(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】レジスト組成物、レジストパターン形成方法、化合物及び高分子化合物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20240524BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240524BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240524BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20240524BHJP
C07C 381/12 20060101ALI20240524BHJP
C07C 309/12 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/20 501
C08F20/10
C07C381/12 CSP
C07C309/12
(21)【出願番号】P 2022143204
(22)【出願日】2022-09-08
【審査請求日】2024-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 広樹
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-026915(JP,A)
【文献】特開2018-002708(JP,A)
【文献】特開2018-115157(JP,A)
【文献】特開2020-111564(JP,A)
【文献】国際公開第2018/136481(WO,A1)
【文献】特開2020-059708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/20
C08F 20/10
C07C 381/12
C07C 309/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分(A1)を含有し、
前記樹脂成分(A1)は、下記一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)を有する、レジスト組成物。
【化1】
[式中、R
01は、2価の連結基又は単結合である。R
02は、酸解離性基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。]
【請求項2】
前記一般式(a0-1)におけるR
02は、下記一般式(a1-r-2)で表される酸解離性基である、請求項1に記載のレジスト組成物。
【化2】
[式中、Ra’
4~Ra’
6はそれぞれ炭化水素基であって、Ra’
5とRa’
6とは互いに結合して環を形成してもよい。*は、前記一般式(a0-1)におけるR
02と結合する酸素原子との結合手を表す。]
【請求項3】
前記一般式(a0-1)におけるR
02は、下記一般式(a1-r-4)で表される酸解離性基である、請求項1に記載のレジスト組成物。
【化3】
[式中、Ra’
10は、炭化水素基である。Ra’
11a及びRa’
11bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。Ra’
12は、水素原子又は炭化水素基である。Ra’
10と、Ra’
11a又はRa’
11bとは、互いに結合して環を形成してもよい。Ra’
11a又はRa’
11bと、Ra’
12とは、互いに結合して環を形成してもよい。*は、前記一般式(a0-1)におけるR
02と結合する酸素原子との結合手を表す。]
【請求項4】
前記一般式(a0-1)におけるR
00は、置換基を有する芳香族炭化水素基であり、前記置換基は、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基からなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項5】
前記一般式(a0-1)におけるR
00は、下記一般式(R
00-1)で表される基である、請求項1に記載のレジスト組成物。
【化4】
[式中、R
a1及びR
a2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基である。m0は、0以上2以下の整数である。0≦n1≦m0×2+2である。0≦n2≦4である。0≦n1+n2≦m0×2+4である。*11及び*12のいずれか一方は、前記一般式(a0-1)におけるY
00との結合手を表す。*21及び*22のいずれか一方は、前記一般式(a0-1)におけるY
01との結合手を表す。]
【請求項6】
前記樹脂成分(A1)は、さらに、下記一般式(a10-1)で表される構成単位(a10)を有する、請求項1に記載のレジスト組成物。
【化5】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya
x1は、2価の連結基又は単結合である。Wa
x1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。n
ax1は、1以上の整数である。]
【請求項7】
さらに、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有する、請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項8】
支持体上に、請求項1~7のいずれか一項に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を有する、レジストパターン形成方法。
【請求項9】
前記のレジスト膜を露光する工程において、前記レジスト膜に、EUV(極端紫外線)又はEB(電子線)を露光する、請求項8に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項10】
下記一般式(a0-m1)で表される化合物。
【化6】
[式中、R
01は、2価の連結基又は単結合である。R
02は、酸解離性基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。]
【請求項11】
下記一般式(a0-1)で表される構成単位を有する、高分子化合物。
【化7】
[式中、R
01は、2価の連結基又は単結合である。R
02は、酸解離性基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。]
【請求項12】
さらに、下記一般式(a10-1)で表される構成単位を有する、請求項11に記載の高分子化合物。
【化8】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya
x1は、2価の連結基又は単結合である。Wa
x1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。n
ax1は、1以上の整数である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物、レジストパターン形成方法、化合物及び高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。
このような要求を満たすレジスト材料として、従来、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
【0003】
化学増幅型レジスト組成物においては、一般的に、リソグラフィー特性等の向上のために、前記基材成分として、複数の構成単位を有する樹脂が用いられている。前記酸発生剤としては、これまで多種多様なものが提案されている。例えば、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤などが知られている。
【0004】
また、化学増幅型レジスト組成物においては、酸発生剤成分として、露光により酸を発生する酸発生基を含む構成単位を導入した高分子化合物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような高分子化合物は、酸発生剤としての機能と、基材成分としての機能とを併せ持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リソグラフィー技術の更なる進歩、応用分野の拡大等が進み、急速にパターンの微細化が進んでいる。これに伴い、半導体素子等を製造する際には、微細な寸法のパターンを良好な形状で形成できる技術が求められる。そのため、レジスト組成物には、よりいっそうの高感度化と、パターン寸法の均一性等のリソグラフィー特性のさらなる向上とが求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高感度化が図れ、かつリソグラフィー特性が良好なレジスト組成物、当該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法、当該レジスト組成物に有用な高分子化合物、及び当該高分子化合物の合成に利用可能な化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分(A1)を含有し、前記樹脂成分(A1)は、下記一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)を有することを特徴とする、レジスト組成物である。
【0008】
【化1】
[式中、R
01は、2価の連結基又は単結合である。R
02は、酸解離性基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。]
【0009】
本発明の第2の態様は、支持体上に、前記第1の態様に係るレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を有することを特徴とする、レジストパターン形成方法である。
【0010】
本発明の第3の態様は、下記一般式(a0-m1)で表されることを特徴とする、化合物である。
【0011】
【化2】
[式中、R
01は、2価の連結基又は単結合である。R
02は、酸解離性基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。]
【0012】
本発明の第4の態様は、下記一般式(a0-1)で表される構成単位を有することを特徴とする、高分子化合物である。
【0013】
【化3】
[式中、R
01は、2価の連結基又は単結合である。R
02は、酸解離性基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。]
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高感度化が図れ、かつリソグラフィー特性が良好なレジスト組成物、当該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法、当該レジスト組成物に有用な高分子化合物、及び当該高分子化合物の合成に利用可能な化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有してもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH2-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0016】
「酸分解性基」は、酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、例えば、酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては、例えばカルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基(-SO3H)等が挙げられる。
酸分解性基としてより具体的には、前記極性基が酸解離性基で保護された基(例えばOH含有極性基の水素原子を、酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
【0017】
「酸解離性基」とは、(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、又は、(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、の双方をいう。
酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離により生成する極性基よりも極性の低い基であることが必要で、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生じて極性が増大する。その結果、(A1)成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、相対的に、現像液に対する溶解性が変化し、現像液がアルカリ現像液の場合には溶解性が増大し、現像液が有機系現像液の場合には溶解性が減少する。
【0018】
「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物である。基材成分として用いられる有機化合物は、非重合体と重合体とに大別される。非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる(以下「低分子化合物」という)。以下「樹脂」、「高分子化合物」又は「ポリマー」という場合は、分子量が1000以上の重合体を示す。重合体の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量を用いるものとする。
【0019】
「誘導される構成単位」とは、炭素原子間の多重結合、例えば、エチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(Rαx)は、水素原子以外の原子又は基である。また、置換基(Rαx)がエステル結合を含む置換基で置換されたイタコン酸ジエステルや、置換基(Rαx)がヒドロキシアルキル基やその水酸基を修飾した基で置換されたαヒドロキシアクリルエステルも含むものとする。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルを、α置換アクリル酸エステルということがある。
【0020】
「誘導体」とは、対象化合物のα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよい対象化合物の水酸基の水素原子を有機基で置換したもの;α位の水素原子が置換基に置換されていてもよい対象化合物に、水酸基以外の置換基が結合したもの等が挙げられる。なお、α位とは、特に断りがない限り、官能基と隣接した1番目の炭素原子のことをいう。
ヒドロキシスチレンのα位の水素原子を置換する置換基としては、Rαxと同様のものが挙げられ、例えばアルキル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。
【0021】
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては、不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがある。その場合は一つの化学式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0022】
(レジスト組成物)
本実施形態のレジスト組成物は、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するものである。
かかるレジスト組成物は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下「(A)成分」ともいう)を含有する。本実施形態のレジスト組成物においては、(A)成分が、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分を含む。
【0023】
本実施形態のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、該レジスト膜の露光部では、(A)成分から酸が発生し、該酸の作用により、(A)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、該レジスト膜の未露光部では、(A)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、該レジスト膜の露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該レジスト膜を現像すると、該レジスト組成物がポジ型の場合は、レジスト膜露光部が溶解除去されてポジ型のレジストパターンが形成され、該レジスト組成物がネガ型の場合は、レジスト膜未露光部が溶解除去されてネガ型のレジストパターンが形成される。
【0024】
本実施形態のレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。また、本実施形態のレジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理に、アルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用であってもよく、該現像処理に、有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いる溶剤現像プロセス用であってもよい。
【0025】
<基材成分(A)>
本実施形態のレジスト組成物において、(A)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分(A1)(以下「(A1)成分」ともいう)を含む。
(A1)成分を用いることにより、露光前後で基材成分の極性が変化するため、アルカリ現像プロセスだけでなく、溶剤現像プロセスにおいても、良好な現像コントラストを得ることができる。
(A)成分としては、該(A1)成分とともに、他の高分子化合物及び低分子化合物の少なくとも一方を併用してもよい。
本実施形態のレジスト組成物において、(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
・樹脂成分(A1)について
(A1)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分である。(A1)成分は、後述の一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)を有する。
(A1)成分は、構成単位(a0)に加え、必要に応じてその他構成単位を有するものでもよい。
【0027】
≪構成単位(a0)≫
構成単位(a0)は、下記一般式(a0-1)で表される構成単位である。構成単位(a0)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基(R02-O-C(=O)-)を含んでいる。
【0028】
【化4】
[式中、R
01は、2価の連結基又は単結合である。R
02は、酸解離性基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。]
【0029】
前記式(a0-1)中、R01は、2価の連結基又は単結合である。
R01における2価の連結基としては、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基が挙げられる。
【0030】
R01が置換基を有してもよい2価の炭化水素基である場合、該2価の炭化水素基としては、直鎖若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。該直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が特に好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数3~6がより好ましく、炭素原子数3又は4がさらに好ましく、炭素原子数3が特に好ましい。直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基は、飽和でもよく、不飽和でもよいが、飽和が好ましい。
【0031】
R01がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、該連結基として好ましいものとしては、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=NH)-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい)、-S-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-、一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)2-O-Y22-で表される基[式中、Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有してもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0~3の整数である。]等が挙げられる。
前記へテロ原子を含む2価の連結基が-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-NH-、-NH-C(=NH)-の場合、そのHはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)2-O-Y22-中、Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記と同様のものが挙げられる。
Y21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
Y22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基において、m”は0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基としては、式-Y21-C(=O)-O-Y22-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CH2)a’-C(=O)-O-(CH2)b’-で表される基が好ましい。該式中、a’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0032】
R01における2価の連結基としては、ヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、(主鎖側)-C(=O)-O-Y21-がより好ましい。
【0033】
R01としては、ヘテロ原子を含む2価の連結基、又は単結合であることが好ましい。
【0034】
前記式(a0-1)中、R02は、酸解離性基である。
R02における酸解離性基としては、これまで、化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものが挙げられる。
