(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】イソプロピルアルコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/04 20060101AFI20240528BHJP
C07C 31/10 20060101ALI20240528BHJP
C07C 29/76 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C07C29/04
C07C31/10
C07C29/76
(21)【出願番号】P 2022566405
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(86)【国際出願番号】 KR2022006219
(87)【国際公開番号】W WO2022235025
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0058712
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、サ ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ウー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ビュン ウー
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン キュ
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-098705(JP,A)
【文献】特開平03-133941(JP,A)
【文献】特開平08-291092(JP,A)
【文献】米国特許第04469903(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応部にプロピレン単量体及び水を含むフィードストリームを供給して反応させ、イソプロピルアルコール、プロピレン単量体、及び水を含む反応生成物を生成するステップと、
前記反応部から排出される気相の前記反応生成物を含む第1排出ストリーム、及び液相の前記反応生成物を含む第2排出ストリームをそれぞれストリッパーに供給するステップと、
前記ストリッパーから、プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは反応部に循環させ、水及びイソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームはイソプロピルアルコール精製部に供給するステップと、を含み、
前記第1排出ストリームは、第1熱交換器により凝縮させて液相でストリッパーに供給
し、
前記第1排出ストリームは、前記ストリッパーの上部の側面に供給され、
前記第2排出ストリームは、前記第1排出ストリームより低い高さの前記ストリッパーの側面に供給される、
イソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項2】
前記第1排出ストリーム及び前記第2排出ストリームの温度が105℃~150℃である、請求項1に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項3】
前記第1排出ストリーム及び前記第2排出ストリームの温度が115℃~140℃である、請求項2に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項4】
前記第1排出ストリーム中のプロピレン単量体の含量が85重量%~95重量%であり、
前記第2排出ストリーム中のプロピレン単量体の含量が1重量%~10重量%である、請求項1に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項5】
前記第2排出ストリーム中に含まれているイソプロピルアルコールの含量が、前記第1排出ストリーム中に含まれているイソプロピルアルコールの含量よりも高い、請求項1に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項6】
前記第1排出ストリームは、前記ストリッパーの1段に供給され、
前記第2排出ストリームは、前記ストリッパーの理論段数の10%~50%の段に供給される、請求項
1に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項7】
前記第2排出ストリームは、前記ストリッパーの理論段数の15%~35%の段に供給される、請求項
6に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項8】
前記ストリッパーの前記上部排出ストリームから分岐された一部のストリームは、不活性気体除去部に供給して不活性気体成分を除去してから前記反応部に循環させる、請求項1に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項9】
前記反応部は、反応器及び1器以上の熱交換器を含み、
前記反応器にフィードストリームを供給して反応させ、気相の前記反応生成物を形成し、
前記反応器から排出される気相の反応生成物ストリームは、前記1器以上の熱交換器を通過しながら、気相の前記反応生成物を含む前記第1排出ストリームと液相の前記反応生成物を含む前記第2排出ストリームとに分離され、それぞれストリッパーに供給される、請求項1に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【請求項10】
前記第1排出ストリームは、前記第1熱交換器で前記ストリッパーの前記下部排出ストリームの一部のストリームと熱交換する、請求項1から
