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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/00 20060101AFI20240524BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20240524BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20240524BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B24B53/00 K
B24B27/06 M
B24B53/12 Z
H01L21/78 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020029884
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133443
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 航平
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077611(JP,A)
【文献】特開2016-112674(JP,A)
【文献】特開昭61-079568(JP,A)
【文献】特開平05-138534(JP,A)
【文献】特開平11-333718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00
B24B 27/06
B24B 53/12
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒がボンドで固定された環状の切削ブレードを装着するスピンドルを有する切削ユニットと、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面と平行な割り出し送り方向及び該保持面に直交する切り込み送り方向に該切削ユニットを移動させる移動ユニットと、該チャックテーブルを該保持面と平行で該割り出し送り方向と直交する加工送り方向に移動させる加工送りユニットと、を備える切削装置であって、
棒状のドレッシング材を該保持面と平行方向に繰り出す繰り出し機構を、該加工送りユニットの側方で該切削ユニットの該切り込み送り方向の下方に配置し、
該切削ブレードを該ドレッシング材の先端の上方に位置付けた後、該繰り出し機構で繰り出された該ドレッシング材の先端を該切削ブレードが切断するまで該切削ユニットを下降して、該切削ブレードをドレッシングすることを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該チャックテーブルと、該切削ブレードが装着された該スピンドルの先端とを収容する加工室を備え、該繰り出し機構の該割り出し送り方向の該加工送りユニット寄りの端部は該加工室内に、該繰り出し機構の該割り出し送り方向の該加工送りユニットから離れた側の端部は該加工室外に配置され、該ドレッシング材は該繰り出し機構の該割り出し送り方向の該加工送りユニットから離れた側の端部から供給する請求項1記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスウェーハや樹脂パッケージ基板、セラミックス基板、ガラス基板等各種板状の被加工物を切削加工するのに、砥粒がボンドで固定された切削ブレードをスピンドルに装着する切削装置が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5571331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した切削装置の切削ブレードは、消耗する事で一定以上の切れ味が保てる特徴があるが、被加工物の種類によっては、加工中に目潰れや目詰まりが発生しやすく、定期的に切削ブレードを目立てするドレッシングが必要な場合がある。そのため、チャックテーブルの側方にドレッシングプレートを保持するドレッシングテーブルなどのドレッシング材を配置した切削装置も開発されている。
【0005】
しかしながら、前述した切削装置は、ドレッシング材の面積分、装置の面積が大きくなってしまうという課題が有った。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削ブレードのドレッシングのためのドレッシング材を設けても装置の大型化を抑制することができる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、砥粒がボンドで固定された環状の切削ブレードを装着するスピンドルを有する切削ユニットと、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面と平行な割り出し送り方向及び該保持面に直交する切り込み送り方向に該切削ユニットを移動させる移動ユニットと、該チャックテーブルを該保持面と平行で該割り出し送り方向と直交する加工送り方向に移動させる加工送りユニットと、を備える切削装置であって、棒状のドレッシング材を該保持面と平行方向に繰り出す繰り出し機構を、該加工送りユニットの側方で該切削ユニットの該切り込み送り方向の下方に配置し、該切削ブレードを該ドレッシング材の先端の上方に位置付けた後、該繰り出し機構で繰り出された該ドレッシング材の先端を該切削ブレードが切断するまで該切削ユニットを下降して、該切削ブレードをドレッシングすることを特徴とする。
