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特許7493720適応能力評価装置、適応能力評価方法及び適応能力評価プログラム
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  • 特許-適応能力評価装置、適応能力評価方法及び適応能力評価プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】適応能力評価装置、適応能力評価方法及び適応能力評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/06 20060101AFI20240527BHJP
   G06F 3/04815 20220101ALI20240527BHJP
【FI】
A63B71/06 M
G06F3/04815
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020194538
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083221
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊勢崎 隆司
(72)【発明者】
【氏名】森 健策
(72)【発明者】
【氏名】小田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】大山 慎太郎
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/065461(WO,A1)
【文献】特開2008-220400(JP,A)
【文献】特開2019-054900(JP,A)
【文献】特開2012-247991(JP,A)
【文献】特開2009-297240(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0121460(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/00 -71/16
A63B 69/00 -69/40
A63F 9/24
A63F 13/00 -13/98
G06F 3/01
G06F 3/048- 3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが目標とする運動を模倣する能力を評価する適応能力評価装置であって、
前記目標とする運動をユーザに提示する目標運動提示部と、
前記目標とする運動を行った実行者についての3次元位置情報を保持する目標運動情報保持部と、
前記ユーザが前記目標とする運動を所定の回数模倣する際、前記模倣する毎に前記ユーザについての3次元位置データを計測する目標運動計測部と、
前記3次元位置情報と前記3次元位置データそれぞれとの類似性を算出する類似性計算部と、
前記類似性に対して曲線近似を行う曲線近似部と、
前記曲線近似した曲線のパラメータに基づいて、前記ユーザが前記目標とする運動を模倣しようとする運動模倣フェーズと、前記ユーザが前記目標とする運動を最適化しようとするユーザ最適化フェーズとの切り替えタイミングを抽出するフェーズ切替タイミング抽出部と、
前記運動模倣フェーズにおける前記類似性に基づいて運動模倣能力評価値を算出する適応能力計算部と、
を備える、適応能力評価装置。
【請求項2】
前記類似性は、前記3次元位置情報及び前記3次元位置データのコサイン類似度である、請求項1に記載の適応能力評価装置。
【請求項3】
前記類似性を目的変数とし、前記目的変数と、前記所定の数までの正の整数を説明変数とした関数との間の誤差を最小化するような前記関数を算出する、
請求項1又は2に記載の適応能力評価装置。
【請求項4】
前記所定の回数がN回であるとき、前記説明変数をp=1,...,Nと表し、前記関数をf(p)と表し、前記類似性をREと表し、前記関数は、α、β、δ、γを前記パラメータとする式
【数1】
で表され、ここで、|p-δ|は、p-δの絶対値であり、α<0且つδは、[1,N]の範囲内であり、前記誤差は、
【数2】
で表される、請求項3に記載の適応能力評価装置。
【請求項5】
前記δは、前記運動模倣フェーズと前記ユーザ最適化フェーズの切り替えタイミングである、請求項4に記載の適応能力評価装置。
【請求項6】
前記運動模倣能力評価値は、前記運動模倣フェーズにおける前記類似性の平均値である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の適応能力評価装置。
【請求項7】
適応能力評価装置のプロセッサが実行し、ユーザが目標とする運動を模倣する能力を評価する適応能力評価方法であって、
前記目標とする運動をユーザに提示することと、
前記目標とする運動を行った実行者についての3次元位置情報を保持することと、
