(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】導電性ペースト、電子部品、及び、積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20240528BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
(21)【出願番号】P 2020083229
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(74)【代理人】
【識別番号】100134441
【氏名又は名称】廣田 由利
(72)【発明者】
【氏名】服部 孝博
(72)【発明者】
【氏名】中家 香織
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-053348(JP,A)
【文献】特開2009-182128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含み、
前記分散剤が、2級アミンまたは3級アミンであるアミン系分散剤を含み、
前記バインダー樹脂が、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂を含
み、
前記有機溶剤が、テルペン系溶剤を含む、
前記アクリル系樹脂とセルロース系樹脂の質量比が、アクリル系樹脂1に対し、セルロース系樹脂が2以上20以下である、
導電性ペースト。
【請求項2】
前記バインダー樹脂が、前記導電性粉末100質部に対して、1質量部以上10質量部以下含まれる、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記アクリル系樹脂が、前記導電性粉末100質部に対して、0.1質量部以上10質量部以下含まれる、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記アミン系分散剤の誘電率が10以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が-100℃以上100℃以下である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の導電性ペーストを用いて形成された、電子部品。
【請求項7】
誘電体層と内部電極層とを積層した積層体を少なくとも有し、
前記内部電極層は、請求項1~
5のいずれか一項に記載の導電性ペーストを用いて形成された、積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト、電子部品、及び、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタル機器などの電子機器の小型化および高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサなどを含む電子部品についても小型化および高容量化が望まれている。積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層した構造を有し、これらの誘電体層及び内部電極層を薄膜化することにより、小型化及び高容量化を図ることができる。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、例えば、次のように製造される。まず、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの誘電体粉末及びバインダー樹脂を含有する誘電体グリーンシート表面上に、内部電極用の導電性ペーストを所定の電極パターンで印刷し、乾燥して、乾燥膜を形成する。次に、乾燥膜とグリーンシートとが交互に重なるように積層して積層体を得る。次に、この積層体を加熱圧着して一体化し、圧着体を形成する。この圧着体を切断し、酸化性雰囲気または不活性雰囲気中にて脱バインダー処理を行った後、焼成を行い、焼成チップを得る。次いで、焼成チップの両端部に外部電極用ペーストを塗布し、焼成後、外部電極の表面にニッケルメッキなどを施して、積層セラミックコンデンサが得られる。
【0004】
一般的に、内部電極層の形成に用いられる導電性ペーストは、導電性粉末、セラミック粉末、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む。また、導電性ペーストは、導電性粉末などの分散性を構造させるために分散剤を含むことがある。近年の内部電極層の薄層化に伴い、導電性粉末も小粒径化する傾向がある。導電性粉末の粒径が小さい場合、その粒子表面の比表面積が大きくなるため、導電性粉末(金属粉末)の表面活性が高くなり、分散性の低下や、粘度特性の低下が生じる場合がある。
【0005】
そこで、導電性ペーストの経時的な粘度特性の改善の試みがなされている。例えば、特許文献1には、少なくとも金属成分と、酸化物と、分散剤と、バインダー樹脂とを含有する導電性ペーストであって、金属成分は、その表面組成が、特定の組成比を有するNi粉末であり、分散剤の酸点量は、500~2000μmol/gであり、バインダー樹脂の酸点量は、15~100μmol/gである導電性ペーストが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、導電性粉末、樹脂、有機溶剤、BaTiO3を主とするセラミック粉末の共材、および凝集抑制剤からなる内部電極用導電性ペーストであって、前記凝集抑制剤の含有量が0.1重量%以上5重量%以下であり、前記凝集抑制剤が、特定の構造式で示されている3級アミンまたは2級アミンである内部電極用導電ペーストが記載されている。特許文献2によれば、この内部電極用導電性ペーストは、共材成分の凝集を抑制し、長期間保管性に優れ、積層セラミックコンデンサの薄膜化を可能とできるとされている。
