(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】フェノール樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 61/02 20060101AFI20240524BHJP
C08G 59/04 20060101ALI20240524BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20240524BHJP
C07C 37/14 20060101ALI20240524BHJP
C07D 303/23 20060101ALI20240524BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240524BHJP
C07C 39/17 20060101ALI20240524BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20240524BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
C08G61/02
C08G59/04
C08G59/20
C07C37/14
C07D303/23
C08J5/24 CFC
C07C39/17 CSP
C08G59/62
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020561316
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2019048051
(87)【国際公開番号】W WO2020129724
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2018236982
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501479710
【氏名又は名称】株式会社 国都化▲学▼
【氏名又は名称原語表記】KUKDO CHEMICAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】61 Gasan digital 2-ro,Geumcheon-gu,Seoul,KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】宗 正浩
(72)【発明者】
【氏名】石原 一男
(72)【発明者】
【氏名】李 鎭洙
(72)【発明者】
【氏名】金 載鎰
(72)【発明者】
【氏名】池 仲輝
(72)【発明者】
【氏名】柳 起煥
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-022538(JP,A)
【文献】特公昭41-014099(JP,B1)
【文献】特表2009-540081(JP,A)
【文献】特開平05-339341(JP,A)
【文献】特開2009-096819(JP,A)
【文献】特開2009-102456(JP,A)
【文献】特開2004-277708(JP,A)
【文献】特開平08-179502(JP,A)
【文献】特開平06-157680(JP,A)
【文献】特開昭54-043259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59、61、C08L
C08J24、C07C
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルイス酸の存在下、下記一般式(3)で表される2,6-ジ置換フェノール類に対し、ジシクロペンタジエンを0.28~1倍モルの比率で使用し、又は0.28~2倍モルの比率を1回あたり0.28~1倍モルの比率で二回以上分割使用し、温度50~200℃にて、反応させ、FT-IR測定において3040cm
-1
にピークを有する下記一般式(1)で表されるフェノール樹脂を得ることを特徴とするフェノール樹脂の製造方法。
【化1】
式中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、R
2はそれぞれ独立に水素原子、下記式(1a)または式(1b)を示し、R
2の少なくとも1つは、式(1a)または式(1b)のいずれかである。nは繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数である。
【化2】
【化3】
式中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1~8の炭化水素基を示す。
【請求項2】
請求項1に記載のフェノール樹脂をエポキシ化
して、下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂
を得ることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
【化4】
式中、R
11はそれぞれ独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、R
12はそれぞれ独立に水素原子、下記式(1a)または式(1b)を示し、R
12の少なくとも1つは、式(1a)または式(1b)のいずれかである。mは繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数である。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電特性および高接着性に優れるフェノール樹脂またはエポキシ樹脂、およびそれらを使用したエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、積層板、プリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は接着性、可撓性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、硬化反応性に優れることから、塗料、土木接着、注型、電気電子材料、フィルム材料等多岐にわたって使用されている。特に、電気電子材料の一つであるプリント配線基板用途ではエポキシ樹脂に難燃性を付与することによって広く使用されている。
【0003】
近年、情報機器の小型化、高性能化が急速に進んでおり、それに伴い、半導体や電子部品の分野で用いられる材料に対し、これまでよりも高い性能が要求されている。特に、電気・電子部品の材料となるエポキシ樹脂組成物には、基板の薄型化と高機能化に伴う低誘電特性が求められている。
【0004】
下記特許文献1に示すように、これまで積層板用途の低誘電率化には、脂肪族骨格を導入したジシクロペンタジエンフェノール樹脂等が用いられてきたが、誘電正接を改善するには効果が乏しく、また接着性に関しても満足いくものではなかった。
【0005】
低誘電正接を得るための樹脂として、下記特許文献2に示すように、芳香族骨格を導入した芳香族変性エポキシ樹脂等が用いられてきたが、優れた誘電正接を与える一方、接着力が悪化する課題があり、低誘電正接かつ高接着力を与える樹脂の開発が求められていた。
【0006】
上記に示したとおり、いずれの文献に開示されたエポキシ樹脂も、近年の高機能化に基づく要求性能を十分に満足しておらず、低誘電特性と接着性を担保するには不十分だった。
【0007】
一方、特許文献3は、2,6-ジ置換フェノール・ジシクロペンタジエン型樹脂を開示するが、フェノール環に複数のジシクロペンタジエンが置換した樹脂は開示しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-240654号公報
【文献】特開2015-187190号公報
【文献】特開平5-339341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物において優れた誘電正接を発現し、さらにプリント配線板用途で銅箔剥離強度および層間密着強度の優れた硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明者らは2,6-ジ置換フェノール類に対して、特定の比率のジシクロペンタジエンと反応させて得られるフェノール樹脂をエポキシ樹脂と硬化したとき、またはこのフェノール樹脂をエポキシ化したときに得られるエポキシ樹脂を硬化剤と硬化したときに、得られた硬化物の低誘電特性と接着性が優れることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は下記一般式(1)で表されるフェノール樹脂である。
【化1】
式中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、R
2はそれぞれ独立に水素原子、下記式(1a)または式(1b)を示し、R
2の少なくとも1つは、式(1a)または式(1b)のいずれかである。nは繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数である。
【化2】
【0012】
また、本発明はルイス酸の存在下、下記一般式(3)で表される2,6-ジ置換フェノール類に対し、ジシクロペンタジエンを0.28~2倍モルの比率で反応させることを特徴とする上記フェノール樹脂の製造方法である。
【化3】
式中、R
1は上記一般式(1)のR
1と同義である。
【0013】
また、本発明は上記フェノール樹脂を原料として得られる下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂である。
【化4】
式中、R
11はそれぞれ独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、R
