(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】容器ホルダ、分析装置、容器ホルダの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20240524BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240524BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20240524BHJP
B01L 9/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G01N35/02 Z
B29C45/17
B29C45/37
B01L9/00
(21)【出願番号】P 2023500549
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2021043939
(87)【国際公開番号】W WO2022176309
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2021024854
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】宮川 拓士
(72)【発明者】
【氏名】三宅 雅文
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-230969(JP,A)
【文献】実開平2-137931(JP,U)
【文献】特表2008-537147(JP,A)
【文献】特開昭60-129142(JP,A)
【文献】特開2007-178435(JP,A)
【文献】中国実用新案第200947104(CN,Y)
【文献】米国特許出願公開第2004/195193(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
B29C 45/17
B29C 45/37
B01L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の容器を保持する容器ホルダであって、
前記容器を収容する孔を備え、
前記孔は、底部と、前記容器を挿入する開口部とによって構成されており、
前記孔の内壁は、前記孔の深さ方向に対して第1角度で傾斜した第1壁部と、前記深さ方向に対して前記第1角度とは異なる第2角度で傾斜した第2壁部とを有し、
前記第1壁部は、前記開口部から前記底部に向かって前記孔が広がる形状を有し、
前記第2壁部は、前記底部から前記開口部に向かって前記孔が広がる形状を有し、
前記底部、前記開口部、前記第1壁部、および前記第2壁部は、一体成型されている
ことを特徴とする容器ホルダ。
【請求項2】
前記開口部の外形のうち一部は、前記第1壁部によって形成されており、
前記外形のうち前記一部とは異なる部分は、前記第2壁部によって形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の容器ホルダ。
【請求項3】
前記開口部は、円形状を有し、
前記円形状の前記一部は、前記円形状の前記異なる部分を、前記円形状の中心を回転中心として前記円形状の周方向に沿って回転させた位置に配置されている
ことを特徴とする請求項2記載の容器ホルダ。
【請求項4】
前記開口部の外形は、
前記第1壁部によって形成されている第1部分、
前記第1部分とは異なる第2部分、
前記第1部分とも前記第2部分とも異なる第3部分、
を有し、
前記第2部分の外形は、前記第3部分の外形とは異なる
ことを特徴とする請求項1記載の容器ホルダ。
【請求項5】
前記第2部分と前記第3部分は、前記第1部分の輪郭を前記開口部の中心から外側へ向けて突出させた形状を有し、
前記第2部分が前記輪郭から突出している部分のサイズは、前記第3部分が前記輪郭から突出している部分のサイズとは異なる
ことを特徴とする請求項4記載の容器ホルダ。
【請求項6】
前記第1部分、前記第2部分、および前記第3部分は、それぞれ円弧によって構成されており、
前記第2部分を構成する円弧の半径は、前記第3部分を構成する円弧の半径とは異なることを特徴とする請求項5記載の容器ホルダ。
【請求項7】
前記第1部分、前記第2部分、および前記第3部分は、それぞれ円弧によって構成されており、
