(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】対極の改質剤
(51)【国際特許分類】
G01N 27/327 20060101AFI20240523BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
G01N27/327 353J
G01N27/30 B
(21)【出願番号】P 2020130242
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 尚▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】米田 圭三
(72)【発明者】
【氏名】平塚 淳典
(72)【発明者】
【氏名】田中 丈士
(72)【発明者】
【氏名】六車 仁志
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/088288(WO,A1)
【文献】特開2013-011495(JP,A)
【文献】特開2019-138718(JP,A)
【文献】特開2016-188794(JP,A)
【文献】特開2001-318071(JP,A)
【文献】特開2013-190212(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極に対する対極の改質剤であって、多孔質炭素を含む改質剤
であり、芳香環骨格を有する化合物が、チモール、フェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、チロシン二ナトリウム水和物、サリチル酸ナトリウム、トルエン、5-ヒドロキシインドール、アニリン、ロイコキニザリン、カルバクロール、1,5-ナフタレンジオール、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、1-ナフトール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2-tert-ブチル-4-エチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェノール、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、3-tert-ブチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルアニソール、o-クレゾール、m-クレゾール、及びp-クレゾールからなる群より選択される、改質剤。
【請求項2】
多孔質炭素の比表面積が500m
2/g以上である、請求項1に記載の改質剤。
【請求項3】
多孔質炭素の粒径が200μm以下である、請求項1又は2に記載の改質剤。
【請求項4】
多孔質炭素の平均粒径が150μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の改質剤。
【請求項5】
ナノカーボンがカーボンナノチューブである、請求項1~
4のいずれかに記載の改質剤。
【請求項6】
酵素がフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼである、請求項1~
5のいずれかに記載の改質剤。
【請求項7】
芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極に対する対極であって、請求項1~
6のいずれかに記載の改質剤を含む対極
であり、芳香環骨格を有する化合物が、チモール、フェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、チロシン二ナトリウム水和物、サリチル酸ナトリウム、トルエン、5-ヒドロキシインドール、アニリン、ロイコキニザリン、カルバクロール、1,5-ナフタレンジオール、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、1-ナフトール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2-tert-ブチル-4-エチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェノール、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、3-tert-ブチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルアニソール、o-クレゾール、m-クレゾール、及びp-クレゾールからなる群より選択される、対極。
【請求項8】
芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極、及び請求項
7に記載の対極を含むセンサ
であって、芳香環骨格を有する化合物が、チモール、フェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、チロシン二ナトリウム水和物、サリチル酸ナトリウム、トルエン、5-ヒドロキシインドール、アニリン、ロイコキニザリン、カルバクロール、1,5-ナフタレンジオール、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、1-ナフトール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2-tert-ブチル-4-エチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェノール、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、3-tert-ブチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルアニソール、o-クレゾール、m-クレゾール、及びp-クレゾールからなる群より選択される、センサ。
【請求項9】
参照極を含まない、請求項
8に記載のセンサ。
【請求項10】
対極の表面積が作用極の表面積よりも大きい、請求項
8又は
9に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
対極の改質剤に関する技術が開示される。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボンは電気の伝導率が高いことから他の物質との電子伝達を行う導電材料としての応用が進んでいる。例えばナノカーボンをカーボン、樹脂及び有機溶剤からなるインクに混合し基板上に印刷してバイオセンサ用の電極として用いることが提案されている(特許文献1)。また、ナノカーボンの一種であるカーボンナノチューブは過酸化物を測定するセンサに用いられたり(特許文献2)、酵素とともにフィルム状に成形し、センサや燃料電池の電極として用いられたりしている(特許文献3)。さらに単層カーボンナノチューブを用いることで酵素から直接電子移動で電極への電子伝達を行うことも報告されている(非特許文献1)。これは従来メディエーターが必須であった、フラビンアデニンジヌクレオチドを補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼ(FADGDH)をメディエーターなしでグルコースセンサーに用いることを可能にする。また、ナノーカーボンの電子伝達作用促進剤として、芳香環骨格を有する化合物を用いることも提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2005088288
【文献】WO2011007582
【文献】WO2012002290
【文献】WO2019189808
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナノカーボンによる酵素と作用極との間の電子伝達は、ナノカーボンに芳香環骨格を有する化合物を付着又は近接させることにより増強し得るものの、当該電子伝達による電流値を、従来の対極を用いて測定する技術には改善の余地があることを見出した。
【0005】
芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極に対する対極の改質剤の提供が1つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極に対する対極を、多孔質炭素を含む改質剤により改質できることを見出した。かかる知見を基にさらに検討を重ねることにより、下記に代表される発明を完成するに至った。
【0007】
項1.
芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極に対する対極の改質剤であって、多孔質炭素を含む改質剤。
項2.
多孔質炭素の比表面積が500m2/g以上である、項1に記載の改質剤。
項3.
多孔質炭素の粒径が200μm以下である、項1又は2に記載の改質剤。
項4.
多孔質炭素の平均粒径が150μm以下である、項1~3のいずれかに記載の改質剤。
項5.
芳香環骨格を有する化合物が、チモール、フェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、チロシン二ナトリウム水和物、サリチル酸ナトリウム、トルエン、5-ヒドロキシインドール、アニリン、ロイコキニザリン、カルバクロール、1,5-ナフタレンジオール、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、1-ナフトール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2-tert-ブチル-4-エチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェノール、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、3-tert-ブチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルアニソール、o-クレゾール、m-クレゾール、及びp-クレゾールからなる群より選択される、項1~4のいずれかに記載の改質剤。
項6.
ナノカーボンがカーボンナノチューブである、項1~5のいずれかに記載の改質剤。
項7.
酵素がフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼである、項1~6のいずれかに記載の改質剤。
項8.
芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極に対する対極であって、項1~7のいずれかに記載の改質剤を含む対極。
項9.
芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極、及び項8に記載の対極を含むセンサ。
項10.
参照極を含まない、項9に記載のセンサ。
項11.
対極の表面積が作用極の表面積よりも大きい、項9又は10に記載のセンサ。
【発明の効果】
【0008】
芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極に対する対極が改質される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例で作製した電極チップの構造を示す。「1」はPETフィルムであり、「2」は粘着シートであり、「3」は金蒸着PETフィルムであり、「4」は電極部位を示す。
【
図2】実施例1において、対極部位に活性炭を載置して測定したクロノアンペログラムを示す。
【
図3】実施例1において、対極部位にクノーベル(商標)を載置して測定したクロノアンペログラムを示す。
【
図4】実施例1において、対極部位に多孔質炭素を載置することなく測定したクロノアンペログラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.対極の改質剤
一実施形態において、対極の改質剤は、芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極に対する対極の改質剤であることが好ましい。当該実施形態において、対極は下記2に記載の対極であることが好ましく、作用極は下記3に記載の作用極であることが好ましい。また、当該実施形態において、対極の改質剤は、多孔質炭素を含むことが好ましい。
【0011】
多孔質炭素の種類は、特に制限されない。多孔質炭素としては、例えば、活性炭、カーボンナノチューブ、酸化物を鋳型とする多孔質炭素が挙げられる。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであっても、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブであってもよい。酸化物を鋳型とする多孔質炭素としては、例えば、酸化マグネシウムを鋳型とする多孔質炭素(例えば、東洋炭素株式会社製多孔質炭素、商品名:クノーベル(商標))、ゼオライトを鋳型とする多孔質炭素、アルミナを鋳型とする多孔質炭素が挙げられる。
【0012】
