、まず、回路基板2上の画素領域11に第1TFT28と第1下部電極21を形成する(
図8A(a))。
図8Aおよび
図8Bにおいては、画素領域11の1画素のみを示すようにしている。また図では省略されているが、配線電極やTFTのソース/ドレイン電極等、一般に撮像素子に用いられる画素回路や周辺回路も回路基板2上に形成される。これらは汎用的な半導体製造プロセスで形成されるため詳細は省略する。
【0052】
次に、
図8A(b)に示すように、非画素領域12に第1有機層分離壁25を形成する。ここで第1有機層分離壁25は、好適な材料を、その材料に適した成膜手法(例えば塗布法、スパッタ法、蒸着法等の一般的な成膜技術)で形成した後、フォトリソグラフィー法やレーザー描画法等でエッチングすることによりパターニングして形成される。あるいは、(ナノ)インプリント法や印刷技術により、第1有機層分離壁25を直接、回路基板2上に形成することも可能である。これらは第1有機層分離壁25を形成する材料に応じて、任意に選択することができる。
【0053】
続いて、第1有機光電変換膜20を、画素領域11および非画素領域12に成膜する(
図8A(c))。
この成膜手法は、第1有機光電変換膜20を構成する材料に応じて任意に選択することができ、例えば蒸着法や塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)により形成される。また塗布成膜を行った際には、必要に応じて加熱・乾燥プロセスを適用することも可能である。
【0054】
次に
図8A(d)に示すように、第1有機光電変換膜20の上部に第1上部電極24を成膜する。第1上部電極24は金属や有機導電性材料、有機・無機ハイブリッド材料等を用いることが可能であり、一般には透明であることが望ましいが、各々の材料に適した成膜技術により形成される。例えば金属の場合は蒸着法やスパッタ法等の汎用的な種々の成膜手法を適用することが可能であるが、第1有機光電変換膜20の材料にダメージを与えないような成膜法を適用する必要がある。塗布形成が可能な材料の場合は、一般的な塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)を適用することが可能である。
【0055】
以上で、第1層目の第1光電変換部20Aの形成工程が終了するが、この後、第2層目の形成工程に入る前に、下記
図8B(e)に示す処理がなされる。
すなわち、
図8B(e)に示すように、第1上部電極24の上部に第1層間絶縁膜27を形成する。第1層間絶縁膜27は材料に応じて、既存の成膜技術を任意に用いることが可能である。一般には蒸着法やスパッタ法、CVD法、ALD法、塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0056】
続いて、第1有機層分離壁25の上部に残された、第1有機光電変換膜20、第1上部電極24、および第1層間絶縁膜27を除去する(
図8B(f))。ここでは第1有機光電変換膜20を溶液等で除去することにより、その上の第1上部電極24および第1層間絶縁膜27も容易に除去することが可能である(リフトオフ)。なお、画素領域11の第1有機光電変換膜20は第1層間絶縁膜27で保護されているため、この工程でダメージが生じない。
【0057】
最後に第1層間絶縁膜27を、形成済みの第1層間絶縁膜27の上部に重ねて形成することにより、表面を平坦化する(
図8B(g))。なお、
図8B(e)と
図8B(g)に示す第1層間絶縁膜27は同じ材料であっても、異なる材料であっても構わない。必要に応じて選択することが可能である。
【0058】
また、第1上部電極24が画素領域11の第1有機光電変換膜20の保護層としての機能を有する場合は、
図8B(e)のプロセスを省略しても構わない。また第1有機層分離壁25の高さは第1有機光電変換膜20の厚みより大きければ、その高さは任意に決めてよい。
【0059】
なお、第1光電変換部20Aの上方に積層する第2層以上の光電変換部30A等において、
図8A、
図8Bと同様な構造、すなわち、有機光電変換膜が用いられ、かつ非画素領域12に有機層分離壁が形成される場合には、
図8A、
図8Bに示すプロセスと同様のプロセスを用いて積層すればよい。
【0060】
また、有機光電変換膜が用いられ、かつ非画素領域12に有機層分離壁が形成されない場合には、有機層分離壁の形成に関わる各種プロセス(
図8A(b)、
図8B(f)、
図8B(g))を省略し、その他は
図8A、
図8Bに示すプロセスと同様の成膜プロセスを用い、有機光電変換膜、上部電極、層間絶縁膜を適宜積層することで形成が可能である。画素電極や配線電極、TFT等の形成も同様の技術を適用することで形成できる。
【0061】
また、第2層以上の光電変換部30A等において、無機光電変換膜を用いた光電変換層を形成する場合も、上述した非画素領域12に有機層分離壁を形成しない有機光電変換膜を適用した光電変換部の製造プロセスと基本的には同様のプロセスで形成することが可能である。ただし、無機光電変換膜の形成に加熱プロセスが必要な場合には、第1層目の第1有機光電変換膜20にダメージを与えない温度に留める必要がある。
【0062】
なお、
図1および
図2に示す最上部の光電変換部40Aの保護層75は、保護層75を形成する材料(有機材料、無機材料、有機・無機ハイブリッド材料等)に応じて任意の成膜技術を適用することができる。成膜技術としては、蒸着法やスパッタ法、CVD法、ALD法、塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また保護層75として保護フィルムや透明基板等を貼り付ける構成とする場合は、接着性の樹脂等を製膜した後に透明基板や保護フィルムを貼り付けてもよいし、接着剤付きの保護フィルムを直接貼り付けてもよい。
【0063】
<実施例2>
図9Aおよび
図9Bは実施例2に係る積層型撮像素子101の縦断面図および横断面図を示すものであり、
図9Aの断面は
図9Bのa-a’線に沿って切断した断面を表すものである。
本実施例は上記実施例1と構成が類似しており、第1有機層分離壁125の配設位置および形状は異なるが、その余は上記実施例1の積層型撮像素子1と各部材が略同様に構成されている。したがって、上記実施例1の部材に対応する本実施例の部材については、上記実施例1の部材に付した符号に100を加えた符号を付し、構成が同様のものはその詳しい説明を省略する場合がある。
【0064】
(積層型撮像素子の構成)
本実施例では、回路基板102上において、下部電極121、131、141と上部電極124、134、144の間に有機光電変換膜120、130、140が挟持されてなる、第1光電変換部(第1層)120A、第2光電変換部(第2層)130A、および第3光電変換部(第3層)140Aがこの順に積層された3層構造の撮像素子(RGBカラー撮像素子を想定)101が示されている。
【0065】
上記有機光電変換膜120、130、140、下部電極121、131、141、上部電極124、134、144、および上記回路基板102については、上記実施例1における有機光電変換膜20、30、40、下部電極21、31、41、上部電極24、34、44、および上記回路基板2と各々同様に構成されており、上記回路基板102上に上記有機光電変換膜120、130、140が順次積層される様子も上記実施例1と同様に構成されている。
また、第1~第3の光電変換部120A、130A、140A、および第1~第3TFT128、138、148についても、上記実施例1における第1~第3の光電変換部20A、30A、40A、および第1~第3TFT28、38、48と同様に構成されている。
【0066】
本実施例においては、有機光電変換膜120、130、140を用いた光電変換部120A、130A、140A内には、下部電極121、131、141が形成されていない領域(画素の所定の境界領域)に第1有機層分離壁125がストライプ状に形成されている。
図9Bは画素ピッチと同じ間隔で形成されたストライプ状の第1有機層分離壁125が形成されている例を示している。即ちa-a’線と平行に並んだ画素は第1有機層分離壁125で区切られており、第1有機層分離壁125はa-a’線に垂直となる方向に直線状に形成されている。
【0067】
第1光電変換部120Aの第1有機光電変換膜120は、第1有機層分離壁125によりストライプ状の領域に分割されるため、本実施例に係る積層型撮像素子101の製造プロセスにおいて第1有機光電変換膜120の耐熱性を確保する(第1層の膜剥がれを防止する)ことが可能となる。
【0068】
具体的には、上層(第2層以上)の有機光電変換膜130等には、光電変換部130A内のTFT等を形成する際に加熱処理が施されるが、有機光電変換膜130等の面積が大きい程、また、積層数が増加する程、特に下層の有機光電変換膜への圧力が増加するため、膜剥離が発生する。本実施例のように、第1有機光電変換膜120が第1有機層分離壁125により空間的に区切られた構成とすることで、加熱プロセスに伴う第1有機光電変換膜120の歪が緩和されるため、第1光電変換部120Aの剥離を抑制しつつ撮像素子101の積層構造を実現することが可能となる。
【0069】
また上述のとおり、光電変換部120A等を多段に積層する場合、第1層では第1有機光電変換部120Aの剥離が生じやすいため、第1層に有機層分離壁125を適用すると効果的である。
また第1有機層分離壁125の間隔は、
図10(a)に示すように画素ピッチと等しく設定してもよく、センサ(撮像領域)の周辺部では中央付近と比べて第1有機層分離壁125の間隔を相対的に小さくする形態とすることも可能である。
【0070】
一般には加熱による歪みは、周辺部に近づく程、影響を受けるので、
図10(b)に示すように周辺部に近づく程、第1有機層分離壁125の間隔を小さくすることにより、剥離防止の効果を大きくすることができる。
同様の目的で、
図10(c)に示すように、周辺部にストライプ状の第1有機層分離壁125を追加する構造(ストライプが中央部で途切れた構造)とすることも可能である。
【0071】
なお第1有機層分離壁125は微細な構造のため、間隔をより細かくすると製造工程においてパターン不良が生じる可能性が高くなる。そのため、
図10(b)および
図10(c)のように中央部の間隔を広く設定することにより、パターン不良の発生確率を低くすることができ、歩留まり向上にも有利となる。何れにしても、有機光電変換膜120等における、熱プロセスに起因する剥離を生じさせない範囲であれば、ストライプ状の第1有機層分離壁125の配設位置を任意に決めることが可能である。
【0072】
また、第1有機層分離壁125の線幅は、第1下部電極121に重ならないように配することができるのであれば任意に決めることができるが、基本的には画素サイズに依存する。例えば画素サイズが5μm角で画素電極が4μm角であるときは、第1有機層分離壁125の線幅は1μm未満とする必要がある。ただし、線幅があまりにも狭いと形成が困難となり、また製造プロセスにおいて第1有機光電変換膜120の分離が難しくなるため、画素サイズが小さいときには、可能な限り線幅を大きく設定することが望ましい。上記の例では、100nm以上であることが好ましく、500nm以上であることがさらに好ましい。
