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特許7494542トナー、現像剤、トナー収容ユニット及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】トナー、現像剤、トナー収容ユニット及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20240528BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240528BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G03G9/08
G03G9/097 365
G03G9/087 331
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020070850
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167881
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕士
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-140377(JP,A)
【文献】特開2006-208431(JP,A)
【文献】特開2006-251564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/097
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び離型剤を含有するトナーであって、
フロー式粒子像分析装置を用いて求められる円形度の標準偏差が0.020以上であり、
前記フロー式粒子像分析装置を用いて求められる平均粒子径及び円形度において、粒子径が前記平均粒子径以下の粒子の平均円形度を平均円形度(A)とし、粒子径が前記平均粒子径よりも大きい粒子の平均円形度を平均円形度(B)としたとき、
A-B≦0.004
を満たし、
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移温度Tg1stが20℃以上50℃以下であり、
前記トナーのTHF不溶分の示差走査熱量測定(DSC)の昇温2回目におけるガラス転移温度Tg2ndが-40℃以上30℃以下であり、
前記トナーのTHF不溶分の40℃における貯蔵弾性率をG’(40)とし、前記トナーのTHF不溶分の100℃における貯蔵弾性率をG’(100)としたとき、
1×10 ≦G’(100)≦1×10
G’(40)/G’(100)≦3.5×10
を満たすことを特徴とするトナー。
ただし、粒子径は円相当径とし、平均粒子径は円相当径(個数基準)により求め、前記フロー式粒子像分析装置の解析条件は以下とする。
粒子径限定:0.5μm≦円相当径(個数基準)≦200.0μm
粒子形状限定:0.93<円形度≦1.00
【請求項2】
前記トナーの長軸rと短軸rとの比r/rが0.5~0.8であり、
前記トナーの厚さrと短軸rとの比r/rが0.5~1.0であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナーの形状係数SF2が110~130であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記結着樹脂が非晶質ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のトナーを収容したことを特徴とするトナー収容ユニット。
【請求項8】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段とを有し、
前記トナーが請求項1~のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、現像剤、トナー収容ユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真、静電記録、静電印刷等において使用されるトナーは、その現像工程において、例えば、静電荷像が形成されている静電潜像担持体等の像担持体に一旦付着され、次に転写工程において静電潜像担持体から転写紙等の転写媒体に転写された後、定着工程において紙面に定着される。
【0003】
その際、潜像保持面上に転写されなかったトナーが残存するため、次の静電荷像の形成を妨げないように残存トナーをクリーニングする必要がある。残存トナーのクリーニングは、装置が簡便でクリーニング性が良好であるブレードクリーニングが多用されているが、トナー形状を異形化するほどクリーニング性が向上することが知られている。また、粒度分布と形状が均一なほど、クリーニング性が向上することが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
重合型トナーは、基本的に球形のトナーが得られるため、懸濁重合法において、非球形化(異形化)するために、無機フィラーや、層状無機鉱物などの異形化剤をトナー表面に偏在させる方法が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、得られるトナーとしては、粒径が小さいものは形状が球形に近く、粒径が大きいものほど形状が異形化し、円形度分布が広くなってしまう。結果的にクリーニング性や転写性が悪化する。
【0006】
一方、特許文献3では、フロー式粒子像解析装置を用いた測定における、下記解析条件下での前記トナーの測定結果が、平均円形度Rave.が0.960≦Rave.≦0.980であり、粒子最頻径θmaxが4.0μm≦θmax≦6.0μmであり、0.75×θmax以下の粒子径で、且つ円形度が0.980以上の粒子の数が限定粒子数の1.0%以下となるトナーが提案されている。特許文献6では、トナーの粒径が小さすぎず、形状が球形すぎず、かつ粒度分布及び円形度分布の分布が狭く、極めて均一な粒度分布と極めて均一な円形度分布を有する、クリーニング性と転写性とに優れたトナーを提供することができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術においては、クリーニング性と転写性を同時に満たすことができない場合もあり、クリーニング性及び転写性の両立について更なる改善が求められている。
【0008】
そこで本発明は、クリーニング性及び転写性を両立できるトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のトナーは、結着樹脂及び離型剤を含有するトナーであって、フロー式粒子像分析装置を用いて求められる円形度の標準偏差が0.020以上であり、前記フロー式粒子像分析装置を用いて求められる平均粒子径及び円形度において、粒子径が前記平均粒子径以下の粒子の平均円形度を平均円形度(A)とし、粒子径が前記平均粒子径よりも大きい粒子の平均円形度を平均円形度(B)としたとき、
A-B≦0.004
を満たし、前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移温度Tg1stが20℃以上50℃以下であり、前記トナーのTHF不溶分の示差走査熱量測定(DSC)の昇温2回目におけるガラス転移温度Tg2ndが-40℃以上30℃以下であり、前記トナーのTHF不溶分の40℃における貯蔵弾性率をG’(40)とし、前記トナーのTHF不溶分の100℃における貯蔵弾性率をG’(100)としたとき、
1×10 ≦G’(100)≦1×10
G’(40)/G’(100)≦3.5×10
を満たすことを特徴とする。
ただし、粒子径は円相当径とし、平均粒子径は円相当径(個数基準)により求め、前記
フロー式粒子像分析装置の解析条件は以下とする。
粒子径限定:0.5μm≦円相当径(個数基準)≦200.0μm
粒子形状限定:0.93<円形度≦1.00
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリーニング性及び転写性を両立できるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】トナーの紡錘形状を説明するための図である。
図1B】トナーの紡錘形状を説明するための図である。
図1C】トナーの紡錘形状を説明するための図である。
図2】本発明の実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図3】本発明の実施形態の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図4】本発明の実施形態の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図5図4の部分拡大図である。
図6】プロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るトナー、現像剤、トナー収容ユニット及び画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
(トナー)
本発明のトナーは、結着樹脂及び離型剤を含有するトナーであって、フロー式粒子像分析装置を用いて求められる円形度の標準偏差が0.020以上であり、前記フロー式粒子像分析装置を用いて求められる平均粒子径及び円形度において、粒子径が前記平均粒子径以下の粒子の平均円形度を平均円形度(A)とし、粒子径が前記平均粒子径よりも大きい粒子の平均円形度を平均円形度(B)としたとき、
A-B≦0.004
を満たすことを特徴とする。
ただし、粒子径は円相当径とし、平均粒子径は円相当径(個数基準)により求め、前記フロー式粒子像分析装置の解析条件は以下とする。
粒子径限定:0.5μm≦円相当径(個数基準)≦200.0μm
粒子形状限定:0.93<円形度≦1.00
【0014】
本発明によれば、クリーニング性及び転写性を両立できるトナーを提供することができる。また、本発明における好適な実施形態によれば、クリーニング性と転写性を両立しつつ、低温定着性、耐熱保存性、耐高温高湿保存性を向上させることができる。
【0015】
本実施形態のトナーは、結着樹脂及び離型剤を含有する。以下、本実施形態のトナーにおいて、トナー母体粒子と外添剤を含有する構成例について説明する。
【0016】
<トナー母体粒子>
前記トナー母体粒子は、結着樹脂及び離型剤を含有し、結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましく、その他にも、着色剤や非晶質ポリエステル樹脂等を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0017】
<<結着樹脂>>
結着樹脂としては、例えば結晶性ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0018】
<<<結晶性ポリエステル樹脂>>>
前記結晶性ポリエステル樹脂(以下、「結晶性ポリエステル樹脂C」と称することがある。)は、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度変化を示す熱溶融特性を示す。
【0019】
このような特性を有する前記結晶性ポリエステル樹脂Cを前記非晶質ポリエステル樹脂と共に用いることで、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。例えば、共に用いることにより、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では結晶性ポリエステル樹脂Cの融解による急激な粘度低下(シャープメルト性)を起こし、それに伴い後述する非晶質ポリエステル樹脂Bと相溶し、共に急激に粘度低下することで良好に定着させることができる。
また、離型幅(定着下限温度と耐高温オフセット発生温度との差)についても、良好な結果を示す。
【0020】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られる。
【0021】
なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂Cとは、上記のごとく、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指す。ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、後述するプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂Cには属さない。
【0022】
-多価アルコール-
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂Cの結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。炭素数としては12以下であることがより好ましい。
【0023】
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂Cの結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0024】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
-多価カルボン酸-
前記多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられる。
【0026】
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルも挙げられる。
【0027】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。
【0028】
また、前記多価カルボン酸としては、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸が含まれていてもよい。更に、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸を含有してもよい。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cは、炭素数4以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。即ち、前記結晶性ポリエステル樹脂Cは、炭素数4以上12以下の飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、炭素数2以上12以下の飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有することが好ましい。そうすることにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れることから、優れた低温定着性を発揮できる点で好ましい。
【0030】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下であることが好ましい。前記融点が、60℃以上であると、結晶性ポリエステル樹脂Cが低温で溶融してトナーの耐熱保存性が低下することを抑制できる。80℃以下であると、定着時の加熱による結晶性ポリエステル樹脂Cの溶融を向上させることができ、低温定着性の低下を抑制できる。
【0031】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が低下するという観点から、前記結晶性ポリエステル樹脂Cのオルトジクロロベンゼンの可溶分が、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)3,000~30,000、数平均分子量(Mn)1,000~10,000、Mw/Mn1.0~10であることが好ましい。
さらには、重量平均分子量(Mw)5,000~15,000、数平均分子量(Mn)2,000~10,000、Mw/Mn1.0~5.0であることが好ましい。
【0032】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。紙と樹脂との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するためには、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。一方、耐高温オフセット性を向上させるには、45mgKOH/g以下が好ましい。
【0033】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。所望の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~50mgKOH/gがより好ましい。
【0034】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1又は990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶性ポリエステル樹脂Cとして検出する方法が挙げられる。
【0035】
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、3質量部~20質量部が好ましく、5質量部~15質量部がより好ましい。前記含有量が3質量部以上であると、結晶性ポリエステル樹脂Cによるシャープメルト化を向上させることができ、低温定着性を向上させることができる。20質量部以下であると、耐熱保存性の低下を抑制でき、また画像のかぶりが発生することを抑制することができる。前記含有量が前記のより好ましい範囲内であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0036】
<<<非晶質ポリエステル樹脂>>>
前記非晶質ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下で説明する非晶質ポリエステル樹脂Aと、非晶質ポリエステル樹脂Bとを含有することが好ましい。
【0037】
-非晶質ポリエステル樹脂A-
前記非晶質ポリエステル樹脂Aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ガラス転移温度(Tg)が-60℃以上20℃以下であることが好ましく、-40℃以上20℃以下であることがより好ましい。
【0038】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非線状の反応性前駆体と硬化剤との反応により得られることが好ましい。
【0039】
また、非晶質ポリエステル樹脂Aは紙などの記録媒体への接着性がより優れる点から、ウレタン結合及びウレア結合の少なくともいずれかを有することが好ましい。非晶質ポリエステル樹脂Aが、ウレタン結合及びウレア結合のいずれかを有することにより、ウレタン結合又はウレア結合が擬似架橋点のような挙動を示し、非晶質ポリエステル樹脂Aのゴム的性質が強くなり、トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性がより優れる。
