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特許7494375自動分析装置、および自動分析装置における検体の吸引方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】自動分析装置、および自動分析装置における検体の吸引方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
G01N35/10 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023500680
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2022003085
(87)【国際公開番号】W WO2022176556
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2021023092
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】嘉部 好洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】深谷 昌史
(72)【発明者】
【氏名】坂田 健士郎
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-063179(JP,A)
【文献】特開昭50-011486(JP,A)
【文献】特開2010-048593(JP,A)
【文献】特開平11-271322(JP,A)
【文献】特開2019-120510(JP,A)
【文献】国際公開第2010/104072(WO,A1)
【文献】特開2019-148508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器に保持された検体を分注する検体分注機構と、
前記検体の液面を検出する液面検知部と、
前記検体分注機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検体を吸引する際に、液面を検知した後に、前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を、該先端が前記検体容器の底面に接触しない範囲で下降,停止させ、その後に前記検体分注機構の先端を、該先端が液面から離脱しない範囲で上昇,停止させ、その後に前記検体を吸引しながら追下降させるように前記検体分注機構を制御する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を下降,停止させ、その後に前記検体を吸引しながら追下降させるように前記検体分注機構を制御する第2モードを有する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記液面を検知した後に、前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を下降,停止させる際の突っ込み量を、前記第2モードにおける前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を下降,停止させる際の突っ込み量より前記液面に近い位置とする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記液面を検知した後に、前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を下降,停止させる際の降下速度を、前記第2モードにおける前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を下降させる際の降下速度より遅くする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記液面を検知した後に、前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を下降,停止させる際の降下速度を、前記検体分注機構の先端を上昇,停止させても1つの分析サイクル内に前記検体の分注動作が収まる範囲内で、前記第2モードにおける前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を下降させる際の降下速度より遅くする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記検体容器の種類を特定する容器特定部を更に備え、
前記制御部は、前記容器特定部によって特定された前記検体容器の種類に応じて、前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を下降,停止させ、その後に前記検体分注機構の先端を上昇,停止させ、その後に前記検体を吸引しながら追下降させるように前記検体分注機構を制御するモードと、前記第2モードと、のいずれかを実行する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
検体容器に保持された検体を分注する検体分注機構と、前記検体の液面を検出する液面検知部と、前記検体分注機構の動作を制御する制御部と、を備えた自動分析装置における検体の吸引方法であって、
液面を検知した後に、
前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を、該先端が前記検体容器の底面に接触しない範囲で下降,停止させる工程と、
その後に前記検体分注機構の先端を、該先端が液面から離脱しない範囲で上昇,停止させる工程と、
