(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】廃熱ボイラーのガスシール装置及びこれを用いたガスシール方法並びにこれを備えた廃熱ボイラー
(51)【国際特許分類】
F22B 37/38 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
F22B37/38 A
(21)【出願番号】P 2020104628
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】岩▲さき▼ 宣幸
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-050727(JP,A)
【文献】実開昭52-018434(JP,U)
【文献】特表2005-514579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B37/38
F23M7/00
F23J13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部を貫通する貫通部及びその出口側開口部を閉止する閉止手段を備えた廃熱ボイラーの該閉止手段
の周囲を加熱ガス雰囲気に置換するガスシール装置であって、
前記貫通部の出口側開口部及び前記閉止手段を覆う内部が空洞の箱状体と、前記箱状体の内側に加熱ガスを供給する加熱ガス供給部と
、前記加熱ガスを発生させる加熱ガス発生源とを有することを特徴とするガスシール装置。
【請求項2】
前記加熱ガス供給部の先端部のガス供給口が、前記閉止手段に差し向くように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のガスシール装置。
【請求項3】
前記加熱ガスが加熱された空気であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のガスシール装置。
【請求項4】
前記加熱ガス供給部がフレキシブルチューブで形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のガスシール装置。
【請求項5】
硫化鉱原料を処理する非鉄金属製錬炉から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーの点検口又はサンプリング孔の閉止手段に対して、請求項1~4のいずれか1項に記載のガスシール装置を用いてガスシールする方法であって、
前記箱状体の内部に供給する加熱ガスの温度を30℃以上200℃以下に調整すると共に該箱状体の内部圧力を40mmAq以上300mmAq以下に調整することを特徴とするガスシール方法。
【請求項6】
硫化鉱原料を処理する非鉄金属製錬炉から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーであって、
請求項1~4のいずれか1項に記載のガスシール装置が前記廃熱ボイラーの点検口又はサンプリング孔の閉止手段を覆うように取り付けられていることを特徴とする廃熱ボイラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属製錬に用いられる廃熱ボイラーのガスシール装置、該ガスシール装置を用いた廃熱ボイラーのガスシール方法及び該ガスシール装置を備えた廃熱ボイラーに関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄金属製錬においては、自溶炉などの製錬炉に原料としての硫化鉱と、からみ調整剤(フラックスとも称される)や補助燃料等の副原料とを装入し、更に酸素を含んだガスを吹き込んで酸化・溶融を行なうことで、溶融状態のマットをスラグから分離して回収している。その際、製錬炉からは煙灰及び亜硫酸ガス(SO2)を含んだ高温の排ガスが排出される。この製錬炉から排出される高温の排ガスが有する熱エネルギーを回収するため、廃熱ボイラーが製錬炉の近傍に設けられている。廃熱ボイラーは、一般的にその胴体部の内側がキャスタブルで内張りされており、更に上記の高温の排ガスとの熱交換を行なうボイラー水が内部を流れる水管が配設されている。
【0003】
