(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240523BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/302 101C
H01L21/302 105A
H05H1/46 R
(21)【出願番号】P 2022101845
(22)【出願日】2022-06-24
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】森川 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】土居 謙太
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏幸
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-078191(JP,A)
【文献】特開2004-111971(JP,A)
【文献】特開2010-238981(JP,A)
【文献】特開2015-099820(JP,A)
【文献】特開2018-121051(JP,A)
【文献】特開2018-142650(JP,A)
【文献】特開2019-004057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0243162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置であって、
内部の減圧が可能で、前記内部で被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の内部電極と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を形成する誘電体板を挟んで、前記内部電極と対向するように配置された螺旋状の外部電極と、
前記外部電極に対して、所定の周波数の交流電力を印加するプラズマ生成電源と、
前記チャンバ内にプロセスガスを導入するガス導入手段と、
を備え、
前記外部電極が径方向に分割されて、径方向中央側に配置された螺旋状の第一電極と、径方向外周部に配置された螺旋状の第二電極と、径方向で前記第一電極および前記第二電極の間に挟まれて配置された螺旋状の第三電極と、を備え、
前記プラズマ生成電源が、
前記第一電極および前記第二電極に対して、第一の周波数λ1の交流電力を印加する第一の高周波電源と、
前記第三電極に対して、前記第一の周波数λ1との関係が、λ1>λ2の関係にある第二の周波数λ2の交流電力を印加する第二の高周波電源と、
前記第一電極および前記第二電極に対して所定の分配比で分配した交流電力を印加可能とする電力を分配する電力分配器と、
を備える、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第一電極および前記第二電極に分配して印加された前記第一の周波数λ1の交流電力によって空間分布を調節したプラズマを生成し、前記第三電極に印加された前記第二の周波数λ2の交流電力によってプラズマの電子密度を増大する、
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記電力分配器は、前記第一電極および前記第二電極により形成された磁場分布が、前記第三電極により形成された磁場分布と略一致するように所定の分配比で分配して印加可能である、
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第一の高周波電源と前記第二の高周波電源とは、前記第一電極および前記第二電極に前記第一の周波数λ1が13.56MHzの交流電力を印加するとともに、前記第三電極に前記第二の周波数λ2が2MHzの交流電力を印加する、
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記外部電極は、螺旋の軸線方向に積層された部分を有する、
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか記載のプラズマ処理装置によってプラズマ処理をおこなう方法であって、
前記第一の高周波電源によって、前記第一の周波数λ1の交流電力を印加された前記第一電極および前記第二電極によってプラズマを生成するとともに、前記電力分配器によって、印加する前記第一の周波数λ1の交流電力を前記第一電極および前記第二電極に所定の分配比で分配することで、生成するプラズマの空間分布を調節し、
前記第二の高周波電源によって、前記第二の周波数λ2の交流電力を印加された前記第三電極によってプラズマの電子密度を増大する、
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記ガス導入手段によって導入される前記プロセスガスに応じて、前記電力分配器により前記第一電極および前記第二電極へ印加する交流電力の分配比を変化させて、生成するプラズマの空間分布を調節する、
ことを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.5:0.5 ~ 0.1:0.9
の範囲となるように設定する、
ことを特徴とする請求項7記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記プロセスガスがSiF
4/O
2ガスの成膜処理である、
ことを特徴とする請求項8記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記第一の高周波電源によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.75:0.25 ~ 0.25:0.75
の範囲となるように設定する、
ことを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記プロセスガスがC
4F
8ガスの成膜処理であるか、
前記プロセスガスがSF
6/SiF
4/O
2ガスのエッチング処理である、
ことを特徴とする請求項10記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記電力分配器によって、前前記第一電極に
分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.5:0.5 ~ 0.1:0.9
の範囲となるように設定し、前記プロセスガスがSiF
4/O
2ガスの成膜処理と、
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.75:0.25 ~ 0.25:0.75
の範囲となるように設定し、前記プロセスガスがC
4F
8ガスの成膜処理と、
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.75:0.25 ~ 0.25:0.75
の範囲となるように設定し、前記プロセスガスがSF
6/SiF
4/O
2ガスのエッチング処理と、
を続けて真空破壊しないでおこなう、
ことを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造や、FPD(flat panel display)の製造においては、エッチング工程やデポ工程としてプラズマを用いた処理が用いられる。この際、らせん状のアンテナ構造から形成される対向電極を備えたプラズマ処理装置を用いることが知られている(特許文献1)。
【0003】
これらのプラズマ処理においては、被処理基板に対して、生成されるプラズマの空間分布が所定の状態となるように、装置構成および処理条件の設定・制御が必要である。例えば、被処理基板に対するプラズマ処理の面内分布が均一になるようなブラズマ分布(配置)状態が例示できる。
【0004】
また、このような装置を用いる処理としては、エッチング工程やデポ工程のように、異なる処理を同一のチャンバでおこなう場合、あるいは、同じ処理であっても異なるガス種などの異条件となる処理を同一のチャンバでおこなう場合があった。
この場合でも、それぞれの処理において、処理内容に対応した好ましいプラズマ分布(配置)とすることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特定の処理において好ましいあるいは必要なプラズマ分布状態を形成できる装置が、他の処理において好ましいあるいは必要なプラズマ分布状態を、必ずしも形成できるわけではない。特に、異なるガス種を用いる処理では、一方のガス種で必要な処理ができるプラズマ分布状態が形成可能であっても、他方のガス種で必要な処理ができるプラズマ分布状態がまったく形成できないといった不具合が生じる場合もあり、このような問題を解決できる装置は知られていない。
【0007】
当然、同じ被処理基板に対して同一の装置内で異なる処理をおこなうため、それぞれの処理において、例えば面内均一性など同等の処理状態を実現可能であることが求められている。
このような要求には、プラズマの空間分布(配置)をそれぞれの処理に対応可能に変化させて制御・設定することにより、対応可能であると考えられる。
しかし、それぞれの処理に対応して充分であると見なせる程度まで、プラズマの空間分布(配置)を変化・設定可能な装置・技術は知られておらず、このような処理を可能とすることが求められている。
【0008】
さらに、たとえ上記のようなプラズマ空間分布(配置)の制御が可能な場合でも、所定の電子密度に到達していないなど、プラズマ条件が不足する場合があり、必要な処理が可能であるとはいえないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.プラズマの空間分布(配置)を異なる処理においても、それぞれ充分な程度まで変化・設定可能とすること。
2.処理に必要なプラズマの空間分布(配置)と、処理に必要な電子密度等のプラズマ条件とを両立可能とすること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一形態に係るプラズマ処理装置は、
プラズマ処理装置であって、
内部の減圧が可能で、前記内部で被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の内部電極と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を形成する誘電体板を挟んで、前記内部電極と対向するように配置された螺旋状の外部電極と、
前記外部電極に対して、所定の周波数の交流電力を印加するプラズマ生成電源と、
前記チャンバ内にプロセスガスを導入するガス導入手段と、
を備え、
前記外部電極が径方向に分割されて、径方向中央部に配置された螺旋状の第一電極と、及び、径方向外周部に配置された螺旋状の第二電極と、径方向で前記第一電極および前記第二電極の間に挟まれて配置された螺旋状の第三電極と、を備え、
前記プラズマ生成電源が、
前記第一電極および前記第二電極に対して、第一の周波数λ1の交流電力を印加する第一の高周波電源と、
前記第三電極に対して、前記第一の周波数λ1との関係が、λ1>λ2の関係にある第二の周波数λ2の交流電力を印加する第二の高周波電源と、
前記第一電極および前記第二電極に対して所定の分配比で分配した交流電力を印加可能とする電力を分配する電力分配器と、
を備える、
ことにより上記課題を解決した。
(2)本発明のプラズマ処理装置は、上記(1)において、
前記第一電極および前記第二電極に分配して印加された前記第一の周波数λ1の交流電力によって空間分布を調節したプラズマを生成し、前記第三電極に印加された前記第二の周波数λ2の交流電力によってプラズマの電子密度を増大する、
ことができる。
(3)本発明のプラズマ処理装置は、上記(1)において、
前記電力分配器は、前記第一電極および前記第二電極により形成された磁場分布が、前記第三電極により形成された磁場分布と略一致するように所定の分配比で分配して印加可能である、
ことができる。
(4)本発明のプラズマ処理装置は、上記(1)において、
前記第一の高周波電源と前記第二の高周波電源とは、前記第一電極および前記第二電極に前記第一の周波数λ1が13.56MHzの交流電力を印加するとともに、前記第三電極に前記第二の周波数λ2が2MHzの交流電力を印加する、
ことができる。
(5)本発明のプラズマ処理装置は、上記(1)において、
前記外部電極は、螺旋の軸線方向に積層された部分を有する、
ことができる。
(6)本発明のプラズマ処理方法は、上記(1)において、
上記(1)から(5)のいずれか記載のプラズマ処理装置によってプラズマ処理をおこなう方法であって、
前記第一の高周波電源によって、前記第一の周波数λ1の交流電力を印加された前記第一電極および前記第二電極によってプラズマを生成するとともに、前記電力分配器によって、印加する前記第一の周波数λ1の交流電力を前記第一電極および前記第二電極に所定の分配比で分配することで、生成するプラズマの空間分布を調節し、
前記第二の高周波電源によって、前記第二の周波数λ2の交流電力を印加された前記第三電極によってプラズマの電子密度を増大する、
ことができる。
(7)本発明のプラズマ処理方法は、上記(6)において、
前記ガス導入手段によって導入される前記プロセスガスに応じて、前記電力分配器により前記第一電極および前記第二電極へ印加する交流電力の分配比を変化させて、生成するプラズマの空間分布を調節する、
ことができる。
(8)本発明のプラズマ処理方法は、上記(7)において、
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.5:0.5 ~ 0.1:0.9
の範囲となるように設定する、
ことができる。
(9)本発明のプラズマ処理方法は、上記(8)において、
前記プロセスガスがSiF4/O2ガスの成膜処理である、
ことができる。
(10)本発明のプラズマ処理方法は、上記(6)において、
前記第一の高周波電源によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.75:0.25 ~ 0.25:0.75
の範囲となるように設定する、
ことができる。
(11)本発明のプラズマ処理方法は、上記(10)において、
前記プロセスガスがC4F8ガスの成膜処理であるか、
前記プロセスガスがSF6/SiF4/O2ガスのエッチング処理である、
ことができる。
(12)本発明のプラズマ処理方法は、上記(6)において、
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.5:0.5 ~ 0.1:0.9
の範囲となるように設定し、前記プロセスガスがSiF4/O2ガスの成膜処理と、
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.75:0.25 ~ 0.25:0.75
の範囲となるように設定し、前記プロセスガスがC4F8ガスの成膜処理と、
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.75:0.25 ~ 0.25:0.75
の範囲となるように設定し、前記プロセスガスがSF6/SiF4/O2ガスのエッチング処理と、
を続けて真空破壊しないでおこなう、
ことができる。
【0011】
(1)本発明の一形態に係るプラズマ処理装置は、
プラズマ処理装置であって、
内部の減圧が可能で、前記内部で被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の内部電極と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を形成する誘電体板を挟んで、前記内部電極と対向するように配置された螺旋状の外部電極と、
前記外部電極に対して、所定の周波数の交流電力を印加するプラズマ生成電源と、
前記チャンバ内にプロセスガスを導入するガス導入手段と、
を備え、
前記外部電極が径方向に分割されて、径方向中央部に配置された螺旋状の第一電極と、及び、径方向外周部に配置された螺旋状の第二電極と、径方向で前記第一電極および前記第二電極の間に挟まれて配置された螺旋状の第三電極と、を備え、
前記プラズマ生成電源が、
前記第一電極および前記第二電極に対して、第一の周波数λ1の交流電力を印加する第一の高周波電源と、
前記第三電極に対して、前記第一の周波数λ1との関係が、λ1>λ2の関係にある第二の周波数λ2の交流電力を印加する第二の高周波電源と、
前記第一電極および前記第二電極に対して所定の分配比で分配した交流電力を印加可能とする電力を分配する電力分配器と、
を備える。
【0012】
上記の構成によれば、第一電極および第二電極に分配されて印加された交流電力によりプラズマを生成するとともに、その間に位置する第三電極に印加された交流電力によりプラズマの電子密度を高くして、プロセスガス分子の解離度の高いプラズマ処理をおこなうことが可能となる。
したがって、電力分配器により、第一電極および第二電極によりプラズマを発生させて所定の空間分布、つまり、チャンバの径方向において第一電極から第二電極までの位置で規定される範囲に対応して、チャンバの径方向にどの程度のプラズマを発生させるかという分布、および、外部電極と内部電極との間で、どの程度のプラズマを発生させるかという分布を制御することが可能となる。同時に、第三電極によって、電子エネルギー確率関数が所定の状態となるように制御する、つまり、空間領域制御された低電子密度プラズマを加熱することができる。これらにより、プラズマ分布と温度制御とを同時に制御したプラズマを生成して、所定のプラズマ処理をおこなうことが可能となる。
ここで、チャンバの径方向において第一電極から第二電極までの位置で規定される範囲とは、径方向において第一電極から第二電極までの位置、および、径方向において第一電極の内側となる領域、径方向において第二電極の外側となる領域を含むことができる。
さらに、外部電極と内部電極との間とは、対向する外部電極から内部電極へと向かう方向におけるチャンバ内の領域を含むことができる。
【0013】
(2)本発明のプラズマ処理装置は、上記(1)において、
前記第一電極および前記第二電極に分配して印加された前記第一の周波数λ1の交流電力によって空間分布を調節したプラズマを生成し、前記第三電極に印加された前記第二の周波数λ2の交流電力によってプラズマの電子密度を増大する。
【0014】
上記の構成によれば、第一電極および第二電極より形成された磁場分布を、いわゆる、RFスプリッタとなる電力分配器による分配比の制御によって、プラズマを生成する空間領域制御を可能とすることができる。同時に、単体ではプラズマ生成ができない周波数の交流電力を印加した第三電極を、生成したプラズマに対する電子振動印加を可能な構成として、プラズマ中の電子密度を高めることができる。
【0015】
(3)本発明のプラズマ処理装置は、上記(1)または(2)において、
前記電力分配器は、前記第一電極および前記第二電極により形成された磁場分布が、前記第三電極により形成された磁場分布と略一致するように所定の分配比で分配して印加可能である。
【0016】
上記の構成によれば、第一電極および第二電極に対して印加する交流電力の分配比を電力分配器で制御することにより、第一電極と第二電極との間、つまり、チャンバの径方向に沿った位置のみならず外部電極の軸線方向に沿った位置におけるプラズマ生成の配置状態を制御することが可能となる。ここで、外部電極の軸線方向とは、螺旋状の外部電極において、螺旋形状を同心状の多重円で近似したときの中心対称軸線に沿った方向である。言い換えると、外部電極の軸線方向とは、チャンバの高さ方向中心軸線、つまり、外部電極と内部電極との対向方向の中心軸線に沿った方向を意味する。
【0017】
(4)本発明のプラズマ処理装置は、上記(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記第一の高周波電源と前記第二の高周波電源とは、前記第一電極および前記第二電極に前記第一の周波数λ1が13.56MHzの交流電力を印加するとともに、前記第三電極に前記第二の周波数λ2が2MHzの交流電力を印加する。
【0018】
上記の構成によれば、13.56MHzの交流電力によってプラズマを発生させるとともにプラズマ生成領域(プラズマ発生領域)を設定し、また、2MHzの交流電力によって、電子密度を高くすることができる。
【0019】
(5)本発明のプラズマ処理装置は、上記(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記外部電極は、螺旋の軸線方向に積層された部分を有する。
【0020】
上記の構成によれば、第一電極、第二電極、第三電極のいずれかにおいて、複数段に積層された構成とされることで、この複数段とされた電極によって形成される磁場強度を大きくすることができる。これにより、磁場強度の空間分布を、プラズマ処理装置によっておこなう処理内容に応じて、適宜制御することが容易にできる。なお、ここで、第一電極、第二電極、第三電極のいずれか1以上を選択して複数段とすることもできるし、第一電極、第二電極、第三電極のいずれか1以上を選択してその一部を複数段とすることもできる。