12はそれぞれ独立に水素原子、上記式(1a)または式(1b)を示し、R
12の少なくとも1つは、上記式(1a)または式(1b)のいずれかである。mは繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数である。
【0014】
また、本発明はエポキシ樹脂および硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、上記フェノール樹脂および/または上記エポキシ樹脂を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
【0015】
また、本発明は、上記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物であり、上記エポキシ樹脂組成物を使用したプリプレグ、積層板、またはプリント配線基板である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において、優れた誘電正接を発現し、さらにプリント配線板用途で銅箔剥離強度および層間密着強度の優れたエポキシ樹脂組成物を与える。特に、低誘電正接が強く要求されるモバイル用途やサーバー用途等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1で得たフェノール樹脂のGPCチャートである。
【
図2】実施例1で得たフェノール樹脂の
FT-IRチャートである。
【
図3】実施例7で得たフェノール樹脂のGPCチャートである。
【
図4】実施例7で得たフェノール樹脂の
FT-IRチャートである。
【
図5】比較例1で得たフェノール樹脂のGPCチャートである。
【
図6】比較例1で得たフェノール樹脂の
FT-IRチャートである。
【
図7】実施例11で得たエポキシ樹脂のGPCチャートである。
【
図8】実施例17で得たエポキシ樹脂のGPCチャートである。
【
図9】比較例3で得たエポキシ樹脂のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明のフェノール樹脂は、上記一般式(1)で表される。
一般式(1)において、R1は炭素数1~8の炭化水素基を示し、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数7~8のアラルキル基、またはアリル基が好ましい。炭素数1~8のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもかまわず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。炭素数6~8のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。炭素数7~8のアラルキル基としては、ベンジル基、α-メチルベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの置換基の中では、入手の容易性および硬化物とするときの反応性の観点から、フェニル基、メチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0020】
R2はそれぞれ独立に水素原子、上記式(1а)または式(1b)を示し、R2の少なくとも1つは、式(1а)または式(1b)のいずれかである。式(1а)、式(1b)は、ジシクロペンタジエンに由来するジシクロペンタジエニル基であると言える。
【0021】
nは繰り返し数であって、0以上の数を示し、その平均値(数平均)は0~5であり、0.5~3が好ましく、0.5~2がより好ましく、0.6~1.8がさらに好ましい。
【0022】
上記フェノール樹脂は、例えば、上記一般式(3)で表される2,6-ジ置換フェノール類とジシクロペンタジエンとを三フッ化ホウ素・エーテル触媒等のルイス酸存在下で反応させることにより、得ることができる。
【0023】
上記2,6-ジ置換フェノール類としては、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2,6-ジプロピルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2,6-ジ(n-ブチル)フェノール、2,6-ジ(t-ブチル)フェノール、2,6-ジヘキシルフェノール、2,6-ジシクロヘキシルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジトリルフェノール、2,6-ジベンジルフェノール、2,6-ビス(α-メチルベンジル)フェノール、2-エチル-6-メチルフェノール、2-アリル-6-メチルフェノール、2-トリル-6-フェニルフェノール等が挙げられるが、入手の容易性および硬化物とするときの反応性の観点から、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジメチルフェノールが好ましく、2,6-ジメチルフェノールが特に好ましい。
【0024】
上記反応に用いる触媒はルイス酸であり、具体的には三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素・フェノール錯体、三フッ化ホウ素・エーテル錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛、塩化鉄等であるが、中でも取り扱いの容易さから、三フッ化ホウ素・エーテル錯体が好ましい。触媒の使用量は、三フッ化ホウ素・エーテル錯体の場合、ジシクロペンタジエン100質量部に対して、0.001~20質量部であり、好ましくは0.5~10質量部である。
【0025】
2,6-ジ置換フェノール類に、上記式(1a)または式(1b)のジシクロペンタジエン構造を導入するための反応方法としては、2,6-ジ置換フェノールに対して、ジシクロペンタジエンを所定の比率で反応させる方法であり、ジシクロペンタジエンを数段階に分けて添加し(二回以上の分割逐次添加)、間欠的に反応させても良い。一般的な反応では、比率は、2,6-ジ置換フェノールに対し、ジシクロペンタジエンを0.1~0.25倍モルであるが、本発明では、0.28~2倍モルである。ジシクロペンタジエンを連続的に添加し反応させる場合の比率は、2,6-ジ置換フェノールに対し、ジシクロペンタジエンを0.25~1倍モルであり、0.28~1倍モルが好ましく、0.3~0.5倍モルがより好ましい。ジシクロペンタジエンを分割逐次添加して反応させる場合は、全体として0.8~2倍モルが好ましく、0.9~1.7倍モルがより好ましい。なお、各段階でのジシクロペンタジエンの使用比率は、0.28~1倍モルが好ましい。
【0026】
上記一般式(1)で表されるフェノール樹脂中に、式(1a)または式(1b)で表される置換基が導入されたことを確認する方法としては、質量分析法とFT-IR測定を用いることができる。
【0027】
質量分析方法を用いる場合、エレクトロスプレー質量分析法(ESI-MS)やフィールドデソープション法(FD-MS)などを用いることができる。GPC等で核体数が異なる成分を分離したサンプルを質量分析法にかけることにより、式(1a)または式(1b)で表される置換基が導入されたことを確認できる。
【0028】
FT-IR測定法を用いる場合、THF等の有機溶媒に溶解させたサンプルをKRS-5セル上に塗布し、有機溶媒を乾燥させて得られたサンプル薄膜付セルをFT-IRで測定すると、フェノール核におけるC-O伸縮振動に由来するピークが1210cm-1付近に現れ、式(1a)または式(1b)が導入されている場合のみジシクロペンタジエン骨格のオレフィン部位のC-H伸縮振動に由来するピークが3040cm-1付近に現れる。目的のピークの始まりと終わりを直線的につないだものをベースラインとし、ピークの頂点からベースラインまでの長さをピーク高さとしたとき、3040cm-1付近のピーク(A3040)と1210cm-1付近のピーク(A1210)の比率(A3040/A1210)によって式(1a)または式(1b)の導入量が定量できる。その比率は大きいほど物性値が良くなることが確認できており、目的の物性を満たすための好ましい比率(A3040/A1210)は0.05以上であり、より好ましくは0.1以上である。
【0029】
本反応は、2,6-ジ置換フェノール類と触媒を反応器に仕込み、ジシクロペンタジエンを1~10時間かけて滴下していく方式が良い。
【0030】
反応温度は、50~200℃が好ましく、100~180℃がより好ましく、120~160℃がさらに好ましい。反応時間は1~10時間が好ましく、3~10時間がより好ましく、4~8時間がさらに好ましい。
【0031】
反応終了後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリを加えて触媒を失活させる。その後、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の溶媒を加えて溶解し、水洗した後、減圧下で溶媒を回収することにより、目的とするフェノール樹脂を得ることができる。なお、ジシクロペンタジエンを可及的に全量反応させ、2,6-ジ置換フェノール類の一部を未反応、好ましくは10%以下を未反応として、それを減圧回収することが好ましい。
【0032】
反応に際し、必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、クロロベンゼン、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類や、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングルコールジメチルエーテル等のエーテル類等の溶媒を使用しても良い。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂は、一般式(2)で表される。このエポキシ樹脂は、上記フェノール樹脂にエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンを反応させることによって得られる。この反応は従来公知の方法に従って行われる。
