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特許7493307パーフルオロポリエーテル化合物の分離精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】パーフルオロポリエーテル化合物の分離精製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/30 20060101AFI20240524BHJP
   C08G 65/32 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C08G65/30
C08G65/32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019089574
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2019214704
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-04-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018110635
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 高至
(72)【発明者】
【氏名】坂野 安則
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】小出 直也
【審判官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-199888(JP,A)
【文献】特開2002-59160(JP,A)
【文献】特表2019-522077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 15/00-17/12, B01D 53/02-53/12, C08G 65/00-67/04
JdreamIII(JSTPlus)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々、数平均分子量1,000~10,000である、
(A)分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物
及び
(B)分子鎖の少なくとも片方の末端に1級アミノ基と反応または塩を形成可能な基を有するパーフルオロポリエーテル化合物
を含む混合物に、
(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤
を接触させ、その後(C)固体吸着剤に吸着した(B)パーフルオロポリエーテル化合物を分離する工程を有することを特徴とするパーフルオロポリエーテル化合物の分離精製方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパーフルオロポリエーテル化合物の分離精製方法であって、
夫々、数平均分子量1,000~10,000である、
(A)分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物
及び
(B)分子鎖の少なくとも片方の末端に1級アミノ基と反応または塩を形成可能な官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物
を含む混合物に、
(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤
を接触させ、その後、該混合物から(C)固体吸着剤に吸着した(B)パーフルオロポリエーテル化合物を分離して(A)分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物を回収する工程を有することを特徴とする、少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物中の分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物の分離精製方法。
【請求項3】
(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤が、酸化アルミニウム、シリカゲル、酸化マグネシウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート及び珪藻土からなる群から選択される少なくとも1種の表面に、1級アミノ基修飾処理を施した固体吸着剤である請求項1又は2に記載の分離精製方法。
【請求項4】
(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤が、表面に1級アミノ基を有するシリカゲルである請求項1~3のいずれか1項に記載の分離精製方法。
【請求項5】
(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤が、シリカゲルと1級アミノ基を有するシランカップリング剤との反応生成物である請求項1~4のいずれか1項に記載の分離精製方法。
【請求項6】
前記(A)成分における1級アミノ基と反応しない基が、水酸基、アルケニル基、アミノ基、チオール基及び水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基から選ばれる基である請求項1~5のいずれか1項に記載の分離精製方法。
【請求項7】
前記(B)成分における1級アミノ基と反応または塩を形成可能な基が、カルボキシル基、エステル基、アクリル基、メタクリル基、ケトン基及び酸無水物基から選ばれる基である請求項1~6のいずれか1項に記載の分離精製方法。
【請求項8】
