(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】サンプル水処理ユニット、水質測定システム、水質測定装置、及びサンプル水処理方法、水質測定方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20240528BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20240528BHJP
B01D 65/08 20060101ALI20240528BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C02F1/44 C
B01D63/02
C02F1/44 A
B01D65/08
G01N1/10 B
(21)【出願番号】P 2019208753
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-10-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】氏家 章吾
(72)【発明者】
【氏名】柏木 聡
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-188769(JP,A)
【文献】特開2008-032691(JP,A)
【文献】特開昭62-155906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/00-71/82
G01N 1/10- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質測定用サンプルの原水を濾過して濾過水を生成するサンプル水処理ユニットであって、
上下方向に沿って形成された縦型容器と、
前記縦型容器の下部に配置され前記縦型容器内に原水を供給する原水供給部と、
前記縦型容器の内部に配置され前記原水供給部から供給された原水を濾過して濾過水を生成する外圧式中空糸からなる中空糸膜と、
前記縦型容器の下部に配置されて前記中空糸膜で生成された濾過水を送出する濾過水送出部と、
前記縦型容器の下部に配置され
るとともに前記原水供給部とは別に設けられ、前記原水のろ過中に前記縦型容器内にガスを供給するスクライビングガス供給部と、
前記縦型容器の上部に配置され前記中空糸膜で濾過された濾過水以外の非濾過水を前記縦型容器の外部に排出する排出部と、
を備え、
前記中空糸膜は、前記縦型容器に沿って延在するとともに下部が前記濾過水送出部に接続され、
前記スクライビングガス供給部から供給されたガスは、前記縦型容器内に供給された原水の上向流内に泡を形成して前記中空糸膜の外表面に接触するように構成されており、
前記泡のサイズが、直径0.5mm以上30mm以下とされていることを特徴とするサンプル水処理ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のサンプル水処理ユニットであって、
前記中空糸膜は、
前記縦型容器内で揺らぐように構成されている
ことを特徴とするサンプル水処理ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサンプル水処理ユニットであって、
前記中空糸膜は、上側が揺動自在とされている
ことを特徴とするサンプル水処理ユニット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のサンプル水処理ユニットであって、
前記原水供給部は、
水質測定対象の水系に接続されて、
水質測定用サンプルの原水をオンラインで前記縦型容器内に供給するように構成されている
ことを特徴とするサンプル水処理ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のサンプル水処理ユニットと、
水質測定用サンプルを水質測定する水質測定機器と、
を備え、
前記サンプル水処理ユニットで生成された濾過水が前記水質測定機器に移送されるように構成されている
ことを特徴とする水質測定システム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のサンプル水処理ユニットと、
水質測定用サンプルを水質測定する水質測定部と、
を備え、
前記サンプル水処理ユニットで生成された濾過水が前記水質測定部に移送されるように構成されている
ことを特徴とする水質測定装置。
【請求項7】
水質測定用サンプルの原水を濾過して濾過水を生成するサンプル水処理方法であって、
上下方向に沿って形成された縦型容器の内部に、外圧式中空糸からなる中空糸膜を前記縦型容器に沿って延在させるとともに前記縦型容器の下部に配置された濾過水送出部に接続して配置し、前記縦型容器の下部に配置された原水供給部から前記縦型容器内に供給して原水の上向流を形成して原水を前記中空糸膜によって濾過するとともに、前記縦型容器の下部に配置され
るとともに前記原水供給部とは別に設けられたスクライビングガス供給部からガスを供給して原水の上向流内に直径0.5mm以上30mm以下の泡を形成して、前記中空糸膜の外表面に泡を接触させて前記外表面から付着物を剥離し、前記縦型容器の上部に配置された排出部から前記中空糸膜で濾過された濾過水以外の非濾過水を前記縦型容器の外部に排出させる
ことを特徴とするサンプル水処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載のサンプル水処理方法であって、
前記中空糸膜が前記縦型容器内で揺らぐ
ことを特徴とするサンプル水処理方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のサンプル水処理方法であって、
前記中空糸膜の上側が揺動自在とされている
ことを特徴とするサンプル水処理方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載のサンプル水処理方法であって、
前記原水供給部を水質測定対象の水系に接続して、