【0034】
一般式(1)で表されるフェノール樹脂をエポキシ化することによって得られる一般式(2)で表されるエポキシ樹脂において、R11はそれぞれ独立に炭素数1~8の炭化水素基であり、炭化水素基としては、上記一般式(1)のR1として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。R12はそれぞれ独立に水素原子、式(1а)または式(1b)を示し、R12の少なくとも1つは、式(1а)または式(1b)のいずれかである。
【0035】
mは繰り返し数であって、0以上の数を示し、その平均値(数平均)は0~5であり、0.5~2が好ましく、0.6~1がさらに好ましい。
【0036】
エポキシ化する方法としては、例えば、フェノール樹脂と、フェノール樹脂の水酸基に対して過剰モルのエピハロヒドリンとの混合物に、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を固形または濃厚水溶液として加え、30~120℃の反応温度で0.5~10時間反応させるか、またはフェノール樹脂と過剰モル量のエピハロヒドリンにテトラエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩を触媒として加え、50~150℃の温度で1~5時間反応して得られるポリハロヒドリンエーテルに水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を固形または濃厚水溶液として加え、30~120℃の温度で1~10時間反応させることにより得ることができる。
【0037】
上記反応において、エピハロヒドリンの使用量はフェノール樹脂の水酸基に対して1~20倍モルであり、4~8倍モルが好ましい。またアルカリ金属水酸化物の使用量はフェノール樹脂の水酸基に対して0.85~1.1倍モルである。
【0038】
これらの反応で得られたエポキシ樹脂は、未反応のエピハロヒドリンとアルカリ金属のハロゲン化物を含有しているので、反応混合物より未反応のエピハロヒドリンを蒸発除去し、さらにアルカリ金属のハロゲン化物を水による抽出、ろ別等の方法により除去して、目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、244~3700が好ましく、260~2000がより好ましく、270~700がさらに好ましい。特に、ジシアンジアミドを硬化剤として使用する場合、プリプレグ上にジシアンジアミドの結晶が析出することを防止するため、エポキシ当量は300以上であることが好ましい。
【0040】
本発明の製造方法で得られるエポキシ樹脂の分子量分布は、エポキシ化反応の際のフェノール樹脂とエピハロヒドリンの仕込み比率を変更することにより変更可能であり、エピハロヒドリンの使用量をフェノール樹脂の水酸基に対して等モルに近づけるほど高分子量分布となり、20モル倍に近づけるほど低分子量分布となる。また、得られたエポキシ樹脂に対し、再度フェノール樹脂を作用させることにより、高分子量化させることも可能である。
【0041】
このようなエポキシ樹脂を用いることにより、本発明のエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂および硬化剤を必須成分とする。この態様としては、硬化剤とエポキシ樹脂の両者が、本発明のフェノール樹脂と本発明のエポキシ樹脂である態様と、硬化剤とエポキシ樹脂の一方が、本発明のフェノール樹脂又はエポキシ樹脂である態様とがある。
好ましくは、硬化剤のうち少なくとも30質量%が上記一般式(1)で表されるフェノール樹脂であるか、もしくはエポキシ樹脂のうち少なくとも30質量%が上記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂であることであり、50質量%以上含有することがより好ましい。これよりも少ない場合、誘電特性が悪化する恐れがある。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物を得るために使用するエポキシ樹脂としては、本発明のエポキシ樹脂単独であっても、本発明のエポキシ樹脂のほかに、必要に応じて各種エポキシ樹脂を1種類または2種類以上併用しても良い。
これらエポキシ樹脂を併用する場合、併用するエポキシ樹脂中の70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下がより好ましい。併用するエポキシ樹脂が多すぎると、エポキシ樹脂組成物としての誘電特性が悪化する恐れがある。
また、本発明のフェノール樹脂を使用する場合は、本発明のエポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂だけでもよい。
【0044】
併用するエポキシ樹脂又は上記他のエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂はすべて使用できる。例を挙げれば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスチオエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、本発明以外のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルアミン、アミノフェノール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのエポキシ樹脂は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。入手容易さの観点から、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を使用することがさらに好ましい。
【0045】
硬化剤としては、上記ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂の他に、必要に応じて各種フェノール樹脂類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジッド類、酸性ポリエステル類等の通常使用される硬化剤を、1種類または2種類以上併用しても良い。これらの硬化剤を併用する場合、併用する硬化剤は全硬化剤中の70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下がより好ましい。併用する硬化剤の割合が多すぎると、エポキシ樹脂組成物としての誘電特性と接着特性が悪化する恐れがある。
また、本発明のエポキシ樹脂を使用する場合は、本発明のフェノール樹脂以外の他のフェノール樹脂だけでもよい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、全エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、硬化剤の活性水素基のモル比は0.2~1.5モルが好ましく、0.3~1.4モルがより好ましく、0.5~1.3モルがさらに好ましく、0.8~1.2モルが特に好ましい。この範囲を外れる場合は、硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。例えば、フェノール樹脂系硬化剤やアミン系硬化剤を用いた場合はエポキシ基に対して活性水素基をほぼ等モル配合する。酸無水物系硬化剤を用いた場合はエポキシ基1モルに対して酸無水物基を0.5~1.2モル、好ましくは、0.6~1.0モル配合する。本発明のフェノール樹脂を硬化剤として単独で使用する場合は、エポキシ樹脂1モルに対して0.9~1.1モルの範囲で使用することが望ましい。
【0047】
本発明でいう活性水素基とはエポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基(加水分解等により活性水素を生ずる潜在性活性水素を有する官能基や、同等な硬化作用を示す官能基を含む。)のことであり、具体的には、酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、1モルのカルボキシル基やフェノール性水酸基は1モルと、アミノ基(NH2)は2モルと計算される。また、活性水素基が明確ではない場合は、測定によって活性水素当量を求めることができる。例えば、エポキシ当量が既知のフェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ樹脂と活性水素当量が未知の硬化剤を反応させて、消費したモノエポキシ樹脂の量を測定することによって、使用した硬化剤の活性水素当量を求めることができる。