【0073】
なお、第1有機層分離壁125をフォトリソグラフィー法等で形成することが可能であるが、線幅が小さくなる場合は、電子線描画やナノインプリンティング法を適用することができる。製造方法は第1有機層分離壁125の材料やピッチにより任意に選択することが可能である。なお、第1有機層分離壁125は絶縁性を有する無機材料や有機材料、それらのハイブリッド材料等、形状や線幅等に応じて適切な材料を選択することが可能である。
【0074】
本実施例では、3層構造の撮像素子において、第1光電変換部120Aにのみ第1有機層分離壁125を適用した例を示しているが、これは上部の各層の形成に加熱プロセスを施す際に、第1層目の光電変換部120Aにおける第1有機光電変換膜120が一番剥離し易いことによるものであるが、有機層分離壁125等の配設位置の態様はこれに限られるものではない。
【0075】
例えば、3層構造において、第1層目の第1光電変換部120Aに第1有機層分離壁125を、さらに第2層目の第2光電変換部130Aに第2有機層分離壁135を、各々形成する撮像素子101aの構成(
図11(a))、第1層目の第1光電変換部120Aに第1有機層分離壁125を、第2層目の第2光電変換部130Aに第2有機層分離壁135を、さらに第3層目の第3光電変換部140Aに第3有機層分離壁145を、各々形成する撮像素子101bの構成(
図11(b))、第1層目の第1光電変換部120Aに第1有機層分離壁125を、さらに第3層目の第3光電変換部140Aに第3有機層分離壁145を、各々形成する撮像素子101cの構成(
図11(c))とすることが可能である。
【0076】
また、3層以外の層構造において、任意の層の光電変換部に有機層分離壁を形成することが可能であり、例えば、
図11(d)に示すように、5層構造の撮像素子101dにおいて、全ての光電変換部120A、130A、140A、150A、160Aに有機層分離壁125、135、145、155、165を形成する構成とすることもできる。
要は、有機光電変換膜の剥離が生じやすい層に重点的に適用すればよい。
【0077】
なお、上述の配線電極、下部電極121、131、141、上部電極124、134、144、TFTのソース・ドレイン電極に用いられる材料としては、上記実施例1と同様である。
【0078】
また、各上部電極124、134、144はストライプ状に延びており、ストライプの延びる方向に配線を取り出すことができる。したがって、各上部電極124、134、144から、隣接する第1有機層分離壁125との間の領域(ここでは便宜的に画素エリアと称する)に沿って、配線を通すことができるので、この画素エリアの外側に位置する回路基板2や外部電極と容易に接続させることができる。
【0079】
これにより、各々の光電変換部120A、130A、140Aにおける、有機光電変換膜120、130、140に、所定の電圧を印加することが可能である。なお、上部電極124、134、144としては、透明な材料を適用することが望ましい。
【0080】
また、下部電極121、131、141、TFT128、138、148等への配線電極は、対応する有機層分離壁125、135、145の下部に形成することが可能である。これにより、画素の開口率を高めて撮像素子101の感度の向上を図ることができる。
なお、TFTを構成する半導体材料、および有機光電変換膜120、130、140を構成する材料としては、実施例1と同様である。
【0081】
また、層間絶縁膜127、137、回路基板102および保護層175を構成する材料としても、実施例1と同様であるので、ここでは省略する。
【0082】
(製造方法)
次に、実施例2に係る積層型撮像素子101の製造方法について説明する。各工程で行われる加工技術自体は、一般に半導体製造プロセスで行われている汎用的な加工技術を用いて形成することが可能である。
【0083】
図12Aおよび
図12Bに示すように、まず、回路基板102上の画素領域11に第1薄膜トランジスタ(TFT)128と第1下部電極121を形成する(
図12A(a))。
図12A、
図12Bでは、撮像素子の2画素分の領域を示しており有機層分離壁125の間隔は画素ピッチとされている。また図では省略されているが、配線電極やTFTのソース/ドレイン電極等、一般に撮像素子に用いられる画素回路や周辺回路も回路基板102上に形成される。これらは汎用的な半導体製造プロセスで形成されるため詳細は省略する。
【0084】
次に、
図12A(b)に示すように、回路基板102上の第1下部電極121が形成されていない、画素の境界部分に第1有機層分離壁125を構成する材料を成膜する。ここで第1有機層分離壁125は、好適な材料を、その材料に適した成膜手法(例えば塗布法、スパッタ法、蒸着法等の一般的な成膜技術)で形成した後、フォトリソグラフィー法やレーザー描画法等でエッチングすることによりパターニングして形成される。あるいは(ナノ)インプリント法や印刷技術により、第1有機層分離壁125を直接、回路基板102上に形成することも可能である。これらは第1有機層分離壁125の形成材料に応じて、任意に選択することができる。
【0085】
続いて、第1有機光電変換膜120を成膜する(
図12A(c))。
この成膜手法は、第1有機光電変換膜120を構成する材料に応じて任意に選択することができる。なお、第1有機光電変換膜120の形成手法の例示は、実施例1(
図8A(c)を参照)と同様であるので省略する。
【0086】
ここで第1有機光電変換膜120は、第1有機層分離壁125の高さ(膜厚)に比べて小さくなるような膜厚となるように成膜される。このとき
図12A(c)のように第1有機層分離壁125の上部にも有機光電変換膜125が堆積することになるが、このような場合であっても、第1有機光電変換膜120の厚みを第1有機層分離壁125の厚みに比べて小さくしておけば、第1有機光電変換膜120を第1有機層分離壁125で分離することが可能となる。また、第1有機層分離壁125が順テーパー形状とされると、第1有機光電変換膜120が第1有機層分離壁125の上部で繋がった状態となる虞があるため、第1有機層分離壁125は回路基板102に対して垂直に切り立った形状とされることが望ましく、さらに、逆テーパー形状とされることが、より望ましい。
【0087】
次に、
図12A(d)に示すように、第1有機光電変換膜120の上部に第1上部電極124を成膜する。第1上部電極124の材料および成膜法としての詳細は、上記実施例1の場合(
図8A(d)を参照)と同様であるので、省略する。
【0088】
また上部電極124は、第1有機層分離壁125で区切られた第1有機光電変換膜120を覆うように形成され、
図12A(e)の膜除去プロセスを行う際に下層に位置する第1有機光電変換膜120が劣化するのを防止する機能を有する。なお、これによっても第1有機光電変換膜120の劣化を十分に防止することができない場合においては、後述の
図13に示す製造方法(変型例)によるプロセスを適用すればよい。また、画素エリアに位置する上部電極124の上面が第1有機層分離壁125の高さとほぼ一致するように成膜することが望ましい。
【0089】
次に、
図12A(e)に示すように、第1有機層分離壁125の上部に堆積した第1有機光電変換膜120と上部電極124を除去する。このとき、画素エリアの第1有機光電変換膜120が、画素エリアの上部電極124により十分に保護されていれば、第1有機層分離壁125上の第1有機光電変換膜120を溶剤等で除去することにより、上部電極124を同時に除去することも可能である(リフトオフ)。そして、
図12A(f)のプロセスを実施することにより、第1層目の第1有機光電変換膜120を有する第1光電変換部120Aの形成工程が終了する。
【0090】
この後、第2層目の第2光電変換部130Aを形成する前に、上部電極124の上部に第1層間絶縁膜127を形成する(
図12A(f))。この第1層間絶縁膜127の成膜技術の詳細については上記実施例1の場合の説明と同様であるので、省略する。
なお、第1層間絶縁膜127の材料として塗布形成可能な樹脂材料を用いる場合、適切な厚みで形成することにより、表面の平坦化を適切に行うことができる。
【0091】
続いて、第1層間絶縁膜127の上部に第2TFT138、第2下部電極131、配線電極等を形成し(
図12B(g))、第2有機光電変換膜130を形成し(
図12B(h))、上部電極134を形成する(
図12B(i))ことにより、第2層目の第2光電変換部130Aを形成する。ここで第2光電変換部130Aは、その内部に有機層分離壁が形成されていないこと以外は、基本的には第1層目と同様の製造プロセスで形成することができる。
【0092】
なお、第2光電変換部130Aの第2有機光電変換膜130に、有機層分離壁を形成しても構わない。これらは第1層目の第1光電変換部120Aと同様の製造プロセスを各々の材料に応じて適宜用いることにより形成可能であり、種々の工程において汎用的な半導体製造プロセスを適用することができるため、詳細な説明は省略する。ただし、第2層目以上の各層の形成プロセスにおいては、第1層目の第1有機光電変換膜120にダメージを与えない温度条件にて形成する必要がある。
【0093】
第3層目の第3光電変換部140Aの形成プロセスも第2層目の第2光電変換部130Aの形成プロセスと同様の手法で形成することが可能である。
図12B(i)の形成プロセス後に、
図12A(f)と同様に第2層間絶縁膜137を形成した上で、その上部に
図12B(g)と同様に第3TFT148、第3下部電極141、配線電極等を形成し、
図12B(h)と同様に第3有機光電変換膜140を形成し、
図12B(i)と同様に第3上部電極144を形成する(
図12B(j))。
【0094】
これらの形成プロセスは第2層目の第2光電変換部130Aの形成と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、第3光電変換部140Aの第3有機光電変換膜140に、有機層分離壁を形成しても構わない。これらは第1層目の第1有機層分離壁125と同様の製造プロセスを各々の材料に応じて適宜用いることにより形成可能であり、第1層目の第1有機層分離壁125と同様の構造、あるいは製造プロセスを適用すればよい。
【0095】
最後に
図12B(k)に示すように、第3層目の第3光電変換部140Aの第3上部電極144の上部に保護層175を形成することにより、本実施例の積層型撮像素子101の形成工程が終了する。