【0008】
前記切削装置において、該チャックテーブルと、該切削ブレードが装着された該スピンドルの先端とを収容する加工室を備え、該繰り出し機構の該割り出し送り方向の該加工送りユニット寄りの端部は該加工室内に、該繰り出し機構の該割り出し送り方向の該加工送りユニットから離れた側の端部は該加工室外に配置され、該ドレッシング材は該繰り出し機構の該割り出し送り方向の該加工送りユニットから離れた側の端部から供給されても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、切削ブレードのドレッシングのためのドレッシング材を設けても装置の大型化を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された切削装置の要部の構成を模式的に示す平面図である。
図3図3は、図1に示された切削装置の原点位置検出ユニットの構成を模式的に示す図である。
図4図4は、図3に示された原点位置検出ユニットのパルス光の光量を光電変換部が変換した電圧の電圧値を示す図である。
図5図5は、図1に示された切削装置のドレッシング方法の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、図5に示されたドレッシング方法のドレッシング材供給ステップを模式的に一部断面で示す正面図である。
図7図7は、図5に示されたドレッシング方法のドレッシング材繰り出しステップを模式的に一部断面で示す正面図である。
図8図8は、図5に示されたドレッシング方法のドレッシング材切削ステップを模式的に示す正面図である。
図9図9は、図5に示されたドレッシング方法のドレッシング材切削ステップにおいてドレッシング材を切削した切削ユニットを上昇させた状態を模式的に示す正面図である。
図10図10は、図5に示されたドレッシング方法の原点位置検出ステップを模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示された切削装置の要部の構成を模式的に示す平面図である。図3は、図1に示された切削装置の原点位置検出ユニットの構成を模式的に示す図である。図4は、図3に示された原点位置検出ユニットのパルス光の光量を光電変換部が変換した電圧の電圧値を示す図である。
【0013】
実施形態1に係る図1に示す切削装置1は、被加工物200を切削(加工)する加工装置である。実施形態1では、被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0014】
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウェーハでもよく、ウェーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックスで構成されたセラミックス基板、フェライト基板、又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板、ガラス基板等の各種の板状の被加工物でも良い。実施形態1において、被加工物200は、裏面204が外周縁に環状フレーム205が装着された粘着テープ206に貼着されて、環状フレーム205に支持されている。
【0015】
図1に示された切削装置1は、被加工物200をチャックテーブル10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削して、被加工物200を個々のデバイス203に分割する加工装置である。切削装置1は、図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削ブレード21で切削する切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影する撮像ユニット30と、制御ユニット100とを備える。
【0016】
また、切削装置1は、図1に示すように、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的に移動させる移動ユニット40を備える。移動ユニット40は、水平方向及び装置本体2の長手方向と平行な割り出し送り方向であるY軸方向に切削ユニット20を移動させるY軸移動ユニット42と、Y軸方向と保持面11との双方と直交する鉛直方向に平行な切り込み送り方向であるZ軸方向に切削ユニット20を移動させるZ軸移動ユニット43と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット44とを備える。即ち、移動ユニット40は、Y軸方向及びZ軸方向に切削ユニット20を移動させるものである。切削装置1は、図1に示すように、切削ユニット20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0017】
