IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特許-自動分析装置の制御方法 図1
  • 特許-自動分析装置の制御方法 図2
  • 特許-自動分析装置の制御方法 図3
  • 特許-自動分析装置の制御方法 図4
  • 特許-自動分析装置の制御方法 図5
  • 特許-自動分析装置の制御方法 図6
  • 特許-自動分析装置の制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】自動分析装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240522BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20240522BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240522BHJP
   G01N 30/46 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G01N35/10 B
G01N30/86 Q
G01N30/86 R
G01N30/26 A
G01N30/46 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023505145
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 JP2022000207
(87)【国際公開番号】W WO2022190605
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2021036115
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓実
(72)【発明者】
【氏名】杉目 和之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直人
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/68786(WO,A1)
【文献】特開2006-258732(JP,A)
【文献】国際公開第2017/216934(WO,A1)
【文献】特開昭63-32367(JP,A)
【文献】米国特許第4468331(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/14566(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110694701(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00ー37/00
G01N 30/46
G01N 30/86
G01N 30/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の前処理を行う前処理部と、互いに並列に配置された複数の分析流路を有する液体クロマトグラフにより、前記前処理部で処理された試料を、複数種類の溶媒を使用して分離する分離処理を行う分離部と、前記分離部で分離された試料を検出する検出部と、前記前処理部、前記分離部及び前記検出部を制御する制御部と、を備え、前記制御部にて分析実行前に分析スケジュールを作成し、作成された前記分析スケジュールに基づいて前記試料を分析する自動分析装置の制御方法において、
互いに種類が異なる溶媒を用いた複数の分離処理を、前記複数の分析流路のうちのいずれを使用して、互いに時間差を設けて導入するかを決定し、
前記互いに時間差を設けて導入するかが決定された前記複数の分離処理の開始後のタイミングに行われる、次の分離処理に用いられる溶媒と、前記互いに時間差を設けて導入するかが決定された前記複数の分離処理に用いられるそれぞれの前記溶媒とを比較し、
前記複数の分離処理に使用された前記分析流路に対して溶媒置換処理が必要か否かを判定し、
前記溶媒置換処理が必要か否かの前記判定に従って、前記複数の分析流路のうちの前記次の分離処理に使用する分析流路を決定し、前記分析スケジュールを作成する、
ことを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置の制御方法において、
前記複数の分析流路のうちの前記次の分離処理に使用する分析流路は、前記溶媒置換処理が必要ではないと判定した分析流路であることを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置の制御方法において、
前記複数の分離処理に使用された前記分析流路に対して溶媒置換処理が必要か否かを判定し、前記分析流路のすべてに対して前記溶媒置換処理が必要と判定したときは、前記複数の分析流路のうち前記溶媒置換処理に必要なサイクルが最小である分析流路を前記次の分離処理に使用する分析流路と決定することを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置の制御方法において、
前記分析スケジュールは、
前記複数の分析流路のうちの前記次の分離処理に使用する分析流路は、前記溶媒置換処理が必要ではないと判定した分析流路と決定する第一のスケジューリング方式と、
前記複数の分析流路のうちの前記次の分離処理に使用する分析流路は、
前記溶媒置換処理が必要でないと判定された分析流路の分離処理完了タイミングと、前記溶媒置換処理が必要であると判定された分析流路の分離処理完了タイミングと、のうちの最も早く分離処理を完了すると判定した分析流路と決定する第二のスケジューリング方式と、
を有し、