保護層175の形成は、保護層175を形成する材料(有機材料、無機材料、有機・無機ハイブリッド材料等)に応じて任意の成膜技術を適用することができる。成膜技術としては、蒸着法やスパッタ法、CVD法、ALD法、塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また保護層175として保護フィルムや透明基板等を貼り付ける構成とする場合は、接着性の樹脂等を成膜した後に透明基板や保護フィルムを貼り付けてもよいし、接着剤付きの保護フィルムを直接貼り付けてもよい。
【0096】
図13は、上述した実施例2に係る積層型撮像素子101の製造方法の変型例を示すものであり、第1層目の第1光電変換部120Aの成形プロセスの変更について説明するものである。本変型例は、画素エリアの第1有機光電変換膜120を適切に保護し得る製造方法として有用である。
【0097】
まず、
図13(a)は
図12A(c)の場合と同様に、第1有機層分離壁125の形成後に第1有機光電変換膜120を成膜した状態を示している。ここで
図12A(d)と同様に第1有機光電変換膜120の上部に第1上部電極124を成膜する(
図13(b))。このとき第1上部電極124は、画素エリアの第1上部電極124の上面が第1有機層分離壁125の上部(高さ)より低い位置となるように形成される。
【0098】
次に、
図13(c)に示すように、緩衝絶縁膜129を第1上部電極124の上部に成膜する。緩衝絶縁膜129は、画素エリアの第1有機光電変換膜120および第1上部電極124を覆う機能を有するとともに、第1有機層分離壁125の上部の第1有機光電変換膜120を除去する際に、画素エリアの第1有機光電変換膜120を保護する機能を有する。緩衝絶縁膜129の材料は、第1層間絶縁膜127や保護層175と同様の材料で形成することが可能であり、その材料に適した成膜技術を用いて形成される。
【0099】
次に、第1有機層分離壁125の上部に堆積した、第1有機光電変換膜120、第1上部電極124、および緩衝絶縁膜129を除去する(
図13(d))。ここでは第1有機光電変換膜120を溶剤等で洗浄して除去することにより、その上に堆積した第1上部電極124と緩衝絶縁膜129を同時に除去することが可能である(リフトオフ)。また必要に応じて、第1上部電極124を溶剤等で緩衝絶縁膜129と同時に除去した後に、第1有機光電変換膜120を除去するプロセスを用いることもできる。これらの除去方法については、一般的な洗浄・除去方法を適宜用いれば容易に行うことができる。
【0100】
この後、
図12A(f)と同様に第1層間絶縁膜127を成膜し、表面を平坦化することにより、第2層目の第2光電変換部120Aを適切に形成することが可能となる。なお、上述のとおり、第1層間絶縁膜127は緩衝絶縁膜129と同様の特性を有する材料で構成できるため、同一の材料により形成することも勿論可能である。何れにしても、第1層間絶縁膜127の表面の平坦性が確保できるような材料を用いることが望ましい。なお、第2層目の第2光電変換膜以降の形成プロセスは
図12A、Bに示される内容と同様とすればよいが、第2層目以降に有機層分離壁を形成する場合には、
図13の形成プロセスを用いることも可能である。
【0101】
<実施例3>
図14Aおよび
図14Bは実施例3に係る積層型撮像素子201の縦断面図および横断面図を示すものであり、
図14Aの断面は
図14Bのa-a’線に沿って切断した断面を表すものである。
【0102】
本実施例は上記実施例1、2と構成が類似しており、第1有機層分離壁25、125の配設位置および形状は異なるが、その余は上記実施例1、2の積層型撮像素子1、101と各部材が略同様に構成されている。特に、上記実施例2の構成とは、
図14Bと
図9Bの平面図を比較しても明らかなように、実施例2の第1有機層分離壁125はストライプ状であるのに対して、実施例3の第1有機層分離壁225は格子状である点において異なるものの、その余は略同様に構成されている。
したがって、上記実施例2の部材に対応する本実施例の部材については、上記実施例2の部材に付した符号に100を加えた符号を付し、構成が同様のものはその詳しい説明を省略する場合がある。
【0103】
(積層型撮像素子の構成)
本実施例では、回路基板202上において、下部電極221、231、241と上部電極224、234、244の間に有機光電変換膜220、230、240が挟持されてなる、第1光電変換部(第1層)220A、第2光電変換部(第2層)230A、および第3光電変換部(第3層)240Aがこの順に積層された3層構造の撮像素子(RGBカラー撮像素子を想定)201が示されている。
【0104】
上記有機光電変換膜220、230、240、下部電極221、231、241、上部電極224、234、244、および回路基板202については、上記実施例2における有機光電変換膜120、130、140、下部電極121、131、141、上部電極124、134、144、および回路基板102と各々同様に構成されており、回路基板202上に上記有機光電変換膜220、230、240が順次積層される様子も上記実施例2と同様に構成されている。
【0105】
また、第1~第3の光電変換部220A、230A、240A、および第1~第3TFT228、238、248についても、上記実施例2における第1~第3の光電変換部120A、130A、140A、および第1~第3TFT128、138、148と同様に構成されている。
【0106】
本実施例においては、有機光電変換膜220、230、240を用いた光電変換部220A、230A、240A内には、下部電極221、231、241が形成されていない領域に第1有機層分離壁225が格子状に形成されている。
図14Bは、各画素が格子状の第1有機層分離壁225で囲まれた例を示しているが、後述のとおり複数画素を囲む格子形状とすることも可能であり、両者が混在する形態とすることも可能である。
【0107】
また格子状の第1有機層分離壁225の上部には、同様に格子状をなす第1接続電極223が形成されている。この第1接続電極223は、第1有機光電変換膜220の上部の第1上部電極224と電気的に接続しており、この第1接続電極223を通じて画素エリア外に配線として取り出すことができる。したがって、第1上部電極224は第1接続電極223を介して回路基板202上の周辺回路や外部電源と接続することができ、第1有機光電変換膜220に電圧を印加することが可能となる。
【0108】
なお、第1上部電極224は光を透過させるために透明であることが望ましいが、第1接続電極223は第1有機層分離壁225の上部に形成されるため、第1有機層分離壁225が透明な材料で透明な撮像領域を構成する場合を除けば、必ずしも透明である必要はない。
【0109】
第1接続電極223は配線として抵抗を小さくする必要があるため、導電性の高い低抵抗材料を用いたり、膜厚を大きく設定することが望ましい。特に第1上部電極224は透明性が重要となるため、材料が限定されて抵抗が高くなる傾向があるが、第1接続電極223に低抵抗な材料を適用することにより、第1上部電極224の抵抗を相対的に下げる効果が得られる。
【0110】
第1光電変換部220Aの第1有機光電変換膜220は、第1有機層分離壁225により格子状の領域に分割されるため、本実施例に係る積層型撮像素子201の製造プロセスにおいて第1有機光電変換膜220の耐熱性を確保する(第1層の膜剥がれを防止する)ことが可能となる。
【0111】
具体的には、上層(第2層以上)の第1有機光電変換膜220等には、第1光電変換部220A内のTFT等を形成する際に加熱処理が施されるが、第1有機光電変換膜220等の面積が大きい程、また、積層数が増加する程、特に下層の有機光電変換膜への圧力が増加するため、膜剥離が発生する。本実施例のように、第1有機光電変換膜220が第1有機層分離壁225により空間的に区切られた構成とすることで、加熱プロセスに伴う第1有機光電変換膜220の歪が緩和されるため、第1光電変換部220Aの剥離を抑制しつつ撮像素子201の積層構造を実現することが可能となる。
【0112】
また上述のとおり、光電変換部220A等を多段に積層する場合、第1層では第1光電変換部220Aの剥離が生じやすいため、第1層に第1有機層分離壁225を適用すると効果的である。
また第1有機層分離壁225の格子の間隔は、
図15(a)に示すように画素ピッチと等しく設定してもよく、センサ(撮像領域)の周辺部では中央付近と比べて第1有機層分離壁225の間隔を相対的に小さくする形態とすることも可能である。
【0113】
一般には加熱による歪みは、周辺部に近づく程、影響を受けるので、
図15(b)に示すように周辺部に近づく程、第1有機層分離壁225の間隔を小さくすることにより、剥離防止の効果を大きくすることができる。
【0114】
なお第1有機層分離壁225は微細な構造のため、間隔をより細かくすると製造工程においてパターン不良が生じる可能性が高くなる。そのため、
図15(b)のように中央部の間隔を広く設定することにより、パターン不良の発生確率を低くすることができ、歩留まり向上にも有利となる。何れにしても、第1有機光電変換膜220等における、熱プロセスに起因する剥離を生じさせない範囲であれば、格子状の第1有機層分離壁225の配設位置を任意に決めることが可能である。
【0115】
また、第1有機層分離壁225の線幅については、上記実施例2における第1有機層分離壁125の線幅と同様であるので、ここでは省略する。
なお、第1有機層分離壁225をフォトリソグラフィー法等でパターニングすることが可能であるが、線幅が小さくなる場合は、電子線描画やナノインプリンティング法を適用することができる。製造方法は第1有機層分離壁225の材料やピッチにより任意に選択することが可能である。なお、第1有機層分離壁225は絶縁性を有する無機材料や有機材料、それらのハイブリッド材料等、形状や線幅等に応じて適切な材料を選択することが可能である。
【0116】
本実施例では、3層構造の撮像素子において、第1光電変換部220Aにのみ第1有機層分離壁225を適用した例を示しているが、これは上部の各層の形成に加熱プロセスを施す際に、第1層目の光電変換部220Aにおける第1有機光電変換膜220が一番剥離し易いことによるものであるが、有機層分離壁225等の配設位置の態様はこれに限られるものではない。
【0117】
例えば、3層構造において、第1層目の第1光電変換部220Aに第1有機層分離壁225を、さらに第2層目の第2光電変換部230Aに第2有機層分離壁235を、各々形成する撮像素子201aの構成(
図16(a))、第1層目の第1光電変換部220Aに第1有機層分離壁225を、第2層目の第2光電変換部230Aに第2有機層分離壁235を、さらに第3層目の第3光電変換部240Aに第3有機層分離壁245を、各々形成する撮像素子201bの構成(
図16(b))、第1層目の第1光電変換部220Aに第1有機層分離壁225を、さらに第3層目の第3光電変換部240Aに第3有機層分離壁245を、各々形成する撮像素子201cの構成(
図16(c))とすることが可能である。
【0118】
また、3層以外の層構造において、任意の層の光電変換部に有機層分離壁を形成することが可能であり、例えば、