【0007】
一方、内部電極層を薄層化する際、誘電体グリーンシート表面上に内部電極用の導電性ペーストを印刷して、乾燥させて得られる乾燥膜の密度が高いことが要求される。例えば、特許文献3には、有機溶媒と、界面活性剤と、金属超微粒子とを含有する金属超微粉スラリーであって、前記界面活性剤がオレオイルサルコシンであり、前記金属超微粉スラリー中に前記金属超微粉を70質量%以上95質量%以下含有し、前記界面活性剤を前記金属超微粉100質量部に対して0.05質量部超2.0質量部未満含有する金属超微粉スラリーが提案されている。特許文献3によれば、超微粒子の凝集を防止することで凝集粒子が存在しない、分散性及び乾燥膜密度に優れる金属超微粉スラリーが得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-216244号公報
【文献】特開2013-149457号公報
【文献】特開2006-063441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年の電極パターンの薄膜化に伴い、導電性ペーストの経時的な粘度特性のさらなる向上、及び、塗布後の乾燥膜密度の向上が要求される。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑み、経時的な粘度変化が少なく、かつ、乾燥膜密度が向上した導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様では、導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含み、分散剤が、2級アミンまたは3級アミンであるアミン系分散剤を含み、バインダー樹脂が、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂を含む、導電性ペーストが提供される。
【0012】
本発明の第2の態様では、上記導電性ペーストを用いて形成された、電子部品が提供される。
【0013】
本発明の第3の態様では、誘電体層と内部電極層とを積層した積層体を少なくとも有し、内部電極層は、上記導電性ペーストを用いて形成された、積層セラミックコンデンサが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、経時的な粘度変化が少なく、かつ、塗布後の乾燥膜密度が向上した導電性ペーストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例1~3、比較例1の乾燥膜密度(DFD)の評価結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、実施例4~6、比較例2の乾燥膜密度(DFD)の評価結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、実施例1~3、比較例1の導電性ペーストの経時的な粘度変化を示したグラフである
【
図4】
図4は、実施例4~6、比較例2の導電性ペーストの経時的な粘度変化を示したグラフである。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[導電性ペースト]
本実施形態の導電性ペーストは、電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含み、分散剤が、2級アミンまたは3級アミンであるアミン系分散剤を含み、バインダー樹脂が、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂を含む。以下、各成分について詳細に説明する。
【0017】
(導電性粉末)
導電性粉末は、特に限定されず、金属粉末を用いることができ、例えば、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる1種類以上の金属粉末を用いることができる。これらの中でも、導電性、耐食性及びコストの観点から、Niまたはその合金の粉末が好ましい。Ni合金としては、例えば、Mn、Cr、Co、Al、Fe、Cu、Zn、Ag、Au、PtおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素とNiとの合金(Ni合金)を用いることができる。Ni合金におけるNiの含有量は、例えば、50質量%以上、好ましくは80質量%以上である。また、Ni粉末は、脱バインダー処理の際、バインダー樹脂の部分的な熱分解による急激なガス発生を抑制するために、数百ppm程度のSを含んでも良い。
【0018】
導電性粉末の平均粒径は、好ましくは0.05μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。導電性粉末の平均粒径が上記範囲である場合、薄膜化した積層セラミックコンデンサの内部電極用の導電性ペーストとして好適に用いることができ、例えば、乾燥膜の平滑性および乾燥膜密度が向上する。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から求められる値であり、SEMで倍率10,000倍にて観察した画像から、複数の粒子一つ一つの粒径を測定して、得られる平均値である。
【0019】
導電性粉末の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは30質量%以上70質量%未満であり、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。導電性粉末の含有量が上記範囲である場合、導電性および分散性に優れる。
【0020】
(セラミック粉末)