水質測定用サンプルの原水をオンラインで前記縦型容器内に供給することを特徴とするサンプル水処理方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載のサンプル水処理方法で生成した濾過水を、水質測定用サンプルを水質測定する水質測定部に移送して、前記水質測定部で濾過水を測定する
ことを特徴とする水質測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質測定に用いられるサンプル水処理ユニット、水質測定システム、水質測定装置、及びサンプル水処理方法、水質測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、例えば、水質測定用サンプル水がSS(Suspended Solids:浮遊物質)を含んでいる場合、水質測定用サンプル水からSS除去するとともに除濁したうえで、水質測定装置で測定することが必要である。
【0003】
このようなSSを含んだ水質測定用サンプル水をSS除去や除濁する場合には、プレフィルターと呼ばれる装置を用いることが一般的である。
このようなプレフィルターとしては、例えば、沈殿槽、砂ろ過機、傾斜スクリーン、振動スクリーン、バッグフィルタ、カートリッジフィルタ、中空糸フィルタ、及びこれらを組合せた種々の構成のものが知られている。
【0004】
例えば、製紙やパルプの製造分野においては、パルプや灰分などのSSの濃度が高いことから、測定用サンプル水をオンラインで連続的にSS除去や除濁するために、製造ラインに大規模な砂ろ過機や各種スクリーン等が設置されている。
【0005】
これら製紙やパルプの製造分野におけるオンライン水質測定では、製造ラインの水系の一部を測定用サンプル水とし、例えば、約1~60リットル/h程度の小容量で測定用サンプル水をバイパスして水質測定装置に通水しているが、前述の大型で大容量のスクリーンやフィルタを用いたプレフィルターは適しているとはいえない。
【0006】
そこで、従来、水質測定装置の前処理装置として、例えば、毎分10リットル程度の小容量のクロスフロー部分処理型小型中空糸カラムフィルターが用いられている。
【0007】
しかしながら、SSを含んだサンプル水が前処理装置に供給されると、SSが次第に中空糸膜表面に付着し、微細口を詰まらせ処理水量が次第に低下し、最終的に中空糸膜の微細口が閉塞する。中空糸膜の微細口は、SS濃度が高ければ高いほど閉塞しやすくなり、カートリッジや容器の清掃頻度や交換頻度が高くなる。
【0008】
このような中空糸膜の微細口が閉塞すると、カラムを分解して中空糸の表面を高圧水やアルカリなどで洗浄する必要があり、測定装置を中断する必要が生じて連続的な水質測定をするうえで障害となっていた。
その結果、メンテナンスをすることなく長期間にわたって連続運転をすることは困難だった。
【0009】
そこで、水質測定が中断されるのを抑制するために、中空糸膜を備えた前処理装置のメンテナンス性能を向上するための種々の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
特許文献1に記載の前処理装置は、中空糸膜に付着したSS等の付着物を効率的に除去するために、中空糸膜をエアスクラビング洗浄するように構成されている。
その結果、パルプ工場廃水系の測定用サンプル水を前処理する場合でも、ある程度の連続運転を達成することができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の前処理装置は、中空糸膜のエアスクラビング洗浄を間欠的に実施するものであり、しかもエアスクラビング洗浄を実施する際には濾過を中断する必要がある。
また、特許文献1に記載の前処理装置は、SS等の汚れが増加すると、中空糸膜の外表面に付着する汚れを充分に防止することができず、満足な連続運転期間を確保することができない場合があった。
【0013】
このようなカートリッジの清掃や交換に起因して水採取ラインを止めると、連続的な水質測定が中断されて、測定値変動の一因となって水質測定データの信頼性に影響を及ぼすことになる。
【0014】
また、従来技術では、メンテナンスのために、数日~一週間に一度の現場対応が必要となることから、水質測定を自動化したにもかかわらずメンテナンスに人件費がかかって水質測定のコストが課題であった。
【0015】
そこで、このような水質測定用のバイパスラインをはじめとする水質測定用サンプルの原水を濾過して濾過水を生成する際に、中空糸膜の外表面に付着物が残留するのを抑制してメンテナンスなしで長期間にわたって使用可能とすることで、メンテナンスコストを削減して、低コストで長期間の連続運転が可能することが可能とされ、ひいては水質測定における信頼性を向上することが可能なサンプル水処理に関する技術が望まれている。
【0016】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、長期間にわたってメンテナンスすることなく、測定用サンプルを濾過することが可能なサンプル水処理ユニット、水質測定システム、水質測定装置、及びサンプル水処理方法、水質測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで発明者らは、容器内に配置した外圧式中空糸からなる中空糸膜の外表面にSS等が付着するのを抑制する技術について鋭意研究した結果、縦型に配置した縦型容器の下部に中空糸膜の濾過水排出穴側を固定し、縦型容器の下部から測定用サンプルの原水を供給するとともに縦型容器の上部から排出して、縦型容器内に原水の上向流を形成してクロスフロー部分濾過方式により、上向流に沿って移動する原水を中空糸膜で安定して濾過可能とした。そのうえで、縦型容器の下部からガスを供給して上向流内に泡を形成すると、泡が上向流に沿って上昇しながら、泡と接触して中空糸膜がスクラビング洗浄されて、中空糸膜が乱れることなくSS等の汚れが中空糸膜の表面に付着するのを安定的かつ効率的に抑制できるとの知見を得た。
