IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

特許7493842腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法
<>
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図1
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図2
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図3
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図4
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図5
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図6
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図7
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図8
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図9
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図10
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図11
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図12
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図13
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図14
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図15
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図16
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図17
  • 特許-腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20240527BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240527BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A61K33/00
A61K9/16
A61K47/12
A61K47/02
A61P13/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023001593
(22)【出願日】2023-01-10
(62)【分割の表示】P 2020000601の分割
【原出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2023040170
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2017145030
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業センター・オブ・イノベーションプログラム「人間力活性化によるスーパー日本人の育成拠点」に係る委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】小林 光
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠輝
(72)【発明者】
【氏名】今村 亮一
(72)【発明者】
【氏名】野々村 祝夫
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104848(JP,A)
【文献】腎と透析,2017年06月,Vol.82, No.6,pp.827-832
【文献】ZHU, Wan-Jun, et al.,Intake of water with high levels of dissolved hydrogen (H2) suppresses ischaemia-induced cardio-rena,Nephrology Dialysis Transplantation,2011年,Vol.26,p.2112-2118, ISSN:1460-2385,Abstract、第2113頁左欄第1行~22行、Table 1、Figure 1~3
【文献】LI, Jie, et al.,Hydrogen-Rich Saline Promotes the Recovery of Renal Function after Ischemia/Reperfusion Insury in Ra,Frontiers in Pharmacology,2016年,Article No.106,ISSN:1663-9812,Abstract、第2頁右欄第1行~45行、Figure 1、2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/00-33/44
A61P 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素発生能を有するシリコン微細粒子、該シリコン微細粒子の凝集体、又はシリコンの結晶粒を含む、腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法であって、
前記シリコン微細粒子、前記凝集体、又は前記結晶粒と過酸化水素水とを接触させる過酸化水素水処理工程と、
前記過酸化水素水処理工程の後に、前記シリコン微細粒子、前記凝集体、又は前記結晶粒を、生理学的に許容可能な母材中に含有させるときに、純水中で崩壊させたときの水含有液のpH値を4以上7未満とするpH値調整剤を含ませるpH値調整剤含有工程と、を含む、
腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記過酸化水素水処理工程の前に、エタノール溶液中でシリコン粒子を粉砕することによって前記シリコン微細粒子、前記凝集体、又は前記結晶粒を形成する工程を含む、
請求項1に記載の腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【請求項3】
前記疾患が、腎線維症、急性腎障害、腎虚血再灌流傷害、薬剤性腎障害、及び慢性腎臓病の群から選択される少なくとも一種である、
請求項1又は請求項2に記載の腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【請求項4】
前記薬剤が、経口摂取に適するように調剤されている、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【請求項5】
前記シリコン微細粒子は、腸管の細胞膜及び細胞間を通過しない前記シリコン微細粒子であり、
前記凝集体は、前記細胞膜及び前記細胞間を通過しない前記凝集体であり、
前記結晶粒は、前記細胞膜及び前記細胞間を通過しない前記結晶粒である、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【請求項6】
純水中で崩壊させたときの水含有液のpH値を7超9未満とするpH値調整剤をさらに含む、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【請求項7】
重炭酸塩を含有する腸溶剤である、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【請求項8】
投与方法が、前記シリコン微細粒子、前記凝集体、又は前記結晶粒と、重炭酸塩とを含有する腸溶剤の経口投与である、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【請求項9】