前記(A)成分における1級アミノ基と反応しない基が、水酸基、アルケニル基及び水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基から選ばれる基である請求項6に記載の分離精製方法。
【請求項9】
前記(B)成分における1級アミノ基と反応または塩を形成可能な基が、カルボキシル基及び/またはエステル基である請求項7に記載の分離精製方法。
【請求項10】
(A)成分及び(B)成分が、主鎖に下記式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖Rf
【化1】
(式(1)中、p、q、r及びsは、互いに独立に、0~200の整数であり、かつ、10≦(p+q+r+s)≦300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてもよい)を有するパーフルオロポリエーテル化合物である請求項1~9のいずれか1項に記載の分離精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物において、目的とする末端官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物中に混在する目的外の末端官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を分離除去して、目的とする官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物を効率よく且つ選択的に取り出す方法に関する。特に末端に水酸基やアルケニル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物中に末端にカルボキシル基やエステル基を含有するパーフルオロポリエーテル化合物が混在する場合において、末端に水酸基やアルケニル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物のみを効率よく取り出す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子鎖の片末端に官能性基を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(以下、片末端誘導体という)や、分子鎖の両末端に官能性基を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(以下、両末端誘導体という)(以下、まとめて官能性ポリマーという)は、一般に界面活性剤や表面処理剤などの各種誘導体の前駆体として使用される。例えば、ポリマーの重合に有用な界面活性剤の前駆体として、上記官能性ポリマーのアクリル誘導体、アミン誘導体、イソシアネート誘導体が挙げられる。また表面処理剤の前駆体として、上記官能性ポリマーのアルコール誘導体、アルケニル(ビニル、アリル)誘導体、アルコキシ誘導体、クロル誘導体、シラザン誘導体等が挙げられる。表面処理剤の中でも、防汚性能や滑り性を主目的とする場合は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算での数平均分子量が2,000~8,000程度を有する物が好ましいとされてきた。
【0003】
一般的にポリマーは、特に直鎖状ポリマーは、分子量の増大に伴い、相対的に末端官能基濃度が低下する。ポリマーにおいて、末端官能基によって目的とする性能を発揮させるためには、末端官能基の封鎖率と変性率が重要であり、これらが不十分だと、ポリマーは目的とする性能を発揮しにくくなる。末端変性の反応が不十分な場合や、変性前の元々の原料に不純物として異なる末端を有するポリマーが混在する場合に末端変性率が低くなってしまうことがある。いずれの場合であっても、目的外の末端を有するポリマー成分を除去する方法が求められていた。
【0004】
主鎖にパーフルオロポリエーテル構造を有するポリマーに関し、固体吸着剤を使用して目的の末端を有するポリマーを精製する方法としては、下記の方法が開示されている。
【0005】
特許文献1及び2には、まず、両末端官能性ポリマーを部分フッ素化して、片末端官能性ポリマー、両末端官能性ポリマー、及び無官能性ポリマーの混合物を製造した後、副生した無官能性ポリマーを除去することが記載されている。特許文献1及び2には、無官能性ポリマーの除去方法として、イオン交換樹脂による吸着法や薄膜蒸留法が記載されている。イオン交換樹脂による方法では、樹脂に含まれる有機成分が抽出溶剤に溶出する、樹脂の着色成分が溶出する、一部の溶剤では、樹脂が膨潤して抽出効率が悪くなるなどの欠点がある。薄膜蒸留法では、無官能性ポリマーを主成分として分離できるが、通常ポリマーは分子量分布を有するため、選択的分離には限界がある。
【0006】
特許文献3は、磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法に関し、両末端にピペロニル基等の官能基を導入したフッ素系潤滑剤を、超臨界状態の二酸化炭素を移動相としシリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに付し、複数の画分に分別し、得られた画分から官能基導入率の高い画分を選択することにより、平均官能基導入率が高い、特には95%以上であるフッ素系潤滑剤を製造することが記載されている。特許文献3には上記方法により、両末端官能性ポリマーの末端官能基導入率を90%程度から99%に向上させることが記載されている。
【0007】
特許文献4には、末端官能基としてカルボキシル基を有する片末端官能性ポリマー、両末端官能性ポリマー、及び無官能性ポリマーの混合物をフッ化有機溶媒に溶解し、この溶液をシリカゲル等の固相と接触させて官能性ポリマーを固相に吸着させ、ろ過等によって無官能性ポリマーが溶解した溶液と固相を分離し、その後、固相をフッ化有機溶媒とアルコールとの混合溶媒に接触させてろ過し、片末端官能性ポリマーを主成分とするポリマーを分離することが記載されている。