多孔質炭素の比表面積は、特に制限されない。前記比表面積の下限は、例えば500m2/g、好ましくは1000m2/gである。前記比表面積の上限は、例えば5000m2/g、好ましくは4000m2/g、さらに好ましくは3000m2/gである。前記下限及び上限は任意に組み合わせることができる。前記比表面積が大きいほど、対極から対極表面の物質へ電子を受け渡す還元反応を促進することができる。前記比表面積は、例えば、液体窒素温度(77K)での窒素分子の吸着等温線からBrunauer―Emmett―Teller(BET)の方法により求めることができる。
【0013】
多孔質炭素は粉粒体であることが好ましい。多孔質炭素の粒径又は平均粒径は、特に制限されない。前記粒径又は平均粒径の上限は、例えば、200μm、好ましくは180μm、さらに好ましくは150μmである。前記平均粒径の上限は、100μm、80μm、50μm、30μm、又は10μmであることも好ましい。前記粒径又は平均粒径の下限は、例えば10nm、好ましくは15nm、さらに好ましくは20nmである。前記下限及び上限は任意に組み合わせることができる。前記粒径又は平均粒径は小さいほど、溶液中での分散性が高く、マイクロピペット、ディスペンサーなどによるハンドリングの際に目詰まりすることを防止でき、ハンドリングの正確性を向上することができる。前記粒径又は平均粒径は、例えば、メッシュ法又はレーザー回折散乱法により測定することができる。
【0014】
2.対極
一実施形態において、対極は、芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極に対する対極であることが好ましい。当該実施形態において、対極は、対極の改質剤を含むことが好ましく、対極の改質剤は、上記1に記載の改質剤であることが好ましい。作用極は、下記3に記載の作用極であることが好ましい。
【0015】
対極は、さらに分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、多孔質炭素の凝集を抑制し、分散させることが可能な物質であれば、特に制限されない。分散剤としては、例えば、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルフェノールエトキシレート等を挙げることができる。分散剤は1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。一実施形態において、好ましい分散剤は、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムである。
【0016】
対極の形状は、電極として使用し得る形状であれば特に制限されず、例えば、線状、コイル状、網状、棒状、フィルム状、又は板状であってもよい。一実施形態において、対極は、電極に適した基板を有することが好ましく、基板は、絶縁性基板上に金属膜(例えば、金属薄膜)が形成されたものであることが好ましい。絶縁性基板は、例えば、ガラス基板又はプラスチック基板(例えば、PET基板)を用いることができる。金属膜を形成する金属の種類は、電極に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、金、白金、及びチタン等を挙げることができる。
【0017】
一実施形態において、対極は、基板に対極の改質剤が積載されたものであることが好ましい。対極の改質剤の積載量は、特に制限されない。
【0018】
対極の改質剤の積載方法は、特に制限されない。例えば、対極の改質剤を分散又は溶解させた溶液を調製し、基板上の所定部位(基板が、絶縁性基板上に金属薄膜が形成されたものである場合、金属薄膜が形成された場所)に滴下し、乾燥させることにより、積載することができる。分散媒又は溶媒としては、特に制限されず、水、アルコール系溶媒(例えば、エタノール)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン)、これらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
一実施形態において、多孔質炭素を分散させた分散液に分散剤を配合することが好ましい。分散剤の配合割合は任意であるが、例えば、0.2~2%(w/v)配合することが好ましい。なお、多孔質炭素の配合割合も任意であるが、例えば、0.05~0.5%(w/v)配合することが好ましい。
【0020】
一実施形態において、対極の改質剤は、基板に固定化されていてもよい。固定化は、公知の方法を適宜選択して実施することができる。例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ[2-(フルオロスルホニルエトキシ)ポリビニルエーテル]共重合体(例:ナフィオン(商標))及びカルボキシルメチルセルロース等の固定化に適した物質を溶解させた液体を、基板上の対極の改質剤を積載した部位に滴下し、乾燥させることによって、固定化することができる。一実施形態において、対極の改質剤を基板に積載したのち、これらの物質を覆うようにカルボキシルメチルセルロース等のポリマー物質で処理することが好ましい。
