(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240523BHJP
A43B 13/04 20060101ALI20240523BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240523BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20240523BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
C08L21/00
A43B13/04 A
C08K3/36
C08K5/54
C08L53/02
(21)【出願番号】P 2021558411
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2020042905
(87)【国際公開番号】W WO2021100738
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2019207920
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020123089
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓光
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 巧
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/00
C08L 53/00-53/02
C08K 3/36
C08K 5/54
A43B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム(I)、ブロック共重合体(II)及び架橋剤(III)を含有し、
前記ゴム(I)と前記ブロック共重合体(II)との質量比[(I)/(II)]が99/1~55/45であり、
前記ブロック共重合体(II)が、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(A)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を含有する重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体であ
り、
前記架橋剤(III)が、硫黄及び/又は硫黄含有化合物であり、
前記架橋剤(III)の含有量が、ゴム(I)及びブロック共重合体(II)の合計含有量100質量部に対し、0.5~6.0質量部である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ゴム(I)と前記ブロック共重合体(II)との質量比[(I)/(II)]が99/1~70/30である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体(II)が、更にファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)を含有する重合体ブロック(C)を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体(II)が、少なくとも2個の前記重合体ブロック(A)、少なくとも1個の前記重合体ブロック(B)、及び少なくとも1個の前記重合体ブロック(C)を含有し、かつ少なくとも1個の前記重合体ブロック(B)を末端に有する、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ブロック共重合体(II)が、共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合が70モル%以上水素添加された水添ブロック共重合体(Q)である、請求項1~4のいずれか
1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ブロック共重合体(II)が、共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合が70モル%以上水素添加された水添ブロック共重合体(Q)であって、
前記重合体ブロック(B)と前記重合体ブロック(C)との共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率が異なる、請求項3又は4に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ゴム(I)が、スチレンブタジエン共重合ゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルニトリルブタジエン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ブチルゴム、及びブチルゴムを変性したハロゲン化ブチルゴムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか
1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記架橋剤(III)の含有量が、前記ゴム(I)及び前記ブロック共重合体(II)の合計含有量100質量部に対し、
1.0~4.0質量部である、請求項1~
7のいずれか
1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
更にシリカを含有する、請求項1~
8のいずれか
1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
更にシランカップリング剤を含有する、請求項1~
9のいずれか
1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記ゴム(I)が少なくとも天然ゴムを含み、更に軟化剤を含有する、請求項1~
10のいずれか
1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
JIS K 6264-2:2005に準じてDIN摩耗試験により測定される摩耗量が、200mm
3以下である、請求項1~
11のいずれか
1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか
1項に記載の樹脂組成物の成形体。
【請求項14】
請求項1~
12のいずれか
1項に記載の樹脂組成物を少なくとも一部に用いた、靴底。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム、ファルネセン由来の構造単位を有するブロック共重合体、及び架橋剤を少なくとも含有する樹脂組成物、並びに当該樹脂組成物の成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを各種ゴムと混合したゴム組成物は、優れた機械的特性及び柔軟性等から、履物用靴底、各種タイヤ、パッキン等の建材、機械部品等の幅広い分野で使用されている。しかし、熱可塑性エラストマーを含むゴム組成物は、水分が付着することにより滑りやすくなり、特に履物用靴底や各種タイヤ等の用途では高い危険性を伴うため問題となる。
【0003】
そこで、熱可塑性エラストマー及びゴム成分を含むゴム組成物のウェットグリップ性を向上させるために検討が行われている。
例えば、熱可塑性エラストマーの数平均分子量やゴム成分のガラス転移温度を特定し、あるいは粘着付与樹脂や水添ブロック共重合体を含有させた樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1~8)。また、ファルネセン由来の構造単位を含有する重合体ブロックを含む水添ブロック共重合体を含有させた樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2013/0086822号明細書
【文献】国際公開第2006/121069号
【文献】特開2017-39819号公報
【文献】特開2016-210937号公報
【文献】特開2014-189697号公報
【文献】特開2014-520017号公報
【文献】特開2004-75882号公報
【文献】特開2003-292672号公報
【文献】特開2019-26826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~8に開示された技術では柔軟性、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性及びウェットグリップ性のバランスに優れた樹脂組成物とすることができず、更なる改善が求められている。更に、特許文献1~8には、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含む重合体ブロックと、ファルネセン由来の構造単位を含有する重合体ブロックとを含むブロック共重合体及びその水素添加物について記載はない。
また、特許文献9に開示された樹脂組成物は、柔軟性、引裂強度、引張特性、ドライグリップ性及びウェットグリップ性のバランスに優れるものの、様々な環境下におけるグリップ性といった成形体の滑りにくさの性能に更なる向上が求められている。加えて、履物用靴底や各種タイヤ等の用途には優れた耐摩耗性を有することも要求される。
【0006】
そこで本発明は、滑りにくく、耐摩耗性に優れた成形体とすることができる樹脂組成物、及び当該樹脂組成物の成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0008】
[1]ゴム(I)、ブロック共重合体(II)及び架橋剤(III)を含有し、
前記ゴム(I)と前記ブロック共重合体(II)との質量比[(I)/(II)]が99/1~55/45であり、
前記ブロック共重合体(II)が、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(A)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を含有する重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体である、樹脂組成物。
[2]前記[1]に記載の樹脂組成物の成形体。
[3]前記[1]に記載の樹脂組成物を少なくとも一部に用いた、靴底。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、滑りにくく、耐摩耗性に優れた成形体とすることができる樹脂、及び当該樹脂組成物の成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施態様(以下、「本実施態様」と称すことがある。)の一例に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施態様は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下の記載に限定されない。
また本明細書において、実施態様の好ましい形態を示すが、個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、好ましい形態である。数値範囲で示した事項について、いくつかの数値範囲がある場合、それらの下限値と上限値とを選択的に組み合わせて好ましい形態とすることができる。
なお、本明細書において、「XX~YY」との数値範囲の記載がある場合、「XX以上YY以下」を意味する。
【0011】
<樹脂組成物>
本実施態様の樹脂組成物は、
ゴム(I)、ブロック共重合体(II)及び架橋剤(III)を含有し、
前記ゴム(I)と前記ブロック共重合体(II)との質量比[(I)/(II)]が99/1~55/45であり、
前記ブロック共重合体(II)が、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(A)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を含有する重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体であることを特徴とする。
【0012】
ファルネセン由来の構造単位(b1)を含むブロック共重合体(II)を用いることで、後述するように樹脂組成物に柔軟性が付与され、路面追従性があるため追い出し性(水をはじく性能)が高い。更に、ブロック共重合体(II)は、水をはじく性能に優れることから、特に、ドライ条件(乾いた面)、ウェット条件(濡れた面)、アイス条件(雪上面乃至氷上面)のいずれにおいても、成形体の滑りにくさ(以下、「滑りにくさ」を「グリップ性」と称すことがある。)に優れることが期待できる。
加えて、上記質量比[(I)/(II)]を上記特定の数値範囲とすることにより、滑りにくく耐摩耗性の両方に優れさせることができる。
また、本実施態様の樹脂組成物は、上記性能に加え、引裂強度及び引張特性のバランスに優れ、更にブロック共重合体(II)に比べゴム(I)の含有量が多いことからコスト削減にも繋がることが期待できる。
【0013】
[ゴム(I)]
本実施態様の樹脂組成物に含有されるゴム(I)としては、履物用靴底等のゴム底のゴム原料として用いられている天然ゴムや各種合成ゴム等が挙げられる。
なお、ゴム(I)には、前記ブロック共重合体(II)は含まれない。
【0014】
天然ゴム(NR)としては、SMR(マレーシア産TSR)、SIR(インドネシア産TSR)、STR(タイ産TSR)等のTSR(Technically Specified Rubber)やRSS(Ribbed Smoked Sheet)等のタイヤ工業あるいは履物用靴底等の各種用途の分野において一般的に用いられる天然ゴム、高純度天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、水酸基化天然ゴム、水素添加天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴムが挙げられる。
【0015】
合成ゴムとしては、スチレンブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリルニトリルブタジエン共重合ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EP、EPM)、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム(イソブチレン-イソプレンゴム(IIR))及びブチルゴムを変性したハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。