さらに、中空糸が揺らぐようにすることで、さらにSS等の付着が抑制され、中空糸膜の上側を固定せず自由にすることで、揺らぎの作用、効果をさらに得ることが可能であることを見いだした。また、泡の形成は、連続的でなくても間欠的でもよく、原水を連続的に濾過しながら中空糸膜の外表面にSS等が付着するのを抑制するとともに、付着した汚れを剥離させることを実現した。
【0018】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、水質測定用サンプルの原水を濾過して濾過水を生成するサンプル水処理ユニットであって、上下方向に沿って形成された縦型容器と、前記縦型容器の下部に配置され前記縦型容器内に原水を供給する原水供給部と、前記縦型容器の内部に配置され前記原水供給部から供給された原水を濾過して濾過水を生成する外圧式中空糸からなる中空糸膜と、前記縦型容器の下部に配置されて前記中空糸膜で生成された濾過水を送出する濾過水送出部と、前記縦型容器の下部に配置されるとともに前記原水供給部とは別に設けられ、前記原水のろ過中に前記縦型容器内にガスを供給するスクライビングガス供給部と、前記縦型容器の上部に配置され前記中空糸膜で濾過された濾過水以外の非濾過水を前記縦型容器の外部に排出する排出部と、を備え、前記中空糸膜は、前記縦型容器に沿って延在するとともに下部が前記濾過水送出部に接続され、前記スクライビングガス供給部から供給されたガスは、前記縦型容器内に供給された原水の上向流内に泡を形成して前記中空糸膜の外表面に接触するように構成されており、前記泡のサイズが、直径0.5mm以上30mm以下とされていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、水質測定用サンプルの原水を濾過して濾過水を生成するサンプル水処理方法であって、上下方向に沿って形成された縦型容器の内部に、外圧式中空糸からなる中空糸膜を前記縦型容器に沿って延在させるとともに前記縦型容器の下部に配置された濾過水送出部に接続して配置し、前記縦型容器の下部に配置された原水供給部から前記縦型容器内に供給して原水の上向流を形成して原水を前記中空糸膜によって濾過するとともに、前記縦型容器の下部に配置されるとともに前記原水供給部とは別に設けられたスクライビングガス供給部からガスを供給して原水の上向流内に直径0.5mm以上30mm以下の泡を形成して、前記中空糸膜の外表面に泡を接触させて前記外表面から付着物を剥離し、前記縦型容器の上部に配置された排出部から前記中空糸膜で濾過された濾過水以外の非濾過水を前記縦型容器の外部に排出させることを特徴とする。
【0020】
この発明に係るサンプル水処理ユニット、サンプル水処理方法によれば、縦型容器の内部に外圧式中空糸からなる中空糸膜を縦型容器に沿って延在させるとともに、中空糸膜の下部を縦型容器の下部に配置された濾過水送出部に接続し、縦型容器の下部に配置された原水供給部から縦型容器内に水質測定用サンプルの原水を供給して、原水の上向流を中空糸膜によってクロスフロー部分濾過して濾過水を生成する。
また、縦型容器の下部に配置されたスクライビングガス供給部から縦型容器内にガスを供給して原水の上向流内に、直径0.5mm以上30mm以下のサイズの泡を生じさせ、中空糸膜の外表面に泡を接触させる。
そして、中空糸膜で濾過されなかった非濾過水(濾過水以外の水)を縦型容器の上部に配置された排出部から縦型容器の外部に排出する。
その結果、原水の上向流内に泡を生じさせた泡が中空糸膜の外表面に接触するので、水質測定用サンプルの原水にSS等を含まれていて中空糸膜の外表面に付着した場合でも、泡が付着したSS等の付着物を中空糸膜の外表面から剥離して、中空糸膜の外表面に付着物が残留するのを抑制することができる。
【0021】
また、中空糸膜が、その下部が固定され、縦型容器に沿って延在して配置されているので、中空糸膜が上向流や上向流内に形成された泡によって乱れることが抑制され、上向流の原水を安定して濾過することができる。
その結果、長期間にわたってメンテナンスなしで測定用サンプル水を安定して濾過することができる。
また、サンプル水処理ユニットを長期間連続して使用することができるので、メンテナンスに要する工数(人件費)、部品費用等の物理的なメンテナンス費用を削減することができる。
また、サンプル水処理ユニットを長期間連続して使用することができるので、測定用サンプル水をオンラインで効率的に濾過することができる。
また、中空糸膜が、その下部が固定され、縦型容器に沿って延在して配置されているので、中空糸膜が上向流や上向流内に形成された泡によって乱れることが抑制され、原水を安定して濾過することができる。
【0022】
ここで、上下方向に沿って形成された縦型容器とは、縦型容器が鉛直方向(地面に対して直角方向)である場合に限定されず、鉛直方向に対して所定範囲で傾斜していてもよいことをいう。具体的には、スクライビングガス供給部から供給されたガスが中空糸膜の外表面に沿って下方から上方に移動することが可能な範囲で傾斜していてもよい。
また、縦型容器の下部、上部の位置は、上向流内に形成された泡が中空糸膜の外表面に接触可能な範囲で任意に設定することができる。
ここで、中空糸膜の下部以外は固定されていてもよいし、自由な状態に構成されていてもよい。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のサンプル水処理ユニットであって、前記中空糸膜は、前記縦型容器内で揺らぐように構成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のサンプル水処理方法であって、前記中空糸膜が前記縦型容器内で揺らぐことを特徴とする。
【0025】
この発明に係るサンプル水処理ユニット、サンプル水処理方法によれば、中空糸膜が縦型容器内で揺らぐので、測定用サンプルが含む汚れやSS等が中空糸膜に付着するのを抑制することができる。