化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものとして具体的には、以下に説明する「アセタール型酸解離性基」、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」、「第2級アルキルエステル型酸解離性基」が挙げられる。これらの酸解離性基は、構成単位(a0)中の酸分解性基(R02-O-C(=O)-)における-O-C(=O)-を保護し、酸の作用により酸分解性基から解離する。これにより、カルボキシ基(HO-C(=O)-)が生じる。
【0035】
アセタール型酸解離性基:
R02におけるアセタール型酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-1)で表される酸解離性基が挙げられる。
【0036】
【化5】
[式中、Ra’
1及びRa’
2はそれぞれ水素原子またはアルキル基である。Ra’
3は炭化水素基であって、Ra’
3は、Ra’
1、Ra’
2のいずれかと結合して環を形成してもよい。]
【0037】
式(a1-r-1)中、Ra’1及びRa’2のうち、少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、両方が水素原子であることがより好ましい。
Ra’1又はRa’2がアルキル基である場合、該アルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましい。具体的には、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0038】
式(a1-r-1)中、Ra’3の炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
該直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、炭素原子数が1~4がより好ましく、炭素原子数1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn-ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0039】
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~10であることが好ましく、炭素原子数3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0040】
Ra’3が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0041】
Ra’3の環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
Ra’3における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2であることがより好ましく、炭素原子数1であることが特に好ましい。
【0042】
Ra’3における環状の炭化水素基は、置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、-RP1、-RP2-O-RP1、-RP2-CO-RP1、-RP2-CO-ORP1、-RP2-O-CO-RP1、-RP2-OH、-RP2-CN又は-RP2-COOH(以下これらの置換基をまとめて「Rax5」ともいう。)等が挙げられる。
ここで、RP1は、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基、炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基、又は炭素原子数6~30の1価の芳香族炭化水素基である。また、RP2は、単結合、炭素原子数1~10の2価の鎖状飽和炭化水素基、炭素原子数3~20の2価の脂肪族環状飽和炭化水素基、又は炭素原子数6~30の2価の芳香族炭化水素基である。但し、RP1及びRP2の鎖状飽和炭化水素基、脂肪族環状飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。上記脂肪族環状炭化水素基は、上記置換基を1種単独で1つ以上有していてもよいし、上記置換基のうち複数種を各1つ以上有していてもよい。
炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環式脂肪族飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンチル基等の多環式脂肪族飽和炭化水素基が挙げられる。
炭素原子数6~30の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環から水素原子1個を除いた基が挙げられる。
【0043】
Ra’3が、Ra’1、Ra’2のいずれかと結合して環を形成する場合、該環式基としては、4~7員環が好ましく、4~6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0044】
第3級アルキルエステル型酸解離性基:
R02における第3級アルキルエステル型酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-2)で表される酸解離性基が挙げられる。
【0045】
【化6】
[式中、Ra’
4~Ra’
6はそれぞれ炭化水素基であって、Ra’
5とRa’
6とは互いに結合して環を形成してもよい。*は、前記一般式(a0-1)におけるR
02と結合する酸素原子との結合手を表す。]
【0046】
前記式(a1-r-2)中、Ra’4の炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、鎖状もしくは環状のアルケニル基、又は、環状の炭化水素基が挙げられる。
Ra’4における直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、環状の炭化水素基(単環式基である脂肪族炭化水素基、多環式基である脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)は、前記Ra’3と同様のものが挙げられる。
Ra’4における鎖状もしくは環状のアルケニル基は、炭素原子数2~10のアルケニル基が好ましい。
Ra’5、Ra’6の炭化水素基としては、前記Ra’3と同様のものが挙げられる。
【0047】
Ra’5とRa’6とが互いに結合して環を形成する場合、下記一般式(a1-r2-1)で表される基、下記一般式(a1-r2-2)で表される基、下記一般式(a1-r2-3)で表される基が好適に挙げられる。
一方、Ra’4~Ra’6が互いに結合せず、独立した炭化水素基である場合、下記一般式(a1-r2-4)で表される基が好適に挙げられる。
【0048】
【化7】
[式(a1-r2-1)中、Ra’
10は、一部がハロゲン原子又はヘテロ原子含有基で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~12のアルキル基を示す。Ra’
11はRa’
10が結合した炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基を示す。
式(a1-r2-2)中、Yaは炭素原子である。Xaは、Yaと共に環状の炭化水素基を形成する基である。この環状の炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra
101~Ra
103は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基又は炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基である。この鎖状飽和炭化水素基及び脂肪族環状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra
101~Ra
103の2つ以上が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
式(a1-r2-3)中、Yaaは炭素原子である。Xaaは、Yaaと共に脂肪族環式基を形成する基である。Ra
104は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
式(a1-r2-4)中、Ra’
12及びRa’
13は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基である。この鎖状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra’
14は、置換基を有してもよい炭化水素基である。*は結合手を示す(以下、同様)。]
【0049】
上記の式(a1-r2-1)中、Ra’10は、一部がハロゲン原子もしくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素原子数1~12のアルキル基である。
【0050】
Ra’10における、直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数1~12であり、炭素原子数1~10が好ましく、炭素原子数1~5がより好ましく、炭素原子数1~3がさらに好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
Ra’10における、分岐鎖状のアルキル基としては、前記Ra’3と同様のものが挙げられる。
【0051】
Ra’10におけるアルキル基は、一部がハロゲン原子もしくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基を構成する水素原子の一部が、ハロゲン原子又はヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。また、アルキル基を構成する炭素原子(メチレン基など)の一部が、ヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。
ここでいうヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。ヘテロ原子含有基としては、(-O-)、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-S-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-等が挙げられる。
【0052】
式(a1-r2-1)中、Ra’11(Ra’10が結合した炭素原子と共に形成する脂肪族環式基)は、式(a1-r-1)におけるRa’3の単環式基又は多環式基である脂肪族炭化水素基(脂環式炭化水素基)として挙げた基、が好ましい。その中でも、単環式の脂環式炭化水素基が好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基がより好ましい。あるいは、Ra’11(Ra’10が結合した炭素原子と共に形成する脂肪族環式基)は、不飽和でもよく、具体的には、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基が好ましい。
Ra’11(Ra’10が結合した炭素原子と共に形成する脂肪族環式基)は、置換基を有してもよく、この置換基としては、例えば、ヨウ素原子、臭素原子、フッ素原子、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)等が挙げられる。
【0053】
前記式(a1-r2-1)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
式(a1-r2-2)中、XaがYaと共に形成する環状の炭化水素基としては、前記式(a1-r-1)中のRa’3における環状の1価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基)から水素原子1個以上をさらに除いた基が挙げられる。
XaがYaと共に形成する環状の炭化水素基は、置換基を有してもよい。この置換基としては、上記Ra’3における環状の炭化水素基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
式(a1-r2-2)中、Ra101~Ra103における、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
Ra101~Ra103における、炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環式脂肪族飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンチル基等の多環式脂肪族飽和炭化水素基等が挙げられる。
Ra101~Ra103は、中でも、合成容易性の観点から、水素原子、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基が好ましく、その中でも、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0058】
上記Ra101~Ra103で表される鎖状飽和炭化水素基、又は脂肪族環状飽和炭化水素基が有する置換基としては、例えば、上述のRax5と同様の基が挙げられる。
【0059】
Ra101~Ra103の2つ以上が互いに結合して環状構造を形成することにより生じる炭素-炭素二重結合を含む基としては、例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基、シクロペンチリデンエテニル基、シクロへキシリデンエテニル基等が挙げられる。これらの中でも、合成容易性の観点から、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチリデンエテニル基が好ましい。
【0060】
前記式(a1-r2-2)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
式(a1-r2-3)中、XaaがYaaと共に形成する脂肪族環式基は、式(a1-r-1)におけるRa’3の単環式基又は多環式基である脂肪族炭化水素基として挙げた基が好ましい。
式(a1-r2-3)中、Ra104における芳香族炭化水素基としては、炭素原子数5~30の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が挙げられる。中でも、Ra104は、炭素原子数6~15の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンから水素原子1個以上を除いた基がより好ましく、ベンゼン、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基がさらに好ましく、ベンゼン又はナフタレンから水素原子1個以上を除いた基が特に好ましく、ベンゼンから水素原子1個以上を除いた基が最も好ましい。
【0065】
式(a1-r2-3)中のRa104が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0066】
前記式(a1-r2-3)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0067】
【0068】
式(a1-r2-4)中、Ra’12及びRa’13は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基である。Ra’12及びRa’13における、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、上記のRa101~Ra103における、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基と同様のものが挙げられる。この鎖状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
Ra’12及びRa’13は、中でも、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記Ra’12及びRa’13で表される鎖状飽和炭化水素基が置換されている場合、その置換基としては、例えば、上述のRax5と同様の基が挙げられる。
【0069】
式(a1-r2-4)中、Ra’14は、置換基を有してもよい炭化水素基である。Ra’14における炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
【0070】
Ra’14における直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基又はn-ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0071】
Ra’14における分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0072】
Ra’14が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0073】
Ra’14における芳香族炭化水素基としては、Ra104における芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。中でも、Ra’14は、炭素原子数6~15の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンから水素原子1個以上を除いた基がより好ましく、ベンゼン、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基がさらに好ましく、ベンゼン又はナフタレンから水素原子1個以上を除いた基が特に好ましく、ベンゼンから水素原子1個以上を除いた基が最も好ましい。
Ra’14が有していてもよい置換基としては、Ra104が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。Ra’14が有していてもよい置換基として、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ヨウ素原子、臭素原子、フッ素原子、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)等が挙げられる。
【0074】
前記式(a1-r2-4)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0075】
【0076】
第2級アルキルエステル型酸解離性基:
R02における第2級アルキルエステル型酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-4)で表される酸解離性基が挙げられる。
【0077】
【化16】
[式中、Ra’
10は、炭化水素基である。Ra’
11a及びRa’
11bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。Ra’
12は、水素原子又は炭化水素基である。Ra’
10と、Ra’
11a又はRa’
11bとは、互いに結合して環を形成してもよい。Ra’
11a又はRa’
11bと、Ra’
12とは、互いに結合して環を形成してもよい。*は、前記一般式(a0-1)におけるR
02と結合する酸素原子との結合手を表す。]
【0078】
前記式(a1-r-4)中、Ra’10及びRa’12における炭化水素基としては、前記Ra’3と同様のものが挙げられる。
式中、Ra’11a及びRa’11bにおけるアルキル基としては、前記Ra’1におけるアルキル基と同様のものが挙げられる。該アルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましい。具体的には、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
式中、Ra’10及びRa’12における炭化水素基、並びに、Ra’11a及びRa’11bにおけるアルキル基は置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、上述したRax5等が挙げられる。
【0079】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとは、互いに結合して環を形成してもよい。該環は、多環であっても、単環であってもよく、脂環であっても、芳香環であってもよい。
該脂環及び芳香環は、ヘテロ原子を含むものでもよい。
【0080】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環としては、上記の中でも、モノシクロアルケン、モノシクロアルケンの炭素原子の一部がヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子等)で置換された環、モノシクロアルカジエンが好ましく、炭素原子数3~6のシクロアルケンが好ましく、シクロペンテン又はシクロヘキセンが好ましい。
【0081】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環は、縮合環であってもよい。該縮合環として、具体的には、インダン等が挙げられる。
【0082】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環は、置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、上述したRax5等が挙げられる。
【0083】
Ra’11a又はRa’11bと、Ra’12とは、互いに結合して環を形成してもよく、該環としては、Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環と同様のものが挙げられる。
【0084】
前記式(a1-r-4)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0085】
【0086】
上記の中でも、R02における酸解離性基としては、第3級アルキルエステル型酸解離性基、第2級アルキルエステル型酸解離性基が好ましく、上記の一般式(a1-r2-1)で表される基、一般式(a1-r2-2)で表される基、一般式(a1-r2-4)で表される基、一般式(a1-r-4)で表される酸解離性基がより好ましく、一般式(a1-r2-1)で表される基がさらに好ましい。
【0087】
前記式(a0-1)中、Y00は、2価の連結基又は単結合である。
Y00における2価の連結基としては、前記R01における2価の連結基と同様のものが挙げられる。そのなかでも、Y00における2価の連結基としては、ヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、(主鎖側)-Y21-O-(R00側)がより好ましい。
このY21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
Y00としては、2価の連結基が好ましく、ヘテロ原子を含む2価の連結基であることがより好ましい。
【0088】
前記式(a0-1)中、R00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
R00における芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でもよいし、多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環が挙げられる。
