(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】加工装置及び被加工物の搬出方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/08 20060101AFI20240524BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20240524BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240524BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240524BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240524BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B23Q3/08 A
H01L21/68 A
H01L21/68 N
H01L21/304 622L
H01L21/304 631
B24B41/06 A
B24B41/06 Z
B23Q7/04 K
(21)【出願番号】P 2021001746
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花村 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】花島 聡
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-15825(JP,A)
【文献】特開2010-10207(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-20826(KR,A)
【文献】特開2009-70996(JP,A)
【文献】米国特許第6113698(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00 - 3/18
H01L 21/677
H01L 21/683
H01L 21/301
H01L 21/304
B24B 41/00 - 51/00
B23Q 7/00 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、
該加工ユニットで加工される加工点に加工用の液体を供給する液体供給ノズルと、
該保持テーブルから被加工物を搬出する搬出ユニットと、
制御ユニットと、を有する加工装置であって、
該保持テーブルは、
被加工物を吸引保持する中央領域を有するポーラス板と、
該ポーラス板を収容する凹部を有する枠体と、
該枠体の底面に形成され該中央領域と吸引源とを連通させる吸引ラインと、
該中央領域を囲繞する外周領域からエアを噴出させる、エア供給源と連通されたエア供給ラインと、を備え、
該制御ユニットは、該吸引ラインによって該ポーラス板と該吸引源とを連通させ該中央領域で被加工物を吸引し、該ポーラス板と被加工物との間の水を除去しつつ、該エア供給ラインにエアを供給し、該外周領域からエアを噴出させて被加工物の外周部を該保持面から浮上させ、該ポーラス板と被加工物との間の水の表面張力を解除した状態で、該搬出ユニットによって被加工物を該保持テーブルから搬出することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットで加工される加工点に加工用の液体を供給する液体供給ノズルと、該保持テーブルから被加工物を搬出する搬出ユニットと、を有する加工装置において、被加工物を該搬出ユニットによって該保持テーブルから搬出する搬出方法であって、
該保持テーブルは、
被加工物を吸引保持する中央領域を有するポーラス板と、
該ポーラス板を収容する凹部を有する枠体と、
該枠体の底面に形成され該中央領域と吸引源とを連通させる吸引ラインと、
該中央領域を囲繞する外周領域からエアを噴出させる、エア供給源と連通されたエア供給ラインと、を備え、
該吸引ラインによって該ポーラス板と該吸引源とを連通させ該中央領域で被加工物を吸引し、該ポーラス板と被加工物との間の水を除去しつつ、該エア供給ラインにエアを供給し該外周領域からエアを噴出させて被加工物の外周部のみを該保持面から浮上させ、該ポーラス板と被加工物との間の水の表面張力を解除する外周浮上ステップと、
該搬出ユニットによって被加工物を保持する被加工物保持ステップと、
該被加工物保持ステップ及び該外周浮上ステップの後、該中央領域における被加工物の吸引を遮断して該保持テーブルから被加工物全体を離反させて該保持テーブルから被加工物を搬出する搬出ステップと、
を備える被加工物の搬出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持テーブルから被加工物を搬出する加工装置及び被加工物の搬出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