【0021】
対極の表面積は、特に制限されない。一実施形態において、ナノカーボンによる酵素と作用極との間の電子伝達による電流値を増幅する点から、対極の表面積は、作用極の表面積よりも大きいことが好ましい。対極の表面積の下限は、作用極の表面積の1.5倍、2倍、2.5倍、又は3倍であることが好ましい。対極の表面積の上限は、特に制限されないが、例えば、作用極の表面積の200倍、150倍、又は100倍である。前記下限及び上限は任意に組み合わせることができる。
【0022】
3.センサ
一実施形態において、センサは、芳香環骨格を有する化合物が付着又は近接するナノカーボンと酵素とを含む作用極、及び、対極を含むことが好ましい。当該実施形態において、対極は、上記2に記載の対極であることが好ましい。
【0023】
酵素は、触媒反応に伴って電子を遊離するものが好ましい。そのような酵素としては、例えば、酸化還元酵素を挙げることができる。酸化還元酵素としては、例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、フルクトシルアミンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、グリセロールオキシダーゼ、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、ウリカーゼ、コリンオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、及びヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ等を挙げることができる。
【0024】
一実施形態において、酵素は、グルコースデヒドロゲナーゼであることが好ましく、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼであることが好ましく、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼ(「FADGDH」とも称する)が好ましい。FADGDHは、ポリペプチドで形成される3次元構造のくぼみにFADを保持するため、そこで生成された電子を作用極に伝達するためには、従来、メディエーターと呼ばれる物質を要した。これに対し、ナノカーボンを用いることにより、メディエーターを利用しなくても、電子を作用極に伝達することが可能となる。また、芳香環骨格を有する化合物を利用することにより、ナノカーボンを介した電子伝達を格段に効率的に(又は強力に)行うことが可能となる。
【0025】
FADGDHの種類は制限されず、任意のものを使用することができる。FADGDHの具体例としては、次の生物のいずれかに由来するものを挙げることができる:アスペルギルス・テレウス、アスペルギルス・オリゼ、アルペルギルス・ニガー、アスペルギルス・フォエチダス、アルペルギルス・アウレウス、アスペルギルス・バージカラー、アスペルギルス・カワチ、アルペルギルス・アワモリ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、サイトファーガ・マリノフラバ、アガリカス・ビスポラス、マクロレピオタ・ラコデス、ブルクホルデリア・セパシア、ムコール・サブチリシマス、ムコール・ギリエルモンディ、ムコール・プライニ、ムコール・ジャバニカス、ムコール・シルシネロイデス、ムコール・シルシネロイデス・エフ・シルシネロイデス、ムコール・ヒエマリス、ムコール・ヒエマリス・エフ・シルバチカス、ムコール・ダイモルフォスポラス、アブシジア・シリンドロスポラ、アブシジア・ヒアロスポラ、アクチノムコール・エレガンス、シルシネラ・シンプレックス、シルシネラ・アンガレンシス、シルシネラ・シネンシス、シルシネラ・ラクリミスポラ、シルシネラ・マイナー、シルシネラ・ムコロイデス、シルシネラ・リジダ、シルシネラ・アンベラータ、シルシネラ・ムスカエ、メタリジウム・エスピー及びコレトトリカム・エスピー。
【0026】
