(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】シリコーン粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 299/08 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
C08F299/08
(21)【出願番号】P 2021067595
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】竹脇 一幸
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-132947(JP,A)
【文献】特表2015-528586(JP,A)
【文献】国際公開第2009/099164(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジアルキルシロキサン単位と、
R
4
2SiO
2/2 (1)
(式(1)中、R
4は互いに独立に炭素数1~6の1価炭化水素基である。)
下記一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)メチルシロキサン単位と
【化1】
(式(2)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~6の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
を含み、表面にオキシアルキレン基を有するシリコーン粒子を製造する方法であって、
下記(A)成分~(C)成分を含有するラジカル重合性シリコーン組成物を、水中に分散させた状態で50℃以下の低温で重合させることを特徴とするシリコーン粒子の製造方法。
(A)下記一般式(3)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部
【化2】
(式(3)中、R
3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は下記一般式(4a)若しくは(4b)で示される基であるが、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
【化3】
(式(4a)及び(4b)中、R
6は水素原子又はメチル基であり、R
2は炭素数1~6の2価脂肪族基である。)
(B)下記一般式(5)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーン:0.1-100質量部
【化4】
(式(5)中、R
3は上記の通りであり、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。R
5は、下記一般式(7)で表されるポリオキシアルキレン基である。lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000を満たす数である。)
【化5】
(式(4a)及び(4b)中、R
6及びR
2は上記の通りである。)
-R
2O(CR
1HCH
2O)n-R
1 (7)
(式(7)中、R
1、R
2、及びnは上記の通りである。)
(C)レドックス系ラジカル重合開始剤:0.1-5質量部
【請求項2】
前記(A)成分として、下記一般式(8)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンを用いることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン粒子の製造方法。
【化6】
(式(8)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
【請求項3】
前記(B)成分として、下記一般式(9)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコーン粒子の製造方法。
【化7】
(式(9)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000、nは1≦n≦50を満たす数である。)
【請求項4】
前記シリコーン粒子の体積平均粒径を0.1~100μmとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシリコーン粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性のシリコーン粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、架橋シリコーン粒子が提案されている。さらに、特許文献2には、塗膜に艶消し性を付与するため、このシリコーン粒子を水性塗料組成物に添加することが提案されている。また、特許文献3や特許文献4には、化粧料の使用感を向上させるため、このシリコーン粒子を水性化粧料に添加することが提案されている。
【0003】
従来のシリコーン粒子は、化粧料として使用される場合、さらさら感、なめらかさ等の使用感、伸展性、及びソフトフォーカス効果等を付与する目的で用いられている。しかしながら、シリコーンは撥水性の高い材料であり、水性の化粧料には分散が困難であるという問題がある。
【0004】
上述のシリコーン粒子はいずれも、水を分散媒とした水系サスペンジョンとする場合、そのサスペンジョンを安定化させるために、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、またはこれらの混合物からなる界面活性剤が用いられている。
【0005】