保持テーブルで保持した被加工物を加工し、加工後の被加工物を保持テーブルから搬出する加工装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-127195号公報
【文献】特許第6309371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工後に保持テーブルから被加工物を搬出する際に、被加工物と保持テーブルの保持面との間に入り込んだ加工用の液体(水)の表面張力により搬出できないという問題があった。そこで、保持面に溜まった水を抜くために被加工物の搬出時に保持面に負圧を導入して、被加工物を吸引保持しつつ水を吸い込むことで水を抜き、表面張力による固定を解除しているが、被加工物と保持面との間が真空になった状態でいくら吸引しても保持面に残った水がすべて除去できず、保持面からの搬出時に搬送エラーが発生することがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工後の被加工物を搬出する際に、保持面上の水抜きをより強力に行い、被加工物の搬出をより確実に行える加工装置及び被加工物の搬出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットで加工される加工点に加工用の液体を供給する液体供給ノズルと、該保持テーブルから被加工物を搬出する搬出ユニットと、制御ユニットと、を有する加工装置であって、該保持テーブルは、被加工物を吸引保持する中央領域を有するポーラス板と、該ポーラス板を収容する凹部を有する枠体と、該枠体の底面に形成され該中央領域と吸引源とを連通させる吸引ラインと、該中央領域を囲繞する外周領域からエアを噴出させる、エア供給源と連通されたエア供給ラインと、を備え、該制御ユニットは、該吸引ラインによって該ポーラス板と該吸引源とを連通させ該中央領域で被加工物を吸引し、該ポーラス板と被加工物との間の水を除去しつつ、該エア供給ラインにエアを供給し、該外周領域からエアを噴出させて被加工物の外周部を該保持面から浮上させ、該ポーラス板と被加工物との間の水の表面張力を解除した状態で、該搬出ユニットによって被加工物を該保持テーブルから搬出することを特徴とする。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の搬出方法は、被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、該加工ユニットで加工される加工点に加工用の液体を供給する液体供給ノズルと、該保持テーブルから被加工物を搬出する搬出ユニットと、を有する加工装置において、被加工物を該搬出ユニットによって該保持テーブルから搬出する搬出方法であって、該保持テーブルは、被加工物を吸引保持する中央領域を有するポーラス板と、該ポーラス板を収容する凹部を有する枠体と、該枠体の底面に形成され該中央領域と吸引源とを連通させる吸引ラインと、該中央領域を囲繞する外周領域からエアを噴出させる、エア供給源と連通されたエア供給ラインと、を備え、該吸引ラインによって該ポーラス板と該吸引源とを連通させ該中央領域で被加工物を吸引し、該ポーラス板と被加工物との間の水を除去しつつ、該エア供給ラインにエアを供給し該外周領域からエアを噴出させて被加工物の外周部のみを該保持面から浮上させ、該ポーラス板と被加工物との間の水の表面張力を解除する外周浮上ステップと、該搬出ユニットによって被加工物を保持する被加工物保持ステップと、該被加工物保持ステップ及び該外周浮上ステップの後、該中央領域における被加工物の吸引を遮断して該保持テーブルから被加工物全体を離反させて該保持テーブルから被加工物を搬出する搬出ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、加工後の被加工物を搬出する際に、保持面上の水抜きをより強力に行い、被加工物の搬出をより確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る被加工物の搬出方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る加工装置1及び被加工物の搬出方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る加工装置1の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1の加工装置1の要部を示す断面図である。
図3は、
図1の加工装置1の要部を示す斜視図である。実施形態に係る加工装置1は、
図1に示すように、保持テーブル10と、加工ユニット20と、液体供給ノズル30と、第1搬出ユニット40と、第2搬出ユニット50と、制御ユニット60と、表示ユニット70と、洗浄ユニット80と、カセット載置台90と、を有する。
