(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】放射線被ばくによる皮膚炎発生の予測
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240524BHJP
C07K 5/08 20060101ALN20240524BHJP
C07K 5/02 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
G01N33/68
C07K5/08
C07K5/02
(21)【出願番号】P 2020072182
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】孫 略
(72)【発明者】
【氏名】盛武 敬
(72)【発明者】
【氏名】千田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 洋平
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-509385(JP,A)
【文献】特開2010-280572(JP,A)
【文献】金子崇,放射線照射後のラットにおける酸化反応物測定値と皮膚障害の関係,山形医学,2011年,Vol.29 No.1,Page.19-28
【文献】グルタチオン製剤 (注射用グルタチオン),2006年,https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/taisya/JY-12152.pdf
【文献】金子崇,放射線照射後のラットにおける酸化ストレス値の経時変化,山形大学紀要(自然科学),2011年02月,第17巻第2号別刷,Page.30-39
【文献】宮地良樹,皮膚の炎症と活性酸素,日本皮膚科学会雑誌 ,1998年07月,Vol.108 No.8,Page.1015-1020
【文献】桜井弘,アレルギー・免疫疾患とレドックス制御 VII.皮膚炎症とレドックス制御,アレルギー・免疫,2005年04月15日,Vol.12 No.5,Page.780-785
【文献】Cody J. Schmidlin,Activation of NRF2 by topical apocarotenoid treatment mitigates radiation-induced dermatitis,Redox Biology,2020年09月04日,Vol.37,Page.101714
【文献】伊藤康宏,学生の皮膚メラニン度数と抑うつの関係,Jpn J Psychosom Med,2019年01月01日,Vol.59 No.1,Page.52-59
【文献】川内康弘,皮膚の酸化ストレス Oxydative Stress in Skin,東大医誌,2015年,Vol.73 No.3,Page.244-251
【文献】渡邉定弘,放射線皮膚障害ラットモデルを用いた1.3%水素ガスの防護効果に関する研究,防衛医科大学校,2015年,https://niad.repo.nii.ac.jp/record/590/files/500_%E8%AB%96%E6%96%87.pdf
【文献】盛武敬,複数の生物学的指標を組み合わせた長期放射線影響の予測と社会実装に向けた取り組み,放射線の健康影響に係る研究調査事業 令和3年度年次報告書 詳細版,2022年02月23日,https://www.env.go.jp/content/000154540.pdf
【文献】盛武敬,1-1 大規模放射線災害に対応できる複数の生物学的指標を組み合わせた線量推定システムの技術基盤構築,2020年,Page.1-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/68
C07K 5/08
C07K 5/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測するためのデータを収集する方法であって、放射線被ばく後に被験体から取得された
赤血球のグルタチオン濃度を測定することを含み、
赤血球の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度
(酸化型グルタチオン濃度に対する還元型グルタチオン濃度の比)が第1の基準値以下である
ことは皮膚炎が発生する可能性が高い
ことを示し、
ここで、第1の基準値は、放射線被ばく後に皮膚炎が発生した集団と、発生しなかった集団とにおける赤血球の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度(酸化型グルタチオン濃度に対する還元型グルタチオン濃度の比)に基づき決定された、放射線被ばく後に皮膚炎が発生する集団と、発生しない集団とを判別できる値である、方法。
【請求項2】
還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度
(酸化型グルタチオン濃度に対する還元型グルタチオン濃度の比)が、第1の基準値以下であって第2の基準値より高
いことは一過性皮膚炎が発生する可能性が高
いことを示し、第2の基準値以下である
ことは持続性皮膚炎が発生する可能性が高い