上記ゴムの中でも、各種用途において求められる強度、耐摩耗性、弾性、及び柔軟性等の物性、並びにブロック共重合体(II)等の各種成分との相容性の観点から、スチレンブタジエン共重合ゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルニトリルブタジエン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ブチルゴム、及びブチルゴムを変性したハロゲン化ブチルゴムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ゴム(I)は1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0016】
ゴム(I)を併用する場合の具体的な組み合わせとして、例えば、NR、SBR、及びBRから選ばれる2種以上が挙げられる。これら2種以上のゴムをゴム(I)として用いることは、グリップ性、摩耗性、及び力学物性のバランスの観点から好ましい。
また、ゴム(I)として少なくともNRを用いる場合、後述する軟化剤を併用することが好ましい。軟化剤の中でも、液状ポリジエン及びその水添物又はその変性物(単に「液状ポリジエン」ということがある。)が好適である。液状ポリジエンを併用することにより、NRの粘度が下がり組成物への分散性が高まると考えられるため、優れたグリップ性を有する成形体をより得やすくなる。液状ポリジエンは、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記液状ポリジエンの重量平均分子量(Mw)は、100~200,000が好ましく、1,000~130,000がより好ましく、2,000~60,000が更に好ましく、5,000~50,000がより更に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると加工性が向上し、また樹脂組成物のブリードアウトが抑制できる。
上記液状ポリジエンの数平均分子量(Mn)は、2,000~180,000が好ましく、3,000~130,000がより好ましく、4,000~50,000が更に好ましく、5,000~35,000がより更に好ましい。数量平均分子量が上記範囲内であると加工性が向上し、また樹脂組成物のブリードアウトが抑制できる。
上記液状ポリジエンの分子量分布(Mw/Mn)は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~3が更に好ましく、1~2がより更に好ましい。分子量分布が上記範囲内であると、液状ポリジエンの粘度のばらつきが小さく、取り扱いが容易である。
液状ポリジエンのMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定から求めた値であり、後述する実施例に記載した方法で測定した値を意味する。
【0018】
好ましい実施態様として、例えば、NR、SBR、及びBRの組み合わせに、更に液状ポリジエンを含有させることができる。特に、上記組み合わせにおいてNRの含有割合が50質量%以上の場合に、液状ポリジエンを併用することによる利点がより良好に発揮される。
また、ゴム(I)として少なくともNRを用いる場合の好ましい実施態様の一例として、軟化剤としての上記液状ポリジエンの含有量は、ゴム(I)、ブロック共重合体(II)、及び液状ポリブタジエンの総量100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~9質量部がより好ましく、1~8質量部が更に好ましく、1.5~7質量部がより更に好ましい。
なお、ゴム(I)には、上記液状ポリジエンは含まれない。
【0019】
SBRとしては、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)等のいずれも用いることができる。
また、市販のSBRを用いることができ、スチレン含量が0.1~70質量%のものが好ましく、5~50質量%のものがより好ましく、15~35質量%のものが更に好ましく、15~25質量%のものがより更に好ましい。
SBRは、弾性や強度等の物性バランスがよく、混練りや成型加工等にも良好で、入手容易の観点からも好適である。
【0020】
IRとしては、市販のIRを用いることができるが、シス体の含有量が高いチーグラー系触媒により重合されたIRやランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のIRであることが好ましい。
IRの重量平均分子量(Mw)は、9万~200万であることが好ましく、15万~150万であることがより好ましい。Mwが上記範囲にある場合、成形加工性、引裂強度、及び引張特性が良好となる。なお、IRの重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定から求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
IRのビニル含量は好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
IRは、機械的強度等の物性バランスにも良好で、入手容易の観点からも好適である。
【0021】
BRとしては、市販のBRを用いることができるが、シス体の含有量が高いチーグラー系触媒により重合されたBRやランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のBRであることが好ましい。
BRの重量平均分子量(Mw)は、9万~200万であることが好ましく、15万~150万であることがより好ましく、25万~100万であることが更に好ましく、35万~70万であることがより更に好ましい。Mwが上記範囲にある場合、成形加工性、引裂強度、及び引張特性が良好となる。
BRのビニル含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
BRは、特に、優れた耐摩耗性を樹脂組成物の成形体に付与することが期待できる観点からも好適である。
【0022】
NBRとしては、市販のNBRを用いることができるが、NBR中のアクリロニトリル含有量が20~41質量%であることが好ましく、25~41質量%であることがより好ましい。アクリロニトリル含有量が上記範囲にある場合、様々な環境下でより優れたグリップ性及び耐摩耗性を樹脂組成物の成形体に付与することが期待できる。
【0023】
エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EP、EPM)、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)としては、市販のEP、EPDMを使用することができる。EPDMを構成する非共役ジエンとしては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-ノルボルネン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン等を挙げることができる。これらの中で、加硫速度の点で、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)が好ましい。また、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EP、EPM)及びエチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)では、より大きな加硫速度を得られる観点からは、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。
【0024】
IIRとしては、非ハロゲン化ブチルゴムや再生ブチル系ゴム等であってよく、タイヤ工業あるいは履物用靴底用の分野で用いられるものが挙げられる。またハロゲン化ブチルゴムは、IIRの分子内にハロゲンを導入して変性したものであり、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)及び塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)等が挙げられる。また、臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体等も用いることができる。
【0025】
[ブロック共重合体(II)]
本実施態様の樹脂組成物は、ブロック共重合体(II)を含有することにより、柔軟性が良好となり、滑りにくく、耐摩耗性を発現することができ、更に引張特性及び引裂強度の発現も期待することができる。
ブロック共重合体(II)は、未水添のブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(P)」と称すことがある。)であってもよく、後述するようにブロック共重合体(P)が特定の水素添加率で水素添加された水添ブロック共重合体(以下、「水添ブロック共重合体(Q)」と称すことがある。)であってもよい。
【0026】
(重合体ブロック(A))
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する。かかる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-4-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4-メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン及びジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0027】
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物以外の単量体、例えば、後述する重合体ブロック(B)を構成する単量体等のその他の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。ただし、重合体ブロック(A)中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上がより更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0028】
また、ブロック共重合体(II)中の重合体ブロック(A)の含有量は、好ましくは10~45質量%であり、より好ましくは10~40質量%であり、更に好ましくは10~30質量%であり、より更に好ましくは15~25質量%である。上記含有量が10質量%以上であれば樹脂組成物の成形加工性が良好となり、より優れた耐摩耗性が発現しやすく、引裂強度及び引張特性も好適なものとすることができる。また、上記含有量が45質量%以下であれば十分な柔軟性を得ることができ、滑りにくさが発現しやすく、良好な成形加工性、引裂強度及び引張特性等を発現しやすくなる。
【0029】
(重合体ブロック(B))
重合体ブロック(B)は、ファルネセン由来の構造単位(b1)(以下、単に「構造単位(b1)」ともいう)を含有する。
上記ファルネセンとしては、α-ファルネセン、又は下記式(1)で表されるβ-ファルネセンのいずれでもよいが、ブロック共重合体(II)の製造容易性の観点から、β-ファルネセンが好ましい。なお、α-ファルネセンとβ-ファルネセンとは組み合わせて用いてもよい。
【0030】
【0031】
重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は、好ましくは1~100質量%である。重合体ブロック(B)がファルネセンに由来する構造単位(b1)を含有することにより、柔軟性が良好となり、グリップ性に優れる。当該観点から、重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は、10~100質量%がより好ましく、20~100質量%が更に好ましく、30~100質量%がより更に好ましく、50~100質量%が特に好ましく、100質量%であること、すなわち重合体ブロック(B)は構造単位(b1)からなることが最も好ましい。
また、ファルネセンがバイオ由来である場合には、石油由来のブタジエン、イソプレンといったファルネセン以外の共役ジエンの使用量を抑制し、石油依存度を低減することができる。当該観点からは、重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は、50~100質量%が好ましく、60~100質量%がより好ましく、70~100質量%が更に好ましく、80~100質量%がより更に好ましい。
また、重合体ブロック(B)中に後述する構造単位(b2)を含有する場合、重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、30質量%以上がより更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。
【0032】
重合体ブロック(B)は、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)(以下、単に「構造単位(b2)」ともいう)を含有してもよく、重合体ブロック(B)中の構造単位(b2)の含有量は、0~99質量%であることが好ましい。
かかる共役ジエンとしては、例えばイソプレン、ブタジエン、2,3-ジメチル-ブタジエン、2-フェニル-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、ミルセン及びクロロプレン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、イソプレン、ブタジエン及びミルセンが好ましく、イソプレン、ブタジエンがより好ましい。
重合体ブロック(B)中に構造単位(b2)を含有する場合、構造単位(b2)の含有量は、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、70質量%以下がより更に好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
【0033】