【0012】
本実施形態において、加工装置1が加工する加工対象である被加工物100は、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素、ガラスなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどである。被加工物100は、
図1に示すように、平坦な表面101の格子状に形成される複数の分割予定ライン102によって区画された領域にチップサイズのデバイス103が形成されている。本発明において被加工物100は、粘着テープに貼着されず、被加工物100の単体で処理されてもよい。例えば完全に分割しない深さの溝を形成するハーフカットを精度良く施したい場合は粘着テープの厚みばらつきに影響を受けないようにするため、被加工物100の単体で加工される場合が多い。また、被加工物100は、表面101の裏側の裏面104に粘着テープが貼着され、粘着テープの外縁部に環状フレームが装着されてもよい。また、環状フレームに装着されず、同形の粘着テープに貼着されていても良い。また、被加工物100は、本発明では、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0013】
保持テーブル10は、
図2に示すように、ポーラス板11と、枠体12と、吸引ライン16と、エア供給ライン18と、を備える。ポーラス板11は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等で円盤形状に形成されている。枠体12は、ステンレス等で円盤状に形成されており、中央にポーラス板11を収容する凹部14が形成されている。ポーラス板11は、枠体12の凹部14に嵌め込まれる。
【0014】
保持テーブル10は、被加工物100が載置されて、載置された被加工物100を保持する保持面13を有する。保持面13は、ポーラス板11の上面と、枠体12の上面と、により構成される。ポーラス板11の上面と枠体12の上面とは、同一平面上に配置されており、かつ、水平面であるXY平面に平行に形成されている。保持面13は、本実施形態では、被加工物100が表面101を上方に向けて載置され、載置された被加工物100を裏面104側から直接保持する。枠体12の上面は、被加工物100よりポーラス板11の径が小さい場合、ポーラス板11からはみ出した被加工物100の外周部を支持する。
【0015】
吸引ライン16は、
図2に示すように、枠体12の凹部14の底面14-1の中央部分15-1に形成され、吸引バルブ16-1を介してポーラス板11の中央領域13-1と吸引源17とを連通させる。ポーラス板11の中央領域13-1は、
図2に示すように、吸引バルブ16-1を開放して吸引ライン16により吸引源17からの負圧が導入されることにより、載置された被加工物100を吸引保持する吸引エリアとなる。
【0016】
エア供給ライン18は、
図2に示すように、枠体12の凹部14の底面14-1の外周部分15-2に形成され、エア供給バルブ18-1を介してポーラス板11の中央領域13-1を囲繞する外周領域13-2とエア供給源19とを連通させ、中央領域13-1を囲繞する外周領域13-2からエアを噴出させる。ここで、ポーラス板11の上面は、中央領域13-1と外周領域13-2とを有し、外周領域13-2は、中央領域13-1の外周側に位置している。エア供給ライン18は、
図2に示す例に限定されず、凹部14を囲繞する枠体12の内側面14-2や枠体12の環状凸部14-3の上面からエアが噴出されるように形成されてもよい。
【0017】
ここで、本実施形態では例えば、外周部分15-2は、底面14-1と同心であり、底面14-1の内径の半分の円の外側の領域の部分を指す。また、中央部分15-1は、底面14-1においてエア供給ライン18を形成した位置よりも径方向の内側の領域の部分を指す。
【0018】
保持テーブル10において、
図2に示すように、吸引バルブ16-1を開放して吸引ライン16により吸引源17からの負圧が導入され、なおかつ、エア供給バルブ18-1を開放してエア供給ライン18によりエア供給源19からのエアが導入されると、保持面13の中央領域13-1は、保持面13上の被加工物100を吸引しつつ、保持面13と被加工物100との間に入り込んだ加工用の液体35を吸引して除去する吸引エリアとなり、外周領域13-2は、中央領域13-1を囲繞し、少なくとも1箇所にエアを噴出させるエア噴出口を有し、保持面13上の被加工物100の外周部を保持面13から浮上させる噴出エリアとなる。
【0019】
なお、ポーラス板11の上面の中央領域13-1と外周領域13-2との境界は、本実施形態では、吸引ライン16及びエア供給ライン18が形成された位置、並びに、吸引ライン16からの負圧の圧力値(ゲージ圧)及びエア供給ライン18からのエアの供給量や供給圧等に応じて変わる。
【0020】