図16(d)に示すように、5層構造の撮像素子201dにおいて、全ての光電変換部220A、230A、240A、250A、260Aに有機層分離壁225、235、245、255、265を形成する構成とすることもできる。
要は、有機光電変換膜の剥離が生じやすい層に重点的に適用すればよい。
また、上述した、
図16(a)~(d)に示されるように、各有機層分離壁225、235、245、255、265の上部には、この有機層分離壁225、235、245、255、265の断面形状と同様の断面形状にて、接続電極223、233、243、253、263が形成される。すなわち、第1有機層分離壁225上には第1接続電極223が、第2有機層分離壁235上には第2接続電極233が、第3有機層分離壁245上には第3接続電極243が、第4有機層分離壁255上には第4接続電極253が、そして第5有機層分離壁265上には第5接続電極263が、各々形成される。
【0119】
なお、上述の配線電極、下部電極221、231、241、上部電極224、234、244、TFTのソース・ドレイン電極に用いられる材料としては、上記実施例2と同様である。
【0120】
また、第1接続電極223も第1有機層分離壁225の上部に同一形状で形成されるため、一般的にはフォトリソグラフィー法等でパターニングされるが、上述のとおり電子線描画やナノインプリンティング法、あるいはマイクロコンタクトプリンティング法等を適用することもできる。第1接続電極223には金属や導電性ペースト等、導電性を有する種々の材料を適用することが可能であるが、ITO等の透明な材料を適用すれば、透明な撮像素子を構築することも可能である。
【0121】
また、上述のとおり、第1接続電極223と第1上部電極224は電気的に接続する必要があり、これらの形成プロセスに応じて各々の膜厚は適宜設定することが必要となる。例えば、後述の
図18に示すような製造プロセスを用いる場合、第1有機層分離壁225と第1接続電極223との合計膜厚を第1有機光電変換膜220と第1上部電極224の合計膜厚より大きくする必要があるが、第1接続電極223と第1上部電極224の接続不良を生じさせないようにするためには、第1接続電極223の膜厚をできるだけ大きく設定することが望ましい。
【0122】
基本的には第1接続電極223の膜厚を第1上部電極224の膜厚より大きく設定することにより、第1有機光電変換膜220と第1上部電極224の合計膜厚のマージンをより大きくとることが可能となる。
【0123】
また、下部電極221、231、241、TFT228、238、248等への配線電極は、対応する有機層分離壁225、235、245の下部に形成することが可能である。これにより、画素の開口率を高めて撮像素子201の感度の向上を図ることができる。
なお、TFTを構成する半導体材料、および有機光電変換膜220、230、240を構成する材料としては、実施例2と同様である。
【0124】
また、層間絶縁膜227、237、回路基板202および保護層275を構成する材料としても、実施例2と同様であるので、ここでは省略する。
【0125】
また、
図18の製造プロセスを用いる場合には、緩衝絶縁膜229が形成されるが、緩衝絶縁膜229の材料も基本的には第1層間絶縁膜227と同様に、一般に絶縁膜として用いられる無機材料、有機材料、あるいは有機・無機ハイブリッド材料等、絶縁性を有する種々の材料を適用することが可能である。
【0126】
(製造方法)
次に、実施例3に係る積層型撮像素子201の製造方法について説明する。各工程で行われる加工技術自体は、一般に半導体製造プロセスで行われている汎用的な加工技術を用いて形成することが可能である。
【0127】
図17A、
図17Bおよび
図17Cに示すように、まず、回路基板202上の画素エリアに第1TFT228と第1下部電極221を形成する(
図17A(a))。
図17A、
図17Bおよび
図17Cでは、撮像素子の2画素分の領域を示しており有機層分離壁225の間隔は画素ピッチとされている。また図では省略されているが、配線電極やTFT228のソース/ドレイン電極等、一般に撮像素子に用いられる画素回路や周辺回路も回路基板202上に形成される。これらは汎用的な半導体製造プロセスで形成されるため詳細は省略する。
【0128】
次に、
図17A(b)に示すように、第1有機層分離壁の材料225´を成膜する。ここで、第1有機層分離壁の材料225´としてはフォトリソグラフィー法等によりパターニング可能な材料を想定している。この成膜手法としては、一般的な塗布法(スピンコート法、インクジェット法やフレキソ印刷法等の各種印刷技術等)、スパッタ法、蒸着法等、一般的な成膜技術は全て適用可能である。その成膜手法は、材料に応じて適宜選択すればよい。
【0129】
この上に第1接続電極の材料223´を成膜する(
図17A(c))。この成膜手法は材料に応じて適宜選択可能である。例えば金属材料とする場合は、蒸着法やスパッタ法等汎用的なあらゆる成膜手法を適用することが可能であるが、第1有機層分離壁の材料225´にダメージを与えないような成膜法を適用する必要がある。塗布形成が可能な材料の場合は、一般的な塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)を適用することが可能である。
【0130】
次に、第1接続電極の材料223をフォトリソグラフィー法やレーザー描画法等汎用的な加工技術でエッチングし、格子状にパターニングを行う(
図17A(d))。ただし、第1接続電極の材料223´として印刷可能な材料を適用した場合には、
図17A(c)のプロセスを省いて直接パターン形成することも可能である。特に微細な格子パターンを直接形成する場合には、マイクロコンタクトプリンティング法等を適用することも可能である。
【0131】
次に、第1接続電極223と同じパターンの格子状の第1有機層分離壁225をパターニングにより形成する(
図17A(e))。パターニング方法としては、フォトリソグラフィー法やレーザー描画法等、汎用的な加工技術により行うことができる。例えばフォトリソグラフィー法を適用する場合、上部に位置する第1接続電極223をマスクとして用いてエッチングすることも可能である。なお、
図17A(c)と
図17A(e)はフォトリソグラフィー法により連続して行っても良く、例えば格子状の部分にレジストを形成して共通のマスクとして使用すれば、エッチングを連続して行うことが可能である。
【0132】
また
図17では格子状の第1接続電極223の形成後に格子状の第1有機層分離壁225を形成する例を示しているが、第1有機層分離壁225を先に形成する手法も適用可能である。例えば、フォトリソグラフィー法やレーザー描画法、あるいは(ナノ)インプリンティング法等で格子状にパターニングした第1有機層分離壁225を形成し、その上部にマイクロコンタクトプリンティング法等により第1接続電極223を形成することが可能である。また格子状の第1有機層分離壁225の上部に第1接続電極223を成膜し、エッチングによりパターニングすることも可能である。一例としては、格子状に囲まれた領域に予めレジストを塗布しておき、第1接続電極223を成膜した後にリフトオフすることで、接続電極のパターニングを行う手法等が挙げられる。
【0133】
続いて、第1有機光電変換膜220を成膜する(
図17B(f))。
この成膜手法は、第1有機光電変換膜220を構成する材料に応じて任意に選択することができる。なお、第1有機光電変換膜220の形成手法の例示は、実施例1(
図8A(c)を参照)と同様であるので省略する。
【0134】
この第1有機光電変換膜220は、第1有機層分離壁225と第1接続電極223の合計膜厚に比べて小さくなるような膜厚にて成膜される。この場合、第1接続電極223の上部に第1有機光電変換膜220が堆積しても、第1有機光電変換膜220の厚みを第1有機層分離壁225と第1接続電極223との合計膜厚に比べて小さくしておけば、第1有機光電変換膜220を第1有機層分離壁225で分離することが可能となる。さらに第1有機層分離壁225の上部に形成される第1上部電極224を、第1接続電極223と電気的に接続させることができる。
【0135】
なお第1接続電極223と第1有機層分離壁225が順テーパー形状とされると、第1有機光電変換膜220が第1有機層分離壁225の上部で繋がった状態となる虞があるため、第1接続電極223と第1有機層分離壁225は回路基板202に対して垂直に切り立った形状とされることが望ましく、さらに、逆テーパー形状とされることが、より望ましい。
【0136】
次に、
図17B(g)に示すように、第1有機光電変換膜220の上部に第1上部電極224を成膜する。第1上部電極224の材料および成膜法としての詳細は、上記実施例1の場合(
図8A(d)を参照)と同様であるので、省略する。
【0137】
また、第1上部電極224は、第1接続電極223と当接して電気的に接続するように形成され、さらに第1接続電極223と第1有機層分離壁225で格子状に区切られた第1有機光電変換膜220を覆うように形成され、
図17B(h)の膜除去プロセスを行う際に下層に位置する第1有機光電変換膜220が劣化するのを防止する機能を有する。なお、これによっても第1有機光電変換膜220の劣化を十分に防止することができない場合においては、後述の
図18に示す製造方法(変型例)によるプロセスを適用すればよい。また、画素エリアに位置する上部電極224の上面が第1有機層分離壁225の高さとほぼ一致するように成膜することが望ましい。
【0138】
次に、
図17B(h)に示すように、第1有機層分離壁225の上部に堆積した第1有機光電変換膜220と第1上部電極224を除去する。このとき、画素エリアの第1有機光電変換膜220が、画素エリアの第1上部電極224により十分に保護されていれば、第1有機層分離壁225上の第1有機光電変換膜220を溶剤等で除去することにより、上部電極224を同時に除去することも可能である(リフトオフ)。そして、
図17B(h)のプロセスを実施することにより、第1層目の第1有機光電変換膜220を有する第1光電変換部220Aの形成工程が終了する。
【0139】
次に、第2層目の第2光電変換部230Aを形成する前に、第1上部電極224の上部に第1層間絶縁膜227を形成する(
図17B(i))。この第1層間絶縁膜227の成膜技術の詳細については上記実施例1の場合(
図8B(e)を参照)の説明と同様であるので、省略する。
なお、第1層間絶縁膜227の材料として塗布形成可能な樹脂材料を用いる場合、適切な厚みで形成することにより、表面の平坦化を適切に行うことができる。
【0140】
続いて、第1層間絶縁膜227の上部に第2TFT238、第2下部電極231、配線電極等を形成し(
図17B(j))、第2有機光電変換膜230を形成し(
図17C(k))、第1上部電極234を形成する(
図17C(l))ことにより、第2層目の第2光電変換部230Aを形成する。ここで第2光電変換部230Aは、その内部に有機層分離壁および接続電極が形成されていないこと以外は、基本的には第1層目と同様の製造プロセスで形成することができる。