【0008】
特許文献5には、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有カルボン酸化合物の分離方法が記載されている。具体的には、末端官能基としてカルボキシル基を有する片末端官能性ポリマー、両末端官能性ポリマー、及び無官能性ポリマーの混合物とフッ素原子含有非極性溶剤と極性固定相とを混合し、非極性移動相を用いて極性固定相から無官能性ポリマーを分離すること、その後、極性移動相を用いて極性固定相から片末端官能性ポリマー及び両末端官能性ポリマーを分離することが記載されている。さらに、極性移動相は、フッ素原子含有極性溶媒、フッ素原子含有非極性溶剤及びフッ素原子含有極性溶媒の組合せ、又はフッ素原子含有非極性溶剤及びフッ素原子非含有極性溶媒の組合せであることが記載されており、フッ素原子含有極性溶媒として、フッ素原子含有アルコール、フッ素原子含有カルボン酸、及びフッ素原子含有スルホン酸;フッ素原子非含有極性溶媒として、フッ素原子非含有カルボン酸、フッ素原子非含有フェノール、及びフッ素原子非含有スルホン酸といった酸性極性溶媒が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-233157号公報
【文献】特開2012-72272号公報
【文献】特開2001-164279号公報
【文献】特表2015-535017号公報
【文献】特許第5668888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3に記載の方法は、無官能性パーフルオロポリエーテル化合物を除去して両末端官能性ポリマーを高濃度で含む組成物を得るためには有効な手段であるが、無官能基以外の異種の官能基の分離には適用できない。特許文献4に記載の方法は末端カルボキシル基を有するポリマーと無官能ポリマーを分離した後、アルコールを使用してシリカゲルに吸着した成分を取り出す。フッ素主鎖に隣接するカルボキシル基は、常温でアルコールと反応してアルキルエステルになることを応用した方法だが、これもまた無官能基以外の異種の官能基の分離には適用できない。特許文献5に記載の方法は酸性極性化合物を使用する。酸性極性化合物は取扱いに注意を要したり、金属部品への腐食の可能性が懸念されるため好ましくない。また、この方法も無官能基以外の異種の官能基の分離には適用できない。
【0011】
したがって、本発明は、少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物から、目的とする官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物を効率よく且つ選択的に取り出す方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意研究した結果、1級アミノ基を有する固体吸着剤を利用し、少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物から、目的外の官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を効率よく除去することで、目的の官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物のみを簡便に、効率よく且つ選択的に得る方法を見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち本発明は、以下のパーフルオロポリエーテル化合物の分離精製方法を提供する。
[1]
夫々、数平均分子量1,000~10,000である、
(A)分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物
及び
(B)分子鎖の少なくとも片方の末端に1級アミノ基と反応または塩を形成可能な基を有するパーフルオロポリエーテル化合物
を含む混合物に、
(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤
を接触させ、その後(C)固体吸着剤に吸着した(B)パーフルオロポリエーテル化合物を分離する工程を有することを特徴とするパーフルオロポリエーテル化合物の分離精製方法。
[2]
[1]に記載のパーフルオロポリエーテル化合物の分離精製方法であって、
夫々、数平均分子量1,000~10,000である、
(A)分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物
及び
(B)分子鎖の少なくとも片方の末端に1級アミノ基と反応または塩を形成可能な官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物
を含む混合物に、
(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤
を接触させ、その後、該混合物から(C)固体吸着剤に吸着した(B)パーフルオロポリエーテル化合物を分離して(A)分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物を回収する工程を有することを特徴とする、少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物中の分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物の分離精製方法。
【0014】
[3]
(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤が、酸化アルミニウム、シリカゲル、酸化マグネシウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート及び珪藻土からなる群から選択される少なくとも1種の表面に、1級アミノ基修飾処理を施した固体吸着剤である[1]又は[2]に記載の分離精製方法。