【0040】
--非線状の反応性前駆体--
前記非線状の反応性前駆体としては、前記硬化剤と反応可能な基を有するポリエステル樹脂(以下、「プレポリマー」と称することがある。)であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記プレポリマーにおける前記硬化剤と反応可能な基としては、例えば、活性水素基と反応可能な基などが挙げられる。前記活性水素基と反応可能な基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基などが挙げられる。これらの中でも、前記非晶質ポリエステル樹脂にウレタン結合又はウレア結合を導入可能な点で、イソシアネート基が好ましい。
【0041】
前記プレポリマーは非線状であることが好ましい。前記非線状とは、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかによって付与される分岐構造を有することを意味する。
また、前記プレポリマーとしては、イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂が好ましい。
【0042】
---イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂---
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。前記活性水素基を有するポリエステル樹脂は、例えば、ジオールと、ジカルボン酸と、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかとを重縮合することにより得られる。前記3価以上のアルコール及び前記3価以上のカルボン酸は、前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂に分岐構造を付与する。
【0043】
----ジオール----
前記ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。これらの中でも、炭素数4以上12以下の脂肪族ジオールが好ましい。これらのジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
----ジカルボン酸----
前記ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、これらの無水物を用いてもよいし、低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物を用いてもよいし、ハロゲン化物を用いてもよい。
【0045】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0046】
前記芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。前記炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
これらの中でも、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
これらのジカルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
----3価以上のアルコール----
前記3価以上のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0048】
前記3価以上の脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、例えば、3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものなどが挙げられる。
【0049】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aは、構成成分として3価以上の脂肪族アルコールを含むことが好ましい。
前記非晶質ポリエステル樹脂Aが構成成分として3価以上の脂肪族アルコールを含むことにより、分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが、流動しないというゴム的な性質を有する。そのため、トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性の保持が可能となる。
【0050】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aは、3価以上のカルボン酸やエポキシ等を架橋成分として使用することも可能だが、カルボン酸の場合には芳香族化合物であることが多いことや架橋部分のエステル結合密度が高くなることにより、トナーを加熱定着させて作成した定着画像の光沢が十分に発現できないことがある。エポキシ等の架橋剤を使用する場合にはポリエステルの重合後に架橋反応を実施しなければならず、架橋点間距離の制御が困難であり、狙い通りの粘弾性を得ることができないことや、ポリエステル生成時のオリゴマーと反応して架橋密度の高い部分ができやすいことから定着画像にムラが生じ光沢や画像濃度が劣ることがある。
【0051】
----3価以上のカルボン酸----
前記3価以上のカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられる。また、これらの無水物を用いてもよいし、低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物を用いてもよいし、ハロゲン化物を用いてもよい。
【0052】
前記3価以上の芳香族カルボン酸としては、炭素数9~20の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。前記炭素数9~20の3価以上の芳香族カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0053】
----ポリイソシアネート----
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ジイソシアネート、3価以上のイソシアネートなどが挙げられる。
【0054】
前記ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたものなどが挙げられる。
【0055】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0056】
前記脂環式ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0057】
前記芳香族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3-メチルジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナト-ジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0058】
前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0059】
前記イソシアヌレート類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
これらのポリイソシアネートは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
--硬化剤--
前記硬化剤としては、前記非線状の反応性前駆体と反応し、前記非晶質ポリエステル樹脂Aを生成できる硬化剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基含有化合物などが挙げられる。
【0061】
---活性水素基含有化合物---
前記活性水素基含有化合物における活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記活性水素基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ウレア結合を形成可能な点で、アミン類が好ましい。
【0062】
前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン、3価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のアミンとの混合物が好ましい。
【0063】
前記ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミンなどが挙げられる。前記芳香族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0064】
前記脂環式ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。前記脂肪族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0065】
前記3価以上のアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
前記アミノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
前記アミノメルカプタンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
前記アミノ基をブロックしたものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
【0066】
前記非晶質ポリエステル樹脂AのTgを低くし、低温で変形する性質を付与しやすくするために、前記非晶質ポリエステル樹脂Aは、構成成分にジオール成分を含み、前記ジオール成分が、炭素数4以上12以下の脂肪族ジオールを50質量%以上含有することが好ましい。
【0067】
また、前記非晶質ポリエステル樹脂Aは、全アルコール成分中に炭素数4以上12以下の脂肪族ジオールを50質量%以上含有することが好ましい。この場合、前記非晶質ポリエステル樹脂AのTgを低くし、低温で変形する性質を付与しやすくすることができる。
【0068】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aは、構成成分にジカルボン酸成分を含み、前記ジカルボン酸成分が、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を50質量%以上含有することが好ましい。この場合、前記非晶質ポリエステル樹脂AのTgを低くし、低温で変形する性質を付与しやすくすることができる。
【0069】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、10,000以上1,000,000以下が好ましく、10,000以上300,000以下がより好ましく、10,000以上200,000以下が特に好ましい。前記重量平均分子量が、10,000以上であると、トナーが低温で流動することを抑制し、耐熱保存性を向上させることができる。また溶融時の粘性が低くなることを抑制し、高温オフセット性が低下することを抑制することができる。
【0070】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aの分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを非晶質ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0071】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、5質量部~25質量部が好ましく、10質量部~20質量部がより好ましい。前記含有量が5質量部以上であると、低温定着性及び耐高温オフセット性が悪化することを抑制できる。25質量部以下であると、耐熱保存性の悪化及び定着後に得られる画像の光沢度の低下を抑制することができる。前記含有量が、前記のより好ましい範囲内であると、低温定着性、耐高温オフセット性、及び耐熱保存性の全てに優れる点で有利である。
【0072】
-非晶質ポリエステル樹脂B-
前記非晶質ポリエステル樹脂Bとしては、線状のポリエステル樹脂が好ましく、また未変性ポリエステル樹脂が好ましい。
前記未変性ポリエステル樹脂とは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるポリエステル樹脂であって、イソシアネート化合物などにより変性されていないポリエステル樹脂である。
前記非晶質ポリエステル樹脂Bとしては、ウレタン結合及びウレア結合を有しないことが好ましい。
【0073】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bは、構成成分としてジカルボン酸成分を含み、前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を50mol%以上含有することが好ましい。そうすることにより、耐熱保存性の点で有利である。
【0074】
前記多価アルコールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記多価カルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸;ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
また、酸価、水酸基価を調整する目的で、前記非晶質ポリエステル樹脂Bは、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸及び3価以上のアルコールの少なくともいずれかを含んでいてもよい。
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物などが挙げられる。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0077】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、重量平均分子量(Mw)3,000~10,000であることが好ましい。数平均分子量(Mn)は、1,000~4,000であることが好ましい。Mw/Mnは、1.0~4.0であることが好ましい。
【0078】
分子量が上記下限値以上の場合、トナーの耐熱保存性や現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が低下することを抑制することができる。分子量が上記上限値以下の場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなることを抑え、低温定着性が低下することを抑制することができる。
【0079】
前記重量平均分子量(Mw)は、4,000~7,000がより好ましい。前記数平均分子量(Mn)は、1,500~3,000がより好ましい。前記Mw/Mnは、1.0~3.5がより好ましい。
【0080】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。前記酸価が、1mgKOH/g以上であることにより、トナーが負帯電性となりやすく、更には、紙への定着時に、紙とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。前記酸価が、50mgKOH/g以下であることにより、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することを抑制することができる。
【0081】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0082】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度(Tg)は、40℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましい。前記ガラス転移温度が、40℃以上であることにより、トナーの耐熱保存性、及び現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が十分なものとなり、また、耐フィルミング性も良好となる。前記ガラス転移温度が、80℃以下であることにより、トナーの定着時における加熱及び加圧による変形が十分なものとなり、低温定着性が良好となる。
【0083】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを非晶質ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0084】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、50質量部~90質量部が好ましく、60質量部~80質量部がより好ましい。前記含有量が、50質量部以上であると、トナー中の顔料、離型剤の分散性が悪化することを抑制でき、画像のかぶりや乱れが生じることを抑制することができる。90質量部以下であると、結晶性ポリエステル樹脂C、及び非晶質ポリエステル樹脂Aの含有量が少なくなることを防止し、低温定着性が低下することを抑制することができる。前記含有量が、前記のより好ましい範囲であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0085】
低温定着性をより向上させるためは、前記非晶質ポリエステル樹脂Aと前記結晶性ポリエステル樹脂Cとを併用することが好ましい。低温定着性と高温高湿保存性とを両立させるために前記非晶質ポリエステル樹脂Aは、ガラス転移温度が非常に低いことが好ましい。ガラス転移温度が非常に低いため、低温で変形する性質を有し、定着時の加熱、及び加圧に対して変形し、より低温で紙などの記録媒体に接着しやすくなる性質を有する。また、前記非晶質ポリエステル樹脂Aの一態様では、反応性前駆体が非線状であることから、分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが、流動しないというゴム的な性質を有する。そのため、トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性の保持が可能となる。
【0086】