【0141】
なお、第2光電変換部230Aに第2有機光電変換膜230を設ける場合には、上述した第1層と同様な構成としても構わない。これらは第1層目の第1光電変換部220Aと同様の製造プロセスを各々の材料に応じて適宜用いることにより形成可能であり、種々の工程において汎用的な半導体製造プロセスを適用することができるため、詳細な説明は省略する。ただし、第2層目以上の各層の形成プロセスにおいては、第1層目の第1有機光電変換膜220にダメージを与えない温度条件にて形成する必要がある。
【0142】
第3層目の第3光電変換部240Aの形成プロセスも第2層目の第2光電変換部230Aの形成プロセスと同様の手法で形成することが可能である。
図17C(l)の形成プロセス後に、
図17B(j)と同様に第2層間絶縁膜237を形成した上で、その上部に
図17B(g)と同様に第3TFT248、第3下部電極241、配線電極等を形成し、
図17C(k)と同様に第3有機光電変換膜240を形成し、
図17C(l)と同様に第3上部電極244を形成する(
図17C(m))。
【0143】
これらの形成プロセスは第2層目の第2光電変換部230Aの形成と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、第3光電変換部240Aの第3有機光電変換膜240に、有機層分離壁を形成しても構わない。これらは第1層目の第1有機層分離壁225と同様の製造プロセスを各々の材料に応じて適宜用いることにより形成可能であり、第1層目の第1有機層分離壁225と同様の構造、あるいは製造プロセスを適用すればよい。
【0144】
最後に
図17C(n)に示すように、第3層目の第3光電変換部240Aの第3上部電極244の上部に保護層275を形成することにより、本実施例の積層型撮像素子201の形成工程が終了する。
保護層275の形成手法は、実施例2の場合と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0145】
図18は、上述した実施例3に係る積層型撮像素子201の製造方法の変型例を示すものであり、第1層目の第1光電変換部220Aの成形プロセスが変更されている。本変型例は、画素エリアの第1有機光電変換膜220を適切に保護し得る製造方法として有用である。
【0146】
まず、
図18(a)は
図17A(c)の場合と同様に、格子状の第1有機層分離壁225および第1接続電極223の形成後に第1有機光電変換膜220を成膜した状態を示している。ここで
図17B(g)と同様に第1有機光電変換膜220の上部に第1上部電極224を成膜する(
図18(b))。このとき第1上部電極224は、画素エリアの第1上部電極224の上面が第1接続電極223の上部(高さ)より低い位置となるように形成される。
その際、第1上部電極224の膜厚に比べて第1接続電極223の膜厚を大きく設定しておくことにより、電気的な接続を確保するための成膜マージンをより大きくとることができるとともに、第1上部電極224の光透過率を低減することなく相対的に第1上部電極224の抵抗を小さくすることができる。
【0147】
次に、
図18(c)に示すように、緩衝絶縁膜229を第1上部電極224の上部に成膜する。緩衝絶縁膜229は、画素エリアの第1有機光電変換膜220および第1上部電極224を覆う機能を有するとともに、第1有機層分離壁225の上部の第1有機光電変換膜220を除去する際に、画素エリアの第1有機光電変換膜220を保護する機能を有する。緩衝絶縁膜229の材料は、第1層間絶縁膜227や保護層275と同様の材料で形成することが可能であり、その材料に適した成膜技術を用いて形成される。
【0148】
次に、第1有機層分離壁225の上部に堆積した、第1有機光電変換膜220、第1上部電極224、および緩衝絶縁膜229を除去する(
図18(d))。第1有機層分離壁225の上部に堆積したこれらの部材の除去手法については、上述した実施例2の場合(
図13(d)を参照)と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0149】
この後、
図17B(i)と同様に第1層間絶縁膜227を成膜し、表面を平坦化することにより、第2層目の第2光電変換部220Aを適切に形成することが可能となる。なお、第1層間絶縁膜227の形成材料としては、上述した実施例2の場合(
図13(e)を参照)と同様であるので、詳しい説明は省略する。
なお、第2層目の第2光電変換部220A以降の形成プロセスは
図17B(j)~
図17C(m)に示される内容と同様とすればよいが、第2層目以降に有機層分離壁を形成する場合には、
図18の形成プロセスを用いることも可能である。
【0150】
<実施例4>
図19Aおよび
図19Bは実施例4に係る積層型撮像素子301の縦断面図および横断面図を示すものであり、
図19Aの断面は
図19Bのa-a’線に沿って切断した断面を表すものである。
【0151】
本実施例は上記実施例1~3と構成が類似しており、第1有機層分離壁25、125、225の配設位置および形状は異なるが、その余は上記実施例1~3の積層型撮像素子1、101、201と各部材が略同様に構成されている。
特に、上記実施例3の構成とは、格子状の有機層分離壁および接続電極を備えていることでも共通しているので、この実施例3の部材に対応する本実施例の部材については、上記実施例3の部材に付した符号に100を加えた符号を付し、構成が同様のものはその詳しい説明を省略する場合がある。
【0152】
(積層型撮像素子の構成)
本実施例では、回路基板302上において、下部電極321、331、341と上部電極324、334、344の間に有機光電変換膜320、330、340が挟持されてなる、第1光電変換部(第1層)320A、第2光電変換部(第2層)330A、および第3光電変換部(第3層)340Aがこの順に積層された3層構造の撮像素子(RGBカラー撮像素子を想定)301が示されている。
【0153】
上記有機光電変換膜320、330、340、下部電極321、331、341、上部電極324、334、344、および回路基板302については、上記実施例3における有機光電変換膜220、230、240、下部電極221、231、241、上部電極224、234、244、および回路基板202と各々同様に構成されており、回路基板302上に上記有機光電変換膜320、330、340が順次積層される様子も上記実施例2と同様である。
【0154】
また、第1~第3の光電変換部320A、330A、340A、および第1~第3TFT328、338、348についても、上記実施例3における第1~第3の光電変換部220A、230A、240A、および第1~第3TFT228、238、248と同様に構成されている。
【0155】
本実施例においては、有機光電変換膜320、330、340を用いた光電変換部320A、330A、340A内には、下部電極321、331、341が形成されていない領域に第1有機層分離壁325が格子状に形成されている。
図19Bは、各画素が格子状の第1有機層分離壁325で囲まれた例を示しているが、後述のとおり(
図21(b)を参照)複数画素を囲む格子形状とすることも可能であり、両者が混在する形態とすることも可能である。
【0156】
また第1の光電変換部320A内において、第1上部電極324の上部に緩衝絶縁膜329が設けられており、これによって、製造プロセスにおける、第1有機光電変換膜320のレジストやエッチング液等によるダメージを防ぐことが可能である。
【0157】
また格子状の第1有機層分離壁325の上部には、同様に格子状をなす第1接続電極323が形成されている。この第1接続電極323は、主として第1有機光電変換膜320の上部の第1上部電極324と電気的に接続しており、この第1接続電極323を通じて画素エリア(撮像領域)外に配線として取り出すことができる。したがって、第1上部電極324は第1接続電極323を介して回路基板302上の周辺回路や外部電源と接続することができ、第1有機光電変換膜320に電圧を印加することが可能となる。
【0158】
なお、第1上部電極324は光を透過させるために透明であることが望ましいが、第1接続電極323は第1有機層分離壁325の上部に形成されるため、第1有機層分離壁325が透明な材料で透明な撮像領域を構成する場合を除けば、必ずしも透明である必要はない。
【0159】
第1接続電極323は配線として抵抗を小さくする必要があるため、導電性の高い低抵抗材料を用いたり、膜厚を大きく設定することが望ましい。特に第1上部電極324は透明性が重要となるため、材料が限定されて抵抗が高くなる傾向があるが、第1接続電極323に低抵抗な材料を適用することにより、第1上部電極324の抵抗を相対的に下げる効果が得られる。
【0160】
また第1接続電極323が透明な材料でない場合は基本的には第1有機層分離壁325の上部に形成されるが、第1下部電極321の上部を覆う状態とならなければ、第1有機層分離壁325の外側、すなわち緩衝絶縁膜329の上部まではみ出すような形状に形成してもよい。そうすることにより、第1接続電極323の抵抗を小さくすることができる。また
図20に示すように、第1接続電極323は第1上部電極324と接続するために、一部が緩衝絶縁膜329の上部に張り出すように形成される。ただし、重なり合う面積が小さい場合は光透過率への影響も小さくなるため、第1接続電極323が第1下部電極321を部分的に覆うことが許容される場合もあり得る。
【0161】
図20において、点線で示される部分は、
図19(b)に示す第1下部電極321が形成されている領域を示している。第1下部電極321と重ならない領域としては、例えば第1TFT328が形成されている領域の上部領域がある。その部分に緩衝絶縁膜329を貫通する第1貫通電極322を形成することで、第1下部電極321と重ならない(第1下部電極321への光入射を遮らない)態様で第1上部電極324と接続する第1接続電極323を形成することができる。
【0162】
なお、第1接続電極323は、同じ画素内の第1上部電極324と必ずしも1点で接続させる必要はなく、画素面内の複数の部分に貫通電極を設け、これらを介して接続することができる。そうすることで、接触不良の抑制や低抵抗化の促進等の効果が期待できる。
【0163】
また第1接続電極323は、1種類の電極材料により形成する必要はなく、例えば、第1下部電極321とは上下方向に重ならない
図20の構成では、不透明で低抵抗な材料を適用することができるが、これとともに、第1下部電極321の上部に透明な材料による第1接続電極を形成することができる。透明な領域の接続電極は光を透過することができるため、第1下部電極321の上部を覆うようにしても光利用効率が低下することはない。
【0164】