徐放性を有する、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【請求項10】
前記シリコン微細粒子が、実質的に結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子を含む、
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【請求項11】
ヒドロキシルラジカルと、腸内及び/又は血中の水素とを反応させることによって、前記腎臓に対する酸化ストレスの低減又は消滅させる、
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の腎臓の疾患の予防のための薬剤の原体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤、特に腎疾患のための薬剤、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドローム(生活習慣病)と関連性があるとも指摘される、腎臓疾患に苦しむ患者数は年々増加している。わが国の場合は、20歳以上の成人のうち8人に1人が慢性腎臓病であるとも言われている。例えば、腎機能の障害が慢性的に持続し増悪すると、血液中に有害物質が蓄積し、意識障害等を含めた尿毒症が引き起こされる。また腎機能の低下は高血圧症や高リン血症を惹起し、脳梗塞、心筋梗塞等の重篤な心血管障害を引き起こす危険性を高めると指摘されている。
【0003】
上述の問題を解決するために、腎臓に代わって毒性物質を体外へ除去するための臓器代用機器又は治療薬を実現すること、あるいは腎機能を低下させないための予防医療は、喫緊の課題であると言える。臓器代用機器の代表的な例は、血液透析による有毒物質の除去を行う人工腎臓である。しかしながら、血液透析型の人工腎臓は、高度かつ特殊な装置であるために専門技術者を必要とするだけでなく、患者に対する精神的、肉体的負荷が大きい。加えて、上述のように腎疾患の患者数が増えることは、皆保険制度を採用する国にとっては医療経済上の負担も莫大なものとなっていくことが容易に想像される。
【0004】
一方、腎疾患のための治療薬については、上述の血液透析型の人工腎臓に代わる手段として、経口的な服用が可能で、腎機能障害を治療することができる経口吸着剤を採用する技術が開示されている。(特許文献1)
【0005】
ところで、本願発明者らの一部は、これまで、活性酸素であるスーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素の中で生理機能を持たなく、最も酸化力の強いヒドロキシルラジカルを体内に存在させないための研究を進めてきた。
【0006】
体内で生成したヒドロキシルラジカルを消滅させる物質の一例として水素が知られている。水素がヒドロキシルラジカルと反応して生成するのは水であり、生体に有害な物質を生成しない。そこで、体内のヒドロキシルラジカルを消滅させる水素を含有する、水素水の生成装置が提案されている(例えば特許文献2)。
【0007】
ところが、水素水中の水素は空気中に拡散しやすいため、ヒドロキシルラジカルを消滅するために必要な量の水素を体内に取り込むためには、水素水の溶存水素濃度を高く保つ必要がある。従って、水素水を摂取するという方法では、体内のヒドロキシルラジカルと反応させるために十分な量の水素を体内に取り込むことは容易ではない。そこで、水素を体内に取り込み易くするために、水素と界面活性剤とを含む水素含有組成物が提案されている(特許文献3)。
【0008】
なお、本願発明者らの一部は、シリコンナノ粒子による水の分解と水素濃度について研究し、その結果を開示している(非特許文献1、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-006843号公報
【文献】特許第5514140号公報
【文献】特開2015-113331号公報
【文献】特開2016-155118号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】松田真輔ほか、シリコンナノ粒子による水の分解と水素濃度、第62回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集、2015、11a-A27-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
腎疾患に関して言えば、特許文献1の経口吸着剤を採用するとしても、表面改質球状活性炭を調製するために、熱硬化性樹脂を準備すること、及び熱硬化性樹脂を炭素源として調製した球状活性炭を更に酸化処理及び還元処理する工程が必要となる。また、治療目的に内服する場合、相当量の内服が必要となるため患者の精神的負担も大きくなり、アドヒアランスの低下、内服完遂率の低下が容易に想像される。さらに、他の薬剤と同時経口摂取した場合、これら薬剤の効果を吸着してしまう可能性が高いため、他剤と摂取時間を異ならせる必要があるため、これも前述の完遂率低下を促進させる。従って、腎疾患のための治療薬又は予防薬の製造工程の簡便化、低コスト化、高機能化、及び/又はより確度の高い安全性の実現には、未だ途半ばであると言える。また、特許文献3において開示される方法では、その機能を発揮するのに足る水素を体内に与えることは非常に困難である。
【0012】
また、経口的な服用が可能な薬剤として、「経口吸着剤」とは異なる視点からの腎機能の予防又は治療への取り組みについては、発明者らが知る限りにおいてこれまで殆ど開示されていない。
【0013】
一方、体内の余剰のヒドロキシルラジカルの低減又は消滅を目的として開発されている水素水に関して言えば、ヒドロキシルラジカルを消滅させるための水素を体内に取り込むために水素水を採用しようとすると、たとえ高濃度の水素水を摂取したとしても、1リットルの水素水中に含まれる水素量は室温の飽和状態でも気体換算で18ml(ミリリットル)にすぎず、しかも飽和水素濃度1.6ppmは空気中で速やかに減少し、その上、胃等の上部消化管において水素水中の水素の多くがガス化してしまう。そのため、必ずしも十分な量の水素が体内に取り込まれず、呑気症状(いわゆる「げっぷ」)を引き起こす問題がある。また、界面活性剤によって水素を内包させた水素含有組成物を摂取する場合、十分な量の水素を体内に取り込むためには多くの水素含有組成物の摂取が必要となる。加えて、胃内において水素が放出されてしまうという上述の問題も生じ得る。さらに、たとえ水素が体内において取り込まれて、各器官に輸送されたとしても、1時間程度経過すれば、該器官内の水素濃度は、水素水の摂取前の濃度に戻ってしまう。従って、ヒドロキシルラジカルは呼吸及び/又は代謝によって常に生成するため、水素水の摂取による効果は限定的になる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述の技術課題の少なくとも1つを解消し、水素発生能を有するシリコン微細粒子又は該シリコン微細粒子、シリコンの結晶粒(粒径が約1μm~約2μm)の凝集体、又はシリコン微細粒子に相当する表面積を持つシリコン粒(好ましくは、ナノオーダーの空隙を有する多孔質粒)を活用することにより、これまでに採用されてきた手段又は取り組みとは異なる腎疾患の予防又は治療の実現に大いに貢献するものである。
【0015】
本願発明者らは、上述のシリコン微細粒子又はその凝集体、あるいはシリコンの結晶粒は、胃酸のようなpH値が非常に小さい(つまり、強酸性の)水含有液に接触させたとしてもほとんど水素を発生させることがないが、中性(本願においては、pH値が6~7を含む)~アルカリ性の数値範囲のpH値を有する部位又は水含有液に接触させたときには、顕著に水素を発生させ得ることを見出した。それらの事実を踏まえ、本願発明者らは、上述のシリコン微細粒子又はその凝集体、あるいはシリコンの結晶粒が腎疾患の予防又は治療に寄与する可能性を調べるために、様々な実験と分析を重ねた。その結果、腎疾患に対する有意な効果を確認することができた。
【0016】
本願発明者らは、現時点においては、上述のシリコン微細粒子又はその凝集体、あるいはシリコンの結晶粒から生成される水素による体内のヒドロキシルラジカルの低減が、腎疾患に対する予防及び/又は治療に貢献していると考えている。なお、本願における「水含有液」は、水自身及びヒトの体液を含む。