前記自動分析装置は、入出力装置を備え、前記入出力装置により前記第一のスケジューリング方式と、前記第二のスケジューリング方式と、のうちのいずれかが選択されることを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項5】
試料の前処理を行う前処理部と、互いに並列に配置された複数の分析流路を有する液体クロマトグラフにより、前記前処理部で処理された試料を、複数種類の溶媒を使用して分離する分離処理を行う分離部と、前記分離部で分離された試料を検出する検出部と、前記前処理部、前記分離部及び前記検出部を制御する制御部と、を備え、前記制御部にて分析実行前に分析スケジュールを作成し、作成された前記分析スケジュールに基づいて前記試料を分析する自動分析装置において、
前記制御部は、互いに種類が異なる溶媒を用いた複数の分離処理を、前記複数の分析流路のうちのいずれを使用して、互いに時間差を設けて導入するかを決定し、
前記互いに時間差を設けて導入するかが決定された前記複数の分離処理の開始後のタイミングに行われる、次の分離処理に用いられる溶媒と、前記互いに時間差を設けて導入するかが決定された前記複数の分離処理に用いられるそれぞれの前記溶媒とを比較し、
前記複数の分離処理に使用された前記分析流路に対して溶媒置換処理が必要か否かを判定し、
前記溶媒置換処理が必要か否かの前記判定に従って、前記複数の分析流路のうちの前記次の分離処理に使用する分析流路を決定し、前記分析スケジュールを作成する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記複数の分析流路のうちの前記次の分離処理に使用する分析流路を、前記溶媒置換処理が必要ではないと判定した分析流路と決定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項5に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記複数の分離処理に使用された前記分析流路に対して溶媒置換処理が必要か否かを判定し、前記分析流路のすべてに対して前記溶媒置換処理が必要と判定したときは、前記複数の分析流路のうち前記溶媒置換処理に必要なサイクルが最小である分析流路を前記次の分離処理に使用する分析流路と決定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項5に記載の自動分析装置において、
前記分析スケジュールは、
前記複数の分析流路のうちの前記次の分離処理に使用する分析流路は、前記溶媒置換処理が必要ではないと判定した分析流路と決定する第一のスケジューリング方式と、
前記複数の分析流路のうちの前記次の分離処理に使用する分析流路は、
前記溶媒置換処理が必要でないと判定された分析流路の分離処理完了タイミングと、前記溶媒置換処理が必要であると判定された分析流路の分離処理完了タイミングと、のうちの最も早く分離処理を完了すると判定した分析流路と決定する第二のスケジューリング方式と、
を有し、
前記自動分析装置は、入出力装置を備え、前記制御部は、前記入出力装置により前記第一のスケジューリング方式と、前記第二のスケジューリング方式と、のうちのいずれか選択されたスケジューリング方式に従って、前記分析スケジュールを作成することを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿などの生体試料の定量或いは定性分析を行う為の自動分析装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置において、生体試料から分析対象成分を分離するためにクロマトグラフを使用するものがある。
【0003】
クロマトグラフとは、試料を移動相(溶媒)と共に、固定相が充填されている分離カラムを通過させることで、試料中の成分と固定相及び移動相との相互作用によって分析対象成分を分離させる分析装置である。分離された成分は検出器にて検出し、試料の成分を特定することができる。特に、液体の移動相を用いるクロマトグラフを、液体クロマトグラフという。
【0004】
近年では、生体試料中の薬物成分や代謝物などを定量測定するために、液体クロマトグラフを用いた自動分析装置を使用する機会が増えている。こうした液体クロマトグラフを用いる自動分析装置では、連続して分析を実行することが多く、スループットが高いことが望まれる。
【0005】
しかしながら、従来の液体クロマトグラフを用いた自動分析装置においては、分離処理に要する時間が長いために、検出器がデータを取得していない状態となっている時間が多く、スループットが向上しないという問題があった。
【0006】
上記の問題に対して、液体クロマトグラフ部に、それぞれカラムを有する複数の分析流路を並列に備え、それらを1つの検出器に接続することで、検出器の稼働率を改善し、スループットを向上させた自動分析装置がある。このような複数の分析流路を並列に備える自動分析装置においては、分析スケジュール作成時に、各分析の分離処理を実行する分析流路を選択する必要がある。
【0007】
液体クロマトグラフは、1つの分析流路に少なくとも、分析対象成分を分離するためのカラムと、カラムに液体を流し込むための送液装置を有する。液体クロマトグラフを使用する自動分析装置1台にて、複数種類の異なる分離処理を実行する場合、1つの分析流路で連続して実行する2つの分離処理にて使用される溶媒組成が異なることがある。その場合、連続する2つの分離処理の間に、分析流路内の溶媒を入れ替える処理(溶媒置換)を行い、分析流路内を、後に続く分離処理が実行可能な状態とする必要がある。
【0008】
溶媒置換を行う場合、連続する2つの分離処理の間に、溶媒置換を行う為の処理サイクルが挿入されるため、自動分析装置としてのスループットが低下することに加えて、分析流路内の溶媒を入れ替えるために溶媒の消費量が増加し、ランニングコストが増加するという問題がある。
【0009】