【0021】
(6)本発明の他の態様に係るプラズマ処理方法は、
上記(1)から(5)のいずれか記載のプラズマ処理装置によってプラズマ処理をおこなう方法であって、
前記第一の高周波電源によって、前記第一の周波数λ1の交流電力を印加された前記第一電極および前記第二電極によってプラズマを生成するとともに、前記電力分配器によって、印加する前記第一の周波数λ1の交流電力を前記第一電極および前記第二電極に所定の分配比で分配することで、生成するプラズマの空間分布を調節し、
前記第二の高周波電源によって、前記第二の周波数λ2の交流電力を印加された前記第三電極によってプラズマの電子密度を増大する。
【0022】
上記の構成によれば、電力分配器によって分配比を調整することで、所定の空間分布となるようにプラズマを発生させるとともに、同時に、プラズマの電子密度を上げることができる。したがって、供給するプロセスガス等によって異なるプラズマ配置に対応してプラズマを発生させることを同一チャンバ内で実現可能とすることができる。同時に、供給するプロセスガスや被処理体に対しておこなうプラズマ処理等によって異なる電子密度に対応したプラズマを生成することができる。これらにより、第一の高周波電源および第二の高周波電源から印加する交流電力および供給するガスを制御することだけで、異なるガス種によるプラズマ処理、あるいは、異なる条件によるプラズマ処理を、装置構成の交換等が必要ない状態で、同一の装置により同一の被処理体に対して、しかも、連続して可能とすることができる。
これにより、複数段階処理などが必要な基板処理などにおいて、好ましいプラズマ処理の分布、例えば、処理面の面内均一性を維持した状態で複数の処理をおこなうことが可能となる。
【0023】
(7)本発明のプラズマ処理方法は、上記(6)において、
前記ガス導入手段によって導入される前記プロセスガスに応じて、前記電力分配器により前記第一電極および前記第二電極へ印加する交流電力の分配比を変化させて、生成するプラズマの空間分布を調節する。
【0024】
上記の構成によれば、第一電極および第二電極に対して印加する交流電力の分配比を制御することにより、第一電極と第二電極との間、つまり、チャンバの径方向において第一電極から第二電極までの位置で規定される範囲である、径方向において第一電極から第二電極までの位置、および、径方向において第一電極の内側となる領域、径方向において第二電極の外側となる領域でチャンバの径方向に沿った位置におけるプラズマ生成の配置状態を制御することが可能となる。
しかも、プラズマ処理における反応性の異なる振る舞いをする複数のガスに対して、それぞれのガスに対応した空間分布を有する磁場強度を形成することが可能となる。これにより、異なるガス種により、必要な磁場強度の空間分布が異なる場合でも、それぞれのガス種に対応して、異なる空間分布を有する磁場強度を形成し、必要な処理特性の面内分布を実現することが可能となる。
【0025】
(8)本発明のプラズマ処理方法は、上記(6)または(7)において、
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.5:0.5 ~ 0.1:0.9
の範囲となるように設定する。
【0026】
上記の構成によれば、上述した分配比の範囲に対応して、チャンバ径方向内側の磁場強度よりもチャンバ径方向外側の磁場強度を増大させて、チャンバの径方向中心部付近に生成するプラズマの密度よりも、チャンバの径方向外周縁部付近に生成するプラズマの密度を増大させる。
これにより、例えば、電力分配をおこなわないと基板外周部での処理特性が基板中心部での処理特性よりも小さいガス、たとえば、成膜処理における基板中心での膜厚よりも基板外周での膜厚が小さくなるガスを用いた場合などにおいて、膜厚を基板径方向で均一にする、などの対応をおこなうことが可能となる。
【0027】
(9)本発明のプラズマ処理方法は、上記(8)において、
前記プロセスガスがSiF4/O2ガスの成膜処理である。
【0028】
上記の構成によれば、シリコンを含む膜をCVD法により成膜する場合に、基板径方向における膜厚の均一性を向上することが可能となる。
あるいは、前記チャンバの径方向中心部よりも外周部で電子密度が上がらないガスである場合や、前記チャンバの径方向中心部よりも外周部で解離しにくいガスである場合でも、基板径方向における処理特性の均一性を向上することが可能となる。
【0029】
(10)本発明のプラズマ処理方法は、上記(6)または(7)において、
前記第一の高周波電源によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.75:0.25 ~ 0.25:0.75
の範囲となるように設定する。
【0030】
上記の構成によれば、上述した分配比の範囲に対応して、チャンバ径方向内側の磁場強度よりもチャンバ径方向外側の磁場強度を増大させる場合から、チャンバ径方向内側の磁場強度よりもチャンバ径方向外側の磁場強度を減少させる場合まで、チャンバの径方向中心部付近に生成するプラズマの密度と、チャンバの径方向外周縁部付近に生成するプラズマの密度とを、所定の分配比で均衡あるいは傾斜させることができる。
これにより、例えば、電力分配をおこなわない場合、基板外周部での処理特性と基板中心部での処理特性とがばらつくガス、たとえば、成膜処理における基板中心での膜厚と基板外周での膜厚とがばらついてしまうガスを用いた場合などにおいて、膜厚を基板径方向で均一にする、などの対応をおこなうことが可能となる。
【0031】
(11)本発明のプラズマ処理方法は、上記(10)において、
前記プロセスガスがC4F8ガスの成膜処理であるか、
前記プロセスガスがSF6/SiF4/O2ガスのエッチング処理である。
【0032】
上記の構成によれば、電力分配をおこなわない場合、基板外周部での処理特性と基板中心部での処理特性とがばらつくような処理に対して、処理特性を基板径方向で均一にする、などの対応をおこなうことが可能となる。たとえば、上記のように、エッチング処理におけるエッチング深さや、アッシング処理による除去量、成膜処理における膜厚などの面内分布均一性を向上することができる。
【0033】
(12)本発明のプラズマ処理方法は、上記(6)または(7)において、
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.5:0.5 ~ 0.1:0.9
の範囲となるように設定し、前記プロセスガスがSiF4/O2ガスの成膜処理と、
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.75:0.25 ~ 0.25:0.75
の範囲となるように設定し、前記プロセスガスがC4F8ガスの成膜処理と、
前記電力分配器によって、前前記第一電極に分配する交流電力Winnerと前記第二電極に分配する交流電力Wouterとの分配比を、
Winner:Wouter = 0.75:0.25 ~ 0.25:0.75
の範囲となるように設定し、前記プロセスガスがSF6/SiF4/O2ガスのエッチング処理と、
を続けて真空破壊しないでおこなう。
【0034】
上記の構成によれば、同一チャンバ内において、チャンバのシール状態を維持して多段階の処理をおこなう際に、それぞれの処理工程において処理特性の面内均一性を維持しつつ、これらの処理を連続しておこなうことができる。
被処理体をエッチングするエッチング方法であって、前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターン形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する場合などにおいて、適用することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、プラズマの空間分布(配置)を異なる処理においても、それぞれ充分な程度まで変化・設定可能とすることができ、処理に必要なプラズマの空間分布(配置)と、処理に必要な電子密度等のプラズマ条件とを両立可能とすることのできるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態における外部電極他を示す模式斜視図である。
【
図3】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態におけるプラズマ生成を説明する模式断面図である。
【
図4】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態におけるプラズマ生成を説明する模式断面図である。
【
図5】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を用いたプラズマ処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図7】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図8】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図9】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図10】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるサイクルエッチングを示す工程断面図である。
【
図11】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるサイクルエッチングを示す工程断面図である。
【
図12】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるサイクルエッチングを示す工程断面図である。
【
図13】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるサイクルエッチングを示す工程断面図である。
【
図14】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるサイクルエッチングを示す工程断面図である。
【
図15】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるサイクルエッチングを示す工程断面図である。
【
図16】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるサイクルエッチングを示す工程断面図である。
【
図17】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるサイクルエッチングを示す工程断面図である。
【
図18】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるスプリットによる膜厚変化を示すグラフである。
【
図19】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるスプリットによる膜厚変化を示すグラフである。
【
図20】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるスプリットによる膜厚変化を示すグラフである。
【
図21】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるスプリットによる膜厚変化を示すグラフである。
【
図22】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるスプリットによる膜厚変化を示すグラフである。
【
図23】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例における膜厚変化を示すグラフである。
【
図24】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例における膜厚変化を示すグラフである。
【
図25】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例におけるスプリットによるエッチング変化を示すグラフである。
【
図26】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例における周波数重畳によるエッチング深さ変化を示すグラフである。
【
図27】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例における周波数重畳の有無によるエッチング深さ変化を示すグラフである。
【
図28】本発明に係るプラズマ処理方法の実施例における周波数重畳の有無によるデポ膜厚変化を示すグラフである。
【
図29】プラズマ処理装置における磁場強度分布を示す図である。
【
図30】プラズマ処理装置における磁場強度分布を示す図である。
【
図31】本発明に係るプラズマ処理装置の実施例における磁場強度分布を示す図である。
【
図32】本発明に係るプラズマ処理装置の実施例における磁場強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるプラズマ処理装置を示す模式断面図である。
図2は、本実施形態におけるプラズマ処理装置の外部電極および電源等を示す模式斜視図である。
図2においては、
図1の装置で、径方向に内周側である中央部と外周部とに2つのスパイラル状電極を配置し、径方向でこれらの間にさらに3つ目のスパイラル状電極を配置し、これら3つの各電極にそれぞれ電源を接続する位置を示している。図において、符号10は、プラズマ処理装置である。
【0038】
本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、
図1,
図2に示すように、たとえば排気手段(減圧手段)TMPにより減圧可能なチャンバ11内において被処理体(シリコン基板)Sに対してプラズマ処理する装置である。
【0039】
プラズマ処理装置10は、密閉可能なチャンバ11と、平板状の内部電極(基板の支持手段)12と、上蓋13と、螺旋状の第一電極E1(アンテナAT1)と、螺旋状の第二電極E2(アンテナAT2)と、螺旋状の第三電極E3(アンテナAT3)と、ガス導入口14と、ガス導入口15と、ガス導入手段(不図示)と、電力分配器16と、高周波電源(プラズマ生成電源)17と、高周波電源(プラズマ加熱電源)18と、高周波電源(バイアス電源)19と、を備えている。なおここで螺旋状とは1ターンのみの同心円形状のものも含む。
【0040】
内部電極(支持手段)12は、チャンバ11内に配され、被処理体Sを載置する。高周波電源(第三の高周波電源)19は、内部電極12に対して、周波数(第三の周波数)λ3のバイアス電力を印加可能である。
螺旋状の第一電極E1(外部電極;アンテナAT1)と、螺旋状の第二電極E2(外部電極;アンテナAT2)と螺旋状の第三電極E3(外部電極;アンテナAT3)とは、いずれもチャンバ11の外部に配される。
【0041】
螺旋状の第一電極E1と螺旋状の第二電極E2と螺旋状の第三電極E3とは、チャンバ11の上蓋13を形成する石英等の誘電体板を挟んで、内部電極12と対向するように配置される。螺旋状の第一電極E1は上蓋13に沿って中央部に配置され、螺旋状の第二電極E2は上蓋13に沿って第二電極E2より外周部に配置される。螺旋状の第三電極E3は、チャンバ11の径方向において、螺旋状の第一電極E1と螺旋状の第二電極E2とに挟まれた間の位置に配置される。
プラズマ処理装置10では、ガス導入手段100がチャンバ11に接続されている。
【0042】
プラズマ処理装置10において、第一電極E1と第二電極E2とは同じ周波数λ1が印加される。第一電極E1と第二電極E2とは印加する周波数λ1に比べて、第三電極E3は印加する周波数λ2は低く設定される。第一電極E1と第二電極E2とは印加する周波数λ1は高い方の電極であり、第三電極E3は印加する周波数λ2が低い方の電極である。すなわち、プラズマ処理装置10では、第一の周波数λ1と第二の周波数λ2が、λ1>λ2の関係にある。
【0043】
高周波電源(第一の高周波電源)17は、第一電極E1と第二電極E2とに対して、周波数(第一の周波数)λ1の交流電力を印加可能である(
図1)。第一電極E1は、螺旋状の内周端に配置され、第一の高周波電源17から高周波電力を印加する第一の部位と、螺旋状の外周端に配置され、アースに接地される第二の部位とを有する(
図2)。第一の部位は、チャンバ11の径方向における中心に近接する。第二の部位は、第三電極E3に近接する。
【0044】
第二電極E2は、螺旋状の内周端に配置され、第一の高周波電源17から高周波電力を印加する第三の部位と、螺旋状の外周端に配置され、アースに接地される第四の部位とを有する(
図2)。第三の部位は、第三電極E3に近接する。第四の部位は、チャンバ11の径方向における最外周に近接する。
【0045】
高周波電源(第二の高周波電源)18は、第三電極E3に対して、周波数(第二の周波数)λ2の交流電力を印加可能である(
図1)。第三電極E3は、螺旋状の内周端に配置され、第二の高周波電源18から高周波電力を印加する第五の部位と、螺旋状の外周端に配置され、アースに接地される第六の部位とを有する(
図2)。第五の部位は、第一電極E1に近接する。第六の部位は、第二電極E2に近接する。
【0046】
第一の高周波電源17は、第一電極E1および第二電極E2に対して、電力分配器16を介して第一の周波数λ1の交流電力を印加する。電力分配器16は、第一の高周波電源17に接続され、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比を設定可能である。電力分配器16は、可変コンデンサー等を備えており、供給する電力の分配比を設定可能な構成とされる。
第二の高周波電源18は、第三電極E3に対して、第二の周波数λ2の交流電力を印加する。
【0047】
プラズマ処理装置10においては、ガス導入手段100が上蓋13の中央部、または、チャンバ11の側壁部に接続される(
図1)。プラズマ処理装置10におけるガス導入手段100は、チャンバ11の側壁部に配されたガス導入口14、または、上蓋13の中央部に配されたガス導入口15から、チャンバ11内に所定のプロセスガスGを導入する。ガス導入手段100は、チャンバ11内に導入するプロセスガスGを、プロセスに対応して異なる種類のガスとして、切り替えて供給可能である。なお、ガス導入手段100は、チャンバ11内に導入するプロセスガスGとして、単一種類のガス、または複数種類を混合したガスを所定の流量比で供給することも可能である。
【0048】
ここで、ガス導入手段100は、チャンバ11内に導入するプロセスガスGとして、異なるプラズマ処理に対応して、それぞれ異なるガスを供給することも可能である。ガス導入口14とガス導入口15との、どちらを選択するかは、供給するガスの特性、プラズマ生成における特性、プラズマの空間分布、成膜等の処理特性によって、設定することが可能である。さらに、ガス導入口14とガス導入口15との両方からガスを供給するとともに、その分配比や組成比等を調整するように制御することもできる。
【0049】
プラズマ処理装置10は、チャンバ11内において、チャンバ11の上蓋13側、かつ、内部電極12と対向する位置に、スパッタリング用の固体ソース20を有する。特に、プラズマ処理装置10では、固体ソース20の配置される領域が外周側に配された第二電極E2と重なる位置に設けられている。
【0050】
プラズマ処理装置10では、チャンバ11内において、固体ソース20aの配置される領域が、第一電極E1と第三電極E3と第二電極E2と重なる位置にあり、かつ、内部電極12を覆うように配置されている。固体ソース20aはチャンバ11の上蓋13と別体として設けられている。
【0051】
本実施形態におけるガス導入手段100からプロセスガスをチャンバ11内に供給する際、減圧手段TMPによってチャンバ11内を減圧することができる。減圧手段TMPはチャンバ11内を排気する際にも用いることができる。
【0052】
プラズマ処理装置10におけるプラズマ処理では、ガス導入手段100により、ガス導入口15からチャンバ11内に所定のプロセスガスGを導入する。
プラズマ処理装置10においては、第一電極E1と第二電極E2とによって、チャンバ11内の上蓋13側に形成領域が規定された磁場が生じるとともに、チャンバ11内での空間分布が規制された磁場が生じる。また、第三電極E3によってプラズマPを加熱して電子密度を上昇可能な磁場が発生する。
これらの、第一電極E1および第二電極E2と、第三電極E3と、によって周波数の異なる電力により形成されるそれぞれの磁場は重畳される。
【0053】
プラズマ処理装置10においては、第一電極E1と第二電極E2とによって形成された磁場により、チャンバ11内の上蓋13側に形成領域が規定されるとともに、チャンバ11内での空間分布が規制されたプラズマPが生じる。また、第三電極E3によって形成された磁場により、プラズマPが加熱され電子密度を上昇させる。