9のいずれか一項に記載のイソプロピルアルコールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月6日付けの韓国特許出願第10-2021-0058712号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、イソプロピルアルコールの製造方法に関し、より詳細には、イソプロピルアルコールの製造工程の反応生成物からイソプロピルアルコールを高純度で分離し、未反応物を効果的に回収するに際し、装置数を減少させて装置及びエネルギーコストを低減する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol、IPA)は、半導体やLCD(Liquid crystal display)の製造などの電子産業において、洗浄剤などの用途を始めとする多様な用途に用いられている。
【0004】
イソプロピルアルコールを製造する工程では、例えば、プロピレン(propylene)と水を原料成分として用いる。この際、前記プロピレンと水が反応してイソプロピルアルコールを生成する。
【0005】
前記イソプロピルアルコールの製造工程の反応生成物は、イソプロピルアルコール、未反応のプロピレン単量体、及び未反応の水を含む。この際、前記イソプロピルアルコールの製造工程の反応生成物からイソプロピルアルコールを分離して回収し、未反応のプロピレン単量体を回収して前記イソプロピルアルコールの製造工程で再使用することになる。
【0006】
これに関して、従来は、前記イソプロピルアルコールの製造工程の反応生成物からイソプロピルアルコール及び未反応のプロピレン単量体を分離するために、吸収塔を用いていた。具体的に、前記イソプロピルアルコールの製造工程は気相反応により行われるが、この際、発生した気相の反応生成物を吸収塔の下段に供給し、溶媒として水を用いて前記反応生成物中のイソプロピルアルコールを溶解させて吸収塔の下部に分離し、プロピレン単量体を含むストリームは上部に分離していた。しかしながら、かかる方法を用いる場合、吸収塔での分離効率が低くて、前記吸収塔の下部に約1重量%~5重量%のプロピレン単量体が留出されるため、それを回収するためには、フラッシュドラム及び蒸留カラムなどが追加的に求められる。そのため、工程が複雑となり、投資費と設備のメンテナンスコストが増加するという問題がある。また、前記吸収塔に供給される反応生成物の流量に対して25重量%以上の水が必要であるため、前記吸収塔の後段で水とイソプロピルアルコールを分離して水を回収するのに多くのエネルギーが使用されるという問題があった。また、不活性気体除去部がないため、反応器に供給されるプロピレン単量体中に存在する不活性気体が除去されず、工程内に蓄積されるという問題があり、これにより、必ず高純度のプロピレン単量体を使用しなければならないという問題があった。
【0007】
また、上記の問題を解決するために、イソプロピルアルコールの製造工程で、気相の反応生成物を凝縮させてから排出される気相の反応生成物と液相の反応生成物とを混合した後、ストリッパーの1段に供給し、イソプロピルアルコールとプロピレン単量体を分離するための研究が行われた。しかし、この場合にも、凝縮されずにストリッパーに投入される気相の反応生成物中のイソプロピルアルコールと水が気体状態でストリッパーの上部に排出されるという問題があり、液相の反応生成物に含まれていたイソプロピルアルコールと水が精留部を経ることができないため、殆どが上部に排出されるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明で解決しようとする課題は、上記の発明の背景となる技術で述べた問題を解決するために、イソプロピルアルコールの製造工程の反応生成物からイソプロピルアルコール及びプロピレン単量体を効果的に分離するために用いる装置数を減少させ、装置及びエネルギーコストを低減する方法を提供することにある。
【0009】
すなわち、本発明は、反応部で反応生成物を生成し、前記反応生成物を、気相の第1排出ストリームと液相の第2排出ストリームとに分離してそれぞれストリッパーに供給することで、ストリッパーの下部へのプロピレン単量体の留出を防止し、上部に回収されるプロピレン単量体を反応部の反応器に容易に回収する方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、反応部にプロピレン単量体及び水を含むフィードストリームを供給して反応させ、イソプロピルアルコール、プロピレン単量体、及び水を含む反応生成物を生成するステップと、前記反応部から排出される気相の反応生成物を含む第1排出ストリーム、及び液相の反応生成物を含む第2排出ストリームをそれぞれストリッパーに供給するステップと、前記ストリッパーから、プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは反応部に循環させ、水及びイソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームはイソプロピルアルコール精製部に供給するステップと、を含み、前記第1排出ストリームは、第1熱交換器により凝縮させ、液相でストリッパーに供給する、イソプロピルアルコールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のイソプロピルアルコールの製造方法によると、イソプロピルアルコールの製造工程における反応生成物を、気相の第1排出ストリームと液相の第2排出ストリームとに分離してそれぞれストリッパーに供給することで、ストリッパーでの分離効率を増大させることができる。
【0012】
