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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/00 20060101AFI20240528BHJP
   F28F 3/12 20060101ALI20240528BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240528BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240528BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240528BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240528BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20240528BHJP
【FI】
F28F3/00 301Z
F28F3/12 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/651
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019161264
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021038895
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】伊川 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】山中 雅樹
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-145460(JP,A)
【文献】特許第6328567(JP,B2)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0048564(KR,A)
【文献】特開2011-134659(JP,A)
【文献】特開2019-086183(JP,A)
【文献】特表2005-504951(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1929988(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/00
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6556
H01M 10/6568
H01M 10/651
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の中空部を熱交換媒体が流通する熱交換流路として構成された伝熱部と、内部が前記熱交換流路に連通接続し、かつ熱交換媒体を流出入するための出入口が形成された出入口形成部とを備え、前記熱交換流路を流通する熱交換媒体と、前記伝熱部の外面に配置された熱交換対象部材との間で熱交換するようにした熱交換器であって、
前記出入口形成部の外寸厚みが、前記伝熱部の外寸厚みよりも厚く形成され、
前記伝熱部および前記出入口形成部の厚さ方向の一方を表面側、他方を裏面側として、前記伝熱部および前記出入口形成部の表面側および裏面側が、金属製の伝熱層の少なくとも片面側に樹脂製の被覆層が設けられたラミネート材である被覆シートによって被覆され、その被覆シートによって前記伝熱部および前記出入口部の外面部が構成され、
前記出入口形成部に、それに対応して配置される前記被覆シートの厚み方向の間隔を保持するためのスペーサとしての機能を有する補強部材が設けられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記伝熱部の中空部に、前記熱交換流路の高さを保持するためのスペーサ部材が設けられている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記伝熱部の外寸厚みが5mm以下に設定されている請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記熱交換流路は、前記伝熱部の一端縁部から他端縁部に向けて延び、かつ並列に複数配置され、
前記出入口形成部は、前記複数の熱交換流路の上流側端部に沿って配置される上流側ヘッダー部材と、下流側端部に沿って配置される下流側ヘッダー部材とを含み、
前記上流側ヘッダー部材に前記出入口を介して流入した熱交換媒体が分流して各熱交換流路に流入されるとともに、各熱交換流路から流出した熱交換媒体が前記下流側ヘッダー部材で合流して前記下流側の出入口から流出するように構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記出入口形成部の表面側が、前記伝熱部の表面側に対し表面側に突出するように配置されるとともに、前記出入口形成部の裏面側が、前記伝熱部の裏面側に対し裏面側に突出するように配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記出入口形成部が複数設けられ、
複数の出入口成形部の各出入口が共に厚さ方向の一方側に向けて開口している請求項1~5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記出入口形成部の両側に前記伝熱部がそれぞれ配置されている請求項1~6のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記熱交換流路の高さが3mm以下に設定されている請求項1~7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記スペーサ部材および前記補強部材が一体に形成されている請求項2に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記伝熱部の全域を覆うように前記被覆シートが配置されている請求項1~9のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項11】