特に化粧料用途には、これらのサスペンジョンや、エマルジョンにおいて、それ自体の安定性や配合物への分散性を向上させつつ、環境に与える影響の少ない界面活性剤を選択することが必要とされているが、炭素数12~15のアルキル基を有するアルキルポリエーテルは環境への影響が懸念される化学物質として、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)の排出量等報告の義務付け・指定化学物質となっており、その使用が制限されるようになってきている。
【0006】
また、界面活性剤は皮膚への刺激性が懸念されるため、特にスキンケア化粧料、メークアップ化粧料、制汗化粧料、紫外線防御化粧料等の皮膚に外用される化粧料に使用することが敬遠される場合がある。
【0007】
そのような界面活性剤の使用を回避する方法として、特許文献5に、界面活性剤フリーのシリコーン粒子の水分散物が提案されているが、シリコーン粒子製造後の表面処理工程が複雑であり、且つコストもかかることから一部の高価な用途向けしか使用できないといった問題があった。
【0008】
シリコーン粒子表面に化学結合的に親水基を導入した例として、特許文献6では、シリコーン粒子表面にアミノ基の導入が検討されているが、その水分散性や安定性は報告されていない。
【0009】
一般的なシリコーン粒子の製造方法は、反応性オルガノポリシロキサンを界面活性剤の存在下で水中に分散させた水中油滴型エマルジョン(O/W型)にて硬化させる方法である。界面活性剤はノニオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが使用されるが、オルガノポリシロキサンの乳化性能の高さや得られるエマルジョンの安定性、界面活性剤の種類の豊富さ及び入手のし易さからノニオン性界面活性剤が一般的に用いられている。
【0010】
ノニオン性界面活性剤は親水性基としてポリオキシエチレン基を有しているが、水中油滴型エマルジョン中ではポリオキシエチレン基を効率よく外側に向け、水分子と水素結合をして溶解・分散して乳化力を発揮している。しかしエマルジョンの温度が上昇すると、ポリオキシエチレン基と水分子の水素結合性が弱まり、ノニオン性界面活性剤が水に溶解・分散できなくなり、乳化力が低下することが知られている。この温度のことを曇点と呼び、曇点以上の温度ではエマルジョンが不安定化・分離することが知られている。
【0011】
シリコーン粒子を製造するための反応性基としてビニル基やアクリル基、メタクリル基等のラジカル重合反応性基を含むオルガノポリシロキサンを原料とする場合は、触媒として有機過酸化物等のラジカル重合開始剤を用い、加熱分解させて発生するラジカルを活性種とした重合反応が用いられることが多いが、界面活性剤の曇点が低温の場合や反応性オルガノポリシロキサンのエマルジョンの安定性が悪い場合には、ラジカル重合開始剤の分解温度まで加温することができないといった問題があった。
【0012】
そのような場合には、紫外線の照射により低温下でもラジカルを発生できる光ラジカル重合開始剤が用いられることもあるが、対応できる製造設備がまだ一般的ではなく、また紫外線照射装置が反応性オルガノポリシロキサンと直接接する場合には、紫外線照射装置の表面に重合物が付着して反応効率が低下する等の問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平11-140191号公報
【文献】特開平05-009409号公報
【文献】特開平10-139624号公報
【文献】特開平10-175816号公報
【文献】特表2016-505081号公報
【文献】特開2008-285552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、本発明は、水性の材料に、分散剤、界面活性剤を使用することなく、容易に分散し得る親水性基を有するシリコーン粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明では、
下記一般式(1)で表されるジアルキルシロキサン単位と、
R
4
2SiO
2/2 (1)
(式(1)中、R
4は互いに独立に炭素数1~6の1価炭化水素基である。)
下記一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)メチルシロキサン単位と
【化1】
(式(2)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~6の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
を含み、表面にオキシアルキレン基を有するシリコーン粒子を製造する方法であって、
下記(A)成分~(C)成分を含有するラジカル重合性シリコーン組成物を、水中に分散させた状態で50℃以下の低温で重合させるシリコーン粒子の製造方法を提供する。
(A)下記一般式(3)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部
【化2】
(式(3)中、R
3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は下記一般式(4a)若しくは(4b)で示される基であるが、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
【化3】
(式(4a)及び(4b)中、R
6は水素原子又はメチル基であり、R
2は炭素数1~6の2価脂肪族基である。)
(B)下記一般式(5)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーン:0.1-100質量部
【化4】
(式(5)中、R
3は上記の通りであり、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。R