また、前記ストリッパーの下部排出ストリームと前記第1排出ストリームの熱交換が可能であるため、前記ストリッパーの下部排出ストリームを加熱させるためのエネルギーを低減することができる。
【0013】
また、ストリッパーの下部へのプロピレン単量体の留出を防止し、前記ストリッパーの下部排出ストリームからプロピレン単量体を分離するための複雑な後段工程が不要であるため、これによる装置費用と設備のメンテナンスコストを低減することができる。
【0014】
また、反応器に循環される前記ストリッパーの上部排出ストリームにおけるイソプロピルアルコールの含量を最小化し、反応器で平衡反応の正反応を促進することで、イソプロピルアルコールの生産量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態によるイソプロピルアルコールの製造方法の工程の流れ図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるイソプロピルアルコールの製造方法の工程の流れ図である。
【
図3】比較例によるイソプロピルアルコールの製造方法の工程の流れ図である。
【
図4】比較例によるイソプロピルアルコールの製造方法の工程の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0017】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内における流体(fluid)の流れを意味し、また、配管内を流れる流体自体を意味し得る。具体的に、前記ストリームは、各装置を連結する配管内を流れる流体自体及び流体の流れを何れも意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)または液体(liquid)を意味し得る。この際、前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合を排除するのではない。
【0018】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明を
図1及び
図2を参照してより詳細に説明する。
【0019】
本発明によると、イソプロピルアルコールの製造方法が提供される。前記イソプロピルアルコールは、プロピレン単量体と水が気相(Vapor Phase)反応して生成されることができる。具体的に、プロピレン単量体及び水を含むフィードストリームが反応部100に供給され、前記反応部100で生成された反応生成物は、イソプロピルアルコールと未反応のプロピレン単量体及び未反応の水を含み得る。この際、前記反応生成物からイソプロピルアルコールを分離して回収し、未反応のプロピレン単量体を回収して、前記イソプロピルアルコールの製造工程で再使用することになる。
【0020】
これに関して、従来は、前記反応生成物からイソプロピルアルコール及び未反応のプロピレン単量体を分離するために、吸収塔を用いていた。具体的に、前記イソプロピルアルコールの製造工程は気相反応により行われるが、この際、発生した反応生成物を吸収塔の下段に供給し、溶媒を用いて前記反応生成物中のイソプロピルアルコールを溶解させて吸収塔の下部に分離し、プロピレン単量体を含むストリームは上部に分離していた。しかし、かかる方法を用いる場合、吸収塔での分離効率が低くて、前記吸収塔の下部に約1重量%~5重量%のプロピレン単量体が留出されるため、それを回収するためには、フラッシュドラム及び蒸留カラムなどが追加的に求められる。そのため、工程が複雑となり、投資費と設備のメンテナンスコストが増加するという問題があった。また、前記吸収塔に供給される反応生成物の流量に対して25重量%以上の溶媒が必要であるため、前記吸収塔の後段で水とイソプロピルアルコールを分離して水を回収するのに多くのエネルギーが使用されるという問題があった。また、不活性気体除去部がないため、反応器に供給されるプロピレン単量体中に存在する不活性気体が除去されず、工程内に蓄積されるという問題があり、これにより、必ず高純度のプロピレン単量体を使用しなければならないという問題があった。
【0021】
上記の問題を解決するために、イソプロピルアルコールの製造工程において、気相の反応生成物を凝縮させてから排出される気相の反応生成物と液相の反応生成物を混合した後、ストリッパーの1段に供給してイソプロピルアルコールとプロピレン単量体を分離するための研究が行われた。しかし、この場合にも、凝縮されずにストリッパーに投入される気相の反応生成物中のイソプロピルアルコールと水が気体状態でストリッパーの上部に排出されるという問題があり、液相の反応生成物に含まれていたイソプロピルアルコールと水が精留部を経ることができないため、殆どが上部に排出されるという問題があった。
【0022】
これに対して、本発明では、上述の従来の問題を解決するために、イソプロピルアルコールとプロピレン単量体の分離効率を最大化し、従来の複雑であった工程を単純化するとともに、工程で必要な装置の数及びエネルギー使用量を減少させる方法を提供しようとする。
【0023】