【0017】
ここで、シリコン微細粒子又はシリコンの結晶粒と水分子との反応による水素発生機構は、下記の(化1)式に示されている。しかしながら、上述のとおり、本願発明者らは、この(化1)式に示された反応がpH値の低い(代表的にはpH値が5未満)水含有液との接触の場合は限定的な反応ではあるが、pH値が6以上(特に、6超)の水含有液に接触したときには進行することを見出した。従って、大変興味深いことに、弱酸性であるpH値が6の水含有液であっても、有効に水素を発生させることが可能であることが明らかとなった。さらに調査を進めることにより、水素の発生を促進させるためには、より好適にはpH値が7以上(又は、7超)であり、さらに好適にはpH値が7.4超であり、非常に好適には8超の塩基性(以下、「アルカリ性」ともいう)の水含有液に接触させることが有効であることを見出した。なお、本願においては、腸液の塩基性又は生体適応性の範囲の塩基性の水含有液が、pH値の上限を定める。
【0018】
(化1)Si+2HO→SiO+2H
【0019】
上述の各知見を踏まえ、本願発明者らは、腎疾患に対して上述のシリコン微細粒子又はその凝集体、あるいはシリコンの結晶粒を活用することにより、上述の技術課題の少なくとも一部を解決し得ることを見出した。本発明は上述の視点に基づいて創出された。
【0020】
本発明の1つの薬剤は、水素発生能を有するシリコン微細粒子、該シリコン微細粒子の凝集体、又はシリコンの結晶粒を含む、腎臓の疾患のための薬剤である。
【0021】
この薬剤によれば、生理学的に許容可能な上述のシリコン微細粒子又は該シリコン微細粒子の凝集体(以下、総称して「シリコン微細粒子」ともいう)、シリコンの結晶粒(粒径が約1μm~約2μm)、又は表面積がシリコン微細粒子に相当する表面積を有する1μm以上のシリコン粒から発生する水素が体内のヒドロキシルラジカルの低減に貢献すると考えられる。現時点においては、詳細なメカニズムまでは明らかではないが、そのようなヒドロキシルラジカルの低減が、腎疾患に対する予防及び/又は治療に貢献し得ると考えられる。この薬剤により、具体的な腎疾患の予防、治療、又は改善の効果は確認されている。
【0022】
なお、上述の薬剤が、胃酸のようなpH値が非常に小さい水含有液に接触させたとしてもほとんど水素を発生させないが、中性~アルカリ性の数値範囲のpH値を有する部位又は水含有液に接触させたときには、顕著に水素を発生させ得ることは、腎疾患の予防、治療、又は改善に有意に寄与し得る。
【0023】
また、本発明の1つの薬剤の原体の製造方法は、上述の薬剤の原体の製造方法であって、エタノール溶液中でシリコン粒子を粉砕することによって上述のシリコン微細粒子及び/又は該シリコン微細粒子の凝集体、あるいはシリコンの結晶粒を形成する工程と、該シリコン微細粒子及び/又は該凝集体、あるいはシリコンの結晶粒と過酸化水素水とを接触させる過酸化水素水処理工程と、を備える。
【0024】
この薬剤の原体の製造方法によれば、生理学的に許容可能な上述のシリコン微細粒子、あるいはシリコンの結晶粒(粒径が約1μm~約2μm)から発生する水素が体内のヒドロキシルラジカルの低減に貢献し得る薬剤を製造することができる。現時点においては、詳細なメカニズムまでは明らかではないが、そのようなヒドロキシルラジカルの低減が、腎疾患に対する予防及び/又は治療に貢献し得ると考えられる。
【0025】
なお、上述の薬剤を実際に使用する際には、シリコン微細粒子に相当する表面積を有する、100nm以上(又は100nm超)の多孔質、多結晶、遊離、解砕、分解されない結合剤で造粒された微細粒子、及び多孔質結晶粒の群から選択される少なくとも1種を用いることも、採用し得る一態様である。
【0026】
ところで、本願においては、結晶についての径の大きさが「nmオーダー」になる場合は、「結晶粒(又は結晶粒子)」という表現ではなく、「結晶子」という表現を採用する。一方、結晶についての径の大きさが、「μmオーダー」になる場合は、「結晶粒(又は結晶粒子)」という表現を採用する。また、本願においては、結晶性の有無を問わない表現として、「粒」という表現を採用する。
【0027】
ここで、本願における「シリコン微細粒子」は、平均の結晶子径がnmオーダー、具体的には結晶子径が実質的に1nm以上100nm以下の「シリコンナノ粒子」を含むものである。より狭義には、本願における「シリコン微細粒子」は、平均の結晶子径がナノレベル、具体的には結晶子径が1nm以上50nm以下のシリコンナノ粒子を主たる粒子とする。ここで、本願発明者によれば、主たる結晶子径が1nm以上10nm未満であるシリコンナノ粒子が、採用し得る一態様としての最も微細化を実現した「シリコン微細粒子」である。また、本願においてシリコン微細粒子には、各シリコンナノ粒子が分散している状態のもののみならず、複数のシリコンナノ粒子が自然に集まってμm近い(概ね0.1μm以上)の大きさの凝集体を構成した状態、融着体、及び再分散することのない造粒体が含まれ得る。また、本願における「シリコン微細粒子」には、ポーラスシリコンを含み得る。
【0028】
上述のとおり、本願における「シリコン微細粒子」は、自然な状態において凝集することによってμmレベル(例えば、1μm程度)の径の大きさの凝集体を構成し得る。この「凝集体」及び「結晶粒」と区別するために、本願においては、結合剤の添加や圧縮等により、人為的にシリコン微細粒子を集合させることによって、人間の指によってつまめる程度の大きさの塊状の固体の製剤としたものを「固形製剤」と称する場合がある。本願における「薬剤」は、「固形製剤」を含む。なお、「固形製剤」の代表的な例は、錠剤、塊状を呈さず粉状を呈する顆粒又は散剤である。
【0029】
なお、本願においては、「疾患」という表現は、「疾病」、「疾患」、及び「障害」の意味を含む。また、本願における「生理学的に許容可能な母材(物質又は材料)」は、実質的に毒性がなく、皮膚又は粘膜に接触したとしても副作用又は有害反応を実質的に生じさせない母材(物質又は材料)である。なお、「生理学的」の用語には、「医学的」の意味が含まれる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の1つの薬剤によれば、生理学的に許容可能な上述のシリコン微細粒子から発生する水素が腎疾患に対する予防及び/又は治療に貢献し得る。
【0031】
また、本発明の1つの薬剤の原体の製造方法によれば、生理学的に許容可能な上述のシリコン微細粒子から発生する水素が体内のヒドロキシルラジカルの低減に貢献し得る薬剤を製造することができる。その結果、現腎疾患に対する予防及び/又は治療に貢献し得る薬剤を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】通常飼料(a)と、第1の実施形態の固形製剤(飼料)の写真(b)である。
図2】実施例1~2において発生した水素量を示すグラフである。
図3】(a)第1の実施形態の各シリコン微細粒子と、純水に炭酸水素ナトリウムを溶解させた水溶液とを接触させることによって発生した溶存水素量の時間変化を示すグラフと、(b)第1の実施形態の該シリコン微細粒子の1g当たりの溶存水素量の時間変化を示すグラフである。
図4】第1の実施形態の試料A~Dの水素発生量(ppm)と反応時間(分)との関係を示すグラフである。
図5】6週齢のSDラットに通常飼料又は第1の実施形態の固形製剤(飼料)を8週間摂取させた場合の、血液200μl(マイクロリットル)中の水素濃度(ppb)を示すグラフである。
図6】6週齢のSDラットに通常飼料又は第1の実施形態の固形製剤(飼料)を8週間摂取させた場合の、呼気中の水素濃度(ppb)を示すグラフである。
図7】6週齢のSDラットに通常飼料又は第1の実施形態の固形製剤(飼料)を8週間摂取させた場合の、抗酸化度を測定するBAPテスト(血漿の抗酸化力の評価テスト)の結果を示すグラフである。
図8】5/6腎摘除ラットモデルを用いた、第1の実施形態の固形製剤による予防効果確認のための実施計画(プロトコール)である。
図9図8の実施計画における4週後の腎臓の病理組織像(HE染色)である。図9(a)は通常食を摂取したラットの腎であり、図9(b)は通常食にシリコン粒子を含有させた飼料を摂取したラットの腎である。