外周面全域を覆うように前記被覆シートが配置されている請求項1~10のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記被覆シートの少なくとも一部が成形品によって構成されている請求項1~11のいずれか1項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の伝熱層に樹脂製の被覆層が積層されたラミネート材が外面部に設けられた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)等においては、電動機を駆動するための電力を供給するバッテリー装置が搭載されている。このようなバッテリー装置としては、リチウム二次電池等の各種の二次電池からなる複数個の小型単電池が直列または並列に多数接続されて組電池の形態としたものが一般に用いられている。特に近年になって電気自動車の航続距離を延長させるために、複数の組電池が直列または並列に組み合わされて、バッテリー装置のさらなる大容量化が進められている。
【0003】
一方、バッテリー装置として多く用いられるリチウム二次電池は、使用温度によって性能や寿命が大きく変化するため、長期間にわたって効率良く使用するには適正な温度に管理するのが好ましい。しかしながら、上記のような複数の組電池の形態で使用した場合、複数の組電池が密接して配置されているため、各組電池や各単電池から発生する熱を効果的に放出させることは困難であり、各組電池毎の温度が上昇してしまい、性能や寿命が低下してしまうおそれがある。
【0004】
そこで下記特許文献1に示すような薄型の熱交換器を用いて、複数の組電池を冷却するようにした技術が開発されている。この熱交換器は、2枚の金属製皿状プレートを対向合致させて熱交換器(扁平チューブ)を形成し、複数の組電池の各間に扁平チューブがそれぞれ配置されることによって、組電池の各単電池から発せられる熱を、扁平チューブ内を流通する冷媒(冷却水)を介して外部に放出させるようにしている。
【0005】
このような技術背景の下、自動車バッテリー装置としての複数の組電池を冷却するための熱交換器は、他の自動車部品と同様、薄型化、小型軽量化、低コスト化が可及的に求められ、その一環として、柔軟性の高いラミネート材を用いた熱交換器の採用が検討されている。
【0006】
ラミネート材を用いた熱交換器は、金属製の伝熱層の両面に樹脂製の被覆層が積層されたラミネート材によって構成された外装体を備えている。そして外装体の入口(出入口)から導入された冷却液が外装体の内部を流通して、外装体の出口(出入口)から流出される。こうして外装体内に循環する冷却液と、外装体の外面に接触配置された組電池等の電池との間で熱交換させることにより、組電池を冷却するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-199149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようなラミネート材を用いた熱交換器において、外装体は剛性が低いため、例えば出入口形成部には補強部材を設ける必要があるが、そうすると、出入口形成部の流路が制限されて、冷却液の流通特性が低下する傾向にあり、特に薄型の外装体を採用する場合には、冷却液の流通特性が著しく低下するおそれがあり、十分な熱交換性能を得ることが困難であるという課題が発生する。
【0009】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ラミネート材を用いた熱交換器において、薄型化を図りつつ、出入口形成部の熱交換媒体の流動特性を向上できて、十分な熱交換性能を得ることができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0011】
[1]内部の中空部を熱交換媒体が流通する熱交換流路として構成された伝熱部と、内部が前記熱交換流路に連通接続し、かつ熱交換媒体を流出入するための出入口が形成された出入口形成部とを備え、前記熱交換流路を流通する熱交換媒体と、前記伝熱部の外面に配置された熱交換対象部材との間で熱交換するようにした熱交換器であって、
前記伝熱部の外面部の少なくとも一部が、金属製の伝熱層の少なくとも片面側に樹脂製の被覆層が設けられたラミネート材である被覆シートによって構成され、
前記出入口形成部の外寸厚みが、前記伝熱部の外寸厚みよりも厚く形成されていることを特徴とする熱交換器。
【0012】
なお本発明において、出入口形成部および伝熱部は、熱交換流路の流路方向に沿って配置されている。さらに本発明において、出入口形成部は伝熱部の端縁部に配置されている。
【0013】
[2]前記出入口形成部に、その厚さを保持するためのスペーサとしての機能を有する補強部材が設けられている前項1に記載の熱交換器。
【0014】
[3]前記伝熱部の中空部に、前記熱交換流路の高さを保持するためのスペーサ部材が設けられている前項1または2に記載の熱交換器。
【0015】
[4]前記伝熱部の外寸厚みが5mm以下に設定されている前項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0016】
[5]前記熱交換流路は、前記伝熱部の一端縁部から他端縁部に向けて延び、かつ並列に複数配置され、
前記出入口形成部は、前記複数の熱交換流路の上流側端部に沿って配置される上流側ヘッダー部材と、下流側端部に沿って配置される下流側ヘッダー部材とを含み、
前記上流側ヘッダー部材に前記出入口を介して流入した熱交換媒体が分流して各熱交換流路に流入されるとともに、各熱交換流路から流出した熱交換媒体が前記下流側ヘッダー部材で合流して前記下流側の出入口から流出するように構成されている前項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0017】
[6]厚さ方向の一方を表面側、他方を裏面側として、
前記出入口形成部の表面側が、前記伝熱部の表面側に対し表面側に突出するように配置されるとともに、前記出入口形成部の裏面側が、前記伝熱部の裏面側に対し裏面側に突出するように配置されている前項1~5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0018】
[7]前記出入口形成部が複数設けられ、
複数の出入口成形部の各出入口が共に厚さ方向の一方側に向けて開口している前項1~6のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0019】
[8]前記出入口形成部の両側に前記伝熱部がそれぞれ配置されている前項1~7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0020】
[9]前記熱交換流路の高さが3mm以下に設定されている前項1~8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0021】