保持テーブル10は、不図示のX軸移動ユニットにより水平方向の一方向であるX軸方向に移動自在に設けられている。保持テーブル10は、X軸移動ユニットによりX軸方向に沿って移動することで、
図1に示すように、被加工物100を搬入及び搬出する搬出入領域3と、被加工物100を加工ユニット20により加工する加工領域4との間を行き来する。保持テーブル10は、不図示の回転駆動源により鉛直方向でありXY平面に直交するZ軸回りに回転自在に設けられている。
【0021】
加工ユニット20は、
図1に示すように加工領域4に設けられており、加工領域4に位置付けられた保持テーブル10の保持面13で保持された被加工物100を加工する。加工ユニット20は、本実施形態では、スピンドルの先端に装着された切削ブレードを有し、スピンドルにより水平方向の別の一方向でありX軸方向に直交するY軸方向と平行な軸心周りの回転動作が加えられた切削ブレードで、加工領域4に位置付けられた保持テーブル10に保持された被加工物100を例えば分割予定ライン102に沿って切削する切削ユニットである。
【0022】
なお、加工ユニット20は、本発明ではこのような切削ユニットに限定されず、例えば、スピンドルの先端に装着された研削ホイールを有し、スピンドルによりZ軸方向と平行な軸心周りの回転動作が加えられた研削ホイールで、加工領域4に位置付けられた保持テーブル10に保持された被加工物100の例えば裏面104側を研削する研削ユニットでもよい。また、加工ユニット20は、スピンドルの先端に装着された研磨パッドを有し、スピンドルによりZ軸方向と平行な軸心周りの回転動作が加えられた研磨パッドで、加工領域4に位置付けられた保持テーブル10に保持された被加工物100の例えば裏面104側を研磨する研磨ユニットでもよい。
【0023】
液体供給ノズル30は、加工ユニット20に隣接して加工領域4に設けられ、不図示の液体供給源から供給される加工用の液体35を、被加工物100において加工ユニット20で加工される加工点及び加工点の近傍の領域に供給する。加工点は、加工ユニット20が前述の切削ユニットである場合、被加工物100が切削ブレードで切削されている点である。加工点は、加工ユニット20が研削ユニットや研磨ユニットである場合、被加工物100が研削ホイールや研磨パッドで研削や研磨されている面上の任意の点である。加工用の液体35は、加工ユニット20の加工の種類や条件、仕様等に応じて適宜選択して使用することができ、本実施形態では、切削水、研削水、研磨水として使用する水(純水)である。
【0024】
第1搬出ユニット40は、
図1及び
図2に示すように、第1搬出アーム41と、Y軸移動ユニット42と、Z軸移動ユニット43と、板部材44と、溝45と、把持部46と、エア供給源47と、エア供給ライン48と、を有する。第1搬出アーム41は、上方側がZ軸方向に沿って延び、下方側がX軸方向に沿って延びるL字状の部材であり、上方がZ軸移動ユニット43を介してY軸移動ユニット42に接続されており、下方に板部材44が固定されている。
【0025】
Y軸移動ユニット42は、Z軸移動ユニット43とともに第1搬出アーム41をY軸方向に沿って移動させる。Z軸移動ユニット43は、第1搬出アーム41をZ軸方向に沿って移動させる。Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43は、それぞれ、例えば、Y軸及びZ軸の軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、及び、第1搬出アーム41をY軸方向またはZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備えて構成されている。
【0026】
板部材44は、
図1及び
図3に示すように、円板状に形成されており、上方側が第1搬出アーム41に支持されており、下方側には、中央から放射状に複数本(
図1及び
図3に示す例では3本)の溝45が形成されている。板部材44は、後述するカセット載置台90に載置されたカセット95の開口と対向する位置に、被加工物100に装着された環状フレーム106を把持する把持部46が設けられている。
【0027】
溝45は、
図2及び
図3に示すように、板部材44の内部に形成されたエア供給ライン48を介して、エア供給源47と連通している。溝45は、エア供給ライン48との接続部分において、溝45が延びる方向に直交する断面における溝45の断面積が、エアが流れる方向に直交する断面におけるエア供給ライン48の断面積よりも大きくなるように、形成される。
【0028】
エア供給源47から供給されたエアは、溝45内を中央から放射方向に向かって高速で流れる。エア供給源47から供給されたエアは、溝45とエア供給ライン48との断面積の関係から、エア供給ライン48から溝45に流れる際に加速して、溝45の両脇の周囲の空気を引き込みながら溝45内を流れるので、ベルヌーイ効果によって溝45の近傍に負圧が生じる。第1搬出ユニット40の板部材44は、この溝45の近傍に生じる負圧により、板部材44が溝45の形成された側に対向する保持テーブル10の保持面13上の被加工物100を非接触で保持する。