一実施形態において好ましいFADGDHは、アスペルギルス・オリゼ由来のFADGDH、ムコール・ヒエマリス由来のFADGDH、ムコール・サブチリシマス由来のFADGDH、シルシネラ・シンプレックス由来のFADGDH、メタリジウム・エスピー由来のFADGDH又はコレトトリカム・エスピー由来のFADGDHであり、好ましくは、配列番号1~6のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有し、より好ましくは、配列番号1~6のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、さらに好ましくは、配列番号1~6のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有し、グルコース脱水素活性を有するものを挙げることができる。アミノ酸配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができ、例えば、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いて、算出することができる。なお、配列番号1のアミノ酸配列は、アスペルギルス・オリゼ由来のFADGDHのものであり、配列番号2のアミノ酸配列は、ムコール・ヒエマリス由来のFADGDHのものであり、配列番号3のアミノ酸配列は、ムコール・サブチリシマス由来のFADGDHのものであり、配列番号4のアミノ酸配列は、シルシネラ・シンプレックス由来のFADGDHのものであり、配列番号5のアミノ酸配列は、メタリジウム・エスピー由来のFADGDHのものであり、配列番号6のアミノ酸配列は、コレトトリカム・エスピー由来のFADGDHのものである。
【0027】
ナノカーボンは、電子伝達機能を有する、ナノカーボンとして認識される物質であれば特に制限されない。そのような物質としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノツイスト、コクーン、カーボンナノコイル、グラフェン、フラーレンなどを含む、主に炭素により構成されている炭素材料を意味する。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであっても、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブであってもよい。一実施形態において、ナノカーボンは、カーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0028】
ナノカーボンに付着又は近接する芳香環骨格を有する化合物は、ナノカーボンによる酵素と作用極との間の電子伝達を促進させる電子伝達促進剤である限り、特に制限されない。芳香環骨格の環構成原子の数は、例えば、5~18、好ましくは5~16、さらに好ましくは5~14である。芳香環骨格には、1つのベンゼン環からなる骨格、2以上(例えば、2~4)のベンゼン環からなる骨格(ナフタレン骨格、アントラセン骨格など)、ベンゼン環と他の芳香環(含窒素芳香環、含酸素芳香環、含硫黄芳香環など)との縮合環からなる骨格(フェナントロリン骨格、ベンゾフラン骨格、ベンゾイミダゾール骨格、カルバゾール骨格など)、炭素と他の元素(窒素、酸素、硫黄など)により構成される芳香環からなる骨格(トリアジン骨格、トリアゾール骨格、ピリジン骨格など)を有するものが包含される。芳香環骨格を有する化合物は、単独ではメディエーターとしての機能を有しない化合物であることが好ましい。ここで、「単独ではメディエーターとしての機能を有しない」とは、ベンゾキノンや1-メトキシフェナジンメトサルフェートのように電極と酵素との間あるいは電極と基質との間で電子伝達を単独で行うという機能を持たないことを意味する。
【0029】
一実施形態において、芳香環骨格を有する化合物は、電子供与性の置換基を有することが好ましい。電子供与性の置換基とは、ヒドロキシ基、アミノ基、及びメチル基等のことである。好ましい電子供与性の置換基は、ヒドロキシ基である。電子供与性の置換基及び芳香環骨格を有する化合物としては、ヒドロキシ基が置換されたベンゼン環を有する化合物(例えば、チモール、フェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、チロシン二ナトリウム水和物、サリチル酸ナトリウム、5-ヒドロキシインドール、ロイコキニザリン、カルバクロール、1,5-ナフタレンジオール、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、1-ナフトール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2-tert-ブチル-4-エチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、および2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェノール、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、3-tert-ブチルフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール)、アミノ基が置換されたベンゼン環を有する化合物(例えば、アニリン)、メチル基が置換されたベンゼン環を有する化合物(例えば、トルエン、2-イソプロピル-5-メチルアニソール)を挙げることができる。