[10]前記伝熱部の中空部に、前記熱交換流路の高さを保持するためのスペーサ部材が設けられ、
前記出入口形成部に、その厚さを保持するためのスペーサとしての機能を有する補強部材が設けられ、
前記スペーサ部材および前記補強部材が一体に形成されている前項1~9のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0022】
[11]前記伝熱部の全域を覆うように前記被覆シートが配置されている前項1~10のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0023】
[12]外周面全域を覆うように前記被覆シートが配置されている前項1~11のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0024】
[13]前記被覆シートの少なくとも一部が成形品によって構成されている前項1~12のいずれか1項に記載の熱交換器。
【発明の効果】
【0025】
発明[1]の熱交換器によれば、出入口形成部を伝熱部よりも厚く形成しているため、出入口形成部内の流路を十分に確保できて流動特性および熱交換性能を向上させつつ、電池等の熱交換対象部材が設置される伝熱部の薄型化を図ることができて、全体として小型コンパクト化を図ることができる。なお出入口形成部は、熱交換対象部材が配置されないため、スペース的に余裕があり、厚みを厚くしても、他の部材に干渉するようなことがなく、悪影響が生じることはない。
【0026】
発明[2]の熱交換器によれば、出入口形成部に補強部材を設けているため、圧縮応力等に対しても出入口形成部の厚みを十分に確保できて、その内部を流通する熱交換媒体の流動特性を向上できて、熱交換性能を十分に確保することができる。
【0027】
発明[3]の熱交換器によれば、伝熱部にスペーサ部材を配置しているため、伝熱部の熱交換流路の流路断面も十分に確保できて、この点からも、熱交換媒体の流動特性を向上できて、熱交換性能を向上させることができる。
【0028】
発明[4]の熱交換器によれば、薄型化をより確実に図りつつ、熱交換性能をより確実に向上させることができる。
【0029】
発明[5]の熱交換器によれば、パラレルフロー型であるため、並設された複数の熱交換流路に均等に熱交換媒体を流通できて、熱交換対象部材の全体をむら無く均等に熱交換できて、熱交換性能を一層向上させることができる。
【0030】
発明[6]の熱交換器によれば、薄型化をより一層図りつつも、熱交換性能を十分に確保することができる。
【0031】
発明[7]の熱交換器によれば、複数の出入口を同方向に向けて開口しているため、出入口に接続する配管を全て一方向(表面側)から接続でき、配管取り回し用のスペースを小さくでき、より一層小型コンパクト化を図ることができる。
【0032】
発明[8]の熱交換器によれば、出入口形成部に対し伝熱部の数を多くでき、出入口形成部の数を制限しつつも、より多くの熱交換対象部材を熱交換できて、より一層効率良く熱交換することができる。
【0033】
発明[9]の熱交換器によれば、薄型化をより一層確実に図りつつ、熱交換性能をより一層確実に向上させることができる。
【0034】
発明[10]の熱交換器によれば、所要の部材を一体化しているため、部品点数を削減できて、構造の簡素化および組立作業性の向上を図ることができる。
【0035】
発明[11][12]の熱交換器によれば、被覆シートで効果的に被覆できて、液漏れ等の不具合を確実に防止することができる。
【0036】
発明[13]の熱交換器によれば、複雑な形状であっても、部品点数を削減しつつ、液漏れ等の不具合も確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1はこの発明の第1実施形態である熱交換器としての熱交換パネルを用いた電池冷却ユニットを示す断面図である。
図2図2は第1実施形態の電池冷却ユニットにおける出入口形成部周辺を拡大して示す断面図である。
図3図3は第1実施形態の熱交換パネルにおいて被覆シートを取り除いた状態で示す斜視図である。
図4図4は第1実施形態の熱交換パネルの流路を説明するための平面図である。
図5図5はこの発明の第2実施形態である熱交換器としての熱交換パネルPを用いた電池冷却ユニットを示す断面図である。
図6図6は第2実施形態の熱交換パネルにおいて被覆シートを取り除いた状態で示す斜視図である。
図7図7は第2実施形態の熱交換パネルの流路を説明するための平面図である。
図8図8はこの発明の第3実施形態である熱交換器としての熱交換パネルの流路を説明するための平面図である。
図9図9はこの発明の第4実施形態である熱交換器としての熱交換パネルを示す断面図である。
図10図10は第4実施形態の熱交換パネルを示す斜視図である。
図11図11はこの発明の熱交換器としての熱交換パネルの第1使用例を説明するための断面図である。
図12図12はこの発明の熱交換器としての熱交換パネルの第2使用例を説明するための断面図である。
図13図13はこの発明の第1変形例である熱交換器の出入口形成部周辺を拡大して示す断面図である。
図14図14はこの発明の第2変形例である熱交換器としての熱交換パネルを用いた電池冷却ユニットを示す断面図である。
図15図15は第2変形例の熱交換パネルを示す斜視図である。
図16図16は第1参考例としての薄型熱交換器の出入口形成部周辺を拡大して示す断面図である。
図17図17は第2参考例としての厚型熱交換器の出入口形成部周辺を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である熱交換器としての熱交換パネルPを用いた電池冷却ユニットを示す断面図、図2は電池冷却ユニットにおける出入口形成部周辺を拡大して示す断面図、図3は熱交換パネルPにおいて被覆シートを取り外した状態で示す斜視図、図4は熱交換パネルPの冷却液Lの流れを説明するための平面図である。なお以下の説明においては、発明の理解を容易にするため、図1の上下方向を本熱交換パネルPの「厚さ方向」、左右方向を本熱交換パネルPの「縦方向」とし、図1の紙面に対し直交する方向(図4の上下方向)を本熱交換パネルPの「横方向」として説明する。さらに厚さ方向の一方側(図1の上側)を「表面側」とし、他方側(図1の下側)を「裏面側」として説明する。言うまでもなく、本発明の熱交換器(熱交換パネル)においては、実使用時の設置状態(向き)は図1の状態に限定されるものではなく、どのような状態(向き)に配置しても良い。
【0039】