前記第2部分を構成する円弧の中心角は、前記第3部分を構成する円弧の中心角とは異なる
ことを特徴とする請求項5記載の容器ホルダ。
【請求項8】
前記開口部の外形は、
前記第1壁部によって形成されている第1部分、
前記第1部分とは異なる第2部分、
前記第1部分とも前記第2部分とも異なる第3部分、
を有し、
前記第2部分は、前記開口部の中心を回転中心として前記第3部分を180°よりも小さい角度で回転させた形状である
ことを特徴とする請求項1記載の容器ホルダ。
【請求項9】
前記容器ホルダは、樹脂によって形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の容器ホルダ。
【請求項10】
液体試料に含まれる成分を分析する分析装置であって、
請求項1記載の容器ホルダを備えることを特徴とする分析装置。
【請求項11】
前記分析装置はさらに、前記分析装置の外表面のうち少なくとも一部を覆うカバーを備え、
前記容器ホルダは、前記カバーの一部として形成されている
ことを特徴とする請求項10記載の分析装置。
【請求項12】
柱状の容器を保持する容器ホルダを製造する方法であって、
固定側金型と可動側金型を閉じ合わせることによって生じた空間に対して前記容器ホルダの材料を流し込むステップ、
前記材料を固化させるステップ、
前記材料が固化した後に前記固定側金型を前記材料から取り外すステップ、
前記固定側金型を前記材料から取り外した後に前記可動側金型を前記材料から取り外すステップ、
を有し、
前記固定側金型は、前記容器ホルダが前記容器を収容する孔の底部を形成する部分と、前記孔の内壁の第1壁部を形成する部分とを有し、
前記可動側金型は、前記孔に対して前記容器を挿入する開口部を形成する部分と、前記内壁の第2壁部を形成する部分とを有し、
前記第1壁部は、前記孔の深さ方向に対して第1角度で傾斜しており、
前記第2壁部は、前記深さ方向に対して前記第1角度とは異なる第2角度で傾斜しており、
前記第1壁部は、前記開口部から前記底部に向かって前記孔が広がる形状を有し、
前記第2壁部は、前記底部から前記開口部に向かって前記孔が広がる形状を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記材料は樹脂であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状の容器を保持する容器ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料を分析する分析装置は、典型的には、試料を収容する容器を保持する容器ホルダを備えている。この容器は、試験管のように細長い柱形状を有していることが多く、容器ホルダは容器の開口部を上に向けて保持するのが通常である。下記特許文献1と2は、試験管をそのように保持する部材として、試験管立てを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】公開実用新案公報 昭53-147889
【文献】公開実用新案公報 昭53-150280
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分析装置は、装置の外装部分を覆うカバー(テーブルカバーとも呼び、上面は水平面である)を備えている場合がある。テーブルカバーは、樹脂材料を射出成型することによって形成されるのが典型的である。テーブルカバー上の適切な場所に容器ホルダを配置することができれば、容器ホルダの設計自由度が高まり、作業効率向上などの有用な効果を得ることができる可能性がある。そこで、特許文献1~2が記載しているような従来の試験管立てを、分析装置のテーブルカバーにおいて用いることを考える。
【0005】
特許文献1記載の試験管立てにおいては、金属の線材によって網目状に形成された開口部を平面上に複数配置するとともに、試験管の側壁部分を上下2本の線材によって支持する。このような構造においては、2つの部材(例えば網目状の線材と上下2本の線材)を溶接などによって固定することになる。したがって、テーブルカバーのように、樹脂材料を用いて単一部品により構成することは困難である。
【0006】