ことを示し、
ここで、第2の基準値は、放射線被ばく後に持続性皮膚炎が発生した集団と、発生しなかった集団とにおける赤血球の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度(酸化型グルタチオン濃度に対する還元型グルタチオン濃度の比)に基づき決定された、放射線被ばく後に持続性皮膚炎が発生する集団と、発生しない集団とを判別できる値である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
放射線被ばくが、X線又は電子線、ガンマ線、陽子線、重粒子線、中性子線の照射によるものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
放射線被ばくが、乳がん、皮膚がん又は頭頸部がん、直腸がん、食道がん、脳腫瘍、転移性脳腫瘍、肝臓がん、肺癌、悪性リンパ腫の放射線治療によるものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
被験体から取得された
赤血球の還元型グルタチオン及び酸化型グルタチオンの濃度を測定するための手段を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法に使用するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線被ばくによる皮膚炎発生の予測に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線治療や画像下治療(IVR)が広く行われるようになり、放射線被ばくによる副作用が問題となっている。同じような放射線治療やIVRが行われても、副作用である皮膚炎が発生するかどうかはケースごとに異なり、皮膚炎が発生するかどうかを予測することは困難であった。また、皮膚における反応は、即時的なものもあれば、生じるまでに何日間も何週間もかかるものもあるだけでなく、皮膚炎が発生しても一過性の皮膚炎の場合もあれば、強い紅斑が3、4週間持続する場合もあり、皮膚炎の程度を予測することも困難であった。
【0003】
これまでに、Tリンパ球アポトーシスに関する生化学マーカー及び臨床パラメータを用いた放射線治療後の乳房晩発効果を発症するリスクを診断するための方法(特許文献1)、被ばく部位の画像から血流量を特定することによる皮膚炎発生を予測する方法(特許文献2)、皮膚組織から採取された細胞を用いて放射線感受性を予測する方法(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2019-532304号公報
【文献】国際公開第2015/146164号
【文献】特表2017-505630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまでの方法では、診断までの工程が煩雑であったり、特殊な装置を必要としたり、侵襲性が大きく、結果が出るまでに時間を要する等の問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無と皮膚炎の程度をより簡便に予測するためにデータを収集する方法及びそれに関連するキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明者は、様々な手段を検討した結果、放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後に赤血球中のグルタチオン濃度を測定することによって、皮膚炎の発生の有無を予測できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1)放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測するためのバイオマーカーであって、グルタチオン又はその濃度である、バイオマーカー。
(2)バイオマーカーが、赤血球中の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度である、(1)に記載のバイオマーカー。
(3)放射線被ばくが、X線又は電子線、ガンマ線、陽子線、重粒子線、中性子線の照射によるものである、(1)又は(2)に記載のバイオマーカー。
(4)放射線被ばくが、乳がん、皮膚がん又は頭頸部がん、直腸がん、食道がん、脳腫瘍、転移性脳腫瘍、肝臓がん、肺癌、悪性リンパ腫の放射線治療によるものである、(1)から(3)のいずれかに記載のバイオマーカー。
(5)バイオマーカーを測定する方法であって、
放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後に被験体から取得された試料中の(1)から(4)に記載のいずれかのバイオマーカーを測定する、測定方法。
(6)(1)から(4)に記載のバイオマーカーを測定するための手段を含む、キット。
