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特許7493891アイスクリーム類用ミックス及びこれを使用したアイスクリーム類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】アイスクリーム類用ミックス及びこれを使用したアイスクリーム類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/04 20060101AFI20240527BHJP
   A23G 9/34 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A23G9/04
A23G9/34
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021014079
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117542
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】上垣外 雪絵
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-227102(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0102610(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105192238(CN,A)
【文献】特開2001-204392(JP,A)
【文献】[アイスクリームの作り方]保存袋で簡単レシピ,冷凍で食を豊かに ほほえみごはん[online],日本,2019年08月09日,https://www.nichireifoods.co.jp/media/9891/,[検索日 2024.02.26]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00- 9/52
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋に収容したアイスクリーム類用ミックスに牛乳を含む液体を加え、これを振ることで生地を調製して凍結し、これを袋の外からもみほぐし再度凍結し、再度もみほぐす、アイスクリーム類を製造する方法に使用するアイスクリーム類用ミックスであって、砂糖100質量部に対して、ブドウ糖を60質量部以上180質量部以下、トレハロースを2質量部以上80質量部以下、粉乳を12質量部以上180質量部以下、増粘剤を0.4質量部以上6質量部以下含むアイスクリーム類用ミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリーム類用ミックス及びこれを使用したアイスクリーム類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アイスクリーム類は、砂糖、生クリーム、卵等の原料を混ぜて冷やしながら空気を抱き込み冷凍することを繰り返す製造方法が一般的である。
また、原料の一部を予めミックスとし、これに牛乳等を加えて撹拌し冷凍する方法も知られている。
アイスクリーム類を調製するミックスとして、例えば、(i)炭水化物と、(ii)脂質と、(iii)乳製品と、(iv)乳化剤と、を含む、または前記調整剤のみからなる粉末状の食品組成物であって、前記粉末状の食品組成物は、(a)最初に温度処理し、(b)前記温度処理された製品を均質化し、(c)均質化された製品を凝縮し、(d)凝縮された製品を結晶化し、(e)真空ベルト乾燥機によって、前記結晶化された製品から残留水分を取り除く、粉末状の食品組成物が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、構成脂肪酸としてラウリン酸を20~60質量%含み、20℃のSFCが30以上であり、且つ30℃のSFCが8以上である、冷凍菓子用油脂組成物が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
アイスクリーム類を製造する方法として、例えば、生地を泡立て器で撹拌する方法(例えば特許文献3参照)やホモゲナイザー等を使用する方法が知られている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-165273号公報
【文献】特開2020-28238号公報
【文献】特開昭53-148572号公報
【文献】特開2020-150931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アイスクリーム類を製造する方法として前記のとおり泡立て器で撹拌する方法等が行われているが、袋に収容したミックスに牛乳を含む液体を加え、これを振ることで生地を調製して凍結し、これを袋の外からもみほぐし再度凍結し、再度もみほぐす方法がより簡便である。
しかし、この方法では、泡立て器で撹拌する方法に比べ滑らかな食感のアイスクリーム類を得難いという問題があった。
本発明の目的は、袋に収容したアイスクリーム類用ミックスに牛乳を含む液体を加え、これを振ることで生地を調製して凍結し、これを袋の外からもみほぐし再度凍結し、再度もみほぐす、アイスクリーム類を製造する方法に使用するアイスクリーム類用ミックス、及び、これを使用したアイスクリーム類の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アイスクリーム類用ミックスの配合を特定の配合とすることで、袋に収容したアイスクリーム類用ミックスに牛乳を含む液体を加え、これを振ることで生地を調製して凍結し、これを袋の外からもみほぐし再度凍結し、再度もみほぐす、アイスクリーム類を製造する方法においても、滑らかな食感と適度な口溶けのアイスクリーム類を得ることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、袋に収容したアイスクリーム類用ミックスに牛乳を含む液体を加え、これを振ることで生地を調製して凍結し、これを袋の外からもみほぐし再度凍結し、再度もみほぐす、アイスクリーム類を製造する方法に使用するアイスクリーム類用ミックスであって、砂糖100質量部に対して、ブドウ糖を60質量部以上180質量部以下、トレハロースを2質量部以上80質量部以下、粉乳を12質量部以上180質量部以下、増粘剤を0.4質量部以上6質量部以下含むアイスクリーム類用ミックスである。
【発明の効果】
【0007】
袋に収容したアイスクリーム類用ミックスに牛乳を含む液体を加え、これを振ることで生地を調製して凍結し、これを袋の外からもみほぐし再度凍結し、再度もみほぐす、アイスクリーム類を製造する方法においても、滑らかな食感と適度な口溶けのアイスクリーム類を得ることで出来る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で製造できるアイスクリーム類とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し又は主要原料としたものを凍結させたものであって乳固形分3 .0%以上を含むものをいい、含まれる乳固形分と乳脂肪分の量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスに分類される。