【0089】
R00における芳香族炭化水素基として具体的には、芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基);2以上の芳香族炭化水素環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基等が挙げられる。
【0090】
前記芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよく、置換基を有しなくてもよい。ここでの置換基は、芳香族炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基である。例えば、前記芳香族炭化水素基中の芳香族炭化水素環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、ヨウ素原子、臭素原子、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0091】
上記のなかでも、前記一般式(a0-1)におけるR00は、高感度化とリソグラフィー特性との両立の観点から、置換基を有する芳香族炭化水素基であることが好ましい。
R00における芳香族炭化水素基が有する置換基としては、高感度化の観点から、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基からなる群より選択される一種以上であることが好ましく、そのなかでもハロゲン原子であることがより好ましく、ヨウ素原子、臭素原子及びフッ素原子からなる群より選択される一種以上であることがさらに好ましく、ヨウ素原子であることが特に好ましい。
【0092】
上記のなかでも、前記一般式(a0-1)におけるR00は、下記一般式(R00-1)で表される基であることが好ましい。
【0093】
【化18】
[式中、R
a1及びR
a2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基である。m0は、0以上2以下の整数である。0≦n1≦m0×2+2である。0≦n2≦4である。0≦n1+n2≦m0×2+4である。*11及び*12のいずれか一方は、前記一般式(a0-1)におけるY
00との結合手を表す。*21及び*22のいずれか一方は、前記一般式(a0-1)におけるY
01との結合手を表す。]
【0094】
前記式(R00-1)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基である。
Ra1及びRa2におけるハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基は、上述したR00における芳香族炭化水素基が有する置換基についての説明の中で例示したハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基と同様であり、ハロゲン原子であることが好ましい。
前記式(R00-1)中、m0は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
前記式(R00-1)中、n2は、好ましくは1又は2であり、より好ましくは2である。
【0095】
前記式(a0-1)中、Y01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。
Y01が酸素原子を含む2価の連結基である場合、Y01は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、例えば炭素原子、水素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、酸素原子(エーテル結合:-O-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、オキシカルボニル基(-O-C(=O)-)、アミド結合(-C(=O)-NH-)、カルボニル基(-C(=O)-)、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。この組み合わせに、さらにスルホニル基(-SO2-)が連結されていてもよい。
かかる酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、下記一般式(y-al-1)~(y-al-8)でそれぞれ表される連結基が挙げられる。
なお、下記一般式(y-al-1)~(y-al-8)において、上記式(a0-1)中のR00と結合するのは、下記一般式(y-al-1)~(y-al-8)中のV’101である。
【0096】
【化19】
[式中、V’
101は、炭素原子数1~5のアルキレン基又は単結合であり、V’
102は、炭素原子数1~30の2価の飽和炭化水素基又は単結合である。]
【0097】
V’102における2価の飽和炭化水素基は、炭素原子数1~30のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0098】
V’101およびV’102におけるアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基でもよく分岐鎖状のアルキレン基でもよく、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
V’101およびV’102におけるアルキレン基として、具体的には、メチレン基[-CH2-];-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;エチレン基[-CH2CH2-];-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n-プロピレン基)[-CH2CH2CH2-];-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[-CH2CH2CH2CH2-];-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[-CH2CH2CH2CH2CH2-]等が挙げられる。
また、V’101又はV’102における前記アルキレン基における一部のメチレン基が、炭素原子数5~10の2価の脂肪族環式基で置換されていてもよい。当該脂肪族環式基は、環状の脂肪族炭化水素基(単環式の脂肪族炭化水素基、多環式の脂肪族炭化水素基)から水素原子をさらに1つ除いた2価の基が好ましく、シクロへキシレン基、1,5-アダマンチレン基または2,6-アダマンチレン基がより好ましい。
【0099】
Y01としては、エステル結合を含む2価の連結基、またはエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、上記式(y-al-1)~(y-al-6)でそれぞれ表される連結基がより好ましく、上記の式(y-al-1)、式(y-al-3)、式(y-al-6)でそれぞれ表される連結基がさらに好ましい。
【0100】
前記式(a0-1)中、V01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。V01におけるアルキレン基、フッ素化アルキレン基は、炭素原子数1~4であることが好ましい。V01におけるフッ素化アルキレン基としては、V01におけるアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
なかでも、V01は、炭素原子数1~4の直鎖状アルキレン基、炭素原子数1~4の直鎖状フッ素化アルキレン基又は単結合であることが好ましく、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-CH2CH2-)、炭素原子数1~3の直鎖状フッ素化アルキレン基であることがより好ましい。
但し、前記式(a0-1)中、Y01及びV01は、同時に単結合になることはない。
【0101】
前記式(a0-1)中、R03は、フッ素原子又はフッ素化アルキル基であることが好ましく、フッ素原子、炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基であることがより好ましく、フッ素原子であることがさらに好ましい。
【0102】
以下に、構成単位(a0)のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
構成単位(a0)のアニオン部は、前記式(a0-an-1)~(a0-an-12)のいずれかで表されるアニオンが好ましく、前記の式(a0-an-1)~(a0-an-5)、式(a0-an-9)~(a0-an-11)のいずれかで表されるアニオンがより好ましい。
【0107】
前記式(a0-1)中、Mm+は、m価のオニウムカチオンであり、mは1以上の整数である。Mm+におけるオニウムカチオンとしては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好ましい。
好ましいカチオン部((Mm+)1/m)としては、下記の一般式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表されるオニウムカチオンが挙げられる。
【0108】
【化23】
[式中、R
201~R
207は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表す。R
201~R
203、R
206~R
207は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R
208~R
209は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表す。R
210は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよい-SO
2-含有環式基である。L
201は、-C(=O)-または-C(=O)-O-を表す。]
【0109】
上記の一般式(ca-1)~(ca-3)中、R201~R207におけるアリール基としては、炭素原子数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R201~R207におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素原子数1~30のものが好ましい。
R201~R207におけるアルケニル基としては、炭素原子数が2~10であることが好ましい。
R201~R207、およびR210が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、アリール基、下記の一般式(ca-r-1)~(ca-r-7)でそれぞれ表される基等が挙げられる。
【0110】
【化24】
[式中、R’
201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0111】
置換基を有してもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0112】
R’201における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素原子数は3~30であることが好ましく、炭素原子数5~30がより好ましく、炭素原子数5~20がさらに好ましく、炭素原子数6~15が特に好ましく、炭素原子数6~10が最も好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
R’201における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、又はこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環などが挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
R’201における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えばフェニル基、ナフチル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えばベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2がより好ましく、炭素原子数1が特に好ましい。
【0113】
R’201における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0114】
なかでも、R’201における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0115】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が特に好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH2-]、エチレン基[-(CH2)2-]、トリメチレン基[-(CH2)3-]、テトラメチレン基[-(CH2)4-]、ペンタメチレン基[-(CH2)5-]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基;-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0116】
また、R’201における環状の炭化水素基は、複素環等のようにヘテロ原子を含んでもよい。例えば、ラクトン含有環式基、-SO2-含有環式基、その他下記の化学式(r-hr-1)~(r-hr-16)でそれぞれ表される複素環式基が挙げられる。
【0117】
【0118】
R’201の環式基における置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が最も好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
置換基としてのカルボニル基は、環状の炭化水素基を構成するメチレン基(-CH2-)を置換する基である。
【0119】
置換基を有してもよい鎖状のアルキル基:
R’201の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~20であることが好ましく、炭素原子数1~15であることがより好ましく、炭素原子数1~10が最も好ましい。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数3~15であることがより好ましく、炭素原子数3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0120】
置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基:
R’201の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数2~5がより好ましく、炭素原子数2~4がさらに好ましく、炭素原子数3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0121】
R’201の鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、たとえば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、上記R’201における環式基等が挙げられる。
【0122】
R’201の置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基は、上述したものの他、置換基を有してもよい環式基又は置換基を有してもよい鎖状のアルキル基として、上述の式(a1-r-2)で表される酸解離性基と同様のものも挙げられる。
【0123】
なかでも、R’201は、置換基を有してもよい環式基が好ましく、置換基を有してもよい環状の炭化水素基であることがより好ましい。より具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ラクトン含有環式基;-SO2-含有環式基などが好ましい。
【0124】
上記の一般式(ca-1)~(ca-3)中、R201~R203、R206~R207は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、-SO-、-SO2-、-SO3-、-COO-、-CONH-または-N(RN)-(該RNは炭素原子数1~5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3~10員環であることが好ましく、5~7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、例えばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H-チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0125】
R208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表し、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互に結合して環を形成してもよい。
【0126】
R210は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよい-SO2-含有環式基である。
R210におけるアリール基としては、炭素原子数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素原子数1~30のものが好ましい。
R210におけるアルケニル基としては、炭素原子数が2~10であることが好ましい。
R210における、置換基を有してもよい-SO2-含有環式基としては、「-SO2-含有多環式基」が好ましい。
【0127】
前記式(ca-1)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記の化学式(ca-1-1)~(ca-1-75)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0128】
【0129】
【0130】
【化28】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1~5の整数であり、g2は0~20の整数であり、g3は0~20の整数である。]
【0131】
【0132】
【0133】
【化31】
[式中、R”
201は水素原子又は置換基であって、該置換基としては前記R
201~R
207、およびR
210~R
212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0134】
前記式(ca-2)で表される好適なカチオンとして具体的には、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0135】
前記式(ca-3)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-3-1)~(ca-3-6)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0136】
【0137】
上記の中でも、Mm+としては、前記式(ca-1)で表されるカチオンが好ましい。
また、Mm+としては、高感度化の観点から、フッ素原子を有するm価のオニウムカチオンが好ましい。このMm+としては、下記式(ca-1-1)で表されるカチオンが好ましい。
【0138】
【化33】
[式中、Rf
201~Rf
203は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアルケニル基を表す。Rf
201~Rf
203は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。ただし、Rf
201~Rf
203の少なくとも1つは、少なくとも1個のフッ素原子を含む。]
【0139】
前記式(ca-1-1)中のRf201~Rf203は、前記式(ca-1)中のR201~R203とそれぞれ同様である。ただし、Rf201~Rf203の少なくとも1つは、少なくとも1個のフッ素原子を含む。式(ca-1-1)で表されるカチオンは、3つ以上のフッ素原子を含むことが好ましい。Rf201~Rf203のいずれか1つが3つ以上のフッ素原子を有してもよく、Rf201~Rf203が含むフッ素原子の合計が3つ以上であってもよい。
【0140】
構成単位(a0)の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
【0141】
【0142】
【0143】
構成単位(a0)は、前記式(a0-1)~(a0-13)のいずれかで表される構成単位が好ましく、前記の式(a0-1)~(a0-6)、式(a0-10)~(a0-12)のいずれかで表される構成単位がより好ましい。
【0144】
(A1)成分が有する構成単位(a0)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分中の構成単位(a0)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5~50モル%が好ましく、10~45モル%がより好ましく、20~40モル%がさらに好ましく、25~35モル%が特に好ましい。
構成単位(a0)の割合が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、感度がより向上する。構成単位(a0)の割合が、前記好ましい範囲の上限値以下であると、パターン寸法の均一性等のリソグラフィー特性がより向上する。
【0145】
≪その他構成単位≫
(A1)成分は、上述した構成単位(a0)に加え、必要に応じてその他構成単位を有してもよい。
その他構成単位としては、例えば、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)(但し、構成単位(a0)に該当するものを除く);後述の一般式(a10-1)で表される構成単位(a10);ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2);後述の一般式(a8-1)で表される化合物から誘導される構成単位(a8)などが挙げられる。
【0146】
構成単位(a1):
構成単位(a1)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
酸分解性基を構成する酸解離性基としては、これまで、化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものが挙げられる。
化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものとしては、例えば「アセタール型酸解離性基」、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」、「第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基」、「第2級アルキルエステル型酸解離性基」が挙げられる。