セラミック粉末としては、特に限定されず、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極用の導電性ペーストである場合、適用する積層セラミックコンデンサの種類により適宜、公知のセラミック粉末が選択される。セラミック粉末としては、例えば、BaおよびTiを含むペロブスカイト型酸化物が挙げられ、好ましくはチタン酸バリウム(BaTiO3)である。
【0021】
セラミック粉末としては、チタン酸バリウムを主成分とし、酸化物を副成分として含むセラミック粉末を用いても良い。酸化物としては、Mn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nbおよび1種類以上の希土類元素の酸化物が挙げられる。このようなセラミック粉末としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)のBa原子やTi原子を他の原子、例えば、Sn、Pb、Zrなどで置換したペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末が挙げられる。
【0022】
内部電極用の導電性ペーストにおいては、積層セラミックコンデンサのグリーンシートを構成する誘電体セラミック粉末と同一組成の粉末を用いても良い。これにより、焼結工程における誘電体層と内部電極層との界面での収縮のミスマッチによるクラック発生が抑制される。このようなセラミック粉末としては、上記以外に、例えば、ZnO、フェライト、PZT、BaO、Al2O3、Bi2O3、R(希土類元素)2O3、TiO2などの酸化物が挙げられる。なお、セラミック粉末は、1種類を用いても良く、2種類以上を用いてもよい。
【0023】
セラミック粉末の平均粒径は、例えば、0.01μm以上0.5μm以下であり、好ましくは、0.01μm以上0.3μm以下の範囲である。セラミック粉末の平均粒径が上記範囲であることにより、内部電極用の導電性ペーストとして用いた場合、十分に細かく薄い均一な内部婉曲を形成することができる。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から求められる値であり、SEMで倍率50,000倍にて観察した映像から、複数の粒子一つ一つの粒径を測定して、得られる平均値である。
【0024】
セラミック粉末の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上30質量部以下である。
【0025】
セラミック粉末の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。導電性粉末の含有量が上記範囲である場合、導電性および分散性に優れる。
【0026】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、アクリル系樹脂とセルロース系樹脂が選択される。バインダー樹脂は、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂を含み、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂からなってもよい。この2種類を用いることにより、粘度特性の安定性と乾燥膜密度が向上する。
【0027】
また、バインダー樹脂は、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂を主成分として含むことが好ましい。ここで、主成分として含むとは、バインダー樹脂100質量部中、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂が合計で70質量部以上、好ましくは90質量部以上、より好ましくは95質量部以上含まれることをいう。
【0028】
アクリル系樹脂は、導電性粉末100質部に対して、0.1質量部以上10質量部以下含まれることが好ましく、0.1質量部以上8質量部以下含まれることがより好ましい。また、アクリル系樹脂とセルロース系樹脂の配合比(質量比)は、アクリル系樹脂が1に対して、セルロース系樹脂が、0.5以上20以下であることが好ましく、1以上15以下であることがより好ましい。
【0029】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル樹脂をいう。(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とした重合体であって、(メタ)アクリル酸エステルのビニル基に由来する化学構造(-CH2-CH2-)を主鎖に有しており、解重合性を有している。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、ブチルアクリレート(BA)、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ベンジルメタクリレート(BzMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、メタクリル酸(MAA)、2-エチルヘキシルアクリレート(HA)、シクロヘキシルアクリレートCHA)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルアクリレート(M120)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート(M101A)、ラウリルアクリレート(LA)、ラウリルメタクリレート(LMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、2-フェノキシエチルアクリレート(POA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、およびベンジルアクリレート(BzA)などを挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-100℃以上100℃以下であることが好ましく、-50℃以上50℃以下であることがより好ましい。