第1光電変換部320Aの第1有機光電変換膜320は、第1有機層分離壁325により格子状の領域に分割されるため、本実施例に係る積層型撮像素子301の製造プロセスにおいて第1有機光電変換膜320の耐熱性を確保する(第1層の膜剥がれを防止する)ことが可能となる。
【0165】
具体的な、第1有機層分離壁325の形状(間隔を含む)と作用効果については、上述した実施例3と同様であるので、その説明は省略する。
【0166】
なお第1有機層分離壁325の間隔は、
図21(a)に示すように画素ピッチと同一としてもよいが、第1有機層分離壁325は微細な構造のため、間隔をより細かくすると製造工程においてパターン不良が生じる可能性が高くなる。そこで、
図21(b)に示すように中央部の間隔を広く設定することにより、パターン不良の発生確率を低くすることができ、歩留まり向上を図る上でも有利となる。何れにしても、第1有機光電変換膜320等における、熱プロセスに起因する剥離を生じさせない範囲であれば、格子状の第1有機層分離壁325の配設位置を任意に決めることが可能である。
【0167】
第1有機層分離壁325を
図21(b)のような構成とする場合、第1接続電極323は第1有機層分離壁325と同様な配置としてもよいし、より細かい間隔、たとえば画素間隔と同じピッチで画素を囲む配置で形成してもよい。第1有機層分離壁325と同様の配置となる場合、第1有機層分離壁325で囲まれた複数の画素に対して、緩衝絶縁膜329を貫通する少なくとも1つの貫通電極があれば、その領域の第1上部電極324は第1接続電極323を介して回路基板302上の周辺回路や外部電源等と接続することができる。一方、第1接続電極323をより細かい領域各々に対して形成可能な場合には、第1上部電極324の抵抗を相対的に低下させることができる。
【0168】
また、第1有機層分離壁325の線幅については、上記実施例3における第1有機層分離壁225の線幅と同様であるので、ここでは省略する。
なお、第1有機層分離壁325をフォトリソグラフィー法等でパターニングすることが可能な材料が用いられるが、線幅が小さくなる場合は、電子線描画やナノインプリンティング法が適用可能な材料を用いることができる。例えば、絶縁性を有する無機材料や有機材料、それらのハイブリッド材料等、形状や線幅等に応じて適切な材料を選択することが可能である。
【0169】
本実施例では、3層構造の撮像素子において、第1光電変換部320Aにのみ第1有機層分離壁325を適用した例を示しているが、これは上部の各層の形成に加熱プロセスを施す際に、第1層目の光電変換部320Aにおける第1有機光電変換膜320が一番剥離し易いことによるものであるが、有機層分離壁325等の配設位置の態様はこれに限られるものではない。
【0170】
例えば、3層構造において、第1層目の第1光電変換部320Aに第1有機層分離壁325を、さらに第3層目の第3光電変換部340Aに第2有機層分離壁345を、各々形成する撮像素子301aの構成(
図22(a))、第1層目の第1光電変換部320Aに第1有機層分離壁325を、第2層目の第2光電変換部330Aに第2有機層分離壁335を、さらに第3層目の第3光電変換部340Aに第3有機層分離壁345を、各々形成する撮像素子301bの構成(
図22(b))、第1層目の第1光電変換部320Aに第1有機層分離壁325を、さらに第2層目の第2光電変換部330Aに第2有機層分離壁335を、各々形成する撮像素子301cの構成(
図22(c))とすることが可能である。
【0171】
また、3層以外の層構造において、任意の層の光電変換部に有機層分離壁を形成することが可能であり、例えば、
図22(d)に示すように、5層構造の撮像素子301dにおいて、全ての光電変換部320A、330A、340A、350A、360Aに有機層分離壁325、335、345、355、365を形成する構成(
図22(d))とすることもできる。
要は、有機光電変換膜の剥離が生じやすい層に重点的に適用すればよい。
また、上述した、
図22(a)~(d)に示されるように、各有機層分離壁325、335、345、355、365の上部には、この有機層分離壁325、335、345、355、365の断面形状と同様の断面形状にて、接続電極323、333、343、353、363が形成される。すなわち、第1有機層分離壁325上には第1接続電極323が、第2有機層分離壁335上には第2接続電極333が、第3有機層分離壁345上には第3接続電極343が、第4有機層分離壁355上には第4接続電極353が、そして第5有機層分離壁365上には第5接続電極363が、各々形成される。
【0172】
なお、上述の配線電極、下部電極321、331、341、上部電極324、334、344、TFTのソース・ドレイン電極に用いられる材料としては、上記実施例3と同様である。
【0173】
また、第1接続電極323の材料としては、金属や導電性ペースト等、導電性を有する種々の材料を適用することが可能であるが、ITO等の透明な材料を適用すれば、透明な撮像素子を構築することも可能である。
【0174】
第1接続電極323をパターニングする場合には、フォトリソグラフィー法等によるエッチングが可能な材料を用いればよい。また、第1接続電極323を電子線描画やナノインプリンティング法、あるいはマイクロコンタクトプリンティング法等で形成する場合にも、それらの製造プロセスに適した材料を適宜選択することもできる。
【0175】
また、下部電極321、331、341、TFT328、338、348等への配線電極は、対応する有機層分離壁325、335、345の下部に形成することが可能である。これにより、画素の開口率を高めて撮像素子301の感度の向上を図ることができる。
なお、TFTを構成する半導体材料、および有機光電変換膜320、330、340を構成する材料としては、実施例3と同様である。
【0176】
また、層間絶縁膜327、337、回路基板302および保護層375を構成する材料としても、実施例3と同様であるので、ここでは省略する。
【0177】
また、緩衝絶縁膜329は、一般に絶縁膜として用いられる無機材料、有機材料、あるいは有機・無機ハイブリッド材料等、絶縁性を有する種々の材料を適用することが可能である。ただし緩衝絶縁膜329は、素子の製造プロセスにおいて第1有機光電変換膜325の劣化を防止する機能が要求されるので、耐薬品性や耐熱性に優れた材料を適用することが望ましい。
【0178】
(製造方法)
次に、実施例4に係る積層型撮像素子301の製造方法について説明する。各工程で行われる加工技術自体は、一般に半導体製造プロセスで行われている汎用的な加工技術を用いて形成することが可能である。
【0179】
まず、回路基板302上の画素エリアに第1TFT328と第1下部電極321を形成する(
図23A(a))。
図23A、
図23Bおよび
図23Cでは、撮像素子の2画素分の領域を示しており有機層分離壁325の間隔は画素ピッチとされている。また図では省略されているが、配線電極やTFT328のソース/ドレイン電極等、一般に撮像素子に用いられる画素回路や周辺回路も回路基板302上に形成される。これらは汎用的な半導体製造プロセスで形成されるため詳細は省略する。
【0180】
次に、
図23A(b)に示すように、回路基板302上の第1下部電極321が形成されていない、画素の境界部分に第1有機層分離壁325を形成する。第1有機層分離壁325の形成に関しては材料に応じて最適な手法を適用すればよい。例えば、第1有機層分離壁325の材料を成膜後、パターニングすることで格子状に加工することができる。
また、第1有機層分離壁325の材料の成膜手法は、その材料に適した手法を適用すればよく、一般的な塗布法(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)、スパッタ法、蒸着法等が挙げられる。
【0181】
上記、第1有機層分離壁325のパターニングは、フォトリソグラフィー法やレーザー描画法等、汎用的な加工技術により行うことができる。なお、第1有機層分離壁325は、ナノインプリンティング法やマイクロコンタクト法、材料を微細な線幅で塗布する手法、あるいは各種印刷技術を適用することにより、第1有機層分離壁325を直接形成することも可能である。
【0182】
続いて、第1有機光電変換膜320を成膜する(
図23A(c))。
この成膜手法は、第1有機光電変換膜320を構成する材料に応じて任意に選択することができる。なお、形成手法の例示は、実施例1(
図8A(c)を参照)と同様であるので省略する。
【0183】
また、
図23A(d)に示すように、第1上部電極324は第1有機光電変換膜320と同様にパターニングされるため、第1有機層分離壁325に囲まれた部分に第1有機光電変換膜320を覆うように成膜される。このとき第1上部電極324の上面は、上述のように緩衝絶縁膜329の膜厚分だけ第1有機層分離壁325より低くなるように形成することが望ましい。
【0184】
次に
図23A(e)に示すように、第1上部電極324の上部に緩衝絶縁膜329を形成する。緩衝絶縁膜329は材料に応じて、既存の成膜技術を種々選択可能である。一般には蒸着法やスパッタ法、CVD法、ALD法、塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0185】
このとき緩衝絶縁膜329の上面は、第1有機層分離壁325の高さとほぼ一致するように形成される。多少厚みが一致しない場合でも、第1有機層分離壁325との界面のギャップが小さく、あるいは第1有機層分離壁325の上部から緩衝絶縁膜329の上面になだらかに繋がっていれば、第1接続電極323の導通を確保することができる。なお、第1接続電極323に導電性の樹脂等を適用する場合には、第1有機層分離壁325と緩衝絶縁膜329との多少の段差はこの樹脂等で埋めることができるため、電気的な接続を得ることができる。
【0186】
なお、緩衝絶縁膜329の第1上部電極324に近い領域では、緩衝絶縁膜329と第1有機層分離壁325が十分に接触するように形成されるため、溶液等のしみ込みを防ぐ機能は確保されている。また緩衝絶縁膜329に塗布形成可能な樹脂材料を用いる場合、成膜条件を適切に選択することで緩衝絶縁膜329の表面の平坦化も可能である。なお、緩衝絶縁膜329が第1上部電極324と第1有機光電変換膜320を完全に覆うように成膜することで、
図23B(f)以降のプロセスを行う際に下層の第1有機光電変換膜320の劣化を防ぐことができる。
【0187】
次に、
図23B(f)に示すように、第1有機層分離壁325の上部に堆積した第1有機光導電変換膜320、第1上部電極324および緩衝絶縁膜329を除去する。このとき、画素エリアの第1有機光電変換膜320は上述の作製プロセスにより薬品等への耐性は十分確保されており、第1有機光電変換膜320を溶剤等で容易に除去することができるため、その上の第1上部電極324と緩衝絶縁膜329も同時に除去することも可能である(リフトオフ)。
【0188】