【0015】
[4]
(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤が、表面に1級アミノ基を有するシリカゲルである[1]~[3]のいずれかに記載の分離精製方法。
【0016】
[5]
(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤が、シリカゲルと1級アミノ基を有するシランカップリング剤との反応生成物である[1]~[4]のいずれかに記載の分離精製方法。
【0017】
[6]
前記(A)成分における1級アミノ基と反応しない基が、水酸基、アルケニル基、アミノ基、チオール基及び水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基から選ばれる基である[1]~[5]のいずれかに記載の分離精製方法。
【0018】
[7]
前記(B)成分における1級アミノ基と反応または塩を形成可能な基が、カルボキシル基、エステル基、アクリル基、メタクリル基、ケトン基及び酸無水物基から選ばれる基である[1]~[6]のいずれかに記載の分離精製方法。
【0019】
[8]
前記(A)成分における1級アミノ基と反応しない基が、水酸基、アルケニル基及び水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基から選ばれる基である[6]に記載の分離精製方法。
【0020】
[9]
前記(B)成分における1級アミノ基と反応または塩を形成可能な基が、カルボキシル基及び/またはエステル基である[7]に記載の分離精製方法。
【0021】
[10]
(A)成分及び(B)成分が、主鎖に下記式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖Rf
【化1】
(式(1)中、p、q、r及びsは、互いに独立に、0~200の整数であり、かつ、10≦(p+q+r+s)≦300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてもよい)
を有するパーフルオロポリエーテル化合物である[1]~[9]のいずれかに記載の分離精製方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法によれば、少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物から、目的とする官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物を効率よく且つ選択的に取り出すことができる。
したがって、例えば、末端官能基の変換反応を行なった際に生成する、少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物に対して本発明の方法を用いれば、目的とする末端官能基の変性率が高いパーフルオロポリエーテル化合物を得ることができる。こうして得られる目的とする末端官能基の変性率が高いパーフルオロポリエーテル化合物は、目的とする末端官能基に由来する性能が十分に発揮され、界面活性剤や表面処理剤などの各種誘導体の前駆体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、夫々、数平均分子量1,000~10,000である、(A)分子鎖末端(通常は、分子鎖の両末端)に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物及び(B)分子鎖の少なくとも片方の末端(分子鎖の片末端及び/又は両末端)に1級アミノ基と反応または塩を形成可能な官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物に、(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤を接触させ、その後、該混合物から(C)固体吸着剤表面の1級アミノ基と反応または塩を形成して該(C)固体吸着剤に吸着した前記(B)成分のパーフルオロポリエーテル化合物を分離して(A)分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物を回収する工程を有する、少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物中の分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物の分離精製方法である。
【0024】
[パーフルオロポリエーテル化合物]
本発明が精製の目的とする分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む精製前の混合物は、夫々、数平均分子量1,000~10,000である、以下の(A)成分及び(B)成分からなる少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物(ポリフルオロオキシアルキレン化合物)を含む混合物である。
(A)分子鎖末端に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有するパーフルオロポリエーテル化合物
(B)分子鎖の少なくとも片方の末端に1級アミノ基と反応または塩を形成可能な官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物
【0025】
このような、(A)成分及び(B)成分を含有する混合物、即ち、少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含有する混合物は、分子鎖の末端官能基の変換反応を行なった際に、該変換反応が不十分な場合に生成し得る。
