(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】偏光フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240523BHJP
H05B 33/00 20060101ALI20240523BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240523BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/00
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2019141388
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-06-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕太
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200491(JP,A)
【文献】実開昭62-041126(JP,U)
【文献】特表2016-539371(JP,A)
【文献】特開2015-212823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0282637(US,A1)
【文献】国際公開第2019/054273(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H05B 33/00
H10K 50/10
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光層と基材層とを含む偏光フィルムであって、
前記偏光層は、二色性色素および液晶化合物を含む液晶組成物の硬化層からなり、
該偏光フィルムの面方向に第1領域と、前記第1領域と隣接し、前記第1領域より視感度補正単体透過率が高い第2領域とを含み、
前記第2領域は、該第1領域の視感度補正単体透過率との差が30%未満であり、かつ、視感度補正偏光度が10%より大きい領域Xを含
み、前記第2領域の視感度補正単体透過率と第1領域の視感度補正単体透過率との差が、第2領域全域において30%未満である、偏光フィルム。
【請求項2】
前記領域Xは、第1領域と接する第2領域の外郭から内側に向かって連続して存在する、請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項3】
第2領域は、少なくとも2つの異なる視感度補正単体透過率を有する、請求項1または2に記載の偏光フィルム。
【請求項4】
第1領域の視感度補正単体透過率は30%以上55%未満である、請求項1~
3のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項5】
領域Xは、視感度補正単体透過率が45%以上70%以下である、請求項1~
4のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項6】
領域Xは、視感度補正偏光度が30%以上85%以下である、請求項1~
5のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項7】
第2領域の視感度補正単体透過率が、第2領域の外郭から内側に向かって段階的に高くなる、請求項1~
6のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項8】
第2領域は、第1領域と接する領域2-1と、前記領域2-1の内側に位置する領域2-2とから構成されており、
領域2-2における視感度補正単体透過率は、その最大値と最小値との差が2%以内であり、かつ、領域2-1における視感度補正単体透過率より高い、請求項1~
7のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項9】
領域2-1の視感度補正単体透過率は、領域2-2に向かって段階的に高くなる、請求項
8に記載の偏光フィルム。
【請求項10】
領域2-2の視感度補正単体透過率は45%以上70%以下である、請求項
8または
9に記載の偏光フィルム。
【請求項11】
第2領域の平面視形状は、円形、楕円形、長円形または多角形である、請求項1~
10のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項12】
偏光層と基材層との間に配向層を有する、請求項1~
11のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれかに記載の偏光フィルムと位相差フィルムとを含む楕円偏光板。
【請求項14】
異なる視感度補正単体透過率を有する少なくとも2つの領域を面方向に含み、二色性色素および液晶化合物を含む液晶組成物の硬化層からなる偏光層を含む、偏光フィルムの製造方法であって、
第1の視感度補正単体透過率を有する領域を形成する工程と、
第1の視感度補正単体透過率より高く、かつ、第1の視感度補正単体透過率との差が
その全域において30%未満であり、視感度補正偏光度が10%より大きい
第2の領域を、前記第1の視感度補正単体透過率を有する領域に隣接して形成する工程
とを含
み、前記第2の領域が円形、楕円形、長円形または多角形であり、円形である場合その直径が2cm以下であり、楕円形または長円形である場合その長軸が2cm以下であり、多角形である場合その多角形が内接されるように描いた仮想円の直径が2cm以下である、偏光フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)を用いた有機EL表示装置は、液晶表示装置等に比べて軽量化や薄型化が可能であるだけでなく、幅広い視野角、速い応答速度、高いコントラスト等の高画質を実現できるため、スマートフォンやテレビ、デジタルカメラ等、様々な分野で用いられている。有機EL表示装置では、該装置を構成する電極での光反射や外光の反射による視認性の低下を抑制するために楕円偏光板が用いられている。
【0003】
このような楕円偏光板に用いられる偏光フィルムとして、特許文献1~3には、基材上にパターン化された偏光層を積層したパターン偏光フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-206852号公報
【文献】特開2015-212823号公報
【文献】国際公開第2019/082744号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパターン偏光フィルムにおいては、上記特許文献1~3に開示されるように、視感度補正単体透過率が低く、かつ、偏光フィルムとして機能し得る一般的な範囲の視感度補正偏光度(通常、90%程度以上)を有する偏光領域と、視感度補正単体透過率が高く、かつ、前記偏光領域より視感度補正偏光度がかなり低い(通常、10%以下)低偏光領域とが明確に視認される。視感度補正単体透過率の異なる少なくとも2つの領域を有しながら、互いの領域輪郭が視認され難く、かつ、フィルム全体が光吸収異方性を示し得る偏光フィルムは今までに知られていない。
【0006】
本発明は、視感度補正単体透過率が異なる少なくとも2つの領域を有しながら、互いの領域輪郭が視認され難く、かつ、フィルム全体が光吸収異方性を示し得る新規な偏光フィルム、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]偏光層と基材層とを含む偏光フィルムであって、
該偏光フィルムの面方向に第1領域と、前記第1領域と隣接し、前記第1領域より視感度補正単体透過率が高い第2領域とを含み、
前記第2領域は、該第1領域の視感度補正単体透過率との差が30%未満であり、かつ、視感度補正偏光度が10%より大きい領域Xを含む、偏光フィルム。
[2]前記領域Xは、第1領域と接する第2領域の外郭から内側に向かって連続して存在する、前記[1]に記載の偏光フィルム。
[3]第2領域は、少なくとも2つの異なる視感度補正単体透過率を有する、前記[1]または[2]に記載の偏光フィルム。
[4]第2領域の視感度補正単体透過率と第1領域の視感度補正単体透過率との差は、第2領域全域において30%未満である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の偏光フィルム。
[5]第1領域の視感度補正単体透過率は30%以上55%未満である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の偏光フィルム。
[6]領域Xは、視感度補正単体透過率が45%以上70%以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の偏光フィルム。
[7]領域Xは、視感度補正偏光度が30%以上85%以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の偏光フィルム。
[8]第2領域の視感度補正単体透過率が、第2領域の外郭から内側に向かって段階的に高くなる、前記[1]~[7]のいずれかに記載の偏光フィルム。
[9]第2領域は、第1領域と接する領域2-1と、前記領域2-1の内側に位置する領域2-2とから構成されており、
領域2-2の視感度補正単体透過率は実質的に均一であり、かつ、領域2-1における視感度補正単体透過率より高い、前記[1]~[8]のいずれかに記載の偏光フィルム。
[10]領域2-1の視感度補正単体透過率は、領域2-2に向かって段階的に高くなる、前記[9]に記載の偏光フィルム。
[11]領域2-2の視感度補正単体透過率は45%以上70%以下である、前記[9]または[10]に記載の偏光フィルム。
[12]第2領域の平面視形状は、円形、楕円形、長円形または多角形である、前記[1]~[11]のいずれかに記載の偏光フィルム。
[13]偏光層と基材層との間に配向層を有する、前記[1]~[12]のいずれかに記載の偏光フィルム。
[14]偏光層は、二色性色素および液晶化合物を含む液晶組成物の硬化層からなる、前記[1]~[13]のいずれかに記載の偏光フィルム。
[15]前記[1]~[14]のいずれかに記載の偏光フィルムと位相差フィルムとを含む楕円偏光板。
[16]異なる視感度補正単体透過率を有する少なくとも2つの領域を面方向に含む偏光フィルムの製造方法であって、
第1の視感度補正単体透過率を有する領域を形成する工程と、
第1の視感度補正単体透過率より高く、かつ、第1の視感度補正単体透過率との差が30%未満であり、視感度補正偏光度が10%より大きい領域を、前記第1の視感度補正単体透過率を有する領域に隣接して形成する工程
とを含む、偏光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、視感度補正単体透過率が異なる少なくとも2つの領域を有しながら、互いの領域輪郭が視認され難く、かつ、フィルム全体が光吸収異方性を示し得る新規な偏光フィルム、および、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の偏光フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の偏光フィルムの一例を示す概略平面図である。
【
図3】本発明の一例である
図2の偏光フィルムの*-*部における視感度補正単体透過率を模式的に表す図である。
【
図4】本発明の偏光フィルムの一例を示す概略平面図である。
【
図5】本発明の一例である
図4の偏光フィルムの*-*部における視感度補正単体透過率を模式的に表す図である。
【
図6】本発明の偏光フィルムの一例を示す概略平面図である。
【
図7】本発明の一例である
図6の偏光フィルムの*-*部における視感度補正単体透過率を模式的に表す図である。
【
図8】本発明の偏光フィルムの一例を示す概略平面図である。
【
図9】本発明の一例である
図8の偏光フィルムの*-*部における視感度補正単体透過率を模式的に表す図である。
【
図10】本発明の偏光フィルムの製造過程における積層構造の一例を示す概略断面図である。
【
図11】本発明の偏光フィルムの製造過程における積層構造の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0011】
<偏光フィルム>
本発明の偏光フィルムは偏光層と基材層とを含み、その面方向に第1領域と、第1領域と隣接し、かつ、第1領域より視感度補正単体透過率が高い第2領域とを含む。前記第2領域は、第1領域の視感度補正単体透過率との差が30%未満であり、かつ、視感度補正偏光度が10%より大きい領域Xを含む。
【0012】
第2領域が領域Xを含むことにより、互いに視感度補正単体透過率の異なる第1領域と第2領域との領域輪郭を視認し難くする効果を生じ得る。本発明における前記効果を生じる限り、領域Xは第2領域内のいずれの領域に存在していてもよい。視感度補正単体透過率の異なる第1領域と第2領域との境界部分が目立ち難くなり、2つの領域輪郭の視認性を低下させる効果が得られやすいことから、領域Xは、第1領域と接する第2領域の外郭から内側に向かって連続して存在することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、第2領域は、実質的に均一な視感度補正単体透過率を有する(以下、「第一態様」ともいう」。以下、第一態様の偏光フィルムの構成の一例を図に基づき説明する。本発明の偏光フィルムの一例を示す概略断面図である
図1において、本発明の偏光フィルム(11)は基材層(12)とその上に積層された偏光層(13)とから構成される。
図2は、
図1に示すような層構成を有する偏光フィルム(11)を、偏光層(13)側から見た平面図であり、偏光フィルム(11)の面方向に第1領域(1)と、前記第1領域(1)の面方向における内側に隣接する第2領域(2)とを有する。
図2の偏光フィルムの*-*部における視感度補正単体透過率を模式的に表す
図3において、第2領域(2)の視感度補正単体透過率(a)は、第1領域(1)の視感度補正単体透過率(b)よりも高く、第2領域(2)全域にわたり均一である。
なお、本明細書において「実質的に均一な視感度補正単体透過率」とは、当該領域内の視感度補正単体透過率の最小値と最大値との差が2%以内を意味し、「均一な視感度補正単体透過率」とは、当該領域内の視感度補正単体透過率の最小値と最大値との差が1%以内であることを意味する。
【0014】