また、切削装置1は、チャックテーブル10を回転移動ユニット44とともに水平方向、保持面11及び装置本体2の短手方向と平行でかつY軸方向と直交する加工送り方向であるX軸方向に移動させる加工送りユニットであるX軸移動ユニット41を備える。X軸移動ユニット41は、チャックテーブル10を回転移動ユニット44とともに加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。
【0018】
X軸移動ユニット41は、チャックテーブル10を被加工物200が搬入出される搬入出領域4と、チャックテーブル10に保持された被加工物200が切削ユニット20により切削加工される加工領域5とに亘ってX軸方向に移動させる。実施形態1では、X軸移動ユニット41は、蛇腹45により覆われている。実施形態1では、搬入出領域4及び加工領域5は、蛇腹45上の空間である。
【0019】
Y軸移動ユニット42は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット43は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。
【0020】
X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0021】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット41により搬入出領域4と加工領域5とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつ回転移動ユニット44によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、図2に示すように、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、粘着テープ206を介して被加工物200の裏面204側を吸引、保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、図1及び図2に示すように、環状フレーム205をクランプするクランプ部12が複数設けられている。なお、図2は、被加工物200のデバイス203を省略している。
【0022】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ブレード21を着脱自在に装着するスピンドル23を有する加工ユニットである。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット42によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット43によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0023】
切削ユニット20は、図1に示すように、Y軸移動ユニット42、Z軸移動ユニット43などを介して、装置本体2から立設した門型の支持フレーム3の柱部に設けられている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0024】
切削ユニット20は、図1に示すように、切削ブレード21と、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転可能に設けられかつ図2に示すモータ24により回転されるとともに先端に切削ブレード21が装着されるスピンドル23と、切削ブレード21に切削水を供給するノズルとを備える。
【0025】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の環状の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、図2に示すように、円環状の円形基台211と、円形基台211の外周縁に配設されて被加工物200を切削する円環状の切り刃212とを備える所謂ハブブレードである。切り刃212は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒が金属や樹脂等のボンド材(結合材)で固定されて所定の厚みに形成されている。なお、本発明では、切削ブレード21は、切り刃212のみで構成された所謂ワッシャーブレードでもよい。
【0026】
なお、切削ユニット20の切削ブレード21及びスピンドル23の軸心は、Y軸方向と平行である。
【0027】
撮像ユニット30は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0028】
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。
【0029】
なお、実施形態1では、切削装置1のチャックテーブル10及び切削ユニット20のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない原点位置を基準とした位置で定められる。また、実施形態1では、切削ユニット20のZ軸方向の原点位置は、切削ブレード21の切り刃212の下端がチャックテーブル10の保持面11と同一平面上に位置する位置である。