前記ユーザが前記目標とする運動を所定の回数模倣する際、前記模倣する毎に前記ユーザについての3次元位置データを計測することと、
前記3次元位置情報と前記3次元位置データそれぞれとの類似性を算出することと、
前記類似性に対して曲線近似を行うことと、
前記近似された曲線のパラメータに基づいて、前記ユーザが前記目標とする運動を模倣しようとする運動模倣フェーズと、前記ユーザが前記目標とする運動を最適化しようとするユーザ最適化フェーズとの切り替えタイミングを抽出することと、
前記運動模倣フェーズにおける前記類似性に基づいて運動模倣能力評価値を算出することと、
を備える、適応能力評価方法。
【請求項8】
コンピュータを請求項1乃至6のいずれか1項に記載の適応能力評価装置とて機能させる適応能力評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、適応能力評価装置、適応能力評価方法及び適応能力評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
目標とする運動を視覚教示し、ユーザの脳内にて運動イメージを誘発することで効率的にユーザに目標運動を実施させ、目標とする運動の成功率を上げるアプローチがある。
【0003】
教示した運動に対して模倣する能力を評価する試みとして、目標運動と実際の運動との類似性について観察を通じて主観評価する取り組みがある(非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】知的障害を伴う自閉症生徒に対する動作模倣に着目した運動指導の方略:授業実践と評価の分析から」、加藤琢也、安井友康、北海道教育大学紀要、教育科学編、64(1)、pp. 71-79、 2013年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1は、視覚教示された運動をユーザが模倣する能力を正しく評価する手法が未検討である。
【0006】
この発明の課題は、視覚教示された運動をユーザが模倣する能力を正しく評価することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明のユーザが目標とする運動を模倣する能力を評価する適応能力評価装置は、前記目標とする運動をユーザに提示する目標運動提示部と、前記目標とする運動を行った実行者についての3次元位置情報を保持する目標運動情報保持部と、前記ユーザが前記目標とする運動を所定の回数模倣する際、前記模倣する毎に前記ユーザについての3次元位置データを計測する目標運動計測部と、前記3次元位置情報と前記3次元位置データそれぞれとの類似性を算出する類似性計算部と、前記類似性に対して曲線近似を行う曲線近似部と、前記曲線近似した曲線のパラメータに基づいて、前記ユーザが前記目標とする運動を模倣しようとする運動模倣フェーズと、前記ユーザが前記目標とする運動を最適化しようとするユーザ最適化フェーズとの切り替えタイミングを抽出するフェーズ切替タイミング抽出部と、前記運動模倣フェーズにおける前記類似性に基づいて運動模倣能力評価値を算出する適応能力計算部と、を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の一態様によれば、視覚教示された運動をユーザが模倣する能力を正しく評価することができる適応能力評価装置、適応能力評価方法及び適応能力評価プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る適応能力評価装置と、ユーザとの一例を示す模式図である。
図2図2は、適応能力評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、この実施形態に係る適応能力評価装置の機能構成図を示したものである。
図4図4は、本実施形態における適応能力評価装置がユーザの適応能力を評価するための動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、図4中のステップS105をより詳細に説明したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[構成]
図1は、この発明の一実施形態に係る適応能力評価装置10と、模倣動作の試行者であるユーザ20との一例を示す模式図である。
【0011】
適応能力評価装置10は、ユーザ20に目標とする運動を視覚教示するための映像を出力する。以下において、目標とする運動は、落下や飛行等の規則的に移動する任意の移動物体をユーザ20の右手で適切に掴む運動であるとして説明する。また、映像は、例えば、目標とする運動を実行した実行者の一人称視点の映像である。なお、映像は、M回表示される。ここで、Mは、任意の正の整数である。ここで説明する目標とする運動は、単なる一例であって、ユーザ20が実行可能な運動であれば良く、映像も実行者の一人称視点の映像に限られないのは勿論である。