【0054】
ここで、プラズマ処理装置10におけるプラズマ処理では、第一の高周波電源17によって、第一電極E1および第二電極E2に対して、第一の周波数λ1の交流電力を印加する。これにより、チャンバ11内でプラズマPを発生させる。
第一の高周波電源17が高周波電力を出力すると、第一の高周波電源17の出力した第一の周波数λ1の高周波電力は、2つのアンテナである第一電極E1および第二電極E2からなる並列回路に同時に供給される。この際、アンテナ用のマッチングボックスM/Bは、第1 マッチング回路によって、第一電極E1の出力インピーダンスと、第二電極E2を含む負荷の入力インピーダンスとを整合させる。
【0055】
また、アンテナ用のマッチングボックスM/Bのマッチング回路によって、第一の高周波電源17の出力インピーダンスと、第一電極E1および第二電極E2を含む負荷の入力インピーダンスとを整合させる。
同時に、電力分配器16の出力用可変コンデンサーが、第一電極E1側に流れる電流量と、第二電極E2側に流れる電流量とを所定の分配比として設定する。
【0056】
このとき、第一の高周波電源17から第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比を設定することで、プラズマPの発生する領域およびその空間分布を設定可能である。
ここで、電力分配器16が、第一電極E1および第二電極E2によって形成される磁場の空間分布は、三電極E3によって形成された磁場の空間部能と一致するように設定することもできる。あるいは、生成したプラズマPによっておこなうプラズマ処理に求められる特性分布に応じて、電力分配器16が、これらの周波数の異なる磁場の重畳状態を制御することが可能である。
【0057】
図3は、本実施形態におけるプラズマ処理方法におけるプラズマ生成を説明する模式断面図である。
具体的には、
図3に示すように、電力分配器16が、第一の高周波電源17から第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比として、第二電極E2よりも第一電極E1に印加する第一の周波数λ1の交流電力を大きくすると、第二電極E2の下側の空間に比べて、第一電極E1の下側の空間に発生するプラズマPの強度が強くなる。この状態を
図3にP1で示す。つまりプラズマP1は、主にチャンバ11の径方向における外周側に発生することになる。
ここで、発生するプラズマPの強度が強くなるとは、プラズマPの密度が増大すること、および/または、プラズマPの発生する領域が大きくなること、を意味する。
【0058】
これに対して、
図3に示すように、電力分配器16が、第一の高周波電源17から第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比として、第一電極E1よりも第二電極E2に印加する第一の周波数λ1の交流電力を大きくすると、第一電極E1の下側の空間に比べて、第二電極E2の下側の空間に発生するプラズマPの強度が強くなる。この状態を
図3にP2で示す。つまりプラズマP2は、主にチャンバ11の径方向における中央側に発生することになる。
【0059】
さらに、
図3に示すように、電力分配器16が、第一の高周波電源17から第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比として、第一電極E1と第二電極E2とに印加する第一の周波数λ1の交流電力を略均等に分配すると、第一電極E1の下側の空間と第二電極E2の下側の空間とで発生するプラズマPがほぼ均一に分布する。この状態を
図3にP3で示す。つまりプラズマP3は、チャンバ11の径方向においてほぼ均等に発生することになる。
【0060】
ここで、プラズマPの発生領域は、電力分配器16によって、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比にのみによって設定されるものではなく、供給するプロセスガスGによっても、その空間分布が変化する。
これは、プロセスガスGのガス種およびその混合比等によって、ガスの電離の容易性など、といったガス特性などが異なることに起因する。
【0061】
例えば、電力分配器16が、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比を等しくした場合でも、径方向中央部よりも外周側で電子密度が上がらない、解離しにくいなどの特性を有するガスであれば、プラズマP2のようにチャンバ11の径方向における中央側に発生しやすくなる。
【0062】
また、電力分配器16が、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比を等しくした場合でも、径方向外周部よりも中央側で電子密度が上がらない、解離しにくいなどの特性を有するガスであれば、プラズマP3のようにチャンバ11の径方向における外周側に発生しやすくなる。
【0063】
つまり、第一電極E1と第二電極E2とで挟まれる方向において、その周辺の領域も含んで、供給するプロセスガスのガス種および供給状態によってプラズマPの発生する領域の傾向が異なる場合でも、電力分配器16が、いわゆるRFスプリッタとして、第一の高周波電源17から第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比を設定することで、プラズマPの発生する領域のバラツキおよびプラズマ強度空間配置のバラツキを制御可能である。
【0064】
さらに、プラズマ処理装置10におけるプラズマ処理では、上述したように、電力分配器16が、第一の高周波電源17から第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比を設定することで、プラズマPの発生する空間分布を所定の状態にした上で、第二の高周波電源18によって、第三電極E3に対して第二の周波数λ2の交流電力を印加する。これにより、プラズマPの電子密度を上昇させ、単体ではプラズマ生成ができない第二の周波数λ2の交流電力を印加した第三電極E3を、生成したプラズマPに対する電子振動印加を可能な構成として、プラズマにおける温度状態を高め、プラズマ処理における反応性等の処理特性を必要な状態に設定することができる。
【0065】
図4は、本実施形態におけるプラズマ処理方法におけるプラズマ生成を説明する模式断面図である。
具体的には、
図4にPPで示すように、第二の高周波電源18によって、第三電極E3に第二の周波数λ2の交流電力を印加することで、発生しているプラズマPをさらに加熱して、プラズマの電子密度を増大する。
これにより、前記チャンバの径方向中央部よりも外周側で電子密度が上がらない、解離しにくいプロセスガスといった特性を有するプロセスガスを用いた処理をおこなう場合でも、充分な処理をおこなうことが可能となる。
しかも、プラズマ分布は、電力分配器16が、第一の高周波電源17から第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比を設定することでプラズマPの発生する空間分布を所定の状態にしているので、電子密度のみを独立に設定することが可能となる。
【0066】
さらに、本実施形態におけるプラズマ処理装置10は、プラズマ処理方法として、基板Sとして、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、MoSi基板やSiC基板等のシリサイド基板、樹脂等の基板を用いて、ドライエッチング工程やこれに付随したデポ(成膜)工程、アッシング工程、さらに、成膜工程に続いておこなうエッチング工程など、上記の基板Sに対する複数のプラズマ処理工程を連続しておこなう工程等に用いることが可能である。
【0067】
具体的には、シリコン基板に対して、フッ素化合物を使用したエッチングであるドライエッチング工程、デポ工程として、CHF3、C2F6、C2F4、またはC4F8などの過フッ化炭化水素ガスを用いた異方性プラズマ処理、O2ガスを供給したアッシング工程、エッチングガスとしてSF6又はNF3を使用し、エッチングガスにケイ素化合物としてSiF4を、反応体としてO2、N2、N2O、NO、NOxまたはCO2を添加して、ホール等の底部を集中的にエッチングする工程、などを例示できる。
【0068】
しかも、エッチング処理と、異なるガス種による複数段の成膜とを、連続的、または、断続的におこなう処理など、エッチング深さ、それぞれの成膜速度という面内均一性を維持しにくい処理を続けておこなう際に、電力分配器16によって第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の分配比を、処理特性の面内分布を均一化するように、供給ガスに対応して変化させることで、基板処理面に沿った処理均一性を実現できる。
【0069】
さらに、異なるガス種を供給する連続したあるいは断続的な複数段のプラズマ処理において、第三電極E3に印加する交流電力を変化させることで、プラズマ温度を制御して、基板処理面に沿った処理特性の均一性を実現してもよい。
【0070】
例えば、第一の高周波電源17によって、第一電極E1および第二電極E2に対して、印加する交流電力において、第一の周波数λ1を10MHz~100MHzの範囲とし、特に、13.56MHzとすることができる。これにより、チャンバ11内に供給するプロセスガスGに対してプラズマの着火を可能とし、かつ、プラズマPの発生する空間分布領域などのプラズマ状態を設定することが可能となる。これにより、第一の周波数λ1の交流電力を、プラズマ生成のための電力とする。
また、第二の高周波電源18によって、第三電極E3に対して、印加する交流電力において、第二の周波数λ2を0.1MHz~10MHzの範囲とし、特に、2MHzとすることができる。これにより、プラズマのさらなる励起を可能として、電子エネルギー確率関数を増加させて電子密度を上昇させることができる。
【0071】
このように、いわゆるボッシュ法に準じた方法によってシリコン基板に凹部を形成するなど、複数のプラズマ処理工程をおこなう際、さらにこの複数回の工程を1サイクルとして繰り返す場合など、特に、それぞれの工程で異なる処理ガスを用いる場合に、それぞれの処理におけるプラズマ処理の面内均一性を維持するなど、処理特性を所望の状態に設定することが可能である。
しかも、それぞれの工程において、個別にプラズマ温度を設定すること、個別にプラズマ分布を設定することで、深度到達性など、好ましい処理状態を維持することが可能となる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0073】
ここで、本発明におけるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法の確認試験としての具体例として、シリコンのデポ・エッチングのサイクル工程について説明する。
図5は、本実施例におけるサイクル工程としてのエッチング方法を示すフローチャートである。
【0074】
この本実施例に係るエッチング方法は、シリコン基板Sを被処理体として、樹脂等のレジストを保護しつつエッチングをおこなうシリコンのドライエッチング方法である。なお、レジストを保護しつつエッチングをおこなうエッチング方法であれば、これに限定されない。
【0075】
本実施形態に係るシリコンのドライエッチング方法は、
図5に示すように、複数サイクルの工程により、シリコン基板Sの表面に凹部パターンVSおよび凹部パターンVLを形成する(
図6~
図11参照)。
凹部パターンVSは、径寸法ΦSを有する。凹部パターンVLは、径寸法ΦLを有する。径寸法ΦLは、径寸法ΦSよりも大きく設定されてもよい。
【0076】
凹部パターンVSと凹部パターンVLとの深さは等しく設定される。
凹部パターンVSと凹部パターンVLとは、例えば4~8程度、より好ましくは、8~14程度の高アスペクト比である形状に形成される。
なお、凹部パターンVSと凹部パターンVLとは、シリコン基板Sを貫通していることもできる。
【0077】
本実施例に係るシリコンのドライエッチング方法は、
図5に示すように、前工程S01と、レジストパターン形成工程S02と、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、深さ判断工程S06aと、レジスト保護判断工程S06と、レジスト保護膜形成工程S07と、後工程S08と、を有する。
6と、レジスト保護膜形成工程S07と、後工程S08と、を有する。
【0078】
図5に示す前工程S01では、公知のランプヒータ等を用いた200℃以上の熱処理として、シリコン基板Sの前処理をおこなう。
【0079】
図6は、本実施例におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示すレジストパターン形成工程S02では、
図6に示すように、シリコン基板Sの表面にパターンを有するレジスト層(マスク層)Mを形成する。
レジスト層(マスク層)Mは、公知の樹脂レジストから形成することができる。ポジ型、ネガ型、露光波長などの選択、塗布方法、成膜方法等、これらの条件を適宜選択して所定の厚さに形成することができる。レジスト層(マスク層)Mを構成する材質は、一例として、感光性絶縁体、その他公知のものを挙げることができる。
【0080】
さらに、レジストパターン形成工程S02では、
図6に示すように、レジスト層(マスク層)Mにシリコン基板Sにおける凹部パターンVSの形状に対応するように処理領域を設定する開口パターン(マスクパターン)MSと、凹部パターンVLの形状に対応するように処理領域を設定する開口パターン(マスクパターン)MLと、を形成する。
具体的には、レジストパターン形成工程S02では、フォトレジストであるレジスト層(マスク層)Mを積層して、露光現像等の処理をおこない、さらに、ウェットエッチング処理、ドライエッチング処理等公知の処理をおこなうことで、開口パターンMSと開口パターンMLとを有するレジスト層(マスク層)Mを形成する。
【0081】
図7は、本実施例におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示すデポ工程S03は、ドライエッチング工程S04において、凹部パターンVSと凹部パターンVLとの側壁をエッチングから保護することができるように、
図7に示すように、シリコン基板S全面にフルオロカーボン等のポリマーからなるデポ層D1を異方性プラズマ処理により形成する。
【0082】
デポ層D1は、フッ素化合物を使用したエッチングであるドライエッチング工程S04において、垂直な側壁VSq、VLqを達成するために、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqをエッチングから保護するとともに、エッチングを凹部パターンVS,VLの底部VSb,VLbに限定する。
【0083】
デポ層D1は、レジスト層(マスク層)Mの表面および凹部パターンVS,VLの底部VSb,VLbに積層する。また、
図7においては、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqにおいてはデポ層D1を示しているが、実際にはあまり積層されない。
【0084】
デポ工程S03は、CHF
3、C
2F
6、C
2F4、またはC
4F
8などの過フッ化炭化水素ガスを用いて、プラズマ処理をおこなう。ここで、上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10を用いる。
【0085】
デポ工程S03のとき、プラズマ処理装置10においては、第一電極E1および第二電極E2に印加する高周波電力の周波数λ1が、第三電極E3に印加する高周波電力の周波数λ3に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ1が13.65MHzとされ、周波数λ2が2MHzとされることができる。デポ工程S03においては、周波数λ1および周波数λ2の電力のいずれも電源17,18が出力可能な最大値とし、レートを向上させることができる。
【0086】
また、デポ工程S03でのプラズマ処理装置10においては、第一電極E1および第二電極E2に印加する高周波の周波数λ1である交流電力を、後述するドライエッチング工程S04およびアッシング工程S05における値よりも小さく設定することができる。また、プラズマ処理装置10においては、内部電極12に対して、バイアス電圧を印加しないことができる。
デポ工程S03においては、所定の雰囲気圧力として処理をおこなう。さらに、デポ工程S03においては、Arなどの希ガスを所定量添加してもよい。
【0087】
また、デポ工程S03においては、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、デポ層D1の成膜レートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類および成膜レートのバラツキに応じて設定される。
【0088】
デポ工程S03で形成されるデポ層D1は、径寸法の小さい開口パターンMSに対応する底部VSbに比べて、径寸法の大きい開口パターンMLに対応する底部VLbにおける膜厚が大きくなる。なお、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト層(マスク層)Mの表面におけるデポ層D1の膜厚に比べて、開口パターンMLの底部VLbにおけるデポ層D1の膜厚は同等かあるいは小さくなる。
【0089】
つまり、デポ層D1の膜厚は、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト層(マスク層)Mの表面におけるデポ層D1の膜厚TD1、開口パターンMLの底部VLbにおけるデポ層D1の膜厚TLD1、開口パターンMSの底部VSbにおけるデポ層D1の膜厚TSD1、の順に小さくなる。
【0090】
デポ工程S03において、上記のように条件設定をおこなうことにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb,VLbにおけるデポ層D1のデポジションカバレージをそれぞれ最適化するように制御することが可能となる。ここで、デポジションカバレージとして望ましい条件の方向は、必要な膜厚となるデポ層D1を底部VSb,VLbに積層する処理時間を短くすることである。つまり、デポ層D1を底部VSb,VLbに積層する成膜速度を増大することである。
【0091】
また、デポジションカバレージとしては、エッチング深さおよびアスペクト比に応じてデポジションカバレージを調整する。つまり、底部VSb,VLbの深さ変化に対応してアスペクト比が変化した場合でも、所望の厚さのデポ層D1を所定の積層成膜速度で成膜することを可能にする。
さらに、底部VSbに積層するデポ層D1に対する均一性および確実性と、底部VLbに積層するデポ層D1に対する均一性および確実性とを、それぞれ向上する。
【0092】
図8は、本実施例におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示すドライエッチング工程S04は、
図8に示すように、異方性プラズマエッチングにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb,VLbを掘り下げて、底部VSb1,VLb1を形成する。
【0093】
このとき、ドライエッチング工程S04における処理条件、プラズマの異方性、および、デポ工程S03によって積層したデポ層D1の膜厚差等によって、ドライエッチング工程S04において形成する開口パターンMSに対応する底部VSb1および開口パターンMLに対応する底部VLb1の深さを均一になるように設定する。
【0094】
具体的には、開口パターンMSに対応する底部VSbに積層したデポ層D1の膜厚TSD1が、開口パターンMLに対応する底部VLbに積層したデポ層D1の膜厚TLD1に比べて小さく、かつ、開口パターンMSに対応する底部VSbに対するエッチング量が、開口パターンMLに対応する底部VLbに対するエッチング量に比べて小さいために、これらが相殺されて、開口パターンMSに対応する底部VSb1の深さと開口パターンMLに対応する底部VLb1の深さとが均一になる。
【0095】
また、ドライエッチング工程S04において処理条件、プラズマの異方性、および、デポ層D1によって、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに及ぼすエッチングの影響を極めて低減させる。これにより、側壁VSq,VLqがシリコン基板Sの表面と垂直で、かつ、略面一となり凹凸のない側壁VSq,VLqを深さ方向に延長して形成する。
つまり、凹部パターンVS,VLとして均一径寸法となるように底部VSb1,VLb1を形成する。
【0096】
この形状を実現するように、ドライエッチング工程S04においては、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10を用いる。