特許文献2は、樹脂材料を用いて単一部品によって構成された試験管立てを記載している。樹脂材料は、射出成型によって成型される。射出成型プロセスにおいては、金型を材料から引き抜くとき金型が摩耗しないように、完成品の側壁を引き抜き方向に対して僅かに傾ける(射出成型においてはこの傾きを抜き勾配と呼ぶ)ように、完成品と金型を設計するのが通常である。これにより、試験管を挿入する孔の側壁もその抜き勾配によって傾くことになる。そうすると、試験管立てに試験管を挿入して保持したとき、試験管が抜き勾配に沿って傾いてしまう。分析装置の分注プローブが、このように傾いて保持されている試験管に対して下降すると、ノズルが試験管の壁面に接触して様々な不具合が生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、射出成型によって容器ホルダを製造する際に用いる金型をスムーズに引き抜くための抜き勾配を有するとともに、容器を傾けずに保持することができる、容器ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る容器ホルダが容器を収容する孔は、第1壁部と第2壁部を有し、前記第1壁部は、前記開口部から前記底部に向かって前記孔が広がる形状を有し、前記第2壁部は、前記底部から前記開口部に向かって前記孔が広がる形状を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る容器ホルダは、射出成型を用いて単一の部品によって製造することができる。さらに、金型をスムーズに引き抜くための抜き勾配を有するとともに、容器を傾けずに保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る自動分析装置1の上面図である。
【
図2】容器ホルダを従来の手法によって射出成型により製造した場合の構成例を示す側断面図である。
【
図3】実施形態1に係る容器ホルダ100の構造図である。
【
図4】容器ホルダ100がサンプル容器15を保持する様子を示す図である。
【
図5】容器ホルダ100を射出成型によって製造する際に用いる固定側金型の形状を示す図である。
【
図6】容器ホルダ100を射出成型によって製造する際に用いる可動側金型の形状を示す図である。
【
図7】容器ホルダ100を射出成型によって製造する工程を示す側断面図である。
【
図8】実施形態2に係る容器ホルダ100の斜視図である。
【
図9】実施形態2に係る容器ホルダ100の上面形状を示す模式図である。
【
図10】サンプル容器15の形状例を示す図である。
【
図11】実施形態3に係る容器ホルダ100の斜視図である。
【
図12】実施形態3に係る容器ホルダ100の上面形状を示す模式図である。
【
図13】実施形態4に係る容器ホルダ100の上面形状を示す模式図である。
【
図14】実施形態5に係る容器ホルダ100の形状例である。
【
図15】実施形態5に係る容器ホルダ100の別形状例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る自動分析装置1の上面図である。自動分析装置1は例えば血液などの液体試料を分析する装置である。自動分析装置1は、搬送ライン71、グリッパ55、分注ライン65と66、分析前バッファ61、分析後バッファ62、2つの分析槽50、サンプルプローブ14、表示装置80、制御装置29などを備えている。
【0012】
制御装置29は、自動分析装置1の各部を制御する。表示装置80は、自動分析装置1による分析結果などを表示する。
【0013】
搬送ライン71は、装置の端部に設置されており、サンプルラック投入部(図示省略)から投入された、サンプルを収容する複数のサンプル容器15を搭載する搬送容器90をグリッパ55による移送位置まで搬送するとともに、測定が終了した搬送容器90を搬出する装置である。
【0014】
本実施形態では搬送容器90に複数のサンプル容器15を搭載する例を説明しているが、搬送容器90には1以上のサンプル容器15を搭載できればよい。搬送容器90の他の例としては、1個のサンプル容器15を搭載可能なサンプルホルダ等がある。
【0015】
グリッパ55は、搬送ライン71から分注ライン65と66へ、あるいは分注ライン65と66から搬送ライン71へ、搬送容器90を移送するための機構である。
【0016】
分注ライン65と66は、搬送容器90のうち、分注対象のサンプル容器15をサンプルプローブ14による分注位置まで搬送、あるいは分注後のサンプル容器15を収容した搬送容器90を分析後バッファ62まで搬送するための機構である。
【0017】