構成単位(a1)における「アセタール型酸解離性基」、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」、「第2級アルキルエステル型酸解離性基」については、上述した構成単位(a0)についての中で説明した「アセタール型酸解離性基」、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」、「第2級アルキルエステル型酸解離性基」とそれぞれ同様である。
【0147】
第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基:
第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-3)で表される酸解離性基が挙げられる。
【0148】
【化36】
[式中、Ra’
7~Ra’
9はそれぞれアルキル基である。]
【0149】
前記式(a1-r-3)中、Ra’7~Ra’9は、それぞれ、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましい。
また、各アルキル基の合計の炭素原子数は、3~7であることが好ましく、合計の炭素原子数3~5であることがより好ましく、合計の炭素原子数3~4であることが最も好ましい。
【0150】
構成単位(a1)としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位、アクリルアミドから誘導される構成単位、ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位の水酸基における水素原子の少なくとも一部が前記酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位の-C(=O)-OHにおける水素原子の少なくとも一部が前記酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位等が挙げられる。
【0151】
構成単位(a1)としては、上記のなかでも、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
かかる構成単位(a1)の好ましい具体例としては、下記一般式(a1-1)又は(a1-2)で表される構成単位が挙げられる。
【0152】
【化37】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Va
1は、エーテル結合を有していてもよい2価の炭化水素基である。n
a1は、0~2の整数である。Ra
1は、上記の一般式(a1-r-1)、(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基である。Wa
1はn
a2+1価の炭化水素基であり、n
a2は1~3の整数であり、Ra
2は上記の一般式(a1-r-1)又は(a1-r-3)で表される酸解離性基である。]
【0153】
前記式(a1-1)中、Rは前記と同じである。Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0154】
前記式(a1-1)中、Va1における2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0155】
Va1における2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0156】
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH2-]、エチレン基[-(CH2)2-]、トリメチレン基[-(CH2)3-]、テトラメチレン基[-(CH2)4-]、ペンタメチレン基[-(CH2)5-]等が挙げられる。
前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数3~6がより好ましく、炭素原子数3又は4がさらに好ましく、炭素原子数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基;-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0157】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記直鎖状の脂肪族炭化水素基または前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0158】
Va1における2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
かかる芳香族炭化水素基は、炭素原子数が3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~12が最も好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基);前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0159】
前記式(a1-1)中、Ra1は、上記一般式(a1-r-1)、(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基であり、上記一般式(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基であることが好ましい。
【0160】
前記式(a1-2)中、Wa1におけるna2+1価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。該脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味し、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基、或いは直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と構造中に環を含む脂肪族炭化水素基とを組み合わせた基が挙げられる。
前記na2+1価は、2~4価が好ましく、2又は3価がより好ましい。
【0161】
前記式(a1-2)中、Ra2は、上記の一般式(a1-r-1)又は(a1-r-3)で表される酸解離性基である。
【0162】
以下に、構成単位(a1)の具体例を示す。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
(A1)成分が有する構成単位(a1)は、1種でもよく2種以上でもよい。
構成単位(a1)としては、電子線やEUVによるリソグラフィーでの特性(感度、形状等)をより高められやすいことから、前記式(a1-1)で表される構成単位がより好ましく;EB用又はEUV用において反応性を高められて好適なことから、酸解離性基が環式基であるものを選択することが好ましい。
構成単位(a1)としては、前記式(a1-1)で表される構成単位であって、Ra1が上記一般式(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基であることがさらに好ましく;前記式(a1-1)で表される構成単位であって、Ra1が上記一般式(a1-r-2)で表される酸解離性基であることが特に好ましく、このなかでも、前記式(a1-1)で表される構成単位であって、Ra1が上記一般式(a1-r2-1)で表される酸解離性基であることが最も好ましい。
【0172】
(A1)成分中の構成単位(a1)の割合は、該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5~40モル%が好ましく、10~30モル%がより好ましく、15~25モル%がさらに好ましい。
構成単位(a1)の割合を、前記の好ましい範囲の下限値以上とすることによって、感度、解像性、パターン寸法の均一性等のリソグラフィー特性が向上する。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0173】
構成単位(a10):
構成単位(a10)は、下記一般式(a10-1)で表される構成単位である。
【0174】
【化46】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya
x1は、単結合又は2価の連結基である。Wa
x1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。n
ax1は、1以上の整数である。]
【0175】
前記式(a10-1)中、Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0176】
前記式(a10-1)中、Yax1は、単結合又は2価の連結基である。
Yax1における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
Yax1としては、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの組合せが好ましく、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]がより好ましい。
【0177】
前記式(a10-1)中、Wax1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
Wax1における芳香族炭化水素基としては、置換基を有してもよい芳香環から(nax1+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。ここでの芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されない。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。該芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
また、Wax1における芳香族炭化水素基としては、2以上の置換基を有してもよい芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から(nax1+1)個の水素原子を除いた基も挙げられる。
上記の中でも、Wax1としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンまたはビフェニルから(nax1+1)個の水素原子を除いた基が好ましく、ベンゼン又はナフタレンから(nax1+1)個の水素原子を除いた基がより好ましく、ベンゼンから(nax1+1)個の水素原子を除いた基がさらに好ましい。
【0178】
Wax1における芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよく、有していなくてもよい。前記置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。前記置換基としてのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基としては、R’201の環式基における置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。前記置換基は、炭素原子数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、エチル基又はメチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。Wax1における芳香族炭化水素基は、置換基を有していないことが好ましい。
【0179】
前記式(a10-1)中、nax1は、1以上の整数であり、1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1、2又は3がさらに好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0180】
以下に、前記式(a10-1)で表される構成単位(a10)の具体例を示す。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
(A1)成分が有する構成単位(a10)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a10)を有する場合、(A1)成分中の構成単位(a10)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、40~95モル%が好ましく、45~90モル%がより好ましく、50~80モル%がさらに好ましく、60~75モル%が特に好ましい。
構成単位(a10)の割合を、前記の好ましい範囲の下限値以上とすることにより、感度がより高められやすくなる。一方、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0185】
構成単位(a2):
(A1)成分は、ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2)(但し、構成単位(a1)に該当するものを除く)を有してもよい。
構成単位(a2)のラクトン含有環式基は、(A1)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高める上で有効である。また、構成単位(a2)を有することで、例えば酸拡散長を適切に調整する、レジスト膜の基板への密着性を高める、現像時の溶解性を適切に調整する等の効果により、リソグラフィー特性等が良好となる。
【0186】
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に-O-C(=O)-を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
構成単位(a2)におけるラクトン含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0187】
【化50】
[式中、Ra’
21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、又は、ラクトン含有環式基であり;A”は酸素原子(-O-)もしくは硫黄原子(-S-)を含んでいてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0~2の整数であり、m’は0または1である。*は結合手を示す(以下、同様)。]
【0188】
前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)中、Ra’21におけるアルキル基としては、炭素原子数1~6のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Ra’21におけるアルコキシ基としては、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基として挙げたアルキル基と酸素原子(-O-)とが連結した基が挙げられる。
Ra’21におけるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
Ra’21におけるハロゲン化アルキル基としては、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0189】
Ra’21における-COOR”、-OC(=O)R”において、R”はいずれも水素原子、アルキル基、又は、ラクトン含有環式基である。
R”におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、炭素原子数は1~15が好ましい。
R”が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素原子数1~10であることが好ましく、炭素原子数1~5であることがさらに好ましく、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素原子数3~15であることが好ましく、炭素原子数4~12であることがさらに好ましく、炭素原子数5~10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
R”におけるラクトン含有環式基としては、前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基と同様のものが挙げられる。
Ra’21におけるヒドロキシアルキル基としては、炭素原子数が1~6であるものが好ましく、具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
【0190】
Ra’21としては、上記の中でも、それぞれ独立に水素原子又はシアノ基であることが好ましい。
【0191】
前記一般式(a2-r-2)、(a2-r-3)、(a2-r-5)中、A”における炭素原子数1~5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端または炭素原子間に-O-または-S-が介在する基が挙げられ、例えば、-O-CH2-、-CH2-O-CH2-、-S-CH2-、-CH2-S-CH2-等が挙げられる。A”としては、炭素原子数1~5のアルキレン基または-O-が好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0192】
以下に、一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。
【0193】
【0194】
【0195】
構成単位(a2)としては、なかでも、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
かかる構成単位(a2)は、下記一般式(a2-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0196】
【化53】
[式中、Rは水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya
21は単結合または2価の連結基である。La
21は-O-、-COO-、-CON(R’)-、-OCO-、-CONHCO-又は-CONHCS-であり、R’は水素原子またはメチル基を示す。ただしLa
21が-O-の場合、Ya
21は-CO-にはならない。Ra
21はラクトン含有環式基である。]
【0197】
前記式(a2-1)中、Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0198】
前記式(a2-1)中、Ya21における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適に挙げられる。
Ya21としては、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの組合せであることが好ましい。
【0199】
前記式(a2-1)中、Ya21は、単結合であり、La21は、-COO-、又は、-OCO-であることが好ましい。
【0200】
前記式(a2-1)中、Ra21は、ラクトン含有環式基である。
Ra21におけるラクトン含有環式基としてはそれぞれ、前述した一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基が好適に挙げられる。
【0201】
(A1)成分が有する構成単位(a2)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a2)を有する場合、構成単位(a2)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、1~20モル%であることが好ましく、1~15モル%であることがより好ましく、1~10モル%であることがさらに好ましい。
構成単位(a2)の割合を、前記の好ましい範囲の下限値以上とすると、前述した効果によって、構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0202】
構成単位(a8):
構成単位(a8)は、下記一般式(a8-1)で表される化合物から誘導される構成単位である。
【0203】
【化54】
[式中、W
2は、重合性基含有基である。Ya
x2は、単結合又は(n
ax2+1)価の連結基である。Ya
x2とW
2とは縮合環を形成していてもよい。R
1は炭素原子数1~12のフッ素化アルキル基である。R
2はフッ素原子を有してもよい炭素原子数1~12の有機基又は水素原子である。R
2及びYa
x2は、相互に結合して環構造を形成していてもよい。n
ax2は、1~3の整数である。]
【0204】
W2の重合性基含有基における「重合性基」とは、重合性基を有する化合物がラジカル重合等により重合することを可能とする基であり、例えばエチレン性二重結合などの炭素原子間の多重結合を含む基をいう。
【0205】
重合性基含有基としては、重合性基のみから構成される基でもよいし、重合性基と該重合性基以外の他の基とから構成される基でもよい。該重合性基以外の他の基としては、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
重合性基含有基としては、例えば、化学式:C(RX11)(RX12)=C(RX13)-Yax0-で表される基が好適に挙げられる。
この化学式中、RX11、RX12及びRX13は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基であり、Yax0は、単結合または2価の連結基である。
【0206】
Yax2とW2とが形成する縮合環としては、W2部位の重合性基とYax2とが形成する縮合環、W2部位の重合性基以外の他の基とYax2とが形成する縮合環が挙げられる。
Yax2とW2とが形成する縮合環は、置換基を有してもよい。
【0207】
以下に、構成単位(a8)の具体例を示す。
下記の式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0208】
【0209】
(A1)成分が有する構成単位(a8)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a8)を有する場合、構成単位(a8)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、1~20モル%であることが好ましく、1~15モル%であることがより好ましく、1~10モル%であることがさらに好ましい。
【0210】
レジスト組成物が含有する(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0211】
本実施形態で用いる(A1)成分は、構成単位(a0)を有する高分子化合物であり、好ましくは、構成単位(a0)と構成単位(a10)との繰り返し構造を有する高分子化合物;構成単位(a0)と構成単位(a1)と構成単位(a10)との繰り返し構造を有する高分子化合物が挙げられる。
【0212】
かかる(A1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを重合溶媒に溶解し、ここに、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチル(例えばV-601など)等のラジカル重合開始剤を加えて重合することにより製造することができる。