【0026】
本発明においてパーフルオロポリエーテル化合物(ポリフルオロオキシアルキレン化合物)の数平均分子量とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量である。
[ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法]
[測定条件]
展開溶媒:ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)-225
流量:1mL/min.
検出器:蒸発光散乱検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel Multipore HXL-M
7.8mmφ×30cm 2本使用
カラム温度:35℃
試料注入量:100μL(濃度0.3質量%のHCFC-225溶液)
【0027】
また、パーフルオロポリエーテル化合物の数平均分子量は19F-NMR測定から計算することもできる。該方法は、本発明のパーフルオロポリエーテル化合物を下記式(2)
【化2】
(Rfはパーフルオロポリエーテル鎖、X1及びX2は末端基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい)と表した場合に、X1、X2及びRfの各構造が明確であり、19F-NMR測定で各々の構造に起因するピークが検出できる場合に使用することができる。即ち、式(2)で表される化合物の19F-NMR測定を行ない、末端基X1、X2とポリマー主鎖部分Rfの積分値から数平均分子量を算出することができる。19F-NMR測定条件は一般的なものでよく、従来公知の方法に従い適宜選択されればよい。
【0028】
本発明の(A)成分及び(B)成分の各パーフルオロポリエーテル化合物(ポリフルオロオキシアルキレン化合物)は、(CF2O)、(C24O)、(C36O)、及び(C48O)から選ばれる1以上の繰返し単位が複数個結合された、ポリフルオロオキシアルキレン構造(パーフルオロポリエーテル構造)を有する、基本的に直鎖状の化合物である。特には、該繰返し単位を10~300個、好ましくは15~200個、さらに好ましくは20~100個、より好ましくは25~80個有するのがよい。
なお、本発明において、直鎖状とは、主鎖のポリフルオロオキシアルキレン構造(パーフルオロポリエーテル構造)を構成する繰り返し単位である2価のフルオロオキシアルキレン基同士が直鎖状に連結した構造であることを意味するものであって、該ポリフルオロオキシアルキレン構造(パーフルオロポリエーテル構造)を構成するそれぞれのフルオロオキシアルキレン基自体は直鎖状であっても分岐状であってもよい。従って、本発明の(A)成分及び(B)成分の各パーフルオロポリエーテル化合物は、通常、該ポリフルオロオキシアルキレン構造の両末端にそれぞれ分子鎖末端基を1個ずつ(即ち、分子中に2個)有するものである。
【0029】
上記各繰返し単位は直鎖型及び分岐型のいずれであってもよい。例えば下記の単位が挙げられる。
-CF2O-
-CF2CF2O-
-CF2CF2CF2O-
-CF(CF3)CF2O-
-CF2CF2CF2CF2O-
-C(CF32O-
【0030】
即ち、本発明のパーフルオロポリエーテル化合物(ポリフルオロオキシアルキレン化合物)を式(2)で表した場合、Rfで表されるパーフルオロポリエーテル鎖は、式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖が好ましく、式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖がより好ましい。
【0031】
【化3】
式(1)中、p、q、r、及びsは、互いに独立に、0~200の整数であり、かつ、10≦(p+q+r+s)≦300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてもよい。
【0032】
【化4】
式(3)中、p’及びq’は互いに独立に5~200の整数であり、r’及びs’は互いに独立に0~100の整数であり、かつ、10≦(p’+q’+r’+s’)≦300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。
【0033】
-(A)成分-
(A)成分は主鎖がパーフルオロポリエーテル構造であって、分子鎖末端(通常は、分子鎖の両末端)に1級アミノ基と反応しない官能基のみを有する化合物であり、以下の一般式(2A)で表されるものが好ましい。
【化5】
Rfはパーフルオロポリエーテル鎖であり、上述した式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖が好ましく、上述した式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖がより好ましい。X1A及びX2Aは1級アミノ基と反応しない官能基のみを有する末端基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
「アミノ基と反応しない官能基」としては、水酸基、アルケニル基、アミノ基、チオール基、水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基などが例示される。「アミノ基と反応しない官能基」のより好ましい例として、水酸基、アルケニル基、水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基などが例示される。
これらの1級アミノ基と反応しない官能基のみを有する末端基、即ち、X1A及びX2Aの具体例としては、下記の基が例示される。
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