(7)放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測するためのデータを収集する方法であって、放射線被ばく後に被験体から取得された試料のグルタチオン濃度を測定することを含み、試料の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度が第1の基準値以下である場合に皮膚炎が発生する可能性が高いと予測される、方法。
(8)還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度が、第1の基準値以下であって第2の基準値より高い場合に一過性皮膚炎が発生する可能性が高く、第2の基準値以下である場合に持続性皮膚炎が発生する可能性が高いと予測される、(1)に記載の方法。
(9)放射線被ばくが、X線又は電子線の照射によるものである、(7)又は(8)に記載の方法。
(10)放射線被ばくが、乳がん、皮膚がん又は頭頸部がんの放射線治療によるものである、(7)から(9)のいずれかに記載の方法。
(11)被験体から取得された試料中の還元型グルタチオン及び酸化型グルタチオンの濃度を測定するための手段を含む、放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測するためのキット。
【0008】
また、本発明は、下記より構成される発明にも関する。
[1]放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後に発生する皮膚炎の治療方法であって、
放射線被ばく後に被験体から取得された試料のグルタチオン濃度を測定すること、及び
皮膚炎が発生する可能性が高いと予測される場合に皮膚炎の予防的治療を開始することを含む、治療方法。
[2]試料の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度が第1の基準値以下である場合に皮膚炎が発生する可能性が高いと予測される、[1]に記載の治療方法。
[3]放射線治療が、X線又は電子線の照射を含む治療である、[1]又は[2]に記載の治療方法。
[4]放射線被ばくが、乳がん、皮膚がん又は頭頸部がん、直腸がん、食道がん、脳腫瘍、転移性脳腫瘍、肝臓がん、肺癌、悪性リンパ腫の放射線治療によるものである、[1]から[3]のいずれかに記載の治療方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無と皮膚炎の程度をより簡便に予測するためのデータを収集する方法、それに関連するキット、マーカー、測定方法、及び治療方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】放射線被ばく後の皮膚障害の程度を示す図である。
【
図2】放射線被ばく後の赤血球中のグルタチオン濃度を示す図である。*は各群の間に有意差があることを示す(P<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
【0012】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態にかかるバイオマーカーは、グルタチオン又はその濃度である。本実施形態のバイオマーカーは、放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測するために用いることができる。
【0013】
グルタチオンとは、グルタミン酸、システイン及びグリシンからなるトリペプチドであり、抗酸化物質の1つである。グルタチオンには還元型(GSH)と酸化型(GSSG)があり、酸化型グルタチオンは2分子の還元型グルタチオンがジスルフィド結合によってつながったものである。通常、98%以上が還元型グルタチオンとして存在している。また、グルタチオンは、細胞内に0.5~10mMという比較的高濃度で存在する。
グルタチオンは、総グルタチオン、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、及びこれらの組み合わせを含み、いずれも放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測するためのバイオマーカーとすることができるが、予測の精度を考慮すれば、還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度(酸化型グルタチオン濃度に対する還元型グルタチオン濃度の比)をバイオマーカーとすることが好ましい。
【0014】
本実施形態において、バイオマーカーは、皮膚炎発生の予測が必要な被験体におけるものであればよく、被験体はヒトだけでなく、ウシ、ブタ、サル、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、イヌ等の哺乳動物を被験体としてもよい。
【0015】
本実施形態において、被験体から取得された試料中のグルタチオン又はその濃度をバイオマーカーとするが、試料としては血液、尿、唾液、血清等を用いることができ、好適には血液である。
【0016】
本実施形態において、皮膚炎とは、放射線被ばくによって起こる皮膚の障害をいう。皮膚炎の症状としては、発赤、紅斑、腫脹、落屑、水疱、びらん、潰瘍、壊死、毛細血管拡張症等が挙げられる。また、皮膚炎には、皮膚炎の症状が現れた後に収束に向かう一過性皮膚炎と、症状が1か月以上持続する持続性皮膚炎とがある。