図10】5/6腎摘除ラットモデルの観察開始から4週後の、本実施形態と比較例の腎尿細管間質の線維化の状況を示すグラフである。
図11】5/6腎摘除ラットモデルの該モデル作成日と、該モデルを作成し観察開始から4週後の、本実施形態と比較例との、血清クレアチニン値(mg/dl(デシリットル))を示すグラフである。
図12】慢性腎不全に関する予防効果の再現性を確認するための、血清クレアチニン値の結果を示すグラフである。
図13】慢性腎不全に関する予防効果の再現性を確認するための、尿蛋白排泄量の結果を示すグラフである。
図14】急性腎不全に関する予防効果の再現性を確認するための、血清クレアチニン値の結果を示すグラフである。
図15】急性腎不全に関する予防効果の再現性を確認するための、尿蛋白排泄量の結果を示すグラフである。
図16】5/6腎摘除ラットモデルを用いた、第2の実施形態の固形製剤による治療効果確認のための実施計画(プロトコール)である。
図17】慢性腎不全に関する治療効果の再現性を確認するための、血清クレアチニン値の結果を示すグラフである。
図18】慢性腎不全に関する治療効果の再現性を確認するための、尿蛋白排泄量の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0033】
100 固形製剤
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施形態を、添付する図面を参照して詳細に述べる。
【0035】
<第1の実施形態>
本実施形態の固形製剤は、水素の発生能を有するシリコン微細粒子又は該シリコン微細粒子の凝集体(以下、総称して「シリコン微細粒子」ともいう)、あるいはシリコンの結晶粒を含む。以下に、本実施形態の「薬剤」の一例としての、シリコン微細粒子、及び該シリコン微細粒子、あるいは該結晶粒を含む固形製剤について詳述する。加えて、本実施形態の薬剤の製造方法又は該薬剤の原体の製造方法についても詳述する。
【0036】
[1]シリコン微細粒子(又は、シリコンの結晶粒)、固形製剤、並びにそれらの製造方法
本実施形態の固形製剤は、シリコン粒子としての市販の高純度シリコン粒子粉末(代表的には、高純度化学研究所社製、粒度分布<φ5μm(但し、結晶粒径が1μm超のシリコン粒子)、純度99.9%、i型シリコン)をビーズミル法によって微細化した、シリコンナノ粒子を含み得るシリコン微細粒子(以下、代表して、「シリコン微細粒子」ともいう)を用いて製造される。本実施形態においては、エタノール溶液中でシリコン粒子を粉砕することによって該シリコン微細粒子又は該シリコン微細粒子の凝集体を形成する工程が採用される。なお、本実施形態において開示される方法は上述の方法に限定されない。
【0037】
具体的には、ビーズミル装置(アイメックス株式会社製、横型連続式レディーミル(型式、RHM-08)を用いて、高純度シリコン粉末200gを、99.5wt%のエタノール溶液4L(リットル)中に分散させ、φ0.5μmのジルコニア製ビーズ(容量750ml)を加えて4時間、回転数2500rpmで粉砕(一段階粉砕)を行って微細化する。なお、本実施形態においては、要求される粒子の大きさ又は粒度分布等を調整する目的で、適宜、ビーズの大きさ及び/又は種類を変えた粉砕を採用することもできる。従って、本実施形態において開示される装置及び方法は限定されない。
【0038】
本実施形態においては、ビーズミル装置の粉砕室内部に設けられたセパレーションスリットにより、ビーズとシリコン微細粒子を含むエタノール溶液とに分離される。ビーズから分離されたシリコン微細粒子を含むエタノール溶液は、減圧蒸発装置を用いて30℃~35℃に加熱される。その結果、エタノール溶液を蒸発させることによって、シリコン微細粒子及び/又はその凝集体が得られる。
【0039】
上記方法により得た、本実施形態の薬剤の原体としての役割を果たし得るシリコン微細粒子は、主として、結晶子径が1nm以上100nm以下のシリコン微細粒子を含む。より具体的には、シリコン微細粒子をX線回折装置(リガク電機製スマートラボ)によって測定した結果、一例として、次の値が得られた。体積分布においては、モード径が6.6nm、メジアン径が14.0nm、平均結晶子径が20.3nmであった。
【0040】
このシリコン微細粒子を、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて観察したところ、シリコン微細粒子は一部が凝集して、0.5μm程度以下のやや大きな、不定形の凝集体が形成されていた。また、個別のシリコン微細粒子を、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察したところ、主たるシリコン微細粒子は、結晶子径が約2nm以上20nm以下であった。
【0041】
本実施形態においては、その後、ガラス容器中で、過酸化水素水と該シリコン微細粒子とを混合する第1混合工程(以下、「H処理」又は「過酸化水素水処理工程」ともいう)が行われる。本実施形態においては、混合工程における過酸化水素水(本実施形態においては、3.5wt%)の温度は75℃である。また、混合時間は30分である。なお、第1混合工程(過酸化水素水処理工程)において十分に攪拌処理がされることは、シリコン微細粒子と過酸化水素水とが接する機会を増やすため好ましい。また、第1混合工程(過酸化水素水処理工程)における過酸化水素水の温度は、例えば、室温程度であっても本実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。なお、第1混合工程を経たシリコン微細粒子も、本実施形態の薬剤の原体としての役割を果たし得る。
【0042】
過酸化水素水と混合されたシリコン微細粒子を、公知の遠心分離処理装置を用いて、固液分離処理によって過酸化水素水を除くことにより、シリコン微細粒子を得る。その結果、過酸化水素水によって表面が処理されたシリコン微細粒子を得ることができる。ここで、過酸化水素水によって表面が処理されることにより、シリコン微細粒子の表面に存在するアルキル基(例えば、メチル基)が除去され得る。その結果、該シリコン微細粒子及びその凝集体は、全体としては表面の親水性を保ちつつ、水含有液を含むことができる媒体と直接接し得る表面をも有する状態を形成し得る。このような特殊な表面処理が施されることによって、水素の発生はより確度高く促進され得る。
【0043】
本実施形態においては、さらにその後、該シリコン微細粒子とエタノール溶液とを混合する第2混合工程が行われる。なお、混合工程において十分に攪拌処理がされることは、シリコン微細粒子とエタノール溶液(本実施形態においては、99.5wt%)とが接する機会を増やすため好ましい。エタノール溶液と混合されたシリコン微細粒子を、公知の遠心分離処理装置を用いて、固液分離処理によって揮発性の高いエタノール溶液を除いてから十分に乾燥させることにより、本実施形態の一例としてのシリコン微細粒子が製造される。なお、第2混合工程を経たシリコン微細粒子も、本実施形態の薬剤の原体としての役割を果たし得る。
【0044】
なお、本実施形態においては、他の最終的なシリコン微細粒子として、上述の各工程のうち、第1混合工程における過酸化水素水とシリコン微細粒子との混合時間が60分であったシリコン微細粒子も製造した。なお、ビーズミル法の処理時間等を調整することにより、シリコン微細粒子の代わりに、シリコンの結晶粒(例えば、1nm以上100nm以下の「シリコンナノ粒子」を実質的に含まないもの)を、少なくとも前述の第1混合工程を経て製造することも可能である。なお、前述のシリコンの結晶粒も、本実施形態の薬剤の原体としての役割を果たし得る。
【0045】
ところで、本実施形態では、イソプロピルアルコール又はフッ化水素酸(水溶液)を用いていない。本実施形態においては、シリコン微細粒子(又はその凝集体)、あるいはシリコンの結晶粒を得るためにエタノール溶液及び過酸化水素水を用いているため、生体に対してより安全かつ安心な薬剤(又は固形製剤)、薬剤(又は固形製剤)の製造方法、又は薬剤(又は固形製剤)の原体の製造方法を提供することができる点は、特筆に値する。
【0046】
本実施形態においては、さらに、本実施形態の薬剤の原体としての役割を果たし得るシリコン微細粒子(その凝集体を含む)及び/又はシリコンの結晶粒を含む固形製剤を製造する。本実施形態の固形製剤は、後述する実験用の試料(又は飼料)である。図1(a)は、比較例としての通常飼料を概観写真であり、図1(b)は、本実施形態の、シリコン微細粒子が混錬された通常飼料の概観写真である。