【0029】
第1搬出ユニット40の板部材44は、本実施形態では、溝45内にエアを流すことによりベルヌーイ効果によって生じる負圧により非接触で保持テーブル10上の被加工物100を保持するが、本発明ではこれに限定されず、板部材44の下方側に設置された吸引パッドを被加工物100の表面101に接触させて吸引パッドにより被加工物100を吸引保持してもよいし、吸引パッドにより被加工物100に粘着テープを介して装着された環状フレームの上面側を吸引保持してもよい。
【0030】
第1搬出ユニット40は、カセット載置台90に載置されたカセット95内の加工前の被加工物100を把持部46で把持して取り出し、搬出入領域3に保持テーブル10の移動領域よりも上方に設けられた被加工物100の仮置き用の一対のガイドレール93上に載置する。第1搬出ユニット40は、一対のガイドレール93上に載置した加工前の被加工物100をベルヌーイ効果によって生じる負圧により非接触で保持して、搬出入領域3に位置付けられた保持テーブル10の保持面13上に載置する。第1搬出ユニット40は、搬出入領域3に位置付けられた保持テーブル10の保持面13上の加工後の被加工物100をベルヌーイ効果によって生じる負圧により非接触で保持して搬出し、洗浄ユニット80に搬送する。第1搬出ユニット40は、洗浄ユニット80で洗浄された被加工物100をベルヌーイ効果によって生じる負圧により非接触で保持し、一対のガイドレール93上に載置する。第1搬出ユニット40は、一対のガイドレール93上に載置した加工後及び洗浄後の被加工物100を把持部46で把持して、カセット載置台90に載置されたカセット95内に搬送する。
【0031】
第2搬出ユニット50は、第1搬出ユニット40と概ね同様の構成を有しており、
図1及び
図2に示すように、第2搬出アーム51と、Y軸移動ユニット52と、Z軸移動ユニット53と、板部材54と、溝55と、把持部56と、エア供給源57と、エア供給ライン58と、を有する。第2搬出アーム51、Y軸移動ユニット52、Z軸移動ユニット53、板部材54、溝55、把持部56、エア供給源57及びエア供給ライン58は、それぞれ、第1搬出アーム41、Y軸移動ユニット42、Z軸移動ユニット43、板部材44、溝45、把持部46、エア供給源47及びエア供給ライン48と概ね同様の構成を有している。第2搬出ユニット50は、板部材54で加工後の被加工物100をベルヌーイ効果によって生じる負圧により非接触で保持し、保持テーブル10から洗浄ユニット80へと搬送する。第1搬出ユニット40と第2搬出ユニット50は、互いにぶつからないようにZ軸方向の位置をずらしながら、交互に被加工物100を搬送する。加工装置1は、
図1に示す例では第1搬出ユニット40と第2搬出ユニット50との2つの搬出ユニットを備えているが、本発明ではこれに限定されず、いずれか一方の1つの搬出ユニットのみ備えていても、3つ以上の複数の搬出ユニットを備えていてもよい。
【0032】
制御ユニット60は、加工装置1の各種構成要素の動作を制御して、被加工物100の加工処理を加工装置1に実施させる。制御ユニット60は、吸引ライン16の吸引バルブ16-1の開閉及びエア供給ライン18のエア供給バルブ18-1の開閉を制御することで、保持面13上の吸引エリア及び噴出エリアの形成を制御する。制御ユニット60は、吸引源17を制御することで吸引ライン16から保持面13に導入する負圧の圧力値(ゲージ圧)を制御し、エア供給源19を制御することでエア供給ライン18からのエアの供給量や供給圧等を制御する。
【0033】
制御ユニット60は、Y軸移動ユニット42,52及びZ軸移動ユニット43,53を制御することで、第1,第2搬出ユニット40,50の第1,第2搬出アーム41,51のY軸方向及びZ軸方向の位置及び移動を制御する。制御ユニット60は、エア供給源47,57から溝45,55へのエアの供給を制御することで、溝45,55内にエアを流すことによりベルヌーイ効果によって生じる負圧を制御し、第1搬出ユニット40,50の板部材44,54による被加工物100の保持を制御する。制御ユニット60は、把持部46,56を制御することで、被加工物100の把持を制御する。
【0034】
制御ユニット60は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット60が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット60の演算処理装置は、制御ユニット60の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット60の入出力インターフェース装置を介して加工装置1の各構成要素に出力する。
【0035】