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いることのできるフェノール樹脂系硬化剤としては、具体例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のビスフェノール類や、カテコール、レゾルシン、メチルレゾルシン、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、モノ-t-ブチルハイドロキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン等ジヒドロキシベンゼン類や、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等のヒドロキシナフタレン類や、LC-950PM60(Shin-AT&C社製)等のリン含有フェノール硬化剤や、ショウノールBRG-555(アイカ工業株式会社製)等のフェノールノボラック樹脂、DC-5(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等のクレゾールノボラック樹脂、芳香族変性フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、レヂトップTPM-100(群栄化学工業株式会社製)等のトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のフェノール類、ナフトール類および/またはビスフェノール類とアルデヒド類との縮合物、SN-160、SN-395、SN-485(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等のフェノール類、ナフトール類および/またはビスフェノール類とキシリレングリコールとの縮合物、フェノール類および/またはナフトール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物、フェノール類、ナフトール類および/またはビスフェノール類とジシクロペンタジエンとの反応物、フェノール類、ナフトール類および/またはビスフェノール類とビフェニル系架橋剤との縮合物等のいわゆるノボラックフェノール樹脂といわれるフェノール化合物等が挙げられる。入手容易さの観点から、フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂、芳香族変性フェノールノボラック樹脂等が好ましい。
【0049】
ノボラックフェノール樹脂の場合、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、ブチルメチルフェノール、トリメチルフェノール、フェニルフェノール等が挙げられ、ナフトール類としては、1-ナフトール、2-ナフトール等が挙げられ、その他、上記ビスフェノール類が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルアルデヒド、ブロムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が例示される。ビフェニル系架橋剤としてビス(メチロール)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ビス(エトキシメチル)ビフェニル、ビス(クロロメチル)ビフェニル等が挙げられる。
【0050】
酸無水物系硬化剤としては、具体的には、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、メチルナジック酸等が挙げられる。
【0051】
アミン系硬化剤としては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジシアンジアミド、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0052】
その他の硬化剤として、具体的には、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、イミダゾール類とトリメリット酸、イソシアヌル酸、またはホウ素等との塩であるイミダゾール塩類、トリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類、ジアザビシクロ化合物、ジアザビシクロ化合物とフェノール類やフェノールノボラック樹脂類等との塩類、3フッ化ホウ素とアミン類やエーテル化合物等との錯化合物、芳香族ホスホニウム、またはヨードニウム塩等が挙げられる。
【0053】
エポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を使用することができる。使用できる硬化促進剤の例としては2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。硬化促進剤を使用する場合、その使用量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分100質量部に対して0.02~5質量部が好ましい。硬化促進剤を使用することにより、硬化温度を下げたり、硬化時間を短縮したりすることができる。
【0054】
エポキシ樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶媒または反応性希釈剤を使用することができる。
【0055】
有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシジエチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、メタノール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール、パインオイル等のアルコール類や、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ベンジルアルコールアセテート等の酢酸エステル類や、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の安息香酸エステル類や、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類や、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N-メチルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
反応性希釈剤としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、トリルグリシジルエーテル等の単官能グリシジルエーテル類や、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の二官能グリシジルエーテル類や、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類や、ネオデカン酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類や、フェニルジグリシジルアミン、トリルジグリシジルアミン等のグリシジルアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
これらの有機溶媒または反応性希釈剤は、単独または複数種類を混合したものを、不揮発分として90質量%以下で使用することが好ましく、その適正な種類や使用量は用途によって適宜選択される。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1-メトキシ-2-プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶媒であることが好ましく、その使用量は不揮発分で40~80質量%が好ましい。また、接着フィルム用途では、例えば、ケトン類、酢酸エステル類、カルビトール類、芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を使用することが好ましく、その使用量は不揮発分で30~60質量%が好ましい。
【0058】
エポキシ樹脂組成物は、特性を損ねない範囲で他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を配合しても良い。例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0059】
エポキシ樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、公知の各種難燃剤を使用することができる。使用できる難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。環境に対する観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が好ましく、特にリン系難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0060】
リン系難燃剤は、無機リン系化合物、有機リン系化合物のいずれも使用できる。無機リン系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。有機リン系化合物としては、例えば、脂肪族リン酸エステル、リン酸エステル化合物、例えばPX-200(大八化学工業株式会社製)等の縮合リン酸エステル類、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物や、ホスフィン酸の金属塩の他、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物や、それらをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体であるリン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤等が挙げられる。
【0061】