なお、前記非晶質ポリエステル樹脂Aが、凝集エネルギーの高いウレタン結合又はウレア結合を有する場合には、紙などの記録媒体への接着性がより優れる。また、ウレタン結合又はウレア結合は、擬似架橋点のような挙動を示すことから、ゴム的性質はより強くなり、結果、トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性がより優れる。
【0087】
即ち、本発明のトナーにおいて、前記非晶質ポリエステル樹脂Aと前記結晶性ポリエステル樹脂C、必要に応じて、その他の非晶質ポリエステル樹脂Bとを併用すると、低温定着性に非常に優れたものとなる。さらに超低温域にガラス転移温度を有する非晶質ポリエステル樹脂Aを用いることで、従来よりトナーのガラス転移温度を低く設定しても耐熱保存性、耐高温オフセット性を保持することが可能となるとともに、トナーのガラス転移温度を低くしたことにより、低温定着性に優れる。
【0088】
<<着色剤>>
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。
【0089】
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、1質量部~15質量部が好ましく、3質量部~10質量部がより好ましい。
【0090】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練される樹脂としては、例えば、前記非晶質ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0092】
<<離型剤>>
前記離型剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
ロウ類及びワックス類の離型剤としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。
また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。
【0093】
更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。
【0094】
これらの中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましい。
【0095】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下が好ましい。前記融点が60℃以上であると、低温で離型剤が溶融することを抑制でき、耐熱保存性が低下することを抑制することができる。前記融点が80℃以上であると、樹脂が溶融して定着温度領域にある場合に、離型剤が充分溶融せずに定着オフセットを生じることを抑制でき、画像の欠損が生じることを抑制することができる。
【0096】
前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記トナー100質量部に対して、2質量部~10質量部が好ましく、3質量部~8質量部がより好ましい。前記含有量が2質量部以上であると、定着時の耐高温オフセット性、及び低温定着性が低下することを抑制でき、10質量部以下であると、耐熱保存性が低下することを抑制でき、また画像のかぶりなどが生じることを抑制することができる。前記含有量が、前記のより好ましい範囲内であると、高画質化、及び定着安定性を向上させる点で有利である。
【0097】
<<その他の成分>>
前記トナー母体粒子が含有する前記その他の成分としては、例えば、帯電制御剤、異形化剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料などが挙げられる。
【0098】
<<<帯電制御剤>>>
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。
【0099】
具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0100】
前記帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記トナー100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましい。前記含有量が10質量部以下であると、トナーの帯電性が大きくなり過ぎることを防ぎ、主帯電制御剤の効果を保つことができ、現像ローラとの静電的吸引力が増大することを防ぎ、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を抑制することができる。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、もちろん有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー粒子作製後固定化させてもよい。
【0101】
<<<異形化剤>>>
本実施形態では、カラートナーの形状を異形化することを目的として、異形化剤を有してもよい。異形化剤としては、この目的が達成できるものであれば、目的に応じて適宜選択することができるが、層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物を含有することが好ましい。
【0102】
異形化剤として用い得る層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えばスメクタイト系の基本結晶構造を持つものを有機カチオンで変性したものが望ましい。また、層状無機鉱物の2価金属の一部を3価の金属に置換することにより、金属アニオンを導入することができる。しかし、金属アニオンを導入すると親水性が高いため、金属アニオンの少なくとも一部を有機アニオンで変性した層状無機化合物が望ましい。
【0103】
層状無機鉱物が有するイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の、有機物カチオン変性剤としては、有機物イオンでこのように変性し得るものであれば、特に制限はなく、第4級アルキルアンモニウム塩、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩などが挙げられる。中でも、第4級アルキルアンモニウム塩が望ましい。この第4級アルキルアンモニウムとしては、トリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0104】
層状無機鉱物が有するイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の、有機物アニオン変性剤としては、有機物イオンで上記のように変性し得るものであれば、特に制限はないが、さらに分岐、非分岐又は環状アルキル(C1~C44)、アルケニル(C1~C22)、アルコキシ(C8~C32)、ヒドロキシアルキル(C2~C22)、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を有する硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、又はリン酸塩が挙げられる。エチレンオキサイド骨格を持ったカルボン酸が望ましい。
【0105】
層状無機鉱物の少なくとも一部を有機物イオンで変性することにより、適度な疎水性を持ち、トナー組成物を含む油相(後述)が非ニュ-トニアン粘性を持ち、トナーを異形化することができる。このとき、トナー材料中の一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の含有量は、トナー中0.05質量%~10質量%であることが好ましく、0.05質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0106】
また、一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物を適宜選択することができ、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト及びこれらの混合物等が挙げられる。中でも、トナー特性に影響を与えず、容易に粘度調整ができ、添加量を少量とすることができることから、有機変性モンモリロナイト又はベントナイトが好ましい。
【0107】
一部を有機カチオンで変性した層状無機鉱物の市販品としては、Bentone 3、Bentone 38、Bentone 38V(以上、レオックス社製)、チクソゲルVP(United catalyst社製)、クレイトン34、クレイトン40、クレイトンXL(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18ベントナイト;Bentone 27(レオックス社製)、チクソゲルLG(United catalyst社製)、クレイトンAF、クレイトンAPA(以上、サザンクレイ社製)等のステアラルコニウムベントナイト;クレイトンHT、クレイトンPS(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18/ベンザルコニウムベントナイトが挙げられる。好ましいのは、クレイトンAF、クレイトンAPAが挙げられる。
【0108】
また一部を有機アニオンで変性した層状無機鉱物としては、DHT-4A(協和化学工業社製)に下記一般式(III)で表される有機アニオンで変性させたものがより好ましい。下記一般式(III)は、例えばハイテノール330T(第一工業製薬社製)が挙げられる。
【0109】
(OROSOM ・・・一般式(III)
【0110】
[一般式中、Rは炭素数13を有するアルキル基、Rは炭素数2~6を有するアルキレン基を表し、nは2から10の整数を表し、Mは1価の金属元素を表す]
【0111】
異形化剤の含有量としては、上記層状無機鉱物の含有量と同様に、トナー中0.05質量%~10質量%であることが好ましく、0.05質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0112】
<<<流動性向上剤>>>
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0113】
<<<クリーニング性向上剤>>>
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好適である。
【0114】
<<<磁性材料>>>
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0115】
<外添剤>
前記外添剤としては酸化物微粒子の他に、無機微粒子や疎水化処理無機微粒子を併用することができるが、疎水化処理された一次粒子の平均粒径は1nm~100nmが好ましく、5nm~70nmの無機微粒子がより好ましい。
【0116】
また、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が20nm以下の無機微粒子を少なくとも1種類以上含み、かつ30nm以上の無機微粒子を少なくとも1種類含むことが好ましい。また、BET法による比表面積は、20m/g~500m/gであることが好ましい。
【0117】
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、金属酸化物(例えばチタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモン等)、フルオロポリマーなどが挙げられる。
【0118】
好適な添加剤としては、疎水化されたシリカ、チタニア、酸化チタン、アルミナ微粒子が挙げられる。
シリカ微粒子としては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも、日本アエロジル社製)などが挙げられる。
また、チタニア微粒子としては、例えばP-25(日本アエロジル社製)、STT-30、STT-65C-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-140(富士チタン工業株式会社製)、MT-150W、MT-500B、MT-600B、MT-150A(いずれも、テイカ株式会社製)などが挙げられる。
【0119】
疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、例えば、T-805(日本アエロジル株式会社製)、STT-30A、STT-65S-S(いずれも、チタン工業株式会社製)、TAF-500T、TAF-1500T(いずれも、富士チタン工業株式会社製)、MT-100S、MT-100T(いずれも、テイカ株式会社製)、IT-S(石原産業株式会社製)などが挙げられる。
【0120】
疎水化処理された酸化物微粒子、疎水化処理されたシリカ微粒子、疎水化処理されたチタニア微粒子、疎水化処理されたアルミナ微粒子は、例えば、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤で処理して得ることができる。またシリコーンオイルを必要ならば熱を加えて無機微粒子に処理した、シリコーンオイル処理酸化物微粒子、無機微粒子も好適である。
【0121】
前記シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0122】
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらの中でも、シリカと二酸化チタンが特に好ましい。
【0123】
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、0.1質量部~5質量部が好ましく、0.3質量部~3質量部がより好ましい。
【0124】
前記無機微粒子の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。100nm以下が好ましく、3nm以上70nm以下がより好ましい。3nm以上であると、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されないことを防止できる。また100nm以下であると、感光体表面を不均一に傷つけることを抑制することができる。
【0125】
<ガラス転移温度>
<<Tg1st(トナー)>>
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移温度〔Tg1st(トナー)〕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。低温定着性の点から20℃以上50℃以下が好ましく、35℃以上45℃以下がより好ましい。
【0126】
従来のトナーであると、Tgが50℃以下程度になると、夏場や熱帯地方を想定したトナーの輸送時、及び保管環境での温度変化によりトナーの凝集が発生しやすくなる。その結果、トナーボトル中での固化、及び現像機内でのトナーの固着が発生する。また、トナーボトル内でのトナー詰りによる補給不良、及び現像機内でのトナー固着による画像異常が発生しやすくなる。
【0127】
前記トナーは、従来のトナーよりTgが低くても、トナー中の低Tg成分である前記非晶質ポリエステル樹脂Aが非線状である場合には、前記トナーは、耐熱保存性を保持することができる。特に、前記非晶質ポリエステル樹脂Aが凝集力の高いウレタン結合又はウレア結合を有する場合には、耐熱保存性を保持する効果がより顕著になる。
【0128】
前記〔Tg1st(トナー)〕が、20℃以上であると、耐熱保存性の低下、現像機内でのブロッキング、及び感光体へのフィルミングを抑制することができる。50℃以下であると、トナーの低温定着性が低下することを抑制することができる。
【0129】
<<〔Tg2nd(トナー)〕>>
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)の昇温2回目におけるガラス転移温度〔Tg2nd(トナー)〕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃以上30℃以下であることが好ましく、0℃以上15℃以下であることがより好ましい。前記〔Tg2nd(トナー)〕が0℃以上であると、定着画像(印刷物)の耐ブロッキング性が低下することを抑制することができ、30℃以下であると、低温定着性や光沢度が低下することを抑制することができる。
【0130】
前記〔Tg2nd(トナー)〕は、例えば、結晶性ポリエステル樹脂のTg、及び配合量によりその数値を調整できる。
【0131】
<<[〔Tg1st(トナー)〕-〔Tg2nd(トナー)〕]>>
前記トナーの示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目のガラス転移温度〔Tg1st(トナー)〕と昇温2回目のガラス転移温度〔Tg2nd(トナー)〕との差[〔Tg1st(トナー)〕-〔Tg2nd(トナー)〕]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10℃以上であることがより好ましい。前記差の上限は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記差[〔Tg1st(トナー)〕-〔Tg2nd(トナー)〕]は、50℃以下が好ましい。
【0132】
前記差[〔Tg1st(トナー)〕-〔Tg2nd(トナー)〕]が10℃以上であると、より低温定着性に優れる点で有利である。前記差[〔Tg1st(トナー)〕-〔Tg2nd(トナー)〕]が10℃以上であることは、加熱前(昇温1回目の前)には非相溶状態で存在していた結晶性ポリエステル樹脂Cと、非晶質ポリエステル樹脂A及び非晶質ポリエステル樹脂Bとが、加熱後(昇温1回目の後)には相溶状態になることを意味する。なお、加熱後の相溶状態は、完全な相溶状態である必要はない。
【0133】
<<Tg2nd(THF不溶分)>>
前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分の示差走査熱量測定(DSC)の昇温2回目におけるガラス転移温度〔Tg2nd(THF不溶分)〕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば-40℃以上30℃以下であることが好ましく、0℃以上20℃以下であることがより好ましい。前記〔Tg2nd(THF不溶分)〕が-40℃以上であると、定着画像(印刷物)の耐ブロッキング性が低下することを抑制することができるという利点が得られ、30℃以下であると、低温定着性や光沢度が低下することを抑制することができるという利点が得られる。
【0134】
前記〔Tg2nd(THF不溶分)〕は、例えば、非晶質ポリエステル樹脂Aのジオール、及びジカルボン酸の炭素数を変えることによりその数値を調整できる。
【0135】
<貯蔵弾性率>
<<〔G’(100)(THF不溶分)〕、及び[〔G’(40)(THF不溶分)〕/〔G’(100)(THF不溶分)〕]>>