図1図4に示すように本第1実施形態の熱交換パネルPは、電気自動車等の電動機を駆動するための電力供給用の単電池(バッテリーセル)や組電池(電池パック)等の電池を冷却する際に用いられる。この熱交換パネル(冷却器)Pは、縦方向の両端縁部に設けられた上流側および下流側の一対の出入口形成部1a,1bと、一対の出入口形成部1a,1b間に配置された伝熱部2とを備えている。
【0040】
一対の出入口形成部1a,1bには、それぞれヘッダー部材10a,10bが配置されている。これら上流側および下流側の一対のヘッダー部材10a,10bは、縦方向の両端縁部に横方向に沿って配置され、かつ互いに平行に配置されている。
【0041】
このヘッダー部材10a,10bは、略角管形状ないし細長い略箱形状に形成されており、外周壁の伝熱部2側(内側)には、開口部11が形成されている。ヘッダー部材10a,10bは、その内部が開口部11を介して内方に開放されるものの、長さ方向(横方向)の両端部が閉塞されている。
【0042】
なお本実施形態においては、図1の左側のヘッダー部材10aを上流側(流入側)ヘッダー部材とし、右側のヘッダー部材10bを下流側(流出側)ヘッダー部材として説明する。もっとも本発明においては、図1左側のヘッダー部材10aを下流側とし、右側のヘッダー部材10bを上流側として構成することも可能である。
【0043】
ヘッダー部材10a,10bには、その表面側の壁部における横方向(長さ方向)の端部に、出入口15が形成されている。
【0044】
ヘッダー部材10a,10bにおける出入口15には、ジョイントパイプ3の一端がそれぞれ固定されて、各ジョイントパイプ3がヘッダー部材10a,10bの表面側に突出するようにそれぞれ配置されている。
【0045】
図3に示すように一対のヘッダー部材10a,10bの両端部間に掛け渡されるように、縦方向に沿う複数のスペーサ部材4,5が横方向に等間隔おきに並列に配置されている。そして各スペーサ部材4,5の両端部が一対のヘッダー部材10a,10bにそれぞれ固定されている。
【0046】
本実施形態において、複数のスペーサ部材4,5のうち、横方向の両側に配置されるスペーサ部材を、側枠スペーサ部材4と称し、側枠スペーサ部材4の内側に配置されるスペーサ部材を、中間スペーサ部材5と称している。
【0047】
中間スペーサ部材5における両端部は、ヘッダー部材10a,10bにおける開口縁部に配置されており、ヘッダー部材10a,10bの内部が中間スペーサ部材5によって遮られることがなく、冷却液Lがヘッダー部材10の横方向(長さ方向)に沿って流動できるように構成されている。
【0048】
さらに本実施形態において、複数のスペーサ部材4,5の各間には、中空部としての熱交換流路20が形成されている。熱交換流路20は、縦方向に沿って延び、かつ横方向に等間隔おきに配置されている。各熱交換流路20は、両端部がヘッダー部材10a,10bの内部に対し開口部11を介して連通接続されている。
【0049】
これにより、ヘッダー部材10a,10bの出入口15が、ヘッダー部材10a,10bの内部を介して各熱交換流路20の両端部にそれぞれ連通接続されている。
【0050】
ここで本実施形態において、側枠スペーサ部材4の厚み寸法と中間スペーサ部材5の厚み寸法とは共に同じ厚さに形成されている。さらにヘッダー部材10の厚み寸法は、スペーサ部材4,5の厚み寸法よりも厚く形成されており、後述するように被覆シート6を含んだヘッダー部材10a,10bの厚み寸法(外寸)T1が、被覆シート6を含んだスペーサ部材4,5の厚み寸法(外寸)T2よりも厚く形成されている。
【0051】
本実施形態においては、ヘッダー部材10a,10bおよびスペーサ部材4,5が一体に形成されて、骨格部材が形成されている。ヘッダー部材10a,10bおよびスペーサ部材4,5は例えば、硬質合成樹脂の成形品によって構成されており、各部材4,5,10a,10b間の接合部が熱融着等によって接着固定されている。
【0052】
また本実施形態においては、骨格部材4,5,10a,10bの全域が被覆シート6によって被覆されている。
【0053】
被覆シート6は、アルミニウム箔等の金属箔製の伝熱層と、その伝熱層の両面に積層一体化された熱可塑性樹脂製の被覆層とで構成されたラミネート材によって構成されている。本発明において用いられるラミネート材は、伝熱層の少なくとも片面側に樹脂製の被覆層が形成された少なくとも2層以上の構造であれば良く、本実施形態のように3層構造であっても良く、4層以上の構造であっても良い。
【0054】
本実施形態においては、2枚の被覆シート6によって骨格部材4,5,10を表裏(上下)から挟み込むように被覆して、表裏2枚の被覆シート6の外周縁部を重ね合わせて、その重ね合わせ領域を熱融着等によって接着するとともに、被覆シート6と、対応する骨格部材4,5,10の領域、例えば被覆シート6と、ヘッダー部材10a,10bおよびスペーサ部材4,5の表裏両面とが熱融着等によって接着されて、骨格部材4,5,10a,10bの外周全域が被覆シート6によって被覆されている。
【0055】
なお被覆シート6におけるジョイントパイプ3に対応する位置には、パイプ挿通孔65が形成されており、そのパイプ挿通孔65を介してジョイントパイプ3が被覆シート6の外側に引き出されるとともに、その引き出し端部(先端開口部)が外部に配置されている。
【0056】
こうして形成された熱交換パネルPにおいては、ヘッダー部材10a,10bが配置される部分が、被覆シート6を含めて出入口形成部1a,1bとして構成されるとともに、スペーサ部材4,5、つまり熱交換流路20が配置される部分が、被覆シート6を含めて伝熱部2として構成されている。この構成においては、出入口形成部1a,1bに設けられる被覆シート6が、出入口形成部1a,1bの外面部として構成されるとともに、伝熱部2に設けられる被覆シート6が、伝熱部2の外面部として構成されている。
【0057】
また本実施形態において、被覆シート6は、骨格部材4,5,10a,10bの全域を被覆することにより、熱交換パネルPの外装体を構成するものである。なお本実施形態においては、外装体が外面部として構成されるものである。
【0058】
またヘッダー部材10a,10bは、それに対応して配置される被覆シート6の厚み方向の間隔を保持するためのスペーサとしての機能を有する補強部材を兼用するものである。さらにスペーサ部材4,5は、熱交換流路Pに対応して配置される被覆シート6の厚み方向の間隔を保持するためのスペーサとしての機能を有している。
【0059】
また熱交換パネルPにおいては、出入口形成部1a,1bの表面側および裏面側が共に、伝熱部2の表面および裏面に対し表面側および裏面側に突出するように形成されている。