【0017】
放射線とは一般的に電離放射線を意味し、X線、ガンマ線等の電磁放射線とアルファ線、ベータ線、電子線、陽子線、重粒子線、中性子線等の粒子放射線に分類される。
本発明の一実施形態においては、放射線治療や画像下治療に用いられる放射線が、特にX線、電子線、ガンマ線、陽子線、重粒子線、中性子線から選択される放射線であることが好ましい。
【0018】
放射線治療とは、放射線又は放射性物質を用いた疾患の治療を意味する。放射線治療は、病巣への放射線照射を目的とするが、身体の外部から放射線を照射する外部照射が多く行われており、放射線が皮膚を通過することとなる。典型的な放射線治療では、1日あたり0.5~10単位(Grays)の範囲で行われる。
【0019】
放射線治療が行われる疾患としては、がんが挙げられる。放射線治療の対象となるがんであれば、その発生臓器、組織、進行度、原発性又は転移性、被験体の治療履歴等の特徴により特に限定されないが、例えば、乳がん(乳腺がん、乳扁平上皮がん等)、皮膚がん(基底細胞がん、有棘細胞がん(扁平上皮がん)、黒色腫カポジ肉腫、乳房パジェット病、乳房外パジェット病、付属器腫瘍、皮膚T細胞リンパ腫等)、頭頸部がん(口腔がん、咽頭がん、口頭がん、鼻・副鼻腔がん、唾液腺がん、甲状腺がん等)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がん等)、食道がん、胃がん、肝がん、腎臓がん、結腸がん、大腸がん、膵臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、前立腺がん、外陰部がん、が挙げられる。
【0020】
ここで、皮膚下の浅い位置に治療対象となる病変が存在するがんの場合、X線や電子線等の皮膚下の浅い位置で放射線量が最大となる比較的エネルギーの弱い放射線が使用される。これらの放射線の特徴として、病変に近い皮膚に対して強い放射線の影響が及ぶため、放射線治療後に放射線被ばくによる皮膚炎の発生が問題となりやすい。
【0021】
したがって、本実施形態において、放射線が、X線又は電子線等の皮膚下の浅い位置で放射線量が最大となる放射線であり、放射線治療が、皮膚下の浅い位置に病原を有する乳がん、皮膚がん、頭頸部がん等のがんに対する放射線治療であることが好ましい。
【0022】
画像下治療(Interventional Radiology(IVR))とは、放射線診断技術を治療に用いたものであり、例えばX線照射により取得した透視画像を見ながら行う治療を意味する。このIVRは、従来においては開腹手術をせざるを得なかった治療に対しても、非侵襲的に病巣部に対して治療を行うことができるというメリットがあるため、急速に普及している。
一方、IVRは、身体の外部からX線を照射しながら行われるため、X線が患者の皮膚を通過することとなる。
【0023】
画像下治療は、その対象疾患の発生臓器、組織分類、進行度等の特徴により特に限定されないが、例えば、血管内や管組織にカテーテルやステント等の医療器具を挿入し、塞栓療法、化学療法、ドレナージ療法、ステント留置療法等を伴う治療、あるいは非血管病変組織に治療用針を挿入し、病理組織採取、波焼灼療法、凍結療法動脈塞栓療法等を伴う治療が挙げられる。
【0024】
画像下治療で用いる60~120kVpのX線は皮膚下の浅い位置で放射線量が最大となるため、治療後の放射線被ばくによる皮膚炎の発生が問題となりやすい。したがって、本実施形態において、画像下治療は、心臓疾患の治療又は検査、頭頸部の疾患の治療又は検査、あるいは肝臓疾患の治療又は検査に伴うものであることが好ましい。
【0025】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態にかかる方法は、放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後に被験体から取得された試料中の、第一実施形態にかかるいずれかのバイオマーカーを測定することを含む、方法である。
【0026】
本実施形態の方法により、バイオマーカーであるグルタチオンの濃度を取得することができる。ここで、グルタチオンとは、総グルタチオン、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、及びこれらの組み合わせを含む。本実施形態の方法は、これらのいずれかのグルタチオンの濃度の測定を含むが、放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無の予測の精度を考慮すれば、還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度(酸化型グルタチオン濃度に対する還元型グルタチオン濃度の比)の測定を含む方法であることが好ましい。また、本実施形態において、グルタチオン濃度は、絶対濃度であっても、あるいは、絶対濃度と相関して各被験体における絶対濃度の比較ができる値であってもよく、相対濃度、体積あたり重量等であってもよい。
【0027】