難燃剤の配合量としては、リン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択される。例えばエポキシ樹脂組成物中の有機成分(有機溶媒を除く)中のリン含有量は、好ましくは0.2~4質量%であり、より好ましくは0.4~3.5質量%であり、さらに好ましくは0.6~3質量%である。リン含有量が少ないと難燃性の確保が難しくなる恐れがあり、多すぎると耐熱性に悪影響を与える恐れがある。またリン系難燃剤を使用する場合は、水酸化マグネシウム等の難燃助剤を併用しても良い。
【0062】
エポキシ樹脂組成物には必要に応じて充填材を用いることができる。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭素、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、微粒子ゴム、熱可塑性エラストマー、顔料等が挙げられる。一般的に充填材を用いる理由としては耐衝撃性の向上効果が挙げられる。また、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を用いた場合は、難燃助剤として作用し難燃性が向上する効果がある。これら充填材の配合量はエポキシ樹脂組成物全体に対し、1~150質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましい。配合量が多いと積層板用途として必要な接着性が低下する恐れがあり、さらに硬化物が脆く、十分な機械物性を得られなくなる恐れがある。また配合量が少ないと、硬化物の耐衝撃性の向上等、充填剤の配合効果がでない恐れがある。
【0063】
エポキシ樹脂組成物を板状基板等とする場合、その寸法安定性、曲げ強度等の点で繊維状のものが好ましい充填材として挙げられる。より好ましくはガラス繊維を網目状に編んだガラス繊維基板が挙げられる。
【0064】
エポキシ樹脂組成物は、さらに必要に応じてシランカップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤、難燃剤、顔料等の核種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量はエポキシ樹脂組成物に対し、0.01~20質量%の範囲が好ましい。
【0065】
エポキシ樹脂組成物は繊維状基材に含浸させることによりプリント配線板等で用いられるプリプレグを作成することができる。繊維状基材としてはガラス等の無機繊維や、ポリエステル樹脂等、ポリアミン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の有機質繊維の織布または不織布を用いることができるがこれに限定されるものではない。エポキシ樹脂組成物からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えばエポキシ樹脂組成物を有機溶媒で粘度調整して作成した樹脂ワニスに含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば100~200℃で1~40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30~80質量%が好ましい。
【0066】
また、プリプレグを硬化するには、一般にプリント配線板を製造するときに用いられる積層板の硬化方法を用いることができるが、これに限定されるものではない。例えば、プリプレグを用いて積層板を形成する場合、プリプレグを一枚または複数枚積層し、片側または両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。そして、作成した積層物を加圧加熱することでプリプレグを硬化させ、積層板を得ることができる。その時、加熱温度を160~220℃、加圧圧力を50~500N/cm2、加熱加圧時間を40~240分間とすることが好ましく、目的とする硬化物を得ることができる。加熱温度が低いと硬化反応が十分に進行せず、高いとエポキシ樹脂組成物の分解が始まる恐れがある。また、加圧圧力が低いと得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があり、高いと硬化する前に樹脂が流れてしまい、希望する厚みの硬化物が得られない恐れがある。さらに、加熱加圧時間が短いと十分に硬化反応が進行しない恐れがあり、長いとプリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の熱分解が起こる恐れがあり、好ましくない。
【0067】
エポキシ樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法で硬化することによってエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。硬化物を得るための方法としては、公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファ一成形、圧縮成形等や樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし積層して加熱加圧硬化することで積層板とする等の方法が好適に用いられる。その際の硬化温度は通常、100~300℃であり、硬化時間は通常、1時間~5時間程度である。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、積層物、成型物、接着物、塗膜、フィルム等の形態をとることができる。
【0069】
エポキシ樹脂組成物を作製し、加熱硬化により積層板および硬化物を評価した結果、硬化物において優れた低誘電特性を発現し、さらにプリント配線板用途で銅箔剥離強度および層間密着強度の優れたエポキシ硬化性樹脂組成物を提供することができた。
【実施例】
【0070】
実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表し、「ppm」は質量ppmを表す。また、測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。
【0071】
・水酸基当量:JIS K 0070規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。なお、特に断りがない限り、フェノール樹脂の水酸基当量はフェノール性水酸基当量を意味する。
【0072】
・軟化点:JIS K 7234規格、環球法に準拠して測定した。具体的には、自動軟化点装置(株式会社メイテック製、ASP-MG4)を使用した。
【0073】
・エポキシ当量:JIS K 7236規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。具体的には自動電位差滴定装置(平沼産業株式会社製、COM-1600ST)を用いて、溶媒としてクロロホルムを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液で滴定した。
【0074】
・全塩素含有量:JIS K 7243-3規格に準拠して測定を行い、単位は「ppm」で表した。具体的には、溶媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用し、1mol/L水酸化カリウム1,2-プロパンジオール溶液を加えて加熱処理した後、自動電位差滴定装置(平沼産業株式会社製、COM-1700)を用いて、0.01mol/Lの硝酸銀溶液で滴定した。
【0075】
・銅箔剥離強さおよび層間接着力:JIS C 6481に準じて測定し、層間接着力は7層目と8層目の間で引き剥がし測定した。
【0076】
・比誘電率および誘電正接:IPC-TM-650 2.5.5.9に準じてマテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を用い、容量法により周波数1GHzにおける比誘電率および誘電正接を求めることにより評価した。
【0077】
・GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:本体(東ソー株式会社製、HLC-8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料はサンプル0.1gを10mLのTHFに溶解し、マイクロフィルターで濾過したものを50μL使用した。データ処理は、東ソー株式会社製GPC-8020モデルIIバージョン6.00を使用した。
【0078】
・IR:フーリエ変換型赤外分光光度計(PerkinEler Precisely製、Spectrum One FT-IR Spectrometer 1760X)を用い、セルにはKRS-5を使用し、THFに溶解させたサンプルをセル上に塗布、乾燥させた後、波数650~4000cm-1の吸光度を測定した。
【0079】
・ESI-MS:質量分析計(島津製作所製、LCMS-2020)を用い、移動相としてアセトニトリルと水を用い、アセトニトリルに溶解させたサンプルを測定することにより、質量分析を行った。
【0080】
実施例、比較例で使用する略号は以下の通りである。
[エポキシ樹脂]
E1:実施例11で得たエポキシ樹脂
E2:実施例12で得たエポキシ樹脂
E3:実施例13で得たエポキシ樹脂
E4:実施例14で得たエポキシ樹脂
E5:実施例15で得たエポキシ樹脂
E6:実施例16で得たエポキシ樹脂
E7:実施例17で得たエポキシ樹脂
E8:実施例18で得たエポキシ樹脂
E9:実施例19で得たエポキシ樹脂
E10:実施例20で得たエポキシ樹脂
E11:比較例3で得たエポキシ樹脂
E12:フェノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、HP-7200H、エポキシ当量280、軟化点83℃)
E13:芳香族変性ノボラックエポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YDAN-1000-9HH、エポキシ当量293、軟化点97℃)