本発明の一実施形態によると、前記イソプロピルアルコールの製造方法であって、反応部100にプロピレン単量体及び水を含むフィードストリームを供給して反応させ、イソプロピルアルコール、プロピレン単量体、及び水を含む反応生成物を生成するステップと、前記反応部100から排出される気相の反応生成物を含む第1排出ストリーム、及び液相の反応生成物を含む第2排出ストリームをそれぞれストリッパー10に供給するステップと、前記ストリッパー10から、プロピレン単量体を含む上部排出ストリームは反応部100に還流させ、水及びイソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームはイソプロピルアルコール精製部200に供給するステップと、を含み、前記第1排出ストリームは、第1熱交換器11により凝縮させ、液相でストリッパー10に供給する、イソプロピルアルコールの製造方法を提供することができる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、前記反応部100に供給されるフィードストリーム中に含まれているプロピレン単量体に対する水のモル比は、0.3~0.5、0.35~0.5、または0.35~0.45であってもよい。前記反応部100に供給されるフィードストリーム中のプロピレン単量体に対する水のモル比が上記の範囲を満たすことで、平衡反応の正反応を促進させ、逆反応が進行されることを防止することにより、イソプロピルアルコールの生産量を増加させることができる。
【0025】
前記反応部100は、反応器110及び1器以上の熱交換器を含んでもよい。具体的に、前記プロピレン単量体及び水を含むフィードストリームは反応部100の反応器110に供給され、前記反応器110で気相反応して反応生成物を生成することができる。
【0026】
前記反応器110の運転圧力は、例えば、30kg/cm2・g~50kg/cm2・g、35kg/cm2・g~50kg/cm2・g、または35kg/cm2・g~45kg/cm2・gであってもよい。上記の範囲の圧力で反応器110を運転することで、プロピレン単量体と水を用いた気相反応によりイソプロピルアルコールを生成することができる。
【0027】
前記反応器110でプロピレン単量体と水を気相反応させることで、前記反応器110からは気相の反応生成物が排出されることができる。この際、前記反応器110から排出される気相の反応生成物の温度は、例えば、200℃~220℃、205℃~220℃、または205℃~215℃であってもよい。
【0028】
本発明の一実施形態によると、前記反応器110から排出される気相の反応生成物は、1器以上の熱交換器を通過しながら、一部は液相の反応生成物として凝縮され、残りは気相の反応生成物として存在することができる。一例として、前記反応器110から排出される気相の反応生成物は、第2熱交換器120を通過しながら、気相の反応生成物を含む第1排出ストリームと液相の反応生成物を含む第2排出ストリームとに分離されることができる。この際、前記第1排出ストリームと第2排出ストリームは、第2熱交換器120に形成されている別の配管を介して分離されて排出されてもよく、前記第2熱交換器120の後段に設けられた気液分離装置を経て分離されてもよい。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記反応器110から排出される気相の反応生成物は、1器以上の熱交換器で前記反応器110に供給されるフィードストリームと熱交換することができる。具体的に、前記反応器110から排出される気相の反応生成物は1器以上の熱交換器を通過しながら一部が凝縮され、前記フィードストリームは、反応器110に供給される前に1器以上の熱交換器を通過しながら加熱されることができる。この際、前記1器以上の熱交換器を通過する前のフィードストリームの温度は、例えば、90℃~130℃、100℃~120℃、または105℃~115℃であってもよい。また、前記1器以上の熱交換器を通過した後のフィードストリームの温度は、例えば、170℃~210℃、180℃~200℃、または185℃~195℃であってもよい。また、前記1器以上の熱交換器を通過した第1排出ストリームと第2排出ストリームの温度は、例えば、105℃~150℃、110℃~140℃、または115℃~140℃であってもよい。
【0030】
このように、反応器110から排出される気相の反応生成物ストリームとフィードストリームを熱交換させることで、反応器110から排出される気相の反応生成物を含む第1排出ストリームと液相の反応生成物を含む第2排出ストリームとに分離すると同時に、フィードストリームを予熱して反応器110に供給することができる。これにより、フィードストリームを反応器110に供給して加熱させるためのエネルギーを低減することができ、第1排出ストリーム及び第2排出ストリームの温度及び組成を制御することで、ストリッパーを用いた後続分離工程における分離効率を増加させることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、前記第1排出ストリームは、プロピレン単量体85重量%~95重量%、イソプロピルアルコール4重量%~8重量%、及び水1重量%~5重量%を含んでもよい。具体的に、前記第1排出ストリームは、プロピレン単量体の含量が非常に高く、イソプロピルアルコールと水の含量が非常に低いことが分かる。
【0032】
また、前記第2排出ストリームは、プロピレン単量体1重量%~10重量%、イソプロピルアルコール5重量%~15重量%、及び水80重量%~90重量%を含んでもよい。具体的に、前記第2排出ストリームは、プロピレン単量体の含量が非常に低く、水の含量が非常に高いことが分かる。この際、第2排出ストリーム中に含まれているイソプロピルアルコールの含量は、第1排出ストリーム中に含まれているイソプロピルアルコールの含量よりも多い。
【0033】