こうした問題に対し、特許文献1では、同一分離条件の下での複数の試料の分析が連続的に行われるように分析順序を入れ替えた分析スケジュールを作成する技術が提案されている。
【0010】
これにより、分析流路の洗浄(溶媒置換を含む)回数を減少させることで、分析所要時間の短縮を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2014/068786A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の技術において、試料の分析順序を入れ替えるには、試料を一時的に保管・退避させておくためのスペースや、試料をラックで管理している場合にはラックごと順序を入れ替えるための機構が必要となる。
【0013】
しかしながら、自動分析装置の大きさや費用を考慮すると、必ずしも前記のスペースや機構を備えられるとは限らない。
【0014】
そのため、前記のスペースや機構を備えていない自動分析装置においては、試料の分析順序を入れ替えることなく、溶媒置換によるスループットの低下及び溶媒消費量の増加を回避することが課題となる。
【0015】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、複数の分析流路を並列に備えた液体クロマトグラフを有する自動分析装置の制御方法及び自動分析装置において、溶媒置換によるスループットの低下及び溶媒消費量の増加を回避する制御方法及び自動分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために、以下のように構成される。
【0017】
試料の前処理を行う前処理部と、互いに並列に配置された複数の分析流路を有する液体クロマトグラフにより、前記前処理部で処理された試料を、複数種類の溶媒を使用して分離する分離処理を行う分離部と、前記分離部で分離された試料を検出する検出部と、制御部と、を備え、前記制御部にて分析実行前に分析スケジュールを作成し、前記試料を分析する自動分析装置の制御方法において、互いに種類が異なる溶媒を用いた複数の分離処理を、前記複数の分析流路のうちのいずれを使用して、互いに時間差を設けて導入するかを決定し、前記互いに時間差を設けて導入するかが決定された前記複数の分離処理の開始後のタイミングに行われる、次の分離処理に用いられる溶媒と、前記複数の分離処理に用いられるそれぞれの前記溶媒とを比較し、前記複数の分離処理に使用された前記分析流路に対して溶媒置換処理が必要か否かを判定し、前記判定に従って、前記複数の分析流路のうちの前記次の分離処理に使用する分析流路を決定し、前記分析スケジュールを作成する。
【0018】
試料の前処理を行う前処理部と、互いに並列に配置された複数の分析流路を有する液体クロマトグラフにより、前記前処理部で処理された試料を、複数種類の溶媒を使用して分離する分離処理を行う分離部と、前記分離部で分離された試料を検出する検出部と、制御部と、を備え、前記制御部にて分析実行前に分析スケジュールを作成し、作成された前記分析スケジュールに基づいて前記試料を分析する自動分析装置において、前記制御部は、互いに種類が異なる溶媒を用いた複数の分離処理を、前記複数の分析流路のうちのいずれを使用して、互いに時間差を設けて導入するかを決定し、前記互いに時間差を設けて導入するかが決定された前記複数の分離処理の開始後のタイミングに行われる、次の分離処理に用いられる溶媒と、前記複数の分離処理に用いられるそれぞれの前記溶媒とを比較し、前記複数の分離処理に使用された前記分析流路に対して溶媒置換処理が必要か否かを判定し、前記溶媒置換処理が必要か否かの前記判定に従って、前記複数の分析流路のうちの前記次の分離処理に使用する分析流路を決定し、前記分析スケジュールを作成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の分析流路を並列に備えた液体クロマトグラフを有する自動分析装置の制御方法及び自動分析装置において、溶媒置換によるスループットの低下及び溶媒消費量の増加を回避する制御方法及び自動分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明が適用される自動分析装置の構成を示す概略図である。
図2】実施例における自動分析装置全体のスケジューリングの処理手順を示すフローチャートである。
図3図2のうち、分離部におけるスケジューリングの処理手順をより詳細に示すフローチャートである。
図4】実施例1におけるスケジューリングの概略図である。
図5】実施例2におけるスケジューリングの概略図である。
図6】実施例3によるスケジューリング方式を2方式から選択できる場合の、図2のうち、分離部におけるスケジューリングの処理手順をより詳細に示すフローチャートである。
図7】実施例3におけるスケジューリングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
なお、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく、技術思想の範囲において応用が可能である。
【0023】
また、本発明の実施例においては、クロマトグラフとして液体クロマトグラフを使用しているが、その他のクロマトグラフ、例えばガスクロマトグラフを使用しても本発明を適用することができる。
【0024】
本発明の自動分析装置の制御方法及び自動分析装置は、試料の前処理を行う前処理部101と、互いに並列に配置された複数の分析流路105~107を有するクロマトグラフにより、前処理部101で処理された試料を、複数種類の溶媒を使用して分離する分離処理を行う分離部102と、分離部102で分離された試料を検出する検出部103と、前処理部101、分離部102及び検出部103を制御する制御部104と、を備え、制御部104にて分析実行前に分析スケジュールを作成し、作成された分析スケジュールに基づいて試料を分析する自動分析装置の制御方法及び自動分析装置である。