分析前バッファ61や分析後バッファ62は、分析槽50への分注待ちのサンプル容器15や、分析動作完了後のサンプル容器15を他の個所に搬送するまで待機させるスペースである。
【0018】
分析槽50は、サンプルの電解質の濃度を測定するISE電極を有する分析部であり、2つ設けられており、サンプルを分析槽50に分注するサンプルプローブ14を共有している。分析槽50の数は2以上であればよく、3以上とすることができる。
【0019】
測定を実施する際には、試薬として内部標準液、希釈液、比較電極液の3種の試薬が使用される。内部標準液ボトル3は内部標準液を収容し、希釈液ボトル4は希釈液を収容し、比較電極液ボトル5は比較電極液を収容する。
【0020】
テーブルカバー200は、装置内部を隠すために装置の外装を覆うカバーである。テーブルカバー200は典型的には、射出成型を用いて樹脂によって作成される。容器ホルダ100は、サンプル容器15を保持する部材である。サンプル容器15は試験管型の容器である。
【0021】
<実施の形態1:容器ホルダの配置場所について>
自動分析装置1のメンテナンスを実施するときの作業負担を例として、容器ホルダ100の設置場所の自由度に関する課題を説明する。メンテナンス時においても、試薬を用いる場合がある。サンプルプローブ14は、サンプルラックが移動する場所へアクセスすることができる範囲内で稼働するように設計されている。したがってメンテナンスにおいてサンプルプローブ14が試薬を分注するためには、測定時と同じように、サンプル容器15を搭載した搬送容器90をサンプルラック投入部から投入し、搬送ライン71がこれを搬送するのが、従来のメンテナンス時における作業手順である。しかしこの手順は、メンテナンス作業を実施するごとに作業者がサンプルラックを準備しなければならず、作業負担が大きい。容器ホルダ100をテーブルカバー200上の任意の位置に設置することができれば、例えばサンプルプローブ14がアクセスすることができる範囲内の任意の位置にサンプル容器15を保持することができる。これにより作業者は、サンプル容器15を搭載したサンプルラックを準備する必要がなくなるので、メンテナンス作業効率が向上する。
【0022】
そこで本実施形態1では、テーブルカバー200の一部として容器ホルダ100を併せて製造し、サンプルプローブ14はテーブルカバー200上の容器ホルダ100から試薬を分注できるようにすることを図る。これによりメンテナンス作業の効率を改善することができると考えられる。ただしテーブルカバー200と容器ホルダ100を射出成型によって一体的に製造すると、以下のような課題が生じる。
【0023】
図2は、容器ホルダを従来の手法によって射出成型により製造した場合の構成例を示す側断面図である。射出成型は、固定側金型と可動側金型を閉じ合わせることによって生じた空間に対して樹脂などの材料を流し込み、材料が固化した後に各金型を材料から引き抜くことによって、部品を製造する手法である。射出成型においては、金型を材料から引き抜くとき金型が摩耗しないように、成形品の形状を引き抜き方向に対してわずかに傾斜させるのが通常である。この傾斜を抜き勾配と呼ぶ。
図2においては、容器ホルダの底面から開口部に向かって孔が広がるように、抜き勾配が形成されている。
【0024】
図2のように容器ホルダの孔が抜き勾配を有する場合、容器ホルダがサンプル容器15を保持すると、
図2右側のようにサンプル容器15が孔の内壁に対してもたれかかり、サンプル容器15が傾いた状態で保持されることになる。この状態でサンプルプローブ14がサンプル容器15のなかへ下降すると、サンプルプローブ14がサンプル容器15の内壁と接触し、破損や壁面への液付着など様々な不具合が生じる可能性がある。
【0025】
そこで本実施形態1においては、容器ホルダ100を射出成型によって製造しつつ、サンプル容器15を垂直に保持することができる、容器ホルダ100の構造およびその製造方法について説明する。
【0026】
図3は、本実施形態1に係る容器ホルダ100の構造図である。
図3左は斜視図、
図3中央上段は上面図、
図3中央中段は側面図、
図3中央下段は底面図、
図3右はそれぞれAA断面図とBB断面図である。ラインAAとBBとの間の角度は例えば45°である。
【0027】
容器ホルダ100は、サンプル容器15を挿入する孔を有する筒状の部材である。孔の内壁は全て垂直ではなく、深さ方向(図面における垂直方向、サンプル容器15を挿抜する方向と同じ)に対して傾斜した部分を有する。これらの傾斜部分について以下に説明する。
