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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】研磨装置及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20240527BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240527BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240527BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B49/10
B24B49/12
H01L21/304 622S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020183554
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073522
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 昭尋
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 康之
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-229060(JP,A)
【文献】特開2000-223451(JP,A)
【文献】特開2020-53550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/013
B24B 49/10
B24B 49/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部材と研磨パッドを保持する研磨テーブルとを有し、前記基板を前記研磨パッドに押し付けながら前記基板を研磨する研磨装置であって、
入射光を投光する投光器、前記投光器から投光された前記入射光を集光して前記基板に入射させる集光器、及び、前記基板から反射された反射光を受光する受光器を有するセンサーヘッドと、
前記集光器を前記基板に対して相対的に変位させることで、前記集光器と前記基板との距離を変化させる変位機構と、
前記研磨パッドの摩耗量を測定する摩耗量測定装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記受光器が受光した前記反射光の光量に関係するパラメータである光量パラメータに基づいて前記基板の研磨状態を測定するとともに、前記集光器と前記基板との距離が予め設定された基準距離に維持されるように、前記摩耗量測定装置が測定した前記研磨パッドの摩耗量に基づいて前記変位機構を制御し、
前記制御装置は、さらに、前記光量パラメータと、前記集光器と前記基板との距離と、が関連付けられたデータ群に基づいて機械学習をすることで、前記光量パラメータが所定値よりも大きくなるような前記集光器と前記基板との距離を算出し、この算出された距離を前記基準距離として用いる、研磨装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記基板の研磨状態として、前記基板の研磨終点を測定する、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
基板を保持する基板保持部材と研磨パッドを保持する研磨テーブルとを有し、前記基板を前記研磨パッドに押し付けながら前記基板を研磨する研磨装置であって、
入射光を投光する投光器、前記投光器から投光された前記入射光を集光して前記基板に入射させる集光器、及び、前記基板から反射された反射光を受光する受光器を有するセンサーヘッドと、
前記集光器を前記基板に対して相対的に変位させることで、前記集光器と前記基板との距離を変化させる変位機構と、
前記研磨パッドの摩耗量を測定する摩耗量測定装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記受光器が受光した前記反射光の光量に関係するパラメータである光量パラメータに基づいて前記基板の研磨状態を測定するとともに、前記集光器と前記基板との距離が予め設定された基準距離に維持されるように、前記摩耗量測定装置が測定した前記研磨パッドの摩耗量に基づいて前記変位機構を制御し、
前記制御装置は、さらに、前記研磨装置による前記基板の研磨速度に関係する条件であるプロセス条件と、前記光量パラメータと、が関連付けられたデータ群に基づいて機械学習をすることで、前記プロセス条件に対応する、研磨時間の経過に伴う前記光量パラメータの変化である光量パラメータ変化を予測し、予測された前記光量パラメータ変化に基づいて、前記研磨装置に異常が発生した場合に相当する前記光量パラメータ変化の異常範囲を算出し、算出された前記光量パラメータ変化の異常範囲を記憶媒体に記憶させる、研磨装置。
【請求項4】
前記制御装置は、さらに、前記研磨装置による前記基板の研磨時において、前記記憶媒体に記憶された前記光量パラメータ変化の異常範囲と、前記光量パラメータ変化の実測値と、に基づいて、前記研磨装置に異常が発生したか否かを判定する、請求項3に記載の研磨装置。
【請求項5】
基板を保持する基板保持部材と研磨パッドを保持する研磨テーブルとを有し、前記基板を前記研磨パッドに押し付けながら前記基板を研磨する研磨装置であって、
入射光を投光する投光器、前記投光器から投光された前記入射光を集光して前記基板に入射させる集光器、及び、前記基板から反射された反射光を受光する受光器を有するセンサーヘッドと、
前記集光器を前記基板に対して相対的に変位させることで、前記集光器と前記基板との距離を変化させる変位機構と、
前記研磨パッドの摩耗量を測定する摩耗量測定装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記受光器が受光した前記反射光の光量に関係するパラメータである光量パラメータに基づいて前記基板の研磨状態を測定するとともに、前記集光器と前記基板との距離が予め設定された基準距離に維持されるように、前記摩耗量測定装置が測定した前記研磨パッドの摩耗量に基づいて前記変位機構を制御し、
前記制御装置は、さらに、前記光量パラメータが閾値よりも小さいか否かに基づいて、前記基板保持部材から前記基板が外れる基板スリップアウトが発生したか否かを判定する、研磨装置。
【請求項6】
基板を保持する基板保持部材と研磨パッドを保持する研磨テーブルとを有し、前記基板を前記研磨パッドに押し付けながら前記基板を研磨する研磨装置であって、
入射光を投光する投光器、前記投光器から投光された前記入射光を集光して前記基板に入射させる集光器、及び、前記基板から反射された反射光を受光する受光器を有するセンサーヘッドと、
前記集光器を前記基板に対して相対的に変位させることで、前記集光器と前記基板との距離を変化させる変位機構と、
前記研磨パッドの摩耗量を測定する摩耗量測定装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記受光器が受光した前記反射光の光量に関係するパラメータである光量パラメータに基づいて前記基板の研磨状態を測定するとともに、前記集光器と前記基板との距離が予め設定された基準距離に維持されるように、前記摩耗量測定装置が測定した前記研磨パッドの摩耗量に基づいて前記変位機構を制御し、