例えば、かかる(A1)成分は、構成単位(a0)を誘導するモノマーと、構成単位(a10)を誘導するモノマーと、を重合溶媒に溶解し、ここに、上記のようなラジカル重合開始剤を加えて重合し、その後、脱保護反応を行うことにより製造することができる。
なお、重合の際に、例えば、HS-CH2-CH2-CH2-C(CF3)2-OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に-C(CF3)2-OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0213】
(A1)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、1000~40000が好ましく、2000~20000がより好ましく、5000~10000がさらに好ましい。
(A1)成分のMwがこの範囲の好ましい上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の好ましい下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
(A1)成分の分子量分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0~4.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.0~2.0が特に好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0214】
・(A2)成分について
本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分として、前記(A1)成分に該当しない、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(以下「(A2)成分」という。)を併用してもよい。
(A2)成分としては、特に限定されず、化学増幅型レジスト組成物用の基材成分として従来から知られている多数のものから任意に選択して用いればよい。
(A2)成分は、高分子化合物又は低分子化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0215】
(A)成分中の(A1)成分の割合は、(A)成分の総質量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。該割合が25質量%以上であると、高感度化や解像性、パターン寸法の均一性などの種々のリソグラフィー特性に優れたレジストパターンが形成されやすくなる。
【0216】
本実施形態のレジスト組成物中、(A)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0217】
<その他成分>
本実施形態のレジスト組成物は、上述した(A)成分に加え、その他成分をさらに含有してもよい。その他成分としては、例えば以下に示す(B)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(S)成分などが挙げられる。
【0218】
≪酸発生剤成分(B)≫
本実施形態のレジスト組成物は、さらに、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有してもよい。
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト組成物用の酸発生剤として提案されているものを用いることができる。
このような酸発生剤としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤;ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤;ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが挙げられる。
【0219】
オニウム塩系酸発生剤としては、例えば、下記の一般式(b-1)で表される化合物(以下「(b-1)成分」ともいう)、一般式(b-2)で表される化合物(以下「(b-2)成分」ともいう)又は一般式(b-3)で表される化合物(以下「(b-3)成分」ともいう)が挙げられる。
【0220】
【化56】
[式中、R
101及びR
104~R
108は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。R
104とR
105とは相互に結合して環構造を形成していてもよい。R
102は、炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基又はフッ素原子である。Y
101は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
101~V
103は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。L
101~L
102は、それぞれ独立に、単結合又は酸素原子である。L
103~L
105は、それぞれ独立に、単結合、-CO-又は-SO
2-である。mは1以上の整数であって、M’
m+はm価のオニウムカチオンである。]
【0221】
{アニオン部}
・(b-1)成分におけるアニオン
式(b-1)中、R101は、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基である。
【0222】
置換基を有してもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であることが好ましい。
【0223】
R101における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素原子数は3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~10が最も好ましい。但し、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
R101における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、又はこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環などが挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
R101における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えば、フェニル基、ナフチル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基など)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0224】
R101における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0225】
なかでも、R101における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基がさらに好ましく、アダマンチル基が特に好ましい。
【0226】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH2-]、エチレン基[-(CH2)2-]、トリメチレン基[-(CH2)3-]、テトラメチレン基[-(CH2)4-]、ペンタメチレン基[-(CH2)5-]等が挙げられる。
脂環式炭化水素基に結合してもよい、分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、3~6がより好ましく、3又は4がさらに好ましく、3が最も好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-C(CH2CH3)2-等のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH3)2CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-C(CH2CH3)2-CH2-等のアルキルエチレン基;-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0227】
また、R101における環状の炭化水素基は、複素環等のようにヘテロ原子を含んでもよい。具体的には、前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、下記一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)でそれぞれ表される-SO2-含有環式基、その他上記の化学式(r-hr-1)~(r-hr-16)でそれぞれ表される複素環式基が挙げられる。
式中*は、式(b-1)中のY101に結合する結合手を表す。
【0228】
【化57】
[式中、Rb’
51はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、又は、-SO
2-含有環式基であり;B”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0~2の整数である。*は結合手を示す。]
【0229】
前記一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)中のRb’51、B”、及びn’は、上述の一般式(a0-s-1)~(a0-s-4)中のRb’51、B”、及びn’とそれぞれ同様である。
【0230】
下記に一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。式中の「Ac」は、アセチル基を示す。
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
R101の環式基における置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
置換基としてのカルボニル基は、環状の炭化水素基を構成するメチレン基(-CH2-)を置換する基である。
【0235】
R101における環状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素環と芳香環とが縮合した縮合環を含む縮合環式基であってもよい。前記縮合環としては、例えば、架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンに、1個以上の芳香環が縮合したもの等が挙げられる。前記架橋環系ポリシクロアルカンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナン)、ビシクロ[2.2.2]オクタン等のビシクロアルカンが挙げられる。前記縮合環式としては、ビシクロアルカンに2個又は3個の芳香環が縮合した縮合環を含む基が好ましく、ビシクロ[2.2.2]オクタンに2個又は3個の芳香環が縮合した縮合環を含む基がより好ましい。R101における縮合環式基の具体例としては、下記式(r-br-1)~(r-br-2)で表されるが挙げられる。式中*は、式(b-1)中のY101に結合する結合手を表す。
【0236】
【0237】
R101における縮合環式基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基等が挙げられる。
前記縮合環式基の置換基としてのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基は、上記R101における環式基の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
前記縮合環式基の置換基としての芳香族炭化水素基としては、芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えば、フェニル基、ナフチル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)、上記の化学式(r-hr-1)~(r-hr-6)でそれぞれ表される複素環式基等が挙げられる。
前記縮合環式基の置換基としての脂環式炭化水素基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基;前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基;前記一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)でそれぞれ表される-SO2-含有環式基;前記式(r-hr-7)~(r-hr-16)でそれぞれ表される複素環式基等が挙げられる。
【0238】
置換基を有してもよい鎖状のアルキル基:
R101の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10が最も好ましい。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0239】
置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基:
R101の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素原子数が2~10であることが好ましく、2~5がより好ましく、2~4がさらに好ましく、3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0240】
R101の鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、上記R101における環式基等が挙げられる。
【0241】
上記の中でも、R101は、置換基を有してもよい環式基が好ましく、置換基を有してもよい環状の炭化水素基であることがより好ましい。
環状の炭化水素基として、より具体的には、フェニル基、ナフチル基、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基;前記一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)でそれぞれ表される-SO2-含有環式基が好ましく、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基がより好ましく、アダマンチル基がさらに好ましい。
【0242】
式(b-1)中、Y101は、単結合または酸素原子を含む2価の連結基である。
Y101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、該Y101は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、例えば炭素原子、水素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、上記の一般式(y-al-1)~(y-al-8)でそれぞれ表される連結基が挙げられる。なお、一般式(y-al-1)~(y-al-8)において、上記式(b-1)中のR101と結合するのが、一般式(y-al-1)~(y-al-8)中のV’101である。
【0243】
Y101としては、エステル結合を含む2価の連結基、またはエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、上記式(y-al-1)~(y-al-6)でそれぞれ表される連結基がより好ましい。
【0244】
式(b-1)中、V101は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。V101におけるアルキレン基、フッ素化アルキレン基は、炭素原子数1~4であることが好ましい。なかでも、V101は、単結合、又は炭素原子数1~4の直鎖状のアルキレン基であることが好ましい。
ただし、式(b-1)中のY101及びV101は、同時に単結合になることはない。
【0245】
式(b-1)中、R102は、フッ素原子又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基である。R102は、フッ素原子または炭素原子数1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0246】
前記式(b-1)で表されるアニオン部の具体例としては、例えば、Y101が単結合となる場合、トリフルオロメタンスルホネートアニオンやパーフルオロブタンスルホネートアニオン等のフッ素化アルキルスルホネートアニオンが挙げられ;Y101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、下記式(an-1)~(an-3)のいずれかで表されるアニオンが挙げられる。
【0247】
【化62】
[式中、R”
101は、置換基を有してもよい脂肪族環式基、上記の化学式(r-hr-1)~(r-hr-6)でそれぞれ表される1価の複素環式基、前記式(r-br-1)若しくは(r-br-2)で表される縮合環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族環式基である。R”
102は、置換基を有してもよい脂肪族環式基、前記式(r-br-1)又(r-br-2)で表される縮合環式基、前記一般式(a2-r-1)、(a2-r-3)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、又は前記一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)でそれぞれ表される-SO
2-含有環式基である。R”
103は、置換基を有してもよい芳香族環式基、置換基を有してもよい脂肪族環式基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基である。V”
101は、単結合、炭素原子数1~4のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のフッ素化アルキレン基である。R
102は、フッ素原子又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基である。v”はそれぞれ独立に0~3の整数であり、q”はそれぞれ独立に0~20の整数であり、n”は0または1である。]
【0248】
R”101、R”102およびR”103の置換基を有してもよい脂肪族環式基は、前記式(b-1)中のR101における環状の脂肪族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、前記式(b-1)中のR101における環状の脂肪族炭化水素基を置換してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0249】
R”101及びR”103における置換基を有してもよい芳香族環式基は、前記式(b-1)中のR101における環状の炭化水素基における芳香族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、前記式(b-1)中のR101における該芳香族炭化水素基を置換してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0250】
R”101における置換基を有してもよい鎖状のアルキル基は、前記式(b-1)中のR101における鎖状のアルキル基として例示した基であることが好ましい。
R”103における置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基は、前記式(b-1)中のR101における鎖状のアルケニル基として例示した基であることが好ましい。
【0251】
V”101におけるアルキレン基及びフッ素化アルキレン基は、炭素原子数1~3が好ましく、炭素原子数1又は2がより好ましい。V”101の具体例としては、例えば、-CH2-、-(CH2)2-、-CFH-、-CH2CFH-、-CH(CF3)-等が挙げられる。
【0252】
前記式(b-1)で表されるアニオン部としては、前記式(an-1)で表されるアニオン部が好ましい。中でも、前記(an-1)中のR”101が、置換基を有してもよい芳香族環式基であるものが好ましく、置換基を有してもよいフェニル基であるものがより好ましい。前記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルキル基、又はハロゲン原子が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、ヨウ素原子がより好ましい。
【0253】
・(b-2)成分におけるアニオン
式(b-2)中、R104、R105は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。ただし、R104、R105は、相互に結合して環を形成していてもよい。
R104、R105は、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基であることがより好ましい。
該鎖状のアルキル基の炭素原子数は、1~10であることが好ましく、より好ましくは炭素原子数1~7、さらに好ましくは炭素原子数1~3である。R104、R105の鎖状のアルキル基の炭素原子数は、上記炭素原子数の範囲内において、レジスト用溶剤への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。また、R104、R105の鎖状のアルキル基においては、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また、250nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するため好ましい。前記鎖状のアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70~100%、さらに好ましくは90~100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基である。
式(b-2)中、V102、V103は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、またはフッ素化アルキレン基であり、それぞれ、式(b-1)中のV101と同様のものが挙げられる。
式(b-2)中、L101、L102は、それぞれ独立に単結合又は酸素原子である。
【0254】
・(b-3)成分におけるアニオン
式(b-3)中、R106~R108は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。
式(b-3)中、L103~L105は、それぞれ独立に、単結合、-CO-又は-SO2-である。
【0255】
{カチオン部}
前記の式(b-1)、式(b-2)、式(b-3)中、M’m+は、m価のオニウムカチオンを表す。この中でも、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好ましい。
mは、1以上の整数である。
【0256】