【0060】
ここで本実施形態の熱交換パネルPは、既述した通り出入口形成部1a,1bの厚み寸法(外寸厚み)T1が、伝熱部2の厚み寸法(外寸厚み)T2に対し厚く形成されている。なお本実施形態においては、後述するように伝熱部2の厚み寸法T2を5mm以下に設定するのが好ましく、さらに伝熱部2の熱交換流路20の高さ寸法T3を3mm以下に設定するのが好ましい。
【0061】
以上の構成の熱交換パネルPにおいて、図1に示すように熱交換パネルPにおける伝熱部2の表裏外面に接触するようにして、熱交換対象部材(冷却対象部材)としての電池Bが配置されて電池冷却ユニット(熱交換ユニット)が形成されている。
【0062】
そして図1および図4に示すようにこの電池冷却ユニットにおいて、ジョイントパイプ3に流出入配管が連結されて、一方(上流側)のジョイントパイプ3を介して出入口15から上流側ヘッダー部材10a内に、熱交換媒体(冷媒)としての冷却水、不凍液等の冷却液Lが流入され、その冷却液Lがヘッダー部材10aで分流しつつ開口部11を介して各熱交換流路20にその上流側端部から流入する。各熱交換流路20に流入した冷却液Lは、各熱交換流路20を通って下流側端部から下流側ヘッダー部材10b内に開口部11を介して流入してそこで合流した後、下流側ヘッダー部材10bの流出口15を介してジョイントパイプ3から流出する。こうして各熱交換流路20内に冷却液Lを循環させて、その循環する冷却液Lと電池Bとの間で被覆シート6を介して熱交換させることによって、電池Bを冷却するものである。
【0063】
ここで本実施形態の熱交換パネルPにおいては、電池Bを伝熱部2で冷却するものであるため、電池Bは伝熱部2に対応して配置され、出入口形成部1a,1b(ヘッダー部材10a,10b)に電池Bは配置されていない。従ってこの出入口形成部1a,1bに対応する領域は、熱交換器においてデッドスペースとなり、スペース的に余裕がある。本実施形態においては、このスペース的に余裕がある出入口形成部1a,1bの厚みを厚く形成し、かつ伝熱部2の厚みを薄く形成することによって、良好な熱交換性能を確保しつつ、薄型化を図ることができるものである。
【0064】
具体的に説明すると、本実施形態のように被覆シート6としてラミネート材を用いた熱交換パネルPにおいては、被覆シート6の柔軟性が高く剛性が低いため、特に出入口形成部1a,1bにおいては、その部分の厚みを確保するために、ヘッダー部材10等の補強部材(スペーサ)を設置するのが好ましい。ここで仮に図16に示すように出入口形成部101と伝熱部102とが同じ厚みの熱交換パネルを製作することを前提とした場合、出入口形成部101にヘッダー部材110を設けた状態で、薄型化を図ろうとすると、ヘッダー部材110の厚みが薄くなってその内部流路(コ字溝)の幅が狭くなるため、その狭幅の内部流路を通過する冷却液Lの流動特性が低下し、ひいては全域の冷却液Lの流動特性が低下し、熱交換性能(冷却性能)が低下してしまう。なおヘッダー部材110の内部流路の流動特性を確保するために、ヘッダー部材110の厚みを厚くすると、図17に示すように伝熱部102の厚みも厚くなり、熱交換器の厚みを薄く形成できなくなってしまう。
【0065】
これに対し図1および図2に示すように、本実施形態の熱交換パネルPにおいては、スペース的に余裕がある出入口形成部1a,1b(ヘッダー部材10a,10b)の厚みを厚くして内部流路の幅を広く形成しつつ、伝熱部2の厚みを薄くしているため、出入口形成部1a,1bにおける冷却液Lの流動特性を向上させて熱交換性能を向上させつつ、電池冷却ユニット全体の厚みを薄く形成することができる。
【0066】
また本実施形態の熱交換パネルPにおいては、出入口形成部1a,1bに、補強部材(スペーサ)を兼用するヘッダー部材10a,10bを配置しているため、圧縮応力等に対しても出入口形成部1の厚みを十分に確保できて、その内部を流通する冷却液Lの流動特性を向上できて、熱交換性能を十分に確保することができる。また、冷却液Lによる内圧による変形も防止することができる。
【0067】
さらに本実施形態の熱交換パネルPにおいては、伝熱部2にスペーサ部材4,5を配置しているため、圧縮応力等に対しても伝熱部2の熱交換流路20の流路断面も十分に確保できて、この点からも、冷却液Lの流動特性を向上できて、熱交換性能を向上させることができる。
【0068】
また本実施形態の熱交換パネルPにおいて、伝熱部2の厚み寸法T2を5mm以下に設定する場合には、出入口形成部1a,1bを厚くすることよって、より優れた効果を得ることができる。すなわち伝熱部2の厚みTを5mm以下に設定する場合、仮に図16に示すように出入口形成部101および伝熱部102の厚みを同じにすると、出入口形成部101の厚みが極端に薄くなり、所望の流路断面を確保できず、冷却液Lの流動特性が著しく低下して、熱交換性能が大きく低下してしまう。従って伝熱部2の厚み寸法T2を5mm以下に設定する場合、本実施形態のように出入口形成部1a,1bの厚みを厚く形成することよる流動特性向上の効果を顕著に発揮することができる。
【0069】
特に本実施形態においては、伝熱部2の熱交換流路20の高さ寸法T3を3mm以下に設定する場合には、上記と同様な理由から、流動特性および熱交換性能を、より効果的に向上させることができる。
【0070】
また本実施形態の熱交換パネルPにおいては、複数の熱交換流路20を並列に配置して各熱交換流路20に対しヘッダー部材10aから冷却液Lを分流して流入させるようにしたパラレルフロー型に形成しているため、各熱交換流路20に均等に冷却液Lが流通して、伝熱部2の全域において偏りなく電池Bを冷却することができる。このため熱交換対象部材としての電池Bの全体をむら無く均等に冷却できて、一層冷却性能を向上させることができる。
【0071】
また本実施形態の熱交換パネルPにおいては、上流側および下流側の出入口形成部1a,1bの出入口15に設けたジョイントパイプ3を共に表面側に向けて配置しているため、ジョイントパイプ3に接続する配管を全て一方向(表面側)から接続でき、配管取り回し用のスペースを小さくでき、電池冷却ユニットをよりコンパクトに形成することができる。
【0072】
また本実施形態の熱交換パネルPにおいては、ヘッダー部材10a,10bおよびスペーサ部材4,5を一体に形成して骨格部材を形成し、その骨格部材に被覆シート6を被覆するものであるため、形態が安定し、外圧等に対しても形態が変形するのを有効に防止することができ、電気自動車等の限られた設置スペース内でも安定した状態に確実に組み付けることができる。さらに、スペーサ部材4は冷却液Lによる内圧による変形も防止することができる。