【0081】
[硬化剤]
A1:実施例1で得たフェノール樹脂
A2:実施例2で得たフェノール樹脂
A3:実施例3で得たフェノール樹脂
A4:実施例4で得たフェノール樹脂
A5:実施例5で得たフェノール樹脂
A6:実施例6で得たフェノール樹脂
A7:実施例7で得たフェノール樹脂
A8:実施例8で得たフェノール樹脂
A9:実施例9で得たフェノール樹脂
A10:実施例10で得たフェノール樹脂
A11:比較例1で得たフェノール樹脂
A12:フェノールノボラック樹脂(アイカ工業株式会社製、ショウノールBRG-557、水酸基当量105、軟化点80℃)
A13:ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、GDP-6140、水酸基当量196、軟化点130℃)
A14:比較例2で得られた芳香族変性フェノール樹脂
【0082】
[硬化促進剤]
C1:2E4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ)
【0083】
実施例1
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、滴下ロート、および冷却管を備えたガラス製セパラブルフラスコからなる反応装置に、2,6-キシレノール970部、47%BF
3エーテル錯体14.5部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン300部(2,6-キシレノールに対し0.29倍モル)を2時間で滴下した。さらに125~135℃の温度で6時間反応し、水酸化カルシウム2.3部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液4.6部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK1000部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水400部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂(A1)を540部得た。水酸基当量は213であり、軟化点は71℃であり、吸収比(A
3040/A
1210)は0.11であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。得られたフェノール樹脂(A1)のGPCを
図1に、FT-IRを
図2にそれぞれ示す。
図1のaは式(1)のn=1体と式(1)のR
2付加体の無いn=1体の混合体を示し、bは式(1)のn=0体を示す。
図2のcはジシクロペンタジエン骨格のオレフィン部位のC-H伸縮振動に由来するピークを示し、dはフェノール核におけるC-O伸縮振動による吸収を示す。
【0084】
実施例2
実施例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール832部、47%BF3エーテル錯体12.4部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン300部(2,6-キシレノールに対し0.33倍モル)を2時間で滴下した。さらに125~135℃の温度で6時間反応し、水酸化カルシウム2.0部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液4.0部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK1000部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水400部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂(A2)を540部得た。水酸基当量は217であり、軟化点は64℃であり、吸収比(A3040/A1210)は0.17であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。
【0085】
実施例3
実施例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール693部、47%BF3エーテル錯体10.4部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン300部(2,6-キシレノールに対し0.40倍モル)を2時間で滴下した。さらに125~135℃の温度で6時間反応し、水酸化カルシウム1.7部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液3.3部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK1800部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水650部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂(A3)を1040部得た。水酸基当量は222であり、軟化点は55℃であり、吸収比(A3040/A1210)は0.20であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。
【0086】
実施例4
実施例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール832部、47%BF3エーテル錯体12.5部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン450部(2,6-キシレノールに対し0.50倍モル)を2時間で滴下した。さらに125~135℃の温度で6時間反応し、水酸化カルシウム2.0部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液4.0部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK1800部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水650部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂(A4)を1040部得た。水酸基当量は226であり、室温半固形の樹脂であり、吸収比(A3040/A1210)は0.32であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。
【0087】
実施例5
実施例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール140部、47%BF3エーテル錯体9.3部を仕込み、撹拌しながら110℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン86.6部(2,6-キシレノールに対し0.56倍モル)を1時間で滴下した。さらに110℃の温度で3時間反応した後、同温度に保持しながらジシクロペンタジエン68部(2,6-キシレノールに対し0.44倍モル)を1時間で滴下した。さらに120℃で2時間反応した。水酸化カルシウム1.5部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液3部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK700部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水200部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂(A5)を274部得た。水酸基当量は277であり、軟化点97℃の樹脂であり、吸収比(A3040/A1210)は0.14であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。
【0088】
実施例6
実施例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール150部、47%BF3エーテル錯体8.7部を仕込み、撹拌しながら110℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン81.2部(2,6-キシレノールに対し0.50倍モル)を1時間で滴下した。さらに110℃の温度で3時間反応した後、同温度に保持しながらジシクロペンタジエン69.4部(2,6-キシレノールに対し0.43倍モル)を1時間で滴下した。さらに120℃で2時間反応した。水酸化カルシウム1.4部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液2.8部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK700部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水200部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂(A6)を281部得た。水酸基当量は261であり、軟化点95℃の樹脂であり、吸収比(A3040/A1210)は0.13であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。
【0089】
実施例7
実施例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール95.0部、47%BF