本実施形態にかかる一の方法において、グルタチオン濃度は、被験体から採取した血液を遠心分離し、下層部である赤血球を採取し、溶血させ、GSSG/GSH Quantification kit(同仁化学研究所)等の測定キットを用いて、サンプル中の総グルタチオン濃度と酸化型グルタチオン濃度を定量することで測定され、還元型グルタチオン濃度は総グルタチオン濃度と酸化型グルタチオン濃度との差から求められる。測定キットには、例えば酵素、補酵素、バッファー、基質、内部標準物質等が含まれる。
【0028】
また、バイオマーカーの測定は、被験体から採取した試料を用い、他の公知の方法により測定してもよい。例えば、バイオマーカーに特異的な抗体を用い、直接競合法、間接競合法、サンドイッチ法等のELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法、RIA(radioimmunoassay)法、フローサイトメトリー法、イムノクロマトグラィー等の周知の方法によって、バイオマーカーを測定してもよい。
【0029】
本実施形態において、被験者の血液の採取日は、放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測できるレベルのグルタチオン濃度の測定が可能な範囲で限定されず、その被験体の動物種、状態、放射性治療の強度や時間等の種々の条件を考慮して当業者が決定することができるが、精度と簡便性を考慮すれば、被ばく後1~14日に採取するのが好ましく、2~10日がより好ましく、2~6日がさらに好ましい。
【0030】
本実施形態において、バイオマーカーの測定の対象となる被験体は、皮膚炎発生の予測が必要な被験体であればよく、ヒト以外にもウシ、ブタ、サル、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、イヌ等の哺乳動物を被験体としてもよい。
【0031】
[第三実施形態]
第一実施形態にかかるバイオマーカーの濃度を第二実施形態にかかる測定方法により測定し、放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測するためのデータを収集することができる。
【0032】
すなわち、本発明の第三実施形態にかかる方法は、放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測するためのデータを収集する方法であって、放射線被ばく後に被験体から取得された試料のグルタチオン濃度を測定することを含み、試料の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度が第1の基準値以下である場合に皮膚炎が発生する可能性が高いと予測される、方法である。
【0033】
本実施形態かかる一の方法においては、皮膚炎発生の有無を予測するために、被験体の赤血球中のグルタチオン濃度、特に赤血球中の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度(酸化型グルタチオン濃度に対する還元型グルタチオン濃度の割合)を指標として用いるが、かかる指標は、被験体から血液を採取し、例えば第二実施形態にて説明したように測定キットを用いて測定可能である。したがって、本実施形態の方法は、(1)工程が簡便、(2)特殊な装置を必要としない、(3)被験体の侵襲性が低い、(4)結果が出るまでの時間が短い、という特徴を有する。
【0034】
例えば、所定の放射線治療又は画像下治療を受けた被験体集団について、被ばく後にバイオマーカーを測定する。その後、放射線被ばく後の皮膚炎の発生状況及びその程度に基づいて分類し、第1の基準値を決定することができる。例えば、第1の基準値は、放射線被ばく後に軽度の皮膚炎又は一過性皮膚炎が発生した集団における、赤血球中の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度の中央値又は平均値である。あるいは、第1の基準値は、放射線被ばく後に皮膚炎が発生した集団と発生しなかった集団におけるバイオマーカーに基づいて、所望の精度でこれらの集団を判別できる値を当業者が適宜決定してもよい。
別の実施形態において、第1の基準値は、赤血球中の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度の正常値の90%、85%、80%、75%あるいは70%の値であってもよく、所望の精度でこれらの集団を判別できる値を当業者が適宜決定することができる。
【0035】
また、本実施形態にかかる一の方法では、赤血球中の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度が、第1の基準値以下であって第2の基準値より高い場合に一過性皮膚炎が発生する可能性が高く、第2の基準値以下である場合に持続性皮膚炎が発生する可能性が高いと予測される。
【0036】