5は、下記一般式(7)で表されるポリオキシアルキレン基である。lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000を満たす数である。)
【化5】
(式(4a)及び(4b)中、R
6及びR
2は上記の通りである。)
-R
2O(CR
1HCH
2O)n-R
1 (7)
(式(7)中、R
1、R
2、及びnは上記の通りである。)
(C)レドックス系ラジカル重合開始剤:0.1-5質量部
【0016】
このようにすれば、界面活性剤の曇点が低温の場合や反応性オルガノポリシロキサンのエマルジョンの安定性が悪い場合であっても、水性の材料に、分散剤、界面活性剤を使用することなく、容易に分散し得る親水性基を有するシリコーン粒子を容易に製造することができる。
【0017】
また、前記(A)成分として、下記一般式(8)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。
【化6】
(式(8)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
【0018】
本発明では、このような(A)成分を好適に用いることができる。
【0019】
また、前記(B)成分として、下記一般式(9)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いることが好ましい。
【化7】
(式(9)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000、nは1≦n≦50を満たす数である。)
【0020】
本発明では、このような(B)成分を好適に用いることができる。
【0021】
また、前記シリコーン粒子の体積平均粒径を0.1~100μmとすることが好ましい。
【0022】
本発明で製造するシリコーン粒子をこのような体積平均粒径とすることにより、水性の材料における分散性をよりよいものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のシリコーン粒子の製造方法であれば、界面活性剤の曇点が低温の場合や反応性オルガノポリシロキサンのエマルジョンの安定性が悪い場合であっても、水性の材料に、分散剤、界面活性剤を使用することなく、容易に分散し得る親水性基を有するシリコーン粒子を容易に製造することができる。また本発明のシリコーン粒子の製造方法により得られるシリコーン粒子は、表面にオキシアルキレン基(親水基)を有するため、水性の材料に、分散剤、典型的には界面活性剤を使用することなく、容易に分散し得る。例えば、スキンケア化粧料、メークアップ化粧料、制汗化粧料、紫外線防御化粧料等の皮膚に外用される水性の化粧料用途においては、シリコーン粒子を配合するために別途界面活性剤を使用する必要がないため、皮膚刺激性の心配がない製品とすることができる。また、水性の塗料やインキにおいては、シリコーン粒子の分散用に界面活性剤を追加添加する必要がなく、塗膜強度の低下や気泡が抜け難くなる問題が低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記のように、本発明は、水性の材料に、別途、分散剤、界面活性剤を使用することなく、容易に分散し得る、親水性基を有するシリコーン粒子の製造方法を提供することを目的としている。
【0025】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを乳化剤として使用し、ラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンを乳化してエマルジョンを作製し、このエマルジョンをレドックス系ラジカル重合開始剤を用いて50℃以下の低温で乳化重合、架橋することによって、表面に親水性基を有するシリコーン粒子が得られ、容易に水に分散させることができることを知見した。
【0026】
即ち、本発明は、上記一般式(1)で表されるジアルキルシロキサン単位と、上記一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)メチルシロキサン単位とを含み、表面にオキシアルキレン基を有するシリコーン粒子を製造する方法であって、上記(A)成分~(C)成分を含有するラジカル重合性シリコーン組成物を、水中に分散させた状態で50℃以下の低温で重合させるシリコーン粒子の製造方法である。
【0027】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
[シリコーン粒子]
はじめに、本発明のシリコーン粒子の製造方法により得られるシリコーン粒子を詳細に説明する。
【0029】
シリコーン粒子は、下記一般式(1)で表されるジアルキルシロキサン単位と、
R
4
2SiO
2/2 (1)
(式(1)中、R
4は互いに独立に炭素数1~6の1価炭化水素基である。)
下記一般式(2)で表されるポリ(オキシアルキレン)メチルシロキサン単位と
【化8】
(式(2)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~6の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
を含むシリコーン粒子であって、表面にオキシアルキレン基を有するシリコーン粒子である。
【0030】
上記のように、一般式(1)中、R4は互いに独立に炭素数1~6の1価炭化水素基である。R4として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等のアルキル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基、並びに、フェニル基等のアリール基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。