【0025】
そして、互いに種類が異なる溶媒を用いた複数の分離処理を、複数の分析流路105~107のうちのいずれを使用して、互いに時間差を設けて導入するかを決定し、互いに時間差を設けて導入するかが決定された複数の分離処理の開始後のタイミングに行われる、次の分離処理に用いられる溶媒と、互いに時間差を設けて導入するかが決定された複数の分離処理に用いられるそれぞれの溶媒とを比較し、複数の分離処理に使用された分析流路105~107に対して溶媒置換処理が必要か否かを判定する。そして、溶媒置換処理が必要か否かの判定に従って、複数の分析流路105~107のうちの次の分離処理に使用する分析流路105~107を決定し、分析スケジュールを作成する。
【実施例
【0026】
(実施例1)
図1は、本発明が適用される自動分析装置の構成を示す概略図である。
【0027】
図1に示すように、自動分析装置は、試料の前処理を行う前処理部101と、並列に複数の分析流路を有する液体クロマトグラフにより前記前処理部101で処理された試料を分離する分離部102と、前記分離部102で分離された試料を検出する検出部103と、前処理部101、分離部102、検出部103を制御する制御部104とを備える。入出力装置126は、情報の表示や制御部104へのユーザからの指令の入力を行う。
【0028】
分離部102は、互いに並列に配置された、分析流路105と、分析流路106と、分析流路107とを備え、前処理部101で処理された試料を導入する分析流路を切り替えるバルブ108と、検出部103へ接続される分析流路を切り替えるバルブ109と、それぞれ異なる溶媒の入ったタンク110と、タンク111と、タンク112と、タンク113とを備える。
【0029】
分析流路105は、分析カラム114と、分析カラム114へ溶媒を高圧送液する送液装置115と、送液装置115に接続され、試料を分析カラム114へ導入する注入バルブ116と、送液装置115へ導入する溶媒を切り替えるバルブ117とを有する。バルブ117は溶媒タンク110と、溶媒タンク111と、溶媒タンク112と、溶媒タンク113とのそれぞれに接続されている。
【0030】
分析流路106及び分析流路107も分析流路105と同様の構成とする。
つまり、分析流路106は、分析カラム118と、分析カラム118へ溶媒を高圧送液する送液装置119と、送液装置119に接続され、試料を分析カラム118へ導入する注入バルブ120と、送液装置119へ導入する溶媒を切り替えるバルブ121とを有する。バルブ121は溶媒タンク110と、溶媒タンク111と、溶媒タンク112と、溶媒タンク113とのそれぞれに接続されている。
【0031】
また、分析流路107は、分析カラム122と、分析カラム122へ溶媒を高圧送液する送液装置123と、送液装置123に接続され、試料を分析カラム122へ導入する注入バルブ124と、送液装置123へ導入する溶媒を切り替えるバルブ125とを有する。バルブ125は溶媒タンク110と、溶媒タンク111と、溶媒タンク112と、溶媒タンク113とのそれぞれに接続されている。
【0032】
前処理部101は、試料の前処理を行った後、試料を分離部102へ導入する。分離部102は、バルブ108を介して、前処理部101にて前処理された試料を分析流路105、分析流路106、分析流路107のいずれかへ導入し、分離処理を実行する。分離処理が実行された試料は、バルブ109を介して検出部103へと導入される。検出部103は、分離部102より導入された試料から、分析対象成分を検出する。
【0033】
図1には、前処理部101で処理された試料を各分析流路105、分析流路106、分析流路107へ導入するためにバルブ108を、検出部103へ接続する分析流路105、分析流路106、分析流路107を切り替えるためにバルブ109を示している。
【0034】
また、分析流路105、分析流路106、分析流路107にはそれぞれ送液装置と溶媒切り替えバルブを1つずつ示している。しかしながら、いずれのバルブ及び送液装置も1つには限らない。また、バルブ108においては、バルブを備えず、分析流路ごとに試料を導入できるように、各分析流路にノズルを備えていても構わない。
【0035】
図2は、自動分析装置全体の分析スケジューリングの処理手順を示すフローチャートである。図2に示したフローチャートの各ステップでの処理の概要は以下の通りである。
【0036】
ステップ201において、制御部104は、分析のスケジューリングを開始する。
【0037】
ステップ202において、制御部104は、現在の分析スケジュールにおいて、次に上記分析の前処理を開始できる空きサイクルを算出する。
【0038】
ステップ203において、制御部104は、ステップ202で算出されたサイクルで分析を開始した場合に、検出部103での試料の検出が実行可能であるか判定する。試料の分離部102では複数の分析流路105、分析流路106及び分析流路107を備えているのに対し、検出部103には検出器を1つしか備えていないため、各分析流路105~107から検出器へ試料を導入するタイミングが重複しないようにスケジューリングする必要がある。ステップ203において、検出部103での試料の検出が実行可能でないと判定した場合は、ステップ205に進む。ステップ203において、検出部103での試料の検出が実行可能であると判定した場合は、ステップ204に進む。
【0039】
ステップ204において、制御部104は、ステップ202で算出されたサイクルで上記分析を開始した場合に、分離部102での試料の分離処理が実行可能であるかを判定する。ステップ204において、分離部102での試料の分離処理が実行可能ではないと判定した場合は、ステップ205に進む。ステップ204において、分離部102での試料の分離処理が実行可能であると判定した場合は、ステップ206に進む。