第一態様において、第1領域の視感度補正単体透過率と第2領域の視感度補正単体透過率との差は30%未満であり、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下である。第2領域の視感度補正単体透過率と第1領域の視感度補正単体透過率との差が上記上限以下であると、第1領域と第2領域との領域輪郭が視認し難くなり、第1領域と第2領域との外観的な差を小さくできる。第一態様における第1領域の視感度補正単体透過率と第2領域の視感度補正単体透過率の差の下限値は、偏光フィルムの用途等により適宜決定すればよいが、通常、1%を超え、好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上である。
【0015】
前記第一態様において、第2領域は全域にわたって領域Xであることが好ましい。第2領域の視感度補正単体透過率が実質的に均一である場合、通常、視感度補正偏光度も同程度となる。したがって、第2領域の視感度補正偏光度は、通常10%以上であり、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上であり、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは45%以上であり、また、好ましくは85%以下、より好ましくは83%以下、さらに好ましくは81%以下である。第2領域が上記範囲内の視感度補正偏光度を有することにより、互いに異なる視感度補正単体透過率を有する領域にパターン化されたフィルムでありながら、フィルム全域が光吸収異方性を示す偏光フィルムを得ることができる。
【0016】
第一態様の偏光フィルムにおいて、第1領域は、従来一般的な偏光フィルムを構成する偏光層に求められる偏光機能を有する領域であることが好ましく、通常、実質的に均一な視感度補正単体透過率を有する。その視感度補正単体透過率は30%以上55%未満であることが好ましく、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは38%以上、特に好ましくは40%以上であり、また、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは48%以下、特に好ましくは45%以下である。
【0017】
第一態様の偏光フィルムにおいて、第1領域の視感度補正偏光度は、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上である。第1領域の視感度補正単体透過率の上限は特に限定されるものではなく、100%であってもよい。
【0018】
第一態様の偏光フィルムにおいて、領域Xの視感度補正単体透過率は、好ましくは45%以上70%以下であり、より好ましくは45%以上65%以下、さらに好ましくは45%以上60%以下である。第一態様の偏光フィルムにおいて領域Xの視感度補正単体透過率が上記範囲内であると、第1領域と第2領域との領域輪郭を目立たなくする効果が高まりやすい。
【0019】
第一態様の偏光フィルムにおいて、領域Xの視感度補正偏光度は、通常10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは45%以上であり、また、好ましくは85%以下、より好ましくは83%以下、さらに好ましくは81%以下である。第一態様の偏光フィルムにおいて領域Xの視感度補正偏光度が上記範囲内であると、互いに異なる視感度補正単体透過率を有する領域にパターン化されたフィルムでありながら、第1領域および領域X(実質的に第2領域)から構成されるフィルム全域が光吸収異方性を示す偏光フィルムとなる。
【0020】
本発明において、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)は、分光光度計を用いて測定した単体透過率および偏光度に基づいて算出することができる。例えば、可視光である波長380nm~780nmの範囲で透過軸方向(配向垂直方向)の透過率(T1)および吸収軸方向(配向同一方向)の透過率(T2)を、分光光度計に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いてダブルビーム法で測定することができる。測定径は円形の直径1mmとする。可視光範囲での単体透過率および偏光度は、下記式(式1)および(式2)を用いて各波長における単体透過率および偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことで、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を算出することができる。詳細には、後述する実施例に記載の方法に従い測定および算出することができる。
単体透過率[%]=(T1+T2)/2 (式1)
偏光度[%]={(T1-T2)/(T1+T2)}×100 (式2)
【0021】
第2領域内において複数段階で視感度補正単体透過率を制御することにより、第1領域と第2領域の領域輪郭をぼかしやすくなり、上記第一態様と比較してより高い視感度補正単体透過率を有する領域を第2領域内に設けることも可能となることから、本発明の別の一態様において、第2領域は、少なくとも2つの異なる視感度補正単体透過率を有する(以下、「第二態様」ともいう)。この場合、視感度補正単体透過率のより低い領域が第1領域と接する第2領域に存在することにより、第1領域と第2領域との境界部分が目立ち難くなり、領域輪郭の視認性を下げる効果により優れる。したがって、第二態様において、第1領域と接する第2領域の外郭側の視感度補正単体透過率は、第2領域の内側の視感度補正単体透過率より低いことが好ましく、少なくとも第1領域と接する第2領域が領域Xであることがより好ましい。
【0022】
第二態様において、第2領域の視感度補正単体透過率は、第2領域の外郭から内側に向かって段階的に高くなることが好ましい。第2領域の視感度補正単体透過率が、第1領域に接する第2領域の外郭から内側に向かって高くなることにより、第1領域と第2領域との境界部分が目立ち難くなり、領域輪郭の視認性を下げる効果により優れる。第2領域の視感度補正単体透過率が段階的に高くなる場合の態様としては、例えば、
図4、6および8に示すような態様が挙げられる。
【0023】
図4は、
図1に示すような層構成を有する偏光フィルム(11)を、偏光層(13)側から見た平面図であり、偏光フィルム(11)の面方向に第1領域(1)と、前記第1領域(1)の面方向における内側に隣接する第2領域(2)とを有する。第2領域(2)は、さらに、第1領域に接する領域2-1(3)と、該領域2-1(3)の面方向における内側に位置する領域2-2(4)とから構成されている。
図4の偏光フィルムの*-*部における視感度補正単体透過率を模式的に表す
図5において、第2領域(2)の視感度補正単体透過率は、第1領域(1)の視感度補正単体透過率(b)よりも高く、第2領域(2)を構成する領域2-2(4)の視感度補正単体透過率(a-2)は領域2-1(3)の視感度補正単体透過率(a-1)よりも高い。
【0024】
図4に示す偏光フィルム(11)において、領域2-2(4)の視感度補正単体透過率(a-2)は、
図5に示すように実質的に均一であり、領域2-1(3)は実質的に均一な視感度補正単体透過率(a-1)を有する1つの領域からなる。第2領域の中で最も高い視感度補正単体透過率を有する領域2-2と第1領域との間に、視感度補正単体透過率が第1領域より高く、領域2-2より低い領域2-1を設けることにより、第1領域と第2領域との領域輪郭を目立ち難くする効果を高めることができる。領域2-1の視感度補正単体透過率は、それぞれ実質的に均一な視感度補正単体透過率を有する2以上の領域により複数段階で高くなっていてもよい。この場合、第2領域を構成する実質的に均一な視感度補正単体透過率を有する複数の領域のうち、最も高い視感度補正単体透過率を有する領域が領域2-2となり、それ以外の領域が領域2-1となる。
【0025】
また、領域2-1の視感度補正単体透過率は、実質的に均一な視感度補正単体透過率を有する領域2-2に向かってグラデーション状に徐々に高くなっていてもよい。
図6は、領域2-1(3)の視感度補正単体透過率が領域2-2(4)に向かってグラデーション状に高くなる偏光フィルム(11)の一例を示す平面図である。
図6の偏光フィルムの*-*部における視感度補正単体透過率を模式的に表す
図7において、領域2-2(4)の視感度補正単体透過率(a-2)は実質的に均一であり、かつ、領域2-1(3)の視感度補正単体透過率(a-1)よりも高く、領域2-1(3)の視感度補正単体透過率は、領域2-2(4)に向かってグラデーション状に高くなっている。
【0026】
領域2-1(3)の視感度補正単体透過率(a-1)が領域2-2(4)に向かって段階的に高くなっていると、第1領域と第2領域との領域輪郭を目立ち難くする効果が高まり、比較的高い視感度補正単体透過率を有する領域2-2(4)を設けた場合であっても第1領域と第2領域との外観的な差が小さくなりやすい。したがって、本発明の第二態様における好適な偏光フィルムの一態様において、第2領域は、第1領域と接する領域2-1と、前記領域2-1の内側に位置する領域2-2とから構成され、領域2-2の視感度補正単体透過率は実質的に同一であり、かつ、領域2-1における視感度補正単体透過率より高く、領域2-1の視感度補正単体透過率は領域2-2に向かって段階的に高くなる。
【0027】
第2領域は、実質的に均一な視感度補正単体透過率を有する領域2-2を含むことなく、第2領域内の一点に向かって、第1領域と接する第2領域の外郭から内側へ段階的に高くなっていてもよい。
図8は、かかる態様の一例を示す平面図であり、偏光フィルム(11)は面方向に第1領域(1)と、前記第1領域(1)の面方向における内側に隣接する第2領域(2)とを有する。
図8の偏光フィルムの*-*部における視感度補正単体透過率を模式的に表す
図9において、第2領域(2)の視感度補正単体透過率(a)は、第1領域1の視感度補正単体透過率(b)よりも高く、第2領域(2)内の一点に向かって第2領域(2)の外郭から内側へグラデーション状に高くなる。該態様においても、第2領域の視感度補正単体透過率は、それぞれ実質的に均一な視感度補正単体透過率を有する2以上の領域により複数段階で高くなっていてもよい。
【0028】
第2領域内における領域2-2の位置、および、第2領域内の一点に向かって第2領域の視感度補正単体透過率が高くなる場合の前記「一点」(以下、「中心点」ともいう)の位置は、第2領域の形状、偏光フィルムの用途等に応じて適宜選択すればよく、第2領域内のいずれに位置していてもよい。通常、領域2-2や第2領域内の中心点は、第2領域内で最も高い視感度補正単体透過率を有する領域または点となるため、第1領域と接しない第2領域内のいずれかに位置することが好ましい。また、第2領域の視感度補正単体透過率が第2領域の内側に向かって高くなる場合、視感度補正単体透過率が第2領域の外郭から領域2-2または前記中心点に向かって同心状に高くなると、第2領域内で視感度補正単体透過率が異なることによる領域輪郭の視認を抑制しやすくなる。
【0029】
第二態様において、第2領域内の視感度補正単体透過率の最小値と最大値との差は、好ましくは30%未満、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。第2領域内における視感度補正単体透過率の差が上記範囲内であると、第2領域内で視感度補正単体透過率が異なることにより視認され得る領域輪郭を目立ち難くする効果に優れる。第2領域内の視感度補正単体透過率の差の下限値は、偏光フィルムの用途、第2領域の大きさ等により適宜決定すればよく、通常1%を超え、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上である。
【0030】
第二態様において、第2領域の視感度補正単体透過率と第1領域の視感度補正単体透過率との差は、第2領域の全域において30%未満であることが好ましく、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。第2領域の全域において第1領域の視感度補正単体透過率との差が上記上限以下であると、第1領域と第2領域との領域輪郭が視認し難くなり、第1領域と第2領域との外観的な差を小さくできる。第一態様における第1領域の視感度補正単体透過率と第2領域の視感度補正単体透過率の差の下限値は、第2領域内における視感度補正単体透過率の異なる各領域の分布、偏光フィルムの用途等により適宜決定すればよい。例えば、第2領域が
図5に示すような視感度補正単体透過率を有する場合、前記下限値は、通常1%を超え、好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上である。第2領域が
図7や9に示すような視感度補正単体透過率を有する場合には、第2領域の視感度補正単体透過率が第1領域の視感度補正単体透過率より高い限り下限値は特に限定されない。
【0031】
第二態様においては、第2領域全域が領域Xであってもよく、第2領域の一部が領域Xであってもよい。第2領域が領域2-1と領域2-2とからなる場合、領域2-1の一部が領域Xであってもよく、領域2-1のみが領域Xであってもよく、領域2-1と領域2-2とがともに領域Xであってもよい。第2領域における領域Xの面積が広くなると、第1領域と第2領域との領域輪郭の視認性を低下させる効果に優れる傾向にある。
【0032】
第2領域の総面積に対して領域Xが一定以上の面積を占めることにより、第1領域と第2領域との境界部分を目立ち難くさせる効果が得られやすいため、領域Xの面積が第2領域の総面積に対して一定以上となるように第2領域の外郭から内側に向かって領域Xを設けることが好ましい。第2領域の総面積に対する領域Xの面積が、例えば30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上、とりわけ好ましくは80%以上となるように、第1領域と接する第2領域の外郭から内側に向かって、好ましくは連続して領域Xを設けることが好ましい。本発明の一態様においては、第2領域の全域が領域Xである(すなわち、第2領域の総面積に対する領域Xの面積は100%である)。
【0033】
第二態様の偏光フィルムにおいて、第1領域は、従来一般的な偏光フィルムを構成する偏光層に求められる偏光機能を有する領域であることが好ましく、通常、実質的に均一な視感度補正単体透過率を有する。その視感度補正単体透過率は30%以上55%未満であることが好ましく、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは38%以上、特に好ましくは40%以上であり、また、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは48%以下、特に好ましくは45%以下である。