【0031】
また、上記のように、一般式(2)中、R1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基である。R1の炭素数1~6の1価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が例示され、R1は、好ましくは、水素原子、メチル基である。また、上記のように、一般式(2)中、R2は互いに独立に炭素数1~6の2価脂肪族基である。R2として、具体的には、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基であり、好ましくは、エチレン基、プロピレン基である。また、一般式(2)中、nは1≦n≦50を満たす数であり、好ましくは、3≦n≦45である。
【0032】
このようなシリコーン粒子は、水性の材料に、分散剤、界面活性剤を使用することなく、容易に分散し得るシリコーン粒子とすることができる。このようなシリコーン粒子は、表面にオキシアルキレン基を有するため、特性がよい親水性シリコーン粒子とすることができる。具体的には、より親水性が高く、皮膚への刺激性の低い、化粧料に好適なものとなる。また、シリコーン粒子の使用時の配合組成において、陰イオン性界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤との組み合わせに制限が無くなる。なお、本発明により得られるシリコーン粒子は、界面活性剤を別途添加することなく水性の材料に容易に分散できるものであるが、必要に応じて、シリコーン粒子に界面活性剤を併用することは任意である。
【0033】
本親水性シリコーン粒子の製造方法では、後述の(B)成分が界面活性剤兼モノマーとして作用し、水中油滴型エマルジョン(O/W型)を形成する。エマルジョン中では(B)成分中の親水性のオキシアルキレン基は水相側(外層側)に配向しており、エマルジョン中で硬化反応が進行するため、硬化後も親水性のオキシアルキレン基の配向が維持され、シリコーン粒子の表面(外層側)にオキシアルキレン基を有する構造になると考えられる。
【0034】
上記のように、本発明のシリコーン粒子は、表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジアルキルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子である。シリコーン粒子の体積平均粒径は0.1~100μmが好ましく、0.5~40μmがより好ましく、1~20μmがさらに好ましく、1~10μmがきわめて好ましい。シリコーン粒子の体積平均粒径が0.1μm以上であると、凝集性が高すぎず、分散媒に対して一次粒子にまで容易に分散し得る。また、シリコーン粒子の体積平均粒径が100μm以下であれば、幅広い用途に使用できる。すなわち、シリコーン粒子の体積平均粒径が0.1~100μmであると、分散性がよく、化粧料や水性の塗料やインキなど様々な用途に使用できる。
【0035】
なお、シリコーン球状粒子の体積平均粒径は、その粒径に応じて、顕微鏡法、光散乱法、レーザー回折法、液相沈降法、電気抵抗法等から適宜選択された方法により測定される。例えば、0.1μm以上1μm未満の場合は光散乱法、1~100μmの範囲は電気抵抗法で測定すればよい。また、本明細書において、「球状」とは、粒子の形状が、真球だけを意味するものではなく、最長軸の長さ/最短軸の長さ(アスペクト比)が平均して、通常、1~4、好ましくは、1~2、より好ましくは、1~1.6、さらにより好ましくは、1~1.4の範囲にある、変形した楕円体も含むことを意味する。粒子の形状は、粒子を光学顕微鏡や電子顕微鏡にて観察することにより確認することができる。
【0036】
[シリコーン粒子の製造方法]
このようなシリコーン粒子は、下記(A)成分~(C)成分を含有するラジカル重合性シリコーン組成物を、水中に分散させた状態で50℃以下の低温で重合させることで得ることができる。
(A)下記一般式(3)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部
【化9】
(式(3)中、R
3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は下記一般式(4a)若しくは(4b)で示される基であるが、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
【化10】
(式(4a)及び(4b)中、R
6は水素原子又はメチル基であり、R
2は炭素数1~6の2価脂肪族基である。)
(B)下記一般式(5)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーン:0.1-100質量部
【化11】
(式(5)中、R
3は上記の通りであり、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。R
5は、下記一般式(7)で表されるポリオキシアルキレン基である。lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000を満たす数である。)
【化12】
(式(4a)及び(4b)中、R
6及びR
2は上記の通りである。)
-R
2O(CR
1HCH
2O)n-R
1 (7)
(式(7)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~6の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
(C)レドックス系ラジカル重合開始剤:0.1-5質量部
【0037】
以下、(A)~(C)成分を説明する。
【0038】
[(A)成分]