重合体ブロック(B)は、構造単位(b1)及び構造単位(b2)以外のその他の構造単位を含有してもよい。重合体ブロック(B)中の構造単位(b1)及び構造単位(b2)の合計含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0034】
(重合体ブロック(C))
ブロック共重合体(II)は、前述の重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)に加えて、更にファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)を含有する重合体ブロック(C)を含むことができる。
重合体ブロック(C)は、ファルネセン由来の構造単位(c1)の含有量が0質量%以上かつ1質量%未満であり、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)の含有量が1~100質量%である重合体ブロックであることが好ましい。
【0035】
ファルネセン由来の構造単位(c1)(以下、単に「構造単位(c1)」ともいう)を構成するファルネセン、及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)(以下、単に「構造単位(c2)」ともいう)を構成する共役ジエンは、前述のファルネセン由来の構造単位(b1)を構成するファルネセン及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を構成する共役ジエンと同様のものが挙げられる。
ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)を構成する共役ジエンとしては、それらの中でも、イソプレン、ブタジエン及びミルセンが好ましく、イソプレン及びブタジエンがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0036】
重合体ブロック(C)中におけるファルネセン由来の構造単位(c1)の含有量は、0質量%であることが好ましい。
重合体ブロック(C)中におけるファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)の含有量は、60~100質量%がより好ましく、80~100質量%が更に好ましく、90~100質量%がより更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。構造単位(c2)を含む重合体ブロック(C)を用いることにより、ブロック共重合体(P)は前述の構造単位(b1)及び構造単位(c2)の異なる共役ジエンを有することになり、当該ブロック共重合体(P)の水添ブロック共重合体(Q)を後述する架橋剤(III)により架橋しても、耐摩耗性に優れ、引張特性を維持しつつ引裂強度を発現することができ、引張特性と引裂強度の両立を図ることができる。
【0037】
また、重合体ブロック(C)は、ファルネセン由来の構造単位(c1)及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)以外の他の構造単位を含んでいてもよい。
重合体ブロック(C)中における構造単位(c1)及び構造単位(c2)の合計含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0038】
(結合形態)
ブロック共重合体(II)は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)をそれぞれ少なくとも1個含むブロック共重合体(P)又は水添ブロック共重合体(Q)である。
重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の結合形態は特に制限されず、直線状、分岐状、放射状又はそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。これらの中でも、各ブロックが直線状に結合した形態が好ましい。
直線状の結合形態としては、重合体ブロック(A)をA、重合体ブロック(B)をBで表したときに、(A-B)l、A-(B-A)m、又はB-(A-B)nで表される結合形態等を例示することができる。なお、前記l、m及びnはそれぞれ独立して1以上の整数を表す。
ブロック共重合体(II)が、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)をそれぞれ少なくとも1個含む場合、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)の順にブロックを有する結合形態であって、A-B-Aで表されるトリブロック共重合体であることが好ましい。
すなわち、ブロック共重合体(II)は、A-B-Aで表されるトリブロック共重合体であることが好ましく、当該トリブロック共重合体は未水添加物であっても水素添加物であってもよい。
【0039】
ブロック共重合体(II)が、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含む場合、ブロック共重合体(II)は、少なくとも1個の重合体ブロック(B)を末端に有するブロック共重合体であることが好ましく、当該ブロック共重合体は未水添加物であっても水素添加物であってもよい。少なくとも1個の重合体ブロック(B)がポリマー鎖の末端にあることにより成形加工性が向上する。当該観点から、ブロック共重合体(II)が直線状である場合は、その両末端に重合体ブロック(B)を有することがより好ましい。また、ブロック共重合体(II)が分岐状、又は放射状である場合、末端に存在する重合体ブロック(B)の数は、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。
【0040】
また、ブロック共重合体(II)は、少なくとも2個の重合体ブロック(A)、少なくとも1個の重合体ブロック(B)、及び少なくとも1個の重合体ブロック(C)を含むブロック共重合体であることが好ましく、少なくとも2個の重合体ブロック(A)、少なくとも1個の重合体ブロック(B)、及び少なくとも1個の重合体ブロック(C)を含有し、かつ少なくとも1個の重合体ブロック(B)のうちの1個以上を末端に有することがより好ましい。
【0041】
ブロック共重合体(II)が、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含む場合、複数の重合体ブロックの結合形態は特に制限されず、直線状、分岐状、放射状又はそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。これらの中でも、各ブロックが直線状に結合した形態が好ましい。
ブロック共重合体(II)は、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)、及び重合体ブロック(C)の順にブロックを有する構造(すなわち、B-A-Cの構造)であることが好ましい。
具体的には、ブロック共重合体(II)は、B-A-C-Aで表されるテトラブロック共重合体、B-A-C-A-Bで表されるペンタブロック共重合体、B-A-(C-A)p-B、B-A-(C-A-B)q、B-(A-C-A-B)r(p、q、rはそれぞれ独立して2以上の整数を表す)で表される共重合体であることが好ましく、中でもB-A-C-A-Bで表されるペンタブロック共重合体であることがより好ましい。
すなわち、ブロック共重合体(II)は、B-A-C-A-Bで表されるペンタブロック共重合体であることが好ましく、当該ペンタブロック共重合体は未水添加物であっても水素添加物であってもよい。
【0042】
ここで、本明細書においては、同種の重合体ブロックが2価のカップリング剤等を介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は一つの重合体ブロックとして取り扱われる。これに従い、本来厳密にはA-X-A(Xはカップリング剤残基を表す)と表記されるべき重合体ブロックは、全体としてAと表示される。本明細書においては、カップリング剤残基を含むこの種の重合体ブロックを上記のように取り扱うので、例えば、カップリング剤残基を含み、厳密にはB-A-C-X-C-A-Bと表記されるべきブロック共重合体は、B-A-C-A-Bと表記され、ペンタブロック共重合体の一例として取り扱われる。
【0043】
また、上述のブロック共重合体(II)における2個以上の重合体ブロック(A)は、それぞれ同じ構造単位からなる重合体ブロックであっても、異なる構造単位からなる重合体ブロックであってもよい。同様に、ブロック共重合体(II)が、重合体ブロック(B)を2個以上又は重合体ブロック(C)を2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロックは、同じ構造単位からなる重合体ブロックであっても、異なる構造単位からなる重合体ブロックであってもよい。例えば、A-B-Aで表されるトリブロック共重合体における2個の重合体ブロック(A)において、それぞれの芳香族ビニル化合物は、その種類が同じであっても異なっていてもよい。
【0044】
ブロック共重合体(II)が、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を含み、重合体ブロック(C)を含まない場合、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比[(A)/(B)]は、1/99~70/30であり、5/95~60/40が好ましく、10/90~50/50がより好ましく、15/85~40/60が更に好ましく、15/85~35/65がより更に好ましい。当該範囲内であると、柔軟性に優れ、優れたグリップ性を有する樹脂組成物を得ることができる。
ブロック共重合体(II)が、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含む場合、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比[(A)/(B)]は、1/99~70/30であり、5/95~60/40が好ましく、10/90~50/50がより好ましく、20/80~40/60が更に好ましく、25/75~35/65がより更に好ましい。当該範囲内であると、柔軟性に優れ、優れたグリップ性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0045】
ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)と、重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)との合計量との質量比[(A)/((B)+(C))]は、1/99~70/30が好ましい。当該範囲内であると、優れた引張特性、成形加工性及びグリップ性を有する樹脂組成物を得ることができる。当該観点から、当該質量比[(A)/((B)+(C))]は、1/99~60/40がより好ましく、10/90~40/60が更に好ましく、10/90~30/70がより更に好ましく、15/85~25/75がより更に好ましい。
【0046】
ブロック共重合体(II)が、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含む場合、ブロック共重合体中の重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)の合計量に対する構造単位(b1)及び構造単位(c1)の合計含有量[((b1)+(c1))/((B)+(C))]は、柔軟性、引張特性及びグリップ性に優れる観点から、40~90質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましく、60~70質量%が更に好ましい。
【0047】
ブロック共重合体(II)が、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を含み、重合体ブロック(C)を含まない場合、ブロック共重合体中における、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の合計含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%がより更に好ましい。
また、ブロック共重合体(II)が、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含む場合、ブロック共重合体中における、これら重合体ブロック(A)~(C)の合計含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%がより更に好ましい。
【0048】
ブロック共重合体(II)のより好ましい態様の一例としては、滑りにくさ及び耐摩耗性、並びに、柔軟性、引裂強度及び引張特性の観点から、
・重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含むブロック共重合体(P)が水素添加された水添ブロック共重合体(Q)であり、
・重合体ブロック(C)が、ファルネセン由来の構造単位(c1)の含有量が0質量%以上かつ1質量%未満であり、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(c2)の含有量が1~100質量%である重合体ブロックであり、
・重合体ブロック(A)と、重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)の合計量との質量比[(A)/((B)+(C))]が10/90~30/70であり、
・少なくとも2個の前記重合体ブロック(A)、少なくとも1個の前記重合体ブロック(B)、及び少なくとも1個の重合体ブロック(C)を含み、かつ少なくとも1個の重合体ブロック(B)を末端に有し、
・水添ブロック共重合体(Q)中の共役ジエン由来の構成単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率が70モル%以上である。
【0049】
(他の単量体で構成される重合体ブロック)
ブロック共重合体(II)は、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)のほか、本発明の効果を阻害しない限り、他の単量体で構成される重合体ブロックを含有していてもよい。
【0050】