-(B)成分-
(B)成分は主鎖がパーフルオロポリエーテル構造であって、分子鎖の少なくとも片方の末端(分子鎖の片末端及び/又は両末端)に1級アミノ基と反応または塩を形成可能な官能基を有する化合物であり、本発明の分離精製方法において、後述する(C)成分の固体吸着剤の表面に存在する1級アミノ基と反応または塩を形成して該(C)成分に吸着して分離される成分であって、以下の一般式(2B)で表されるものが好ましい。
【化11】
Rfはパーフルオロポリエーテル鎖であり、上述した式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖が好ましく、上述した式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖がより好ましい。X1B及びX2Bのうち少なくとも1つ(即ち、X1B及びX2Bの両方あるいはどちらか一方)は1級アミノ基と反応または塩を形成可能な官能基を有する末端基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。
「1級アミノ基と反応または塩を形成可能な官能基」としては、カルボキシル基、エステル基、アクリル基、メタクリル基、ケトン基、酸無水物基などが例示される。「1級アミノ基と反応または塩を形成可能な官能基」のより好ましい例として、カルボキシル基、エステル基などが例示される。
1B及びX2Bのうち、(B)成分中に必須とされる1級アミノ基と反応または塩を形成可能な官能基を有する末端基の具体例としては、下記の基が例示される。
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
また、X1B及びX2Bのうち、(B)成分中での存在は任意である、1級アミノ基と反応または塩を形成可能な官能基を有する末端基以外の官能基の具体例としては、上述したX1A及びX2Aとして例示した官能基と同様の基が例示される。
【0043】
[(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤]
本発明の方法における1級アミノ基を有する固体吸着剤とは、表面に1級アミノ基を有する固体物である。本発明において、固体物は、好ましくは、酸化アルミニウム、シリカゲル、酸化マグネシウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート、及び珪藻土からなる群から選択されるものである。特に好ましくはシリカゲルである。シリカゲルに1級アミノ基を有するシランカップリング剤を混合・反応させることによって、表面を1級アミノ基で修飾したシリカゲルを得ることができる。1級アミノ基を有する固体吸着剤は市販のものを使用することができる。BET法による比表面積20m2/g以上を有する物が好適に使用でき、特に好ましくは100m2/g以上を有するものがよい。
【0044】
1級アミノ基を有する固体吸着剤の量は、(B)成分と反応するのに十分な量であればよく、限定されるものではない。例えば、パーフルオロポリエーテル化合物の混合物100質量部に対して1~500質量部、好ましくは3~100質量部がよい。
【0045】
[パーフルオロポリエーテル化合物の精製方法]
本発明は、前記(A)成分と(B)成分を含んでなる少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含有する混合物に適用される。(A)成分と(B)成分を含有する混合物に、(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤を接触させる。
【0046】
このとき、パーフルオロポリエーテル化合物の混合物の粘度が高い場合は、(B)成分と(C)成分との反応に影響を与えない範囲で、該混合物を溶剤で希釈してもよい。溶剤としては、パーフルオロポリエーテル化合物との相溶性を考慮し、フッ素変性された溶剤が好ましい。これらの溶剤としては、
パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロウンデカン、パーフルオロドデカンなどの、炭素数3~12のパーフルオロアルカン類;
パーフルオロジプロピルエーテル、パーフルオロジブチルエーテル、パーフルオロ-2-トリフルオロメチル-4-オキサノナン、パーフルオロジペンチルエーテルなどの、炭素数6~10のパーフルオロモノエーテル類;
パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリアミルアミン(パーフルオロトリペンチルアミン)などの、炭素数3~15のパーフルオロアルキルアミン類;
ヘキサフルオロベンゼンなどの、炭素数6~12のパーフルオロ芳香族炭化水素;
R-113(C23Cl3)、2,2,3,3-テトラクロロヘキサフルオロブタンなどの、炭素数2~4のクロロフルオロカーボン類;
HCFC225(CF3CF2CHCl2、CClF2CF2CHClF)などの、炭素数3~6のハイドロクロロフルオロカーボン類;
37OCH3、C49OCH3、C49OC25、C25CF(OCH3)C37、CF3CH2OCF2CHF2、CHF2CF2CF2CF2CH2OCH3、CF3CHFCF2OCH2CF2CHF2、CHF2CF2CH2OCHFCF3、CHF2OCH2CF2CHFCF3、CF3CHFCF2OCH2CF2CF3、CHF2OCH2CF2CHF2、CF3CHFCF2OCH2CF3、CHF2CF2OCH2CF2CF3、CF3CH2OCH2CF3、CF3CH2OCF2CHF2、CF3CHFCF2OCH3、CHF2OCH2CF2CF3、HCF2CF2OC49などの、炭素数3~7のハイドロフルオロモノエーテル類;