好ましいカチオン部((M’m+)1/m)としては、上記一般式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表されるオニウムカチオンが挙げられる。カチオン部としては、前記一般式(ca-1)で表されるカチオンがより好ましく、前記式(ca-1-1)~(ca-1-75)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
【0257】
本実施形態のレジスト組成物において、(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本実施形態のレジスト組成物においては、上記(A1)成分が構成単位(a0)を有するため、(B)成分を含有しなくてもよい。
上記の中でも、(B)成分としては、(b-1)成分が好ましい。
【0258】
レジスト組成物における(B)成分の含有量は、(A1)成分100質量部に対して、0~30質量部が好ましく、0~20質量部がより好ましく、0~10質量部がさらに好ましい。
(B)成分の含有量を、前記の好ましい範囲とすることで、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られやすく、レジスト組成物としての保存安定性が良好となるため好ましい。
【0259】
≪塩基成分(D)≫
本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分に加えて、さらに、露光により発生する酸をトラップ(すなわち、酸の拡散を制御)する塩基成分(以下「(D)成分」ともいう)を含有することが好ましい。(D)成分は、レジスト組成物において露光により発生する酸をトラップするクエンチャー(酸拡散制御剤)として作用するものである。
(D)成分としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失う光崩壊性塩基(D1)(以下「(D1)成分」という。)、該(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物(D2)(以下「(D2)成分」という。)等が挙げられる。これらの中でも、パターン寸法の均一性、ラフネス低減性を高められやすいことから、光崩壊性塩基((D1)成分)が好ましい。また、(D1)成分を含有させることで、高感度化、塗布欠陥の発生の抑制の特性をいずれも高めやすくなる。
【0260】
・(D1)成分について
(D1)成分を含有するレジスト組成物とすることで、レジストパターンを形成する際に、レジスト膜の露光部と未露光部とのコントラストをより向上させることができる。
(D1)成分としては、露光により分解して酸拡散制御性を失うものであれば特に限定されず、下記一般式(d1-1)で表される化合物(以下「(d1-1)成分」という。)、下記一般式(d1-2)で表される化合物(以下「(d1-2)成分」という。)及び下記一般式(d1-3)で表される化合物(以下「(d1-3)成分」という。)からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
(d1-1)~(d1-3)成分は、レジスト膜の露光部においては分解して酸拡散制御性(塩基性)を失うためクエンチャーとして作用せず、レジスト膜の未露光部においてクエンチャーとして作用する。
【0261】
【化63】
[式中、Rd
1~Rd
4は置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基である。但し、式(d1-2)中のRd
2における、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないものとする。Yd
1は単結合又は2価の連結基である。mは1以上の整数であって、M
m+はそれぞれ独立にm価のオニウムカチオンである。]
【0262】
{(d1-1)成分}
・・アニオン部
式(d1-1)中、Rd1は、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ前記R’201と同様のものが挙げられる。
これらのなかでも、Rd1としては、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい脂肪族環式基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルキル基が好ましい。これらの基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、フッ素原子、フッ素化アルキル基、上記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、またはこれらの組み合わせが挙げられる。エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介していてもよく、この場合の置換基としては、上記式(y-al-1)~(y-al-6)でそれぞれ表される連結基が好ましい。なお、Rd1における芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、又は鎖状のアルキル基が、置換基として、上記一般式(y-al-1)~(y-al-8)でそれぞれ表される連結基を有する場合、上記一般式(y-al-1)~(y-al-8)において、式(d3-1)中のRd1における芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、又は鎖状のアルキル基を構成する炭素原子に結合するのが、上記一般式(y-al-1)~(y-al-8)中のV’101である。
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビシクロオクタン骨格を含む多環構造(ビシクロオクタン骨格とこれ以外の環構造とからなる多環構造)が好適に挙げられる。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
前記鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0263】
前記鎖状のアルキル基が置換基としてフッ素原子又はフッ素化アルキル基を有するフッ素化アルキル基である場合、フッ素化アルキル基の炭素原子数は、1~11が好ましく、1~8がより好ましく、1~4がさらに好ましい。該フッ素化アルキル基は、フッ素原子以外の原子を含有してもよい。フッ素原子以外の原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
【0264】
以下に(d1-1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0265】
【0266】
・・カチオン部
式(d1-1)中、Mm+は、m価のオニウムカチオンである。
Mm+のオニウムカチオンとしては、前記一般式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが好適に挙げられ、前記一般式(ca-1)で表されるカチオンがより好ましく、前記式(ca-1-1)~(ca-1-75)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
(d1-1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0267】
{(d1-2)成分}
・・アニオン部
式(d1-2)中、Rd2は、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられる。
但し、Rd2における、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していない(フッ素置換されていない)ものとする。これにより、(d1-2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(D)成分としてのクエンチング能が向上する。
Rd2としては、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい脂肪族環式基であることが好ましく、置換基を有してもよい脂肪族環式基であることがより好ましい。
【0268】
該鎖状のアルキル基としては、炭素原子数1~10であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。
該脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有してもよい);カンファーから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
【0269】
Rd2の炭化水素基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(d1-1)のRd1における炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、鎖状のアルキル基)が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0270】
以下に(d1-2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0271】
【0272】
・・カチオン部
式(d1-2)中、Mm+は、m価のオニウムカチオンであり、前記式(d1-1)中のMm+と同様である。
(d1-2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0273】
{(d1-3)成分}
・・アニオン部
式(d1-3)中、Rd3は置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられ、フッ素原子を含む環式基、鎖状のアルキル基、又は鎖状のアルケニル基であることが好ましい。中でも、フッ素化アルキル基が好ましく、前記Rd1のフッ素化アルキル基と同様のものがより好ましい。
【0274】
式(d1-3)中、Rd4は、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられる。
なかでも、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、環式基であることが好ましい。
Rd4におけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。Rd4のアルキル基の水素原子の一部が水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
Rd4におけるアルコキシ基は、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1~5のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0275】
Rd4におけるアルケニル基は、前記R’201におけるアルケニル基と同様のものが挙げられ、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基が好ましい。これらの基はさらに置換基として、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を有していてもよい。
【0276】
Rd4における環式基は、前記R’201における環式基と同様のものが挙げられ、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた脂環式基、又は、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基が好ましい。Rd4が脂環式基である場合、レジスト組成物が有機溶剤に良好に溶解することにより、リソグラフィー特性が良好となる。また、Rd4が芳香族基である場合、EUV等を露光光源とするリソグラフィーにおいて、該レジスト組成物が光吸収効率に優れ、感度やリソグラフィー特性が良好となる。
【0277】
式(d1-3)中、Yd1は、単結合または2価の連結基である。
Yd1における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。これらはそれぞれ、上記式(a0-1)中のR01における2価の連結基についての説明のなかで挙げた、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基と同様のものが挙げられる。
Yd1としては、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、アルキレン基又はこれらの組み合わせであることが好ましい。アルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましい。
【0278】
以下に(d1-3)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0279】
【0280】
【0281】
・・カチオン部
式(d1-3)中、Mm+は、m価のオニウムカチオンであり、前記式(d1-1)中のMm+と同様である。
(d1-3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0282】
(D1)成分は、上記(d1-1)~(d1-3)成分のいずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のレジスト組成物において、(D1)成分は、上記(d1-1)成分を含むことが好ましい。
レジスト組成物が(D1)成分を含有する場合、レジスト組成物中の(D1)成分の含有量は、(A1)成分100質量部に対して、0.5~15質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、2~9質量部がさらに好ましい。
(D1)成分の含有量が好ましい下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られやすい。一方、上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0283】
本実施形態のレジスト組成物が含有する(D)成分全体のうち、(d1-1)成分の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、(D)成分は化合物(d1-1)成分のみからなるものであってもよい。
【0284】
(D1)成分の製造方法:
前記の(d1-1)成分、(d1-2)成分の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
また、(d1-3)成分の製造方法は、特に限定されず、例えば、US2012-0149916号公報に記載の方法と同様にして製造される。
【0285】
・(D2)成分について
(D)成分としては、上記の(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物成分(以下「(D2)成分」という。)を含有してもよい。
(D2)成分としては、酸拡散制御剤として作用するもので、かつ、(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。なかでも、脂肪族アミンが好ましく、この中でも特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンがより好ましい。
脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素原子数が1~12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNH3の水素原子の少なくとも1つを、炭素原子数12以下のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンもしくはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ノニルアミン、トリ-n-デシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ-n-オクタノールアミン、トリ-n-オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素原子数5~10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ-n-ペンチルアミン又はトリ-n-オクチルアミンが特に好ましい。
【0286】
環式アミンとしては、例えば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素原子数が6~10のものが好ましく、具体的には、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0287】
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2-メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2-{2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0288】
また、(D2)成分としては、芳香族アミンを用いてもよい。
芳香族アミンとしては、4-ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾールまたはこれらの誘導体、トリベンジルアミン、2,6-ジイソプロピルアニリン、N-tert-ブトキシカルボニルピロリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン等が挙げられる。
【0289】
上記の中でも、(D2)成分は、アルキルアミンであることが好ましく、炭素原子数5~10のトリアルキルアミンがより好ましい。
【0290】
(D2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D2)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(D2)成分の含有量は、(A1)成分100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.5~5質量部がさらに好ましい。
(D2)成分の含有量が好ましい下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られやすい。一方、上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0291】
≪有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)≫
本実施形態のレジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下「(E)成分」という)を含有させることができる。
有機カルボン酸として、具体的には、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられ、その中でも、サリチル酸が好ましい。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
【0292】
本実施形態のレジスト組成物において、(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、(A1)成分100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。上記範囲とすることにより、リソグラフィー特性がより向上する。
【0293】
≪フッ素添加剤成分(F)≫
本実施形態のレジスト組成物は、疎水性樹脂としてフッ素添加剤成分(以下「(F)成分」という)を含有してもよい。(F)成分は、レジスト膜に撥水性を付与するために使用され、(A1)成分とは別の樹脂として用いられることで、リソグラフィー特性を向上させることができる。
(F)成分としては、例えば、特開2010-002870号公報、特開2010-032994号公報、特開2010-277043号公報、特開2011-13569号公報、特開2011-128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。
(F)成分としてより具体的には、下記一般式(f1-1)で表される構成単位(f1)を有する重合体が挙げられる。この重合体としては、下記式(f1-1)で表される構成単位(f1)のみからなる重合体(ホモポリマー);該構成単位(f1)と前記構成単位(a1)との共重合体;該構成単位(f1)とアクリル酸又はメタクリル酸から誘導される構成単位と前記構成単位(a1)との共重合体であることが好ましく、該構成単位(f1)と前記構成単位(a1)との共重合体であることがより好ましい。ここで、該構成単位(f1)と共重合される前記構成単位(a1)としては、1-エチル-1-シクロオクチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位、1-メチル-1-アダマンチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位が好ましく、1-エチル-1-シクロオクチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位がより好ましい。
【0294】
【化68】
[式中、Rは前記と同様であり、Rf
102およびRf
103はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し、Rf
102およびRf
103は同じであっても異なっていてもよい。nf
1は0~5の整数であり、Rf
101はフッ素原子を含む有機基である。]
【0295】
式(f1-1)中、α位の炭素原子に結合したRは、前記と同様である。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
式(f1-1)中、Rf102およびRf103のハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。Rf102およびRf103の炭素原子数1~5のアルキル基としては、上記Rの炭素原子数1~5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましい。Rf102およびRf103の炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基として、具体的には、炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。なかでもRf102およびRf103としては、水素原子、フッ素原子、又は炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、またはエチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
式(f1-1)中、nf1は0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0296】
式(f1-1)中、Rf101は、フッ素原子を含む有機基であり、フッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。