【0030】
上記化合物の中でも、チモール、フェノールおよびカルバクロールが好ましい。
【0031】
芳香環骨格を有する化合物をナノカーボンに付着又は近接させることによって、ナノカーボンによる酵素と作用極との間の電子伝達を促進させることができる。芳香環骨格を有する化合物とナノカーボンとは、分子間相互作用によって付着又は近接していることが好ましい。
【0032】
芳香環骨格を有する化合物をナノカーボンに付着又は近接させる手段は特に制限されない。例えば、ナノカーボンと芳香環骨格を有する化合物とを混合すること(溶液中での混合を含む)、又はナノカーボン上に芳香環骨格を有する化合物を配置することによって実施することができる。ナノカーボンに近接又は付着して配置された芳香環骨格を有する化合物は、固定されていても、固定されていなくてもよい。固定は、ナノカーボン及び芳香環骨格を有する化合物の機能を阻害しない限り制限されず、公知の手段から適宜選択して使用することができる。
【0033】
電子伝達を促進させるためにナノカーボンに付着又は近接させる芳香環骨格を有する化合物の量は特に制限されない。芳香環骨格を有する化合物の量は、特に制限されない。芳香環骨格を有する化合物の量は、ナノカーボン100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上である。また、芳香環骨格を有する化合物の量は、ナノカーボン100質量部に対して、例えば、100000質量部以下、好ましくは10000質量部以下、さらに好ましくは1000質量部以下である。前記下限及び上限は任意に組み合わせることができる。また、芳香環骨格を有する化合物の量は、酵素100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上である。また、芳香環骨格を有する化合物の量は、酵素100質量部に対して、例えば、1000000質量部以下、好ましくは100000質量部以下、さらに好ましくは10000質量部以下である。前記下限及び上限は任意に組み合わせることができる。
【0034】
作用極は、さらに分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、ナノカーボンの凝集を抑制し、分散させることが可能な物質であれば、特に制限されない。分散剤としては、例えば、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルフェノールエトキシレート等を挙げることができる。分散剤は1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。一実施形態において、好ましい分散剤は、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムである。
【0035】
作用極の形状は、電極として使用し得る形状であれば特に制限されず、例えば、線状、コイル状、網状、棒状、フィルム状、又は板状であってもよい。一実施形態において、作用極は、バイオセンサに利用される酵素を固定させた電極に適した基板を有することが好ましく、基板は、絶縁性基板上に金属膜(例えば、金属薄膜)が形成されたものであることが好ましい。絶縁性基板は、例えば、ガラス基板又はプラスチック基板(例えば、PET基板)を用いることができる。金属膜を形成する金属の種類は、電極に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、金、白金、及びチタン等を挙げることができる。また、基板は、絶縁性基板上に金属膜の代わりに炭素膜(例えば、カーボンペーストによる炭素薄膜)が形成されたものであってもよい。
【0036】
一実施形態において、作用極は、ナノカーボン、芳香環骨格を有する化合物、及び酵素が基板に積載されたものであることが好ましい。これらの物質の積載方法は、特に制限されない。例えば、これらの物質の各々を分散又は溶解させた溶液を調製し、順次基板上の所定部位(基板が、絶縁性基板上に金属薄膜が形成されたものである場合、金属薄膜が形成された場所)に滴下し、乾燥させるという操作を繰り返すことにより、積載することができる。又は、これらの物質の各々を分散又は溶解させた溶液を調製した後、これらを1つに混合し、基板上の所定部位に滴下し、乾燥させることにより、積載することができる。分散媒又は溶媒としては、特に制限されず、水、アルコール系溶媒(例えば、エタノール)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン)、これらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