【0047】
本実施形態においては、その後、母材としての通常飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製、型番AIN93M97.5wt%と、製造された上述のシリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)2.5wt%とを、pH値調整剤としてのクエン酸の水溶液とともに公知の混錬装置を用いて混錬するpH値調整剤含有工程が行われる。なお、クエン酸の水溶液の量は特に限定されないが、例えば、シリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)と該飼料との総量に対して約0.5wt%を選択することができる。また、クエン酸の水溶液のpH値は約4である。また、上記母材の種類は、生理学的に許容可能な母材(物質又は材料)である限り、限定されない。
【0048】
その後、シリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)が混錬された該飼料を、市販のペレッターを用いて成型する。その後、約90℃に加熱した乾燥機を用いて水分を除去し、篩を用いて大きさを選別することによって、図1(b)に示す固形製剤(飼料)100を製造することができる。なお、その後、固形製剤(飼料)100が水分と接触することを防止又は抑制する観点から、固形製剤(飼料)100を包装された状態で保管することは好適な一態様である。また、固形製剤100になっていないシリコン微細粒子(その凝集体を含む)が、通常飼料以外の公知の材料(母材)中に含まれる態様も、採用し得る一態様である。
【0049】
ここで、本実施形態の固形製剤100が含有するクエン酸は、純水中で固形製剤100を崩壊させたときの水含有液のpH値を4以上7未満(より狭義には、6以下)とするpH値調整剤としての役割を果たし得る。その結果、該水含有液を酸性状態にするクエン酸によるpH値の調整作用によって、固形製剤100が外気の水分等と接触することによる水素の発生を防止又は抑制し得る。従って、固形製剤100がクエン酸を含むことは、本実施形態の好適な一態様である。なお、本実施形態の固形製剤がクエン酸を含まない場合であっても、本実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。
【0050】
<第1の実施形態の変形例(1)>
第1の実施形態の薬剤(又は固形製剤100)の製造方法、又は薬剤(又は固形製剤100)の原体の製造方法において、体内の適切な環境下において水素がより発生し易い条件を満たすように、換言すれば水素がより発生し易いpH値の数値範囲内に収まるように調整する「pH調整剤」を薬剤(又は固形製剤)中に導入する導入工程をさらに含むことは、好適な一態様である。
【0051】
第1の実施形態におけるクエン酸は、「pH調整剤」の一例であるが、「pH調整剤」はクエン酸に限定されない。pH値が2以上(より好ましくは3以上)7未満(より好ましくは6以下)である酸性に調整できる材料(以下、「酸性剤」ともいう)であれば、「pH調整剤」の材料は限定されない。酸性剤の代表的な例は、クエン酸、グルコン酸、フタル酸、フマル酸、及び乳酸の群から選択される少なくとも1種又はその塩である。食品添加物として広く用いられていること等の、安全性、汎用性に優れるという長所を備える材料を採用することが好適な一態様である。
【0052】
<第1の実施形態の変形例(2)>
第1の実施形態の薬剤(又は固形製剤100)が、第1の実施形態のシリコン微細粒子、あるいはシリコンの結晶粒の服用性を改善するため、経口摂取に適するように調剤されていることは、好適な一態様である。例えば、固形製剤100の公知のゼリー製剤化を採用すること、又は、微粒剤、液剤、ドライシロップ剤、チュアブル剤、トローチ、細粒剤等の公知の製剤化を採用することは、他の好適な一態様である。
【0053】
なお、前述の各製剤化においては、徐放性を有するように調製することが、体内の適切な環境下(例えば、胃から下流側である腸管内)において水素がより発生し易くなるため好ましい。具体的には、腸管内(例えば、全腸管内)において水素を発生させ、薬理機能を発揮するための徐放性を固形製剤100が有することは好適な一態様である。また、徐放性を発揮させるための他の手段の例は、シリコン微細粒子の粒度分布の調整、コーティング材料の調整、及び/又は後述する、徐放剤として機能し得るカプセル(マイクロカプセルを含む)内への収容である。また、製剤の形態も特に限定されることなく、幅広い形態を採用することができる。従って、本実施形態の腎疾患のための薬剤(又は固形製剤100)の剤形及び形態は、前述の各剤形及び形態に限定されるものではない。
【0054】
<第1の実施形態の変形例(3)>
本実施形態においては、第1の実施形態で用いたのと同じ高純度シリコン粒子粉末(代表的には、結晶粒径が1μm超のシリコン粒子)を、第1の実施形態で説明した手順で一段階粉砕する。また、本実施形態においては、一段階粉砕に用いるφ0.5μmのジルコニア製ビーズ(容量750ml)が、ビーズミル粉砕室内部において、自動的にシリコン微細粒子を含む溶液から分離される。さらに、ビーズが分離されシリコン微細粒子を含む溶液に、0.3μmのジルコニア製ビーズ(容量300ml)を加えて4時間、回転数2500rpmで粉砕(二段階粉砕)して微細化する。
【0055】
ビーズを含むシリコン微細粒子は、上述のとおりシリコン微細粒子を含む溶液から分離される。ビーズから分離されたシリコン微細粒子を含むエタノール溶液は、第1の実施形態と同様に減圧蒸発装置を用いて40℃に加熱することにより、エタノール溶液を蒸発させてシリコン微細粒子を得る。
【0056】
<第1の実施形態の変形例(4)>
ところで、第1の実施形態の固形製剤100又は第1の実施形態の変形例(1)及び(2)において説明した固形製剤を被覆する、生理学的に許容可能な被覆層がさらに設けられることも、採用し得る他の一態様である。例えば、固形製剤100の最外層を覆うコーティング剤である、公知の胃難溶性腸溶性の材料を採用することができる。また、カプセル剤として適用し得る生理学的に許容可能な被覆層の例は、シリコン微細粒子(主として、シリコン微細粒子の凝集体)、あるいはシリコンの結晶粒を内包する、公知の胃難溶性腸溶性材料から製造されるカプセルである。なお、固形製剤100を採用した場合は、さらに崩壊剤を含んでもよい。また、崩壊剤については、公知の材料を採用することができる。加えて、より好適な崩壊剤の例は、有機酸であり、最も好適な例はクエン酸である。ここで、有機酸は、シリコン微細粒子を塊状にする結合剤としても機能し得る。
【0057】
加えて、上述の各実施形態における水素発生のための水含有液の温度条件は限定されない。但し、水素を発生させ得る水含有液の温度は、好適には、30℃(より好適には、35℃)以上45℃以下であれば、水素発生反応が促進される。
【0058】
<実施例>
以下、上述の各実施形態をより詳細に説明するために、実施例を挙げて説明するが、上述の実施形態はこれらの例によって限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
本願発明者らは、シリコン微細粒子自身を評価するために、ペレッターによる成型工程を行わずに水素の発生状況を調べた。具体的には、実施例1として、第1の実施形態における一段階粉砕によって処理されたシリコン微細粒子を用いて実験を行った。
【0060】
第1の実施形態において説明したシリコン微細粒子10mgを散剤の状態で(すなわちクエン酸を混合することなく、また混錬することもなく)容量100mlのガラス瓶(硼ケイ酸ガラス厚さ1mm程度、ASONE社製ラボランスクリュー管瓶)に入れた。このガラス瓶にpH値7.1の水道水30mlを入れて、液温を25℃の温度条件において密閉し、該ガラス瓶内の液中の水素濃度を測定し、これを用いて水素発生量を求めた。水素濃度の測定には、ポータブル溶存水素計(東亜DKK株式会社製、型式DH-35A)を用いた。
【0061】
(実施例2)