また、第1上部電極324および緩衝絶縁膜329を溶剤等により除去した後に、第1有機光電変換膜320を溶剤で除去する手法を用いることも可能である。これらを構成する材料に応じて、適切な手法により第1有機層分離壁325の上部に堆積した各膜を除去することが可能である。
【0189】
続いて、
図23B(g)に示すように、緩衝絶縁膜329を貫通する透孔392を形成する。透孔392は、例えば第1TFT328の上方に設けることにより、第1接続電極323が第1下部電極321と上下に重なることなく形成することが可能となる。透孔392の形成方法としては、フォトリソグラフィー法やレーザー描画法等の中から、緩衝絶縁膜329の材料や膜厚、透孔392のサイズに応じて適宜選択すればよい。
【0190】
また、透孔392の形状は所定の形状に限られるものではないが、第1接続電極323との間の抵抗を低下させるためには透孔の面積はできるだけ大きい方がよい。また、第1下部電極321と上下方向に重ならないような位置に形成することが望ましい。これらは基本的な半導体プロセスを用いて容易に製造することができる。
【0191】
次に、第1接続電極323および、透孔392を貫通する第1貫通電極322を形成し、第1上部電極324を第1接続電極323と電気的に接続させる(
図23B(h))。このとき緩衝絶縁膜329の厚みが第1接続電極323の厚みに比べて十分に小さい場合は、第1貫通電極322は第1接続電極323と一体的に同時に形成することができる。具体的には、第1接続電極323を構成する材料を緩衝絶縁膜329および透孔392の上部に成膜し、パターニングすることにより第1接続電極323の配線パターンを形成する。透孔392は十分に浅いため第1接続電極323の形成材料で埋めることができ、第1接続電極323と第1上部電極324を電気的に接続することができる。
【0192】
一方、緩衝絶縁膜329の膜厚が第1接続電極323の膜厚に比べて大きい場合等は、透孔392を電極材料で埋めて第1貫通電極322を先に形成してから第1接続電極323を形成することも可能である。
第1貫通電極322の形成材料としては金属、導電性ペースト等であるが、適宜選択することが可能である。第1貫通電極322を金属で形成する場合には、電解めっき等の各種めっき法により第1貫通電極322を形成することが可能であるが、蒸着やスパッタ等の一般的な成膜手法を適用することも可能である。例えば、めっきを用いて形成する際には、表面にシード層等を適宜形成してもよい。
【0193】
また導電性ペーストを用いて第1貫通電極322を形成する場合には、真空スクリーン印刷等の印刷技術や塗布技術を用いることが可能であるが、予め表面を金属でコーティングしておく手法を用いて形成してもよい。
また、金属や導電性ペースト等で透孔392を埋めた後に、ベース層表面に付着した金属や導電性ペーストを研磨して除去したり、表面を平坦化したりする加工を施すことも可能である。
【0194】
第1接続電極323の成膜手法は形成材料に応じて適宜選択可能である。例えば、形成材料が金属の場合は蒸着法やスパッタ法等の汎用的な種々の成膜手法を適用することが可能であるが、第1有機層分離壁325を構成する材料にダメージを与えないような成膜手法を適用する必要がある。塗布形成が可能な材料の場合は、一般的な塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)を適用することが可能である。また、第1貫通電極322を形成する際に、緩衝絶縁膜329の上部に残された電極材料を、第1接続電極323として用いることもできる。その際、表面を研磨して第1接続電極323の表面の平坦化や膜厚を最適化する等の処理を行うことも可能である。
【0195】
また、第1接続電極323のパターニングは、フォトリソグラフィー法やレーザー描画法等汎用的な加工技術を適用することが可能である。ただし、第1接続電極323の形成材料として印刷可能な材料を適用した場合には、成膜・パターニングを一括して行うことも可能である。特に微細な格子パターンを直接形成する場合には、マイクロコンタクトプリンティング法等を用いることも可能である。なお、
図23B(h)のプロセスを行うことにより、第1層目の第1有機光電変換膜320を有する第1光電変換部320Aの形成工程が終了する。
【0196】
次に、第2層目の第2光電変換部330Aを形成する前に、緩衝絶縁膜329の上部に第1層間絶縁膜327を形成する(
図23B(i))。この第1層間絶縁膜327の成膜技術の詳細については上記実施例1の場合(
図8B(e)を参照)の説明と同様であるので、省略する。
なお、第1層間絶縁膜327の材料として塗布形成可能な樹脂材料を用いる場合、適切な厚みで形成することにより、表面の平坦化を適切に行うことができる。
【0197】
続いて、第1層間絶縁膜327の上部に第2TFT338、第2下部電極331、配線電極等を形成し(
図23B(j))、第2有機光電変換膜330を形成し(
図23C(k))、第2上部電極334を形成する(
図23C(l))ことにより、第2層目の第2光電変換部330Aを形成する。ここで第2光電変換部330Aは、その内部に有機層分離壁、接続電極、緩衝絶縁膜および貫通電極が形成されていないこと以外は、基本的には第1層目と同様の製造プロセスで形成することができる。
【0198】
なお、第2光電変換部330Aに第2有機光電変換膜330を設ける場合には、上述した第1層と同様な構成としても構わない。これらは第1層目の第1光電変換部320Aと同様の製造プロセスを各々の材料に応じて適宜用いることにより形成可能であり、種々の工程において汎用的な半導体製造プロセスを適用することができるため、詳細な説明は省略する。ただし、第2層目以上の各層の形成プロセスにおいては、第1層目の第1有機光電変換膜320にダメージを与えない温度条件にて形成する必要がある。
【0199】
第3層目の第3光電変換部340Aの形成プロセスも第2層目の第2光電変換部330Aの形成プロセスと同様の手法で形成することが可能である。
図23C(l)の形成プロセス後に、
図23B(i)と同様に第2層間絶縁膜337を形成し、その上部に
図23B(j)と同様に第3TFT348、第3下部電極341、配線電極等を形成し、
図23C(k)と同様に第3有機光電変換膜340を形成し、
図23C(l)と同様に第3上部電極344を形成する(
図23C(m))。
【0200】
これらの形成プロセスは第2層目の第2光電変換部330Aの形成と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、第3光電変換部340Aの第3有機光電変換膜340に、有機層分離壁を形成しても構わない。これらは第1層目の第1有機層分離壁325と同様の製造プロセスを各々の材料に応じて適宜用いることにより形成可能であり、第1層目の第1有機層分離壁325と同様の構造、あるいは製造プロセスを適用すればよい。
【0201】
最後に
図23C(n)に示すように、第3層目の第3光電変換部340Aの第3上部電極344の上部に保護層375を形成することにより、本実施例の積層型撮像素子301の形成工程が終了する。
保護層375の形成手法は、実施例3の場合と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0202】
<実施例5>
図24Aおよび
図24Bは実施例5に係る積層型撮像素子401の縦断面図および横断面図を示すものであり、
図24Aの断面は
図24Bのa-a’線に沿って切断した断面を表すものである。
【0203】
本実施例は上記実施例1~4と構成が類似しており、その中でも特に上記実施例2と構成が類似している。すなわち、上記実施例2とは、第1有機層分離壁が、第1下部有機層分離壁425aおよび第1上部有機層分離壁425bの上下2段形状とされている点で異なるが、その余は上記実施例2の積層型撮像素子101と各部材が略同様に構成されている。
特に、上記実施例2とはストライプ状の有機層分離壁を有している点でも共通しているので、この実施例2の部材に対応する本実施例の部材については、上記実施例2の部材に付した符号に300を加えた符号を付し、構成が同様のものはその詳しい説明を省略する場合がある。
【0204】
(積層型撮像素子の構成)
本実施例では、回路基板402上において、下部電極421、431、441と上部電極424、434、444の間に有機光電変換膜420、430、440が挟持されてなる、第1光電変換部(第1層)420A、第2光電変換部(第2層)430A、および第3光電変換部(第3層)440Aがこの順に積層された3層構造の撮像素子(RGBカラー撮像素子を想定)401が示されている。
【0205】
上記有機光電変換膜420、430、440、下部電極421、431、441、上部電極424、434、444、および上記回路基板402については、上記実施例2における有機光電変換膜120、130、140、下部電極121、131、141、上部電極124、134、144、および上記回路基板102と各々同様に構成されており、上記回路基板102上に上記有機光電変換膜120、130、140が順次積層される様子も上記実施例2と同様に構成されている。
また、第1~第3の光電変換部420A、430A、440A、および第1~第3TFT428、438、448についても、上記実施例2における第1~第3の光電変換部120A、130A、140A、および第1~第3TFT128、138、148と同様に構成されている。
【0206】
前述したように、本実施例の、第1有機光電変換膜420を有する光電変換部420A内には、下部電極421が形成されていない領域に第1有機層分離壁425(第1下部有機層分離壁425aと第1上部有機層分離壁425bを組合わせたものを便宜的に第1有機層分離壁425と称する)がストライプ状に形成されている。
【0207】
第1上部有機層分離壁425bは、第1下部有機層分離壁425aより幅が広く形成されており、これにより第1有機光電変換膜420および第1上部電極424のパターニングを的確に行うことができる。
すなわち、第1光電変換部420Aの第1有機光電変換膜420は、ストライプ状の2段壁構造からなる第1有機層分離壁425により分割されているが、第1上部有機層分離壁425bの第1下部有機層分離壁425aからの張出し量は、適宜設定し得る。要は、第1有機光電変換膜420や第1上部電極424等を成膜する際に、その材料が、第1有機光電変換膜420や第1上部電極424等の側面と対向する、第1下部有機層分離壁425aの側面に付着するのを阻止して、不測の導通状態が生じるのを防止することができればよい。
【0208】
また第1有機層保護膜485は、上記実施例2における第1層間絶縁膜127とは異なり、第1下部有機層分離壁425aの側面部分の周囲にまで配設されており、第1下部有機層分離壁425aの側面部分を保護する構成とされている。この構造は、第1下部有機層分離壁425aの上面位置(第1上部有機層分離壁425bの下面位置)を第1上部電極424の上面位置よりも高い位置に設定することにより、容易に形成することができる。
【0209】