本発明の一実施形態によると、前記反応部100から排出される第2排出ストリームの流量に対する第1排出ストリームの流量の比は、5~11、6~10、または7~9であってもよい。上記のように、反応器110から排出される気相の反応生成物ストリームを1器以上の熱交換器でフィードストリームと熱交換させる過程で、前記反応器110から排出される気相の反応生成物ストリームを105℃~150℃の温度に冷却させることで、前記第2排出ストリームの流量に対する第1排出ストリームの流量の比を5~11に制御することができる。ここで、「流量」は、単位時間当たりの重量の流れを意味し得る。具体的な例として、前記流量の単位はton/hrであってもよい。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記第1排出ストリームと第2排出ストリームは、それぞれのストリームとしてストリッパー10に供給されて分離されることができる。具体的に、前記ストリッパー10で、プロピレン単量体を含む上部排出ストリームと、水及びイソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームとを分離することができる。
【0035】
前記気相の反応生成物を含む第1排出ストリームは、第1熱交換器11にて凝縮させ、液相でストリッパー10に供給することができる。例えば、前記第1熱交換器11では、別の冷媒を用いるか、工程内のストリームと熱交換することで第1排出ストリームを凝縮させることができる。この際、必要に応じて、前記第1排出ストリームを凝縮させて液相でストリッパー10に供給するために、第1熱交換器11以外に、冷却器をさらに用いてもよい。この場合、前記第1排出ストリームを第1熱交換器11にて一次的に凝縮させ、冷却器にて二次的に冷却させることにより、前記冷却器で用いられる冷媒を安価の冷却水で代替可能であり、前記冷却水の使用量を最小化することができる。
【0036】
前記第1排出ストリームと第2排出ストリームはその成分の含量が異なるため、前記ストリッパー10に供給される第1排出ストリームと第2排出ストリームの供給段を制御することで、イソプロピルアルコールとプロピレン単量体の分離効率を高めることができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記第1排出ストリームは、ストリッパー10の上部の側面に供給することができる。例えば、前記第1排出ストリームは第1熱交換器11により凝縮され、前記凝縮された第1排出ストリームは、ストリッパー10の1段に供給されることができる。
【0038】
これに比べて、前記第2排出ストリームは、前記第1排出ストリームより低い高さのストリッパー10の側面に供給されることができる。例えば、第2排出ストリームは、ストリッパー10の理論段数の10%~50%の段、または15%~35%の段に供給されることができる。例えば、前記ストリッパー10の理論段数(総段数)が100段である場合、最上段が1段、最下段が100段であり、前記ストリッパー10の理論段数の3%~10%の段は、ストリッパー10の3段~10段を意味し得る。前記第2排出ストリームは、第1排出ストリームに比べてプロピレン単量体の含量が低く、イソプロピルアルコールと水の含量が高いため、前記第2排出ストリームをストリッパー10の上記の範囲の段に供給することで、ストリッパー10の下部に設けられたリボイラー12の運転コストを低減することができ、ストリッパー10内での精留部を確保し、イソプロピルアルコールと水の分離効率を高めることができる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記ストリッパー10の運転圧力は、0kg/cm2・g~5kg/cm2・g、1kg/cm2・g~4kg/cm2・g、または1kg/cm2・g~3kg/cm2・gであってもよい。前記ストリッパー10を上記の範囲で運転することで、上部排出ストリームからプロピレン単量体を高純度で分離することができる。
【0040】
このように、前記第1排出ストリームと第2排出ストリームのストリッパー10への供給条件及びストリッパー10の運転条件などを制御することで、前記ストリッパー10の上部排出ストリームを追加的に精製することなく反応部100の反応器110に循環させることができる。より具体的に、前記ストリッパー10の上部排出ストリーム中のイソプロピルアルコールの含量を最小化することで、イソプロピルアルコールが反応器110に循環された時に、平衡反応の逆反応が促進されてイソプロピルアルコールの生産量が減少する問題を解決することができる。また、前記ストリッパー10の下部排出ストリーム中にプロピレン単量体が存在しないようにし、前記下部排出ストリームからプロピレンを回収するための複雑な後段工程なしに、前記ストリッパー10の下部排出ストリームをイソプロピルアルコール精製部200に供給することができる。
【0041】
本発明の一実施形態によると、前記ストリッパー10の上部排出ストリームから分岐された一部のストリームは不活性気体除去部300に供給し、前記不活性気体除去部300で不活性気体(inert gas)成分を除去してから反応部100に循環させることができる。具体的に、前記気相反応により行われるイソプロピルアルコールの製造工程で、反応物として投入されるプロピレン単量体中に不活性気体が一部含まれ得る。前記不活性気体は、例えば、炭素数2~3の炭化水素からなる群から選択される1種以上を含んでもよく、具体的な例として、前記不活性気体は、エタン及びプロパンからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。このように、ストリッパー10の上部排出ストリームから分岐された一部のストリームを不活性気体除去部300に供給し、不活性気体を除去してから反応部100に循環させる場合、不活性気体が工程内に蓄積されないようにし、高純度のプロピレン単量体を用いなくてもイソプロピルアルコールの生産性を向上させることができる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記ストリッパー10の上部排出ストリームは、前記反応部100の1器以上の熱交換器を通過しながら、反応器110から排出される気相の反応生成物ストリームと熱交換した後、前記反応器110に供給されることができる。