【0030】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット51が載置されかつカセット51をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ50と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット52と、カセット51に被加工物200を出し入れするとともに被加工物200を搬送する図示しない搬送ユニットを備える。
【0031】
また、切削装置1は、図1に示すように、加工領域5の外側を囲って切削水の拡散を抑制する加工室壁6を備えている。実施形態1において、加工室壁6は、加工領域5に位置付けられたチャックテーブル10と、切削ユニット20の少なくとも切削ブレード21が装着されたスピンドル23の先端とを収容する加工室303を切削装置1内に形成する。即ち、切削装置1は、加工室7を備える。実施形態1では、加工室7は、加工領域5の蛇腹45の上方の空間である。
【0032】
制御ユニット100は、切削装置1の上述した各ユニットをそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理装置が演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。
【0033】
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0034】
また、切削装置1は、図2に示すように、原点位置検出ユニット60と、繰り出し機構70とを備える。原点位置検出ユニット60は、切削ユニット20の前述した原点位置を検出するものである。原点位置検出ユニット60は、図3に示すように、ユニット本体61と、光源62と、原点位置検出部63とを備える。
【0035】
ユニット本体61は、装置本体2に固定されているとともに、加工室7即ち加工領域5内に配置され、実施形態1では、加工領域5の搬入出領域4寄りの端部でかつY軸方向の一端部に配置されている。ユニット本体61は、一方の切削ユニット20のスピンドル23のZ軸方向の下方に配置されている。
【0036】
ユニット本体61は、Z軸方向に立設した一対の脚部611と、連結部612とを備える。一対の脚部611は、Y軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。一対の脚部611間の間隔は、切削ブレード21の切り刃212の厚みよりも広い。このために、一対の脚部611は、互いに間に切削ブレード21の切り刃212が侵入することが可能である。一対の脚部611は、互いに間に切削ブレード21の切り刃212が挿入されると、切削ブレード21の切り刃212を互いの間に挟むように配設されている。連結部612は、一対の脚部611の下端部同士を連結し、Y軸方向と平行に水平方向に延在している。
【0037】
また、ユニット本体61は、Y軸方向に対向する発光部613と受光部614とを備える。発光部613は、一対の脚部611のうち一方の脚部611に設けられている。発光部613は、光源62に接続して光源62からのパルス状の光(以下、パルス光と記す)を伝搬して、他方の脚部611即ち受光部614に向けて発光する。また、光源62からの光としてはパルス光のほか、連続して発光する光を用いても良い。
【0038】
受光部614は、他方の脚部611に設けられ、発光部613から発光されたパルス光を受光し、受光したパルス光を原点位置検出部63に出力する。
【0039】
原点位置検出部63は、図3に示すように、光電変換部631と、基準電圧設定部632と、電圧比較部633と、端部位置検出部634と、算出部635と、位置補正部636とを備える。
【0040】
光電変換部631は、受光部614が受光したパルス光の光量を電圧に変換するものである。光電変換部631は、受光部614から入力したパルス光の光量に応じた電圧の電圧値に変換する。なお、実施形態1では、受光部614が受光するパルス光の光量と、光電変換部631が変換する電圧の電圧値とは、比例している。
【0041】
なお、切削ブレード21がZ軸方向に沿って降下して一対の脚部611間の奥に侵入するに従って、発光部613から発光されて受光部614に受光されるパルス光の切削ブレード21により遮られる量が増加する。すると、光電変換部631が変換した電圧の電圧値が、図4に示すように、徐々に減少する。
【0042】
なお、図4は、横軸が、切削ブレード21が降下を開始してからの経過時間を示し、縦軸が、光電変換部631が変換した電圧の電圧値を示している。また、実施形態1において、図4は、光電変換部631がパルス光を100%受光した時(パルス光の受光率が100%である時)の電圧値を5Vと示し、光電変換部631がパルス光を0%受光した時(パルス光の受光率が0%である時)の電圧値を0Vと示している。
【0043】
基準電圧設定部632は、入力ユニットが操作されることで設定された基準電圧300を電圧比較部633に出力する。基準電圧300は、一対の脚部611間に侵入した切削ユニット20がZ軸方向の原点位置即ち切削ブレード21の切り刃212の下端が保持面11と同一平面上、または保持面111と所定の高低差(Z軸方向の距離)に位置したときに光電変換部631がパルス光を変換した電圧の電圧値であり、実施形態1では、3Vである。