【0040】
ステップ205において、制御部104は、ステップ203及びステップ204のうち、いずれかで実行不可と判定された場合、分析開始サイクルを1サイクル遅らせる。そして、処理はステップ203に戻る。
【0041】
ステップ206において、制御部104は、ステップ202で算出されたサイクルで上記分析を開始した場合に、試料の分離部102および検出部103のいずれにおいても処理実行可能な場合、当該サイクルに上記分析を登録する。
【0042】
ステップ207において、制御部104は、上記分析のスケジューリングを終了する。
【0043】
図3は、図2に示したフローチャートのステップ204に当たる、試料の分離部102に対してのスケジューリングの処理手順を示すフローチャートである。各ステップでの処理の概要は以下の通りである。
【0044】
ステップ301において、制御部104は、試料の分離処理に対する試料の分離部102のスケジューリングを開始する。
【0045】
ステップ302において、制御部104は、分析流路105~107のうち、試料の分離処理が実行可能な分析流路が存在するか否かを判定する。分析流路が存在しない場合は、ステップ303に進む。また、分析流路が存在する場合は、ステップ304に進む。
【0046】
ステップ303において、制御部104は、分析流路105~107のうち、試料の分離処理が実行可能な分析流路が存在しない場合、試料の分離処理の分析スケジュールへの登録は不可と判定する。そして、処理はステップ309に進む。
【0047】
ステップ304において、制御部104は、分析流路105~107のうち、試料の分離処理が実行可能な分析流路が2つ以上存在するか否かを判定する。分析流路が2つ以上存在しない場合は、ステップ305に進む。また、分析流路が2つ以上存在する場合は、ステップ306に進む。
【0048】
ステップ305において、制御部104は、試料の分離処理が実行可能な分析流路が1つだけ存在する場合、その分析流路の分析スケジュールへ試料の分離処理を登録する。そして、処理はステップ309に進む。
【0049】
ステップ306において、制御部104は、試料の分離処理が実行可能な分析流路が複数ある場合、それらの分析流路のうち、溶媒置換が不要な分析流路が存在するか否かを判定する。溶媒置換が不要な分析流路が存在しない場合は、ステップ307に進む。溶媒置換が不要な分析流路が存在する場合は、ステップ308に進む。
【0050】
ステップ307において、制御部104は、溶媒置換が不要な分析流路が存在しない場合、溶媒置換のために追加される処理サイクルが最小(最短)となる分析流路の分析スケジュールへ試料の分離処理を登録する。そして、処理はステップ309に進む。
【0051】
ステップ308において、制御部104は、溶媒置換が不要な分析流路が存在する場合、その分析流路の分析スケジュールに試料の分離処理を登録する。そして、処理はステップ309に進む。
【0052】
ステップ309において、制御部104は、試料の分離処理に対する分離部102のスケジューリングを終了する。
【0053】
図4は、分離部102に対してのスケジューリングの例を示す図である。図4の(a)は、スケジューリング開始時における、各分析流路105、106及び107の分析スケジュールの状況の概略を表す図である。
【0054】
図4の(a)において、制御部104には、分析流路105に対しての分析スケジュール401に溶媒Aを使用する分離処理404が登録され、分析流路106に対しての分析スケジュール402に溶媒Bを使用する分離処理405が登録され、分析流路107に対しての分析スケジュール403に溶媒Cを使用する分離処理406が登録されている。この状態で、分離処理404、分離処理405及び分離処理406が終了している時点であるタイミング407において、溶媒Cを使用する次の分離処理である分離処理408をスケジューリングする。この際の処理手順を、図3のフローチャートの各ステップに沿って説明する。
【0055】
ステップ301において、制御部104は、分離処理408に対する分離部102のスケジューリングを開始する。そして、ステップ302へ移る。
【0056】
ステップ302において、制御部104は、分析流路105、分析流路106及び分析流路107の3つの分析流路で分離処理が実行可能な状態なので、分離処理実行可能な分析流路があると判定し、ステップ304へ移る。
【0057】
ステップ304において、制御部104は、分析流路105、分析流路106、分析流路107の3つの分析流路で分離処理が実行可能な状態なので、分離処理実行可能な分析流路が複数あると判定し、ステップ306へ移る。
【0058】
ステップ306において、分離処理408を分析スケジュール401に登録する場合、分析流路105で直前に行われていた分離処理404と、分離処理408とで使用する溶媒が異なるため、図4の(b)のように、分離処理408の前に溶媒置換処理409の挿入が必要となる。分離処理408を分析スケジュール402に登録する場合、分析流路106で直前に行われていた分離処理405と、分離処理408とで使用する溶媒が異なるため、図4の(c)のように、分離処理408の前に溶媒置換処理410の挿入が必要となる。
【0059】
一方で、分離処理408を分析スケジュール403に登録する場合、分析流路107で直前に行われていた分離処理406と、分離処理408とで使用する溶媒が同一であるため、図4の(d)のように、溶媒置換処理を実行する必要がない。したがって、制御部104は、溶媒置換が不要な分析流路が存在すると判定し、ステップ308へ移る。
【0060】
ステップ308において、制御部104は、溶媒置換が不要な分析流路107の分析スケジュール403に分離処理408を登録する。そして、ステップ309へ移る。
【0061】