前記トナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分の100℃における貯蔵弾性率〔G’(100)(THF不溶分)〕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0×10Pa~1.0×10Paが好ましく、5.0×10Pa~5.0×10Paがより好ましい。前記貯蔵弾性率〔G’(100)(THF不溶分)〕が、前記より好ましい範囲内であると、低温定着性がより優れる点で有利である。
【0136】
前記トナーのTHF不溶分の、40℃における貯蔵弾性率〔G’(40)(THF不溶分)〕と100℃における貯蔵弾性率〔G’(100)(THF不溶分)〕との比[〔G’(40)(THF不溶分)〕/〔G’(100)(THF不溶分)〕]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.5×10以下が好ましい。前記比[〔G’(40)(THF不溶分)〕/〔G’(100)(THF不溶分)〕]が、3.5×10以下であると、低温定着性が低下することを抑制することができる。
【0137】
前記トナーは、前記〔G’(100)(THF不溶分)〕が1.0×10Pa~1.0×10Paであり、かつ前記比[〔G’(40)(THF不溶分)〕/〔G’(100)(THF不溶分)〕]が3.5×10以下であることにより、結晶性ポリエステル樹脂と、高Tg成分である非晶質ポリエステル樹脂との相溶化を促進させ、熱流動評価装置(フローテスタ)による1/2流出温度が下がり、画像光沢が向上する。
【0138】
前記〔G’(100)(THF不溶分)〕、及び前記〔G’(40)(THF不溶分)〕は、例えば、樹脂組成(2官能以上のポリオール、2官能以上の酸成分)によりその数値を調整できる。
【0139】
具体的には、例えば、以下のようにすることで調整できる。G’を上げるのであれば、樹脂におけるエステル結合の距離を短くする。芳香環を持つ樹脂組成にする。G’を下げるのであれば、線状のポリエステル樹脂を使用する。樹脂の構成成分として、側鎖にアルキル基を持つポリオールを使用する。
【0140】
<<THF不溶分>>
前記トナーのTHF不溶分は、以下のようにして得ることができる。
テトラヒドロフラン(THF)100部に対してトナー1部を添加し6時間還流した後に、遠心分離機により不溶成分を沈降させて、不溶成分と上澄み液とを分離する。
前記不溶成分を40℃、20時間乾燥させて、THF不溶分を得る。
【0141】
<<貯蔵弾性率G’の測定方法>>
各種条件における貯蔵弾性率(G’)は、例えば、動的粘弾性測定装置(ARES、TAインスツルメント社製)を用いて測定できる。測定の際の周波数は、1Hzである。
具体的には、測定試料を、直径8mm、厚み1mm~2mmのペレットに成型し、直径8mmのパラレルプレートに固定した後、40℃で安定させ、周波数1Hz(6.28rad/s)、歪み量0.1%(歪み量制御モード)にて200℃まで昇温速度2.0℃/分間で昇温させて、貯蔵弾性率を測定する。
【0142】
本明細書では、40℃の貯蔵弾性率をG’(40℃)、100℃の貯蔵弾性率をG’(100℃)と表すことがある。
【0143】
<融点>
前記トナーの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下が好ましい。
【0144】
<体積平均粒径>
前記トナーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上7μm以下であることが好ましい。また、個数平均粒径に対する体積平均粒径の比は1.2以下であることが好ましい。また、体積平均粒径が2μm以下である成分を1個数%以上10個数%以下含有することが好ましい。
【0145】
<トナー及びトナー構成成分の各種特性の算出方法及び分析方法>
前記非晶質ポリエステル樹脂A、前記非晶質ポリエステル樹脂B、前記結晶性ポリエステル樹脂C、及び離型剤のTg、酸価、水酸基価、分子量、及び融点は、それぞれ、それ自体について測定してもよいが、実際のトナーからゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等により分離を行い、その分離した各成分について後述の分析手法を採ることで、Tg、分子量、融点、構成成分の質量比を算出してもよい。
【0146】
GPCによる各成分の分離は、例えば、以下の方法により行うことができる。
THF(テトラヒドロフラン)を移動相としたGPC測定において、溶出液についてフラクションコレクターなどにより分取を行い、溶出曲線の全面積分のうちの所望の分子量部分に相当するフラクションをまとめる。
【0147】
このまとめた溶出液をエバポレーターなどにより濃縮及び乾燥した後、固形分を重クロロホルム又は重THFなどの重溶媒に溶解させ、1H-NMR測定を行い、各元素の積分比率から、溶出成分における樹脂の構成モノマー比率を算出する。
【0148】
また、他の手法としては、溶出液を濃縮後、水酸化ナトリウムなどにより加水分解を行い、分解生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより定性定量分析することで構成モノマー比率を算出する。
【0149】
なお、前記トナーの製造方法が、前記非線状の反応性前駆体と前記硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応により非晶質ポリエステル樹脂Aを生成しながら、トナー母体粒子を形成する場合には、実際のトナーからGPC等により分離を行い、前記非晶質ポリエステル樹脂AのTgなどを求めてもよい。この他にも、別途、前記非線状の反応性前駆体と前記硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応により非晶質ポリエステル樹脂Aを合成し、その合成した非晶質ポリエステル樹脂AからTgなどを測定してもよい。
【0150】
<<トナー構成成分の分離手段>>
前記トナーを分析する際の各成分の分離手段の一例を詳細に示す。
まず、トナー1gを100mLのTHF中に投入し、25℃の条件下、30分間攪拌しながら可溶分が溶解した溶解液を得る。これを目開き0.2μmのメンブランフィルターにてろ過し、トナー中のTHF可溶分を得る。
次いで、これをTHFに溶解してGPC測定用の試料とし、前述の各樹脂の分子量測定に用いるGPCに注入する。
一方、GPCの溶出液排出口にフラクションコレクターを配置して、所定のカウントごとに溶出液を分取しておき、溶出曲線の溶出開始(曲線の立ち上がり)から面積率で5%毎に溶出液を得る。
次いで、各溶出分について、1mLの重クロロホルムに30mgのサンプルを溶解させ、基準物質として0.05体積%のテトラメチルシラン(TMS)を添加する。
溶液を5mm径のNMR測定用ガラス管に充填し、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製JNM-AL400)を用い、23℃~25℃の温度下、128回の積算を行い、スペクトルを得る。
トナーに含まれる前記非晶質ポリエステル樹脂A、前記非晶質ポリエステル樹脂B、及び前記結晶性ポリエステル樹脂Cなどのモノマー組成、及び構成比率は得られたスペクトルのピーク積分比率から求めることができる。
【0151】
例えば、以下のようにピークの帰属を行い、それぞれの積分比から構成モノマーの成分比率を求める。
ピークの帰属は、例えば、
8.25ppm付近:トリメリット酸のベンゼン環由来(水素1個分)
8.07ppm~8.10ppm付近:テレフタル酸のベンゼン環由来(水素4個分)
7.1ppm~7.25ppm付近:ビスフェノールAのベンゼン環由来(水素4個分)
6.8ppm付近:ビスフェノールAのベンゼン環由来(水素4個分)及びフマル酸の二重結合由来(水素2個分)
5.2ppm~5.4ppm付近:ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のメチン由来(水素1個分)
3.7ppm~4.7ppm付近:ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のメチレン由来(水素2個分)及びビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のメチレン由来(水素4個分)
1.6ppm付近:ビスフェノールAのメチル基由来(水素6個分)とすることができる。
【0152】
これらの結果から、例えば、前記非晶質ポリエステル樹脂Aが90%以上を占めるフラクションに回収された抽出物を前記非晶質ポリエステル樹脂Aとして扱うことができる。同様に前記非晶質ポリエステル樹脂Bが90%以上を占めるフラクションに回収された抽出物を前記非晶質ポリエステル樹脂Bとして扱うことができる。前記結晶性ポリエステル樹脂Cが90%以上を占めるフラクションに回収された抽出物を前記結晶性ポリエステル樹脂Cとして扱うことができる。
【0153】
<<融点、及びガラス転移温度(Tg)の測定方法>>
本発明における融点、ガラス転移温度(Tg)は、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
具体的には、対象試料の融点、ガラス転移温度は、下記手順により測定できる。
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、-80℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱する(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/minにて-80℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱(昇温2回目)する。この昇温1回目、及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測する。
【0154】
得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目におけるガラス転移温度を求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目におけるガラス転移温度を求めることができる。
【0155】
また、得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。
【0156】
本明細書では、対象試料としてトナーを用いた際の、1回目昇温時におけるガラス転移温度をTg1st、2回目昇温時におけるガラス転移温度をTg2ndとする。
また、本明細書では、前記非晶質ポリエステル樹脂A、前記非晶質ポリエステル樹脂B、及び前記結晶性ポリエステル樹脂C、更には前記離型剤等のその他構成成分のガラス転移温度、融点については、特に断りが無い場合、2回目昇温時における吸熱ピークトップ温度、Tgを各対象試料の融点、Tgとする。
【0157】
<<粒度分布の測定方法>>
前記トナーの体積平均粒径(D4)と個数平均粒径(Dn)、その比(D4/Dn)は、例えば、コールターカウンターTA-II、コールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)等を用いて測定することができる。本発明ではコールターマルチサイザーIIを使用した。以下に測定方法について述べる。
【0158】
まず、電解水溶液100mL~150mL中に分散剤として界面活性剤(好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性の界面活性剤))を0.1mL~5mL加える。ここで、電解水溶液とは1級塩化ナトリウムを用いて1質量%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON-II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2mg~20mg加える。試料を懸濁した電解水溶液は、超音波分散器で約1分間~3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(D4)、個数平均粒径(Dn)を求めることができる。
【0159】
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0160】
<<平均粒子径、平均円形度、円形度の標準偏差>>
本実施形態において、平均粒子径、平均円形度、円形度の標準偏差の計測には、例えばフロー式粒子像分析装置FPIA-3000(シスメックス株式会社製)を用いる。
【0161】
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100~150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1~0.5ml加え、更に測定試料を0.1~0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、分散液濃度を3000~1万個/μlとして前記装置により平均粒子径、平均円形度、及び円形度の標準偏差(SD)を測定する。
【0162】
ただし、粒子径は円相当径とし、平均粒子径は円相当径(個数基準)により求め、前記フロー式粒子像分析装置の解析条件は以下とする。
粒子径限定:0.5μm≦円相当径(個数基準)≦200.0μm
粒子形状限定:0.93<円形度≦1.00
【0163】
また、本実施形態において平均円形度の定義は次の通りである。
(平均円形度)=(投影面積と等しい円の周囲長)/(投影像の周囲長)
【0164】
本実施形態では、フロー式粒子像分析装置を用いて求められる円形度の標準偏差が0.020以上である。円形度の標準偏差が0.020未満であると、良好なクリーニング性が得られない。
【0165】
本実施形態では、フロー式粒子像分析装置を用いて求められる平均粒子径及び円形度において、粒子径が前記平均粒子径以下の粒子の平均円形度を平均円形度(A)とし、粒子径が前記平均粒子径よりも大きい粒子の平均円形度を平均円形度(B)とする。
【0166】
換言すると以下のようにも表現できる。
粒子径限定として0.5μm≦円相当径(個数基準)≦平均粒子径とした際における粒子の平均円形度を平均円形度(A)とする。
粒子径限定として平均粒子径<円相当径(個数基準)≦200.0μmとした際における粒子の平均円形度を平均円形度(B)とする。
【0167】
本実施形態では、A-B≦0.004であり、A-B≦0.002であることが好ましい。A-Bが0.004を超えると、トナー粒子ごとの帯電性が不均一になり、転写不良が発生して画像品位が低下する。
【0168】
円形度の標準偏差が0.020以上、かつ、A-B≦0.004であることにより、クリーニング性及び転写性がともに優れたトナーとなる。
【0169】
フロー式粒子像分析装置を用いて求められる円形度の標準偏差が0.020以上にするには、例えば、トナー組成物を含む乳化分散液にせん断力を与える装置(後述)や増粘剤量(後述)などで調整したり、トナー組成物を含む油相(後述)の粘度を異形化剤の含有量を調整したり、脱溶剤スラリー(後述)中の有機溶媒の残濃度を調整する等の方法が挙げられる。
また、A-B≦0.004にするには、例えば、トナー組成物を含む乳化分散液にせん断力を与える装置や増粘剤量などで調整する方法が挙げられる。
【0170】
<<SF2の測定>>
トナーの形状係数SF2は、走査型電子顕微鏡(SU-8230:日立ハイテクノロジーズ社製)を用い倍率500倍に拡大したトナー像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報をインターフェースを介したニコレ社製画像解析装置(LuzexIII)によって解析することによって得ることができる。
【0171】
形状係数SF2は、トナーの形状の凹凸の割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
【0172】
SF2={(PERI)/AREA}×(100π/4) ・・・式(1)
【0173】
ただし、前記式(1)中、AREAは、トナー投影面積、MXLNGは絶対最大長、PERIは周長である。
【0174】
SF2の値が100の場合、トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。SF2は110~130が好ましく、110~120がより好ましい。SF2が110以上であると、トナー表面に凹凸が生じ、転がりやすくなることを防ぐことができ、クリーニング性を向上させることができる。SF2が130以下であると、トナー表面の凹凸が多くなり過ぎることを防止し、トナー表面の帯電を均一にしやすくなり、転写不良が発生して画像品位が低下することを抑制することができる。
【0175】
SF2が110~130となるようにするには、例えば、トナー組成物を含む乳化分散液にせん断力を与える装置(後述)や増粘剤量(後述)などで調整したり、トナー組成物を含む油相(後述)の粘度を異形化剤の含有量を調整したり、脱溶剤スラリー(後述)中の有機溶媒の残濃度を調整する等の方法が挙げられる。
【0176】
<<分子量の測定>>
トナーの各構成成分の分子量は、例えば、以下の方法で測定することができる。
【0177】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定装置:GPC-8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel SuperHZM-H 15cm 3連(東ソー社製)
温度:40℃
溶媒:THF
流速:0.35mL/min
試料:0.15質量%の試料を100μL注入
試料の前処理:トナーをテトラヒドロフランTHF(安定剤含有、和光純薬製)に0.15質量%で溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。前記THF試料溶液を100μL注入して測定する。
【0178】
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、昭和電工社製ShowdexSTANDARDのStd.No S-7300、S-210、S-390、S-875、S-1980、S-10.9、S-629、S-3.0、S-0.580を用いる。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0179】
<トナーの製造方法>
前記トナーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー母体粒子と前記外添剤とを混合する混合工程を含むことが好ましい。
【0180】
前記トナー母体粒子は、前記非晶質ポリエステル樹脂A、前記非晶質ポリエステル樹脂B、及び前記結晶性ポリエステル樹脂Cを含むことが好ましく、更に必要に応じて、前記離型剤、前記着色剤などを含む油相を水系媒体中で分散させることにより造粒されることが好ましい。
【0181】