フッ素原子を含む炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれであってもよく、炭素原子数は1~20であることが好ましく、炭素原子数1~15であることがより好ましく、炭素原子数1~10が特に好ましい。
また、フッ素原子を含む炭化水素基は、当該炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることが、浸漬露光時のレジスト膜の疎水性が高まることから特に好ましい。
なかでも、Rf101としては、炭素原子数1~6のフッ素化炭化水素基がより好ましく、トリフルオロメチル基、-CH2-CF3、-CH2-CF2-CF3、-CH(CF3)2、-CH2-CH2-CF3、-CH2-CH2-CF2-CF2-CF2-CF3が特に好ましい。
【0297】
(F)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000~50000が好ましく、5000~40000がより好ましく、10000~30000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのにレジスト用溶剤への充分な溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、レジスト膜の撥水性が良好である。
(F)成分の分子量分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.0~2.5が最も好ましい。
【0298】
本実施形態のレジスト組成物において、(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(F)成分を含有する場合、(F)成分の含有量は、(A1)成分100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0299】
≪有機溶剤成分(S)≫
本実施形態のレジスト組成物は、レジスト材料を有機溶剤成分(以下「(S)成分」という)に溶解させて製造することができる。
本実施形態のレジスト組成物において、(S)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。なかでも、PGMEA、PGME、γ-ブチロラクトン、EL、シクロヘキサノンが好ましい。
【0300】
また、(S)成分としては、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよい。
(S)成分としては、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ-ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が、好ましくは70:30~95:5とされる。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が0.1~20質量%、好ましくは0.2~15質量%の範囲内となるように(S)成分は用いられる。
【0301】
本実施形態のレジスト組成物は、上記レジスト材料を(S)成分に溶解させた後、ポリイミド多孔質膜、ポリアミドイミド多孔質膜等を用いて、不純物等の除去を行ってもよい。例えば、ポリイミド多孔質膜からなるフィルター、ポリアミドイミド多孔質膜からなるフィルター、ポリイミド多孔質膜及びポリアミドイミド多孔質膜からなるフィルター等を用いて、レジスト組成物の濾過を行ってもよい。前記ポリイミド多孔質膜及び前記ポリアミドイミド多孔質膜としては、例えば、特開2016-155121号公報に記載のもの等が例示される。
【0302】
以上説明した本実施形態のレジスト組成物は、一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)を有する樹脂成分(A1)を含有する。これにより、高感度化が図れ、かつパターン寸法の均一性等のリソグラフィー特性のさらなる向上を図ることができる。このような効果を奏する理由としては、以下のように推測される。
構成単位(a0)は、側鎖の一方に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(R00)を介して、露光により酸を発生する酸発生基を有し、側鎖の他方に、酸分解性部位を有している。
このように、構成単位(a0)には、酸発生基であるアニオン部が樹脂成分(A1)に組み込まれている。また、このことにより、前記酸発生基がレジスト膜全体に均一に分布するため、露光により発生する酸がレジスト膜中で一様に酸分解性部位に作用する。
加えて、構成単位(a0)は、主鎖と酸発生基との間の連結部に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(R00)を有するため、レジスト膜未露光部の溶解抑止効果が高められる。
上述の各作用が相乗的に働くことで、高感度化と、パターン寸法の均一性等のリソグラフィー特性のさらなる向上と、が図られると推測される。
【0303】
(レジストパターン形成方法)
本発明の第2の態様に係るレジストパターン形成方法は、支持体上に、上述した本発明の第1の態様に係るレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を有する方法である。
かかるレジストパターン形成方法の一実施形態としては、例えば以下のようにして行うレジストパターン形成方法が挙げられる。
【0304】
まず、上述した実施形態のレジスト組成物を、支持体上にスピンナー等で塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば80~150℃の温度条件にて40~120秒間、好ましくは60~90秒間施してレジスト膜を形成する。
次に、該レジスト膜に対し、例えば電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光またはマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行う。
その後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、例えば80~150℃の温度条件にて40~120秒間、好ましくは60~90秒間施す。
次に、前記レジスト膜を現像処理する。現像処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、アルカリ現像液を用い、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて行う。
【0305】
現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。リンス処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、純水を用いた水リンスが好ましく、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
溶剤現像プロセスの場合、前記現像処理またはリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を、超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
現像処理後またはリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
【0306】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
【0307】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(極端紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
本実施形態のレジストパターン形成方法は、前記のレジスト膜を露光する工程において、前記レジスト膜に、EUV(極端紫外線)又はEB(電子線)を露光する形態に有用な方法である。
【0308】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましく、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
液浸媒体としては、水が好ましく用いられる。
【0309】
アルカリ現像プロセスで現像処理に用いるアルカリ現像液としては、例えば0.1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスで現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A1)成分(露光前の(A1)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0310】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及び、プロピオン酸ブチルが挙げられる。
【0311】
ニトリル系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル等が挙げられる。
【0312】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0313】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、例えば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0314】
溶剤現像プロセスで現像処理後のリンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、例えば前記有機系現像液に用いる有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解しにくいものを適宜選択して使用できる。通常、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を使用する。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。
【0315】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、例えば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0316】
以上説明した本実施形態のレジストパターン形成方法によれば、上述したレジスト組成物が用いられているため、高感度化が図れ、パターン寸法の均一性等のリソグラフィー特性が良好なレジストパターンを形成することができる。
【0317】
上述した実施形態のレジスト組成物、及び、上述した実施形態のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物など)は、金属、ハロゲンを含む金属塩、酸、アルカリ、硫黄原子又はリン原子を含む成分等の不純物を含まないことが好ましい。ここで、金属原子を含む不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Cr、Ni、Zn、Ag、Sn、Pb、Li、またはこれらの塩などを挙げることができる。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、200ppb以下が好ましく、1ppb以下がより好ましく、100ppt(parts per trillion)以下がさらに好ましく、10ppt以下が特に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が最も好ましい。
【0318】
(化合物)
本発明の第3の態様に係る化合物は、下記一般式(a0-m1)で表される化合物(以下「化合物(a0)」ともいう)である。
【0319】
【化69】
[式中、R
01は、2価の連結基又は単結合である。R
02は、酸解離性基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。]
【0320】
前記式(a0-m1)中、R01、R02、Y00、R00、Y01、V01、R03、Mm+及びmは、上述の一般式(a0-1)中のR01、R02、Y00、R00、Y01、V01、R03、Mm+及びmとそれぞれ同じである。
【0321】
前記化合物(a0)としては、前記式(a0-m1)中のR02が、上述の一般式(a1-r-2)で表される酸解離性基である化合物、が好適に挙げられる。
あるいは、前記化合物(a0)としては、前記式(a0-m1)中のR02が、上述の一般式(a1-r-4)で表される酸解離性基である化合物、が好適に挙げられる。
あるいは、前記化合物(a0)としては、前記式(a0-m1)中のR00が、置換基を有する芳香族炭化水素基であり、前記置換基は、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基からなる群より選択される一種以上である化合物、が好適に挙げられる。
あるいは、前記化合物(a0)としては、前記式(a0-m1)中のR00が、上述の一般式(R00-1)で表される基である化合物、が好適に挙げられる。
【0322】
以下に、化合物(a0)の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
Mm+は、m価のオニウムカチオンであり、好ましくは上述の一般式(ca-1)で表されるカチオンである。
【0323】
【0324】
【0325】
[化合物(a0)の製造方法]
本実施形態の化合物(a0)は、公知の方法を組み合わせて製造することができる。
化合物(a0)の製造方法の一実施形態としては、下記の工程(I)~(IV)を含む製造方法が挙げられる。
【0326】
工程(I):
工程(I)では、下記一般式(a0-m0-1)で表される化合物と、下記一般式(a0-m0-2)で表される化合物と、の反応により、下記一般式(a0-m0-3)で表される化合物を得る。
【0327】
【化72】
[式中、Xhは、ハロゲン原子である。R
01は、2価の連結基又は単結合である。R
02は、酸解離性基である。]
【0328】
前記の反応式中のR01及びR02は、上述したR01及びR02についての説明と同様である。Xhは、ハロゲン原子であり、塩素原子が好ましい。
工程(I)の反応温度条件は、特に限定されず、例えば0~120℃程度である。
工程(I)の反応時間は、特に限定されず、例えば1~12時間程度である。
【0329】
工程(I)で用いる反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン(CH2Cl2)、ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0330】
工程(I)の反応では、塩基性触媒を適宜選択して用いてもよい。塩基性触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミン類;ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピロリジノピリジンなどの芳香族アミン類;ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等が挙げられる。
【0331】
工程(I)の反応が終了した後、反応液中の化合物を単離、精製してもよい。単離、精製には、従来公知の方法が利用できる。
【0332】
工程(II):
工程(II)では、下記一般式(a0-m0-3)で表される化合物と、アルデヒドと、の反応により、下記一般式(a0-m0-4)で表される化合物を得る。
【0333】
【化73】
[式中、R
02は、酸解離性基である。R
01は、2価の連結基又は単結合である。Y
00aは、アルデヒド由来の基である。]
【0334】
前記の反応式中のR01及びR02は、上述したR01及びR02についての説明と同様である。Y00aは、アルデヒド由来の基であり、例えばホルムアルデヒド由来の基(-CH2-OH)が挙げられる。
工程(II)の反応温度条件は、特に限定されず、例えば0~120℃程度である。
工程(II)の反応時間は、特に限定されず、例えば1~24時間程度である。
【0335】
工程(II)で用いる反応溶媒としては、例えば、トルエン、ジクロロメタン(CH2Cl2)、ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0336】
工程(II)の反応では、塩基性触媒を適宜選択して用いてもよい。塩基性触媒としては、例えば、カリウムtert-ブトキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミン類;ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピロリジノピリジンなどの芳香族アミン類;ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等が挙げられる。
【0337】
工程(II)の反応が終了した後、反応液中の化合物を単離、精製してもよい。単離、精製には、従来公知の方法が利用できる。
【0338】
工程(III):
工程(III)では、下記一般式(a0-m0-5)で表される化合物と、下記一般式(a0-m0-6)で表される化合物と、の反応により、下記一般式(a0-m0-7)で表される化合物を得る。
【0339】
【化74】
[式中、V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01aとY
01bとは、工程(III)における反応後に、Y
01を形成する基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。Y
00bは、Y
00aと縮合して、Y
00を形成する基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。]
【0340】
前記の反応式中のV01、R03、Mm+、m、R00、Y01及びY00は、上述したV01、R03、Mm+、m、R00、Y01及びY00についての説明と同様である。
Y01aとY01bとは、工程(III)における反応後に、Y01を形成する基である。例えば、Y01aがヒドロキシ基(-OH)であり、Y01bがカルボキシ基(-C(=O)-OH)であり、Y01がエステル結合(-C(=O)-O-)を形成する場合が挙げられる。
Y00bは、Y00aと縮合して、Y00を形成する基である。例えば、Y00bがヒドロキシ基(-OH)であり、Y00aがホルムアルデヒド由来の基(-CH2-OH)であり、Y00が-CH2-O-を形成する場合が挙げられる。
工程(III)の反応温度条件は、特に限定されず、例えば0~50℃程度である。
工程(III)の反応時間は、特に限定されず、例えば1~12時間程度である。
【0341】
工程(III)で用いる反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0342】
工程(III)の反応では、縮合剤が適宜選択して用いられる。縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、カルボニルジイミダゾール(CDI)等が挙げられる。
【0343】
工程(III)の反応では、塩基性触媒を適宜選択して用いてもよい。塩基性触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミン類、ピリジン、ピロリジノピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)などの芳香族アミン類、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等が挙げられる。
【0344】
工程(III)の反応が終了した後、反応液中の化合物を単離、精製してもよい。単離、精製には、従来公知の方法が利用できる。
【0345】
工程(IV):
工程(IV)では、下記一般式(a0-m0-4)で表される化合物と、下記一般式(a0-m0-7)で表される化合物と、の反応により、目的の下記一般式(a0-m1)で表される化合物を得る。
【0346】
【化75】
[式中、R
02は、酸解離性基である。R
01は、2価の連結基又は単結合である。Y
00aは、アルデヒド由来の基である。Y
00bは、Y
00aと縮合して、Y
00を形成する基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。]
【0347】
前記の反応式中のR02、R01、Y00a、Y00b、Y00、R00、Y01、V01、R03、Mm+及びmは、上述の説明と同様である。
工程(IV)の反応温度条件は、特に限定されず、例えば0~50℃程度である。
工程(IV)の反応時間は、特に限定されず、例えば1~12時間程度である。
【0348】
工程(IV)で用いる反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0349】
工程(IV)の反応では、縮合剤が適宜選択して用いられる。縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、カルボニルジイミダゾール(CDI)等が挙げられる。
【0350】
工程(IV)の反応では、塩基性触媒を適宜選択して用いてもよい。塩基性触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミン類、ピリジン、ピロリジノピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)などの芳香族アミン類、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等が挙げられる。
【0351】
工程(IV)の終了後、反応液中の化合物(a0)を単離、精製してもよい。
単離、精製には、従来公知の方法が利用でき、例えば濃縮、溶媒抽出、蒸留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等をいずれか単独で、又はこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のようにして得られた化合物の構造は、1H-核磁気共鳴(NMR)スペクトル法、13C-NMRスペクトル法、19F-NMRスペクトル法、赤外線吸収(IR)スペクトル法、質量分析(MS)法、元素分析法、X線結晶回折法等の一般的な有機分析法により確認できる。
【0352】
本実施形態の化合物は、後述する第4の態様に係る高分子化合物の原料モノマーとして利用可能である。
【0353】
(高分子化合物)
本発明の第4の態様は、下記一般式(a0-1)で表される構成単位を有する、高分子化合物である。
【0354】
【化76】
[式中、R
01は、2価の連結基又は単結合である。R
02は、酸解離性基である。Y
00は、2価の連結基又は単結合である。R
00は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。Y
01は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V
01は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R