【0028】
AA断面図において、孔の側壁は、容器ホルダ100の底部から開口部に向かって孔が次第に広がるように傾斜している。この傾斜は、後述する可動側金型を引き抜くときの抜き勾配として作用する。さらにAA断面図において、容器ホルダ100の底部には、側壁から内側へ向かって突出した部分が形成されている。この突出部は、サンプル容器15を下側から支持することにより、サンプル容器15が抜け落ちてしまわないようにする役割を有する。
【0029】
BB断面図において、孔の側壁は、容器ホルダ100の開口部から底部に向かって孔が次第に広がるように傾斜している。この傾斜は、後述する固定側金型を引き抜くときの抜き勾配として作用する。
【0030】
図3においては、1箇所のAA断面(
図3中央上段の縦方向の断面)と1箇所のBB断面を示したが、
図3中央上段の横方向における断面もAA断面と同じ形状であり、さらにこれに対して45°ずれた位置の断面もBB断面と同じ形状である。
【0031】
図4は、容器ホルダ100がサンプル容器15を保持する様子を示す図である。サンプル容器15を孔内に挿入したこと以外は
図3と同じである。AA断面においては、孔の底部に向かうと孔が次第に細くなり、最下部またはその近傍において、孔の径とサンプル容器15の径が互いに等しくなる。この部分において容器ホルダ100はサンプル容器15を支持する。BB断面においては、孔の開口部に向かうと孔が次第に細くなり、最上部またはその近傍において、孔の径とサンプル容器15の径が互いに等しくなる。この部分において容器ホルダ100はサンプル容器15を支持する。
【0032】
図4のように、孔の下部と上部それぞれがサンプル容器15を支持することにより、従来とは異なりサンプル容器15は傾斜することなく、垂直に保持することができる。したがって、サンプルプローブ14がサンプル容器15の内壁に対して接触することを回避できる。
【0033】
<実施の形態1:容器ホルダ100の製造手順>
図5は、容器ホルダ100を射出成型によって製造する際に用いる固定側金型の形状を示す図である。
図5左は側断面図、
図5中央は上面図、
図5右は斜視図である。固定側金型は、
図3~
図4において説明したBB断面の形状を形成する。すなわち固定側金型の内部において2つ配置されている円弧状の柱の側壁は、容器ホルダ100の孔が開口部から底部に向かって末広がりとなるように傾斜している。固定側金型の内壁のその他部分も同様に傾斜させてもよい。
【0034】
固定側金型の底部には、サンプル容器15の底面を支持する部位が配置されている。この部位は、容器ホルダ100の材料を流し込んだとき、容器ホルダ100の内壁が中央に向かって突出するように形成されている。これにより
図3~
図4のAA断面の底部のように、容器ホルダ100の底部において、側壁から中心へ向かって突出した部分が形成されて、この部分がサンプル容器15を下方から支持する。
【0035】
図6は、容器ホルダ100を射出成型によって製造する際に用いる可動側金型の形状を示す図である。可動側金型は、
図3~
図4において説明したAA断面の形状を形成する。すなわち可動側金型が有する2つの円弧状の柱は、容器ホルダ100の孔が底部から開口部に向かって末広がりとなるように傾斜している。
【0036】
図7は、容器ホルダ100を射出成型によって製造する工程を示す側断面図である。製造工程において、
図5で説明した固定側金型と、
図6で説明した可動側金型を用いる。ここでは製造工程を4工程に分け、
図7の左から右に向かって工程が進む。最初の工程における上側の部材が可動側金型、下側の部材が固定側金型である。
【0037】
第1工程において、固定側金型と可動側金型を閉じ合わせ、金型全体を温める。第2工程において、金型間の空隙部分に対して樹脂を流し込む。
図7の右下がりハッチングによって示した部分が、樹脂である。
【0038】
第3工程において、固定側金型を樹脂材料から引き抜く。固定側金型の内部の2つの円弧状柱は、容器ホルダ100の開口部から底部に向かって末広がりとなるように傾斜している。
図7の第3工程の下段図における空隙部分がこの傾斜を表している。この傾斜は、固定側金型を引き抜く際の抜き勾配として作用する。この傾斜は、固定側金型にとっての抜き勾配となるように傾斜しているので、可動側金型を動かしたとしても樹脂材料は可動側金型から離れることはない。したがって可動側金型を移動させることによって引き抜いてもよい。