【0032】
セルロース系樹脂としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロースなどが挙げられる。なかでも溶剤への溶解性、燃焼分解性の観点などから、セルロース系樹脂はエチルセルロースを含むことが好ましく、エチルセルロースであってもよい。また、セルロース系樹脂の分子量は、例えば、20000~200000程度である。
【0033】
バインダー樹脂の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上8質量部以下である。
【0034】
バインダー樹脂の含有量は、導電性ペースト全量に対して、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上6質量%以下である。
【0035】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、特に限定されず、上記バインダー樹脂を溶解することができる公知の有機溶剤を用いることができる。
【0036】
有機溶剤としては、例えば、ジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレートおよびイソボニルイソブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのアセテート系溶剤、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどのテルペン系溶剤、トリデカン、ノナン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤などが挙げられる。なお、有機溶剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。また、有機溶剤としてテルペン系溶剤を用いる場合、乾燥膜密度をより向上させるという観点から、ジヒドロターピネオールを用いることが好ましい。
【0037】
有機溶剤の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは40質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは65質量部以上95質量部以下である。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、導電性および分散性に優れる。
【0038】
有機溶剤の含有量は、導電性ペースト全体に対して、20質量%以上60質量%以下が好ましく、35質量%以上55質量%以下がより好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、導電性および分散性に優れる。
【0039】
(分散剤)
本実施形態の導電性ペーストは、2級アミンまたは3級アミンであるアミン系分散剤を含む。このようなアミン系分散剤を含むことにより、導電性ペースト中の導電性粉末の分散状態を維持させ、導電性ペーストの経時的な粘度変化を少なくすることができる。
【0040】
アミン系分散剤は、高分子量ではないことが好ましい。例えば、分子量が1500以下であってもよく1000以下であってもよい。また、アミン系分散剤の分子量の下限は、例えば、150以上であってもよく、200以上であってもよく、500以上であってもよい。
【0041】
また、アミン系分散剤は、下記の一般式(1)で示される、3級アミンまたは2級アミンであることが好ましい。
【0042】
【0043】
(ただし、式(1)中、R1は炭素数8~18のアルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表し、R2はオキシエチレン基、オキシプロピレン基、又は、メチレン基を表し、R3はオキシエチレン基、オキシプロピレン基、又はメチレン基を表し、R2及びR3は、同一でもよく、又は、異なっていてもよい。また、式(2)中のN原子と、R2及びR3中のO原子とは直接結合せず、Yは0~7の数であり、Zは1~7の数である。)
【0044】
上記(1)中、R1は、炭素数8~18のアルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。R1の炭素数が上記範囲である場合、導電性ペースト中の粉末が十分な分散性を有し、溶剤への溶解度に優れる、なお、R1は、直鎖炭化水素基であることが好ましい。
【0045】
上記(1)中、R2は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、または、メチレン基を表し、R3はオキシエチレン基、オキシプロピレン基、又は、メチレン基を表し、R2及びR3は、同一でもよく、又は、異なっていてもよい。また、式(2)中のN原子と、R2及びR3中のO原子とは直接結合せず、Yは0以上7以下の数であり、Zは1以上7以下の数である。
【0046】
例えば、R2が、-(AO)Y-で示されるオキシアルキレン基(Yが1以上)である場合、オキシアルキレン基中の最端部のO原子は、R2と隣接するH原子と結合する。また、R2がメチレン基である場合、R2は、-(CH2)Y-で示され、Yが1~2の場合、隣接するH元素とともにメチル基(-CH3)、又は、エチル基(-CH2-CH3)を形成する。また、R3が、-(AO)Z-で示されるオキシアルキレン基(Zが1以上)である場合、オキシアルキレン基中の最端部のO原子は、R3と隣接するH原子と結合する。
【0047】
上記式(1)中、Yが0の場合、上記アミン系分散剤は、炭素数8~18のアルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基と、1つの水素基と、-(R3)ZHと、を有する2級アミンとなる。
【0048】