上記の水管は熱交換効率を高めるため高温の排ガスの流れを妨げるように設けられているので、上記の排ガスに含まれる煙灰が水管の外周面に付着しやすく、その結果、伝熱係数が低下して熱交換量が低下したり、付着した煙灰に含まれる腐食性物質により水管が腐食したりする問題が生じることがあった。そこで、廃熱ボイラーの胴体部には開閉自在な蓋部を備えた点検口が設けられており、定期的に廃熱ボイラー内部を点検することが行われている。
【0004】
しかしながら、この点検口は、その蓋部の開閉の繰り返しによる封止材の劣化などによって廃熱ボイラー内空間の密閉性が保たれなくなる場合があり、この密閉性の低下が生じている箇所から廃熱ボイラー内に外気が侵入することがあった。その結果、この点検口近傍において、侵入した外気による冷却で水管の表面に硫酸が結露し、水管に腐食(硫酸腐食)が生じることがあった。すなわち、排ガスに含まれている亜硫酸ガスは、その一部が酸化されて無水硫酸(SO3)になり、この無水硫酸は、排ガス中に含まれる水蒸気と直ちに反応して硫酸蒸気(H2SO4)を生成する。
【0005】
上記の硫酸蒸気は、排ガスの露点を上昇させる方向に働くので、水管の表面が外気により露点以下に冷却されると、その箇所において硫酸が結露することになる。この硫酸による腐食を抑制するには、劣化した封止材の交換などにより外気の侵入を防ぐことが有効であるが、封止材の交換のために設備を長時間停止することが必要になるため、容易に交換することができなかった。
【0006】
上記の点検口近傍の水管の腐食対策として、特許文献1には該点検口の外周面に沿って湾曲させた水管群を耐火物で埋める技術が開示されている。しかしながらこの特許文献1の技術は、腐食の原因物質として排ガス中に含まれる煙灰を対象とするものであり、廃熱ボイラーの点検口における密閉性の低下により廃熱ボイラー内に侵入した外気によって生じる硫酸腐食を抑制するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、廃熱ボイラーの点検口などの貫通部の蓋部に使用する封止材の劣化などによって廃熱ボイラー内空間の密閉性が低下した場合であっても、該廃熱ボイラー内に設けられている水管の硫酸腐食を抑制できるガスシール装置、該ガスシール装置を用いたガスシール方法及び該ガスシール装置を備えた廃熱ボイラーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るガスシール装置は、壁部を貫通する貫通部及びその出口側開口部を閉止する閉止手段を備えた廃熱ボイラーの該閉止手段の周囲を加熱ガス雰囲気に置換するガスシール装置であって、前記貫通部の出口側開口部及び前記閉止手段を覆う内部が空洞の箱状体と、前記箱状体の内側に加熱ガスを供給する加熱ガス供給部と、前記加熱ガスを発生させる加熱ガス発生源とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、点検口などの貫通部の蓋部に使用する封止材の劣化などによって廃熱ボイラーの密閉性が低下した場合であっても、水管の硫酸腐食を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のガスシール装置が好適に用いられる廃熱ボイラーの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態のガスシール装置が
図1の廃熱ボイラーの筒状点検口の閉止設備に取り付けられている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態のガスシール装置について詳細に説明する。先ず、本発明の実施形態のガスシール装置が好適に用いられる銅製錬プラントの廃熱ボイラーについて説明する。乾式製錬により原料の硫化鉱から高品位の銅を製造する銅製錬プラントでは、自溶炉に装入される硫化鉱は、酸化されると共に自身の酸化反応熱で溶融し、これにより生成した銅品位60~65%程度のマットが酸化鉄や珪酸などからなるスラグから分離される。この酸化・溶融の際、自溶炉からはSO2を高濃度で含む高温の排ガスが排出されるため、この排ガスは廃熱ボイラーに導入されてボイラー水との熱交換により廃熱が回収された後、硫酸の原料ガスとして硫酸製造設備に送られる。
【0013】
上記の廃熱ボイラーは、例えば
図1に示すような輻射部1と対流部2とから構成され、自溶炉から排出された排ガスは、紙面左側の白矢印で示すように輻射部1の胴体部の側面に設けられた排ガス入口部1aから導入され、輻射部1及び対流部2の各々の内部に設けられている水管群においてボイラー水との熱交換を行うことで排ガスの熱エネルギーが回収された後、紙面右側の白矢印で示すように対流部2の胴体部の側面に設けられた排ガス出口部2aから排出される。