例えば、所定の放射線治療又は画像下治療を受けた被験体集団について、被ばく後に赤血球中のバイオマーカーを測定する。その後、放射線被ばく後の皮膚炎の発生状況及びその程度を調べ、皮膚炎が発生しなかった集団と、一過性皮膚炎が発生した集団と、持続性皮膚炎が発生した集団とに分類し、第1及び第2の基準値を決定することができる。例えば、第2の基準値は、放射線被ばく後に持続性皮膚炎が発生した集団における、赤血球中の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度の中央値又は平均値である。あるいは、第1及び第2の基準値は、放射線被ばく後に一過性皮膚炎が発生した集団と発生しなかった集団におけるバイオマーカー濃度、及び持続性皮膚炎が発生した集団と発生しなかった集団におけるバイオマーカー濃度に基づいて、所望の精度で、皮膚炎が発生しない集団、一過性皮膚炎が発生した集団、持続性皮膚炎が発生した集団を判別できる値を当業者が適宜決定してもよい。
【0037】
別の実施形態において、第2の基準値は、赤血球中の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度の正常値の65%、60%、55%あるいは50%の値であってもよく、所望の精度でこれらの集団を判別できる値を当業者が適宜決定することができる。
【0038】
ここで、正常値とは、被験体の被ばく前の数値である。あるいは、正常値は、放射線被ばくしていない集団(放射線治療又は画像下治療を受ける前の被験体集団、あるいは健常被験体集団)における数値の中央値又は平均値を意味する。
【0039】
ここで、皮膚炎の発生の有無の基準となる皮膚の状態は、当業者が発生を予測したい皮膚炎のレベルに合わせて適宜設定することができる。
【0040】
被ばく後の赤血球中のバイオマーカーの測定のための血液の採取日は、放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測できるレベルのグルタチオン濃度の測定が可能な範囲であれば特に限定されず、その被験体の動物種、状態、放射性治療の強度や時間等の種々の条件を考慮して当業者が決定することができるが、精度と簡便性を考慮すれば、被ばく後1~14日に採取するのが好ましく、2~10日がより好ましく、2~6日がさらに好ましい。
【0041】
本実施形態において、放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無の予測の精度を考慮すると、第1又は第2の基準値を決定する際に用いる被験体集団の所定の放射線治療又は画像下治療は、予測対象の被験体が受ける治療と同じ条件での放射線治療又は画像下治療であることが好ましい。
【0042】
グルタチオンは全ての哺乳動物の細胞に存在しており、マウスとヒトの赤血球中のグルタチオン濃度は同程度であることが知られている(The Journal of Toxicological Sciences, Vol. 28, No. 5, 455-469, 2003及びFree Radic Biol Med. 2013 Dec;65:742-749)。また、グルタチオン合成や代謝にかかわる遺伝子の多くが、マウスとヒトで共通していることも知られている(https://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?hsa00480及びhttps://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?mmu00480)。
【0043】
[第四実施形態]
本発明の第四実施形態にかかるキットは、本発明の一実施形態にかかるバイオマーカーを測定するための手段を含むキットである。
【0044】
本実施形態のキットを用いることで、グルタチオンの濃度を測定することができる。また、本実施形態のキットは、例えば本願第三実施形態にかかる放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測するためのデータの収集、及びこれに基づく放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無の予測に用いることができる。
【0045】
本実施形態にかかる別のキットは、赤血球中の還元型グルタチオン及び酸化型グルタチオンの濃度を測定するための手段を含む、放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後の皮膚炎の発生の有無を予測するためのキットである。
【0046】
本実施形態のキットを用いることで、被験体の赤血球中の還元型グルタチオン及び酸化型グルタチオンの濃度を測定し、放射線治療又は画像下治療によって放射線被ばくした被験体に皮膚炎が発生するかどうかを予測することができる。
【0047】
赤血球中の還元型グルタチオン及び酸化型グルタチオンの濃度を測定するための手段としては、例えば酵素、補酵素、バッファー、基質、内部標準物質等を含む測定キットを挙げることができるが、特に、酵素、補酵素及び内部標準物質が好ましい。
【0048】
あるいは、当該手段は、バイオマーカーに特異的な抗体及びその可視化試薬であってもよく、例えば直接競合法、間接競合法、サンドイッチ法等のELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法、RIA(radioimmunoassay)法、フローサイトメトリー法、イムノクロマトグラィー等の周知の方法を行うための試薬を含んでもよい。
【0049】