また、上記式(1)中、Yが1以上の場合、上記アミン系分散剤は、炭素数8~17のアルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基と、-(R2)YHと、-(R3)ZHとを有する3級アミンとなる。
【0049】
アミン系分散剤の誘電率は、好ましくは10以下であり、より好ましくは1以上10以下であり、さらに好ましくは2以上10以下である。高分子分散剤ではないアミン系分散剤の誘電率が10を超えると、親油性が低下し、導電性ペーストへの導電性粒子の分散を維持できなくなる。なお、アミン系分散剤の誘電率は、インピーダンスメータで測定することができる。
【0050】
有機物の誘電率は、有機物の分極のしやすさを示す指数であり、その分子構造や官能基に依存する。例えば、上記式(1)中、アミン系分散剤のR2およびR3の一方が、オキシエチレン基、又は、オキシプロピレン基である場合、誘電率は高くなる。また、R2とR3の両方が、オキシエチレン基、及び/又は、オキシプロピレン基である場合、誘電率はさらに高くなる。長期間保存後の粘度安定性をより向上させるという観点から、アミン系分散剤のR2およびR3の少なくとも一方は、オキシエチレン基、又は、オキシプロピレン基であることが望ましい。
【0051】
上記式(1)中、R2及びR3の少なくとも一方がオキシエチレン基、又は、オキシプロピレン基である場合、アミン系分散剤の誘電率を、10を上限として高くすることにより、導電性ペースト中の導電性粉末の分散状態を維持しやすくなり、経時的な粘度変化、及び、経時的な動的な粘性の変化を少なくすることができる。アミン系分散剤の誘電率は、例えば、5以上であってもよく、6以上であってもよい。
【0052】
また、上記式(1)中、R2がオキシエチレン基、又は、オキシプロピレン基である場合、Yの値が大きくなると、誘電率は低下する傾向にある。また、同様に、R3がオキシエチレン基、又は、オキシプロピレン基である場合、Zの値が大きくなると、誘電率は低下する傾向にある。
【0053】
R2及びR3の少なくとも一方がオキシエチレン基、又は、オキシプロピレン基である場合、YおよびZの値の合計が3以上であることが望ましい。また、Zの値が3以上である場合、得られる導電性ペーストの経時的な動的な粘性の変化を少なくすることができる。また、Y及びZの値のそれぞれが3以上であってもよく、5以上であってもよい。
【0054】
また、R2及びR3がメチレン基である場合、Yの値は0~7、Zの値は1~7の範囲から適宜選択することができる。R2及びR3がメチレン基である場合、Yの値は、5以下であってもよく、3以下であってもよい。また、Zの値は、5以下であってもよく、3以下であってもよい。また、R2及びR3がメチレン基である場合、誘電率は、5以下であってもよく、3以下であってもよい。
【0055】
導電性ペーストは、アミン系分散剤を、導電性粉末100質量部に対し、0.01質量部以上2質量部以下、好ましくは0.02質量部以上1質量部以下含む。上記アミン系分散剤を上記範囲で含む場合、経時的な粘度変化を抑制し、粘度安定性を向上させることができる。なお、アミン系分散剤の含有量が2質量部を超える場合、導電性ペーストをグリーンシートに印刷した際、印刷面にメッシュ跡が発生したり、ペーストの粘度が大きく低下したりすることがある。
【0056】
アミン系分散剤は、例えば、市販の製品から、上記特性を満たすものを選択して用いることができる。また、上記アミン系分散剤は、従来公知の製造方法を用いて、上記特性を満たすように製造してもよい。
【0057】
また、分散剤は、アミノ酸系分散剤を含んでもよい。アミノ酸系分散剤は、下記の一般式(2)に示されるように、N-アシルアミノ酸骨格を有し、炭素数10以上20以下の鎖状炭化水素基を有することが好ましい。
【0058】
【化2】
(ただし、式(2)中、R
4は、炭素数10~20の鎖状炭化水素を表す。)
【0059】
上記式(2)中、R4は、炭素数10以上20以下の鎖状炭化水素基を表す。R4は、炭素数が好ましくは15以上20以下である。また、鎖状炭化水素基は、直鎖炭化水素基でもよく、分岐炭化水素基であってもよい。また、鎖状炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基であってもよい。R4は、好ましくは直鎖炭化水素基であり、より好ましくは直鎖アルケニル基であり、二重結合を有する。
【0060】
導電性ペーストは、上記式(2)で示されるアミノ酸系分散剤を、導電性粉末100質量部に対し、0.01質量部以上2質量部以下、好ましくは0.02質量部以上1質量部以下、より好ましくは0.03質量部以上0.6質量部以下含み、0.1質量部以上0.6質量部以下含んでもよい。アミノ酸系分散剤を上記範囲で含む場合、乾燥膜密度を向上させることができる。なお、アミノ酸系分散剤の含有量が2質量部を超える場合、導電性ペーストをグリーンシートに印刷した際、印刷面にメッシュ跡が発生したり、ペーストの粘度が大きく低下したりすることがある。
【0061】
上記式(2)で示されるアミノ酸系分散剤は、例えば、市販の製品から、上記特性を満たすものを選択して用いることができる。また、上記アミノ酸系分散剤は、従来公知の製造方法を用いて、上記特性を満たすように製造してもよい。
【0062】
分散剤(上記アミノ酸系分散剤及びアミン系分散剤を含む)は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上4質量部以下含有され、より好ましくは0.04質量部以上2質量部以下含有される。分散剤の含有量が上記範囲である場合、導電性ペーストの粘度を適切な範囲に調整することができ、また、シートアタックやグリーンシートの剥離不良を抑制することができる。
【0063】