ドライエッチング工程S04のとき、ドライエッチング工程S04プラズマ処理装置10においては、第一電極E1および第二電極E2に印加する高周波電力の周波数λ1が、第三電極E3に印加する高周波電力の周波数λ3に比べて大きく設定する。具体的には、周波数λ2が13.65MHzとされ、周波数λ3が2MHzとされることができる。
【0097】
また、ドライエッチング工程S04においては、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、デポ層D1に対するエッチングレートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類およびエッチングレートのバラツキに応じて設定される。
【0098】
また、ドライエッチング工程S04のプラズマ処理装置10においては、周波数λ1の供給電力が、デポ工程S03における値よも大きく、また、アッシング工程S05における値と同じ値に設定することができる。
【0099】
また、ドライエッチング工程S04のプラズマ処理装置10においては、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の周波数λ1の供給電力が、第三電極E3に印加する交流電力の周波数λ2よりも大きい値に設定することができる。
【0100】
また、ドライエッチング工程S04のプラズマ処理装置10においては、内部電極12に対して、周波数λ3であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ3は、第三電極E3に印加する交流電力の周波数λ2よりも低い値に設定することができる。周波数λ3は、たとえば、400kHzとすることができる。
【0101】
また、ドライエッチング工程S04における異方性プラズマエッチングでは、SF6とO2の混合ガスをプラズマ分解して、Siの異方性エッチングをおこなうものである。これにより、SF6が分解して生成するFラジカルが、Siをエッチングする(F+Si→SiF4)。このエッチング反応は、等方性エッチングのため、異方性エッチングを行うために、側壁VSq,VLqに絶縁層(保護膜)を付着させて、側壁VSq,VLqのエッチング反応を抑制してもよい。
【0102】
ドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D1が除去されて側壁VSq,VLqが露出する。
【0103】
ここで、ドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、絶縁層を形成して、側壁VSq,VLqが保護されてもよい。同時に、Oによる側壁VSq,VLqの酸化と、エッチング生成物であるSiF4が再分解されたSiとOの反応によるSiOxのデポ膜の形成とによって側壁VSq,VLqが保護される。
【0104】
また、ドライエッチング工程S04では、エッチング生成物であるSiF4が不足することを防止するために、SiF4をガスとして供給することもできる。
【0105】
さらに、ドライエッチング工程S04においては、エッチングガスとしてSF6またはNF3を使用し、エッチングガスにケイ素化合物としてSiF4を、反応体としてO2、N2、N2O、NO、NOxまたはCO2を添加して、底部VSb,VLbを集中的にエッチングすることができる。
さらに、ドライエッチング工程S04においては、冷媒経路を内部に有した静電チャックを内部電極12に用いて処理中の基板温度を低温にすることで異方性を高めることができる。例えば、冷媒温度は10℃以下に設定される。
【0106】
図9は、本実施例におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示すアッシング工程S05は、
図9に示すように、ドライエッチング工程S04の終了後において、残存したデポ層D1を除去する。
特に、アッシング工程S05においては、レジスト層(マスク層)Mの開口パターンMSおよび開口パターンMLの内周付近に残存したデポ層D1を確実に除去するように、その条件が設定される。
【0107】
アッシング工程S05においては、ドライエッチング工程S04の終了した後に、レジスト層(マスク層)Mの表面に付着しているデポ層D1と、レジスト層(マスク層)Mの開口パターンMSおよび開口パターンMLの内周付近に残存したデポ層D1と、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに残存したデポ層D1と、を除去する。また、開口パターンMSに対応する底部VSb1に残存したデポ層D1と、開口パターンMLに対応する底部VLb1に残存したデポ層D1とがあった場合には、これを除去する。
【0108】
アッシング工程S05において、開口パターンMSの内周位置に残存したデポ層D1と、開口パターンMLの内周位置に残存したデポ層D1と、が除去しきれずに残存していた場合、好ましくない。
すなわち、複数の繰り返しサイクルにおける後工程である、次回以降のサイクルのデポ工程S03において、残存したデポ層D1にさらにデポ層D2が堆積してしまい、レジスト層(マスク層)Mにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が減少してしまう。
【0109】
すると、繰り返しサイクルの1サイクル目のアッシング工程S05に対して、その後工程である2サイクル目のドライエッチング工程S04において、異方性を強めたエッチングをおこなっても、デポ層D1およびデポ層D2によって底部VSb1および底部VLb1までエッチングプラズマが到達することが阻害される。したがって、底部VSb1および底部VLb1におけるエッチングが好適におこなわれない可能性がある。このため、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直ではなくなり、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまう可能性を排除できなくなる。
【0110】
これに対して、開口パターンMSの内周位置にデポ層D1が残存せず、また、開口パターンMLの内周位置にデポ層D1が残存しない状態にした場合には、繰り返しサイクルの後工程である次回以降のサイクルとして、次の2サイクル目となるデポ工程S03において、残存したデポ層D1にさらにデポ層D2が堆積することがなく、レジスト層(マスク層)Mにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が所定の大きさを維持している状態に維持することができる。
【0111】
すると、繰り返しサイクルのうち、次のサイクルである2サイクル目のドライエッチング工程S04において、後工程として異方性を強めたエッチングをおこなうことで、デポ層D1およびデポ層D2によって底部VSb1および底部VLb1までエッチングプラズマが到達することが阻害されない。したがって、底部VSb1および底部VLb1におけるエッチングが好適におこなわれて、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直な状態で伸長され、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまうことを防止して、同径の凹部パターンVS,VLを高アスペクト比で形成することが可能となる。
【0112】
1サイクル目のアッシング工程S05において、上記のように、開口パターンMSとMLとの内周位置に残存したデポ層D1を確実に除去するために、使用ガスO
2の解離度の高いプラズマ処理をおこなう必要がある。このために、1サイクル目のアッシング工程S05においても、上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10を用いる。
【0113】
このとき、1サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電圧の周波数λ1が、第三電極E3に印加する交流電圧の周波数λ2に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ1が13.65MHzとされ、周波数λ2が2MHzとされることができる。
【0114】
また、アッシング工程S05においては、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、デポ層D1に対するアッシングレートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類およびアッシングのバラツキに応じて設定される。
【0115】
また、1サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の供給電力が、デポ工程S03における値よも大きく、また、ドライエッチング工程S04における値と同じか高い値に設定することができる。
【0116】
また、1サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の供給電力が、第三電極E3に印加する周波数λ2の供給電力と同じ値に設定することができる。
【0117】
また、1サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、内部電極12に対して、周波数λ3であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ3は、第三電極E3に印加する高周波の周波数λ2よりも低い値に設定することができる。1サイクル目のアッシング工程S05におけるバイアス電圧の電力は、1サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力と等しいか、1サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力よりも高く設定することができる。
【0118】
1サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングすることができる。O2ガス系異方性プラズマ処理では、開口パターンMS,MLの内周付近、および開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D1が確実に除去されて側壁VSq,VLqが露出する。同時に、1サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングするため、この工程では、樹脂からなるレジスト層(マスク層)Mが、多少除去されて減厚されることもある。
【0119】
本実施例に係るシリコンのドライエッチング方法は、
図5に示すように、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、を1サイクルとして繰り返す。これにより、凹部パターンVS,VLの深さを長くする。
また、1サイクル目のデポ工程S03~アッシング工程S05のエッチング工程が終了した際に、
図5に示すように、深さ判断工程S06aと、レジスト保護判断工程S06を有する。
【0120】
深さ判断工程S06aにおいては、次のレジスト保護判断工程S06へと進むか否かを判断する。このとき、深さ判断工程S06aにおける判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さ、言い換えると、凹部パターンVS,VLのアスペクト比である。
凹部パターンVS,VLの深さが足りない場合、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを重ねるために、まず、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むか否かを判断するために、レジスト保護判断工程S06へと進む。また、凹部パターンVS,VLの深さが足りている場合、エッチングを終了して、後工程S08へと進む。
【0121】
レジスト保護判断工程S06においては、次サイクルのエッチングサイクルへとサイクル数を重ねるか、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むか否かを判断する。
ここで、レジスト保護判断工程S06における判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さである。
【0122】
凹部パターンVS,VLの深さが足りない場合、後述するレジスト保護膜形成工程S07においてレジスト保護膜Mmを形成した場合に不具合が生じるからである。具体的には、後述するレジスト保護膜形成工程S07において、レジスト層(マスク層)Mの表面のみならず、開口パターンMS,MLの底部VSb,VLbにレジスト保護膜Mmを形成が形成されてしまう。開口パターンMS,MLの底部VSb,VLbにレジスト保護膜Mmが形成された場合、底部VSb,VLbでのエッチングが進行しないなど、エッチングに好ましくない影響を与える可能性がある。
【0123】
レジスト保護判断工程S06における判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さ、言い換えると、凹部パターンVS,VLのアスペクト比である。具体的には、凹部パターンVS,VLのアスペクト比が例えば1~2程度である場合には、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを進め、凹部パターンVS,VLのアスペクト比が3~4程度である場合には、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進める。つまり、凹部パターンVS,VLの開口面積と、1サイクル目のエッチング工程における底部VSb,VLbのエッチング量と、に基づいて判断をおこなうことになる。
【0124】
なお、レジスト保護判断工程S06における判断は、前工程である1サイクル目後に、シリコン基板Sにおいて、凹部パターンVS,VLの深さを測定した結果から判断してもよいし、前工程におけるエッチング条件から類推して2サイクル目への移行を判断してもよい。エッチング条件による判断では、あらかじめ、所定の条件によるエッチング深さを設定して判断することになる。
【0125】
次に、2サイクル目にサイクルを進めた場合について説明する。
【0126】
図10は、本実施例におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示す2サイクル目のデポ工程S03は、1サイクル目の深さ判断工程S06aおよびレジスト保護判断工程S06による判断後におこなわれる。2サイクル目のデポ工程S03は、2サイクル目における後工程のドライエッチング工程S04において、凹部パターンVSと凹部パターンVLとの側壁をエッチングから保護可能とする。2サイクル目のデポ工程S03は、
図10に示すように、シリコン基板S全面にフルオロカーボン等のポリマーからなるデポ層D2を異方性プラズマ処理により形成する。
【0127】
デポ層D2は、2サイクル目における後工程として、フッ素化合物を使用したエッチングであるドライエッチング工程S04において、垂直な側壁MSq、MLqを達成するために、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqをエッチングから保護するとともに、エッチングを凹部パターンVS,VLの底部VSb1,VLb1に限定する。
【0128】
デポ層D2は、レジスト層(マスク層)Mの表面および凹部パターンVS,VLの底部VSb1,VLb1に積層する。また、
図10においては、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqにおいてはデポ層D2を示しているが、実際にはあまり積層されない。
【0129】
2サイクル目のデポ工程S03は、1サイクル目のデポ工程S03と同様に、過フッ化炭化水素ガスを用いて、異方性プラズマ処理をおこなう。2サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目のデポ工程S03と同様、上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10を用いる。
【0130】
2サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、印加周波数λ1および周波数λ2、雰囲気圧力などの条件を、1サイクル目のデポ工程S03と同様に設定することができる。ここで、2サイクル目以降のデポ工程S03における処理条件は、1サイクル目のデポ工程S03と同じであっても、異なる設定としてもよい。
【0131】
また、2サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目のデポ工程S03と同様に、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、デポ層D2に対する成膜レートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類および成膜レートのバラツキに応じて設定される。また、2サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目のデポ工程S03と同じ分配比とすることもできるし、異なる分配比とすることもできる。
【0132】
なお、2サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目のデポ工程S03と同等の設定とすることもできるが、凹部パターンVS,VLの底部VSb1,VLb1へのデポジションレートの低下に対応するため、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力または第三電極E3に印加する周波数λ2の交流電力、もしくはその両方を増大させてもよく、あるいは、デポジション粒子を引き込むため、内部電極12にバイアス電圧を印加する条件とすることができる。
【0133】
2サイクル目のデポ工程S03で形成されるデポ層D2は、1サイクル目のデポ工程S03と同様に、径寸法の小さい開口パターンMSに対応する底部VSbに比べて、径寸法の大きい開口パターンMLに対応する底部VLbにおける膜厚が大きくなる。なお、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト層(マスク層)Mの表面におけるデポ層D2の膜厚に比べて、開口パターンMLの底部VLbにおけるデポ層D2の膜厚は同等かあるいは小さくなる。
【0134】
つまり、デポ層D3の膜厚は、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト層(マスク層)Mの表面におけるデポ層D2の膜厚TD2、開口パターンMLの底部VLb1におけるデポ層D2の膜厚TLD2、開口パターンMSの底部VSb1におけるデポ層D2の膜厚TSD2、の順に小さくなる。
【0135】
2サイクル目のデポ工程S03において、上記の条件設定により、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb1,VLb1におけるデポ層D2のデポジションカバレージをそれぞれ最適化するように制御する。ここで、デポジションカバレージとして望ましい条件の方向は、必要な膜厚となるデポ層D2を底部VSb1,VLb1に積層する処理時間を短くすることである。つまり、デポ層D2を底部VSb1,VLb1に積層する成膜速度を増大することである。
【0136】
2サイクル目のデポ工程S03において、デポジションカバレージとして望ましい条件としては、エッチング深さおよびアスペクト比に対応してデポジションカバレージを調整することである。つまり、後述するように、底部VSb,VLbからの底部VSb1,VLb1の深さ変化に対応してアスペクト比が変化した場合でも、所望の厚さのデポ層D2を所定の積層成膜速度で成膜可能とする。
【0137】
さらに、底部VSb1に積層するデポ層D2に対する均一性および確実性と、底部VLb1に積層するデポ層D2に対する均一性および確実性とを、向上することである。
さらに、2サイクル目のデポ工程S03において、1サイクル目のデポ工程S03に対して、長い時間とすることができる。なお、3サイクル目以降のデポ工程S03においても同様である。
【0138】
図11は、本実施例におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示す2サイクル目のドライエッチング工程S04は、
図11に示すように、異方性プラズマエッチングにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb1,VLb1を掘り下げて、底部VSb2,VLb2を形成する。
【0139】