【0073】
また本実施形態の熱交換パネルPにおいては、被覆シート6によって全域を覆うように袋状に形成しているため、冷却液Lが外部に漏れ出す等の不具合を確実に防止することができる。
【0074】
なお上記第1実施形態の熱交換パネルPにおいては、出入口形成部1a,1bをその表面側および裏面側を伝熱部2の表面側および裏面側に対し突出するように形成しているが、それだけに限られず、本発明においては、出入口形成部1a,1bの表面側および裏面側のいずれか一方のみを突出させるようにしても良い。例えば図13に示すように出入口形成部1a,1bの表面側を伝熱部2の表面に対し表面側に突出するように形成し、出入口形成部1a,1bの裏面と伝熱部2の裏面とを同一平面内に配置するようにしても良い。要は、出入口形成部1a,1bの外寸厚みT1を伝熱部2の外寸厚みT2より厚く形成すれば良い。
【0075】
また上記第1実施形態の熱交換パネルPにおいては、骨格部材10a,10b,4,5の全域を包囲するように被覆シート6を配置して、出入口形成部1a,1bおよび伝熱部2の全域に被覆シート6が設けられるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、伝熱部2の外面部の少なくとも一部が被覆シート6によって構成されていれば良い。例えば図14および図15に示すように2枚の被覆シート6を、上流側および下流側ヘッダー部材10a,10b間におけるスペーサ部材4,5の表面側および裏面側にそれぞれ貼り付けることにより、被覆シート6を実質的に伝熱部2にのみ配置して、出入口形成部1a,1bには配置しないようにしても良い。この構成の熱交換パネルPにおいては、伝熱部2の外面部は被覆シート6によって構成されるとともに、出入口形成部1a,1bの外面部は、ヘッダー10a,10bの外表面によって構成されることとなる。さらにこの構成の熱交換パネルPにおいて、出入口形成部1a,1bの外寸厚みは、ヘッダー部材10a,10bの外寸厚みに相当することになる。
【0076】
この変形例の熱交換パネルPにおいても、上記第1実施形態の熱交換パネルPと同様に冷却液Lが流通して、電池B等を冷却するものである。
【0077】
<第2実施形態>
図5はこの発明の第2実施形態である熱交換器としての熱交換パネルPを用いた電池冷却ユニットを示す断面図、図6は第2実施形態の熱交換パネルPにおいて被覆シートを取り除いた状態で示す斜視図、図7は第2実施形態の熱交換パネルPの冷却液Lの流れを説明するための平面図である。
【0078】
これらの図に示すようにこの第2実施形態の熱交換パネルPは、伝熱部2と、その伝熱部2における縦方向の一端縁部に設けられた出入口形成部1とを備えている。
【0079】
出入口形成部1には、横方向に連続して延びる1本のヘッダー部材10が配置されている。このヘッダー部材10は、角管形状に形成されており、外周壁に伝熱部2側に向けて開放する開口部11が形成されている。
【0080】
さらにヘッダー部材10はその長さ方向(横方向)の中央位置において内部が仕切壁55によって仕切られており、その仕切壁55よりも横方向の一方側半分(図7の下側半分)が上流側ヘッダー部材10aとして構成されるとともに、他方側半分(図7の上側半分)が下流側ヘッダー10bとして構成されている。なお本実施形態において仕切壁55は、後述するように中間スペーサ部材5の一部(延長部)によって構成されている。
【0081】
ここで本実施形態においては、熱交換パネルPの上流側ヘッダー部材10aに対応する部分が上流側出入口形成部1aとして構成されるとともに、下流側ヘッダー部材10bに対応する部分が下流側出入口形成部1bとして構成されている。
【0082】
また上流側および下流側ヘッダー部材10a,10bには、その表面側の壁部に、出入口15がそれぞれ形成されている。さらに各ヘッダー部材10a,10bには、ジョイントパイプ3の一端がそれぞれ固定され、各ジョイントパイプ3がヘッダー部材10a,10bの表面側に突出するようにそれぞれ配置されている。
【0083】
ヘッダー部材10の両端部には、縦方向に沿う側枠スペーサ部材4の一端がそれぞれ固定されて、この側枠スペーサ部材4が伝熱部2の両側縁部に沿って配置されている。
【0084】
さらに両側の側枠スペーサ部材4の先端部には、端枠スペーサ部材40の両端部が固定されて、この端枠スペーサ部材40が、ヘッダー部材10とは反対側の伝熱部2の端縁に沿って配置されている。
【0085】
またヘッダー部材10の中間部には、縦方向に沿う複数(3本)の中間スペーサ部材5の一端がそれぞれ固定されて、各中間スペーサ部材5の先端部(非固定側端部)が、上記端枠スペーサ部材40から間隔をおいて配置されている。
【0086】
複数の中間スペーサ部材5のうち、ヘッダー部材10の長さ方向中央位置に対応して配置される中間スペーサ部材5は、ヘッダー部材10側の端部が延長されて、その延長部としての仕切壁55が開口部11を介してヘッダー部材10の内部に固定されている。これにより既述した通り、仕切壁55によってヘッダー部材10の内部が長さ方向中央位置において仕切られて、上流側ヘッダー部材10aと下流側ヘッダー部材10bとに区分けされている。
【0087】
なお複数の中間スペーサ部材5のうち、中央位置以外に配置される中間スペーサ部材5は、上記第1実施形態と同様にヘッダー部材10における開口部11に固定されており、これらのスペーサ部材5によって内部が遮られることがないように構成されている。
【0088】
ここで本第2実施形態においいては、ヘッダー部材10およびスペーサ部材4,40,5によって骨格部材が形成されている。
【0089】
また本実施形態においては、側枠スペーサ部材4および中間スペーサ部材5の各間によって、中空部としての熱交換流路20が形成されている。この熱交換流路20のうち、上流側ヘッダー部材10aに対応する熱交換流路20が往き側熱交換流路20aとして構成されるとともに、下流側ヘッダー部材10bに対応する熱交換流路20が戻り側熱交換流路20bとして構成されている。
【0090】
さらに中間スペーサ部材5の非固定側端部と、端枠スペーサ部材40との間には、横方向に連続して延びる中空部が形成されており、この中空部がターン用熱交換流路21として構成されている。
【0091】
本第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に2枚の被覆シート6によって骨格部材4,5,10,40の全域が表裏両側から被覆されて熱融着等によって接着固定されることにより、熱交換パネルPが形成されるものである。