まず、(A)成分は、下記一般式(3)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンである。
【化13】
(式(3)中、R
3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は下記一般式(4a)若しくは(4b)で示される基であるが、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
【化14】
(式(4a)及び(4b)中、R
6は水素原子又はメチル基であり、R
2は炭素数1~6の2価脂肪族基である。)
【0039】
上記のように、一般式(3)におけるR3は、夫々独立に炭素原子数1~6の1価炭化水素基又は一般式(4a)若しくは(4b)で示される基である。該1価炭化水素基としては、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル及びシクロヘキシル等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基などが挙げられる。これらの1価炭化水素基の中でも、炭素原子数1~6のアルキル基及びアリール基が好ましく、メチル基、エチル基、及びフェニル基がより好ましい。
【0040】
また、上記一般式(3)中のR3のうち少なくとも1つは、上記式(4a)又は(4b)で示される基である。上記式(4a)又は(4b)におけるR6は水素原子又はメチル基である。また、上記式(4a)又は(4b)におけるR2は、炭素原子数1~6の2価脂肪族基であり、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン、ペンチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、及びプロピレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。
【0041】
R3中、上記式(4a)又は(4b)で示される基の数は、1つ以上であれば特に限定されないが、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個、極めて好ましくは2個である。
【0042】
また、mは、0≦m≦1,000を満たす数であり、好ましくは5≦m≦500、より好ましくは10≦m≦500、さらに好ましくは10≦m≦300、きわめて好ましくは10≦m≦200である。mが1,000より大きいと、粘度が高くなり過ぎて、作業性に劣るものとなる。
【0043】
mの値は、例えば29Si-NMR測定などにより平均値として算出できるほか、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均分子量から求めることができる。
【0044】
(A)成分としては、下記一般式(8)に示すラジカル重合反応性基を有するオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。
【化15】
(式(8)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、mは0≦m≦1,000を満たす数である。)
【0045】
一般式(8)中、R2、R6、及びmは上記式(3)、(4a)、(4b)で説明したものと同じである。
【0046】
また、(A)成分のオルガノポリシロキサンの例としては、例えば下記式の化合物を挙げることができる。
【0047】
【0048】
[(B)成分]
次に、(B)成分は、下記一般式(5)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンである。
【化17】
(式(5)中、R
3は上記の通りであり、下記式(4a)又は(4b)で示される基を1分子中に少なくとも1個有する。R
5は、下記一般式(7)で表されるポリオキシアルキレン基である。lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000を満たす数である。)
【化18】
(式(4a)及び(4b)中、R
6及びR
2は上記の通りである。)
-R
2O(CR
1HCH
2O)n-R
1 (7)
(式(7)中、R
1は互いに独立に水素原子、又は、炭素数1~6の1価炭化水素基であり、R
2は互いに独立に炭素数1~6の2価脂肪族基である。nは1≦n≦50を満たす数である。)
【0049】
(B)成分である、ラジカル重合性基(ラジカル重合反応性基)を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンは、上記(A)成分を水中に乳化分散でき、ラジカル重合性基を有するものである。すなわち、(B)成分は、反応において、界面活性剤としても作用すると言える。この(B)成分(界面活性剤)は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0050】
また、このように、ラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いることで、エマルジョンの乳化安定性を向上することができる。また、それとともに、製造した親水性シリコーン粒子の表面に固定される界面活性剤を非イオン性界面活性剤とすることができる。これにより、特性がよい親水性シリコーン粒子とすることができる。
【0051】
上記式(5)、(4a)、(4b)中、R2、R3、R6は(A)成分のところで説明したものと同じである。またR3中、上記式(4a)又は(4b)で示される基の数は、1つ以上であれば特に限定されないが、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個、極めて好ましくは2個である。
【0052】