【0039】
第4工程において、可動側金型を樹脂材料から引き抜く。可動側金型の2つの円弧状柱は、容器ホルダ100の底部から開口部に向かって末広がりとなるように傾斜している。
図7の第4工程の上段図における柱の側面がこの傾斜を表している。この傾斜は、可動側金型を引き抜く際の抜き勾配として作用する。
【0040】
以上の工程によって、
図3~
図4で説明した容器ホルダ100を、射出成型によって製造することができる。テーブルカバー200を射出成型によって製造するのであれば、テーブルカバー200と容器ホルダ100を一体成型することもできる。
【0041】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係る容器ホルダ100は、サンプル容器15を挿入する孔を有し、孔の内壁は、開口部から底部に向かって孔が広がる第1壁部と、底部から開口部に向かって孔が広がる第2壁部とを有する。これにより、固定側金型と可動側金型それぞれの抜き勾配を確保するとともに、サンプル容器15を孔の上部と下部の2点によって支持して傾かないようにすることができる。
【0042】
<実施の形態2>
図8は、本発明の実施形態2に係る容器ホルダ100の斜視図である。比較のため実施形態1の形状を併記した。実施形態1においては、孔が底部から開口部に向かって次第に広がるように傾斜した内壁(
図3のAA断面)を2ペア有し、孔が開口部から底部に向かって末広がるように傾斜した内壁(
図3のBB断面)を2ペア有する形状を説明した。
図8右に示すように、AA断面の形状とBB断面の形状は、それぞれ1ペアのみであってもよい。この場合であっても、それぞれ容器ホルダ100の底部と上部においてサンプル容器15を支持することができるので、実施形態1と同様の効果を発揮する。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0043】
図9は、本実施形態2に係る容器ホルダ100の上面形状を示す模式図である。形状の特徴が分かりやすいように、特徴部分をやや強調して記載した。容器ホルダ100の上面は、全体としては円形だが(第1部分)、その円周上において、円の中心から外側へ向けて突出した2つの部分(第2部分と第3部分)を有する。第1部分、第2部分、第3部分はそれぞれ円弧である。第1部分は、
図4のBB断面の上部においてサンプル容器15を支持する部分である。第2部分の形状と第3部分の形状は、互いに異なる。具体的には、第2部分の半径は第3部分の半径よりも小さい。第2部分の中心角と第3部分の中心角は同じであってもよいし異なっていてもよい。
図9においては同じ中心角を有する例を示した。
【0044】
図9のように、容器ホルダ100の開口部が、互いに径が異なる円弧によって形成された2つの突出部分(第2部分と第3部分)を有する場合であっても、容器ホルダ100の上部において
図4のBB断面図のようにサンプル容器15を支持する箇所があれば、実施形態1と同様の効果を発揮できる。さらに第2部分と第3部分は、以下に説明する効果を有する。
【0045】
図10は、サンプル容器15の形状例を示す図である。
図10左は斜視図、
図10右は正面図である。サンプル容器15は、正面に向かって左の側壁に突起151を有し、右の側壁に突起152を有する。さらに正面にバーコード153を有する。突起152は突起151よりも大きい。
【0046】
バーコードリーダがバーコード153を読み取るためには、バーコード153を所定の方角へ向けて、サンプル容器15を容器ホルダ100へ挿入する必要がある。突起151は
図9における第2部分よりもやや小径に形成し、突起152は
図9における第2部分よりも大径かつ第3部分よりもやや小径に形成する。これによりサンプル容器15は、
図9の第2部分と突起151がフィットするとともに第3部分と突起152がフィットする向きにしか、挿入することができない。したがってバーコード153の向きを容易に合わせることができる。
【0047】
<実施の形態3>
図11は、本発明の実施形態3に係る容器ホルダ100の斜視図である。比較のため実施形態1の形状を併記した。本実施形態3においては、容器ホルダ100の上面の開口形状が実施形態1~2とは異なる。その他の構成は実施形態1~2と同様である。
【0048】