また、バブリングガスによって形成された泡が中空糸膜と効率的に接触することが可能となる。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のサンプル水処理ユニットであって、前記中空糸膜は、上側が揺動自在とされていることを特徴とする。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載のサンプル水処理方法であって、前記中空糸膜の上側が揺動自在とされていることを特徴とする。
【0028】
この発明に係るサンプル水処理ユニット、サンプル水処理方法によれば、中空糸膜の上側が固定(拘束)されずに揺動自在とされているので、原水の上向流内に形成された泡が中空糸膜と接触しやすくなり、中空糸膜の外表面から付着物を効率的に除去することができる。
【0029】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のサンプル水処理ユニットであって、前記原水供給部は、水質測定対象の水系に接続されて、水質測定用サンプルの原水をオンラインで前記縦型容器内に供給するように構成されていることを特徴とする。
【0030】
請求項10に記載の発明は、請求項7~9のいずれか一項に記載のサンプル水処理方法であって、前記原水供給部を水質測定対象の水系に接続して、水質測定用サンプルの原水をオンラインで前記縦型容器内に供給することを特徴とする。
【0031】
この発明に係るサンプル水処理ユニット、サンプル水処理方法によれば、原水供給部を水質測定対象の水系に接続して、原水をオンラインで縦型容器内に供給することにより、水質測定対象の水系から水質測定用サンプルを効率的かつ連続的に供給して濾過することができる。
【0032】
請求項5に記載の発明は、水質測定システムであって、請求項1~4のいずれか一項に記載のサンプル水処理ユニットと、水質測定用サンプルを水質測定する水質測定機器と、を備え、前記サンプル水処理ユニットで生成された濾過水が前記水質測定機器に移送されるように構成されていることを特徴とする。
【0033】
請求項6に記載の発明は、水質測定装置であって、請求項1~4のいずれか一項に記載のサンプル水処理ユニットと、水質測定用サンプルを水質測定する水質測定部と、を備え、前記サンプル水処理ユニットで生成された濾過水が前記水質測定部に移送されるように構成されていることを特徴とする。
【0034】
請求項11に記載の発明は、水質測定方法であって、請求項7~10のいずれか一項に記載のサンプル水処理方法で生成した濾過水を、水質測定用サンプルを水質測定する水質測定部に移送して、前記水質測定部で濾過水を測定することを特徴とする。
【0035】
この発明に係る水質測定システム、水質測定装置、水質測定方法によれば、生成された濾過水を水質測定機器又は水質測定部に移送して水質測定するので、水質測定を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
この発明に係るサンプル水処理ユニット、水質測定システム、水質測定装置、及びサンプル水処理方法、水質測定方法によれば、長期間にわたってメンテナンスすることなく測定用サンプルを濾過することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水質測定装置の概略構成の一例を説明する概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係るサンプル水処理ユニットの概略構成の一例を説明する概略構成図である。
【
図3】一実施形態に係るサンプル水処理ユニットの作用を説明する概略構成図である。
【
図4】一実施形態に係る中空糸膜を構成する外圧式中空糸の作用の概略を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態に係るサンプル水処理ユニット、水質測定装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水質測定装置の一例を説明する概略構成図であり、
図2は、サンプル水処理ユニットの一例を説明する概略構成図である。また、
図3は、水質測定装置の作用の概略を説明する概略構成図であり、
図4は、中空糸膜を構成する外圧式中空糸の作用の概略を説明する概念図である。
【0039】
図1~
図4において、符号1は水質測定装置を、符号10はサンプル水処理ユニットを、符号100は縦型容器を、符号120は中空糸膜を、符号20は水質測定ユニット(水質測定部)20を、符号30はエアポンプユニット(バブリングガス供給源)を、符号40は測定制御部40を示している。
【0040】
水質測定装置1は、
図1に示すように、例えば、サンプル水処理ユニット10と、水質測定ユニット(水質測定部)20と、エアポンプユニット(バブリングガス供給源)30と、測定制御部40とを備えている。
【0041】
そして、水質測定装置1は、測定制御部40の指示によって、水質測定用サンプルの原水をサンプル水処理ユニット10に自動で供給して、サンプル水処理ユニット10で濾過して濾過水を生成し、その濾過水を水質測定ユニット20に移送して、水質測定ユニット20において測定項目を計測して、水系の水質をオンラインで連続測定するように構成されている。
【0042】
サンプル水処理ユニット10は、例えば、縦型容器100と、原水供給部121と、スクライビングエア供給部(スクライビングガス供給部)122と、濾過水送出部123と、非濾過水排出部(排出部)131と、縦型容器100の内部に配置される中空糸膜140と、を備えている。
【0043】
また、原水供給部121、スクライビングエア供給部122は、縦型容器100の下部に配置され、非濾過水排出部(排出部)131は、縦型容器100の下部に配置されている。
そして、原水供給部121から供給された測定用サンプルの原水を中空糸膜140で濾過して濾過水を生成するようになっている。
【0044】
縦型容器100は、例えば、容器本体110と、下部蓋部材120と、上部蓋部材130とを備えている。また、縦型容器100は、上下方向(例えば、鉛直方向)に沿って配置されている。
なお、縦型容器100は、本発明の作用、効果を発揮する範囲において任意に設定してすることが可能であり、鉛直方向に対して傾斜して配置されていてもよい。なお、鉛直に配置することが好適である。