このとき、2サイクル目のドライエッチング工程S04における処理条件、プラズマの異方性、および、2サイクル目のデポ工程S03によって積層したデポ層D2の膜厚差等によって、2サイクル目のドライエッチング工程S04において形成する開口パターンMSに対応する底部VSb2および開口パターンMLに対応する底部VLb2の深さを均一になるように設定する。
【0140】
具体的には、開口パターンMSに対応する底部VSb1に積層したデポ層D2の膜厚TSD2が、開口パターンMLに対応する底部VLb1に積層したデポ層D2の膜厚TLD2に比べて小さく、かつ、開口パターンMSに対応する底部VSb1に対するエッチング量が、開口パターンMLに対応する底部VLb1に対するエッチング量に比べて小さいために、これらが相殺されて、開口パターンMSに対応する底部VSb2の深さと開口パターンMLに対応する底部VLb2の深さとが均一になる。
【0141】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04において処理条件、プラズマの異方性、および、デポ層D2によって、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに及ぼすエッチングの影響を極めて低減させる。これにより、側壁VSq,VLqがシリコン基板Sの表面と垂直で、かつ、略面一となり凹凸のない側壁VSq,VLqを深さ方向に延長して形成する。
つまり、凹部パターンVS,VLとして均一径寸法となるように底部VSb2,VLb2を形成する。
【0142】
この形状を実現するように、2サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理に強い異方性を持たせる。2サイクル目のドライエッチング工程S04は、後述するプラズマ処理装置10を用いる。
このとき、2サイクル目のドライエッチング工程S04におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様の条件とすることができる。
【0143】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、エッチングレートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類およびエッチングレートのバラツキに応じて設定される。また、2サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同じ分配比とすることもできるし、異なる分配比とすることもできる。
【0144】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、2サイクル目のデポ工程S03における値よも大きく、また、2サイクル目のアッシング工程S05における値と同じ値に設定することができる。
【0145】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、第三電極E3に印加する高周波の周波数λ2の供給電力と同じ値に設定することができる。
【0146】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、内部電極12に対して、周波数λ3であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ3は、第三電極E3に印加する周波数λ2よりも低い値に設定することができる。周波数λ3は、たとえば、400kHzとすることができる。
【0147】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04における異方性プラズマエッチングでは、1サイクル目と同様に、SF6とO2の混合ガスをプラズマ分解して、Siの異方性エッチングをおこなうものである。これにより、SF6が分解して生成するFラジカルが、Siをエッチングする(F+Si→SiF4)。このエッチング反応は、等方性エッチングのため、異方性エッチングを行うために、側壁VSq,VLqに保護膜を付着させており、側壁VSq,VLqのエッチング反応を抑制してもよい。
【0148】
2サイクル目のドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D2が除去されて側壁VSq,VLqが露出する。
【0149】
ここで、2サイクル目のドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、絶縁層を形成して、側壁VSq,VLqが保護されてもよい。同時に、Oによる側壁VSq,VLqの酸化と、エッチング生成物であるSiF4が再分解されたSiとOの反応によるSiOxのデポ膜の形成とによって側壁VSq,VLqが保護される。
【0150】
また、2サイクル目のドライエッチング工程S04では、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、エッチング生成物であるSiF4が不足することを防止するために、SiF4をガスとして供給することもできる。
【0151】
さらに、2サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、エッチングガスとしてSF6又はNF3を使用し、エッチングガスにケイ素化合物としてSiF4を、反応体としてO2、N2、N2O、NO、NOxまたはCO2を添加して、底部VSb1,VLb1を集中的にエッチングすることができる。
さらに、2サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目のドライエッチング工程S04に対して、長い時間とすることもできる。なお、3サイクル目以降のドライエッチング工程S04においても同様である。
【0152】
図12は、本実施例におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示す2サイクル目のアッシング工程S05は、
図12に示すように、2サイクル目のドライエッチング工程S04の終了後において、残存したデポ層D2を除去する。
特に、2サイクル目のアッシング工程S05においては、レジスト層(マスク層)Mの開口パターンMSおよび開口パターンMLの内周付近に残存したデポ層D2を確実に除去するように、その条件が設定される。
【0153】
2サイクル目のアッシング工程S05においては、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、2サイクル目のドライエッチング工程S04の終了した後に、レジスト層(マスク層)Mの表面に付着しているデポ層D2と、レジスト層(マスク層)Mの開口パターンMSおよび開口パターンMLの内周付近に残存したデポ層D2と、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに残存したデポ層D2と、を除去する。
さらに、開口パターンMSに対応する底部VSb2に残存したデポ層D2と、開口パターンMLに対応する底部VLb2に残存したデポ層D2と、があればこれを除去する。
【0154】
ここで、最も重要なのは、開口パターンMSの内周位置に残存したデポ層D2と、開口パターンMLの内周位置に残存したデポ層D2と、を除去することである。もしも、このデポ層D2が除去しきれずに残存していた場合には、繰り返しサイクルの次のサイクルとして後工程である、次のデポ工程S05において、残存したデポ層D2にさらにデポ層D3が堆積してしまい、レジスト層(マスク層)Mにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が減少してしまう。
【0155】
すると、2サイクル目の次サイクルである後工程として、3サイクル目となるドライエッチング工程S04において、異方性を強めたエッチングをおこなっても、デポ層D2およびデポ層D3によって底部VSb1および底部VLb1までエッチングプラズマが到達することが阻害される。したがって、底部VSb1および底部VLb1におけるエッチングが好適におこなわれず、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直ではなくなり、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまう可能性を排除できなくなる。
【0156】
これに対して、開口パターンMSの内周位置にデポ層D2が残存せず、また、開口パターンMLの内周位置にデポ層D2が残存しない状態にした場合には、繰り返しサイクルの次のサイクルとして後工程である、次の3サイクル目となるデポ工程S03において、残存したデポ層D2にさらにデポ層D3が堆積することがなく、レジスト層(マスク層)Mにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が所定の大きさを維持している状態に維持することができる。
【0157】
すると、繰り返しサイクルの次のサイクルである3サイクル目のドライエッチング工程S04において、後工程として異方性を強めたエッチングをおこなうことで、デポ層D2およびデポ層D3によって底部VSb2および底部VLb2までエッチングプラズマが到達することが阻害されない。したがって、底部VSb2および底部VLb2におけるエッチングが好適におこなわれて、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直な状態で伸長され、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまうことを防止して、同径の凹部パターンVS,VLを高アスペクト比で形成することが可能となる。
【0158】
2サイクル目のアッシング工程S05において、上記のように、開口パターンMSとMLとの内周位置に残存したデポ層D2を確実に除去するために、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、プラズマ処理に強い異方性を持たせる必要がある。このために、2サイクル目のアッシング工程S05においても、上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10を用いる。
【0159】
このとき、2サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の周波数λ1が、第三電極E3に印加する交流電力の周波数λ2に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ1が13.65MHzとされ、周波数λ2が2MHzとされることができる。
【0160】
また、2サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、1サイクル目またはそれ以降のサイクルでのデポ工程S03における値よも大きく、また、2サイクル目のドライエッチング工程S04における値と同じ値に設定することができる。
【0161】
また、2サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、第三電極E3に印加する周波数λ2の交流電力と同じ値に設定することができる。
【0162】
また、2サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、内部電極12に対して、周波数λ3であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ3は、側の第三電極E3に印加する周波数λ2よりも低い値に設定することができる。周波数λ3は、たとえば、400kHzとすることができる。2サイクル目のアッシング工程S05におけるバイアス電圧の電力は、2サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力と等しいか、2サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力よりも高く設定することができる。
【0163】
また、2サイクル目のアッシング工程S05においては、1サイクル目のアッシング工程S05と同様に、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、デポ層D2に対するアッシングレートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類およびアッシングのバラツキに応じて設定される。また、2サイクル目のアッシング工程S05においては、1サイクル目のアッシング工程S05と同じ分配比とすることもできるし、異なる分配比とすることもできる。
【0164】
2サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングすることができる。O2ガス系異方性プラズマ処理では、開口パターンMS,MLの内周付近、および開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D2が確実に除去されて側壁VSq,VLqが露出する。同時に、2サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングするため、この工程では、樹脂からなるレジスト層(マスク層)Mが、多少除去されて減厚されることもある。
【0165】
2サイクル目のアッシング工程S05が終了した際に、2サイクル目のレジスト保護判断工程S06は、1サイクル目の深さ判断工程S06aおよびレジスト保護判断工程S06と同様に、次サイクルのエッチングサイクルへとサイクル数を重ねるか、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むか、後工程S08へと進むか否かを判断する。
【0166】
2サイクル目の深さ判断工程S06aにおいては、次のレジスト保護判断工程S06へと進むか否かを判断する。このとき、深さ判断工程S06aにおける判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さ、言い換えると、凹部パターンVS,VLのアスペクト比である。
凹部パターンVS,VLの深さが足りない場合、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを重ねるために、まず、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むか否かを判断するために、レジスト保護判断工程S06へと進む。また、凹部パターンVS,VLの深さが足りている場合、エッチングを終了して、後工程S08へと進む。
【0167】
2サイクル目のレジスト保護判断工程S06において、1サイクル目のレジスト保護判断工程S06と同様に、判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さ、言い換えると、凹部パターンVS,VLのアスペクト比である。
【0168】
2サイクル目のレジスト保護判断工程S06は、1サイクル目のレジスト保護判断工程S06と同様に、凹部パターンVS,VLの深さが足りている場合、および、凹部パターンVS,VLのアスペクト比が上述した範囲より大きい場合に、レジスト保護膜形成工程S07においてレジスト保護膜Mmを形成するという判断をおこなう。
つまり、凹部パターンVS,VLの開口面積と、2サイクル目のエッチング工程における底部VSb1,VLb1のエッチング量に基づいて判断をおこなうことになる。
【0169】
なお、レジスト保護判断工程S06における判断は、前工程である2サイクル目後に、シリコン基板Sにおいて、凹部パターンVS,VLの深さを測定した結果から判断してもよいし、前工程におけるエッチング条件から類推して3サイクル目への移行を判断してもよい。エッチング条件による判断では、あらかじめ、所定の条件によるエッチング深さを設定して判断することになる。
【0170】
さらに、2サイクル目のレジスト保護判断工程S06において追加される判断基準としては、2サイクル目のアッシング工程S05によるレジスト層(マスク層)Mの減厚量が所定の値より小さい場合に、次の3サイクル目のドライエッチング工程04に向けてサイクルを重ねる判断をおこなう。また、2サイクル目のレジスト保護判断工程S06における判断基準としては、2サイクル目のアッシング工程S05によるレジスト層(マスク層)Mの減厚量が所定の値より大きい場合に、2サイクル目のレジスト保護膜形成工程S07へと進む判断をおこなう。
【0171】
これは、レジスト層(マスク層)Mの減厚量が所定の値より大きい状態で、3サイクル目のエッチング工程へと進んだ場合、レジスト層(マスク層)Mの膜厚が足りなくなる可能性があり、エッチング加工による形状の正確性が維持できないためである。
【0172】
次に、レジスト保護膜形成工程S07へと進んだ場合を説明する。
【0173】
2サイクル目のレジスト保護膜形成工程S07は、
図5に示すように、3サイクル目にサイクルを進める前におこなう。
図13は、本実施例におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示すレジスト保護膜形成工程S07は、
図13に示すように、レジスト層(マスク層)Mの表面にレジスト保護膜Mmを異方性プラズマ処理により形成する。
レジスト保護膜Mmは、後工程である3サイクル目以降におけるドライエッチング工程S04およびアッシング工程S05において、レジスト層(マスク層)Mをエッチングから保護することが可能な膜である。
【0174】
レジスト保護膜形成工程S07において、デポ層D2に比べて、レジスト保護膜Mmのデポジションレートは高く設定される。デポ層D2のデポジションレートに比べて、レジスト保護膜Mmのデポジションレートは1.5倍程度高く設定される。
レジスト保護膜形成工程S07におけるプラズマCVDでは、SiF4とO2の混合ガス、または、SiCl4とO2の混合ガス、または、SiH4とO2の混合ガス、あるいは、TEOS(Tetraethyl orthosilicate , Tetraethoxysilane)等のSixOyαzを形成可能なガスによって、プラズマCVDをおこなう。これにより、SiOFの膜構成を有するレジスト保護膜Mmを形成することができる。
【0175】
ここで、レジスト保護膜形成工程S07においてSiF4とO2の混合ガスを用いた場合には、ドライエッチング工程S04で供給するガスと共通のガスであるSiF4を用いることができる。この場合、ガス供給に関する構成を共通化できるため好ましい。
【0176】
SiOF膜は、SiO2膜に似た構成となる。したがって、SiOF膜は、後工程である3サイクル目以降のデポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、においては減厚しない。
つまり、レジスト保護膜Mmは、後工程である3サイクル目以降のデポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、においてレジスト層(マスク層)Mの減厚を防止することができる。
【0177】
レジスト保護膜Mmは、異方性プラズマ処理によりレジスト層(マスク層)Mの表面に形成されるが、凹部パターンVS,VLの側壁VSq,VLqには形成されない。また、レジスト保護膜Mmは、凹部パターンVS,VLの底部VSb2,VLb2には形成されない。これは、深さ判定工程S06aおよびレジスト保護判断工程S06において凹部パターンVS,VLのアスペクト比が所定の値以上に設定されているためである。
【0178】
3サイクル目へと進む前に、はじめておこなうレジスト保護膜形成工程S07において、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10を用いる。
このとき、2サイクル目でのレジスト保護膜形成工程S07におけるプラズマ処理装置10では、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の周波数λ1が、第三電極E3に印加する交流電力の周波数λ2に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ1が13.65MHzとされ、周波数λ2が2MHzとされることができる。
【0179】
2サイクル目のレジスト保護膜形成工程S07においても、プラズマ処理装置10では、それまでの1サイクル目または2サイクル目におけるドライエッチング工程S04とアッシング工程S05と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、1サイクル目または2サイクル目のデポ工程S03における値よも大きく、また、1サイクル目または2サイクル目のドライエッチング工程S04、アッシング工程S05のいずれかにおける値と同じ値に設定することができる。
【0180】
また、2サイクル目でのレジスト保護膜形成工程S07においても、プラズマ処理装置10では、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、第三電極E3に印加する周波数λ2の交流電力と同じ値に設定されることができる。