3エーテル錯体6.3部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン58.8部(2,6-キシレノールに対し0.56倍モル)を1時間で滴下した。さらに115~125℃の温度で3時間反応した後、さらに同温度でジシクロペンタジエン69.2部(2,6-キシレノールに対し0.67倍モル)を1時間で滴下し、115℃~125℃の温度で2時間反応した。水酸化カルシウム1.0部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液2.0部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK520部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水150部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂(A7)を221部得た。水酸基当量は377であり、軟化点は102℃であり、吸収比(A
3040/A
1210)は0.18であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。得られたフェノール樹脂(A7)のGPCを
図3に、FT-IRを
図4にそれぞれ示す。
【0090】
実施例8
実施例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール90.0部、47%BF3エーテル錯体7.0部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン64.9部(2,6-キシレノールに対し0.66倍モル)を1時間で滴下した。さらに115~125℃の温度で3時間反応した後、さらに同温度でジシクロペンタジエン69.7部(2,6-キシレノールに対し0.72倍モル)を1時間で滴下し、115℃~125℃の温度で2時間反応した。水酸化カルシウム1.1部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液2.3部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK525部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水150部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂(A8)を222部得た。水酸基当量は342であり、軟化点は104℃であり、吸収比(A3040/A1210)は0.18であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。
【0091】
実施例9
実施例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール80.0部、47%BF3エーテル錯体7.4部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン69.3部(2,6-キシレノールに対し0.80倍モル)を1時間で滴下した。さらに115~125℃の温度で3時間反応した後、さらに同温度でジシクロペンタジエン67.2部(2,6-キシレノールに対し0.78倍モル)を1時間で滴下し、115℃~125℃の温度で2時間反応した。水酸化カルシウム1.2部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液2.4部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK505部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水150部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂(A9)を214部得た。水酸基当量は370であり、軟化点は108℃であり、吸収比(A3040/A1210)は0.19であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。
【0092】
実施例10
実施例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール90.0部、47%BF3エーテル錯体6.0部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン55.7部(2,6-キシレノールに対し0.57倍モル)を1時間で滴下した。さらに115~125℃の温度で3時間反応した後、さらに同温度でジシクロペンタジエン87.4部(2,6-キシレノールに対し0.89倍モル)を1時間で滴下し、115℃~125℃の温度で2時間反応した。水酸化カルシウム1.0部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液1.9部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK550部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水155部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂(A10)を222部得た。水酸基当量は384であり、軟化点は111℃であり、吸収比(A3040/A1210)は0.19であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。
【0093】
比較例1
実施例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール1109部、47%BF
3エーテル錯体16.6部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン300部(2,6-キシレノールに対し0.25倍モル)を2時間で滴下した。さらに125~135℃の温度で6時間反応し、水酸化カルシウム2.6部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液5.2部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK1000部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水400部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のジフェノール樹脂(A5)を540部得た。水酸基当量は208であり、軟化点は89.5℃であり、FT-IR測定において3040cm
-1にピークを確認することはできなかった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=375、629が確認された。ジシクロペンタジエンの反応率は100%であった。得られたフェノール樹脂(A11)のGPCを
図5に、FT-IRを
図6にそれぞれ示す。
【0094】
比較例2
実施例1と同様のセパラブルフラスコに、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、軟化点130℃)を105部、p-トルエンスルホン酸を0.1部仕込み、150℃まで昇温した。同温度を維持しながら、スチレン94部を3時間かけて滴下し、さらに同温度で1時間撹拌を継続した。その後、MIBK500部に溶解させ、80℃にて5回水洗を行った。続いて、MIBKを減圧留去し、芳香族変性フェノールノボラック樹脂(A14)を得た。水酸基当量は199、軟化点は110℃であった。
【0095】
実施例11
撹拌機、温度計、窒素吹き込み環、滴下ロート、および冷却管を備えた反応装置に、実施例1で得たフェノール樹脂(A1)250部、エピクロルヒドリン544部とジエチレングリコールジメチルエーテル163部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液108部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK948部を加えて生成物を溶解した。その後、263部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E1)を298部得た。エポキシ当量は282、全塩素含有量980ppm、室温半固形の樹脂であった。得られたエポキシ樹脂(E1)のGPCを
図7に示す。
【0096】
実施例12
実施例11と同様の反応装置に、実施例2で得たフェノール樹脂(A2)250部、エピクロルヒドリン533部、とジエチレングリコールジメチルエーテル160部、を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液106部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK944部を加えて生成物を溶解した。その後、257部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E2)を223部得た。エポキシ当量は289、全塩素含有量945ppm、室温半固形の樹脂であった。
【0097】
実施例13
実施例11と同様の反応装置に、実施例3で得たフェノール樹脂(A3)250部、エピクロルヒドリン522部とジエチレングリコールジメチルエーテル157部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液104部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK940部を加えて生成物を溶解した。その後、252部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E3)を263部得た。エポキシ当量は296、全塩素含有量897ppm、室温半固形の樹脂であった。