実施例2は、水道水30mlを入れて、液温を37℃の温度条件とした以外は実施例1と同じである。
【0062】
図4に、実施例1~2の結果を示す。図4の横軸は固形製剤を水含有液と接触させている時間(分)を示し、グラフの縦軸は水素発生量を示す。
【0063】
図2に示すとおり、ほぼ中性を示す水と、第1の実施形態において説明したシリコン微細粒子とを接触させた場合であっても、水素の発生が確認された。また、液温が高い方が、水素の発生量が多くなることも明らかとなった。特に、液温がヒトの体温に近い温度である37℃の場合、より短時間での水素の発生を実現すること、及びその後に多量(1.5ml/g以上)の水素発生が継続されることが確認された。
【0064】
本願発明者らの更なる研究によれば、シリコン微細粒子、又はシリコンの結晶粒が、pH値が6以上7未満の水含有液に接触したときに5ml/g以上の水素発生能を有し、かつ、pH値が7超9未満の水含有液に接触したときに10ml/g以上の水素発生能を有することが明らかとなった。また、シリコン微細粒子、又はシリコンの結晶粒が、pH値が1以上3以下の水含有液に接触したときに2ml/g以下の水素発生能を有することも明らかとなった。これは、例えばヒトの胃(胃酸)の中では、シリコン微細粒子、又はシリコンの結晶粒は殆ど水素発生能を有さず、胃から下流側である、例えば腸内の水含有液(代表的には、腸液)との接触において水素発生能を発揮することを意味するため、ヒトの体内の適切な場所での水素の発生が実現され得る。
【0065】
<シリコン微細粒子と水含有液との接触によって発生した水素発生量の測定実験>
また、本願発明者らは、クエン酸を含まない点を除いて第1実施形態のシリコン微細粒子(固形製剤ではない)と同じシリコン微細粒子を、純水に炭酸水素ナトリウムを溶解させた水溶液とを接触させることによって発生した水素量の時間変化を調べた。
【0066】
具体的には、ガラス容器中で、シリコン微細粒子11mg(第1混合工程が30分)又はシリコン微細粒子5mg(第1混合工程が60分)と、炭酸水素ナトリウム(1.88wt%)を溶解させた水溶液とを混合する。該水溶液のpH値は約8.3である。その後、ガラス容器の開口部まで該水溶液を満たし、空気が入らないように蓋をして完全密封をした。
【0067】
なお、蓋はポリプロピレン製であるが、内蓋は、ポリエチレンとポリプロピレンの多層フィルター製を用いたことにより、発生する水素の透過や漏れを充分に抑えることができる。密封後、暫くすると、本実施形態の各シリコン微細粒子に関しては、水溶液全体に一様に混合された状態になったことが外観から視認される。
【0068】
図3(a)は、第1の本実施形態の各シリコン微細粒子(固形製剤ではない)と、純水に炭酸水素ナトリウムを溶解させた水溶液(pH値=8.3)とを接触させることによって発生した水素の溶存水素濃度の時間変化を示すグラフである。また、図3(b)は、各シリコン微細粒子の1g当たりの水素発生量の時間変化を示すグラフである。なお、参考までに、上述の第1混合工程が行われなかったシリコン微細粒子を用いた場合の結果についても各グラフ中に示している。また、上述の各溶存水素量は、東亜ディーケーケー株式会社製のポータブル溶存水素濃度計(東亜DKK株式会社製、型式DH-35A)を用いて測定された。
【0069】
図3(a)及び図3(b)に示すように、第1混合工程が行われることによって、水素の発生が促進されることが明らかとなった。特に図3(b)に示すように、第1混合工程が行われることによって、2時間で40ml以上の水素発生量が、水素発生開始から2時間経過後以降、継続的に得られていることは特筆に値する。
【0070】
なお、第1混合工程の混合時間が60分のシリコン微細粒子の水素発生量が、該混合時間が30分のシリコン微細粒子の水素発生量よりも少ないのは、シリコン微細粒子の表面上の酸化膜の厚みの差に影響していると考えられる。つまり、第1混合工程の混合時間が60分のシリコン微細粒子の方が厚い酸化膜を有しているために、媒体(水溶液)とシリコン微細粒子とが直接接し難くなったために水素の発生が抑制されたと考えられる。
【0071】
また、本願発明者らの更なる研究と分析によれば、第1混合工程の混合時間が2分超50分以下(より好適には3分以上40分以下、さらに好適には4分以上30分以下、最も好適には5分以上20分以下)であれば、シリコン微細粒子表面の親水性を適度に保ちつつ、媒体と直接接し得る十分な表面積を有する状態を実現し得る。その結果、前述の混合時間の範囲であれば、水素の発生はより確度高く促進され得る。
【0072】
<固形製剤と水含有液との接触によって発生した水素発生量の測定実験>
また、本願発明者らは、上述の実施例1~実施例2の結果に加えて、ペレッターによる成型加工を施した、第1の実施形態の固形製剤100について、条件の異なる下記4つの試料A~Dに関する水素発生量(ppm)の評価を行った。
(実施例3)
試料A:一旦ペレッターによって成型した固形製剤を粉砕したもの200mgを、pH値は8.2の水含有液2ml中に投入したもの。(水含有液は、純水。)
試料B:固形製剤200mgを、pH値は8.2の水含有液2ml中に投入したもの。(水含有液は、純水。)
試料C:一旦ペレッターによって成型した固形製剤を粉砕したもの200mgを、純水2ml中に投入したもの。
試料D:固形製剤200mgを、純水2ml中に投入したもの。
【0073】
図4は、上述の試料A~Dの水素発生量(ppm)と反応時間(分)との関係を示すグラフである。図4に示すように、固形製剤を粉砕したものは、粉砕されていない固形製剤よりも水素の発生量が時間の経過とともに有意に多くなる傾向が確認された。これは、例えばヒトが噛み砕いた固形製剤が体内に入った方が、ヒトが固形製剤をそのまま飲み込むよりも水素発生量が多くなることを示唆している。またpH値が8.2の水含有液の方が純水よりも水素発生量が多い傾向にあり、腸液との反応で水素発生量が増えることが示唆された。
【0074】
<6週齢のSDラットに通常飼料又は固形製剤(飼料)を8週間摂取させた場合の効果確認実験>
また、図5は、6週齢のSDラット(Sprague-Dawley rat、本願では「SDラット」という)に通常飼料(図5中の比較例)又は固形製剤(飼料)(図5中の本実施形態)を8週間摂取させた場合の、血液200μl(マイクロリットル)中の水素濃度(ppb)を示すグラフである。加えて、図6は、6週齢のSDラットに通常飼料(図6中の比較例)又は固形製剤(飼料)(図6中の本実施形態)を8週間摂取させた場合の、呼気中の水素濃度(ppb)を示すグラフである。なお、血液中の水素濃度は、センサガスクロマトグラフ装置(エフアイエス社製、型式SGHA-P2)によって測定した。また、呼気中の水素濃度はラットを完全密閉容器に8分間留置後、同様にセンサガスクロマトグラフ装置(エフアイエス社製、型式SGHA-P2)によって測定した。
【0075】
図5及び図6に示すように、固形製剤(飼料)を摂取したラット(本実施形態)の方が、血液中及び呼気中の水素濃度が高いことが確認された。なお、固形製剤から発生した水素が体外に速やかに放散されたために、血液中の水素濃度の差が比較的小さくなったと考えられる。腎機能障害の増悪にはヒドロキシルラジカルが関与している可能性がある。従って、図5及び図6の結果から、血中及び/又は呼気中において水素濃度が増加していることが、上述の腎機能の低下を抑制又は腎機能を維持する効果(代表的には、慢性腎不全の進行を抑制する効果)、又は腎機能の改善効果に、本実施形態の固形製剤から発生する水素が寄与する可能性が示唆される。
【0076】
また、図7は、6週齢のSDラットに通常飼料(図7中の比較例)又は固形製剤(飼料)(図7中の本実施形態)を8週間摂取させた場合の、抗酸化度を測定するBAPテスト(血漿の抗酸化力の評価テスト)の結果を示すグラフである。なお、このBAPテストは、FREE Carrio Duo装置(Diacron International社製、型式DI-601M)によって測定した。
【0077】
図7に示すように、固形製剤(飼料)を摂取したラット(本実施形態)の方が、抗酸化力が有意に高いことが確認された。従って、本実施形態の固形製剤が投与されることによって、腎機能の低下を抑制又は腎機能を維持する効果(代表的には、慢性腎不全の進行を抑制する効果)、又は腎機能の改善効果が奏されることが明らかとなった。
【0078】