【0181】
また、2サイクル目でのレジスト保護膜形成工程S07において、1サイクル目または2サイクル目のデポ工程S03と同様に、バイアス電圧を印加しないことができる。2サイクル目でのレジスト保護膜形成工程S07において、雰囲気圧力は、2サイクル目のドライエッチング工程S04、アッシング工程S05における値と同じ値に設定することができる。
【0182】
また、2サイクル目でのレジスト保護膜形成工程S07においては、1サイクル目または2サイクル目のデポ工程S03、ドライエッチング工程S04、アッシング工程S05のいずれかと同様に、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、レジスト保護膜Mmに対する成膜レートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類および成膜レートのバラツキに応じて設定される。また、2サイクル目でのレジスト保護膜形成工程S07においては、1サイクル目または2サイクル目のデポ工程S03、ドライエッチング工程S04、アッシング工程S05のいずれかと同じ分配比とすることもできるし、異なる分配比とすることもできる。
【0183】
SiOFという構成を有するレジスト保護膜Mmがレジスト層(マスク層)Mの表面に積層された状態として、後工程である3サイクル目以降のエッチング工程のアッシング工程S05を重ねた場合、レジスト層(マスク層)Mの消耗を抑制することができる。
【0184】
しかし、SiOFという構成を有するレジスト保護膜Mmは、後工程である3サイクル目以降のデポ工程S03におけるCF系、つまり、CHF3、C2F6、C2F4、またはC4F8などの過フッ化炭化水素ガス、あるいは、3サイクル目以降のドライエッチング工程S04におけるエッチングガスとしてSF6又はNF3を使用し、エッチングガスにケイ素化合物としてSiF4を、反応体としてO2、N2、N2O、NO、NOxまたはCO2を添加したガス、例えば、SF6とO2の混合ガスによる異方性プラズマエッチングの処理により次第に消耗していく。
【0185】
したがって、凹部パターンVS,VLが所望の深さまで、所定数のサイクルを可能なように、レジスト保護膜Mmの膜厚を設定する。このとき、径方向における膜厚のバラツキが生じていないことが重要である。
さらに、所定数のサイクル数が過ぎた場合には、後述するように、消耗したレジスト保護膜Mmの膜厚を回復するために、該当のサイクルにおいて、さらなるレジスト保護膜形成工程S07により、レジスト保護膜Mmをレジスト層(マスク層)Mの表面に再積層する。
【0186】
本実施例に係るシリコンのドライエッチング方法は、
図5に示すように、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、を1サイクルとして繰り返す。これにより、凹部パターンVS,VLの深さをさらに長くする。さらに、所定のサイクル数ごとに、つまり、所定の頻度で、レジスト保護膜形成工程S07により、レジスト保護膜Mmをレジスト層(マスク層)Mの表面に積層する。
レジスト保護膜形成工程S07に続いて、次の3サイクル目となるエッチング工程に進む。
【0187】
次に、3サイクル目にサイクルを進めた場合について説明する。
【0188】
図14は、本実施例におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示す3サイクル目のデポ工程S03は、後工程である3サイクル目のドライエッチング工程S04において、凹部パターンVSと凹部パターンVLとの側壁をエッチングから保護することができるように、
図14に示すように、レジスト保護膜Mm表面にフルオロカーボン等のポリマーからなるデポ層D3を異方性プラズマ処理により形成する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は多少減厚するが、1サイクル分としてのデポ工程S03において、レジスト保護膜Mmはほぼ残存する。
【0189】
デポ層D2は、3サイクル目における後工程として、フッ素化合物を使用したエッチングであるドライエッチング工程S04において、垂直な側壁MSq、MLqを達成するために、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqをエッチングから保護するとともに、エッチングを凹部パターンVS,VLの底部VSb2,VLb2に限定する。
【0190】
デポ層D3は、レジスト保護膜Mmの表面および凹部パターンVS,VLの底部VSb2,VLb2に積層する。また、
図14においては、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqにおいてはデポ層D3を示しているが、実際にはあまり積層されない。
【0191】
3サイクル目のデポ工程S03は、2サイクル目と同様に、CHF
3、C
2F
6、C
2F4、またはC
4F
8などの過フッ化炭化水素ガスを用いて、異方性プラズマ処理をおこなう。デポ工程S03においては、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10を用いる。
【0192】
3サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の周波数λ1が、第三電極E3に印加する交流電力の周波数λ2に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ1が13.65MHzとされ、周波数λ2が2MHzとされることができる。
このとき、1サイクル目、および/または、2サイクル目のデポ工程S03と同等の設定とすることもできる。
【0193】
3サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、印加周波数λ1および周波数λ2、雰囲気圧力などの条件を、1サイクル目または2サイクル目のいずれかにおけるデポ工程S03と同様に設定することができる。ここで、3サイクル目以降のデポ工程S03における処理条件は、1サイクル目または2サイクル目のいずれかにおけるデポ工程S03と同じであっても、異なる設定としてもよい。
【0194】
また、3サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目または2サイクル目のデポ工程S03のいずれかと同様に、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、デポ層D2に対する成膜レートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類および成膜レートのバラツキに応じて設定される。また、3サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目、および/または、2サイクル目のデポ工程S03と同じ分配比とすることもできるし、異なる分配比とすることもできる。
【0195】
また、3サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、後工程である3サイクル目のドライエッチング工程S04およびアッシング工程S05における値よりも小さく設定することができる。また、3サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10においては、内部電極12に対して、バイアス電圧を印加しないことができる。
【0196】
3サイクル目のデポ工程S03で形成されるデポ層D3は、2サイクル目のデポ工程S03と同様に、径寸法の小さい開口パターンMSに対応する底部VSb2に比べて、径寸法の大きい開口パターンMLに対応する底部VLb2における膜厚が大きくなる。なお、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト保護膜Mmの表面におけるデポ層D3の膜厚に比べて、開口パターンMLの底部VLb2におけるデポ層D3の膜厚は同等かあるいは小さくなる。
【0197】
つまり、デポ層D3の膜厚は、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト保護膜Mmの表面におけるデポ層D3の膜厚TD3、開口パターンMLの底部VLb2におけるデポ層D3の膜厚TLD3、開口パターンMSの底部VSb2におけるデポ層D3の膜厚TSD3、の順に小さくなる。
【0198】
3サイクル目のデポ工程S03において、上記のように条件設定をおこなうことにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb2,VLb2におけるデポ層D3のデポジションカバレージをそれぞれ最適化するように制御することが可能となる。ここで、デポジションカバレージとして望ましい条件の方向は、必要な膜厚となるデポ層D3を底部VSb2,VLb2に積層する処理時間を短くすることである。つまり、デポ層D3を底部VSb2,VLb2に積層する成膜速度を増大することである。
【0199】
また、3サイクル目のデポ工程S03において、デポジションカバレージとして望ましい条件としては、エッチング深さおよびアスペクト比に対応してデポジションカバレージを調整することである。つまり、後述するように、底部VSb1,VLb1からの底部VSb2,VLb2の深さ変化に対応してアスペクト比が変化した場合でも、所望の厚さのデポ層D3を所定の積層成膜速度で成膜する。
【0200】
さらに、底部VSb2に積層するデポ層D3に対する均一性および確実性と、底部VLb1に積層するデポ層D3に対する均一性および確実性とを、それぞれ向上する。
さらに、3サイクル目のデポ工程S03において、1サイクル目のデポ工程S03、および/または、2サイクル目のデポ工程S03に対して、同様におこなうことができる。
【0201】
図15は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示す3サイクル目のドライエッチング工程S04は、
図15に示すように、異方性プラズマエッチングにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb2,VLb2を掘り下げて、底部VSb3,VLb3を形成する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は多少減厚するが、1サイクル分としての3サイクル目のドライエッチング工程S04において、レジスト保護膜Mmはほぼ残存する。
【0202】
このとき、3サイクル目のドライエッチング工程S04における処理条件、電力分配比、プラズマの異方性、および、3サイクル目のデポ工程S03によって積層したデポ層D3の膜厚差等によって、このドライエッチング工程S04において形成する開口パターンMSに対応する底部VSb3および開口パターンMLに対応する底部VLb3の深さを均一になるように設定する。
【0203】
具体的には、開口パターンMSに対応する底部VSb2に積層したデポ層D3の膜厚TSD3が、開口パターンMLに対応する底部VLb2に積層したデポ層D3の膜厚TLD3に比べて小さく、かつ、開口パターンMSに対応する底部VSb2に対するエッチング量が、開口パターンMLに対応する底部VLb2に対するエッチング量に比べて小さいために、これらが相殺されて、開口パターンMSに対応する底部VSb3の深さと開口パターンMLに対応する底部VLb3の深さとが均一になる。
【0204】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04においては、その処理条件、プラズマの異方性、および、デポ層D3によって、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに及ぼすエッチングの影響を極めて低減させてもよい。これにより、側壁VSq,VLqがシリコン基板Sの表面と垂直で、かつ、略面一となり凹凸のない側壁VSq,VLqを深さ方向に延長して形成する。
つまり、凹部パターンVS,VLとして均一径寸法となるように底部VSb3,VLb3を形成する。
【0205】
この形状を実現するように、3サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10を用いる。
このとき、3サイクル目のドライエッチング工程S04におけるプラズマ処理装置10では、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の周波数λ1が、第三電極E3に印加する交流電力の周波数λ2に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ1が13.65MHzとされ、周波数λ2が2MHzとされることができる。
【0206】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、2サイクル目と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、3サイクル目のデポ工程S03における値よも大きく、また、3サイクル目のアッシング工程S05における値と同じ値に設定することができる。
【0207】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、2サイクル目と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、第三電極E3に印加する周波数λ2の交流電力と同じ値に設定されることができる。
【0208】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04においては、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、エッチングレートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類およびエッチングレートのバラツキに応じて設定される。また、3サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目または2サイクル目のドライエッチング工程S04と同じ分配比とすることもできるし、異なる分配比とすることもできる。
【0209】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04においても、プラズマ処理装置10では、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、内部電極12に対して、周波数λ3であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ3は、第三電極E3に印加する周波数λ2よりも低い値に設定することができる。周波数λ3は、たとえば、400kHzとすることができる。
【0210】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04における異方性プラズマエッチングでは、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、SF6とO2の混合ガスをプラズマ分解して、Siの異方性エッチングをおこなうものである。これにより、SF6が分解して生成するFラジカルが、Siをエッチングする(F+Si→SiF4)。このエッチング反応は、等方性エッチングのため、異方性エッチングを行うために、側壁VSq,VLqに保護膜を付着させて、側壁VSq,VLqのエッチング反応を抑制してもよい。
【0211】
3サイクル目のドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D2が除去されて側壁VSq,VLqが露出する。
【0212】
ここで、3サイクル目のドライエッチング工程S04におけるSF6/O2の混合ガス系異方性プラズマエッチングでは、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、絶縁層を形成して、側壁VSq,VLqが保護されてもよい。同時に、Oによる側壁VSq,VLqの酸化と、エッチング生成物であるSiF4が再分解されたSiとOの反応によるSiOxのデポ膜の形成とによって側壁VSq,VLqが保護される。
【0213】
また、3サイクル目のドライエッチング工程S04では、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、エッチング生成物であるSiF4が不足することを防止するために、SiF4をガスとして供給することもできる。
【0214】
さらに、3サイクル目のドライエッチング工程S04においては、2サイクル目のドライエッチング工程S04と同様に、エッチングガスとしてSF6又はNF3を使用し、エッチングガスにケイ素化合物としてSiF4を、反応体としてO2、N2、N2O、NO、NOxまたはCO2を添加して、底部VSb2,VLb2を集中的にエッチングすることができる。
さらに、3サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目のドライエッチング工程S04、および/または、2サイクル目のドライエッチング工程S04に対して、長い時間とすることもできる。
【0215】
図16は、本実施形態におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示す3サイクル目のアッシング工程S05は、
図16に示すように、3サイクル目のドライエッチング工程S04の終了後において、残存したデポ層D3を除去する。
特に、3サイクル目のアッシング工程S05においては、開口パターンMSおよび開口パターンMLの内周付近に残存したレジスト保護膜Mm表面付近のデポ層D3を確実に除去するように、その条件が設定される。
【0216】
3サイクル目のアッシング工程S05においては、1サイクル目および/または2サイクル目と同様に、3サイクル目のドライエッチング工程S04の終了した後に、レジスト保護膜Mmの表面に付着しているデポ層D3と、開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口内周付近に残存したデポ層D3と、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqに残存したデポ層D3と、を除去する。
【0217】
さらに、3サイクル目のアッシング工程S05において、開口パターンMSに対応する底部VSb3に残存したデポ層D3と、開口パターンMLに対応する底部VLb3に残存したデポ層D3と、があればこれを除去する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は変化せず、3サイクル目のアッシング工程S05において、レジスト保護膜Mmはほぼ残存する。
【0218】
ここで、最も重要なのは、開口パターンMSの内周位置に残存したデポ層D3と、開口パターンMLの内周位置に残存したデポ層D3と、を除去することである。もしも、このデポ層D3が除去しきれずに残存していた場合には、後工程である、複数回繰り返すサイクルのうち次サイクルである4サイクル目以降となるデポ工程S03において、残存したデポ層D3にさらに次のデポ層D4が堆積してしまい、レジスト層(マスク層)Mおよびレジスト保護膜Mmにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が減少してしまう。
【0219】
すると、後工程である3サイクル目以降のサイクル、たとえば次サイクルである4サイクル目のドライエッチング工程S04において、異方性を強めたエッチングをおこなっても、デポ層D2およびデポ層D3によって底部VSb2および底部VLb2までエッチングプラズマが到達することが阻害される。したがって、底部VSb2および底部VLb2におけるエッチングが好適におこなわれず、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直ではなくなり、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまう可能性を排除できなくなる。
【0220】
これに対して、3サイクル目のアッシング工程S05において、開口パターンMSの内周位置にデポ層D3が残存せず、また、開口パターンMLの内周位置にデポ層D3が残存しない状態にした場合には、後工程である繰り返しサイクルの次以降のサイクルにおけるデポ工程S03において、残存したデポ層D3にさらにデポ層D4が堆積することがなく、レジスト層(マスク層)Mおよびレジスト保護膜Mmにおける開口パターンMSおよび開口パターンMLの開口径(開口面積)が所定の大きさを維持している状態に維持することができる。
【0221】