また上記式(7)中、R1、R2はシリコーン粒子のところで説明したものと同じである。
【0053】
lは、1≦l≦300を満たす数であり、好ましくは1≦l≦100、より好ましくは1≦l≦50であり、さらに好ましくは1≦l≦10、きわめて好ましくは3≦l≦5である。lが300より大きいと、(A)成分を乳化するのに適当な親水性/疎水性のバランスを保てなくなる。
【0054】
m’は、1≦m’≦1,000を満たす数であり、好ましくは5≦m’≦500、より好ましくは10≦m’≦300である。m’が1,000より大きいと、粘度が高くなり過ぎて、作業性に劣るものとなる。
【0055】
nは、1≦n≦50を満たす数であり、好ましくは2≦n≦48、より好ましくは2≦n≦46、さらに好ましくは3≦n≦45である。nが50より大きいと、(A)成分を乳化するのに適当な親水性/疎水性のバランスを保てなくなる上に、常温で液状にならず作業性にも劣るものとなる。
【0056】
(B)成分として、下記一般式(9)に示すラジカル重合性基を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いることが好ましい。
【化19】
(式(9)中、R
2及びR
6は上記の通りであり、lは1≦l≦300、m’は1≦m’≦1,000、nは1≦n≦50を満たす数である。)
【0057】
上記式(9)中、R2、R6、l、m’、及びnは上記式(5)、(4a)、(4b)で説明したものと同じである。
【0058】
また、(B)成分であるポリオキシアルキレン変性シリコーンの例としては、例えば下記式の化合物を挙げることができる。
【0059】
【0060】
【化21】
(上記式中、(C
3H
6O)は、(CH(CH
3)CH
2O)を表す。)
【0061】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1~100質量部の範囲内であり、好ましくは、5~15質量部の範囲内である。これは(B)成分の含有量が0.1質量部未満であると、得られる架橋シリコーン粒子の水分散性が低下し、一方、100質量部を超えると、得られるシリコーン粒子が小さくなりすぎるためである。
【0062】
[(C)レドックス系ラジカル重合開始剤]
(C)成分であるレドックス系ラジカル重合開始剤はラジカル重合開始剤と還元剤の組み合わせから成る。一般的にはラジカル重合開始剤単独でも重合を開始できるが、(B)成分の曇点が低温の場合や、(A)成分及び(B)成分からなるエマルジョンの安定性が悪い場合は、低温で重合させるために、本発明のシリコーン粒子の製造方法は、ラジカル重合開始剤と還元剤を組み合わせたレドックス系ラジカル重合開始剤を用いて組成物を硬化させる。
【0063】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素水、t-ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等が挙げられるが、(A)成分及び(B)成分に分散しやすいクメンヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイドが好ましい。
【0064】
上記のラジカル重合開始剤と組み合わせる還元剤の例としては特に限定されないが、硫酸第一鉄が種々のヒドロパーオキサイド系開始剤向けに、またN,N-ジメチルアニリンがベンゾイルパーオキサイドとの組み合わせで用いられることが知られている。
【0065】
(C)成分の添加量は(A)100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲で配合され、好ましくは0.2~3質量部の範囲である。0.1質量部未満であると硬化性が不足し、5質量部を超える量で添加した場合は重合時のエマルジョンの安定性不良等の問題、及びその反応残渣等の混入(コンタミネーション)でシリコーン粒子に臭いや特性低下等の問題が起こる。
【0066】
本発明のシリコーン粒子の製造方法では、(A)~(C)成分の水中分散液を調製した後にラジカル重合してもよく、また(A)成分及び(B)成分及び(C)成分のラジカル重合開始剤の水中分散液を調製した後に、還元剤を添加してラジカル重合してもよく、また(A)成分及び(B)成分の水中分散液を調製した後に(C)成分を添加してラジカル重合してもよい。
【0067】
また、分散媒である水の添加量は、(A)成分100質量部に対して20~1500質量部の範囲内であることが好ましい。
【0068】
[その他の添加剤]
本発明のシリコーン粒子の製造方法で用いるエマルジョンには、上記(A)~(C)成分以外に、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができる。例えば、増粘剤、防腐剤、pH調整剤、酸化防止剤、重合禁止剤等が挙げられ、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、適量用いることができる。
【0069】
上記の(A)~(C)成分を含有するラジカル重合性シリコーン組成物を水に均一に分散させるため一般的な乳化分散機を用いることができる。この乳化機としては、ホモミキサー、パドルミキサー、ヘンシェルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー、インライン式連続乳化機、超音波乳化機、真空式練合機が例示される。
【0070】
このようにして得られたエマルジョンをラジカル重合させることにより、シリコーン粒子の分散液を調製する。重合温度としては50℃以下であれば特に限定はされないが、例えば0~50℃、好ましくは10~40℃、さらに好ましくは20~30℃とすることができる。
【0071】
次いで、この分散液またはスラリーから水及び未反応の(B)成分及び(C)成分の反応残渣等を除去することによりシリコーン粒子を得ることができる。