【0012】
適応能力評価装置10はさらに、ユーザ20が目標とする運動を模倣している際のユーザ20の3次元位置データを取得し、解析する。適応能力評価装置10は、例えば、目標とする運動を模倣しているユーザ20の右手の3次元位置データを取得し、解析する。なお、解析方法は、後述する。
【0013】
ユーザ20は、適応能力評価装置10からM回視覚教示された目標とする運動を記憶した上で、当該目標とする運動を所定の回数模倣する。
【0014】
図2は、適応能力評価装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0015】
適応能力評価装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のハードウェアプロセッサ101を有する。そして、このハードウェアプロセッサ101に対し、プログラムメモリ102、データメモリ103、通信インタフェース104及び入出力インタフェース105が、バス106を介して接続されている。
【0016】
プログラムメモリ102は、記憶媒体として、非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込み及び読出しが可能な不揮発性メモリとROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて使用することができる。プログラムメモリ102は、各種処理を実行するために必要なプログラムを格納している。すなわち、後述する機能構成の各部における計算機能部は、いずれも、プログラムメモリ102に格納されたプログラムを上記プロセッサ101により読み出して実行することにより実現され得る。なお、これらの処理機能部の一部または全部は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(field-programmable gate array)、またはGPU(Graphics Processing Unit)などの集積回路を含む、他の多様な形式によって実現されても良い。
【0017】
データメモリ103は、有形のコンピュータ可読記憶媒体として、例えば、上記の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとを組み合わせて使用したストレージである。データメモリ103は、プロセッサ101がプログラムを実行して各種処理を行う過程で取得及び生成されたデータを記憶するために用いられる。すなわち、データメモリ103には、各種処理が行われる過程で、適宜、各種データを記憶するための領域が確保される。
【0018】
通信インタフェース104は、例えば一つ以上の有線または無線の通信モジュールを含むことができる。例えば、通信インタフェース104は、Wi-Fiアクセスポイントや携帯電話基地局と無線接続する無線通信モジュールを含む。さらに通信インタフェース104は、近距離無線技術を利用して外部装置と無線接続するための無線通信モジュールを含むこともできる。
【0019】
入出力インタフェース105は、ユーザインタフェース装置107とのインタフェースである。なお、図2では、「ユーザインタフェース装置」を「ユーザIF装置」と記載している。
【0020】
ユーザインタフェース装置107は、入力装置1071及び出力装置1072を含む。入力装置1071は、例えば、出力装置1072である表示デバイスの表示画面上に配置された、静電方式又は圧力方式を採用した入力検知シートであり、ユーザのタッチ位置を入出力インタフェース105を介してプロセッサ101に出力する。出力装置1072は、例えば液晶、有機EL(Electro Luminescence)、等を使用した表示デバイスであり、入出力インタフェース105から入力された信号に応じた画像及びメッセージを表示する。
【0021】
センサ108は、ユーザ20が目標とする運動を模倣する際にユーザ20の3次元位置データを計測することが可能なセンサである。センサ108は、例えば、距離センサ、加速度センサ等、ユーザ20の運動に対するユーザ20の3次元位置データを計測可能なセンサであれば良い。例えば、ユーザ20の右腕等に加速度センサを張り付け、ユーザ20の右腕の動きを加速度センサによって検出することにより、右腕の動きについての3次元位置データを計測することができる。なお、センサ108は、適応能力評価装置10内に配置されても良いし、適応能力評価装置10とは別個の装置として配置されても良い。また、センサ108は、1つ又は複数のカメラに置き換え可能である。すなわち、1つ又は複数のカメラにより、ユーザ20が目標とする運動を模倣する際のユーザ20についての3次元位置データを計測可能であれば、センサ108は、1つ又は複数のカメラに置き換え可能である。その他、センサ108は、ユーザ20が目標とする運動を模倣する際のユーザ20についての3次元位置データを計測可能な装置であれば良く、上述した例に限定されないのは勿論である。