かかる他の単量体としては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等の不飽和炭化水素化合物;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル等の官能基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
ブロック共重合体(II)が他の重合体ブロックを有する場合、その含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0051】
(ブロック共重合体(II)の製造方法)
ブロック共重合体(II)が、例えば重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を含有するブロック共重合体(P)、あるいは重合体ブロック(C)を含む場合には重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含有するブロック共重合体(P)の場合、アニオン重合により得る重合工程により好適に製造できる。更に、ブロック共重合体(II)が水添ブロック共重合体(Q)である場合、前記ブロック共重合体(P)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合を水素添加する工程により好適に製造できる。
【0052】
〈重合工程〉
ブロック共重合体(P)は、溶液重合法又は特表2012-502135号公報、特表2012-502136号公報に記載の方法等により製造することができる。これらの中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の方法を適用できる。これらの中でもアニオン重合法が好ましい。アニオン重合法としては、溶媒、アニオン重合開始剤、及び必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物、ファルネセン及び/又はファルネセン以外の共役ジエンを逐次添加して、ブロック共重合体(P)を得る。
アニオン重合開始剤としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属;前記アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド系希土類金属を含有する化合物等が挙げられる。中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含有する化合物が好ましく、有機アルカリ金属化合物がより好ましい。
【0053】
前記有機アルカリ金属化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。中でも有機リチウム化合物が好ましく、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムがより好ましく、sec-ブチルリチウムが更に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして用いてもよい。
重合に用いる有機アルカリ金属化合物の使用量は、ブロック共重合体(P)の分子量によっても異なるが、通常、芳香族ビニル化合物、ファルネセン及びファルネセン以外の共役ジエンの総量に対して0.01~3質量%の範囲である。
【0054】
溶媒としてはアニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の飽和脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量には特に制限はない。
【0055】
ルイス塩基はファルネセン由来の構造単位及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位におけるミクロ構造を制御する役割がある。かかるルイス塩基としては、例えばジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;ピリジン;N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物等が挙げられる。ルイス塩基を使用する場合、その量は、通常、アニオン重合開始剤1モルに対して0.01~1000モル当量の範囲であることが好ましい。
【0056】
重合反応の温度は、通常、-80~150℃程度、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~90℃の範囲である。重合反応の形式は回分式でも連続式でもよい。重合反応系中の芳香族ビニル化合物、ファルネセン及び/又はファルネセン以外の共役ジエンの存在量が特定範囲になるように、重合反応液中に各単量体を連続的あるいは断続的に供給するか、又は重合反応液中で各単量体が特定比となるように順次重合することで、ブロック共重合体(P)を製造できる。
重合反応は、メタノール、イソプロパノール等のアルコールを重合停止剤として添加して停止できる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いでブロック共重合体(P)を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することによりブロック共重合体(P)を単離できる。
【0057】
ブロック共重合体(II)は、前述のとおり、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)、及び重合体ブロック(C)をこの順に有する構造を含むことが好ましい。したがって、重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)、及び重合体ブロック(C)をこの順に製造することによりブロック共重合体(P)を得る工程、また水素添加物の場合は、更に得られたブロック共重合体(P)を水素添加する工程を含む方法により水添ブロック共重合体(Q)を製造することがより好ましい。
なお、前記ブロック共重合体(II)が、ポリマー鎖の片末端にのみ重合体ブロック(B)を有する場合には、直線状に結合するように他の各重合体ブロックを重合させた後で、最後に重合体ブロック(B)を製造する方法により得てもよい。
【0058】
ブロック共重合体(II)が、少なくとも2個の重合体ブロック(A)、少なくとも1個の重合体ブロック(B)、及び少なくとも1個の重合体ブロック(C)を含み、かつ少なくとも1個の重合体ブロック(B)を末端に有するブロック共重合体(P)又はこれを水素添加した水添ブロック共重合体(Q)である場合、当該ブロック共重合体(P)を製造する方法としては、
〔i〕重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(C)、及び重合体ブロック(A)をこの順に重合する方法、及び
〔ii〕重合体ブロック(B)、重合体ブロック(A)、及び重合体ブロック(C)をこの順に重合し、重合体ブロック(C)の末端同士を、カップリング剤を用いてカップリングすることにより製造する方法、等が挙げられる。
本実施態様においては、効率的に製造する観点から、カップリング剤を用いる後者の方法〔ii〕が好ましい。
【0059】
前記カップリング剤としては、例えば、ジビニルベンゼン;エポキシ化1,2-ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の多価エポキシ化合物;四塩化錫、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジブロモジメチルシラン等のハロゲン化物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル等のエステル化合物;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル等の炭酸エステル化合物;ジエトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)シラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;2,4-トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0060】
本重合工程では、前記のように未変性のブロック共重合体を得てもよいが、以下のように変性したブロック共重合体を得てもよい。
変性したブロック共重合体の場合、後述の水素添加工程の前に、前記ブロック共重合体(P)を変性してもよい。導入可能な官能基としては、例えばアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物基等が挙げられる。
ブロック共重合体(P)の変性方法としては、例えば、重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、テトラクロロシラン、ジクロロジメチルシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,4-トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N-ビニルピロリドン等の重合末端変性剤、又は特開2011-132298号公報に記載のその他の変性剤を添加する方法が挙げられる。また、単離後の共重合体に無水マレイン酸等をグラフト化して用いることもできる。
官能基が導入される位置はブロック共重合体(P)の重合末端でも、側鎖でもよい。また上記官能基は1種又は2種以上を組み合わせてもよい。上記変性剤は、アニオン重合開始剤1モルに対して、0.01~10モル当量の範囲であることが好ましい。
【0061】
〈水素添加工程〉
ブロック共重合体(II)は、前記方法により得られたブロック共重合体(P)又は変性されたブロック共重合体を水素添加する工程に付すことにより、水添ブロック共重合体(Q)としてよもよい。
水素添加する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、水素添加反応に影響を及ぼさない溶媒にブロック共重合体(P)を溶解させた溶液に、チーグラー系触媒;カーボン、シリカ、けいそう土等に担持されたニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム又はロジウム金属触媒;コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム又はルテニウム金属を有する有機金属錯体等を、水素添加触媒として存在させて水素化反応を行う。
水素添加工程においては、前記したブロック共重合体(P)の製造方法によって得られたブロック共重合体を含む重合反応液に水素添加触媒を添加して水素添加反応を行ってもよい。本発明において水素添加触媒は、パラジウムをカーボンに担持させたパラジウムカーボンが好ましい。
水素添加反応において、水素圧力は0.1~20MPaが好ましく、反応温度は100~200℃が好ましく、反応時間は1~20時間が好ましい。
【0062】
ブロック共重合体(II)の好ましい実施態様の一つが、共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合を70モル%以上水素添加した水添ブロック共重合体(Q)である。耐熱性、耐候性、及び架橋をして優れた引裂強度を発現させる観点から、共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率は、70~98モル%が好ましく、70~97モル%がより好ましく、80~96モル%が更に好ましく、85~96モル%がより更に好ましく、87~96モル%が特に好ましい。
なお、上記水素添加率はブロック共重合体(P)中に存在する全ての共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率である。
【0063】
ブロック共重合体(P)中に存在する共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合としては、例えば、重合体ブロック(B)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合が挙げられ、またブロック共重合体(P)が更に重合体ブロック(C)を含有する場合は、重合体ブロック(B)中及び重合体ブロック(C)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合が挙げられる。
水添ブロック共重合体(Q)が重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)を含有する場合、重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)との共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率は異なることが好ましい。重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)との共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率の差は、例えば、1~20モル%でもよく、3~15モル%でもよく、5~10モル%であってもよい。上記水素添加率が異なることによって、後述する架橋剤(III)による架橋度合いが重合ブロック(B)及び(C)ごとに異なるものとなり、これによって水添ブロック共重合体(Q)中に硬柔の異なる部分を存在させ、引裂強度や引張特性等の優れた効果を発現させることができると考えられる。また、顕著に優れた引張特性を発現させる観点から、重合体ブロック(B)よりも重合体ブロック(C)の上記水素添加率が高い方がより好ましい。
なお本明細書において、水添ブロック共重合体(Q)中の重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)は水素添加されているが、水素添加前と同様にこれらを「重合体ブロック(B)」及び「重合体ブロック(C)」と表記する。
【0064】
水添ブロック共重合体(Q)中の重合体ブロック(B)の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率は、好ましくは70~98モル%であり、より好ましくは70~95モル%であり、更に好ましくは70~95モル%であり、より更に好ましくは70~95モル%であり、特に好ましくは80~95モル%である。