前記センサーヘッドは、前記研磨テーブルに配置されており、前記研磨装置による前記
基板の研磨中に、前記研磨テーブルとともに回転し、
前記制御装置は、さらに、前記研磨装置による前記基板の研磨中において、前記基板と前記センサーヘッドとの相対位置が、前記入射光が前記基板に入射するような位置になった場合に、前記投光器から前記入射光が投光されるように、前記投光器の投光タイミングを制御する、研磨装置。
【請求項7】
前記研磨パッドの一部には、前記集光器によって集光された前記入射光及び前記基板から反射された前記反射光が透過可能な光透過部材が配置されている、請求項6に記載の研磨装置。
【請求項8】
研磨装置による基板の研磨中に、投光器から投光された入射光を集光器によって集光して前記基板に入射させ、前記基板から反射された反射光を受光器によって受光し、前記受光器が受光した前記反射光の光量に関係するパラメータである光量パラメータに基づいて前記基板の研磨状態を測定するステップと、
前記研磨装置による前記基板の研磨中に、前記集光器と前記基板との距離が予め設定された基準距離に維持されるように、前記基板が押し付けられる研磨パッドの摩耗量に基づいて前記集光器を前記基板に対して相対的に変位させるステップと、を含み、
前記光量パラメータと、前記集光器と前記基板との距離と、が関連付けられたデータ群に基づいて機械学習をすることで、前記光量パラメータが所定値よりも大きくなるような前記集光器と前記基板との距離を算出し、この算出された距離を前記基準距離として用いる、研磨方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の研磨装置として、基板を保持する基板保持部材と研磨パッドを保持する研磨テーブルとを備え、基板を研磨パッドに押し付けながら基板を研磨する研磨装置が知られている(例えば、特許文献1、2、3参照)。また、従来、このような研磨装置として、基板の研磨状態を光学的に測定することが可能なものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。具体的には、このような研磨装置は、入射光を投光する投光器と、投光器から投光された入射光を集光して基板に投光させる集光器と、基板から反射された反射光を受光する受光器と、を有するセンサーヘッドを備え、受光器が受光した反射光の光量に関係するパラメータ(光量パラメータと称する)に基づいて基板の研磨状態を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-229060号公報
【文献】特開2001-235311号公報
【文献】特開2020-19115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来の研磨装置において、研磨装置の使用に伴って研磨パッドが摩耗した場合、集光器と基板との距離が予め設定された基準距離よりも近くなるおそれがある。このように集光器と基板との距離が基準距離よりも小さくなった場合、集光器によって集光された入射光の焦点が当初設定された箇所に合わなくなる「焦点ずれ」が生じるおそれがある。この焦点ずれが生じた場合、基板の研磨状態を精度良く測定することが困難になるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、基板の研磨状態を精度良く測定することができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る研磨装置は、基板を保持する基板保持部材と研磨パッドを保持する研磨テーブルとを有し、前記基板を前記研磨パッドに押し付けながら前記基板を研磨する研磨装置であって、入射光を投光する投光器、前記投光器から投光された前記入射光を集光して前記基板に入射させる集光器、及び、前記基板から反射された反射光を受光する受光器を有するセンサーヘッドと、前記集光器を前記基板に対して相対的に変位させることで、前記集光器と前記基板との距離を変化させる変位機構と、前記研磨パッドの摩耗量を測定する摩耗量測定装置と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記受光器が受光した前記反射光の光量に関係するパラメータである光量パラメータに基づいて前記基板の研磨状態を測定するとともに、前記集光器と前記基板との距離が予め設定された基準距離に維持されるように、前記摩耗量測定装置が測定した前記研磨パッドの摩耗量に基づいて前記変位機構を制御する。
【0007】
この態様によれば、研磨パッドが摩耗した場合であっても、集光器と基板との距離を基
準距離に維持することができるので、焦点ずれが生じることを抑制することができる。これにより、基板の研磨状態を精度良く測定することができる。
【0008】
(態様2)
上記の態様1において、前記制御装置は、前記基板の研磨状態として、前記基板の研磨終点を測定してもよい。この態様によれば、基板の研磨終点を精度良く測定することができる。
【0009】
(態様3)
上記の態様1又は態様2において、前記制御装置は、さらに、前記光量パラメータと、前記集光器と前記基板との距離と、が関連付けられたデータ群に基づいて機械学習をすることで、前記光量パラメータが所定値よりも大きくなるような前記集光器と前記基板との距離を算出し、この算出された距離を前記基準距離として用いてもよい。この態様によれば、人手によらずに、集光器と基板との距離を光量パラメータが所定値よりも大きくなるような距離にすることができる。
【0010】
(態様4)
上記の態様1~3のいずれか1態様において、前記制御装置は、さらに、前記研磨装置による前記基板の研磨速度に関係する条件であるプロセス条件と、前記光量パラメータと、が関連付けられたデータ群に基づいて機械学習をすることで、前記プロセス条件に対応する、研磨時間の経過に伴う前記光量パラメータの変化である光量パラメータ変化を予測し、予測された前記光量パラメータ変化に基づいて、前記研磨装置に異常が発生した場合に相当する前記光量パラメータ変化の異常範囲を算出し、算出された前記光量パラメータ変化の異常範囲を記憶媒体に記憶させてもよい。
【0011】
(態様5)
上記の態様4において、前記制御装置は、さらに、前記研磨装置による前記基板の研磨時において、前記記憶媒体に記憶された前記光量パラメータ変化の異常範囲と、前記光量パラメータ変化の実測値と、に基づいて、前記研磨装置に異常が発生したか否かを判定してもよい。この態様によれば、研磨装置に異常が発生したか否かを判定することができる。
【0012】
(態様6)
上記の態様1~5のいずれか1態様において、前記制御装置は、さらに、前記光量パラメータが閾値よりも小さいか否かに基づいて、前記基板保持部材から前記基板が外れる基板スリップアウトが発生したか否かを判定してもよい。この態様によれば、基板スリップアウトが発生したか否かを判定することができる。
【0013】
(態様7)