また、分散剤(上記アミノ酸系分散剤及びアミン系分散剤を含む)は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは3質量%以下含有される。分散剤の含有量の上限は、好ましくは2.4質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。分散剤の含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上である。分散剤の含有量が上記範囲である場合、導電性ペーストの粘度を適切な範囲に調整することができ、また、シートアタックやグリーンシートの剥離不良を抑制することができる。
【0064】
なお、導電性ペーストは、上記のアミノ酸系分散剤及びアミン系分散剤以外の分散剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で含んでもよい。上記以外の分散剤としては、例えば、高級脂肪酸、高分子界面活性剤などを含む酸系分散剤、酸系分散剤以外のカチオン系分散剤、ノニオン系分散剤、両性界面活性剤及び高分子界面活性剤などを含んでもよい。また、これらの分散剤は、1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(導電性ペースト)
本実施形態の導電性ペーストの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。導電性ペーストは、例えば、上記の各成分を用意し、3本ロールミル、ボールミル、ミキサーなどで攪拌・混練することにより製造することができる。その際、導電性粉末表面に予め分散剤を塗布すると、導電性粉末が凝集することなく十分にほぐれて、その表面に分散剤が行きわたるようになり、均一な導電性ペーストを得やすい。また、バインダー樹脂をビヒクル用の有機溶剤に溶解させ、有機ビヒクルを作製し、ペースト用の有機溶剤へ、導電性粉末、セラミック粉末、有機ビヒクル及び分散剤を添加し、ミキサーで攪拌・混練し、導電性ペーストを作製してもよい。
【0066】
また、本実施形態の導電性ペーストを印刷した後、乾燥して得られる乾燥膜の乾燥膜密度(DFD)は、例えば、4.8g/cm3を超えるのが好ましく、4.9g/cm3を超えてもよい。なお、乾燥膜密度(DFD)の上限は、特に限定されないが、6.5g/cm3以下であってもよい。なお、導電性ペーストの乾燥膜密度は、実施例に記載の方法で測定される。
【0067】
また、本実施形態の導電性ペーストは、長期間保存後(例えば、基準時点から30日間、60日間、又は、90日間静置後)の粘度(4sec-1)が、好ましくは80Pa・s以下であり、70Pa・s以下であってもよく、60Pa・s以下であってもよく、50Pa・s以下であってもよい。また、長期間保存後の粘度(4sec-1)の変化量が、基準時点より1日間静置後の粘度を基準粘度とした場合、基準粘度に対する、90日間静置後の粘度の変化量が好ましくは3倍以下であり、2.5倍以下であってもよく、2倍以下であってもよい。なお、導電性ペーストの粘度は、実施例に記載の方法で測定される。
【0068】
本実施形態の導電性ペーストは、例えば、積層セラミックコンデンサなどの電子部品に好適に用いることができる。また、本実施形態の導電性ペーストは、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極層の形成に好適に用いることができる。
【0069】
積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートを用いて形成される誘電体層及び導電性ペーストを用いて形成される内部電極層を少なくとも有する。積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートに含まれる誘電体セラミック粉末と導電性ペーストに含まれるセラミック粉末とが同一組成の粉末であることが好ましい。本実施形態の導電性ペーストを用いて製造される積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートの厚さが、例えば3μm以下である場合でも、シートアタックやグリーンシートの剥離不良が抑制される。
【0070】
[電子部品]
以下、本発明の電子部品等の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面においては、適宜、模式的に表現することや、縮尺を変更して表現することがある。また、部材の位置や方向などを、適宜、
図5A、
図5Bなどに示すXYZ直交座標系を参照して説明する。このXYZ直交座標系において、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(上下方向)である。
【0071】
図5A及び
図5Bは、実施形態に係る電子部品の一例である、積層セラミックコンデンサ1を示す図である。積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層12及び内部電極層11を交互に積層したセラミック積層体10と外部電極20とを備える。
【0072】
以下、上記導電性ペーストを使用した積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。まず、セラミックグリーンシート上に、導電性ペーストを印刷して、乾燥し、乾燥膜を形成する。この乾燥膜を上面に有する複数のセラミックグリーンシートを、圧着により積層させて積層体を得た後、積層体を焼成して一体化することにより、内部電極層11と誘電体層12とが交互に積層したセラミック積層体10を作製する。その後、セラミック積層体10の両端部に一対の外部電極20を形成することにより積層セラミックコンデンサ1が製造される。以下に、より詳細に説明する。
【0073】