03は、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基である。M
m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。Y
01及びV
01は、同時に単結合になることはない。]
【0355】
前記第4の態様に係る高分子化合物としては、前記一般式(a0-1)で表される構成単位に加え、さらに、下記一般式(a10-1)で表される構成単位を有するものが好適に挙げられる。
【0356】
【化77】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya
x1は、2価の連結基又は単結合である。Wa
x1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。n
ax1は、1以上の整数である。]
【0357】
前記一般式(a0-1)で表される構成単位は、上記一般式(a0-m1)で表される化合物から誘導される構成単位であり、上述した構成単位(a0)と同じである。
前記一般式(a10-1)で表される構成単位は、上述した構成単位(a10)と同じである。
第4の態様に係る高分子化合物については、上述した(A1)成分についての説明と同様である。
第4の態様に係る高分子化合物、すなわち、一般式(a0-1)で表される構成単位を有する高分子化合物は、第1の態様に係るレジスト組成物の基材成分として利用可能である。また、一般式(a0-1)で表される構成単位と、一般式(a10-1)で表される構成単位とを有する高分子化合物は、特にEUV又はEBを露光するリソグラフィー用のレジスト材料として有用なものである。
【実施例】
【0358】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0359】
<化合物の合成例>
[合成例1:化合物(a0-01)の合成]
下記化合物(a0-01-2)50.0gと、ジクロロメタン500.0gと、トリエチルアミン75.8gと、4-ジメチルアミノピリジン6.1gとをフラスコに仕込み、その溶液に下記化合物(a0-01-1)58.7gを滴下し、室温で3時間撹拌した。その後、塩化アンモニウム水溶液で洗浄した後、有機層を濃縮して化合物(a0-01-3)65.4gを得た。
【0360】
【0361】
下記化合物(a0-01-3)50.0gと、テトラヒドロフラン(THF)300.0gと、水300.0gと、ホルムアルデヒド10.7gとをフラスコに仕込み、その溶液に1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)181.9gを添加し、90℃で12時間撹拌した。その後、イオン交換水で洗浄した後、有機層を濃縮して化合物(a0-01-4)52.6gを得た。
【0362】
【0363】
下記化合物(a0-01-5)50.0gと、下記化合物(a0-01-6)55.1gと、ジクロロメタン500.0gと、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)26.7gとをフラスコに仕込み、室温で3時間撹拌した。その後、イオン交換で洗浄した後、有機層を濃縮して化合物(a0-01-7)65.7gを得た。
【0364】
【0365】
下記化合物(a0-01-4)50.0gと、下記化合物(a0-01-7)173.6gと、ジクロロメタン500.0gと、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)47.9gとをフラスコに仕込み、室温で3時間撹拌した。その後、塩酸で洗浄した後、有機層を濃縮して、目的の化合物(a0-01)157.8gを得た。
【0366】
【0367】
得られた化合物(a0-01)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.39(3H,s),1.69(8H,m),4.61(2H,s),5.13(2H,t),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.36(15H,m),8.10(1H,d),8.21(1H,d)
【0368】
[合成例2:化合物(a0-02)の合成]
化合物(a0-01-6)に代えて、下記化合物(a0-02-6)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-02)を得た。
【0369】
【0370】
得られた化合物(a0-02)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.39(3H,s),1.69(8H,m),4.61(2H,s),5.13(2H,t),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.36(15H,m),8.21(2H,s)
【0371】
[合成例3:化合物(a0-03)の合成]
化合物(a0-01-2)に代えて、下記化合物(a0-03-2)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-03)を得た。
【0372】
【0373】
得られた化合物(a0-03)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.76(8H,m),4.61(2H,s),5.13(2H,t),5.28(2H,m),5.89(1H,m),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.36(15H,m),8.10(1H,d),8.21(1H,d)
【0374】
[合成例4:化合物(a0-04)の合成]
化合物(a0-01-2)に代えて、下記化合物(a0-04-2)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-04)を得た。
【0375】
【0376】
得られた化合物(a0-04)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.54(6H,s),4.61(2H,s),5.13(2H,t),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.13(1H,m),7.30(2H,m),7.54(2H,m),8.10(1H,d),8.21(1H,d)
【0377】
[合成例5:化合物(a0-05)の合成]
化合物(a0-01-5)に代えて、下記化合物(a0-05-5)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-05)を得た。
【0378】
【0379】
得られた化合物(a0-05)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.39(3H,s),1.69(8H,m),4.61(2H,s),5.13(2H,t),6.02(1H,m),6.59(1H,m),6.78(6H,m),7.36(15H,m),7.65(5H,m),8.10(1H,d),8.21(1H,d)
【0380】
[合成例6:化合物(a0-06)の合成]
化合物(a0-01-5)に代えて、下記化合物(a0-06-5)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-06)を得た。
【0381】
【0382】
得られた化合物(a0-06)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.39(3H,s),1.69(8H,m),1.89(2H,m),4.23(2H,t),4.60(1H,m),4.61(2H,s),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.36(15H,m),8.10(1H,d),8.21(1H,d)
【0383】
[合成例7:化合物(a0-07)の合成]
化合物(a0-01-6)に代えて、下記化合物(a0-07-6)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-07)を得た。
【0384】
【0385】
得られた化合物(a0-07)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.39(3H,s),1.69(8H,m),4.61(2H,s),5.13(2H,t),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.11(1H,m),7.36(15H,m),7.42(2H,m),7.95(1H,m)
【0386】
[合成例8:化合物(a0-08)の合成]
化合物(a0-01-6)に代えて、下記化合物(a0-08-6)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-08)を得た。
【0387】
【0388】
得られた化合物(a0-08)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.39(3H,s),1.69(8H,m),4.61(2H,s),5.13(2H,t),6.02(1H,m),6.59(1H,m),6.76(1H,d),7.27(1H,d),7.36(15H,m)
【0389】
[合成例9:化合物(a0-09)の合成]
化合物(a0-01-6)に代えて、下記化合物(a0-09-6)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-09)を得た。
【0390】
【0391】
得られた化合物(a0-09)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.39(3H,s),1.69(8H,m),4.61(2H,s),5.13(2H,t),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.36(15H,m),7.73(1H,d),8.03(1H,d)
【0392】
[合成例10:化合物(a0-10)の合成]
化合物(a0-01-2)に代えて、下記化合物(a0-10-2)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-10)を得た。
【0393】
【0394】
得られた化合物(a0-10)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.65(3H,s),1.65(2H,m),1.88(2H,m),1.94(2H,m),4.61(2H,s),5.13(3H,m),5.37(1H,m),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.36(15H,m),8.10(1H,d),8.21(1H,d)
【0395】
[合成例11:化合物(a0-11)の合成]
化合物(a0-01-2)に代えて、下記化合物(a0-11-2)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-11)を得た。
【0396】
【0397】
得られた化合物(a0-11)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.24(3H,s),1.65(2H,m),1.84(2H,m),1.96(2H,m),4.61(2H,s),5.13(3H,m),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.36(15H,m),8.10(1H,d),8.21(1H,d)
【0398】
[合成例12:化合物(a0-12)の合成]
化合物(a0-01-2)に代えて、下記化合物(a0-12-2)を用いたこと以外は、前記合成例1と同様の方法で、目的の化合物(a0-12)を得た。
【0399】
【0400】
得られた化合物(a0-12)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.54(6H,s),4.61(2H,s),5.13(2H,t),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.05(2H,d),7.36(15H,m),7.60(2H,d),8.10(1H,d),8.21(1H,d)
【0401】
[合成例13:化合物(a0-13)の合成]
下記化合物(a0-13-2)50.0gと、ジクロロメタン500.0gと、トリエチルアミン75.8gと、4-ジメチルアミノピリジン6.1gとをフラスコに仕込み、その溶液に下記化合物(a0-13-1)90.5gを滴下し、室温で3時間撹拌した。その後、塩化アンモニウム水溶液で洗浄した後、有機層を濃縮して化合物(a0-13-3)86.9gを得た。
【0402】
【0403】
下記化合物(a0-13-3)50.0gと、テトラヒドロフラン(THF)300.0gと、水300.0gと、ホルムアルデヒド7.8gとをフラスコに仕込み、その溶液に1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)132.1gを添加し、90℃で12時間撹拌した。その後、イオン交換水で洗浄した後、有機層を濃縮して化合物(a0-13-4)50.8gを得た。
【0404】
【0405】
下記化合物(a0-13-4)50.0gと、下記化合物(a0-13-5)132.0gと、ジクロロメタン500.0gと、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)36.5gとをフラスコに仕込み、室温で3時間撹拌した。その後、塩酸で洗浄した後、有機層を濃縮して、目的の化合物(a0-13)147.4gを得た。
なお、化合物(a0-13-5)は、上記化合物(a0-01-7)と同一である。
【0406】
【0407】
得られた化合物(a0-13)について、NMR測定を行い、以下の結果よりその構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz):δ(ppm)=1.39(3H,s),1.69(8H,m),4.61(2H,s),5.11(2H,s),5.13(2H,t),6.02(1H,m),6.59(1H,m),7.36(15H,m),8.10(1H,d),8.21(1H,d)
【0408】
<高分子化合物の合成例>
[高分子化合物(A1-1)の合成]
下記化合物(a0-01)45.0gと、下記化合物(m-a10-1pre)21.0gと、重合開始剤としてアゾビス(イソ酪酸)ジメチル(V-601)1.1gとを、メチルエチルケトン(MEK)90.0gに溶解させた滴下溶液を調製した。
温度計、還流管及び窒素導入管を繋いだ三口フラスコに、90.0gのMEKを加え、窒素雰囲気下で85℃に加熱し、前記滴下溶液を4時間かけて滴下することにより反応液を得た。
滴下終了後、得られた反応液を85℃にて1時間撹拌した。この後、反応液を室温まで冷却した。
次いで、冷却した反応液をヘプタン450gで沈殿させて、その沈殿物を洗浄した。
洗浄後、得られた白色固形物をろ過し、一晩減圧乾燥して、目的の高分子化合物(A1-1)を得た。
【0409】
【0410】
[高分子化合物(A1-2)~(A1-14)の合成]
使用するモノマー及びその使用量を変更したこと以外は、前記高分子化合物(A1-1)の合成と同様の方法で、高分子化合物(A1-2)~(A1-14)を合成した。
構成単位(a0)を誘導するモノマーとして、前記の化合物(a0-02)~(a0-13)を用いた。
【0411】
合成した高分子化合物(A1-1)~(A1-14)の構造を以下に示した。
【0412】
【0413】
【0414】
【0415】
【0416】
高分子化合物(A1-1)~(A1-14)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分散度(Mw/Mn)を、GPC測定(標準ポリスチレン換算)により求めた。
高分子化合物(A1-1)~(A1-14)の共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))を、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_13C-NMR)により求めた。
【0417】
高分子化合物(A1-1):重量平均分子量(Mw)8000、分子量分散度(Mw/Mn)1.67、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-2):重量平均分子量(Mw)8200、分子量分散度(Mw/Mn)1.72、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-3):重量平均分子量(Mw)8300、分子量分散度(Mw/Mn)1.82、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-4):重量平均分子量(Mw)7800、分子量分散度(Mw/Mn)1.69、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-5):重量平均分子量(Mw)8100、分子量分散度(Mw/Mn)1.73、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-6):重量平均分子量(Mw)8200、分子量分散度(Mw/Mn)1.77、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-7):重量平均分子量(Mw)8000、分子量分散度(Mw/Mn)1.80、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-8):重量平均分子量(Mw)7800、分子量分散度(Mw/Mn)1.69、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-9):重量平均分子量(Mw)7700、分子量分散度(Mw/Mn)1.68、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-10):重量平均分子量(Mw)8300、分子量分散度(Mw/Mn)1.74、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-11):重量平均分子量(Mw)8200、分子量分散度(Mw/Mn)1.73、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-12):重量平均分子量(Mw)8400、分子量分散度(Mw/Mn)1.75、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-13):重量平均分子量(Mw)8100、分子量分散度(Mw/Mn)1.72、l/m=30/70。
高分子化合物(A1-14):重量平均分子量(Mw)7800、分子量分散度(Mw/Mn)1.69、l/m/n=30/50/20。
【0418】
<レジスト組成物の調製>
(実施例1~17、比較例1~3)
表1に示す各成分を混合して溶解し、各例のレジスト組成物をそれぞれ調製した。
【0419】
【0420】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部;固形分換算)である。
【0421】
(A)-1~(A)-14:前記の高分子化合物(A1-1)~(A1-14)。
【0422】
(A)-15:下記高分子化合物(A2-1)。重量平均分子量(Mw)8400、分子量分散度(Mw/Mn)1.84、l/m=30/70。
(A)-16:下記高分子化合物(A2-2)。重量平均分子量(Mw)7900、分子量分散度(Mw/Mn)1.69、l/m=30/70。
(A)-17:下記高分子化合物(A2-3)。重量平均分子量(Mw)8300、分子量分散度(Mw/Mn)1.84、l/m=70/30。
重量平均分子量(Mw)は、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、13C-NMRにより求めた。
【0423】
【0424】
(B)-1:下記の化合物(B-1)からなる酸発生剤。
(B)-2:下記の化合物(B-2)からなる酸発生剤。
【0425】
【0426】
(D)-1:下記の化合物(D1-1)からなる酸拡散制御剤。
(D)-2:下記の化合物(D1-2)からなる酸拡散制御剤。
【0427】
【0428】
(S)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル=60/40(質量比)の混合溶剤。
【0429】
<レジストパターンの形成>
レジスト膜を形成する工程:
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコン基板上に、各例のレジスト組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度110℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。
【0430】
レジスト膜を露光する工程:
次に、前記レジスト膜に対し、電子線描画装置JEOL-JBX-9300FS(日本電子株式会社製)を用い、加速電圧100kVにて、ターゲットサイズを、直径32nmのホールが等間隔(ピッチ64nm)に配置されたコンタクトホールパターン(以下「CHパターン」という。)とする描画(露光)を行った。
その後、110℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行った。
【0431】
露光後のレジスト膜を現像する工程:
次いで、23℃にて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液「NMD-3」(商品名、東京応化工業株式会社製)を用いて、60秒間のアルカリ現像を行った。
その後、純水を用いて15秒間水リンスを行った。
その結果、直径32nmのホールが等間隔(ピッチ64nm)に配置されたCHパターンが形成された。
【0432】
[最適露光量(Eop)の評価]
前記の<レジストパターンの形成>によってターゲットサイズのCHパターンが形成される最適露光量Eop(μC/cm2)を求めた。その結果を「Eop(μC/cm2)」として表2に示した。
【0433】
[パターン寸法の面内均一性(CDU)の評価]
前記の<レジストパターンの形成>によって形成されたCHパターンについて、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧500V、商品名:CG5000、日立ハイテクノロジーズ社製)により、CHパターン上空から観察し、各ホールのホール直径(nm)を測定した。そして、その測定結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を求めた。その結果を「CDU(nm)」として表2に示した。
このようにして求められる3σは、その値が小さいほど、該レジスト膜に形成された複数のホールの寸法(CD)均一性が高いことを意味する。
【0434】
【0435】
表2に示す結果から、実施例1~17のレジスト組成物は、比較例1~3のレジスト組成物と比較して、感度が高められ、かつCDUが良好であることが確認できる。