【0014】
これら輻射部1及び対流部2の胴体部は、各々略直方体形状の上部と、対向する壁面同士の間隔が下方に向かうに従って狭くなるテーパー構造の下部とから構成されており、排ガスに含まれている煙灰は、この廃熱ボイラー内の空間を排ガスが通過している間に重力により落下し、上記のテーパー構造の下部に集められる。この下部に集められた煙灰は、図示しないチェーンコンベア等の煙灰排出装置を介して胴体部から排出される。
【0015】
上記の輻射部1及び対流部の各々の胴体部の内側に設けられている水管は、上記排ガスの熱エネルギーを効率よく回収できるように配設されている。具体的には、輻射部1ではその胴体部の内壁面のほぼ全面に亘って蛇行状に水管が張り巡らされており、一方、対流部2では胴体部の内壁面と胴体部の空間部分とに水管が設けられている。これら水管は容易に設置できるように、一平面上において互いに平行に配設された複数の直管と、これらのうち隣接する直管同士の端部をつなぐU字状曲り管とが一体となったパネル状の形態を有しているのが好ましい。
【0016】
上記の廃熱ボイラーの胴体部には、
図1に示すように主に水管の点検やその補修の際に作業員が出入りするマンホールMや排ガスをサンプリングするためのサンプリング口S等の筒状の貫通部が胴体部の壁面を貫通して設けられている。この貫通部に物理的に干渉するのを避けるため、上記した胴体部の内壁面に沿って蛇行状に設けられている水管を構成する複数の平行な直管は、一部が貫通部を回避するように該貫通部の外周面に沿って部分的に湾曲している。
【0017】
このように水管を湾曲させるとその上に煙灰が堆積しやすくなって腐食を促進させるおそれがあるため、この水管の湾曲部分は煙灰が堆積しないように耐火物の中に埋め込まれている。例えば、
図2には廃熱ボイラーの壁部を貫通する貫通部であるマンホールMをその中心軸を含む平面で切断した断面図が示されている。この
図2では、略筒状の点検口と、その外側開口部を開閉させる閉止設備とが示されており、廃熱ボイラーの壁面に沿って設けられている好ましくはパネル状の水管のうちの一部は、点検口の外周面に沿うように設けられており、且つ耐火物の中に埋め込まれていることが示されている。
【0018】
具体的には、この
図2に示すマンホールMは、廃熱ボイラーの壁部3を貫通する貫通部4と、該貫通部4の出口側開口部を閉止する閉止手段10とによって構成され、水管6のうちの一部6aは該貫通部4と物理的に干渉しないように、この貫通部4の外周面に沿って湾曲するように設けられている。この貫通部4の外周面に沿って設けられている一部の水管6aを囲むように、該貫通部4の外周側に円筒状の第2貫通部5が設けられている。これら貫通部4と第2貫通部5との間に耐火材7が充填されており、これにより上記一部の水管6aは耐火材7の中に埋め込まれている。なお、上記貫通部4は、その軸方向中央部に向って徐々に縮径するように円筒体を中央部で絞り込んだ形状を有している。
【0019】
上記のように、貫通部4が縮径している理由は、後述するマンホールカバーの内側に設けられている略富士山形状の断熱部がマンホールカバーの開閉の際に該貫通部4に干渉するのを防止するためである。これら貫通部4及び第2貫通部5の出口側端部に基板8が設けられており、この基板8の端部に支持部9が突出するようにして設けられている。この支持部9に円板状のマンホールカバー11を有する閉止手段10が開閉自在に支持されている。
【0020】
以下、このマンホールカバー11を有する閉止手段10の構造について、より具体的に説明する。マンホールカバー11は、内側に略富士山形状の断熱材12が設けられており、マンホールカバー11が
図2に示す閉止位置に位置しているとき、この断熱材12が前述した貫通部4の縮径する内壁面に嵌合することで、廃熱ボイラーの内部を流れる排ガスの熱エネルギーがこのマンホールカバー11から逃げにくいようになっている。更に、マンホールカバー11が閉止位置に位置しているときにより密閉性を高めるため、マンホールカバー11と基板9とで挟み込まれる封止材13が基板9上において貫通部4の出口側開口部を囲むように設けられている。
【0021】