一実施形態において、ナノカーボンを分散させた分散液に分散剤を配合することが好ましい。分散剤の配合割合は任意であるが、例えば、0.2~2%(w/v)配合することが好ましい。なお、ナノカーボンの配合割合も任意であるが、例えば、0.05~0.5%(w/v)配合することが好ましい。
【0038】
積載する順序は任意であるが、一実施形態において、ナノカーボン→酵素→芳香環骨格を有する化合物、又はナノカーボン→芳香環骨格を有する化合物→酵素の順で積載することが好ましく、これらを同時に積載することも好ましい。
【0039】
ナノカーボン、芳香環骨格を有する化合物、及び酵素の使用量は特に制限されない。
【0040】
一実施形態において、ナノカーボン、芳香環骨格を有する化合物、及び、酵素は、基板に固定化されていてもよい。固定化は、公知の方法を適宜選択して実施することができる。例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ[2-(フルオロスルホニルエトキシ)ポリビニルエーテル]共重合体(例:ナフィオン(商標))及びカルボキシルメチルセルロース等の固定化に適した物質を溶解させた液体を、基板上の上記各物質を積載した部位に滴下し、乾燥させることによって、固定化することができる。一実施形態において、ナノカーボン、芳香環骨格を有する化合物、及び酵素を基板に積載したのち、これらの物質を覆うようにカルボキシルメチルセルロース等のポリマー物質で処理することが好ましい。
【0041】
一実施形態において、センサは、さらに作用極及び対極を浸漬する溶媒を含むことが好ましい。当該実施形態において、作用極はナノカーボン及び酵素が基板に積載されたものであり、作用極を浸漬する溶媒(測定対象物質又は基質を含むもの)に芳香環骨格を有する化合物を含有させることが好ましい。溶媒としては、典型的には、緩衝液が挙げられ、その例としては、酢酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、硼酸塩緩衝液などが挙げられる。
【0042】
溶媒中の測定対象物質又は基質の濃度は、特に限定されず、測定に必要な任意の濃度に設定できる。
【0043】
溶媒中の芳香環骨格を有する化合物の濃度は、特に限定されない。前記濃度の下限は、例えば、0.000001%(w/v)、好ましくは0.000005%(w/v)、より好ましくは0.00001%(w/v)、より好ましくは0.00005%(w/v)、より好ましくは0.0001%(w/v)、より好ましくは0.0005%(w/v)、より好ましくは0.001%(w/v)、より好ましくは0.005%(w/v)、より好ましくは0.01%(w/v)である。前記濃度の上限は、例えば、2%(w/v)、好ましくは1.5%(w/v)、より好ましくは1%(w/v)である。前記下限及び上限は任意に組み合わせることができる。
【0044】
センサは、参照極を含んでいてもよいが、参照極を含んでいなくても、作用極及び対極の2電極により、電子伝達を検出又は測定することができるため、構成の簡略化から、参照極を含まないことが好ましい。
【0045】
センサは、さらにポテンションスタット及び電流検出回路等のバイオセンサが通常備える構成を備えることができる。カウンター電極、ポテンションスタット、及び電流検出回路等の具体的な構成は、センサが目的とする測定が可能である限り任意であり、当該技術分野に公知の手段から適宜選択して設計することができる。
【0046】
これらのセンサを用いて目的物の検出・測定が可能である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0048】
[実施例1]
PET基板に金を蒸着したシートを用いて、2.25mm
2の電極部位を持つ電極チップを作製した(
図1)。
図1において、「1」はPETフィルムであり、「2」は粘着シートであり、「3」は金蒸着PETフィルムであり、「4」は電極部位である。
【0049】
図1の電極部位(作用極部位)に2%(w/v)のコール酸ナトリウム及び0.15%(w/v)の単層カーボンナノチューブ(SuperPureTubes、NanoIntegris社、外径1.1~1.7nm)を含む水分散液を0.6μL滴下し乾燥させた。カーボンナノチューブ分散液の乾燥後、作用極部位に超純水に溶解したFADGDH(配列番号2のアミノ酸配列を有する;8.6U/μL)を0.6μL滴下し乾燥させた。FADGDH液の乾燥後、作用極部位に2%(w/v)チモール溶液(50%(v/v)エタノールに溶解)を0.3μL滴下し乾燥させた。化合物液の乾燥後、作用極部位に3%(w/v)ナフィオン液を0.6μL滴下し、乾燥させ、カーボンナノチューブ、FADGDH、及びチモールを作用極部位に固定化した作用極チップを作製した。