【0022】
図3は、この実施形態に係る適応能力評価装置10の機能構成図を示したものである。
【0023】
適応能力評価装置10は、目標運動提示部301と、目標運動情報保持部302と、目標運動実行制御部303と、目標運動計測部304と、類似性計算部305と、曲線近似部306と、フェーズ切替タイミング抽出部307と、適応能力計算部308と、を備える。
【0024】
目標運動提示部301は、出力装置1072を介して、ユーザ20に目標とする運動を視覚教示するための映像を提示する。目標とする運動は、上述したように、規則的に移動する任意の移動物体を右手で適切に掴む運動であり、視覚教示するための映像は、当該移動飛行物体を右手で適切に掴めた一人称視点の映像である。
【0025】
目標運動情報保持部302は、目標運動提示部301が提示する、ユーザ20に目標とする運動を視覚教示するための映像を保持する。さらに目標運動情報保持部302は、目標とする運動を視覚教示するための映像を撮影した際に取得した、当該運動を実行した実行者の3次元位置情報を保持している。目標運動情報保持部302は、例えば、データメモリ103に構成され得る。3次元位置情報は、例えば、実行者の右腕についての、以下の式1で表現される3次元位置情報
【0026】
【数1】
【0027】
を保持している。
【0028】
【数2】
【0029】
ここで、x、y、zは右手のz、y、z座標成分であり、例えば、
【0030】
【数3】
【0031】
は、視覚教示した右手の動きの1回目に計測におけるx座標成分である。すなわち、式1で表される3次元位置情報は、実行者が目標とする運動を実行した際の実行者の右腕の動きを時系列でn回計測していることを示す。ここで、nは、任意の正の整数である。また、3次元位置情報の座標の原点は、M回目標とする運動を視覚教示後、ユーザ20が目標とする運動を模倣する際に適応能力評価装置10がユーザ20が目標とする運動を模倣する際に取得する3次元位置データの座標の原点と同一になるように設定されていれば、任意の場所で良い。さらに、式1のx、y、z座標成分も、ユーザ20が目標とする運動を模倣する際に取得する3次元位置データと同一の場所であれば任意の場所で良い。
【0032】
目標運動実行制御部303は、ユーザ20が目標とする運動を模倣することができるよう、目標とする運動を制御する。例えば、目標運動実行制御部303は、目標運動提示部301で視覚教示した目標とする運動と同じ運動をユーザ20が行えるように、移動物体の挙動を制御する。すなわち、目標運動実行制御部303は、ユーザ20が目標とする運動を所定の回数模倣する際に、同一の条件であれば、その所定の回数の模倣において目標運動提示部301を介して視覚教示した目標とする運動と同じ規則的な動きを移動物体が行うように制御する。なお、目標とする運動が例えば、ユーザ20自身の体を動かすことで実行可能である運動、すなわち移動物体等を使用しない運動である場合、目標運動実行制御部303は、省略可能である。
【0033】
目標運動計測部304は、センサ108によって計測した、ユーザ20が目標とする運動を模倣する際のユーザ20の3次元位置データを取得する。目標運動計測部304は、目標運動実行制御部303から3次元位置情報の計測タイミングを取得する。そして、目標運動計測部304は、ユーザ20が模倣を行う毎に、当該タイミングでユーザ20についての右腕の3次元位置データをn回計測する。また、目標運動計測部304は、このn回の計測を所定の回数、例えばN回実施する。ここで、Nは、2以上の正の整数である。
【0034】
類似性計算部305は、目標運動情報保持部302から実行者についての3次元位置情報と、目標運動計測部304からユーザ20についてのN回分の3次元位置データと、を取得する。そして、類似性計算部305は、3次元位置情報及び3次元位置データに基づいて類似性REを算出する。
【0035】
曲線近似部306は、類似性計算部305で算出された類似性REに対して説明変数pの関数f(p)の各係数α、β、γ、δを求める曲線近似を行う。なお、この関数f(p)の具体的な説明は後述する。
【0036】
フェーズ切替タイミング抽出部307は、関数f(p)で求められた各係数α,β,γ,δのうちのδを運動模倣フェーズとユーザ最適化フェーズの切り替えタイミングとして扱う。ここで、ユーザ20が目標とする運動を複数回模倣する場合、ユーザ20の動作は、運動模倣フェーズとユーザ最適化フェーズの2つのフェーズを含む。運動模倣フェーズは、最初の模倣からある回数までの、ユーザ20が目標とする運動を忠実に模倣しようとするフェーズである。ユーザ最適化フェーズは、ユーザ20が独自に目標とする運動を最適化しようとするフェーズである。そして、δは、この2つのフェーズの切り替えタイミングとして扱われる。
【0037】