【0045】
容器本体110は、例えば、樹脂材料により円筒形状に形成されている。
容器本体110を形成する材料については任意に設定することが可能であるが、例えば、アクリル等の透明な樹脂により形成することが好適である。
また、容器本体110の形状についても任意に設定してもよい。容器本体110が円筒形上である場合、容器本体110の内径は、特に制限されないが、例えば、30~100mm程度であってよく、40mm程度又は60mm程度であってよい。
【0046】
下部蓋部材120は、容器本体110の下部に配置され、容器本体110の下側開口を閉塞可能に構成されている。
下部蓋部材120は、この実施形態において、例えば、容器本体110に直接取付けられる第1部材120Aと、第1部材120Aの底部を塞ぐ底面部材120Bと、を備えている。
【0047】
第1部材120Aは、例えば、容器本体110の外周面を保持する円筒形状の保持壁部と、保持壁部の下端に接続され円板状に形成された底面壁部とを有する有底円筒状とされている。
また、底面壁部の中央部には、容器本体110の軸線と同軸のネジ孔(不図示)が形成されている。
【0048】
また、この実施形態において、例えば、第1部材120Aの側面には、縦型容器100の内部と外部とを連通する原水供給部121が形成されている。
また、原水供給部121には、例えば、原水供給チューブ11が接続されている。
【0049】
原水供給チューブ11は、上流側に測定装置1の筐体に固定されるコック付エルボ11Aが設けられ、下流側にエルボ11Bが設けられている。
また、コック付エルボ11Aの上流側は、
図3に示すように、例えば、パルプ製造設備の水系S0に接続されている。
【0050】
そして、パルプ製造設備の水系S0から採取した水質測定用サンプルの原水S1は、原水供給チューブ11、原水供給部121を通じて、縦型容器100内に測定用サンプル水の原水G1を供給するようになっている。
【0051】
また、この実施形態において、例えば、第1部材120Aの側面には、縦型容器100の内部と外部とを連通するスクライビングエア供給部(スクライビングガス供給部)122が形成されている。
また、スクライビングエア供給部122には、例えば、スクライビングエア供給チューブ12が接続されている。
【0052】
スクライビングエア供給チューブ12は、下流側にスクライビングエア供給部(スクライビングガス供給部)122に接続されるエルボ11Aが設けられ、上流側にエアポンプ30が接続されている。
また、スクライビングエア供給部(スクライビングガス供給部)122を通じて、エアポンプ30から縦型容器100内にスクライビングエア(スクライビングガス)G1を供給するようになっている。
【0053】
そして、スクライビングガス供給部122を介して縦型容器100の内部に供給されたスクライビングエアG1は、縦型容器100の原水の上向流内に気(泡)形成するように構成されている。
気泡G2のサイズは、例えば、直径0.5mm以上30mm以下が好適であり、5mm以上20mm以下がさらに好適である。この根拠は泡が中空糸膜繊維一本一本の隙間に入り込み、繊維表面を擦過することが肝要で、泡径が大きいほど浮上スピードが速く、繊維表面への擦過力(摩擦力)も大きくなると言え、かつ処理水側へのキャリーオーバーも少なくなる。
【0054】
底面部材120Bは、容器本体110の軸線と同軸とされた多段円筒状に形成されていて、上部の外周面に雄ネジ部(不図示)が形成されている。
そして、この雄ネジ部を第1部材120Aのネジ孔に螺合することで、第1部材120Aに装着可能とされている。
また、底面部材120Bには、容器本体110の軸線と同軸に配置され、縦型容器100の内側と外部とを連通する濾過水送出部123が形成されている。
【0055】
そして、濾過水送出部123は、
図3に示すように、中空糸膜140の濾過水排出孔(不図示)と連通している。
また、濾過水送出部123には、
図1に示すように、濾過水送水チューブ13が接続されている。
【0056】
濾過水送水チューブ13は、
図1に示すように、例えば、上流側に濾過水送水部123に接続されるエルボ13Aが設けられ、下流側に水質測定ユニット20と接続されるエルボ13Bが設けられている。
そして、濾過水送水チューブ13は、生成された濾過水S3を濾過水送水部123から水質測定ユニット20に送水するようになっている。
【0057】
また、底面部材120Bの上側(縦型容器100の内側に位置される側)には、濾過水排出孔(不図示)を下側にして中空糸膜140の下側部分が固定されている。
そして、底面部材120Bには、中空糸膜140が立設されている。
また、底面部材120Bは、例えば、縦型容器100の軸線と同軸の濾過水送出部123が配置されている。
【0058】
中空糸膜140は、一端(下側端部)に濾過水排出孔が形成された多数(複数)の外圧式中空糸141を揃えて、例えば、外圧式中空糸141の長さ方向の下端から1/3、2/3の位置を結束紐142によって結束した構成とされている。
【0059】
なお、中空糸膜140は、外圧式中空糸141が結束紐142によって結束されているものの、結束紐142で結束された箇所以外は、外圧式中空糸141が相互に形状を変化させることが可能であり、外圧式中空糸141同士の間に上向流をなす原水や気泡が流通可能とされている。
【0060】
また、中空糸膜140は、上述のように、下側が下部蓋部材120に固定され、上側(下端から2/3から上端までの範囲)が縦型容器100等に固定されることなく自在とされている。
なお、中空糸膜140は、上方が固定されずに自由端とされていることが好適である。
【0061】
その結果、中空糸膜140は、上側の1/3は、それぞれの中空糸141が相互に揺動可能に構成されている。
また、中空糸膜140は、この実施形態において、全体として上側が揺動自在とされている。
【0062】
なお、外圧式中空糸141を結束紐142等によって結束するかどうかは任意に設定することが可能であり、結束せずに外圧式中空糸141が互いに自由に構成されていてもよい。