その後に前記検体を吸引しながら追下降させる工程と、を有する
ことを特徴とする自動分析装置における検体の吸引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学分析に用いる自動分析装置、および自動分析装置の制御方法の技術に関し、特には、微量検体を分注可能な検体分注シーケンスを有する自動分析装置、および自動分析装置における検体の吸引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固検査に関する測定と、血液凝固検査とは異なる検査に関する測定とを行う場合に、血液凝固検査に関する測定を適正に行うことができる検体測定方法の一例として、特許文献1には、血液凝固検査に関する第1測定と、血液凝固検査とは異なる検査に関する第2測定とを行う検体測定方法において、第1測定に用いられる検体を検体容器から第1容器に分注し、第1測定に用いられる検体の分注が行われた検体容器から、第2測定に用いられる検体を第1容器とは異なる第2容器に分注し、第1容器に分注された検体に基づいて第1測定を行い、第2容器に分注された検体に基づいて第2測定を行う、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-120510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動分析装置とは、血液等の生物学的検体(サンプル等とも呼ばれる)と、当該検体中の測定対象成分と特異的に反応する分析試薬とを反応させ、この反応により生成した複合体を電気化学発光などの分光学的手法により検出する装置を指し、測定対象成分の検出から結果の出力までを全て自動で行う。
【0005】
このような自動分析装置では、プローブが検体を吸引する工程(以下、検体分注シーケンスと記載する)を有する。
【0006】
従来の検体分注シーケンスは、基本的に以下4つの工程に基づいて実施される。
(1)プローブを検体が収容された検体容器の上まで移動させる。
(2)プローブ先端が液面を検知するまでプローブを下降させる。液面を検知した後はプローブ下降を減速し、プローブ先端を一定量検体内に突っ込んだ状態で停止する。
(3)検体を吸引する。この際、プローブ先端が検体液面から離脱しないようにプローブを追下降させる。
(4)プローブを上昇させる。
【0007】
このような検体吸引工程では、検体容器の種類ごとに検査不可の検体量(デッドボリューム)が存在する。デッドボリューム以下の検体量を分注しようすると正常な吸引ができなくなり、分析データ異常リスクが存在するため、デッドボリューム以下の検体を分注することはできない。
【0008】
しかしながら、例えば小児や採血困難な患者では、採血可能な検体量が極めてわずかな場合がある。このような場合に備えて、従来から微量検体専用の容器を使用することでデッドボリュームを低減し、微量検体の分注が行われている。
【0009】
ここで、微量検体の場合は、容器底から液面までの高さが低い、との制約がある。そのため、シーケンス(2)やシーケンス(3)において、液面検知してから停止するまでの間に、プローブ先端が容器底に接触してしまう虞がある。
【0010】
これに対し、従来のような分注制御では、プローブ先端が閉塞されてしまい、吸引不良ケースが生じる虞がある。もしくは、プローブ先端が容器底に過度に接触すると、装置が異常下降検知と判定し、微量検体を分注することができない、との虞がある。
【0011】
このように、微量検体で検査をするニーズは以前より存在している。また、通常の患者でも、採取する検体量を減らすことは負担軽減につながることから、今後は検体量の更なる微量化が求められている。
【0012】
更に、検体分注量の微量化は、患者負荷を低減させるだけではなく、試薬量や洗剤量の低減も図ることができるため、検査室のランニングコスト低減にもつながることから、検体微量化のニーズは高い。
【0013】
本発明では、従来に比べて更に微量の検体の分析が可能な自動分析装置、および自動分析装置における検体の吸引方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、検体容器に保持された検体を分注する検体分注機構と、前記検体の液面を検出する液面検知部と、前記検体分注機構の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記検体を吸引する際に、液面を検知した後に、前記液面より下方に前記検体分注機構の先端を、該先端が前記検体容器の底面に接触しない範囲で下降,停止させ、その後に前記検体分注機構の先端を、該先端が液面から離脱しない範囲で上昇,停止させ、その後に前記検体を吸引しながら追下降させるように前記検体分注機構を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来に比べて更に微量の検体の分析が可能となる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例の自動分析装置の概略構成図。
図2】実施例の自動分析装置における一般検体の分注動作の説明図。
図3】実施例の自動分析装置における一般検体の分注動作の説明図。
図4】実施例の自動分析装置における一般検体の分注時の検体分注機構の下降動作図。
図5】実施例の自動分析装置において、一般検体の分注シーケンスにより微量検体を分注する場合の分注動作の説明図。
図6】実施例の自動分析装置における、微上昇動作を追加した微量分注動作の説明図。
図7】実施例の自動分析装置における微量検体の分注時の検体分注機構の下降動作図。