適応能力計算部308は、運動模倣フェーズである1回目からδ回目までの類似性REを運動模倣能力として取り扱う。そして適応能力計算部308は、運動模倣能力の平均値を運動模倣能力評価値として算出する。
【0038】
また、適応能力評価装置10は、出力装置1072を介して、ユーザ20又は図示していない適応能力評価装置10の管理者に適応能力計算部308で算出された運動模倣能力評価値を提示することが可能である。
【0039】
[動作]
図4は、本実施形態における適応能力評価装置10がユーザ20の適応能力を評価するための動作の一例を示すフローチャートである。適応能力評価装置10のプロセッサ101がプログラムメモリ102に格納された適応能力評価プログラムを読み出して実行することにより、このフローチャートの動作が実現される。このフローチャートは、ユーザ20又は適応能力評価装置10の管理者によってユーザ20の運動に対する適応能力を評価したい旨の指示を適応能力評価装置10が受信することにより開始する。
【0040】
まず、目標運動提示部301は、ユーザ20に目標とする運動を視覚教示するための映像を出力する(ステップS101)。すなわち、目標運動提示部301とは、目標運動情報保持部302に保存されている目標とする運動についての情報を読み出し、出力装置1072を介して、ユーザ20に目標とする運動を視覚教示するための映像を出力する。
【0041】
目標運動提示部301は、映像がM回出力されたかどうかを判定する(ステップS102)。映像がM回出力されていない場合、目標運動提示部301は、ステップS101に戻り、再度目標とする運動を視覚教示するための映像を出力する。プロセッサ101は、映像がM回出力されたと判定した場合、ステップS103の処理に進む。
【0042】
目標運動提示部301によって映像がM回出力されたと判定した場合、目標運動実行制御部303は、ユーザ20が目標とする運動を模倣できるように、移動物体が視覚教示における規則的な移動と同一の挙動になるように制御し、目標運動計測部304は、ユーザ20の3次元位置データを取得する(ステップS103)。例えば、目標運動実行制御部303は、出力装置1072を介して、ユーザ20に目標とする運動を開始することを報知した後、移動物体の挙動を制御する。或いは、目標運動実行制御部303は、映像の出力が終了したことをユーザ20又は適応能力評価装置10の管理者に報知し、ユーザ20が目標運動を模倣する準備ができた段階でユーザ20又は管理者からの入力装置1071を介した開始指示に応じて、ユーザが目標とする運動を模倣できるように移動物体の挙動を制御する。
【0043】
さらに、目標運動計測部304は、例えば、ユーザ20が目標とする運動を模倣している際にユーザ20の右腕の3次元位置データをn回計測する。3次元位置データHは、以下の式2のように表される。
【0044】
【数4】
【0045】
ここで、
【0046】
【数5】
【0047】
は、ユーザ20によるi回目の目標とする運動の試行におけるx座標成分の1回目の計測値である。上記式2から理解できるように、目標運動計測部304は、各回の模倣において、目標運動情報保持部302に保持された目標とする運動と同じ回数、すなわちユーザ20の動きについての3次元位置データをn回計測する。
【0048】
目標運動計測部304は、ユーザ20の3次元位置データをN回計測したどうかを判定する(ステップS104)。ユーザ20の3次元位置データをN回計測していないと判定する場合、目標運動計測部304は、ステップS103に戻る。
【0049】
目標運動計測部304によってユーザ20の3次元位置データをN回計測したと判定された場合、適応能力評価装置10は、目標運動情報保持部302に保持された3次元位置情報及び目標運動計測部304によって計測された3次元位置データに基づいて、運動模倣能力評価値を算出する(ステップS105)。
【0050】
図5は、図4のステップS105をより詳細に説明したフローチャートである。
【0051】
類似性計算部305は、目標運動情報保持部302から3次元位置情報と、目標運動計測部304で計測されたN回分のユーザ20の動きについての3次元位置データを取得する(ステップS201)。すなわち、類似性計算部305は、式1で示されたユーザ20に視覚教示した目標とする運動の実行者の3次元位置情報及び目標運動計測部304により計測されたユーザ20の3次元位置データを取得する。
【0052】
類似性計算部305は、取得した3次元位置情報と3次元位置データに基づいて両者の類似性REを算出する(ステップS202)。類似性REは、以下の式3のように算出される。
【0053】
【数6】
【0054】
曲線近似部306は、類似性計算部305で算出された類似性REに対して説明変数p=1,...,Nとする関数f(p)を算出する(ステップS203)。関数f(p)は、α、β、γ、δをパラメータとする以下の式4で表される。
【0055】