【0072】
水及び未反応の(B)成分及び(C)成分の反応残渣等の除去方法としては、例えば、加熱脱水、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の方法により分散液を濃縮した後、必要に応じて水洗を行ない、さらに常圧もしくは減圧下で加熱乾燥する方法、加熱気流中に分散液を噴霧して加熱乾燥する方法、あるいは流動熱媒体を使用して加熱乾燥する方法が挙げられる。また、分散液を凝固させてから減圧し分散媒を除去する方法として、凍結乾燥も挙げられる。分散媒を除去して得られる架橋シリコーン粒子が凝集している場合には、それを乳鉢等やジェットミル等で粉砕してもよい。
【0073】
また、本発明のシリコーン粒子の製造方法によって製造されたシリコーン粒子は、粒子表面にポリオキシアルキレン基がラジカル重合による化学結合で固定されている。また、原料の(B)成分としてポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いているので、粒子表面にポリオキシアルキレン基を含有しているシリコーン粒子となる。このような、粒子表面に固定されたポリオキシアルキレン基は、重水によるNMR分析で確認できる。
【0074】
本発明で製造されるシリコーン粒子は、べたつきがないことが好ましく、そのゴム硬度は、JISK6253に規定されているタイプAデュロメーターによる測定で、5~90が好ましく、より好ましくは10~60の範囲である。ゴム硬度が5以上、特に10以上であれば、そのようなシリコーン粒子は、凝集性が高くなりすぎず、分散媒に対して一次粒子にまで分散しやすい。また、ゴム硬度が90以下、特に60以下であれば、シリコーン粒子の弾性的な特徴を有したままとすることができる。
【0075】
本発明のシリコーン粒子の製造方法で得られるシリコーン粒子は、ゴム弾性を有し、凝集性が低く、水分散性が高いため、水性化粧料、水性塗料、プリント基板、接着剤等に有用である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、例中、動粘度は25℃においてオストワルド粘度計により測定した値であり、濃度及び含有率を表す「%」は「質量%」を示す。また、分散性の評価は各例中で説明した通りに行った。
【0077】
[実施例1]
下記式(10)で示される、動粘度が180mm2/sの二官能性メタクリルポリシロキサン((A)成分):150gと、クメンヒドロパーオキサイド(日油製パークミルH)((C)成分のラジカル重合開始剤):0.33gとを容量0.5リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて4000rpmで5分間攪拌溶解させた。次いで、下記式(11)で示される、動粘度が160mm2/s、1%水溶液での曇点65℃の二官能性メタクリルポリエチレングリコール変性ポリシロキサン((B)成分):15gと水:30gを加え、ホモミキサーを用いて7000rpmで攪拌したところ、水中油滴型となり、増粘が認められ、さらに15分間攪拌を継続した。次いで、2000rpmで攪拌しながら、水105gを加え希釈した。100MPaの圧力の条件でホモジナイザーに通し、均一な白色エマルジョンを得た。
【0078】
【0079】
このエマルジョンを錨型攪拌翼による攪拌装置の付いた容量0.5リットルのガラスフラスコ内で、20~25℃に温調した後、硫酸第一鉄・七水和物((C)成分の還元剤):0.012g及びアスコルビン酸0.12gを添加し、同温度で8時間撹拌してシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0080】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.6μmであった。
【0081】
シリコーン粒子の水分散液約300gを錨型攪拌翼による攪拌装置の付いた容量2リットルのガラスフラスコに移し、水:950g、硫酸ナトリウム:50gの水溶液を添加し、30分間攪拌を行った後、下層の洗浄水を除いた。再び、水:950g、硫酸ナトリウム:50gの水溶液を添加し、30分間攪拌を行った後、下層の洗浄水を除き、シリコーン粒子の水分散液を得た。さらに70℃の温水1000gで2回水洗して得た、約15%のシリコーン粒子の水分散液を凍結乾燥させ、白色のシリコーン粒子を得た。
【0082】
得られたシリコーン粒子を界面活性剤を用いずに水に分散させて、電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、粒度分布は前記のシリコーン粒子の水分散液と同等で、体積平均粒径は2.6μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0083】
[実施例2]
実施例1で用いた構造式(10)の二官能性メタクリルポリシロキサンの代わりに下記式(12)で示される、動粘度が90mm2/sの化合物を用いた以外は実施例1と同じ方法でシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0084】
【0085】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.7μmであった。実施例1と同様の精製方法から得たシリコーン粒子の、界面活性剤を用いずに水に分散させて測定したときの体積平均粒径は2.7μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0086】
[実施例3]