図8】実施例の自動分析装置における微量検体分注シーケンスを用いた、微量検体の分注時の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の自動分析装置、および自動分析装置における検体の吸引方法の実施例について図1乃至図8を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0018】
最初に、自動分析装置の全体構成について図1を用いて説明する。図1は本実施例の自動分析装置の斜視図である。
【0019】
図1において、自動分析装置100は、検体と試薬を反応容器2に各々分注して反応させ、この反応させた液体を測定するための装置であって、反応ディスク1、試薬ディスク11、検体搬送機構22、試薬分注機構7,8,9,10、試薬用ポンプ23、検体分注機構13,14、検体用ポンプ24、洗浄機構3、光源4a、分光光度計4、撹拌機構5,6、洗浄用ポンプ25、洗浄槽30,31,32,33、通常洗浄槽15,16、乾燥機構17,18、特別洗浄槽19、制御部26等を備えている。
【0020】
反応ディスク1には反応容器2が円周上に並んでいる。反応ディスク1の近くには検体容器20を載せたラック21を移動する検体搬送機構22が設置されている。検体容器20には検体が保持されており、ラック21に載せられて検体搬送機構22によって運ばれる。
【0021】
反応ディスク1と検体搬送機構22の間には、回転および上下動可能な検体分注機構13,14が設置されており、各々分注プローブ13a,14aを備えている。分注プローブ13a,14aにはシリンジを介して検体用ポンプ24が接続されている。分注プローブ13a,14aは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して検体容器20から反応容器2への検体分注を行う。
【0022】
検体分注機構13,14には、それぞれ、分注プローブ13a,14aの先端が検体の液面L1(図3等参照)に接液したかどうかを検出する液面検知部27,28が設けられている。これら液面検知部27,28は、例えば静電容量センサで構成されるが、静電容量センサに限定されず、検体容器20に側面側から光を発信し、反射波の検知の有無で液面L1を検知する光センサや、検体容器20を撮像、画像処理するカメラなどとすることができる。
【0023】
試薬ディスク11の中には試薬を収容した試薬ボトル12が円周上に複数保管することが可能な構造となっている。この試薬ディスク11は保冷されており、吸引口(図示省略)が設けられたカバーによって覆われている。
【0024】
反応ディスク1と試薬ディスク11の間には回転および上下動可能な試薬分注機構7,8,9,10が設置されており、それぞれ試薬分注プローブを備えている。試薬分注プローブにはシリンジを介して試薬用ポンプ23が接続されている。試薬分注プローブは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して試薬ディスク11内にアクセスし、試薬ボトル12から反応容器2への試薬の分注を行う。
【0025】
反応ディスク1の周囲には、更に、洗浄機構3、光源4a、分光光度計4、撹拌機構5,6が配置されている。使用済みの反応容器2を洗浄する洗浄機構3には洗浄用ポンプ25が接続されている。
【0026】
試薬分注機構7,8,9,10の動作範囲上に洗浄槽30,31,32,33がそれぞれ設置されており、検体分注機構13の動作軌跡内に通常洗浄槽15、乾燥機構17および特別洗浄槽19がそれぞれ設置されており、検体分注機構13の動作軌跡内に通常洗浄槽16、乾燥機構18および特別洗浄槽19がそれぞれ設置されている。なお、試薬分注機構7,8,9,10の動作軌跡内にも、特別洗浄槽や乾燥機構を設置する構成とすることができる。撹拌機構5,6の動作軌跡内に洗浄槽(図示省略)がそれぞれ設置されている。
【0027】
容器特定部29は、検体容器20の種類を特定する機構であり、例えば、検体容器20に張り付けられたバーコードを読み取るバーコードリーダや、検体容器20あるいはラック21に設けられたRFIDタグの情報を読み取るRFIDリーダ、検体容器20を撮像、画像処理して種類を特定するカメラなどとすることができ、その種類は特に限定されない。なお、ユーザにより検体容器20の情報を制御部26や他のシステムから入力を受ける形態に限られず、液面検知部27,28により検知される検体の液面L1の検知情報から特定する処理部とする形態などとすることができる。
【0028】
この容器特定部29により、検体容器20が、規定量の検体が収容された「一般検体用」か、少量の検体(例えば30μlから50μl程度)が収容された「微量検体用」かが特定され、制御部26は検体分注処理が「一般検体」用と「微量検体」用とのいずれの処理を実行すべきかを判断する。
【0029】
制御部26は、コンピュータ等から構成され、検体分注機構13,14を始めとした自動分析装置内の各機構に接続されており、その動作を制御するとともに、検体中の所定の成分の濃度を求める演算処理を行う。
【0030】
以上が本実施例の自動分析装置100の全体的な構成である。
【0031】
なお、自動分析装置100の構成は図1に示すような生化学の分析項目の分析を実行する生化学分析装置の場合に限られず、免疫の分析項目の分析を実行する免疫分析装置など、他の分析項目の分析を実行する分析装置とすることができる。また、生化学分析装置についても図1に示す形態に限られず、他の分析項目、例えば電解質を測定する分析機器を別途搭載したものとすることができる。
【0032】