【0034】
第二態様の偏光フィルムにおいて、第1領域の視感度補正偏光度は、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上である。第1領域の視感度補正単体透過率の上限は特に限定されるものではなく、100%であってもよい。
【0035】
第二態様の偏光フィルムにおいて、領域Xの視感度補正単体透過率は、好ましくは45%以上70%以下であり、より好ましくは45%以上65%以下、さらに好ましくは45%以上60%以下である。第一態様の偏光フィルムにおいて領域Xの視感度補正単体透過率が上記範囲内であると、第1領域と第2領域との領域輪郭を目立たなくする効果が高まりやすい。第2領域が領域2-1と領域2-2とからなる場合、領域2-2の視感度補正単体透過率が上記範囲内であることが好ましい。
【0036】
第二態様の偏光フィルムにおいて、領域Xの視感度補正偏光度は、通常10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは45%以上であり、また、好ましくは85%以下、より好ましくは83%以下、さらに好ましくは81%以下である。第一態様の偏光フィルムにおいて領域Xの視感度補正偏光度が上記範囲内であると、互いに異なる視感度補正単体透過率を有する領域にパターン化されたフィルムでありながら、第1領域および領域X(実質的に第2領域)から構成されるフィルム全域が光吸収異方性を示す偏光フィルムとなる。第2領域が領域2-1と領域2-2とからなる場合、領域2-2の視感度補正偏光度が上記範囲内であることが好ましい。
【0037】
第二態様の偏光フィルムにおいて、第2領域内の視感度補正単体透過率の最大値は、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下、特に好ましくは80%未満、とりわけ好ましくは75%以下、より特に好ましくは70%以下である。第2領域内の視感度補正単体透過率の最小値は、好ましくは45%以上である。第2領域が領域2-1と領域2-2とからなる場合、通常、領域2-2の視感度補正単体透過率の最大値は上記第2領域内の視感度補正単体透過率の最大値の範囲内となる。
【0038】
第二態様の偏光フィルムにおいて、第2領域内の視感度補正偏光度の最小値は、例えば0%であってよく、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。第2領域が領域2-1と領域2-2とからなる場合、通常、領域2-2の視感度補正単体透過率の最小値は上記第2領域内の視感度補正単体透過率の最小値の範囲内となる。
【0039】
本発明の偏光フィルムの総面積に対する第1領域および第2領域の各占有面積の割合は、偏光フィルムの用途や要求される特性等に応じて適宜選択すればよい。偏光フィルム表面の総面積に対する第1領域および第2領域の占有面積の合計の割合は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。
【0040】
第1領域の占有面積と第2領域の占有面積の合計面積に対する第1領域の占有面積は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。
【0041】
第1領域の占有面積と第2領域の占有面積の合計面積に対する第2領域の占有面積は、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。本発明の偏光フィルムにおいて、第2領域は第1領域内にそれぞれ独立して複数個設けられていてもよい。
【0042】
本発明の偏光フィルムにおいて、第2領域が領域2-1と領域2-2とから構成される場合、該第2領域の表面積に対する領域2-1の占有面積の割合は特に制限されないが、例えば20%以上、好ましくは30%以上である。また、第2領域が領域2-1と領域2-2とから構成される場合、該第2領域の表面積に対する領域2-2の占有面積の割合は、例えば20%以上、好ましくは30%以上でありまた、例えば80%以下、好ましくは70%以下である。
【0043】
本発明の偏光フィルムにおいて、第2領域の形状は、第2領域内における視感度補正単体透過率の異なる各領域の分布、偏光フィルムの用途等により適宜決定すればよい。第2領域の平面視形状は、例えば、円形;楕円形;長円形;三角形、正方形、矩形、菱形等の多角形;文字形状;これらの組み合わせ等、任意の形状であってよく、第2領域を形成する際の加工の容易性等の観点から、好ましくは円形、楕円形、長円形または多角形である。
【0044】
第2領域が円形である場合、その直径は5cm以下であることが好ましく、3cm以下であることがより好ましく、2cm以下であることがさらに好ましい。第2領域が楕円形または長円形である場合、その長軸は5cm以下であることが好ましく、3cm以下であることがより好ましく、2cm以下であることがさらに好ましい。第2領域が多角形である場合、この多角形が内接されるように描いた仮想円の直径は5cm以下であることが好ましく、3cm以下であることがより好ましく、2cm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
なお、偏光フィルムが長尺状の偏光フィルムである場合、長尺状の偏光フィルムは通常、偏光フィルムの用途等に応じて所定サイズに裁断されるため、裁断後の偏光フィルムの所定の位置に第1領域や第2領域が形成されるように、長尺状の偏光フィルムにおける第1領域や第2領域の配置を設定することが好ましい。
【0046】
(基材層)
本発明において基材層は、偏光フィルムを製造する際に偏光層や配向層を支持し得るものであれば特に限定されず、当該分野で公知の基材を用いることができる。基材としては、例えばガラス基材や樹脂基材が挙げられ、長尺の偏光フィルムを連続的に製造し得る観点から樹脂基材が好ましい。樹脂基材は、可視光を透過し得る透光性を有する基材であることが好ましい。ここで、透光性とは、波長380~780nmの波長域の光に対して視感度補正単体透過率が80%以上であることをいう。
【0047】
樹脂基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマー等の環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースおよびセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシド;等を挙げることができる。
【0048】
市販のセルロースエステルの樹脂基材としては、“フジタックフィルム”(富士写真フイルム株式会社製);“KC8UX2M”、“KC8UY”および“KC4UY”(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が挙げられる。
【0049】
市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)(Ticona社(独)製)、“アートン”(登録商標)(JSR株式会社製)、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)(以上、日本ゼオン株式会社製)および“アペル”(登録商標)(三井化学株式会社製)が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、溶剤キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して、樹脂基材とすることができる。市販されている環状オレフィン系樹脂の樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂の樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)、“SCA40”(登録商標)(以上、積水化学工業株式会社製)、“ゼオノアフィルム”(登録商標)(オプテス株式会社製)および“アートンフィルム”(登録商標)(JSR株式会社製)が挙げられる。
【0050】
基材層の厚みは、実用的な取り扱いができる程度の質量である点では、薄い方が好ましいが、強度や加工性の観点から、通常、5μm~300μmであり、好ましくは20μm~200μmである。また、基材層は剥離可能に設けられていてもよく、例えば、偏光フィルムのパターン化偏光層を、表示装置をなす部材や後述する位相差フィルム等に貼合した後、偏光フィルムから剥離できるものであってもよい。これにより、偏光フィルムのさらなる薄膜化効果が得られる。
【0051】
基材層は、1層構造であってもよく2層以上の多層構造であってもよい。基材層が多層構造である場合、各層は同じ材料から形成されていてもよく、互いに異なる材料から形成されていてもよい。
【0052】
また、基材層は、例えば1/4波長板機能のような位相差機能を有していてもよい。基材層が位相差機能を有することにより、基材層とパターン化した偏光層との組み合わせにより、楕円偏光板の機能を有する偏光フィルムを得ることができる。これにより、偏光フィルムに、基材層とは別に位相差フィルムを貼合しなくても、楕円偏光板を得ることができる。また、基材層が多層構造である場合、1/2波長板機能を有する層と1/4波長板機能を有する層とが積層されたものを用い、パターン化した偏光層を1/2波長板機能を有する層側に積層することにより、楕円偏光板を得ることができる。あるいは、基材層が多層構造である場合、逆波長分散性の1/4波長板機能を有する層とポジティブCプレート機能を有する層とが積層されたものを用いることによっても、楕円偏光板を得ることができる。
【0053】
(偏光層)
本発明において偏光層は、偏光機能を有する層であり、該層の面内に第1領域および第2領域を形成し得るものである限り特に限定されるものではない。偏光層としては、従来偏光フィルムとして一般に使用されているものを用いることができ、例えば、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムや吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムを偏光子として含むフィルム(層)等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。
【0054】
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として含む偏光層は通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造された偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して透明保護フィルムで挟み込むことで作製される。
【0055】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0056】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000の範囲である。
【0057】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光層の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10~150μm程度とすることができる。
【0058】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、または染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0059】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。
【0060】
二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性の有機染料としては、C.I.DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料および、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0061】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常、0.01~1質量部程度である。またヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常、0.5~20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒程度である。
【0062】
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常、1×10-4~10質量部程度であり、好ましくは1×10-3~1質量部であり、さらに好ましくは1×10-3~1×10-2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常、20~80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、10~1,800秒程度である。
【0063】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0064】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。また浸漬時間は、通常1~120秒程度である。
【0065】
水洗後に乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒程度であり、好ましくは120~600秒である。乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5~20質量%程度であり、好ましくは8~15質量%である。水分率が上記範囲内であると、適度な可塑性を有し、熱安定性に優れる偏光子を得ることができる。
【0066】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗および乾燥をして得られる偏光層の厚みは、好ましくは5~40μmである。
【0067】
偏光層として、上記のような二色性色素を吸着させた延伸フィルムを用いる場合には、基材層上に粘接着剤層等を介して延伸フィルムからなる偏光層を積層することにより、基材層と偏光層とを含む積層フィルムが得られる。