【0044】
電圧比較部633は、光電変換部631から出力された電圧の電圧値と基準電圧設定部632によって設定された基準電圧300とを比較し、光電変換部631から出力された電圧の電圧値が基準電圧300に達したとき、光電変換部631から出力された電圧の電圧値が基準電圧300に達したことを示す信号を端部位置検出部634に出力する。端部位置検出部634は、電圧比較部633から上記信号が入力した時点のZ軸方向位置検出ユニットから取得した切削ユニット20のZ軸方向の位置を切削ユニット20の原点位置と検出する。端部位置検出部634は、検出した切削ユニット20の原点位置を算出部635に出力する。
【0045】
算出部635は、端部位置検出部634によって検出された原点位置に基づいて、Z軸方向の切削ユニット20の位置の補正量を算出する。位置補正部636は、算出部635によって算出された補正量に基づいて、切削ユニット20のZ軸方向の位置を補正する。このため、被加工物200を加工するときの切削ユニット20の切削ブレード21の位置は、補正された位置に基づいて制御される。なお、実施形態1において、切削ユニット20の切削ブレード21のZ軸方向の位置を補正することは、切削ブレード21の切り刃212の下端の原点位置からのZ軸方向の距離を、被加工物200を切削する際の所望(即ち、理想)の距離とすることである。
【0046】
前述した原点位置検出部63の光電変換部631と、基準電圧設定部632と、電圧比較部633と、端部位置検出部634と、算出部635と、位置補正部636との機能は、制御ユニット100の演算処理装置が、記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実施することで実現される。即ち、実施形態1では、制御ユニット100は、原点位置検出部63を備え、原点位置検出ユニット60も構成している。
【0047】
繰り出し機構70は、ドレッシング材400を保持面11と平行方向に繰り出すものである。ドレッシング材400は、目詰まりや、目つぶれして切削能力が低下した切削ブレード21の切り刃212を目立てして、切削ブレード21の切り刃212に付着した切削屑を除去することにより切削ブレード21の切り刃212の切削能力を回復させるものである。切削ブレード21の切り刃212を目立てして、切削ブレード21の切り刃212切削能力を回復させることをドレッシング(ドレスともいう)するという。
【0048】
ドレッシング材400は、砥粒がボンド材(結合材)で固定されたものであり、実施形態1では、直線状に伸びた棒状に形成されている。実施形態1では、ドレッシング材400は、直径が0.3mm以上でかつ2.0mm以下で、長さが10cmの円柱であるが、本発明では、円柱に限定されない。ドレッシング材400は、切削ブレード21の切り刃212により切断されることにより、切削ブレード21の切り刃212をドレッシングする。
【0049】
繰り出し機構70は、装置本体2に固定され、実施形態1では、原点位置検出ユニット60のユニット本体61のY軸方向の隣に配置されて、切削ユニット20のZ軸方向の下方に配置されている。実施形態1では、繰り出し機構70は、原点位置検出ユニット60のユニット本体61よりもY軸方向の外側に配置されている。このために、繰り出し機構70は、X軸移動ユニット41のY軸方向の側方でかつ一方の切削ユニット20のスピンドル23の下部(下方)に備えられている。繰り出し機構70は、機構本体71と、繰り出しユニット72とを備える。
【0050】
機構本体71は、筒状に形成された筒状部73と、筒状部73に連なりかつ上方が開口した樋状の樋状部74とを一体に備える。筒状部73と、樋状部74とは、それぞれ直線状に延在し、同一直線状に配置されている。機構本体71は、樋状部74よりも筒状部73が原点位置検出ユニット60寄りに配置されている。このため、繰り出し機構70の前方である筒状部73は、加工室7内に配置され、繰り出し機構70の後方である樋状部74は、加工室7外に配置される。
【0051】
機構本体71は、筒状部73及び樋状部74の長手方向がY軸方向と平行に配置されている。機構本体71は、樋状部74の上部の開口からドレッシング材400が挿入され、ドレッシング材400をY軸方向と平行に保持する。繰り出し機構70は、樋状部74の上部の開口からドレッシング材400が挿入されるので、ドレッシング材400は、繰り出し機構70の後方から機構本体71内に供給されることとなる。
【0052】
繰り出しユニット72は、機構本体71が収容したドレッシング材400を前方である筒状部73の原点位置検出ユニット60寄りの一端部から原点位置検出ユニット60側に送り出すものである。実施形態1では、繰り出しユニット72は、互いの間に機構本体71内のドレッシング材400を挟み、少なくとも一方がモータにより回転されることで、ドレッシング材400を原点位置検出ユニット60側に送り出す送り出しローラ75,76を少なくとも一対備えている。繰り出しユニット72は、機構本体71の一端部からのドレッシング材400の突出量が予め定められた所定値となるように、ドレッシング材400を送り出す。なお、本発明では、繰り出しユニット72の構成は、実施形態1に示されたものに限定されずに、例えば、シャープペンシル(Mechanical Pencil、Propelling Pencil、Clutch pencil又はReedpencil)の芯を繰り出す機構と同等の構成であっても良い。