すると、繰り返しサイクルのうち、次以降のサイクルにおけるドライエッチング工程S04において、後工程として異方性を強めたエッチングをおこなうことで、デポ層D3およびデポ層D4によって底部VSb2および底部VLb2までエッチングプラズマが到達することが阻害されない。したがって、底部VSb2および底部VLb2におけるエッチングが好適におこなわれて、開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqが垂直な状態で伸長され、凹部パターンVS,VLの形状が先細りとなってしまうことを防止して、同径の凹部パターンVS,VLを高アスペクト比で形成することが可能となる。
【0222】
同時に、レジスト保護膜Mmは、アッシング工程S05においてレジスト層(マスク層)Mがなくならないように、充分な膜厚を維持していることが重要である。
【0223】
3サイクル目のアッシング工程S05において、上記のように、開口パターンMSとMLとの内周位置に残存したデポ層D3を確実に除去するために、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、プラズマ処理に強い異方性を持たせる必要がある。このために、3サイクル目のアッシング工程S05においても、上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10を用いる。
【0224】
このとき、3サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の周波数λ1が、第三電極E3に印加する交流電力の周波数λ2に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ1が13.65MHzとされ、周波数λ2が2MHzとされることができる。
【0225】
また、3サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、3サイクル目のデポ工程S03における値よも大きく、また、3サイクル目のドライエッチング工程S04における値と同じ値に設定することができる。
【0226】
また、3サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、第三電極E3に印加する周波数λ2の交流電力と同じ値に設定することができる。
【0227】
また、3サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、内部電極12に対して、周波数λ3であるバイアス電圧を印加することが好ましい。周波数λ3は、第三電極E3に印加する周波数λ2よりも低い値に設定することができる。周波数λ3は、たとえば、400kHzとすることができる。
【0228】
また、3サイクル目のアッシング工程S05におけるプラズマ処理装置10では、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、内部電極12に対して、バイアス電圧を印加することが好ましい。3サイクル目のアッシング工程S05におけるバイアス電圧の電力は、3サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力と等しいか、3サイクル目のドライエッチング工程S04におけるバイアス電圧の電力よりも高く設定することができる。
【0229】
3サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングすることができる。O2ガス系異方性プラズマ処理では、開口パターンMS,MLの内周付近、および開口パターンMS,MLに対応する側壁VSq,VLqにおいてデポ層D3が確実に除去されて側壁VSq,VLqが露出する。同時に、3サイクル目のアッシング工程S05において、O2ガスを供給してアッシングするが、レジスト層(マスク層)Mにはレジスト保護膜Mmが積層されていることで、レジスト層(マスク層)MはO2プラズマによって除去されない。
【0230】
また、3サイクル目のアッシング工程S05においては、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同様に、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、デポ層D3に対するアッシングレートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類およびアッシングのバラツキに応じて設定される。また、3サイクル目のアッシング工程S05においては、1サイクル目および/または2サイクル目のアッシング工程S05と同じ分配比とすることもできるし、異なる分配比とすることもできる。
【0231】
本実施例に係るシリコンのドライエッチング方法は、
図5に示すように、デポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、を1サイクルのエッチングサイクルとして繰り返す。これにより、凹部パターンVS,VLの深さをさらに長くする。
3サイクル目のデポ工程S03~アッシング工程S05のエッチング工程が終了した際に、
図5に示すように、深さ判断工程S06aおよびレジスト保護判断工程S06を有する。
【0232】
3サイクル目の深さ判断工程S06aにおいては、次のレジスト保護判断工程S06へと進むか否かを判断する。このとき、深さ判断工程S06aにおける判断基準は、凹部パターンVS,VLの深さ、言い換えると、凹部パターンVS,VLのアスペクト比である。
凹部パターンVS,VLの深さが足りない場合、次サイクルのエッチング工程へとサイクルを重ねるために、まず、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進むか否かを判断するために、レジスト保護判断工程S06へと進む。また、凹部パターンVS,VLの深さが足りている場合、エッチングサイクルを終了して、後工程S08へと進む。
【0233】
3サイクル目のレジスト保護判断工程S06においては、次サイクルのエッチングサイクルへとサイクル数を重ねるか、後述するレジスト保護膜形成工程S07へと進む否かを判断する。
ここで、3サイクル目のレジスト保護判断工程S06における判断基準としては、凹部パターンVS,VLの深さに加えて、レジスト保護膜Mmのエッチング程度、つまり、レジスト保護膜Mmの減厚程度とされる。
【0234】
凹部パターンVS,VLの深さ、あるいはアスペクト比は、3サイクル目以降のアッシング工程S05の終了時には充分な大きさを有している。したがって、3サイクル目以降のレジスト保護判断工程S06における基準は、レジスト保護膜Mmのエッチング程度、つまり、レジスト保護膜Mmの減厚程度によって判断される。
【0235】
3サイクル目のレジスト保護判断工程S06においては、3サイクル目のデポ工程S03~アッシング工程S05のエッチング工程が終了した時点で、次以降のサイクルにおけるデポ工程S03とドライエッチング工程S04とにおいて、レジスト保護膜Mmが充分な膜厚を維持し、充分なレジスト層(マスク層)Mに対する保護能すなわちエッチング耐性を保持している場合には、次サイクルである4サイクル目のエッチング工程へと進む判断をする。
【0236】
また、3サイクル目のレジスト保護判断工程S06においては、レジスト保護膜Mmが充分な膜厚を維持しておらず、充分なレジスト層(マスク層)Mに対する保護能すなわちエッチング耐性を有していないと予想される場合には、レジスト保護膜形成工程S07へと進む判断をする。
【0237】
なお、3サイクル目のレジスト保護判断工程S06における判断は、前工程である3サイクル目の後で、残存しているレジスト保護膜Mmの膜厚を測定した結果から判断してもよいし、前工程におけるエッチング条件から、レジスト保護膜Mmが充分な膜厚を維持していることを類推して、4サイクル目への移行を判断してもよい。エッチング条件による判断では、あらかじめ、所定の条件によるレジスト保護膜Mmの減厚程度を設定して判断することになる。
【0238】
なお、通常、シリコン基板Sのエッチングで、上述するようなデポ工程S03と、ドライエッチング工程S04と、アッシング工程S05と、を1サイクルとした場合には、5~20サイクル程度、好ましくは、8~12サイクル程度で、一回のレジスト保護膜形成工程S07を挿入することができる。
【0239】
次に、4サイクル目について説明する。
【0240】
図17は、本実施例におけるシリコンのドライエッチング方法を示す工程断面図である。
図5に示す4サイクル目のデポ工程S03は、後工程である4サイクル目のドライエッチング工程S04において、凹部パターンVSと凹部パターンVLとの側壁をエッチングから保護することができるように、
図17に示すように、レジスト保護膜Mmの表面にフルオロカーボン等のポリマーからなるデポ層D4を異方性プラズマ処理により形成する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は多少減厚するが、1サイクル分としてのデポ工程S03において、レジスト保護膜Mmはほぼ残存する。
【0241】
デポ層D4は、4サイクル目における後工程として、フッ素化合物を使用したエッチングであるドライエッチング工程S04において、垂直な側壁MSq、MLqを達成するために、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqをエッチングから保護するとともに、エッチングを凹部パターンVS,VLの底部VSb3,VLb3に限定する。
【0242】
デポ層D4は、レジスト保護膜Mmの表面および凹部パターンVS,VLの底部VSb3,VLb3に積層する。また、
図17においては、凹部パターンVS,VLの側壁VSq、VLqにおいてはデポ層D4を示しているが、実際にはあまり積層されない。
【0243】
4サイクル目のデポ工程S03は、3サイクル目と同様に、CHF
3、C
2F
6、C
2F4、またはC
4F
8などの過フッ化炭化水素ガスを用いて、異方性プラズマ処理をおこなう。デポ工程S05においては、プラズマ処理に強い異方性を持たせるために、上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10を用いる。
【0244】
4サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、第一電極E1および第二電極E2に印加する交流電力の周波数λ1が、第三電極E3に印加する交流電力の周波数λ2に比べて大きく設定することができる。具体的には、周波数λ1が13.65MHzとされ、周波数λ2が2MHzとされることができる。
このとき、1サイクル目~3サイクル目におけるいずれかのデポ工程S03と同等の設定とすることもできる。
【0245】
また、4サイクル目のデポ工程S03において、プラズマ処理装置10では、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力が、後述するドライエッチング工程S04およびアッシング工程S05における値よりも小さく設定することができる。また、プラズマ処理装置10においては、内部電極12に対して、バイアス電圧を印加しないことができる。
4サイクル目のデポ工程S03においては、所定の雰囲気圧力として処理をおこなう。さらに、4サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目~3サイクル目におけるいずれかのデポ工程S03と同等の設定とすることもできる。
【0246】
また、4サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目~3サイクル目のデポ工程S03のいずれかと同様に、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、デポ層D2に対する成膜レートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類および成膜レートのバラツキに応じて設定される。また、4サイクル目のデポ工程S03においては、1サイクル目~3サイクル目のデポ工程S03のいずれかと同じ分配比とすることもできるし、異なる分配比とすることもできる。
【0247】
4サイクル目のデポ工程S03で形成されるデポ層D4は、1サイクル目~3サイクル目におけるいずれかのデポ工程S03と同様に、径寸法の小さい開口パターンMSに対応する底部VSb3に比べて、径寸法の大きい開口パターンMLに対応する底部VLb3における膜厚が大きくなる。なお、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト保護膜Mmの表面におけるデポ層D4の膜厚に比べて、開口パターンMLの底部VLb3におけるデポ層D4の膜厚は同等かあるいは小さくなる。
【0248】
つまり、デポ層D4の膜厚は、開口パターンMS,MLの外方となるレジスト保護膜Mmの表面におけるデポ層D4の膜厚TD4、開口パターンMLの底部VLb3におけるデポ層D4の膜厚TLD4、開口パターンMSの底部VSb3におけるデポ層D4の膜厚TSD4、の順に小さくなる。
【0249】
4サイクル目のデポ工程S03において、上記のように条件設定をおこなうことにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb3,VLb3におけるデポ層D4のデポジションカバレージをそれぞれ最適化するように制御することが可能となる。ここで、デポジションカバレージとして望ましい条件の方向は、必要な膜厚となるデポ層D4を底部VSb3,VLb3に積層する処理時間を短くすることである。つまり、デポ層D4を底部VSb3,VLb3に積層する成膜速度を増大することである。
【0250】
また、4サイクル目のデポ工程S03において、デポジションカバレージとして望ましい条件としては、エッチング深さおよびアスペクト比に対応してデポジションカバレージを調整することである。つまり、後述するように、底部VSb2,VLb2からの底部VSb3,VLb3の深さ変化に対応してアスペクト比が変化した場合でも、所望の厚さのデポ層D3を所定の積層成膜速度で成膜することを可能にできる。
【0251】
さらに、底部VSb3に積層するデポ層D4に対する均一性および確実性と、底部VLb3に積層するデポ層D4に対する均一性および確実性とを、それぞれ向上することである。
【0252】
次に、
図5に示す4サイクル目のドライエッチング工程S04として、異方性プラズマエッチングにより、開口パターンMS,MLに対応する底部VSb2,VLb2を掘り下げて、底部VSb3,VLb3を形成する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は多少減厚するが、1サイクル分として、4サイクル目のドライエッチング工程S04において、レジスト保護膜Mmはほぼ残存する。
【0253】
また、4サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目~3サイクル目におけるいずれかのドライエッチング工程S04と同様に、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、エッチングレートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類およびエッチングレートのバラツキに応じて設定される。また、4サイクル目のドライエッチング工程S04においては、1サイクル目~3サイクル目におけるいずれかのと同じ分配比とすることもできるし、異なる分配比とすることもできる。
【0254】
次に、
図5に示す4サイクル目のアッシング工程S05として、残存したデポ層D4を除去する。
このとき、レジスト保護膜Mmの膜厚は多少減厚するが、アッシング工程S05において、レジスト保護膜Mmは減厚しない。
【0255】
また、4サイクル目のアッシング工程S05においても、1サイクル目~3サイクル目におけるいずれかのアッシング工程S05と同様に、電力分配器16によって印加される周波数λ1の交流電力が、第一電極E1と第二電極E2との間で分配される。
これにより、デポ層D3に対するアッシングレートが径方向でばらつかないようにすることができる。ここで、電力分配器16による第一電極E1と第二電極E2との分配比は、処理ガスの種類およびアッシングのバラツキに応じて設定される。また、4サイクル目のアッシング工程S05においては、1サイクル目~3サイクル目におけるいずれかのアッシング工程S05と同じ分配比とすることもできるし、異なる分配比とすることもできる。
【0256】
さらに、4サイクル目の深さ判定工程S06aおよびレジスト保護判断工程S06として、レジスト保護膜Mmの厚さに応じて、所定の頻度でレジスト保護膜形成工程S07を挿入するどうかを判断しつつ、さらに、エッチング工程のサイクルを回していく。
【0257】
これにより、シリコン基板Sの表面に、径寸法ΦSを有する凹部パターンVSと、径寸法ΦLを有する凹部パターンVLを、同じ深さとして形成する。
【0258】
さらに、
図5に示す後工程S08として、必要であればドライエッチング工程S04に類する工程によって、レジスト保護膜Mmを除去し、さらに、ウェットエッチング工程、あるいは、アッシング工程S05に類する工程によって、レジスト層(マスク層)Mを除去することで、本実施例に係るシリコンのドライエッチング方法を終了する。
なお、本実施例に係るシリコンのドライエッチング方法では、50サイクル程度のサイクル数を適応することができる。
【0259】
<実験例1>
上述したように、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、電力分配器16によって第一電極E1と第二電極E2との間で分配される交流電力の分配比を変化させた際における処理特性の径方向分布の変化を調べた。また、2周波ICPによる処理特性の径方向分布の変化を調べた。なお、以下の工程から適宜選択してプラズマ処理の評価をおこなった。
【0260】
・デポ工程: シリコン含有薄膜デポジションS03
・エッチング工程: 炭素含有膜をマスクとしたTSV底部絶縁層エッチS04
・アッシング工程: 炭素含有膜アッシングS05
・デポ工程: 炭素含有薄膜デポジションS07
【0261】
ここで、Φ300mmシリコン基板に、SiF4/O2を使用したスプリットによるプラズマ処理評価として成膜評価をおこなった。ここで、「IN」である第一電極E1と、「OUT」である第二電極E2と、の間における電力分配比は、IN:OUT=999:0~0:999(分配比0.9:0.1~0.1~0.9に相当)で変化させた。
【0262】
以下に、スプリットによる成膜における諸元を示す。
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、ガス導入手段からのチャンバ11内へのガス供給を、中央Gasであるガス導入口15とした。また、基板の支持手段(基板ステージ)である内部電極12の直径D[mm]は400に固定し、第二電極(アンテナ2)の直径d[mm]を400に固定した。
【0263】
デポ工程における条件
供給ガス; SiF4/O2
供給ガス流量;SiF4/O2=160/150sccm
第一の周波数λ1;13.56MHz
第一の周波数λ1の供給電力; 1800W
第一の周波数λ1の供給電力分配比;IN:OUT=999:0~0:999(分配比0.9:0.1~0.1~0.9に相当)
第二の周波数λ2の供給電力;0W
成膜処理時間;120sec
内側電極温度;-10℃
【0264】
以下に、スプリットによる成膜における結果を示す。
図18~
図22は、実施例におけるスプリットによる径方向の膜厚分布変化を示すグラフである。図において、X,Yは、直交する基板の径方向において、それぞれ膜厚を調べた方向を示している。なお、分配比は、
図18でIN:OUT=999:0(分配比0.9:0.1)、
図19でIN:OUT=750:253(分配比0.75:0.25)、
図20でIN:OUT=500:503(分配比0.5:0.5)、
図21でIN:OUT=250:753(分配比0.25:0.75)、
図22でIN:OUT=0:999(分配比0.1:0.9)、である。
【0265】
これらの結果から、膜厚の面内分布を変動させることができていることがわかる。したがって、スプリットをおこなわない状態での膜厚分布を是正できるように制御可能なことがわかる。
【0266】
<実験例2>
次に、RF分布(分配比)と、ガス導入との影響を検証した。
ここでは、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、ガス導入手段からのチャンバ11内へのガス供給を、ガス導入口14とガス導入口15とで切り替えた。また、供給するガス種を変えて、RFスプリッタによる径方向における膜厚分布(成膜レートの変化)への影響を調べた。
【0267】
以下に、成膜における諸元を示す。