上記の態様1~6のいずれか1態様において、前記センサーヘッドは、前記研磨テーブルに配置されており、前記研磨装置による前記基板の研磨中に、前記研磨テーブルとともに回転し、前記制御装置は、さらに、前記研磨装置による前記基板の研磨中において、前記基板と前記センサーヘッドとの相対位置が、前記入射光が前記被研磨面に入射するような位置になった場合に、前記投光器から前記入射光が投光されるように、前記投光器の投光タイミングを制御してもよい。この態様によれば、入射光が基板に入射しないにもかかわらずに入射光を投光する、といった無駄なエネルギー消費を抑制することができる。
【0014】
(態様8)
上記の態様7において、前記研磨パッドの一部には、前記集光器によって集光された前記入射光及び前記基板から反射された前記反射光が透過可能な光透過部材が配置されてい
てもよい。この態様によれば、研磨パッドの光透過性能が低い場合であっても、基板の研磨状態を光学的に測定することができる。
【0015】
(態様9)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る研磨方法は、研磨装置による基板の研磨中に、投光器から投光された入射光を集光器によって集光して前記基板に入射させ、前記基板から反射された反射光を受光器によって受光し、前記受光器が受光した前記反射光の光量に関係するパラメータである光量パラメータに基づいて前記基板の研磨状態を測定するステップと、前記研磨装置による前記基板の研磨中に、前記集光器と前記基板との距離が予め設定された基準距離に維持されるように、前記基板が押し付けられる研磨パッドの摩耗量に基づいて前記集光器を前記基板に対して相対的に変位させるステップと、を含む。
【0016】
この態様によれば、研磨パッドが摩耗した場合であっても、集光器と基板との距離を基準距離に維持することができるので、焦点ずれが生じることを抑制することができる。これにより、基板の研磨状態を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(A)は、実施形態1に係る研磨装置の主要な構成を模式的に示す構成図である。図1(B)は、実施形態1に係る研磨機本体の模式的な平面図である。
図2】実施形態1に係る研磨装置の基板保持部材の周辺構成を拡大して模式的に示す断面図である。
図3】実施形態1に係るセンサーヘッド及び光源・分光モジュールの構成を説明するための模式図である。
図4】実施形態1に係る変位機構の構成を説明するための模式図である。
図5】実施形態1に係る制御装置によるセンサーユニット及び変位機構の制御の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態2に係る基準距離設定制御のフローチャートの一例である。
図7】実施形態3に係る異常判定制御のフローチャートの一例である。
図8図8(A)及び図8(B)は、実施形態3のステップS31に係る制御処理を説明するための模式図である。
図9】実施形態4に係る基板スリップアウト制御のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態では、同一又は対応する構成については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。また、本願の図面は、実施形態の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。
【0019】
(実施形態1)
図1(A)は、本発明の実施形態1に係る研磨装置100の主要な構成を模式的に示す構成図である。本実施形態に係る研磨装置100は、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)を行うことが可能な研磨装置である。具体的には、図1(A)に例示されている研磨装置100は、主として、研磨機本体10と、センサーユニット30と、変位機構60と、摩耗量測定装置70と、制御装置80とを備えている。なお、図1(A)において研磨機本体10は、その正面図が模式的に図示されている。また、研磨機本体10の一部の構成は模式的に断面図示されている。
【0020】
図1(B)は、研磨機本体10の模式的な平面図(上面図)である。なお、図1(B)において研磨機本体10の後述する研磨テーブル11は、図1(A)の研磨テーブル11
に対して、所定角度だけ回転した状態で図示されている。このため、図1(B)は、後述する光透過部材92が上方側から視認できるように描かれている。図1(A)及び図1(B)を参照して、研磨機本体10は、主として、研磨テーブル11と、基板保持部材12と、ドレッサ13とを備えている。
【0021】
研磨テーブル11は、研磨パッド90を保持するとともに、回転するように構成されている。具体的には、本実施形態に係る研磨テーブル11は円盤状の部材によって構成されており、その上面に、研磨パッド90が貼付されている。研磨パッド90の上面(表面)は、研磨面91に相当する。また、研磨テーブル11は、テーブル回転軸14に接続されている。このテーブル回転軸14が駆動機構(例えば回転モータ等)によって回転駆動されることで、研磨テーブル11は回転する。研磨中において、研磨面91には、後述する基板Wfの被研磨面Wfcが押し付けられる。研磨テーブル11の回転動作は、後述する制御装置80よって制御されている。なお、図1(B)に図示されている「R1」は、研磨テーブル11の回転方向の一例である。
【0022】
研磨パッド90の具体的な種類は、特に限定されるものではなく、硬質発砲タイプの研磨パッドや、不織布タイプの研磨パッド、スエードタイプの研磨パッド等、種々の研磨パッドを用いることができる。研磨パッド90は、基板Wfの種類に応じて適宜設定される。
【0023】
基板保持部材12は、基板Wfを保持するための部材である。基板保持部材12は、基板Wfの被研磨面Wfcを研磨パッド90に押し付けながら回転するように構成されている。具体的には、基板保持部材12は基板回転軸15に接続されている。この基板回転軸15が駆動機構(例えば回転モータ等)によって回転駆動されることで、基板保持部材12は回転する。なお、図1(B)に図示されている「R2」は、基板保持部材12の回転方向の一例である。また、基板回転軸15の上端には、基板回転軸15を下方に押圧するための押圧シリンダ(図示せず)が接続されている。この押圧シリンダによって基板回転軸15が下方に押圧されることで、基板保持部材12に保持された基板Wfは研磨パッド90に押圧される。
【0024】
図2は、研磨装置100の基板保持部材12の周辺構成を拡大して模式的に示す断面図であり、具体的には、図1(A)のA1付近の構成を拡大して模式的に断面図示している。図2に示すように、本実施形態に係る基板Wfは、基板コアWfaと、基板コアWfaの表面に形成された膜Wfbとを有している。この膜Wfbの表面(下面)が、被研磨面Wfcに相当する。基板コアWfaの材質は特に限定されるものではないが、本実施形態では、一例として、ガラス系素材を用いている。膜Wfbの材質は特に限定されるものではなく、無機化合物や、有機化合物等を用いることができる。本実施形態において、膜Wfbの内部には、配線パターン構造が含まれている。すなわち、本実施形態に係る基板Wfは、一例として、プリント基板である。
【0025】