【0092】
なおこの第2実施形態の熱交換パネルPにおいても上記と同様に、被覆シート6におけるジョイントパイプ3に対応する位置には、パイプ挿通孔65が形成されており、そのパイプ挿通孔65を介してジョイントパイプ3が被覆シート6の外側に引き出されている。
【0093】
この第2実施形態の熱交換パネルPにおいて他の構成は、上記第1実施形態の熱交換パネルPと実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0094】
この第2実施形態の熱交換パネルPにおいて、熱交換パネルPにおける伝熱部2の表裏外面に接触するようにして、熱交換対象部材(冷却対象部材)としての電池Bが配置されて電池冷却ユニット(熱交換ユニット)が形成されている。
【0095】
この電池冷却ユニットにおいて、冷却液Lが上流側ヘッダー部材10a内に、ジョイントパイプ3および出入口15を介して流入すると、その冷却液Lが上流側ヘッダー部材10a内で分流して各往き側熱交換流路20aを通って、ターン用熱交換流路21に流入する。さらに冷却液Lはターン用熱交換流路21を通ってUターンすることにより戻り側熱交換流路20bに流入する。続いてその冷却液Lは、戻り側熱交換流路20bを通って下流側ヘッダー部材10b内に流入してそこで合流した後、出入口15およびジョイントパイプ3を介して流出する。こうして各熱交換流路20a,20b,21内を冷却液Lが循環する一方、その循環する冷却液Lと電池Bとの間で被覆シート6を介して熱交換することによって、電池Bが冷却される。
【0096】
この第2実施形態の熱交換パネルPにおいても上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
その上さらにこの第2実施形態の熱交換パネルPによれば、縦方向の一端縁部に上流側および下流側ヘッダー部材10a,10bを直列に並べて配置しているため、ジョイントパイプ3に接続する配管を熱交換パネルPの一端縁部に集約して配置でき、熱交換パネルP、ひいては電池冷却ユニットをよりコンパクトに製作することができる。
【0098】
またこの第2実施形態の熱交換パネルPにおいては、ヘッダー部材10を縦方向の一端縁部のみに配置するだけでよく、他端縁部を熱交換流路21として利用できるため、伝熱部2の伝熱面積を拡大することができ、より一層効率良く熱交換することができる。
【0099】
<第3実施形態>
図8はこの発明の第3実施形態である熱交換器としての熱交換パネルPの冷却液Lの流れを説明するための平面図である。
【0100】
同図に示すようにこの第3実施形態の熱交換パネルPは、直列に配置された上流側および下流側の出入口形成部1a,1bと、その出入口形成部1a,1bの両側に設けられた2つの伝熱部2とを備えている。
【0101】
出入口形成部1a,1bには、ヘッダー部材10が設けられており、そのヘッダー部材10の内部が長さ方向の中間位置において仕切壁55によって仕切られて、仕切壁55よりも一方側半分(図8の下側半分)が上流側ヘッダー部材10aとして構成されるとともに、他方側半分(図8の上側半分)が下流側ヘッダー部材10bとして構成されている。
【0102】
またヘッダー部材10a,10bの外周壁には、両側の伝熱部2側に向けて開放する開口部11がそれぞれ設けられている。さらにヘッダー部材10a,10bには、厚さ方向の一方側(表面側等)に向けて開口する出入口15が形成されている。
【0103】
またヘッダー部材10a,10bの縦方向の一方側(図8の右側)に配置される伝熱部2は、上記図5図7に示す第2実施形態の熱交換パネルPと同様に、側枠スペーサ部材4、端枠スペーサ部材40および中間スペーサ部材5が設けられて、一方側骨格部が形成されている。
【0104】
さらにヘッダー部材10a,10bの他方側(図8の左側)に配置される伝熱部2は、上記一方側の伝熱部2に対し左右対象形状で実質的に同じ構成を有している。すなわち他方側の伝熱部2においても上記と同様に、側枠スペーサ部材4、端枠スペーサ部材40および中間スペーサ部材5が設けられて、他方側骨格部が形成されている。
【0105】
そしてヘッダー部材10a,10b、一方側骨格部および他方側骨格部によって構成された骨格部材が、上記実施形態と同様に、表裏2枚の被覆シート6によって全域が被覆されて熱融着等によって接着固定されることにより、この第3実施形態の熱交換パネルPが形成されるものである。
【0106】
この第3実施形態の熱交換パネルPにおいて他の構成は、上記実施形態の熱交換パネルPと実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0107】
この第3実施形態の熱交換パネルPにおいては、両側2つの伝熱部2の表裏外面に接触するようにして、計4つの熱交換対象部材としての電池B等(図1および図5等参照)が配置されて電池冷却ユニットが形成されている。
【0108】
この電池冷却ユニットにおいて、冷却液Lが上流側ヘッダー部材10a内に、出入口15を介して流入すると、その冷却液Lが上流側ヘッダー部材10a内で分流して、両側の伝熱部2の各往き側熱交換流路20aに流入される。こうして流入した冷却液Lは、各往き側熱交換流路20aを通って、対応するターン用熱交換流路21に流入し、そこでUターンすることにより、両側の伝熱部2の各戻り側熱交換流路20bに流入する。続いてその冷却液Lは、各戻り側熱交換流路20bを通って下流側ヘッダー部材20bにその両側から流入してそこで合流した後、出入口15から流出する。こうして各熱交換流路20a,20b、21内を冷却液Lが循環する一方、その循環する冷却液Lと電池Bとの間で熱交換することによって電池Bが冷却される。
【0109】
この第3実施形態の熱交換パネルPにおいても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0110】
その上さらにこの第3実施形態の熱交換パネルPにおいては、1本のヘッダー部材10によって両側2つの伝熱部2に冷却液Lを供給できて、ヘッダー部材としての出入口形成部を削減でき、その分、より一層コンパクト化を図ることができる。
【0111】
<第4実施形態>
図9はこの発明の第4実施形態である熱交換器としての熱交換パネルPを示す断面図、図10は第4実施形態の熱交換パネルPを示す斜視図である。
【0112】
両図に示すようにこの第4実施形態の熱交換パネルPは、外装体が、表面側に配置される成形体7と、その成形体7の裏面側に配置されるカバーシート70とで構成されている。
【0113】