マンホールカバー11の外側の中央部には、外周部が螺刻されたシャフト部14が立設しており、このシャフト部14の先端部にハンドル15が設けられている。このシャフト部14は更に、マンホールカバー11を水平方向に横断するように設けられている略弓形の締付けアーム16の長手方向中央部の貫通孔に螺合している。この締付けアーム16の一端部は、前述した支持部9に軸支されており、他端部は上記基板8の上記支持部9とは反対側の端部に設けられている留め具17に係合するようになっている。なお、本発明においては、
図2の点線で囲んだ部材であるマンホールカバー11、断熱材12、封止部13、シャフト部14、ハンドル15、締付アーム16、及び留め具17をまとめて閉止手段10と称する。
【0022】
上記の構成を有することにより、マンホールMを開放状態から閉止状態にするときは、開放位置に位置しているマンホールカバー11のハンドル15を把持して閉止位置まで回動させた後、ハンドル15を締め込む向きに回転する。この回転により、締付けアーム16の支持部9に軸支されている側とは反対側の他端部が、マンホールカバー11と接触状態となり、さらに締め込む向きに回転すると、接触状態となった前記の他端部によって、マンホールカバー11は貫通部4の中心軸方向へ押し込まれることとなる。これにより、封止材13が基板8とマンホールカバー11とによって両側から押圧されて廃熱ボイラーの内部を密閉状態にすることが可能になる。この密閉状態において留め具17を締付アーム16の先端部に引っ掛けることにより、締付けアーム16は留め金17を介して基板8に固定することができる。マンホールMを閉止状態から開放状態にするときは、上記とは逆の手順で操作すればよい。
【0023】
次に上記の閉止手段10を全体的に覆うようにして設けられている本発明の実施形態のガスシール装置について説明する。
図2に示すように、本発明の実施形態のガスシール装置20は、点線で囲んだ閉止手段10を全体的に覆う内部が空洞の直方体形状の箱状体(アウターボックスとも称する)21と、この箱状体21の側部に設けられた貫通孔21aから差し込まれるパイプからなる加熱ガス供給部22とによって構成される。箱状体21は、加熱ガス供給部21によってその内部に例えば加熱された空気を供給することができるので、その温度に耐えられる材質で形成するのが好ましく、例えばSUS304等のステンレス鋼板で形成するのが好ましい。また、この箱状体21は、閉止手段10のマンホールカバー11を開ける際は取り外す必要があるので、容易に取り外すことができるように、廃熱ボイラーの壁部3の外装金属板3aに取付け金具やボルトなどによって固定されるのが好ましい。なお、加熱ガスに用いるガスは、上記の加熱された空気に限定されるものではなく、安全性の高い加熱ガスであれば他の種類のガスを用いてもよい。例えば、窒素ガスなどの不活性ガスや、空気と不活性ガスとの混合ガスを加熱したものを加熱ガスとして用いてもよい。
【0024】
上記の箱状体21に先端部が差し込まれている加熱ガス供給部22は、該先端部とは反対側の他端部に図示しない加熱ガス発生源が接続している。この加熱ガス発生源としては、空気を加熱するガスヒーターや電気ヒーター等と、該加熱された空気を昇圧する送風機とを備えた公知の熱風発生装置や、送風機で昇圧した空気の加熱用の熱源に廃熱ボイラーによって回収した熱を利用する熱風発生装置などを採用することができる。これにより、マンホールMの出口側及び閉止手段10の周囲を加熱空気等の加熱ガスの雰囲気に置換することができるので、これらマンホールMの出口側や閉止手段10に外気が直接触れるのを防ぐことができる。
【0025】
その結果、封止材13の劣化などによって廃熱ボイラーのマンホールMの密閉性が確保されにくい状態になっても、廃熱ボイラー内に侵入するおそれのあるガスは外気ではなく加熱空気などの加熱ガスになるので、外気による冷却で結露した硫酸による水管腐食の問題を防ぐことができる。加熱ガス供給部21は、その先端部のガス供給口22aの位置を閉止手段10の大きさや構造に応じて箱状体21の内部の任意の位置に自在に変えて保持できるのが好ましく、これは加熱ガス供給部21の部材をフレキシブルパイプにすることで実現できる。
【0026】