まず、未焼成のセラミックシートであるセラミックグリーンシートを用意する。このセラミックグリーンシートとしては、例えば、チタン酸バリウム等の所定のセラミックの原料粉末に、ポリビニルブチラール等の有機バインダーとターピネオール等の溶剤とを加えて得た誘電体層用ペーストを、PETフィルム等の支持フィルム上にシート状に塗布し、乾燥させて溶剤を除去したもの等が挙げられる。なお、セラミックグリーンシートからなる誘電体層の厚みは、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサの小型化の要請の観点から、0.05μm以上3μm以下が好ましい。
【0074】
次いで、このセラミックグリーンシートの片面に、スクリーン印刷法等の公知の方法によって、上述の導電性ペーストを印刷(塗布)して乾燥し、乾燥膜を形成したものを複数枚、用意する。なお、印刷後の導電性ペースト(乾燥膜)の厚みは、内部電極層11の薄層化の要請の観点から、乾燥後1μm以下とすることが好ましい。
【0075】
次いで、支持フィルムから、セラミックグリーンシートを剥離するとともに、セラミックグリーンシートとその片面に形成された乾燥膜とが交互に配置されるように積層した後、加熱・加圧処理により積層体を得る。なお、積層体の両面に、導電性ペーストを塗布していない保護用のセラミックグリーンシートを更に配置する構成としても良い。
【0076】
次いで、積層体を所定サイズに切断してグリーンチップを形成した後、当該グリーンチップに対して脱バインダー処理を施し、還元雰囲気下において焼成することにより、積層セラミック(セラミック積層体10)を製造する。なお、脱バインダー処理における雰囲気は、大気またはN2ガス雰囲気にすることが好ましい。脱バインダー処理を行う際の温度は、例えば200℃以上400℃以下である。また、脱バインダー処理を行う際の、上記温度の保持時間を0.5時間以上24時間以下とすることが好ましい。また、焼成は、内部電極層に用いる金属の酸化を抑制するために還元雰囲気で行われ、また、積層体の焼成を行う際の温度は、例えば、1000℃以上1350℃以下であり、焼成を行う際の、温度の保持時間は、例えば、0.5時間以上8時間以下である。
【0077】
グリーンチップの焼成を行うことにより、グリーンシート中の有機バインダーが完全に除去されるとともに、セラミックの原料粉末が焼成されて、セラミック製の誘電体層12が形成される。また乾燥膜中の有機ビヒクルが除去されるとともに、ニッケル粉末またはニッケルを主成分とする合金粉末が焼結もしくは溶融、一体化されて、内部電極が形成され、誘電体層12と内部電極層11とが複数枚、交互に積層された積層セラミック焼成体が形成される。なお、酸素を誘電体層の内部に取り込んで信頼性を高めるとともに、内部電極の再酸化を抑制するとの観点から、焼成後の積層セラミック焼成体に対して、アニール処理を施してもよい。
【0078】
そして、作製した積層セラミック焼成体に対して、一対の外部電極20を設けることにより、積層セラミックコンデンサ1が製造される。例えば、外部電極20は、外部電極層21及びメッキ層22を備える。外部電極層21は、内部電極層11と電気的に接続される。なお、外部電極20の材料としては、例えば、銅やニッケル、またはこれらの合金が 好適に使用できる。なお、電子部品は、積層セラミックコンデンサに限定されず、積層セラミックコンデンサ以外の電子部品であってもよい。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例と比較例に基づき詳細に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
【0080】
[評価方法]
(導電性ペーストの粘度)
導電性ペーストの粘度は、導電性ペーストの製造24時間経過後を基準時点とし、その基準時点と、室温(25℃)で基準時点より30日間、60日間、90日間静置後にレオメータ(アントンパール社製レオメータM501)にてフローカーブ測定において回転数4sec-1で測定した。そして、基準時点より1日間静置後の粘度を基準粘度として、7日間、14日間、30日間、60日間および90日間静置後のそれぞれの1日間静置後の粘度から変化量を示した。
【0081】
(乾燥膜密度)
ニッケルペーストをガラス上に20mgをドーム型に採取し、乾燥炉にて80℃2時間乾燥させ、レーザー顕微鏡(キーエンス社製VK-X1000)から求めた体積とニッケルペーストの乾燥前後の重量差から乾燥膜密度(DFD)を算出した。
【0082】
[実施例1]
Ni粉末(SEM平均粒径0.2μm)50質量%、セラミック粉末(BaTiO3;SEM平均粒径0.06μm)3.8質量%、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂からなるビヒクル中のバインダー樹脂を合計で3質量%とし、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂の配合比(質量比)は1:2とした。アミン系分散剤としてオキシエチレンラウリルアミン(誘電率:9.1)を0.5質量%、アミノ酸系分散剤を0.05質量%、及び、ターピネオールを全体として100質量%となるよう配合し、これらの材料を混合して導電性ペーストを作製した。なお、アクリル樹脂は日油社製マープルーフAM-515を使用した。また、アミノ酸系分散剤は、上記一般式(2)で示され、R4が炭素数10~20の直鎖炭化水素基を有する。各成分の配合割合を表1に示す。
【0083】
作製した導電性ペーストの基準粘度に対する7日、14日、30日、60日および90日間静置後の粘度の変化量と乾燥膜密度(DFD)を評価した。評価結果を
図1及び
図3に示す。
【0084】
[実施例2]
Ni粉末50質量%、セラミック粉末3.8質量%、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂からなるビヒクル中のバインダー樹脂を合計で3質量%とし、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂の配合比は0.5:2.5とした以外は実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、評価した。各成分の配合割合を表1に、評価結果を