図12は、本実施形態3に係る容器ホルダ100の上面形状を示す模式図である。形状の特徴が分かりやすいように、特徴部分をやや強調して記載した。
図12において、第2部分の中心角は第3部分の中心角よりも小さい。第2部分の半径と第3部分の半径は同じであってもよいし異なっていてもよい。
図12においては同じ半径を有する例を示した。
【0049】
図12のように、容器ホルダ100の開口部が、互いに中心角が異なる円弧によって形成された2つの突出部分(第2部分と第3部分)を有する場合であっても、容器ホルダ100の上部において
図4のBB断面図のようにサンプル容器15を支持する箇所があれば、実施形態1と同様の効果を発揮できる。
【0050】
図10のサンプル容器15を本実施形態3に係る容器ホルダ100が保持することを考える。突起151は
図12における第2部分よりもやや小径に形成し、突起152は
図12における第2部分よりも大径かつ第3部分よりもやや小径に形成する。これにより本実施形態3においても、
図10のような突起151と152を有するサンプル容器15を、規定の向きにおいてのみ容器ホルダ100へ挿入することができる。
【0051】
<実施の形態4>
図13は、本発明の実施形態4に係る容器ホルダ100の上面形状を示す模式図である。形状の特徴が分かりやすいように、特徴部分をやや強調して記載した。本実施形態3においては、容器ホルダ100の上面の開口形状が実施形態2~3とは異なる。その他の構成は実施形態1~3と同様である。
【0052】
図13において、第2部分と第3部分は、同じ中心角と同じ半径を有する円弧によって形成されている。したがって第2部分は、開口部の中心を回転中心として第3部分を回転させた形状を有する。第2部分と第3部分は、必ずしも開口部の中心に向かって対向するように配置しなくともよい。例えば
図13においては、第3部分を180°以内の角度で回転させると、第2部分と重なるように構成されている。
【0053】
図13のように、容器ホルダ100の開口部が、互いに対向していない円弧によって形成された2つの突出部分(第2部分と第3部分)を有する場合であっても、容器ホルダ100の上部において
図4のBB断面図のようにサンプル容器15を支持する箇所があれば、実施形態1と同様の効果を発揮できる。さらに、サンプル容器15が備える突起151と152の間の角度を、第2部分と第3部分との間の角度と同じにすることにより、サンプル容器15を挿入する向きを指定することもできる。
【0054】
<実施の形態5>
図14は、本発明の実施形態5に係る容器ホルダ100の形状例である。容器ホルダ100は
図14に示すように、サンプル容器15を収容する孔を有する筒部分と、平板部分とを接続した形状にしてもよい。この場合は平板部分を例えばテーブルカバー200上に載置することによって容器ホルダ100を任意の場所に設置できる。
【0055】
図15は、本発明の実施形態5に係る容器ホルダ100の別形状例である。容器ホルダ100は
図15に示すように、試験管立てのような形状にしてもよい。試験管立ての底面を例えばテーブルカバー200上に載置することによって容器ホルダ100を任意の場所に設置できる。
【0056】
<本発明の変形例について>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0057】
以上の実施形態において、
図14や
図15のようにサンプル容器15を挿入する孔を複数有する場合、各孔の開口部の形状は同一でなくともよく、各実施形態における開口部形状をそれぞれ用いることもできる。
【0058】
以上の実施形態において、容器ホルダ100やテーブルカバー200の材料として樹脂を例示したが、固定側金型と可動側金型を用いた射出成型によって製造することができるのであれば、その他の材料を用いてもよい。
【0059】
以上の実施形態において、容器ホルダ100が備える構成は、搬送容器90においても備えることができる。すなわち、搬送容器90がサンプル容器15を保持する際に、容器ホルダ100と同様の孔を搬送容器90に設け、孔の上部と下部においてサンプル容器15を支持するとともに抜き勾配を確保するように、搬送容器90を構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1:自動分析装置
15:サンプル容器
151:突起
152:突起
153:バーコード
100:容器ホルダ
200:テーブルカバー