封止材13の劣化等が生じている部位から廃熱ボイラー内に外気が侵入するのをより確実に防ぐ観点から、上記ガス供給口22aは閉止手段10に差し向くように配置するのが好ましく、マンホールカバー11に差し向くように配置するのがより好ましい。加熱ガス供給部21で供給する加熱空気等の加熱ガスの温度は、30℃以上200℃以下の範囲内に調整するのが好ましい。この加熱ガスの温度が30℃未満では硫酸の結露の問題を防止できなくなるおそれがあり、逆にこの温度が200℃を超えるとガスの加熱のために過剰なエネルギーが消費されるうえ、より高い耐熱構造が必要になるので無駄なコストが発生するおそれがある。なお、上記加熱ガスの温度は、前述した加熱ガス発生源のガスヒーターなどにおける供給熱量により調整することができる。
【0027】
また、箱状体21の内部の圧力は、40mmAq以上300mmAq以下の範囲内に調整するのが好ましい。この箱状体21の内部圧力が30mmAq未満では廃熱ボイラー内に外気が侵入するのを防げなくなるおそれがあり、逆に300mmAqを超えると昇圧のために過剰なエネルギーや耐圧構造が必要になるので無駄なコストが発生するおそれがある。なお、上記の箱状体21の内部圧力は、例えば該箱状体21に設けたマノメーターで測定することができる。上記の箱状体21の内部圧力は、上記加熱ガス発生源の送風機における送風量を増減することによって調整することができる。
【0028】
箱状体21の内部圧力を上記の圧力範囲内に調整することによって、箱状体21の内部を加熱ガスによって陽圧側に安定的に維持することができるので、外気の廃熱ボイラー内への侵入をより確実に防ぐことができる。また、上記の温度範囲内に調整することによって、廃熱ボイラー内を流れている排ガスが水管の表面で硫酸を結露させるのをより確実に防ぐことができる。
【0029】
この箱状体21に供給した加熱ガスは、上記した廃熱ボイラーの壁部3の外装金属板3aと箱状体21との接合部分の隙間や、該箱状体21に設けた加熱ガス供給部22の挿通用の貫通孔21aから排出させることで、該箱状体21の内部の雰囲気ガス圧力や雰囲気ガス温度を安定的に維持することができる。上記の雰囲気ガス圧力や雰囲気ガス温度の維持は、ガス供給口22aから放出させる加熱ガスの速度を調整することによって、より細かく調整することが可能である。かかる細かな調整は、例えば加熱ガス供給部22に調整弁22bを設け、その開度により調整することが可能であり、通常は、ガス速度1.0m/s以上4.0m/s以下の範囲内に調整される。また、これら雰囲気ガス圧力や雰囲気ガス温度をより安定的に維持するため、上記箱状体21に専用のガス排出口を設けてもよい。なお、箱状体21には高温の加熱ガスから作業員を保護するため、及び/又は省エネルギーのため、箱状体21を保温材で覆うのが好ましい。
【実施例】
【0030】
銅製錬プラントの自熔炉から発生した排ガスを、
図2に示すようなガスシール装置20をマンホールMの出口側に備えた廃熱ボイラーに導入して廃熱回収を行った。加熱ガス供給部22から供給する加熱ガスには、送風機で昇圧した空気を該廃熱ボイラーで発生させた蒸気と熱交換することで加熱した空気を用いた。また、加熱ガス供給部22にはフレキシブルチューブを使用し、その先端のガス供給口22aが閉止手段10のマンホールカバー11に差し向くように位置を調整した。
【0031】
加熱空気の温度は、上記熱交換用の蒸気の供給量をバルブ開度を調整することで30℃に調整した。また、加熱ガス供給部22に設けた調整弁22bの開度を調整することで、箱状体21に設けたマノメーターの指示圧力が40mmAqになるように調整した。このとき、ガス供給口22aから放出される加熱空気の速度を、該ガス供給口22aから約100mm離間した位置にセットした熱線式風速計で測定したところ1.0m/sであった。この状態で12か月間の操業を継続した後、廃熱ボイラー内部の水管の腐食状態を目視にて点検した。その結果、封止材が劣化していた点検口近傍を含めて水管に腐食の進行は認められず、外気の侵入を効果的に遮断できていることが確認できた。
【符号の説明】
【0032】
1 輻射部
1a 排ガス入口部
2 対流部
2a 排ガス出口部
3 壁部
3a 外装金属板
4 貫通部
5 第2貫通部
6、6a 水管
7 耐火材
8 支持部
9 基板
10 閉止手段
11 蓋部(マンホールカバー)
12 断熱材
13 封止材
14 シャフト
15 ハンドル
16 締付けアーム
17 留め金
20 ガスシール装置
21 箱状体(アウターボックス)
21a 貫通孔
22 加熱ガス供給部
22a ガス供給口
22b 調整弁
M マンホール
S サンプリング孔