ブロック共重合体(P)が重合体ブロック(C)を含有する場合、水添ブロック共重合体(Q)中の重合体ブロック(C)の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率は、好ましくは95~99.9モル%であり、より好ましくは96~99.5モル%であり、更に好ましくは97~99.5モル%である。
なお、水素添加率は、ブロック共重合体(P)及び水素添加後の水添ブロック共重合体(Q)の1H-NMRを測定することにより算出できる。
【0065】
ブロック共重合体(P)のピークトップ分子量(Mp)は、成形加工性の観点から4,000~1,500,000が好ましく、9,000~1,000,000がより好ましく、30,000~800,000が更に好ましく、50,000~500,000がより更に好ましい。
ブロック共重合体(P)の分子量分布(Mw/Mn)は1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~3が更に好ましく、1~2がより更に好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、ブロック共重合体(P)の粘度のばらつきが小さく、取り扱いが容易である。
【0066】
水添ブロック共重合体(Q)のピークトップ分子量(Mp)は、成形加工性の観点から4,000~1,500,000が好ましく、9,000~1,000,000がより好ましく、30,000~800,000が更に好ましく、50,000~500,000がより更に好ましい。
水添ブロック共重合体(Q)の分子量分布(Mw/Mn)は1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~3が更に好ましく、1~2がより更に好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、水添ブロック共重合体(Q)の粘度のばらつきが小さく、取り扱いが容易である。
なお、本明細書におけるピークトップ分子量(Mp)及び分子量分布(Mw/Mn)は後述する実施例に記載した方法で測定した値を意味する。
【0067】
重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は、成形加工性の観点から、2,000~100,000が好ましく、4,000~80,000がより好ましく、5,000~50,000が更に好ましく、6,000~30,000がより更に好ましい。
【0068】
重合体ブロック(B)のピークトップ分子量は、成形加工性の観点から、2,000~200,000が好ましく、3,000~150,000がより好ましく、4,000~100,000が更に好ましい。
【0069】
更に、重合体ブロック(C)のピークトップ分子量は、成形加工性の観点から、4,000~200,000が好ましく、4,500~150,000がより好ましく、5,000~100,000が更に好ましい。
【0070】
また、ブロック共重合体(II)は水をはじきやすいという特徴を有している。上記「水のはじきやすさ」は、具体的には、石英板に水を垂らし、その上にブロック共重合体(II)からなる成形体を設置し、該成形体に上から圧をかけたときの水の様子を石英板側から観察することによって評価することができる。ブロック共重合体(II)からなる成形体であれば、成形体と石英板の間に在る水のほとんどをはじき出し得る。
水のはじきやすさは、より具体的には後述する実施例に記載の方法で評価することができる。
【0071】
[架橋剤(III)]
本実施態様の樹脂組成物は、架橋剤(III)を含有する。
架橋剤(III)としては、共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合若しくはそのα-メチレンのみで架橋反応するものであることが好ましい。ここで、α-メチレンは炭素-炭素二重結合に隣接するメチレンを示す。この様な架橋剤(III)を含有することで、ブロック共重合体(II)中の(水添ブロック共重合体の場合は、該共重合体中に残存する)上記炭素-炭素二重結合若しくは上記炭素-炭素二重結合のα-メチレンのみが架橋され、優れた柔軟性を維持しつつ、滑りにくく耐摩耗性に優れるものとすることができ、良好な引張特性及び引裂強度も期待できる。
【0072】
架橋剤(III)としては、例えば、ラジカル発生剤、硫黄及び硫黄含有化合物等が挙げられ、引裂強度及び引張特性等の観点から、より好ましくは硫黄及び/又は硫黄含有化合物であり、更に好ましくは硫黄である。
ラジカル発生剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0073】
硫黄としては、特に制限無く用いることができ、例えば、微粉硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄等のいずれであってもよい。
硫黄含有化合物としては、例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、トリアジンチオール類等が挙げられる。
架橋剤(III)としては、その他にアルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂等のフェノール系樹脂;p-キノンジオキシムと二酸化鉛、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシムと四酸化三鉛の組み合わせ等も使用することができる。
【0074】
[含有量]
前記ゴム(I)と前記ブロック共重合体(II)との質量比[(I)/(II)]が、99/1~55/45である。質量比[(I)/(II)]が上記範囲外であると、優れた耐摩耗性を得ることができない。また、質量比が上記範囲内であれば、滑りにくさの発現がより顕著なものとなる。すなわち、上記質量比であれば、より滑りにくく、耐摩耗性に優れる成形体とすることができる樹脂組成物となる。更に、ドライグリップ性及びウェットグリップ性といった滑りにくさを飛躍的に向上させ、かつ耐摩耗性を更に優れさせるには、上記質量比は99/1~60/40が好ましく、99/1~65/35が好ましく、99/1~70/30が好ましく、95/5~70/30が好ましい。
ブロック共重合体(II)を含有することにより、樹脂組成物に柔軟性が付与されるため、ブロック共重合体(II)の含有割合が高いほどグリップ性が向上する傾向にある。しかし、上記質量比[(I)/(II)]が示すような特定の範囲において、ブロック共重合体(II)よりもゴム(I)の含有割合が高くなるに従い、意外にもグリップ性が向上することがわかった。加えて、優れた耐摩耗性も発現されるので、本実施態様の樹脂組成物は、滑りにくさと耐摩耗性の両方に優れた成形体とすることができる。
【0075】
架橋剤(III)の含有量は、ゴム(I)及びブロック共重合体(II)の合計含有量100質量部に対し、滑りにくさ及び耐摩耗性により優れさせやすく、柔軟性、引裂強度、及び引張特性のバランスをも発現することができる観点から、0.1~10質量部が好ましく、0.5~6.0質量部がより好ましく、1.0~4.0質量部が更に好ましく、1.5~2.5質量部がより更に好ましい。
【0076】
本実施態様の樹脂組成物中における、ゴム(I)、ブロック共重合体(II)及び架橋剤(III)の合計含有量は、滑りにくさ及び耐摩耗性により優れさせやすく、柔軟性、引裂強度、及び引張特性のバランスをも発現することができる観点から、60~80質量%が好ましく、65~80質量%がより好ましい。
【0077】
[その他]
(シリカ)
本実施態様の樹脂組成物は、シリカを含有することが好ましい。
シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。これらシリカの中でも、成形加工性、得られる成形体の機械強度及び耐摩耗性を一層向上させ、ドライグリップ性及びウェットグリップ性といった滑りにくさを一層向上させる観点から、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0078】
グリップ性をより優れさせる観点から、シリカの比表面積は20m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上が更に好ましく、150m2/g以上がより更に好ましい。シリカの比表面積の上限値は、本発明の効果を損なわない範囲であればよい。上記比表面積の異なるシリカを併用してもよい。特に、ドライグリップ性、ウェットグリップ性、及びアイスグリップ性といった滑りにくさをより顕著に優れさせるには、上記比表面積が150m2/g以上であるシリカを含有することが好ましい。上記顕著に優れるグリップ性は、樹脂組成物が含有するシリカの一部(例えばシリカの総量の50質量%以上)が比表面積150m2/g以上のシリカであれば、比表面積150m2/g未満のシリカを併用しても、発現することが期待できる。
上記シリカの比表面積は、例えばBET法により測定することができる。
【0079】
シリカの含有量は、ゴム(I)及びブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、10~45質量部がより好ましく、20~40質量部が更に好ましい。シリカの含有量が上記範囲内であると、優れた引裂強度等の機械強度が発現され、グリップ性及び耐摩耗性が更に向上する。
【0080】
(シランカップリング剤)
本実施態様の樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系化合物、メルカプト系化合物、ビニル系化合物、アミノ系化合物、グリシドキシ系化合物、ニトロ系化合物、クロロ系化合物等が挙げられる。
また、シランカップリング剤は、シリカとの反応性の観点から、アルコキシシリル基を有ることが好ましく、中でもメトキシシラン、エトキシシランであることが好ましい。これらシランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0081】
スルフィド系化合物としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド及び3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等が挙げられる。
メルカプト系化合物としては、例えば3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピル-ジ(トリデカン-1-オキシ-13-ペンタ(エチレンオキサイド))エトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン及び2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0082】
ビニル系化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミノ系化合物としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
グリシドキシ系化合物としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
ニトロ系化合物としては、例えば、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、及び3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
クロロ系化合物としては、例えば、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、及び2-クロロエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらシランカップリング剤の中でも、耐摩耗性の観点から、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0083】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して0.01~30質量部が好ましく、0.05~25質量部がより好ましく、1~20質量部が更に好ましく、3~15質量部がより更に好ましい。シランカップリング剤の含有量が前記範囲内であると、組成物中の分散性、及び耐摩耗性が更に向上する。
【0084】
(ポリオレフィン系樹脂)
本実施態様の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含有しないか又はブロック共重合体(II)100質量部に対するポリオレフィン系樹脂の含有量が10質量部未満であることが好ましい。当該含有量が10質量部未満であれば、好適に溶融混練することができる。本実施態様の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含有しないことがより好ましい。
含有させることができるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリヘキセン-1、ポリ-3-メチル-ブテン-1、ポリ-4-メチル-ペンテン-1、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0085】
(架橋促進剤)
本実施態様の樹脂組成物は、架橋促進剤を含有していてもよい。
架橋促進剤としては、例えば、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等のチアゾール類;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン等のグアニジン類;ブチルアルデヒド-アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン-アセトアルデヒド反応物等のアルデヒド-アミン系反応物ないしはアルデヒド-アンモニア系反応物;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン類;チオカルバニリド、ジエチルウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレア等のチオウレア類;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラムモノないしポリスルフィド類;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のチオカルバミン酸塩類;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩類;サルチル酸等が挙げられる。これらの架橋促進剤は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