<5/6腎摘除ラットモデルを用いた、第1の実施形態の固形製剤による予防効果の確認実験>
上述の各基礎的実験を踏まえ、本願発明者らは、5/6腎摘除ラットモデルを用いた、第1の実施形態の固形製剤100による予防効果に対する確認実験を行った。図8は、5/6腎摘除ラットモデルを用いた、第1の実施形態の固形製剤100による予防効果確認のための実施計画(プロトコール)である。なお、図8以降の各図面において、「W」は、5/6腎摘除ラットモデルの観察開始から何週間後であるか、を表している。例えば、「4W」は、5/6腎摘除ラットモデルの観察開始から4週間後を意味する。
【0079】
(実施例4)
本実験においては、以下の2種類((1)比較例及び(2)第1の実施形態(以下、第2の実施形態の説明に至るまでは「本実施形態」ともいう。))の5/6腎摘除ラットモデルを用いて比較した。
(1)比較例(コントロール群):生後、図1(a)に示す通常飼料のみを投与する。7週齢のラットの左腎臓を2/3摘出し、8週齢のラットの右腎臓全てを摘出することによって本実験の5/6腎摘除ラットモデルとする。なお、該8週齢のラットを基準として、その4週間後及び8週間後の後述する各種のデータを取得する。
(2)本実施形態:生後、通常飼料を6週間与える。7週齢時及び8週齢時に、比較例と同様の手術を施行しモデル作成を行う。6週齢以降、図1(b)に示すシリコン微細粒子が混錬された通常飼料(以下、「本実施形態の飼料」又は「固形製剤」ともいう)のみを投与する。それ以外の条件は比較例と同じである。比較例と同様に、8週齢のラットを基準として、その4週間後及び8週間後の後述する各種のデータを取得する。
【0080】
図9は、前述の実施計画における4週後の腎臓の病理組織像(HE染色)である。具体的には、図9(a)が通常飼料を摂取したラットの腎であり、図9(b)は本実施形態の飼料を摂取したラットの腎である。
【0081】
図9(a)は、慢性腎臓病の症状が顕著に現れていることが確認される。具体的には、荒廃糸球体(図9(a)中のY)や虚血によると思われる尿細管の拡張、尿細管上皮細胞の菲薄化が確認された。また、図中のXに示すように、腎臓尿細管間質の線維化が進んでいることも確認された。一方、図9(b)に示すように、本実施形態においては、前述の諸所見が認められなかった。この顕著な差は、本実施形態の5/6腎摘除ラットモデルは、体内に取り込まれた固形製剤(本実施形態の飼料)から発生する水素が、次の経路((A)及び/又は(B))から腎臓に取り込まれたことによって生じたものと考えられる。
(A)血中に取り込まれ、血流に乗って各臓器(腎臓等)に送給される。
(B)分子量の小さい水素が腸管等から粘膜を通過して、いわば直接、腎臓に送給される。
【0082】
上述のとおり、5/6腎摘除ラットモデルの観察開始から僅か4週後にこのような顕著な差が認められたことは、本実施形態の固形製剤が腎臓疾患の諸症状に対して高い予防効果を発揮し得ることを示すものであり、特筆に値するものである。なお、この顕著な差は、ヒドロキシルラジカルと、腸内及び/又は血中の水素とを反応させ、腎臓に対する酸化ストレスの低減又は消滅させたことによって生じたと言える。
【0083】
また、図10は、5/6腎摘除ラットモデルの観察開始から4週後の、本実施形態と比較例の腎尿細管間質の線維化の状況を示すグラフである。
【0084】
図10に示すように、本実施形態の5/6腎摘除ラットモデルよりも、比較例の5/6腎摘除ラットモデルの方が、腎尿細管間質の線維化が、有意な差として、進行していることが確認された。従って、本実施形態の固形製剤が投与されることによって、腎間質の線維化を確度高く抑制できることが明らかとなった。
【0085】
また、図11は、5/6腎摘除ラットモデルの該モデル作成日と、該モデルを作成し観察開始から4週後の、本実施形態と比較例との、血清中のクレアチニンの量(すなわち、「血清クレアチニン値」)(mg/dl(デシリットル))を示すグラフである。
【0086】
図11に示すように、比較例の5/6腎摘除ラットモデルよりも本実施形態の5/6腎摘除ラットモデルの方が、血清中のクレアチニンの量の増加が抑えられていることが確認された。なお、本実施形態の5/6腎摘除ラットモデルにおけるクレアチニン値の微増は、体重の増加に依るものと推察される。従って、本実施形態の固形製剤が投与されることによって、腎機能の低下を抑制又は腎機能を維持する効果(代表的には、慢性腎不全の進行を抑制する効果)、又は腎機能の改善効果が奏されることが明らかとなった。
【0087】
上述のとおり、比較例の5/6腎摘除ラットモデルと本実施形態の5/6腎摘除ラットモデルとの有意な差が確認できたことから、本実施形態の固形製剤が、腎機能の低下を抑制又は腎機能を維持する効果(代表的には、慢性腎不全の進行を抑制する効果)、又は腎機能の改善効果に大きく貢献し得ることが明らかとなった。従って、本実施形態の薬剤(固形製剤)が有するシリコン微細粒子又はその凝集体から生成される水素によって、体内のヒドロキシルラジカルの低減又は消滅を実現した結果、腎臓の疾患に対する予防効果が得られたと考えられる。
【0088】
<慢性腎不全に関する予防効果の再現性を確認するための実験>
なお、本願発明者らは、慢性腎不全に関する上述の予防効果の再現性を確認するために次の実験を行った。
【0089】
本願発明者らは、確認実験として、上述の実施例4と同様に、8週齢の5/6腎摘除ラットモデルに、通常飼料又は固形製剤(飼料)を8週間摂取させた場合の血清クレアチニン値の結果、及び尿蛋白排泄量の結果を分析した。なお、通常飼料のみを与えたラットモデルを比較例とした。
【0090】
ところで、この確認実験において採用された固形製剤(飼料)は、上述の本実施形態のシリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)含有率が2.5wt%である固形製剤(飼料)のみならず、該含有率が0.1wt%、0.5wt%、及び1.0wt%である固形製剤(飼料)を含む。なお、前述の各含有率の固形製剤(飼料)の製造方法は、第1実施形態において説明された方法と同様である。
【0091】
図12は、血清クレアチニン値の結果を示すグラフである。また、図13は、尿蛋白排泄量の結果を示すグラフである。なお、図12及び図13における「本実施形態」は、シリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)含有率が、0.1wt%、0.5wt%、1.0wt%、及び2.5wt%である固形製剤(飼料)を含む。
【0092】
図12及び図13に示すように、シリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)含有率によらず、比較例の5/6腎摘除ラットモデルと本実施形態の5/6腎摘除ラットモデルとの有意な差が確認できたことから、上述の固形製剤(飼料)が、腎機能の低下を抑制又は腎機能を維持する効果(代表的には、慢性腎不全の進行を抑制する効果)、又は腎機能の改善効果に大きく貢献し得ることを確認することができた。
【0093】
<急性腎不全に関する予防効果の再現性を確認するための実験>
本願発明者らは、急性腎不全に関する上述の予防効果の再現性を確認するために次の実験を行った。
【0094】
本願発明者らは、確認実験として、7週齢ラットに通常飼料又は固形製剤(飼料)の投与を開始した。投与開始から8週齢ラットの左腎臓の動脈および静脈を遮断した。60分後に遮断を解除するとともに右腎臓を摘出した。この条件において遮断を解除した後24時間後及び72時間後の血清クレアチニン値の結果、並びに24時間後の尿蛋白排泄量の結果を分析した。なお、通常飼料のみを与えたラットモデルを比較例とした。
【0095】
図14は、血清クレアチニン値の結果を示すグラフである。また、図15は、尿蛋白排泄量の結果を示すグラフである。
【0096】
ところで、この確認実験において採用された固形製剤(飼料)は、上述の本実施形態のシリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)含有率が2.5wt%である固形製剤(飼料)である。固形製剤(飼料)の製造方法は、第1実施形態において説明された方法と同様である。
【0097】