また、前記トナー母体粒子は、前記非線状の反応性前駆体、前記非晶質ポリエステル樹脂B、及び前記結晶性ポリエステル樹脂Cを含むことが好ましく、更に必要に応じて、前記硬化剤、前記離型剤、前記着色剤などを含む油相を水系媒体中で分散させることにより造粒されることが好ましい。
【0182】
このような前記トナー母体粒子の製造方法の一例としては、公知の溶解懸濁法が挙げられる。前記トナー母体粒子の製造方法の一例として、前記プレポリマーと前記硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応により非晶質ポリエステル樹脂Aを伸張しながら、トナー母体粒子を形成する方法を以下に示す。このような方法においては、水系媒体の調製、トナー材料を含有する油相の調製、トナー材料の乳化乃至分散、有機溶媒の除去を行う。その後、得られた前記トナー母体粒子と前記外添剤とを混合することで前記トナーが得られる。
【0183】
<<水系媒体(水相)の調製>>
前記水系媒体の調製は、例えば、樹脂粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。前記樹脂粒子の水系媒体中の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記水系媒体100質量部に対して、0.5質量部~10質量部が好ましい。
【0184】
前記水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0185】
前記水と混和可能な溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類などが挙げられる。
前記アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
前記低級ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0186】
<<油相の調製>>
前記トナー材料を含有する油相の調製は、例えば、前記非線状の反応性前駆体と、前記非晶質ポリエステル樹脂Bと、前記結晶性ポリエステル樹脂Cとを含み、更に必要に応じて前記硬化剤、前記離型剤、前記着色剤などを含むトナー材料を、有機溶媒中に溶解乃至分散させることにより行うことができる。また、油相は異形化剤を含んでいてもよい。
【0187】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
前記沸点が150℃未満の有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0188】
<<乳化乃至分散>>
前記トナー材料の乳化乃至分散は、前記トナー材料を含有する油相を、前記水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、前記トナー材料を乳化乃至分散させる際に、前記硬化剤と前記非線状の反応性前駆体とを伸長反応及び/又は架橋反応させることにより前記非晶質ポリエステル樹脂Aが生成する。
【0189】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aは、例えば、以下の(1)~(3)の方法により生成させることができる。
(1)前記非線状の反応性前駆体と前記硬化剤とを含む油相を、水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で前記硬化剤と前記非線状の反応性前駆体とを伸長反応及び/又は架橋反応させることにより前記非晶質ポリエステル樹脂Aを生成させる方法。
(2)前記非線状の反応性前駆体を含む油相を、予め前記硬化剤を添加した水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で前記硬化剤と前記非線状の反応性前駆体とを伸長反応及び/又は架橋反応させることにより前記非晶質ポリエステル樹脂Aを生成させる方法。
(3)前記非線状の反応性前駆体を含む油相を水系媒体中で乳化又は分散させた後で、水系媒体中に前記硬化剤を添加し、水系媒体中で粒子界面から前記硬化剤と前記非線状の反応性前駆体とを伸長反応及び/又は架橋反応させることにより前記非晶質ポリエステル樹脂Aを生成させる方法。
【0190】
なお、粒子界面から前記硬化剤と前記非線状の反応性前駆体とを伸長反応及び/又は架橋反応させる場合、生成するトナーの表面に優先的に前記非晶質ポリエステル樹脂Aが形成され、トナー中に前記非晶質ポリエステル樹脂Aの濃度勾配を設けることもできる。
【0191】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aを生成させるための反応条件(反応時間、反応温度)としては、特に制限はなく、前記硬化剤と、前記非線状の反応性前駆体との組み合わせに応じて、適宜選択することができる。
前記反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間~40時間が好ましく、2時間~24時間がより好ましい。
前記反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。
【0192】
前記水系媒体中において、前記非線状の反応性前駆体を含有する分散液を安定に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水系媒体相中に、トナー材料を溶媒に溶解乃至分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
【0193】
前記分散のための分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機などが挙げられる。
これらの中でも、分散体(油滴)の粒子径を2μm~20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。
【0194】
前記高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。
前記回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000rpm~30,000rpmが好ましく、5,000rpm~20,000rpmがより好ましい。
前記分散時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バッチ方式の場合、0.1分間~5分間が好ましい。
前記分散温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加圧下において、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。なお、一般に、前記分散温度が高温である方が分散は容易である。
【0195】
前記トナー材料を乳化乃至分散させる際の、水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。トナー材料100質量部に対して、50質量部~2,000質量部が好ましく、100質量部~1,000質量部がより好ましい。
前記水系媒体の使用量が50質量部以上であると、前記トナー材料の分散状態が悪くなることを防止し、所定の粒子径のトナー母体粒子が得られないことを抑制することができる。2,000質量部以下であると、生産コストが高くなることを抑えることができる。
【0196】
前記トナー材料を含有する油相を乳化乃至分散する際には、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にすると共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0197】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。
【0198】
前記陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが
でき、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0199】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aを生成させる際の伸長反応及び/又は架橋反応には、触媒を用いることができる。
前記触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレートなどが挙げられる。
【0200】
<<有機溶媒の除去>>
前記乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法などが挙げられる。
【0201】
特に制限されるものではないが、脱溶剤スラリー中の有機溶媒の残濃度としては、例えば5~15質量%であることが好ましく、8~12質量%であることがより好ましい。
【0202】
前記有機溶媒が除去されると、トナー母体粒子が形成される。トナー母体粒子に対しては、洗浄、乾燥等を行うことができ、さらに分級等を行うことができる。前記分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離などにより、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0203】
<<異形化工程>>
本実施形態において、異形化した粒子を得るためには、例えば以下のようにすることが挙げられる。乳化分散液に、増粘剤を加えた高粘度の水溶液を混合し、この混合溶液をホモミキサー、ヘリカルリボン型撹拌機、パドル型撹拌機などによってせん断力を与える装置に通すことによって、混合溶液中の油相と水相の粘度差を利用して乳化粒子を異形化させることができる。その後、該分散液から溶媒をバインダー樹脂のTg以下で除去する工程を設けることにより粒子を固定化させて、所望の形状トナーの作製が可能となる。
【0204】
形状を変形させる条件としては、前記せん断力を与える装置の回転数の他には有機溶媒の濃度、温度、水相内の増粘剤、活性剤、温度を調整することにより、油相・水相間の粘度差を調整する方法によって調整することができる。
【0205】
有機溶媒としては、従来公知のもの全て使用可能であるが、酢酸エチルが特に好ましい。
【0206】
前記増粘剤は特に限定は無く、例えばポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸塩(アルカリ金属塩、有機アミン塩、第四級アンモニウム塩など;重量平均分子量3000~3000000)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール(重量平均分子量2000~200000)及びグアーガムなどが挙げられる。
【0207】
有機溶媒濃度の測定は、ガスクロマトグラフィーを用いて下記条件下に測定する。
【0208】
[有機溶媒濃度の測定]
装置:島津製作所製ガスクロマトグラフ
SIMAZU GC-14A
カラム:PEG 20M 20%
Chromasorb W MESH 60~80
カラム温度:100℃
インジェクション温度:180℃
N2ガス流量:40ml/分
試料溶液:5%のジメチルホルムアミド溶液
溶媒注入量:1μl
検出器:FID
標準物質に、n-ヘキサンを用いて検量線を作成し、有機溶媒濃度を求めた。
【0209】
また、せん断力を調整する方法は、装置の処理時間や処理回数、分散液の温度、粘度、粒子中の有機溶媒の濃度等が挙げられる。また、粒子自身も、粒子表面の有機微粒子の被覆率、伸長及び/又は架橋反応度等の違いにより、せん断力による変形の度合いも異なり得られる形状に差が出る。
【0210】
本実施形態において、前記混合溶液にせん断力を与える時の前記有機溶媒の濃度は、5~15重量%であることが重要であり好ましく、10~13重量%がより好ましい。
【0211】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。
【0212】
乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0213】
本発明のトナーの形状としては、紡錘形状であることが好ましい。
トナーの形状が紡錘形状である場合、粉体流動性が適度に調節されているために、摩擦帯電が円滑に行われて地肌汚れを発生させることがなく、微小な潜像ドットに対して整然と現像され、その後、効率よく転写されてドット再現性に優れる。更に、その際の飛び散りに対しては、粉体流動性が適度にブレーキをかけて飛び散りを防いでいる。紡錘形状のトナーは球形トナーに比べて、転がる軸が限られていることから、クリーニング手段の下に潜り込むようなクリーニング不良が発生しにくい。
【0214】
トナー形状が一定しない不定形又は扁平形状の場合、粉体流動性が劣ることがあり、次のような問題が生じる場合がある。摩擦帯電が円滑に行いにくいことがあり、地肌汚れ等の問題が発生することがある。微小な潜像ドットを現像する際には、緻密で均一なトナー配置をとりにくいことから、ドット再現性に劣ることがある。静電転写方式では、電気力線の影響を受けにくく、転写効率が劣ることがある。トナーが真球に近い場合、粉体流動性が良すぎて、外力に対して過度に作用してしまうことから、現像及び転写の際に、ドットの外側にトナー粒子が飛び散りやすいといった問題が生じることがある。また、球形トナーでは、感光体上で転がりやすいために、感光体とクリーニング手段との間に潜り込みクリーニング不良となることがある。
【0215】
トナー形状について、図1A図1B、及び図1Cに基づいて説明する。図1Aは、xyz軸で表現した場合の一例であり、図1Bはxz軸、図1Cはyz軸で表現した場合の一例である。図1B図1Cにr、r、rを図示して説明している。
【0216】
本実施形態において、トナーの長軸rと短軸rとの比r/rが0.5~0.8であり、トナーの厚さrと短軸rとの比r/rが0.5~1.0であることが好ましい。この場合、より好適な紡錘形状にすることができる。
なお、r/rは0.7~1.0であることがより好ましい。
【0217】
/rが0.5以上であると、ドット再現性や転写効率を向上させることができ、高品位な画質が得られやすくなる。r/rが0.8以下であると、球形とは異なる形状にしやすくなり、低温低湿の環境下でもクリーニング不良となることを抑制することができる。
【0218】
また、r/rが0.5以上であると、扁平形状になることを防止し、転写率が低下することを抑制することができる。特に、r/rが1.0であると、長軸を回転軸とする回転体となる。そのため、これに近い紡錘形状にすることで不定形・扁平形状でもなく真球状でもない形状であって、双方の形状が有する摩擦帯電性、ドット再現性、転写効率、飛び散りの防止性、クリーニング性を向上させたトナーを得ることができる。
【0219】
ここで、前記トナーの長軸長さr、短軸長さr、及び厚さrは、例えば走査型電子顕微鏡(SU8230:日立ハイテクノロジーズ社製)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定することができる。r、r、rとしては、例えば30粒子以上の平均値を取ることが好ましい。
【0220】
/r及びr/rを上記の範囲にするには、例えば、トナー組成物を含む乳化分散液にせん断力を与える装置や増粘剤量などで調整したり、トナー組成物を含む油相の粘度を異形化剤の含有量を調整したり、脱溶剤スラリー中の有機溶媒の残濃度を調整したりする方法等が挙げられる。
【0221】
<<混合工程>>
前記得られたトナー母体粒子は、前記外添剤と混合される。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、前記トナー母体粒子の表面から前記外添剤の粒子が脱離するのを抑制することができる。
【0222】
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。
【0223】
前記方法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
【0224】
(現像剤)
本発明の現像剤は、少なくとも前記トナーを含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含む。
このため、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。なお、現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
【0225】
前記現像剤を一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0226】
前記現像剤を二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0227】
<キャリア>
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
【0228】
<<芯材>>
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料などが挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0229】
前記芯材の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm~150μmが好ましく、40μm~100μmがより好ましい。前記体積平均粒子径が10μm以上であると、キャリア中に微粉が多くなることを防ぎ、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることを抑制することができる。150μm以下であると、比表面積が低下することを防ぎ、トナーの飛散が生じることを抑制することができ、ベタ部分の多いフルカラーでは、特に、ベタ部の再現が悪くなることを抑制することができる。
【0230】
前記トナーを二成分系現像剤に用いる場合には、前記キャリアと混合して用いればよい。前記二成分現像剤中の前記キャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記二成分現像剤100質量部に対して、90質量部~98質量部が好ましく、93質量部~97質量部がより好ましい。
【0231】
本発明の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0232】
(画像形成装置、及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明に関する画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記画像形成方法は、前記画像形成装置により好適に行うことができ、前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段により好適に行うことができ、前記現像工程は、前記現像手段により好適に行うことができ、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0233】