この際、前記ストリッパー10の上部排出ストリームの温度は、例えば、-10℃~30℃、5℃~30℃、または10℃~20℃であってもよい。前記ストリッパー10の上部排出ストリームは、フィードストリームと混合されて反応部100の1器以上の熱交換器を通過することができる。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記ストリッパー10の下部排出ストリームは、プロピレン単量体が存在せず、且つイソプロピルアルコールと水を含むストリームであってもよい。この際、前記ストリッパー10の下部排出ストリームの温度は、例えば、40℃~110℃、60℃~110℃、または80℃~90℃であってもよい。このように、低温のストリッパー10の下部排出ストリームの一部のストリームはリボイラー12に供給され、前記リボイラー12で加熱された後、ストリッパー10に還流されることができる。また、前記リボイラー12に供給されない、ストリッパー10の下部排出ストリームの残りのストリームは、イソプロピルアルコール精製部200に供給されることができる。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記低温のストリッパー10の下部排出ストリームの一部のストリームは第1熱交換器11に供給され、残りのストリームはイソプロピルアルコール精製部200に供給されることができる。前記第1熱交換器11で第1排出ストリームと熱交換したストリッパー10の下部排出ストリームの一部のストリームは、前記第1排出ストリームの凝縮熱により加熱されることができ、加熱されたストリッパー10の下部排出ストリームの一部のストリームはストリッパー10に還流されることができる。
【0045】
前記第1熱交換器11に供給されない、ストリッパー10の下部排出ストリームの残りのストリームは、イソプロピルアルコール精製部200に供給され、水が除去された高純度のイソプロピルアルコールが分離されることができる。この際、前記イソプロピルアルコール精製部200で分離された水は反応器110に供給されて再使用されることができる。この場合、プロピレン単量体やイソプロピルアルコールなどの不純物が含まれないため、前記反応器110におけるイソプロピルアルコールの製造において、プロピレン単量体に対する水のモル比を容易に制御することができる。
【0046】
これに対し、添付の
図3のように、本発明のストリッパー10の代わりに従来の吸収塔20を用いる場合には、反応生成物を吸収塔の下段に供給し、溶媒として水を用いて前記反応生成物中のイソプロピルアルコールを溶解させて吸収塔20の下部に分離し、プロピレン単量体を含むストリームは上部に分離していた。しかしながら、かかる方法を用いる場合、吸収塔20での分離効率が低くて、前記吸収塔20の下部排出ストリームにプロピレン単量体が留出されるため、それを回収するためには、多数の装置が求められるガス精製部400が必要となる。具体的に、前記ガス精製部400は、未反応のプロピレン単量体を回収するためのフラッシュドラム410と蒸留カラム420などが付加的に求められ、これにより、工程が複雑となり、投資費と設備のメンテナンスコスト及びエネルギーコストが増加するという問題がある。
【0047】
また、前記吸収塔20に供給される反応生成物の流量に対して25%以上の水が必要であるため、前記吸収塔20の後段で水とイソプロピルアルコールを分離するのに多くのエネルギーが使用されるという問題がある。具体的に、前記イソプロピルアルコール精製部200で水とイソプロピルアルコールを分離するのに多くのエネルギーがさらに必要となる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、イソプロピルアルコールの製造方法では、必要に応じて、蒸留カラム、コンデンサ、リボイラー、弁、ポンプ、分離器、及び混合器などの装置をさらに設けて用いることができる。
【0049】
以上、本発明に係るイソプロピルアルコールの製造方法について記載及び図示したが、上記の記載及び図示は、本発明の理解のための核心的な構成のみを記載及び図示したものであり、上記に記載及び図示した工程及び装置の他に、別に記載及び図示していない工程及び装置が、本発明に係るイソプロピルアルコールの製造方法を実施するために適宜応用されて利用可能である。
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0051】
実施例
実施例1
図1に示された工程の流れ図のように、イソプロピルアルコール(IPA)を含む反応生成物を製造し、前記反応生成物からイソプロピルアルコールを分離した。
【0052】
具体的に、40kg/cm2・gの圧力で運転される反応器110に10ton/hrの流量でフィードストリームを供給し、前記フィードストリーム中のプロピレン単量体(PP)に対する水(H2O)のモル比を0.4に制御し、不活性気体としてエタン及びプロパンが含まれている。この際、前記フィードストリームは、第2熱交換器120を通過した後、反応器110に供給された。
【0053】
前記反応器110から排出される気相の反応生成物ストリームは、第2熱交換器120を通過しながら第1排出ストリームと第2排出ストリームとに分離されて排出され、前記第1排出ストリームは第1熱交換器11で凝縮させてからストリッパー10の1段に供給した。また、前記第2排出ストリームはストリッパー10の5段に供給した。
【0054】
前記ストリッパー10は2kg/cm2・gの運転圧力で運転した。ストリッパー10の上部排出ストリームは、圧縮器13を用いて圧縮させてからフィードストリームと混合して反応器110に循環させ、前記ストリッパー10の上部排出ストリームから分岐された一部のストリームは、不活性気体除去部300に供給してエタン及びプロパンを除去した後、反応器110に循環させた。また、前記ストリッパー10の下部排出ストリームの一部のストリームは、リボイラー12に供給してから還流させ、残りのストリームはイソプロピルアルコール精製部200に供給し、水が除去されたイソプロピルアルコールを得た。この際、ストリッパー10の総段数は19段であった。