また、外圧式中空糸141を結束する場合の結束手段、結束箇所数、結束位置については任意に設定することができる。
【0063】
上部蓋部材130は、容器本体110の上部に配置され、容器本体110の上側開口を閉塞可能に構成されている。
上部蓋部材130は、
図2に示すように、この実施形態において、例えば、容器本体110の外周面を保持する円筒状保持壁部と、円筒状保持壁部の上側に接続され上側に向かうにしたがって縮径される略コーン形状の円錐形壁部とを備えている。
【0064】
また、円錐形壁部の頂部には、縦型容器100の内側と外部とを連通する非濾過水排出部(排出部)131が配置されている。
この実施形態において、非濾過水排出部131には、例えば、非濾過水排水チューブ14が接続されている。
【0065】
非濾過水排水チューブ14は、
図1、
図2に示すように、例えば、上流側に非濾過水排出部131に接続されるコック付エルボ14Aが設けられ、下流側に水質測定装置1の筐体に固定されるソケット14Bが設けられている。
【0066】
そして、非濾過水排水チューブ14は、排出口131から排出される非濾過水S4を水質測定装置1の外部に排出するように構成されている。
また、非濾過水排水チューブ14は、この実施形態において、測定用サンプル水処理ユニット10から排出される気泡(泡)G2を非濾過水S4をとともに排出するようになっている。
【0067】
水質測定ユニット(水質測定部)20は、比色分析ユニット(例えば、S.sensing B(栗田工業株式会社製))等、周知の種々の構成のものを適用することが可能である。
水質測定ユニット(水質測定部)20は、例えば、測定制御部40の指示に基づいて、サンプル水処理ユニット10から移送されてきた水質測定用サンプルの濾過水を、自動でカラム(不図示)に分配して、水質測定項目と対応した試薬が貯留された試薬ボトル21、22から試薬を順次注入して、水質測定するように構成されている。
そして、水質測定ユニット20は、測定結果をコンピュータ(不図示)等に送信するようになっている。
【0068】
エアポンプ(エア源)30は、
図1に示すように、スクライビングエア供給チューブ12によってスクライビングエア供給部122と接続されている。
そして、エアポンプ(エア源)30は、測定制御部40の指示に基づいて、スクライビングエア供給部122を介して縦型容器100内にスクライビングエアG1を供給するようになっている。
【0069】
この実施形態において、エアポンプ(エア源)30は、測定制御部40の指示に基づいて、例えば、サンプル水処理ユニット10が濾過している間、常時作動して、縦型容器100内に連続的にスクライビングエアG1を供給するようになっている。
【0070】
なお、エアポンプ(エア源)30を連続的に作動させるか間欠的に作動させるかは任意に設定することができる。また、間欠的に供給する場合の供給時間、周期は任意に設定してもよい。
また、エアポンプ(エア源)30に代えて、加圧エア源から供給された圧縮空気を電磁弁等を切換えることによって縦型容器100内に供給するように構成してもよい。
【0071】
以下、水質測定装置1の作用について説明する。
(1)まず、例えば、
図3に示すように、パルプ製造設備の水系(測定対象の水系)S0から水質測定用サンプルの原水S1を採取する。
【0072】
(2)次に、水質測定用サンプルの原水S1を、原水供給部121を介してサンプル水処理ユニット10に供給する。
その結果、原水供給部121からサンプル水処理ユニット10に供給された原水は、縦型容器100内に、原水供給部121から非濾過水排出部131に向かって流れる上向流を形成する。
【0073】
(3)そして、
図4に示すように、縦型容器100内に形成された上向流を形成する水質測定用サンプルの原水S2が中空糸膜140によって濾過されて、外圧式中空糸141内に濾過水S3が生成される。
そして、生成された濾過水S3は、外圧式中空糸141の下端に位置される濾過水排出孔から排出される。
その結果、中空糸膜140から排出されて、濾過水排出部123から送り出される。
【0074】
(4)次に、測定制御部40は、エアポンプユニット30からスクライビングエア供給部122を介して縦型容器100内にスクライビングエア(空気)G1を供給する。
スクライビングエア供給部122から供給されたスクライビングエアG1は、原水S2の上向流内に粗大な気泡(泡)G2を形成する。
【0075】
そして、この気泡G2は、上向流とともに非濾過水排出部131に向かって流れる。
このとき、気泡G2は、
図4に示すように、空糸膜140の外表面と接触して、中空糸膜140の外表面に付着したSSや汚れ等を中空糸膜140の外表面から剥離、除去する。
このとき、中空糸膜140が、
図4に示すように、例えば、矢印F方向に揺らぐことが好適である。また、中空糸膜140を構成する外圧式中空糸141が長さ方向における任意の位置でGで示すように揺れて、外圧式中空糸141同士が相対的に揺らぐことが好適である。
エアスクラビング洗浄の効果をより高めるためには、前記の濾過手段12の中空糸膜の一方を固定しないことが好ましい。
【0076】
(5)サンプル水の原水G2のうち、中空糸幕140で濾過されなかった非濾過水(濾過水以外の測定用サンプル)は、縦型容器100の上部に配置された非濾過水排出部131から外部に排出される。
また、この実施形態において、中空糸膜140の外表面から除去されたSSや汚れ等は、非濾過水や気泡G2とともに非濾過水排出部131を介して縦型容器100の外部に排出される。
【0077】
一実施形態に係るサンプル水処理ユニット10によれば、縦型容器100の内部に、中空糸膜140を縦型容器100に沿って延在させるとともに縦型容器100の下部に配置された濾過水送出部141に接続して配置し、縦型容器100の下部に配置された原水供給部121から原水を供給して上向流を形成して中空糸膜140によってクロスフロー部分濾過方式で濾過して、非濾過水を縦型容器100の上部に配置された非濾過水排出部131から外部に排出させる。このとき、縦型容器100の下部に配置されたスクライビングエア供給部122から縦型容器100内にガスG1を供給して上向流内に泡G2を形成して、泡G2を中空糸膜140の外表面に接触させることにより、中空糸膜140の外表面にSS等が付着するのを抑制するとともに、中空糸膜140の外表面に付着した汚れやSS等の付着物を剥離することができる。