【0068】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、例えば、液晶性を有する二色性色素を含む組成物または、二色性色素と重合性液晶化合物とを含む重合性液晶組成物を塗布して得られるフィルムが挙げられる。このような液晶性の組成物から形成されるフィルムを偏光層として用いる偏光フィルムは、延伸フィルムからなる偏光層を含む偏光フィルムと比較して薄型化や生産性等の面から有利である。したがって、本発明において、偏光層は、二色性色素および液晶化合物を含む液晶組成物の硬化層からなることが好ましい。
【0069】
本発明の偏光フィルムにおいて、偏光層を形成する偏光層形成用の液晶組成物に含まれる液晶化合物は、特に限定されるものではなく、偏光機能を有する層を形成し得る限り、光学フィルムの分野において公知の液晶化合物を用いることができる。液晶化合物としては、例えば、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、およびこれらの混合物が挙げられる。また、液晶化合物は、高分子液晶化合物であってもよく、重合性液晶化合物であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0070】
重合性液晶化合物を用いることにより、偏光フィルムの色相を任意に制御することができるとともに、偏光フィルムを大幅に薄型化できることから、液晶化合物としては重合性液晶化合物を用いることが好ましい。また、延伸処理を行うことなく偏光フィルムを製造することができるので、熱による延伸緩和のない非伸縮性の偏光フィルムとすることができる点においても有利である。
【0071】
本発明において、偏光層形成用の重合性液晶組成物(以下、「重合性液晶組成物(A)」ともいう)に含まれる重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ともいう)は、少なくとも1つの重合性基を有する液晶化合物である。ここで、重合性基とは、重合開始剤から発生する活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性液晶化合物(A)が有する重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0072】
本発明において、重合性液晶化合物(A)はネマチック液晶性またはスメクチック液晶性を示す化合物であることが好ましく、スメクチック液晶性を示す化合物であることがより好ましい。スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いることにより、配向秩序度の高い偏光子を形成することができる。重合性液晶化合物(A)の示す液晶状態はスメクチック相(スメクチック液晶状態)であり、より高い配向秩序度を実現し得る観点から、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相およびスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相およびスメクチックI相がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、重合性液晶化合物(A)はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0073】
重合性液晶化合物(A)としては、少なくとも1つの重合性基を有する液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができるが、スメクチック液晶性を示す化合物が好ましい。そのような重合性液晶化合物としては、例えば、下記式(A1)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(A1)」ともいう)が挙げられる。
U1-V1-W1-(X1-Y1-)n-X2-W2-V2-U2 (A1)
[式(A1)中、
X1およびX2は、互いに独立して、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子または硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X1およびX2のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。
Y1は、単結合または二価の連結基である。
nは1~3であり、nが2以上の場合、複数のX1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。X2は、複数のX1のうちのいずれかまたは全てと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数のY1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。液晶性の観点からnは2以上が好ましい。
U1は、水素原子または重合性基を表わす。
U2は、重合性基を表わす。
W1およびW2は、互いに独立して、単結合または二価の連結基である。
V1およびV2は、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-CO-、-S-またはNH-に置き換わっていてもよい。]
【0074】
重合性液晶化合物(A1)において、X1およびX2は、互いに独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、X1およびX2のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基およびブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基および塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。
【0075】
また、重合性液晶化合物(A1)は、式(A1)中、式(A1-1):
-(X1-Y1-)n-X2- (A1-1)
〔式中、X1、Y1、X2およびnはそれぞれ上記と同じ意味を示す。〕
で示される部分〔以下、部分構造(A1-1)と称する。〕が非対称構造であることが、スメクチック液晶性を発現し易い点で、好ましい。
部分構造(A1-1)が非対称構造である重合性液晶化合物(A1)としては、例えば、
nが1であり、1つのX1とX2とが互いに異なる構造である重合性液晶化合物(A1)が挙げられる。また、
nが2であり、2つのY1が互いに同じ構造である化合物であって、
2つのX1が互いに同じ構造であり、1つのX2はこれら2つのX1とは異なる構造である重合性液晶化合物(A1)、
2つのX1のうちのW1に結合するX1が、他方のX1およびX2とは異なる構造であり、他方のX1とX2とは互いに同じ構造である重合性液晶化合物(A1)も挙げられる。さらに、
nが3であり、3つのY1が互いに同じ構造である化合物であって、
3つのX1および1つのX2のうちのいずれか1つが他の3つの全てと異なる構造である重合性液晶化合物(A1)が挙げられる。
【0076】
Y1は、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH2CH2O-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CRa=CRb-、-C≡C-、-CRa=N-または-CO-NRa-が好ましい。RaおよびRbは、互いに独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。Y1は、-CH2CH2-、-COO-または単結合であることがより好ましく、複数のY1が存在する場合、X2と結合するY1は、-CH2CH2-または-CH2O-であることがより好ましい。X1およびX2が全て同一構造である場合、互いに異なる結合方式である2以上のY1が存在することが好ましい。互いに異なる結合方式である複数のY1が存在する場合には、非対称構造となるため、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0077】
U2は、重合性基である。U1は、水素原子または重合性基であり、好ましくは重合性基である。U1およびU2がともに重合性基であることが好ましく、ともにラジカル重合性基であることが好ましい。重合性基としては、重合性液晶化合物(A)が有する重合性基として先に例示した基と同様のものが挙げられる。U1で示される重合性基とU2で示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。また、重合性基は重合している状態であってもよいし、未重合の状態であってもよいが、好ましくは未重合の状態である。
【0078】
V1およびV2で表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基およびイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。V1およびV2は、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
【0079】
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子等が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0080】
W1およびW2は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-または-OCOO-が好ましく、単結合または-O-がより好ましい。
【0081】
重合性液晶化合物(A)としては、少なくとも1つの重合性基を有する重合性液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができるが、スメクチック液晶性を示すことが好ましく、スメクチック液晶性を示しやすい構造としては、分子構造中に非対称性の分子構造を有することが好ましく、具体的には以下(A-a)~(A-i)の部分構造を有する重合性液晶化合物であってスメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物であることがより好ましい。高次スメクチック液晶性を示しやすいという観点から(A-a)、(A-b)または(A-c)の部分構造を有することがより好ましい。なお、下記(A-a)~(A-i)において、*は結合手(単結合)を表す。
【0082】
【0083】
重合性液晶化合物(A)としては、具体的には例えば、式(A-1)~式(A-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(A)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
これらの中でも、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)および式(A-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(A)として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
重合性液晶化合物(A)は、例えば、Lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)、または特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造できる。
【0091】
本発明において、重合性液晶組成物(A)は、重合性液晶化合物(A)以外の他の重合性液晶化合物を含んでいてもよいが、配向秩序度の高い偏光膜を得る観点から、重合性液晶組成物(A)に含まれる全重合性液晶化合物の総質量に対する重合性液晶化合物(A)の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0092】
また、重合性液晶組成物(A)が2種以上の重合性液晶化合物(A)を含む場合、そのうちの少なくとも1種が重合性液晶化合物(A1)であってもよく、その全てが重合性液晶化合物(A1)であってもよい。複数の重合性液晶化合物を組み合わせることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度でも一時的に液晶性を保持することができる場合がある。
【0093】
重合性液晶組成物(A)における重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物(A)の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。なお、本明細書において、固形分とは、重合性液晶組成物(A)から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0094】
本発明において、偏光層を形成し得る重合性液晶組成物(A)は二色性色素を含む。ここで、二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を意味する。本発明において用い得る二色性色素は、上記性質を有するものであれば特に制限されず、染料であっても、顔料であってもよい。また、2種以上の染料または顔料をそれぞれ組み合わせて用いてもよいし、染料と顔料とを組み合わせて用いてもよい。
【0095】
二色性色素としては、300~700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素およびアントラキノン色素等が挙げられる。
【0096】
アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素およびトリスアゾ色素が好ましく、例えば、式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう。)が挙げられる。
K1(-N=N-K2)p-N=N-K3 (I)
[式(I)中、K1およびK3は、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基または置換基を有していてもよい1価の複素環基を表わす。K2は、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表わす。pは1~4の整数を表わす。pが2以上の整数である場合、複数のK2は互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0097】