図1(A)及び図1(B)を再び参照して、本実施形態に係る基板保持部材12は、研磨パッド90に対して揺動するように構成されている。具体的には、基板保持部材12の基板回転軸15は、基板揺動アーム16を介して基板揺動軸17に接続されている。基板揺動軸17が駆動機構によって揺動駆動されることで、基板揺動アーム16が基板揺動軸17を中心に円弧を描くように揺動し(すなわち、時計回り及び反時計回りに旋回し)、この結果、基板保持部材12も同様に揺動する。なお、この基板保持部材12は、一般に、「トップリング」や「研磨ヘッド」等と別称されている部材である。基板保持部材12の回転動作や揺動動作は、制御装置80によって制御されている。なお、図1(B)に図示されている「SW1」は、基板保持部材12の揺動方向の一例である。
【0026】
ドレッサ13は、研磨パッド90の研磨面91をドレッシングするための部材である。ドレッサ13の下面には、砥粒(例えばダイヤモンド等)が配置されている。ドレッサ13はドレッサ回転軸18に接続されている。このドレッサ回転軸18が駆動機構(例えば回転モータ等)によって回転駆動されることで、ドレッサ13は回転する。また、ドレッサ回転軸18の上端には、ドレッサ回転軸18を下方に押圧するための押圧シリンダ(図示せず)が接続されている。この押圧シリンダによってドレッサ回転軸18が下方に押圧されることで、ドレッサ13は研磨パッド90に押圧される。なお、図1(B)に図示されている「R3」は、ドレッサ13の回転方向の一例である。
【0027】
また、本実施形態に係るドレッサ13は、研磨パッド90に対して揺動するように構成されている。具体的には、ドレッサ13のドレッサ回転軸18は、ドレッサ揺動アーム19を介してドレッサ揺動軸20に接続されている。ドレッサ揺動軸20が駆動機構(例えば揺動モータ等)によって揺動駆動されることで、ドレッサ揺動アーム19がドレッサ揺動軸20を中心に揺動し、この結果、ドレッサ13も同様に揺動する。このドレッサ13の回転動作や揺動動作は、制御装置80によって制御されている。なお、図1(B)に図示されている「SW2」は、ドレッサ13の揺動方向の一例である。
【0028】
ドレッサ13によるドレッシング時においては、研磨パッド90の研磨面91に純水が供給されるとともに、研磨テーブル11が回転する。この状態で、ドレッサ13が揺動しながら回転することで、研磨面91をドレッシングする。このようなドレッシングが行われることで、研磨パッド90の研磨面91を整えて、研磨装置100による基板Wfの研磨速度を回復させることができる。
【0029】
研磨装置100は、研磨パッド90の研磨面91にスラリー(研磨スラリー)を供給するためのスラリー供給機構(図示せず)を備えている。スラリーとしては、例えば、酸化ケイ素や、酸化アルミニウム、酸化セリウム等の砥粒を含む溶液を用いることができる。このスラリーの具体的な種類は、膜Wfbの種類に応じて適宜設定すればよい。なお、スラリーの供給は、研磨パッド90の上方側から行ってもよく、下方側から行ってもよく、あるいは、上方側及び下方側の両方から行ってもよい。研磨装置100は、スラリーの存在下で研磨テーブル11及び基板保持部材12がそれぞれ回転することで、基板Wfの被研磨面Wfc(膜Wfb)を研磨する。
【0030】
制御装置80は、研磨装置100の動作を統合的に制御する。具体的には、本実施形態に係る制御装置80は、コンピュータを備えている。このコンピュータ(具体的にはマイクロコンピュータ)は、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)81や、非一時的な記憶媒体としての記憶部82、等を備えている。このコンピュータは、研磨装置100の被制御部と電気的に接続されている。制御装置80においては、プロセッサとしてのCPU81が、記憶部82に記憶されているプログラムの指令に基づいて作動することで、研磨機本体10の動作を制御する。また、本実施形態に係る制御装置80は、後述するセンサーユニット30や変位機構60の動作も制御している。センサーユニット30、変位機構60、及び、摩耗量測定装置70を制御する制御装置80は、「研磨状態測定システム」としての機能を有している。
【0031】
なお、本実施形態においては、一つの制御装置80が、研磨機本体10、センサーユニット30及び変位機構60の制御装置としての機能を有しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、研磨装置100は、研磨機本体10用の制御装置、センサーユニット30用の制御装置、及び、変位機構60用の制御装置を個別に備えていてもよい(すなわち、複数の制御装置によって被制御部を制御してもよい)。
【0032】
続いて、センサーユニット30について説明する。図1(A)を参照して、センサーユ
ニット30は、センサーヘッド40と、光源・分光モジュール50とを備えている。本実施形態に係るセンサーヘッド40及び光源・分光モジュール50は、一例として、研磨テーブル11に配置されている。センサーヘッド40及び光源・分光モジュール50は、研磨装置100による基板Wfの研磨中に、研磨テーブル11とともに回転する。
【0033】
図2及び図1(B)に示すように、本実施形態に係る研磨パッド90の一部には、後述する入射光L1及び反射光L2が通過可能な、光透過部材92が配置されている。本実施形態において、光透過部材92は、光透過性を有する素材、具体的には、透明プラスチックや透明ガラス等のような透明な素材からなる窓部材(すなわち透光窓部材)によって構成されている。後述する集光器42によって集光された入射光L1は、この光透過部材92を通過してから基板Wf(具体的には被研磨面Wfc)に入射する。また、基板Wfから反射された反射光L2は、この光透過部材92を通過してから、後述する受光器43に受光される。
【0034】
本実施形態のように、研磨パッド90の一部に光透過部材92が配置されることで、研磨パッド90の光透過性能が低い場合であっても、基板Wfの研磨状態を光学的に測定することができる。
【0035】
図2に示すように、本実施形態に係るセンサーヘッド40は、筒状の治具31を介して、研磨テーブル11に接続されている。この治具31は、後述する入射光L1及び反射光L2が、この治具31の内部を通過できるように、研磨テーブル11に接続されている。具体的には、本実施形態に係る治具31は、一例として、研磨テーブル11に設けられた筒状の孔に嵌められている。また、本実施形態に係る治具31の上端面は、光透過部材92の下面に配置されたガラス板32の下面に接続されている。このガラス板32によって、例えば、スラリー等の異物が治具31の内部(筒の内部)に入り込むことが効果的に抑制されている。なお、治具31は、治具31とガラス板32との間に隙間が形成されないように、ガラス板32の下面に密接していることが好ましい。
【0036】
図3は、センサーヘッド40及び光源・分光モジュール50の構成を説明するための模式図である。なお、図3において、後述する変位機構60の図示は省略されている。センサーヘッド40は、投光器41と、集光器42と、受光器43とを備えている。光源・分光モジュール50は、光源51と、分光器52とを備えている。
【0037】
光源51の種類は、特に限定されるものではなく、レーザー発光装置やハロゲンランプ等を用いることができる。本実施形態においては、光源51の一例として、レーザー発光装置を用いている。光源51の動作は、制御装置80によって制御されている。
【0038】