CF3CH2CF2CH3、CF3CHFCHFC25、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、CF3CF2CF2CF2CH2CH3、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH3、CF3CF2CF2CF2CF2CHF2などの、炭素数3~8のハイドロフルオロアルカン類;
49CH=CH2、C613CH=CH2、C817CH=CH2などの、炭素数3~10のフッ素原子含有アルケン;
m-キシレンヘキサフルオリド(1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)、トリフルオロメチルベンゼン、モノフルオロベンゼンなどの、炭素数6~12のフッ素原子含有芳香族炭化水素;
などが例示される。
【0047】
(A)成分と(B)成分を含有する混合物に、(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤を接触させる方法としては、必要に応じて上記溶剤で希釈した(A)成分と(B)成分を含有する混合物に、(C)1級アミノ基を有する固体吸着剤を添加配合し、(B)成分と(C)成分とが十分反応するまで、(A)成分と(B)成分を含有する混合物と(C)成分との混合物を撹拌混合する方法が挙げられる。このとき、反応を早めるために該混合物を加熱してもよい。加熱温度は30~150℃、好ましくは40℃~100℃である。撹拌混合時間は、1~20時間、好ましくは1~8時間である。
その後、該混合物を濾過等の方法で固相((B)成分を吸着した(C)固体吸着剤)と液相((A)成分)とを分離することで、(B)成分が除去された(A)成分を得ることができる。
【0048】
(A)成分と(B)成分を含有する混合物が生成する事例としては、例えば、末端カルボキシル基または末端エステル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物において、還元反応により末端カルボキシル基または末端エステル基を末端水酸基に変換する際、還元反応が不十分な場合、末端カルボキシル基または末端エステル基が残存する場合が挙げられる。これによって、該還元反応後の生成物は、目的とする末端水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と原料化合物由来の末端基(即ち、末端カルボキシル基または末端エステル基)を有するパーフルオロポリエーテル化合物が混在した混合物となる。
【実施例
【0049】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、数平均分子量は、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量である。
[ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法]
[測定条件]
展開溶媒:ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)-225
流量:1mL/min.
検出器:蒸発光散乱検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel Multipore HXL-M
7.8mmφ×30cm 2本使用
カラム温度:35℃
試料注入量:100μL(濃度0.3質量%のHCFC-225溶液)
【0050】
(A)成分のパーフルオロポリエーテル化合物として、下記構造の化合物(A-1)~(A-3)を用いた。
【0051】
(A-1)両末端に水酸基を有する下記式(4)の化合物
【化14】
(パーフルオロポリエーテル鎖(-O(CF2O)p-(C24O)q-)の数平均分子量=約3700、p/q比=1.0。なお、化合物中に、(CF2CF2CF2O)構造及び(CF2CF2CF2CF2O)構造を少量含有しているが、微量であるため無視するものとし、本実施例では表記しない。)
【0052】
(A-2)両末端にアルケニル基を有する下記式(5)の化合物
【化15】
(パーフルオロポリエーテル鎖の数平均分子量=約3700、p/q比=1.0。なお、化合物中に、(CF2CF2CF2O)構造及び(CF2CF2CF2CF2O)構造を少量含有しているが、微量であるため無視するものとし、本実施例では表記しない。)
【0053】
(A-3)片末端にトリフルオロメチル基を有し、片末端に水酸基とアルケニル基を有する下記式(6)の化合物
【化16】
(パーフルオロポリエーテル鎖の数平均分子量=約5600、p/q比=1.0。なお、化合物中に、(CF2CF2CF2O)構造及び(CF2CF2CF2CF2O)構造を少量含有しているが、微量であるため無視するものとし、本実施例では表記しない。)
【0054】
(B)成分のパーフルオロポリエーテル化合物として、下記構造の化合物(B-1)~(B-2)を用いた。
【0055】
(B-1)両末端にメチルエステル基を有する下記式(7)の化合物
【化17】
(パーフルオロポリエーテル鎖の数平均分子量=約3700、p/q比=1.0。なお、化合物中に、(CF2CF2CF2O)構造及び(CF2CF2CF2CF2O)構造を少量含有しているが、微量であるため無視するものとし、本実施例では表記しない。)
【0056】
(B-2)片末端にカルボキシル基を有する下記式(8)の化合物
【化18】
(パーフルオロポリエーテル鎖の数平均分子量=約3700、p/q比=1.0。なお、化合物中に、(CF2CF2CF2O)構造及び(CF2CF2CF2CF2O)構造を少量含有しているが、微量であるため無視するものとし、本実施例では表記しない。)
【0057】
[実施例1]