<静電潜像担持体>
前記静電潜像担持体の材質、構造、大きさとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコンが好ましい。
【0234】
前記アモルファスシリコン感光体としては、例えば、支持体を50℃~400℃に加熱し、該支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD(化学気相成長、Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa-Siからなる光導電層を有する感光体を用いることができる。これらの中でも、プラズマCVD法、即ち、原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa-Si堆積膜を形成する方法が好適である。
【0235】
前記静電潜像担持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒状が好ましい。前記円筒状の前記静電潜像担持体の外径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mm~100mmが好ましく5mm~50mmがより好ましく、10mm~30mmが特に好ましい。
【0236】
<静電潜像形成手段及び静電潜像形成工程>
前記静電潜像形成手段としては、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材とを少なくとも有する手段などが挙げられる。
前記静電潜像形成工程としては、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段を用いて行うことができる。
【0237】
<<帯電部材及び帯電>>
前記帯電部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
前記帯電は、例えば、前記帯電部材を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
【0238】
前記帯電部材の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、前記画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
前記帯電部材としては、前記接触式の帯電部材に限定されるものではないが、帯電部材から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電部材を用いることが好ましい。
【0239】
<<露光部材及び露光>>
前記露光部材としては、前記帯電部材により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光部材などが挙げられる。
前記露光部材に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般などが挙げられる。
【0240】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
前記露光は、例えば、前記露光部材を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0241】
<現像手段及び現像工程>
前記現像手段としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記現像工程としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記現像手段により行うことができる。
【0242】
前記現像手段は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよい。また、単色用現像手段であってもよいし、多色用現像手段であってもよい。
前記現像手段としては、前記トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、内部に固定された磁界発生手段を有し、かつ表面に前記トナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
前記現像手段内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体近傍に配置されている。そのため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0243】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、例えば、転写手段、定着手段、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段などが挙げられる。
前記その他の工程としては、例えば、転写工程、定着工程、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、制御工程などが挙げられる。
【0244】
<<転写手段及び転写工程>>
前記転写手段としては、可視像を記録媒体に転写する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
前記転写工程としては、可視像を記録媒体に転写する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。
【0245】
前記転写工程は、例えば、前記可視像を、転写帯電器を用いて前記感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
ここで、前記記録媒体上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、前記転写手段により、前記中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて当該中間転写体上に画像を形成し、前記中間転写手段により、当該中間転写体上の画像を前記記録媒体上に一括で二次転写する構成とすることができる。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
【0246】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写器としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器などが挙げられる。
なお、前記記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0247】
<<定着手段及び定着工程>>
前記定着手段としては、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧部材が好ましい。前記加熱加圧部材としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せなどが挙げられる。
前記定着工程としては、前記記録媒体に転写された可視像を定着させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0248】
前記定着工程は、前記定着手段により行うことができる。
前記加熱加圧部材における加熱は、通常、80℃~200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
前記定着工程における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm~80N/cmであることが好ましい。
【0249】
<<クリーニング手段及びクリーニング工程>>
前記クリーニング手段としては、前記感光体上に残留する前記トナーを除去できる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが挙げられる。
前記クリーニング工程としては、前記感光体上に残留する前記トナーを除去できる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記クリーニング手段により行うことができる。
【0250】
<<除電手段及び除電工程>>
前記除電手段としては、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、除電ランプなどが挙げられる。
前記除電工程としては、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記除電手段により行うことができる。
【0251】
<<リサイクル手段及びリサイクル工程>>
前記リサイクル手段としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像装置にリサイクルさせる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
前記リサイクル工程としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像装置にリサイクルさせる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記リサイクル手段により行うことができる。
【0252】
<<制御手段及び制御工程>>
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御できる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器などが挙げられる。
前記制御工程としては、前記各工程の動きを制御できる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記制御手段により行うことができる。
【0253】
次に、本発明の画像形成装置により画像を形成する方法を実施する一の態様について、図2を参照しながら説明する。図2に示すカラー画像形成装置100Aは、前記静電潜像
担持体としての感光体ドラム10(以下「感光体10」と称することがある)と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像器40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0254】
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50の近傍には、クリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されている。また、中間転写体50の近傍には、記録媒体としての転写紙95に現像像(トナー画像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が、中間転写体50に対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー画像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、該中間転写体50の回転方向において、感光体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙95との接触部との間に配置されている。
【0255】
現像器40は、前記現像剤担持体としての現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラに回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
【0256】
図2に示すカラー画像形成装置100において、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光体ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光体ドラム10上に形成された静電潜像を、現像器40からトナーを供給して現像してトナー画像を形成する。該トナー画像が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0257】
図3に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。画像形成装置100Bは、現像ベルト41を設けずに、感光体ドラム10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されている以外は、図2に示す画像形成装置100Aと同様の構成を有する。
【0258】
図4に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。図4に示す画像形成装置は、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。
そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図4中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、前記露光部材である露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には前記定着手段である定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0259】
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0260】
スタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動する。そして、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0261】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達される。そして、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。
【0262】
即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図5に示すように、それぞれ、静電潜像担持体10(ブラック用静電潜像担持体10K、イエロー用静電潜像担持体10Y、マゼンタ用静電潜像担持体10M、及びシアン用静電潜像担持体10C)と、該静電潜像担持体10を一様に帯電させる前記帯電手段である帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光(図5中、L)し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する前記現像手段である現像装置61と、該トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えている。
【0263】
そして、各画像形成手段18は、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用静電潜像担持体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用静電潜像担持体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用静電潜像担持体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用静電潜像担持体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0264】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出す。シートは、分離ローラ145で1枚ずつ分離されて給紙路146に送り出され、搬送ローラ147で搬送されて複写機本体150内の給紙路148に導かれ、レジストローラ49に突き当てて止められる。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
【0265】
そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)する。そうすることにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0266】
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。あるいは、シートは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導かれ、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0267】
(トナー収容ユニット)
本発明におけるトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えばトナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジ等があげられる。
トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
プロセスカートリッジとは、少なくとも像担持体と現像手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段のから選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
【0268】
本発明のトナー収容ユニットを、画像形成装置に装着して画像形成することで、本発明の前記トナーを用いて画像形成が行われるため、クリーニング性及び転写性を両立できる。
【0269】
トナー収容容器としては、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば容器本体とキャップを有するもの等が挙げられる。
【0270】
また、容器本体の大きさ、形状、構造、材質等は、特に限定されず、適宜変更することができる。
形状は、円筒状等であることが好ましく、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより、内容物である現像剤が排出口側に移行することが可能である。スパイラル状の凹凸の一部又は全てが蛇腹機能を有することが特に好ましい。
【0271】
さらに、材質は、特に限定されないが、寸法精度がよいものであることが好ましい。例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0272】
トナー収容容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れるため、プロセスカートリッジ、画像形成装置等に着脱可能に取り付け、トナーの補給に使用することができる。