成形体7は、被覆シートとしてのラミネート材が熱成形されることによって形成されており、外周縁部を除く中間部が表面側に突出されて伝熱部用突出部71と、その伝熱部用突出部71の縦方向の両端部がさらに表面側に突出されて出入口形成部用突出部72と、突出部71,72の裏面側外周縁部に設けられたフランジ部75とを一体に備えた略逆トレイ形状に形成されている。
【0114】
さらに成形体7の出入口形成部用突出部72には、出入口15が形成されるとともに、その出入口15には樹脂製のジョイントパイプ3が取り付けられている。ジョイントパイプ3は、例えばパイプ本体31と、パイプ本体31の基端外周に設けられたフランジ32と、パイプ本体31にその先端側から外嵌可能な押えリング33とを備えている。そして成形体7の裏面側(内面側)からパイプ本体31が出入口15に挿通配置されるとともに、成形体7の表面側(外面側)からパイプ本体31に押えリング33が外嵌され、その状態で、成形体7における出入口15の内周縁部と、パイプ本体31、フランジ32および押えリング33とが熱融着等によって接着されることによって、ジョイントパイプ3が成形体7に固定されている。
【0115】
また成形体7の裏面側にはカバーシート70が配置されて、成形体7のフランジ部75とカバーシート70の外周縁部とが熱融着等によって接着されることによって、外装体(ケーシング)が形成されて、本第4実施形態の熱交換パネルPが形成されている。そしてこの熱交換パネルPにおける両側の出入口形成部用突出部72に対応する部分によって出入口形成部1がそれぞれ形成されるとともに、伝熱部用突出部71に対応する部分よって伝熱部2が形成されている。さらに伝熱部2内の中空部が熱交換流路20として構成されている。
【0116】
なお伝熱部2の内部には、必要に応じてインナーフィン等が配置されている。
【0117】
この第4実施形態の熱交換パネルPにおいては、伝熱部2の表面および/または裏面に熱交換対象部材としての電池Bが接触した状態に配置されて、電池冷却ユニット(熱交換ユニット)が形成される。
【0118】
この電池冷却ユニットにおいて、冷却液Lが一方(上流側)の出入口形成部1に、ジョイントパイプ3を介して流入すると、その冷却液Lが伝熱部2内に流入する。さらにその冷却液Lは伝熱部2(熱交換流路20)を流通して他方(下流側)の出入口形成部1に流入して、ジョイントパイプ3を介して流出される。このように冷却液Lが熱交換流路20内を循環する一方、その循環する冷却液Lと電池Bとの間で熱交換することによって電池Bが冷却される。
【0119】
この第4実施形態の熱交換パネルPにおいても上記と同様の効果を得ることができる。その上さらにこの第4実施形態の熱交換パネルPにおいては、ヘッダー部材やスペーサ部材等を取り付ける必要がなく、その分、部品点数を省略できて、構造の簡素化や組立作業性の向上を図ることができる。
【0120】
もっとも本第4実施形態の熱交換パネルPにおいても、ヘッダー部材(補強部材)やスペーサ部材を配置するようにしても良い。
【0121】
<使用例>
本発明の熱交換器としての熱交換パネルPは、1枚ずつ単独で使用しても良いし、複数枚を併用して使用するようにしても良い。
【0122】
例えば図11に示すように熱交換パネルPと電池B等の熱交換対象部材とを交互に並列に配置し、隣り合う熱交換パネルPにおいて対応する出入口形成部1a同士をジョイントパイプ3を介して連通接続する。なお図11においては、上流側の出入口形成部1aの周辺のみを示しているが、下流側においても対応する下流側の出入口形成部同士がジョイントパイプ等を介して連通接続されている。
【0123】
この電池冷却ユニットにおいて例えば、冷却液Lがジョイントパイプ3を介して図11の上側の熱交換パネルPの上流側出入口形成部1aに流入すると、その冷却液Lが分流して一部の冷却液Lが上側の熱交換パネルPの伝熱部2に通って下流側出入口形成部1bに導かれる一方、残りの冷却液Lは、ジョイントパイプ3を介して下側の熱交換パネルPの上流側出入口形成部1aに流入して、伝熱部2を通って下流側出入口形成部1bに導かれる。さらに上側の熱交換パネルPの下流側出入口形成部1bに導かれた冷却液Lは、ジョイントパイプ等を介して下側の熱交換パネルPの下流側出入口形成部1bに導かれて、下側の熱交換パネルPの伝熱部2を通過した上記残りの冷却液Lと合流した後、ジョイントパイプ等を介して流出される。こうして各熱交換パネルPの伝熱部2を循環する冷却液Lと電池Bとが熱交換するものである。
【0124】
なおこの使用例の電池冷却ユニットにおいては、熱交換パネルPを2枚使用する場合を例に挙げて説明しているが、言うまでもなく、3枚以上の熱交換パネルPを、上記と同様に並列に配置して使用することも可能である。
【0125】
また上記図11の使用例では、隣り合う熱交換パネルPにおける出入口形成部1a同士をジョイントパイプ3を用いて連結する場合を例に挙げて説明したが、隣り合う熱交換パネルPをジョイントパイプ等を介さずに直接連通接続することも可能である。
【0126】
例えば図12に示すように、熱交換パネルPとして出入口形成部1(1a)の厚さを厚目に形成しておき、隣り合う熱交換パネルPの出入口形成部1同士を重ね合わせた際に、隣り合う熱交換パネルPの伝熱部2間に電池B等の熱交換対象部材が収容できる大きさの隙間が形成されるようにする。これによりジョイントパイプ等を用いずに、隣り合う熱交換パネルPをその出入口形成部1同士を直接重ね合わせて電池冷却ユニットを製作することができる。
【0127】
この電池冷却ユニットにおいては、ジョイントパイプを用いる必要がなく、その分、部品点数を削減できて、構造の簡素化および組立作業性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
この発明の熱交換器は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車等に採用される電動機駆動用バッテリー装置等の発熱体を冷却するための冷却装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0129】
1,1a,1b:出入口形成部
10,10a,10b:ヘッダー部材
15:出入口
2:伝熱部
20,20a,20b:交換流路
3:ジョイントパイプ
4,40,5:スペーサ部材
6:被覆シート
65:パイプ挿通孔
7:成形体
B:電池(熱交換対象部材)
L:冷却液(熱交換媒体)
P:熱交換パネル(熱交換器)
T1:出入口形成部厚み寸法(外寸)
T2:伝熱部厚み寸法(外寸)
T3:流路高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17