【0053】
前述した構成の切削装置1は、オペレータにより登録された加工内容情報を制御ユニット100が受付け、切削加工前の被加工物200を複数収容したカセット51がカセットエレベータ50に設置され、オペレータからの加工動作の開始指示を制御ユニット100が受け付けると、加工動作を開始する。加工動作では、切削装置1は、制御ユニット100が搬送ユニットを制御してカセット51から被加工物200を1枚取り出し、搬入出領域4に位置付けられたチャックテーブル10の保持面11に載置する。切削装置1は、制御ユニット100が真空吸引源を制御して、保持面11に粘着テープ206を介して被加工物200を吸引保持するとともに、クランプ部12で環状フレーム205をクランプする。
【0054】
加工動作では、切削装置1は、スピンドル23を軸心回りに回転し、X軸移動ユニット41及び移動ユニット40により搬入出領域4から加工領域5に向けてチャックテーブル10を撮像ユニット30の下方まで移動し、撮像ユニット30によりチャックテーブル10に吸引保持した被加工物200を撮像して、アライメントを遂行する。
【0055】
加工動作では、切削装置1は、加工内容情報に基づいて、X軸移動ユニット41及び移動ユニット40により、切削ブレード21と被加工物200とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させながら被加工物200の分割予定ライン202に切削ブレード21を粘着テープ206に到達するまで切り込ませて切削加工する。切削装置1は、被加工物200の全ての分割予定ライン202を切削すると、チャックテーブル10を加工領域5から搬入出領域4に向けて移動する。
【0056】
切削装置1は、搬入出領域4においてチャックテーブル10の移動を停止し、チャックテーブル10の被加工物200の吸引保持を停止し、クランプ部13のクランプを解除する。切削装置1は、制御ユニット100が搬送ユニットを制御して被加工物200を洗浄ユニット52に搬送し、洗浄ユニット52で洗浄した後、カセット51収容する。切削装置1は、カセット51内の全ての被加工物200を切削すると加工動作を終了する。
【0057】
次に、実施形態1に係る切削装置のドレッシング方法を図面に基づいて説明する。図5は、図1に示された切削装置のドレッシング方法の流れを示すフローチャートである。図6は、図5に示されたドレッシング方法のドレッシング材供給ステップを模式的に一部断面で示す正面図である。図7は、図5に示されたドレッシング方法のドレッシング材繰り出しステップを模式的に一部断面で示す正面図である。図8は、図5に示されたドレッシング方法のドレッシング材切削ステップを模式的に示す正面図である。図9は、図5に示されたドレッシング方法のドレッシング材切削ステップにおいてドレッシング材を切削した切削ユニットを上昇させた状態を模式的に示す正面図である。図10は、図5に示されたドレッシング方法の原点位置検出ステップを模式的に示す正面図である。
【0058】
実施形態1に係る切削装置1のドレッシング方法は、加工動作において、例えば、所定数の分割予定ライン202を切削する毎、一枚の被加工物200を切削する毎、又は所定数の被加工物200を切削する毎、加工不良が生じた毎等の所定のタイミングで実施される。ドレッシング方法は、図5に示すように、ドレッシング材供給ステップ1001と、ドレッシング材繰り出しステップ1002と、ドレッシング材切削ステップ1003と、原点位置検出ステップ1004とを備える。
【0059】
ドレッシング材供給ステップ1001は、繰り出し機構70にドレッシング材400を供給するステップである。ドレッシング材供給ステップ1001では、切削装置1は、加工動作を一旦停止し、図6に示すように、オペレータにより繰り出し機構70の樋状部74にドレッシング材400が供給される。ドレッシング材供給ステップ1001では、オペレータにより繰り出し機構70の樋状部74にドレッシング材400が供給されると、ドレッシング材繰り出しステップ1002に進む。
【0060】
ドレッシング材繰り出しステップ1002は、繰り出し機構70に供給されたドレッシング材400を繰り出し機構70の筒状部73の原点位置検出ユニット60寄りの一端部から原点位置検出ユニット60側に先端部401を送り出すものである。ドレッシング材繰り出しステップ1002では、切削装置1は、制御ユニット100が繰り出しユニット72を制御して機構本体71の一端部からのドレッシング材400の突出量が予め定められた所定値となるように、ドレッシング材400を原点位置検出ユニット60に向けて送り出す。ドレッシング材繰り出しステップ1002では、図7に示すように、切削装置1は、ドレッシング材400の先端部401を筒状部73の一端部から所定量突出させると、ドレッシング材400の繰り出しを停止して、ドレッシング材切削ステップ1003に進む。
【0061】