図1及び
図3に示す。
【0085】
[実施例3]
Ni粉末50質量%、セラミック粉末3.8質量%、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂からなるビヒクル中のバインダー樹脂を合計で3質量%とし、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂の配合比は0.2:2.8とした以外は実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、評価した。各成分の配合割合を表1に、評価結果を
図1及び
図3に示す。
【0086】
[実施例4]
実施例1のターピネオールをメンタノール(ジヒドロターピネオール:DHTPO)に換え、全体として100質量%となるように配合した以外は実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、評価した。各成分の配合割合を表1に、評価結果を
図2及び
図4に示す。
【0087】
[実施例5]
Ni粉末50質量%、セラミック粉末3.8質量%、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂からなるビヒクル中のバインダー樹脂を合計で3質量%とし、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂の配合比は0.5:2.5とした以外は実施例4と同様にして、導電性ペーストを作製し、評価した。各成分の配合割合を表1に、評価結果を
図2及び
図4に示す。
【0088】
[実施例6]
Ni粉末50質量%、セラミック粉末3.8質量%、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂からなるビヒクル中のバインダー樹脂を合計で3質量%とし、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂の配合比は0.2:2.8とした以外は実施例4と同様にして、導電性ペーストを作製し、評価した。各成分の配合割合を表1に、評価結果を
図2及び
図4に示す。
【0089】
[比較例1]
アクリル樹脂をポリビニルブチラール樹脂(PVB)に変更し配合比を1:2とし、溶剤はターピネオールを全体として100質量%とし、アミン系分散剤を除いた以外は実施例1と同様に導電性ペーストを作製した。各成分の配合割合を表1に、評価結果を
図1及び
図3に示す。
【0090】
[比較例2]
アクリル樹脂をポリビニルブチラール樹脂(PVB)に変更し配合比を1:2とし、溶剤は、メンタノール(ジヒドロターピネオール)を全体として100質量%とし、アミン系分散剤を除いた以外は実施例4と同様に導電性ペーストを作製した。各成分の配合割合を表1に、評価結果を
図2及び
図4に示す。
【0091】
【0092】
(評価結果)
図1は、有機溶剤としてターピネオール(TPO)を用いた実施例1~3、比較例1の導電性ペーストの乾燥膜密度(DFD)の評価結果を示したグラフである。
図1に示されるように、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂を含み、有機溶剤としてターピネオール(TPO)を用いた実施例1から3の導電性ペーストは、アクリル樹脂とアミン系分散剤を含まない比較例1より、乾燥膜密度(DFD)が向上した。
【0093】
また、
図2は、有機溶剤としてメンタノール(ジヒドロターピネオール:DHTPO)を用いた実施例4~6、比較例2の導電性ペーストの乾燥膜密度(DFD)の評価結果を示したグラフである。
図2に示されるように、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂を含み、有機溶剤としてメンタノール(ジヒドロターピネオール)を用いた実施例4~6の導電性ペーストは、アクリル樹脂とアミン系分散剤を含まない比較例2より、乾燥膜密度が向上した。
【0094】
また、有機溶剤としてメンタノール(ジヒドロターピネオール:DHTPO)を用いた実施例4~実施例6の導電性ペーストは、ターピネオール(TPO)を用いた実施例1~実施例3の導電性ペーストより乾燥膜密度(DFD)がより高くなった。
【0095】
図3は、有機溶剤としてターピネオール(TPO)を用いた実施例1~3、比較例1の導電性ペーストの経時的な粘度特性の評価結果を示したグラフである。
図3に示されるように、実施例1から実施例3の導電性ペーストは、比較例1の導電性ペーストよりも、基準時点より30日間、60日間、90日間静置後の粘度の変化量が小さかった。
【0096】
図4は、有機溶剤としてメンタノール(ジヒドロターピネオール:DHTPO)を用いた実施例4~6、比較例2の導電性ペーストの経時的な粘度特性の評価結果を示したグラフである。
図4に示されるように、実施例4~実施例6の導電性ペーストは、比較例2の導電性ペーストよりも、基準時点より30日間、60日間、90日間静置後の粘度の変化量が小さかった。
【0097】
以上から、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂、及び、特定のアミン系分散剤を含む実施例1~6の導電性ペーストは、同様の有機溶剤を用いた比較例1又は比較例2の導電性ペーストと比較して、乾燥膜密度が向上し、かつ、長期間静置後の粘度変化量が小さく、経時的な粘度特性が向上することが明らかである。
【符号の説明】
【0098】
1…積層セラミックコンデンサ
10…セラミック積層体
11…内部電極層
12…誘電体層
20…外部電極
21…外部電極層
22…メッキ層