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、基板の支持手段(基板ステージ)である内部電極12の直径D[mm]は400に固定し、第二電極(アンテナ2)の直径d[mm]を400に固定した。
【0268】
デポ工程における条件
供給ガス流量; C4F8;200sccm
供給ガス流量;SiF4/O2=160/150sccm
第一の周波数λ1;13.56MHz
第一の周波数λ1の供給電力; 2000W
第二の周波数λ2の供給電力;0W
成膜処理時間;120sec
内側電極温度;-10℃
【0269】
以下に、スプリットによる成膜における結果を示す。
図23は、実施例におけるC
4F
8ガスでの径方向の膜厚分布変化を示すグラフである。
図24は、実施例におけるSiF
4/O
2ガスでの径方向の膜厚分布変化を示すグラフである。
図23,
図24において、中央Gasは、ガス導入口15からのガス供給であり、外周Gasは、ガス導入口14からのガス供給である。
また、Depo1は、SiF
4/O
2ガスでの成膜結果を示し、Depo2は、C
4F
8ガスでの成膜結果を示している。
【0270】
これらの結果から、C4F8ガスによるDepo2の膜厚はGasを導入するガス導入口の位置によって分布が大きく変化するが、SiF4/O2ガスによるDepo1の膜厚はガス導入口の位置を変えても分布に大きな変化はないことがわかる。
また、SiF4/O2ガスによるDepo1の膜厚は13.56MHzのRFが分布に影響していることがわかる。つまり、SiF4/O2ガスによるDepo1の膜厚は、電力分配器によるプラズマ分布の調整をしなければ他のステップにおける面内分布とあわせられないことがわかる。
【0271】
<実験例3>
次に、RF分布(分配比)とエッチング深さとの影響を検証した。
ここでは、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、ガス導入手段からのチャンバ11内へのガス供給を、中央Gasであるガス導入口15とした。また、供給する電力分配比を変化させて、RFスプリッタによる径方向におけるエッチング深さ分布(エッチングレートの変化)への影響を調べた。
【0272】
以下に、エッチングにおける諸元を示す。
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、基板の支持手段(基板ステージ)である内部電極12の直径D[mm]は400に固定し、第二電極(アンテナ2)の直径d[mm]を400に固定した。
【0273】
エッチング工程における条件
供給ガス流量;SiF
6/SiF
4/O
2=275/50/40sccm
第一の周波数λ1;13.56MHz
第一の周波数λ1の供給電力; 1800W
第一の周波数λ1の供給電力分配比;IN:OUT=999:0、750:250、
図500:500、250:550、0:999
第二の周波数λ2の供給電力;0W
成膜処理時間;135sec
内側電極温度;-10℃
ガス導入位置;中央(ガス導入口15)
【0274】
以下に、スプリットによるエッチングにおける結果を示す。
図25は、実施例における径方向のエッチング深さ分布変化を示すグラフである。
【0275】
これらの結果から、電力分配器によりTSVエッチング深さの径方向面内分布は変化するが、その変化量は、デポ工程における膜厚変化に比べて少ないことがわかる。
【0276】
<実験例4>
次に、周波数重畳とエッチング深さとの影響を検証した。
ここでは、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、ガス導入手段からのチャンバ11内へのガス供給を、中央Gasであるガス導入口15とした。また、第二の周波数λ2である交流電力を供給して、重畳による径方向におけるエッチング深さ分布(エッチングレートの変化)への影響を調べた。
【0277】
以下に、エッチングにおける諸元を示す。
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、基板の支持手段(基板ステージ)である内部電極12の直径D[mm]は400に固定し、第二電極(アンテナ2)の直径d[mm]を400に固定した。
【0278】
エッチング工程における条件
供給ガス流量;SiF6/SiF4/O2=275/50/40sccm
第一の周波数λ1;13.56MHz
第一の周波数λ1の供給電力; 1800W
第一の周波数λ1の供給電力分配比;IN:OUT=999:0
第二の周波数λ2;2MHz
第二の周波数λ2の供給電力;200W
成膜処理時間;135sec
内側電極温度;-10℃
ガス導入位置;中央(ガス導入口15)
エッチング径;Φ5μm
【0279】
以下に、周波数重畳によるエッチングにおける結果を示す。
図26は、実施例における径方向のエッチング深さ分布変化を示すグラフである。同時に、各測定箇所における基板厚さ方向のSEM画像を配置する。なお、図において、SEM画像の左右方向の位置は、グラフの測定点の位置に対応して配置されている。また、SEM画像は、X方向の結果のみを示す。
【0280】
これらの結果から、電力分配器の結果と比較して、2周波重畳によりエッチング深さの径方向面内が変化していることがわかる。
【0281】
<実験例5>
次に、周波数重畳の有無とエッチング深さとの影響を検証した。
ここでは、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、ガス導入手段からのチャンバ11内へのガス供給を、中央Gasであるガス導入口15とした。また、第二の周波数λ2である交流電力の供給を切り替えて、重畳の有無による径方向におけるエッチング深さ分布(エッチングレートの変化)への影響を調べた。
【0282】
以下に、エッチングにおける諸元を示す。
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、基板の支持手段(基板ステージ)である内部電極12の直径D[mm]は400に固定し、第二電極(アンテナ2)の直径d[mm]を400に固定した。
【0283】
エッチング工程における条件
供給ガス流量;SiF6/SiF4/O2=275/50/40sccm
第一の周波数λ1;13.56MHz
第一の周波数λ1の供給電力; 1800W
第一の周波数λ1の供給電力分配比RFS;IN:OUT=999:0
第二の周波数λ2;2MHz
第二の周波数λ2の供給電力;200W、0W
成膜処理時間;135sec
内側電極温度;-10℃
ガス導入位置;中央(ガス導入口15)
エッチング径;Φ5μm
バイアス電力;100~200W
バイアス電力周波数λ3;400kHz
【0284】
以下に、周波数重畳の有無によるエッチング深さ変化における結果を示す。
図27は、実施例における周波数重畳の有無による径方向のエッチング深さ分布変化を示すグラフである。
【0285】
この結果から、電力分配器の結果と比較して、2周波重畳の有無によりエッチング深さが径方向中央のエッチングレートが大きい状態から、径方向中央のエッチングレートが小さく径方向外周のエッチングレートが大きい状態へと変化することがわかる。
【0286】
<実験例6>
次に、周波数重畳の有無と膜厚変化との影響を検証した。
ここでは、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、ガス導入手段からのチャンバ11内へのガス供給を、中央Gasであるガス導入口15とした。また、第二の周波数λ2である交流電力の供給を切り替えて、重畳の有無による径方向における膜厚分布(デポレートの変化)への影響を調べた。
【0287】
デポ工程における条件
供給ガス; SiF4/O2
供給ガス流量;SiF4/O2=160/150sccm
第一の周波数λ1;13.56MHz
第一の周波数λ1の供給電力; 1800W
第一の周波数λ1の供給電力分配比RFS;IN:OUT=999:0(分配比0.9:0.1に相当)
第二の周波数λ2;2MHz
第二の周波数λ2の供給電力;200W、0W
成膜処理時間;120sec
内側電極温度;-10℃
【0288】
以下に、周波数重畳の有無によるデポ膜厚変化における結果を示す。
図28は、実施例における周波数重畳の有無による径方向のデポ膜厚分布変化を示すグラフである。
【0289】
図28の結果から、電力分配器の結果と比較すると、2周波重畳の有無によりデポ膜厚が径方向中央のデポレートが大きい状態は変わらないが、径方向中央のデポレートに比べて径方向外周のデポレートがより大きくなる(グラフの肩が上がる)状態へと変化することがわかる。
【0290】
すなわち、
図27に示す実験例5の結果および
図28に示す実験例6の結果から、電力分配器の結果と2周波重畳の結果とを比較すると以下のことがわかる。
エッチング深さ:Center fast ⇒ Edge fast 2MHzの影響大
デポ膜厚:Center fast ⇒ Center fast 2MHzの影響小
エッチング工程とでお歩デポ工程との面内分布を合わせて、基板面内の加工均一性を高めるには、電力分配器によりデポ分布およびエッチング分布を調整する必要がある。
【0291】
<実験例7>
次に、電力分配器と周波数重畳との磁場形成状態への影響を検証した。
ここでは、
図1,
図2に示すプラズマ処理装置10において、第一電極E1および第二電極E2に印加する周波数λ1の交流電力を分配できるスプリッタおよび2周波ICPを備えたプラズマ処理装置と、スプリッタを備えていないプラズマ処理装置との間で、形成される磁場の空間分布をシミュレーションした。
その結果を
図29~
図32に示す。
図29は、スプリッタを備えていないプラズマ処理装置において形成される磁場のうち、周波数λ1の交流電力によって第一電極E1のみで形成される磁場の空間分布をシミュレーションにより示すものである。
図30は、スプリッタを備えていないプラズマ処理装置において形成される磁場のうち、周波数λ2の交流電力によって第三電極E3のみで形成される磁場の空間分布をシミュレーションにより示すものである。
図31は、
図1,
図2に示すスプリッタを備えたプラズマ処理装置において形成される磁場のうち、周波数λ1の交流電力によって第一電極E1のみで形成される磁場の空間分布をシミュレーションにより示すものである。
図32は、
図1,
図2に示すスプリッタを備えたプラズマ処理装置において形成される磁場のうち、周波数λ2の交流電力によって第三電極E3のみで形成される磁場の空間分布をシミュレーションにより示すものである。
図29~
図32において、点線で囲った部分は、プラズマ処理装置において基板へのプラズマ処理に直接寄与する空間の範囲を示している。
【0292】
具体的には、二つの4ターンアンテナのうち、片方の両端に13.56MHz用M/BのIN端子、OUT端子を接続した13.56MHz用アンテナと、もう一方の両端に2MHz用M/BのIN端子、OUT端子を接続した2MHz用アンテナとを、同心状に13.56MHzを内側、2MHzを外側に配置した従来型アンテナと、3つの4ターンアンテナのうち、一つめのアンテナの両端に電力分配器の内側用回路、二つめのアンテナに電力分配器外側用回路を接続した13.56MHz 電力分配器内側及び外側用アンテナと、三つめのアンテナの両端に2MHz用M/Bを接続した2MHz用アンテナを、同軸状に内側から13.56MHz 電力分配器内側用アンテナ、 2MHz用アンテナ、 13.56MHz 電力分配器外側用アンテナとなるように配置した2周波ICP 電力分配器用アンテナを用い、電力分配器には電力比0.5:0.5となるような条件で、それぞれ13.56MHzを1kW、2MHzを1kW投入した際のアンテナから発生するそれぞれの周波数におけるアンテナと真空チャンバと、アンテナが誘電体窓で区切られた真空チャンバ内の磁場強度をシミュレーションした。
【0293】
図29~
図32の結果から、点線で囲まれた空間における磁界強度の分布を13.56MHzと2MHzで一致させることで、プロセスの均一性を向上させることが可能になることがわかる。
つまり、従来型アンテナでは13.56MHzと2MHzの磁場は一致しないが、2周波ICP 電力分配器用アンテナでは磁場が一致することを確認することができた。
【0294】
なお、アッシング工程S07における条件を、以下に示す。
供給ガス; O2
ガス流量; O2;450sccm,
処理雰囲気圧力; 9Pa
第一の周波数λ1の供給電力; 2000W
第一の周波数λ1;13.56MHz
第二の周波数λ2の供給電力; 2000W
第二の周波数λ2;2MHz
バイアス電力;200W
バイアス電力周波数λ3;400kHz
アッシング工程S07においても面内均一性を実現することができた。
【0295】
本発明によれば、複数のプラズマ処理工程を、同一のチャンバ内で、真空を破らずに密閉を維持した状態で連続または断続的におこなう場合に、それぞれの工程における処理特性の面内分布を一致させて、基板全面での処理特性を略均一化することが可能となることがわかる。
【0296】
すなわち、デポ工程、エッチング工程、アッシング工程、保護膜形成(デポ)工程、といった複数の処理を1サイクルとして、このサイクルを多数回、たとえば30サイクル程度繰り返した場合に、それぞれのデポ工程、エッチング工程、アッシング工程における面内分布がバラついていた場合、処理を均等におこなうことができず、結果的に、所望の形状を得ることができなくなる。たとえば、実施例として上述したサイクルエッチ処理であれば、シリコン基板に形成する凹部パターンの形状、特に深さ、あるいは、径寸法の均一性を保つことができなくなる。
【0297】
これに対して、電力分配器と周波数重畳とが可能な本発明におけるプラズマ処理装置であれば、サイクルエッチ処理であれば、各工程における処理特性の面内均一性を可能として、シリコン基板に形成する凹部パターンの形状、特に深さ、あるいは、径寸法の均一性を保つことができる。
【0298】
2周波ICPによれば、13.56MHzで生成されたプラズマボリューム内の電子密度を2MHzによって上昇させ、プラズマ中の分子の解離制御性の幅を拡大することができる。
【0299】
また、2周波ICPによれば、
・13.56MHz: プラズマ生成 (電子密度低温)
・2MHz: 13.56MHzで生成されたプラズマボリューム深層まで加熱する(低周波磁場が奥深くまで浸透するため)
・ 13Mに2M重畳で電子密度を制御⇒Gas解離制御性margin広くなる
という効果を確認できた。
【0300】
電力分配器によれば、一つの電源から発生した電力を2つのアンテナに任意の分配比で分配し、発生するプラズマの空間内密度分布を調整することができる。
これらにより、プラズマ密度分布に対するエッチングレートおよび成膜レートは、使用するガス種によって異なるが、異なるガスを供給する別の処理工程において、使用するガスの特性による面内分布の変化に対応することができることがわかる。
【0301】
本発明によれば、2周波ICPで得られる特性を維持しつつ、高周波電力分配器によって分布調整をおこなう機構を提供することができる。特に、工程毎に異なるガスを使用しても、径方向内側と外側とに同心状に配置された2つのアンテナに対して、電力分配器によって電力分配比を調整することで、処理特性の面内均一性が保たれる状態とし、さらに、2周波ICPを実施して、サイクルエッチングの面内均一性と2周波ICPのエッチング性能を両立させることができる。
【0302】
13.56MHzの電力分配器を適用しSiF4/O2ガスを使用した成膜評価では、分配をIN:OUT=999:0~0:999(分配比0.9:0.1~0.1~0.9に相当)で変化させることで、面内成膜分布を変動可能であることが確認できた。また、同様にSF6/SiF4/O2を使用したエッチング評価では、面内分布は変動するが変動量は小さいことが確認できた。
【0303】
13.56MHzと2MHzとを使用した2周波重畳におけるSiF4/O2ガスを使用した成膜評価では、13.56MHzのみ(電力分配器使用時のIN:OUT=999:0に相当)と比較してCenter fastの傾向は変わらないが、エッチング評価ではCenter fastからEdge fastに変化するような大きな影響を与えることが確認できた。
【0304】
同様に、13.56MHzと2MHzとを使用した2周波重畳におけるC4F8ガスによる成膜評価では、ガスの導入口の位置(中央、外周)によって成膜分布が大きく変化するが、SiF4/O2ガスを使用した成膜評価では、導入口の位置による差は見られない。したがって、この変化は13.56MHzの影響であると断定することができた。
【0305】
以上より、13.56MHzを電力分配器で内側と外側の2つのアンテナに所望の分配比で導入すれば、SF6/SiF4/O2のエッチング分布とSiF4/O2による成膜分布との制御によって、サイクルエッチングの面内分布を揃えることが可能であることがわかった。
【0306】
ここで、従来、13.56MHzと2MHzの位置が従来型2周波ICP用アンテナでは、成膜とエッチングとを交互に繰り返すサイクルエッチングにおいて、各ステップにおける分布の差を改善できず、プロセス実施後におけるエッチング形状の面内分布が制御できていなかった。
つまり、サイクルエッチングでは、デポ工程において、特性分布が13.56MHzのプラズマの空間分布が特に強く影響するガスを使用しており、また、エッチング工程において、2MHzと13.56MHz両方のプラズマの空間分布が影響するガスを使用している。しかもこれらの工程を繰り返しておこなうことが必要である。
【0307】
このように、デポ工程とエッチング工程とを交互におこなう場合、一方の分布が良くても他方が同じ分布にならなければ、加工形状の面内均一性を保つことが難しいが、従来のアンテナしか備えていないプラズマ処理装置では、アンテナ形状が固定されており形成する磁場の空間分布を変更できないため、個別の工程毎に処理特性の面内分布を改善することは難しかった。
【0308】
Dual TSV Process(Cycle Etching)において、SiF4/O2ガスによる成膜工程は、レジスト膜を保護するために必須である。この成膜工程の膜厚分布は、プラズマの空間分布に依存することが分かっている。従来の2周波ICPアンテナでは、プラズマ空間分布が固定されているため、プロセスの分布が制御できない。
本発明ではこの問題を解決するため、電力分配技術と2周波ICPとによって、2周波ICPの空間分布制御が可能となるプラズマ源を実現した。これにより、Depo1膜(SiF4/O2ガス)とエッチング(SF6/SiF4/O2ガス)との分布をあわせ込み、ウェハ面内の加工均一性を向上することができる。電力分配器による分配比の調整で膜厚分布が変化することを確認でき、この電力分配器の制御により、2MHz+13.56MHzで形成されるエッチング面内分布にあわせ込むことが可能となる。
【0309】
・サイクルエッチング処理におけるレジスト保護膜形成ステップ(SiF4/O2ガスによるデポ工程)において、電力分配比をアンテナの内側と外側で内:外=0.5:0.5~0.1:0.9となるように設定することが好ましい。
・サイクルエッチング処理における側壁保護膜形成ステップ(C4F8ガスによるデポ工程)において、電力分配比をアンテナの内側と外側で内:外=0.75:0.25~0.25:0.75となるように設定することが好ましい。
・サイクルエッチング処理におけるエッチングステップ(SF6/SiF4/O2ガスによるドライエッチング工程)において、電力分配比をアンテナの内側と外側で内:外=0.75:0.25~0.25:0.75となるように設定することが好ましい。
【0310】
さらに、第一電極E1の径方向内側に、プラズマ加熱用の第二の周波数λ2が印加される電極(アンテナ)を設けることもできる。
さらに、第二電極E2の径方向外側に、プラズマ加熱用の第二の周波数λ2が印加される電極(アンテナ)を設けることもできる。
さらに、これらを組み合わせた配置とすることもできる。
【0311】
あるいは、第一電極E1、第二電極E2、第三電極E3は、同軸上の高さ方向に対し1段から3段までの構造を持つことが可能である。
これらにより、プラズマの効率的な加熱を可能とすることができる。また、大面積の基板に対する処理において、プラズマの効率的な空間分布制御を可能とできる。
さらに、これらの構成を個々に取りだして任意に組み合わせた配置とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0312】
本発明の活用例として、半導体製造におけるSi貫通孔形成工程を挙げることができる。
【符号の説明】
【0313】
10…プラズマ処理装置
11…チャンバ
12…内部電極(支持手段)
13…上蓋
15…ガス導入口
100…ガス導入手段
G…プロセスガス
S…被処理体(基板)
TMP…排気手段(減圧手段)
17…第一の高周波電源(プラズマ生成電源)
18…第二の高周波電源(プラズマ加熱電源)
19…高周波電源(第三の高周波電源)
E1…第一電極(アンテナAT1)
E2…第二電極(アンテナAT2)
E3…第三電極(アンテナAT3)
G…プロセスガス
M/B…マッチングボックス