その結果、長期間にわたってメンテナンスなしで測定用サンプル水を安定して濾過することができる。
また、サンプル水処理ユニットを長期間連続して使用することができるので、メンテナンスに要する工数及びメンテナンス費用を削減することができる。
また、サンプル水処理ユニット10を長期間連続して使用することができるので、測定用サンプル水をオンラインで効率的に濾過することができる。
【0078】
また、一実施形態に係るサンプル水処理ユニット10によれば、中空糸膜の下部を縦型容器100に固定して、中空糸膜140を縦型容器100に沿って延在して配置させているので、上向流や形成された泡G2によって中空糸膜140が乱れるのを抑制することができる。
【0079】
また、一実施形態に係るサンプル水処理ユニット10によれば、中空糸膜140が縦型容器100内で揺らぐように構成されているので、中空糸膜140の外表面にSS等が付着するのが抑制される。
また、中空糸膜140が縦型容器100内で揺らぐので、泡G2と中空糸膜140とを効率的に接触させることができる。
【0080】
一実施形態に係るサンプル水処理ユニット100によれば、中空糸膜140の上側が固定(拘束)されずに揺動自在とされているので、中空糸膜140の上側が揺動されやすく、上向流内に形成された泡G2が中空糸膜140の外表面と接触しやすくなり、中空糸膜140の外表面からSS等を効率的に除去することができる。
【0081】
一実施形態に係るサンプル水処理ユニット100によれば、原水供給部121をパルプ製造設備の水系(水質測定対象の水系)2に接続して、水質測定用サンプルの原水をオンラインで縦型容器100内に供給するので、水質測定用サンプルの原水を縦型容器100内に効率的に供給することができる。
【0082】
一実施形態に係る水質測定装置1によれば、生成された濾過水を水質測定ユニット(水質測定部)20に移送して水質測定するので、効率的かつ連続的に水質測定することができる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例について説明する。
本発明の実施例は、従来のサンプル水処理装置を比較例として、上記実施形態に係るサンプル水処理装置10を本発明例とし、サンプル水処理装置10においてバブリングエアを供給せずに用いた場合を参考例として、サンプル水処理装置10の効果を確認した。
【0084】
(1)比較例 前処理装置(従来のサンプル水処理ユニット)
中空糸膜が上部で固定され、上方から下方に向かって延在(原水は上向流)
縦型容器 内径40mm×長さ200mm(塩化ビニル製)
原水供給部 縦型容器の下部に配置
非濾過水排出部 縦型容器の上部に配置
中空糸膜 濾過水排水孔側を縦型容器の上部に固定
中空糸膜 株式会社クラレ製
膜材質 PVDF
膜孔径 0.1μm、有効膜面積 0.1m2
膜有効長 200mm
そして、原水供給部からサンプル水(原水)を供給し非濾過水排出部から排出させた。
【0085】
(2)本発明例及び参考例 前処理装置(一実施形態に係るサンプル水処理ユニット)
中空糸膜が下部で固定され、上方から下方に向かって延在(原水は上向流)
縦型容器 内径40mm×長さ200mm(塩化ビニル製)
サンプル水(原水)供給部 内径φ8mm
スクラビングエア供給部 内径φ4mm
非濾過水の排出部 内径φ8mm
中空糸膜 YHF-20CS(株式会社ユアサメンブレンシステム製)
膜材質 ポリスルホン樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロース
膜孔径 0.2μm、有効膜面積 0.1m2
膜有効長 200mm
サンプル水(原水)採水量 2リットル/分
濾過処理水出部(水質分析用水) 0.2リットル/分
【0086】
(3)試験方法
以下、比較例、本発明例、参考例に係る試験方法を説明する。
【0087】
〔比較例〕
比較例では、上記(1)比較例に記載した前処理装置にサンプル水(原水)を供給して濾過水を生成させて、中空糸膜の外表面の汚れの確認、及びS.sensing B(栗田工業株式会社製)による遊離塩素の測定を実施した。
【0088】
〔本発明例〕
本発明例では、上記(2)本発明例及び参考例に記載した前処理装置にサンプル水(原水)を供給して濾過水を生成させて、中空糸膜の外表面の汚れを確認した。
また、本発明例では、スクラビングエア供給部からスクラビングエア(供給量:2リットル/分)を連続的に供給した。また、気泡の大きさは約5mm以上20mm以下である。
【0089】
〔参考例〕
参考例では、上記(2)本発明例及び参考例に記載した前処理装置にサンプル水(原水)を供給して濾過水を生成させて、中空糸膜の外表面の汚れを確認した。
また、参考例では、スクラビングエアを供給せず、原水内に泡がない状態で濾過した。
【0090】
(4)試験条件
比較例、本発明例、参考例における試験条件は以下のとおりである。
サンプル水(原水)供給量 2リットル/分
非濾過水排水量 1.8リットル/分
濾過水生成量 0.2リットル/分
サンプル水(原水)SS濃度 30~50mg/リットル
【0091】
(5)試験結果
以下、比較例、本発明例、参考例に係る確認結果を説明する。
【0092】
〔比較例〕
比較例では、エアスクライブによる1日1回のバッチ洗浄を設定し、測定用サンプル水を処理した。
その結果、約8時間で中空糸膜が閉塞し、洗浄まで持たずに、S.sensing Bによる遊離塩素の測定は10時間で不可能となった。
【0093】
〔本発明例〕
本発明例では、遊離・残留塩素、ORPを、メンテナンスフリーで1ヶ月以上にわたって、S.sensing Bによる遊離塩素の連続測定を実施することができた。
これにより一週間に一度の分解メンテナンスが不要になることを確認できた。