【0050】
以下の(1)の多孔質炭素を15%(w/v)含む水分散液、及び、以下の(2)の多孔質炭素を1.5%(w/v)含む水分散液を調製した。
(1)活性炭粉末(富士フイルム和光純薬社、031-18103、粒径100メッシュ通過分)
(2)クノーベル(商標)粉末(東洋炭素社、MJ(4)010、比表面積1100m2/g、粒径100メッシュ通過分)
【0051】
図1の電極部位(対極部位)に、(1)の多孔質炭素を含む水分散液1.3μL、又は(2)の多孔質炭素を含む水分散液3.8μLを滴下し、乾燥させた。乾燥後、3%(w/v)ナフィオン液を1.3μL滴下し、乾燥させ、多孔質炭素を対極部位に固定化した対極チップを作製した。
【0052】
電気化学アナライザー(ALS/CHI 660B、ビー・エー・エス社)の作用極及び対極に、それぞれ、上記で作製した作用極チップ及び対極チップをセットした。これら2つの電極を40mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に浸漬した。この緩衝液にグルコースを添加しない(0mM)、或いはグルコースを5mM又は14mMとなるように添加する場合においてクロノアンペロメトリーによる測定を実施し、2電極間に+0.4Vの過電圧を印加した際の電流値を測定した。
【0053】
グルコース濃度0mM、5mM、及び14mMで測定したクロノアンペログラムを
図2(活性炭)、
図3(クノーベル(商標))、及び
図4(多孔質炭素なし)にそれぞれ示す。
図2~
図4に示すクロノアンペログラムにおいて、測定開始から5秒後の電流値は下記表1の通りであった。
【0054】
【0055】
実施例1の結果から、多孔質炭素を固定化していない対極の場合ではグルコース応答電流が測定されない条件でも、多孔質炭素として活性炭又はクノーベル(商標)を対極上に固定化することによりグルコース応答電流が測定されることが判明した。
【0056】
[実施例2]
粒径の異なる活性炭粉末を用いた場合の実施例を以下に示す。2%(w/v)のコール酸ナトリウム及び0.15%(w/v)の単層カーボンナノチューブ(SuperPureTubes、NanoIntegris社、外径1.1~1.7nm)を含む水分散液37.5μLと、超純水に溶解したFADGDH(配列番号2のアミノ酸配列を有する;60U/μL)5.4μLとを混合した。50%(v/v)エタノールに溶解させた1%(w/v)チモール溶液を超純水により10倍希釈し0.1%(w/v)チモール溶液を調製し、当該溶液32.4μLを前記単層カーボンナノチューブ及びFADGDHを含む溶液に添加混合した。当該混合液を
図1に示す2.25mm
2の電極部位(作用極部位)に0.6μL滴下し乾燥させた。乾燥後、1%(w/v)ナフィオン液を0.6μL滴下し、乾燥させ、カーボンナノチューブ、FADGDH、及びチモールを固定化した作用極チップを作製した。
【0057】
粒径の異なる以下の(1)、(3)及び(4)の活性炭粉末を10%(w/v)含む水分散液を調製し、
図1に示す2.25mm
2の電極部位(対極部位)に1.0μLを滴下し、乾燥させた。乾燥後、1%(w/v)ナフィオン液を0.6μL滴下し、乾燥させ、活性炭粉末を電極部位に固定化した対極チップを作製した。
(1)150μm(富士フイルム和光純薬社、031-18103、100メッシュ通過分)
(3)6μm(ユー・イー・エス社、KD-PWSP、レーザー回折散乱法により測定された平均粒径6μm、比表面積1324m
2/g)
(4)0.3μm(ユー・イー・エス社、UNP、レーザー回折散乱法により測定された平均粒径0.3μm、比表面積1355m
2/g)
【0058】
電気化学アナライザー(ALS/CHI 660B、ビー・エー・エス社)の作用極及び対極に、それぞれ、上記で作製した作用極チップ及び対極チップをセットした。これら2つの電極を40mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に浸漬した。この緩衝液にグルコースを添加しない(0mM)、或いはグルコースを14mMとなるように添加する場合においてクロノアンペロメトリーによる測定を実施し、2電極間に+0.4Vの過電圧を印加した際の電流値を測定した。
【0059】
グルコース濃度0mM及び14mMで測定したクロノアンペログラムにおいて、測定開始から5秒後の電流値は下記表2の通りであった。
【0060】
【0061】
実施例2の結果から、粒径の異なる活性炭粉末を対極上に固定化することでもグルコース応答電流が測定されることが判明した。
【配列表】