【0098】
実施例14
実施例11と同様の反応装置に、実施例4で得たフェノール樹脂(A4)250部、エピクロルヒドリン512部とジエチレングリコールジメチルエーテル154部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液102部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK936部を加えて生成物を溶解した。その後、247部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E4)を287部得た。エポキシ当量は303、全塩素含有量894ppm、室温半固形の樹脂であった。
【0099】
実施例15
実施例11と同様の反応装置に、実施例5で得たフェノール樹脂(A5)180部、エピクロルヒドリン301部とジエチレングリコールジメチルエーテル90部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液58部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK505部を加えて生成物を溶解した。その後、153部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静地して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E5)を189部得た。エポキシ当量は348、全塩素含有量570ppm、軟化点82℃の樹脂であった。
【0100】
実施例16
実施例11と同様の反応装置に、実施例6で得たフェノール樹脂(A6)180部、エピクロルヒドリン159部とジエチレングリコールジメチルエーテル48部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液62部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK510部を加えて生成物を溶解した。その後、155部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静地して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E6)を179部得た。エポキシ当量は372、全塩素含有量535ppm、軟化点85℃の樹脂であった。
【0101】
実施例17
実施例11と同様の反応装置に、実施例7で得たフェノール樹脂(A7)180部、エピクロルヒドリン221部とジエチレングリコールジメチルエーテル33部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液39部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK482部を加えて生成物を溶解した。その後、146部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E7)を200部得た。エポキシ当量は446、全塩素含有量431ppm、軟化点91℃の樹脂であった。得られたエポキシ樹脂(E7)のGPCを
図8に示す。
【0102】
実施例18
実施例11と同様の反応装置に、実施例8で得たフェノール樹脂(A8)180部、エピクロルヒドリン243部、とジエチレングリコールジメチルエーテル37部、を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液43部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK489部を加えて生成物を溶解した。その後、148部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E8)を203部得た。エポキシ当量は433、全塩素含有量447ppm、軟化点93℃の樹脂であった。
【0103】
実施例19
実施例11と同様の反応装置に、実施例9で得たフェノール樹脂(A9)180部、エピクロルヒドリン225部とジエチレングリコールジメチルエーテル34部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液40部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK483部を加えて生成物を溶解した。その後、147部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E9)を137部得た。エポキシ当量は468、全塩素含有量382ppm、軟化点97℃の樹脂であった。
【0104】
実施例20
実施例11と同様の反応装置に、実施例10で得たフェノール樹脂(A10)180部、エピクロルヒドリン217部とジエチレングリコールジメチルエーテル33部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液38部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK481部を加えて生成物を溶解した。その後、146部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E10)を126部得た。エポキシ当量は475、全塩素含有量394ppm、軟化点101℃の樹脂であった。
【0105】
比較例3
実施例11と同様の反応装置に、比較例1で得たフェノール樹脂(A11)281部、エピクロルヒドリン625部とジエチレングリコールジメチルエーテル187部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液124部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK1070部を加えて生成物を溶解した。その後、301部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E11)を338部得た。エポキシ当量は275、全塩素含有量950ppm、軟化点51℃であった。得られたエポキシ樹脂(E11)のGPCを
図9に示す。
【0106】
実施例21
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂(E1)を100部、硬化剤としてフェノール樹脂(A12)を37部、硬化促進剤としてC1を0.22部で配合し、MEK、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドで調整した混合溶媒に溶解してエポキシ樹脂組成物ワニスを得た。得られたエポキシ樹脂組成物ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製、WEA 7628 XS13、0.18mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環オーブン中で9分間乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ8枚と、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC-III、厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、1.6mm厚の積層板を得た。積層板の銅箔剥離強さおよび層間接着力の結果を表1に示す。
【0107】
また、得られたプリプレグをほぐし、篩で100メッシュパスの粉状のプリプレグパウダーとした。得られたプリプレグパウダーをフッ素樹脂製の型に入れて、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、50mm角×2mm厚の試験片を得た。試験片の比誘電率および誘電正接の結果を表1に示す。
【0108】
実施例22~45
表1~3の配合量(部)で配合し、実施例21と同様の操作を行い、積層板および試験片を得た。硬化促進剤の使用はワニスゲルタイムを300秒程度に調整できる量とした。実施例21と同様の試験を行い、その結果を表1~3に示す。
【0109】
比較例4~11
表4の配合量(部)で配合し、実施例21と同様の操作を行い、積層板および試験片を得た。硬化促進剤の使用はワニスゲルタイムを300秒程度に調整できる量とした。実施例21と同様の試験を行い、その結果を表4に示す。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
これらの結果から明らかなとおり、実施例で得られる2,6-ジ置換・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、2,6-ジ置換・ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、およびそれらを含む樹脂組成物は、非常に良好な低誘電特性を発現し、さらに接着力にも優れた樹脂硬化物を提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、塗料、土木接着、注型、電気電子材料、フィルム材料等多岐の用途に利用でき、特に電気電子材料の一つであるプリント配線基板用途、とりわけ低誘電正接が強く要求されるモバイル用途やサーバー用途等に好適に用いることができる。