ステップ309において、制御部104は、分離処理408に対する分離部102のスケジューリングを終了する。
【0062】
このように、タイミング407以降に実行する次の分離処理408において使用される溶媒Cと、タイミング407以前に実行されていた分離処理404、405及び406において使用された溶媒A、B及びCとを比較し、溶媒Cが使用されていた分離処理406が行われていた分析流路107を選択してタイミング407以降の分離処理408を行うことにより、溶媒置換処理が必要ではなく、溶媒置換処理を回避することができ、スループットの低下及び溶媒の消費量を抑制することができる。
【0063】
つまり、複数の分析流路を並列に備えた液体クロマトグラフを有する自動分析装置の制御方法及び自動分析装置において、溶媒置換によるスループットの低下及び溶媒消費量の増加を回避する制御方法及び自動装置を提供することができる。
【0064】
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。
【0065】
実施例2は、実施例1と同様の装置構成において、分離部102に対して、実施例1とは異なるスケジューリングの例である。
【0066】
実施例2における自動分析装置の構成は、図1に示した実施例1と同様の構成となるので、図示及び詳細な説明は省略する。また、自動分析装置の全体のスケジューリングの処理手順(図2)及び分離部102に対してのスケジューリングの処理手順(図3)の概略は、実施例1と実施例2とは同様となるので、図示は省略する。
【0067】
図5は、分離部102に対してのスケジューリングの例を示す図である。図5の(a)は、スケジューリング開始時における、各分析流路105、106及び107の分析スケジュールの状況の概略を表す図である。
【0068】
図5の(a)において、制御部104には、分析流路105に対しての分析スケジュール501に溶媒Aを使用する分離処理504が登録され、分析流路106に対しての分析スケジュール502に溶媒Bを使用する分離処理505が登録され、分析流路107に対しての分析スケジュール503に溶媒Cを使用する分離処理506が登録されている。この状態で、分離処理504、分離処理505及び分離処理506が終了している時点であるタイミング507において、溶媒Dを使用するつぎの分離処理である分離処理508をスケジューリングする。
【0069】
ここで、分析流路105、分析流路106、分析流路107において、溶媒A、溶媒B、溶媒Cのそれぞれから溶媒Dへの溶媒置換を実行するために必要な処理サイクルは、溶媒同士の性質から、溶媒Aが2サイクル、溶媒Bが2サイクル、溶媒Cが1サイクルと定義されているものとする。この際の処理手順を、図3のフローチャートの各ステップに沿って説明する。
【0070】
ステップ301において、制御部104は、分離処理508に対する分離部102のスケジューリングを開始する。そして、処理はステップ302へ移る。
【0071】
ステップ302において、制御部104は、分析流路105、分析流路106、分析流路107の3つの分析流路で分離処理が実行可能な状態なので、分離処理実行可能な分析流路があると判定し、ステップ304へ移る。
【0072】
ステップ304において、制御部104は、分析流路105、分析流路106、分析流路107の3つの分析流路で分離処理が実行可能な状態なので、分離処理実行可能な分析流路が複数あると判定し、ステップ306へ移る。
【0073】
ステップ306において、制御部104は、分析流路105、分析流路106、分析流路107のいずれにおいても溶媒置換が必要であると判定し、ステップ307に移る。
【0074】
ステップ307において、溶媒Dを使用する分離処理508を分析スケジュール501に登録する場合、溶媒置換のために追加される処理サイクルは2サイクルであるため、図5の(b)のように溶媒置換処理509が追加される。同様に、分離処理508を分析スケジュール502に登録する場合も、溶媒置換のために追加される処理サイクルは2サイクルであるため、図5の(c)のように溶媒置換処理510が追加される。
【0075】
一方で、分離処理508を分析スケジュール503に登録する場合、溶媒置換のために追加される処理サイクルは1サイクルであるため、図5の(d)のように溶媒置換処理511が追加される。
【0076】
したがって、制御部104は、溶媒置換のために追加される処理サイクルが最少である分析流路107の分析スケジュール503に分離処理508を登録することを決定し、溶媒置換処理511とともに登録する。そして、処理はステップ309に移る。
【0077】
ステップ309において、制御部104は、分離処理508に対する分離部102のスケジューリングを終了する。
【0078】
このように、タイミング507以降に実行する分離処理508において使用される溶媒Dと、タイミング507以前に実行されていた分離処理504、505及び506において使用された溶媒A、B及びCとを比較し、溶媒Dへの溶媒置換に必要なサイクルのうちの最小サイクルの分離処理506が行われていた分析流路107を選択してタイミング507以降の分離処理508を行うことにより、溶媒置換に必要な時間を最小化することができ、スループットの低下及び溶媒の消費量を抑制することができる。
【0079】
実施例2においても、実施例1と同様に、複数の分析流路を並列に備えた液体クロマトグラフを有する自動分析装置の制御方法及び自動分析装置において、溶媒置換によるスループットの低下及び溶媒消費量の増加を回避する制御方法及び自動分析装置を提供することができる。
【0080】
(実施例3)
次に、実施例3について説明する。実施例3は、実施例1と同様の装置構成において、分離部102に対して、実施例1及び実施例2とは異なるスケジューリングの例を示すものである。
【0081】