表示ユニット70は、加工装置1の加工条件の設定の画面、加工処理の結果の画面、制御ユニット60による吸引バルブ16-1の開閉及びエア供給バルブ18-1の開閉の制御に関する設定の画面、制御ユニット60による第1,第2搬出ユニット40,50の動作の制御に関する設定の画面等を表示する。表示ユニット70は、本実施形態では、液晶表示装置等により構成される。表示ユニット70は、オペレータが加工装置1の各種設定に関する情報等を入力する際に使用する入力ユニットが設けられている。表示ユニット70に設けられた入力ユニットは、本実施形態では、表示ユニット70に設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。なお、加工装置1は、本発明ではこれに限定されず、表示ユニット70を有していなくてもよい。なお、加工装置1は、本発明ではこれに限定されず、表示ユニット70の代わりに、有線または無線で、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス、コンピュータなどの情報機器に接続され、情報機器の表示部に表示したり、情報機器の入力部を介して操作されたりしても良い。
【0036】
洗浄ユニット80は、加工後の被加工物100を洗浄し、被加工物100に付着した加工屑等の異物を除去する。カセット載置台90は、複数の被加工物100を収容するための収容器であるカセット95を載置する載置台であり、載置されたカセット95をZ軸方向に昇降させる。なお、加工装置1は、本実施形態では、第2搬出ユニット50による被加工物100の搬出先の1つとして洗浄ユニット80を有しているが、本発明ではこれに限定されず、第2搬出ユニット50による被加工物100の搬出先として加工後の被加工物100の品質を検査する検査装置をさらに有してもよく、また洗浄ユニット80を有していなくてもよい。
【0037】
次に、本明細書は、実施形態に係る被加工物の搬出方法を図面に基づいて説明する。実施形態に係る被加工物の搬出方法は、被加工物100を第1,第2搬出ユニット40,50によって保持テーブル10から搬出する方法であって、加工装置1を用いて実施される。
図4は、実施形態に係る被加工物の搬出方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。実施形態に係る被加工物の搬出方法は、
図4に示すように、外周浮上ステップ1001と、被加工物保持ステップ1002と、搬出ステップ1003と、を備える。実施形態に係る被加工物の搬出方法は、例えば、保持テーブル10の保持面13で吸引保持した被加工物100を加工ユニット20での加工後に搬出する際に実施される。
【0038】
外周浮上ステップ1001は、吸引ライン16によってポーラス板11と吸引源17とを連通させ保持面13の中央領域13-1で被加工物100を吸引し、ポーラス板11と被加工物100との間の加工用の液体35(水)を除去しつつ、エア供給ライン18にエアを供給し、中央領域13-1を囲繞する外周領域13-2からエアを噴出させて被加工物100の外周部のみを保持面13から浮上させ、ポーラス板11と被加工物100との間の加工用の液体35(水)の表面張力を解除するステップである。
【0039】
外周浮上ステップ1001では、制御ユニット60は、吸引源17の負圧の圧力値(ゲージ圧)をポーラス板11の保持面13の全面で被加工物100を吸引保持する際よりも弱く制御しつつ、吸引ライン16の吸引バルブ16-1を開放することにより、吸引ライン16によってポーラス板11と吸引源17とを連通させて、保持面13の中央領域13-1で被加工物100を吸引し、ポーラス板11と被加工物100との間の加工用の液体35等の水を除去する。また、外周浮上ステップ1001では、制御ユニット60は、エア供給ライン18のエア供給バルブ18-1を開放することにより、エア供給ライン18にエア供給源19からのエアを供給し保持面13の外周領域13-2からエアを噴出させて被加工物100の外周部のみを保持面13から浮上させる。外周浮上ステップ1001では、このように、吸引源17の負圧の圧力値(ゲージ圧)を弱めにして、保持面13の中央領域13-1における吸引ライン16による吸引と、保持面13の外周領域13-2におけるエア供給ライン18からのエアの噴出による被加工物100の外周部の浮上とを同時に実施することで、保持面13上の加工用の液体35(水)と保持面13上の被加工物100の裏面104側とを強制的に引き離して、ポーラス板11と被加工物100との間に形成された真空状態を破壊し、ポーラス板11と被加工物100との間の加工用の液体35(水)の表面張力を解除することができる。なお、エア噴出口が形成される外周領域13-2は、
図2に示すようにポーラス板11の上面の外周領域でも良いし、ポーラス板11を囲繞する枠体12の上面でもよい。被加工物100の径がポーラス板11よりも大きい場合は、枠体12の上面に被加工物100の外周部が支持されるため、枠体12の上面にエア噴出口が形成される方が好ましい。
【0040】