架橋促進剤の含有量は、ゴム(I)及びブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、0.05~15.0質量部が好ましく、0.1~5.0質量部がより好ましく、0.5~4.0質量部が更に好ましい。
【0086】
(フィラー)
本実施態様の樹脂組成物は、上述のシリカ以外のフィラーを含有してもよい。前記フィラーとしては、無機フィラー及び/又は有機フィラーが利用可能である。好ましい無機フィラーとしては、ケイ酸塩化合物及び金属酸化物等が好ましく例示される。ケイ酸塩化合物は、好ましくはカオリン、タルク、クレー、パイロフィライト、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、ワラストナイト、セピオライト、ゾノトライト、ゼオライト、ケイソウ土、及びハロイサイトからなる群から選択される1種以上のケイ酸塩化合物である。また、金属酸化物は、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化鉛、酸化クロム、酸化コバルト、酸化タングステン、及び酸化銅からなる群から選択される1種以上の金属酸化物である。
【0087】
また、好ましい有機フィラーとしては、微粒子型有機フィラー及び/又は繊維型有機フィラーが例示される。前記微粒子型有機フィラーの好ましい例示としては、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、アクリル/スチレン系微粒子、スチレンオレフィン微粒子、フッ素系微粒子、ポリエチレン系微粒子及びシリコーン微粒子からなる群より選択される少なくとも1種の有機フィラーが挙げられる。組成物の成型性の観点から、前記微粒子型有機フィラーの好ましい平均粒子径は2~50μmである。なお平均粒子径はJIS Z 8825-1に準拠したレーザー回折法で測定できる。
【0088】
前記繊維型有機フィラーとしては、種々の有機繊維が利用可能であり、例えば、6-ナイロン繊維、6,6-ナイロン繊維、4,6-ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、PVA系繊維(ビニロン)、ポリアリーレンスルフィド系繊維、2,6-ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸繊維(ベクトラン)、ポリエチレン(PE)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリ乳酸(PLA)繊維、ポリブチレンサクシネート(PBS)繊維、ポリエチレンサクシネート繊維、シンジオタクティック-1,2-ポリブタジエン(SPB)繊維、ポリ塩化ビニル(PVC)繊維等の合成繊維、綿、麻、レーヨン、セルロース繊維等の天然(再生)繊維等が好ましく例示される。
【0089】
前記有機繊維は、その平均繊維径によって、有機ミクロ繊維及び有機ナノ繊維に大別できる。有機ミクロ繊維は平均繊維径がマイクロメートルオーダーの有機繊維であり、その平均繊維径は好ましくは1~200μmであり、10~100μmの範囲がより好ましく、15~90μmの範囲が更に好ましい。また、有機ミクロ繊維の平均繊維長さは、特に限定されるものではないが、0.1~20mmの範囲が好ましく、0.5~15mmの範囲がより好ましく、1~10mmの範囲が更に好ましい。かかる平均粒子径と平均長さを有することにより、樹脂組成物の加工性と、得られるウェットグリップ性の改善効果のバランスに優れる。
【0090】
また、有機ナノ繊維は、平均繊維径がナノメートルオーダーの有機繊維であり、その平均繊維径は好ましくは平均繊維径が1~900nmの範囲であり、より好ましくは1~700nmの範囲であり、更に好ましくは1~500nmの範囲である。有機ナノ繊維の平均繊維長さは0.1~1000μmの範囲が好ましく、1~750μmの範囲がより好ましく、5~600μmの範囲であることが更に好ましい。
【0091】
前記有機ミクロ繊維及び前記有機ナノ繊維の種類は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、PVA系繊維(ビニロン)、2,6-ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸繊維(ベクトラン)、ポリ乳酸(PLA)繊維、セルロース繊維が好ましく、グリップ性の改善効果の観点から、PVA系繊維(ビニロン)及びセルロース繊維がより好ましく、セルロース繊維が更に好ましい。セルロース繊維からなる有機ミクロ繊維としては、例えば、レッテンマイヤー製の製品名「ARBOCEL」で販売されているセルロース系ミクロ繊維が好ましく例示される。また、セルロース繊維からなる有機ナノ繊維としては、例えば、ダイセルファインケム(株)製のセリッシュKY-100G(平均繊維長:500μm、平均繊維径:20nm、固形分:10質量%)等のセルロース系ナノ繊維が好ましく例示される。
上記フィラーの含有量は、ゴム(I)及びブロック共重合体(II)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは0~120質量部であり、0.5~80質量部であってもよく、1~50質量部であってもよく、1~30質量部であってもよい。
【0092】
(軟化剤)
本実施態様の樹脂組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、軟化剤を含有してもよい。しかし、上記樹脂組成物は、前述の構成によって成形加工に十分な流動性を有していることから軟化剤を含有しなくともよい。特に、軟化剤の中でもパラフィン系、ナフテン系及び芳香族系等のプロセスオイル、ミネラルオイル、ホワイトオイル等のオイル系軟化剤は、成形体とした際に経時的にオイルが染み出てくるおそれがあるため樹脂組成物に含有させないことが好ましい。
含有させることができる軟化剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸誘導体;エチレンとα-オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィン;ポリブテン;低分子量ポリイソブチレン;液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状β-ポリファルネセン、液状ポリイソプレン/ブタジエン共重合体、液状イソプレン/β-ファルネセン、液状ブタジエン/β-ファルネセン、液状スチレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/イソプレン共重合体等の液状ポリジエン及びその水添物又はその変性物等が挙げられる。
軟化剤を含有する場合の含有量は、上記樹脂組成物中、0.1~30質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましく、1.0~15質量%が更に好ましい。
【0093】
(その他の添加剤)
本実施態様の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上述したもの以外のその他の添加剤を添加することができる。その他の添加剤としては、例えば、熱老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0094】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施態様の樹脂組成物の製造方法は、例えば、前記架橋剤(III)及び必要に応じて添加される架橋促進剤を除く各成分を溶融混練した後、後述の架橋方法で架橋することにより製造することができる。
架橋剤(III)及び必要に応じて添加される架橋促進剤を除く各成分を溶融混練する方法に特に制限はなく、ゴム(I)、ブロック共重合体(II)及びその他の任意成分を、同時に混練装置、例えば、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、オープンロール、加熱ロール、各種ニーダー等に供給して溶融混練する方法が挙げられる。また、ゴム(I)、ブロック共重合体(II)及びその他の任意成分を別々の仕込み口から供給して溶融混練する方法、あるいはブロック共重合体(II)とシリカ及びシランカップリング剤等の一部の任意成分とを予め溶融混練し、当該溶融混練物とその他の任意成分と溶融混練する方法等であってもよい。
溶融混練時の温度は、通常20~270℃の範囲で任意に選択することができる。
【0095】
架橋方法としては、上記溶融混練の後、架橋剤(III)及び必要に応じて添加される架橋促進剤を添加し、加硫金型を用いて加硫温度が通常120~200℃程度、好ましくは140~200℃、加硫圧力が通常0.5~10MPa程度で、通常1分~2時間程度維持することにより、架橋する方法等が挙げられる。
【0096】
[物性]
(滑りにくさ)
本実施態様の樹脂組成物は、滑りにくさを、ASTM D-1894に準じて測定される静摩擦係数により評価することができる。静摩擦係数の好ましい数値範囲は、用いるゴム(I)の種類によって異なり一概には特定できないが、静摩擦係数の数値が大きいほど滑りにくいことを示す。例えば、ゴム(I)としてSBRを用いた場合、静摩擦係数が、ドライ条件で、好ましくは4.5以上、より好ましくは5.0以上である。また、ウェットの件で、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上である。
ドライ条件及びウェット条件については、後述する実施例に記載した測定条件を意味する。
【0097】
(耐摩耗性)
本実施態様の樹脂組成物は、耐摩耗性を、JIS K 6264-2:2005に準じてDIN摩耗試験(回転円筒型摩耗試験機)により測定される摩耗量により評価することができる。摩耗量は、好ましくは200mm3以下、より好ましくは190mm3以下であり、更には180mm3以下、170mm3以下とすることもできる。
【0098】
(加硫速度)
本実施態様の樹脂組成物は、架橋剤(III)として硫黄及び/又は硫黄含有化合物を用いた場合、加硫速度に優れる、すなわち、加硫に要する時間(90%加硫時間)が短いことが期待できる。
加硫速度が速いと、加硫する時の樹脂組成物の粘度上昇が速く、樹脂組成物中の硫黄及び/又は硫黄含有化合物である加硫剤や、架橋促進剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、軟化剤等の可塑剤等が、ゴム(I)やブロック共重合体(II)の表面へブリードしにくくなるため、加工用の金型の汚染を抑制することができる。
本明細書において樹脂組成物の加硫速度は、JIS K 6300-2:2001にしたがって、振動式加硫試験機(キュラストメーター)を用いて樹脂組成物の160℃におけるトルクを測定し、90%加硫量に至るまでに要する時間(90%加硫時間)とする。樹脂組成物の加硫速度Tc(90)としては、13分以下が好ましく、12分以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、通常1分以上である。
【0099】
(比重)
本実施態様の樹脂組成物は、ISO 1183:1987に準じて測定される比重が、好ましくは0.88~1.30、より好ましくは0.90~1.20である。上記範囲であれば樹脂組成物からなる成形体は、実用性に欠けることはない。例えば樹脂組成物を履物用靴底に用いる場合、重くなり過ぎず、履物の軽量化も期待できる。
【0100】
(硬度)
本実施態様の樹脂組成物は、JIS K 6253-2:2012のタイプAデュロメータ法による硬度(以下、「A硬度」ともいう)が、好ましくは90以下、より好ましくは85以下である。また、A硬度は、好ましくは25以上であり、より好ましくは30以上であり、更に好ましくは35以上である。A硬度が上記範囲であれば成形加工性が良好となり、また良好な柔軟性から摩擦力が高くなり、グリップ性及び耐摩耗性にも優れたものとなる。
【0101】
(引張破断強度)
本実施態様の樹脂組成物は、JIS K 6251:2010に準じて測定される切断時引張強さ(引張破断強度)が、好ましくは5.0MPa以上、より好ましくは10.0MPa以上、更に好ましくは13.0MPa以上である。引張破断強度が5.0MPa以上であれば、引張特性が良好なものとなる。
【0102】
(引張破断伸び)
本実施態様の樹脂組成物は、JIS K 6251:2010に準じて測定される切断時伸び(引張破断伸び)が、好ましくは100%以上であり、より好ましくは150%以上であり、更に好ましくは200%以上であり、より更に好ましくは370%以上である。引張破断伸びが100%以上であれば、引張特性が良好なものとなる。
【0103】
(引裂強度)
本実施態様の樹脂組成物は、JIS K 6252-1:2015に準じて測定される引裂き強さ(引裂強度)が、好ましくは2.0kN/m以上、より好ましくは2.5kN/m以上、更に好ましくは3.0kN/m以上である。
【0104】
<成形体>
本実施態様における成形体は、上述の樹脂組成物を用いて得られるものである。
成形体の形状は、上述の樹脂組成物を用いて製造できる成形体であればいずれでもよく、例えばペレット、フィルム、シート、プレート、パイプ、チューブ、棒状体、粒状体等、種々の形状に成形することができる。この成形体の製造方法は特に制限はなく、従来からの各種成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形、カレンダー成形等により成形することができる。上述の樹脂組成物は、特にプレス成形体を好適に得ることができる。
上記成形体は、滑りにくく、耐摩耗性に優れ、加えて引裂強度及び引張特性のバランスに優れることも期待できるため、これら特性が要求される成形品に用いることができる。特に、本実施態様の樹脂組成物を少なくとも一部に用いた靴底等の成形品として好適に用いることができる。