また、自動分析装置100は図1に示すような単一の分析モジュール構成とする形態に限られず、様々な同一あるいは異なる分析項目を測定可能な分析モジュールや前処理を行う前処理モジュールを搬送装置で2つ以上接続する構成とすることができる。
【0033】
上述のような自動分析装置100による検体の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
【0034】
まず、検体搬送機構22によって反応ディスク1近くに搬送される際に容器特定部29により容器種別が特定された、ラック21の上に載置された検体容器20内の検体を、検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aにより反応ディスク1上の反応容器2へと分注する。次に、分析に使用する試薬を、試薬ディスク11上の試薬ボトル12から試薬分注機構7,8,9,10により先に検体を分注した反応容器2に対して分注する。続いて、撹拌機構5で反応容器2内の検体と試薬との混合液の撹拌を行う。
【0035】
その後、光源4aから発生させた光を撹拌後の混合液の入った反応容器2を透過させ、透過光の光度を分光光度計4により測定する。分光光度計4により測定された光度を、A/Dコンバータおよびインターフェイスを介して制御部26に送信する。そして制御部26によって演算を行い、検体中の所定の成分の濃度を求め、結果を表示部(図示省略)等にて表示させたり、記憶部(図示省略)に記憶させる。
【0036】
次に、図2を用いて検体分注動作について説明する。図2は実施例の自動分析装置における一般検体の分注動作の説明する図である。ここでは、2つの検体分注機構13,14のうち、検体分注機構13の分注動作を例に挙げて説明する。検体分注機構14の動作や機構は検体分注機構13と同じであるため、詳細は省略する。以後の説明も同様に検体分注機構13を例示するが、検体分注機構14も同様である。
【0037】
まず、検体分注機構13が通常洗浄槽15から検体容器20上の検体吸引位置C1に移動する。
【0038】
その後、検体吸引位置C1で分注プローブ13aが下降し、検体容器20に収容された検体に分注プローブ13aが浸漬した状態となる。この状態で、シリンジが動作し、検体の吸引が行われた後、分注プローブ13aが上昇する。
【0039】
その後、検体分注機構13は、検体吸引位置C1から通常洗浄槽15に移動する。この通常洗浄槽15の位置では、分注プローブ13aの外壁が水で洗浄される(外部洗浄)。
【0040】
その後、検体分注機構13は、反応ディスク1にある所定の反応容器2上の検体吐出位置C2に移動した後、分注プローブ13aが下降し、シリンジが動作して検体の吐出が行われ、検体の吐出が完了すると、分注プローブ13aが上昇する。
【0041】
その後、検体分注機構13は通常洗浄槽15に移動する。
【0042】
ここで、同一検体の分注を引き続き行う場合は、これを以って1つのサイクルが終了する。ただし、同一検体の最後の分注である場合は、さらにシリンジの動作により通常洗浄を行う。具体的には、タンク(図示省略)の水を分注プローブ13aから吐出することで、分注プローブ13aの外壁だけでなく内壁も洗浄する(内部洗浄)。
【0043】
[一般検体の分注シーケンス]
次いで、検体分注動作のうち、検体分注機構13,14が規定量に相当する量の検体(一般検体)が保持された検体容器20より検体を吸引する工程(以下、検体分注シーケンス)に関して、図3および図4を用いて詳細を説明する。図3は実施例の自動分析装置における一般検体の分注動作の説明図、図4は実施例の自動分析装置における一般検体の分注時の検体分注機構の下降動作図である。
【0044】
最初に、図3中(1)に示すように、分注プローブ13aを検体容器20上まで移動させる。
【0045】
次いで、図3中(2)に示すように、液面検知部27の先端13bが液面L1に接触するまで、分注プローブ13aを下降させる。このとき、検体分注機構13の下降動作は、図4に示すような加速減速を伴って動作する。
【0046】
下降動作開始後、分注プローブ13aの降下速度を初速f1から速度f2に加速させながら下降動作する。先端13bが液面L1を検知後、分注プローブ13aの降下速度f2が減速しはじめ、一定量(h1)を検体内に突っ込みながら終速f1となり停止する。なお、先端13bの検体内への突っ込み量h1は、図4内の所定面積S1に相当する。
【0047】
その後、図3中(3)に示すように、シリンジを動作させて、検体を吸引する。なお、吸引時に分注プローブ13aが検体液面から離脱するのを防ぐため、分注プローブ13aを追下降させる。この際の下降量は、図4内の所定面積S2に相当する。
【0048】
その後、図3中(4)に示すように、吸引終了後は分注プローブ13aを上昇させる。
【0049】
これら図3の一連の分注動作(液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させ、その後に検体を吸引しながら追下降させる)を、本発明では、一般検体分注モード(第2モード)と称する。
【0050】
[微量検体の分注シーケンス]
次いで、検体分注動作のうち、検体分注機構13,14が規定量に満たない量の検体(微量検体)が保持された検体容器20より検体を吸引する工程(以下、検体分注シーケンス)に関して、図5乃至図8を用いて詳細を説明する。図5は実施例の自動分析装置において、一般検体の分注シーケンスにより微量検体を分注する場合の分注動作の説明図、図6は微上昇動作を追加した微量分注動作の説明図、図7は微量検体の分注時の検体分注機構の下降動作図、図8は微量検体分注シーケンスを用いた、微量検体の分注時の様子を示す図である。
【0051】
まず、前述の一般検体用の検体分注シーケンスをそのまま用いて微量検体を分注する場合について図5を用いて説明する。