図14及び図15に示すように、シリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)が投与された本実施形態の急性腎不全ラットモデルと、比較例の急性腎不全ラットモデルとの有意な差を確認することができた。従って、上述の固形製剤(飼料)が、腎機能の低下を抑制又は腎機能を維持する効果(代表的には、急性腎不全の進行を抑制する効果)、又は腎機能の改善効果に大きく貢献し得ることを確認することができた。
【0098】
これまで述べたとおり、上述の各実施形態(変形例を含む)の固形製剤は腎臓の疾患の薬剤である。なお、該薬剤は、代表的には慢性腎不全の薬剤であるが、上述の各実施形態(変形例を含む)の固形製剤の薬理効果が得られる対象の疾患は、慢性腎不全に限定されない。例えば、腎線維症、急性腎障害、腎虚血再灌流傷害、薬剤性腎障害、及び慢性腎臓病の群から選択される少なくとも一種の腎疾患に対しては、上述の各実施形態(変形例を含む)の固形製剤が薬剤として機能し得る。
【0099】
<第2の実施形態>
本実施形態においては、実施例4において説明した5/6腎摘除ラットモデルを用いた、第1の実施形態の「薬剤」の一例としての固形製剤100による治療効果に対する確認実験を行った。
【0100】
図16は、5/6腎摘除ラットモデルを用いた、第1の実施形態の固形製剤(シリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)2.5wt%を含有)による治療効果確認のための実施計画(プロトコール)である。なお、第1の実施形態における説明と重複する説明は省略され得る。本実施形態においては、7週齢及び8週齢時に第1の実施形態と同様の手術を施行しモデル作成を行う。そして、7週齢以降、図1(b)に示すシリコン微細粒子が混錬された通常飼料(以下、「本実施形態の飼料」又は「固形製剤」ともいう)のみを投与する。
【0101】
本実施形態においても、腎臓疾患の治療という観点での有用性が確認される。
【0102】
上述のとおり、腎臓疾患の治療という観点においても、比較例の5/6腎摘除ラットモデルと本実施形態の5/6腎摘除ラットモデルとの有意な差が確認されることから、本実施形態の固形製剤が、腎機能の低下を抑制又は腎機能を維持する効果(代表的には、慢性腎不全の進行を抑制する効果)、又は腎機能の改善効果に大きく貢献し得る。従って、本実施形態の薬剤(固形製剤)が有するシリコン微細粒子又はその凝集体から生成される水素によって、体内のヒドロキシルラジカルの低減又は消滅を実現することにより、腎臓の疾患に対する治療効果を奏し得る。
【0103】
本実施形態においても、上述の固形製剤は腎臓の疾患の薬剤である。なお、腎臓疾患の治療という観点においても、該薬剤は、代表的には慢性腎不全の薬剤であるが、本実施形態の固形製剤の薬理効果が得られる対象の疾患は、慢性腎不全に限定されない。例えば、腎線維症、急性腎障害、腎虚血再灌流傷害、薬剤性腎障害、及び慢性腎臓病の群から選択される少なくとも一種の腎疾患に対しては、本実施形態の固形製剤が薬剤として機能し得る。
【0104】
<慢性腎不全に関する治療効果の再現性を確認するための実験>
なお、本願発明者らは、慢性腎不全に関する上述の治療効果の再現性を確認するために次の実験を行った。
【0105】
本願発明者らは、確認実験として、7週齢のラットの左腎臓を2/3摘出し、通常飼料又は固形製剤(飼料)の投与を開始した。投与開始から8週齢のラットの右腎臓全てを摘出した場合の血清クレアチニン値の結果、及び尿蛋白排泄量の結果を分析した。該8週齢のラットを基準として、その4週間後及び8週間後の後述する各種のデータを取得した。なお、通常飼料のみを与えたラットモデルを比較例とした。
【0106】
ところで、この確認実験において採用された固形製剤(飼料)は、上述の本実施形態のシリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)含有率が2.5wt%である固形製剤(飼料)のみならず、該含有率が0.1wt%、0.5wt%、及び1.0wt%である固形製剤(飼料)を含む。なお、前述の各含有率の固形製剤(飼料)の製造方法は、第1実施形態において説明された方法と同様である。
【0107】
図17は、血清クレアチニン値の結果を示すグラフである。また、図18は、尿蛋白排泄量の結果を示すグラフである。なお、図17及び図18における「本実施形態」は、シリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)含有率が、0.1wt%、0.5wt%、1.0wt%、及び2.5wt%である固形製剤(飼料)を含む。
【0108】
図17及び図18に示すように、シリコン微細粒子(及び/又はシリコンの結晶粒)含有率によらず、すでに増悪状態にある通常飼料を投与した慢性腎不全ラットモデル(比較例)と、本実施形態の慢性腎不全ラットモデルとの有意な差を確認することができた。従って、上述の固形製剤(飼料)が、腎機能の低下を抑制、腎機能を維持、あるいは悪化した腎機能を治癒させる(又は、腎機能を軽快させる)効果(代表的には、慢性腎不全の進行を抑制する効果、及び慢性腎不全を治癒し得る効果)、又は腎機能の改善効果に大きく貢献し得ることを確認することができた。
【0109】
<その他の実施形態>
なお、上述の薬剤(固形製剤)におけるシリコン微細粒子の製造方法の1つの態様は、結晶粒径が1μm超のシリコン粒子を物理的粉砕法により微細化し、結晶子径が1nm以上100nm以下を含み得るシリコン微細粒子とする工程を含む。物理的粉砕法の好適な例は、ビーズミル粉砕法、遊星ボールミル粉砕法、衝撃波粉砕法、高圧衝突法、ジェットミル粉砕法、又はこれらを2種以上組み合わせた粉砕法によって粉砕する方法である。また、公知の化学法を採用することも可能である。但し、製造コスト又は、製造管理の容易性の観点から言えば、特に好適な例は、ビーズミル粉砕法のみ、又はビーズミル粉砕法を少なくとも含む粉砕法である。
【0110】
また、上述の各実施形態においては、出発材料として、市販の高純度シリコン粒子粉末であるシリコン粒子が採用されているが、出発材料はそのようなシリコン粒子に限定されない。
【0111】
また、上述の各実施形態における「凝集体」とともに、又は該「凝集体」の代わりに、ナノオーダーの空隙を有する多孔質結晶粒が採用されることは、全体としての径が大きい粒子及び/又は表面積の大きい粒子を用いることを実現し得るため、好適な一態様である。例えば、上述の各実施形態のシリコン微細粒子が、腸管の細胞膜及び細胞間を通過しないシリコン微細粒子であること、該シリコン微細粒子の凝集体が、前述の細胞膜及び前述の細胞間を通過しない凝集体であること、又は、上述の各実施形態のシリコンの結晶粒が、前述の細胞膜及び前述の細胞間を通過しない結晶粒であることは、上述の各実施形態をより確度高く安全性を確保する観点から好適な一態様である。
【0112】
なお、ヒト及び非ヒト動物において、上述の各実施形態のシリコン微細粒子から効率的に水素を発生する原因の一つが、腸内液が弱アルカリ性であることと考えられる。従って、上述の各実施形態においては、その弱アルカリ性の実現を支援するために、例えば、予め該シリコン微細粒子と、重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウム等の重炭酸塩とを混合した混合物を投与することは有効な方法の1つである。その場合、重炭酸塩は、例えばヒトの胃酸によって分解するため、該混合物を、胃酸から保護し、腸において溶解するための腸溶剤とすることが好ましい。従って、投与方法が、上述の各実施形態における水素発生能を有するシリコン微細粒子、該シリコン微細粒子の凝集体、又はシリコンの結晶粒と、重炭酸塩とを含有する腸溶剤の経口投与であることは、好適な一態様である。
【0113】
上述の実施形態又は実施例の開示を含む各記載は、該実施形態等の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、上述の各実施形態及び各実施例における他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の薬剤及びその製造方法(薬剤の原体の製造方法を含む)は、医療業界、医薬業界、健康産業において広範に利用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18