1価の複素環基としては、例えば、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0098】
K1およびK3におけるフェニル基、ナフチル基および1価の複素環基、並びにK2におけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基および2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基などの置換または無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は-NH2である。)等が挙げられる。
【0099】
化合物(I)の中でも、以下の式(I-1)~式(I-8)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化7】
[式(I-1)~(I-8)中、
B
1~B
30は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換または無置換のアミノ基(置換アミノ基および無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子またはトリフルオロメチル基を表わす。
n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表わす。
n1が2以上である場合、複数のB
2は互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のB
6は互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のB
9は互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB
14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0100】
前記アントラキノン色素としては、式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【化8】
[式(I-9)中、
R
1~R
8は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0101】
前記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化9】
[式(I-10)中、
R
9~R
15は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0102】
前記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化10】
[式(I-11)中、
R
16~R
23は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
式(I-9)、式(I-10)および式(I-11)において、R
xの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基等が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基およびナフチル基等が挙げられる。
【0103】
前記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物および式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化11】
[式(I-12)中、
D
1およびD
2は、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表わす。
【化12】
n5は1~3の整数を表わす。]
【化13】
[式(I-13)中、
D
3およびD
4は、互いに独立に、式(I-13a)~式(1-13h)のいずれかで表される基を表わす。
【化14】
n6は1~3の整数を表わす。]
【0104】
重合性液晶組成物(A)における二色性色素の含有量(複数種含む場合にはその合計量)は、用いる二色性色素の種類などに応じて適宜決定し得るが、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~50質量部であり、より好ましくは0.1~20質量部であり、さらに好ましくは0.1~12質量部である。二色性色素の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、高い配向秩序度を有する偏光子を得ることができる。
【0105】
本発明において、偏光子を形成するための重合性液晶組成物(A)は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤は単独または二種以上組み合わせて使用できる。
【0106】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、自己開裂型の光重合開始剤、水素引き抜き型の光重合開始剤がある。
自己開裂型の光重合開始剤として、自己開裂型のベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物等を使用できる。また、水素引き抜き型光重合開始剤として、水素引き抜き型のベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。
【0107】
酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等を使用できる。
【0108】
この中でも、色素の溶解を防ぐ観点から低温での反応が好ましく、低温での反応効率の観点から自己開裂型の光重合開始剤が好ましく、特にアセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0109】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、以下のものが挙げられる。
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等のヒドロキシアセトフェノン系化合物;
2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等のα-アミノアセトフェノン系化合物;
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物;
ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;
ジエトキシアセトフェノンなどのジアルコキシアセトフェノン系化合物;
2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチ_ル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンおよび2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系化合物。
光重合開始剤は、例えば上記の光重合開始剤から重合性液晶組成物(A)に含まれる重合性液晶化合物との関係において適宜選択すればよい。
【0110】
また、市販の光重合開始剤を用いてもよい。市販の重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907、184、651、819、250、および369、379、127、754、OXE01、OXE02、OXE03(BASF社製);Omnirad BCIM、Esacure 1001M、Esacure KIP160(IDM Resins B.V.社製);セイクオール(登録商標)BZ、Z、およびBEE(精工化学株式会社製);カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100、およびUVI-6992(ダウ・ケミカル株式会社製);アデカオプトマーSP-152、N-1717、N-1919、SP-170、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(株式会社ADEKA製);TAZ-A、およびTAZ-PP(日本シイベルヘグナー株式会社製);並びに、TAZ-104(株式会社三和ケミカル製);等が挙げられる。
【0111】
偏光子を形成するための重合性液晶組成物(A)における重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部である。重合開始剤の含有量が上記上限下限値内であると、重合性液晶化合物の配向を大きく乱すことなく、重合性液晶化合物の重合反応を行うことができる。
【0112】
重合性液晶組成物(A)は光増感剤をさらに含有していてもよい。光増感剤を用いることにより重合性液晶化合物の重合反応をより促進させることができる。光増感剤としては、キサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン等が挙げられる。光増感剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0113】
重合性液晶組成物(A)が光増感剤を含む場合、その含有量は、重合開始剤および重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよいが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部がさらに好ましい。
【0114】
重合性液晶組成物(A)はレベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤は、重合性液晶組成物の流動性を調整し、該重合性液晶組成物を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。レベリング剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0115】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”および“BYK-392”(BYK Chemie社)が挙げられる。
【0116】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”および同“F-483”(DIC(株));“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”および“SA-100”(AGCセイミケミカル(株));“E1830”、“E5844”((株)ダイキンファインケミカル研究所);“エフトップEF301”、“エフトップEF303”、“エフトップEF351”および“エフトップEF352”(三菱マテリアル電子化成(株))が挙げられる。
【0117】
重合性液晶組成物(A)がレベリング剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。レベリング剤の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させやすく、かつ、ムラが生じ難く、より平滑な偏光子を得られる傾向がある。
【0118】
重合性液晶組成物(A)は、重合反応を安定的に進行させる観点から重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤により、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコール等)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル捕捉剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類又はβ-ナフトール類等が挙げられる。
【0119】
重合性液晶組成物(A)が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは0.5~3質量部である。重合禁止剤の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を大きく乱すことなく重合を行うことができる。
【0120】
さらに、重合性液晶組成物(A)は反応性添加剤を含んでもよい。反応性添加剤としては、その分子内に炭素-炭素不飽和結合と活性水素反応性基とを有するものが好ましい。なお、ここでいう「活性水素反応性基」とは、カルボキシル基(-COOH)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH2)等の活性水素を有する基に対して反応性を有する基を意味し、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、無水マレイン酸基等がその代表例である。反応性添加剤が有する、炭素-炭素不飽和結合または活性水素反応性基の個数は、通常、それぞれ1~20個であり、好ましくはそれぞれ1~10個である。
【0121】
反応性添加剤において、活性水素反応性基が少なくとも2つ存在することが好ましく、この場合、複数存在する活性水素反応性基は同一でも、異なるものであってもよい。
【0122】
反応性添加剤が有する炭素-炭素不飽和結合とは、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、又はそれらの組み合わせであってよいが、炭素-炭素二重結合であることが好ましい。中でも、反応性添加剤としては、ビニル基及び/又は(メタ)アクリル基として炭素-炭素不飽和結合を含むことが好ましい。さらに、活性水素反応性基が、エポキシ基、グリシジル基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種である反応性添加剤が好ましく、アクリル基とイソシアネート基とを有する反応性添加剤がより好ましい。
【0123】