【0052】
図5に示すような微量検体の場合、検体容器20の底から液面L1までの高さが一般検体の場合に比べて低い。そして、検体容器20の底から液面L1までの高さHが先端13bの検体内への突っ込み量h1よりも低い場合は図3中(2)に示す下降の際に、吸引完了時の突っ込み量(突っ込み量h1+追下降量S2)よりも低い場合は図3中(3)に示す追下降の際に、先端13bが検体容器20の底に強く接触してしまう。
【0053】
このように強く接触すると、このままでは先端13bが閉塞してしまい、吸引不良ケースが生じる。もしくは、先端13bが容器底に過度に接触したことによって装置が異常下降検知と判定し、微量検体を分注することができない、との問題が生じかねない。
【0054】
そこで、本実施例の自動分析装置100では、微量検体の分注の際は、シリンジ吸引時に先端13bが容器底に接触するのを防ぐために、先端13bの検体内への突っ込み量を一般検体分注モードよりも低減させる必要がある。
【0055】
そのために、制御部26は、検体を吸引する際に、液面L1を検知した後に、液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させた後に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを上昇,停止させ、その後に検体を吸引しながら追下降させるように検体分注機構13,14を制御する。この動作モードを微量分注モード(第1モード)と称する。以下、図6を用いてこの微量分注モード(第1モード)の詳細を説明する。
【0056】
本実施例の自動分析装置100の制御部26は、容器特定部29によって特定された検体容器20の種類に応じて微量分注モード(第1モード)と、一般検体分注モード(第2モード)と、のいずれかを実行する。
【0057】
まず、図6中(1)に示すように、分注プローブ13aを検体容器20上まで移させる。
【0058】
次いで、図6中(2)に示すように、静電容量式の液面検知部27を用いて、先端13bが液面を検知するまで、分注プローブ13aを下降させる。この工程が、液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aの先端13bを下降,停止させる工程に相当する。
【0059】
このときの先端13bの検体内への突っ込み量h3は、図7内の所定面積S3に相当し、制御部26は、この突っ込み量h3を、図3中(2)に示す第2モードにおける液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させる際の突っ込み量h1より液面L1に近い位置、すなわち少なくする。また、突っ込み量h3は、対象容器の形状と最小検体量とから決定することが望ましい。
【0060】
この際の検体分注機構13の下降動作の様子を図7に示す。
【0061】
図7に示すように、液面L1を検知した後に、液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させる際の降下速度f3を、第2モードにおける液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降させる際の降下速度f2より遅くする。なお、降下速度f3は、検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを上昇,停止させても1つの分析サイクル内に検体の分注動作が収まる範囲内で降下速度f2より遅くすることが望ましい。
【0062】
降下速度f3を降下速度f2より遅くすることで、停止するまでに要する時間t2は、一般検体分注モード時の降下の停止までに要する時間t1より長くなる。
【0063】
次いで、図6中(3)に示すように、分注プローブ13aを微上昇動作させる。この際の上昇速度は上述の速度f1とすることができるが、これに限定されるわけではない。この工程が検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを上昇,停止させる工程に相当する。
【0064】
この工程終了時の微上昇動作後の先端13bの検体内への突っ込み量h4は、図7の面積S3から微上昇動作分の面積S4を差し引いたものになる。当該突っ込み量h4は、最小液面高さH2より低い位置となることが望ましい。すなわち、先端13bが液面L1より離脱しないよう、微上昇動作速度と面積S4を選定することが望ましい。図7では、微上昇動作速度を速度f1としているが、この速度に限定されるわけではない。
【0065】
なお、微上昇動作を完了するまでに要する時間t3は、微上昇動作量が少なく、基本的に分注プローブ13aの下降動作に要する時間t2に比べて十分に短時間であるため、分析サイクルに与える影響は小さいといえる。
【0066】
次いで、図6中(4)に示すように、シリンジを動作させて、検体を吸引する。なお、吸引時に分注プローブ13aが検体液面から離れるのを防ぐため、分注プローブ13aを追下降させる。この工程が検体を吸引しながら追下降させる工程に相当する。
【0067】
この際の下降量は、図6内の所定面積S2に相当し、一般検体分注モードと同じとすることができる。この際に容器底面に先端13bが衝突する恐れがあるものの、検体分注機構13,14には衝突に備えて衝突検知センサと遊びとが設けられていることが多く、強い接触でなければその後の分注に支障を与えることは少ない。そこで同じとすることができる。なお、下降量は同じに限定されるわけではなく、容器底面に衝突せず、規定量の吸引が可能な範囲で減らすことができる。
【0068】