また、従来生じていた水質測定の中断中に突発的に生じていた検出不能の水質変動を捉えることが可能となり、連続的なオンラインにおける水質測定の信頼性を向上できることが確認された。
【0094】
〔参考例〕
参考例では、エアスクライブによる洗浄をすることなく、測定用サンプル水を連続して処理した。
その結果、約8時間で中空糸膜が閉塞して、S.sensing Bによる遊離塩素の測定は10時間で不可能となった。
【0095】
(6)本発明例における水質測定結果に関する確認
本発明例において、スクライビングエアを吹き込むことによる中空糸膜の微細口閉塞が発生する可能性について検証したところ、気泡のサイズが5mm以上20mm以下の粗大な気泡では中空糸膜の微細口閉塞による濾過性能の低下は認められなかった。
また、連続的にスクライビングエアを吹き込んだ場合においても、測定用サンプル水の酸化に起因するpH、電気伝導率、酸化還元電位等の水質の変動(測定誤差)は特に認められなかった。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、原水供給部121をパルプ製造設備(水質測定対象の水系)に接続して、水質測定用サンプルの原水をオンラインで濾過して濾過水を生成する場合について説明したが、原水供給部121を水質測定対象の水系に接続するかどうかは任意に設定することが可能であり、例えば、水質測定用サンプルをバッチ処理で濾過する構成としてもよい。
【0097】
また、上記実施形態においては、サンプル水処理ユニット10を水質測定ユニット20と接続して、オンラインで水質測定する水質測定装置1に用いる場合について説明したが、サンプル水処理ユニット10を水質測定ユニットや水質測定機器と接続するかどうかは任意に設定することが可能であり、例えば、濾過水をバッチ処理で水質測定する場合に適用してもよい。
【0098】
また、上記実施形態においては、スクライビングエア供給部122から連続的に空気G1を供給する場合について説明したが、スクライビングエア供給部122から供給するガスの供給タイミングについては任意に設定することが可能であり、例えば、間欠的に供給してもよい。
【0099】
また、上記実施形態においては、スクライビングエア供給部122からガスG1として空気を供給する場合について説明したが、例えば、窒素ガスをはじめとする不活性ガスをスクライビングエア供給部122から供給する構成としてもよい。
【0100】
また、上記実施形態においては、サンプル水処理ユニット10を、水質測定部20を備えた水質測定装置1に用いる場合について説明したが、例えば、サンプル水処理ユニット10と別に配置された個別の水質測定機器(単数又は複数)とを備えた水質測定システムに適用してもよい。
【0101】
また、上記実施形態においては、中空糸膜140の上側が固定されることなく、揺動自在に構成されている場合について説明したが、中空糸膜140の外表面に付着した汚れが泡G2によって剥離可能な範囲内で、中空糸膜140の上側を固定しない構成としてもよい。
【0102】
また、上記実施形態においては、中空糸膜140が揺らぐように構成される場合について説明したが、中空糸膜140の外表面に付着した汚れが泡G2によって剥離可能な範囲内で、中空糸膜140が揺らがない構成としてもよい。
【0103】
また、上記実施形態においては、中空糸膜140が、複数の外圧式中空糸141を結束紐143で束ねることにより形成されている場合について説明したが、外圧式中空糸141を2より束ねるかどうかは任意に設定することが可能であり、束ねずに中空糸膜140を形成してもよい。また、複数の外圧式中空糸141に代えて、ひとつの外圧式中空糸によって中空糸膜が形成されていてもよい。
【0104】
また、上記実施形態においては、水質測定装置1がひとつのサンプル水処理ユニット10を備える場合について説明したが、例えば、例えば、2本以上の複数のサンプル水処理ユニット10を備えた構成としてもよい。また、水質測定システムに関しても同様である。
【0105】
また、上記実施形態においては、水質測定装置1によってパルプ製造設備の水系を水質測定する場合について説明したが、例えば、製紙製造設備、一般排水処理設備等の水系の水質測定を行う構成としてもよい。
【0106】
また、上記実施形態においては、SSの濃度が高い測定用サンプル水を水質測定する場合について説明したが、測定用サンプル水がSSを含んでいるかどうかやSS濃度については任意に設定することが可能である。
【0107】
また、水質測定対象項目については、pH、電気伝導率、酸化還元電位、遊離・残留塩素に限定されることなく任意に設定することができる。
【0108】
また、上記実施形態において示した材料や形態は一例であり、材料、形態については任意に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
この発明に係るサンプル水処理ユニット、水質測定システム、水質測定装置、及びサンプル水処理方法、水質測定方法によれば、長期間にわたってメンテナンスなしで測定用サンプルを濾過することができるので産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 水質測定装置
10 サンプル水処理ユニット
11 エア供給チューブ
12 スクライビングエア供給チューブ
13 非濾過水排出チューブ
20 水質測定ユニット(水質測定部)
30 エアポンプユニット(スクライビングガス供給源)
11 エア供給チューブ
100 縦型容器
110 容器本体
120 下部蓋部材
121 原水供給部
122 スクライビングエア供給部(スクライビングガス供給部)
123 濾過水送出部
130 上部蓋部材
131 非濾過水排出部(排出部)
140 中空糸膜
141 外圧式中空糸
142 濾過水送出部(中空糸膜の一端)
143 中空糸結束部
S0 パルプ製造設備の水系(水質測定対象の水系)
S1 測定用サンプル水の原水
S2 測定用サンプル水の原水(上向流)
S3 濾過水
S4 非濾過水
G1 スクライビングエア(スクライビングガス)
G2 気泡(泡)