反応性添加剤の具体例としては、メタクリロキシグリシジルエーテルやアクリロキシグリシジルエーテル等の、(メタ)アクリル基とエポキシ基とを有する化合物;オキセタンアクリレートやオキセタンメタクリレート等の、(メタ)アクリル基とオキセタン基とを有する化合物;ラクトンアクリレートやラクトンメタクリレート等の、(メタ)アクリル基とラクトン基とを有する化合物;ビニルオキサゾリンやイソプロペニルオキサゾリン等の、ビニル基とオキサゾリン基とを有する化合物;イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート又は2-イソシアナトエチルメタクリレート等の、(メタ)アクリル基とイソシアネート基とを有する化合物のオリゴマー等が挙げられる。また、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、無水マレイン酸又はビニル無水マレイン酸等の、ビニル基やビニレン基と酸無水物とを有する化合物等が挙げられる。中でも、メタクリロキシグリシジルエーテル、アクリロキシグリシジルエーテル、イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、ビニルオキサゾリン、2-イソシアナトエチルアクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレート又は上記のオリゴマーが好ましく、イソシアナトメチルアクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート又は上記のオリゴマーが特に好ましい。
【0124】
具体的には、下記式(Y)で表される化合物が好ましい。
【0125】
【0126】
[式(Y)中、nは1~10までの整数を表わし、R1’は、炭素数2~20の2価の脂肪族又は脂環式炭化水素基、或いは炭素数5~20の2価の芳香族炭化水素基を表わす。各繰返し単位にある2つのR2’は、一方が-NH-であり、他方が>N-C(=O)-R3’で示される基である。R3’は、水酸基又は炭素-炭素不飽和結合を有する基を表す。
式(Y)中のR3’のうち、少なくとも1つのR3’は炭素-炭素不飽和結合を有する基である。]
【0127】
前記式(Y)で表される反応性添加剤の中でも、下記式(YY)で表される化合物(以下、化合物(YY)ということがある。)が特に好ましい(なお、nは前記と同じ意味である)。
【0128】
【0129】
化合物(YY)には、市販品をそのまま又は必要に応じて精製して用いることができる。市販品としては、例えば、Laromer(登録商標)LR-9000(BASF社製)が挙げられる。
【0130】
重合性液晶組成物(A)が反応性添加剤を含有する場合、反応性添加剤の含有量は、液晶化合物100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部である。
【0131】
重合性液晶組成物(A)は、光増感剤、レベリング剤、重合禁止剤および反応性添加剤以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、例えば、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤および滑剤などが挙げられる。重合性液晶組成物(A)が他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量は、重合性液晶組成物(A)の固形分に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0132】
重合性液晶組成物(A)は、従来公知の調製方法により製造することができ、通常、重合性液晶化合物および二色性色素、並びに、必要に応じて重合開始剤および上述の添加剤等を混合、撹拌することにより調製することができる。
【0133】
本発明の偏光フィルムを構成する偏光層は、例えば、
重合性液晶組成物(A)の塗膜を形成すること、
前記塗膜から溶剤を除去すること、
重合性液晶化合物が液晶相に相転移する温度以上まで昇温した後降温して、該重合性液晶化合物を相転移させること、および、
前記液晶相を保持したまま重合性液晶化合物を重合させること
を含む方法により、重合性液晶組成物(A)から形成することができる。
【0134】
重合性液晶組成物(A)の塗膜の形成は、例えば、先に記載した基材上に直接または後述する配向膜を介して重合性液晶組成物(A)を塗布することにより行うことができる。この際、特に、一般にスメクチック液晶性を示す化合物では粘度が高いため、重合性液晶組成物(A)の塗布性を向上させて偏光子の形成を容易にする観点から、重合性液晶組成物(A)に溶剤を加えることにより粘度調整を行ってもよい(以下、重合性液晶組成物に溶剤を加えた組成物を「偏光層形成用組成物」ともいう)。
【0135】
偏光層形成用組成物に用いる溶剤は、用いる重合性液晶化合物および二色性色素の溶解性等に応じて適宜選択することができる。具体的には例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤、および、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0136】
溶剤の含有量は、重合性液晶組成物(A)を構成する固形分100質量部に対して、好ましくは100~1900質量部であり、より好ましくは150~900質量部であり、さらに好ましくは180~600質量部である。
【0137】
偏光層形成用組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。
【0138】
次いで、偏光層形成用組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で、溶剤を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0139】
さらに、重合性液晶化合物を液晶相に相転移させるため、重合性液晶化合物が液晶相に相転移する温度以上まで昇温した後降温し、該重合性液晶化合物を液晶相(スメクチック相)に相転移させる。かかる相転移は、前記塗膜中の溶剤除去後に行ってもよいし、溶剤の除去と同時に行ってもよい。
【0140】
重合性液晶化合物の(スメクチック)液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、重合性液晶組成物の硬化層として偏光子が形成される。重合方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)、重合開始剤の種類およびそれらの量等に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の活性エネルギー線や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、重合性液晶組成物に含有される重合性液晶化合物や重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら、光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、比較的耐熱性が低い基材を用いたとしても、適切に偏光子を形成できる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた偏光子を得ることもできる。
【0141】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0142】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cm2である。紫外線照射強度は、好ましくは重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分、より好ましくは5秒~3分、さらに好ましくは10秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm2、好ましくは50~2,000mJ/cm2、より好ましくは100~1,000mJ/cm2である。
【0143】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、好ましくはスメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、偏光層が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる偏光層は、前記二色性色素の作用にも伴い、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0144】
偏光層形成用組成物から形成される偏光層の厚みは、偏光フィルムの用途、適用される表示装置に応じて適宜選択できる。好ましくは0.1μm以上5μm以下の膜であり、より好ましくは0.3μm以上4μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
【0145】
本発明において、偏光層形成用組成物から形成される偏光層は、配向層を介して基材表面に積層(形成)されてもよい。配向層は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向層を含むことにより、重合性液晶化合物の配向精度を向上させやすくなるため、本発明の一態様において、偏光フィルムは偏光層と基材層との間に配向層を有する。配向層としては、重合性液晶化合物を含有する組成物の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。本発明において、配向層としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、配向角の精度および品質、並びに、配向層を含む偏光フィルムの耐水性および屈曲性等の観点から光配向膜が好ましい。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でも有利である。
【0146】
配向性ポリマーとしては、例えば、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0147】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」ともいう)を基材に塗布し、溶剤を除去する、または、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングする(ラビング法)ことで得られる。溶剤としては、偏光層形成用組成物に用い得る溶剤として先に例示した溶剤と同様のものが挙げられる。
【0148】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20%が好ましく、0.1~10%程度がさらに好ましい。
【0149】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0150】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、偏光層形成用組成物を基材へ塗布する方法として先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0151】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0152】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を接触させる方法が挙げられる。ラビング処理を行う時に、マスキングを行えば、配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を配向膜に形成することもできる。
【0153】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材に塗布し、偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。
【0154】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0155】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0156】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0157】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶剤としては、偏光層形成用組成物に用い得る溶剤として先に例示した溶剤と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0158】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0159】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布する方法、および、塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去する方法としては、偏光層形成用組成物を基材に塗布する方法および溶剤を除去する方法と同様の方法が挙げられる。
【0160】
偏光の照射は、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去したものに直接偏光UVを照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0161】
なお、ラビングまたは偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0162】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターンまたは複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0163】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像およびリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、および、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0164】
配向層(配向性ポリマーを含む配向膜または光配向膜)の厚みは、通常10~5000nmであり、好ましくは10~1000nm、より好ましくは10~500nm、さらに好ましくは10~300nm、特に好ましくは30~300nmである。
【0165】
このようにして、基材上に、必要に応じて配向層を介して積層された、偏光層形成用組成物の硬化層からなる偏光層を含む積層フィルムを得ることができる。