【0055】
前記第1排出ストリームと第2排出ストリームの流量、温度、成分、及びストリッパー10の供給段を下記表1に示した。また、前記ストリッパー10の上部排出ストリームと下部排出ストリームの流量、温度、成分、及び前記ストリッパー10の下部排出ストリームを加熱するためのスチーム使用量を下記表2に示した。
【0056】
実施例2
図2に示された工程の流れ図のように、イソプロピルアルコール(IPA)を含む反応生成物を製造し、前記反応生成物からイソプロピルアルコールを分離した。
【0057】
具体的に、40kg/cm2・gの圧力で運転される反応器110に10ton/hrの流量でフィードストリームを供給し、前記フィードストリーム中のプロピレン単量体に対する水のモル比を0.4に制御した。この際、前記フィードストリームは、第2熱交換器120を通過した後、反応器110に供給された。
【0058】
前記反応器110から排出される気相の反応生成物ストリームは、第2熱交換器120を通過しながら第1排出ストリームと第2排出ストリームとに分離されて排出され、前記第1排出ストリームは、第1熱交換器11に供給してストリッパー10の下部排出ストリームの一部のストリームと熱交換により凝縮させた後、ストリッパー10の1段に供給した。また、前記第2排出ストリームはストリッパー10の5段に供給した。この際、必要に応じて、別のコンデンサを設け、未凝縮の第1排出ストリームを冷却水を用いてさらに凝縮させた。
【0059】
前記ストリッパー10は2kg/cm2・gの運転圧力で運転した。ストリッパー10の上部排出ストリームは、圧縮器13を用いて反応器110の圧力で圧縮させた後、フィードストリームと混合して反応器110に循環させ、前記ストリッパー10の上部排出ストリームから分岐された一部のストリームは、不活性気体除去部300に供給してエタン及びプロパンを除去してから反応器110に循環させた。また、前記ストリッパー10の下部排出ストリームの一部のストリームは、第1熱交換器11に供給してから還流させ、残りのストリームは、イソプロピルアルコール精製部200に供給し、水が除去されたイソプロピルアルコールを得た。この際、ストリッパー10の総段数は19段であった。
【0060】
その結果、前記第1排出ストリームと第2排出ストリームの流量、温度、成分、及びストリッパー10の供給段を下記表1に示した。また、前記ストリッパー10の上部排出ストリームと下部排出ストリームの流量、温度、成分、及び前記ストリッパー10の下部排出ストリームを加熱するためのスチーム使用量を下記表2に示した。
【0061】
実施例3
前記実施例2と同様の方法によりイソプロピルアルコールを製造し、前記第1排出ストリーム及び第2排出ストリームの温度を110℃に制御した。
【0062】
その結果、前記第1排出ストリームと第2排出ストリームの流量、温度、成分、及びストリッパー10の供給段を下記表1に示した。また、前記ストリッパー10の上部排出ストリームと下部排出ストリームの流量、温度、成分、及び前記ストリッパー10の下部排出ストリームを加熱するためのスチーム使用量を下記表2に示した。
【0063】
実施例4
前記実施例2と同様の方法によりイソプロピルアルコールを製造し、前記第2排出ストリームの供給段を3段に調節した。
【0064】
その結果、前記第1排出ストリームと第2排出ストリームの流量、温度、成分、及びストリッパー10の供給段を下記表1に示した。また、前記ストリッパー10の上部排出ストリームと下部排出ストリームの流量、温度、成分、及び前記ストリッパー10の下部排出ストリームを加熱するためのスチーム使用量を下記表2に示した。
【0065】
実施例5
前記実施例2と同様の方法によりイソプロピルアルコールを製造し、前記第2排出ストリームの供給段を10段に調節した。
【0066】
その結果、前記第1排出ストリームと第2排出ストリームの流量、温度、成分、及びストリッパー10の供給段を下記表1に示した。また、前記ストリッパー10の上部排出ストリームと下部排出ストリームの流量、温度、成分、及び前記ストリッパー10の下部排出ストリームを加熱するためのスチーム使用量を下記表2に示した。
【0067】
比較例
比較例1
図3に示された工程の流れ図のように、イソプロピルアルコール(IPA)を含む反応生成物を製造し、前記反応生成物からイソプロピルアルコールを分離した。
【0068】
具体的に、40kg/cm2・gの圧力で運転される反応器110に10ton/hrの流量でフィードストリームを供給し、前記フィードストリーム中のプロピレン単量体に対する水のモル比を0.4に制御した。この際、前記フィードストリームは第2熱交換器120を通過した後、反応器110に供給された。
【0069】
前記反応器110から排出される反応生成物ストリームは、第2熱交換器120を通過しながら凝縮させてから吸収塔20の20段に供給した。この際、前記吸収塔20の総段数は20段であった。
【0070】
前記吸収塔20の上段に供給される水を用いて前記反応生成物ストリーム中のイソプロピルアルコールを吸収させ、プロピレン単量体を含む上部排出ストリームと、水及びイソプロピルアルコールを含む下部排出ストリームとに分離した。
【0071】
前記吸収塔20の上部排出ストリームは、圧縮器23を用いて反応器110に循環させ、前記吸収塔20の上部排出ストリームから分岐された一部のストリームは、ガス精製部400の蒸留カラム420に供給し、水及びイソプロピルアルコールとプロピレン単量体をさらに分離した。また、吸収塔20の下部排出ストリームは、ガス精製部400のフラッシュドラム410に供給し、水及びイソプロピルアルコールとプロピレン単量体をさらに分離した。