具体的には、ハイキングブーツ、サンダル、安全靴、登山靴、マラソンシューズ、地下足袋及び長靴等の履物用靴底;水中眼鏡、シュノーケル、スキーブーツ及びスキー・スノーボード等のスポーツ用品;ペン及びはさみ等の筆記用具、ドライバー、ペンチ及びレンチ等の工具及び電気工具、歯ブラシ及びキッチン用品(包丁及びヘラ等)等の水周り用品、ゴルフクラブ、スキーのストック、自転車、バイク等のスポーツ及びフィットネス等に用いられる器具、並びにナイフ等の各種グリップ;冷蔵庫、掃除機及び防水ボディー(携帯電話等)等の家電の部品;サイドモール、ラック・オピニオンブーツ、サスペンションブーツ、等速ジョイントブーツ、ウェザーストリップ、マットガード、フロアーマット、アームレスト、ベルトラインモール、フラッシュマウント及び自動車内外装(ギア及びノブ等)の自動車用品;タイヤ、特にウィンタータイヤ、スタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤ、低燃費タイヤ及び重荷重用タイヤ等のトレッド部材;コピー機送りローラー及び巻き取りローラー等の事務機器;ソファー及びチェアーシート等の家具に用いられる部品;スイッチカバー、ストッパー、キャスター及び足ゴム等のゴム部品;被覆合板及び被覆鋼板等の建材;工業用ベルト、工業用ゴムホース等の工業用部材等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、β-ファルネセン(純度97.6質量%、アミリス,インコーポレイティド社製)は、3Åのモレキュラーシーブにより精製し、窒素雰囲気下で蒸留することで、ジンギベレン、ビサボレン、ファルネセンエポキシド、ファルネソール異性体、E,E-ファルネソール、スクアレン、エルゴステロール及びファルネセンの数種の二量体等の炭化水素系不純物を除き、以下の重合に用いた。
【0106】
<ゴム(I)>
・ゴム(I):SBR
製品名JSR 1502、JSR株式会社製、スチレンブタジエン共重合ゴム(E-SBR)、乳化重合法で製造、スチレン含有量=23.5質量%
【0107】
<ブロック共重合体(II)>
・水添ブロック共重合体(II-1)
後述の製造例1の水添ブロック共重合体(II-1)
・水添ブロック共重合体(II-2)
後述の製造例2の水添ブロック共重合体(II-2)
・未水添ブロック共重合体(II’-1)
後述の製造例3の未水添ブロック共重合体(II’-1)
【0108】
<架橋剤(III)>
・硫黄:微粉硫黄200メッシュ、鶴見化学工業株式会社製
<架橋促進剤>
・架橋促進剤(1):製品名ノクセラーCZ、大内新興化学工業株式会社製、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルフェンアミド
・架橋促進剤(2):製品名ノクセラーTT、大内新興化学工業株式会社製、テトラメチルチウラムジスルフィド)
【0109】
<シリカ>
・シリカ(1):製品名ULTRASIL7000GR、エボニック デグサ ジャパン製、湿式シリカ、BET法比表面積175m2/g
・シリカ(2):製品名Nipsil VN3、東ソー・シリカ株式会社製、湿式シリカ、BET法比表面積200m2/g
・シリカ(3):製品名Nipsil ER、東ソー・シリカ株式会社製、湿式シリカ、BET法比表面積70-100m2/g
【0110】
<シランカップリング剤>
・シランカップリング剤(1):製品名Si75、エボニック デグサ ジャパン製、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド
・シランカップリング剤(2):製品名Si69、エボニック デグサ ジャパン製、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
・シランカップリング剤(3):製品名Silquest A189、モメンティブ製、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン
【0111】
<その他の添加剤>
・酸化亜鉛:酸化亜鉛1種、堺化学工業株式会社製
・ステアリン酸:製品名ルナックS-20、花王株式会社製
【0112】
[測定方法]
製造例で得られた重合体についての各測定方法の詳細は次のとおりである。
(1)ピークトップ分子量及び分子量分布の測定
スチレンブロック及び重合体のピークトップ分子量(Mp)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求め、分子量分布のピークの頂点の位置からピークトップ分子量(Mp)を求めた。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製 GPC装置「HLC-8320GPC」
・分離カラム :東ソー株式会社製 カラム「TSKgelSuperHZ4000」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.7mL/min
・サンプル濃度:5mg/10mL
・カラム温度 :40℃
【0113】
(2)水素添加率の測定方法
(2-1)ブロック共重合体(P)、及び水素添加後のブロック共重合体(II)(「水添ブロック共重合体(II)」と表記する)をそれぞれ重クロロホルム溶媒に溶解し、日本電子株式会社製「Lambda-500」を用いて50℃で1H-NMRを測定した。
水添ブロック共重合体(II)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率は、得られたスペクトルの4.5~6.0ppmに現れる炭素-炭素二重結合が有するプロトンのピークから、下記式により算出した。
水素添加率(モル%)={1-(水添ブロック共重合体(II)1モルあたりに含まれる炭素-炭素二重結合のモル数)/(ブロック共重合体(P)1モルあたりに含まれる炭素-炭素二重結合のモル数)}×100
(2-2)また、重合体ブロック(B)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率、及び重合体ブロック(C)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率について、上記で得られたそれぞれのスペクトルに現れるプロトンピークから、上記と同様に算出した。
【0114】
(3)水の接触面積(水のはじきやすさ)
無色透明かつ表面が平滑である石英板(5cm×5cm)に食紅を添加した水(1mL)を垂らし、その上に製造例で製造した重合体からなる成形体(直径25mm、厚み2mmの丸型平面状シート)を設置し、該成形体に引張試験機で2kgの荷重をかけた。なお、食紅は観察容易の観点から水に添加したものであり、水のはじきやすさに影響を与えるものではない。
成形体と石英板との接地面における水の様子を石英板側から目視で観察し、下記評価基準A~Cにより評価した。
A:上記接地面に食紅が見えない
B:上記接地面に食紅が少し見える
C:上記接地面に食紅が多く見える
また、成形体と石英板との接地面における水で覆われている割合(被覆率%)を、石英板側から撮影した観察画像を画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製、製品名「WinROOF ver.5.7.2」)により画像解析し、下記式から定量した。
被覆率%=[(成形体と石英板との接地面における赤い領域の面積)/(成形体と石英板との接地面の面積)]×100
【0115】
[製造例1]
水添ブロック共重合体(II-1):
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.1905kg、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.40kgを仕込み、50℃に昇温した後、β-ファルネセン6.34kgを加えて2時間重合を行い、引き続いてスチレン(1)2.50kgを加えて1時間重合させ、更にブタジエン3.66kgを加えて1時間重合を行った。続いてこの重合反応液にカップリング剤としてジクロロジメチルシラン0.02kgを加え1時間反応させることで、ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)ペンタブロック共重合体(P1)を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体(P1)に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)ペンタブロック共重合体の水素添加物(II-1)(以下、「水添ブロック共重合体(II-1)」という。)を得た。
得られた水添ブロック共重合体(II-1)について、上記の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0116】
[製造例2]
水添ブロック共重合体(II-2):
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.0413kgを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.12kgを加えて1時間重合を行い、続いてβ-ファルネセン10.25kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.12kgを加えて1時間重合を行い、ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体(P2)を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体(P2)に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(II-2)」ともいう)を得た。
水添ブロック共重合体(II-2)について、上記の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0117】
[製造例3]
未水添ブロック共重合体(II’-1):
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%のシクロヘキサン溶液)0.1010kgを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.70kgを加えて1時間重合を行い、ルイス塩基としてN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)0.065kgを加え、続いてイソプレン13.30kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.70kgを加えて1時間重合を行い、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(P’1)を含む反応液を得た。
この反応液に、メタノール200mLを加えることによって重合反応を停止させた。得られた混合液を水洗し、次いで大量のメタノール中に再沈させることによって、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(以下、「未水添ブロック共重合体(II’-1)」ともいう)を得た。
未水添ブロック共重合体(II’-1)について、上記の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0118】
【0119】
なお、表1中の各表記は下記のとおりである。
*1:(A)/(B)は、重合体ブロック(A)の含有量と重合体ブロック(B)の含有量との質量比を示す。
*2:(A)/((B)+(C))は、重合体ブロック(A)の含有量と、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)それぞれの含有量の合計との質量比を示す。
*3:(b1)/(B)は、重合体ブロック(B)中のファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量(質量%)を示す。
*4:((b1)+(c1))/((B)+(C))は、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)の合計量に対する構造単位(b1)及び構造単位(c1)の合計含有量(質量%)を示す。
*5: F-St-Bd-St-Fは、ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)ペンタブロック共重合体を示す。
St-F-Stは、ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体を示す。
St-Ip-Stは、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレントリブロック共重合体を示す。
*6:(II)の水素添加率は、ブロック共重合体(P)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率を示す。
*7:重合体ブロック(B)の水素添加率は、重合体ブロック(B)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率を示す。ただし、重合体ブロック(B)を有する場合のみ示す。
*8:重合体ブロック(C)の水素添加率は、重合体ブロック(C)中の共役ジエン由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率を示す。ただし、重合体ブロック(C)を有する場合のみ示す。
【0120】
[実施例1~9][比較例1~5]
(1)溶融混練(樹脂組成物の製造)
表3に記載した配合割合(質量部)に従って、架橋剤(III)及び架橋促進剤を除く各成分を、表2に示す条件にてミキシングロール(14インチロール 関西ロール株式会社製)に投入して溶融混練した(工程1及び2)。その後、溶融混練物をオープンロールから取り出した(工程3)。
次いで、この溶融混練物をミキシングロールに入れ(工程4)、架橋剤(III)及び架橋促進剤を投入し(工程5)、再混練して、取り出す(工程6)ことで樹脂組成物を得た。
(2)成形(成形体の製造)
また、上記で得られた樹脂組成物をプレス成形(160℃、7~40分)して架橋させつつゴムシート(厚み0.5mm)を得た。
得られた樹脂組成物又はゴムシートを用い、下記の評価方法に基づき物性を評価した。結果を表3に示す。
【0121】
【0122】
[評価方法]
(静摩擦係数)
(1)ドライ
ASTM D-1894に準じて、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のゴムシート表面の静摩擦係数を測定した。