被加工物保持ステップ1002は、外周浮上ステップ1001でポーラス板11と被加工物100との間の加工用の液体35(水)の表面張力を解除した状態で、第1搬出ユニット40によって被加工物100を保持するステップである。被加工物保持ステップ1002では、制御ユニット60は、溝45内にエアを流すことでベルヌーイ効果によって生じる負圧により、第1搬出ユニット40の板部材44で、保持面13上でポーラス板11との間の加工用の液体35(水)の表面張力が解除された状態の被加工物100を非接触で保持する。
【0041】
搬出ステップ1003は、外周浮上ステップ1001及び被加工物保持ステップ1002の後、保持面13の中央領域13-1における被加工物100の吸引を遮断して保持テーブル10から被加工物100の全体を離反させて、保持テーブル10から被加工物100を搬出するステップである。搬出ステップ1003では、制御ユニット60は、吸引ライン16の吸引バルブ16-1を閉鎖することにより、吸引ライン16によるポーラス板11と吸引源17との連通を遮断することで、保持面13の中央領域13-1における被加工物100の吸引を遮断して保持テーブル10から被加工物100の全体を離反させる。搬出ステップ1003では、これにより、第1搬出ユニット40の板部材44は、溝45内にエアを流すことでベルヌーイ効果によって生じる負圧により、被加工物100を非接触で保持する。搬出ステップ1003では、その後、制御ユニット60は、第1搬出ユニット40の板部材44によって非接触で保持した被加工物100を搬出する。
【0042】
第1搬出ユニット40の板部材44は、被加工物保持ステップ1002でのベルヌーイ効果によって生じる負圧による非接触での吸引力が弱いために被加工物100を完全に保持できない場合、次の搬出ステップ1003で保持面13の中央領域13-1における被加工物100の吸引を遮断して保持テーブル10から被加工物100の全体を離反させたときに、被加工物100を完全に保持する。
【0043】
なお、被加工物保持ステップ1002及び搬出ステップ1003では、本実施形態では、第1搬出ユニット40の板部材44が溝45内にエアを流すことでベルヌーイ効果によって生じる負圧により被加工物100を非接触で保持するが、本発明ではこれに限定されず、板部材44の下方側に設置された吸引パッドにより被加工物100を直接接触して吸引保持してもよい。
【0044】
以上のような構成を有する実施形態に係る加工装置1及び被加工物の搬出方法は、保持テーブル10が吸引ライン16及びエア供給ライン18を備え、加工後の被加工物100を搬出する際に、吸引ライン16によって保持面13の中央領域13-1で被加工物100を比較的弱い負圧で吸引し、ポーラス板11と被加工物100との間の加工用の液体35(水)を除去しつつ、エア供給ライン18によって被加工物100の外周部を保持面13から浮上させ、ポーラス板11と被加工物100との間に形成された真空状態を破壊し、加工用の液体35(水)の表面張力を解除する。このため、実施形態に係る加工装置1及び被加工物の搬出方法は、保持面13上の水抜きをより強力に行うことができるとともに、この表面張力によって被加工物100の保持面13への固定を解除できる。また、実施形態に係る加工装置1及び被加工物の搬出方法は、加工後の被加工物100を搬出する際に、被加工物100の搬出をより確実に行えるという作用効果を奏する。
【0045】
例えば、被加工物100を分割予定ライン102に沿って切削加工して被加工物100の厚み以下(例えば厚みの半分程度)の深さの切削溝を形成するいわゆるハーフカットを実施するような場合や、被加工物100を非常に薄く研削加工するような場合、被加工物100の外周部の全周を環状に切削するエッジトリミング加工をするような場合には、被加工物100の破損を防ぐため、第1搬出ユニット40でベルヌーイ効果を利用して非接触で被加工物100を保持する。実施形態に係る加工装置1及び被加工物の搬出方法は、このように第1搬出ユニット40によりベルヌーイ効果を利用して非接触で弱い力で被加工物100を保持するような場合には、特に、ポーラス板11と被加工物100との間の加工用の液体35(水)の表面張力を解除することにより、この表面張力によって被加工物100の保持面13への固定を解除できることによる上述の実施形態の効果を大きく発揮することができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 加工装置
10 保持テーブル
11 ポーラス板
12 枠体
13 保持面
13-1 中央領域(吸引エリア)
13-2 外周領域(吸引エリアの外周部分)
14 凹部
14-1 底面
14-2 内側面
15-1 中央部分
15-2 外周部分
16 吸引ライン
17 吸引源
18 エア供給ライン
19 エア供給源
20 加工ユニット
30 液体供給ノズル
35 加工用の液体(水)
40 第1搬出ユニット
50 第2搬出ユニット
60 制御ユニット
100 被加工物