なお、第1下部有機層分離壁425aと第1上部有機層分離壁425bの形成材料としては、同じものを用いてもよいし異なるものを用いてもよい。また、それらの形成材料は、上述した各実施例で用いられる材料と同様に、種々の材料を適用することができる。
また、このような第1有機層分離壁425における2段構造は、実施例2のみならず、上述した各実施例のいずれについても適用することが可能である。
【0210】
(製造方法)
次に、実施例5に係る積層型撮像素子401の製造方法について説明する。各工程で行われる加工技術自体は、一般に半導体製造プロセスで行われている汎用的な加工技術を用いて形成することが可能である。
【0211】
まず、
図25A(a)に示す回路基板402上の画素エリアに第1薄膜トランジスタ(TFT)428と第1下部電極421を、フォトリソグラフィー法等の上述した各実施例の手法と同様の手法にて形成する(
図25A(b))。
図25A~
図25Eでは積層型撮像素子401の2画素分の領域を示しており、第1有機層分離壁425の間隔は画素ピッチとされている。また図では省略されているが、配線電極やTFTのソース/ドレイン電極等、一般に撮像素子に用いられる画素回路や周辺回路も回路基板402上に形成される。これらは汎用的な半導体製造プロセスで形成されるため詳細は省略する。
【0212】
次に、
図25A(c)に示すように、回路基板402上に第1下部有機層分離壁の材料425a´を形成する。第1下部有機層分離壁の材料425a´には、好適な材料を用いることができ、その材料に適した成膜手法(例えば塗布法、スパッタ法、蒸着法等の一般的な成膜技術)を用いることができる。
この後、成膜した第1下部有機層分離壁の材料425a´を、フォトリソグラフィー法やレーザー描画法等でエッチングすることによりパターニングして第1下部有機層分離壁425aを形成する(
図25A(d))。この形成手法に替えて、(ナノ)インプリント法や印刷技術により、第1下部有機層分離壁425aを直接、回路基板402上に形成することも可能である。これらは第1下部有機層分離壁の材料425a´に応じて、任意に選択することができる。
【0213】
続いて、各第1下部有機層分離壁425aの間を埋めるように、犠牲層491を成膜する(
図25B(e))。
【0214】
ここで犠牲層491の膜厚は、第1下部有機層分離壁425aの高さ(膜厚)と略同じ膜厚となるように成膜される。
犠牲層491は、種々の塗布材料を用いることができる。なお、犠牲層491を成膜したあとに、第1下部有機層分離壁425aとともに研磨して、両者の上面を同じ高さに平坦化してもよい。
次に、
図25B(f)に示すように、犠牲層491および第1下部有機層分離壁425aの上面に、第1上部有機層分離壁の材料425b´を成膜する。
【0215】
次に、
図25B(g)に示すように、第1上部有機層分離壁の材料425b´をパターニングすることにより第1上部有機層分離壁425bを形成する。このとき、第1下部有機層分離壁425aの上面を覆い、かつ幅が第1下部有機層分離壁425aよりも広くなる形状となるようにパターニングする。
次に、
図25B(h)に示すように、犠牲層491を除去する。その手法は、エッチング等を用いて行う。ウェットエッチングによる場合は、第1上部有機層分離壁425b、第1下部有機層分離壁425a、第1下部電極421および第1TFT428等にダメージを与えないエッチング液を使用する。なお、犠牲層491の除去後、第1下部電極421および第1TFT428等の表面を紫外線や溶液等を用いて適宜クリーニング洗浄を行うようにしてもよい。
【0216】
次に、
図25C(i)に示すように、第1下部電極421上に第1有機光電変換膜420を成膜する。このとき第1上部有機層分離壁425bが、第1有機光電変換膜420の材料の照射流に対して、いわば傘として機能し、この材料が第1下部有機層分離壁425aの側面等に付着することを防止する。これにより、第1上部有機層分離壁425bの上面に堆積した有機光電変換膜と、第1下部有機層分離壁425aの側面に付着する材料とを完全に分離させることができるため、画素エリアへのパターニングを確実なものとすることができる。
【0217】
次に、
図25C(j)に示すように、第1上部電極424の形成材料を成膜する。この第1上部電極424の成膜材料も、上記第1有機光電変換膜420の形成材料と同様にパターニングされ、この際に、第1上部有機層分離壁425bが、上記第1有機光電変換膜420の成膜時と同様に、照射流に対して、いわば傘として機能する。
次に、
図25C(k)に示すように、第1有機層保護膜485を成膜する。塗布可能な材料を用いることにより、この材料が第1下部有機層分離壁425aの側面に入り込み、それ以降のプロセスによる第1有機光電変換膜420へのダメージを防止することができる。
なお、無機材料を成膜する場合は、この側面周囲に流入させることはできないが、第1有機層保護膜485を第1上部有機層分離壁425bと同じ高さまで成膜することにより、第1有機光電変換膜420や第1上部電極424を完全に覆うようにして、第1有機光電変換膜420等に薬品等によるダメージが及ぶのを防止することができる。
これにより、第2層以上の上部層の電極形成時にその電極のパターニングを行うことも可能となる。
【0218】
次に、
図25C(l)に示すように、第1上部有機層分離壁425bの上に堆積した第1有機光電変換膜420を除去することにより、さらにその上に堆積した第1上部電極の材料や第1有機層保護膜485も同時に除去できる(リフトオフ)。なお、本製造工程においても、第1有機層保護膜485により第1有機光電変換膜420が保護されているため、エッチング液等により第1有機光電変換膜420がダメージを受けるのを防止することができる。
【0219】
続いて、
図25D(m)に示すように、第2層目の第2光電変換部430A(
図24Aを参照)を形成する。まず、第2層目の第2下部電極431と第2TFT438を形成する。この製造手法としては、フォトリソグラフィー法等を用いることができる。なお図示していないが、配線電極もフォトリソグラフィー法等を用いて適宜形成する。
この後、
図25D(n)に示すように第2有機光電変換膜430を形成する。
【0220】
次に、
図25D(o)に示すように、上記第2有機光電変換膜430上に第2上部電極434を形成し、第2層目の第2光電変換部430Aの形成工程が終了する。本実施例では、第2層目に有機層分離壁を設ける態様とはしていないので、第2層目の第2上部電極434にパターニングを行う必要はない。
さらに、第3層目の第3光電変換部440A(
図24Aを参照)を形成する前に、
図25D(p)に示すように、第2上部電極434上に第2層間絶縁膜437を形成する。
【0221】
続いて、
図25E(q)に示すように、第3層目の第3光電変換部440Aを形成するが、第2層目の第2光電変換部430Aと同様に形成すればよいため、説明を省略する。
【0222】
最後に、
図25(r)に示すように、第3上部電極444上に保護層475を成膜する。
なお、本実施例の製造工程においては、第2層目と第3層目は有機層分離壁を形成しない構成としているが、有機光電変換膜の剥離をより確実に防ぐ構造とすることが求められる場合には、適宜、第2層目および/または第3層目にも有機層分離壁を形成する構成としてもよい。また、その際の製造工程は、
図25A(b)~
図25C(l)と同様の製造工程で各処理を進めるようにすればよい。
【0223】
本発明の積層型撮像素子およびその製造方法としては、上述した実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
例えば、上記撮像素子をカラー画像撮像素子に適用した場合には、2つの光電変換部と1つのCMOSイメージセンサを積層した構成のものであってもよいし、3つの光電変換部を積層した構成のものであってもよく、いずれをRGBの各色光用に割り当ててもよい。
【0224】
さらに、3層以外の有機光電変換膜を備えた撮像素子としてもよく、4つ以上の有機光電変換膜を積層し、G光用に2つ以上の有機光電変換膜を、R光用とB光用に各々1つの有機光電変換膜を割り当てるようにしてもよい。また、紫外線や赤外線に感度を持つ有機光電変換膜を有するように構成することも可能である。
また、上記有機光電変換膜を第1層に用い、光入射側の第2層以上には無機光電変換膜を用いたハイブリッドのデバイス構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0225】
1、1Aa~Ac、1Ba~Bd、101、101a~d、101´、201、201´、201a~d、301、301a~d、401 積層型撮像素子
2、102、202、302、402 回路基板
11 画素領域
12 非画素領域
20、120、220、320、420 第1有機光電変換膜
20A、120A、220A、320A、420A 第1光電変換部(第1層)
21、121、221、321、421 第1下部電極
24、124、224、324、424 第1上部電極
25、25a~f、125、125a~c、225、225a、b、325、325a、b 第1有機層分離壁
25´ 導電性部材
26、223、233、243、253、263、323、333、343、353、363 接続電極
27、127、227、327 第1層間絶縁膜
28、128、228、328、428 第1TFT(薄膜トランジスタ)
30、130、230、330、430 第2有機光電変換膜
30A、130A、230A、330A、430A 第2光電変換部(第2層)
31、131、231、331、431 第2下部電極
34、134、234、334、434 第2上部電極
35、35a~f、135、235、335 第2有機層分離壁
37、137、237、337、437 第2層間絶縁膜
38、138、238、338、438 第2TFT(薄膜トランジスタ)
40、140、240、340、440 第3有機光電変換膜
40A、140A、240A、340A、440A 第3光電変換部(第3層)
41、141、241、341、441 第3下部電極
44、144、244、344、444 第3上部電極
45、45a~f、145、245、345 第3有機層分離壁
48、148、248、348、448 第3TFT(薄膜トランジスタ)
50A、150A、250A、350A 第4光電変換部(第4層)
55、155、255、355 第4有機層分離壁
60A、160A、260A、360A 第5光電変換部(第5層)
65、165、265、365 第5有機層分離壁
75、175、275、375、475 保護層
95 ビア
129、229、329 緩衝絶縁膜
223´ 第1接続電極の材料
225´ 第1有機層分離壁の材料
322、332、342 貫通電極
392 透孔
425a 第1下部有機層分離壁
425a´ 第1下部有機層分離壁の材料
425b 第1上部有機層分離壁
425b´ 第1上部有機層分離壁の材料
485 第1有機層保護膜
491 犠牲層