上記ゴムシートから縦110mm、横63.5mm、厚さ0.5mmの試験片を切り出してセル(重さ200g、63.5mm×63.5mm)に巻き付け、摩擦係数測定装置の試験片台が水平になるようにオートグラフヘッドに固定した。摩擦台の材質をアルミとし、引張速度150mm/分で静摩擦係数を測定した。静摩擦係数の数値が大きいほど摩擦力が大きくて滑りにくく、ドライグリップ性に優れる。
(2)ウェット
摩擦台に蒸留水を1cc垂らした以外は、上記(1)ドライと同様の方法で静摩擦係数を測定した。静摩擦係数の数値が大きいほど摩擦力が大きくて滑りにくく、ウェットグリップ性に優れる。
【0123】
(耐摩耗性)
JIS K 6264-2:2005に準じてDIN摩耗試験によりDIN摩耗量を測定した。数値が小さいほど耐摩耗性に優れる。
(加硫速度)
加硫速度(Tc90)の測定は、JIS K 6300-2に準じ、振動式加硫試験機(キュラストメーター)を使用して、実施例及び比較例において得られた上記樹脂組成物の160℃におけるトルクを測定し、90%加硫量にいたる加硫時間を加硫速度(t90)とした。数値が小さいほど加硫速度に優れる。
【0124】
(比重)
ISO 1183:1987に準じて測定した。全ての実施例及び比較例において比重は1.1g/cm3であった。
(硬度)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のゴムシートからJIS K 6251:2010に準拠した打ち抜き刃を用い、ダンベル3号形試験片(厚さ0.5mm)を得た。
得られた試験片を12枚重ねて厚み6mmとし、硬度をタイプAデュロメータの圧子を用い、JIS K 6253-3:2012に準拠して測定した。なお、硬度の数値が小さいほど柔軟性に優れる。
【0125】
(引張破断強度及び引張破断伸び)
上記(硬度)測定と同様の方法で作製したダンベル3号形試験片(0.5mm)を用い、JIS K 6251:2010に準じて、引張破断強度及び引張破断伸びを測定した。引張破断強度及び引張破断伸びの数値が大きいほど引張特性に優れる。
(引裂強度)
JIS K 6252-1:2015に準じて、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のゴムシートから、打ち抜き刃を用い切り込みなしアングル形試験片(厚さ0.5mm)を得た。得られた試験片を用い、引張速度500mm/min、温度23℃で引裂強さを測定した。数値が大きいほど引裂強度に優れる。
【0126】
【0127】
実施例1~4と比較例1、実施例5及び6と比較例3及び4、実施例9と比較例5のそれぞれの対比から、ブロック共重合(II)を含有することにより、ドライ条件及びウェット条件のいずれにおいても静摩擦係数が大きくなり、滑りにくさに優れることがわかる。
また、実施例1及び4と比較例2との対比から、ゴム(I)とブロック共重合体(II)との質量比を特定の数値範囲とすることにより、優れた滑りにくさを保持しつつ耐摩耗性にも優れることがわかる。
更に、表3に示す全ての実施例から、本実施形態の樹脂組成物であれば滑りにくく、耐摩耗性に優れ、加えて引裂強度及び引張特性等のバランスに優れる成形体が得られることがわかる。
【0128】
[実施例10~13][比較例6,7]
表4に記載した配合割合(質量部)に従って、実施例1と同様に行い樹脂組成物及びゴムシートを得て、物性を評価した。
また、表4におけるゴム(I)及び架橋促進剤(3)~(5)は次のとおりであり、また他の材料は、前記に示したとおりである。
<ゴム(I)>
・ゴム(I):BR
製品名BR-01、JSR株式会社製、ポリブタジエンゴム(BR)、重量平均分子量(Mw)=55万、シス体含量=95質量%、ビニル含量=2.5質量%
<架橋促進剤>
・架橋促進剤(3):製品名ノクセラーDM、大内新興化学工業株式会社製、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド
・架橋促進剤(4):製品名ノクセラーTBT、大内新興化学工業株式会社製、テトラブチルチウラムジスルフィド)
・架橋促進剤(5):サルチル酸
【0129】
【0130】
実施例10~13と比較例6との対比から、ブロック共重合(II)を含有することにより、ドライ条件及びウェット条件のいずれにおいても静摩擦係数が大きくなり、滑りにくさに優れることがわかる。
また、実施例10及び11と比較例7との対比から、ゴム(I)とブロック共重合体(II)との質量比を特定の数値範囲とすることにより、優れた滑りにくさを保持しつつ耐摩耗性にも優れることがわかる。
更に、表4に示す全ての実施例から、本実施形態の樹脂組成物であれば滑りにくく、耐摩耗性に優れ、加えて引裂強度及び引張特性等のバランスに優れる成形体が得られることがわかる。
【0131】
[実施例14][比較例8,9]
表5に記載した配合割合(質量部)に従って、実施例1と同様に行い樹脂組成物及びゴムシートを得て、物性を評価した。
また、表5におけるゴム(I)は次のとおりであり、また他の材料は、前記に示したとおりである。
<ゴム(I)>
・ゴム(I):NR
天然ゴム、インドネシア産、RSS No.1
【0132】
【0133】
実施例14と比較例8との対比から、ブロック共重合(II)を含有することにより、ドライ条件及びウェット条件のいずれにおいても静摩擦係数が大きくなり、滑りにくさに優れることがわかる。
また、実施例14と比較例9との対比から、ゴム(I)とブロック共重合体(II)との質量比を特定の数値範囲とすることにより、優れた滑りにくさを保持しつつ耐摩耗性にも優れることがわかる。
更に、実施例14から、本実施形態の樹脂組成物であれば滑りにくく、耐摩耗性に優れ、加えて引裂強度及び引張特性等のバランスに優れる成形体が得られることがわかる。
【0134】
[実施例15~20][比較例10]
表6に記載した配合割合(質量部)に従って、実施例1と同様に行い樹脂組成物及びゴムシートを得て、物性を評価した。
また、表6における材料は、前記に示したとおりである。
【0135】
【0136】
実施例15~20と比較例10との対比から、複数種のゴム(I)を併用しても、ブロック共重合(II)を含有することにより、ドライ条件及びウェット条件のいずれにおいても静摩擦係数が大きくなり、滑りにくさに優れることがわかる。
更に、表6に示す全ての実施例から、本実施形態の樹脂組成物であれば滑りにくく、耐摩耗性に優れ、加えて引裂強度及び引張特性等のバランスに優れる成形体が得られることがわかる。
【0137】
[実施例21~33][比較例11,12]
表8,9に記載した配合割合(質量部)に従って、実施例1と同様に行い樹脂組成物及びゴムシートを得て、物性を評価した。
また、表8,9における軟化剤は次の製造例4~8で製造した軟化剤を用いた。表9におけるフィラー(セルロース繊維)は次のとおりであり、他の材料は前記に示したとおりである。
【0138】
<軟化剤>
[製造例4]
ポリβ-ファルネセン(IV-1):
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてヘキサン40kg、開始剤としてn-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)0.55kgを仕込み、50℃に昇温した後、β-ファルネセン40kgを加えて1時間重合した。得られた重合反応液をメタノールで処理し、水を用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間乾燥することにより、表7に示す物性を有するポリβ-ファルネセン(IV-1)を得た。
なお、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、上記[測定方法]と同様に測定した。
【0139】
[製造例5]
ポリβ-ファルネセン(IV-2):
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてヘキサン40kg、開始剤としてn-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)1.84kgを仕込み、50℃に昇温した後、β-ファルネセン40kgを加えて1時間重合した。得られた重合反応液をメタノールで処理し、水を用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間乾燥することにより、表7に示す物性を有するポリβ-ファルネセン(IV-2)を得た。
なお、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、上記[測定方法]と同様に測定した。
【0140】
[製造例6]
ブタジエン-β-ファルネセン共重合体(IV-3):
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてヘキサン40kg、開始剤としてn-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)0.72kgを仕込み、50℃に昇温した後、予め調製した24.0kgのβ-ファルネセンと16.0kgのブタジエンの混合液を加えて1時間重合した。得られた重合反応液をメタノールで処理し、水を用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間乾燥することにより、表7に示す物性を有するブタジエン-β-ファルネセン共重合体(IV-3)を得た。
なお、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、上記[測定方法]と同様に測定した。
【0141】
[製造例7]
水添ポリイソプレン(IV-4):
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてヘキサン40kg、開始剤としてn-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)0.77kgを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレン40kgを加えて1時間重合した。得られた重合反応液をメタノールで処理し、水を用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間乾燥することにより、ポリイソプレンを得た。
上記ポリイソプレン40kgを、溶媒であるシクロヘキサン50kgとオートクレーブ中で混合し、50℃まで昇温した。続いて、トリイソブチルアルミニウムと2-エチルヘキサン酸ニッケルとを3:1のモル比で混合したものを水素添加触媒として、上記ポリイソプレンが含有する全不飽和結合のモル数に対し、水素添加触媒を構成しているニッケル金属として1.5×10-3倍モル加え、80℃まで昇温した。水素圧力を1.0MPaに保つように随時水素を供給しながら攪拌を続け、10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過により、トリイソブチルアルミニウムと2-エチルヘキサン酸ニッケルを除去し、濾液を濃縮し、真空乾燥することにより、表7に示す物性を有する水添ポリイソプレン(IV-4)を得た。
なお、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、及び水素添加率(モル%)は、上記[測定方法]と同様に測定した。
【0142】
[製造例8]
変性液状ポリイソプレン(IV-5):
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、ヘキサン40kg、n-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)0.90kgを仕込み、70℃に昇温した後、イソプレン41kgを加えて1時間重合した。得られた重合反応液にメタノールを添加後、重合反応液を水で洗浄した。水を分離して、重合反応液を70℃で12時間真空乾燥することにより、未変性ポリイソプレン(IV-5)を得た。続いて、未変性ポリイソプレン(IV-5)30kgと無水マレイン酸0.45kgを仕込み、160℃で20時間反応させて、表7に示す物性を有する無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン(IV-5)を得た。
なお、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、上記[測定方法]と同様に測定した。
変性剤の反応率は99%であり、変性液状ポリイソプレン(IV-5)中に付加された官能基は、未変性重合体100質量部に対し1.5質量部であった。
【0143】
<セルロース繊維>
・セルロース繊維:製品名ARBOCEL-BWW40、レッテンマイヤー社製、繊維長200μm、繊維径20μm、繊維密度110-145
【0144】
【0145】
【0146】
比較例11と実施例21を比較すると、ドライ条件においては静摩擦係数が大きくなっている。そこに軟化剤を添加した、実施例22~30はドライ条件に加えて、ウェット条件でも静摩擦係数が大きくなっている。この理由は、判明していないが、NRの含有量が多くなると、複数種ゴム(I)とブロック共重合体(II)の粘度差が大きくなるが、軟化剤を添加することでゴム成分の粘度が下がり、粘度差が小さくなることで分散性が向上していると推定される。
更に、表8に示す全ての実施例から、本実施形態の樹脂組成物であれば滑りにくく、耐摩耗性に優れ、加えて引裂強度及び引張特性等のバランスに優れる成形体が得られることがわかる。
【0147】
【0148】
比較例12と実施例31を比較すると、ブロック共重合体(II-1)が含有されている実施例31の方が静摩擦係数に優れる。実施例31のシリカ(1)の一部をセルロース繊維に置き換えた実施例32は、更にグリップ性が向上する。また、実施例32の軟化剤の一部を変性液状ポリイソプレン(IV-5)に置き換えた実施例33は、実施例32の静摩擦係数を維持しながら、DIN摩耗量の数値が小さくなった。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の樹脂組成物は、滑りにくく、耐摩耗性に優れた成形体とすることができ、更に引裂強度及び引張特性等のバランスに優れることが期待できる。そのため、本発明の樹脂組成物は、履物用靴底;スポーツ用品;筆記用具、工具及び電気工具等の各種グリップ;冷蔵庫等の家電の部品;サイドモール等の自動車用品;タイヤ等のトレッド部材;巻き取りローラー等の事務機器;ソファー等の家具に用いられる部品;足ゴム等のゴム部品;被覆合板及び被覆鋼板等の建材;工業用ベルト等の工業用部材等に好適に用いることができる。