【数7】
【0056】
具体的には、p=iの時、REが目的変数となり、誤差
【0057】
【数8】
【0058】
を最小化するようなパラメータ(α,β,γ,δ)を求める。ユーザ20は、模倣の開始からある試行回数までは目標とする運動を模倣しようとするフェーズである運動模倣フェーズで動作し、その後の試行では、ユーザ独自に運動を最適化するフェーズである運動最適化フェーズで動作する。適応能力評価装置10は、ユーザ20の運動模倣能力を評価するため、運動模倣フェーズの運動情報を抽出して評価する必要がある。ここで、運動模倣フェーズでは、ユーザ20の動作が目標とする運動に近づいていくため、コサイン類似度が上昇する。その後、目標とする運動の試行回数が増加して運動最適化フェーズに移行すると、ユーザ20は、目標とする運動を自分なりに最適化していくことになる。すなわち、目標とする運動を模倣する際に個人差を含むようになるため、一度上昇したコサイン類似度は、目標とする運動の試行回数の増加とともに低下していく。曲線近似部306は、以上で説明されるようなコサイン類似度と試行回数のデータから、運動模倣フェーズの抽出を行うため、曲線近似を行う。曲線近似部306は、曲線が上に凸且つ類似度の上昇と下降特性が異なる曲線であるとして式4にて曲線近似を行う。式4は、上に凸であるためα<0であり、曲線であることからβの指数関数である。δは、上述の制約で表される値、すなわち試行回数である。γは、バイアスである。
【0059】
フェーズ切替タイミング抽出部307は、関数f(p)で求められた(α,β,γ,δ)のうちδを運動模倣フェーズとユーザ最適化フェーズの切り替えタイミングとして扱う(ステップS204)。δが近似曲線の頂点であるため、δ以前を運動模倣フェーズとし、以降を運動最適化フェーズとして取り扱う。δは、上述の制約により1乃至Nのうちいずれかの値になる。そのため、δの値は、ユーザ20の何度目の試行回数であるかを表すことになるため、運動模倣フェーズとユーザ最適化フェーズの切り替えタイミングとして扱うことが可能である。
【0060】
適応能力計算部308は、1回目からδ回目までの類似性を運動模倣能力として扱う。すなわち、i=[1,δ]の類似性
【0061】
【数9】
【0062】
を運動模倣能力として扱う。1回目の試行からδ回目までの試行は、運動模倣フェーズとなる。そのため、これらの試行での類似性REは、ユーザ20の目標とする運動を模倣する能力である運動模倣能力を示すことになる。そして、適応能力計算部308これらの1回目からδ回目までの類似性の平均値
【0063】
【数10】
【0064】
を運動模倣能力評価値として算出する(ステップS205)。
【0065】
[作用効果]
上記実施形態によれば、目標とする運動に対して模倣しようとするフェーズと、ユーザ20独自に目標とする運動を最適化しようとするフェーズの切り分けが可能になる。これにより、より正しくユーザ20が目標とする運動を模倣する能力について評価することができる。
【0066】
[他の実施形態]
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、目標とする運動を試行する際のユーザ20の右腕の3次元位置データを取得と説明した。しかしながら、ユーザ20の全身の3次元位置データを取得しても良い。
【0067】
また、前記実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウェア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウェア手段(実行プログラムのみならずテーブル、データ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウェア手段を構築し、このソフトウェア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書で言う記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部或いはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【0068】
要するに、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0069】
10…適応能力評価装置
20…ユーザ
101…プロセッサ
102…プログラムメモリ
103…データメモリ
104…通信インタフェース
105…入出力インタフェース
106…バス
107…ユーザインタフェース装置
1071…入力装置
1072…出力装置
108…センサ
301…目標運動提示部
302…目標運動情報保持部
303…目標運動実行制御部
304…目標運動計測部
305…類似性計算部
306…曲線近似部
307…フェーズ切替タイミング抽出部
308…適応能力計算部
図1
図2
図3
図4
図5