実施例3における自動分析装置の構成は、図1に示した実施例1と同様の構成となるので、図示及び詳細な説明は省略する。また、自動分析装置の全体のスケジューリングの処理手順(図2)の概略は、実施例1と同様となるので、図示は省略する。
【0082】
スケジューリングを実行する際、登録する分析の性質及び各分析流路の分析スケジュールの状況によっては、溶媒置換が必要ない分析流路に登録した場合、他の分析流路に登録した場合よりも、当該分析の完了が遅くなる、すなわちスループットが低下することがある。
【0083】
したがって、実施例3においては、溶媒置換が発生しない、もしくは溶媒置換による追加処理サイクルが最短となることを優先する第一のスケジューリング方式と、溶媒置換による追加処理サイクルの最短化よりもスループットを優先する第二のスケジューリング方式と、をユーザが選択できるようにする。つまり、分析スケジュールは、第一のスケジューリング方式と、第二のスケジューリング方式とを有する。ユーザは、入出力装置126により、第一のスケジューリング方式か、第二のスケジューリング方式かを選択して制御部104に指令することができる。
【0084】
図6は、スケジューリング方式を上記第一のスケジューリング方式と、上記第二のスケジューリング方式と、から選択できる場合のフローチャートである。図6に示したフローチャートは、図2に示したフローチャートのステップ204に該当し、分離部102に対してのスケジューリングの処理手順を示すフローチャートである。
【0085】
図7は、分離部102に対してのスケジューリングの例である。図7の(a)は、スケジューリング開始時における、各分析流路105、106及び107の分析スケジュールの状況の概略を表す図である。制御部104には、分析流路105に対しての分析スケジュール701に溶媒Aを使用する分離処理704が登録され、分析流路106に対しての分析スケジュール702に溶媒Bを使用する分離処理705が登録され、分析流路107に対しての分析スケジュール703に溶媒Cを使用する分離処理706が、登録されている。この状態で、分離処理704が終了したタイミングであって、分離処理705及び分離処理706が分離処理中であるタイミング707において、溶媒Cを使用する次の分離処理である分離処理708をスケジューリングする。
【0086】
ここで、分析流路105、分析流路106において、溶媒A、溶媒Bそれぞれから溶媒Cへの溶媒置換を実行するために必要な処理サイクルは、溶媒同士の性質からいずれも1サイクルと定義されているものとする。
【0087】
上記第一のスケジューリング方式を選択している場合の、スケジューリングする際の処理手順を、図6のフローチャートの各ステップに沿って説明する。
【0088】
ステップ601において、制御部104は、分離処理708に対する分離部のスケジューリングを開始する。処理はステップ602へ移る。
【0089】
ステップ602において、制御部104は、分析流路105、分析流路106、分析流路107の3つの分析流路で分離処理が実行可能な分析流路があるか否かを判定する。分離処理実行可能な分析流路が無い場合は、ステップ603へ移る。また、分離処理実行可能な分析流路がある場合は、ステップ604へ移る。図7に示した例では、分析流路105、分析流路106、分析流路107の3つの分析流路で分離処理が実行可能な状態なので、ステップ604へ移る。
【0090】
ステップ603において、制御部104は、分析流路105~107のうち、試料の分離処理が実行可能な分析流路が存在しない場合、試料の分離処理の分析スケジュールへの登録は不可と判定する。そして、処理はステップ611に進む。
【0091】
ステップ604において、制御部104は、分析流路105、分析流路106、分析流路107の3つの分析流路のうち、分離処理が実行可能な分析流路が2つ以上あるか否かを判定する。分離処理が実行可能な分析流路が2つ以上は無いと判定した場合は、ステップ605に移る。分離処理が実行可能な分析流路が2つ以上あると判定した場合は、ステップ606に移る。図7に示した例では、分離処理が実行可能な分析流路が2つ以上ある状態なので、ステップ606へ移る。
【0092】
ステップ605において、制御部104は、試料の分離処理が実行可能な分析流路が1つだけ存在する場合、その分析流路の分析スケジュールへ試料の分離処理を登録する。そして、処理はステップ611に移る。
【0093】
ステップ606において、制御部104は、上記第一のスケジューリング方式を選択中か否かを判定する。第一のスケジューリング方式を選択していない場合は、ステップ607に移る。第一のスケジューリング方式を選択中であると判定した場合は、ステップ608に移る。
【0094】
図7に示した例では、第一のスケジューリング方式を選択中であるため、ステップ608へ移る。
【0095】
ステップ607において、制御部104は、溶媒置換を含めて最も早く分析完了する分析流路の分析スケジュールへ登録する。そして、処理はステップ611に移る。
【0096】
ステップ608において、制御部104は、溶媒置換が不要な分析流路が有るか否かを判定する。溶媒置換が不要な分析流路が無いと判定した場合は、ステップ609に移る。溶媒置換が不要な分析流路が有ると判定した場合は、ステップ610に移る。
【0097】
図7に示した例においては、分離処理708を分析スケジュール701に登録する場合、分析流路105で直前に行われていた分離処理704と、分離処理708とで使用する溶媒が異なるため、図7の(b)のように、分離処理708の前に溶媒置換処理709の挿入が必要となる。
【0098】
また、分離処理708を分析スケジュール702に登録する場合、分析流路106で直前に行われていた分離処理705と、分離処理708とで使用する溶媒が異なるため、図7の(c)のように、分離処理708の前に溶媒置換処理710の挿入が必要となる。
【0099】