【0166】
本発明の偏光フィルムは、基材層、偏光層および必要に応じて配向層に加えて、従来の偏光フィルムが含み得る他の層を含んでいてもよい。そのような他の層としては、例えば、偏光層を保護するための保護層などが挙げられる。
【0167】
<偏光フィルムの製造方法>
本発明の偏光フィルムは、例えば、
第1の視感度補正単体透過率を有する領域を形成する工程(以下、「第1領域形成工程」ともいう)と、
第1の視感度補正単体透過率より高く、かつ、第1の視感度補正単体透過率との差が30%未満であり、視感度補正偏光度が10%より大きい領域を、前記第1の視感度補正単体透過率を有する領域に隣接して形成する工程(以下、「第2領域形成工程」ともいう)
とを含む方法により製造することができる。
以下、本発明の偏光フィルムの製造方法の一例を、
図10および
図11に基づき説明する。
【0168】
第1の視感度補正単体透過率を有する領域は、本発明の偏光フィルムにおける第1領域の視感度補正単体透過率を有する領域であり、第1領域形成工程は、通常、偏光層を形成する工程である。偏光層は、二色性色素を吸着させた延伸フィルムから構成されるか、偏光層形成用組成物の硬化層であるかなどその種類に応じて、それぞれ先に例示したような方法に従い作製することができ、これにより、
図10に示すような基材層(12)上に実質的に均一な第1の視感度補正単体透過率を有する偏光層(13)を含む積層フィルム(14)が得られる。
【0169】
第1の視感度補正単体透過率より高く、かつ、第1の視感度補正単体透過率との差が30%未満であり、視感度補正偏光度が10%より大きい領域は、本発明の偏光フィルムにおける第2領域に含まれる領域Xに相当する。本発明の偏光フィルムの製造において、第1領域と第2領域とを完全に別々の工程として作製してもよいが、製造のし易さおよび製造効率、並びに得られる偏光フィルムの光学特性等の観点から、最終的に第1領域または第2領域となる領域全体に第1領域の視感度補正単体透過率を有する偏光層を形成した後、所望の領域に第2領域を形成することが好ましい。
【0170】
第2領域形成工程は、例えば、
第1領域形成工程により得られた積層フィルムにおいて、最終的に第1領域となる領域を被覆するための被覆領域と、最終的に第2領域となる領域を露出させるための露出領域とを有する保護フィルムを前記積層フィルムに積層する工程(以下、「保護フィルム積層工程」ともいう)と、
第1領域形成工程により形成した偏光層の色素の一部を溶出し得る溶解液に前記保護フィルム付き積層フィルムを接触させて、露出領域に存在する偏光層の視感度補正単体透過率が第1の視感度補正単体透過率よりも30%未満の範囲で高く、かつ、視感度補正偏光度が10%より大きくなるよう該露出領域の偏光層の色素の一部を溶出させる工程(以下、「溶解液接触工程」ともいう)
とを含む方法により行うことができる。
【0171】
保護フィルム積層工程では、
図10に示すように、第1領域形成工程で得られた積層フィルムの偏光層(13)上に、最終的に第1領域となる領域を被覆するための被覆領域(21)と、最終的に第2領域となる領域を露出させるための露出領域(22)とを有する保護フィルム(20)を前記積層フィルム(14)に積層する。これにより、保護フィルム付き積層フィルム(15)を得ることができる。露出領域(22)は、例えば保護フィルム(20)の開口部とすることができる。被覆領域(21)は、後述する偏光層(13)内の一部の色素を溶解し得る溶解液と、保護フィルム付き積層フィルム(15)とを接触させたときに、溶解液が偏光層(13)と接触するのを防ぐための領域である。一方、保護フィルム(20)の露出領域(22)では、溶解液を偏光層(13)に接触させることができる。
【0172】
偏光層(13)が溶解液と接触すると、溶解液が偏光層(13)の色素の一部を溶出する。この溶出の程度を制御することにより、偏光層(13)の視感度補正単体透過率および視感度補正偏光度を調整し得るため、露出領域(22)は、最終的に第2領域となる領域に対応させて形成することが好ましい。例えば、
図2に示す偏光フィルム(11)を製造する場合には、第2領域(2)の形状に合わせてその形状を決定することが好ましく、第2領域(2)の平面視形状に対応して形成すればよい。溶解液が偏光層中に浸透することを考慮して、露出領域(22)を、最終的に所望する第2領域(2)より少し小さく形成してもよい。
【0173】
また、保護フィルム(20)の被覆領域(21)は、偏光層(13)の色素の一部を溶出させない領域に対応させて形成することが好ましい。例えば、
図2に示す偏光フィルム(11)を製造する場合には、第1領域(1)の形状に合わせてその形状を決定することが好ましい。
【0174】
保護フィルム(20)としては、シート状基材に露出領域(22)となる領域を形成したものを用いることができる。露出領域(22)となる領域は、シート状基材の所定部分を、パンチング、カッティングプロッタ、ウォータージェット等によって機械的に打ち抜く方法、シート状基材の所定部分をレーザーアブレーション、化学的溶解等によって除去する方法等によって形成することができる。
【0175】
保護フィルム(20)を形成するシート状基材としては、偏光層(13)の色素の一部を溶出し得る溶解液に接触させたときに該溶解液に不溶であり、また、溶解液や溶出した一部の色素を除去するために行う洗浄条件において耐久性を有するものであれば、その材料は特に限定されない。保護フィルム(20)を形成するシート状基材としては、例えば、上記した基材層と同じ材料を用いて形成することができ、特に樹脂基材を用いて形成されることが好ましく、保護フィルム(20)の露出領域(22)となる領域(例えば、開口部)の変形を抑制しやすいポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂を用いることがより好ましい。
【0176】
保護フィルム(20)は、偏光層(13)に貼合するための粘着層(図示せず)を有していることが好ましい。保護フィルム(20)は後に剥離されるため、粘着層は、偏光層(13)に対して剥離可能であることが好ましい。保護フィルム(20)の厚みは、通常20μm以上であり、30μm以上であることが好ましく、また、通常250μm以下であり、200μm以下であることが好ましい。
【0177】
溶解液接触工程では、保護フィルム付き積層フィルム(15)を、偏光層(13)の色素の一部を溶出し得る溶解液に接触させることにより、露出領域(22)に存在する偏光層(13)の視感度補正単体透過率および視感度補正偏光度を所望の値に調整し、異なる視感度補正単体透過率を有する少なくとも2つの領域を面方向に含む偏光フィルムを得ることができる。
【0178】
保護フィルム付き積層フィルム(15)と溶解液との接触は、保護フィルム付き積層フィルム(15)を溶解液に浸漬する、保護フィルム付き積層フィルム(15)に溶解液を塗布、噴霧、滴下する等によって行うことができ、保護フィルム付き積層フィルム(15)を溶解液に浸漬する方法によって行うことが好ましい。これにより、偏光層(13)のうち、保護フィルム(20)の露出領域(22)から露出する偏光層(13)表面に溶解液が接触し、該露出領域(22)の偏光層(13)内の色素の一部が溶出する。色素が溶出される量/程度を制御することによって、該露出領域(22)の偏光層(13)の視感度補正単体透過率および視感度補正偏光度を制御することができる。一般に、溶出、除去される色素の量が多くなるほど、該領域における視感度補正単体透過率は高くなり、視感度補正偏光度は低くなる傾向にある。溶出される色素の量やその程度については、偏光層を構成する材料との関係において、後述する溶解液の種類、偏光層と溶解液との接触時間、溶解液の温度等を選択/調整するにより制御し得る。
【0179】
偏光層(13)の表面のうち、保護フィルム(20)の被覆領域(21)に被覆された領域は、偏光層(13)が溶解液と直接接触しないため、偏光層(13)内の色素が溶出しにくい。したがって、例えば
図10において、偏光層(13)のうち被覆領域(21)に対応する領域では偏光層(13)が残存し、露出領域(22)に対応する領域では、偏光層(13)の視感度補正単体透過率および視感度補正偏光度が、前記被覆領域(21)に対して制御された偏光フィルムを得ることができる。
【0180】
溶解液は、偏光層内の色素を溶出するものであるため、必要のない領域の偏光層の色素が溶出、除去されないように、保護フィルムの厚み、露出領域の大きさ、溶解液の濃度、溶解液への保護フィルム付き積層フィルムの浸漬時間、保護フィルム付き積層フィルムへの溶解液の塗布量、噴霧量または滴下量等を調整することが好ましい。
【0181】
溶解液としては、偏光層の色素の一部を溶出させるものであって、偏光層全体を溶解させず、基材層および保護フィルムを溶解させないものあれば特に限定されないが、有機溶剤が好ましい。例えばアニソール、トルエン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン等のケトン、クロロホルム等の塩素、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄を含有する溶解液等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0182】
これらの溶剤を、偏光層を構成する成分に応じて適宜選択することにより、露出領域の偏光層の視感度補正単体透過率および視感度補正偏光度を制御することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに基づく偏光層に対しては、水、アルコール等の親水性の溶剤を用いることが好ましい。また、二色性色素および液晶化合物を含む偏光層形成用組成物の硬化層である偏光層に対しては、トルエン、ジメチルスルホキシド等の溶剤を用いることが好ましい。第2領域に少なくとも2つの異なる視感度補正単体透過率を有する領域を形成するために、溶解液接触工程を複数回行う場合、各溶解液接触工程で用いる溶解液の種類は同じであっても、異なっていてもよい。
【0183】
保護層付き積層フィルムと溶解液とを接触させる接触条件は、偏光層の厚みや、偏光層の一部の色素を溶出させるために溶解液に接する領域の大きさ等に応じて適宜選定すればよい。溶解液の温度は、10~80℃であることが好ましく、20~60℃であることがより好ましい。保護層付き積層フィルムと溶解液との接触時間は、所望の視感度補正単体透過率および視感度補正偏光度に応じて適宜調整すればよい。接触時間は、通常1~300秒であり、好ましくは5~120秒である。
【0184】
溶解液接触工程の後、溶解液や溶出した色素を洗い流す洗浄工程を設けることが好ましい。洗浄工程は、例えば偏光層が重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物の硬化物である場合は水やアルコール等の、偏光層や偏光層内の色素を溶解させない溶剤を適宜用いて行うことができる。
【0185】
溶解液接触工程の後、保護フィルム付き積層フィルムから保護フィルムを剥離する(以下、「剥離工程」ともいう)ことにより、第1領域と第2領域とを有する偏光フィルムを得ることができる。
【0186】
上記工程により得られた、異なる視感度補正単体透過率を有する2つの領域を含む偏光フィルムにおいて、さらに、露出領域の異なる保護フィルムを積層した後、溶解液接触工程を施すことにより、視感度補正単体透過率が第2領域の外郭から内側に向かって段階的に高くなる偏光フィルムを得ることができる。例えば、
図11に示す保護フィルム付き積層フィルム(16)では、上記工程により得られた第1領域(1)と第2領域(2)とを有する偏光層(13)上に、上記工程で用いた保護フィルム(20)とは異なる被覆領域(23)および露出領域(24)を設けた保護フィルム(25)が積層されている。
図11の保護フィルム付き積層フィルム(16)の露出領域(24)は、先の工程で溶解液に接触した露出領域(22)よりも狭くなっており、偏光層の色素の一部を溶出し得る溶解液に該露出領域(24)で露出された偏光層(13)を接触させることにより、該露出領域(24)の偏光層(13)の視感度補正単体透過率および視感度補正偏光度を所望の値に調整し、第2領域の内側に、さらに視感度補正単体透過率および視感度補正偏光度が制御された領域を有する偏光フィルムを得ることができる。このような操作を繰り返すことにより、例えば
図4に示すような領域2-1(3)と、その内側に位置する領域2-2(4)とを有する偏光フィルム(11)などの、第2領域の外郭から内側に向かって視感度補正単体透過率が段階的に高くなる偏光フィルムを得ることができる。溶解液接触工程の回数、これらの工程条件および溶解液の種類等を選択することにより、第2領域の視感度補正単体透過率および視感度補正偏光度を制御し、
図2、4、6および8に代表されるようなパターンの第2領域を有する偏光フィルムを作製できる。
【0187】
第2領域に少なくとも2つの異なる視感度補正単体透過率を有する領域を形成するために、溶解液接触工程を複数回行う場合、各溶解液接触工程で用いる溶解液の種類は同じであっても、異なっていてもよい。また、保護フィルム付き積層フィルムと溶解液との接触条件は、所望の視感度補正単体透過率および視感度補正偏光度に応じて適宜調整すればよく、各溶解液接触工程において採用する条件は、同じであっても異なっていてもよい。
【0188】
本発明において上記偏光フィルムは、Roll to Roll形式により連続的に製造することができる。この場合、第1領域形成工程においてロール状に巻回された、基材層と偏光層とを含む積層フィルムを作製し、この積層フィルムを巻出しながら搬送して、保護フィルム積層工程、および溶解液接触工程等を連続的に行えばよい。保護フィルム積層工程では、ロール状に巻回された保護フィルムを巻出しながら搬送して、積層フィルムに保護フィルムを積層して保護フィルム付き積層フィルムを得ればよい。溶解液接触工程では、保護フィルム付き積層フィルムを連続的に搬送しながら溶解液で満たされた溶解液浴を通過させる、または、保護フィルム付き積層フィルムを連続的に搬送しながら溶解液を塗布、噴霧若しくは滴下して、第1領域と第2領域とを有する保護フィルム付きの偏光フィルムを得ればよい。その後、保護フィルム付き偏光フィルムを搬送しながら連続的に保護フィルムを剥離して、偏光フィルムをロール状に巻取って巻回体とすればよい。第2領域が視感度補正単体透過率の異なる複数の領域からなる場合、前記保護フィルム積層工程、溶解液接触工程および剥離工程を繰り返すことにより、所望のパターンを有する偏光フィルムを製造することができる。上記のように連続的に製造された偏光フィルムは、例えば10m以上の長さを有することができる。