【0072】
前記ガス精製部400で分離されたプロピレンを含むストリームは反応器110に循環させ、イソプロピルアルコールと水を含むストリームはイソプロピルアルコール精製部200に供給し、水が除去されたイソプロピルアルコールを得た。
【0073】
前記反応生成物ストリームの流量は10ton/hrであり、温度は124℃であり、成分はプロピレン単量体(PP)が80.8wt%、イソプロピルアルコールが6.3wt%、水(H2O)が12.9wt%であることを確認した。また、前記吸収塔20の上部排出ストリームと下部排出ストリームの流量、温度、成分を下記表2に示した。
【0074】
比較例2
図4に示された工程の流れ図のように、イソプロピルアルコール(IPA)を含む反応生成物を製造し、前記反応生成物からイソプロピルアルコールを分離した。
【0075】
具体的に、40kg/cm2・gの圧力で運転される反応器110に10ton/hrの流量でフィードストリームを供給し、前記フィードストリーム中のプロピレン単量体に対する水のモル比を0.4に制御した。この際、前記フィードストリームは第2熱交換器120を通過した後、反応器110に供給された。
【0076】
前記反応器110から排出される気相の反応生成物ストリームが第2熱交換器120を通過しながら分離された第1排出ストリームと第2排出ストリームを混合し、ストリッパー10の1段に供給した。
【0077】
前記ストリッパー10は2kg/cm2・gの運転圧力で運転した。ストリッパー10の上部排出ストリームは、圧縮器13を用いて反応器110の圧力で圧縮させた後、フィードストリームと混合して反応器110に循環させ、前記ストリッパー10の上部排出ストリームから分岐された一部のストリームは、不活性気体除去部300に供給してエタン及びプロパンを除去してから反応器110に循環させた。また、前記ストリッパー10の下部排出ストリームの一部のストリームは、リボイラー12に供給してから還流させ、残りのストリームはイソプロピルアルコール精製部200に供給し、水が除去されたイソプロピルアルコールを得た。この際、ストリッパー10の総段数は19段であった。
【0078】
その結果、前記第1排出ストリームと第2排出ストリームの流量、温度、成分、及びストリッパー10の供給段を下記表1に示した。また、前記ストリッパー10の上部排出ストリームと下部排出ストリームの流量、温度、成分、及び前記ストリッパー10の下部排出ストリームを加熱するためのスチーム使用量を下記表2に示した。
【0079】
【0080】
【0081】
前記表2中、スチーム使用量は、実施例1~実施例5及び比較例2において、ストリッパー10の下部排出ストリームを加熱するためのスチーム使用量をそれぞれ測定し、前記実施例1におけるストリッパー10の下部排出ストリームを加熱するためのスチーム使用量に対して百分率に換算して表示したものである。
【0082】
前記表1及び2を参照すると、本発明に係る方法により、反応部100から排出される第1排出ストリームと第2排出ストリームをそれぞれのストリームとしてストリッパー10に供給する実施例1~実施例5は、ストリッパー10の上部排出ストリーム中のイソプロピルアルコールと水の含量と、下部排出ストリーム中のプロピレン単量体の含量が制御されていることを確認した。特に、第2排出ストリームをストリッパー10の総段数の15%~35%の段に供給し、前記第1排出ストリームと第2排出ストリームの温度を115℃~140℃に制御した実施例1、2、及び4は、ストリッパー10で分離が効果的に行われ、ストリッパー10の下部排出ストリームにはプロピレン単量体が存在しないことが確認できた。
【0083】
また、実施例2~実施例5をみると、前記実施例1と同様にイソプロピルアルコールを製造するに際し、ストリッパー10の下部排出ストリームと第1排出ストリームを熱交換させたものであって、ストリッパー10の下部排出ストリームを加熱するためのスチームを別に用いなくてもよいことが確認できた。
【0084】
これに比べて、比較例1は、従来のイソプロピルアルコールの製造方法であり、ストリッパー10の代わりに吸収塔20を用いたものであって、前記吸収塔20の下部排出ストリーム中にプロピレン単量体が約4重量%存在し、ガス精製部400が必須に求められ、この際、前記ガス精製部400で未反応のプロピレン単量体を回収するためには、フラッシュドラム及び蒸留カラムなどが追加的に必要であることが分かる。
【0085】
また、比較例2は、前記実施例1と同様の方法によりイソプロピルアルコールを製造するに際し、前記第1排出ストリームと第2排出ストリームを混合してストリッパー10の1段に供給した場合であって、高温の気相の反応生成物がストリッパー10に供給され、前記ストリッパー10の下部排出ストリームを加熱するためのスチーム使用量が比較的少ないが、第1排出ストリームが凝縮されず気体状態でストリッパーに投入されるため、第1排出ストリームに含まれていたイソプロピルアルコールと水が気体状態でストリッパー10の上部に排出されるという問題がある。また、第2排出ストリームがストリッパー10の1段に供給され、第2排出ストリームに含まれていたイソプロピルアルコールと水が精留部を経ることができないため、殆どが上部に排出されるという問題がある。すなわち、比較例2は、イソプロピルアルコールがストリッパー10の下部に排出されず、ストリッパー10を用いたイソプロピルアルコールと水及びプロピレン単量体の分離が不可能であり、水の含量が増加するに伴って温度が増加するため、下部排出ストリームを用いた熱交換により第1排出ストリームを冷却するための十分な温度を実現することができなかった。