本発明では、使用する牛乳や粉乳の乳脂肪分の量を調整することで、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスを製造することができる。
【0009】
本発明のアイスクリーム類用ミックスは、砂糖に対して、ブドウ糖、トレハロース、粉乳、増粘剤を特定の割合で配合しているところに特徴がある。
使用できる砂糖には特に限定はない。
例えば、上白糖、グラニュー糖、粉砂糖、三温糖を挙げることができ、目開き1mmの篩を通過する大きさが溶けやすいので好ましい。
【0010】
本発明で使用できるブドウ糖には、特に限定はなく、含水ブドウ糖でも無水ブドウ糖でも使用できる。
ブドウ糖の配合量が砂糖100質量部に対して60質量部未満では滑らかな食感が劣り、口どけも早すぎるため好ましくなく、180質量部を超えると食感は滑らかだが、口どけが遅くなりすぎるので好ましくない。
トレハロースの配合量は、砂糖100質量部に対して2質量部未満では食感の滑らかさが劣り口どけも早すぎるため好ましくなく、80質量部を超えると口どけが遅くなりすぎるので好ましくない。
粉乳は、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリーミングパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー等が使用でき乳脂肪分の量によって、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスを製造することができる。
粉乳の配合量が、砂糖100質量部に対して12質量部未満では口どけが早すぎるため好ましくなく、180質量部を超えると口どけが遅くなりすぎるので好ましくない。
増粘剤は、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギン酸エステル、CMC等が使用できる。
増粘剤の配合量が、砂糖100質量部に対して0.4質量部未満では口どけが早すぎるため好ましくなく、6質量部を超えると口どけが遅くなりすぎるので好ましくない。
【0011】
本発明のアイスクリーム類用ミックスは、前記砂糖等の原料の他、必要に応じて従来からアイスクリームミックスに使用されている原料が使用できる。
例えば、加工澱粉、食用油、卵粉、塩、乳化剤、安定剤、香料、色素、乳タンパク、ココアパウダー、抹茶粉末、果汁粉末等が使用できる。
【0012】
本発明のアイスクリーム類用ミックスは、袋に収容し牛乳を含む液体を加え、これを振ることで生地を調製して凍結し、これを袋の外からもみほぐし再度凍結し、再度もみほぐすことで、アイスクリーム類を製造するが、加える牛乳を含む液体は、アイスクリーム類用ミックス100質量部に対して270質量部~400質量部程度でよい。
該液体は全量牛乳でもよく、牛乳以外に香料、色素、水、生クリーム等が含まれていてもよい。
使用する袋は、振った時に、中身が飛び出し難ければ特に限定はないが、2重チャック付きの袋が好ましい。
袋を振る時間は、生地が調製できれば特に限定はないが、1分間程度である。
凍結方法にも、特に限定はないが、凍結し易いように、例えば、冷凍庫に平らに置いて冷凍する方法が好ましい。
凍結する時間は、-18℃の冷凍庫で1~2時間程度である。
もみほぐす回数は10回~20回程度である。
手でもみほぐす場合、冷たければタオルで包んで、もみほぐしてもよい。
再度凍結する時間は、-18℃の冷凍庫で1時間程度であり再度もみほぐす回数は5回~10回程度である。
【0013】
本発明で得られたアイスクリーム類は、従来のアイスクリーム類と同様に喫食できる。
【実施例
【0014】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
・実施例1~3、比較例1~2[ぶどう糖の配合量]
表1に示す原料(牛乳を除く)をよく混合し、アイスクリーム類用ミックスを得た。
以下の表中、配合量の単位は質量部である。
これを、12×13cmのチャック付き袋に収容した。
これに表1に示す割合で冷たい牛乳を加えた。
加えた牛乳は100gであった。
空気を抜きながらチャックを閉じ、1分間振った。
これを、アルミトレーに平らに置き冷凍庫(-18℃)で60分冷凍した。
冷凍庫から取り出し全体がほぐれるように10回、袋の外から手でもみほぐした後、アルミトレーに平らに置き、冷凍庫(-18℃)で60分冷凍した。
これをスプーンですくえる程度のかたさになるまで袋の外から10回、手でもみほぐしラクトアイスを製造した。
以下の評価基準で10名のパネラーにより、得られたラクトアイスの評価を行った。
食感と口溶けの評価において、両方が3.5点以上であれば合格とした。
・食感
5点 非常に滑らかで、非常に良い
4点 滑らかで、良い
3点 普通
2点 やや滑らかさがなく、悪い
1点 滑らかさがなく、非常に悪い
・口どけ
5点 適度な口溶けで、非常に良い
4点 やや適度な口溶けで、良い
3点 普通
2点 口どけがやや早すぎるか、やや遅く、悪い
1点 口溶けが早すぎるか、遅すぎ、非常に悪い
【0015】
得られた評価結果を表1に示す。
以下の表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0016】
【表1】
【0017】
比較例1は食感が滑らかさに劣り、口どけが早すぎて劣った結果となった。
比較例2は口どけが遅すぎて劣った結果となった。
【0018】
・実施例4~5、比較例3~4[トレハロースの配合量]
実施例1において、トレハロースの配合量を表2に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0019】
得られた評価結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
比較例3は食感が滑らかさに劣り、口どけが早すぎて劣った結果となった。
比較例4は口どけが遅すぎて劣った結果となった。
【0022】
・実施例6~7、比較例5~6[粉乳の配合量]
実施例1において、脱脂粉乳の配合量を表3に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0023】
得られた評価結果を表3に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
比較例5は口どけが早すぎて劣った結果となった。
比較例6は口どけが遅すぎて劣った結果となった。
【0026】
・実施例8~9、比較例7~8[増粘剤の配合量1]
実施例1において、アルギン酸エステルの配合量を表4に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0027】
得られた評価結果を表4に示す。
【0028】
【表4】
【0029】
比較例7は口どけが早すぎて劣った結果となった。
比較例8は口どけが遅すぎて劣った結果となった。
【0030】
・実施例10~11、比較例9[増粘剤の配合量2]
実施例1において、アルギン酸エステルに代えてキサンタンガムを表5に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0031】
得られた評価結果を表5に示す。
【0032】
【表5】
【0033】
比較例9は口どけが遅すぎて劣った結果となった。