なお、実施形態1ででは、ドレッシング材供給ステップ1001と、ドレッシング材繰り出しステップ1002とをドレッシングする際に実施したが、本発明では、これに限定されずに、例えば、切削装置1の加工動作開始前にドレッシング材供給ステップ1001を実施し、切削装置1の加工動作開始直後にドレッシング材繰り出しステップ1002を実施しても良い。
【0062】
ドレッシング材切削ステップ1003は、切削ブレード21で繰り出し機構70で繰り出されたドレッシング材400の筒状部73の一端部から突出した先端部401を切削ブレード21で上方から切断し、切削ブレード21をドレッシングするステップである。ドレッシング材切削ステップ1003では、切削装置1は、制御ユニット100が移動ユニット40を制御してドレッシングする切削ユニット20の回転している切削ブレード21を、ドレッシング材400の筒状部73の一端部から突出した先端部401の上方に位置付けた後、図8に示すように、切削ブレード21がドレッシング材400の先端部401を切断するまで切削ユニット20を下降する。ドレッシング材切削ステップ1003では、切削ブレード21の切り刃212がドレッシング材400の先端部401を切断すると、切削ブレード21の切り刃212は、ドレッシング材400によりドレッシングされる。
【0063】
こうして、ドレッシング材切削ステップ1003では、切削装置1は、ドレッシング材400の先端部401を切削ブレード21で所謂チョッパーカットして、切削ブレード21の切り刃212をドレッシングする。ドレッシング材切削ステップ1003では、切削ブレード21の切り刃212がドレッシング材400の先端部401を切断すると、切削装置1は、移動ユニット40を制御して、図9に示すように、切削ユニット20を上昇し、繰り出し機構70を制御して機構本体71の一端部からのドレッシング材400の突出量が予め定められた所定値となるように、ドレッシング材400を原点位置検出ユニット60に向けて送り出して、原点位置検出ステップ1004に進む。なお、実施形態1では、ドレッシング材400の先端部401の切断される長さに応じて、繰り出し機構70がドレッシング材400を0.5mm以上でかつ5.0mm以下繰り出す。
【0064】
原点位置検出ステップ1004は、切削ブレード21の切り刃212がドレッシングされ消耗した切削ユニット20の原点位置を検出するステップである。原点位置検出ステップ1004では、切削装置1は、制御ユニット100が移動ユニット40を制御してドレッシングされた切削ブレード21の切り刃212を、発光部613からパルス光を発している原点位置検出ユニット60のユニット本体61の一対の脚部611間の上方に位置付けた後、図10に示すように、切削ユニット20を下降する。原点位置検出ステップ1004では、切削装置1は、切削ブレード21を一対の脚部611間に挿入して、原点位置検出ユニット60で切削ブレード21の切り刃212がドレッシングされた切削ユニット20の原点位置を検出し、原点位置を検出すると、ドレッシング方法を終了する。なお、切削装置1は、ドレッシング方法後の加工動作では、原点位置検出ステップ1004で検出した原点位置を用いて移動ユニット40を制御する。
【0065】
以上説明したように、実施形態1に係る切削装置1は、棒状のドレッシング材400を繰り出す繰り出し機構70を備え、繰り出されたドレッシング材400の先端部401を切削ブレード21で所謂チョッパーカットすることで、切削ブレード21の切り刃212をドレッシングする。このため、ドレッシング材400の先端部401を露出させる領域は、プレート状のドレッシング材に比べて面積を非常に小さくできる。その結果、切削装置1は、切削ブレード21のドレッシングのためのドレッシング材400を設けても装置の大型化を抑制することができるという効果を奏する。
【0066】
また、切削装置1は、切削ユニット20をドレッシング材に対してX軸方向に相対的に移動させてドレッシングするのに比べ、切削ユニット20をドレッシング材に対してY軸方向に相対的に移動させて所謂チョッパーカットによりドレッシングする方が、切削ブレード21にかかる加工負荷が高い。その結果、切削装置1は、棒状のドレッシング材400を用いてドレッシングするので、プレート状のドレッシング材を用いて際よりも、ドレッシングするドレッシング材400の切削体積が小さくても高いドレッシング効果を発揮出来る。
【0067】
また、切削装置1は、原点位置検出ユニット60と繰り出し機構70とを切削ユニット20の下方に配置し、繰り出し機構70を繰り出し機構70のY軸方向の隣に配置しているので、装置の大型化を抑制でき、ドレッシングから原点位置検出するまでの切削ユニット20の移動距離を抑制して、ドレッシングから原点位置検出にかかる所要時間を抑制できる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 切削装置
7 加工室
10 チャックテーブル
11 保持面
20 切削ユニット
21 切削ブレード
23 スピンドル
40 移動ユニット
41 X軸移動ユニット(加工送りユニット)
70 繰り出し機構
73 筒状部(前方)
74 樋状部(後方)
200 被加工物
400 ドレッシング材
401 先端部(先端)
X 加工送り方向
Y 割り出し送り方向、平行方向
Z 切り込み送り方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10