最後に、図6中(5)に示すように、吸引終了後、分注プローブ13aを上昇させる。
【0069】
上記のように微量検体に対しては微量分注モードを適用することにより、図8に示すように、先端13bの検体内への突っ込み量hが一般検体分注モードに比べて低減し、微量検体に対しても先端13bが容器底に強く接触することを防ぎながら、吸引動作が可能となる。
【0070】
また、この微量分注モードに要する合計時間は、装置が所定の1サイクル内で分注動作のうち、吸引動作に許容され得る最大吸引時間T以下であるため、装置の処理能力を低下させることはない。
【0071】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0072】
上述した本実施例の自動分析装置100では、制御部26は、検体を吸引する際に、液面L1を検知した後に、液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させ、その後に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを上昇,停止させ、その後に検体を吸引しながら追下降させるように検体分注機構13,14を制御する。
【0073】
これによって、先端13bと容器底との強い接触を回避することができ、従来に比べてより微量な検体の分注が可能となる。このため、患者負担の軽減やランニングコストの低減等の様々な効果が得られる。
【0074】
また、制御部26は、液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させ、その後に検体を吸引しながら追下降させるように検体分注機構13,14を制御する第2モードを有する。上述した微量分注モードで一般検体を分注すると、上澄みやそれに相当する成分を分注する虞があることから、第2モードによって規定量の検体が存在する一般検体を分注する際に上澄みやそれに相当する成分が分注されてしまうことを避けることができ、正確な分析を確実に行うことができる。
【0075】
更に、制御部26は、液面L1を検知した後に、液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させる際の突っ込み量h3を、第2モードにおける液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させる際の突っ込み量h1より液面L1に近い位置とすることで、先端13bが容器底に過度に接触することを抑制して、異常下降検知と判定されるのを防ぐことができる。
【0076】
また、制御部26は、液面L1を検知した後に、液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させる際の降下速度を、第2モードにおける液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降させる際の降下速度より遅くすることによっても、先端13bが容器底に過度に接触することを抑制することができる。
【0077】
更に、制御部26は、液面L1を検知した後に、液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させる際の降下速度を、検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを上昇,停止させても1つの分析サイクル内に検体の分注動作が収まる範囲内で、第2モードにおける液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降させる際の降下速度より遅くすることで、装置が所定の1サイクル内で許容可能な最大吸引時間Tを越えてしまって複数のサイクル数をかけて分注動作を実行することを防ぎ、装置の処理能力を低減させることなく微量検体を分注することができる。
【0078】
また、検体容器20の種類を特定する容器特定部29を更に備え、制御部26は、容器特定部29によって特定された検体容器20の種類に応じて、液面L1より下方に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを下降,停止させ、その後に検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを上昇,停止させ、その後に検体を吸引しながら追下降させるように検体分注機構13,14を制御するモードと、第2モードと、のいずれかを実行することにより、高精度な第1モードと第2モードとの使い分けが可能となる。
【0079】
更に、制御部26は、先端が液面L1から離脱しない範囲で検体分注機構13,14の分注プローブ13a,14aを上昇させることで、吸引の際の追下降の際の空吸いを確実に避けることができる。
【0080】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0081】
1…反応ディスク
2…反応容器
3…洗浄機構
4…分光光度計
4a…光源
5,6…撹拌機構
7,8,9,10…試薬分注機構
11…試薬ディスク
12…試薬ボトル
13,14…検体分注機構
13a,14a…分注プローブ
13b…先端
15,16…通常洗浄槽
17,18…乾燥機構
19…特別洗浄槽
20…検体容器
21…ラック
22…検体搬送機構
23…試薬用ポンプ
24…検体用ポンプ
25…洗浄用ポンプ
26…制御部
27,28…液面検知部
29…容器特定部
30,31,32,33…洗浄槽
100…自動分析装置
C1…検体吸引位置
C2…検体吐出位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8