【0273】
本発明に関するプロセスカートリッジの一例としては、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に担持された静電潜像を本発明の現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有する。なお、本発明のプロセスカートリッジは、必要に応じて、他の手段をさらに有していてもよい。
【0274】
前記現像手段としては、本発明の現像剤を収容する現像剤収容容器と、現像剤収容容器内に収容された現像剤を担持すると共に搬送する現像剤担持体を少なくとも有する。なお、現像手段は、担持する現像剤の厚さを規制するため規制部材等をさらに有してもよい。
【0275】
図6に、本発明に関するプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ110は、感光体ドラム10、コロナ帯電器52、現像器40、転写ローラ80及びクリーニング装置90を有する。
【実施例
【0276】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。「部」は、特に明示しない限り「質量部」を表す。「%」は、特に明示しない限り「質量%」を表す。また、実施例15とあるのは、本発明に含まれない参考例15とする。
【0277】
下記実施例における各測定値は、本明細書中に記載の方法により測定した。なお、非晶質ポリエステル樹脂A、非晶質ポリエステル樹脂B、結晶性ポリエステル樹脂CなどのTg、分子量は、製造例で得られた各樹脂から測定した。
【0278】
(製造例1)
<ケチミンの合成>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部、及びメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418であった。
【0279】
(製造例A-1)
<非晶質ポリエステル樹脂A-1の合成>
-プレポリマーA-1の合成-
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソフタル酸、及びアジピン酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.1であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール100mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸45mol%及びアジピン酸55mol%であり、全モノマー中におけるトリメチロールプロパンの量が1.5mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルA-1]を得た。
【0280】
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、得られた[中間体ポリエステルA-1]とイソホロンジイソシアネート(IPDI)とをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)2.0で投入し、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、100℃で5時間反応させ、[プレポリマーA-1]を得た。
【0281】
-非晶質ポリエステル樹脂A-1の合成-
得られた[プレポリマーA-1]を加熱装置、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中で撹拌し、更に[プレポリマーA-1]中のイソシアネート量に対して[ケチミン化合物1]のアミン量が等モルになる量の[ケチミン化合物1]を反応容器に滴下していき、45℃で10時間撹拌後にプレポリマー伸長物を取り出した。得られたプレポリマー伸長物を残酢酸エチル量が100ppm以下になるまで50℃で減圧乾燥させ、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]を得た。この樹脂の物性値を表1に記載した。
【0282】
(製造例A-2)
<非晶質ポリエステル樹脂A-2の合成>
-プレポリマーA-2の合成-
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、及びアジピン酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.1であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール100mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がアジピン酸100mol%であり、全モノマー中におけるトリメチロールプロパンの量が1.5mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルA-2]を得た。
【0283】
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、得られた[中間体ポリエステルA-2]とイソホロンジイソシアネート(IPDI)とをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)2.0で投入し、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、100℃で5時間反応させ、[プレポリマーA-2]を得た。
【0284】
-非晶質ポリエステル樹脂A-2の合成-
得られた[プレポリマーA-2]を加熱装置、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中で撹拌し、更に[プレポリマーA-2]中のイソシアネート量に対して[ケチミン化合物1]のアミン量が等モルになる量の[ケチミン化合物1]を反応容器に滴下していき、45℃で10時間撹拌後にプレポリマー伸長物を取り出した。得られたプレポリマー伸長物を残酢酸エチル量が100ppm以下になるまで50℃で減圧乾燥させ、[非晶質ポリエステル樹脂A-2]を得た。この樹脂の物性値を表1に記載した。
【0285】
(製造例A-3)
<非晶質ポリエステル樹脂A-3の合成>
-プレポリマーA-3の合成-
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及び無水トリメリット酸を水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.3であり、ジオール成分の構成がビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物質90mol%及びビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物10mol%であり、カルボン酸成分の構成がテレフタル酸90mol%及び無水トリメリット酸10mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルA-3]を得た。
【0286】
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、得られた[中間体ポリエステルA-3]とイソホロンジイソシアネート(IPDI)とをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)2.0で投入し、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、100℃で5時間反応させ、[プレポリマーA-3]を得た。
【0287】
-非晶質ポリエステル樹脂A-3の合成-
得られた[プレポリマーA-3]を加熱装置、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中で撹拌し、更に[プレポリマーA-3]中のイソシアネート量に対して[ケチミン化合物1]のアミン量が等モルになる量の[ケチミン化合物1]を反応容器に滴下していき、45℃で10時間撹拌後にプレポリマー伸長物を取り出した。得られたプレポリマー伸長物を残酢酸エチル量が100ppm以下になるまで50℃で減圧乾燥させ、[非晶質ポリエステル樹脂A-3]を得た。この樹脂の物性値を表1に記載した。
【0288】
(製造例A-4)
<非晶質ポリエステル樹脂A-4の合成>
-プレポリマーA-4の合成-
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、1,2-プロピレングリコール、テレフタル酸、アジピン酸、及び無水トリメリット酸を、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.3であり、ジオール成分の構成が1,2-プロピレングリコール100mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がテレフタル酸80mol%及びアジピン酸20mol%であり、全モノマー中における無水トリメリット酸の量が2.5mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルA-4]を得た。
【0289】
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、得られた[中間体ポリエステルA-4]とイソホロンジイソシアネートとをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)2.0で投入し、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、100℃で5時間反応させ、[プレポリマーA-4]を得た。
【0290】
-非晶質ポリエステル樹脂A-4の合成-
得られた[プレポリマーA-4]を加熱装置、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中で撹拌し、更に[プレポリマーA-4]中のイソシアネート量に対して[ケチミン化合物1]のアミン量が等モルになる量の[ケチミン化合物1]を反応容器に滴下していき、45℃で10時間撹拌後にプレポリマー伸長物を取り出した。得られたプレポリマー伸長物を残酢酸エチル量が100ppm以下になるまで50℃で減圧乾燥させ、[非晶質ポリエステル樹脂A-4]を得た。この樹脂の物性値を表1に記載した。
【0291】
【表1】
【0292】
(製造例B-1)
<非晶質ポリエステル樹脂B-1の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及びアジピン酸を、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物とビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とがモル比(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で60/40であり、テレフタル酸とアジピン酸とがモル比(テレフタル酸/アジピン酸)で97/3であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.3となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を得た。この樹脂の物性値を表2に記載した。
【0293】
(製造例B-2)
<非晶質ポリエステル樹脂B-2の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、1,3-プロピレングリコール、テレフタル酸、及びアジピン酸を、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物と1,3-プロピレングリコールとがモル比(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物/1,3-プロピレングリコール)で90/10であり、テレフタル酸とアジピン酸とがモル比(テレフタル酸/アジピン酸)で80/20であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.4となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-2]を得た。この樹脂の物性値を表2に記載した。
【0294】
(製造例B-3)
<非晶質ポリエステル樹脂B-3の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物、イソフタル酸、及びアジピン酸を、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物とビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とがモル比(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で30/70であり、イソフタル酸とアジピン酸とがモル比(イソフタル酸/アジピン酸)で80/20であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.2となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-3]を得た。この樹脂の物性値を表2に記載した。
【0295】
【表2】
【0296】
(製造例C-1)
<結晶性ポリエステル樹脂C-1の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、セバシン酸、及び1,6-ヘキサンジオールを、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが0.9となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、更に8.3kPaの圧力にて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を得た。この樹脂の物性値を表3に記載した。
【0297】
(製造例C-2)
<結晶性ポリエステル樹脂C-2の合成>
ジカルボン酸をドデカン二酸に変えた以外は、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の合成と同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂C-2]を得た。物性値を表3に記載した。
【0298】
【表3】
【0299】
(実施例1)
<マスターバッチ(MB)の調製>
水1,200部、カーボンブラック(Printex35、デクサ社製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕500部、及び[非晶質ポリエステル樹脂B-1]500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0300】
<WAX分散液の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に[離型剤1]としてパラフィンワックス50部(日本精鑞株式会社製、HNP-9、炭化水素系ワックス、融点75℃、SP値8.8)、及び酢酸エチル450部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い[WAX分散液1]を得た。
【0301】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に[結晶性ポリエステル樹脂C-1]50部、及び酢酸エチル450部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い、[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]を得た。
【0302】
<油相の調製>
[WAX分散液1]50部、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]150部、[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]50部、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]750部、[マスターバッチ1]50部(顔料)及び[ケチミン化合物1]2部を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で5,000rpmで60分間混合し、[油相1]を得た。
なお、上記配合量は、各原材料における固形分の配合量を示す。
【0303】
<有機微粒子エマルション(微粒子分散液)の合成>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS-30:三洋化成工業株式会社製)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部、及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分間で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。
[微粒子分散液1]をLA-920(HORIBA社製)で測定した体積平均粒径は、0.14μmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。
【0304】
<水相の調製>
水990部、[微粒子分散液1]83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON-7:三洋化成工業株式会社製)37部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とした。
【0305】
<乳化・脱溶剤1>
[油相1]が入った容器に、[水相1]1,200部を加え、TKホモミキサーで、回転数8,000rpmで20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃30分脱溶剤した後、[脱溶剤スラリー1]を得た。[脱溶剤スラリー1]の残酢酸エチル濃度を表4に記載した。
【0306】
<異形化>
[脱溶剤スラリー1]に増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(セロゲンHH、第一工業製薬社製)を30部添加した後、ヘリカルリボン型の撹拌機を用い、150rpmで1時間撹拌し、[異形化スラリー1]を得た。
【0307】
<脱溶剤2、熟成>
[異形化スラリー1]を30℃で8時間、脱溶剤した後、45℃で4時間、熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0308】