投光器41、集光器42及び受光器43は、センサーヘッド40の内部に収容されている。投光器41は、所定の方向に向けて入射光L1を投光する機器である。具体的には、本実施形態に係る投光器41は、入射光L1を基板Wfの方向に向けて投光している。また、本実施形態に係る投光器41は、光ファイバーによって構成されている。この光ファイバーの一端(基板Wfの側とは反対側の端部)は、光源51に接続されている。光源51から発光された光は、この光ファイバーを通過して、入射光L1として投光される。
【0039】
集光器42は、投光器41から投光された入射光L1を集光して基板Wf(具体的には被研磨面Wfc)に入射させる機器である。このような機能を有するものであれば、集光器42の具体的な構成は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、集光器42の一例として、レンズ(すなわち、集光レンズ)を用いている。この集光器42としてのレンズは、投光器41と基板Wfとの間に配置されている。なお、図3において、前述したガラス板32及び光透過部材92の図示は省略されているが、実際は、集光器42
によって集光された入射光L1は、ガラス板32及び光透過部材92を通過してから基板Wfに入射する。
【0040】
また、本実施形態において、集光器42と基板Wfとの距離(D)は、所定の「基準距離」に設定されている。なお、本実施形態において、この集光器42と基板Wfとの距離(D)は、具体的には、「集光器42としてのレンズの主点(P)と基板Wfの被研磨面Wfcとの距離」を意味している。但し、この構成に限定されるものではなく、例えば、集光器42と基板Wfとの距離(D)は、集光器42における他の所定箇所と基板Wfにおける他の所定箇所との距離であってもよい。
【0041】
また、本実施形態において、「基準距離」は、集光器42の焦点距離と同じ値に設定されている。これにより、本実施形態において、集光器42によって集光された入射光L1は、その焦点が基板Wfの被研磨面Wfcに合っている。
【0042】
受光器43は、基板Wfから反射された反射光L2を受光する機器である。具体的には、本実施形態に係る受光器43は、光ファイバーによって構成されている。この光ファイバーの一端(基板Wfの側とは反対側の端部)は、分光器52に接続されている。
【0043】
分光器52は、反射光L2を分光して、分光された光の光量パラメータ(光量に関係するパラメータ)をデジタル信号に変換する機器である。本実施形態では、光量パラメータの一例として、光量又は反射率を用いる。分光器52によって変換されたデジタル信号は、制御装置80に伝えられる。
【0044】
制御装置80は、光源51を制御することで、投光器41からの入射光L1の投光タイミングを制御する。具体的には、本実施形態に係る制御装置80は、研磨装置100による研磨中に、基板Wfとセンサーヘッド40との相対位置が、入射光L1が基板Wfに入射するような位置になった場合に、投光器41から入射光L1を投光させている。この詳細は以下のとおりである。
【0045】
まず、センサーヘッド40は研磨テーブル11とともに回転しており、さらに、基板保持部材12も揺動している。このため、基板保持部材12に保持された基板Wfの下方をセンサーヘッド40が通過するタイミングで投光器41が入射光L1を投光すれば、入射光L1を基板Wfに確実に入射させることができる。
【0046】
そこで、本実施形態においては、基板Wfの下方をセンサーヘッド40が通過するような(すなわち、入射光L1が基板Wfに入射するような)、研磨テーブル11の回転位相(rad)の範囲及び基板保持部材12の揺動位相(rad)の範囲(これらを「目標位相範囲」と称する)を予め求めておき、これを制御装置80の記憶部82に記憶させておく。そして、制御装置80は、研磨テーブル11の回転位相を検出するセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて、研磨テーブル11の回転位相を取得し、基板保持部材12の揺動位相を検出するセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて、基板保持部材12の揺動位相を取得し、この取得された回転位相及び揺動位相が予め設定された目標位相範囲に入った場合に、光源51から光を発光させることで、投光器41から入射光L1を投光させる。このようにして、制御装置80は、研磨装置100による研磨中に入射光L1を基板Wfの被研磨面Wfcに確実に入射させている。
【0047】
上記の構成によれば、入射光L1が基板Wfに入射しないにもかかわらずに入射光L1を投光する、といった無駄なエネルギー消費を抑制することができる。
【0048】
制御装置80は、受光器43が受光した反射光L2に基づいて基板Wfの研磨状態を測
定する。具体的には、本実施形態に係る制御装置80は、反射光L2の光量に関係する光量パラメータ(本実施形態では、一例として、光量又は反射率)に基づいて、基板Wfの研磨状態を測定する。また、本実施形態に係る制御装置80は、基板Wfの研磨状態の一例として、研磨時における基板Wfの膜厚に関するデータを測定する。より具体的には、研磨時における基板Wfの「研磨終点」を測定する。なお、このような反射光L2に基づいて研磨終点を測定する測定メカニズム自体は、例えば特許文献1や特許文献2等の公知技術を適用できるものであり、その具体的な内容は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る制御装置80は、例えば、以下の測定メカニズムで研磨終点を測定している。
【0049】
本実施形態に係る制御装置80は、分光器52から送信されたデータに基づいて、反射光L2の光量パラメータを指数化し、次いで、この指数化されたデータの時間波形のノイズ除去処理を実行し、このノイズ除去処理が実行された後の波形を解析して光量パラメータや特徴点(微分値の極大値・極小値や閾値等の特徴点)を検出する。この検出された値(検出値)は、膜厚と相関関係を有している。そこで、制御装置80は、この検出値に基づいて基板Wfの膜厚を算出して取得するとともに、この基板Wfの膜厚が予め設定された基準膜厚になった場合に、基板Wfの膜厚が研磨終点に到達したと判断する。このようにして、制御装置80は基板Wfの研磨終点を測定している。制御装置80は、基板Wfの膜厚が研磨終点に到達したことを判定した場合、研磨装置100による研磨を終了させる。
【0050】
続いて、変位機構60、摩耗量測定装置70、及び、制御装置80による変位機構60の制御について説明する。図4は、変位機構60の構成を説明するための模式図である。変位機構60は、制御装置80からの指令を受けて集光器42を基板Wfに対して相対的に変位させることで、集光器42と基板Wfとの距離(D)を変化させるように構成された機構である。具体的には、本実施形態に係る変位機構60は、制御装置80の指令を受けて集光器42を上下方向に変位させることで、集光器42を基板Wfの被研磨面Wfcに接近させる方向、又は、被研磨面Wfcから離間させる方向に変位させる。
【0051】