また、本実施形態におけるキットは、赤血球中の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度が第1の基準値以下である場合に皮膚炎が発生する可能性が高いと予測されることが記載された指示書、あるいは、赤血球中の還元型グルタチオン濃度/酸化型グルタチオン濃度が、第1の基準値以下であって第2の基準値より高い場合に一過性皮膚炎が発生する可能性が高く、第2の基準値以下である場合に持続性皮膚炎が発生する可能性が高いと予測されることが記載された指示書をさらに含んでもよい。
【0050】
[第五実施形態]
本発明の第五実施形態にかかる治療方法は、放射線治療又は画像下治療による放射線被ばく後に発生する皮膚炎の治療方法であって、放射線被ばく後に被験体から取得された試料のグルタチオン濃度を測定すること、及び皮膚炎が発生すると予測される場合に皮膚炎の予防的治療を開始することを含む、治療方法である。
【0051】
本実施形態の治療方法によると、本願にかかる第一~第四実施形態のバイオマーカー、バイオマーカーの濃度を測定する方法、データを収集する方法、及び/又はキットを用いて放射線被ばく後に皮膚炎が発生すると予測される場合に、皮膚炎発生前に予防的治療を開始することができ、皮膚炎を軽減することができる。
【0052】
本実施形態において、放射線被ばく後に皮膚炎が発生すると予測され、治療の対象となる動物は、皮膚炎の予防的治療が必要な被験体であればよく、ヒトだけでなく、ウシ、ブタ、サル、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、イヌ等の哺乳動物を被験体としてもよい。
【0053】
予防的治療としては、ヘパリン類似物質クリーム、保湿クリーム、抗酸化薬、抗炎症薬等を用いた治療が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]放射線被ばく後の皮膚炎発生の有無及び程度の確認
1.マウスへのX線照射
6週齢のオスのC57BL/6Jマウスを小動物実験用簡易吸入麻酔装置(NARCOBIT-E;夏目製作所)に入れ、セボフルラン(富士フイルム和光純薬)を用いて麻酔した。ガス濃度は、導入5%、維持3%。眠らせたマウスを照射専用容器に入れ、X線照射装置(MBR-1520R-3;日立パワーソリューションズ)にて、線量率0.69Gy/分、焦点~テーブル面距離550mm、管電圧150kV、電流20mA、フィルター:0.2mmCu及び0.5mmAlの条件下で、それぞれ線量が5、20及び30Gyとなるようにマウスの右脚のみにX線を照射した。
【0056】
2.皮膚炎発生の観察
マウスの照射部皮膚の状態をX線照射後80日まで肉眼で観察した。皮膚の状態の評価は以下の基準で行い、3回の評点の平均値を皮膚反応スコアとした。
・皮膚反応の評価基準
(評点) (皮膚反応の程度)
0 変化なし
0.5 50/50通常との違い、疑いがある
0.75 明確であるがわずかな異常
1 赤みを伴う明確な異常
1.25 重度の発赤及び/又は白い鱗屑及び/又は腫れ
1.5 1つの非常に小さな領域では、鱗状又は痂皮状の外観
1.75 小さな領域での湿潤落屑(1.5より明確)
2 広い領域の損傷(湿性)
2.5 明確な湿った滲出液を伴う皮膚の広い領域の損傷
3 湿った滲出液を伴った皮膚の大部分の損傷
3.5 四肢の完全な湿潤分解-身体にしばしば付いている
【0057】
3.結果
結果を
図1に示す。
図1から、5GyのX線照射を受けたマウスでは、紅斑が全く認められなかったのに対し、20及び30GyのX線照射を受けたマウスでは、照射後14日で紅斑が認められた。
20GyのX線照射を受けたマウスでは、照射後20日以降で症状が収束に向かったのに対し、30GyのX線照射を受けたマウスでは、照射後24日で強い紅斑あるいはわずかな浮腫、痂皮が認められ、その後、照射後80日の時点で症状が持続していた。
以上より、20GyのX線照射を受けた場合に一過性皮膚炎が発生し、30GyのX線照射を受けた場合に持続性皮膚炎が発生することが明らかとなった。
【0058】
[実施例2]放射線被ばく後のグルタチオン濃度の測定
1.マウスへのX線照射
実施例1と同様の方法でマウスにX線照射を行った。処理群として20Gy及び30GyのX線照射を行い、対照群としてX線を照射していないマウスを用意した。
【0059】
2.グルタチオン濃度の測定
各群のマウスを小動物実験用簡易吸入麻酔装置に入れ、セボフルランを用いて麻酔した
。ガス濃度は、導入5%、維持3%。X線照射後2日及び6日に、眠らせたマウスの右頬
にアニマルランセットを穿刺し、1.5mLのマイクロチューブに採血した。必要採血量
は50μL。抗凝固剤として2000Uのヘパリンナトリウム20μLを使用し、採血後
は氷中保存した。採取した全血を、予め4℃に冷却した冷却遠心機にて、4℃、1000
Gで10分間遠心した。遠心終了冷却後、上層部の血漿をマイクロピペットで吸引して廃
棄した。新しい1.5mLのマイクロチューブに5%の5-Sulfosalicyli
c Acid Dihydrate(SSA;東京化成工業)200μLを入れ、下層部
である赤血球を50μL加えて直ちにボルテックスで攪拌した。溶血していることを確認