【0189】
第1領域形成工程においては、ロール状に巻回された基材層を巻出しながら搬送し、この基材層に延伸フィルムから構成される偏光層を、粘接着剤層等を介して貼合する、または、前記基材層上に、塗布装置により偏光層形成用組成物を連続的に塗工し、乾燥および硬化することにより偏光層を連続して形成することができる。偏光フィルムが基材層と偏光層との間に配向層を含む場合は、例えば、ロール状に巻回された基材層を巻出しながら搬送し、この基材層上に、塗布装置により連続的に配向層形成用組成物を塗工して配向層を形成すればよい。
【0190】
<楕円偏光板>
本発明の偏光フィルムは、位相差フィルムと積層することにより、楕円偏光板を構成する材料として好適に用いることができる。したがって、本発明は、本発明の偏光フィルムと位相差フィルムとを含む楕円偏光板を包含する。
【0191】
位相差フィルムとしては、ポリマーを延伸することによって位相差を与える延伸フィルムや、重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物の硬化物であって、前記重合性液晶化合物がフィルム面に対して水平方向または垂直方向に配向した状態で硬化することにより得られるフィルム等が挙げられる。得られる楕円偏光板の薄型化の観点からは、重合性液晶組成物の硬化物から位相差フィルムが構成されることが好ましい。
位相差フィルムを形成する重合性液晶化合物および重合性液晶組成物としては、例えば、特開2011-207765等に記載されるようなものを用いることができる。
【0192】
本発明の楕円偏光板は、本発明の偏光フィルムと、または本発明の偏光フィルムから基材を取り除いた偏光フィルムとを含んで構成されるものであり、例えば、本発明の偏光フィルムと位相差フィルムとを粘接着剤層等を介して積層させることにより本発明の楕円偏光板を得ることができる。また、本発明の偏光フィルムから基材を取り除いた偏光フィルムと位相差フィルムとを貼合させることにより本発明の楕円偏光板を得ることができる。粘接着剤としては、当該分野において公知の粘着剤および/または接着剤を用いることができる。
【0193】
本発明の積層体および楕円偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。
表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)および圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置および投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。
【0194】
本発明の偏光フィルムは、互いに異なる視感度補正単体透過率を有する領域にパターン化されたフィルムでありながら、フィルム全域が光吸収異方性を示す偏光フィルムとなり得る。このような特性を利用して、例えば、第2領域をスマートフォンやタブレット等に設けられたカメラのレンズ位置に対応させる領域として利用し、カメラ機能を妨げることなく、カメラホール領域にも画像を表示させ得る、従来にない表示装置を構成し得る光学フィルムとなり得る。
【実施例】
【0195】
本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
実施例、比較例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%および質量部である。
【0196】
1.実施例1
(1)配向層形成用組成物の調製
下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物である配向層形成用組成物を得た。
・下記式に示す光反応性基を有するポリマー 2部
【化17】
〔上記式中nは、10~50である。〕
・溶剤:o-キシレン 98部
【0197】
(2)偏光層形成用組成物の調製
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、偏光層形成用組成物を得た。二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ系色素を用いた。
・式(1-6)で表される重合性液晶化合物 75部
【化18】
・式(1-7)で表される重合性液晶化合物 25部
【化19】
・下記に示す二色性色素(1) 2.8部
【化20】
・下記に示す二色性色素(2) 2.8部
【化21】
・下記に示す二色性色素(3) 2.8部
【化22】
・重合開始剤:2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
・レベリング剤:ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2部
・溶剤:シクロペンタノン 250部
【0198】
(3)偏光フィルムの製造
(a)第1の視感度補正単体透過率を有する偏光層の形成
基材層としてのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製KC4UY-TAC、厚さ40μm)を20×20mmに切り出し、その表面にコロナ処理(AGF-B10、春日電機株式会社製)を施した。コロナ処理が施されたフィルム表面に、バーコーターを用いて配向層形成用組成物を塗布した後、120℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥し、配向層用塗工層を得た。配向層用塗工層上に偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、フィルム辺に対して0°方向の偏光UVを、50mJ/cm2(313nm基準)の積算光量で照射し配向層を形成した。得られた配向層上に、バーコーターを用いて偏光層形成用組成物を塗布した後、110℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥した。その後高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、液晶化合物および二色性色素が配向した偏光層を得た。得られた偏光フィルムについて後述の方法に従い、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を測定した。結果を、第1領域の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)として表1に示す。
【0199】
(b)第2領域(領域2-1)の形成
上記で得られた第1の視感度補正単体透過率を有する偏光層上に、5mmの開口部(露出領域)を形成した保護フィルム(藤森工業株式会社製のAY-638。厚みが38μmのポリエステルフィルム上に厚みが15μmの粘着剤層とで構成されている)を貼合した後、該開口部に室温(25℃)条件にてトルエンを60秒間浸漬させた。次いで、トルエンを除去した後保護フィルムを剥離して、領域2-1を有する偏光フィルム1を得た。得られた偏光フィルム1の領域2-1の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を、後述の方法に従い測定した。結果を表1に示す。
【0200】
(c)第2領域(領域2-2)の形成
次いで、上記(b)においてトルエンを浸漬させた5mm径の中央部に相当する領域に3mmの開口部(露出領域)を形成した保護フィルム(藤森工業株式会社製のAY-638。厚みが38μmのポリエステルフィルム上に厚みが15μmの粘着剤層とで構成されている)を貼合した後、該開口部に40℃条件下にてトルエンを10秒間浸漬させた。次いで、トルエンを除去した後保護フィルムを剥離して、領域2-1の中央部に領域2-2を有する偏光フィルム2を得た。得られた偏光フィルム2の領域2-2の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を、後述の方法に従い測定した。結果を表1に示す。
【0201】
<視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)の測定>
得られた偏光フィルムについて、以下の手順で視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を算出した。波長380nm~780nmの範囲で透過軸方向の透過率(T1)および吸収軸方向の透過率(T2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いてダブルビーム法で測定した。該フォルダーの、リファレンス側には光量を50%カットするメッシュを設置した。各領域における測定径は円形の直径1mmに絞った。下記(式1)および(式2)に従い、各波長における透過率および偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を算出した。
偏光度[%]={(T1-T2)/(T1+T2)}×100 (式1)
単体透過率[%]=(T1+T2)/2 (式2)
【0202】
<領域輪郭の評価>
得られた偏光フィルムについて、自然光の条件下、1m離れて目視にて、第1領域と第2領域との領域輪郭について確認し、以下の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
4.輪郭の視認が困難だった。
3.輪郭がわずかに視認された。
2.輪郭がぼんやり視認された。
1.輪郭がはっきり視認された。
【0203】
<偏光性能の評価>
得られた偏光フィルムの第2領域(領域2-2)の偏光度を下記の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
4.偏光度が50%以上
3.偏光度が40%以上50%未満
2.偏光度が30%以上40%未満
1.偏光度が0%以上30%未満
【0204】
2.実施例2
第2領域(領域2-2)の形成工程にて2mmの開口部を形成した保護フィルム(藤森工業株式会社製のAY-638。厚みが38μmのポリエステルフィルム上に厚みが15μmの粘着剤層とで構成されている)を用いた以外は、実施例1と同様にして、領域2-1の中央部に領域2-2を有する偏光フィルムを作製し、性能評価を実施した。結果を表1に示す。
【0205】
3.実施例3
第2領域(領域2-1)の形成工程におけるトルエンでの浸漬時間を90秒にし、第2領域(領域2-2)の形成工程におけるトルエンでの浸漬時間を40℃条件下15秒とした以外は、実施例2と同様にして、領域2-1の中央部に領域2-2を有する偏光フィルムを作製し、性能評価を実施した。結果を表1に示す。
【0206】
4.実施例4
第2領域(領域2-2)の形成工程におけるトルエンでの浸漬時間を40℃条件下30秒とした以外は、実施例3と同様にして、領域2-1の中央部に領域2-2を有する偏光フィルムを作製し、性能評価を実施した。結果を表1に示す。
【0207】
5.実施例5
第2領域(領域2-2)の形成工程にて4mmの開口部を形成した保護フィルム(藤森工業株式会社製のAY-638。厚みが38μmのポリエステルフィルム上に厚みが15μmの粘着剤層とで構成されている)を用いた以外は、実施例1と同様にして、領域2-1-1の中央部に領域2-1-2を有する偏光フィルム2を作製した。次いで、前記領域2-1-2を形成するために前記工程でトルエンを浸漬させた4mm径の中央部に相当する領域に3mmの開口部(露出領域)を形成した保護フィルム(藤森工業株式会社製のAY-638。厚みが38μmのポリエステルフィルム上に厚みが15μmの粘着剤層とで構成されている)を貼合した後、該開口部に40℃条件下トルエンを10秒間浸漬させた。次いで、トルエンを除去した後保護フィルムを剥離して、領域2-1-1の内側に領域2-1-2を有し、さらに領域2-1-2の内側中央部に領域2-2を有する偏光フィルム3を得た。得られた偏光フィルム3について、実施例1と同様に、各領域の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を測定し、性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0208】
6.実施例6
第2領域(領域2-1)の形成工程において、トルエンの代わりにジメチルスルホキシドを用い、かつ、浸漬条件を80℃下60秒とし、第2領域(領域2-2)の形成工程にてトルエンの代わりにジメチルスルホキシドを用い、かつ、浸漬条件を80℃下90秒とした以外は、実施例2と同様にして、領域2-1の中央部に領域2-2を有する偏光フィルムを作製し、性能評価を実施した。結果を表1に示す。
【0209】
7.実施例7
第2領域(領域2-1)の形成工程にて5mmの開口部を形成した保護フィルム(藤森工業株式会社製のAY-638。厚みが38μmのポリエステルフィルム上に厚みが15μmの粘着剤層とで構成されている)を用いて領域2-1を形成し、第2領域(領域2-2)の形成工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、第1領域の内側に均一な視感度補正単体透過率の第2領域を有する偏光フィルムを作製し、性能評価を実施した。結果を表1に示す。
【0210】
8.実施例8
第2領域(領域2-2)の形成工程において、トルエンの代わりにアニソールを室温(25℃)条件にて10秒間浸漬させた以外は、実施例2と同様にして、領域2-1の中央部に領域2-2を有する偏光フィルムを作製し、性能評価を実施した。結果を表1に示す。
【0211】
9.比較例1
第2領域(領域2-1)の形成工程において、トルエンの代わりにアニソールを室温(25℃)条件にて10秒間浸漬させ、第2領域(領域2-2)の形成工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、第1領域の内側に、該第1領域の視感度補正単体透過率との差が30%を超える比較第2領域を有する偏光フィルムを作製し、性能評価を実施した。結果を表1に示す。
【0212】
【符号の説明】
【0213】
1:第1領域
2:第2領域
3:領域2-1
4:領域2-2
11:偏光フィルム
12:基材層
13:偏光層
14:積層フィルム
15、16:保護フィルム付き積層フィルム
20、25:保護フィルム
21、23:被覆領域
22、24:露出領域
a:第2領域の視感度補正単体透過率
a-1:領域2-1の視感度補正単体透過率
a-2:領域2-2の視感度補正単体透過率
b:第1領域の視感度補正単体透過率