このような機能を有するものであれば、変位機構60の具体的な構成は特に限定されるものではなく、対象部材を上下方向に変位させることが可能な公知の技術を適用することができる。本実施形態においては、変位機構60の具体例として、直動式アクチュエータ61を用いている。この直動式アクチュエータ61の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、直動式アクチュエータ61の一例として、上下方向に延在するレール62と、このレール62に沿ってスライドするスライダー63とを備えるものを用いている。このスライダー63は、集光器42を保持する集光器保持部材44に接続されている。このスライダー63が、上下方向に変位することで、集光器42も上下方向に変位する。
【0052】
なお、変位機構60の構成は、図4に例示したものに限定されるものではない。例えば、変位機構60として、ピストン・シリンダタイプの直動式アクチュエータや、ボールねじタイプの直動式アクチュエータ等のような、公知の他の機構を用いることもできる。
【0053】
また、変位機構60は、センサーヘッド40のうち集光器42のみを変位させるのではなく、投光器41や受光器43も集光器42とともに変位させてもよい。具体的には、この場合、変位機構60は、例えばセンサーヘッド40自体を変位させればよい。
【0054】
図1(A)を参照して、摩耗量測定装置70は、研磨パッド90の摩耗量(μm)を測定する装置である。具体的には、本実施形態に係る摩耗量測定装置70は、変位センサ71を備えている。本実施形態に係る変位センサ71は、ドレッサ13のドレッサ回転軸1
8の上下方向の変位を測定することで、ドレッサ13の上下方向の変位を測定し、この測定結果に基づいて、研磨パッド90の摩耗量を測定する。この変位センサ71の検出結果は、制御装置80に伝えられる。なお、本実施形態に係る摩耗量測定装置70は、制御装置80の指令を受けて、少なくとも研磨装置100による基板Wfの研磨中に、研磨パッド90の摩耗量を測定する。このような摩耗量測定装置70としては、前述した特許文献3に記載されているような公知技術を適用することができるので、摩耗量測定装置70のこれ以上詳細な説明は省略する。
【0055】
図5は、本実施形態に係る制御装置80によるセンサーユニット30及び変位機構60の制御の一例を示すフローチャートである。制御装置80は、研磨装置100による基板Wfの研磨中に、受光器43が受光した反射光L2の光量パラメータに基づいて基板Wfの研磨状態を測定する(ステップS10;これを「研磨状態測定制御」と称する)。さらに、制御装置80は、研磨装置100による基板Wfの研磨中に、集光器42と基板Wfとの距離(D)が予め設定された基準距離に維持されるように、摩耗量測定装置70が測定した研磨パッド90の摩耗量に基づいて変位機構60を制御する(ステップS11;これを「変位制御」と称する)。なお、ステップS10とステップS11は、基板Wfの研磨中に同時に実行されてもよい。あるいは、ステップS10とステップS11は、同じ基板Wfの研磨処理中であれば、別々に(非同時に)実行されてもよい。
【0056】
ステップS11に係る変位制御において、具体的には制御装置80は、研磨パッド90の摩耗量だけ集光器42を基板Wfから離間させるように変位機構60を制御することで、集光器42と基板Wfとの距離を基準距離に維持させる。前述したように、本実施形態において、この基準距離は、集光器42の焦点距離と同じ値に設定されている。この変位制御について、数値例を挙げて具体的に説明すると次のようになる。
【0057】
まず、研磨装置100による基板Wfの研磨が開始される前の状態において、例えば、新品の研磨パッド90が研磨テーブル11に保持されたとする。この研磨テーブル11に保持された研磨パッド90における、集光器42と基板Wfとの距離(D)は基準距離に設定されている。そして、研磨装置100の使用に伴って、研磨パッド90が例えば10μm摩耗したとする。具体的には、研磨装置100による基板Wfの研磨中に、この基板Wfの研磨の進行に伴って、研磨パッド90が10μm摩耗したとする。この場合、制御装置80は、変位センサ71の検出結果に基づいて、研磨パッド90の摩耗量が10μmであることを取得する。
【0058】
ここで、仮に、研磨装置100が変位機構60を備えていない場合、上述したように研磨パッド90が10μmだけ摩耗したとき、基板Wfと集光器42との距離は当初の基準距離よりも10μmだけ短くなってしまう。この場合、前述した「焦点ずれ」が生じるおそれがある。
【0059】
これに対して本実施形態によれば、制御装置80は、研磨装置100による基板Wfの研磨中において、変位機構60を制御して、集光器42を10μmだけ下方側に変位させることで、集光器42を10μmだけ基板Wfから離間させる。これより、基板Wfと集光器42との距離を、当初設定された基準距離(すなわち、焦点距離)に維持することができる。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る研磨装置100によれば、研磨パッド90が摩耗した場合であっても、集光器42と基板Wfとの距離を基準距離に維持することができるので、焦点ずれが生じることを抑制することができる。これにより、基板Wfの研磨状態を精度良く測定することができる。具体的には、本実施形態によれば、基板Wfの研磨終点を精度良く測定することができる。
【0061】
(研磨方法)
なお、本実施形態に係る研磨方法は、上述した研磨装置100によって実現されている。具体的には、本実施形態に係る研磨方法は、研磨装置100による基板Wfの研磨中に、受光器43が受光した反射光L2の光量パラメータに基づいて基板Wfの研磨状態を測定するステップ(「研磨状態測定ステップ」と称する)と、研磨装置100による基板Wfの研磨中に、集光器42と基板Wfとの距離が予め設定された基準距離に維持されるように、摩耗量測定装置70が測定した研磨パッド90の摩耗量に基づいて変位機構60を制御するステップ(「変位ステップ」と称する)と、を含んでいる。
【0062】
この研磨状態測定ステップは図5のステップS10に相当し、変位ステップはステップS11に相当する。この本実施形態に係る研磨方法の詳細は、上述した研磨装置100の説明と重複するので、省略する。
【0063】
以上のような本実施形態に係る研磨方法によっても、焦点ずれが生じることを抑制して、基板Wfの研磨状態を精度良く測定することができる。
【0064】
(実施形態2)
続いて、本発明の実施形態2について説明する。本実施形態に係る研磨装置100は、制御装置80が以下に説明する基準距離設定制御をさらに実行する点で、前述した実施形態1と異なっている。
【0065】
具体的には、本実施形態に係る制御装置80は、基準距離設定制御において、受光器43が受光した反射光L2の光量パラメータと、集光器42と基板Wfとの距離と、が関連付けられたデータ群に基づいて機械学習をすることで、反射光L2の光量パラメータが所定値よりも大きくなるような集光器42と基板Wfとの距離を算出し、この算出された距離を「集光器42と基板Wfとの基準距離」として用いる。この基準距離設定制御についてフローチャートを用いて説明すると次のようになる。
【0066】
図6は、本実施形態に係る制御装置80が実行する基準距離設定制御のフローチャートの一例である。ステップS20において、制御装置80は、受光器43が受光した反射光L2の光量パラメータと、集光器42と基板Wfとの距離(D)と、が関連付けられたデータ群を取得する。この光量パラメータは、反射光L2の光量に関係するような物理パラメータであり、本実施形態では、一例として、光量又は反射率を用いている。