し、冷却遠心機にて、4℃、3000Gで10分間遠心した。遠心終了冷却後、上清をマ
イクロピペットで100μL吸引し、新しい1.5mLのマイクロチューブに分取した。
そこへmilliQを100μL 加えて攪拌し、-80℃で保存、これをサンプルとし
た。
次に、GSSG/GSH Quantification kit(同仁化学研究所)
を用いて、サンプル中の総グルタチオンとGSSG(酸化型グルタチオン)を定量し、そ
の差からGSH(還元型グルタチオン)量を求めた。具体的手順は次の通り。解凍した保
存サンプルをmilliQで10倍希釈し、96wellプレート(FALCON)に4
0μLずつ、各2well入れ、一方を総グルタチオン用、もう一方をGSSG用とした
。GSSG用のwellにのみMasking solution(キット同椢)1μL
を添加したのち、全てのwell にBuffer solution(キット同椢)
60μLを加え、37℃で1時間インキュベートした。その後、全てのwellにSub
strate working solution(キット同椢)60μLを加え、続け
てEnzyme/coenzyme working solution(キット同椢)
60μLを加えた。室温にて10 分間静置したのち、マイクロプレートリーダー(V
arioskan LUX;Thermo Fisher)で412nmのフィルターを
使い、それぞれの吸光度を測定した。測定後、標準曲線によって吸光度から濃度に変換し
、GSH量を以下の式により求めた。
GSH量=総グルタチオン量-(GSSG量×2)
【0060】
また、指標としての有用性を比較するために、以下の方法に基づいて血液抗酸化能を測定した。
(ステップ1 i-STrap(反応))
Reaction tube(キット同椢)に、常温に戻したSolution A(tert-butyl hydroperoxide(tBuOOH);キット同椢)を各20μL分注し、生理食塩水を100μL加えてボルテックスで攪拌したのち、サンプル(全血)を100μL加え、さらにボルテックスで攪拌した。そこへ、常温に戻したSolution B(2-diphenylphosphinoyl-2-methyl-3,4-dihydro-2H-pyrrole N-oxide(DPhPMPO);キット同椢)を20μLずつ、各チューブ10 秒間隔で加え、ボルテックスで攪拌した。全てのチューブに添加後、さらにボルテックスで攪拌した。1本目のチューブへのSolution B添加時点から30分間、常温で静置した。
【0061】
(ステップ2 i-STrap(抽出))
30分間の静置後、Reaction tubeにクロロホルム/メタノール(2:1
)溶液を1000μL ずつ、各チューブ10秒間隔で添加(揮発性溶媒のため、マイク
ロピペット内のエアーを十分に置換してから、リバースピペッティング法にて添加)し、
1 本目のチューブへのクロロホルム/メタノール溶液添加時点から10分間、ボルテッ
クスで振とうした。10分間の振とう後、予め4℃に冷却した冷却遠心機(KUBOTA
)にReaction tubeをセットし、チューブ内の温度が4℃となるように5分
間予冷却した。その後、4℃、3000Gで10分間遠心し、遠心終了冷却後、上層(水
層)をマイクロピペットで吸引して廃棄した。続いて、下層(クロロホルム/メタノール
層)をマイクロピペットで分取し、Dehydration tube(キット同椢。乾
燥剤として、硫酸ナトリウム0.3g が入っている)に入れて軽く振とうし、氷中で1
5分間冷却した後、-80℃で保存した。
【0062】
(ステップ3 i-STrap(ESR測定))
解凍して常温に戻した各サンプル160μLを石英フラットセル(RST-LC09F;Flashpoint)に引き入れ、XバンドESR分光法(JES-TE200;日本電子)によって測定した。ESR条件は以下の通り。マイクロ波周波数:9.423719000GHz、マイクロ波出力:2.00000mW、フィールドセンター:332.000mT、スイープ幅:0.3000mT、掃引時間:4.0分、時定数0.3秒。また、DPhPMPOスピン付加物強度のシグナルは、左から2本目のマンガンマーカー(Mn2+)強度によって補正された。
【0063】
3.結果
各処理群のX線照射後2日と6日の総グルタチオン濃度、GSSG濃度、GSH濃度及びGSSG濃度/GSH濃度について、対照群における数値に対する割合を算出した。結果を
図2に示す。
また、各処理群のX線照射後2日と6日の総グルタチオン濃度、GSSG濃度、GSH濃度、GSSG濃度/GSH濃度、及び血液抗酸化能についてROC解析を行った。結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
表1から、GSSG濃度/GSH濃度を用いた方法のAUC値が最も高く、予測能が高いことが示された。また、特に20Gyと30Gyとの比較において、グルタチオン濃度を用いた場合のAUC値が、血液抗酸化能を用いた場合のAUC値よりも高いことから、皮膚炎の程度の予測において血液抗酸化能を用いた方法よりもグルタチオン濃度を用いた方法が優れていることが示された。