<洗浄・乾燥>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する、
という前記(1)~(4)の操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い[トナー母体粒子1]を得た。
【0309】
<外添剤処理工程>
[トナー母体粒子1]100部に対して、外添剤として疎水性シリカ(HDK-2000、クラリアント株式会社製)2.0部をヘンシェルミキサーにて混合し、目開き500メッシュの篩を通過させ、[トナー1]を得た。
【0310】
(実施例2)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]の配合量を120部に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の配合量を780部に変え、<異形化>において、せん断力を与える装置の回転数を300rpmに変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー2]を得た。
【0311】
(実施例3)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]の配合量を180部に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の配合量を720部に変え、<異形化>において、増粘剤の配合量を5部に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー3]を得た。
【0312】
(実施例4)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]を[非晶質ポリエステル樹脂A-2]に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を[非晶質ポリエステル樹脂B-3]に変え、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の配合量を150部に変え、<乳化・脱溶剤1>において、残酢酸エチル濃度を8wt%に変え、<異形化>において、増粘剤の配合量を50部に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー4]を得た。
【0313】
(実施例5)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]の配合量を120部に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の配合量を820部に変え、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の配合量を200部に変え、<異形化>において、増粘剤の配合量を5部に変え、せん断力を与える装置をホモミキサーに変え、回転数を8000rpmに変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー5]を得た。
【0314】
(実施例6)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]の配合量を180部に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を[非晶質ポリエステル樹脂B-3]に変え、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の配合量を0部に変え、<異形化>において、せん断力を与える装置をホモミキサーに変え、回転数を8000rpmに変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー6]を得た。
【0315】
(実施例7)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]を[非晶質ポリエステル樹脂A-2]に変え、配合量を180部に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を[非晶質ポリエステル樹脂B-3]に変え、配合量を720部に変え、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-2]に変え、<異形化>において、せん断力を与える装置をホモミキサーに変え、回転数を4000rpmに変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー7]を得た。
【0316】
(実施例8)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]の配合量を120部に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を[非晶質ポリエステル樹脂B-2]に変え、配合量を780部に変え、異形化剤としてクレイトンAPA(ビックケミー・ジャパン社製)を2部加えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー8]を得た。
【0317】
(実施例9)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]を[非晶質ポリエステル樹脂A-2]に変え、異形化剤としてクレイトンAPA(ビックケミー・ジャパン社製)を2部加え、<異形化>において、せん断力を与える装置をパドル型に変え、回転数を400rpmに変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー9]を得た。
【0318】
(実施例10)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を[非晶質ポリエステル樹脂B-2]に変え、異形化剤としてMEK-ST-UP(日産化学工業社製)を5部加え、<乳化・脱溶剤1>において、残酢酸エチル濃度を15wt%に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー10]を得た。
【0319】
(実施例11)
実施例7の[結晶性ポリエステル樹脂C-2]の配合量を0部に変えた以外は、実施例7と同様にして、[トナー11]を得た。
【0320】
(実施例12)
実施例11のせん断力を与える装置の回転数を2000rpmに変えた以外は、実施例11と同様にして、[トナー12]を得た。
【0321】
(実施例13)
実施例2のせん断力を与える装置の回転数を400rpmに変えた以外は、実施例2と同様にして、[トナー13]を得た。
【0322】
(実施例14)
実施例5の異形化剤としてクレイトンAPA(ビックケミー・ジャパン社製)を2部加えた以外は、実施例5と同様にして、[トナー14]を得た。
【0323】
(実施例15)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]を[非晶質ポリエステル樹脂A-3]に変え、配合量を50部に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を[非晶質ポリエステル樹脂B-2]に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー15]を得た。
【0324】
(比較例1)
実施例1の<異形化>において、増粘剤の配合量を0部に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー16]を得た。
【0325】
(比較例2)
実施例1の<異形化>において、せん断力を与える装置の回転数を600rpmに変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー17]を得た。
【0326】
(比較例3)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]を[非晶質ポリエステル樹脂A-3]に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を[非晶質ポリエステル樹脂B-2]に変え、<乳化・脱溶剤1>において、残酢酸エチル濃度を0wt%に変え、<異形化>において、せん断力を与える装置をホモミキサーに変え、回転数を12000rpmに変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー18]を得た。
【0327】
(比較例4)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]を[非晶質ポリエステル樹脂A-4]に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を[非晶質ポリエステル樹脂B-3]に変え、異形化剤としてクレイトンAPA(ビックケミー・ジャパン社製)を5部加え、<乳化・脱溶剤1>において、残酢酸エチル濃度を0wt%に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー19]を得た。
【0328】
(比較例5)
実施例1の<油相の調製>において、異形化剤としてクレイトンAPA(ビックケミー・ジャパン社製)を10部加え、<乳化・脱溶剤1>において、残酢酸エチル濃度を0wt%に変え、<異形化工程>を無しにした以外は、実施例1と同様にして、[トナー20]を得た。
【0329】
(比較例6)
実施例1の<油相の調製>において、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]の配合量を750部に変え、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の配合量を150部に変え、異形化剤としてクレイトンAPA(ビックケミー・ジャパン社製)を5部加え、<乳化・脱溶剤1>において、残酢酸エチル濃度を20wt%に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー21]を得た。
【0330】
(比較例7)
実施例3の残酢酸エチル濃度を4wt%に変えた以外は、実施例3と同様にして、[トナー22]を得た。
【0331】
(比較例8)
実施例1の異形化剤としてクレイトンAPA(ビックケミー・ジャパン社製)を11部加えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー23]を得た。
【0332】
各トナーにおけるポリエステル樹脂、異形化剤、脱溶剤スラリーの残酢酸エチル濃度、増粘剤量、せん断を与える装置、回転数の組み合わせを表4に示す。
【0333】
【表4】
【0334】
得られたトナーの〔平均円形度〕、〔円形度の標準偏差〕、〔平均円形度(A)〕、〔平均円形度(B)〕、〔A-B〕、〔長軸r〕、〔短軸r〕、〔厚さr〕、〔r/r〕、〔r/r〕、〔SF2〕を表5に示した。
【0335】
<平均粒子径、平均円形度、円形度の標準偏差の測定方法>
平均粒子径、平均円形度、円形度の標準偏差の計測は、フロー式粒子像分析装置FPIA-3000(シスメックス株式会社製)を用いた。
容器中の予め不純固形物を除去した水100~150ml中に分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.5ml加え、更に測定試料を0.1g加えた。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、分散液濃度を3000~1万個/μlとして前記装置により平均粒子径、平均円形度、及び円形度の標準偏差(SD)を測定した。
粒子径は円相当径とし、平均粒子径は円相当径(個数基準)により求め、フロー式粒子像分析装置の解析条件は以下とした。
粒子径限定:0.5μm≦円相当径(個数基準)≦200.0μm
粒子形状限定:0.93<円形度≦1.00
【0336】
平均円形度の定義は以下とした。
(平均円形度)=(投影面積と等しい円の周囲長)/(投影像の周囲長)
【0337】
<平均円形度(A)、平均円形度(B)の測定方法>
粒子径限定として0.5μm≦円相当径(個数基準)≦平均粒子径とした際における粒子の平均円形度を平均円形度(A)とした。
粒子径限定として平均粒子径<円相当径(個数基準)≦200.0μmとした際における粒子の平均円形度を平均円形度(B)とした。
【0338】
<長軸r、短軸r、厚さr、r/r、r/rの測定方法>
トナーの長軸r、短軸r、及び厚さrは、走査型電子顕微鏡SU8230(日立ハイテクノロジーズ社製)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定した。r、r、rは30粒子以上の平均値とした。
【0339】
<SF2の測定方法>
トナーの形状係数SF2は、走査型電子顕微鏡(SU-8230:日立ハイテクノロジーズ社製)を用い倍率500倍に拡大したトナー像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報をインターフェースを介した画像解析装置(LuzexIII:ニコレ社製)によって解析することによって得た。
形状係数SF2は、トナーの形状の凹凸の割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
【0340】
SF2={(PERI)/AREA}×(100π/4) ・・・式(1)
【0341】
ただし、前記式(1)中、AREAは、トナー投影面積、MXLNGは絶対最大長、PERIは周長である。
【0342】
【表5】
【0343】
<ソックスレー抽出>
テトラヒドロフラン(THF)100部に対してトナー1部を添加し、6時間還流した後に、遠心分離機により不溶成分を沈降させて、不溶成分と上澄み液とを分離した。
前記不溶成分を40℃、20時間乾燥させて、THF不溶分を得た。
【0344】
得られたトナーの〔Tg1st(トナー)〕、〔Tg2nd(THF不溶分)〕、〔G’(100)(THF不溶分)〕、[〔G’(40)(THF不溶分)〕/〔G’(100)(THF不溶分)〕]を表6に示した。
【0345】
【表6】
【0346】
<評価>
得られたトナーについて、以下の評価を行った。結果を表7に示した。
【0347】
<<耐オフセット性>>
imageo MP C5503(株式会社リコー製)に使用されているキャリアと上記で得られたトナーとを、トナーの濃度が5質量%となるように混合し、[現像剤1]を得た。
imageo MP C5503(株式会社リコー製)のユニットに[現像剤1]を投入した後、PPC用紙タイプ6000<70W>A4 T目(株式会社リコー製)に2cm×15cmの長方形のベタ画像をトナーの付着量が0.40mg/cmとなるように形成した。このとき、定着ローラの表面温度を変化させ、ベタ画像の現像残画像が所望の場所以外の場所に定着されるコールドオフセットが発生するかどうかを観察し、耐オフセット性を評価した。
【0348】
〔評価基準〕
◎:110℃未満
○:110℃以上120℃未満
△:120℃以上130℃未満
×:130℃以上
【0349】
<<耐熱保存性>>
50mLのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃まで冷却した。次に、針入度試験(JISK2235-1991)により針入度[mm]を測定し、耐熱保存性を評価した。
【0350】
〔評価基準〕
◎:針入度20mm以上
○:針入度15mm以上20mm未満
△:針入度10mm以上15mm未満
×:針入度10mm未満
【0351】
<<高温高湿保存性>>
トナー5gを40℃、相対湿度70%の環境下に2週間保管した後、目開き106μmのメッシュの篩で5分間篩い、金網上のトナー量を計量し、下記評価基準により評価した。
【0352】
〔評価基準〕
◎:金網上のトナー量0mg
○:金網上のトナー量0mg超2mg未満
△:金網上のトナー量2mg以上50mg未満
×:金網上のトナー量50mg以上
【0353】
<クリーニング性評価>
imageo MP C5503(リコー社製)に使用されているキャリアと上記で得られたトナーとを、トナーの濃度が5質量%となるように混合し、現像剤を得た。imageo MP C5503(リコー社製)のユニットに現像剤を投入した後、画像面積率30%の画像を現像し、転写紙に転写後、感光体に残存する転写残のトナーをクリーニングブレードでクリーニングしている最中に複写機を停止させ、クリーニング工程を通過した感光体上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム株式会社製)で白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で10箇所測定し、その平均値と単にテープを白紙に貼った時の測定結果との差を求め、下記基準により評価した。
なお、クリーニングブレードは2万枚クリーニング後のものを用いた。
【0354】
〔評価基準〕
◎:差が0.010以下
○:差が0.010を超え、0.012以下
△:差が0.012を超え、0.015以下
×:差が0.015を超える
【0355】
<転写性評価>
線速162mm/sec及び転写時間を40msecにチューニングしたimageo MP C5503(リコー社製)を用い、前記[現像剤1]について、A4サイズ、トナー付着量0.6mg/cmのベタパターンをテスト画像として出力するランニング試験を行った。テスト画像の初期、及び10万枚出力後、一次転写における転写効率を下記(式2)により、二次転写における転写効率を下記(式3)により、それぞれ求めた。評価基準は下記の通りである。
【0356】
一次転写効率(%)=(中間転写体上に転写されたトナー量/電子写真感光体上に現像されたトナー量)×100 ・・・(式2)
二次転写効率(%)=(中間転写体上に転写されたトナー量-中間転写体上の転写残トナー量/中間転写体上に転写されたトナー量)×100 ・・・(式3)
【0357】
〔評価基準〕
評価基準は、一次転写率と二次転写率の平均値を算出し、以下の基準で評価した。
◎:90%以上
○:85%以上90%未満
△:80%以上85%未満
×:80%未満
【0358】
結果を表7に示す。
【0359】
【表7】
【符号の説明】
【0360】
10 感光体ドラム
20 帯電ローラ
30 露光装置
40 現像器
50 中間転写体
60 クリーニング装置
70 除電ランプ
150 複写装置本体
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0361】
【文献】特開2005-049858号公報
【文献】特開2008-233406号公報
【文献】特開2015-179252号公報
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6