【0067】
制御装置80は、研磨装置100による研磨が行われる毎に、上記の光量パラメータ及び距離(D)を制御装置80の記憶部82に記憶させる。これにより、研磨装置100の使用回数が増えるにつれて、データ群のデータ量を増大させることができる。
【0068】
次いで、制御装置80は、ステップS20で取得されたデータ群に基づいて機械学習をすることで、受光器43が受光した反射光L2の光量パラメータが所定値よりも大きくなるような集光器42と基板Wfとの距離を算出し、この算出された距離を基準距離として用いる(ステップS21)。なお、このステップS21は、研磨装置100による基板Wfの研磨が開始される前に実行される。
【0069】
具体的には、このステップS21において、制御装置80は、ステップS20で取得されたデータ群に基づいて機械学習をすることで、光量パラメータと、集光器42と基板Wfとの距離と、の相関関係(すなわち、回帰式)を算出する。制御装置80は、この算出された相関関係を用いて、「光量パラメータが所定値よりも大きくなるような集光器42と基板Wfとの距離」を算出する。そして、制御装置80は、この算出された距離を基準
距離として用いる。
【0070】
上述した「光量パラメータが所定値よりも大きくなるような集光器42と基板Wfとの距離」の「所定値」としては、例えば、光量パラメータの最大値の90%以上の値を用いることが好ましく、光量パラメータの最大値の95%以上の値を用いることがより好ましく、98%以上の値を用いることがさらに好ましい。本実施形態では、この「所定値」として、光量パラメータの最大値(すなわち、最大値の100%)を用いている。なお、この光量パラメータの最大値とは、具体的には、ステップS20で取得されたデータ群の中で最も大きな値の光量パラメータを意味している。
【0071】
すなわち、本実施形態に係る制御装置80は、ステップS21において、「光量パラメータがステップS20で取得されたデータ群の中で最大となるような集光器42と基板Wfとの距離」を算出し、この算出された距離を基準距離として用いている。なお、集光器42と基板Wfとの距離が集光器42の焦点距離に合致した場合に、光量パラメータは最大になると考えられる。
【0072】
上述したステップS21の後に、制御装置80はステップS22を実行する。このステップS22も、研磨装置100による基板Wfの研磨が開始される前に実行される。このステップS22において、制御装置80は、集光器42と基板Wfとの距離が、ステップS21で算出された基準距離になるように、変位機構60を制御する。
【0073】
これにより、本実施形態によれば、人手によらずに、集光器42と基板Wfとの距離を、反射光L2の光量パラメータが所定値より大きくなるような距離にすることができる。具体的には、本実施形態によれば、人手によらずに、集光器42と基板Wfとの距離を、反射光L2の光量パラメータが最大となるような距離にすることができる。
【0074】
(実施形態3)
続いて、本発明の実施形態3について説明する。本実施形態に係る研磨装置100は、制御装置80が以下に説明する異常判定制御をさらに実行する点で、前述した実施形態1や実施形態2と異なっている。
【0075】
図7は、本実施形態に係る制御装置80が実行する異常判定制御のフローチャートの一例である。ステップS30において、制御装置80は、研磨装置100による基板Wfの研磨速度(研磨レート)に関係する条件である「プロセス条件」と、受光器43が受光した反射光L2の光量パラメータと、が関連付けられたデータ群を取得する。
【0076】
このプロセス条件としては、研磨速度に関係する条件であれば特に限定されるものではないが、例えば、基板Wfの種類、基板Wfを研磨パッド90に押し付けるための荷重である研磨荷重(N)、研磨テーブル11の回転数(rpm)、基板保持部材12の回転数(rpm)、研磨パッド90に供給されるスラリーの種類、基板Wfの研磨時間(sec)、及び、研磨パッド90の種類、のうち少なくとも一つを含む条件を用いることができる。一例として、本実施形態に係るプロセス条件は、これらの全ての事項を含んでいる。
【0077】
なお、基板Wfの種類としては、例えば、基板Wfの被研磨面Wfcの材質や、基板Wfの被研磨面Wfcの形状等の情報を用いることができる。スラリーの種類としては、例えば、スラリーの材質やスラリーの濃度等の情報を用いることができる。研磨パッド90の種類としては、例えば、研磨パッド90の研磨面91の材質や研磨面91の表面粗さ等の情報を用いることができる。
【0078】
また、制御装置80は、研磨装置100による研磨が行われる毎に、上述したプロセス
条件と光量パラメータとを制御装置80の記憶部82に記憶させる。これにより、研磨装置100の使用回数が増えるにつれて、データ群のデータ量を増大させることができる。
【0079】
ステップS30の次に制御装置80は、ステップS31を実行する。このステップS31において、制御装置80は、ステップS30で取得されたデータ群に基づいて機械学習をすることで、プロセス条件に対応する、研磨時間の経過に伴う反射光L2の光量パラメータの変化である「光量パラメータ変化」を予測する。そして、制御装置80は、この予測された光量パラメータ変化に基づいて、研磨装置100に異常が発生した場合に相当する光量パラメータ変化の範囲(すなわち、光量パラメータ変化の異常範囲)を算出し、この算出された光量パラメータ変化の異常範囲を記憶部82(記憶媒体)に記憶させる。なお、このステップS31は、研磨装置100による基板Wfの研磨が開始される前に実行される。
【0080】
ここで、プロセス条件(研磨速度に関係する条件)が異なる場合、研磨時間の経過に伴う基板Wfの厚み(膜厚)の減少速度も異なる結果、光量パラメータ変化も異なる態様をとる。したがって、プロセス条件と光量パラメータ変化との間には相関関係が認められる。このような知見に基づいて、本実施形態に係る制御装置80は、上述したステップS31のように、プロセス条件と光量パラメータとが関連付けられたデータ群に基づいて機械学習をすることで光量パラメータ変化を予測している。また、本実施形態において、「研磨装置100に異常が発生した」とは、具体的には、研磨装置100による基板Wfの研磨速度が正常な速度範囲に入っていないということを意味している。
【0081】
上述したステップS31に係る制御処理について図を用いて説明すると、次のようになる。図8(A)及び図8(B)は、ステップS31に係る制御処理を説明するための模式図である。具体的には、図8(A)は、プロセス条件が所定の条件(「条件A」と称する)のときの光量パラメータ変化の様子を模式的に示している。一方、図8(B)は、プロセス条件が条件Aとは異なる「条件B」のときの光量パラメータ変化の様子を模式的に示している。なお、図8(A)及び図8(B)の縦軸は光量パラメータ(本実施形態では、一例として光量又は反射率)であり、横軸は研磨時間である。
【0082】
図8(A)のライン200aは、プロセス条件が条件Aのときに、ステップS31で予測された光量パラメータ変化を模式的に示すラインである。ライン201aとライン202aとによって区画された範囲(ライン201aの光量パラメータ以上、ライン202aの光量パラメータ以下の範囲)は、研磨装置100が正常な場合に相当する光量パラメータ変化の範囲(「光量パラメータ変化の正常範囲」)である。そして、このライン201aよりも光量パラメータの小さい範囲、及び、ライン202aよりも光量パラメータの大きい範囲は、研磨装置100に異常が発生した場合に相当する光量パラメータ変化の範囲(「光量パラメータ変化の異常範囲」)である。