実施例1で用いたクメンヒドロパーオキサイド(日油製パークミルH)((C)成分のラジカル重合開始剤):0.33gの代わりに、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド(日油製パーオクタH)((C)成分のラジカル重合開始剤):0.27gを用いた以外は実施例1と同じ方法でシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0087】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.8μmであった。実施例1と同様の精製方法から得たシリコーン粒子の、界面活性剤を用いずに水に分散させて測定したときの体積平均粒径は2.8μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0088】
[実施例4]
上記式(10)で示される、動粘度が180mm2/sの二官能性メタクリルポリシロキサン((A)成分):150gと、クメンヒドロパーオキサイド(日油製パークミルH)((C)成分のラジカル重合開始剤):0.33gとを容量0.5リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて4000rpmで5分間攪拌溶解させた。次いで、下記式(13)で示される、動粘度が53,700mm2/s、1%水溶液での曇点50℃の二官能性メタクリルポリアルキレングリコール変性ポリシロキサン((B)成分):15gと水:30gを加え、ホモミキサーを用いて7000rpmで攪拌したところ、水中油滴型となり、増粘が認められ、さらに15分間攪拌を継続した。次いで、2000rpmで攪拌しながら、水105gを加え希釈した。100MPaの圧力の条件でホモジナイザーに通し、均一な白色エマルジョンを得た。
【0089】
【0090】
このエマルジョンを錨型攪拌翼による攪拌装置の付いた容量0.5リットルのガラスフラスコ内で、20~25℃に温調した後、硫酸第一鉄・七水和物((C)成分の還元剤):0.012g及びアスコルビン酸0.12gを添加し、同温度で8時間撹拌してシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0091】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、1.4μmであった。実施例1と同様の精製方法から得たシリコーン粒子の、界面活性剤を用いずに水に分散させて測定したときの体積平均粒径は1.4μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認された。このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基及び-(CH(CH3)CH2O)-基が検出され、シリコーン粒子の表面にポリオキシアルキレン単位を含むポリジメチルシロキサンが架橋されているシリコーン粒子と判断された。
【0092】
[比較例1]
実施例1で用いた構造式(11)のメタクリルポリエチレングリコール変性ポリシロキサン((B)成分)の変わりに下記式(14)で示される、動粘度が120mm2/s、1%水溶液での曇点65℃の化合物を用いた以外は実施例1と同じ方法でシリコーン粒子の水分散液を得た。
【0093】
【0094】
得られた水分散液中のシリコーン粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定したところ、2.6μmであった。しかし、実施例1と同様の精製方法からシリコーン粒子を得たが、このシリコーン粒子は単独では水に分散しなかったので、一般の界面活性剤を使用して体積平均粒径を測定したところ、2.6μmであった。このシリコーン粒子を電子顕微鏡で観察したところ、球状のシリコーンエラストマー粒子となっていることが確認されたが、このシリコーン粒子について、重水中でのNMR分析を行ったところ、-(CH2CH2O)-基に起因するピークは検出されなかった。
【0095】
このように、(B)成分の代わりにラジカル重合性基を有しないポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いて重合反応を行った比較例1では、シリコーン粒子表面にオキシアルキレン基を固定することができない。
【0096】
[比較例2]
上記式(10)で示される、動粘度が180mm2/sの二官能性メタクリルポリシロキサン((A)成分):150gと、上記式(11)で示される、動粘度が160mm2/s、1%水溶液での曇点65℃の二官能性メタクリルポリエチレングリコール変性ポリシロキサン((B)成分):15gと水:30gを加え、ホモミキサーを用いて7000rpmで攪拌したところ、水中油滴型となり、増粘が認められ、さらに15分間攪拌を継続した。次いで、2000rpmで攪拌しながら、水105gを加え希釈した。100MPaの圧力の条件でホモジナイザーに通し、均一な白色エマルジョンを得た。
【0097】
この白色エマルジョン258gに、1%過硫酸カリウム水溶液42gを加え、錨型攪拌翼による攪拌装置の付いた容量0.5リットルのガラスフラスコ内で、75℃で3時間撹拌したところ、エマルジョンが分離した。
【0098】
[比較例3]
比較例2で調製した白色エマルジョン258gに、1%過硫酸カリウム水溶液42gを加え、錨型攪拌翼による攪拌装置の付いた容量0.5リットルのガラスフラスコ内で、50℃で3時間撹拌したが、重合は進行せず、シリコーン粒子は得られなかった。
【0099】
このように、(C)成分の代わりにラジカル重合開始剤を単独で使用した比較例2、3では、重合反応を進めるためには50℃よりも高温にする必要があり、その結果、曇点の低い(B)成分の乳化力が低下してしまい、所望の反応操作を進めることができない。
【0100】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。