温度計、攪拌機、及びジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに、(A-1)の化合物9.0g、(B-1)の化合物1.0g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン5.0g、及び(C)成分として表面が1級アミノ基修飾されたシリカゲル(シリカゲル60(球状)NH2;関東化学社製)2.0gを仕込み、60℃で6時間混合した。その後、該フラスコ中の混合物をメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをパーフルオロヘキサン10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮したところ8.8gの無色透明な精製物を回収した。該精製物を19F-NMRで解析したところ、(B-1)由来のピークは観測されず(A-1)由来のピークのみ観察された。
【0058】
[実施例2]
温度計、攪拌機、及びジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに、(A-1)の化合物9.0g、(B-2)の化合物1.0g、アサヒクリンAC6000(旭硝子社製ハイドロフルオロアルカン;C61325)5.0g、及び(C)成分として表面が1級アミノ基修飾されたシリカゲル(シリカゲル60(球状)NH2;関東化学社製)2.0gを仕込み、60℃で6時間混合した。その後、該フラスコ中の混合物をメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをパーフルオロヘキサン10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮したところ8.7gの無色透明な精製物を回収した。該精製物を19F-NMRで解析したところ、(B-2)成分由来のピークは観測されず(A-1)由来のピークのみ観察された。
【0059】
[実施例3]
温度計、攪拌機、及びジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに、(A―2)の化合物9.5g、(B-1)の化合物0.5g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン5.0g、及び(C)成分として表面が1級アミノ基修飾されたシリカゲル(シリカゲル60(球状)NH2;関東化学社製)1.0gを仕込み、60℃で6時間混合した。その後、該フラスコ中の混合物をメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをパーフルオロヘキサン10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮したところ8.7gの無色透明な精製物を回収した。該精製物を19F-NMRで解析したところ、(B-1)成分由来のピークは観測されず(A-2)由来のピークのみ観察された。
【0060】
[実施例4]
温度計、攪拌機、及びジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに、(A-3)の化合物9.5g、(B-1)の化合物0.5g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン5.0g、及び(C)成分として表面が1級アミノ基修飾されたシリカゲル(シリカゲル60(球状)NH2;関東化学社製)1.0gを仕込み、70℃で4時間混合した。その後、該フラスコ中の混合物をメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをパーフルオロヘキサン10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮したところ8.8gの無色透明な精製物を回収した。該精製物を19F-NMRで解析したところ、(B-1)成分由来のピークは観測されず(A-3)由来のピークのみ観察された。
【0061】
[比較例1]
実施例1と同条件で、(C)成分にかえて表面修飾していないシリカゲルを使用した。即ち、
温度計、攪拌機、及びジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに、(A-1)の化合物9.0g、(B-1)の化合物1.0g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン5.0gを仕込んだ。この時の混合物を19F-NMRで解析したところ、(A-1)成分と(B-1)成分の比率(モル比)は89:11であった。前記混合液に、シリカゲル(シリカゲル60(球状);関東化学社製)2.0gを仕込み、60℃で6時間混合した。その後、該フラスコ中の混合物をメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをパーフルオロヘキサン10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮したところ8.1gの無色透明な精製物を回収した。該精製物を19F-NMRで解析したところ、(A-1)成分由来のピークと(B-1)由来のピークが観察された。(A-1)成分と(B-1)成分の比率(モル比)は88:12であり、(B-1)成分は除去されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、例えば、パーフルオロポリエーテル化合物において、末端官能基の変換反応を行なった際に生成する、少なくとも2種のパーフルオロポリエーテル化合物を含有する混合物に対して有用である。パーフルオロポリエーテル化合物の混合物に、本発明の方法を用いれば、目的とする末端官能基の変性率が高いパーフルオロポリエーテル化合物を得ることができる。こうして得られる目的とする末端官能基の変性率が高いパーフルオロポリエーテル化合物は、目的とする末端官能基に由来する性能が十分に発揮され、界面活性剤や表面処理剤などの各種誘導体の前駆体として有用である。