一方で、分離処理708を分析スケジュール703に登録する場合、分析流路107で直前に行われていた分離処理706と、分離処理708とで使用する溶媒が同一であるため、図7の(d)のように、溶媒置換処理を実行する必要がない。したがって制御部104は、溶媒置換が不要な分析流路が存在すると判定し、ステップ610へ移る。
【0100】
ステップ609において、制御部104は、溶媒置換が不要な分析流路が存在しない場合、溶媒置換のために追加される処理サイクルが最小(最短)となる分析流路の分析スケジュールへ試料の分離処理を登録する。そして、処理はステップ611に進む。
【0101】
ステップ610において、制御部104は、溶媒置換が不要な分析流路107の分析スケジュール703に分離処理708を登録する。そして、処理はステップ611へ移る。
【0102】
ステップ611において、制御部104は、分離処理708に対する分離部102のスケジューリングを終了する。
【0103】
一方で、上記第二のスケジューリング方式を選択している場合の、スケジューリングする際の処理手順を、図6のフローチャートのステップに沿って説明する。ただし、ステップ604までの手順は、上記第一のスケジューリング方式を選択している場合と同様なので省略し、ステップ606において、上記第二のスケジューリングを選択中であることとし、ステップ606からの処理手順について説明する。
【0104】
ステップ606において、上記第一のスケジューリングではなく、上記第二のスケジューリング方式を選択しているため、ステップ607に移る。
【0105】
ステップ607において、分離処理708を分析スケジュール701に登録する場合、分析流路105で直前に行われていた分離処理704と、分離処理708とで使用する溶媒が異なるため、図7の(b)のように、分離処理708の前に溶媒置換処理709の挿入が必要となる。このため、分離処理708はタイミング711で完了することが予定される。
【0106】
分離処理708を分析スケジュール702に登録する場合、分析流路106で直前に行われていた分離処理705と、分離処理708とで使用する溶媒が異なるため、図7の(c)のように、分離処理708の前に溶媒置換処理710の挿入が必要となるため、分離処理708は、タイミング711より後のタイミング712で完了することが予定される。
【0107】
一方で、分離処理708を分析スケジュール703に登録する場合、分析流路107で直前に行われていた分離処理706と、分離処理708とで使用する溶媒が同一であるので、図7の(d)のように、溶媒置換処理を実行する必要がないため、分離処理708はタイミング712で完了することが予定される。
【0108】
タイミング712は、タイミング711の後のタイミングである。したがって制御部104は、分離処理708を最も早く完了することが予定される分析流路105の分析スケジュール701に分離処理708を登録することを決定し、溶媒置換処理709とともに登録する。そして、処理はステップ611へ移る。
【0109】
ステップ611において、制御部104は、分離処理708に対する分離部のスケジューリングを終了する。
【0110】
以上のように、上記第一のスケジューリング方式を選択することで、溶媒置換による追加処理の最短化により、溶媒の消費量を抑制することができる。一方で、上記第二のスケジューリング方式を選択することで、当該分析をより早く完了させることができ、自動分析装置としてのスループットを向上することが可能である。
【0111】
このように、上記第一のスケジューリング方式と、上記第二のスケジューリング方式とをユーザが選択可能にすることで、ユーザの運用方法に適したスケジューリング方式を提供することができる。
【0112】
以上のように、実施例3においては、分析スケジュールは、複数の分析流路105~107のうちの次の分離処理708に使用する分析流路は、溶媒置換処理が必要ではないと判定した分析流路と決定する第一のスケジューリング方式と、複数の分析流路105~107のうちの次の分離処理708に使用する分析流路は、溶媒置換処理が必要でないと判定された分析流路107の分離処理完了タイミング712と、溶媒置換処理が必要であると判定された分析流路105、106の分離処理完了タイミング711、712と、のうちの最も早く分離処理を完了すると判定した分析流路105と決定する第二のスケジューリング方式と、を有する。


【0113】
自動分析装置は、入出力装置126を備え、入力装置126により第一スケジューリング方式と、第二スケジューリング方式と、のうちのいずれかが選択される。
【0114】
実施例3においても、実施例1及び実施例2と同様に、複数の分析流路を並列に備えた液体クロマトグラフを有する自動分析装置の制御方法及び自動分析装置において、溶媒置換によるスループットの低下及び溶媒消費量の増加を回避する制御方法及び自動分析装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0115】
101・・・前処理部、102・・・分離部、103・・・検出部、104・・・制御部、105、106、107・・・分析流路、108、109、116、117、120、121、124、125・・・バルブ、110、111、112、113・・・溶媒タンク、114、118、122・・・分析カラム、115、119、123・・・送液装置、126・・・入出力装置、401、402、403、501、502、503、701、702、703・・・分析流路の分析スケジュール、404、405、406、408、504、505、506、508、704、705、706、708・・・分離処理、407、507、707、711、712・・・スケジューリングタイミング、409、410、509、510、511、709、710・・・溶媒置換処理
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7