【0083】
制御装置80は、ライン200aの光量パラメータ変化から所定値を減算することでライン201aの光量パラメータ変化を求め、ライン200aの光量パラメータ変化に所定値を加算することでライン202aの光量パラメータ変化を求める。そして、制御装置80は、このライン201aよりも光量パラメータ変化の小さい範囲、及び、ライン202aよりも光量パラメータ変化の大きい範囲を、「条件Aに対応する光量パラメータ変化の異常範囲」として算出し、これを記憶部82に記憶させる。
【0084】
図8(B)のライン200bは、プロセス条件が条件Bのときに、ステップS31で予測された光量パラメータ変化を模式的に示すラインである。ライン201bとライン202bとによって区画された範囲(ライン201bの光量パラメータ以上、ライン202bの光量パラメータ以下の範囲)は、研磨装置100が正常な場合に相当する光量パラメー
タ変化(「光量パラメータ変化の正常範囲」)である。そして、このライン201bよりも光量パラメータの小さい範囲、及び、ライン202bよりも光量パラメータの大きい範囲は、研磨装置100に異常が発生した場合に相当する光量パラメータ変化の範囲(「光量パラメータ変化の異常範囲」)である。
【0085】
制御装置80は、ライン200bの光量パラメータ変化から所定値を減算することでライン201bの光量パラメータ変化を求め、ライン200bの光量パラメータ変化に所定値を加算することでライン202bの光量パラメータ変化を求める。そして、制御装置80は、このライン201bよりも光量パラメータ変化の小さい範囲、及び、ライン202bよりも光量パラメータ変化の大きい範囲を、「条件Bに対応する光量パラメータ変化の異常範囲」として算出し、これを記憶部82に記憶させる。
【0086】
以上のように、図7のステップS31は実行されている。ステップS31の後に制御装置80は、ステップS32を実行する。このステップS32は、研磨装置100による基板Wfの研磨時に実行される。このステップS32において、制御装置80は、ステップS31で記憶された光量パラメータ変化の異常範囲と、センサーユニット30を用いて測定された光量パラメータ変化の実測値(受光器43が受光した反射光L2に基づいて測定された光量パラメータ変化の実測値)と、に基づいて、研磨装置100に異常が発生したか否かを判定する。具体的には、制御装置80は、研磨時において測定された光量パラメータ変化の実測値が記憶部82に記憶されている光量パラメータ変化の異常範囲に入っているか否かを判定することで、研磨装置100に異常が発生したか否かを判定する。
【0087】
例えば、研磨装置100による研磨のプロセス条件が条件Aの場合、制御装置80は、ステップS32において、光量パラメータ変化の実測値が図8(A)の異常範囲に入っているときには、研磨装置100に何等かの異常が発生したと判定する。一方、制御装置80は、光量パラメータ変化の実測値が図8(A)の異常範囲に入っていないとき(正常範囲に入っているとき)には、研磨装置100に異常が発生していない(正常である)と判定する。
【0088】
また、例えば、研磨装置100による研磨のプロセス条件が条件Bの場合、制御装置80は、光量パラメータ変化の実測値が図8(B)の異常範囲に入っているときには、研磨装置100に何等かの異常が発生したと判定し、図8(B)の異常範囲に入っていないとき(正常範囲に入っているとき)には、研磨装置100に異常が発生していない(正常である)と判定する。
【0089】
以上説明したような本実施形態によれば、研磨装置100に異常が発生したか否かを判定することができる。
【0090】
なお、制御装置80は、この異常判定の判定結果を制御装置80の記憶部82に記憶させる。また、研磨装置100は、所定の情報を研磨装置100のユーザに報知する報知装置(図示せず)を備えていてもよい。そして、この場合、制御装置80は、異常判定の判定結果を報知装置に報知させてもよい。この報知装置としては、ランプや、ブザーや、ディスプレイや、これらの組み合わせ等を用いることができる。
【0091】
(実施形態4)
続いて、本発明の実施形態4について説明する。本実施形態に係る研磨装置100は、以下に説明する基板スリップアウト判定制御をさらに実行する点で、前述した実施形態1や実施形態2や実施形態3と異なっている。
【0092】
具体的には、この基板スリップアウト判定制御において、本実施形態に係る制御装置8
0は、受光器43が受光した反射光L2の光量パラメータが予め設定された閾値よりも小さいか否かに基づいて、基板保持部材12から基板Wfが外れる「基板スリップアウト」が発生したか否かを判定する。
【0093】
基板保持部材12に基板Wfが保持されている場合は、反射光L2の光量パラメータは少なくとも閾値以上の値を有するが、基板スリップアウトが生じた場合には、反射光L2の光量パラメータは閾値よりも小さくなる。この性質を利用して、制御装置80は、反射光L2の光量パラメータと閾値とを比較することで、基板スリップアウトの発生の有無を判定している。この基板スリップアウト制御について、フローチャートを用いて説明すると次のようになる。
【0094】
図9は、本実施形態に係る制御装置80が実行する基板スリップアウト制御のフローチャートの一例である。制御装置80は、研磨装置100による基板Wfの研磨中に、図9のフローチャートを実行する。ステップS40において、制御装置80は、受光器43が受光した反射光L2の光量パラメータ(光量パラメータの実測値)が、予め設定された閾値よりも小さいか否かを判定する。この閾値は、予め実験、シミュレーション等を行って適切な値を求めておき、制御装置80の記憶部82に記憶させておけばよい。
【0095】
ステップS40でYESと判定された場合(すなわち、反射光L2の光量パラメータが閾値よりも小さい場合)、制御装置80は、基板スリップアウトが発生したと判定する(ステップS41)。一方、ステップS40でNOと判定された場合、制御装置80は、基板スリップアウトが発生していないと判定する(ステップS42)。
【0096】
以上説明したような本実施形態によれば、基板スリップアウトが発生したか否かを判定することができる。
【0097】
なお、制御装置80は、この基板スリップアウトの判定結果を、制御装置80の記憶部82に記憶させる。また、研磨装置100が前述した報知装置を備えている場合には、制御装置80は、この基板スリップアウトの判定結果を報知装置に報知させてもよい。
【0098】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
11 研磨テーブル
12 基板保持部材
40 センサーヘッド
41 投光器
42 集光器
43 受光器
60 変位機構
70 摩耗量測定装置
80 制御装置
82 記憶部(記憶媒体)
90 研磨パッド
91 研磨面
92 光透過部材
100 研磨装置
L1 入射光
L2 反射光
Wf 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9